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「クリミア・コンゴ出血熱の最近の話題」 国立感染症研究所ウイルス第一
「クリミア・コンゴ出血熱の最近の話題」 国立感染症研究所ウイルス第一部 西條政幸 クリミア・コンゴ出血熱(Crimean-Congo hemorrhagic fever, CCHF)は,ブニヤウイ ルス科ナイロウイルス属に分類されるクリミア・コンゴ出血熱(Crimean-Congo hemorrhagic fever, CCHF)ウイルスによるヒトにおける全身感染症である.CCHF ウイル スに感染すると多臓器不全に陥り死亡することが多く,一般的に CCHF ウイルスは,危険 な病原体として認識され、国際的には高度安全研究施設(いわゆる BSL-4 施設)でのみ扱 いが認められているウイルスである.我が国には CCHF は存在せず,通常,アフリカ大陸, 中近東,中央アジア諸国の農村地区に発生する. 近年,CCHF の疫学や臨床に関する研究が徐々にではあるが明らかにされてきた. 本講義においては,致死率の高いウイルス性出血熱の流行状況を概説し,中でも CCHF に注目して,CCHF の病態,診断,予防に関して議論したい. 【クリミア・コンゴ出血熱ウイルス】 CCHF ウイルスは,ブニヤウイルス科ナイロウイルス属に分類され,3 分節からなる一本 鎖(-)鎖 RNA ゲノムを有するエンベロープウイルスである.3 つのセグメントは,遺伝子の 大きさから L-セグメント,M-セグメント,S-セグメントと呼ばれ,それぞれ RNA ポリメラー ゼ,膜蛋白,核蛋白をコードしている.1944〜1945 年にロシア南部クリミア地方で野外作 業中の旧ソ連軍兵士の間で重篤な出血を伴う急性熱性疾患が発生し,患者血液やダニか ら原因ウイルス(クリミア出血熱ウイルスと命名)が分離された.クリミア出血熱ウイル スが,1956 年にコンゴ民主共和国(旧ザイール)で発熱患者から分離されたウイルス(コ ンゴウイルスと命名)と同一であることが後に Casals 博士らにより明らかにされ,CCHF ウイルスと名前が統一された.自然界においては,CCHF ウイルスは野生動物や家畜とダ ニの間で維持されている.ヒトは,CCHF ウイルス感染ダニに咬まれて感染する場合と,感 染動物(多くの場合,ヒツジなどの家畜)の血液,体液,臓器に直接接触して感染する.ま た,CCHF 患者から医療行為や看護を通じて感染(院内感染など)する場合もある.