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PDF3 - CIAJ 一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会

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PDF3 - CIAJ 一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
コード No.
①
1−5
MM 応用技術
遠隔リハビリ(在宅福祉)
プロフィール
対象機関名
板橋区立おとしより保健福祉センター/板橋区高齢福祉部
所在地
東京都板橋区前野町 4-16-1/TEL:03-5970-1111
代表者名
今福
施設運営
施設規模
施設概要
東京都板橋区
施設人員
悠(所長)
敷地面積:2,102m2、建物延床面積:4,130m2
○
1F:おとしより総合相談窓口、機能訓練室、福祉機器展示ホール、情報センター
○
2F:高齢者在宅サービスセンター、精神薄弱者通所授産施設
○
3F:痴呆デイホーム、ボランティアセンター、多目的ホール
○
B1:入浴サービス用浴室、配食サービス用厨房
常勤職員 36 名
・ケースワーカー 5名
非常勤
・理学療法士
5名
・保健婦
10 名
・作業療法士
3名
・事務職
9名
・介護福祉士
4名
1名(週3日の医科専門員)
業務ごとの専門スタッフとして、医師 10 名、看護婦3名、言語療法士1名、指導員1名
に診察や指導を委嘱し、37 名の訪問看護婦及び 60 名の介護型登録ヘルパー(ふれあい
ヘルパー)に業務を委託している。
提供サービ
ス
○
福祉サービス・・・配食サービス、入浴サービス、緊急通報サービス、ホームヘルプ・
サービス、ショートステイサービス、デイサービス、福祉機器、
在宅改造等
○
保健サービス・・・老人保健施設、通所機能訓練、訪問指導、訪問看護指導
○
医療サービス・・・救急医療、専門医、入院医療、通院医療、往診、病院訪問看護、
訪問看護ステーション等
②
MM 応用概要
背景と目的
○
東京都板橋区は、全ての高齢者が地域の中で活き活きと安心して暮らせることを目
指して、早くから老人福祉施策の推進に注力してきた自治体の一つである。1991 年
4月の組織改正により、高齢者層に対する福祉及び保健衛生施策を総合的に実施す
る部として「高齢福祉部」を新設し、同部の下に在宅の保健・福祉・医療サービス
の統合・集約化を具現化する施設として「おとしより保健福祉センター」が設置さ
れた。「おとしより保健福祉センター」は区役所から約3km 離れた地区に新たに建
設した地下1階地上3階の建物で、「おとセン」という略称で地域に定着し、老人
の保健・医療・福祉の連携を先進的に具体化した事業をいくつも展開している。
○
こうした保健・医療・福祉の在宅ケア支援を先進的に具現化していた東京都板橋区
では、1994 年4月から 1996 年3月まで、「テレビ電話共同研究事業」として、お
としより保健福祉センターが中心となって「動画カラーテレビの在宅ケア支援シス
テムの効果的利用に関する研究」を行った。同研究事業は東京医科歯科大学医学部
保健衛生学科、同医学部公衆衛生学教室との共同事業であった。この事業は、実際
31
にセンターで在宅ケアを受けている高齢者の家庭に動画カラーテレビ電話を設置
し、その効果的な活用の仕方を、実際の地域ケアの現場での検証を基に明かにしよ
うというものである。
○
既に東京医科歯科大学に於いては、1990 年から行われた富士通研究所との共同研究
により、テレビ電話の利用は在宅療養の質を高め、社会的自立や ADL 向上など種々
の支援効果のあることを明らかにしていた。
実施期間
○
1994 年 4 月∼1996 年 3 月
使用対象者
○
在宅ケア高齢者
30 名(男性 11 名、女性 19 名)/平均年齢 70.6 歳
/高齢者宅2家庭に3ケ月単位で設置・計 14 家庭
○
在宅ケア患者疾患別内訳
脳血管疾患 13 人、高血圧症3人、パーキソン氏病2人、
進行性筋ジストロフィー症2人、変形性関節症2人、脳性麻痺1人、
老人性痴呆症1人、大腿骨頸部骨折後後遺症1人、スモン病1人、
脊骸瘍後遺症1人、開腹手術後後遺症1人、陳旧性心筋梗塞1人、心房細動1人
使用内容
○
本共同研究事業では、動画カラーTV 電話を含む画像処理通信ユニットを用いて対象
者の自宅と地域ケアに携わる複数の専門機能(リハビリテーション医、地域保健婦、
在宅介護支援センターなど)と通信ネットワークを結んだ。そして医療相談、機能
訓練、言語訓練、日常生活動作や介護方法の指導、日常生活動作訓練、社会参加へ
のアドバイス、栄養指導、在宅ケアスタッフやボランティアに対する助言指導や情
報交換、社会資源の利用方法の指導等の在宅ケアの支援を行い、総合的な在宅ケア
支援システムの効果について事例検討のもとに評価を行う事により、実際の現場に
おける動画カラーTV 電話の在宅ケア支援システムの効果的利用に関する研究を行っ
た。
○
動画カラーTV 電話は、東京医科歯科大学医学部公衆衛生教室及び同保健衛生学科、
そして「おとしより保健福祉センター」に設置し、これらの施設間を INS64 で結ん
だ。在宅高齢者2家庭ごとに3ケ月単位で設置し、実験開始前・中間・終了時に、
各項目についての効果の評価を行った。
○
評価した各項目は、身体機能、運動機能、精神機能、コミュニケーション自立、社
会的認知自立、日常生活動作(activities of daily living : ADL)自立、活動能
力、主観的健康観、日常生活内容、家庭の健康、介護負担度、医療サービスへの近
接 性 、 地 域 ケ ア 支 援 ネ ッ ト ワ ー ク の 連 携 な ど で あ っ た 。 ま た 、 Functional
Independence Measure (FIM)、Katz ADL 自立指標、老研式活動能力指標、PGC モラ
ールスケール、および生活満足度に関する Visual Analogue Scale といった評価尺
度を使った統計学的な検討も行われた。評価結果ならびに通信時の記録は、電子フ
ァイリングシステムを活用して一括して行った。過去の評価結果との比較、ならび
に過去の画像ファイルとの比較を常時行い、健康状態ならびに種々の環境要因の変
化を把握した。
使用頻度
○
在宅高齢者2家庭ごとに3ケ月単位で設置し、各設置家庭では週2∼3回、1回当
り 15 分程度で使用。
32
使用ハード
ウェア概要
○
本共同研究事業で使用した動画カラーTV 電話システムは以下の通りである。通信イ
ンフラは INS64。
○
機種名
使用期間
動画カラーTV 電話/
1994 年 4 月
富士通「IS100」
∼同年 8 月
動画カラーTV 電話/
1994 年 4 月
富士通「VS700」
∼同年 8 月
フレームレート
分解能
7秒/秒
96×60画素
15秒/秒
352×288画素
モード
動画像/
静止画像
その他、センターシステムとして電子ファイリング装置を設置し、ADL 及び QOL の
諸指標を記録する在宅ケア用電子カルテとして、及び TV 電話画面を記録するカラー
静止画ファイルとして使用した。家庭システムとしては、上記動画カラーTV 電話シ
ステムのほか、血圧計(RS232C インターフェース)を設置した。
○
使用ハードウェア機器はメーカー(富士通)が負担し、設置料(NTT への INS64 回
線工事・設置費用)及び使用料(電話代)は板橋区で負担した。電話代は1家庭で
平均5千円程度であった。
③
MM 応用における
課題点・要望
ハードウェア
○
本共同研究事業の初期(1994 年4月∼同年8月)で使用した機種(IS100)は、画
面が小さく、画像が不鮮明であり、操作ボタンが多過ぎ難しく、受話器をとって通
話しなければならず(ハンズフリーではない)、不評であった。特に、湿疹や化膿
瘡の確認はもちろんのこと、顔色や食事の内容確認も困難であった。そのため、次
期機種(VS700/1994 年8月∼)は、ハンズフリー通話型にして、画面も 14 インチ
程度に大きくし、フレームレートも旧機種の7枚/秒から、15 枚/秒に改善した。
○
TV 電話がハンズフリーで使用できることで、脳血管障害後遺症などによる言語障
害者が ST(言語療法士)と言語リハビリ訓練を行うケースでは、片手が使えなく
てもメモを取る訓練が可能であった。言語訓練では、絵や文字の提示、ST の口の
動きに合わせた訓練の実施を行うが、その結果のフィードバックが訪問や施設通
所を行わなくても対面の訓練に近い形でできることが有用であった。しかし、絵
や文字カードの提示や本人の書いた文字の確認は、あらかじめ設定した大きさに
しないと、14 インチの画面では判読困難という問題があった。また言語訓練とい
う性格上、より精度の高い画質や音声が必要であり、実験機種では口腔内の様子
や口唇、舌、下顎等の動きの正確な把握ができないため、訓練には限界があった。
またマイクは現在の型では、周囲の雑音を拾ってしまうので、ヘッドホン型マイ
クで1対1のやり取りができるほうが集中訓練ができると考えられる。
33
○
改良機種であっても、操作ユニットのボタン配置が一人暮らしの高齢者にとっては
難しく、今後日常の生活道具と同様により簡便化されることで、本人だけでなくホ
ームヘルパーなどの関係機関の支援者が戸惑わずに利用できるインターフェースが
望まれる。またフレームレート 15 枚/秒でも、NTSC 並みの完全動画(30 枚/秒)
に比べるとコマ送りになってしまい、音声と画面のズレがあり煩わしく、少しの沈
黙が話の流れを止めてしまうなどの点が課題であった。
○
TV 電話のカメラはどうしてもディスプレイと違う位置(トップかサイド)にあるた
め、視線を合わせて話ができないなど、些細ではあるが、チームワークを図る上で
考慮が必要である。
○
寝たきりの高齢者に対して、社会的支流を促進したり、移動動作、食事動作の指導
を行ったり、交信時間を利用して座位時間を延長させるためには、TV 電話は有効で
あるが、画面を見ながらの移動動作の指導は、画面が小さいため全身が見えず困難
であり、設置場所の考慮が必要である。また褥瘡の部位の確認が難しいため、カメ
ラが回転しリモートコントロールできることが望ましい。その場合は交信の場所も
活用内容によってはプライバシーの保護の面で留意が必要である。
○
TV 電話と同時に血圧、脈拍、心電図、尿所見等のバイタルサインが簡便に測定でき
れば、容態の変化に対し迅速な対応が可能となると思われる。
コスト
○
動画カラーTV 電話等のハード機器はメーカー(富士通)が負担し、設置料(NTT へ
の INS64 回線工事・設置費用)及び電話代(1家庭で月平均5千円程度)は板橋区
で負担した。本共同研究事業は 1996 年3月に終了し、ハード機器は家庭から全量引
き上げたが、区独自で同システムで在宅ケア支援を続行しようとすると、カラーTV
電話システム(VS700)が1台約 160 万円と高価なため、数十台単位で購入すると数
千万単位になるため断念した。区から補助を受けながら使用者本人がハード機器費
用を負担するとしても、実用化レベルの価格はハンズフリータイプで1システム 10
∼20 万円が望ましい。導入実験当初、操作が面倒で家の中が見られると消極的だっ
た利用者も、一旦導入して利便性を認めると、引き上げ時に買い取りたいというケ
ースもあった。
制度・習慣・
○
一人暮らしの要援護高齢者宅に TV 電話を導入したケースでは、在宅ケアに訪れてい
るホームヘルパーとケアセンターとの連絡が密になり、援助内容の調整が容易にな
法規制
った。具体的には高齢者側の手の位置、足の角度、顔の向きなど細かく確認できる
ため、救助方法の指導・引き継ぎが具体的にできた。また、顔を合わせて話すので、
用件が伝わりやすく、また、他機関の支援者であっても安心感を持って連絡できた。
また、ハンズフリーの電話として利用できることから別居の家族との会話が増え、
ヘルパーの役割について家族に認識が深まった。
○
一人暮らしの要援護高齢者が、テレビ電話を相談窓口の一手段として利用するなら
ば、支援者側は専任制をとることが望ましい。専任者がいることで利用者や他機関
の支援者が安心感を増し、かつ一貫性と責任を伴った対応がとれると思われる。TV
34
電話システムにゲームやカラオケなどのレクリエーションメニューがあれば、体力
的問題でデイサービスを利用できない人への1つのアプローチになり、介護型ヘル
パーの援助内容として活用できるのではないかと思われる。
○
在宅リハビリ療養者で、物理的要因により外出できない人達に対し、時間を決めて
ベッド上でそれぞれ行うことにより、生活のリズムができ、家族以外の人との交流
も可能となった。また、福祉機器や自助具等、自宅での利用状況について、訪問が
できなくとも確認が可能であった。一方、退院後のフォローを病院から行う場合、
院内教育で得られた自己管理の状況や、自己訓練の様子を、テレビ電話を通して在
宅支援者と共に確認しながらの相談も可能となった。
○
アルツハイマー型痴呆症で寝たきりの高齢者を息子とヘルパーが介護をしているケ
ースでは、本人は意思表現なく介護者にとっても自分の介護が適切であるか否かを
迷うことがある。この場合に援助者との TV 電話による交信で介護方法の観察と指導
を受け、その結果、安心感が得られ、緊急時の対応も適切にできた。この場合もケ
アマネジメントが的確にでき、関係機関との連携が円滑であること、そして緊急時
に即対応出来る体制づくりにより、テレビ電話の効果的活用が可能となる。
○
在宅の要介護高齢者の中には、失語症の患者の他、構音障害の患者が少なくない。
特に多発脳梗塞に伴う軽症の構語障害者は、身体の麻痺の程度が少なく、一見障害
が軽いように見えるが、バランスの障害のために安定した歩行が難しく、自由に歩
き回ることは難しい。適切な対応がなされないと、徐々に外出の機会が少なくなり、
それに伴って、社会的な交流の場、コミュニケーションの機会が制限される。その
結果、コミュニケーションの障害がさらに悪化するという悪循環となる。動画テレ
ビ電話は、患者が自宅にいながらにしてコミュニケーションの機会が確保され、ま
た毎日短時間の訓練を継続するためにも、有用な通信手段である。テレビ電話によ
る実際のケア事例に基づいて検討した結果、以下の諸点に配慮することで、コミュ
ニケーション障害をもつ高齢者の効果的なリハビリテーションに役立てることがで
きると考えられた。q コミュニケーションの機会を確保する、w 対面による言語訓練
を行う、e 音の他に文字、絵、実物、その他のメディアによる情報伝達を併用して、
コミュニケーションの実用化をめざした応用訓練を行う、r 会話に集中することに
より障害のリハビリテーションを行う、t テレビ電話以外の訓練手法と組み合わせ
る。
○
動画カラーテレビ電話を実際の地域ケアシステムの中で広く活用することにより、
在宅ケアサービスの質を向上することが期待できる諸点を以下にあげる。①各専門
職が専門技術を必要な時に発揮できる、②訪問援助を行っている援助者とサービス
センター側の援助訪問の連携を促進する、③家族へのサポートにより、家族の介護
能力が高まり、ゆとりをもった介護を可能にする、④短時間のテレビ電話での通信
により、的確な訪問サービスや通所サービスを提供することに結び付ける、⑤サー
ビス提供側が、日常生活の状況を把握し、より生活に密着したサービスを提供する、
⑥ケアを受ける側が、在宅ケアチームに支えられているという安心感を得る。
35
○
在宅ケアを支援するためのテレビ電話システムを効果的に活用するためのシステム
構築にあたっての課題は以下の点があげられる。①ネットワークを運用して実際に
在宅ケアを行う際に、在宅ケアに関わる幅広い知識と技術を持つ、在宅ケアの専門
家がシステムの活用に携わること、②システムにつながる保健医療福祉の各サービ
ス機関においては、テレビ電話システムによる通信のネットワーク以外に、訪問、
文書連絡、カンファレンスその他により、日頃から情報交換を行っており、真の意
味での情報交換の必要性を高く認識しているサービスネットワークがあること、③
在宅ケア支援のテレビ電話通信ネットワークが、保健医療福祉だけでなく一般社会
の情報ネットワークとリンクし、高齢者、障害者、およびその家族が、広く多様な
情報にアクセスし、社会生活の幅を拡げることができるシステムであること。また、
テレビ電話を活用したマルチメディア在宅ケア支援システムを広く普及するために
は、制度上の諸条件の整備も必要である。
○
在宅ケア支援、特に障害の重い高齢者のケアにあっては、直接自宅を訪問してケア
の支援を行う要素は不可欠である。4人にひとりが高齢者になる時代にあっては、
専門知識と技術を備えた在宅のケアのスタッフを確保し、複数の関連機関の機能的
な連携を強化することにより、質の高い地域ケアネットワークシステムを構築する
ことが地域保健医療福祉の第一の要件である。動画カラーテレビ電話をはじめとす
るマルチメディア技術を応用することにより、専門職の知識と技術を広く活用し、
高齢社会を支える地域の人材養成とコミュニティーづくりを支援し、質の高い在宅
ケア支援ネットワークシステムをさらに効果的に機能させることが可能である。
36
コード No.
①
1−6
遠隔リハビリ支援
プロフィール
対象機関名
鈴鹿医療科学技術大学/鈴鹿回生総合病院
所在地
三重県鈴鹿市岸岡町 1001-1/TEL:0593-83-8991
代表者名
中村
設立年月
1991 年 4 月(開学年月)
設置規模
敷地面積:2,102m2、建物延床面積:4,130m2
○ 学部構成
・医用工学部 医用電子工学科/医用情報工学科
・保健衛生学部 放射線技術科学科/医療栄養学科
・大学院 医療画像情報学研究科
○ 大学収容定員
… 1,040 名
施設概要
○
①
MM 応用技術
實(理事長/日本放射線技師会会長)
大学院収容定員
…
56 名
MM 応用概要
背景と目的
○
鈴鹿医療科学技術大学は、1987 年6月、(社)日本放射線技師会総会の医療科学大
学の設立を機関決定したことによってはじまり、三重県知事、鈴鹿市長、日本放射
線技師会、放射線機器工業会及び大学関係者により設立準備が進められ、1991 年4
月に開学した。
○
今回の遠隔リハビリテーション指導支援システムは、本大学大学院の医療画像情報
学研究科が主体となり、鈴鹿地域内の医療機関である鈴鹿回生総合病院、行政の鈴
鹿市役所情報推進室、さらには地域 CATV 運用企業である(株)ケーブルネット鈴鹿
と連携し、実験を進めている。
○
本システムは遠隔環境で特に手のリハビリテーションが必要な患者が在宅リハビリ
テーション訓練を行える事を目的としており、ハンドセラピー領域における医療と
しての在宅の治療訓練(Therapeutic Exercises)機能を主体とし、更に福祉として
の機能統合訓練(Functional Integration Training)にまで範囲を拡げる目的をも
って構築しようとするものである。
○
また本システムの運用時における新評価法としての基本的機能は、従来医療や福祉
の専門家のみがそのデータを必要とし活用していたものを、訓練者である本人に
も、その内容をわかり易く理解できるように表示する事にある。
実施期間
○
1996 年 7 月∼1999 年 3 月
使用対象者
○
現在は本格的実験の前段として病院(鈴鹿回生病院)内でリハビリ療法指導者(OT、
PT)と別室の患者(リハビリ療法が必要な人)との間をネットワークで結ぶという
ような遠隔環境を作り、フィールド実験に向けた問題点・課題点を抽出している。
○
次のステップとしては、地域内の既存の通信ネットワーク(CATV、NTT の公衆回線
&INS64 等)を活用し、在宅患者と病院(リハビリ療法指導者)間でのフィールド実
験を行う。
37
使用内容
○
ケーブルテレビや一般公衆回線の情報ネットワークを活用し、遠隔環境の在宅リハ
ビリテーションの指導・支援のためのシステム構築を、下記の3面より考察する。
1)遠隔リハビリテーション支援システム:(REHA-Adviser):ネットワークを
介して在宅と施設を結び、直接対面指導を受けているような環境を提供し、
在宅で効果的なリハビリテーション指導を支援するシステムのための問題点
や機能を探る。
2)在宅リハビリテーション支援システム:(REHA-Training):在宅で、一人で
も楽しく効果的にリハビリテーションを行う事を支援する。自分でも訓練効
果が確認でき、必要に応じて指導者側でも訓練状況が確認できる機能を有す
るシステム構築のための問題点や機能を探る。
3)グループ・リハビリテーション支援システム:(REHA-Group): 複数の訓練
者がそれぞれ自宅で訓練するが、ネットワークを介してお互いのコミュニケ
ーションを可能にし、相互に励ます等良質の競争意欲を意識した環境を提
供。必要に応じて指導者側でも訓練状況が確認できる機能を有する。
当面は1.2.について実験を行うが、その前段階として現状では病院内で遠
隔環境を作り実験している。その後、1.2の結果を見て3の実験を実施する。
○
現状の病院(鈴鹿回生病院)内の実験は、特にハンドセラピー領域に焦点を絞り、
手のリハビリテーションが必要な患者の部屋と、作業療法士(OT)や理学療法士(PT)
のいる部屋をネットワークで結び、疑似遠隔実験を行って、運用上の問題点・課題
点を抽出し、解決の方策を研究している。
使用頻度
○
同じ疾患の1人∼2人に対して1日に1∼2回実験を実施。
使用ハードウ
○
現状の病院内実験では、患者側にカラービデオカメラ(NTSC)と NTSC カラーモニタ
ー1台、機能回復訓練の指導者側には同様にカラービデオカメラと NTSC カラーモニ
ェア概要
ター2台を置いて、アナログ伝送している。97 年9月からは PC を介したデジタル
環境が構築される。
・カラービデオカメラ(NTSC)・・・ソニー「CCD - MC5」
・カラーモニター(NTSC)・・・松下電器 14 インチ TV
1台
20 インチ TV(メーカー不明)2台
・MPEG1 リアルタイム・エンコード・ユニット・・・ソニー「RTE-3000」
○
今後、実際の在宅患者と病院等の施設を結ぶためには、CATV 回線(ケーブルネット
鈴鹿の CATV)や NTT の公衆回線&INS64 等を使用する予定である。
38
②
MM 応用における
課題点・要望
ハードウェア
○
現状の病院内実験で使用しているカラービデオカメラ(SONY 製無焦点カメラ)は、
小型計量で、非常に再現性が優れている。ズーミングはできないが、カメラそのも
のを持つことで、訓練上必要なところを映し出せるので問題はない。ハンドセラピ
ー領域の遠隔リハビリテーションは、NTSC レベルの画質で充分であり、伝送時間の
問題を除けば実用化に問題はない。
○
同ビデオカメラはマイク一体型ではないので、患者の胸にピンマイクを別につけて
いる。固定マイクの場合、患者の顔の位置が移動すると音声がとりづらくなるので、
ピンマイクを胸につけた方が良い。音声が重要なのは、機能回復訓練する上で痛い
という表現・呼吸が顔の表情と共に重要であるからである。
○
本大学の遠隔リハビリ指導支援システムで、リハビリの対象を手の領域に絞ったの
は、映像として指導し易いこともあった。つまり全身のリハビリの場合、カメラの
死角に入ってしまうか、被写体(患者)が非常に小さくなってしまうからである。
リハビリ指導者側には、患者側の映像が映る 20 インチカラーモニター1画面と自身
の映像が映る1画面があるが、患者側の映像が手の部分を中心とした上半身だけな
ので、指導者が指導し易い。
○
現状の病院内実験では、患者側のカラーモニターは1画面(1台)のため、自分を
映している画面がもう1台あれば便利である。つまり、受信者側・送信者側とも2
画面あればインタラクティブ性に有効である。
○
今後、既存の都市型 CATV をインフラとしてフィールド実験する際に、下りと上りの
容量が違うので、上り(在宅患者→施設側)の時に容量の工夫をしなければならな
い。CATV は 450M ビットの容量なので、上り4チャンネル(4人)まで可能である
が、用意されている変調器が少ないため、これを揃えるためには約1千万円の費用
が必要である。将来デジタル化すれば解決することも多いが、現行システムでは、
容量・転送レートの問題も見極めないといけない。現状の病院内実験では、画質よ
り転送レートが重要であると認識している。現状では MPEG1 の最高レートである 1.4
ギガビット/秒ないとダメであるが、どこまでの範囲がリハビリで必要なのか見極
めることが課題である。将来的に光ファイバー化して、MPEG2レベルになれば充分
使えるのではと考える。インターネットは公称 15 フレーム/秒といっているが、実
際にはもっと遅いため、早期に動画伝送できる様な形で整備して欲しい。
○
障害者・高齢者用の情報端末は、操作性が第一で、高齢者・障害者の行動・能力を
よく理解して開発・製品化しないと難しいのではと考える。
○
現状のカラーモニターはメーカーや経時変化等によって、色の再現性がバラバラな
ので、何らかの形で色の再現性の統一化をしてもらうことを望んでいる。
39
制度・習慣・
○
ハンドセラピー領域でのリハビリテーションにおいては、手術をして1∼2週間入
院した患者は、退院後通院によって機能回復訓練をしなければならない。退院後、
法規制
通院して1日1回 30 分リハビリ訓練を行うより、ネットワークを利用して在宅リハ
ビリ指導支援を1回5分程度の指導を1日3回受けた方が、短期的に回復できる。
また医療費削減にもつながるため、遠隔リハビリの効果は大きい。在宅リハビリ指
導支援のニーズは、機能回復訓練だけではなく、悪化予防訓練のニーズもある。
○
在宅リハビリ指導支援の実用化までの問題は、1人の患者は機能回復するまでに毎
日リハビリテーションが必要であるが、病院等の施設の指導者(OT、PT 等)側は複
数の在宅訓練者を順次1対1で指導するため、1人の患者は1回5分が限界である
ことから、1時間で約 10 人しか指導できないことである。
○
リハビリテーション指導は、通常患者の体に触れて診療するのが基本であり、経験
がものをいう分野である。従って、遠隔リハビリ指導では、触れることができない
ことをどこかでカバーする必要がある。例えば、関節を前後左右に回して、どのく
らい硬いかは何らかの表現方法・補足手段が必要である。
40
コード No.
①
③
1−7
MM 応用技術
遠隔福祉(在宅保健)
プロフィール
対象機関名
福島県西会津町/保健センター
所在地
福島県耶麻郡西会津町上野尻字西林崎 3136-5/TEL:0241-47-2306
代表者名
山口
人口規模
9,997 人(1996 年 3 月末時点)
年齢構造
世帯数
高齢化率:30.3%(3,030 人/1996 年 3 月末時点
博績(町長)
3,008 世帯(1996 年 3 月末時点)
MM 応用概要
背景と目的
○
当町は西方に走る越後山脈によって新潟県と接する福島県北西端の町である。町北
部は磐梯朝日国立公園の飯豊連峰が間近に望まれ、総面積の 86%が林野であり、中
央部を電源の宝庫である阿賀川が横断している。産業は農業(米作、葉たばこ、菌
茸)を中心とし、広大な山野からは特産の桐や杉を産する。工業は弱電、自動車部
品、縫製等の事業所等が進出している。
○
当町では地域における生涯を通じた健康づくりと適切な保健医療の確保、さらに
住民福祉サービスの提供等、包括的な地域トータルケア体制づくりを積極的に推
進しており、特に医療と福祉に重点を置いた施設の整備を図ると共に「自分の健
康は自分で守る」というセルフ・ケアの啓蒙と多彩な内容の保健指導及び計画を
立て、町民の総合的な健康づくりのための施策を展開している。しかし当町は、
依然として平均寿命が福島県内でも下位に位置(1985 年資料男性 73.1 歳=県内
90 市町村中 88 位、女性 80.0 歳=同 69 位)していることから、その原因を徹底
的に究明するため、かつ成人病予防対策を進める指針とするため、平成4年度か
ら2ケ年間で約 2,000 名を対象とした住民健康調査を行った。その結果、当町が
抱えている問題点が次のとおり明らかとなった。
①
②
③
脳卒中による死亡が多い。(1990 年資料全国 100 に対して脳血管
疾患標準化死亡比 140、福島県 90 市町村中 70 位)
悪性新生物による死亡が多い。(1985 年資料全国 100 に対して悪
性新生物標準化死亡比 120)
骨粗鬆症が多く、腰曲がり・膝関節変形等より寝たきり老人にな
りやすい。
○
以上の調査結果を受けて、現在長期的視点に立った継続事業として日常生活の中で
健康に必要な栄養素をバランス良く摂取するための食生活の改善を各自治区に出張
して実習を行うなど強力に推進しており、在宅健康管理システム導入事業について
も、情報通信を高度に利用した健康情報機能システムの整備を図ることによって、
在宅者の内循環器系にかかる重点的な保健指導が必要な町民に対して濃密な指導を
行うことにより、脳卒中等の成人病予防対策を一層強力に進めるべきであるとの提
言をふまえ、健康の町宣言の趣旨に添って町民が健康で長生きである町づくりの一
環として実施するに至った。
41
○
毎日の体調をチェックし、継続的に把握しておくことは、病気を未然に防ぐための
予防対策として極めて重要であるとの視点から考案された、在宅健康管理システム
「うらら」は、得られる健康データやアドバイス担当医師の助言を基に、保健婦や
栄養士が日常の生活指導を始めとした適切な保健指導を行うことにより、在宅にお
ける健康管理の充実を図ろうとするものである。
○
運用中の在宅健康管理システムに加えて、当町は 1997 年2月に双方向ケーブルテレ
ビ局「西会津町ケーブルテレビ」を開局し、将来的に在宅高齢者や要介護者の健康
管理システムとして活用する計画である。現在在宅に設置している「うらら」50 台
を実験的にCATV回線経由で保健センターと結んでいる。
○
当町は、平成7年度の国土庁「地域情報交流拠点施設整備モデル事業」に指定さ
れ、双方向ケーブルテレビの整備事業費は1期、2期合わせて 26 億円程度となっ
ている。1期では番組制作・発信のセンター施設や光ケーブル網を整備し、まず
人口密集地区の約 1,600 世帯に保健医療情報、気象情報、町政情報などを配信し、
2000 年までの2期工事では、CATV回線を利用したメーターの自動検針、TV
会議、一般家庭向けセキュリティー(防災・防犯)システムなども整備する計画
である。
実施期間
○
在宅健康管理システム「うらら」・・・1994 年 4 月∼
○
CATV経由「うらら」・・・・・・1997 年 2 月 7 日∼
○
在宅健康管理システム「うらら」の利用者は西会津町高齢者サービス調整チームが
* 在宅契約者の設置契約期間は原則1年間(更新可)
使用対象者
兼ねる判定委員会で、以下の条件を加味しながら選定する。
・
基本健康診査の循環器系にかかる、要指導者及び要医療者のうち重点
的な保健指導が必要な人。
・ 在宅要介護者のうち特に、循環器系にかかる保健指導が必要な人。
・ 医師が循環器系にかかる保健指導を必要と認めた人。
○
現在、一般電話回線を経由して利用している家庭(1台で4人まで登録可能)が 300
台、CATV経由で利用している家庭が 50 台となっている。
使用内容
○
保健センターにあるホストコンピュータと必要と判定された在宅要援護者の端末機
を電話回線(一部CATV回線)で結び、利用者が端末機から健康データ(血圧・
脈拍・心電図・体重・体温)を1回/日送信する。操作方法は、音声でアナウンス
される事柄に対し、はい・いいえ・選択の3つのボタンを操作することにより送信
される。送信されたデータを保健婦がスクリーニングし、あらかじめアドバイス担
当医師から指示を受けた異常データがあれば、アドバイス担当医師にただちにデー
タをFAX等で送信し、指導を仰ぐものとする。また、情報機能の有効活用を図り、
保健指導をより強化するため、生活指導ほか必要なメッセージ(50 文字以内)をシ
ステムを利用して随時返信する。さらに、月間管理レポートとして、アドバイス担
当医師の助言をもとに指導事項を記入したデータ記録を月1回郵送し、適切なアフ
ターケアを行うものとする。
42
○
在宅健康管理システムの導入により、期待される効果は以下の通りである。
1)循環器系にかかる要指導者・要医療者等のハイリスク者が、重点的な保健指導
を受けることにより、疾病の早期発見と予防が期待できる。
2)地域における保健、医療、福祉の連携に基づく、在宅福祉の向上を図ることが
できる。
3)在宅のまま保健婦やアドバイス担当医師により、脳卒中等成人病予防の保健指
導を受けることができる。
○
また将来的には大容量のCATV網(西会津町ケーブルテレビ)を活用して、画像
情報も含めた在宅健康管理システムを構築する計画である。
使用頻度
○
在宅健康管理システム「うらら」の利用者は、健康データ(血圧・脈拍・心電図・
体重・体温)を1日1回送信する。端末機(うらら)からホストコンピュータへの
送信は、端末機にメモリーされたその日の蓄積データを夜間の決まった時間に自動
送信される仕組みとなっている。
使用ハードウ
ェア概要
○
ホストコンピュータ
○
端末機(在宅健康管理システム)…
………………
シャープ「X68000」1台
セタ「うらら」350 台(製造:新鋭産業)
(システム構築:ナサコーポレーション)
④
MM 応用における
○
在宅健康管理システム「うらら」は、一般電話回線を経由している家庭 300 台と、
課題点・要望
CATV経由(西会津町ケーブルテレビ)で利用している家庭が 50 台運用されてい
ハードウェア
る。電話回線経由の場合は、1件の送信で2分前後のセッティングタイムを要する
が、CATV経由の場合はロスタイムなしでほぼリアルタイムで送受信できる、C
ATVの容量は 450M・と大きいため将来的に画像伝送も可能であるが、現状では端
末側の限界もあり、センター側からの 50 文字以内のメッセージ送信にとどまってい
る。
○
CATV経由で使用している「うらら」は、日常の電話使用の有無にかかわらず送
受信できるが、一般電話回線経由の「うらら」は家庭側からデータ送信時に電話は
使えないため、送信は端末にメモリーされたデータを電話をあまり使用しない深夜
に送信する様に時間を設定している。従って一般電話回線経由の「うらら」とサー
ビスの差を招かない様に、CATV経由の「うらら」と送信時間は同一(深夜)に
設定している。
○
在宅健康管理システム「うらら」は5項目の問診項目(血圧・脈拍・心電図・体重・
体温)を音声ガイドに添いながら、はい・いいえ・選択の3つの操作ボタンで入力
できるため、操作性は高齢者でも扱い易い。ただし、体重・体温は、同端末では測
定できないため、あらかじめ自分で測定しておかなければならない。また、操作ボ
タンとボタン名ももう一回り大きくすることで、目や手の機能が弱っている人の配
慮も必要である。音声ガイドも端末機にあらかじめパターン化されているもののた
め、センター側から生の声を受信できることが望ましいが、その場合はセンター側
43
の人の配置の問題がでてくる。また、端末側の人間が楽しめる様な仕掛け、例えば
ディスプレイ上のアニメが元気付けるとか、毎日の占いコーナーとかがあれば、健
康測定に対するモチベーションがアップするのではと考えられる。
○
センター側から 50 文字以内の指導メッセージが端末側(うらら)に送信でき、ディ
スプレイに表示できるが、画面サイズも小さく、モノクロ液晶ディスプレイである
ため、高齢者にとって文字は決して読み易いものではなく、例えば音声合成ソフト
の様なシステムで音声化できることが望ましい(生の声でマンツーマン対応が最も
望ましい)。
○
コスト
在宅健康管理システム「うらら」は厚生省により 10 割補助を受けられるため、町の
ハードウェアに対する負担は少ないが、通信上必要なモデムの導入経費(¥21,000)
及び設置料は町が負担している。「うらら」利用者が負担するコストは、電話回線
使用料及び電気料であり、電話回線使用料は毎日の送信が1回 10 円程度のため、月
換算で 300 円程度である。CATV経由での利用者は月々1,500 円の負担で利用し
ている
○
「うらら」のハードウェア価格はモデム込みで約 25 万円とされるため、厚生省によ
る 10 割補助がなければ、個人での負担は大き過ぎ、普及は難しかったと考えられ
る。「うらら」の利用者は原則的に1年契約で、1台で家族の4人まで登録でき、
負担も少なくないため継続希望者は少なくないとのことである。しかし継続するた
めには判定委員会の意見を聞き、町長が継続を承認しなければならない。
制度・習慣・
○
西会津地方は脳卒中による死亡が多いため、在宅保健分野での重点的な保健指導の
必要性が高かった。特に日常の血圧・脈拍・心電図などが、通院しなくても毎日送
法規制
信でき、在宅のまま保健婦やアドバイス担当医師から保健指導を受けられること
は、疾病の早期発見と予防に役立つものと期待されている。
○
制度的な課題としては、将来的に仮にセンター側から端末機(うらら)側に生の声
でリアルタイムに保健指導する場合に、端末側数百台対センター側1カ所なので、
センター側の人材の確保・配置の問題がある。双方向CATVを利用した場合も同
様で、完全双方向通信の場合はセンター側の人の問題が大きい。長期的に双方向C
ATVを利用して画像情報を保健・医療分野で利用する場合もセンター側の人の対
応・配置の問題が大きい。
44
コード No.
①
②
1−8
MM 応用技術
遠隔福祉(在宅看護支援)
プロフィール
対象機関名
山形県小国町立病院
所在地
山形県西置賜郡小国町大字栄町 106/TEL:0238-62-2075
代表者名
阿部
人口規模
10,715 人(1995 年国勢調査)
年齢構造
世帯数
高齢化率:23.4%(2,504 人/1995 年国勢調査)
吉弘(院長)
3,163 世帯(1995 年国勢調査)
MM 応用概要
背景と目的
○
山形県西置賜郡小国町は新潟県境の町でその面積 738・は、東京 23 区全体を上回る
面積で、うち 90%をブナ林などの森林が占める山林過疎地域である。かつ電波過疎
地域をもつ豪雪地帯でもある。その町の中心部にある小国町立病院では平成4年度
に「訪問看護室」を新設し、専任の訪問看護婦4名で、町内の在宅患者に対する訪
問看護を開始した。しかし、町の広大な面積を4名でカバーするため、町の中心部
にある病院から、遠方の患者へのケア施策は、移動時間を考えると都市部に比べ非
効率であった。
○
以上の様な背景で、広域の過疎地域における在宅患者・在宅高齢者ケアの一手段と
して、平成6年 12 月末に郵政省の実験事業「遠隔健康相談システム」により、テレ
ビ電話を導入した。翌7年度から県の委託を受けて在宅健康管理事業として継続
し、在宅患者のバイタルデータを病院に自動送信できる健康測定器を導入した。平
成8年度には「遠隔医療相談システムモデル事業」として、これらシステムが引き
継がれた。
○
現在訪問看護婦4名で町内の約 80 名の在宅患者に対する訪問看護を行っている
が、小国町の様な携帯電話も通じない地域がある広域の山間部では、住民の最大の
不安材料は「病気→通院」であった。こうした在宅患者・在宅高齢者に対して訪問
看護を行うサポート手段として、今回の一連の実験事業が位置付けられる。
導入時期
使用対象者
○
○
テレビ電話による訪問看護支援
…
1994 年 12 月∼
在宅健康測定器「うらら」導入
…
1995 年 4 月∼
○
町内の在宅患者(在宅療養者)・独居老人など 15 名。テレビ電話使用者は同時に「う
らら」も導入している。(ハードは健康測定器 15 台、テレビ電話5台を導入)
使用内容
○
センターは小国町立病院内のナースステーション(訪問看護室)
○
在宅健康測定器「うらら」は5項目の問診項目の設定が可能であり、在宅患者は毎
日音声ガイドにより体温・体重・血圧・脈拍・心電図を測定し、測定データを蓄積
後、病院のパソコンに毎日定時(午前2時)に自動送信され、病院側で送信データ
をベースに健康相談・保健指導に役立てようというシステムである。なお、毎日午
前2時に自動送信されるのは、データ通信に一般加入アナログ電話回線を使用して
45
いるため、回線利用度の低い深夜が選ばれた。送信データは翌日プリントアウトし、
関係者が目を通している。集積データの処理には、日立エンジニアリングサービス
開発のソフトウェアを使用。
○
小国町立病院では、訪問看護婦室のパソコン(日立製)に患者データを入れており、
同室から定期的に在宅側に電話をかけ、モニターを通して患者の健康観察・状態把
握を行っているほか、ナースステーションにテレビ電話を設置し、24 時間体制で在
宅からの通報に備えている。
○
テレビ電話による在宅看護支援のメリットは、以下の通りである。
①
毎日の状況把握ができるので、医療側は訪問しない日も安心感が
ある。
②
③
機械の操作が比較的簡単である。
何回でも測定可能で、自分で血圧などがいつでも測れ、また音声
ガイドで簡単に操作できるので、測定への関心が高まり、自分の
健康管理への意欲が湧く。
④
測定中の表示もあり、テレビ電話にも映し出せるので、救急時の対応
も可能。
⑤
継続したデータが記録されるので、訪問時に患者への疾病予防対策
指導に役立つ。
使用頻度
○
在宅健康測定器「うらら」・・・利用者は毎日(1日1回)使用
○
テレビ電話システム・・・・・・・・・ テレビ電話システム使用者は同時に「うらら」も導
入しているが、テレビ電話の使用頻度は1日1∼2
回使う人もいれば、2∼3日に1回という人もいる。
使用ハードウ
○
テレビ電話・・・日立製作所「Telepho Vision HV-300」5 台
ェア概要
5.6 インチ TFT カラー液晶モニター(バックライト付)
1/3 インチ CCD カメラ(25 万画素)
1/3 インチ CCD カメラ(25 万画素)
動画伝送−15 フレーム/秒
○
在宅健康測定器
○
ペン入力型携帯パソコン
○
ホストパソコン
……………
セタ「うらら」15 台
…
日立製作所
3台
……………
日立製作所
1台
46
③
MM 応用における
課題点・要望
ハードウェア
○
現在、健康測定器を使用できるエリアは、町の中心部にあるNTT中継基地から半
径 8.3km 以内で、かつユーザー宅の抵抗値が△50DB 以内の地域に限られている。そ
のため、本来の在宅看護のニーズが高い半径 8.3km 超の山間部では利用できない。
今後は広域にわたるインフラの早急な整備が望まれている。
○
町立病院では、テレビ電話の現在の利用方法のほかに、リハビリテーションを在宅
で指導する遠隔リハビリテーションでの応用を考えている。これは病院内にいる理
学療法士では人数が十分ではないので、テレビ電話の利用で補完することを考えて
いるからである。しかし、遠隔リハビリの場合、現在の画像の精度・画面サイズで
は難しい。具体的には画面サイズが現在 5.6 インチなので、リハビリの部位にもよ
るが、体全体を映すには小さ過ぎる。また動画伝送も現在毎秒 15 フレームのため、
動きがぎこちないため、NTSC方式並み(毎秒 30 フレーム)の動画伝送が望まし
い。そのためには院長によれば、CATVをインフラにできればと望んでいる。
コスト
○
テレビ電話を設置している家庭には、デジタル回線であるINS64 を引き込んでい
るが、回線導入費は病院(町)が負担している(約2万円/件)。またランニング
コストは、テレビ電話1台当たりの電話回線使用料が約6千円であるが、これも病
院(町)が負担している。健康測定器「うらら」は農水省の補助事業費で購入した
が、利用者からは月々一律 500 円の利用料を負担してもらっている。利用者側から
は低額な自己負担で利用できることから、喜ばれている。また健康測定器のソフト
ウェア開発には数千万円を要したとのこと。現状では、実験事業として敷設した在
宅端末のハード・ソフトともに補助金があるが、在宅療養者にマルチメディアを定
着させるためには、このコスト支援が何よりも必要不可欠である。
制度・習慣・
○
小国町で遠隔看護支援が進んでいるのは、センターとなっている施設が町立病院で
あるということと、県及び町行政とうまくコミュニケーションが取られており、病
法規制
院の強いサポート役を担っていることが、継続性をもたせているといえる。民間レ
ベルで行うには、機材費や設備費にお金がかかりすぎて、かなり厳しいと考えられ
る。
○
テレビ電話や「うらら」が導入された当初は、訪問看護業務のサポートになるどこ
ろか、ただでさえ忙しい訪問看護婦は機械の操作方法の取得まで覚えなければなら
ず、かつ在宅患者にも教えなければならなかったので、うまく回転するまでが通常
の倍も大変であった。そういう意味では操作方法が簡単なものが望ましい。
○
実際にテレビ電話システムが在宅看護に有効であると院長が感じたのは、介護者が
患者の状態を言葉で伝えるより、はるかに情報量が多いとわかったときであった。
特に寝たきりの患者であれば、介護者の観察による間接的な情報しか通常の電話で
は得られませんが、テレビ電話なら患者本人が画像に映し出され、そこから得る情
報が非常に大きかった。
47
○
また、広い土地柄、ケアの効率化を考えれば、小国町の様な広域のところでは遠隔
看護システムは絶対に必要である。そうなると、システムがどれだけの補完機能を
もつかが重要となるが、確かに補完機能はあるものの、完全に今までやっていたも
のにとって代わることはあり得ないが、有力な補助にはなると考えられる。しかし、
システムに対する全面的心服には注意を要する。患者宅と病院の距離が離れている
ので、テレビ電話で患者の状態を把握してから持っていく薬などを準備すると、無
駄なく的確なケアができるとのことである。さらに、患者や介護者がすごく安心し
ているのがよくわかり、特に、在宅で寝ている人は、人との交流を待っているため、
モニターに映し出される顔を見るだけで安心する。ナースコールのような役目もす
るこのシステムは、医療者側の安心より患者や介護者側の安心が大きいようである。
48
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