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- 82 - [北海道]「電気ショッカーボートによる効率的外来魚駆除方法の

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- 82 - [北海道]「電気ショッカーボートによる効率的外来魚駆除方法の
[ 北 海 道 ]「 電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト に よ る 効 率 的 外 来 魚 駆 除 方 法 の 開 発 と 普 及 」
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
さけます・内水面水産試験場
工藤主任研究員
< ス ラ イ ド 1>
ただいまご紹介にあずかりました、
独立行政法人北海道立総合研究機構
水 産 研 究 本 部 さ け ま す・内 水 面 試 験 場
の 工 藤 で す 。そ れ で は 、電 気 シ ョ ッ カ
ーボートによる効率的外来魚駆除方
法の開発と普及について概要の説明
を行います。
北 海 道 で は 2000 年 以 前 に は オ オ ク
チバスとコクチバスの生息は確認さ
れ て い ま せ ん で し た 。 し か し 、 2001
年からは北海道内において生息が確
認されだしたオオクチバスとコクチ
バスを根絶するまでの対応、特に
2004 年 か ら 導 入 し た 電 気 シ ョ ッ カ ー
ボートによる駆除方法と技術移転の
経緯を振り返ります。
< ス ラ イ ド 2>
北 海 道 で は 2000 年 か ら オ オ ク チ バ
ス 、コ ク チ バ ス の 生 息 確 認 調 査 を 開 始
し て い ま し た が 、 2001 年 に 初 め て オ
オクチバスを確認しました。調査は
2007 年 ま で に 2 市 、 12 町 村 で 行 い ま
し た 。最 初 に オ オ ク チ バ ス と コ ク チ バ
ス の 2 種 が 確 認 さ れ た の は 、道 南 の 森
町 の 円 沼 1 カ 所 で す 。オ オ ク チ バ ス 1
種のみが確認されたのは余市町の余
市ダム湖と南幌町の南幌親水公園の
沼 の 2 カ 所 で す 。こ れ ま で に 北 海 道 内
では合計 3 カ所でバスが確認されて
い ま す 。 こ の 3 カ 所 で 2007 年 ま で に
確 認 さ れ た 尾 数 は 、オ オ ク チ バ ス の 成
魚 26 尾 、 幼 魚 124 尾 、 稚 魚 240 尾 、
コクチバス成魚 1 尾でした。
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< ス ラ イ ド 3>
バスが確認された最初の駆除の状
況をご紹介します。
円 沼 (ま る ぬ ま)は 大 沼 国 定 公 園 の
2 ヘ ク タ ー ル 程 の 堰 き 止 め 湖 で す 。こ
こから流出する河川は大沼本湖に流
れ て い ま す 。大 沼 は 北 海 道 の ワ カ サ ギ
の 産 地 で 、 30~ 40 ト ン の 生 産 地 で 有
名 で す が 、バ ス の 生 息 数 拡 大 に よ る 食
害 が 懸 念 さ れ 、 2002 年 、 地 元 役 場 や
大 沼 漁 業 協 同 組 合 、地 域 が 一 体 と な っ
て、バスの駆除作業を開始しました。
ま ず 、バ ス の 流 出 を 防 止 す る た め 沼
の 周 囲 に 土 嚢 を 積 み 重 ね 、大 沼 本 湖 に
バスが逃げ出さないような対策を立
て ま し た 。ま た 当 時 、神 奈 川 県 水 産 技
術センターで公表されていた人工産
卵 床 、こ れ を 用 い て バ ス の 産 卵 を 誘 導
できないかということで試みました
が、効果はありませんでした。
さ ら に 、当 時 山 梨 県 で 用 い ら れ て い
た 刺 網 、あ る い は 長 野 県 で 用 い ら れ た
光 物 、こ れ を 付 け る と バ ス が 誘 導 さ れ
網 に 掛 か る と い う こ と を 習 い 、行 い ま
し た が 、や は り バ ス は 掛 か り ま せ ん で
した。
一 方 、 こ の 前 年 の 2000 年 、 札 幌 近
郊 の あ る 有 名 な 大 型 書 店 で は 、北 海 道
内ではバス釣りができる場所がない
に も 関 わ ら ず 、バ ス 釣 り の 関 連 雑 誌 が
多く売られているという事実が確認
されています。
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< ス ラ イ ド 4>
森町の円沼でのバス生息確認が収
束 し て い な い 中 、オ オ ク チ バ ス の 違 法
放 流 が 拡 大 し ま す 。2002 年 7 月 に は 、
余市ダム湖で新たな釣り人の情報が
持 ち 込 ま れ 、こ の 情 報 を 受 け た バ ス 調
査で新たにオオクチバス 2 尾を確認
し ま し た 。 一 方 、 2002 年 8 月 に は 内
水面水産試験場で飼育していたオオ
ク チ バ ス で 、初 め て オ オ ク チ バ ス の 越
冬や自然産卵を実験下において確認
し て い ま す 。さ ら に そ の 年 、2002 年 8
月 初 め に は 余 市 ダ ム 湖 で 、道 内 で は 初
めてオオクチバスの稚魚を大量に発
見 す る こ と に な り 、ダ ム 湖 内 で の オ オ
ク チ バ ス 稚 魚 を 捕 獲 す る 一 方 、生 息 状
況を監視することにしました。
< ス ラ イ ド 5>
余市ダム湖においてオオクチバス
稚 魚 の 生 息 は 確 認 で き ま し た が 、そ れ
ら 稚 魚 の 由 来 が 、同 じ ダ ム 湖 内 で 産 卵
し て 繁 殖 し た も の か 、他 の 場 所 か ら 移
植 さ れ た も の か が 課 題 と な り ま す 。そ
こ で 、オ オ ク チ バ ス や そ の 餌 と な る 動
物 の 筋 肉 中 の 炭 素・窒 素 の 安 定 同 位 体
比 を 測 定 し た 結 果 、余 市 ダ ム に 生 息 す
る 個 体 は 、こ こ で 生 育 し て い な い と い
うことが安定同位体比の濃縮係数を
使 っ た 配 置 で 分 か り 、他 か ら 持 ち 込 ま
れたことが推定されました。
こ の 技 術 は 、当 時 、環 境 省 を 中 心 と
したオオクチバス等を特定外来生物
の 指 定 に 関 す る 議 論 の な か で 、オ オ ク
チバス拡散要因の証拠の資料として
採 用 さ れ 、環 境 省 の ホ ー ム ペ ー ジ に も
この文献が採用されています。
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< ス ラ イ ド 6>
2002 年 9 月 上 旬 か ら 10 月 下 旬 に 余
市 ダ ム で は 、合 計 223 尾 の 稚 魚 を 確 認
し て い ま す 。こ れ ら の 時 期 別 の 体 重 変
化 を 示 し ま し た ( 左 図 )。 9 月 下 旬 と
比 較 し て 10 月 以 降 の 体 サ イ ズ が 小 型
化 し て い ま す 。右 図 は 、時 期 別 の 肥 満
度 の 変 化 で 、平 均 肥 満 度 は 9 月 上 旬 か
ら 10 月 中 旬 に 減 少 し て い ま す 。 実 際
にバス稚魚の胃内容物を見るために
解 剖 を 行 っ た と こ ろ 、稚 魚 は 空 胃 の 個
体 が 多 か っ た こ と か ら 、余 市 ダ ム 湖 に
は あ ま り 馴 染 め な か っ た 様 子 で す 。こ
のような肥満度の低下から余市ダム
での越冬の可能性を疑問視する見方
も強まりました。
< ス ラ イ ド 7>
余市ダム湖の越冬期の水温環境を
調 べ ま し た 。月 の 平 均 水 温 は 10 月 の
10.5℃ か ら 12 月 に は 0℃ に 変 化 し て 、
オ オ ク チ バ ス の 活 性 が 低 下 す る 5℃
以下の低水温は翌年 4 月まで 4 か月以
上続いたと推定しています。
翌 2003 年 春 、 5 月 か ら 9 月 ま で 5
回 、延 べ 12 名 で 合 計 17 時 間 の 潜 水 調
査 を 行 い ま し た 。潜 水 に よ り 生 息 を 確
認 し た 水 生 動 物 は 、ニ ジ マ ス・ア メ マ
ス・ハ ナ カ ジ カ・ス ジ エ ビ で す が 、オ
オクチバスの稚魚は確認できません
でした。
こ れ ら の こ と か ら 、オ オ ク チ バ ス の
稚魚は余市ダム湖では越冬に失敗し
た と 考 え ら れ ま し た 。し か し 、今 回 見
られた稚魚のサイズよりも大型の種
苗 が 違 法 放 流 さ れ る と 越 冬 、定 着 す る
可能性も考えられました。
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< ス ラ イ ド 8>
オオクチバスは札幌市近郊の南幌
町 に も 生 息 が 拡 大 し ま し た 。2001 年 8
月 、南 幌 温 泉 の 沼 に オ オ ク チ バ ス が い
る と の 電 話 情 報 が 寄 せ ら れ ま し た 。同
年 11 月 及 び 2002 年 9 月 に は 釣 り 人 か
ら の 捕 獲 情 報 が あ り ま し て 、2002 年 9
月 に は 調 査 の 刺 網 に よ っ て 、我 々 が オ
オクチバスを捕獲しました。
こ れ ら を 受 け 、2002 年 10 月 に は 北
海 道 庁 、南 幌 町 な ど の 関 係 機 関 か ら な
るブラックバス検討会議を立ち上げ
て対策を協議しました。その後も
2003 年 に 入 っ て か ら 釣 獲 情 報 が 寄 せ
ら れ 、 2003 年 8 月 に は 刺 網 調 査 に よ
りオオクチバスを大量に捕獲したと
い う こ と を 確 認 す る に 至 り 、関 係 機 関
に 南 幌 町 ヘ ラ ブ ナ 同 好 会 、あ る い は 報
道関係も含めてオオクチバス検討会
議が開催されて対策を協議したとこ
ろです。
< ス ラ イ ド 9>
パ ネ ル( ス ラ イ ド )の 左 上 は 上 空 か
ら見た南幌親水公園を俯瞰した画像
で す 。右 図 に は 南 幌 親 水 公 園 に お け る
刺網の設置場所と捕獲数を示してい
ま す 。こ の 図 は オ オ ク チ バ ス の 捕 獲 数
の 分 布 図 で す が 、よ り 道 路 に 近 い 方 に
オオクチバスが偏在していることが
示 さ れ て い ま す 。こ の 刺 網 の 駆 除 に よ
って、オオクチバスの捕獲が進んで、
オオクチバスの残留する数が少なく
なってきたということが分かります。
こ の よ う に 、オ オ ク チ バ ス の 刺 網 に
よ る 駆 除 は 進 み ま し た が 、思 わ ぬ 弊 害
も生まれています。
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< ス ラ イ ド 10>
2003 年 当 時 は 、 外 来 魚 の 駆 除 方 法
は 、刺 網 で 捕 獲 す る こ と が 確 実・最 良
の 方 法 と 考 え て い ま し た が 、そ の 際 に
大 量 の フ ナ 類 、コ イ 、ナ マ ズ 等 の 在 来
種 が 巻 き 添 え に な り ま す 。混 獲 個 体 数
は 2400 尾 以 上 に な り ま し た 。 こ の う
ち 、全 捕 獲 数 の 中 で 実 際 に 捕 獲 し た オ
オ ク チ バ ス は 92 尾 な の で 、 全 体 の
3.8% に し か 過 ぎ ま せ ん 。
< ス ラ イ ド 11>
以 上 の こ と か ら 、外 来 魚 の 駆 除 に は
生 息 数 が 少 な い う ち に 、徹 底 的 に 駆 除
を行うことが効果的と考えられます。
し か し 、徹 底 的 な 駆 除 は 、在 来 種 に も
影響を与えることが明らかになりま
し た 。そ し て 、在 来 魚 へ の 影 響 を 最 小
限にする必要性が生じました。そこ
で 、電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト と い う 電 気
ショックにより一時的に麻酔された
魚類を捕獲するという機器にたどり
着 き ま し た 。こ れ は 当 時 水 産 学 会 誌 な
どで広告や情報が寄せられておりま
した、エレクトロフィッシングです。
オオクチバスの違法放流に対抗す
る た め に 、駆 除 目 的 と す る バ ス の み を
取 り 上 げ 、在 来 魚 を 再 放 流 す る と い う
新たなオオクチバスの駆除方法が考
案 さ れ ま し た 。2003 年 に 北 海 道 庁 は 、
電気ショッカーボートの購入を全国
で 初 め て 計 画 し 、オ オ ク チ バ ス 等 の 駆
除対策を立ち上げました。
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< ス ラ イ ド 12>
北米のスミスルート社から販売さ
れている設置型エレクトリカルショ
ッ カ ー 2.5GPP 型 で す 。 こ れ に 国 産 の
日軽産業株式会社が受注生産する組
み 立 て 式 FRP ボ ー ト と 合 わ せ て 、い わ
ゆる北海道式電気ショッカーボート
を設計して使用しました。見積金額
は 、 488 万 3 千 円 で す 。
< ス ラ イ ド 13>
エレクトロフィッシングは英国で
最 初 に 考 案 さ れ 、 1863 年 に 特 許 が 取
得 さ れ て い ま す 。 1950 年 代 ま で は 実
用 化 は さ れ ま せ ん で し た 。魚 体 の 感 電
する強さは主に次の要素が関連しま
す 。電 圧 、電 極 の 形 状 、水 質 と 魚 の 電
気 伝 導 度 の 変 化 、水 温 、川 床 の 電 導 度 、
魚との距離、魚のサイズ及び種類で
す。感電効果が高くなるということ
は 、魚 体 と 水 の 電 気 伝 導 度 が 同 じ 場 合
に最も電気が流れ感電します。
< ス ラ イ ド 14>
電気ショッカーボートの利点を整
理すると、次の 3 項目に分かれます。
バ ス 類 の 生 息 調 査 の 効 率 化:捕 獲 効
率 が 高 い の で 、調 査 時 間 の 短 縮 や 刺 網
の損傷等のコスト軽減が図られます。
内水面漁業や生態系への配慮が可
能:感 電 し て 捕 獲 さ れ た 在 来 魚 を 再 放
流 で き る の で 、刺 網 に 比 べ て 混 獲 を 防
ぐことができます。
違法放流に対する最大の抑止手
段:こ れ は 捕 獲 効 率 が 高 い 電 気 シ ョ ッ
カーボートによる取組を示すことで、
最大の違法放流防止手段になり得る
ということです。
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< ス ラ イ ド 15>
実際に南幌町のオオクチバスでは、
電気ショッカーボートの導入により
捕 獲 効 率 が 進 み 、2004 年 63 尾 、2005
年 8 尾 、 2006 年 は 3 回 連 続 し て 捕 獲
が あ り ま せ ん で し た 。2007 年 5 月 の 4
回目の調査でも捕獲が 0 尾というこ
と で 、こ こ で は も う 生 息 し て い な い と
判断しました。
< ス ラ イ ド 16>
以 上 の こ と か ら 、北 海 道 庁 は 、オ オ
クチバスは生息しないということで、
これまで行ってきた道内 3 カ所(円
沼、余市、南幌)の駆除を終了して、
都道府県単位では全国で初めてオオ
ク チ バ ス 、コ ク チ バ ス の 一 掃 宣 言 を 行
っ て い ま す 。 2001 年 の バ ス 初 確 認 以
来 、こ れ ま で に 延 べ 7 年 間 を 要 し ま し
た。
今 後 の 対 応 と し て 、地 元 遊 漁 者 等 か
らの密放流や釣獲などの情報収集に
努 め 、情 報 が 寄 せ ら れ た 場 合 は 、関 係
者との協議により早急に対策を講じ
ることにしています。
函館五稜郭濠におけるブルーギル対策(2007年~)
水温が高いほど
効率は下がる
水温が高いほど
効率は上がる
春秋期水温と水草繁茂でショッカーボート操業
期間が限定されるため釣獲駆除を開始する
ブルーギルのCPUEと累積捕獲数の関係
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< ス ラ イ ド 17>
一 方 、北 海 道 内 で の ブ ル ー ギ ル の 生
息は函館市五稜郭濠の一カ所に限定
さ れ て い ま す 。こ こ か ら 持 ち 出 さ れ て
大沼等の他の湖沼に違法放流される
と 大 き な 問 題 と な る た め 、北 海 道 は 封
じ 込 め よ り も 駆 除 を 選 択 し ま し た 。こ
れは環境省が特定外来生物に指定し
たということを受けてです。
ブ ル ー ギ ル 駆 除 効 果 を 、電 気 シ ョ ッ
カ ー ボ ー ト と 竿 釣 り に 分 け 、水 温 に 対
す る CPUE の 変 化 で 比 較 し ま し た 。 電
気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト は 水 温 が 20℃ 以
上 に な る と 、著 し く ブ ル ー ギ ル の 捕 獲
効 率 が 下 が り ま す 。一 方 、竿 釣 り で は
20 ℃ 以 上 に な る と 電 気 シ ョ ッ カ ー ボ
ー ト よ り も 効 率 が 上 が り ま す 。こ の 2
つの方法を組み合わせて五稜郭堀で
はブルーギルの駆除を行っています。
夏の水温上昇期は水草繁茂が著し
く な り 、シ ョ ッ カ ー ボ ー ト な ど の 運 航
の 邪 魔 に な り ま す 。 そ こ で 2011 年 、
函館市が主体となって市民ボランテ
ィ ア を 募 り 、ブ ル ー ギ ル の 駆 除 事 業 を
開 始 し ま し た 。 累 積 捕 獲 数 と CPUE の
関 係 を 見 る と 、生 息 数 が 年 々 減 っ て き
ていることが分かります。
< ス ラ イ ド 18>
2005 年 か ら 北 海 道 は 水 産 庁 委 託 の
健全な内水面生態系復元等推進事業
に 参 加 し ま し た 。電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー
トによる抑制技術の開発を担当して
い ま す 。 2006 年 に は 環 境 省 皇 居 外 苑
管 理 事 務 所 が 、北 海 道 と 同 型 の ボ ー ト
を導入したので、水産庁の了解を得
て、技術指導を行っています。
こ の 事 業 の 中 で は 、電 気 シ ョ ッ カ ー
ボ ー ト に よ る 個 体 数 推 定 、親 魚 の 生 息
尾 数 と 新 規 加 入 量 の 関 係 、オ オ ク チ バ
ス・ブルーギル駆除による減少過程
( 抑 制 効 果 )、 あ る い は 駆 除 効 率 の 変
化 を 調 べ て い ま す 。ま た 、在 来 魚 の 一
部 を 捕 獲 し て 、種 類 組 成 や 生 息 数 の 変
化を調査しています。
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< ス ラ イ ド 19>
2006 年 か ら 皇 居 外 苑 堀 に お け る 、
電気ショッカーボートによるオオク
チバスとブルーギルの捕獲数の変化
を 示 し ま し た 。 オ オ ク チ バ ス は 2006
年の駆除開始後 5 年目で 2 尾しか獲れ
な く な り 、そ の 後 3 年 以 上 捕 獲 さ れ て
い ま せ ん の で 、皇 居 外 苑 堀 で は オ オ ク
チバスの完全駆除に成功したと考え
られます。
一 方 、ブ ル ー ギ ル の 駆 除 効 果 は 確 実
に 上 が っ て い ま す が 、個 体 数 が 一 旦 少
なくなっても僅かに残った親魚から
生 ま れ る 多 数 の 稚 魚 が 確 認 さ れ 、い わ
ゆる個体数のリバウンドが 8 年間に 2
回 見 ら れ て い ま す 。根 絶 ま で に は も う
少し時間がかかると予想されていま
す。
< ス ラ イ ド 20>
2007 年 か ら 2011 年 ま で の 5 か 年 計
画 で 水 産 庁 の 委 託 事 業 に よ り 、電 気 シ
ョッカーボートによる駆除方法は全
国 的 に 技 術 移 転 を 求 め ら れ ま し た 。こ
の 水 産 庁 委 託 事 業「 外 来 魚 抑 制 管 理 技
術 開 発 事 業 」を 開 始 し た 当 初 、電 気 シ
ョッカーボートを所有していた機関
は 、北 海 道 1 機 関 の み で し た 。そ こ で 、
本州各県と協力して電気ショッカー
ボートによるバス類の生息数抑制管
理技術の開発課題に取り組みました。
パ ネ ル( ス ラ イ ド )に は そ の 研 究 課 題
と主な調査場所と研究機関名を記し
ております。
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< ス ラ イ ド 21>
電気ショッカーボートを導入した
組 織 団 体 を 示 し ま し た 。 2004 年 、 北
海道が電気ショッカーボートで外来
魚 調 査 を 開 始 し て 以 降 、皇 居 外 苑 管 理
事務所が続いて導入したのを契機に、
駆除技術として浸透しているように
思います。
ま た 、新 た な 情 報 と し て 、群 馬 県 の
ヘラブナ釣り堀業者の方から電話を
い た だ き 、 今 月 11 月 か ら 電 気 シ ョ ッ
カ ー ボ ー ト を 導 入 し て 、駆 除 を 開 始 し
た と い う 連 絡 を 受 け ま し た 。電 気 シ ョ
ッ カ ー ボ ー ト の 規 模 は 、滋 賀 県 が 最 近
導 入 し た 、我 々 の 使 っ て い る 2.5 よ り
大 型 の 5.0GPP 型 で す 。 個 人 で 最 初 の
購 入 実 績 に な る と の こ と で 、こ れ か ら
民間に普及するはずみになると思い
ます。
< ス ラ イ ド 22>
こ の よ う に 、電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト
は効率的な外来魚捕獲方法として注
目 を 浴 び 、導 入 す る 事 例 が 増 え て い ま
す 。た だ し 、外 来 魚 駆 除 を 目 的 と し た
電気ショッカーボートの使用は認め
ら れ て い ま せ ん 。こ れ は 学 術 的 調 査 目
的を持った特別採捕許可が必要とな
る た め で す が 、こ れ が 普 及 の 制 約 と な
っていると考えられます。
先の群馬県のヘラブナ業者の事例
では特別採捕許可証が販売業者から
求 め ら れ 、確 認 を し た 上 で 販 売 さ れ た
ということが示されています。
電気ショッカーボートには限界が
あ り 、広 い エ リ ア で の 効 率 的 な 捕 獲 方
法 と い う こ と で は 、ま だ 課 題 が 多 い と
考 え ま す 。電 気 シ ョ ッ ク の 在 来 魚 へ の
影響評価も今後重要な問題です。ま
た 、在 来 魚 の 生 息 回 復 に よ る 外 来 魚 抑
制 効 果 も 重 要 な 課 題 に な り ま す 。こ れ
ら の 課 題 は 2012 年 か ら 3 年 計 画 で 水
総研が窓口になっている委託事業の
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中 で 、こ こ に 示 し た 機 関 が 、外 来 魚 抑
制管理技術高度化事業の中で取り組
んでいます。
< ス ラ イ ド 23>
最 後 に な り ま し た が 、本 調 査 研 究 は
2005 年 以 降 に 受 託 し た 、 内 水 面 外 来
魚管理対策事業等々における予算で
継続してきました。
ま た 、こ の 事 業 の 参 画 に あ た り 、水
産総合研究センター 片野修博士、滋
賀県立琵琶湖博物館 中井克樹博士
に は 、終 始 、有 益 な ご 助 言 、ご 指 導 を
賜 り ま し た 。こ れ ま で 北 海 道 内 外 に お
け る 共 同 調 査 に お い て 、多 く の 関 係 機
関の皆様に多大なるご協力とご指導
を い た だ き ま し た 。皆 様 方 に 厚 く 御 礼
申 し 上 げ ま す 。近 い 将 来 、日 本 国 内 各
地の様々な場所でバスやブルーギル
が 減 少 し 、さ ら に 在 来 魚 が 復 活 す る こ
と を 祈 念 い た し ま し て 、本 賞 授 賞 の 資
料説明を終わります。
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[関係 質疑]
熊本県(梅崎所長)
水温との関係を教えて欲しいのですが、五稜郭の堀では水温が高くなると漁獲効率
が 下 が る の で 、 20℃ 以 上 の 時 に は 釣 り で や っ た と の 話 で す が 、 そ の 後 の 皇 居 の お 堀 で
は、冬場で水温が下がる時期に電気ショッカーを使われたということでしょうか。
北海道(工藤主任研究員)
皇居でも夏場にやったのですが、やはりブルーギルは逃げるのです。そこで、やは
り 東 京 都 の 水 温 変 化 に 合 わ せ て 北 海 道 と 同 様 の 、約 17℃ 以 下 の 時 期 を 目 指 し て 駆 除 を
行 っ て お り ま す 。従 っ て 、11 月 上 旬 か ら 翌 年 4 月 上 旬 ま で で 、夏 場 は 行 っ て い ま せ ん 。
鳥取県(尾田研究員)
以前、鳥取でも実演していただいて、効果の程はすごいなと感じているのですが、
外来魚問題が深刻な琵琶湖で今 2 隻目を導入されたということですけれども、その運
用状況と効果の程を教えていただきたい。
北海道(工藤主任研究員)
私が述べるよりも、澤田場長が来られているので澤田場長から お願いします。
滋賀県(澤田場長)
北海道の工藤さんから北海道の船をお借りして、最初何年かうちの 方でやらせてい
ただき、非常に効果があるということを確認したので、行政当局もそれを認め、昨年
度 1 隻、今年度 1 隻、同じ規模ですが国内最大級の 2 隻を導入しております。
琵琶湖の場合は大津市に琵琶湖大橋という橋があり、それより北側を北湖、南側を
南湖と呼んでいますが、南湖の方に外来魚が多いので、2 隻は南湖の沿岸部、特に産
卵期と夏場は水温が上がり過ぎるので、秋から冬にかけ稼働しています。大体多い時
は 1 日 に バ ス だ け で 1 隻 で 200 キ ロ 以 上 、 今 2 隻 で 稼 働 し て い る の で 、 平 均 し て 200
キロは駆除しているのではないかと思います。非常に効果があると思われますので、
これからその影響がどういうふう出るのか、併せてモニタリングしていくことに して
います。
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