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携帯電話機および携帯型電子情報通信端末機(PDF:582KB)

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携帯電話機および携帯型電子情報通信端末機(PDF:582KB)
平成23年度
意匠出願動向調査報告書(概要)
携帯電話機および携帯型電子情報端末機
平成24年4月
特
許
庁
問い合わせ先
特許庁総務部企画調査課
技術動向班
電話:03-3581-1101(内線2155)
第1章
調査のフレーム
第1節
目的
1.
事業目的
我が国が国家戦略として目指す「知的財産立国」の実現に向けて、デザインが果たす
べき役割への期待は年々高まっており、価値あるデザインを法的に保護する意匠制度に
対する期待が年々大きくなっている。近年においては製品開発サイクルや市場への投入
時期が産業分野ごとに多様化し、意匠制度に対するユーザーニーズも産業ごとに異なる
ため、それぞれの産業分野の状況に応じた個別具体的な対応を図っていく必要がある。
このような背景のもと、意匠出願件数が近年増加している携帯電話機及び携帯型電子
情報端末機の分野について考えると、携帯電話機の分野では従来の折り畳み型やスライ
ド式のものから、一般にスマートフォンと呼ばれるタッチパネルを備えたフラットタイ
プの携帯電話機の開発が活発となり、携帯型電子情報端末機の分野においても通話機能
を含む複合的な機能を備えた製品の開発が行われている。また、それら機器の操作に用
いられるユーザーインターフェースのデザインについても新たなデザイン開発の可能性
が広がっている。
デザイン開発が活発化している当該分野の商品開発プロセスやデザイン開発状況、意
匠出願動向や企業における意匠出願戦略、市場環境、製品開発に影響を与える法規制や
標準規格等を把握することは、特許庁における審査審判業務や、施策の企画立案のため
の基礎資料を整備する上でも必要である。さらに、本調査により得られる結果は特許庁
だけでなく、関係する業界等に対しても極めて有用な情報となることが期待できる。
2.
調査の目的
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機の意匠出願動向について、単なる出願・登録件
数データの分析に留まらず、様々な視点からの分析を行うことで、当該分野において出
願に影響を与えうる要素を把握することを目的とする。具体的には、意匠出願・意匠登
録数データ分析、携帯電話機及び携帯型電子情報端末機のデザインの変遷、当該分野に
関係する特許出願動向調査などを実施する。また、調査対象分野の企業に対してアンケ
ート調査ならびにヒアリング調査を実施し、当該分野におけるデザイン開発の現状や意
匠制度の利用の現状等を把握し、当該分野の意匠出願動向に与える影響についての分析
を行う。さらには、当該分野の市場環境及び法制度・標準規格など当該分野の意匠出願
動向に影響を与える背景分析も行う。これらの調査結果をふまえた上で、総合的な分析
において今後の意匠出願動向の検討を導き出すことを試みる。
- 1 -
第2節
1.
調査方法
意匠出願動向の調査範囲
(1)
調査対象範囲
① 対象意匠分類
携帯電話機および携帯型電子情報端末機に該当する日本意匠分類(平成 19 年 4
月 1 日施行版)は以下のとおりである。
表 1-1
本調査対象意匠分類及び D ターム(H7-43x、H7-725x)
日本意匠分類・D ターム
意匠分類の表示
この分類に含まれる物品の例
H7-43
携帯電話機
携帯電話機、無線電話機、携帯用無線電話機、
カメラ付き携帯電話機、携帯用テレビ電話機
H7-43
A
その他(AA~AF 除く)
AA
ストレート型
AB
折畳型
AC
回転型
AD
スライド型
AE
フリップ型
AF
腕時計型
W
画像を含む意匠
H7-725
画像を含む携帯電話機
表示機付電子計算機等(携帯型) 電子計算機、電子計算機用入出力端末機、電子
情報端末機、電子辞書、データ通信用入出力端
末機、ハンディターミナル、データ入力機
H7-725
A
その他(AA~AF 除く)
AA
ストレート型
AB
折畳型
AC
回転型
AD
スライド型
AE
フリップ型
AF
腕時計型
W
画像を含む意匠
画像を含む表示機付電子計算機等(携帯型)
注:日本意匠分類(平成 19 年 4 月 1 日施行版)をもとに作成
② 対象時期
日本での意匠出願動向調査は、2001 年 1 月 1 日~2010 年 12 月 31 日(10 年間)
に出願された意匠を調査対象とした。
日本、米国、欧州(OHIM)、中国、韓国(以下、日米欧中韓と称す)での意匠登
録動向調査は、2009 年 1 月 1 日~2010 年 12 月 31 日(2 年間)に上記対象において
意匠公報が発行された意匠を調査対象とした 1。
1
欧州とは特に記述がない限りは EU 加盟 27 カ国を指す。ただし、2007 年度までの調査結果に基づく場合
は、EU 加盟 25 カ国を指す。
※欧州連合(EU)加盟 27 カ国(2011 年 12 月現在):ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイ
ツ、エストニア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、フランス、イタリア、キプロス、ラトビア、リ
トアニア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、
ルーマニア、スロベニア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、英国
- 2 -
(2)
調査内容
① 携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における日本での意匠出願動向調査
調査対象分野(H7-43、H7-725 の D ターム A~AF 及び画像を含む意匠 W)の日
本での意匠出願動向(2001 年 1 月 1 日~2010 年 12 月 31 日)を集計し、その特徴分
析を行った。全体意匠だけではなく、部分意匠や関連意匠、出願人の居住国・地域
別意匠登録数、意匠登録数上位ランキングを実施することにより意匠出願動向の全
体を把握した。
② 携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における日米欧中韓での意匠登録動
向調査
調査対象分野の日米欧中韓での意匠登録動向(2009 年 1 月 1 日~2010 年 12 月 31
日)を全体と各国・地域別に集計し、その特徴分析を行った。日本以外での国・地
域での意匠登録については日本意匠分類の分類付与を実施し、日本意匠分類別の登
録状況の把握を行った。
③ 携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野におけるデザイン変遷調査
調査対象分野における概ね 1980 年代から現代に至るまでの製品デザインの変遷
について、文献調査およびデザイン年表としてわかりやすく表現した。デザインの
情報とともに、デザイン開発に関係があると思われる技術・材料等の変遷や、社会
情勢(技術の発展やそれに伴う新たなニーズ、ライフスタイルの変化に伴う新たな
ニーズ)のトピック等の変遷も記載した。
④ 携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野におけるデザイン開発及び意匠制度
利用状況調査
調査対象分野におけるデザイン開発および意匠制度の利用状況等について、アン
ケートおよびヒアリング調査の実施結果から整理・分析を行った。
⑤ 携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における特許出願動向調査
対象分野に関連する日本国特許出願(2001 年 1 月 1 日~2009 年 12 月 31 日の間に
出願された特許出願)を集計し、その特徴分析を行った。具体的には携帯電話機や
携帯型電子情報端末機に関係があると考えられる特許分類とキーワードを特定し、
特許出願件数と意匠出願件数との関係の分析を試みた。
⑥ 携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における市場環境調査
対象分野の意匠出願動向およびデザイン開発に影響を与えると考えられる市場環
境について、当該分野に関連する市場データ、政策・規制・規格等について各種文
献、ウェブサイト、その他刊行物等により収集・整理を行った。
⑦ 総合分析
これまでの調査の結果から調査対象分野における意匠登録出願の特徴を整理し、
今後の意匠出願動向の検討を行った。
- 3 -
第2章
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における日本での意匠出願動向調査
第1節
調査概要
2001 年 1 月 1 日~2010 年 12 月 31 日に日本で出願された意匠登録出願について、日本意
匠分類に基づき以下の項目を調査した。
z 意匠登録出願数(分野全体、各分類、D ターム、画像を含む意匠)
z 部分意匠登録出願数(分野全体、各分類、画像を含む意匠)
z 関連意匠登録出願数(分野全体、各分類、画像を含む意匠)
z 出願人居住国・地域別意匠登録出願数(分野全体、各分類、画像を含む意匠)
z 意匠登録上位ランキング(分野全体、各分類、画像を含む意匠)
第2節
意匠登録出願数
1.
分野全体、各分類
分野全体では、2007 年の 798 件をピークに減少傾向にある。
H7-43(携帯電話機)は、2008 年以降減少している。2010 年の出願は 246 件であり、
最も多かった 2007 年の半数以下である。
H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型))は、増加傾向にある。2010 年は前年比
+34.8%の増加であった。
表 2-1
意匠登録出願数(出願年別:分野全体、各分類)
出願年
H7-43
H7-725
分野
全体
2001
528
2002
405
2003
441
2004
535
2005
438
2006
539
2007
627
2008
578
2009
364
2010
246
合計
4,701
193
154
90
120
101
118
171
187
198
267
1,599
721
559
531
655
539
657
798
765
562
513
6,300
図 2-1
意匠登録出願数(出願年別:分野全体)
900
意匠登録出願数(件)
800
700
600
500
400
300
200
100
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
出願年
- 4 -
2007
2008
2009
2010
図 2-2
意匠登録出願数(出願年別:各分野)
意匠登録出願数(件)
700
600
500
400
300
200
100
0
2001
2002
2003
2004
H7-43(携帯電話機)
図 2-3
2005
2006
出願年
2007
2008
2009
2010
H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型))
D ターム別意匠登録出願数(出願年別:携帯電話機)
意匠登録出願数(件)
300
250
200
150
100
50
0
2001
2002
2003
H7-43A (その他)
H7-43AC (回転型)
H7-43AF (腕時計型)
2004
2005
2006
出願年
2007
H7-43AA (ストレート型)
H7-43AD (スライド型)
- 5 -
2008
2009
2010
H7-43AB (折畳型)
H7-43AE (フリップ型)
図 2-4
D ターム別意匠登録出願数(出願年別:表示機付き電子計算機等(携帯型))
意匠登録出願数(件)
100
80
60
40
20
0
2001
2002
2003
2004
H7-725A (その他)
H7-725AC (回転型)
H7-725AF (腕時計型)
2.
2005
2006
出願年
2007
2008
H7-725AA (ストレート型)
H7-725AD (スライド型)
2009
2010
H7-725AB (折畳型)
H7-725AE (フリップ型)
画像を含む意匠
H7-43 W(携帯電話機)では、2004 年以降増加を続けていたが、2009 年減少に転じ、
2010 年には前年の半数近くに減少した。
H7-725 W(表示機付き電子計算機等(携帯型))は、増加傾向にある。2010 年には前
年の 1.7 倍に増加した。
表 2-2
画像を含む意匠登録出願数(出願年別)
出願年
2001
9
2004
21
2005
33
2006
33
2007
57
2008
64
2009
42
2010
22
合計
314
10
2
8
14
6
18
43
42
71
214
43
11
29
47
39
75
107
84
93
528
H7-43 W
0
2002
33
H7-725W
0
分野
全体
0
2003
- 6 -
図 2-5
画像を含む意匠登録出願数(出願年別)
意匠登録出願数(件)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
出願年
H7-43 W(携帯電話機)
第3節
1.
2007
2008
2009
2010
H7-725 W(表示機付き電子計算機等(携帯型))
部分意匠登録出願数
分野全体、各分類
H7-43(携帯電話機)は、2009 年には前年の 296 件から 119 件へと半数以下に減少し、
2010 年も 70 件と減少を続けている。
H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型))は、増加傾向にある。2010 年には前年
94 件から 154 件と 1.6 倍以上増加した。
表 2-3
部分意匠登録出願数(出願年別:分野全体、各分類)
出願年
H7-43
H7-725
分野
全体
2001
288
2002
180
2003
215
2004
218
2005
178
2006
179
2007
202
2008
296
2009
119
2010
70
合計
1,945
54
38
19
36
45
70
72
86
94
154
668
342
218
234
254
223
249
274
382
213
224
2,613
- 7 -
図 2-6
部分意匠登録出願数(出願年別)
部分意匠登録出願数(件)
350
300
250
200
150
100
50
0
2001
2002
2003
2004
H7-43(携帯電話機)
2.
2005
2006
出願年
2007
2008
2009
2010
H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型))
画像を含む意匠
H7-43 W(携帯電話機)は、2008 年の 58 件をピークに減少を続け、2010 年には 18 件
の出願であった。
H7-725 W(表示機付き電子計算機等(携帯型))は、増加傾向にある。2010 年には前
年の 42 件から 2 倍近い 70 件へと増加した。
図 2-7
部分意匠登録出願数(出願年別:画像を含む意匠)
部分意匠登録出願数(件)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
2001
2002
2003
H7-43 W(携帯電話機)
2004
2005
2006
出願年
2007
2008
2009
2010
H7-725 W(表示機付き電子計算機等(携帯型))
- 8 -
第4節
関連意匠登録出願数
1.
分野全体、各分類
H7-43(携帯電話機)は、2008 年以降減少している。2010 年の 22 件は 10 年間で最小
の出願数である。
H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型))は、2009 年に急増し、増加傾向にある。
表 2-4
関連意匠登録出願数(出願年別:分野全体、各分類)
出願年
H7-43
H7-725
分野
全体
2001
96
2002
53
2003
34
2004
55
2005
44
2006
61
2007
70
2008
59
2009
26
2010
22
合計
520
15
10
5
15
16
22
28
20
51
75
257
111
63
39
70
60
83
98
79
77
97
777
図 2-8
関連意匠登録出願数(出願年別)
関連意匠登録出願数(件)
120
100
80
60
40
20
0
2001
2002
2003
H7-43(携帯電話機)
2004
2005
2006
出願年
2007
2008
2009
2010
H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型))
- 9 -
2.
画像を含む意匠
H7-43 W(携帯電話機)は、2009 年以降減少している。
H7-725 W(表示機付き電子計算機等(携帯型))は、2009 年に前年の 3 倍近く増加し
たが、2010 年には減少した。
表 2-5
関連意匠登録出願数(出願年別:画像を含む意匠)
出願年
2001
2002
2004
2005
2006
2007
2
1
合計
53
8
22
17
53
23
24
18
106
H7-43 W
0
6
0
7
7
6
9
2008
15
H7-725W
0
1
0
1
1
2
1
分野
全体
0
7
0
8
8
8
10
図 2-9
2003
2009
2010
関連意匠登録出願数(出願年別:画像を含む意匠)
関連意匠登録出願数(件)
25
20
15
10
5
0
2001
2002
2003
H7-43 W(携帯電話機)
2004
2005
2006
出願年
2007
2008
2009
2010
H7-725 W(表示機付き電子計算機等(携帯型))
- 10 -
第3章
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における日米欧中韓での意匠登録動向
調査
第1節
概要
1.
対象機関・調査対象・調査項目
日本(JPO:日本国特許庁)、米国(USPTO:米国特許商標庁)、欧州(OHIM:欧州
共同体商標意匠庁)、中国(SIPO:中国国家知識産権局)、韓国(KIPO:韓国特許庁)
の 4 か国 1 機関で 2009 年 1 月 1 日~2010 年 12 月 31 日に意匠公報が発行された意匠に
ついて、登録番号、公報発行日、出願日、優先権主張日、出願人、意匠分類、部分意匠
の利用を調査した。
2.
出願人の定義
筆頭出願人の集計を対象とした。
米国での意匠登録については、「Assignee」を出願人とし、「Assignee」の記述がない
場合は「Inventor」を出願人とした。
欧州については、欧州連合(EU :European Union)27 か国を対象とした。欧州連合加
盟国の海外領土は含まない。「Owner」を出願人とし、「Owner」の記述がない場合は
「Representative」を出願人とした。
中国には香港・マカオを含む。中国での意匠登録は申請人を出願人とした。
3.
分類の付与
以下の情報を用いて日本意匠分類を付与した。
4.
①
特許庁によりあらかじめ付与されていたもの
②
ロカルノ分類+物品名から推定(欧州、中国での意匠登録のみ)
③
個別の意匠登録の図面等、及び書誌情報から推定(欧州、中国での意匠登録のみ)
部分意匠制度の利用状況
日本、米国、韓国での意匠登録について部分意匠制度の利用件数を調査した。日本、
韓国での意匠登録については公報に記載された情報を参照した。米国での意匠登録につ
いては公報に記載された意匠の詳細な説明に記載された文言から機械的に判断した。
第2節
出願先別意匠登録数推移(分野全体)
2009 年~2010 年の日米欧中韓全体での出願先別意匠登録数推移を図 3-1 に、2009 年~
2010 年の間に公報が発行された意匠が、いつごろ出願されたものであったかを把握する
ために、図 3-2 に、各国・地域での出願日から公報発行日までの期間の分布を示す。
日米欧中韓での意匠登録数は、2009 年は 4,583 件、2010 年は 4,662 件とわずかに増加し
た。韓国での登録は前年の 2 倍近く伸びたが、中国での登録は前年比 14.6%であった。ま
た、日本、米国、欧州での登録はいずれも減少した。
2009 年から 2010 年における部分意匠の登録数は、日本での登録が 587 件、米国での登
録が 724 件、韓国での登録が 292 件である。
- 11 -
2010 年における画像を含む意匠の登録数は、日本での登録が 89 件、米国での登録が 8
件、欧州での登録が 28 件、韓国での登録が 152 件である。
日本では、登録日の 5 ヶ月から 10 ヶ月前に出願されたものが全体の約 80%を占める。
米国での登録は 10 ヶ月前にピークがあるが、広い時期の出願から構成されている。欧州
での登録は 30 日以内が 52%、3 ヶ月以内に出願されたものが全体の 80%を占める。中国で
の登録は 1 年 1 ヶ月~1 年 2 ヶ月前にピークがあり、5 ヶ月から 1 年 4 ヶ月前に出願された
ものが約 90%を占める。韓国での登録は 1 年 2 ヶ月前にピークがあり、6 ヶ月から 1 年 3
ヶ月前に出願されたものが約 90%を占める。
図 3-1
出願先別意匠登録数推移(分野全体)
日本
1,324件
14.3%
韓国
1,583件
17.1%
5,000
4,500
4,000
意 3,500
匠 3,000
登 2,500
録 2,000
数 1,500
1,000
500
0
米国
1,502件
16.2%
中国
3,653件
39.5%
欧州
1,183件
12.8%
公報発行
2009-2010年
4,583
4,662
2009
公報発行年
出願先
合計
9,245件
日本
米国
欧州
中国
2010
韓国
合計
部分意匠数(2009-2010年)
割合
件数
日本
587
44.3%
米国
724
48.2%
韓国
292
18.4%
出願日から公報発行日までの日数(分野全体)
出願日-公報発行日までの日数(米国)
出願日-公報発行日までの日数(中国)
- 12 -
0
300
600
900
0
300
600
900
1,200
25%
20%
15%
10%
5%
0%
0
300
1,200
0
300
600
900
出願日-公報発行日までの日数(韓国)
25%
20%
15%
10%
5%
0%
1,200
25%
20%
15%
10%
5%
0%
1,200
0
300
600
25%
20%
15%
10%
5%
0%
900
1,200
25%
20%
15%
10%
5%
0%
出願日-公報発行日までの日数(欧州)
600
出願日-公報発行日までの日数(日本)
900
図 3-2
第3節
出願人居住国・地域別意匠登録数推移(分野全体)
2009 年~2010 年の日米欧中韓全体での出願人居住国・地域別意匠登録数を見ると、韓
国居住者が 34.8%と最も多いことが特徴である。
図 3-3
その他
483件
5.2%
韓国居住者
3,213件
34.8%
出願人居住国・地域別意匠登録数推移(分野全体)
日本居住者
1,110件
12.0%
米国居住者
544件
5.9%
欧州居住者
1,263件
13.7%
中国居住者
2,632件
28.5%
日本居住者
韓国居住者
米国居住者
その他
欧州の内訳(上位10か国地域)
0
300
600
2010
公報発行年
出願人居住国・地域
25%
20%
15%
10%
5%
0%
900
4,662
2009
合計
9,245件
出願日-公報発行日までの日数
1,200
5,000
4,500
4,000
意 3,500
匠 3,000
登 2,500
録 2,000
数 1,500
1,000
500
0
公報発行
2009-2010年
4,583
フィンランド
スウェーデン
ドイツ
イタリア
英国
フランス
オーストリア
オランダ
ポーランド
チェコ共和国
- 13 -
欧州居住者
合計
中国居住者
その他内訳(上位10か国地域)
706
228
156
46
34
23
19
13
11
9
カナダ
台湾
シンガポール
スイス
マレーシア
イスラエル
モナコ
バージン諸島
UAE
豪州 他
255
181
14
10
8
4
3
2
1
1
第4節
日米欧中韓間の意匠登録の相関関係
2009 年~2010 年の日米欧中韓間の意匠登録の相関関係を示す。
自国外での登録で多いのは、韓国居住者の中国での登録 661 件、米国での登録 529 件、
欧州居住者の米国での登録 337 件である。
日米欧中韓の中では、韓国での登録 1,583 件のうち、韓国居住者は 1,463 件で、92.4%と
いう構成比は日米欧中韓の中で最も高いことが特筆される。
図 3-4
日米欧中韓間の意匠登録の相関関係(分野全体)
その他
韓国 23件
居住者 1.7%
168件
12.7%
日本での登録
1,324件
中国
居住者
1件
欧州 0.1%
居住者
103件
7.8%
米国
居住者
78件
5.9%
78件
63件
32件
日本
居住者
951件
71.8% 103件
米国での登録
1,502件
日本居住者
63件
4.2% 米国居住者
263件
17.5%
その他
218件
14.5%
日本
居住者
32件
その他 2.7%
159件
13.4%
中国居住者
92件
6.1%
92件
1件
18件
168件
46件
26件
392件
36件
276件
日本居住者 米国居住者
88件
46件
2.4%
1.3%
欧州居住者
276件
7.6%
韓国居住者
661件
18.1%
中国
居住者
26件
2.2%
52件
88件
欧州
居住者
511件
43.2%
韓国
居住者
392件
33.1%
337件
529件
その他
72件
2.0%
日本居住者
18件
その他 1.1%
11件
0.7%
米国居住者
52件
3.3% 欧州居住者
36件
2.3%
中国居住者
3件
0.2%
3件
中国居住者
2,510件
68.7%
661件
韓国居住者
1,463件
92.4%
中国での登録
3,653件
日本居住者からの登録
1,110件
欧州居住者からの登録
1,263件
米国居住者からの登録
544件
中国居住者からの登録
2,632件
韓国での登録
1,583件
韓国居住者からの登録
3,213件
2510
2,500
2,500
2,500
2,500
2500
2,000
2,000
2,000
2,000
2000
1,500
1,500
1,500
1,500
1500
1,000
951
1,000
1,000
500
500
63
32
46
18
米国
欧州
中国
韓国
0
日本
78
1,000
337
500
263
63
88
52
欧州
中国
韓国
0
米国
1000
529
500
276
36
500
1
92
26
日本
米国
欧州
米国
欧州
中国
- 14 -
韓国
661
392
168
3
0
日本
1463
511
103
0
日本
米国
居住者
63件
5.3%
63件
欧州居住者
337件
22.4%
韓国居住者
529件
35.2%
欧州での登録
1,183件
0
中国
韓国
日本
米国
欧州
中国
韓国
第5節
日本意匠分類別意匠登録数推移
H7-43(携帯電話機)の意匠登録数は、わずかながら減少している。H7-725(表示機付
き電子計算機等(携帯型))の意匠登録数は前年比+47.3%(2009 年 848 件→2010 年 1,249
件)と増加している。
図 3-5
日本意匠分類別意匠登録数推移(公報発行年別:各分類)
4,000
3,500
3,000
意
2,500
匠
登 2,000
録
1,500
数
1,000
500
0
2009
2010
公報発行年
H7-43(携帯電話機)
H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型))
- 15 -
第4章
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野におけるデザイン変遷調査
第1節
携帯電話機の形状の種類
携帯電話機のデザインの変遷を述べる前提として、本項目に登場する携帯電話機の形状
について記す。本項目で調査対象とした携帯電話機とは、携帯電話機(所謂フィーチャー
フォン)とスマートフォン(多機能携帯電話)を指す。以下に携帯電話機とスマートフォ
ンにおける主なる形状を記す。
z ストレート型:矩形を基調として、操作部と表示部がひとつになったもの
z フリップ型:ストレート型の操作部に保護カバーが付いたもの。カバーにより誤操
作防止を講じている。
z 二つ折り型・折畳型:本体にヒンジがついて折りたたむタイプ。画面部分や操作部
が保護される。軸技術による横開き型、表示部分が回転するタイプもある。
z スライド型:上層と下層の 2 段にわかれて上層部をスライドすることで下層部の操
作部分が露出するタイプ。
その他、セパレート型(表示部分と操作部分の機器が分離するタイプ)も存在する。
第2節
携帯電話機および携帯型情報端末機の変遷
1.
携帯電話機の登場から近年までの流れ
表 4-1
携帯電話機に関わる出来事と機器形状・特徴の整理
主な出来事
主な全体形状
特徴など
~1990
・屋外で使用可能な電話機
・自動車電話
・ストレート型
・大きい筐体
・アンテナあり
~1995
・小型の携帯電話が民間向けに登場(1991)
・ストレート型
・折畳型
・小型化の実現
・アンテナあり
~2005
・携帯電話各社でインターネット接続サービスの開 ・ストレート型
・フリップ型
始(1999)
・『アナログ方式』から『デジタル方式』へ完全移 ・折畳型
行(1999)
・液晶のカラー化(1999)
・カメラ付携帯電話機で撮影した写真のメール送受
信が可能に(2000)
・第 3 世代通信サービス(3G)の開始(2001)
・テレビ電話登場(2001)
・ワンセグ放送開始(2006)
2006 ~
・番号ポータビリティ制度開始(2006)
2009
・【スマートフォン】の日本発売(2008)
2010~
・折畳型
・スライド型
・スマートフォンの開発が活発化
・ストレート型
・スマートフォンユーザーの増加。スマートフォン ・スライド型
の時代へ
・折畳型
・アン テナ が なく
なる傾向へ
・大画 面化 ・ 高精
度化
・カメラ機能
・ヒンジ技術
・アンテナなし
・テレ ビ視 聴 対応
(ヒンジ技術)
・アンテナなし
・UI の開発
z 小型携帯電話機の登場
携帯電話以前では、1970 年代の自動車電話無線機、1985 年に車外兼用型自動車電話
が発売されていた。この車外兼用型自動車電話の重量は約 3kg、肩から下げて持ち運び
が可能で自動車から離れても利用できる機器であった。しかし、携帯電話というよりは、
- 16 -
自動車電話の発展形としてのサービスにすぎなかった。1991 年に、民間向けに超小型
携帯電話が開始された。当時、4 メーカーから各 1 機種が発売され、それらの平均体積
約 150cc、重量約 230g と、それまでの機種に比べて大幅に小型・軽量化を実現していた。
形状は「ストレート型」と「折畳型」の 2 種類があった。これを皮切りに携帯電話機が
普及していった。
z 携帯電話加入条件の緩和
90 年代半ばに携帯電話機が普及した要因の一つとしては、携帯電話機の加入条件の
緩和がある。当初はレンタル制のため、保証金やレンタル料などで大きな費用がかかっ
た。しかしこの制度は 1993 年に廃止され、1994 年には買取り制に移行した。これによ
りそれまでビジネス中心であったユーザが一般へと広がり携帯電話契約者数が増加し、
それまでビジネス向けであった製品開発も一般ユーザに向けての製品開発に変換してい
った。
z PHS サービスの開始
PHS(Personal Handy Phone)は移動電話サービス一種で 1995 年から開始された。PHS
の特徴としては、電話加入者の先端に簡易的な基地局用無線を設置することで、基地局
からの電波到達範囲が短くなり、PHS 移動機の送信出力も 10mW と小さくすることが可
能である。このことは、特に医療器具への影響が少ないとして医療施設を中心に PHS
は多く使用されている。また、端末の価格や基本使用料、通話料など当時の携帯電話機
と比較しても低額に設定され、端末本体も携帯電話機と比較して小型・軽量化であった。
しかしながら、導入当初の PHS サービスは高速移動中の通信に向いていなかったため、
サービスエリアの拡大には多くの基地局を設置する必要があった。
z デジタル通信方式への移行
初期携帯電話機の通信方式は『アナログ式』であった。その後、1993 年デジタル方式
によるサービスが開始され、年々通信の質が向上していった。1995 年には高速データ
通信を可能とした携帯電話機が発売され通信コストの削減が実現した。デジタル通信方
式への移行はそれまでアナログでは不可能であったサービスが可能となったことで、後
に、携帯電話各社の携帯電話向けインターネット接続サービス開始のきっかけとなっ
た。
z 第 3 世代携帯電話機の登場(3G)
携帯電話機の通信方式の変遷は第 1 世代から第 4 世代としてそれぞれ 1G、2G、3G、
4G と称される。G は Generation であり、その世代の携帯電話機、技術、通信回線を意味
している。1999 年に第 2 世代(2G)にデジタル通信方式携帯電話機が登場したことで、
インターネット接続サービスの開始等、データ通信機能の飛躍的な進歩により、電子メ
ール、携帯電話専用サイトの誕生、アプリダウンロードなどが普及した世代を第 3 世代
までの過渡期として第 2.5 世代と区分している。第 2 世代と第 2.5 世代の通信方式では
日本独自で開発した方式が採用されていた。しかし、欧米の第 2 世代携帯電話機には別
の方式を採用しており、それが実質の世界標準規格であった。主要国では日本と韓国の
- 17 -
み技術性に互換のない通信方式を取り入れていたため、日本では第 3 世代携帯電話機で
は世界標準規格を採用した機器の開発を行っていた。第 3 世代携帯電話機(第 3 世代、
3G)は 2001 年に世界で初めて日本でサービスとして開始された。当サービスではグロ
ーバルスタンダードの通信方式を採用していた。しかしこの方式には 2 種類の主要規格
が存在し、それぞれに互換性はない。日本と同じ規格のものは、日本と欧州でのみ導入
されているものであり、もう一方の規格を北米で採用している。この 3G が始まったこ
とで、音声通話中心であった携帯電話から、インターネットやデジタルコンテンツの利
用を行う多機能携帯電話へと転換し、通信回線の高速大容量化などを余儀なくされた。
またハードウェアに関してもメモリの大容量化や外部記憶媒体の搭載を求められるよう
になった。
表 4-2
年代
携帯電話機の通信方式世代の変遷
通信回線
世代における特徴
第 1 世代(1G) ~1990
アナログ
・アナログ音声中心(自動車電話)
・通信の自由化による新規事業者の参入
・初期携帯電話の誕生
第 2 世代(2G) 1990~2000
第 2.5 世代
(2.5G)
デジタル
・デジタル携帯電話の登場
・パケット通信、インターネット接続サービス
・表示液晶の拡大、カラー化
・保証金制度の廃止、端末自由化による自由競争開始
・カメラ付き携帯電話機の登場
第 3 世代(3G) 2000~2010
第 3.9 世代
(3.9G)
デジタル
・携帯電話のマルチメディア化・パーソナル化
・音楽ダウンロード
・TV 視聴、ワンセグ機能
・GPS 機能
・決済機能
・MNP 制度
・通信料金定額制の普及
・高速通信化(IMT-2000)
第 4 世代(4G) 2010~
デジタル
・携帯電話ユビキタス化
・SIM ロック解除への動き
z 目的・用途・ターゲット層に特化した携帯電話の登場
携帯電話機が多機能化・高性能化したことによって、オールインワンの携帯電話機ば
かりではなく目的や用途、ユーザのターゲットに特化した携帯電話機が求められるよう
になった。
z デザインに特化した携帯電話機、携帯電話機のブランド化
2000 年頃までの携帯電話の形状の主流はストレート型(とフリップ型)であった。そ
の後、表示部分の拡大可能な折畳式が次第に携帯電話の主流の形状となっていった。諸
外国の携帯電話機には機能ではなくデザインに特化した端末もみられたものの 2000 年
代前半の携帯電話機の開発とはもっぱら機能の充実を追い求めたものであったため、各
社におけるデザイン面の差別化があまり見られなかった。しかし 2003 年に有名デザイ
ナーとコラボレーションをした、携帯電話のためのデザイン開発プロジェクトが発足し、
- 18 -
個性的な携帯電話が多く登場するようになった。また近年では、端末メーカーの他製品
(テレビやデジタルカメラ等)の名前を冠してブランディングを図る傾向も見られた。
第3節
スマートフォンの時代へ(2000 年代後半~現在)
2000 年代後半から現在にかけて、それまでの高機能型携帯電話機からスマートフォン
の時代へと急激に変化を遂げた。日本国内での携帯電話機は 2000 年以降から高機能化・
高性能化・多機能化していったものの、端末機器形状そのものは 2000 年代から主流とな
った折畳型の形状を基本としており、付加機能に合わせた派生形の発展にとどまっていっ
た。しかし 2007 年以降のスマートフォンの世界的な大ヒットにより、それまでの高機能
型携帯電話機からスマートフォンにユーザが移行しつつある。ユーザの移行に従い、それ
まで主流であった端末形状も折畳型からストレート型タッチパネルのキーボードレスが優
勢を占めていくこととなった。スマートフォンとは多機能電話機を意味するものであるが、
従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)との違いは下記のようになっている。
表 4-3
高機能携帯電話機(フィーチャーフォン)とスマートフォンの違い
高機能携帯電話機
(フィーチャーフォン)
スマートフォン
製品開発の基本
電話機(音声通話)
インターネット端末機
(パソコン)
付加機能の例
カメラ機能
データ通信機能
テレビ視聴機能
音楽再生機能
決済機能 など
情報通信端末機能
個人情報管理機能
電子辞書機能
音声通話機能
カメラ機能 など
プラットフォーム ローカルスタンダード
グローバルスタンダード
アプリケーション モ バ イ ル ブ ラ ウ ザ シ ス テ ム の 開 スマートフォン向けのアプリケ
開発
発
ーション
ビジネスモデル
ブラウザベースに展開
アプリケーションダウンロード
スマートフォンが登場する以前にもスケジュール管理機能やアドレス帳などの個人情報
管理機能、文書作成機能、計算機能、電子辞書機能などを備えた携帯型情報通信端末機
(PDA)が存在していた。また日本においても、2005 年に PHS に対応した情報通信端末
でかつフルブラウザ機能によりウェブサイトの閲覧を可能にしたものがあった。しかし当
時はスマートフォンという概念がなかったため流行はしなかった。
第4節
携帯電話機および携帯型上秘奥端末における技術開発
z ユーザーインタフェースの変化
携帯電話機のユーザーインターフェース(UI)である画面およびキー操作面は、1990
年代以降携帯電話機が多機能化を遂げていく端末に対応し、各社が必要とされる端末の
操作に対応した技術的な工夫から、開発が進んだ。
z メニュー画面
- 19 -
携帯電話機のメニュー画面は、多機能化及び画面表示の技術の向上によって、デザイ
ンを変えてきた当初、液晶モノクロであり文字情報のみで構成されていた。搭載される
機能が通話機能等の限られたものであったため、非常にシンプルであった。1990 年代
後半からは、メッセージ機能が発達する等、携帯電話機の多機能化が進んだ。このこと
によって、メニュー画面から複数の機能を呼び出す需要が生じ、メニューが縦に複数並
んだデザインが登場した。その後さらに搭載機能の数が増加し、2000 年頃からはグラ
フィカルなアイコンによるメニュー画面の表示が登場した。液晶カラー化及び拡大・高
精細化が実現し、鮮明なメニューアイコン表示をも可能とした。2000 年代後半にタッ
チパネルにより操作するスマートフォンが登場してからも、アイコンが並んだメニュー
画面が主流となっている。加えてメニュー画面を複数ページ化させ、指を用いて上下ま
たは左右にページを遷移させることによって多数の機能の選択が可能となった。
z キー操作面
携帯電話機のキー操作面では、搭載される機能をスムーズに実現するための操作性に
配慮した開発が進められてきた。1999 年の携帯電話機のインターネット接続サービス
の導入以降、片手の手のひら上で操作するという観点で、操作面への上下キー、4 方向
キーの配置が必須となった。また、電子メールを打つための「文字入力機能」について
も、文字入力に配慮したインターフェースの開発に各社が注力している。現在のスマー
トフォンはストレート型キーボードなし、タッチパネルの形状が主流となり、タッチパ
ネル式=スマートフォンのイメージが定着しつつある。一方で、スマートフォンであっ
てもテンキーやフルキーボードを搭載した機種の開発や、タッチパネルにおける手書き
文字入力機能など、モバイル環境での更なる操作性を重視した開発が行われている。
z カラーバリエーション
初期の携帯電話機の本体の色は専ら黒か濃い灰色であり、主にビジネス向けであった
ことからカラーバリエーションは求められなかった。しかし、1994 年の端末買い取り
制度への移行で携帯電話機はビジネス向けから一般ユーザへと拡大し、2000 年以降の
通信デジタル化によるインターネット接続サービスの開始によるデジタルコンテンツの
拡充、カメラ機能等の多様な機能が追加されるに従って性能や機能の充実とともに色や
外観の洗練も求められるようになる。著名なデザイナーによる携帯電話機や、ブランド
とのコラボレーション携帯電話機のほか、通常の製品シリーズのなかでも豊富なカラー
ヴァリエーションによる機器選択が可能となった。携帯電話を持つことは『電話をする』
という本来の機能だけではなく、個人の嗜好を反映したファッションの一部として定着
するようになる。近年では、主に女性ユーザをターゲットとしたピンクや淡い色、暖色
のカラーやラメ等のデコレーションを配した製品開発なども促進されている。
- 20 -
第5章
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野におけるデザイン開発及び意匠制度利
用状況調査
第1節
1.
調査対象分野のデザイン開発における特徴
スマートフォンの登場によるデザイン開発の変化
携帯電話機のデザイン開発において、スマートフォンの登場は大きな転換期となり、
関係会社が凌ぎを削ってデザイン開発を行っている状況である。スマートフォンのデザ
イン開発の特徴、従来の携帯電話機(フィーチャーフォン)と異なる部分等について整
理を行った。
デザイン開発の特徴においては、筐体と画面については共通のコンセプトに基づいて
開発されることからデザイン開発のフローはいつも連動するという企業と、場合によっ
ては双方のデザインフローが分離されるという企業があった。特にスマートフォンにお
いては、筐体のデザインと画面の UI(ユーザーインターフェース)開発のフローが分離
されて実施されているという企業もある。開発された UI を、他の端末にも展開したい
という考えによることが多い。
2.
各デザイン構成要素における変化
z 筐体
フィーチャーフォンとスマートフォンでは、デザイン開発の要素の種類・数が異なっ
ている。スマートフォンになることでデザインの要素が少なくなったことを受け、各社
が独自性を出すためにデザイン開発を模索している過程であることが浮き彫りになった。
このようなデザインの構成要素の中で独自性を出すための手段としては、より細かい部
分で独自性を出すようになったり、全体の印象で独自性を出すようになったり等、取り
組み方は企業によって多様である。
z 画面デザイン
多くのスマートフォンはその大部分が画面によって構成されている。GUI (Graphical
User Interface)をその携帯電話機のアイデンティティとして位置づけ、デザイン開発に
注力をしている。
スマートフォンの GUI に関しては、トップ画面等のグラフィックデザインだけでは
なく、コンテンツやその構成、画面の動き、展開するサービスを含めたトータルなデザ
イン開発に各社で取り組んでいる。
3.
ステークホルダーの多様さ
デザイン要素が画面を中心として多様になったことにより、デザイン開発を担う多様
なステークホルダーのデザイン開発への関わり方が変化している。従来デザイン開発の
中心を担っていた通信事業者やメーカーに加え、フリーのウェブデザイナー、アプリ等
を開発するコンテンツ事業者等が携帯電話機のデザイン開発へ関わる度合いが高まって
いる。また海外端末が日本市場に入ってきたことを踏まえ、海外にデザインのアウトソ
ーシング先を求めるようになったという企業もある。
- 21 -
4.
端末のブランドの重視
スマートフォンにおいては、端末のブランド価値が重視されるようになった点もフィ
ーチャーフォンから変化した点である。その要因としては、開発する端末数が少なくな
ったためブランドによって差別化をはかることが重要となっていること、海外からブラ
ンド力のある端末が多数国内に入ってきていること等が挙げられる。
第2節
1.
通信事業者がデザイン開発に与える影響
デザイン開発体制
日本においては、携帯電話機端末に通信事業者による SIM ロックが存在し、通信事
業者が携帯電話機端末の販売を行っている。
デザイン開発においては、通信事業者がコンペ形式等により、各端末メーカーから端
末に関する提案を受けることが一般的である。このような状況は日本における携帯電話
開発の特徴となっており、海外では状況が異なっている。海外においては、デザイン開
発の際には特定の対象を想定としたデザイン開発は成り立たないという声もあった。
フィーチャーフォンが主流であった時代の、通信事業者が開発の舵取りを行っている
という状況は、スマートフォンが主流となる時代では変化すると見られる。今まではメ
ーカーでのデザイン開発においてはデザインが全くゼロの段階から開発を行っていたが、
近年ではメーカーの内部である程度デザインを固めた上で通信事業者のコンペに臨み、
コンペ後のデザイン開発はメーカーの設定したテーマに合わせてデザインをカスタマイ
ズすることに留めることが多くなっている傾向がみられる。これに加え、デザイン開発
期間(通信事業者よるコンペから製品発売までの期間)が短くなっている傾向があり、
端末メーカー独自のデザイン開発を後押しする一因にもなっている。また、フィーチャ
ーフォンにおいては通信事業者に共通したサービスの利用を可能にする等の理由から、
キーの配置等のデザインを通信事業者が規定するということもあった。しかし、スマー
トフォンにおいてはそのような規制がなくなりつつある。
2.
各通信事業者間の差別化
日本では、2006 年に電話番号を変更しないまま他通信事業者に契約変更を行うこと
のできる MNP(番号ポータビリティ)制度が導入されたこと等により、利用者の囲い込
みが各通信事業者にとって重要な命題となった。
z デザインによる差別化
携帯電話機によるインターネット利用が広く一般に浸透し、インターネット関連のサ
ービスでの囲い込みが難しくなっているという状況がある。他社との差別化のためには、
料金プランの工夫や、利用者の満足度を高める端末を販売するかということ等が重要に
なっている。後者の観点では、デザイン性の高い端末を販売することで他社との差別化
を図るために、通信事業者が著名なデザイナーと共にデザイン性の高い端末の開発を行
う場合もある。
z 海外端末をラインナップに加えることによる差別化
- 22 -
海外で販売実績のある海外メーカーの端末を販売することも、通信事業者の差別化戦
略のひとつである。日本のメーカーや通信事業者によって開発された端末に加え、近年
では通信事業者が海外メーカーの端末(特にスマートフォン)を販売することが一般的
になってきている。このような状況の中、国内の携帯電話機端末メーカーは海外端末と
の差別化に配慮したデザイン開発を行っているということも浮き彫りになった。
z 独自の GUI 開発による差別化
各社が独自に GUI の開発を行っている点は、通信事業者間の差別化戦略の一つとし
て着目できる。通信事業者は一般に、多様なメーカーが開発する端末に同様の GUI を
使用する傾向があった。しかし、製品企画に介入しない外国籍企業の端末にこれを求め
ることが難しいため、結果として、通信事業者から発売する端末の画面デザインに、端
末毎の多様化が進む可能性があることが示唆された。
第3節
1.
技術・規格・規制がデザイン開発に与える影響
技術開発とデザイン開発の関係性
z 筐体
スマートフォンにおいては、技術開発が早いスピードで進んでおり、そのことによっ
てデザイン開発の状況も影響を受けている。また、具体的な技術要素として、特に電池
の技術開発の状況がデザインに影響を及ぼすことが多いという意見もあった。
z 画面デザイン
ヒアリング調査からは、デザイナーが技術開発とのせめぎあいの中で、自らの考案し
たデザインを実現するために苦心しているという声が多かった。スマートフォンで画面
の UI の開発を行う際にも、同様の状況があるようである。
2.
規格・規制とデザイン開発の関係性
業界団体等による規格・規制については各社で確実な適合に配慮しているものの、デ
ザイン開発に影響を与える影響はそれほど大きくない。一方で、製品の高い品質を保つ
ために独自の社内規格を制定しているという企業もあり、その規格がデザイン上の制約
となっている場合もある。最近日本で販売している外国籍企業の製品については、日本
企業が有している社内規格等には適合しないこともある。今後これらの商品に対抗して、
よりデザイン性の高い製品を開発するために、社内規格を飛び越えたデザインを行う必
要もあるのではないかという声もあった。
3.
画面デザインに影響を与える技術等の要素
スマートフォンにおいては、ソフトウェア開発会社がオペレーティングシステム
(OS)を開発し、オープンソースとして公開されている携帯電話機用のプラットフォー
ムを搭載する場合も多い。この場合、ソフトウェア会社が設定したプラットフォームの
使用規則によって開発する GUI がある程度制約を受けるという状況がある。その一方
で、このようなプラットフォームを利用することで、全くの最初の段階から GUI のシ
ステムを構築する必要がなくなるため、GUI の開発が容易になったという声もあった。
- 23 -
日本の通信事業者では、これらのプラットフォームを活用し、独自の UI の開発を行っ
ている。開発した GUI は、多機種に用いることが多い。さらに、総合電気メーカーが
携帯電話の開発を行う場合、今後は他の機器と GUI を共通化してブランド力を高める
ことを試みる企業もある。
第4節
デザイントレンド
日本国内においては、端末代金とサービス料金が分離された新しい料金制度の導入が進
んだことで、端末の買い替えサイクルが長期化している。そのことが原因となって、端末
にも「飽きの来ないデザイン」が求められている。ユーザーが飽きないデザインを追及す
ること等が要因となり、国内各社で開発する端末には、似たようなデザインが採用される
傾向が強いという。そのため外観ではなく、中身での差別化の重要度がより一層高まって
いる。
他のデザイン分野との比較では、携帯電話機は利用者に非常に身近な機器であり、開発
の際にもユーザー視点が非常に重要視されるという声が多かった。また、携帯電話機を使
用する年代、使用シーン、使用用途等が多様化したことにより、各企業がそれに対応した
デザイン開発を行っている。
スマートフォンにおいては、特定の層に向けたデザインをする傾向がより強化され、さ
らに日本においては消費者の多様なライフスタイルと携帯電話への関わり方によって、端
末のセグメント化が進むという意見もあった。
日本の消費者のデザイン志向としては、防水等機能を含む高付加価値な携帯電話機が好
まれる傾向があるという意見があった。
第5節
1.
調査対象分野の意匠制度利用状況
意匠出願状況
(1)
意匠出願の動機、意匠権に期待する効果
調査対象分野製品に関する意匠出願においては、大半の企業が「他社への侵害性回
避」または「模倣品対策」を目的として掲げている。この傾向は、通信事業者、メー
カーに差はなかった。
「他社への侵害性回避」を出願の目的とする企業は、調査対象分野では類似のデザ
インが多く存在、かつ先行意匠の権利範囲が不明確で、確実に自社のデザインを権利
化したいと考えに基づいて意匠登録を行う傾向がある。また先行意匠やデザインをす
べて調査することに困難が伴うため、意匠登録をすることで他社への侵害性の確実な
回避を行いたいという声もあった。さらには、意匠登録によって創作者にデザイン創
作へのインセンティブを与えるという効果を期待する企業もあった。
スマートフォンでは、
「他社への侵害性回避」の目的がより重要となるという意見も
あった。
(2)
先行意匠調査
フィーチャーフォンではデザインが飽和していること、スマートフォンでは全く新
しいデザインの製品が多いこと、デザイナーが市場動向やデザイントレンドを的確に
把握していること等から、調査対象分野における知的財産担当による先行意匠調査の
- 24 -
必要性は小さいと考える企業が多かった。先行意匠調査を行う企業であっても、デザ
イナー自身が行う場合が多かった。一方で、企業の義務として先行意匠調査を体系的
に行っている企業もある。画面デザインの先行意匠調査に関しては、調査対象の製品
の分野が携帯電話以外にも及ぶ可能性もあり、困難が伴うという意見もあった。
(3)
出願の時期
意匠出願は、概ねデザインが完成した時点~製品発表までのタイミングで実施され
ることが多い。近年では特にデザイン開発期間が短くなっていることから、発売直前
までデザインの変更が行われる可能性があり、意匠出願の時期が遅れてしまう傾向が
ある。また、調査対象分野では製品化を前提としていないコンセプトモデルの開発を
行うこともデザイン開発の特徴の 1 つとなっている。この場合は、出願の時期は発売
の時期には左右されず、デザインが固まったタイミングで、その都度意匠出願を行っ
ている。
第6節
1.
意匠出願戦略
意匠出願の際の全体意匠・部分意匠の選択
意匠出願の際に全体意匠、部分意匠のどちらでの権利化を優先するかは、全体意匠で
の登録を基本的な方針とする企業や、場合によって部分意匠での登録を行う企業など、
当該企業の意匠出願戦略によって多様であった。
フィーチャーフォンとスマートフォンでの意匠出願戦略の違いに関しては、変化がな
いという声や、デザイン要素の減少から各端末のブランド価値を重視する傾向にあるこ
とから、特に部分意匠に関連する戦略が変化するという声が聞かれた。
2.
関連意匠制度・秘密意匠制度・早期審査制度等の利用状況
関連意匠制度、秘密意匠制度、早期審査制度等の活用は、調査対象分野においては限
定的である。類似のデザインの端末のバリエーション展開を目的として行う場合、関連
意匠を利用するという企業もある。調査対象分野では、デサイン開発の期間が短いこと
が秘密意匠制度の活用が少ないことの要因となっている。一方で、秘密意匠制度が利用
される場合としては、画面デザインと筐体のデザインのフローが別に進行している場合、
先に完成したデザインについて秘密意匠制度を利用して意匠出願をする場合、コンセプ
トモデル等で製品化までの期間が長いと想定される場合等がある。
3.
画面デザインの保護
スマートフォンにおいては全体のデザインにおける画面デザインの占める割合が大き
くなっている、画面デザインに各社の独自性が反映されていることも多く、デザイン上
の特徴を保護するために各社工夫して出願戦略を打ち出している。画像を含む意匠の保
護を積極的に行う企業が多い反面、その権利範囲の不明確さに対する疑問や、制度自体
の使いづらさを感じる企業の意見が聞かれた。また、画面デザインについては、意匠権
以外に、特許でデザインを保護したいという声も多かった。スマートフォンでは画面デ
ザインのレイアウトなどグラフィックデザインの要素に加えて、GUI の動きや操作に係
- 25 -
る作法のデザインを保護したいという要望もある。その中で、特許は GUI の動きのデ
ザインを権利化できる可能性があり、利用が進んでいる。
近年は、スマートフォンの GUI のデザインに、ウェブデザイナー等が関わることも
ある。しかしウェブ業界では意匠や特許による権利化が一般的でないことが多く、権利
化をすること自体に戸惑う声もデザイナー側から聞かれた。
4.
特許権、商標権と合わせた意匠出願戦略
特許権は、画面デザイン保護の観点からも、調査対象分野のデザインを守る権利とし
て期待が高まっている。通信事業者が特許出願を行う事例もある。特許以外では、意匠
権と商標権の組み合わせで、端末のブランドを保護しているという例もある。
5.
権利の帰属
通常、携帯電話機のデザイン開発は通信事業者とメーカーが共同で行うことが多い。
その中で、開発を行ったデザインの意匠権は、どちらかが単独で出願する場合が多い。
また、近年ではメーカーが単独で意匠出願を行う傾向がみられる。画面デザインについ
ては、共同出願となることもある。メーカーが単独出願を行う場合も、出願の時期等を
含め、通信事業者から出願内容のチェックを受けることもある。
6.
海外での出願状況
一般に、日本企業は、海外での意匠出願を行うことは少ない。一部、模倣品対策等か
ら、アジア地域への意匠出願を行っている企業もある。
第7節
今後の出願動向
今後の出願の動向に関しては、減少すると回答した企業と増加すると回答した企業が一
定数ずつ存在していた。この回答については、回答者が通信事業者であるか、メーカーで
あるかということに依存するため、解釈については、配慮が必要である。
第8節
意匠権の活用
調査対象分野においては、権利の維持期間が概ね 10 年以内となっている。携帯電話の
製品サイクルが短いことがその要因となっているようだ。
日本国内では意図的な模倣品の発生はレアケースであるようだ。長らく通信事業者中心
のデザイン開発が行われてきたことから、同じ通信事業者から類似の商品が発売されるこ
とは考えにくく、模倣品が少ない一因となっている。一方海外、特に中国等においては、
製品の販売を実施していないにもかかわらず模倣品が発生している状況があり、係争等の
経験のある企業もある。模倣品に対しては商標権をもとに対応するという企業もあった。
ただし国内においては、レアケースであるものの、似通ったデザインも存在していると
いう状況である。これらに対しては、近年では GUI 等の機能で差別化を図ることが増加
している。
特にスマートフォンのデザインでは、フィーチャーフォンと比較して筐体におけるデザ
インの自由度が少なくなっているということもあり、独自性のある部分のみに焦点をあて
て保護したいという企業やデザイナーの思いが強い。
- 26 -
第6章
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における特許出願動向調査
第1節
特許検索の方法
1.
概要
携帯電話機・携帯型電子情報端末機分野(日本意匠分類 H7-43、H7-725)に関係があ
ると考えられる特許分類とキーワードを特定し、意匠登録出願数と、それに関連する特
許出願数の推移を調査した。対象は 2001 年 1 月 1 日~2009 年 12 月 31 日に出願された、
日本での特許出願とした。特許出願数の検索に当たっては、特許電子図書館(IPDL)を
用いた。
2.
検索式
対象となる FI を以下の通り設定した。
表 6-1
携帯電話機・携帯型電子情報端末機分野に関係する FI
FI
説明
H04M1/
サブステーション装置(例.加入者が使用するもの)
G06F3/
計算機で処理しうる形式にデータを変換するための入力装置;
処理ユニットから出力ユニットへデータを転送するための出力装置
G06F15/
デジタル計算機一般;データ処理装置一般
「携帯電話機及び携帯型電子情報端末機」に関連した特許出願を抽出するために、日
本意匠分類からキーワードを抽出した。なお、H7-43W と H7-725W に関連する特許の抽
出にあたっては、画面やインターフェース関連のキーワード「画面,画像,ユーザーイ
ンターフェース」と意匠関連のキーワード「筐体,構造,外観,意匠」を組み合わせて、
条件設定を行った。そのため、下記条件に基づき携帯電話機等に付随する画面デザイン
が対象で、インターフェースや画面そのものに関する特許出願は抽出されていないこと
に留意する必要がある。
表 6-2
関連キーワード
日本意匠分類
関連キーワード(検索範囲:要約+特許請求の範囲)
H7-43 携帯電話機
(筐体,構造,外観,意匠)AND(携帯電話,無線電話,携帯用無線電
話,カメラ付き携帯電話,携帯用テレビ電話,携帯電話機用前カバー,携
帯電話機用前,自動車用携帯電話機保持具 ,携帯電話機用置き台,携帯
電話機用子機,携帯電話機用子機)
H7-725 表 示 機 付 き 電 子 計 算 (筐体,構造,外観,意匠)AND(計算機,入力,出力,電子辞書,ハ
機等(携帯型)
ンディターミナル)
H7-43W 携帯電話機
(画面,画像,ユーザーインターフェース)AND(筐体,構造,外観,
意匠)AND(携帯電話,無線電話,携帯用無線電話,カメラ付き携帯電
話,携帯用テレビ電話,携帯電話機用前カバー,携帯電話機用前,自動車
用携帯電話機保持具 ,携帯電話機用置き台,携帯電話機用子機,携帯電
話機用子機)
H7-725W
(画面,画像,ユーザーインターフェース)AND(筐体,構造,外観,
表示機付き電子計算機等(携
意匠)AND(計算機,入力,出力,電子辞書,ハンディターミナル)
帯型)
- 27 -
第2節
携帯電話機・携帯型電子情報端末機に関連する特許出願数の推移
前述の方法に基づいて抽出した特許出願数の推移を以下に整理する。
H7-43(携帯電話機)は 2005 年にピークを迎え、その後は減少傾向にあったが、2008 年
以降微増している。H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型))に関連する特許出願は
2002 年以降ほぼ横ばい状態である。H7-43W(携帯電話機)に関連する特許出願は 2005 年
をピークに減少傾向にある。一方、H7-725W(表示機付き電子計算機等(携帯型))に関連
する特許出願はほぼ横ばい状態であったが、2009 年に減少している。
構成比率に着目すると、H7-43(携帯電話)分野に関連する特許出願は 2001 年から 2009
年の合計で 28.4%を占めている。H7-725(表示機付き電子計算機(携帯型))分野に関連す
る特許出願は 45.7%であった。画像を含む意匠分類に関連する特許出願は H7-43W(携帯
電話機)6.4%、H7-725W(表示機付き電子計算機等(携帯型))19.5%と分野全体の約 4 分
の 1 を占めている。
図 6-1
携帯電話機・携帯型電子情報端末機の特許出願数(特許公開公報による)の推移
出願年
20001-2009年
800
関 700
連
す 600
る
分 500
野
400
の
特 300
許
出 200
願
数 100
0
2001
2002
2003
2004
2005
出願年
2006
2007
2008
2009
H7-43 携帯電話機
H7-725 表示機付き電子計算機等(携帯型)
H7-43W 携帯電話機(画像を含む)
H7-725W 表示機付き電子計算機等(携帯型)(画像を含む)
第3節
意匠出願との関係
日本意匠分類ごとに意匠登録出願とそれに関連する特許出願との関係を分析した。
1.
H7-43(携帯電話)分野
近年、意匠登録出願数は減少傾向にある。関連する特許出願数は 2005 年にピークを
迎え、その後は減少傾向にあったが、2008 年以降微増している。なお、2007 年に意匠
登録出願数が増加したひとつの要因として、2007 年の意匠法改正によって画面デザイ
ンの保護対象が拡大したことも影響していると考えられる。
- 28 -
図 6-2
H7-43 分野の意匠登録出願数と関連分野の特許出願数推移
700
600
500
出 400
願
数 300
200
100
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年
H7-43(意匠登録出願数)
2.
H7-43(特許出願数)
H7-725(表示機付き電子計算機等(携帯型)分野
意匠登録出願数はほぼ横ばいである。関連する特許出願数は 2002 年以降横ばい状態
である。
図 6-3
H7-725 分野の意匠登録出願数と関連分野の特許出願数推移
800
700
600
500
出
願 400
数
300
200
100
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年
H7-725(意匠登録出願数)
3.
H7-725(特許出願数)
H7-43W(携帯電話(画像を含む))分野
意匠登録出願数は 2003 年以降増加傾向にあったが、2009 年に減少している。関連す
る特許出願数は 2005 年にピークを迎え、その後は減少傾向にある。なお、2007 年に意
匠登録出願数が増加したひとつの要因として、2007 年の意匠法改正によって画面デザ
インの保護対象が拡大したことも影響していると考えられる。
- 29 -
図 6-4
H7-43W 分野の意匠登録出願数と関連分野の特許出願数推移
100
90
80
70
出 60
願 50
数 40
30
20
10
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年
H7-43W(意匠登録出願数)
4.
H7-43W(特許出願数)
H7-725W(表示機付き電子計算機等(携帯型)(画像を含む))分野
意匠登録出願数は 2007 年以降、増加傾向にある。関連する特許出願数は 2005 年以降
横ばい状態であったが、2009 年に減少している。なお、2007 年に意匠登録出願数が増
加したひとつの要因として、2007 年の意匠法改正によって画面デザインの保護対象が
拡大したことも影響していると考えられる。
図 6-5
H7-43W 分野の意匠登録出願数と関連分野の特許出願数推移
180
160
140
120
出 100
願
数 80
60
40
20
0
2001
2002
2003
2004
2005
出願年
H7-725W(意匠登録出願数)
- 30 -
2006
2007
2008
H7-725W(特許出願数)
2009
第7章
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における市場環境調査
第1節
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機産業の市場規模及び各国間の輸出入の状況
(世界)
世界の携帯電話機の生産台数は 2005 年から 2008 年までは年々増加の傾向にあったが、
2009 年に一時減少したものの 2010 年は大きく増加に転じている。これはスマートフォン
の汎用 OS が開発されたことによって携帯電話機メーカー各社がスマートフォンの新製品
開発に注力したことによる影響と考えられる。
図 7-1
世界の携帯電話機の生産台数の推移
(百万台)
1,400.0
1,200.0
1,000.0
800.0
600.0
400.0
200.0
0.0
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
生産台数(百万台)
(出典)社団法人電子情報技術産業協会『主要電子機器の世界生産状況』2005 年~2011 年の各年の発表デ
ータより株式会社三菱総合研究所作成
2010 年の電話機(移動体通信または無線ネットワーク接続対応端末含む)の日米欧中韓
における輸出入額相関を次図に示した。ここでの輸出入額とは、税関を通過した製品の取
引額である。よって生産拠点と開発拠点が異なっている場合、必ずしも企業間の取引額の
みを反映した額ではないことには注意が必要である。
その結果、当該分野においては中国が圧倒的な輸出国となっていることが明らかになっ
た。中国が各国当該分野関連企業の携帯電話機等の生産の拠点になっていることがその理
由であると推測できる。特に欧州への輸出が多いことについては、世界的な携帯電話機メ
ーカーがあること、携帯電話の契約者数が中国に次いで多いこと(後述)等がその要因と
なっていると考えられる。
- 31 -
図 7-2
携帯型無線受信機の日米欧中韓輸出入額相関(2010 年)
9
26
日本
8
686
1,690
8
89
286
米国
14,598
686
7,855
欧州
6,947
2
0
384
49
302
37
3,637
3,119
中国
韓国
注 1:
単位:百万ドル(上)。日本から韓国へは 42 万ドル(100 万ドル未満)のためグラフ上は 0 と表記。
注 2:
携帯型無線受信機(屋内・住居用)(H7-43 及び H7-725 関連):SITC コード(第 4 版)76411
(出典)United Nations, UN Comtrade より株式会社三菱総合研究所が作成
第2節
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機市場を取り巻く状況
1.
携帯電話機を所有している人数の増加および年齢層の拡大
日米欧中韓における携帯電話契約者数は、2000 年以降増加傾向にある。日本、欧州
はなだらかに増加を続けている状況である。米国、韓国は 2007 年頃から上げ止まりと
なっている。中国は他国と比較して増加の度合いが高く、2008 年では世界で最も契約
者数が多い国となった。
契約者数の増加により、携帯電話を使用する層が拡大し、多様なニーズに対応したデ
ザイン開発が必要とされる可能性が示唆される 2。
2.
携帯電話機からの使用用途の変化
携帯電話機はもともと通話用として開発されたものであるが、近年は通話以外の多様
な使い方がされるようになっている。特に、電子メール、ウェブブラウザ、SNS(ソー
シャルネットワーキングサービス)・ブログの利用等インターネットを介したサービス
の利用が活発になっている。通話のみに用いる場合とは異なる操作性等に配慮したデザ
イン開発が必要となっていると考えられる。
3.
SIM ロックに関する状況
日本では、総務省が、携帯電話端末の SIM ロックの在り方に関して 2010 年 4 月に実
施した携帯電話事業者(以下「事業者」)等からのヒアリング 3において、利用者の要望
2
IIU World Telecommunication / ICT Indicators Database より
- 32 -
を前提に事業者が自主的に SIM ロック解除を実施するという方針について一定のコン
センサスを得た。それを受け、「SIM ロック解除に関するガイドライン」が策定され、
2010 年 6 月に公表された。当該ガイドラインは、事業者に対し、SIM ロック解除を強制
するものではないが、事業者は、SIM ロック解除について、利用者の立場に立った取組
に努めるものとしている。
米国では、携帯電話端末の SIM ロックに関する法的規制はされていない。
欧州では、SIM ロックに関する規制等については国により状況が異なっている。
EU 全体で統一された規制等はないが、The Unfair Commercial Practices Directive
(Directive 2005/29/EC on Unfair Commercial Practices:不公正な取引慣行に関する EU 指
令)4 を遵守する必要がある。
中国では端末の販売と通信事業者が分離されている傾向が強く、SIM ロックをかける
ことが困難であり、海外からの輸入品等でロックされた端末であってもすぐにロックが
解除されるという話もある 5。
韓国政府では、2006 年から SIM ロック解除方針の検討を開始した。その結果、2008
年 3 月より、利用者が自由に端末と SIM カードとを交換して使用できるよう、移動通信
事業者に対し、SIM ロックを解除しサービスの互換性を確保する義務を課すこととした
6
。
4.
携帯電話機の通信規格に関する施策
携帯電話機の通信規格については、一般的には、通信規格世代によって通信方式が異
なり世代が上がるに連れて携帯電話機の通信速度が上昇する。初期世代規格の端末では
携帯電話機の機能、特にインターネットの使用に制限があった。しかし、第 3 世代(3G)
以降の携帯電話機では、通信の高速大容量化の実現でウェブサイト閲覧などデジタルコ
ンテンツの享受が可能となった。このことから携帯電話機の機能・使用方法が多種多様
化し、デザインにも多様性が生まれると考えることができる。
第3節
1.
市場環境と意匠登録動向の関係
市場規模と意匠登録動向の各国間の比較
各国・地域の国籍を有する意匠出願人の出願行動を分析するために、各国・地域への
輸出額(2009 年)と各国・地域への意匠登録数(2010 年)を比較した。
3
4
5
6
総務省、総務省トップ > 組織案内 > 携帯電話端末の SIM ロックの在り方に関する公開ヒアリング配布
資料, http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/simlock/27604.html、2012 年 1 月 20 日
European Commission, Consumer Affairs, EUROPA > European Commission > DG Health and Consumers >
Consumer Affairs, “The Unfair commercial Practices Directive”, http://ec.europa.eu/consumers/rights/, 2012 年 1
月 20 日
COMPUTERWORLD, トップ > トピックス > ビジネス・モバイル > 「SIM ロック問題」は「iPhone 問
題」2011 年 6 月 20 日、
http://www.computerworld.jp/topics/658/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%BB%
E3%83%A2%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%AB/192019/%E7%AC%AC4%E5%9B%9E%20%E3%80%8CS
IM%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%
8CiPhone%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%80%8D、2012 年 1 月 20 日; マイナビニュース『海外モバイルト
ピックス (37) いよいよ中国でも iPhone を発売 - 出だしは不調?』
http://s.news.mynavi.jp/column/wmobiletopic/037/index.html、2012 年 1 月 20 日
韓国電子通信研究院 A Study on Mobile Device Distribution System and Its Improvement, p.25, (2010); Korea
Communications Commission, Annual Report 2010, p.63, (2011)
- 33 -
図 7-3
他国・地域への輸出額(2009 年)と意匠登録数(2010 年)の比較
各国・地域籍出願人の他国・地域への意匠登録数
(2010年、件)
350
韓→中
300
250
200
韓→欧
韓→米
150
欧→中
100
50
中→米
中→欧
中→韓
0
0
70
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
他国・地域への前年の輸出額(2009年、百万ドル)
欧→米
60
韓→日
50
40
30
20
米→欧
欧→日
10
日→欧
日→中
0
日→韓
米→韓
米→中
日→米
中→日
0
欧→韓
200
400
600
800
1,000
1,200
米→日
結果、以下のことが示唆された。
z 韓国居住者は、他国と比較して積極的に意匠登録を行っている。輸出額と意匠登
録との相関は認められない。日本、米国への輸出額はほぼ同額であるにもかか
わらず、米国での意匠登録は日本での意匠登録の 2 倍程度の件数である。また、
特に中国へ集中して意匠登録を行っている状況がみられる。
z 欧州居住者による意匠登録数と輸出額との相関は認められない。中国、米国での
登録は比較的多く、日本や韓国では輸出額、意匠登録数共に非常に少ない。
z 米国居住者による意匠登録は、輸出額の規模に応じて意匠登録数が増加する傾向
がある(中国を除く)。
z 中国から他国への輸出額は他国と比較して多いが、意匠登録数は少ない。
- 34 -
第8章
総合分析
第1節
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における意匠出願動向の特徴と背景
1.
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における日本での意匠出願動向の特徴
と背景
(1)
携帯電話機―スマートフォンの登場でデザイン開発競争は沈静化―
H7-43(携帯電話機)に属する意匠登録出願数は、2001 年から 2002 年にかけては減
少しているものの、2002 年から 2007 年にかけて増加傾向にあり、以降減少に転じる
傾向を示している(第 2 章第 2 節)。画像を含む意匠(H7-43W)を除いた意匠登録出
願数の推移とその部分意匠率を観察するとその傾向はいっそう顕著であり、2007 年に
は 570 件あった H7-43(ただし H7-43W 除く)に属する意匠登録出願は 2010 年には
224 件と 2007 年比 39.2%まで落ち込んだ。また、画像を含む意匠を除いた意匠登録出
願に占める部分意匠の割合も年々低下傾向にある。
この背景として、1990 年代後半に折り畳み式携帯電話機が登場し、携帯電話機のデ
ザイン開発が活発化し、2007 年頃まで、活発なデザイン開発の競争が展開された。2007
年以降は、新販売方式への移行によって買い替えサイクルが長期化し、長く利用でき
るデザインが求められるようになった。さらに、スマートフォン(多くの場合、後述
する H7-725 で登録されている)の登場によって、機能やユーザビリティがデザイン
開発において重要性が増したことが要因と考えられる。これにより、デザイン開発点
数が減少し、かつ、細部のデザインを保護する動機が乏しくなっていったものと推測
される。
図 8-1
600
意
匠
登
録
出
願
数
画像を含まない携帯電話機の意匠登録出願数と部分意匠率
528
514
432
450
372
506
570
100%
514
405
75%
322
300
54.5%
150
224
43.0% 47.9% 38.7%
35.8%
46.3%
30.4% 27.0%
50%
25%
部
分
意
匠
率
27.0% 23.2%
0
0%
2001
2002 2003
2004 2005
2006 2007
2008 2009
2010
出願年
H7-43(画像を含まない携帯電話機)意匠登録出願数
H7-43(画像を含まない携帯電話機)部分意匠率
(注)H7-43W を除く値。
(2)
携帯型電子情報端末機―デザイン開発競争は特徴部の創出と保護へ―
携帯型電子情報端末機(H7-725)に属する意匠登録出願数は、2001 年から 2003 年
にかけては減少しているが、以後増加傾向にあり、2010 年には過去 10 年で最も意匠
- 35 -
登録出願数が多かった(第 2 章第 2 節)。特に近年は画像を含む意匠(H7-725W)の意
匠登録出願数の増加が顕著である。
画像を含む意匠(H7-725W)を除いた意匠登録出願の部分意匠率の推移を観察する
と、近年部分意匠率が高まっていることがわかる(図 8-2)。
この背景として、スマートフォンの登場により当分野でのデザイン開発が活発化し
ていることが挙げられる。デザイン開発の特徴としては製品全体形状のデザインより
GUI に関わる部分や、特定の機能に関するデザインの保護が重視されていることが挙
げられる(第 5 部参照)。このため、部分意匠が積極的に活用されているものと考えら
れる。
なお、2001 年ごろのピークに関連して、登録された意匠の詳細を確認すると、携帯
情報端末(PDA)や電子辞書、さらには、携帯用音楽再生機に関する登録例が多かっ
た。
図 8-2
200
意
匠
登
録
出
願
数
画像を含まない携帯型電子情報端末機の意匠登録出願数と部分意匠率
193
196
153
144
150
112
88
100
28.0%
0
2001
20.8% 19.3%
2002
75%
50%
57.1%
37.9%
35.3% 31.9% 33.3%
2005 2006
2007
25.0%
2003 2004
156
112
87
50
144
100%
42.9%
25%
部
分
意
匠
率
0%
2008 2009
2010
出願年
H7-725(画像を含まない携帯電話機)意匠登録出願数
H7-725(画像を含まない携帯電話機)部分意匠率
(注)H7-725W を除く値。
(3)
画面デザイン―スマートフォンの画面デザイン開発の活発化―
画面デザインについては、携帯電話機の画面デザイン(H7-43W)に関する意匠登録
出願が 2007 年にピークを迎えた後、減少傾向にある。他方で、携帯型電子情報端末機
の画面デザイン(H7-725W)に関する意匠登録出願数は 2006 年以降増加傾向にある(第
2 章第 2 節)。なお、2007 年に意匠登録出願数が増加したひとつの要因として、2007
年の意匠法改正によって画面デザインの保護対象が拡大したことも影響していると考
えられる。また、汎用機器であるスマートフォンの画面デザインに関する意匠登録出
願にシフトしたことも影響している。
- 36 -
2.
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における日米欧中韓での意匠登録動向
の特徴
(1)
日米欧中韓での登録における全体的傾向:出願先国・地域別の特徴
日米欧中韓での 2010 年公報発行分の携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野の
意匠登録数については、日本、米国、欧州での登録数が 2009 年に比べて減少し、中国、
韓国での登録は増加している。携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野に限らない
意匠登録数全体の増減と比較すると、日本、米国、中国、韓国での登録については携
帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野と意匠登録数全体の増減の方向は一致してい
るが、とくに韓国では携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野の登録数の伸び率が
顕著に高く 94.6%の増加となっている。
図 8-3
意匠登録数の増減率(携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野と全体の比較)
意匠登録数増減率(2010年、対前年)
-75% -50% -25%
日本 [携帯電話機等:523件、
全登録分野:27,388件(2010年)]
-34.7%
米国 [携帯電話機等:596件、
全登録分野:19,205件(2010年)]
-34.2%
-16.9%
欧州 [携帯電話機等:544件、
全登録分野:72,623件(2010年)]
-14.9%
0%
25%
50%
75%
100% 125%
-7.6%
4.7%
13.6%
中国 [携帯電話機等:1,934件、
全登録分野:328,007件(2010年)]
41.6%
94.6%
韓国 [携帯電話機等:1,041件、
全登録分野:33,058件(2010年)]
4.3%
携帯電話機等分野意匠登録数増減率(2010年、対前年)
全登録分野意匠登録数増減率(2010年、対前年)
(2)
日米欧中韓での登録における全体的傾向:出願人居住国・地域別の特徴
各国・地域への意匠登録を出願人居住国・地域別に分析すると、携帯電話機及び携
帯型電子情報端末機分野においてはいずれの国・地域においても自国・地域居住者に
よる登録の割合が意匠登録数全体の傾向に比べて低いことがわかった。これは国際的
な意匠登録が活発に行われていることを表している。
特に、韓国居住者による意匠登録の割合が顕著に高いことが特徴であり、なかでも
米国では米国居住者による意匠登録数を抜き、出願人居住国・地域別では最も多い 529
件の意匠登録を 2009 年から 2010 年にかけて行っていた。
- 37 -
図 8-4
出願人居住国・地域別比率(携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野と全登録分野の
比較)
韓国
中国
欧州
米国
日本
0%
40%
携帯電話機等
(2009年-2010年)
携帯電話機等
32
(2009年-2010年)
80%
100%
23
78 103 1 168
1,826/2,034/187/653/1,375
50,948
携帯電話機等
63
(2009年-2010年)
全登録分野
(2009年-2010年)
60%
951
全登録分野
(2009年-2010年)
263
337
529
92
1,144
4,151
6,364
23,399
217
1,515
5,731
26
63
392
511
10,495
全登録分野
4,053
(2009年-2010年)
46/88
携帯電話機等
276
(2009年-2010年)
10,525/5,542/8,954
全登録分野
(2009年-2010年)
18/52/36/3
携帯電話機等
(2009年-2010年)
1,915/1,106/926/62
全登録分野
(2009年-2010年)
日本居住者
中国居住者
(3)
20%
111,777
2,496
159
3,434/ 1,494
10,689
661
95
3,011/5,204
526,471
11
1,456
349
60,380
米国居住者
韓国居住者
欧州居住者
その他国・地域居住者
日米欧中韓各国・地域の登録における傾向
① 日本
出願人居住国・地域別比率の携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野と全登録
分野の比較から明らかなように、調査対象分野では米国、欧州にくらべて自国居住
者(日本居住者)による意匠登録数の割合が高く 71.8%である(米国での米国居住
者による登録は 17.5%、欧州での欧州居住者による登録は 43.2%)(図 8-4 参照)。
第 7 章で見たように、日本での携帯端末機市場では日本企業のシェアが高いこと
がその要因であると考えられる。ただし、スマートフォンの登場により外国企業が
シェアを伸ばしつつあり、今後その動向は変化する可能性がある。
なお、登録分野を見ると、H7-43(携帯電話機)での意匠登録数が 2010 年に半数
近くに減少している(612 件→289 件)のに対し、H7-725(携帯型電子情報端末機
分野)での意匠登録数が 30%以上増加している。
② 米国
第 7 章で見たように、米国での携帯端末機市場では韓国企業およびカナダ企業(そ
の他国・地域居住者)が大きなシェアを占めている。このことは意匠登録数にも表
れており、他の国・地域に比べると、韓国居住者およびその他国・地域居住者によ
- 38 -
る意匠登録数のシェアが高い。
なお、登録分野を見ると、H7-43(携帯電話機)での意匠登録数が 2010 年に 30%
以上減少している(696 件→396 件)のに対し、H7-725(携帯型電子情報端末機分
野)での意匠登録数はほぼ横ばいである。
③ 欧州
出願人居住国・地域別比率の携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野と全登録
分野の比較を行うと、調査対象分野では欧州居住者による意匠登録数の割合が
43.2%であるのに対し、韓国居住者による意匠登録数の割合は 33.1%と欧州居住者に
よる割合に迫りつつある。
第 7 章で見たように、欧州の携帯端末機市場では韓国企業による市場シェアの獲
得が進んでいることがその要因であると考えられる。
④ 中国
第 7 章で見たように、中国での携帯端末機市場では中国国内企業による市場シェ
アの獲得が進んでいる。このことは意匠登録数に表れており、2009 年に比べ中国居
住者による意匠登録が増加している。なかでも H7-725(携帯型電子情報端末機分野)
での意匠登録数は 118%増加している(180 件→392 件)。
⑤ 韓国
出願人居住国・地域別比率の携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野と全登録
分野の比較から明らかなように、調査対象分野では他の国・地域に比べて自国居住
者(韓国居住者)による意匠登録数の割合が高く 92.4%である(図 8-4 参照)。
第2節
携帯電話機及び携帯型電子情報端末機分野における今後の意匠出願動向
スマートフォンの登場によって市場が活性化している携帯型電子情報端末機分野におい
ては、今後一層その傾向が強化され、意匠出願も増加すると予想できる。
ただし、これまでのように端末機器本体の外形のデザインよりは、GUI を中心とするイ
ンターフェース部分のデザインの開発が中心となり、画面デザインに関する意匠出願にシ
フトするものと考えられる。この背景として、ヒアリング調査において指摘されたように、
(1)米国の大手メーカーの発表したスマートフォンの世界的な普及により、端末機器本体
の外形のデザインについては、タッチパネル式ディスプレイを中心としたシンプルなデザ
イン形状に収斂する方向にあること、(2)上記メーカーと米国の大手インターネットサー
ビス企業が提供する基本ソフトウエアの間で激しい競争となっており、ソフトウエアによ
るユーザービリティの実現に競争の比重が置かれ出していること、が挙げられる。
- 39 -
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