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(ボール運動) (PDFファイル)

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(ボール運動) (PDFファイル)
2015/08/30
平成28年度ボール運動系指導実践講座(2016/08/30 於:広島県立総合体育館)
◆現行学習指導要領(2008年3月改訂)
旧学習指導要領の理念である『生きる力』をはぐくむことは、
新しい学習指導要領にも引き継がれる。
ボール運動系の具体的な指導方法
この理念を実現するため、その具体的な手立てを確立する観
点から学習指導要領を改訂(ポイントを一部抜粋)
早稲田大学スポーツ科学学術院
吉永 武史
●基礎的・基本的な知識・技能の習得
●思考力・判断力・表現力等の育成
●確かな学力を確立するために必要な時間の確保
●学習意欲の向上や学習習慣の確立
●豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実
文部科学省(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/idea/index.htm)
態度
(身につく)
技能
(できる)
小学校
1
2
3
4
各種の運動の基礎を培う
基礎的学習
6
1
2
高等学校
3
1
2
3
思考・判断
(活用する)
少なくとも1つの運動や
多くの領域の学習を経験する スポーツを継続すること
ができるようになる
選択学習への準備
多様な身体感覚
易しい運動遊びやゲーム
体を動かす
楽しさを味わう
中学校
5
本格的なスポーツの習得
選択学習
マイ・スポーツの獲得
多様な楽しみ方の実践
運動やスポーツの
楽しさを味わう
運動やスポーツの
楽しさを深く味わう
図.12年間を見通したカリキュラムの基本方針(品田,2008,p.31)
知識
(わかる)
図.新学習指導要領における体育の内容構造のイメージ
(高橋,2008,「中教審『健やかな体』専門部会の論議を踏まえて」)
◆学習指導要領に示されたゲーム・ボール運動の領域
ゴール型
小学校低学年 (ゲーム)
ボールゲーム(ボール投げゲーム・ボール蹴りゲーム)、鬼遊び
小学校中学年 (ゲーム)
ゴール型ゲーム、ネット型ゲーム、ベースボール型ゲーム
小学校高学年 (ボール運動)
ゴール型、ネット型、ベースボール型
<シュート型>
バスケットボール
セストボール
ポートボール
ハンドボール
サッカー
ラインサッカー
ホッケー
<陣取り型>
フラッグフットボール
ラグビー
タグラグビー
アルティメット
ネット型
ベースボール型
<連携プレイ型>
ソフトボール
バレーボール
ティーボール
ソフトバレーボール
ハンドベースボール
ファウストボール
プレルボール
<攻守一体プレイ型>
テニス
卓球
バドミントン
1
2015/08/30
小学校中学年「ゲーム」のゴール型ゲーム
ボール保持者と自分の間に守備者がいないように移動
すること。
小学校高学年「ボール運動」のゴール型
同一形態内の種目間における学習成果の転移
ボールを保持する人と自分の間に守備者を入れない
ように立つこと。
(小学校学習指導要領解説:体育編より)
中学校第1学年・第2学年「球技」のゴール型
パスを受けるために、ゴール前の空いている場所へ動く
こと。
(中学校学習指導要領解説:保健体育編より)
◆よい教材とは・・・?
生涯にわたって運動を楽しむための身体能力
基本的な運動技能やその基礎となる力
や感覚を確実に習得させることが重要
(運動の楽しさを享受するための土台づくり)
①子どもたちに学んでほしい内容(指導内容)が
明確に含まれている。
技能
態度
思考・判断
②子どもたちの学習意欲を喚起するような工夫
がなされている。
各々の運動技能にかかわって、どのような教材を
提供すべきか、どのような指導過程(単元計画)
を編成すべきかについての検討が必要。
学習機会の保障
発達段階の考慮
プレイ性の確保
(岩田,1994,pp.30-32)
◆簡易化されたゲームとは・・・・?
不安
運
動
の
難
し
さ
子どもが楽しい
と感じるところ
退屈
子どもの技能レベル
ルールや形式が一般化されたゲームを児童の
発達の段階を踏まえ、プレーヤーの数、コートの
広さ(奥行きや横幅)、プレー上の制限(緩和)、
ボールその他の運動用具や設備など、ゲームの
ルールや様式を修正し、学習課題を追求しやす
いように工夫したゲーム
(文部科学省「小学校学習指導要領解説:体育編」より)
図.チクセントミハイのフローモデル
2
2015/08/30
①横向きになる。
ボルト投げ
②両手を大きく使う。
指導内容を明確にした教材づくり
③股関節を屈曲させ、軸を後傾させる。
-投動作を身に付けるための教材例-
◆小学校低学年におけるボールゲームの内容
ネット型のボール投げゲームの開発
・低学年段階から 、「ボールの落下地点に素早く動く」
ことをねらったネット型の教材を開発する必要がある
と考え、ボール投げゲームの開発を試みた。
・ネット型の易しいゲームであるが、同時に投能力を
伸ばすこともねらっている。
(西村,2014a,p.66)
ボール投げゲーム
ゴール型ゲーム
ボール蹴りゲーム
ベースボール型ゲーム
×
スキル(ドリル)
ゲーム
ゲームの特性に応じた基本的な技能が未熟な
段階では、1単位時間のはじめに技能の習得を
重視した時間を設定したり、各チームに共通す
る課題が明確で練習の必要性がある場合は、
課題を分かりやすくしたゲームの時間を設定し
たりするなど弾力的に単元計画の中で扱うよ
うにする。
タスクゲーム
(文部科学省「学校体育実技指導資料第8集」より)
ネット型ゲーム
スキル(ドリル)ゲーム
投げる、捕る、打つなどの個々の基本技術を習得
するために、本来ゲームではないが、練習内容を
ゲーム化することで学習者に意欲的に取り組ませ
ることを意図した単位教材。
タスクゲーム
課題が明確で、その課題が目的的に学習される
修正されたゲーム。ゲーム本来の特性を失わない
ように、学習すべき課題に応じてコートや人数の
ミニ化を図ったり、ルールの条件を変えたりする。
3
2015/08/30
◆ボール運動の学習指導の工夫例
①ゲームにつながる運動 を毎時間位置づける。
ゲームでは味方にパスを出したり、味方からのパスをもらってシュート
をするなどの技能が求められる。そのため、基礎的な技術の習得を
ねらいとした運動を毎時間位置づける。
②課題の解決が図れるような言葉かけ を行う。
「パスをつなぐためにはどんな動きが必要かな?」といった発問を
投げかけることで、フリーな状態で味方からのパスを受けることの
できる場所に動くことを認識させることができる。
ネット型ゲームの授業づくり
③課題の解決を図るための練習機会 を保障する。
例えば、ゲームで生じる課題の解決に必要な「ボールを持たない動き」
を身に付けるためにチームで練習に取り組む機会を提供する。
④ゲームのルールや様式が簡易化されたゲーム を設定する。
児童が向上させた技能を実際のゲームで発揮するための、ルールや
様式を簡易化したゲームを提供する。
◆ネット型ゲーム
ネット型ゲーム (中学年)
ネットで区切られたコートの中で攻防を組み立て、
一定の得点に早く達することを競い合うことを
課題としたゲーム
・・・ラリーを続けたり、ボールをつないだりして易しい
ゲームをすること。
(文部科学省,2008,p.18)
・ボールの方向に体を向けたり、ボールの落下点や
ボールを操作しやすい位置に体を移動したりする。
・いろいろな高さのボールを片手又は両手ではじく、
打ちつけるなどして、相手のコートに返球する。
(文部科学省,2008,p.52)
ネット型 (高学年)
・・・簡易化されたゲームで、チームの連係プレーによる
攻撃や守備によって、攻防をすること。
・自陣のコートから相手コートに向けてサービスを
打ち入れる。
・ボールの方向に体を向けて、その方向に素早く
移動する。
・味方が受けやすいようボールをつなぐ。
・相手コートにボールを打ち返す。
連係プレイ型
敵味方のコートがネットやラインで区切られ、自陣で
の触球が複数認められていることから、守備や攻撃の
組立が可能とされる (バレーボールやプレルボール等)。
攻守一体プレイ型
敵味方のコートがネットやラインで区切られているが、
自陣での触球が1回に制限され、攻撃と守備が一体化
して展開される (テニスや卓球、バドミントン等)。
(髙橋,1994,p.15)
4
2015/08/30
◆プレルボールの教材的価値
◆プレルボール(prellball)
低いネットで隔てられた2つのコートで、常にボールを
ワンバウンドさせながら、パスをしたり、相手コートに
返球したりして、ラリーを続け、勝敗を競うネット型の
スポーツ。(高橋,1989 ,p.108)
①プレル(ボールを打ちつける)技術は易しく、
比較的短時間で習得することができる。
②バレーボールやテニスなどの他のネット型の
ゲームに発展する基礎的教材である。
③ネットによってコートが区切られているため、
攻防が入り乱れることはなく、意図された戦術
が実現されやすい。
④チームの人数が少なく、チームのメンバーが
それぞれの役割をもって行動することができる。
(髙橋,1989 ,pp.111-112)
◆ゲームのルール
1
2
3
4
5
学習2
・ゲームに必要な基礎的な技能を身につけ、
ラリーの続くゲームを楽しむ。
オリエンテーション
・学習のねらい
・単元の流れ
・授業の流れ
・ドリルゲーム
・ルールの説明
・試しのゲーム
・学習のまとめ
予備的運動:ドリブル、壁当て
スキルゲーム:プレルパスゲーム(2人組)、四角パスゲーム(4人組)
6
7
8
学習3
・チームで考えた作戦(3人の役割行動)を
ゲームで実行し、ゲームを楽しむ。
学習内容の確認
●味方同士でパスをつなぎ、相手のコートに
ボールを返すこと。
→素早くボールの落下点に移動できるように
ボールの方向へ体を向ける。
→パスをつなぐために3人の位置を工夫する
学習内容の確認
●チームで作戦を考えて、相手コートに強い
ボールを返すこと。
→3人目(アタッカー)が強いボールを打つ
ことができるように1人目(レシーバー)
と2人目(セッター)の位置を工夫する
課題練習:ミニプレル2対2(チーム内)
話し合い:チームで作戦を考える。
話し合い:ローテーションの順番を決める。
課題練習:ワンアタックプレル(兄弟チーム)
メインゲーム:ラリープレル3対3
メインゲーム:ラリープレル3対3
前半4分・後半4分、ローテーションあり
前半4分・後半4分、ローテーションあり
プ
レ
ル
ボ
ー
学習1
・学習のねらいや
進め方を知る
ル
大
会
図.プレルボールを基にした易しいゲームの学習指導過程(吉永ほか,2012)
・コートは、縦13m・横6m(バドミントンコートの広さ)とし、
ネットの高さは約40cmに設定する。
・ゲームの人数は3人とする。必ず1人が1回触球し、3回で
相手コートへ返球する。
・相手からの返球や味方プレイヤーからのパスは、必ず自陣
にワンバウンドさせてから打つ。
・ボールの操作(プレル)は、平手打ちならびに両手打ちも
「可」とする。
・サーブは、山なりのボールを投げ入れるようにし、レシーブ
するプレイヤーを事前に決めておく。
・試合時間は、前半4分、後半4分の計8分間で行い、時間
内に多く得点したチームの勝ちとなる。
◆ベースボール型ゲーム
攻守を規則的に交代し合い、一定の回数内で得点
を競い合うことを課題としたゲーム
ベースボール型ゲームの授業づくり
(文部科学省,2008,p.18)
攻撃に関する技術的課題
「止まったボールや易しく投げられたボールを打ったり、
走塁をしたりする。」
守備に関する技術的課題
「攻撃の進塁を阻止するために捕球したり、送球したり
する。」
5
2015/08/30
ティーボール
表.打撃フォームの評価規準
ベースボール型ゲームの一種で、打者が投手が投げたボール
を打つのではなく、ホームベース付近に置かれたバッティング
ティーの上に置かれた、静止しているボールを打つことによって
プレイが展開されるゲーム
評価規準
① 利き手を上にバットを握ることができる
② 打撃方向に対して平行かつボールよりも後方に立つことができる
③ 肩幅よりもやや広めのスタンスをとることができる
ステップ ④ 自然な形でステップ足を使うことができる
構え
⑤ 体の軸を保ちながらステップができる
⑥ 適切なグリップの位置からステップを始動することができる
⑦ 膝を軽く曲げながらステップができる
スイング ⑧ 腰をしっかり回転させたスイングができる
⑨ 適切なフォロースイングの軌道を描くことができる
⑩ 力強いスイングができる
⑪ 軸足を浮かせないでスイングができる
⑫ 体の軸を保ちながらスイングができる
(2006年8月 第9回全国小学生ティーボール選手権大会より)
ゲーム
● 三角ベース,5対5で行う。打者が一巡したら攻守を交代する(3イニング制)。
● 常に満塁でプレイを開始し,本塁を踏んだ人数がチームの得点となる。
● ボールがフェアゾーンに入るまで打ち続ける。
● いずれかのベースにボールが返球されたら,走者あるいは打者はそのベースより先には進めない。
● 当該ベースのサークル内で,守備がボールをキャッチあるいはタッチしたら返球完了とみなす。
(直接タッチによるアウトはなし)
● 守備がノーバウンドでキャッチした場合でもアウトにはならない。
(いずれかのベースに返球しなければならない)
⑤
▲1
▲5
▲2
▲4
▲3
60°
①
④
図.ベースボール型単元で提供したゲームのルール(文部科学省,2010より一部修正)
② ③
主体性・多様性・協働性、
学びに向かう力、人間性など
どのように社会・世界と関わり、
よりよい人生を送るか
文科省、学習指導要領を平成28年度にも全面改定
何を知っているか、
何ができるか
知っていること・
できることをどう使うか
個別の知識・技能
思考力・判断力・表現力等
(2013年12月28日,MSN産経ニュースより)
図.育成すべき資質・能力の三つの柱を踏まえたカリキュラム・デザインのための概念
(文部科学省HP,「教育課程企画特別部会 論点整理 補足資料」より一部修正)
6
2015/08/30
態度
(身につく)
身体能力
(できる)
「思考・判断」の学習を効果的に進めるための方策
思考・判断
(活用する)
技能と体力
規範的態度
情意的態度
知識
(わかる)
資料や学習カードの活用
図.新学習指導要領における体育の内容構造のイメージ
(高橋,2008,「中教審『健やかな体』専門部会の論議を踏まえて」)
サッカー学習カード(ゲーム記録用)
-サポートしながら、どの程度パスをつなげるか、確かめてみよう-
(記録のしかた)
サポートに入ったら「サポートした」に○をつける。サポートした人にパスが
出たら「パスが出た」にも○をつける。また、そのパスをサポートした人が受
けたら「パスを受けた」に○をつける。
ゲーム
対戦チーム
記録した人
記録された人
( Aコート )
( 3班 )
( C子 )
( A美 ) (チーム 2班 ゼッケン 6番)
記録
項目
サポートした
○
○
○
○
○
○
計
○
7
パスが出た
○
○
○
3
パスを受けた
○
○
○
3
◆内発的動機づけに求められる有能感
◆運動有能感の構造
①身体的有能さの認知
運動を継続的に行うためには、「運動を行うこと
が楽しいから参加する」 という内発的動機づけ
にもとづいて参加することが大切
有能感
予測不能な状況や環境のなかで、自信をもって
積極的に対処していくことのできる能力のこと
「運動について自信を持っている」 など、自己の運動能力
や運動技能に対する肯定的な認知
②統制感
「少し難しい運動でも努力すればできると思う」 など、
自己の努力や練習によって運動をどの程度コントロール
できるかについての認知
③受容感
「運動しているとき、指導者が励ましてくれる」など、運動
場面で指導者や仲間から受け入れられていることの認知
(岡澤,2003,pp.27-28)
7
2015/08/30
表.学習者の授業評価の上・下位群別にみた教師行動
(高橋健夫ほか,1991,p.202より一部修正)
◆体育授業における四大教師行動
評価の高い
授業
(N=33)
評価の低い
授業
(N=33)
マネジメント
23.83
30.24
直接的指導
20.61
21.98
マネジメント行動
直接的指導行動
巡視
26.70
25.03
相互作用
23.78
19.18
その他
5.08
3.57
巡視行動
*
*p<0.05
授業評価の高い授業では、①マネジメントの時間量が少ない、
②直接的指導が少ない、③技能的学習にかかわった教師の
肯定的・矯正的相互作用が多いなどの特徴があげられる。
相互作用行動
◆相互作用行動 (Interaction)
表.熟練教師と未熟練教師のフィードバック行動の比較 (1授業当たりの回数)
(高橋健夫ほか,1997,p.58より一部修正)
指導者と学習者との間で営まれる教育的な交流
熟練教師
(N=34)
を意味し、適切なパフォーマンスや社会的行動に
対する賞賛、技能的失敗に対する矯正的・修正的
助言、発問、受理、励まし、補助的活動などが含
まれる。相互作用は、授業の雰囲気を決定する要
未熟練教師
(N=16)
平均回数
標準偏差
平均回数
標準偏差
122.15
(35.81)
96.69
(26.66)
(肯定的)
67.78
(27.66)
59.63
(21.20)
(矯正的)
52.56
(16.09)
36.00
(11.44)
(否定的)
1.82
(4.43)
1.06
(1.98)
フィードバック
*
***
*p<0.05, ***p<0.001
因であり、優れた指導者は肯定的な相互作用を巧
子どもたちは、「運動ができるようになる
ことを熱望している」ので、それを可能に
する魔法のような言葉を求めている
みに、そして頻繁に適用する。
運動や外遊び
など
大会イベント
など
*
よい体育授業
家庭
地域 体
育
行
事
体育授業
休
み
時
間
運動ができる
仲間とかかわる
運動がわかる
有能感
社会性
思考力
放課後
運動部活動や
クラブなど
子どもたちの生きる力を育む
8
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