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副会長に就任

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副会長に就任
SPSJ 60th Anniversary: Message from Executive Directors
科学技術を磨くこと、
社会へ貢献すること
新しい風を
明石 満
君塚信夫
高分子学会会長
大阪大学
高分子学会副会長
九州大学
31 期の会長職をお引き受けすることになりました。
責任の重さに身の引き締まる思いがしています。さて、
3 月 16 日に高分子学会は公益法人となり、60 周年を迎
えさらに前進することになりました。昨年 3 月 11 日の
大震災・大津波・原発事故放射能汚染の傷の癒えない
状況にあり、1951 年の学会発足時とは大きく社会状況
が変化しているなかでの 61 年目を迎えます。学問を同
じくする同志の集まりである学会の社会に対する役割
は、単に学問領域の諸問題を解決するだけではなくな
っていると思います。人々の知と志が集まっているの
が学会です。また、産と官学がバランスをとっている
高分子学会は恐らくほかのどこの学会よりも社会との
接点が強くかつ明確であり、先輩諸氏の学問と社会に
対する先導的気風や心意気が脈々と生き続けているこ
とが大きな特徴であります。
私たちのやるべきことは出口が見えなくなり閉塞感が
漂う状況を打破し切り拓くこと、ここに公益の意味を見
いだしたいと思います。地道な歩みこそが重要でしょう。
学問に磨きをかけ現在の世界最先端の位置を維持し発展
させること、つまり、しっかりと足腰を鍛え、少し背伸び
をしたいと思うのです。会員のための学会であることを
基本にする一方、世界を見据えて国際社会で生き抜くこと
がこれまで以上に重要になっております。凌ぎを削って
競争してきた欧米との関係を強化すること、また、とく
にアジア諸国に benefit をもたらす具体策が必要です。昨
年のマニフェストには 4 項目示しました。①学会ビジョン
2010 に掲げられた異分野融合プラットフォームの充実、
②教育プログラムの充実、③国際交流と国際貢献:アジ
ア地域を中心に Short Course の企画、④電子媒体・ウェ
ブ活用の推進。会誌の Web 化は 30 期からの最重要課題で
あり、
「夢のある電子化会誌」として検討されました。初
期投資的な経費負担が避けられませんが粛々と進めます。
会誌の Web 化は、各地で時を同じくして 1000 人近くの
会員が受講し好評を博している Webinar と並んでほかの
学会と社会に範を示すことになるでしょう。高分子の講
義を十分に受講できないで卒業し、高分子研究や製造に
携わる方々への Webinar による教育システム構築も始め
たいと思います。多くの会員の皆様が今以上に会員であ
ることが誇りに思えるよう運営にベストを尽くします。
高分子 61 巻 6 月号 (2012 年)
思いもかけず、高分子学会の運営をお手伝いさせて
いただくことになりました。微力ながら 60 周年の節目
を迎える本学会の発展のために務めさせていただきま
す。どうぞ宜しくお願いいたします。
さて、さっそく“未来志向のメッセージ”をとの課題
をいただき、おそらく学生、若手研究者や技術者が受
け手として想定されているものと解釈して筆をとらせ
ていただきます。
言うまでもなく本学会は、わが国の高分子科学に関
連したさまざまな分野の学徒が集い、学び、かつ情報
発信を行うことのできる総合学術拠点として発展して
きました。色んなプラットホームから多岐にわたる学
術分野への相互乗り入れができ、このことは、一つの
専門にとらわれず複数の視点やスケールをもつチャン
スを与えてくれます。多くの分野は、すでにさまざま
な学問分野との接点を有する複合領域として発展しつ
つあります。
日本人は、
“匠”や“技”に対する信仰があり、もちろん
個性という意味で重要なのですが、一方、学問において
は、一見離れた分野で得られた“知”を横に結びつけて
統合をはかり、
“技”でなく新しい“知”を創造する意識
を共有することが、未来へのブレークスルーにつなが
るのではと愚考します。このためには、複数の視点を
もつことが必要でしょう。明治維新を始めとするわが
国の歴史の中で、流れを変えて未来を創る推進力は、
自らを信じて、それに本気で取り組んだ若者らによっ
て生み出されました。おそらく、常識にとらわれない
スケールの大きな想像力、柔軟な感性、そして疲れを
しらない行動力が、大きな突破力に繋がったものと思い
ます。当学会は、私たちの科学を前進させるための素
晴らしい土壌を与えています。それを自らがどれだけ
利用できたか、自省の念が起きるところですが、会員の
皆様のお力を借りしながら、会員の一人一人が高分子
学会の良さを満喫し、また愉しみながら自己の研究分
野、ならびに人との出会い、ネットワークをいっそう拡
げてゆけるよう、智恵をしぼってゆきたいと思います。
最後に、寺田寅彦先生の文を引用させていただきま
す。「西洋の学者の掘り散らした後へ、はるばる遅れば
せに鉱石のかけらをさがしに行くもいいが、われわれの
脚元に埋もれている宝をも忘れてはならないと思う。
しかしそれを掘り出すには、人から笑われ狂人扱いに
されることを覚悟するだけの勇気が入り用である。」
寺田寅彦、1927 年 9 月「忘備録」より
©2012 The Society of Polymer Science, Japan
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