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- 82 - [北海道]「電気ショッカーボートによる効率的外来魚駆除方法の
[ 北 海 道 ]「 電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト に よ る 効 率 的 外 来 魚 駆 除 方 法 の 開 発 と 普 及 」 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 さけます・内水面水産試験場 工藤主任研究員 < ス ラ イ ド 1> ただいまご紹介にあずかりました、 独立行政法人北海道立総合研究機構 水 産 研 究 本 部 さ け ま す・内 水 面 試 験 場 の 工 藤 で す 。そ れ で は 、電 気 シ ョ ッ カ ーボートによる効率的外来魚駆除方 法の開発と普及について概要の説明 を行います。 北 海 道 で は 2000 年 以 前 に は オ オ ク チバスとコクチバスの生息は確認さ れ て い ま せ ん で し た 。 し か し 、 2001 年からは北海道内において生息が確 認されだしたオオクチバスとコクチ バスを根絶するまでの対応、特に 2004 年 か ら 導 入 し た 電 気 シ ョ ッ カ ー ボートによる駆除方法と技術移転の 経緯を振り返ります。 < ス ラ イ ド 2> 北 海 道 で は 2000 年 か ら オ オ ク チ バ ス 、コ ク チ バ ス の 生 息 確 認 調 査 を 開 始 し て い ま し た が 、 2001 年 に 初 め て オ オクチバスを確認しました。調査は 2007 年 ま で に 2 市 、 12 町 村 で 行 い ま し た 。最 初 に オ オ ク チ バ ス と コ ク チ バ ス の 2 種 が 確 認 さ れ た の は 、道 南 の 森 町 の 円 沼 1 カ 所 で す 。オ オ ク チ バ ス 1 種のみが確認されたのは余市町の余 市ダム湖と南幌町の南幌親水公園の 沼 の 2 カ 所 で す 。こ れ ま で に 北 海 道 内 では合計 3 カ所でバスが確認されて い ま す 。 こ の 3 カ 所 で 2007 年 ま で に 確 認 さ れ た 尾 数 は 、オ オ ク チ バ ス の 成 魚 26 尾 、 幼 魚 124 尾 、 稚 魚 240 尾 、 コクチバス成魚 1 尾でした。 - 82 - < ス ラ イ ド 3> バスが確認された最初の駆除の状 況をご紹介します。 円 沼 (ま る ぬ ま)は 大 沼 国 定 公 園 の 2 ヘ ク タ ー ル 程 の 堰 き 止 め 湖 で す 。こ こから流出する河川は大沼本湖に流 れ て い ま す 。大 沼 は 北 海 道 の ワ カ サ ギ の 産 地 で 、 30~ 40 ト ン の 生 産 地 で 有 名 で す が 、バ ス の 生 息 数 拡 大 に よ る 食 害 が 懸 念 さ れ 、 2002 年 、 地 元 役 場 や 大 沼 漁 業 協 同 組 合 、地 域 が 一 体 と な っ て、バスの駆除作業を開始しました。 ま ず 、バ ス の 流 出 を 防 止 す る た め 沼 の 周 囲 に 土 嚢 を 積 み 重 ね 、大 沼 本 湖 に バスが逃げ出さないような対策を立 て ま し た 。ま た 当 時 、神 奈 川 県 水 産 技 術センターで公表されていた人工産 卵 床 、こ れ を 用 い て バ ス の 産 卵 を 誘 導 できないかということで試みました が、効果はありませんでした。 さ ら に 、当 時 山 梨 県 で 用 い ら れ て い た 刺 網 、あ る い は 長 野 県 で 用 い ら れ た 光 物 、こ れ を 付 け る と バ ス が 誘 導 さ れ 網 に 掛 か る と い う こ と を 習 い 、行 い ま し た が 、や は り バ ス は 掛 か り ま せ ん で した。 一 方 、 こ の 前 年 の 2000 年 、 札 幌 近 郊 の あ る 有 名 な 大 型 書 店 で は 、北 海 道 内ではバス釣りができる場所がない に も 関 わ ら ず 、バ ス 釣 り の 関 連 雑 誌 が 多く売られているという事実が確認 されています。 - 83 - < ス ラ イ ド 4> 森町の円沼でのバス生息確認が収 束 し て い な い 中 、オ オ ク チ バ ス の 違 法 放 流 が 拡 大 し ま す 。2002 年 7 月 に は 、 余市ダム湖で新たな釣り人の情報が 持 ち 込 ま れ 、こ の 情 報 を 受 け た バ ス 調 査で新たにオオクチバス 2 尾を確認 し ま し た 。 一 方 、 2002 年 8 月 に は 内 水面水産試験場で飼育していたオオ ク チ バ ス で 、初 め て オ オ ク チ バ ス の 越 冬や自然産卵を実験下において確認 し て い ま す 。さ ら に そ の 年 、2002 年 8 月 初 め に は 余 市 ダ ム 湖 で 、道 内 で は 初 めてオオクチバスの稚魚を大量に発 見 す る こ と に な り 、ダ ム 湖 内 で の オ オ ク チ バ ス 稚 魚 を 捕 獲 す る 一 方 、生 息 状 況を監視することにしました。 < ス ラ イ ド 5> 余市ダム湖においてオオクチバス 稚 魚 の 生 息 は 確 認 で き ま し た が 、そ れ ら 稚 魚 の 由 来 が 、同 じ ダ ム 湖 内 で 産 卵 し て 繁 殖 し た も の か 、他 の 場 所 か ら 移 植 さ れ た も の か が 課 題 と な り ま す 。そ こ で 、オ オ ク チ バ ス や そ の 餌 と な る 動 物 の 筋 肉 中 の 炭 素・窒 素 の 安 定 同 位 体 比 を 測 定 し た 結 果 、余 市 ダ ム に 生 息 す る 個 体 は 、こ こ で 生 育 し て い な い と い うことが安定同位体比の濃縮係数を 使 っ た 配 置 で 分 か り 、他 か ら 持 ち 込 ま れたことが推定されました。 こ の 技 術 は 、当 時 、環 境 省 を 中 心 と したオオクチバス等を特定外来生物 の 指 定 に 関 す る 議 論 の な か で 、オ オ ク チバス拡散要因の証拠の資料として 採 用 さ れ 、環 境 省 の ホ ー ム ペ ー ジ に も この文献が採用されています。 - 84 - < ス ラ イ ド 6> 2002 年 9 月 上 旬 か ら 10 月 下 旬 に 余 市 ダ ム で は 、合 計 223 尾 の 稚 魚 を 確 認 し て い ま す 。こ れ ら の 時 期 別 の 体 重 変 化 を 示 し ま し た ( 左 図 )。 9 月 下 旬 と 比 較 し て 10 月 以 降 の 体 サ イ ズ が 小 型 化 し て い ま す 。右 図 は 、時 期 別 の 肥 満 度 の 変 化 で 、平 均 肥 満 度 は 9 月 上 旬 か ら 10 月 中 旬 に 減 少 し て い ま す 。 実 際 にバス稚魚の胃内容物を見るために 解 剖 を 行 っ た と こ ろ 、稚 魚 は 空 胃 の 個 体 が 多 か っ た こ と か ら 、余 市 ダ ム 湖 に は あ ま り 馴 染 め な か っ た 様 子 で す 。こ のような肥満度の低下から余市ダム での越冬の可能性を疑問視する見方 も強まりました。 < ス ラ イ ド 7> 余市ダム湖の越冬期の水温環境を 調 べ ま し た 。月 の 平 均 水 温 は 10 月 の 10.5℃ か ら 12 月 に は 0℃ に 変 化 し て 、 オ オ ク チ バ ス の 活 性 が 低 下 す る 5℃ 以下の低水温は翌年 4 月まで 4 か月以 上続いたと推定しています。 翌 2003 年 春 、 5 月 か ら 9 月 ま で 5 回 、延 べ 12 名 で 合 計 17 時 間 の 潜 水 調 査 を 行 い ま し た 。潜 水 に よ り 生 息 を 確 認 し た 水 生 動 物 は 、ニ ジ マ ス・ア メ マ ス・ハ ナ カ ジ カ・ス ジ エ ビ で す が 、オ オクチバスの稚魚は確認できません でした。 こ れ ら の こ と か ら 、オ オ ク チ バ ス の 稚魚は余市ダム湖では越冬に失敗し た と 考 え ら れ ま し た 。し か し 、今 回 見 られた稚魚のサイズよりも大型の種 苗 が 違 法 放 流 さ れ る と 越 冬 、定 着 す る 可能性も考えられました。 - 85 - < ス ラ イ ド 8> オオクチバスは札幌市近郊の南幌 町 に も 生 息 が 拡 大 し ま し た 。2001 年 8 月 、南 幌 温 泉 の 沼 に オ オ ク チ バ ス が い る と の 電 話 情 報 が 寄 せ ら れ ま し た 。同 年 11 月 及 び 2002 年 9 月 に は 釣 り 人 か ら の 捕 獲 情 報 が あ り ま し て 、2002 年 9 月 に は 調 査 の 刺 網 に よ っ て 、我 々 が オ オクチバスを捕獲しました。 こ れ ら を 受 け 、2002 年 10 月 に は 北 海 道 庁 、南 幌 町 な ど の 関 係 機 関 か ら な るブラックバス検討会議を立ち上げ て対策を協議しました。その後も 2003 年 に 入 っ て か ら 釣 獲 情 報 が 寄 せ ら れ 、 2003 年 8 月 に は 刺 網 調 査 に よ りオオクチバスを大量に捕獲したと い う こ と を 確 認 す る に 至 り 、関 係 機 関 に 南 幌 町 ヘ ラ ブ ナ 同 好 会 、あ る い は 報 道関係も含めてオオクチバス検討会 議が開催されて対策を協議したとこ ろです。 < ス ラ イ ド 9> パ ネ ル( ス ラ イ ド )の 左 上 は 上 空 か ら見た南幌親水公園を俯瞰した画像 で す 。右 図 に は 南 幌 親 水 公 園 に お け る 刺網の設置場所と捕獲数を示してい ま す 。こ の 図 は オ オ ク チ バ ス の 捕 獲 数 の 分 布 図 で す が 、よ り 道 路 に 近 い 方 に オオクチバスが偏在していることが 示 さ れ て い ま す 。こ の 刺 網 の 駆 除 に よ って、オオクチバスの捕獲が進んで、 オオクチバスの残留する数が少なく なってきたということが分かります。 こ の よ う に 、オ オ ク チ バ ス の 刺 網 に よ る 駆 除 は 進 み ま し た が 、思 わ ぬ 弊 害 も生まれています。 - 86 - < ス ラ イ ド 10> 2003 年 当 時 は 、 外 来 魚 の 駆 除 方 法 は 、刺 網 で 捕 獲 す る こ と が 確 実・最 良 の 方 法 と 考 え て い ま し た が 、そ の 際 に 大 量 の フ ナ 類 、コ イ 、ナ マ ズ 等 の 在 来 種 が 巻 き 添 え に な り ま す 。混 獲 個 体 数 は 2400 尾 以 上 に な り ま し た 。 こ の う ち 、全 捕 獲 数 の 中 で 実 際 に 捕 獲 し た オ オ ク チ バ ス は 92 尾 な の で 、 全 体 の 3.8% に し か 過 ぎ ま せ ん 。 < ス ラ イ ド 11> 以 上 の こ と か ら 、外 来 魚 の 駆 除 に は 生 息 数 が 少 な い う ち に 、徹 底 的 に 駆 除 を行うことが効果的と考えられます。 し か し 、徹 底 的 な 駆 除 は 、在 来 種 に も 影響を与えることが明らかになりま し た 。そ し て 、在 来 魚 へ の 影 響 を 最 小 限にする必要性が生じました。そこ で 、電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト と い う 電 気 ショックにより一時的に麻酔された 魚類を捕獲するという機器にたどり 着 き ま し た 。こ れ は 当 時 水 産 学 会 誌 な どで広告や情報が寄せられておりま した、エレクトロフィッシングです。 オオクチバスの違法放流に対抗す る た め に 、駆 除 目 的 と す る バ ス の み を 取 り 上 げ 、在 来 魚 を 再 放 流 す る と い う 新たなオオクチバスの駆除方法が考 案 さ れ ま し た 。2003 年 に 北 海 道 庁 は 、 電気ショッカーボートの購入を全国 で 初 め て 計 画 し 、オ オ ク チ バ ス 等 の 駆 除対策を立ち上げました。 - 87 - < ス ラ イ ド 12> 北米のスミスルート社から販売さ れている設置型エレクトリカルショ ッ カ ー 2.5GPP 型 で す 。 こ れ に 国 産 の 日軽産業株式会社が受注生産する組 み 立 て 式 FRP ボ ー ト と 合 わ せ て 、い わ ゆる北海道式電気ショッカーボート を設計して使用しました。見積金額 は 、 488 万 3 千 円 で す 。 < ス ラ イ ド 13> エレクトロフィッシングは英国で 最 初 に 考 案 さ れ 、 1863 年 に 特 許 が 取 得 さ れ て い ま す 。 1950 年 代 ま で は 実 用 化 は さ れ ま せ ん で し た 。魚 体 の 感 電 する強さは主に次の要素が関連しま す 。電 圧 、電 極 の 形 状 、水 質 と 魚 の 電 気 伝 導 度 の 変 化 、水 温 、川 床 の 電 導 度 、 魚との距離、魚のサイズ及び種類で す。感電効果が高くなるということ は 、魚 体 と 水 の 電 気 伝 導 度 が 同 じ 場 合 に最も電気が流れ感電します。 < ス ラ イ ド 14> 電気ショッカーボートの利点を整 理すると、次の 3 項目に分かれます。 バ ス 類 の 生 息 調 査 の 効 率 化:捕 獲 効 率 が 高 い の で 、調 査 時 間 の 短 縮 や 刺 網 の損傷等のコスト軽減が図られます。 内水面漁業や生態系への配慮が可 能:感 電 し て 捕 獲 さ れ た 在 来 魚 を 再 放 流 で き る の で 、刺 網 に 比 べ て 混 獲 を 防 ぐことができます。 違法放流に対する最大の抑止手 段:こ れ は 捕 獲 効 率 が 高 い 電 気 シ ョ ッ カーボートによる取組を示すことで、 最大の違法放流防止手段になり得る ということです。 - 88 - < ス ラ イ ド 15> 実際に南幌町のオオクチバスでは、 電気ショッカーボートの導入により 捕 獲 効 率 が 進 み 、2004 年 63 尾 、2005 年 8 尾 、 2006 年 は 3 回 連 続 し て 捕 獲 が あ り ま せ ん で し た 。2007 年 5 月 の 4 回目の調査でも捕獲が 0 尾というこ と で 、こ こ で は も う 生 息 し て い な い と 判断しました。 < ス ラ イ ド 16> 以 上 の こ と か ら 、北 海 道 庁 は 、オ オ クチバスは生息しないということで、 これまで行ってきた道内 3 カ所(円 沼、余市、南幌)の駆除を終了して、 都道府県単位では全国で初めてオオ ク チ バ ス 、コ ク チ バ ス の 一 掃 宣 言 を 行 っ て い ま す 。 2001 年 の バ ス 初 確 認 以 来 、こ れ ま で に 延 べ 7 年 間 を 要 し ま し た。 今 後 の 対 応 と し て 、地 元 遊 漁 者 等 か らの密放流や釣獲などの情報収集に 努 め 、情 報 が 寄 せ ら れ た 場 合 は 、関 係 者との協議により早急に対策を講じ ることにしています。 函館五稜郭濠におけるブルーギル対策(2007年~) 水温が高いほど 効率は下がる 水温が高いほど 効率は上がる 春秋期水温と水草繁茂でショッカーボート操業 期間が限定されるため釣獲駆除を開始する ブルーギルのCPUEと累積捕獲数の関係 - 89 - < ス ラ イ ド 17> 一 方 、北 海 道 内 で の ブ ル ー ギ ル の 生 息は函館市五稜郭濠の一カ所に限定 さ れ て い ま す 。こ こ か ら 持 ち 出 さ れ て 大沼等の他の湖沼に違法放流される と 大 き な 問 題 と な る た め 、北 海 道 は 封 じ 込 め よ り も 駆 除 を 選 択 し ま し た 。こ れは環境省が特定外来生物に指定し たということを受けてです。 ブ ル ー ギ ル 駆 除 効 果 を 、電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト と 竿 釣 り に 分 け 、水 温 に 対 す る CPUE の 変 化 で 比 較 し ま し た 。 電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト は 水 温 が 20℃ 以 上 に な る と 、著 し く ブ ル ー ギ ル の 捕 獲 効 率 が 下 が り ま す 。一 方 、竿 釣 り で は 20 ℃ 以 上 に な る と 電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト よ り も 効 率 が 上 が り ま す 。こ の 2 つの方法を組み合わせて五稜郭堀で はブルーギルの駆除を行っています。 夏の水温上昇期は水草繁茂が著し く な り 、シ ョ ッ カ ー ボ ー ト な ど の 運 航 の 邪 魔 に な り ま す 。 そ こ で 2011 年 、 函館市が主体となって市民ボランテ ィ ア を 募 り 、ブ ル ー ギ ル の 駆 除 事 業 を 開 始 し ま し た 。 累 積 捕 獲 数 と CPUE の 関 係 を 見 る と 、生 息 数 が 年 々 減 っ て き ていることが分かります。 < ス ラ イ ド 18> 2005 年 か ら 北 海 道 は 水 産 庁 委 託 の 健全な内水面生態系復元等推進事業 に 参 加 し ま し た 。電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー トによる抑制技術の開発を担当して い ま す 。 2006 年 に は 環 境 省 皇 居 外 苑 管 理 事 務 所 が 、北 海 道 と 同 型 の ボ ー ト を導入したので、水産庁の了解を得 て、技術指導を行っています。 こ の 事 業 の 中 で は 、電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト に よ る 個 体 数 推 定 、親 魚 の 生 息 尾 数 と 新 規 加 入 量 の 関 係 、オ オ ク チ バ ス・ブルーギル駆除による減少過程 ( 抑 制 効 果 )、 あ る い は 駆 除 効 率 の 変 化 を 調 べ て い ま す 。ま た 、在 来 魚 の 一 部 を 捕 獲 し て 、種 類 組 成 や 生 息 数 の 変 化を調査しています。 - 90 - < ス ラ イ ド 19> 2006 年 か ら 皇 居 外 苑 堀 に お け る 、 電気ショッカーボートによるオオク チバスとブルーギルの捕獲数の変化 を 示 し ま し た 。 オ オ ク チ バ ス は 2006 年の駆除開始後 5 年目で 2 尾しか獲れ な く な り 、そ の 後 3 年 以 上 捕 獲 さ れ て い ま せ ん の で 、皇 居 外 苑 堀 で は オ オ ク チバスの完全駆除に成功したと考え られます。 一 方 、ブ ル ー ギ ル の 駆 除 効 果 は 確 実 に 上 が っ て い ま す が 、個 体 数 が 一 旦 少 なくなっても僅かに残った親魚から 生 ま れ る 多 数 の 稚 魚 が 確 認 さ れ 、い わ ゆる個体数のリバウンドが 8 年間に 2 回 見 ら れ て い ま す 。根 絶 ま で に は も う 少し時間がかかると予想されていま す。 < ス ラ イ ド 20> 2007 年 か ら 2011 年 ま で の 5 か 年 計 画 で 水 産 庁 の 委 託 事 業 に よ り 、電 気 シ ョッカーボートによる駆除方法は全 国 的 に 技 術 移 転 を 求 め ら れ ま し た 。こ の 水 産 庁 委 託 事 業「 外 来 魚 抑 制 管 理 技 術 開 発 事 業 」を 開 始 し た 当 初 、電 気 シ ョッカーボートを所有していた機関 は 、北 海 道 1 機 関 の み で し た 。そ こ で 、 本州各県と協力して電気ショッカー ボートによるバス類の生息数抑制管 理技術の開発課題に取り組みました。 パ ネ ル( ス ラ イ ド )に は そ の 研 究 課 題 と主な調査場所と研究機関名を記し ております。 - 91 - < ス ラ イ ド 21> 電気ショッカーボートを導入した 組 織 団 体 を 示 し ま し た 。 2004 年 、 北 海道が電気ショッカーボートで外来 魚 調 査 を 開 始 し て 以 降 、皇 居 外 苑 管 理 事務所が続いて導入したのを契機に、 駆除技術として浸透しているように 思います。 ま た 、新 た な 情 報 と し て 、群 馬 県 の ヘラブナ釣り堀業者の方から電話を い た だ き 、 今 月 11 月 か ら 電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト を 導 入 し て 、駆 除 を 開 始 し た と い う 連 絡 を 受 け ま し た 。電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト の 規 模 は 、滋 賀 県 が 最 近 導 入 し た 、我 々 の 使 っ て い る 2.5 よ り 大 型 の 5.0GPP 型 で す 。 個 人 で 最 初 の 購 入 実 績 に な る と の こ と で 、こ れ か ら 民間に普及するはずみになると思い ます。 < ス ラ イ ド 22> こ の よ う に 、電 気 シ ョ ッ カ ー ボ ー ト は効率的な外来魚捕獲方法として注 目 を 浴 び 、導 入 す る 事 例 が 増 え て い ま す 。た だ し 、外 来 魚 駆 除 を 目 的 と し た 電気ショッカーボートの使用は認め ら れ て い ま せ ん 。こ れ は 学 術 的 調 査 目 的を持った特別採捕許可が必要とな る た め で す が 、こ れ が 普 及 の 制 約 と な っていると考えられます。 先の群馬県のヘラブナ業者の事例 では特別採捕許可証が販売業者から 求 め ら れ 、確 認 を し た 上 で 販 売 さ れ た ということが示されています。 電気ショッカーボートには限界が あ り 、広 い エ リ ア で の 効 率 的 な 捕 獲 方 法 と い う こ と で は 、ま だ 課 題 が 多 い と 考 え ま す 。電 気 シ ョ ッ ク の 在 来 魚 へ の 影響評価も今後重要な問題です。ま た 、在 来 魚 の 生 息 回 復 に よ る 外 来 魚 抑 制 効 果 も 重 要 な 課 題 に な り ま す 。こ れ ら の 課 題 は 2012 年 か ら 3 年 計 画 で 水 総研が窓口になっている委託事業の - 92 - 中 で 、こ こ に 示 し た 機 関 が 、外 来 魚 抑 制管理技術高度化事業の中で取り組 んでいます。 < ス ラ イ ド 23> 最 後 に な り ま し た が 、本 調 査 研 究 は 2005 年 以 降 に 受 託 し た 、 内 水 面 外 来 魚管理対策事業等々における予算で 継続してきました。 ま た 、こ の 事 業 の 参 画 に あ た り 、水 産総合研究センター 片野修博士、滋 賀県立琵琶湖博物館 中井克樹博士 に は 、終 始 、有 益 な ご 助 言 、ご 指 導 を 賜 り ま し た 。こ れ ま で 北 海 道 内 外 に お け る 共 同 調 査 に お い て 、多 く の 関 係 機 関の皆様に多大なるご協力とご指導 を い た だ き ま し た 。皆 様 方 に 厚 く 御 礼 申 し 上 げ ま す 。近 い 将 来 、日 本 国 内 各 地の様々な場所でバスやブルーギル が 減 少 し 、さ ら に 在 来 魚 が 復 活 す る こ と を 祈 念 い た し ま し て 、本 賞 授 賞 の 資 料説明を終わります。 - 93 - [関係 質疑] 熊本県(梅崎所長) 水温との関係を教えて欲しいのですが、五稜郭の堀では水温が高くなると漁獲効率 が 下 が る の で 、 20℃ 以 上 の 時 に は 釣 り で や っ た と の 話 で す が 、 そ の 後 の 皇 居 の お 堀 で は、冬場で水温が下がる時期に電気ショッカーを使われたということでしょうか。 北海道(工藤主任研究員) 皇居でも夏場にやったのですが、やはりブルーギルは逃げるのです。そこで、やは り 東 京 都 の 水 温 変 化 に 合 わ せ て 北 海 道 と 同 様 の 、約 17℃ 以 下 の 時 期 を 目 指 し て 駆 除 を 行 っ て お り ま す 。従 っ て 、11 月 上 旬 か ら 翌 年 4 月 上 旬 ま で で 、夏 場 は 行 っ て い ま せ ん 。 鳥取県(尾田研究員) 以前、鳥取でも実演していただいて、効果の程はすごいなと感じているのですが、 外来魚問題が深刻な琵琶湖で今 2 隻目を導入されたということですけれども、その運 用状況と効果の程を教えていただきたい。 北海道(工藤主任研究員) 私が述べるよりも、澤田場長が来られているので澤田場長から お願いします。 滋賀県(澤田場長) 北海道の工藤さんから北海道の船をお借りして、最初何年かうちの 方でやらせてい ただき、非常に効果があるということを確認したので、行政当局もそれを認め、昨年 度 1 隻、今年度 1 隻、同じ規模ですが国内最大級の 2 隻を導入しております。 琵琶湖の場合は大津市に琵琶湖大橋という橋があり、それより北側を北湖、南側を 南湖と呼んでいますが、南湖の方に外来魚が多いので、2 隻は南湖の沿岸部、特に産 卵期と夏場は水温が上がり過ぎるので、秋から冬にかけ稼働しています。大体多い時 は 1 日 に バ ス だ け で 1 隻 で 200 キ ロ 以 上 、 今 2 隻 で 稼 働 し て い る の で 、 平 均 し て 200 キロは駆除しているのではないかと思います。非常に効果があると思われますので、 これからその影響がどういうふう出るのか、併せてモニタリングしていくことに して います。 - 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