Comments
Description
Transcript
萩本 恒久
〈体育科〉一人一人の児童が「分かった」 「できた」 といえる授業づくり ~ユニバーサルデザインの視点を取り入れた体育科授業の指導と工夫~ 各務原市立稲羽西小学校 教諭 1 主題設定の理由 萩本 恒久 を明確にした単元指導計画を作成した。 昨年度の全国学力学習状況調査の結果から、筋 また、ゲームの途中で本時のねらいに迫る場や 道立てて思考・判断・表現する力を育むことが課 ポイントとなる児童の動きを意図的に見つけて指 題ととらえ、今年度本校では、児童の困り感に焦 導する「ストップゲーム」を随時行い、児童が本 点をあて、ユニバーサルデザイン(以下、UD) 時のねらいを意識できるようにした。 の視点を取り入れた授業実践をすることにした。 ②技術ポイントの明確化 UDの視点を取り入れるにあたり、本校では研 「技術ポイント」を1単位時間に1つ示すこと 究教科を「算数」にして実践を進めているが、本 で、何をどのようにするとねらいを具現できるか 来UDとは教科を限定するものではなく、全教育 を明らかにして取り組めるようにした。 活動において取り入れられるべきものであると考 (2) 視覚化(見える化) えられている。今年度私は5、6年生の体育の授 ①ポイントを視覚化する工夫 業を担当している。体育科指導に対して苦手意識 図2のように棒に吊る をもつ教諭が多いことから、教師とっても分かり したボールを使うなど、 やすいことが大切であると考える。本実践では、 技術ポイントの「見える UDの視点を取り入れた体育科授業の在り方につ 化」ができる教具を工夫 いて、具体的実践を通して検証しようと考えた。 した。 2 研究仮説 ②掲示物をより視覚化(見える化)する工夫 図2 ボールの軌道確認 体育科の授業において、基礎的基本的な技能の 毎回の授業ではホワイトボードに(1)②で示 習得における児童の困り感等を十分に把握し、U した「技術ポイント」の詳細が視覚的にわかるよ Dの視点を柱に児童が「分かる」 「できる」体育授 うに写真とともに提示した。 業を展開し、児童が様々な考えを出し合い、互い (3) 共有化 に学び合う場を設定して授業を進めれば、有能感 ①つまずきの実感を起点にしたルールの簡易化 が生まれ、体育が好きな児童が育つであろう。 3 研究内容 どの子も安心して楽しく活動できるよう児童と 話し合いながらルールを決めた。 UDの3要素を柱とした体育科授業の確立 【改善したルール】キャッチバレーボール (1)明確化(焦点化) ○ サーブは、下から投げ入れる。 (2)視覚化(見える化) (相手コートの後衛まで) (3)共有化 4 研究実践 UDの視点を取り入れ、児童の困り感に寄り添 い、成功体験を味わわせる実践を2つの単元で行 った。 実践1 第5学年 ソフトバレーボール (1) 明確化(焦点化) ①ねらいの明確化 単元を通して付けたい力と役割(教師にとって は「教えること」 、児童にとっては「学ぶこと」 ) ○ 1本目は、キャッチする。 ○ 3本で返す。 ○ ポジションはローテーションする。 ②仲間の姿の共有化 審判チームが仲間のよさを試合終了時に伝える ことで、 互いに認め合う評価活動の工夫を図った。 実践2 第6学年 跳び箱運動 (1) 明確化(焦点化) ① ねらいの明確化 ステップ1 台上前転 識させるために、図8のように背中を押し上げる ステップ2 大きな台上前転 補助活動を取り入れた。 ステップ3 首はね跳び 【学習カードの第6時(最終時)の振り返りより】 ステップ4 頭はね跳び それぞれの技は、前のステップの発展技である ことを単元の導入時に動画や写真を使って説明し てから授業に臨んだ。 事前アンケートで跳び箱が「嫌い」と答えた児童 ◇今までこわかった跳び箱でしたが、台上前転ができたのでよ かったです。 (M子) ◇首はね跳びまでいけなかったのが残念だが、4年生のときの トラウマみたいなのは消えてくれたのでよかった。 (Y男) ②授業の約束・練習の約束の明確化 跳び箱運動における「授業の約束」や「練習の 5 成果と課題 (成果:○、課題:●) 約束」を示す掲示物を常設して実践を進めた。 ○UDの視点を柱にすることによって学びを充実 (2) 視覚化(見える化) させることができた。 ①場の設定の工夫(恐怖感をなくす「見える化」 ) 【明確化】 恐怖感をなくす支援 ・本時のポイントを写真で明確に示すことは具体 を行い、以下の図3~ 的に児童達にイメージをもたせる上で有効で 図7の手順で練習の場 あった。 【視覚化】 を設定した。 図3 高い所へ ・ 「恐い」という恐怖感、 「できない」という苦手 意識を取り除くための場の設定や教師が提示 した写真資料、動画資料が有効であった。 【共有化】 ・約束や学習カードを活用した話し合いの場を設 図4 着地 図5 跳び箱をイメージ けることで、相互援助活動を有効に働かせた。 ○本実践の単元指導計画や学習カード、児童に提 示した資料が指導に「困り感」をもつ教師への 有効な支援となった。 ●児童の「困り感」の具体を教師が事前に予測し 図6 跳び箱Ⅰ 図7 跳び箱Ⅱ たり、指導の過程の中で出てくる「困り感」に ②ICT機器で技や動きを視覚化(見える化) 対処したりできるよう、さらなる有効な支援の (ア)教師の示範ビデオの再生(動画) 在り方について実践を深める必要がある。 教師が事前にビデオカメラで台上前転から頭 はね跳びまでの技を動画で撮影しておき、それを いつでも確認できるように体育館に準備した。 (イ)ビデオカメラの活用 自分の技を仲間に撮影してもらいできばえを 確認する。 (3) 共有化 互いの技を高めるペア活動 技のポイントについ て、助言し合うペア活 動を行った。また、首 はね跳びや頭はね跳び で背中をそることを意 図8 補助活動 ●全ての児童が、 「分かった」 「できた」と実感で きる単元指導計画を工夫する必要がある。