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詐欺による保険契約

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詐欺による保険契約
詐欺による保険契約
(1 )
民法 にお いて い、錯誤 につ き無 効 とされ 、詐欺 につ き取消 とされて い るのは なぜ か。
(2 )
保 険約款 にお いて、詐 欺 につ き無効 とされ てい る理 由 は何 か。
(3 )
民法 上 の錯誤 ・詐 欺 と約款 上 の詐欺 との 関係 につ い て。
(4 )
次 の判例 I お よび II を検 討 して下 さ い。
判例I 京都地裁昭和62年3月11日判決
[事実の概要]
①生保会社10社(Ⅹら)は保険契約者・被保険者Y
との間で、昭和59年11月2日から同年12月1日まで
の間に入院特約等を付加した生命保険契約を締結し
た。
②Yは同年12月20日、軽乗用車を運転中、犬がとび
出したのを避けようとして信号柱に衝突し、左屑部
打撲傷、頚部捻挫の傷害をうけ、113日間入院した
としてⅩら各社に入院給付金を請求した。
[判旨]
①本件各契約は、昭和59年10月下旬から同年12月中
旬までの極めて短期間の間に締結されたものであり、
しかも、Yは、昭和59年10月26E、共済生活共同組
合との間で、共済契約を締結したことが認められ、
また、Yは、建築労働組合加入に伴って、昭和59年
11月3日、同組合の一人親方労働者災害補償保険に
も加入したことが認められるところ、このように、
わずか2カ月足らずの間に16にも及ぶ保険等に加入
すること自体、通常考えられないことである。(中
略)しかしながら、Yは、肩書住所地に転居した昭
和57年以降、これといった定職をもたず、本件各契
約締結当時も、一人暮らしで土方で日銭を穣いだり、
競輪や競馬でたまに儲けるといったその日暮しの状
態で、貯えもなく年収は100万円程度で食べていく
のが精一杯であったことが認められ(中略)Yは、
本件各生命保険契約を締結した際、保険会社に対し、
左官を自営している旨虚偽の申告をしていること、
他社の保険加入状況について、「なし」とのみ申告
し、本件各生命保険契約の申込みについて申告して
いないこと、保険会社数社に対し、月収40万円、年
収300万円くらいあるいは推定資産500万円などと全
く事実に反する申告をし、しかもその金額自体まち
まちであることが認められること、本件各契約には
不自然な点が多く、そのうえ、本件各契約はYが自
発的に行ったものであることが認められるところ、
昭和59年当時のYは食べていくのが精一杯で、当時、
8
継続収入の目安もなかったことが認められるのに、
本件各契約の保険料月額が合計で15万円を超えると
いうのであるから、以上の諸事情をみる限り、Yが
本件各契約を締結したについては、保険金の不正受
給の目的があったといわれてもやむを得ないという
べきである。
′ヽ
②Yは、本件事故により、「右(左)肩部、腰部打
撲傷、頚部捻挫」の傷病名で、本件事故翌日の昭和
59年12月21日から翌60年4月13日まで0病院に入院
し、退院後も同病院に通院したことが認められるこ
と、本件事故直後においても、右信号柱に損傷はな
かったことが認められること、本件事故車両は、本
件事故により左前部のヘッドランプ付近が多少凹接
したのみであることが認められることに照らせば、
かなり緩やかな速度で信号柱に衝突したと解される
ところ、本件事故現場に明確なスリップ痕はなかっ
たと認められるのであるから、Yは、低速度で進行
して急激なブレーキ操作もしないまま信号柱に衝突
したと推認でき(中略)Yは本件事故発生を通報す
るため、徒歩で現場と警察派出所の間を30分あまり
かけて往復していること、本件事故の実況見分にあ
たった警察官が、その際被告に対し、どこか痛いと
ころはないかと尋ねたのに対し、Yは身体の不調を
訴えることもなく、どこか打撲したという申し立て′ヽ
もしなかったこと、約15分間の実況見分の間、右警
察官からはYに身体の具合の悪い様子はみうけられ
なかったことが認められ、Yの行動は、入院した交
通事故の負傷者の行動としてはあまりにも不自然と
いわざるを得ない。Yは、実況見分終了後の午後7
時40分頃、0病院で診察をうけいったん自宅に戻っ
たものの、同日午後10時30分頃、激痛かあるという
ことで再び同病院を訪れたが入院せずに自宅に戻っ
たこと、ところが、その直後の同日午後10時45分に
Yは自宅から救急車を要請しそのまま0病院に搬送
されて入院したこと、Yは、救急車が自宅に到着し
た際、飲酒直後であり、訴外Aがその場に同席して
いたこと、0病院入・通院中のYの症状は、Yの愁
訴のみによるもので他覚所見がないことが認められ、
以上の諸事実に照らすと、Yは詐病によって入院し
た疑いが極めて強いといわざるを得ない。(中略)
Yは、訴外Aの関与のもとに、入院給付金を詐取す
る目的で本件各保険に加入し、故意に本件事故を発
生させたものと優に推認することができる。
判例II 高松地裁昭和60年6月21日
[事実の概要]
①Xは、昭和53年2月4日、自己を保険契約者・被
保険者として、Y保険会社との間で、災害入院特約
および疾病入院特約等を付加した定期付養老保険契
約を締結し、保険料月額13,280円であるが、入院給
付金日額2万円である。
②Xは、本件契約以前に、昭和51年11月から昭和53
年2月までの間に、他3社との間で、本件契約と同
種の4件の契約を締結し、保険料合計月額42,970円
であるが、災害・疾病入院給付金日額4万円となる。
③Xは、本件契約後、昭和53年9月から昭和54年7
月までの間に、他4杜との間で、本件契約と同種の
5件の契約を締結し、その保険料合計月額34,270円
であるが、入院給付金日額は合計35,500円である。
⑥Xは、
a.昭和53年1月1日、犬の尻尾を踏んで転倒し頭
と屑を打ったが、Ⅹ線検査で異常がないのに3日後
から頚部捻挫等により65日間入院。
b.昭和53年3月9日から上記aの災害で48日間入
院。
C.昭和53年7月12日から195日間、昭和55年2月7
日から97日間、それぞれ十二指腸潰瘍にて入院。
d.昭和55年9月8日から129日間座骨神経痛にて、
昭和56年3月11日から99日間肝障害にて、それぞれ
入院。
( したとして、Yを含む3社から合計1,441万円の入
院給付金を受領したが、他の3社にも請求したにも
かかわらず、支払われていない。
[判旨]
(丑本件約款22条で詐欺による意思表示を無効事由と
しているのは、保険によって不法な利得を図ろうと
する者をより徹底して排除するためその効力を根底
から否定しようとするものであって、右約定はもと
より有効なものと解される。また同約款23条におい
て告知義務違反による解除規定が設けられているが、
同制度は不良の危険を排除することによって保険制
度の合理的な運営を図る趣旨で設けられているもの
であって、同約款22条の詐欺により契約が無効と認
められることの支障となるものではない。
②Xの疾病または災害あるいは疾病災害入院給付特
約付生命保険契約締結は、期間的に集中していて数
が多く、掛金はXの収入に比して多額であり、Xは
入院して保険会社から入院給付金の支払いを受けれ
ば支払う保険料の支払いをまかなって余りがあると
の認識と計算のもとに本件保険契約をしたものであ
り、本件保険契約は入院中に入院中であること及び
その傷病名はもとより病歴の多くを秘匿して契約を
なし、しかも本件契約締緒時に入院していた上記⑥
のa及びbの鹿因は犬を踏んで転倒し受傷したと
いうのであり、本件契約につき昭和56年10月14日入
院給付金を請求した上記⑥のCの原因は重量物を持
ち上げて受傷したというものであるが、いずれもレ
ントゲン検査等の上では異常が認められなかったと
いうのであって、その発生も疑わしいといわざるを
得ないものであり、仮に右の各事実が認められると
しても、これらはいずれもⅩ自らの不注意に起因す
るものであるとともに、果たして長期間にわたる入
院が必要であったか否か疑問であること、並びにⅩ
は本件保険契約に際し、既往症等について告知義務
違反があると契約の日から2年以内であればYから
契約解除され、入院給付金が支給されなくなること
を知っていて、契約が契約の日から2年以上継続し
解除権が消滅しYから契約が解除されなくなってか
ら入院給付金の請求をしているのであって、これら
によると、Ⅹは告知義務に違反して従前の加療入院
等の事実を秘匿し故意に災害疾病の入院給付の事実
を発生させ、入院給付金については約款上契約が契
約の日から2年以上継続した場合は解除権が消滅し、
契約を解除できない旨の規定があるので2年間は保
険金支払事由が発生してもその請求をせず2年経過
後に請求する意図であるのにこれを秘して、あたか
もそのような意図を有しない保険契約者であるよう
に装いYに保険契約の申込をなし、Yを欺岡して本
件保険契約を締結したものというべきであって、約
款22条にいう詐欺の行為があったものといわざるを
得ない。
[研 究]
・意思表示…当事者が法律効果を欲し、かつそのこ
とを表示する行為で①動機→②効果意思→③表示行
為→⑥事実というプロセスをたどる。このうち意思
表示の内容をなす意思と表示については、19世紀以
来、意思に重点をおく意思主義が採られて来たが、
資本主義の発達とともに取引活動の安全への要請が
高まり、次第に表示を重視する表示主義へと変遷し
つつある。
(1)錯誤…表示に対応する意思が欠映し、それに
ついて表意者自身の認識が欠けていること。
9
・錯誤の態様
①動機の錯誤…表意者の意思の形成過程において錯
誤を生じたもので表示行為と効果意思との間に不一
致はない。通説・判例は錯誤を無効とせず、ただ動
機が表示された場合には動機が意思表示の内容と
なって意思表示の錯誤が成立すると説くが、これに
対しては動機の錯誤を他の錯誤と区分すべきではな
いとする有力説(川島等)がある。
②表示行為の錯誤
a.内容の錯誤…1ポンドと1ドルを同額と信じて
書く等。
b.表示上の錯誤‥・誤記、誤伝等。
・錯誤の要件(民法第95条)
①法律行為の「要素」に錯誤があること…判例は法
律行為の要素とは表意者が意思表示の内容の主要な
部分としていることであるとし、それには㊥錯誤が
無かったら表意者はその意思表示をしないと考えら
れること(因果関係)と(9錯誤が無ければその意思
表示をしないことが社会通念上妥当と考えられるこ
と(重要性)が必要としている。
②表意者に重過失が無いこと
・錯誤の効果・‥無効。無効(民法第95条)は原則と
して追認により有効とすることができず、また誰か
ら誰に対しても主張できるが、錯誤は表意者保護を
趣旨とする制度だから相手方、第三者からの無効の
主張は許されないとされる。(通説・判例)
(2)詐欺…欺岡行為によって相手方を錯誤に陥ら
せること。
・詐欺の要件
①欺同者の故意…これにはa相手方を欺岡して錯
誤に陥らせようとする故意とbその錯誤によって
相手方に意思表示させようとする故意の2つが必要
だとされている。
②欺岡行為
③相手方を錯誤に陥らせたこと(要素の錯誤でなく
てもよい)
⑥相手方が錯誤によって意思表示したこと
⑤欺岡行為の違法性
・詐欺の効果…取消。(民法第96条)取消し待べき
法律行為は取消可能期間中に取消権者によって取消
の意思表示があるまでは一応有効として取扱われ、
取消されると行為の時に遡って無効とされる。ただ
し、詐欺を原因とする取消の場合には第三者の詐欺
に対しては相手方が悪意のときにのみ取消(民法第
96条第2項)、取消をもって善意の第三者に対抗で
きない(民法第96粂第3項)といった制限が諜され
ている。
<出亀1>意思主義に基づいて錯誤・詐欺を見ると、
10
錯誤の場合、表意者の表示に対応する意思が欠映し
ているのだからその効力を発生せず、無効となる。
これに対して詐欺の場合、表示と内心的効果意思の
間に不一致は存しないから意思表示自体に意思の欠
快は無く、その効果を無効とするには及ばない。し
かしその意思表示が他人の違法な行為によって動機
付けられた戦痕ある意思表示である点を考慮して取
消権が与えられている。(無効とするか取消とする
かは立法政策上の問題)
<出題2>保険約款において契約者または被保険者
の詐欺による保険契約の締結の効果は無効と定めら
れているが、その理由としては次のようなものが挙
げられている。
(p生命保険契約の射倖契約性に照らし、詐欺行為に
よって生命保険契約が不当の目的に利用されないよ
うにする。
②商法第678条(告知義務違反による解除)の規定
が民法第96条の規定を排除するという学説等がある
ため、いわゆる重要事実を詐欺の目的をもって隠蔽
した場合で除斥期間経過後等の理由で告知義務違反
を問えないケースでも保険契約を無効とし得る旨を
明らかにする必要がある。この他、「制裁のため」
とする見解もあるが、対等当事者間の契約において
制裁という考えは許されないし、もし可能だとして
もそれは契約解除をもって限度とすべきとされる。
また約款において詐欺による保険契約締結の効果を
無効と定めることは判例によって妥当性があると認
められている。(判例Il参照)
<出題3>
民法の詐欺
要件 前掲 「
詐欺の要件」
参照
約款の詐欺
同左 (
ただし被保険者
の詐欺 も対象 とされて
いる)
効果
①取消
②
’
無効
ま
返還
既払込保険料は没収
・約款の詐欺規定において特にその要件を定めてい
ないのは、要件については民法の詐欺に関して論じ
られているものをおおむね準用する趣旨と考えられ
る。従って約款の詐欺規定は民法のそれを前提とし、
効果については生命保険契約に適合するように変え
たものということができるのではないだろうか。
・保険契約が無効とされれば既払込保険料は不当利
得となるから本来は返還されるべきであるが、約款
の詐欺規定では既払込保険料を没収することになっ
ている。これは商法第朗3条(無効契約における保
′1
険科返還請求権、商法第鵬3条で準用)等をその根
拠にしており、当事者が契約として定めた内容とし
て妥当性が認められるといえよう。
く出題4>
判例Iについて
・判旨は本件保険契約締結時の詐欺について、詐欺
の要件に該当するか否かを判断することなく、2カ
月間に16の保険への自発的集中加入、生活状況に不
相応な高額保険料および職業、他保険加入の状況、
収入、資産状況の虚偽申告といった事実をもって
「保険金の不正受給の目的」があったとし詐欺の成
立を認めている。これは本件の保険金の不正受給の
目的が悪質で信義則に著しく反するところから個々
の要件について判断するまでもなく、詐欺が認めら
(、霊芸宣霊完芸芸宗孟㌫詐欺のみならず、故
意による事故招致や詐病による入院についても論じ
ており、これら入院給付金等の不正請求の事実も不
正受給の目的を立証するものとして取扱われている
ように思われる。
判例目について
・判旨の前提
①約款上の詐欺の規定は保険により不法な利得を図
ろうとする者を徹底して排除するためのものでその
効果を無効と定めた約款は有効。
②約款上の告知義務違反による解除規定は不良危険
の排除による保険制度の合理的運営を目的としてお
り、詐欺の規定による無効の効果を妨げるものでは
ない。
・本件の判旨も判例Iと同様に詐欺の要件について
検討を行なっておらず、短期間の自発的な集中加入、
生活状況に不相応な高額保険料および現症・既往症
( ぉよび入院の事実の秘匿から「入院給付金の支払を
− 受ければ、保険料の支払をまかなって余りあるとの
認識」があったとしている。本件では欺岡行為とし
て現症・既往症および入院の事実の秘匿が挙げられ
るが、これについては「保険金額取の目的をもって
既往症を告知しなかったときは詐欺が成立する。
(大判昭11.5.14)」といった判例もあり、その違法
性は十分に認定できる。またこの欺岡行為は本来、
告知義務違反を構成し得るものであるが、判旨はX
が「告知義務違反の解除権の消滅をまって入院給付
金を請求する意図」を有していたとしており、欺同
者の目的の違法性も強く認められるところである。
・本件判旨も入院給付金の不正請求(虚偽の保険事
故および詐病による入院)について論じており、欺
同者の目的の不当性を判断するために用いられてい
る。
[畿師のコメント】
(松岡弁義士)
I.意思表示における意思主義と表示主義
1.意思理論(Willenstheorie)
①法律行為による効果発生の根拠は、表示に
よって外部化された「法的効果を欲するとい
う意思」にある、との考え方である。
②表意者の「意思」が法律関係創造の原動力で
ある、との理論(私的自治の廣則)。「法秩
序は行為者が欲したが故に法的効果を生ぜし
めるところにある」(Windscheid)
2.意思主義一意息の欠鉄のゆえに効果不発生
(無効)
表示主義一意息の欠峡にかかわらず効果発生
(有効)
3.民法における「意思」と「表示」との不一致
の取扱(意思主義を基本とする折衷説)
93条 本文(有効)促音(無効)
94条I項(無効)II項(有効一結果として)
95条 本文(無効)但書く有効一結果として)
4.法律行為の「解釈態度」としての折衷説
①表示主義的解釈態度一商取引、団体関係、一
般に財産法の大半においては、「表示」に重
点をおく。(錯誤は、表示と事実との不一致
となる)
②意思主義的解釈態度一身分関係、その他表意
者の真意を尊重すべき分野では、「意思(真
意)」に重点をおく。
③「意思」に重点をおく解釈腰度でも、表示を
無視することはできないし、「表示」に重点
をおく場合も、当事者の意図・日的、その他
全体を考慮せざるをえず、どちらに重点をお
くかの程度の差にすぎないが、生活関係を異
にするごとに、解釈態度を違えなければなら
ない(但し、慈意的にならないこと)
5.「意思」の稀薄化現象
①民法および解釈態度としても、一部表示主義
をとっている。
②取引の大量化等による標準契約・約款とこれ
に対する公的規制
③契約内容の法的規制(借地借家契約、労働契
約等)
⑥労働協約の効力拡張
⑤事実的契約関係の理論
⑥消費者保護、人格の尊重を理由に、「意思主
義の復権」
が唱えられているが、これによって、その目的を実
現することは困難。
11
日.約款上の詐欺=無効について
民法上の詐欺が取消であるのに約款上の詐欺を無
効とするためには、詐欺における「違法性」がこれ
を「無効」とする程度に高くなければならないと思
われる。
a.保険契約の射倖契約性に反する場合
b.保険契約が不法な動機・目的に利用され、また
は信義則に違反のある場合
C.替玉診査の場合(民法上の人の錯誤、詐欺と同
じか)
d.既往症・現症の不告知の場合(告反解除に対し
て、無効とする程度に違法であることを要する
か)
e.他契約開示(不当な意図を推定させる他契約の
開示義務違反の場合、解除のみか(富田)、詐欺
無効を主張しうる場合もあるか)
日.民法上の詐欺=取消と約款上の辞欺=無効との
関係
(》一般に権利・義務その他の法律関係は、裁判等
による法的判断の結果であって、一種のタイト
ルにすぎず、実体化しないこと。
②権利滅却事由(無効、取消等)や権利消滅事由
(解除時効、延期的抗弁等)の主張も判断枠組
の提示であって、これにもとづき判断されるに
すぎない。
③上記②がそれぞれ規定の趣旨・目的、要件、効
果等を異にする場合には、それぞれ別異の制度
であって併存的に適用される。但し一般法・特
別法の関係にある場合、法条競合の場合には適
用排除されるものがある。
Ⅳ.判例lについて
1.本件各契約が詐欺による無効とされる理由
①YはS59.11.2.Xlとの間で、同年12.1.
X2−Ⅹ10の9杜との間で10ロの契約、保険
料月額合計113,951円、入院給付金日額合計
54,000円等々。
②Yには定職無く、日雇土工、年収100万円、
左官業を営むとの虚偽の申告により労災保険
加入。
③他社契約を「なし」としていること。
⑥本件各契約は自発的なものであること。
2.保険事故と受傷
①信号柱に損傷がなく、スリップ痕もなく、緩
やかな速度で衝突。
②医師への訴と供述とは打撲部位が相違。警官
に打撲を告げていない。
③受診3時間後、飲酒の上救急車で入院。詐病
の疑い。入院給付金を詐取する目的で本件契
約に加入。故意による事故招致。
3.閉居点
①不正受給の目的は十分認定されうるが、詐欺
の要件事実に該当する旨の判示を要しないか。
②詐欺=無効等を認定しているのに、故意によ
る事故招致免責を判断することの意味は何か。
V.判例目について
1.約款上の詐欺=無効の条項の有効性
詐欺による意思表示を無効とする約款は、
「保険によって不法な利得を図ろうとする者を
より徹底して排除するためその効力を根底から
否定しようとするもの」で有効0 一へ
2.詐欺に該当するか
(》本契約(S53.2)前にS51.11より他3杜と4
口の契約。本契約後S54.7までに他4社との
間に5ロの契約(このうちN杜契約にもとづ
く訴訟につき高松地裁S59.2.24判決。高松高
裁S59.11.15判決。Cf事例研レポ8号。関連
事件高松地裁S60.6.21判決)。合計10ロの契
約で保険料月額90,520円、入院給付金日額95,
500円。
②Ⅹの年収に比して掛金が多額であり、入院し
て給付金の支払を受ければ保険料を支払うに
余りある。
③本契約は、入院中のもので、病歴等を秘匿。
④受傷も疑わしく、自らの不注意によるもの。
⑤いずれの契約も2年以内には請求しておらず、
その後に請求していること。
⑥Yを含む3社から相当額の給付金を受けてい
(
ること。
⑦不法な利得を図る意図を有しないかのように
養い、欺周して契約締結
(中村弁護士)
・判旨は保険契約締結の詐欺について判断すれば良
いのだから保険事故の説明は不要なはずである。集
中加入等の事実のみでは、「不当の目的」というの
に不十分であると考え、契約締結時の詐欺の立証の
ために入院給付金の詐取を持ち出したのではないか。
(東京:S.63.6.16)
出題・講師 弁護士 松岡 浩氏
報告:協栄生命 小林 雅裕氏
指導:中村弁護士 岡野谷弁護士
編集・発行者 〒530大阪市北[ズ中之島4J ̄目3番43号PHONE大阪(06)441−1465FAX:大阪(06)445−0250
財団法人 振替日雁大阪4−2989番/取引銀行 住友潮桁中之島支店普通吊0133・ ̄和銀子f中之島支Ll.洋通334606
生命保険文化研究所(東京泰郎斤)〒104東京都中央区八屯謝27’=8和音;APHONE:東京(03)28卜4621FAX:柚(03)281.4639
振替L」座東京8−105820番/取引銀行 三和銀行京橋支店普通19694
12 Y
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