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浄水場運転管理業務の夜間・休日民間委託に係る検証

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浄水場運転管理業務の夜間・休日民間委託に係る検証
浄水場運転管理業務の
夜間・休日民間委託に係る検証報告書
平成 25 年1月
沖縄県企業局
浄水場運転管理業務の夜間・休日民間委託に係る検証報告書
1
検証の目的
2
浄水場民間委託実施の背景
3
浄水場民間委託の業務内容や委託形態等について
3-1 浄水場の業務内容及び民間委託の範囲
3-2 浄水場運転管理業務の管理体制
3-3 事故等緊急時の対応方法の考え方
3-4 委託業者の選定方法の考え方
3-5 将来にわたる安全性、安定性の確保
4
民間委託の検証
4-1 検証方法
4-2 検証結果
4-2-1 名護浄水場
(1)委託事業者名及び契約期間
(2)業務の実施状況
(3)名護浄水場で発生した濁度上昇事象に対する処置状況
4-2-2 石川浄水場
(1)委託事業者名及び契約期間
(2)業務の実施状況
(3)石川浄水場で発生した濁度上昇事象に対する処置状況
4-2-3 浄水場民間委託に伴う経費節減効果
5
浄水場民間委託に関する考察
5-1 民間委託業務全体について
5-2 名護浄水場民間委託について
5-3 石川浄水場民間委託について
6
浄水場民間委託の円滑な実施に向けて
6-1 業務習熟訓練の充実
6-2 官民共同による非常時を想定した訓練の充実
6-3 官民連携を基本とした双方の技術基盤の確保・強化
7
まとめ
【添付資料】
資料1 用語の説明
1
検証の目的
沖縄県企業局(以下、「企業局」という。)では、安全でおいしい水を低廉な価格で安定
的に供給し、もって県民福祉の向上に寄与することに留意しつつ、より一層の経営健全化、
効率化による経営基盤の強化を目的に、浄水場運転管理業務の夜間・休日の民間委託を推
進しているところであり、平成 22 年度から名護浄水場、平成 23 年度から石川浄水場の民
間委託を実施しているところである。
民間委託の実施に当たっては、水道の安全性・安定性の確保が不可欠であることから、
先進事例調査等の調査検討をもとに民間委託による効果や課題を抽出し、安全性・安定性
の確保に向けた対策を講じてきたところである。また、民間委託後は、委託事業者の業務
履行状況を把握・検証しながら、危機管理訓練などの業務履行に必要な種々の取り組みを
委託事業者と連携しながら進めてきたところである。
今回、委託開始から一定期間が経過したことから、民間委託による効果や課題等を整理
するとともに、民間委託を推進するに当たり必要な対策を明確にし、今後の事業運営に反
映させるため、これまでの民間委託の実施状況について検証を行うものである。
2
浄水場民間委託実施の背景
企業局では、復帰後、厳しい水事情や増大する水需要に対応するため、多目的ダムなど
の水源(※)開発や浄水場、海水淡水化施設などの施設整備を進め、平成6年以降断水するこ
となく、18年間安定的に給水を実施している状況にある。
また、今後も観光客や人口の増加が見込まれていることから、水需要の動向に適切に対
応しながら、水道施設(※)の整備を進めるとともに、老朽化施設の計画的な更新・修繕、地
震等の災害に強い水道システムの構築、水源水質に適切に対応するための高度浄水施設(※)
の整備などを進めていく必要がある。
一方、経営状況については、施設整備の進展等に伴い、ダム納付金や減価償却費等の費
用の増加が見込まれ、加えて施設更新に要する費用や、企業債償還金(※)等の資金需要の増
大が見込まれている。
このような経営環境の変化を踏まえ、地方公営企業としての経済性を発揮し、経営の効
率化を図るため、民間委託の推進、定員管理の適正化等による人件費縮減をはじめ、職員
の創意工夫による各種経費の節減を図ることと併せ、事業運営の在り方を絶えず見直して
いくことが不可欠となっている。
企業局では、これまで数次の経営健全化計画を策定し、民間委託や事務事業見直し等に
よる人件費の縮減、各種経費の節減を図ることで、県民負担の抑制に努めてきたところで
ある。
これらの水道事業を取り巻く環境の変化に適切に対処し、県民に安全でおいしい水を低
廉な価格で安定的に供給するためには、引き続き民間委託や定員管理適正化等の経営健全
化、効率化による経営基盤の強化を図るなど、県民負担を抑制するための施策を推進する
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
-1-
とともに、これまで蓄積してきた水道技術・ノウハウを継承しつつ、老朽化施設の更新や
災害に強い水道システム構築などの今後の技術的課題に対して強化を図る必要がある。
このような経営基盤、技術基盤の強化に対しては、地域の実情を踏まえつつ、官官、官
民連携等によるそれぞれの長所・ノウハウを活用した連携方策の推進など、最適な運営形
態を幅広い視点で検討することが必要となっている。
その中の一方策として、浄水場運転管理業務の民間委託は、一定の経費節減効果が見込
まれることや民間企業の技術・ノウハウの活用を目的に全国的に実施されていることから、
企業局においても平成22年度から平成30年度にかけて計画的に実施していくこととし
ている。
民間委託を実施することによるメリットは次のことが挙げられる。
①民間活力の導入による運転管理業務コストの低減が図られ、経営の効率化が図られる。
②老朽化施設更新業務や震災対策業務等の今後の重点業務に職員を振り向けるなど、効
率的な人員配置を行うことで、組織機能の向上や事業の長期安定化が図られるととも
に、企業局職員にとっては交替制勤務がなくなることによるワーク・ライフ・バラン
スの観点からの負担軽減が図られる。
③民間企業の管理技術・ノウハウを活用するとともに、震災発生時の災害対応業務に対
する官民連携によるマンパワーの確保など非常時対応力の向上が図られる。
なお、民間委託の課題として、一般的に職員技術力の低下が挙げられるが、企業局の場
合、将来にわたり安全かつ安定的な水道水の供給を継続していくため、浄水場運転管理に
関する技術・ノウハウを企業局内で継承する必要があるとして、平日昼間は企業局職員が
運転管理を行うこととしている。
3
浄水場民間委託の業務内容や委託形態等について
浄水場運転管理業務の民間委託の実施に当たっては、水道の安全性、安定性を確保する
ことが不可欠であることから、企業局では以下の方針により、安全性、安定性などの給水
サービス水準の確保を図ることとしている。
3-1
浄水場の業務内容及び民間委託の範囲
浄水場の業務は、水道の安全性、安定性という水道事業体の重要な責務に直結するもの
で、運転管理業務、維持管理業務、庶務業務があり、主な業務内容は表1のとおりとなっ
ている。
-2-
表1.浄水場の業務内容
区分
主な業務内容
①浄水場の運転・監視(浄水処理(※)工程、ポンプ場、調整池(※)、水運用(※)等)
②水質監視(原水、処理工程、処理水等の水質監視)
③漏水 (※) ・事故等緊急時の対応(現場確認・連絡等の初期対応、原因調査
等)
運転管
④場内巡視点検(水処理状況、設備の目視点検等)
理業務
⑤場外巡視点検(取水河川水質、ポンプ場・調整池等施設の目視点検等)
⑥薬品・燃料等の受入等の立会・検収等
⑦各種調査・立会・埋設物確認問い合わせ等への対応
⑧浄水場見学者案内
⑨排水処理施設 (※)の運転・監視
⑩施設の改良・修繕工事及び受託工事等の施工
維持管
理業務
⑪場内外の施設及び電気・機械設備の定期点検・保守(潤滑油管理等)
⑫管路点検(巡視・バルブ操作等)及び弁室排水作業
⑬漏水・事故等緊急時の対応(原因調査、バルブ操作、施工業者への指示等)
⑭用地等に係る調査、発注及び立会
庶務
業務
⑮庶務一般
⑯契約事務
⑰固定資産等の管理
浄水場運転管理業務の民間委託を実施するに当たり、企業局では他府県の先進事例調査
等を通して企業局における委託モデルの検討を実施した。
なお、委託モデルの検討に当たっては、
「⑨排水処理施設の運転・監視」は既に民間委託
化されていることから検討対象外とした。
委託の時間帯については、運転管理業務に関する技術・ノウハウを企業局に残す必要が
あるとして、平日昼間については企業局職員が行うこととし、夜間及び休日の運転管理業
務を民間委託することとしている。次に、委託する業務の範囲については、表1の⑦、⑧
に示す業務は、基本的に平日昼間の対応に限られることから、①~⑥に示す業務を委託す
ることとしている。
なお、名護浄水場においては、従来から「⑤場外巡視点検」の業務を久志浄水場直営で
実施してきていることから、今回の名護浄水場運転管理業務の委託範囲から除外している。
3-2
浄水場運転管理業務の管理体制
企業局では、浄水場運転管理業務の管理体制として、これまで企業局職員直営による 24
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
-3-
時間管理体制とし、3交替制で基本的に常時4人の職員が勤務する体制を確保している。
浄水場民間委託に当たっても、水道の安全性、安定性の確保の観点から同じ管理体制を
確保することとし、委託事業者の管理時間帯においても常時4人の技術者を配置すること
としている。
なお、名護浄水場においては、
「⑤場外巡視点検業務」が含まれていないことから、従来
から常時2人の職員が勤務する体制としており、委託事業者においても常時2人の技術者
を配置することとしている。
0時
8時30分
第1直
17時15分
第2直
24時
第3直
企業局職員が3交替で勤務
(常時4人配置)
図1-1
0時
浄水場運転管理業務の管理体制(民間委託実施前)
8時30分
17時15分
24時
0時
8時30分
第1直
第1直
第2直
第3直
委託事業者
(常時4人配置)
企業局職員
委託事業者
(常時4人配置)
(平日の管理体制)
図1-2
3-3
17時15分
第2直
24時
第3直
委託事業者
(常時4人配置)
(休日の管理体制)
浄水場運転管理業務の管理体制(民間委託実施後)
事故等緊急時の対応方法の考え方
浄水場運転管理業務の民間委託に当たって重要な課題の一つとして、漏水や事故等の緊
急時の対応対策が挙げられる。
緊急時の対応は、その時々の状況に応じた難しい判断が要求され、運転管理業務を担当
する職員のみで対応することが難しいこと、また、断減水や2次災害等が発生する危険も
あることから、基本的に企業局組織として対応することとしており、そのため、企業局職
員が主体的に行うこととしている。
委託事業者に対しては、発生場所及び現場状況等の確認や保安管理、交通誘導等の初期
対応に止め、企業局との緊急連絡体制等の整備により企業局と委託事業者が連携を図りな
がら迅速に対応できる体制を確保することとしている。
3-4
委託事業者の選定方法の考え方
水道の安定性・安全性を確保するうえで、委託事業者に対して一定の技術力を求める必
要がある。
そのため、委託事業者の選定方法については、法人及び配置技術者に対して類似業務の
-4-
経験、及び資格を有することを要件とし、応募者の資格要件を提出書類等により審査した
うえで、要件を満たす者を指名し価格入札を行う「公募型指名競争入札」方式により実施
している。
当該方式により、一定の技術力を確保したうえで価格競争による費用低減を図ることと
している。
3-5
将来にわたる安全性・安定性の確保
浄水場民間委託による経営基盤、技術基盤の強化を図りつつ、企業局の責任の下に水道
の安全性、安定性を確保するため、水質管理業務や維持管理業務については、引き続き企
業局が実施することとしている。
また、老朽化施設の修繕や更新、施設の耐震化、災害に強い水道システム構築等の今後
の重点業務に対して職員を配置し、体制の強化を図ることで、県民ニーズに適切かつ迅速
に対応しながら、計画的かつ効率的な施設整備・更新を推進し、それにより将来にわたり
県民に安全な水を低廉な価格で安定的に供給していくこととしている。
4
民間委託の検証
4-1
検証方法
民間委託の検証は、委託事業者の業務履行状況の確認や適切な業務履行の在り方に対す
る意見交換を目的とした各浄水管理事務所と委託事業者との定期的な連絡調整会議、及び
総務企画課と各浄水管理事務所との検証会議により実施している。当該報告書については、
これまで実施してきた連絡調整会議、検証会議等の内容を整理する方法で作成することと
する。
4-2
検証結果
4-2-1
名護浄水場
(1)委託事業者名及び契約期間
委託事業者名:(株)沖縄工設
契 約 期 間 :平成 22 年4月1日 ~ 平成 25 年3月 31 日
(2)業務の実施状況
名護浄水場運転管理業務の委託範囲は、表1に示した運転管理業務の①~④、⑥となっ
ており、特記仕様書で示す業務内容を下記4項目に分類し、連絡調整会議等で検証した委
託事業者の業務履行状況について整理することとする。
-5-
①運転操作監視業務
○企業局として最初に民間委託を実施した浄水場で業務習熟期間(約3週間)が十分
でなかったこともあり、委託当初は、委託事業者の名護浄水場の管理手法などへの
不慣れな部分が認められたが、企業局との連携を図りながら業務を履行しており、
順調に実施されている。
○通常時における名護浄水場及び管理対象施設の運転操作や監視及び記録等について
は、企業局で定める運転管理マニュアルや危機管理マニュアル等の各種マニュアル
に基づき適切に履行されている。
○台風来襲や漏水事故等の緊急時においても、企業局との連携のもと、各種マニュア
ル等に基づき適切な運転操作や監視がなされている。
②保守点検業務
○水道機器の正常な運転を確保するために行う名護浄水場内の巡視点検業務は、企業
局様式に基づき適切になされている。
○軽微な故障が発生した場合には、委託事業者の判断で故障修理に対応し、対応後に
は企業局へ事後報告を行うなど、設備保守が円滑に行われている。
③水質試験業務
○水質計器(※)指示値の把握や管理、運転管理上必要な水質試験(※)(濁度(※)、色度(※)、
pHなど)等の実施により、凝集剤(※)(水道用ポリ塩化アルミニウム;PAC(※))及び
消毒剤(※)(次亜塩素酸ナトリウム(※))等の薬品注入量の管理がなされるなど、随時
変化する原水(※)の状況に的確に対応し、水道水質基準(※)を満足する水道水が供給さ
れている。
○委託事業者の業務時間において、沈澱池 (※ ) での油臭の疑いが発生した事例がある
が、企業局との連携のもと、現場確認からサンプル水採取、オイル吸着マット投入、
臭気(※)確認まで適切に実施しており、緊急時においても民間委託前と同様な対応が
なされている。
○一方で、委託事業者の名護浄水場固有の管理手法等の把握不足や、薬品注入設備(※)
の不良(不具合)、名護浄水場監視制御システムの脆弱性など複合的な要因に伴う凝
集剤注入量不足により、沈澱処理水(※)やろ過水(※)の濁度が上昇した事例(*1)が
4件発生している。
*1:濁度上昇の具体的内容は「(3)名護浄水場で発生した濁度上昇事象に対する
処置状況」で記述
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
-6-
中央監視室での運転操作・監視の状況
水質試験の状況
④事務業務、その他
○運転管理日誌や点検記録簿等の資料作成、企業局との業務引継、漏水事故時の対応
等は適切になされており、企業局と委託事業者との連携が順調に図られている。
○企業局が実施する危機管理訓練に委託事業者も積極的に参加している。また、委託
事業者独自で対応マニュアルを整備するとともに、定期的な勉強会や訓練等の社内
研修を実施するなど、受託事業者自ら率先して水道の安定性・安全性の確保に努め
ている。
○また、チェックシートによる委託事業者職員の業務習熟度の把握、浄水場運転管理
業務に必要な資格や免許の取得等に励むなど、会社として技術力向上に向けた取り
組みがなされている。
粉末活性炭注入訓練(水質事故訓練)
日々の業務引継の状況
-7-
(3)名護浄水場で発生した濁度上昇事象に対する処置状況
名護浄水場民間委託後において、ろ過水等の濁度が上昇した事象が4件発生しており、
発生要因、及びその後処置した対策等について整理することとする。
事例1、2
凝集剤(PAC)注入量不足による沈澱処理水、ろ過水の濁度上昇
日時(事例1)平成 22 年4月 16 日(金)
○沈澱処理水の濁度が最大 1.0 度まで上昇し、管理目標値 0.5 度を超過し
た。
日時(事例2)
概要
平成 22 年5月 11 日(火)
○沈澱処理水の濁度が最大 2.7 度まで上昇し、管理目標値 0.5 度を超過し
た。
○なお、この2件の事象については、浄水処理工程において通常よりも高
い濁度が一時的に発生したものの、早急に適切な対応がなされ、厚生労
働省が策定した「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」(※ )
に基づくろ過水濁度の管理目標値 0.1 度以下が確保されていることか
ら、水道水の安全性には問題ないものである。
○直接の原因は、PAC 注入量不足による凝集(※)及び沈澱(※)不良である。
○その要因として、原水濁度に対する水質計器指示値と手分析値との間に
差が発生している状況で、低い値を示していた手分析値を用いて PAC
の注入量を設定したため、PAC 注入量に不足が生じたものである。
○名護浄水場の凝集剤(PAC)注入管理手法として、
「名護浄水場 PAC 最適注
入率グラフ(※)」に基づき、通常は水質計器の原水濁度指示値に対応す
る PAC 注入量を設定し、水質計器指示値と手分析値との間に差が発生じ
発生要因
た場合には、どちらか高い値に対応する PAC 注入量を設定することとし
ている。
○しかしながら、委託事業者においては、委託当初から手分析値を用いて
PAC 注入量を設定するものと認識していた。
○なお、この委託事業者による濁度データ選択の誤解については、業務習
熟期間が十分ではなかったため、名護浄水場固有の凝集剤注入管理手法
の把握が不足していたものである。
処置した
対策
○委託事業者に対して、PAC 注入量の設定は、原水濁度に対する水質計器
指示値と手分析値を比較し、高い値を用いるよう周知徹底を図った。
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
-8-
事例3
薬品(PAC)注入設備の不良(不具合)に伴う凝集剤(PAC)注入量不足による
沈澱処理水、ろ過水の濁度上昇
日時:平成 22 年7月 29 日(木)
概要
○ろ過水の濁度が最大 0.09 度まで上昇し、管理目標値 0.1 度に接近した。
○なお、この事象については、浄水処理工程において通常よりも高い濁度
が一時的に発生したものの、早急に適切な対応がなされ、ろ過水濁度の
管理目標値 0.1 度以下が確保されていることから、水道水の安全性には
問題ないものである。
○直接の原因は、PAC 注入量不足による凝集及び沈澱の不良である。
○「名護浄水場 PAC 最適注入率グラフ」に基づき PAC の注入量は適切に設
定していたが、PAC 注入設備に不具合が発生し、設定値どおりに PAC が
発生要因
注入されていなかったことが要因である。
○名護浄水場の中央監視室において、実際の PAC 注入量が確認できないこ
とから、PAC 注入設備不具合の発見が遅れ、その結果として PAC の注入
量不足が継続したものである。
○中央監視室では実際の PAC 注入量が確認できないこと、また、沈澱処理
処置した
水濁度の上昇など、PAC 注入量不足の疑いが生じた際には、まず現場に
対策
て PAC 注入量の実測を行い、設定値どおりに PAC が注入されているかど
うかの確認を行うこと、について周知徹底を図った。
事例4
凝集剤(PAC)注入量不足による沈澱処理水、ろ過水の濁度上昇
日時:平成 23 年5月7日(土)~ 8日(日)
○ろ過水濁度が最大 0.15 度まで上昇し、管理目標値 0.1 度を超過した。
○この事象においては、ろ過水濁度の管理目標値 0.1 度を超過したもの
概要
の、企業局と委託事業者との連携により企業局クリプトスポリジウム等
対策マニュアル(※)に基づく対応を実施し、ろ過水濁度が 0.1 度以下に
低下したことを確認するとともに、採水・保存していたサンプル水を用
いてクリプトスポリジウム(※)の水質検査を行い不検出であることを確
認することで、水道水の安全性が確保されていることを確認している。
○直接の原因は、PAC 注入量不足による凝集及び沈澱の不良である。
発生要因
○委託事業者は、原水濁度の変動に合わせて「名護浄水場 PAC 最適注入率
グラフ」に基づき PAC 注入量の調整が行われており、また、沈澱処理水
濁度の上昇を確認した際には現場での PAC 注入量の実測を行い、設定値
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
-9-
どおりに注入されていることを確認している。
○この事象の要因としては、水源地において長く渇水が続いた後に降雨が
あったことにより、通常とは様相の異なる水質を呈する原水が流入し、
発生要因
「名護浄水場 PAC 最適注入率グラフ」が適用できない原水水質であった
中、凝集不良確認からジャーテスト (※)実施まで時間を要したこと、ま
た、未経験の原水水質に対してジャーテストによる的確な判断に時間を
要したことにより、最適な PAC 注入量の把握が遅れたことが挙げられ
る。
(委託事業者への対策)
○高濁度水の流入等、通常とは異なる原水が流入した場合には、ジャーテ
ストで PAC の最適注入量を判定すること、及び現場採水による浄水処理
工程の水質確認を行うことについて周知徹底を図った。
○委託事業者においては、「名護浄水場 PAC 最適注入率グラフ」の徹底を
重要としていたことから、当該グラフを上回る量の PAC 注入を行うこと
に対して躊躇する要因になっていた。そのため、高濁度原水の流入等が
認められた場合は、ジャーテストによる最適な PAC 注入量を判定するま
では PAC を過剰注入するということについて、企業局と委託事業者で確
処置した
対策
認した。
○また、沈澱処理水濁度上昇の未然防止及び拡大防止の対処方法として、
沈澱処理水を着水井(※)に返送して再処理することが名護浄水場では可
能となっていることから、委託事業者による再処理方法の手順書の作
成、及び現地訓練を実施した。
(企業局の対策)
○名護浄水場沈澱池(※)は処理方法の異なる2系統で整備されているが、
沈澱処理水の水質管理のための水質計器(濁度計)が1台のみとなって
いたことから、安定した水質管理を行うため応急的に濁度計を追加して
設置し、1系沈澱処理水、2系沈澱処理水を同時に監視できるように監
視制御システムを増強した。
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
- 10 -
沈澱処理水の再処理実施状況
(打合せ状況)
4-2-2
沈澱処理水の再処理実施状況
(現場対応状況)
石川浄水場
(1)委託事業者名及び契約期間
委託事業者名:(株)開邦工業
契 約 期 間 :平成 23 年8月 17 日 ~ 平成 26 年3月 31 日
※平成 23 年9月1日 ~ 平成 23 年 10 月 31 日は業務習熟期間
(2)業務の実施状況
石川浄水場運転管理業務の委託範囲は、表1に示した運転管理業務の①~⑥となってお
り、特記仕様書で示す業務内容を下記4項目に分類し、連絡調整会議等で検証した委託事
業者の業務履行状況について整理することとする。
①運転操作監視業務
○名護浄水場民間委託の検証を踏まえ、委託業務を開始する前に2ヶ月間の業務習熟
訓練を実施したことなどから、名護浄水場委託時と比べて委託当初の不慣れな部分
が少なく、概ね順調に実施されている。
○通常時における石川浄水場及び管理対象施設の運転操作や監視及び記録について
は、企業局で定める運転管理マニュアルや危機管理マニュアル等の各種マニュアル
に基づき適切に履行されている。
○企業局全体の水運用を管理する水管理センター(※)との水運用等の調整や、水運用変
更に伴う現場でのバルブ操作等についても適切になされている。
○台風来襲に伴う停電対応や漏水事故対応等の緊急時対応に対しては、各種マニュア
ル等に基づき概ね適切に運転操作監視がなされている。
○一方で、読谷調整池での濁度、色度(※)上昇への対応が遅れた事例が1件(*2)、
台風通過直後の対応における具志川増圧ポンプ場遠隔操作の際の誤操作に伴う
送水(※)濁度上昇事例(*2)が1件発生している。
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
- 11 -
*2:濁度上昇の具体的内容は「(3)石川浄水場で発生した濁度上昇事象に対する
処置状況」で記述
②保守点検業務
○水道機器の正常な運転の確保、及び水道施設の安全性確保などのために行う石川浄
水場内及び場外管理施設の巡視点検業務は、企業局様式に基づき適切になされてい
る。
中央監視室での運転操作・監視の状況
水道機器の保守点検の状況
③水質試験業務
○水質計器指示値の把握や管理、運転管理上必要な水質試験(濁度、色度、pHなど)
等の実施により、凝集剤(水道用ポリ塩化アルミニウム)及び消毒剤(次亜塩素酸
ナトリウム)の注入量の管理が適切になされている。
○なお、石川浄水場については、主に久志浄水場の処理水(沈澱処理水)を原水とし
て取水しており原水濁度が安定していることから、PAC 注入量の設定は企業局が指
定する値で一定としているが、何らかの要因で原水濁度が上昇する事態を想定して、
委託事業者において一定の頻度でジャーテストを実施している。
④事務業務、その他
○運転管理日誌や点検記録簿等の資料作成、企業局との業務引継等は適切になされて
おり、企業局と委託事業者との連携が順調に図られている。
○企業局が実施する危機管理訓練に積極的に参加するなど、委託事業者においても水
道用水の安定性・安全性の確保、及び技術力向上に努めている。
- 12 -
水質試験の状況
日々の業務引継の状況
(3)石川浄水場で発生した濁度上昇事象に対する処置状況
石川浄水場民間委託後において、送水濁度・色度上昇に対する警報を見落とした事象が
1件、送水濁度が上昇した事象が1件発生しており、発生要因、及びその後処置した対策
等について整理することとする。
事例1
警報の見落としによる読谷調整池の濁度・色度の上昇への対応の遅れ
日時:平成 24 年9月 10 日(月)
○読谷調整池濁度・色度上昇に対する警報の見落とし
概要
※読谷調整池の濁度が最大 0.19 度、色度が最大 1.17 度まで上昇した。
○なお、この事象については、管路内付着物の流出等により送水濁度が通
常よりも高い値となったものの、石川浄水場のろ過水濁度が常に 0.1
度以下であったことから、水道水の安全性には問題ないものである。
○企業局において、2系送水管(読谷調整池向け)の漏水修理に先立ち、
平成 24 年 9 月 10 日(月)の昼間(9:30~17:00)に1系送水管(南部
地域向け)からの読谷調整池への送水を試験的に実施した際、水の流れ
る速さが通常時の約2倍に上昇したことに伴い、管路内付着物が剥離し
たことにより読谷調整池の濁度、色度が上昇したものである。
発生要因
○当日の 18:25 に濁度上昇(0.1 度超過)の警報が1度、19:36 に色度上
昇(1.0 度超過)の警報が1度発令されたが、警報発令に気付かずに、
現場確認等のその後の対応に約9時間の遅れが生じた。
○なお、警報発令後の対応に遅れが生じたものの、警報確認後は、現場確
認や、濁度・色度の測定実施等により状況把握に努めるなど、適切な対
応がなされている。
- 13 -
処置した
対策
○委託事業者に対して、警報が発令した際には、警報停止時に必ず声出し
確認すること、複数の職員でその内容を確認することについて周知徹底
した。
事例2
台風通過後の水需要増大に対応するため、通常時は使用していない具志川
増圧ポンプ場を起動する際、バルブ操作の誤操作に伴い具志川増圧ポンプ
井(※)への水道水の流入が膨大となったため、ポンプ井内の堆積物が巻き
上がり、具志川調整池の濁度が上昇した。
日時:平成 24 年9月 16 日(日)
概要
○具志川調整池の濁度が最大 2.8 度まで上昇し、水道水質基準値2度を超
過した。
○なお、具志川調整池濁度の基準値超過については、石川浄水場のろ過水
濁度が常に 0.1 度以下であったため、水道水の安全性には問題ないもの
である。また、給水先のうるま市と情報共有を図りながら給水末端の状
況を確認した結果、基準値超過や異常等の発生は認められなかった。
○通常、流量調整弁の操作時には、弁の開度(開き具合)を設定しながら
開閉操作を行っているが、具志川増圧ポンプ場を起動する際の誤操作に
よりポンプ井流入調整弁が全開(100%開)となり、通常の最大流量約
1,700m3/h に対して、一時的に 3,000m3/h を超える流量となったこと、
また、当時ポンプ井水位が低かったことから、ポンプ井内の堆積物が巻
き上がり、井内が濁ったものと考えられる。
○委託事業者においては、一時的な流入量増大に伴いポンプ井内の濁度上
昇の可能性を認識したものの、急激な水需要増大に対する送水量の確保
を優先し、ポンプ井の濁度を確認しないまま具志川増圧ポンプ場のポン
発生要因
プを起動したため、濁った水が具志川調整池に送水されたものである。
○一方、具志川増圧ポンプ場が通常時は使用していない施設であり、現在
の石川浄水場の全面供用開始以降、委託事業者がポンプ井流入調整弁の
開閉操作を行ったのが今回初めてであることなど、委託事業者の経験・
認識が不足する状況となっていたことも課題と考えられる。
○また、委託事業者も誤操作に直ぐに気付いたが、弁操作を途中で停止で
きない仕組みであったこと、誤操作を防止するような仕組みが無かった
ことなど、監視制御システムにおいてインターロック(※)等のヒューマ
ンエラー対策が不足していることが確認された。
○さらに、企業局側の具志川増圧ポンプ場の維持管理の在り方や、台風時
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
- 14 -
の事前対応として次の事が不足していたことも発生要因として考えら
れる。
発生要因
1)ポンプ井の点検・清掃による堆積物の除去
2)台風来襲に伴う水需要増大により具志川増圧ポンプ場を使用する可
能性が見込まれるなか、事前にポンプ井水位を上昇させておくこと
(委託事業者への対策)
○水質管理、台風来襲時の水運用、ポンプ井流入調整弁操作について、改
めて教育訓練を実施した。
処置した
(企業局の対策)
対策
○ポンプ井の定期的な清掃等の実施により堆積物を除去するよう努める。
○ポンプ井流入調整弁の誤操作を防止する仕組み等のヒューマンエラー
対策を設け、監視制御システムを改善した。
委託事業者への再教育訓練の状況
4-2-3
浄水場民間委託に伴う経費節減効果
企業局では、より一層の経営健全化、効率化による経営基盤の強化を図るための取り組
みの一つとして浄水場民間委託を推進しているところであり、名護浄水場及び石川浄水場
の民間委託の結果、表2に示すとおり、名護浄水場で年間約 1,600 万円、石川浄水場で年
間約 2,700 万円、合計で年間約 4,300 万円の経費節減に繋がっている。
表2
浄水場民間委託に伴う経費節減効果額
No
浄水場名
削減
定員数
人件費削減額
(円/年)①
委託費用
(円/年)②
経費節減額
(円/年)①-②
1
名護浄水場
7人
53,591,000
37,104,000
16,487,000
2
石川浄水場
14 人
107,181,000
80,117,000
27,064,000
合
21 人
160,772,000
117,221,000
43,551,000
計
- 15 -
5
浄水場民間委託に関する考察
5-1
民間委託業務全体について
①平成 22 年4月から名護浄水場、平成 23 年 11 月から石川浄水場の民間委託が実施され、
定期的な連絡調整会議の開催等により委託事業者の業務履行状況を検証してきた結果、
通常時の運転操作監視や巡視点検業務等は概ね順調に実施されており、台風対応、漏
水対応等の緊急時業務についても企業局と連携を図りながら概ね適切な対応がなされ
ていると判断できる。また、経費節減の効果についても、委託実施前に見込んだとお
り両浄水場で年間約 4,300 万円の経費節減に繋がっている。
②一方で、手続上の要因(業務習熟期間の不足)、水道システム上の要因(浄水場監視
制御の脆弱性など)、経験的要因(通常とは異なる事象発生時の対応力など)などが
複合的に影響したことによる濁度上昇の事象が発生するなどの課題も認められた。
③手続上の要因としては、委託事業者においては技術的基礎を有するものの、浄水場毎
に施設の特性や運転管理手順、維持管理方針が異なってくることから、委託事業者が
それらを適切に把握するために必要な業務習熟期間を設ける必要がある。しかしなが
ら、検証の結果、最初に民間委託した名護浄水場委託時においては実質の習熟期間が
約3週間であったことから、名護浄水場の施設特性や運転管理手順等の把握には十分
でなかったと考えられた。
④このような名護浄水場民間委託の検証結果を踏まえ、浄水場民間委託を推進するにあ
たり、浄水場毎に整備されている運転管理手順、緊急時対応方法等について企業局か
ら委託事業者への確実な移転が必要であり、そのために必要な習熟訓練期間は確保す
るという方針を明確にし、習熟訓練の充実が図られている。
⑤また、水道システム上の要因や経験的要因などが複合的に影響した課題に対しては、
企業局と委託事業者と双方で課題解決に取り組んでいく必要があることから、引き続
き連絡調整会議等を通した検証や意見交換を行いながら連携を強化していく必要が
ある。
5-2
名護浄水場民間委託について
①企業局として最初に民間委託した浄水場であったが、企業局と委託事業者の双方の連
携を図りながら通常時の運転操作監視業務や台風等緊急時対応について概ね適切に業
務が履行されているなかで、業務習熟期間が十分ではなかったことに伴う委託事業者
の不慣れにより、濁度上昇の一時的な事象が4件発生している。
②4件の濁度上昇事象のうち、事例1、事例2については「最適 PAC 注入量を設定する
際に用いる濁度データ選択の誤解によるもの」、事例3については「名護浄水場中央
監視室では実際の PAC 注入量が表示されないため、状況に応じて現場実測が必要」、
といった名護浄水場固有の特性であることから、習熟訓練を充実させることで防止で
きるものと思われる。
- 16 -
③事例4については、通常とは異なる原水水質への対応に不慣れな状況の中、企業局が
策定した「名護浄水場 PAC 最適注入率グラフ」の徹底を重要としていたため、凝集不
良の確認からジャーテスト実施というアクションまでに時間を要したことが要因の一
つである。このことから、高濁度原水等の通常とは異なる原水流入が認められた場合、
ジャーテストによる最適な PAC 注入量を判定するまでの間は PAC を過剰に注入するこ
とについて企業局及び委託事業者の双方で確認することで、委託事業者においても原
水水質の変動に対して適切に対応できるものと考えられる。
④また、沈澱処理水濁度上昇の事態が発生した場合の対処方法として、沈澱処理水を着
水井に返送して再処理することが名護浄水場では可能となっており、この再処理方法
についても、事例4の事象発生後に実地訓練等を実施したところであるが、習熟訓練
期間が十分に確保できていれば、習熟訓練期間において技術移転が図られていたと考
えられる。
⑤このように名護浄水場民間委託後に発生した濁度上昇事象4件については、名護浄水
場固有の管理手法等を適切に把握することで防ぐことが可能であると考えられる。
5-3
石川浄水場民間委託について
①石川浄水場民間委託にあたっては、名護浄水場の検証結果を踏まえ委託開始前の2ヶ
月間を業務習熟期間と位置付け、企業局が示す習熟訓練計画に沿って石川浄水場運転
管理に必要な施設管理手法、緊急時対応等について委託事業者への移転を図っている。
その結果、名護浄水場民間委託時に比べて委託当初の不慣れな部分が少なく、概ね順
調に業務が遂行されており、対象施設の運転操作、監視、記録や、企業局全体の水運
用を管理する水管理センターとの水運用の調整、及び水運用変更に伴う現場でのバル
ブ操作等の通常時業務が適切になされ、また、台風来襲や漏水事故対応等の緊急時対
応についても企業局と連携を図りながら概ね適切な対応がなされている。
②その一方で、警報見落としによる読谷調整池濁度上昇に対する対応の遅れや、具志川
調整池の濁度が上昇した事象が発生している。
③そのうち、警報見落としによる読谷調整池濁度上昇に対する対応の遅れについては、
濁度上昇要因は委託事業者によるものではないものの、警報発令への適切な対応とし
て、複数職員での警報確認などダブルチェック機能を構築するなどの対策を講じてい
るところである。
④具志川調整池濁度の上昇については、直接的な要因は、ポンプ井流量調整弁の誤操作
によるものであるが、いくつかの要因が複合的に重なって発生したものと考えられる。
まず、委託事業者において、当該流量調整弁を操作することがほとんど無く、当該施
設に対する経験、認識が不足している状態であったことから、委託事業者が定期的に
操作することが出来るような訓練方策等を企業局として検討する必要がある。
⑤また、人間の注意力には限界があるため、経験豊富なベテラン技術者であってもヒュ
- 17 -
ーマンエラーを起こすことがあり得ることから、監視制御システムにおけるヒューマ
ンエラー対策としてインターロックやエラープルーフ (※ )を設けるなどの配慮が求め
られるが、当該流量調整弁の制御機能にはヒューマンエラー対策が不足していたこと
も影響している。実際、委託事業者においては、誤操作に直ぐに気付いたものの、監
視制御システム上、途中で操作停止が出来なかったことから流量調整弁が全開まで達
した後に、徐々に開度を絞りながら最終的に閉弁する措置がとられている。
⑥さらに、ポンプ井の堆積物の定期的な除去や台風来襲に備えてのポンプ井水位の調整
など、企業局における日ごろの維持管理や危機管理対応が不足していた部分も認めら
れ、水道システム全体としての信頼性向上に対する今後の課題と考えている。
⑦他方、委託事業者に対しては、一時的な流入量増大に伴いポンプ井内の濁度上昇の可
能性を認識したにも関わらず具志川調整池に送水したことについては、当時、具志川
調整池水位が非常に低下しており、そのまま低下し続ければ給水対象エリアの断水に
繋がるという焦りがあったとは考えられるが、その中でも的確な判断・対応がなされ
るよう委託事業者に対して技術力向上を求めるとともに、企業局との連携をさらに強
化する必要がある。
6
浄水場民間委託の円滑な実施に向けて
6-1
業務習熟訓練の充実
浄水場民間委託の実施にあたっては、企業
局の管理手法等を委託事業者へ確実に移転す
る必要があり、石川浄水場委託時から2ヶ月
間の習熟訓練期間を確保したところである。
今後も、より効率的かつ的確な技術移転が
図られるよう、委託事業者と意見交換を図り
ながら業務習熟訓練の充実を図っていくこと
とする。
6-2
業務習熟訓練の状況(石川浄水場)
官民共同による非常時を想定した訓練の充実
浄水場の民間委託において、通常時の運転
管理業務だけでなく、地震等の非常時対応も
重要な課題の一つである。非常時の対応は、
その時々の状況に応じた難しい判断が要求さ
れ、迅速かつ適切な判断、行動を行うために
は、常日頃の訓練が重要である。
これまでも委託事業者と合同で非常時を想
定した訓練を実施しているところであり、今
自家発電設備運転訓練(停電時対応訓練)
注)
:(※)印のある用語は、別添資料1「用語の説明」で説明している。
- 18 -
後も、引き続き、委託事業者と連携しながら非常時対応能力の向上を図っていくこととす
る。
6-3
官民連携を基本とした双方の技術基盤の確保・強化
水道事業経営を健全に持続させていくためには、より一層の経営効率化による経営基盤
の強化と合わせて、技術基盤の確保・強化を図ることが求められており、企業局ではその
一方策として、浄水場民間委託を推進しているところである。
技術基盤の確保・強化に対しても、民間活力を積極的に活用するなどの官民連携の推進
が重要であり、今後、浄水場民間委託を推進していくなかで、企業局が有する水道技術の
継承、及び委託事業者への移転だけでなく、委託事業者の管理技術・ノウハウの活用など、
官民双方において技術基盤の確保・強化に向けた取り組みを推進する必要がある。また、
その結果、平常時のみならず地震等の災害発生時においても、企業局と民間企業との連携
による対応が可能となることから、水道の安全性・安定性の確保に大きく寄与するものと
考えている。
水道を取り巻く環境が厳しさを増す中、民間活力の活用による経営基盤、技術基盤の強
化は必要不可欠であることから、委託事業者との連携を図りながら技術基盤の確保・強化
に向けた取り組みを推進していくこととする。
7
まとめ
企業局では、これまで多目的ダム等の水源開発や浄水場等の施設整備を進め、水道水の
安定供給に努めてきたところであり、今後は、老朽化施設の更新や耐震対策等の災害に強
い水道システムの構築を進めていく必要がある。
その一方で、経営状況については、施設整備の進展に伴う減価償却費等の費用の増加や、
施設更新に要する費用等の資金需要の増大が見込まれており、事業運営の在り方を絶えず
見直していくことが不可欠となっている。
今後の厳しい事業環境に適切に対処し、県民に安全でおいしい水を低廉な価格で安定的
に供給するため、より一層の経営効率化による経営基盤の強化を図るとともに、運転管理
に関する技術やノウハウなど、これまで蓄積してきた水道技術を継承しつつ、老朽化施設
の更新や災害に強い水道システム構築などの今後の重点業務の強化、民間企業の技術・ノ
ウハウの活用等、官民連携による技術基盤や非常時対応能力の確保・強化を図ることを目
的に、浄水場運転管理業務の夜間・休日の民間委託を推進しているところである。また、
浄水場民間委託に当たっては、民間委託実施前の他府県先進事例の調査や、委託後は委託
事業者の業務履行状況の確認等の検証を行うなど、水道の安全性・安定性の確保に向けた
取り組みを進めてきたところである。
その結果、浄水場民間委託については、水道の安全性・安定性を確保しつつ、一定の経
費節減効果が認められるなどメリットが大きく、経営効率化による経営基盤の強化への有
- 19 -
効な手段であり、また、老朽化施設更新業務や震災対策業務等の今後の重点業務への職員
配置や官民連携による非常時対応能力の向上など、技術基盤の強化に繋がるものと判断で
きる。
以上のことから、引き続き浄水場民間委託を推進するとともに、官民連携等によるそれ
ぞれの長所・ノウハウの活用により経営基盤、技術基盤の強化を図りながら、将来に渡り
県民に信頼される公営水道を担っていくこととする。
- 20 -
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