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HUS治療としての PEとImmunoadsorption -Outbreak of O104:H4慈恵ICU勉強会 Hemolytic uremic syndrome(HUS)とは? 日本アフェレシス学会雑誌 30(2):135-146 2011 Lancet 2011; 378: 1089–93 HUSは、Thrombotic microangiopathy(TMA)の一部 T M A TMAの三主徴;①細血管障害性溶血性貧血、②破壊性血小板減少、③細血管血小板血栓 TTP HUS ・ADAMTS13欠乏 ・ADAMTS13自己抗体の存在 →虚血性臓器障害の出現 ・腸管出血性大腸菌感染に続発するもの → D(+)HUS(=STEC-HUS), → Shiga toxinによる臓器障害 PEが有効; FFP投与によるADAMTS13の補充 ・ Atypical HUS(家族性HUSを含む) → D(-)HUS, → 補体系の活性化による臓器障害 正常VWFの補充 ADAMTS13自己抗体の除去 巨大VWFの除去 PEの有効性はControversial D(+)HUS (=Diarrhoea(+)HUS) = STEC-HUS (=Shiga-toxin producing E. coli HUS) ・腸管出血性大腸菌(Shiga toxin-producing E.coli(STEC))感染に続発する HUS(D(+)HUS)が最も一般的である。 ・また、下痢を伴わないAtypical HUS(家族性HUSを含む)が存在する Outbreak of O104:H4 ・2011年5~7月にヨーロッパと北米の広範囲で発生 ドイツ、デンマーク、スウェーデン、オーストリア、フランス、 オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、イギリス ・罹患者数4075人、死亡者数50人(うち34人がHUSによる) ・病原体はO104:H4 =腸管凝集性大腸菌+シガトキシン産生+ESBL産生 (通常HUSの原因病原体はO157。今回は特殊。) =女性に多い、AKI(要RRT)が多い;20%、死亡率高い;6% ・調査の結果、感染源はエジプトから輸入された フェヌグリーク(植物)のスプラウトであると結論。 WHO regional officer for Europe Web site HUSの治療介入に関するメタアナリシス Interventions for haemolytic uraemic syndrome and thrombotic thrombocytopenic purpura. Cochrane Database Syst Rev 2009;1: CD003595 ◎HUSとTTPの治療介入について評価したRCTのメタ解析。 ◎7つのRCTsを比較検討。対象患者は小児のD(+)HUS。 →小児D(+)HUSにおいては支持療法に 勝る特異的治療はない。 ウロキナーゼ FFP輸血 ステロイド投与 FFP輸血 FFP輸血 ヘパリン+ジピリダモール ヘパリン投与 →D(+)HUSに対して現在可能な最適治療は何だろうか? Atypical HUSに対するPEの有用性 Atypical Hemolytic–Uremic Syndrome. N Engl J Med 2009;361:1676-87. 《Atypical HUS(下痢を伴わないHUS)の分類》 HUS ・腸管出血性大腸菌感染に続発するもの→90% → D(+)HUS, Shiga toxinによる臓器障害 遺伝的要因 ・ Atypical HUS(家族性HUSを含む)→10% → D(-)HUS, 補体系の活性化による臓器障害 PEの有効性はControversial 90%はD(+)HUS。予後は良い。 10%がAtypical HUS。 Atypical HUSは家族性を含み、補体系調節蛋白の 異常により起こる。 予後が悪い(死亡率25%)。 CFH; complement factor H CFI; complement factor I MCP; membrane cofactor protein CFB; complement factor B Atypical HUSに対するPEの有用性 Atypical Hemolytic–Uremic Syndrome. N Engl J Med 2009;361:1676-87. PEはCFH蛋白異常型HUSに対して は60%の患者に寛解をもたらす。 →CFHは血漿蛋白であり、異常 CFHと正常CFHが交換される。 その他の蛋白異常においても そこそこの寛解率がある。 CFH自己免疫型においては、免疫 抑制療法を併用することで、6070%の透析を必要としない生存を もたらす。 Atypical HUSにおいてはPEは有用な治療である STEC-HUS(= D(+)HUS)に対するEculizumab Eculizumab in severe Shiga-toxin-associated HUS. N Engl J Med. 2011; 364 : 2561–2563 ◎STEC-HUSに対してEculizumab(抗C5抗体)を使用したケースリポート ◎3人のSTEC-HUSでかつHDを必要とした3歳児にEculizumabを7日間毎に投与 Patient1 Patient2 Patient3 Patient 1:PE(for C3↓,C3b↑) Patient 2: PE(for severe CNS involvement) Patient 3:Same as 1,2 5日間連続のPEでも中枢神経症状は改善せず。 Eculizumab投与後24時間で中枢神経症状は劇 的に改善。 Plt, LDHは5日で正常化。 Pt.1,3で蛋白尿と高血圧を残すものの腎機能は 完全に回復 Eculizumab投与は重篤な合併症を来す小児STEC-HUSに有用。 また補体系阻害による更なるHUS治療の可能性を示唆。 TMAに対する治療の有効性をまとめると… T M A TTP PE有効 HUS D(+)HUS (= STEC-HUS) Atypical HUS (=D(-)HUS) 最適治療は不明 多分PE有効 PEは有効?無効? Eculizumab有効? 支持療法がベスト? D(+)HUSに対する有効な治療法はないか? そこで、今回の課題論文2編。 本日のメイン文献紹介 Management of an acute outbreak of diarrhoea-associated haemolytic uraemic syndrome with early plasma exchange in adults from southern Denmark: an observational study Lancet 2011; 378: 1089–93 D(+)HUSに対するPEの有効性の検討 Treatment of severe neurological deficits with IgG depletion through immunoadsorption in patients with Escherichia coli O104:H4-associated haemolytic uraemic syndrome: a prospective trial Lancet 2011; 378: 1166–73 D(+)HUSに対するImmunoadsorption(免疫吸着療法)の有効性の検討 Management of an acute outbreak of diarrhoea-associated haemolytic uraemic syndrome with early plasma exchange in adults from southern Denmark: an observational study Lancet 2011; 378: 1089–93 Objective:D(+)HUSに対してのPEの有効性の検討 Design: Observational study Setting: 単施設研究 Patients:デンマークのオデンス大学病院腎臓科に入院した D(+)HUSの患者5名(O104:H4感染確定は3名) Methods:上記の患者に対してPEを施行。 患者のLDH, GFR, Pltの推移とPE施行までの時間 との相関を調査し、PEの有効性を検討。 Method, Medication ・血性下痢の出現から、PE施行までの時間を記録し、LDH, GFR, Pltの推移との相関関係を検討。 →早期PEはよりアウトカムを改善しうるか? ・HUSの原因診断、便培養、E.ColiのSerotype同定、各種採血検査を施行。 ・PE操作条件 抗凝固剤=クエン酸 1回の置換量=1.0 plasma volume Plasma volume (mL)=total blood volume (mL) × (1 – haematocrit) Total blood volume for women(mL) =183 + (356 × height [m]3)+ (33・1 × body mass [kg]) Total blood volume for men(mL)=604+ (367 × height [m]3) + (32・2 × body mass [kg]) 例えば170cm/60kg, Ht35%の男性なら、TBV=4338mL, PV=2819mL Result ・期間:2011年5月25~28日、 ・患者:5人(4人が女性、1人が男性)、年齢中央値62歳(44~70歳) ・症状:腹部不快感、発熱、血性下痢、 ・既往:DMなし、消化管疾患なし、血液疾患なし。 ・当薬歴:4人の患者で抗菌薬投与(CPFX、MNZなど)、入院後中止。 ・渡航歴:下痢を発症する6~8日前、別々にドイツ北部を訪問。 ・中枢神経機能障害:傾眠、昏迷、振戦、運動失調、びまん性中枢機能障害。 検査所見: ・急性溶血性貧血、Plt低下、AKI(右表参照) ・網赤血球が上昇、ハプトグロビンが低下 →溶血性貧血を示唆 ・ADAMTS13の活性は正常値 →TTPは疑わしくない。 ・3人の便培と血清学的試験でO104:H4(シガトキシン2型産生(+))、 1人の患者でO127(シガトキシン非産生)検出。 →臨床症状と検査データでD(+)HUSと診断。 治療: 電解質、血圧コントロールを含めた支持療法 1人の患者は無尿と尿毒症のため一時的にHD。 3人の患者で輸血。(ただし血小板輸血を受けた患者なし) 入院時 中央値 単位 BP 142/84 mmHg Plt 31×109 /L LDH 1220 U/L GFR 35 mL/min/1.73m2 Hb 6.4 mmol/L Result;PLT, eGFR, LDHの推移とPEを行うまでの時間 5回(中央値)のPEを施行。 Plt eGFRとPLTは上昇、LDHは低下した。 GFR 相関関係あり (P=0.02) LDH reduction rate 相関傾向だったが 有意でない (P=0.24) LDH Plt increase rate 血性下痢の発症からPE開始までの時間と、 PE前後でのLDH低下の比率は反比例(P=0.02)。 PE開始までの時間とPLT上昇の比率に関して 正の相関が示されたが有意性ではなかった (P=0.24)。 患者は全員神経学的後遺症を残さず退院。 RCTによる更なる検討の余地は 残るが、血小板数、GFR、LDH、意識レ ベルの改善を認め、D(+)HUSに対する PEの有用性が示唆された。 Discussion ◎小児HUSにおけるHUSでのMeta-analysisでは支持療法よりも有効な 治療は見いだせなかった(前述紹介)。 Interventions for haemolytic uraemic syndrome and thrombotic thrombocytopenic purpura. Cochrane Database Syst Rev 2009;1: CD003595. ◎成人におけるHUSで中枢神経症状が出現した場合、PEが有効かも しれないとの報告は今までもあった。 Thrombotic microangiopathy, hemolytic uremic syndrome, and thrombotic thrombocytopenic purpura. Kidney Int 2001; 60: 831–46. ◎今回、成人におけるD(+)HUSにたいしてPEを施行したが、良好な 結果をおさめた。 ◎発症頻度が少なく、RCT等、質の高い臨床研究を行うことが困難であるが、 Case reportの集積等により、PEの有効性を検討すべきである (もちろんRCTができれば越したことはない)。 PEの有効性の機序に関する記述はなし。 Comment ◎成人におけるHUSで中枢神経症状が出現した場合、PEが有効かも しれないとの報告は今までもあった。 ◎今回の研究は今までの報告にさらに成功例を上積みした。 ◎PEが奏功した理由は不明であるが、一つ考えられるのはShiga toxinの 早期除去である。 PE無効の場合→免疫吸着なら有効か? ◎D(+)HUSの中にはPE無効の場合もある。 ◎HUSでは発症から5-12日後に意識障害が出現する がこの時間経過はSLEやHITにおける臓器障害出現 の臨床経過と酷似している。 ◎SLE、HITにおける臓器障害の改善に関して免疫 吸着療法が有効であるとの報告がある。 SLE:Immunoadsorption (IAS) for systemic lupus erythematosus. Lupus 2011; 20: 115–19. Plasma exchange and immunoadsorption for autoimmune neurologic diseases —current guidelines and future perspectives. Atheroscler Suppl 2009; 10: 129–32. HIT:Clinical practice. Heparin-induced thrombocytopenia. N Engl J Med 2006; 355: 809–17 Heparin-induced thrombocytopenia. J Thromb Haemost 2009; 7 (suppl 1): 9–12. The temporal profi le of the anti-PF4/heparin immune response. Blood 2009; 113: 4970–76 Studies of the immune response in heparin-induced thrombocytopenia. Blood 2009; 113: 4963–69. D(+)HUSにも免疫吸着療法が有効かもしれない? Treatment of severe neurological defi cits with IgG depletion through immunoadsorption in patients with Escherichia coli O104:H4-associated haemolytic uraemic syndrome: a prospective trial Lancet 2011; 378: 1166–73 Objective: D(+)HUSの神経学的予後に対する免疫吸着療法の有効性の検討 Design: Prospective non-cotrolled trial Setting: 多施設研究(大学病院2施設) Patients:重度の神経学的症状を呈しICU管理となったO104:H4感染のHUS患者12名 (女性11名,男性1名、年齢中央値51歳(38-63歳)) Methods:上記患者に、IgG免疫吸着療法を施行し、その後免疫不全の予防のため IgG補充投与(iv 0.5mg/kg)。 神経学的スコアリング(本研究オリジナル)を行い、免疫吸着療法の前後3日間での 変化を評価。 Methods 免疫吸着 IgG吸着カラム(Immunosorba® etc)を用いて 免疫吸着療法を連続2日間で2回施行。 12L/回の血漿を処理、二回目の吸着の後、 IgG(0.5mg/kg)を投与し、血中のIgGを補充。 PE 血漿量の1.2~1.4倍のFFPで一般的なPE。 エクリズマブ エクリズマブ(Soliris®)を免疫吸着療法の前に 900mg iv.免疫吸着療法後に追加投与 600mg iv. 採血検査その他 O104:H4感染はPCR解析を用いて診断。 血液検査項目:血算、APTT、IgG、vWF, vWF リストセチン補因子, Cr, BUN, 抗ADAMTS-13抗体 Composite neurological score(original) 合併症 ポイント 見当識障害 1 パニックor幻覚 1 痙攣 1 ミオクローヌス 1 失語 1 不全麻痺 1 非神経学的合併症で人工呼吸器使用のため評価困難 1 昏睡 2 神経学的合併症による人工呼吸使用 3 オリジナルの神経学的スコアリングを用いて、 day 0 (一回目の免疫吸着療法の前) day 1 (二回目の免疫吸着療法の前) day 3 での変化をフリードマン検定と ウィルコクソン順位検定で評価。 Result ・2施設における63人のO104:H4による腸管出血性腸炎患者のうち、12人がICU治療を 受けた(この12人が今回の解析対象患者)。 ・すべての患者はTMA(血小板減少と溶血性貧血)をきたした。 ・AKIN criteriaで10人がAKI stage3、2人がAKI stage2と診断。 ・5人がShiga-toxin吸着の目的で活性炭を服用した。 ・6人の患者が副腎不全になり、平均早朝コルチゾールが110nmol/Lと低下した (重症患者での正常値が414nmol/L以上)。 ・ナトリウム血中濃度に異常をきたした患者はなかった。 ・発症時、頭部CTで画像異常のある患者はなかった。 頭部MRIの拡散強調画像(DWI)とT2で、信号異常を主に脳幹部、視床、白質に認めたが 共通のパターンを見出せなかった。 Patient 2が最重症例。 痙攣を繰り返していたが、 Immunoadsoptionに反応し、 神経学的所見は改善した。 患者背景 Result Griefswald Hannover Result PE: 10人に施行 複数回のPE施行(4.3回)にもかかわらず神経所見の改善なし。 エクリズマブ投与: 8人に施行 1人(Patient 10)で神経学的症状を改善、 5人(Patients 2,3,4,8,9)で悪化、 2人(Patients 6,7)で不変。 Result Immunoadsorption(IA; 免疫吸着療法): ・IA施行により血中IgG濃度は6.19g/L→1.13g/Lへ低下。 ・4人(Patients 3.4.8.12) は1コースで神経症状が改善。 ・6人(Patients 5,6,7,9,10,11)は神経症状が平均7.4日後に 再発、2コース目を施行。 ・同理由でPatient 1は3コース、Patient 2は4コース。 人工呼吸器: ・9人がもともと人工呼吸器使用 ・5人が免疫吸着療法開始後48時間で抜管。 ・2人が4日以内に抜管。 ・Patient 3はウィーニング失敗。 ・Patient 5は誤嚥性肺炎で人工呼吸管理を続行。 他のIA施行も大小の副作用なし。 全員生存、ICU退室までにRRTを離脱。 すべての患者の神経学的症状は最初の免疫吸着療法 後に改善(痙攣やミオクローヌス停止など:後述)。 Result 免疫吸着療法前3日間でスコア悪化 平均2.3→3.0(p=0.038) 免疫吸着療法後、 1日目平均2.0 2日目平均1.6 3日目平均1.0 (p=0.0006) と急速に改善。 神 経 学 的 ス コ ア IA施行 非挿管患者では免疫吸着療法中に 神経学的症状の改善を確認。 →最も印象的なところでは ・Patients 2,5で失語が改善して喋り出した ・Patient 2で深刻なパニック発作が消失 ・Patients 1,2, 5でミオクローヌスが停止 免疫吸着療法開始からの時間 ICU退室時に残存した神経学的症状は2人の 患者を除いて完全に改善。 Discussion; Immunoadsorptionの有効性の機序 The Role of Circulating Immune Complexes and Biocompatibility of Staphylococcal Protein A Immunoadsorption in Mitomycin C–Induced Hemolytic Uremic Syndrome American Journal of Kidney Diseases 2004; 44: E50-E58 Mitomycin-C induced HUS(Mitomycin-HUS)にImmunoadosorptionが有効という報告。 PE, plasma infusion → ほとんど奏功しない Immunoadsorption → 寛解率は50%にものぼる Mitomycin-HUSの病態生理は不明な部分が多いが、 腎細血管内皮傷害や血小板凝集を起こす 血中の免疫複合体の関与が考えられている。 ・免疫複合体はin vivoの実験で血小板凝集を起こす ・腎細血管が傷害されていると、微小血栓を形成 微小血管性溶血と腎障害 高濃度の免疫複合体(糖タンパク抗原+IgG+補体)が血中に循環しており、 これらを除去することが、Mitomycin-HUSを改善させている可能性がある。 Discussion; PE vs Immunoadsorption(IA) ・免疫吸着カラムは患者のIgGを80%除去し、血漿中と 間質のIgGの濃度差でIgGが血漿中へ再分配される。 →IgGの効率的な除去が可能。 ・PEはFFPを投与しながら血漿を交換するのでIgGの 濃度差はできずに、IgGの除去効率が落ちる。 IgG除去効率に関してはIAが優っている。 IgGを効率良く除去することにより、意識障害の改善が得られる? Comment ◎HUSで中枢神経障害が出現する理由ははっきりとは判明していない。 現在想定されている病態論は・・・ ◎小児D(+)HUSで多くみられる1週間以内の中枢神経障害は、 ・低ナトリウム血症、Fluid overload、高血圧等が引き金となる。 ・剖検データでは、全身性の補体系の活性化、頭蓋内の微小血栓傾向が認められ、 これらは中枢神経障害の原因の一つであろう。 ・また、Shiga-toxin(Stx)は直接的な脳細胞障害性を有しており、Stxによる炎症性 サイトカインの活性化も脳細胞障害の原因となる。 ◎一方、2週間目前後に見られる中枢神経障害は、 ・IgGの関与が想定されているが、詳しくは不明。 ・ただ、Stx antibody(Stx抗体)はStxの細胞障害を防ぐ作用を有していると 考えられている。IA施行により、Stx-bound antibody complex(Stx免疫複合体)を 除去することや、Stx自体を除去することで中枢神経障害の改善が得られている のかもしれない(PLoS One 2011; 6: e19136. Am J Kidney Dis 44:E50-E58.)。 本日のまとめ ◎HUSはTMAの一部である(TMA=HUS+TTP)。 ◎HUSは下痢(腸管大腸菌感染)を契機としたD(+)HUSと 下痢を伴わないAtypical HUSに分類される。 ◎TTPにおいてはPEが有効である。 ◎Atypical HUSにおいてはPEが有効である可能性が高い。 ◎D(+)HUSでは支持療法を凌駕する有効な治療は無いと 考えられていたが、最近の欧州での症例報告によると 1, Eculizumab投与 2, PE施行 3, Immunoadsorption施行 が有効である可能性が示唆された。 ◎ただし、HUSにおける臓器障害(特に中枢神経障害)は病因が いまだ不明である点が多く、上記1-3の治療が有効である機序も 不明な点が多い。一応、有効性の機序として可能性が高いのは、 Shiga toxinや、Shiga toxin免疫複合体の除去であると想定され ている。