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英吾吾不斗教育実習におけ る Diary Studies の試み

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英吾吾不斗教育実習におけ る Diary Studies の試み
広島大学学校教育学部紀要,第I部,第17巻(1995), 47-53頁
英語科教育実習におけるDiary Studiesの試み
深沢 清治・野津 久美*
(1994年9月9日受理)
A Pilot Study of
Analyzing Student Teachers Diaries
in English I.anguage Teaching Practice
Seiji Fukazal,va and Kumi Nozawa
Diary studies have been well established as a research tool in second language learning/acquisition studies,
and recently their use has been extended to the field of teacher education. Writing journals or diaries
provides an excellent opportunity for students to observe themselves, collect data about their own teaching,
and to use that data tor self reflection and hence their professional growth.
The present paper analyzes the daily reports written by ll student teachers during their two-week
teaching practice. As a result, some positive changes in their approach and focus of attention in the
classroom hal,e been noticed to emerge. Finally, it is suggested that this reflective approach be applied to
future teaching practice or teacher education program coordinated between university and the attached
school.
I.はじめに
教師教育プログラムにおいて教育実習の持つ意
義はますます大きくなりつつある。豊かな実践力
を備えた将来の教師を養成するためには、教師教
に任せきりになっていた実地研究すなわち教育実
習を、大学、委託実習校、教員志望学生の三者に
よる共同作業ととらえ直すことが必要であろう。
一方、 1980年代以降、教師教育を知識・技術伝
育カリキュラムの中でコース履修を終えた最終段
階としての位置づけを持つ従来型の「完成型」教
育実習に対して、教育実習を教師教育カリキュラ
ムの中間点と考え、教育実習前の事前指導に加え
て、実習体験からのフィードバックをもとに自ら
の教育実践を研究対象とできる自立的教育実践家
達を中心としたtrainingから効果的な授業の原
理・原則の理解と応用力の養成を目指したeducation/developmentととらえようとする視点へ
の移行がみられる。教室という環境での活動の重
要性が再認識され、 action research などさまざ
まな教室を研究の出発点とした分野が現れてきた。
しかし、これまでの授業研究の多くは、専門家に
を養成するための「研究型」教育実習へと視点を
広げていくことが求められている。これを実現す
るためには、教師教育に関わる全ての者が実習の
事前・事中・事後指導の全ての段階において連携
を取り合い、これまで附属学校および実習委託校
よる分析を出発点としたものであった。そこで、
将来にわたって、教師自ら授業改善を目指すため
には、授業診断のための方策として、授業者自身
の授業観察・批評をもとにした Diary studies
の持つ意義は大きいであろう。
本研究は教育実習による授業反省日誌をもとに
* Kii火Tfillrミ31とr;川】Tr.:
-47-
深沢 清治・野澤 久美
した Diary Studies の試みであり、日誌の分析
を通して、教育実習生の授業観察の視点の特徴、
実習期間を通しての英語授業に対する自己・他者
評価の際の視点の変化、および今後の日記研究の
方向について概観することをその目的とする。
II. DiaryStudies とは
1.定義
外国語学習のプロセスにおいて、学習者が自己
の学習・習得を振り返ったり、外国語プログラム
の有効性について評価するために書き残した記録
を利用することは近年、日記研究(Diary
Studies)と呼ばれ、外国語(第2言語)教育学
の研究方法として、注目されつつある。
2.日吉己研究の目的別分績
日記研究には、授業での出来事や考えを後の反
省、内省のために記録すること、さらに「書く」
というプロセスが教育活動についての自らの発見
を促す、という2つの目的があると思われる。こ
れまでの日記研究の結果の利用について、
McDonough(1994)は次の3つに分類している。
1)教育手段としての利用
学習者に授業に関しての日記を書かせ、教室
活動に対する感想や好みや学習の進度につい
ての情報を得ようとするもの。
2)研究手段としての利用
学習者の日記から学習者自身の学習スタイル
や学習方略を明らかにしようとするもの。
3)教師教育の手段としての利用
教師教育プログラムの課題として日記研究を
Richards etal. (1992:107)において、日記研究は
次のように定義されている。
位置づけ、教育実習や履修コースについてコ
メントさせるもの。
(in research on first and second language acquisition) a regularly kept journal or written
record of a learners language development,
often kept as part of a longitudinal study of
language learning. With a diary study, the
researcher records examples of the learner s
linguistic production in as much detail as possible, as well as information about the communicative setting involved (i.e. the partici・
pants, the purpose etc.). Diary studies are often
used to supplement other ways of collecting
data, such as through the use of experimental
techniques.
このように、当初の日記研究は第2言語習得研
究の一環として、学習者の言語発達のプロセスを
探るための手段であったO これに対して、 Bailey
(1990:215)が、
A diary study is a first-person account of a
一anguage
一earning
or
teaching
experience,
do-
cumented through regular, candid entries in a
personal journal and then analyzed for recurring patterns or salient events.
と述べるように、日記研究は対象として学習者だ
けでなく教師をも含み、さらに、授業研究
(classroom research)という研究分野の確立に
より、教師による自らの授業の内省に立った reflective teaching のための方法として、教師教
育プログラムの中で注目を集めつつある。
このうち、教育手段としての利用は、日記研究
という研究分野の出現よりもはるかに早く、さま
ざまな目的、規模、方法で個々の教師が授業の自
己評価や学習者の理解度の確認をねらったフィー
ドバックの手段として取り入れてきたものである。
また、研究手段としてはBailey(1983)の研究の
ように、研究者自身が学習者として大人のフラン
ス語学習クラスに参加した際の競争心や不安につ
いて日記につけたものを分析した例もある。さら
に近年、注目されているのは、教師前教育の一環
として、教育実習中に実習生に日記を書くことを
課し、教室での実践を振り返り意識化させる方法
である(Murphy-O'Dwyer 1985; Bailey 1990;
Thornbury l991) 0
こうした教育実習生による日記研究を含めて、
これまでは学習者の日記を対象とした研究が中心
であったのに対して、 Jarvis(1992)やMcDonough
(1994)の指摘するように、 in-serviceコースの中
で日記研究を取り入れているような、ある程度の
教育経験のある教師による平素の授業実践に基づ
いた日記を分析し、そこから教師のselfdevelopmentへとつなげようとする研究は数が
少ない。こうした研究方向の指摘は近年のclassroom research に端を発するものと考えられ、
teacher-as-researcherの方向を進めるためにも、
今後の研究が期待される側面である。
-48-
英語科教育実習におけるDiary Studiesの試み
research-use
Langu age ー
earn ing
or teaching) histo ry
Second lan guage
(teach ing or
learn ing) experience
i
C onfidentialand
cand id d iary
pedagogic use
R e"′
ritten pub ー
iC
d iary
図1 日記研究の目的別分類
こうした日記研究のこれまでの流れを概観する
と、日記を書く側(教師・学習者)と日記分析の
日的(教育・研究)によって、図1のように分類
することが可能であろう。さらに、そのうち、今
後の進展が期待される分野は、上図の第3領域に
Sifting the data
fo rtrends
and q uestions
I
属する実践経験のある教師による日記の研究的利
用であろう。
D IA R Y ST U D Y
Language ー
ear∩lng
h isto ry
III.日記研究の方法
日記研究には、確立された方法論があるわけで
はないが、学習・教育日記の研究過程として
Bailey (1990)は日記に書き込む、およびその記
述をもとに分析を行う、という2つの過程に分別
し、実行のプロセスを図2のようにチャート化し
ている。
さらに、日記を書く際の留意点として、できる
だけ授業直後に、書くことに集中できる時間を持っ
て、十分な時間をかけ、それが出来ない場合は興
味のある部分に絞って、さらに、はじめは文章の
スタイルや文法・構成は気にせずに書くこと、を
挙げている。
Ilr.教育実習生の授業批評日誌をもとにした
diary studiesの試み
本研究においては、英語科教員志望学生の教育
実習を機会として、日記研究の可能性を探ろうと
したo分析資料、方法、結果は以下の通りである。
1.日的
本調査は、教育実習生の授業批評日誌をもとに、
教育実習を通して実習生が授業に対して持つ視点
R ew ritten pubHC
diary
-n terp retive
analysis
図2 日記研究のプロセス
の変化を見ようとする試みである。そして、日誌
の分析を行い、その結果をもとに学部における英
語科教師教育と附属校における教育実習との間の
有機的な連携を図り、さらに実習事後指導に資す
ることを目的とする。
2.分析資料
今回の分析資料は、広島大学学校教育学部(小
学校教員養成課程) 4年次学生11名が、広島大学
附属東雲中学校で平成5年11月8日∼11月20日の
2週間にかけて行った教育実習期間の後に附属学
校に提出した、次のような様式で書かれた各実習
生による授業後の批評会の記録である(例参照)0
-J9-
深沢 清治・野津 久美
表1教育実習生の日誌に見られる記述の観点別分類
A
ll
月
9
日
B
. 自己紹 介か らうま く本時 のねらいにつながった0
. 班で言わせ た時 、評価 すればよかった。
. 作業のす んだ生 徒へ次の指示を0
. 展開の場 面は、 もつとスピー ドア ップ して
. 何回読めたか、 を生徒 に聞 くこ とは評価の一つ0
ll
月
. 初 めての、 (最 上級 の) - est もさ らり と入れ た うまい導
人だった。
ll
日
. 展開のあ との本読み は、流れ を切 らずに続 けて読 ませたか
-T .'-o
.班 で活動させた ら、班 に評価 を0
ll
月
12
日
ll
月
15
日
.吊初 の生徒 のあいさつが きちん とで きて いなか った0 ここ
でビシッ とさせた ら、授業の流れ にめ りは りが 出たかもし
れ ない。
O ralIntroduction が うま くできた0
. 適切な ピクチャーカー ドに よる導入が徹底 していたので、
その後の活動 がうま く進 んだO また、 その ピクチャーが展
開の場面 まで活用 できたのは、 とて もよか った0
. 静かだけれ ど、集中 していないムー ド0
.練習 時間を とった後に、「
読 め ません0」 といった生 徒への
指 導は、授 業 をごまか さない姿勢で、 とて もよかった0
.生 徒への自然な言葉か けがで きていた0
. 「
∼ して くだ さいO」で はな く、「
∼ しまし ょう0」 で、学
習 しよ うとす る態度 を育てたい0
ll
月
16
目
. 時間設定が まず い。
. 本読み を次 の活動へ つなげ るには ? 「〇回読んで みよう」
の 目標達成 できなかった子への示唆 に富 む授業 の流 れを0
何回 よりも何 に気 をつけるか、だO
. 指導過程の節 目でのね らいがわか らない0
. 評価 の言葉 が具体 的で よい。
「自信 を もって言 うと、 よくな るよ0」
「
usually,alw ays な どを使 う と、表現が豊か になるよ0」
ll
月
18
日
ll
月
19
冒
ll
月
20
日
. まとめ よりも、展開の活動 を増 や したい0
. 音→ w riting の原則 は、大事 だ0
書 くこ との助 けにな るよ うな、音 の入 れ 方を考 えたい0
(生徒には、や はり書 くこ とは抵抗 があ るようだ0)
. プ リン トの扱い に時間が かか りすぎた。 宿題にす るなど、
臨機応変の対応がい る0
.既 習事項 のお さえの授業展開 にな りえていない0
.説 明口調の (いつ もと違 う) 授業 の流 れだ0
. 指導案通 りに流 すことが、何 よ りとは思わぬが、無駄な こ
との介入が多 く、指導案 を無視 した授 業展開 とな ったC
. なか なか答 えの出せない生徒 を待つ こ と0
. 生徒 に言葉 かけが少なす ぎた0
. 生徒全員 を授業 に参加 させ ようとす る姿勢 があ り、浸 てい
る生徒へ も積極 的に指 導 していて よか った0
. 生徒 に対 して、下手 に出す ぎ0 「この50分 は私が指導 し切
るのだ !」 の強 い姿勢が絶対 ほしい。
. 「
感 情を こめ て読む」 こ とのみ強 調 しす ぎて、教師主導の
流れ となった0
. スムーズな導入で、ゆ と りを もってね らいに向か っていけ
>.
.班活 動、個 人活動の使い分 けが的確0
-50-
. ペ ア発表 に対 して、一人 ひ とりに評価で きていた0
. 全員 に発表 させ る配慮 があった。
英語科教育実習におけるDiary Studiesの試み
C
D
. 生 徒 自身 の生 活 を表 現 さ せ るべ きだ 0
lea v e fo r と g o to の 関 連 を お さ え た い 0
g et の 既 習 の 意 味 の お さ えが で き て い な い 0
. 新 出 単 語 を う ま くと りあ つ か う こ と0
. 指 導 案 の ね ら い は 、 「言 え る よ う に」 よ り も 「使 え る」 の 方 が
よい の で は ?
.
.
.
.
.
.
も つ と、 手 際 よ く0
話 す 練 習 の 時 に 、書 か せ な い 指 示 を。
ペ ア 発 表 は 、起 立 さ せ て 0
板 書 の 工 夫 が ほ しい0 (こ だ わ りた い)
赤 チ ョー ク よ り黄 チ ョー クが い い 0
リ ピー トの 回 数 の 目安 は ?
. 効 果 的 な ピ クチ ャー カ ー ドの利 用 。
. 最 上 級 と共 に 使 わ れ る、 in ∼ と 0 f∼ の 対 比 を具 体 的 な 例 文 の
中 で 定 着 させ た い0
. 最 上 級 と共 に 使 う th e に は こだ わ っ て い て よ か っ た0
.
.
.
.
答 え 合 わ せ にペ ア ワ ー ク を活 用 した い 。
指 名 に 手 間 が かか りす ぎ0
「∼ して くだ さい 。」 で な く、 C la ss ro o m E n g lish を使 い た い0
先 生 の 声 が 大 きか っ た の で 、生 徒 の 声 も大 き く出 た 0
. 読 む ス ピー ドを指 示 した の で 、読 み や す い 0
. 大 事 な 箇 所 を、 わ ざ と間 違 え て生 徒 に 気 づ か せ る方 法 は、 効 果
的だった0
. 「放 課後 何 を し ます か 」 に対 す る応 答 と して は 、g e t h om e で
は な く、g o h o m e で は ?
. 先 生が 問 い 生 徒 が答 え る 、とい う一 方 通 行 の 練 習 ばか りだ った 0
. ペ ア練 習 の 際 の指 示 を き ち ん と出 す べ き。
. 先 生 と発 表 者 2 人 だ け の や り と りに な らぬ よ う に。
. 時 間 内 に 作 業 が 終 わ った 生 徒 へ の指 示 を した い 0
. 一 度 に練 習 させ る文 が 多 す ぎ る0
. 音 の チ ェ ッ ク を きち ん と。
. あ る程 度 の 原 理 、 原 則 は教 え るべ き だ0
. 活 動 の前 に は 指 示 、要 求 を0 活 動 させ た ら評 価 を き ち ん とす る 0
. 外 国 の風 物 に つ い て も、 ふ れ て お りよ い。
. 前 時 の学 習 事 項 、c a ll を使 っ て い て よ い 0
. "W h a t d o y ou d o ?" に 対 す る生 徒 の 「何 もし な い」 とい う答
え は、 予 想 して教 材研 究 して お きた い 。
. 先 生 が 本 文 を暗 記 して 自分 の もの に して い た の は 、大 事 な こ と。
. 単 語 の意 味 説 明 と と りあ げ る例 文 に矛 盾 が あ る0
. 元 気 の な い生 徒 達 に 負 けず 、 始 終 、 元 気 な トー ンで 引 つ ば つ て
い った の は 、 よか っ た 0
C la ssro o m E ng lish を積 極 的 に 使 い 、 よ い0
. 1 対 1 の活 動 の 発表 を 、 聞 いて い る生 徒 へ返 して い く工 夫 が い
る。
. 読 みの ス ピ - ドを上 げ る こ と にの み 、 気 を と らわ れ て い る生 徒
へ 的 確 な ア ドバ イ ス を 0
. 板 書 に、 い きな り B ec au se … は不 適 切 0
. 初 め て の一 斉 読 み は あ る程 度 そ ろ え て0
L iste n in g の 前 に、 聞 き取 り を ポ イ ン トを提 示 した の は 、 よか
った 0 (集 中 した )
. 先 生 自身 が 揺 れ て い る もの ( 3 単 現 の S) を生 徒 に 要 求 して も、
定 着 しな い0
. 生 徒 の 実 態 を み て、 先 取 り して 教 え て よ い内 容 が あ っ た の で は
9
. 新 出 単 語 の 調 べ が よ くで きて い た 0
. 全 体 の 板 書 計 画 が必 要 0
. 個 人 の 活 動 と全体 で の 活 動 の バ ラ ンス を0
. 「今 か ら どん な活 動 を す るの か 」 の 指 示 を的 確 に 出 さな い と0
. ま とめ の チ ェ ック こ そ 、 て い ね い に 先 生 が す る の で な く、 生 徒
にや らせ た い。
. ま とめ の 問 題 は ポ イ ン トを つ い て い て よい 。
. 教 科 名 の 一 覧 表 が 必 要 だ っ た0
. 授 業 で 使 う記 号 を習 慣 化 さ せ る た め に も、 あ る程 度 の も の は教
え るべ きだ 0
. 最 上 級 と共 に 使 う 、in ∼ と 0 f∼ の 図 を用 い て の 説 明 は 、 先 生
自 身 が よ く消 化 し てお りわ か りや す か っ た 0
. 生 徒 の 板 書 の チ ェ ッ ク を す る こ と0
. す ぐに 質 問 の答 え を与 え る の で は な く、 生 徒 自 ら が答 え を 求 め
られ る よ う に、 ヒ ン トを 出 して や る 手 だ て が い る0
. 初 出 の もの の 中 に、 板 書 の助 け の い る もの が あ っ た の で は ?
. 先 生 自身 の 旅 行 体 験 を生 か し、 時 差 の 表 現 な ど も取 り混 ぜ て 、
興 味 の わ く内 容 だ った 0
. 地 球 儀 な ど も理 解 の 助 け に な っ た の で は ?
I d o m y h om e 、
、
▼
o rk . か ら、 H e d o es h is h o m e w o r k . を 目指 す
に は 、 ど うす れ ば よ い の か。 H e d o m y h om ew o rk . で 止 ま つ
て い る生 徒 が ほ とん ど。
. 生 徒 に とっ て は初 め て の人 名 、 地 名 等 を o ra l で 示 す 時 は、 文
字 の助 け もい る0
. ビ デ オ の 中 で 台 詞 を羅 認 した の は よ い0
. プ リ ン トの 扱 い に時 間 が か か りす ぎた 。 宿 題 にす る な ど、 臨 機
応 変 の 対 応 が い る0
. 5 0 分 講 義 を した 形 に な っ て し まっ た 。
. ビデ オ の せ りふ は長 くて 、生 徒 に 注 意 して ほ し い箇 所 の焦 点 が
ぼ け て し ま った 0 見 る前 に情 景 説 明 をい れ た り、 聞 き とつ て は
しい 表 現 をな ん らか の 形 で 示 す工 夫 が い る。
. ビデ オ を 見 せ るだ けで 終 わ っ た の は 残 念 0 生 徒 に させ た か っ た
活 動 は 何 だ った の か 。
. 本 を読 み な が ら、 机 問 巡 視 す る余 裕 が い い 。
. 生 徒 に 自 分 な りの 訳 を させ た の は よ か っ た0
. ビ デ オ の 中 で 実 際 の せ りふ を確 認 で きた の は よ か った 0 (興 味
づ け)
- 進 行 形 を理 解 した 上 で の授 業 だ つた か ?
B e 動 詞 の あ とに 一
般 動 詞 が くる こ とに 対 す る生 徒 の 不 安 や揺 れ を予 想 して い な い
か ら押 え が弱 く、 定 着 して いな い。
. 何 を さ せ た い の か 、 指 示 を は っ き り と。
. 生 徒 の 質 問 の 意 Eg をつ か み き れ て い な い 。
. 発 音 の しか た の ア ドバ イ ス が わ か りや す い 0
. グ ル ー プ ご との 活 動 を生 か せ た0
. とっ さ の判 断 で 、 ペ ア 練 習 を組 み込 ん だ が効 果 的 だ った 0
. 先 生 自 らが 演 じれ ば 、 生 徒 も感 情 移 入 を す る 、 とい う よい 手 本
だ っ た0
-51-
深沢 清治・野津 久美
生徒の言動、行動、反応および生徒に対する
指示、援助、評価など学習者に対する関わり
についての指摘
批評会結果 ○○教生 平成5年11月9日
【授業者反省】
・元気にやりたかったので、声を精一杯大きくし
てやったが、そのために発音が悪くなってしま
7sm
・ペアワークやノートをとる時間をきちんと設定
してやらせればよかった。
・生徒の質問を予想してなかったので、確信の持
てないまま答えてしまった。
【観察者反省】
・板書計画がされていたのだろうか。こだわって
もいないようだったが一一。
・ノートを書き終えた生徒への次の指示もあると
よかった。
・リピートの回数は、どのように決めればよいの
だろうか。 (以下略)
【指導教官コメント】
(略)
実習期間が短いため、一人あたり2時間分までの
記録であり、また、実習開始前に本調査について
C 教材研究、教具の利用に関する記述
言語材料、教科書など教材一般に対する指摘
D 指導技術に関する記述
具体的な指導技術や教材・教具の使用に関す
る指摘
さらに、教育実習生の日記の記述方法について
も失敗、成功などの事実の記述、それに対する原
因の分析、さらにそれについての評価・批評、最
後にそれらに対する改善の方法、といくつかのパ
ターンを兄いだすことができた。分析の結果から
得られたこのような視点のそれぞれについてその
具体例となる指摘をA、 B, C, Dの記述別に列
挙しながら、視点の変化の推移を得られた資料か
らまとめていくと前頁の表1のようになる。
ii)考 察
2週間の教育実習を通して、実習生の授業観察
の視点はいろいろな変化を見せる。その原因とし
指示をしていなかったので、日記研究本来の資料
と見なすことは難しいが、 2週間の実習体験を通
して実習生の授業に対する視点の変化を見るため
の資料として利用することは可能であろう。
3.分析方法
分析方法として、筆者らはまず、日誌の記述を
特徴別に簡略化して抽出し、列挙した。分析にあ
て、大学において教師前教育を通して受けたもの、
実習校での指導教官の授業参観及び指導、さらに
何よりも実際に1学級の生徒とのインターラクショ
たっては、 qualitativeな方法を採り、あらかじ
め分析視点の設定は行わなかった。当初は各実習
まず、第1に全体的な視点として、前述の4つ
の視点のうち、 C, Dの視点、つまり教材の研究・
解釈、及び指導技術的側面に大きな関心があるこ
とがわかる。そこには全体の授業の流れよりは、
自分の予習にもとづくシナリオを順にこなす態度
がうかがわれる。第2に、日誌の記述の方法にも
生の2週間の変化を見ようとしたが、実習体験時
間が短いため、観察者の反省意見を総合し、その
推移を見ることにした。この中には複数の教育実
習生の意見が混在しているが、グループとしてど
のように視点が変化したのかを分析することにつ
とめた。
4.結果と考察
i )教育実習期間における授業観察の視点の変化
分析の結果、本研究における教育実習生の授業
観察視点を次の4つに分類することにした。
A 指導過程(授業の流れ)に関する記述
復習から展開・整理に至る指導過程全体の流
れ、指導過程間のつながり、に関する指摘
B 生徒観(生徒への指導的評価、声掛け)に関
する記述
ンを通して得られた経験、と少なくとも3つの要
因が考えられる。以下では、考察として11人の実
習生の授業批評日誌に見られた記述の中から見ら
れた変化をまとめていくことにする。
特徴が見られる。 「一一していた」と事実情報お
よび感想に留まっている「記述・感想型」から、
「なぜ--・なったのか」と原因を究明しようとす
る「分析型」へ、そして、分析に基づいてどのよ
うにその場面に対処するべきだったのかを考えよ
うとする「問題解決型」へと発展していくと仮定
すると、多くの記述は、特に実習当初を中心に印
象的価値判断を中心とした「記述・感想型」が多
く見られる。第3に、視点Bにあたる生徒への指
導的評価の視点が最も欠落している。しかしなが
ら、実習期間中に最も伸びるのがこの視点である。
-52-
英語科教育実習におけるDiary Studiesの試み
第4に、教材解釈・研究に対して生徒不在である
ように見受けられる。教材研究が教師のための予
習に終始していて、生徒からの反応を予測した上
での教材研究にまで至っていないのが感じられる。
最後に、授業後の実習生の授業批評および実習指
導教官の指導助言が、すぐ翌日の授業に生かされ
ているという実習生独特の考え方の柔軟さ、ある
いは個・グループとして成長していく姿が視点の
変化から明らかになった。
5.教育実習生を対象とした今後の日記研究の課
題
今回の日記研究を通して、大まかではあるが前
述のような問題点や特徴が浮き彫りにならた。こ
れらの中には、実習校での経験を通して研績され
るもの、あるいは学部での教師教育プログラムに
含まれるべきもの等がある。教育実習をより有意
義なものにするためにも、学部・附属の共同によ
り日記研究の結果を英語科教師教育の中で活用し
ていく必要があろう。今後の課題として、本格的
な日記研究のためには、事前に日記の記述のため
の様式を設定しておくこと、後の授業の自己反省
のためにも、授業者が日記をつけるための時間を
授業直後に確保すること、日記をもとにした事後
指導によりフィードバックを図ること、が望まれ
な記録として、今後、実習後の事後指導に活用し
ていく必要があろう。
参考文献
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Baily, K. 1983. Competitiveness and anxiety in
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method for evaluating teacher training. In J.
る。
Alderson (ed.), pp. 97-128.
Richards, J. C. and D. Nunan (eds.) 1990. Second
Ⅴ.終わりに
本研究の動機は、教師教育プログラムに教育実
習批評日誌がどのようにフィードバックできるの
かを考えることにあった。実習生および指導担当
者の時間と労力をかけて行われる教育実習をより
効果的にするためにも、実習の反省・日誌は単な
る報告書として終わらせるのではなく、将来の教
師としての成長にフィードバックするための貴重
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