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国際法における一方的約束の拘束力の基礎 : 「信義誠実
の原則」、その内容およびその役割
村上, 太郎
一橋論叢, 120(1): 35-50
1998-07-01
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://doi.org/10.15057/11976
Right
Hitotsubashi University Repository
(35) 国際法における一方的約束の拘束カの基礎
国際法における一方的約束の拘束力の基礎
村 上 太
くにそうである﹂と述べるにとどまっている。ヴェンチ
︵5︶
がますます重要なものとなりつつある時代においてはと
協力に固有なものであり、多くの分野におけるこの協カ
七四年の﹁核実験事件﹂判決も、﹁信用と信頼は、国際
︵睾ざωo<︶も、他国の信頼保護は国際関係の安全の究
︵4︶
極の利益であると述べるにとどまっている。また、一九
︵蟹巨宛向⊂H向宛︶などの学説を並べただけでそのよう
︵3︶
な概念が十分普及しているとしてしまっている。スユイ
なく、カゥフマン︵内ユoブ丙>⊂勺⋮>zz︶、ルテール
その後者の概念の存在の証明は、何ら実証的なものでは
国の信頼保護という客観的概念があると論じる。しかし、
誠実には誠実、忠実な精神という主観的な概念の他に他
レー︵里一墨σ①;NO−−向宛︶の批判に答える形で、信義
︵2︶
−﹁信義誠実の原則﹂、その内容およびその役割1
問題意識
﹁一方的約束﹂︵一霧昌Oq品①昌9a⋮旨↓⑭轟妄︶とは、
ある国家が相手国の合意なしに将来に関して自已が拘束
される内容を持った意思を表明する行為をいう。その拘
束カの根拠には、﹁信義誠実の原則﹂︵肩巨O甘−①O市
oqoooh巴;二①肩旨o骨①q①冨σoココ①︸o−︶があるとい
︵1︶
う点は、ほぼ定着しているようにみえる。しかし、問題
が残っている。それは、その議論においては、﹁信義誠
実 の 原則﹂の内容は他 国 の 信 頼 保 護 に あ る と さ れ る が 、
本当に同原則がそのような内容をもったものであるのか、
実証的に何ら証明がなされていない、という点であ呑。
たとえぱ、スィコー︵−8目−巨9彗ωδ>O−↓︶は、ゾ
斑
郎
橋論叢 第120巻 第1号 平成10年(1998年)7月号 (36)
ユリー二︵ρ<向Z↓02⋮︶も、一方的約束の拘束カ
の根拠には、信義誠実または国際関係の安全があるとい
い、相手国の信頼保護が必要であると述べるが、なんら
︹6︺
実証的な論証は行われていない。しかしながら、それで
は、信義誠実の原則について徹底的に実証的に分析され
︵7︶
たゾレーの批判に耐えうるとは考えられない。
本稿の目的は、信義誠実の原則の内容を、﹁実定法的﹂
にすなわち実定法規を逐一検証することによって解明し、
それがいかなる形で一方的約束の拘束カの基礎となりう
二 ﹁国際法の原則﹂
の意義
るかを明らかにすることにある。
︵8︶
﹁国際法の原則﹂︵訂ω召まO号窃O仁号9ニコ註昌印.
ごo冨一︶の意義と法的権威性は多様である。我々は、す
でに、信義誠実の原則、合意は拘束する︵寝O冨誓葦
︵g︶
需;竃o與︶の原則、人民自決の原則、衡平原則などを
知っている。なお、﹁国際法の原則﹂は、国際司法裁判
所規程三八条C項の﹁法の一般原則﹂とは区別されねぱ
ならない。後者は、各国国内法に共通に見られる規則を
︵m︶
意味しているにすぎな い 。
︵u︺
この﹁国際法の原則﹂は、大きく次の二つの意味に区
別される。ただ、国際法の一般的用語法において、﹁原
則﹂︵示肩ぎO号O︶という用語と﹁規則﹂︵5﹃猪一①︶と
いう用語の用い方に錯綜が見られ、両渚の意味が重複し
ており、混乱が生じやすい。本稿でいう﹁規則﹂とは、
法的権利や義務を直接生み出すことができる﹁実定法
規﹂︵一窃﹃鼠−窒君ω三く窃︶を指す。
まず、﹁国際法の原則﹂という用語は、第一に﹁基本
的原則﹂を指す。それは、それ自体では直接的に作用す
るものではないが、より正確な﹁規則﹂を生み出す働き
のみをする。たとえば、﹁合意は拘束するの原則﹂、﹁国
家平等の原則﹂、﹁信義誠実の原則﹂、﹁実効性の原則﹂、
﹁海洋自由の原則﹂などが挙げられる。第二に、この用
語は、その基本的原則から導き出され、それに潜在する
内容を具体化した﹁規則﹂を指す。たとえば﹁北海大陸
棚事件﹂判決においては、﹁正義と誠実の非常に一般的
な規範﹂︵︽肩98蒜ω言雰σq雪9昌X思盲邑89箒
g冒①巨︾︶という基本的原則から、いくつかの﹁規
則﹂を﹁衡平原則﹂︵︽まω肩巨O冒窃曾巨冨巨①ω︾︶とし
て導き出している。
︵12︶
拓
(37) 国際法における一方的約束の拘束カの基礎
リー︵竃け幕一<夷>−−く︶は﹁原則﹂の果たす役割に
の﹁国際法の原則﹂といえる。これに関連して、ヴィラ
右の第一の意味における﹁国際法の原則﹂こそが本来
られる。その場合、﹁それらの性質が何であろうと、す
抽象化と具体化の繰り返しによって法は発展すると考え
を再び演緯的に生み出して新たな状況に対応するという、
﹁原則﹂を生みだし、それを契機として、新しい﹁規則﹂
︵13︶
ついて次のように分析する。
べての原則は法の形成に参加するものにとってインスピ
レーシ冒ンの源を構成しうる。その結果、それらは、古
法が創設される場合、﹁ほとんどの場合、たとえその
解決が法や正義への言及というお飾りがついていたとし
典的用語を拝借すれば、﹃実質的法源﹄を構成する﹂と
︵16︶
ても、特定の各々の状況に固有の便宜性の考慮、現実に
のは、慣習法と同じように、実際的で手続的なものにす
などが、恩想に優先して影響した。⋮⋮国際法というも
機関によって、あるいは国際組織によって定式化される。
の必要性に応えるために、学説によって、あるいは政府
そのような法に関する﹁原則﹂のすべては、国際社会
いえる。
ぎなかった﹂。言いかえれぱ、法の創造は﹁それらの哲
それらは先に述べたように﹁実質的法源﹂を構成するの
ある力と利益との間の均衡の現実的な探求、政治的機会
学的、道徳的、思想的な優秀性によるよりもしばしば、
みである。それらがさらに国際法秩序に浸透する︵忌−
︵17︶
その技術的優秀性、実効性、具体的状況への完全な適応
忌葦胃︶ためには、条約や慣習法を主とする﹁形式的法
︵14︶
性などによるのである。:⋮この場合、法の進歩は、本
新しい状態に適用されるための十分に包括的なモデルを
慣習法的起源を持つ。−−それらは、国際法秩序に欠く
適用されている規則から帰納的に導き出された原則は、
源﹂を経由することが必要である。﹁国家実行やすでに
︹㎎︶
創設するためには、法規則の対象となづている具体的状
︹㎎︺
一昌﹃君ω三く①︶を持つ﹂。すなわち、国家実行に辿られ、
質的に、類推と推論に訴えることによって現実化する。
態を、それに付随する偶発的状況を抜きにして考える分
︵帖︺
析の下におく必要がある﹂。すなわち、個別的な﹁規則﹂
あるいは多数の﹁規則﹂群から抽象化されたものが﹁国
べからざる部分となり、それゆえ実定法的価値︵昌①竃一
を帰納的に抽象化、一般化することによってより大きな
37
平成10年(1998年)7月号 (38)
第120巻第1号
一橋論叢
際法の原則Lであり、それは慣習国際法を構成する。
︵ 加 ︶ ^ 刎 ︶
そのようにして実定法の一部となった﹁国際法の原
すなわち、﹁国際法の原則﹂は、﹁規則﹂の生成過程の出
発点に見られ、法の発展の枠組みを固定し、その内容に
^η︶
則﹂は﹁法的効果﹂︵一.①ま二⋮重ε①︶を有する。しか
果﹂を有する。
合致するように﹁規則﹂を生ぜしめるという﹁法的効
。一一一﹁実定法規内の信義誠実﹂の内容
︵26︶
しながら、﹁国際法の原則﹂は、その極度な抽象性のた
めに、法の本質的機能を十分満足できる方法で満たすた
﹁信義誠実の原則﹂は、国連憲章︵二条二項︶、友好関
めには、あまりにも多様な解釈を許してしまう不完全な
法規則にしか相当せず、それは、それ自身から直接、権
係原則宣言︵第七原則︶に加え、条約法条約︵前文、二
六、三一条など︶、そして条約の国家承継条約の前文な
利や義務を創設することはできない︵﹁自動執行力﹂
︵ω①〒①■8鼻巨oq︶をもたない︶。
︵鵬︶
まり、﹁規則﹂が創設されるためには国家の﹁意思﹂︵壷
国家を拘束する法規則は、国家の意思に由来する﹂。つ
宣言された。このように、現代国際法においては、信義
定書﹂二六項においても、﹁国際義務の誠実な履行﹂が
章︵j︶やCSCE会議おける﹁ストックホルム最終議
られている。また、﹁国家の経済的権利義務憲章﹂第一
どにおいて、﹁合意は拘束する﹂とともに普遍的に認め
く〇一昌蒜︶が必要である。そして、そのような国家が白
﹁国際法は独立した国家問の関係を規律する。ゆえに、
︹別︶
らの﹁意恩﹂によって﹁規則﹂を創設しうる権能は、国
誠実の原則の存在は自明のものといえよう。しかし、そ
︵蛎︺
家主権に帰着する。しかし、また一方、国家の﹁意思﹂
の概念の存在性とは別に、その内容については争いが残
﹁実定法規﹂群の中に見られる信義誠実には、そこか
のみでも﹁規則﹂は創設されえない。たとえぱ、二国問
家の﹁意思﹂のみでは不十分である。﹁合意は拘束する
ら﹁国際法の原則﹂を帰納的に抽出する際、以下のよう
っているといえる。
の原則﹂の枠組みを基盤とし、当事国問の﹁意恩﹂の合
なものがあると考えられる。すなわち、﹁誠実に交渉す
関係において﹁規則﹂を創設する場合、一方の単独の国
致という要件を満たしてはじめて﹁規則﹂が創設される。
紹
(39) 国際法における一方的約束の拘束カの基礎
︵28︶
︵イギリス対アイスランド︶判決は、﹁アイスランド政府
執するときのような場合にはならないであろうLと述べ
性﹂、﹁権利濫用の法理﹂、﹁条約の署名後にその条約の趣
と連合王国政府は、それぞれの漁業権について紛争を衡
る義務L、﹁誠実に解釈する義務﹂、﹁国際義務を誠実に履
旨・目的を失わせしめる行為を慎む義務﹂、﹁条約の廃棄
平に解決するため、−⋮誠意を持って交渉に着手する相
られている。また、一九七四年の﹁漁業管轄権事件﹂
または条約からの脱退に関する信義誠実﹂である。
互義務がある﹂とした。そして、﹁この交渉において、
行する義務﹂、﹁国内法に違反して締結された条約の有効
1 誠実に交渉する義務
ならない﹂として、イギリス政府はアイスランド国民が
当事国は、なかんずく、次のことを考慮に入れなければ
﹁⋮・・信義誠実はその言葉のみならずその精神の尊重を
政府はイギリス国民が歴史的に当該水域において生計を
まず、﹁誠実に交渉する義務﹂がある。これについて、
要求する。しかし、誠実な方法以外で交渉することは、
^〃︺
全く交渉しないことになるのは明らかである﹂との指摘
立てる権利を有していることを、それぞれ考慮しなけれ
漁業に特に依存して生活していることを、アイスランド
がある。しかし、同じ交渉といっても、各当事国が自分
他国の利益を合理的に配慮することを意味していると考
ぱならないとした。これらにおいて、﹁誠実さ﹂とは、
︵29︶
そこには誠実な交渉はないことになる。つまり、﹁誠実﹂
えられる。
の立場に固執し、いかなる点でも妥協することを拒めば、
という言葉には法的な意味があると考えられる。この種
また、﹁メイン湾事件﹂において裁判所小法廷は、﹁当
事国は交渉する義務がありかつ、建設的結果に達成する
の義務 の 例 が ﹁ 核 拡 散 防 止 条 約 ﹂ 第 六 条 で あ る 。
国際判例においては、たとえば﹁北海大陸棚事件﹂判
交渉を始める義務を負っている。当事者は、交渉が意味
とにおける全面的な核軍縮に導く交渉を、誠実に追求し
告的意見においては、﹁厳粛かつ効果的な国際管理のも
べた。同様に、﹁核兵器の威嚇または使用の合法性﹂勧
純粋な意図を持って誠実にそれを行う義務がある﹂と述
︵30︶
があるように行動する義務を負うており、それは、その
決において、﹁当事者は合意に到達する目的を持って、
どちらかが白分の立場の変更を考えないでその立場に固
鎚
平成10年(1998年)7月号 (40)
結論に導く義務が存在するLとし、これを﹁信義誠実の
たことにはどのような意味があるのか。ホワイト
条約法条約三一条に﹁誠実に﹂という文言が加えられ
基本原則﹂に従ったものとした。ここにおいて﹁誠実な
︵9=彗ミ≡↓向︶は次のように述べる。﹁当事国による
︵㎝︶
交渉﹂とは、先と異なり、目的・結果を出すように努力
する義務、つまり当事国全体の利益︵﹁共通利益﹂一.ヨ華
﹁文面性﹂︵5註峯量一豪︶、﹁意思性﹂︵一.巨①まO冨一豪︶、
によれば、同条にみられる柔軟な解釈の方向性には、
この義務は、条約法条約三一条に見られる。スユール
2 誠実に解釈する義務
旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従
れる。言い換えれば、﹁条約は、文脈によりかつその趣
に﹁誠実に﹂という文言が加えられた趣旨があると思わ
来の条約の義務の内容を反故にすることを禁じるところ
当事国がそれぞれ自分勝手に白已の義務を解釈して、本
は、その義務的性質の合意を空にはしない﹂。つまり、
それら自身の条約義務の自己解釈︵彗↓oヨ8筍3訂巨昌︶
︵33︶
﹁合目的性﹂︵冨饒畠=忌︶がある。第一に﹁文面性﹂と
い﹂解釈しなければならないという原則について、念の
﹃g8冒ヨ宇︶の確保を意味しているといえよう。
は、解釈は﹁用語の通常の意味に従って﹂行われなけれ
ために﹁誠実に﹂と、意味が重複する形で付け加えられ
︵洲︶
ぱならないこと意味する。第二に﹁意思性﹂とは、﹁用
慮することができるという同三二条にみられるように、
る﹂という条約法条約三一条四項と条約の準傭作業を考
た意思を優先させる。なぜなら、それが法的安定性に資
法は、一般的に、当事国の内面的な意思よりも表明され
まず第一に、﹁文面性﹂の意義についてである。国際
たと考えられる。すなわち、﹁文面性﹂と﹁合目的性﹂
.が﹁誠実﹂の内容であると考えられる。
解釈において当事国の真の意思を考慮する要素を意味す
常設国際司法裁判所勧告的意見において、文言の明瞭性
らである。たとえば、﹁ポーランド国籍の取得の問題﹂
︵珊︺
し、また他国に生ぜしめた正当な信頼の保護に役立つか
味する。
︵初︶
的に照らして﹂行われなければならないということを意
る。第三に﹁合目的性﹂とは、解釈は条約の﹁趣旨・目
ていたと認められる場含には、当該特別の意味を与え
語は、当事国がこれに特別の意味を与えることを意図し
第1号
一橋論叢 第120巻
40
(41) 国際法における一方的約束の拘束カの基礎
が中し分ないとき、その他の要素を考慮することは、条
は、一般的に認められている解釈の規則に実際、反する
するよう求められている裁判所の第一の義務は、自然か
勧告的意見においては、﹁ある条約の規定を解釈、適用
盟国としての国の承認の条件﹂に関する国際司法裁判所
の当事国に分割される性質のものではなく、条約の制度
益を保護することにつながる。この利益は、条約の個々
釈すること︵﹁実効性の規則﹂︶は、条約当事国全体の利
条約の趣旨・目的に沿って条約が有益になるように解
ことになるであろうL。
︵39︶
つ通常の意味に従って、その文脈においてなされた規定
そのものに固有の利益である。いいかえれぱ、﹁信義誠
約を書き換えることに等しいとされた。また、﹁国連加
i ︵36︶
に効果を与えるよう努力することである。もし、それが
実﹂は条約当事国の﹁共通利益﹂の保護の内容を孕んで
3 国際義務を誠実に履行する義務
いるといえる。
自然かつ通常の意味に帰属するときに適切であるところ
の文言が、その文脈においてある意味を有する場合、検
査はそこで終えなければならない﹂とした。ここでの
︵折︶
益﹂︶の保護と、他国の信頼保護にあるといえる。
て他の締約国にその義務を履行するというある種の﹁正
の原則に直接由来する。国家は、条約を結ぶことによっ
国際義務を誠実に履行する義務は、﹁合意は拘束する﹂
第二に﹁合目的性﹂についてである。条約の趣旨・目
﹁誠実﹂の内容は、法的安定性という﹁公益﹂︵﹁共通利
的に合致した意味の用語を選択するということは、すな
一九九〇年の﹁レインボー・ウォーリア号事件﹂︵ニ
ュージーランド対フランス︶仲裁判決では、ハオ島に拘
当な期待﹂︵宥ω算蒜鼻窃−緒三昌霧︶を発生させるので
︵ω︺
あるから、その義務を遵守しなけれぱならないのである。
わち、有益な効果を与えるように︵﹁事物が無に帰する
よりもむしろ有益であるように﹂ミミω§亀涼§膏ミ
︵鎚︶
自§§意ミ§︶解釈するということである。たとえぱ、
ニュージーランドの同意なしにフランス本国に帰国させ
留中のマファール少佐とプリウー将軍をフランス政府が
述べられた。﹁コンプロミに挿入されたこの種の規定が
たことが、一九八六年合意に反するかどうかが争われた。
﹁コルフ海峡事件﹂︵本案︶判決においては、次のように
なんの結果もなんの効果もない規定であると考えること
41
平成10年(1998年)7月号 (42)
第120巻第1号
一橋論叢
とくにプリウー将軍について、フランスは、彼女の妊娠
の事実を主張することなく、単に、彼女の父親が癌で死
にかけており彼女と会わせる必要があることのみをニュ
する形で念のため付け加えられたものと解される。
たとえば、一七二二年のウトレヒト条約九条により、
フランスはダンケルクの港と要塞を取り壊しかつ再建設
を守ったが、ダンケルクからわずか一盟のところに港を
しないと約束した。しかし、フランスは表面上は同条項
は、プリウー将軍の突然の出発について、誠実にニュー
建設しようと企てた。イギリスはこの行為は条約の精神
ージ⊥フンドに主張した。そこで、裁判所は、フランス
ジーランドの賛同を得ようとしなかったとしフランスの
︵蝸︺
入れ、港の建設を中止した。
に合致しないと非難した。結局、フランスはこれを受け
相手国の立場を考慮することを意味する。
以上より、ここにおける信義誠実は、他国の正当な信
^刎︺
国際義務違反を認定した。すなわち、﹁誠実さ﹂とは、
これに対しては、﹁国連憲章二条二項の﹃信義誠実﹄
頼の保護、そしてそれに加えて、条約の趣旨.目的の確
の不履行を正当化することを禁じる。この規定の背景に
条約法条約二七条は、自国の国内法を理由として条約
4 国内法に違反して締結された条約の有効性
としているといえるであろう。
保すなわち条約制度に固有の﹁共通利益﹂の保護を内容
という言葉は蛇足である。というのも、悪意をもって義
︵棚︶
務を履行することは不可能であるからである﹂というケ
ルゼン︵=彗ω丙向−ω−z︶の批判がある。しかし、条
約法条約に関する国際法委員会のコメンタリーは、信義
誠実は﹁義務はその条項の単なる文字的な適用によって
回避されてはならない﹂ことを意味するとした。すなわ
︵43︶
も信義誠実があると思われる。
セネガル仲裁判決﹂の例がある。ポルトガルは、フラン
たとえば、一九八九年七月三一日の﹁ギニアビサウ対
端に表面的な文言にこだわることによって︵﹁形式主
ス・ポルトガル問の一九六〇年の、ギニアビサウとセネ
から直接流れ出たものである。条約当事国は、条約を極
義﹂︶、条約の趣旨を反故にする事は許されない。条約法
ガルの海洋境界を定めた合意がポルトガルの国内法に違
ち、﹁誠実に解釈する義務﹂は、﹁誠実に履行する義務﹂
︵仙︶
条約二六条の﹁誠実に﹂という文言は、同三一条と重複
〃
(43) 国際法における一方的約束の拘束カの基礎
ポルトガル議会の承認を得なかった点を指摘する。ゆえ
検討した結果、国連憲章を合むいくつかの重要な条約は、
張した。裁判所は、この点ついて、ポルトガルの実行を
反する形でなされたとして、この合意は無効であると主
結ぴつきを示す。このような場合、﹁国際法が国家のす
権利の濫用とならないように行使するLと定め、両者の
た、この条約により認められる権利、管轄権及び自由を
この条約により負う義務を誠実に履行するものとし、ま
︵湘︺
実が判断されねぱならないだろう﹂とされる。
べての権能の行使に課した目的にようて、国家の信義誠
ると完全なる誠実において信じる理由があづた﹂とし当
ドイツは、上部シレジアに位置するホルジョウエ場を、
たとえぱ、前記﹁上部シレジア事件﹂︵本案︶である。
に、﹁フランス政府は、自国が署名した条約が有効であ
該合意の有効性を認めた。ここにおいて、信義誠実は、
的とは別の目的を達成するための国家の権能の行使を
は、国際法が問題となっている権能に割り当てている目
国際法における﹁権利の濫用﹂︵一.き畠箒穿o5と
5 権利濫用の法理
ているといえる。
二条三項、八八条、ジュネーブ条約四条も、公的財産の
と主張した。裁判所は、ヴェルサイユ条約二五六条、九
このドイツ政府の突然の売却行為は権利の濫用に当たる
ポーランドに渡るのを結果的に阻止した。ポーランドは、
るぎりぎり前に、ドイツの私的法人に売却し、同工場が
ヴェルサイユ条約の署名後でかつそれが効カを発生させ
︵蝸︶
善意者保護または他国の信頼保謹という意味で用いられ
いう。権利濫用についての学術的論議があるかどうかは
譲渡を無効にするように解釈され得ないと判断した。つ
︵〃︺
さておき、同法理と信義誠実の結ぴつきについては、
権の実効的委譲がなされるまでに、その財産を自出に処
ば、裁判所は、ドイツの信義誠実を実際の意思に訴えず
分する権利を保持する﹂と判断し、ドイツの行為は信義
︵引︶
誠実の原則違反に当たらないと判示した。ゾレーによれ
まり、条約の規定全体を考慮したうえで、﹁ドイツは主
︵50︺
﹁譲渡行為に条約違反の性質を与えうるものは、権利濫
^蝸︺
用もしくは信義誠実の原則の欠如以外何ものでもない﹂
という﹁上部シレジアにおけるドイツ人の権益事件﹂
︵本案︶判決が明白に示している。また、国連海洋法条
約三〇〇条︵信義誠実及ぴ権利の濫用︶も﹁締約国は、
”
平成10年(1998年)7月号 (44)
第120巻第1号
一橋論叢
に、ヴェルサイユ条約の趣旨・目的に照らして判断した
このように、この規定の基礎には信義誠実があると考
トルコ混合仲裁判決︶も、すでに署名があって効カ発生
えられる。﹁メガリディス事件﹂︵一九二六年ギリシア・
︵硫︶
常設仲裁裁判所判決においては、イギリスの国内規則の
前の場合に、その条約当事国にとって、その条項の対象
も の と解されるとされ る 。 ま た 、 ﹁ 北 大 西 洋 漁 業 事 件 ﹂
︵52︶
発布は、漁場の保護と保全という一八一八年条約の目的
を滅少させることによって条約を無効にする可能性があ
る行為をしない義務は信義誠実の表現に他ならず、それ
に合致するとして﹁誠実に行われた﹂と評価された。
︵53︶
以上により、信義誠実は、条約の目的という条約当事
たしかに、ある国がある条約に署名したからといって、
は様々な条約の規定で見られる、とした。
︵57︶
容としているといえる。
それを批准するかしないかはその国の自由である。しか
国全体の利益の保謹、すなわち﹁共通利益﹂の保護を内
6 条約の署名後にその条約の趣旨・目的を失わせしめ
し、批准するかしないかを選択できる権利を有するとい
その条約の目的に反する行為を行うことは、悪意の権利
って、無条件にその権利が行使されてよいわけではない。
る行為を慎む義務
.条約法条約一八条は、いずれの国も、条約に署名して
から批准するまでの間、その条約の趣旨・目的を失わせ
行使として﹁権利の濫用﹂に該当すると考えられる。し
︵58︶
たがって、ここにおける信義誠実は、条約の趣旨・目的
ることになるような行為を行わないようにする義務があ
る、と規定する。この条文の元となったのが、ハーバー
の保護、すなわち条約における﹁共通利益﹂の保護を意
解釈﹂勧告的意見は次のように述べる。
と考えられる。この点を﹁エジプトとWHOとの合意の
条約法条約五六条二項も信義誠実を基礎においている
7 条約の廃棄または条約からの脱退と信義誠実
味しているといえよう。
ド条約法条約草案である。同草案九条は、﹁信義誠実は、
条約が発効するまでの間、国家は署名から合理的な期間、
いずれからの当事国による規定された義務の履行を不可
能またはより困難にする行為を差し控えなければならな
︵軸︶
いことを要求する場合がある﹂とした。国際法委負会は、
この条文案の趣旨をそのまま採用した。
︵ 5 5 ︶
(45) 国際法における一方的約束の拘束カの基礎
と対応する条項は、︶脱退の権利がその条約の性質によ
際組織及び国際組織問の条約に関するI﹂C草案のこれ
﹁︵条約法に関するウィーン条約五六条二項と国家と国
抽象化することによって、第一に他国の立場・信頼の合
容を逐一、検討した。そして、それらを帰納的に一般化、
以上、﹁実定法規﹂群に存在する様々な信義誠実の内
の保護という二つの異なる﹁国際法の原則﹂としての
理的な尊重または保護、第二に当事国間の﹁共通利益﹂
は通告、そして=一ヶ月より少なくない期間の通告の条
﹁信義誠実の原則﹂が実定法上に存在することが示され
ってある条約に暗に合まれている場合vその権利の行使
件に従うことを規定する。明らかに、これらの規定は、
た。
計画事件﹂判決においても、条約の終了について合理的
また、一九九七年の﹁ガブチコヴォ・ナジュマロシュ
る信義誠実である。これらは、それ自体で直接、権利や
つは、条約や憤習法規という﹁実定法規﹂に直接みられ
信義誠実には、二つのものがあると考えられる。ひと
の役割
・期間を定めている条約法条約六五条から六七条について、
義務を生み出す﹁規則﹂である。これらを﹁実定法規内
四 ﹁実定法規の外にある信義誠実﹂
また、誠実に行動する義務を基礎としており、そして、
条約の他の当事国の利益の合理的考慮を有しているので
これらは信義誠実に行動する義務を基礎としているとし、
にある信義誠実﹂︵OqOa︷巴;︷さ、鍔㊦§︶と呼ぷ。こ
あるL。
︵59︶
ハンガリーの通告後たった六日後の条約の終了は時期尚
は条約から脱退することによって、他の当事国が損害を
右に見た条約法条約の各規定は、急に条約を破棄また
早であったと結論した。
つの概念である。この信義誠実は、﹁実定法規﹂として
﹁国際法の原則﹂としての﹁信義誠実の原則﹂がもう一
般化、抽象化した、新たな国際法規の形成の元となる
れに対して、それら﹁規則﹂群から帰納的に抽出し、一
︵60︶
被らないように保護している。ここにおいて、信義誠実
の信義誠実の外に位置することから、﹁実定法規の外に
ある信義誠実﹂︵OqOa市巴暮㌧§雨膏こ鍔㊦§︶と呼べる。
︵61︺
は、他国の利益の合理的配慮を意味しているといえる。
8 小活
妨
平成10年(1998年)7月号 (46)
第120巻第1号
一橋論叢
主観的な概念としてとらえ︵﹁主観的﹂信義誠実︶、それ
家の﹁意思﹂が必要である。よって、一方的約束という
先に述べたように、﹁規則﹂が生成されるためには国
従来の理論の見直しが要求される。
は道徳的概念にすぎず、なんら法を創設する機能を有さ
方法によづて法的義務を生み出すためには、約束国の拘
ゾレーは、信義誠実を誠実、忠実、正直な精神という
ないとする。しかし、誠実な精神をもっていたかどうか
束される﹁意恩﹂が必要である。そして、一方的約東に
︵62︶
という主観的な問題は、他国の利益、立場を合理的に配
よって法的義務を負う﹁意思﹂が認められる場合という
のは、通常の合意の形態をとることが困難であるという
慮し尊重したかどうか︵﹁客観的﹂信義誠実︶、または、
当事国間の﹁共通利益﹂の保護に資したかどうか︵﹁公
礎には﹁他国の信頼保護﹂という内容を持った信義誠実
他方、従来の理論によれば、一方的約束の拘束力の基
純粋に道徳的な概念にすぎない、とはいえないであろう。
きたのである。よって、﹁信義誠実の原則﹂は、決して、
そして、一方的約束が、他国の信頼を得るように﹁公
︵舶︶
る必要がある。
束の内容は国際社会の﹁共通利益﹂︵﹁公益﹂︶に合致す
“轟oo§§吻︶を負う場含である。その場合、一方的約
のは、国際社会全体に対して対世的義務︵o巨oq印巨昌
特別事情がある場合に隈られる。そのような場合という
︵鵠︶
がある、とされてきた。しかし、そのような内容の信義
益的﹂信義誠実︶という外面的基準によって判断されて
誠実は、﹁規則﹂としては存在せず、﹁規則﹂群から帰納
則﹂︵﹁実定法規の外にある信義誠実﹂︶として存在する
信義誠実﹂が、約東国の﹁意思﹂が機能する枠組みを提
実と﹁公益的﹂信義誠実の二つの﹁実定法規の外にある
三ま℃仁巨昼烏︶を内容とするとき、﹁客観的﹂信義誠
然と﹂︵君彗ε①昌彗一︶表明され、かつ﹁公益性﹂︵一.⊆−
︵65︶
のみであることが示された。そして、それは、他国の立
供する。その結果、約束国の﹁意恩﹂が現実化し、当該・
的に抽出した﹁国際法の原則﹂としての﹁信義誠実の原
場・信頼の合理的な尊重または保護という大変暖味な内
一方的約束は﹁規則﹂に転化され拘束力を有するように
なる。従来の理論は、一方的約束の拘束カの基礎は、単
︵髄︶
容しか有さず、その内容の極度の抽象性のゆえに、それ
自 体 は直接的には法的 義 務 を 生 み 出 し 得 な い 。 よ っ て 、
46
に﹁信義誠実の原則﹂に求められるとしてきたにすぎな
い。しかし、以上の立論により、その拘束カの直接の根
拠は国家の﹁意思﹂に求められ、そして﹁国際法の原
①ooω−⑦oo蜆一
︵4︶軍ωξ﹄8s§ニミ匡︷§S§§意§§§、ミこ茗−
ざ§ミざ§ζきミ一勺彗一ω一Fρ一︺こ−一冨竃ら.冨−1
ま㎝與;g庄窃gα霧凹g㊦ω巨目二算9彗×o窃卑津ω︾一完o−
︵6︶ ρく①巨⊆ユ三一︽ピ印ooユ宥9−鶉①饒①誌ゴ﹂﹃己5一﹄鶉
︵5︶Oミき§鼻−彗戸PM箪o印轟.畠;.ミωら彗団﹂o1
外にある信義誠実﹂がその﹁意思﹂の機能する基盤を提
則﹂としての﹁信義誠実の原則﹂すなわち﹁実定法規の
o§ミ、竃8富葛匡雨−ss、“§膏、雨﹄;ミぎ討§ミざsミ一
︵9︶ Ooヨσ凹o雪﹄9ωo﹃﹂冒も§コ9①ごP昌↓.
−葦彗冨=o畠一﹁︸妻︶と呼ぱれる場合がある。
①q99嘗貢o⊆早〇一ニコ冨﹃コ撃一〇コ巴一〇雪雪巴、ユコo号一窃o申
︵8︶ 学者によっては、﹁国際法の一般原則﹂︵一轟oユ;号霧
︵7︶N0二〇﹃L§§;后ド
島震−昌二1=Noo.き㌣き﹄.
供する役割を果たす、というメカニズムが示されたとい
えよう。
︵67︶
︵1︶ たとえぱ、﹁核実験事件﹂判決Oミ完S§鼻−彗卓O・
、凹ユμ 巾oOO目P −o〇一 P MN①一﹄.OO−自σoo凹一﹄ o↓ ω1ω一﹄﹃一
M①o〇一〇印﹃甲 ム①一U.O団﹃﹃o印Pb﹃Oミ ︷S膏§S,oSSト 蜆冊ΦP一
︵10︶ ρω昌ミ彗N彗σ雪oq賀、勺⋮註冒昌冨一勺ユ昌亘oωo︷
58=畠二〇コ巴−螂ミ..一完雨§雨ミ、竃8ミ;軋雨−sos∼“§討、“
b§ミぎ膏§ミざ富ミも冒ミ︷︹一望心p勺彗貝ζo巨o∼窃ごo目一
屋彗一p竃一竃一之1ω=団≦ぎ“Φ§亀︷osミトs§ム亭①匝−一
﹄§︷こミ軸§ミざ§トー竃蜆−一一﹄↓らo.M實−8蜆.
︵u︶ oいOO目−σoo0E①一ω一﹄i吻S㌧§目〇一〇‘七P−〇一−−o印
〇匝目一げユ①qPO︸コ一一]ユσqo⊂コ︸くo﹃ω篶く、﹃①ωω.−o㊤一Po蜆⋮、.
︵12︶ Oミ完S§鼻δ①oらPミー畠も凹鼻o。㎝.
宛彗8■b§︷こミ雨§ミ︷o§、b§書、冊蜜二勺彗貝勺.c.勺.一
︵13︶ ここでいう﹁原則﹂とは、抽象度の極めて高い、広い
く98篶ヨ雪↓匹=∼〇一二自一g冨巨o畠一︾一完s§ミ﹄“§き吻
︵M︶ ≦<一邑昇合o3一①α撃、.oユ昌甘g..島冨一〇黒−
ロギー的﹁原則﹂も合まれる。
た﹁原則﹂や特定国家によって主張された政治的、イデオ
原則﹂を意味しない。たとえぱ、学者によって定式化され
意味での規範を意味し、必ずしも実定法上に存在する﹁法
お竃も﹂匿一巾Fζ彗ぎb;ミぎ膏§ミ︷§ミせきso㌔彗貝
学出版会、一九九二年、四七頁。
竃麸ω昌し睾oら。冨︸藤田久一﹃国際法講義1﹄東京大
︵2︶向−N0=P5ぎ§雨さ︷§巨δきミ軸§§o§ζsミ︷P
巾彗互勺&o篶L岨ミらo’ω竃−ω蟹.
︵3︶−﹄.9o彗一戸合oo凹﹃曽辱oo;oqgoぎまω彗oq品o−
e§恩忌§膏§﹄δ︸こミ雨§昌ぎ§−bきミニ﹄ω一δ↓oらo.
昌彗房O目豪蒜冨⋮彗睾〇一二葦雪冨巨O昌一〇仁σ=OY完申
47
国際法における一方的約束の拘束カの基礎
(47〕
橋論叢 第120巻 第1号 平成10年(1998年)7月号 (48)
oo目Φくp;ω巨ε二旨∼o﹃ω言巴轟α①サ画巨窃g=o①巴目訂;印−
昏、§︷こミ雨§ミ︷§ト向sき§§秦㊦∼きミo星露§ぎ︷§
︵15︶§邑’P窪9
饒o昌一窒し8ooらo.蜆窒−邊o.
︵16︶§ミら.邊蜆.
︵23︶ く−屋=き︸富、§目o冨−卓℃P蜆ωω一蜆蜆ω.
︵24︶﹁ロチェス号事件﹂判決、○、\卜窓ま戸之。;一P
︵25︶ ﹁ウィンブルドン号事件﹂判決、Ω、ト>窓ユ蜆>
−oo.
﹃昌8︶になる場合も考えられる。たとえぱ、国家の﹁規
︵26︶ 複数の﹁国際法の原則﹂が﹁競合状態﹂︵58昌胃−
z。ピp曽.
−§為ミミoに位置づけられうる。同様に、ある複数の国
Oq豊忍まω吋冨邑や﹁実効性の原則﹂︵一〇肩ま9葛α、蓄8−
則﹂創設行為が、﹁国家平等の原則﹂︵一①Oユ;号Oα巴.耐
︵17︶ §§一P邊①.学者によって定式化された﹁原則﹂は
家によって主張された﹁原則﹂、あるいは特定の国際組織
ける法的帰結の一般的理論については、今後の検討課題と
は機能しないと考えられる。このような﹁競合状態﹂にお
饒くま︶の枠からはみ出る場合、﹁合意は拘東するの原則﹂
の決議による﹁原則﹂の宣言も−§昏ミミSに位置づけら
︵18︶§ミ一P邊9
れうる。§ミ’oo1艶①−蜆ωoo.
︵19︶ §ミ
した㌧
OoH目σ凹o彗﹄9ωE■閉ミb§目〇一〇−O℃.−↓トー−↓蜆−
○ミ完s§鼻δ雰もーω戸o胃凹﹂8一pω9程﹃凹﹂o蜆﹃
○ミ完§§︷−二竃卓p曽o.
○ミ完s§鼻5さら﹄戸o胃凹−お.
○ミ完s§き58ら.ミ一〇彗凹−oo蜆.
ぎg♀き膏§ミざ§−卜s§<〇一−雷Looopp爵’
目顯ごOコ巴OOE﹃一〇﹃−冒ωごo①−ooo01一岨oo㊤巾饅﹃一−..一、ユS吻ぎさS﹃−
︵27︶ =.↓三﹃ξξ一..↓ぎ■葭峯匝コ庄軍oo&冒ooh↓プ巴旦雪−
︵20︶ −零o奏邑貝ま§ミ蕩県きo、ざぎ膏§ミざ§−卜s§
︵21︶ 例外的に、国連憲章第一章のように、独特な価値を有
含サo饒.一〇x﹃o﹃90x﹃o﹃巨C三くΦ﹃ω;㌣巾鳥ωω一δogP−o.
する条約の場含には、それのみで﹁国際法の原則﹂を形成
する、とされる。§ミらp蟹甲蜆ミ.
︵22︶ ﹁法的効果﹂の概念について、最も狭い意味で、法主
体に課せられる権利と義務の創設のみに理解するのは誤り
である。法律行為は、たとえぱ法的状態を確認したり、法
o.峯三亘、↓幕勺ユ昌旨5ohoqoa守一;.、一﹃ぎ
sぎ巨きぎ妻§∼§軸、ユso曹−8呉ぎ§§ミ︸§ミト昌§
的地位を認証したり、資格の付与︵巨篶訂σ⋮冨饒o目︶を
夢竃着ぎき§oミ呉§s§−﹄酎§s葛戸﹁昌αop
カo巨一&鷺二8卓pN彗.
・実行したりするにとどめる。このような状況において、法
的秩序︵︸.o邑o⋮彗8昌g二昌巳δ亮︶は直接的には新
§弐§ミbきミpω。&.㌔彗互U舳二gし竈蜆も﹄81
しい権利や義務を創設しない。甲≦−︺ξξ一b;︸こミ雫
33 32 31 30 29 28
48
(49) 国際法における一方的約束の拘束カの基礎
︵脳︶ この点、国際法委員会においては、当該条文案を、一
九五六年の万国国際法学会︵一.−冨葦ε↓ま冒〇一二巨①﹃計■
︵46︶ミ§き§富;§き盲ミ・一ま;ω一嚢9君1ω9ωム一
︵〃^︶ O. OO﹁=P §o自︸S﹄S︸ミ ㌧ミ、﹄︸Oミ雨’ ①。心α二 巾Oユ9
召冨蜆.8−s.
巾IC﹄.;8①ら.9
己o冨一︶決議からそのまま採用したとするにとどめ︵さs、
ぎ寒呉曽ρ二8卓<OF戸O.蟹︶、﹁誠実に﹂という文言
︵49︶N0=o二§§冒詩No.=①.
︵48︶O1、\ト一窓ま>﹄。一〇1曽.
︵50︶O﹄トト一窓ま>﹄百一事轟−ωO.
についてはなんら議論は展開されなかった︵ω霊さ亀下
︵35︶−﹄彗員合凹邑彗88∋8①昌彗豪9き昌忌き一
︵52︶N2①二§§昌試No﹂.一。。.
︵51︶§ト暑−ωP筆
庁 o o 沖 g ド 〇 一 一 − o ① 戸 く o − − 一 〇 〇 1 N べ 蜆 − N 0 0 N ︶ 。
軋ミこs鳶§§o§﹄ミ茎〇一↓.賃冨①ωら.8−
冨ω蜆ら。ミO。。ただし、ここでの﹁信義誠実﹂は法的な義務
︵54︶㌧§き§さ畠§ミ呉ミ§§o§一ト§一<〇一−鼻
㌧SSミ吻一<OF曽一暑−冨。。−−O.O.
︵53︶一]葦&≧き昌9完魯ミ“吻ミミ“§§§ミミミミ
一昌蒜彗睾〇一二昌o﹁冨↓一昌巴君;o︾ら§§恩ミ“ミ雨§
︵36︶O﹄トト一窓ま貝コ。一℃.N0.
︵37︶Qドき§§﹂竃Po﹄
︵珊︶ OOH自σOoOO①Rω自■ω害官§目〇一〇−一〇1−↓㎝.
︵55︶ さs﹃︸oo酎9曽Pε2一くo−戸P↓蜆一
ではなく、道徳的義務にすぎないとされた。
︵39︶ Oミ完S§鼻−竃oら。冒■﹁リピア・チャド領土紛争事
竃.
望睾彗ω﹂竃oも.竃N−
0.OO目目①=一ぎ§§自ざo篶s−卜8§一N=旦o旦.一<O−.−一ピoコOOP
膏§§O§卜蟹募一望﹃①き冨舅署.彗㌣彗ωも.巾1
︵58︶ くo−﹃−U.>自ユ=oご︵Ω1O己o;﹃與目㎝一︶一〇〇s葛∼ミ、、oミ︷芋
ω雷.
︵57︶き蔓§き吻§o室o毒乱雨−妻ぎ§§ミミ§§
ミ§二童§淳盲﹁膏餉ぎ§吻き盲ぎ↓o寡≦一−ら.
同旨。Ω、㌧ト一窓ユoO﹄。=−=らO.ミ㌣ミムー
事件﹂、ポーランド政府代理人ムロゾウスキの口頭弁論も
︵56︶ ﹁ポーランドの上部シレジアにおけるドイツ人の権益
件﹂判決も同旨。Oミ完S§き畠巽君.蟹−N①も彗富。2−
︵40︶くoマN0=員吻§§昌8N一暑﹄ムよ蜆.
︵41︶ミ§§§ミト§完豊ミタ<〇一二Nしo8;P§−
畠 ω ら 彗 竃 ﹄ o − 竃 1
︵〃︶雪豪一眈彗一§雨卜§ミ§“s︷§きぎ妻’−o註g.
︵43︶さミぎ寒9曽Ω嚢戸<〇一−一ζら
ω8き易二竃oら﹄9
︵44︶さミぎ9♀曽ρ嚢牟く〇一.一;﹄①−
︵蝸︶甲﹁彗尋寝争戸§§討︷§.吻ミ§ミ§ミト§一
コo8ω.
〇〇己一耐o.一くo−.−、o螂o9−oコ旦op−o目oqヨo目μ冨蜆9po蜆ド
ψ
(
50)
平成10年(1998年)7月号
第120巻第1号
一橋論叢
︵59︶ Oミ完§§芦−竃oらol置−蟹ら胃與−ミ.
︵60︶Sき§鼻嚢メ葛曇;o︸ξ一\言ミ峯−一姜..
oo﹃烏=.&ミ亘﹀o;\oプ眈旨巳ーミ∋−
目o訂卓o軍5ω−冨蜆︶、一九七四年のフランスによる一連
ーストリア憲法による永世中立の宣言︵<OマωEチ坊§§
の大気圏内核実験停止宣言︵oミカs§︷−Loミ一暑■M雷−
二年六月二五日のソ連の核兵器先制不使用宣言︵藤田久一
核実験終了宣言︵ご§§きし①ω二彗三雪冨8︶、一九八
N雪ら彗夢曽−き︶、一九九六年一月二九日のフランスの
9︷菖ミ“ミ﹄鍔6§、の区別がなされている。﹁北海大陸棚
編﹃軍縮条約・資料集﹄有信堂、一九八八年、三六四頁︶
︵61︶ ﹁衡平原則﹂についても、..o︷享二さ−轟軸§、と、8・
召章彗一﹁国境紛争事件﹂︵ブルキナファソ対マリ︶判決、
は考えられない。同原則は、合意があった場合に﹁規則﹂
︵66︶ 一方的約束は、﹁合意は拘束するの原則﹂に反すると
など。
事件﹂アムーン判事個別意見、Oミき§ミニ塞oら﹂竈一
○ミ氏§§きδo。①らp寓↓よ窒ら彗o.墨1
︵62︶ N0=宰一窒、§目o益Nラω竈.
とを禁じる内容までもは合まないと解される。
を生成するが、合意がない場含に﹁規則﹂が創設されるこ
︵63︶﹁北海大陸棚事件﹂判決︵Oミき§茎﹂o箪毫。爵−
歩寝曇8−No。︶、﹁国境紛争事件﹂︵ブルキナファソ対マ
判決については、宣言が公になされたならばいかなる宣言
研究﹄二〇巻一号、三八−四〇、四七頁。﹁核実験事件﹂
§ミ︸ぎミg§耐ミ、、o§§ミ嚢塞壱ぎぎ§ミミ
g8目き﹃oq彗8ω︾一ドぎoミミ§膏§昌ぎ§−卜s§ミ§Φ
5蒜﹃彗xg昌oq凹oq①昌彗↓m8⋮彗巨昌畠一9豆暮凧﹃彗o窃
思﹂のみを置く見解︵−、Oぎ﹃O雪饒實一合目Oq︸Oqo∋彗房一自一−
︵67︶ したがって、一方的約束の拘束カの基礎に国家の﹁意
リ︶判決︵oミ完§§鼻δo.9p雪ムら彗pき︶参照。
も拘束力を持つのか、という疑問が問われる︵一︺仁君チ塞−
§壱辿g寒き詠§ミ寒“=ooq嘉一匿巨冬雪ピ印冬−言胃冒.
︵64︶ 拙稿﹁国際法秩序における一方的約束の意義﹂=橋
せ§箏o宕NNら.ミo︶。同判決は、一方的約東が拘束力を有
︵一橋大学大学院博士課程︶
る。
饒O冨=⇒害冨90昌ポ冨8らPωお1ωぎ︶も不十分といえ
する要件である﹁公益性﹂の考慮を欠いていたといわざる
を得ない。
︵65︶ たとえぱ、一九五七年四月二四目のエジプトによるス
エズ運河の自由通航に関する宣言︵sくぎ邑営ωミ︷8一
<〇一.墨9冨望らP岨8−曽O︶、一九五五年五月一五目のオ
ω
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