...

CD-ROM での物語的インタラクティブ作品 「おばあちゃんと

by user

on
Category: Documents
43

views

Report

Comments

Transcript

CD-ROM での物語的インタラクティブ作品 「おばあちゃんと
CD-ROM での物語的インタラクティブ作品
「おばあちゃんとぼくと」
「光る花」
2004.6.21 印 雅代
1.はじめに・・・CD-ROM 作品のすすめ
インタラクティブアートとは、観客が作品を受け身で鑑賞するのではなく、積極的に作
品に働きかけ、対話することで始めて作品の意味が成立するアートのことである。
その作品形態としては、
・インターネットのようにネットワークを介した作品
・観客と作品とが音や映像や運動に反応するセンサーを仲立ちにして、五感に訴える対
話ができる環境装置的な作品 (インスタレーション)
・CD-ROM のようなパッケージ型の作品
などがあるが、今回は CD-ROM 作品について述べる。
DVD などのメディアが進出してきているが、まだまだインタラクティブな作品といえば、
ゲーム(プレステ2)以外では CD-ROM が多い状況。昔の CD-ROM 作品にも、色々面白
いものが埋まっているので、是非見て欲しい。
2.インタラクティブ作品の例
・DVD(PlayStation2)の作品
「Wordimagesoundplay」・・・言語(word)、映像(image)、音楽(sound)、そ
れにちょっとした遊び(play)を組み合わせたインタラクティヴ・ソフト。DJ 的?
「Rez」・・・シューティング。トランス感覚を体感できる新しいゲーム(らしい)
。
・CD-ROM の音楽インタラクティブ作品
「Small Fish」
・・・音楽を「感覚で演奏する」ソフト。
「Shiftcontrol」
・・・音楽を「組み立てて作る」ソフト。
「まよなかのおしばい」
「アルファベット」・・・インタラクティブな絵本。はっきりとしたストーリー
は無いが、世界観に引き込まれる。音楽も含めたマルチメディア仕掛け絵本。
10 年以上前の作品として、今回は「おばあちゃんとぼくと」
「光る花」を紹介。
共通しているのは、程度の差はあれ物語があって、それを追っていく形の作品だというこ
とである。
3.
「おばあちゃんとぼくと」1992,株式会社ビー・エヌ・エヌ
●作品の概要:クリックもの絵本の元祖。絵本の世界で遊べるソフト。幼児向けに作っ
てあるが、意外と楽しい。今でも、子供向けのソフトとしては最高だという人が多い。クリ
ックすることでページをめくり、ストーリーが音声で読み上げられる。そのページの中の
物や背景をクリックすると、隠された色々な仕掛けが飛び出してくる。この仕掛けがどこ
に隠れているか、どんな仕掛けなのかを考え、わくわくしながら絵本を探索することがで
きる。
●映像について:輪郭も色も、全体的にはっきりしている。子供向けのキャラクターで
あり、親しみやすい。
●音について:コミカルで、はっきりしたものが多い。
ものが発する音を強調する。画面をクリックして出てくるしかけには、映像よりも音で
印象付けられるものが意外と多い。
BGM もわかりやすく、テンポの良い仕上がりになっている。
4.
「光る花」1993,maze,Inc.
●作品の概要:岩野 希久子、林 山人らによる「環境映像的な要素をふんだんに盛り
込んだアニメーション作品」。4 つのエピソードとエピローグから成り、画面をクリックす
ることによってエピソードを見たり、他のエピソードへ移動したりできる。
「おばあちゃんとぼくと」のようにはっきり理解できるストーリーは無い。しかしそのこ
とで、この作品は「読み解く」という行為を必要とする。映像をクリックしても、何も隠
されていないから、ストーリーについて考えることに集中できる。隠された仕掛けではな
く、隠された物語の奥深くを探し出すということが、この作品を楽しむための要素となる
のだ。
●映像について:ぼんやりした感じ、幻想的。パステル調の絵は、多少ピクセルが粗く
ても、やわらかな印象を受ける。花の光がとても暖かく感じられる。
環境映像(特定のメッセージの伝達を目的とせず、その場の雰囲気を和らげる自然環境
などのビデオ映像)としての役割も十分に果たしてくれる。あまり操作できる場面は多く
ないが、いつでも自由にストーリーを追っていける部分に、DVD などの映像作品との違い
がある。
●音について:音楽は、その世界の空気、映像全体に同調するように作られている。映
像と合わさって、心地よいゆっくりとした空間を作り上げている。
物音や声が独立して鳴らされることは無い。流れてくる音楽の中に、物音が溶け込んで
いる。言葉や声が無いので、音によってこれから何が起こるのかを予期させる。
西洋音楽的な音の作り方ではなく、ここでもあいまいな感じが、物語の謎へと引っ張り
込んでくれる。
インタラクティブミュージックCD−ROM作品の比較
shiftcontrol と smallfish
1.はじめに
インタラクティブミュージックとは、人間の働きかけに応じてコンピュータが音楽を創
り出すという、新しい形の音楽のことである。
(インタラクティブÛ相互作用的、対話的)
今回紹介する[shiftcontro11と[Sma11Fish1は、パソコンの
画面に出てくる絵や画像をマウスで動かしたり張り付けたりすることで、音楽を創り出す
というものである。
音楽を構成したり創り出したりするための情報が、スクリーン上(画像)にあり、次に
どんな音が流れるか、という予測ができるということから、この画像は「楽譜」とも呼べ
る。
また、画像をコントロールすることで同時に音楽が創られるということから、この画像
は「楽器」とも呼べるだろう。
今回は、「インタラクティブ」という面では共通の、2つの作品の特徴を具体的に見て
いきながら、違いを比較していく。
2.Audiorom interactive music shiftcontrol
株式会社デジタローグ(イギリス版発売元:research publishing)
2−1.特徴
作者によって創られた音楽のパーツを組み合わせていくことによって、音楽を生成して
いく。全く新しい創作ができるわけではないが、その分誰でも簡単に「かっこいい」「き
もちいい」音楽を創ることができる。
音楽のパーツ1つ1つも、音を自由に組み合わせたり動かしたりした時にもうまくいく
ような設計になっている。
このソフトは14+2種類の音楽創作セットがあって、操作方法や音楽のパーツの種類
が違う。音楽にあわせた、クールなイメージの画像が使われている。
自分の生成した音楽を録音したり保存したりできる。また、普通のCDプレイヤーで聞
くと、同じような系統の「完成した」音楽が7曲入っている。こういうことからも、この
ソフトは「聞くことのできる音楽を簡単に創る」という色合いが強い。
2−2.具体例
Aポエムを入力し、再生すると、そのアルファベット1つ1つに決められているトラン
ペットのフレーズが演奏されていく。
Bいくつかのブロック(パーツ)を線譜上に並べて、音楽を創る。
Dキーボードを入力装置として、リアルタイムに演奏できる。
G音の「絵の具」を塗って、それの上をマウスでなぞることで音が出る。色が音程に対
応。
H適当に並べた障害物オブジェクトの中を、ボールが移動し、オブジェクトとボールが
ぶつかることによって音が出る。
O おまけ?ゲーム。音楽性はあるのかどうか微妙。
(こういうゲームは他にもあるから?)
3.Digital arts edition #3 smallfish(ZKM)
3−1.特徴
古川聖,藤幡正樹,ヴォルフガング・ミュンヒによって作られた。パーツとパーツが
ぶつかる音や、自由なマウスの動きに合わせて鳴る音が、組み合わさって音楽が創り出
されていく。その音楽は現代音楽的であることも。ただ音楽だけを聞く場合は、現代音
楽は判りにくいこともあるが、この作品では現代音楽だからこそ、画像とのつながりが
大事になっていく。「次の音を予測すること」は、無調の音楽には難しく、だから奇妙に
聞こえることもあるだろうが、この作品は視覚によって「次の音を予測」できる。その
絵や動きが音楽を聞くことを助けるのだ。
この作品は自由度が高い。そして、視覚情報も音も芸術性が高く、親しみやすい。絵
やその動きを楽しむことができるし、それに合わせた音の生成も面白い。
このソフトでは、15種類の製作セットが用意されている。この選択方法は、詩に書
かれた言葉を選ぶことによる。こういうメニューデザインからも、音楽の物語性や芸術
性を強調していることがわかる。
この作品は、何度も聞くための音楽を創り出すというよりは、即興演奏の色合いが強い。
また、「自分で」画面を動かすことによる対応を、リアルタイムに楽しむためのソフトで
あるとも言えるだろう
3−2.具体例
「鶴鵡」二つの丸が追い掛け合って音を出す。背景のパーツによって、その音色がかわ
る。
「キリン」障害物オブジェクトの中を、二つの線が移動して、オブジェクトと線がぶつ
かることによって音が出る(shiftcontro1の[Hlに似ている)
「小さな魚」小さな丸(マウス)を追い掛けたり跳ね返ったりする大きな丸があり、こ
れらの丸の動きに合わせて音が鳴る。
「ホンク」いろんな障害物に丸がぶつかり、音が鳴る。それに合わせて人影が動く。
「星座」決まりに従って、丸が回っていく。マウスとの距離が音生成のポイント。
「分子の音楽」たくさんの丸の動く方向だけを指定してやって、音が鳴る。
3−3.実際の演奏
この作品の作者である古川聖らは、実際にこの作品を使って演奏をしている。実物の
ピアノやトランペットとのコラボレーションなども行っている。この作品そのものは、
聴覚障害者でも演奏できる、というところに大きな特徴があり、実際に演奏もされてい
る。ちなみに、2001年7月に東京で行われた smallfish の演奏会では、聴覚障害者に
も聞きやすいようなシステムを使ってステージを行った
聴覚障害者でも分け隔てなく演奏できる=人間の幸せのためのデザイン
Fly UP