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2-3地域の現状と課題の把握

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2-3地域の現状と課題の把握
3
地域の現状と課題の把握
新たな地域運営組織が立ち上がったら、集落の基本情報の収集から踏み込んで、
取組地域の現状と課題を詳細に把握します。またあわせて課題を解決する方法や地
域の可能性も探りましょう。
できるだけ多くの住民に関わってもらいながら進めることが大切です。
(1)把握
把握する
する内容
する
内容
取組地域の範囲等により調査の内容は様々ですが、次のような項目が考えられ
ます。また、調査のレベルも自治体、集落、世帯、個人などが考えられます。
ア 地域の実態
○土地の状況:空き地、耕作放棄地、地区外居住者農地・山林、危険箇所等
○施設の状況:医療施設、学校、集会所、公民館などの公共的施設
商店、農協などの生活必需施設
空き家、廃校舎など利活用できる施設
観光資源となり得るような建物(歴史、外観)等
○交通の状況:近隣の道路、路線バス、鉄道などの状況
停留所、駅までの距離
○自然の状況:自然景観、希少動植物の生息地域、特産品等
○伝統文化の状況:伝統行事、史跡の所在等
○住民の状況:技能を持った(地域で活躍できる)人の存在
独居老人、週末居住者、移住者の状況
買い物先、子育て、携帯電話の利用可能エリア等
イ
地域の集落活動状況
○資源管理機能:農林地や地域固有の景観、文化等の地域資源を維持・管理
する機能
○生活扶助機能:地域が円滑に運営されるために、地域住民同士が相互に扶
助し合いながら生活の維持・向上を図る機能(例:冠婚葬
祭、会合、福祉活動、消防防災活動等)
○生産補完機能:農林漁業等、地域の生産活動を地域住民が相互扶助によっ
て補完し合いながら、生産活動の維持・向上を図る機能
(例:農作業、草刈り、清掃活動、道路保全等)
ウ
住民の意向
○地域の住みやすさ、住みにくさ
○地域や集落の活動への参加状況
○参加・協力できる活動、特技 等
(2)把握する
把握する手法
する手法
地域の現状と課題を把握する方法としては、行政(市町村等)の資料を活用す
るほか、次のような方法が考えられます。地域を知るための手段は数多くあり、
ここではそのうち数例を示しました。取組の状況に応じて複数の手法を織り交ぜ
- 15 -
て活用する場合もあります。ここでのポイントは、地域の現状と課題を把握する
段階からより多くの住民が参加しやすく楽しんで参加できるような工夫が必要と
なるということです。その後の計画づくりや活動の組立に向けて多くの住民から
アイディアを引き出すためには、否定的な意見だけでなく、前向きな意見・発想
ができるような環境づくりも重要です。
調査した現状と課題を、地域、集落、世帯レベルに分類し、住民で対応できる
こと、他団体の協力を必要とすることに分類・整理し、集落機能再編・強化計画
づくりの段階での取組活動主体の整理へとつなげることも想定しておきましょ
う。
ア 住民アンケート
話合いに参加できない人も意見を述べることができ、また、人前では言いに
くいことも率直に回答しやすいという特徴があります。アンケートの趣旨や回
答方法を理解してもらうため、事前に地域への説明会を開催することが有効で
す。アンケート後に、集落の代表者へ聞き取り調査をすることも考えられます。
<実施のポイント>
・個人単位に実施することが重要ですが、取組地域の状況により調査項目、
対象は異なります。
・個人単位に実施する場合、年齢等対象ごとに項目を工夫する必要がありま
す。
・将来的に地域へ居住する人(他出している地元出身者等)への調査も考え
られます。
・調査は、住民に負担がかかるので、1回にとどめた方がよいです。そのた
め、調査内容については事前の十分な検討が必要です。
・調査票の作成や分析には専門家の力を借りることも有効です。
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イ
ワークショップ(理解を深めるための作業)
机を囲んでの話合い(KJ法注5等)、現地を歩きながらの点検、勉強を交え
ながら特定のテーマを専門的に掘り下げるなど、多様な方法が考えられます。
複数人で作業するため、結果の共有も早くできるなどの特徴があります。
<実施のポイント>
・あらかじめ到達点や、到達点に至る手法、回数を設定することが必要です。
・年代別(区分は、年代ごとの地域活動への関わり方を目安にするなど地域
の実情に応じて工夫します。19歳以下(若者)、20~60代(活動の
中心)、70歳以上など)、男女別、集落別などのグループ別に対話や地
域点検などを行えば、課題の共有、アイディア出しなどが迅速かつ効率的
に進みます。
・地域を違った視点で見るため、移住者や地域外の人に参加してもらうこと
も有効です。
・話合いの場合は、人前で意見を言い慣れていない人の意見も引き出せるよ
う、ファシリテーター 注6と呼ばれる進行役の役割が重要です。(ファシリ
テーターを務める人には事前に研修等を受けてもらうことが有効です。)
・地区点検などで現地を歩く場合は、地域外の人と一緒に歩くなど、日常と
違った視点で歩くことが効果的です。
・地区点検と同時に具体的な活動アイディアを導き出すこともできます。
・調査した内容を地図に書き込んでいくことも地区の状況を把握するのに有
効です 。
注5 KJ法
多様な意見を整理するために、意見をカードに記述し、カードをグループ
ごとにまとめていく手法のこと。
注6 ファシリテーター
会議や会合などにおいて、議論に中立的な立場を保ちながら話合いに参加
し、参加者の主体性を引き出し、コミュニケーションを活性化させ、多様な
意見を取りまとめ、合意形成に向けて調整する役割を担う人。
- 17 -
ウ
現地での聞き取り
住民への直接聞き取りによりきめ細かい意向等の把握が可能です。一方でか
なりの時間と労力がかかることも予想されることから、地域の規模等を考え合
わせて、必要に応じて行いましょう。
事例 「島の課題を把握し解 決するために」〈 笠岡市
真鍋島〉
地 域の現状と課題を把握 する組織は、各 種団体の長で構成さ れる既存の「 真
鍋島新聞編集会議」と、地域の課題に対して実際に動ける人が知恵を出し合
って実行する「明日の真鍋島を創る会」が、役割を分担して地域の現状と課
題を 把握するための取組を 展開。
○真 鍋島新聞編集会議
平成10年に真鍋島の活性化のために真鍋島で行った「真鍋島マリンロー
ド計画」に基づきインターネットで島興しをする事業に参画した住民が中心
となって、平成11年よりアナログ版島内新聞を発行することになり、その
情報収集のために島の各種団体を集めた編集組織。平成11年4月から毎月
島 情 報を 伝え るミ ニ コミ 誌を 制作 。 全島民 と京阪 神へ 出られ ている 方約100
名に毎月郵送し、島外にも定期的に島情報を提供している。編集会議も発行
以来 毎月定期開催しており 、島では認知された 組織となっている。
※情報を共有するという観点からきめ細かいミニコミ誌の取組は有効。し
かし、メンバーの高齢化と、既存の組織のために新鮮味がないのが課題点
で ある。
○明 日の真鍋島を創る会
過疎高齢化の地域が抱える課題の中で、若い人の関心も高い最重要課題の
1つ が、学校の存続につな がる「子どもの確保 」である。
今のままでは2年後に中学生が「2名」になるという状況の中、中学校が
統廃合されるかもしれないという危機感を持つ小中学校の先生、保護者(当
事 者 )、 そ れ に よ る 地 域 の 衰 退 を 心 配 す る 島 民 有 志 に よ り 、 問 題 解 決 に 実 行
力の ある新しい組織「明日の 真鍋島を創る会」を設立し た( 平成20年6月)。
[特 徴]
・ 当事者がその気になる 仕掛け・・・該当保 護者を会長に選出
・ 1人ではない。多くの 仲間が支える組織づ くり
・ 小中学校の校長先生が 大変な危機感を持っ て参加
これまでの活動の主体となっていた地域のリーダーが参加し、空き家対策
でIターンした新しい島民(当事者でもある子どもを持ったIターン者)と
行政 の協働による活動を展 開している。
○特記事項 として
物事を進めるためには新しい組織を作ることは必要だが、その組織だけで
完結させないことが必要。他の組織と連携をとったり、真鍋島で言えば「真
鍋島新聞編集会議」との連携を十分にとらないと新しい組織の一人歩きが始
まり、既存の組織との溝がで き、徐々に深まるという 現象にもなりかねない。
- 18 -
○今後 の手法として
今進めている移住の促進について、子どもが増えているので大勢は理解し
ていた だいていると進める 側が勝手に思いこんで いる部分が多々ある。
地域コミュニティに関する重要事項であるので、若手中心の「明日の真鍋
島を創る会」での協議だけでなく、広く先輩方(高齢者)の意見を聞きなが
ら、相 互理解の上で物事を 進めていく必要がある 。
また、目的を当事者(子どもを増やしたい)意識だけでなく、お年寄りが
真鍋島で元気に楽しく暮らせるための方策と関連して考えていく手法をとれ
ば、よ り理解が深まり事業 も展開するのではない かと考えている。
事例「地域 が望む将来に向けて」〈井原市
池井〉
地域の現状と課題を把握する方法としては、市町村等の資料を活用するほ
か、地域内住民の意見を聞き取ることが重要となるが、従来、地域運営の方
針は世帯主が参加する寄り合いの中で決定されることが多く、新たな地域運
営組織の構築が必要 となった。
手法としては、世代にとらわれることなく各集落から選出される住民によ
り構成する地域運営組織を設置し、地域住民それぞれの地域に対する意向を
把握し、日常では相互に気付かない現状と課題を抽出するため、地域住民を
対象としたアンケー ト調査を実施すること が有効であると考えた 。
また、実施したアンケート調査の結果を踏まえ、ワークショップ等の実施
による課題抽出、対応策を検討することが必要であり、地域住民が楽しく気
軽に参加できる体制 整備が重要である。
池 井 地 区 に お い て も 、 地 域 の 現 状 と 課 題 を 把 握 す る た め 、「 生 活 環 境 の 現
状・ 課題 」、「 地 域運 営状 況」、「地 域 将来 像」 を項目 とする アンケ ート調 査を
今後の地域を継承し うる世代(中学生以上 )を対象に実施した。
結果としては、
*地域への思い( 感謝・不安)
*地域交通の確保
*生活環境の維持 ・向上
*地域間交流 等
が地域住民より挙げられており、ワークショッ
プを重ねることにより活力ある地域づくりの方
向性を見出そうとし ている。
地域交通に関するワークショップ
「地域体制の再編」は住民、行政にとっても容易なことではなく、継承さ
れてきた伝統行事や慣習などを重視しながら、公平な立場で各々が向き合い
推し進めていくこと が課題である。
- 19 -
事例「住民 の生の声」〈高梁 市
玉川町増原・下切 〉
吉備国際大学の社会学・日本民俗学の専門家、地域福祉・社会福祉の専門
家にファシリテーターをお願いし、対象地区内の集落毎に座談会を開催。予
め町内会長を対象に、モデル事業の趣旨説明や各町内会での座談会開催につ
いての依頼を行った。座談会対象者は参加可能な方全員とし、県・市職員も
参加した。会場は地域の集会所等とし、日程は地域の常会を利用する等、集
まりやすい日時を町 内会長に設定していた だき、調整した。
町内会同士で調整ができれば複数の町内会を併せた開催も効率的ではある
が、地理的条件により心 情的に参加しにくい人、発言しにくい人もいる ため、
実情をよく知っている町内会長の判断に任せた。座談会形式をとり、多くの
人が話せるよう会場内を2グループに分け、3人から7人程度のグループで
実施した。7人程度になるとグループ内で発言者の声が聞き取りにくく、発
言する人のかたよりや、話に参加できない人も見受けられるため、グループ
は性別、年代が混在した4人から5人程度が適当であろう。高齢者が多いた
め、KJ法のような個人での 作業は取り入れず、思うこと を話していただき、
各グループに入った県・市職員が意見の記述、最後にまとめを報告するとい
う形をとった。
この報告は、グループのメンバーだけでなく、別のグループにとってもこ
の地域の意見として情報を共有、確認する機会となった。グループごとに話
の流れや出てくる意見が異なるため、スタッフ数や会場にゆとりがあればグ
ループ数をさらに増やすことにより、多様な意見が出ることも期待できた。
座 談 会 の テ ー マ は 、「 地 域 の 良 い 点 、 宝 物 。 こ れ か ら も 続 け た い 、 残 し た
いこと(もの)~」と「地域の不安なこと。困っていること。改善、解決し
たいこと~」。
ア イ ス ブ レ イ キ ン グ P21注 7 も 兼 ね 、 最 初 に 自 己 紹 介 と し て 、 名 前 や 年 齢 、
家族の状況、出身地等を話してもらった。意見が出にくい地域、グループで
は聞き取り調査のようになってしまうが、できるだけ住民の話を中心に進行
し、多くの人に参加してもらえるような進行が必要。住民からは話題に出な
いことがらも、ファシリテータ ーから「 ○○についてはど うですか?」や「他
の地区では△△のような話もありましたが」等と話題を提供することで、地
域間の意識の違いや 実態を聞くことができ た。
なかなか発言できなかった人や、参加できなかった人もいるため、座談会
全日程終了後に全住民を対象としたアンケート調査を実施。高齢者が多いた
め、記載しやすいよう選 択式を採用し、質問数に ついても少なめに配慮 した。
18歳以上の全住民に記載いただくことで、配偶者等の意見に左右されず、
個人としての意見を聞くことができた。集計及び分析は吉備国際大学の専門
家に依頼し、その分析結果と座談会で出た意見をもとに計画策定を実施して
いく。
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事例「地域の活動 状況と住民の意向の把 握」〈真庭市
二 川〉
地域の 活動状況を把握する
○集 落実態調査の実施
・市で把握している地域のおおまかな情報に加えて、二川地域連絡協議会
の 役 員 へ の 聞 き 取 り 調 査 や 各 自 治 会 長 を 対 象 に し た 「集 落 実 態 調 査 」を 行
っ た。
・対
象=二川地域内 の各自治会長
・調査内容=生活関連施設の状況、防災・防犯体制、集落での共同活動の
状況、共同活動を行う上での課題、集落及び周辺地域の産業
と 土 地 利 用 の 状 況 、 地 域 の 自 慢 と な る 資 源 、 Uタ ー ン ・ I タ
ーン者の状況、都市との交流の取組状況、集落活動活性化の
ための取組 状況 など
○不 十分な点(反省点)
・ 一 番 知 り た か っ た 自 治 会 長 が 考 え る 「地 域 の 抱 え る 課 題 」と 「そ れ に 対 す
る 提案」につ いて部分の記入が少な かった。
・自 治会長への調査に関 する説明が十分できて いなかったこと。
○結 論
・手法として記述だけで把握が十分できない場合は聞き取り調査も必要。
住民の 意向を把握する
○住 民アンケート調査の 実施
・対
象=モデル地域 内の20歳以上の全住 民
・調査内容=回答者と同居家族の状況、集落の住みやすさ、集落活動への
参加状況や必要性、今後の暮らし方、現在の生活を続けてい
く上で望ま れること な ど
○不 十分な点(反省点)
・設問数は少なくしたつもりであったが、対象者からは多いとの指摘があ
っ た。
・集計まで外部委託を行わず職員の手で進めたため、作業に長期間を要し
た。(結果公表の遅 れ)
○苦 労した点
・各設問のつながりがなくならないように配慮しながら設問(問い)数を
少 なくすること。
○結 論
・一般的に行政が実施するアンケート調査は不評であるという意見がある
が、対象者には75歳以上の高齢の方が多い割には回収率が高いことか
ら 、住民の方の関心が 高いことがうかがわれ た。
注7 アイスブレイキング
ワークショップなどの場で、緊張をほぐすために言葉を掛け合ったりゲーム
などをすること。
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