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宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを 可視化するソリューション

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宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを 可視化するソリューション
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを
可視化するソリューション・サービス事例
Solutions and Services Monitoring Work Processes by
Tracking Forms and Documents
要
旨
【キーワード】
人が関わる業務には、帳票や書類を回付しながら仕
ファストサービス、スマートビズトレース、ト
事を行う事務プロセスがある。富士ゼロックスはこの
レーサビリティ、業務プロセス、ヒューマンワー
ような業務プロセスに対して、製造業の生産管理で
ク、帳票、POP
POP(Point Of Production)として知られているシ
ステムの適用を試みた。POPの考え方を取り入れるこ
とで、事務業務においても、現場の活動状況を反映し
たデータをリアルタイムに収集・管理でき、業務状況
の可視化と業務改善のPDCAサイクルを回すことが
できる。しかし、POPの導入は一般に業務事情に合わ
せた個別システム開発を伴い、高額な投資が必要とな
るため、事務業務にはほとんど導入されていない。そ
こで、宅配便のように帳票を追跡する帳票トレーサビ
リティと、ビッグデータ管理に用いられる非構造化
データベースとを用いて、個別システム開発を抑え、
安価に導入可能な事務業務向けPOPを考案した。これ
を、社内の事務業務に適用し、業務プロセスのスピー
ド向上と品質向上に成功した事例を紹介する。
Abstract
【Keywords】
FastService, SmartBizTrace, traceability, work
process, human work, business form, POP.
執筆者
川邉 惠久(Shigehisa Kawabe)
國武 節(Setsu Kunitake)
鈴木 明(Akira Suzuki)
大橋 宏光(Hiromitsu Ohashi)
商品開発本部 システム企画部
(System Platform Strategy & Planning, Product
Development Group)
166
In office work, people pass around forms and
documents. This is where Fuji Xerox applied a system
that is known as the POP (Point of Production) in the
manufacturing industry’s production control process.
Even in office work, this system offers a way to
monitor operational status, implement the PDCA
cycle, and improve operations through collecting and
managing real-time data showing the actual work
progress. However, the POP has rarely been
implemented in office work due to a hefty cost needed
to develop a customized system tailored to each
client's requirements. Fuji Xerox thereby devised a
low-cost POP system for office work that does not
require any customized development. This was made
possible by combining traceability that tracks forms
and documents in the same way as for those used for
package deliveries, with unstructured database used
for big data management. This paper introduces an
example in which we adopted this system to the
in-house office work processes and successfully
improved both speed and quality of the operations.
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
1. はじめに
2. 問題点と解決に向けたアプローチ
オフィスには帳票や書類(以降、まとめて帳
2.1
事務業務プロセスの現状と問題点
票と記す)を回付して仕事を行う、さまざまな
筆者らは、自社業務やお客様の業務の中で、
事務業務がある。このような業務の生産性や業
人が帳票を回付する事務業務プロセスに着目し、
務品質を改善するため、帳票を電子化し、帳票
ヒアリングや分析を行った。その結果、事務業
*1
の授受をワークフローシステム
で管理する方
法が提案されている。
しかし、ワークフローシステムでは十分な改
務プロセスには、次のような共通する問題点が
あり、いずれも有効な施策を打つのが難しいこ
とがわかった。
善効果を上げられない場合がある。たとえば、
紙帳票を電子化するスキャン作業の工数が大き
な負担になる場合や、重要物の授受の証しとし
問題1:処理の遅延や滞留が検知できず業務品
質が低下する
て紙帳票をなくせない場合には、電子化帳票へ
の移行は容易ではない。
IT化が遅れている業務プロセスでは、回付さ
また、紙帳票を扱うときの生産性は、まだま
れるべき帳票が担当者のミスで遅延や滞留をし
だ電子帳票のそれに勝る場合が多いため、電子
ていても、検知できない場合が多い。その結果、
化する前と同じ生産性を出せない場合もある。
処理の締め切り日に間に合わない、などの致命
このような事情で、IT化から取り残された業務
的な問題が発生することがある。このような問
が多くある。
題は、特に納期遅延が許されない業務では、業
筆者らは、このような現状を鑑み、製造業の
務品質に深刻な影響がある。
生産管理に用いられている「POP:現場データ
管理システム」の考え方*2を事務業務プロセス
に適用する方法を考案した。その上で、現状の
問題2:人員配置のムリ・ムダ・ムラが
避けられない
業務のやり方を大きく変えずに業務プロセスを
可視化・整流化するシステム(SmartBizTrace)
を開発した。
業務フローの後工程では、前工程から回付さ
れる帳票の量を、事前に把握することができな
このシステムは、特に事務業務プロセスにお
い。このため、作業者のシフト計画は勘と経験
いて、個別の事情で発生するカスタマイズのた
に頼って作成され運用されている。予測と実際
めの開発費用を抑えて、安価に導入できるよう
の業務量との間に大きな乖離があった場合、作
にすることを狙っており、これにより、現場主
業者に待ち時間が発生したり、逆に、時間外の
導で業務プロセスの生産性と品質の向上につな
業務で補わなければならなくなったりする。
がる改善活動を可能にする。
本稿では、まず、事務業務プロセスでの問題
点と、製造業での問題点との類似性を述べ、事
問題3:付帯作業のために本来業務の生産性が
低くなる
務業務プロセスへのPOPの適用を提案する。次
に、事務業務へPOPを適用した事例を紹介し、
帳票を回付する業務では、重要書類の授受確
有効性を検証した結果を示す。最後に、事務業
認を確実に行うため、送付リストの作成や、授
務へPOPを適用するうえでの課題とそれを解
受台帳への記録が行われている。また、手続き
決するための技術を説明する。
に不備があった場合には、eメールや電話で連絡
するとともに、不備通知書の作成や、返却台帳
*1
ワークフローシステム:電子化された申請書などを、あ
らかじめ登録したルート(作業手順)に従って、回付し
決裁等の業務を支援するシステムのこと
*2
POP:Point Of Production systemの略。物品販売に
おけるPOS(Point Of Sale system)の考え方を、製造
現場に取り入れたものと考えられる
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
の記録などの作業が発生している。
それ以外にも、他部門からの進捗の問い合わ
せに対応するために、担当者に確認したり現物
帳票を探したりすることも多い。さらに、週次・
167
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
月次での集計作業も行っている。これらの作業
は、単純だが手間がかかるものが多く、生産性
への影響は見過ごすことができない。
3. 事務業務へのPOP適用事例
富士ゼロックスサービスクリエイティブは、
富士ゼロックスおよび販売会社における契約確
2.2
生産管理での類似課題
認や請求、代金回収を代行する売上計上事務
筆者らは、こうした問題点が、かつての製造
サービスを行っている。事務の効率化・省力化・
業において直面していた問題点(図1)と類似
ス ピ ー ド ア ッ プ を 狙 い 、 2013 年 に
していることに気づいた。
SmartBizTraceシステム(以降、新システム)
1)
森野[文献 ]によると、IT化が遅れていた製造
を導入した。
現場では、製造品の種類や個数、不良品発生な
どの作業実績報告が紙の日報で行われていた。
3.1
導入前の状況
このため、作業の記録、報告や集計に手間がか
売上計上業務は、東西2カ所の事務センター
かっていた。その上、欠陥の発生のような重要
に集約されており、全国の営業拠点と事務セン
な問題が管理者にすぐには伝わらず、対処が遅
ターとの間で、契約書などの重要書類をやり取
れてしまうことがあった。その結果、不良原因
りしている(図2)。販売後は、営業拠点から事
の特定に着手したときには、発生から時間が経
務センターへ書類が送付されるだけだが、内容
過していて分析に必要なデータが集められない、
に不備があった場合など、営業担当者に返却し
というような問題が起きていた。
て是正してもらうこともある。
また、生産状況をリアルタイムに把握できな
新システムの導入前(図3)は、送付時には
いため、機械、作業者などの割り付けや作業の
Excel®などで送付リストを作成して同封し、受
優先順位づけを、精度よく行うことができない、
領時には送付リストと送付書類とを突き合わせ
2)
という問題点があった(野口[文献 ])。
て合致していることを目視で確認していた。ま
そのような現場にPOPを導入したことで、生
た、受け取った書類の番号や商談名などを台帳
産状況がリアルタイムに把握できるようになり、
へ入力して受領記録を残していた。送付された
従業員の意識が改革されたことも手伝って、効
書類に不備があった場合には、不備理由通知書
率を15%向上でき、同時にPDCAの短サイクル
に必要事項をタイプ入力して添付し、さらに、
化も達成できた、と報告されている。
急ぎの場合には電話やeメールで不備内容を連
このように、POPには、工場や生産の現場で
絡していた。
発生するデータを、発生源である「機械・設備・
しかし、全国の営業拠点から送付される売上
作業者・製造品」から採取し、リアルタイムに
計上申請書は1日に1万件を超すこともあり、授
作業者や管理者に提供する意義がある。
受のたびにそれぞれの商談名などを記録するこ
とは、事務センターや営業拠点の担当者にとっ
製 造 現 場
工程1
工程2
管 理 者
168
工程4
て大きな負担となっていた。
契約書
関連書類
不良発生へ
の対処が
遅れる
日報の作成
に手間が
かかる
お客様
お客様
集計や現状把握に
時間と手間がかかる
図1
工程3
生産状況を
リアルタイムに
把握できない
製造業での関連する問題点
Problems in the work processes of the manufacturing industry
販売会社
支店
事務
センター
お客様
図2
営業所
差し戻し
再提出
売上計上業務における書類の流れ
Document flows in sales recording process
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
営 業
印刷
事 務
営 業 部 門
aより
受領
不備
対応
進捗
確認
送付
月度
集計
受 付
事 務
事務センター
不備
アリ
受領
帳票
作成
授受
記録
不備
返却
内容
チェック
突き合 問い合わせ 集計表
わせ
作成
や連絡
月度
集計
aへ
計上業務
請求業務
付帯作業
の種類
図3
書類の授受に伴う付帯作業の例
Examples of incidental work involved in exchanging documents
そこで、商談名などの記載をやめ、授受を件
数だけで管理する方式に変更した。その結果、
どの商談の書類を受領したかが管理できなくな
3.2.1
帳票の印刷(回付の開始)
営業担当者は、売上計上を申請するために「売
上計上申請書」をプリントアウトする。
り、「受領していない」「提出したはず」といっ
新システムの導入にあたって、全国の営業担
たやり取りが行われるようになり、書類を探索
当者のPCに、業務データを収集するプリンター
するためにムダな工数が発生するようになった。
ドライバーを設置した。このプリンタードライ
このように、送付リスト作成、台帳記入、月
バーは、次のような特徴がある。
末集計など授受管理のための工数は、業務品質
とトレードオフの関係にあることがわかった。
a) プリントアウトする帳票が「売上計上申請
書」であることを検知すると、自動的にプ
3.2
改善に向けた取り組み
リントデータから業務データ(後述)を抽
売上計上業務の現場からは、新システムに対
出してデータベースに登録する。
して「作業者の負担を増やさずに現場の活動状
b) 宅配便のように帳票を追跡するための「追
況をリアルタイムに把握できるようにして欲し
跡番号」をバーコードとして「売上計上申
い」という要望が出された。この要望を満たす
請書」に自動的に付与する。
ため、筆者らは、作業の履歴を電子的に収集す
るPOPの考え方を取り入れたシステムを検討
帳票から抽出する業務データは、
「商談の番号」
や「商談名」
、
「営業担当者」など、
「売上計上申
した(図4)
。
請書」に記載されているデータである。これら
印刷
送付
受領
不備返却
不備
理由
帳票
(電子)
タベースに登録される。営業担当者は、導入時
に新システム用のプリンタードライバーを設置
作業
履歴
するだけで、日々の業務では従来どおりの操作
を行えばよい。
帳票(紙)
データベース内部の概念的な動作
送付
履歴データ
印刷
履歴データ
とバーコードの追跡番号とが、ひもづけてデー
データベース
受領
履歴データ
不備返却
履歴データ
3.2.2
送付ステータスの登録
図5に示すように、営業拠点では、帳票と契
約書などの関連書類を事務センターに送付する
追跡する帳票ごとに
新しいBOXができる
業務データ
図4
SmartBizTraceの動作原理
Basic operations of SmartBizTrace
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
ときに次のような操作を行う。
Webブラウザーに新システムの送付ステー
タス登録用画面を表示させ、「売上計上申請書」
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宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
営
バーコード付きの帳票か
ら追跡番号をリードする。
送付リストを自動的に生
成しプリントアウトする。
業
1
送付番号が
付与される。
部
3
2
重要書類
送付リスト
3.2.3
受領ステータスの登録
事務センターでは、帳票を受領すると、次の
ような操作を行う。
Webブラウザーに新システムの受領ステー
タス登録用画面を表示させ、送付リストのバー
門
コード(図5の④)と、「売り上げ計上申請書」
のバーコードをすべてリードし(図5の⑤)
「受
領」ステータスを登録する。
送付
送付リストのバーコードには、送付リストに
一覧表示されている帳票の追跡番号と件数がひ
事
もづけられている。その結果、
「送付リストの内
4
務
拠点間の集配車や宅
配便により事務セン
ターに送付する。
最初に送付番号
をリードする。
している」、という突き合わせ確認が、自動的に
セ
行われる(図5の⑥)。
送付リスト
ン
送付リストと、現物の
売り上げ計上申請書
を自動的に突き合わ
せ、差異を表示する。
タ
5
容と、実際に受領した売上計上申請書とが合致
3.2.4
不備返却ステータスの登録
ー
送付された書類に不備があり、不備を是正す
るため営業担当者へ返却する場合は、次のよう
な操作を行う。
6
Webブラウザーに新システムの不備返却ス
テータス登録用画面を表示させ、
「売上計上申請
書」のバーコードをリードし、不備理由や再提
図5
送付リストと受領した帳票との突き合わせ
Checking consistency between lists of forms
to be received and those actually received
出の期限を入力し、
「不備返却」ステータスを登
録する(図6)。
返却する帳票に同封する不備理由通知書は、
のバーコードをリードして「送付」ステータス
送付リストの場合と同じように新システムのア
を登録する(図5の①)
。複数の商談の書類を一
プリケーションから出力させることができる。
度に送付する場合は、すべてのバーコードを
同時に、営業担当者へ不備理由を知らせるeメー
リードしたあと、まとめてデータベースに登録
ルも新システムから自動的に送信される。
することができる。この操作を行うことにより、
いつ、誰が、どの商談の書類を送付したかがデー
不備アリ
返却
タベースに登録される。
帳票の送付のときに同封する送付リストは、
「売上計上申請書」から抽出したデータを、空
の送付リストに差し込んで生成し、担当者のPC
返却する売上計上申請書
にダウンロードさせることができる(図5の②)。
また、送付リストには、受領時に行う突き合わ
メール通知
せ確認を自動的化するための「送付番号」のバー
コード(図5の③)が付与される。「送付番号」
では、
「どの帳票をひとまとめにして送付したか」
を管理している。
追跡番号をバーコー
ドからリードする。
再提出締切日や不備
理由を入力する。
図6
170
不備返却ステータス登録のUI画面
UI for status registration for flawed
forms to be sent back
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
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宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
表1
検索したい業務デー
タを指定する。
検索したい履歴デー
タを指定する。
検索結果
図7
検索条件を入力するUI画面と検索結果
UI for specifying search conditions and
showing results
SmartBizTraceの導入で改善された作業と効果
Work processes and related data before and after
being improved by SmartBizTrace
工程
作 業 の 種 類
提 供 機 能
受
領
現物の受領確認
自動突き合わせ
受領台帳の記入
自動台帳記録
問い合わせ対応
ステータス検索
不
備
返
却
通知書の作成
自動通知書作成
不備理由の作成
自動メール通知
返却台帳の記入
自動台帳記録
合計
3.2.5
導入前
(人/月)
導入後
(人/月)
2.28
0.16
1.96
0.58
4.24
0.74
進捗の把握(商談ごとの状況)
営業拠点と事務センターでは、Webブラウ
また、作業の担当者からは、
「進捗の問い合わ
ザーに新システムの検索画面を表示させ、商談
せが大幅に減少し、授受に関する水掛け論もな
の番号や担当者名、受領した日付などの検索条
くなった。」「不備理由通知書の作成や営業担当
件を指定して、調べたい帳票の処理状況(最新
者への個別連絡から解放された。」「繁忙期に優
のステータス)や各工程で入力されたデータを
先させる業務の調整ができるようになった。」
詳細に見ることができる(図7)
。
などの声も寄せられている。
3.2.6
3.4
進捗の把握(全体の状況)
改善のポイント(まとめ)
事務センターでは、その日に「送付」ステー
SmartBizTraceの導入で、2章に示した事務
タスが登録された帳票を検索することで、翌日
業務プロセスの3つの問題点は、大きく改善さ
に到着する件数を把握し、商談ごとに設定され
れることが確認できた。本事例での改善のポイ
た納期も確認できる。
ントをまとめておく。
その結果、これまで、勘や経験を頼りに行っ
てきた整員シフトや処理の優先度の調整を、実
a) 作業者の負担を増やさずにリアルタイムに
データに基づいて行えるようになった。また、
現場データを収集し、検索・活用できるよ
新システムに蓄積されたデータを用いて、営業
うになった
拠点ごとの不備返却の集計値や不備理由をリス
b) 各種回付用帳票の作成、授受実績の記録、
ト化・分析し、改善計画の立案と実施に取りか
送付リストとの突き合わせ、不備通知の
かる、といった活用も行われている。
eメール送信、集計作業が自動化された
c) 現場データの統計処理、大局的な現状把握、
3.3
導入効果
改善に先だって必要となる分析や課題抽出
新システムは2013年1月に稼働し、2014
を、科学的に行うことが可能になった
年 12 月 で 2 年 が 経 過 し た 。 ユ ー ザ ー 数 は 約
4,500名で、アクセス数は10万ページビュー
/日に及び、365日・24時間稼働するシステ
ムとして、当社および販売会社のすべての営業
部門と事務サービス部門で活用されている。
4. 事務業務へのPOP適用の障壁
4.1
課題
事務業務の場合でもPOPを適用すれば、紙帳
新システムを導入した結果、帳票の授受が商
票による業務プロセスを大きく変えないで、業
談名などを含めて確実に管理できるようになり、
務改善が可能なことを確認した。しかし、事例
かつ、表1に示す付帯作業を自動化できた。そ
を通じて、システムの導入を妨げる要因がある
の結果、人員リソースを本来の事務処理に集中
こともわかり、事務業務プロセスに対して、広
させられるようになった。たとえば、2014年
く適用可能なソリューション・サービスとする
の3月には、対前年比で15%増の規模の商談件
ためには、次のような課題を解決しなければな
数となったが、前年と同数の人員で処理できた。
らないと考えた。
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
171
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
4.2
課題1:現場主導で導入できる
課題解決の方針
上記の課題について、筆者らも、独自にアン
従来型のシステム開発では、情報システム部
ケート調査を行い「安価で簡単に現場に導入で
門が主体となって構築を進めるのが一般的で
きる業務システム」への要求が強いことを確認
あった。この方法では、企業内のさまざまな部
している。もし、お客様の業務に適合した業務
門や業務の課題をとりまとめ、優先順位を付け
システムを、ノンプログラミングで構築できる
ながら仕様がまとめられる。結果として、電子
ならば、従来の個別開発によるシステム構築よ
化が困難な業務や、ルールが複雑で構築に期間
りも、安価にお客様に提供できる。
と費用がかかるような業務課題は先送りとなり、
そこで筆者らは、現場で効果を体感しつつ、
システム化から取り残されている場合も少なく
改善を進められるように、ノンプログラミング
ない。このように先送りされた課題を抱える部
でカスタマイズしたPOPを提供するソリュー
門では、現場部門の予算の範囲で導入して運用
ション・サービスの仕組みの開発にチャレンジ
できるようなシステムが求められる。
した。この仕組みをファストサービスのPOPと
また、近年では、事務業務に対する生産性や
品質の向上が常に求められており、現場の意識
呼ぶ。この節では、ファストサービスのPOPを
実現するための4つの基本方針を説明する。
も高まってきている。現場において具体的な改
善効果が実感できないようなシステムの導入は、
方針1:帳票を介して現場データを収集して
現場の作業者に受け入れられない。そのような
活用する
観点でも、
「現場の事情に合わせて現場が主体と
なって導入できるシステム」が求められる。
事務業務プロセスでは、表2に示すように帳票
が「① 作業責任の証しとなるトークン*3」と、
課題2:すばやく導入でき、導入してからの
変更も簡単にできる
「② 工程間のコミュニケーションの媒体」の役
割を担っている。業務プロセスの進捗状況の可視
化は、①トークンである帳票を追跡し、逐次、帳
従来型のシステム開発では、構築に何カ月も
の開発期間が必要で、いったん稼働すると簡単
票の所在やステータスをデータベースに記録す
ることで可能となる。
にシステムの変更はできない。その一方で、人
さらに、②コミュニケーションの媒体である帳
が関わる業務においては、現場の取り組みや工
票にプリントされたデータや、回付中に発生する
夫で柔軟に業務ルールや仕事のやり方を変えて
データを、簡単な操作で帳票にひもづけてデータ
いきたい、という要求がある。
ベースに記録することができれば、現在の業務と
3)
4)
こうした要求に対して、[文献 ]や[文献 ]か
ほとんど変わらない手順で、現場データを集め、
ら、
「すばやく構築できるシステム」
、
「ノンプロ
現場が主体となって活用することが可能となる。
グラミングのデータベース」といったソフト
ウェアが販売されていることがわかる。これら
表2
は、システム開発の専門知識が不要で、時間を
役割
説明・例
①作業責任の証しと
なるトークン
帳票を受け取ると作業責任が発生し、
帳票を持っている部門や担当者が、そ
の事案の作業をしていることを示す。
②コミュニケーショ
ンの媒体
帳票ごとに、お客様名、担当者、金額
や納期など、その事案についての業務
データが記載されている。
かけずに業務システムを構築できることを特徴
としている。
業務プロセスで回付される帳票が果たす役割
Two functions of business forms in work process
たとえば、栗原[文献5)]は、画面とデータ項目
を定義するだけでデータベースシステムを構築
した事例を紹介しており、また、浦野[文献6)]
は、情報システム部門主導の業務アプリ開発に
は限界が出始めており、近年、そのようなシス
テムの販売量が伸びていると述べている。
172
*3
トークン:権利や責任の証しとなる物。例:引換券、代
用貨幣、商品券など。商品券は、発行した店舗において
額面金額の商品と交換する権利(商店にとっては責任)
を示すトークンであると考えられる
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
表3
事務業務プロセスにおける現場データの例
Example of data types in the office work process
種類
例
商談コード:14012345
お客様名:○○商事株式会社
販売金額:123,456円
請求書必着日:2014/11/25
担当者:富士太郎
業務データ
履歴データ
「富士太郎」が「2014/11/12」に「送付」
「山田花子」が「2014/11/13」に「受領」
証跡文書
「保守契約書」
、「設置確認書」、「作業報告書」…
るものの、一般の事務業務に広く適応すること
ができない。範囲を広げすぎると、技術的に「ノ
ンプログラミングで導入できること」を実現す
ることが困難になる。またカスタマイズ作業が
複雑となり現場で簡単には、導入できなくなる。
そこで、筆者らは、実際の事務業務の観察と
検討を繰り返し、ファストサービスのPOPとし
て対応する範囲を、表4のように定め、業務の
可視化・整流化のアプリケーションを開発した。
表4
カスタマイズ可能な機能の範囲(抜粋)
Scope of customizable functions for each work
process (examples)
方針4:アプライアンスサーバーとして
パッケージ化する
範囲
説明
ステータスの種類
帳票のバーコードをリードするときに、どの工程でどの
ステータスを登録するか
業務データの種類
帳票のプリントアウト時やWeb画面で入力をするとき
に、どの種類の業務データを入力するか
導入コストや運用コストを抑えたソリュー
履歴データの種類
帳票のバーコードをリードするときに、どの工程でどの
種類の履歴データを入力するか
ション・サービスとするため、Webアプリケー
証跡文書
どの工程でどのような文書をスキャンするか、あるいは
UI画面からアップロードするか
ションやデータベースなどのソフトウェアモ
追跡する帳票
どの種類の帳票を追跡するか、バーコードの種類、形、
位置をどうするか、どの位置から業務データを抽出す
るか
生成する帳票
どのような個票(送付票、通知票など)とするか、ある
いは、どのような台帳(管理表、集計表)とするか
メール通知
どのタイミングでどのようなeメールを送付するか
ジュールがプリインストールされたアプライア
ンスサーバーとして提供することを検討した。
5. 機能の詳細
方針2:現場データの管理に適したデータ
ベースを構築する
本システムは、図8に示すように、次の3つの
機能群で構成されている。
a) データベース
業務の可視化や整流化のために集める必要が
b) 入力アプリケーション
ある現場データは次の3種類である。
c) 可視化・整流化アプリケーション
¾
業務データ
¾
履歴データ
¾
証跡文書
これらの例を表3に示す。現場データはそれ
本章では、ファストサービスを実現するため
の機能や工夫したことを中心に解説する。
5.1
データベース
ぞれ異なる性質を持っているため、それらを適
非構造化データベース*5は、事前にどのよう
切に管理でき、かつ、導入時のスキーマ*4の設
な種類の属性を管理するか(スキーマ)を定め
計が不要なデータベースを新たに開発した。
なくても、さまざまなデータを管理できる。田
辺[文献7)]は、頻繁にスキーマ(データモデル)
方針3:カスタマイズの範囲を明確化する
が変更されるデータの管理には、非構造化デー
タベースが適していると述べている。
ファストサービスのためには、導入時のカス
大量で多様なデータを管理できる、というだ
タマイズ範囲を明確に規定することがポイント
けでなく、事前のスキーマ定義が不要、という
となる。範囲を狭くすると、実現性は容易にな
*4
スキーマ:データベースにおいて、管理するデータ(属
性)の種類や相互の関係を定義した情報。リレーショナ
ルデータベースでは、スキーマ定義を行わないとデータ
の登録や検索ができない
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
*5
非構造化データベース:非構造化データを管理するデー
タベース。非構造化データは、構造が定義されておらず、
主にリレーショナルモデルに適合しないデータのこと。
非構造化データのうち、特に、電子メールやXMLなどの
テキストデータは、半構造化データとして、区別する場
合もある
173
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
入
力
ア
プ
リ
ケ
ー
シ
ョ
ン
バーコード
Webアプリ
スキャン
プリント
リード
(文書の登録)
(帳票からの入力) (データの入力)
基幹業務システム
社内ネット
ワーク
カスタマイズ
仕様ファイル
入力連携
プラグイン
出力連携
プラグイン
データベース
検索とモニタリング
帳票の生成
文書管理システム
メール
通知
2014年度
契約書
可 視 化 ・ 整 流 化 ア プ リ ケ ー シ ョ ン
図8
SmartBizTraceのシステム構成の概要
Schematic diagram of SmartBizTrace system configuration
特徴は、ファストサービスのPOPにとって都合
プリンタードライバーを通過する帳票のプリン
がよい。そこで筆者らは、現場データを管理す
トデータ(ページの描画命令の列)を解析する
るデータベースとして非構造化データベースを
仕組み*6を備えることで、帳票の所定の場所に
採用した。
記載されている、その事案の業務データ*7を抽
また、データベースでは、カスタマイズの設
出することができる。
計図に相当する「カスタマイズ仕様ファイル」
帳票上のどの位置からどの業務データを入力
を管理する。たとえば、入力アプリケーション
するかは、プリンタードライバーが前述したカ
でどのような現場データを入力するか、可視
スタマイズ仕様ファイルを参照して決定する。
化・整流化アプリケーションでどのような検索
条件や検索結果を表示するか、など、アプリケー
5.2.2
ションの動作を規定する情報が格納されている。
Webアプリケーション
Webアプリケーションでは、さまざまな現場
データを入力させることができる。たとえば、
5.2
入力アプリケーション
関係者や後工程の作業者に向けた申し送り事項
現場データを入力するアプリケーションは、
などを、Webアプリケーションで入力させ、追
回付される帳票を介して現場データを入力させ、
跡番号(バーコード)とひもづけて登録する。
データベースに登録するアプリケーションであ
また、ファイルを証跡文書として登録(アッ
る。代表的なものとしては、プリント、Webア
プロード)することもできる *8 。Webアプリ
プリケーション、バーコードリード、スキャン
ケーションも、カスタマイズ仕様ファイルを参
を用意している。
照して画面や動作を決定する。
5.2.1
5.2.3
プリント(帳票からの入力)
その他の入力アプリケーション
本システムでは現場ユーザーの手間をかけず
このほか、PCから離れた場所で、操作画面な
に、現場データを入力するためにプリンタード
しに無線バーコードリーダーを使って現場デー
ライバーを用いる。
タを入力させる方法もある。
回付用に帳票を用意する方法として、基幹業
務システムからダウンロードした電子帳票をプ
*6
抽出できる文字データは、テキスト描画命令で印字され
ている場合に限る。画像データやベクトル情報として印
字される場合は、文字コードを取得できないため、本シ
ステムでは、抽出・収集の対象とならない
*7
3章の事例では、お客様名、担当者、金額や納期である
*8
証跡文書の登録は必須ではない
リントアウトしたり、Excel®、Word®などのソ
フトウェアで作成した電子帳票をプリントアウ
トしたりする例はよく見られる。この場合には、
174
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
作業中の工程を
バーコードで登録す
るための帳票
追跡番号の
リード
工程番号のリード
データベース
受 付
ピッ!
各工程ごとの
作業中件数は?
検 査
ピッ!
工程番号を示す
バーコード
計 画
ピッ!
図9
バーコードで作業の履歴データを入力・収集する例
Example of history data entry / acquisition using barcodes
たとえば、図9のように帳票の追跡番号を表
すバーコード以外に、工程番号を示すバーコー
の表にどのような項目を表示するかはカスタマ
イズ仕様ファイルを参照して決定する。
ドを用意しておくことで作業中の工程を登録す
モニタリングでは、所定の検索条件による、
ることができる。また、バーコード付きの帳票
検索結果に対して、集計や平均などの統計処理
をスキャナーで読み取って、スキャンイン文書
を行った結果が表示される。あらかじめ、ユー
を追跡番号とひもづけて登録することもできる。
ザーが監視したいKPI*11について、算定の基に
なるデータを検索する条件と、統計処理の種類
5.2.4
入力連携プラグイン
とをカスタマイズ仕様ファイルに設定しておき、
既存の業務システムとの連携では、密に結合
検索と統計処理を行った結果を表示させる。
せずに、緩やかな連携を取る方式を採用した。
たとえば、業務システムで管理されているマス
ターデータ
*9
*10
5.3.2
帳票の生成
を介
帳票の生成を行うためは、出力させたい帳票
して本システムのデータベースにコピーするこ
の雛型をExcel®ファイル形式で本システムに登
とで、各アプリケーションから参照可能になる。
録しておく。そして、帳票の内容に応じた検索
を、入力連携プラグイン
を実行し、検索結果をExcel®ファイルに差し込
可視化・整流化アプリケーション
んで生成する。結果として、雛型のExcel®ファ
可視化・整流化アプリケーションは、データ
イルと同じ見栄えの帳票が生成される。生成さ
ベースに登録されたデータを取捨選択・加工し
れた帳票は、Web画面からの指示により、ユー
て「情報化」して取り出す機能を提供する。
ザーのPCにダウンロードしたりプリントアウ
5.3
トしたりすることができる*12。
5.3.1
検索とモニタリング
検索は、ユーザーがWebアプリケーションの
5.3.3
メール通知
画面上で、業務データや履歴データを特定する
本システムは、特定の条件に合致する履歴
検索条件を指定して行う。どのような検索条件
データの登録を検知し、通知用のeメールを生成
を指定できるようにするか、および、検索結果
し送信する機能がある。eメールを送信する条件
*9
マスターデータ:例としては、お客様の住所データやカ
タログ品の型番データなどが考えられる
*10
既存の業務システムがSmartBizTraceで規定する形式
のデータを出力できない場合は、その業務システムに合
わせた入力連携プラグインを開発する必要がある
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
*11
KPI:Key Performance Indicatorsの略。組織の目標
達成の度合いを計る定量的な指標のこと
*12
3章では、重要書類の送付リスト、不備理由通知書をデー
タベースのデータから自動生成する例を示した
175
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
と、eメールのあて先や内容は、カスタマイズ仕
5.4.3
運用コストの削減
一般に、個別開発のシステムでは、運用コス
様ファイルに登録しておく。
トの削減を図る目的で、データ規模や構成に適
5.3.4
出力連携プラグイン
合したシステム監視ソフトを導入する。本シス
本システムは、出力連携プラグインを介して、
現場データを外部のサービスに転送する機能が
テムでは、アプライアンスとして、以下のシス
テム監視機能を組み込んでいる。
ある。たとえば、所定の文書管理システム用の
1つめは、不要データの監視・削除機能であ
連携プラグインを設定しておけば、データベー
る。本システムは、運用を続けるにつれ、管理
スに証跡文書が登録されたときに、追跡番号に
する総データ量が増加していく。データ量が増
ひもづけて収集されている現場データのいずれ
加すると、徐々に検索処理が遅くなる。これを
かをフォルダー名や属性に指定して、その証跡
回避するには、古い不要データを保管形式で取
文書を登録すること、などができる。
り出し、データベースから削除する「データ管
理作業」が必要となる。これを自動化しデータ
5.4
*13
アプライアンスサーバー
管理の工数の削減を図っている。
本節では、4.2節の方針4で示した、アプライ
2つめは、高可用性構成での監視・管理機能
アンスサーバーとして提供する狙いと機能を説
である。本システムは、2台を組み合わせた構
明する。
成が可能である。2台めのサーバーを冗長化
サーバー(故障時の代替機)として配置してお
5.4.1
設置条件の緩和
き、1台めのサーバーが故障しても、代替機に
複合機の拡張機能として、小型、静音、低消
自動的に切り替わって稼働することで、システ
費電力のPCハードウェアにPOPのための機能
ムの停止期間を短くできる。この構成では、運
をパッケージ化することで、設置場所に関する
用中のサーバーが停止していないかを監視し、
制約を緩やかにできる。たとえば、空調設備の
故障が発生した場合には代替機に切り替える
整ったサーバー室など、サーバー用の環境を用
「システム管理作業」が必要となる。これを自動
意しなくても導入できる(図10)。
化し、システム管理の工数の削減を図っている。
5.4.2
設置工数の削減
POPに必要なソフトウェアを導入した状態
で提供するため、お客様先での設置工数を削減
検査仕様書からバーコード
(追跡番号)をリードする。
2
1
できる。また、ほかのソフトウェアと共存する
必要がないため、メモリー量やディスク量で変
動するパラメーター調整の作業は不要となる。
追跡番号と計測値を
ひもづけて、登録する。
無線
バーコード
リーダー
タブレット
回付用の検査仕様書
データベース
USB出力可能な
デジタルノギス
追跡する帳票のデータ
を管理するBOX
製造品の仕様データや
計測値の差し込み
3
図10 複合機の機能を拡張するアプライアンスサーバー
Appliance server to expand the functionality of
multifunction printers (MFP)
*13
176
当社では、
「図面差分検出ボックス」や「授業支援ボッ
クス」など、複合機の特定業種向け拡張機能をアプライ
アンスサーバーとして販売している
空の品質証明書(雛型)
自動生成した品質証明書
図11 USB出力可能なデジタルノギスからのデータ収集
Data acquisition using digital calipers equipped with
a USB port
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
宅配便のように帳票を追跡し業務プロセスを可視化するソリューション・サービス事例
6. おわりに
本稿では、帳票が電子化されていない事務業
務であっても、POPを導入することで業務の可
視化や生産性の改善を達成した実務事例を報告
登録商標です。
z livedoorは、株式会社ライブドアの登録商標
です。
z そのほかの商品名、会社名は、一般に各社の
商号、登録商標または商標です。
した。また、個別システム開発を抑え、安価に
導入可能とする「ファストサービスのPOP」を
提案した。
SmartBizTraceを適用できる業務は、売上計上
8. 参考文献
1) 森野進: “POPで設備総合効率を15%向上、
のような事務業務だけにとどまらず、受注型の製
PDCAの短サイクル化も実現”, 工場管理
造品の検査工程を対象とすることも考えられる。
(日刊工業新聞社刊), Vol.55, No.14,
pp.28-35, (2009).
その一例として、検査仕様書に従って製造品
の寸法の計測を行い、計測値を検査報告書に記
2) 野口恒: “POPシステムを使って製造現場の
入し、次工程ではその報告書を見て、計測値を
生産情報を直接採取”, 2007:
記入した品質証明書を作成する業務がある。こ
http://www.navipara.com/sec/manu
の業務に、SmartBizTraceとデジタル計測器と
f/m013/m001.html
を組み合わせて導入することで、まず、検査の
3) ビ ジ ネ ス ア プ リ 作 成 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム
工程では、計測値を追跡番号とひもづけた現場
「kintone®」
:
データとして電子的に収集することが可能とな
https://kintone.cybozu.com/jp/
る(図11の①と②)。品質証明書を作成する工
4) ノンプログラミングWebデータベースソ
程では、あらかじめ本システムに空の品質証明
フト「UnitBase®」:
書(雛型)を登録しておき、検査工程で収集し
http://www.justsystems.com/jp/produ
た計測値を、品質証明書の雛型に差し込むこと
cts/unitbase/
で、計測値が記載された品質証明書を自動的に
5) 栗原雅: “ツールを駆使して少人数で短期開
生成することができる(図11の③)。このよう
発”, IT Leaders, No.1, pp.18-20, (2011).
に、それぞれの工程で発生していた付帯作業を
6) 浦野孝嗣: “SEがやるべき2つの新たな役
割”, livedoor® NEWS, 2014:
自動化できる。
http://news.livedoor.com/article/
今後は、部門・工程をまたいで追跡する対象
detail/8929039/
に電子帳票も取り扱えるように機能を拡張して
いく。これまでの活動を通じて得られた知見を
7) 田辺里美: “非構造データベースとしての
活用し、人が関わるさまざまな定型業務プロセ
XMLDB”, ITpro 日経BP, 2012:
スに適用範囲を広げ、新たなソリューション・
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/
サービスの開発に取り組んでいきたい。
COLUMN/20120312/385905/
筆者紹介
7. 商標について
z FastService 、 SmartBizTrace お よ び
川邉
惠久
商品開発本部 システム企画部に所属
専門分野:情報工学、システムアーキテクチャー
ApeosPortは、富士ゼロックス株式会社の登
國武
録商標です。
商品開発本部 システム企画部に所属
専門分野:情報工学、帳票トレーサビリティ
z Excel お よ び Word は 、 米 国 Microsoft
Corporationの米国およびその他の国におけ
る登録商標または商標です。
z kintoneは、サイボウズ株式会社の登録商標です。
z UnitBaseは、株式会社ジャストシステムの
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
鈴木
節
明
商品開発本部 システム企画部に所属
専門分野:情報工学、ドキュメントプロセッシング
大橋
宏光
商品開発本部 システム企画部に所属
専門分野:ソフトウェア工学、マーケティング(プリンター)
177
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