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第6回 スタッドレスタイヤ

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第6回 スタッドレスタイヤ
生活知識情報
第
6回
くるま
なんでも教室
自動車やバイク、自転車をはじ
めとするさまざまな乗り物のし
くみや法律、周辺知識などを分
かりやすく解説します。
相川 潔 Aikawa Kiyoshi
くるま総合研究会
(KSK)
代表
2006年KSKを設立。元株式会社JAF Mate社技術映像部部長。
乗り物に関する幅広い知識を持ち、全国各地で講演や実習、
車両の事故や火災の原因究明などを行っている。
スタッドレスタイヤ
せきちゅうせんだん
◦雪柱剪断力
冬道の必需品といえるスタッドレスタイヤ(以
下、スタッドレス)
(写真1)は、路面と接する
雪を踏み固めるとブロックの間の溝に雪の柱
“トレッド ”に低温でも硬くならない特殊なゴ
(雪柱)ができます。この雪柱が破壊されるまで
ムを使用しています。そして、夏用タイヤとは
グリップ力が持続します(図2)
。
違うブロックパターン(タイヤの溝のパターン)
◦圧縮抵抗
せつ ろ
ひょう ろ
によって冬道の雪路や氷路(アイスバーンなど)
タイヤが回転して雪を押し固めるときの抵抗
がグリップ力になり、特に新雪走行時のブレー
で威力を発揮します。
キング時に働きます(図3)
。
スタッドレスの効果
◦エッジ効果
◦粘着摩擦力
ブロックにサイプと呼ばれる細かい溝が無数
平らに見える圧雪路やアイスバーンにもアス
に切られています。力がかかったとき適度にた
ファルト舗装よりはるかに細かい凹凸がありま
わんで、ブロックやサイプの角(エッジ)で雪
す。低温でも柔らかなトレッドが、その凹凸に
や氷を引っかいて路面に食いつくことでグリッ
なじんでグリップ*力が生じます(図1)。
プ力が生じます。
(写真2、図4)
。
写真1 スタッドレスタイヤ
大きなブロックパターンと深い溝が特徴
図3
圧縮抵抗
雪を押し固めるときの抵抗がグリップ
力になる。
図1
粘着摩擦力
柔らかいゴムが路面の微細な凹凸にな
じみグリップ力が生じる。
写真2 サイプ
ブロックには細かい切れ目がある。
2014.2
国民 生 活
12
図2
雪柱剪断力
図4
エッジ効果
溝に入って押し固められた雪が破壊さ
れるまでグリップ力が持続する。
エッジの角で路面を引っかくことでグ
リップ力が生じる。
生活知識情報
トホームがつながっても、残り溝1.6㎜を示す
アイスバーン対策
スリップサインが出るまでは夏用のタイヤとし
て使うことはできます。
エッジ効果のあるサイプにはもう1つの働き
しかし、夏用のタイヤに比べると通常の道路
があります。
アイスバーンで滑りやすいのは、氷の表面に
ではグリップ力が低く摩耗も早くなりますの
できる「ごく薄い水の膜(ミクロの水膜)
」が潤
で、スピードを控えるなど運転には注意が必要
滑剤の働きをしてしまうからです。
です。
アイススケートはこの水膜があるから軽快に
冬道の運転
滑るのですが、摩擦のほしいタイヤにとっては
厄介者で、ミクロの水膜によって摩擦力が減少
こうした工夫で生じる力を合わせたスタッド
してしまいます(図5)。
レスを使っていても雪路や氷路では通常路面に
サイプには、その隙間による毛細管現象で水
比べてグリップ力が、はるかに小さくなるため
を吸収してミクロの水膜をなくす働きもありま
滑りやすく、その限界は路面状況によって大き
す。サイプの間隔や形状を工夫して、最大限に
く変わります。
水を吸収できるようにしています。
冬道では通常の運転でも急発進、急ハンドル、
ミクロの水膜をなくすため、顕微鏡でなけれ
急ブレーキといっ
ば分からないほど小さな空洞をタイヤゴムに無
た
「急の付く運転」
数に含ませ、ここでも水を吸収するなどの工夫
になることがあり
をしています。なお、空洞によってゴムが柔ら
ます。路面状況に
かくなるため、粘着摩擦力の面でも効果があり
関する規制情報等
一石二鳥といえます。
には十分注意して
サイプや空洞が吸い込んだ水はタイヤの回転
下さい。なお、雪
によって排出され、路面に接するときは再び水
の状態によっては
を吸い込めるような状態に戻ります。
スタッドレスでも
図5
ミクロの水膜
アイスバーンの上にできる薄
い水膜が滑る原因
走行できないこと
寿 命
もありますから、
冬道ではタイヤ
4輪(全数輪)とも同じ銘柄の指定サイズで、
極端に溝の深さが違わないスタッドレスを取り
チェーンも積んで
つけることが大原則です。
おくとよいでしょ
う(写真4)
。
タイヤ側面にある4カ所の矢印のトレッド部
写真3 プラットホーム
スタッドレスタイヤの使用限
度を示す。
に、溝が新品の半分になると隣同士のブロック
がつながるプラットホームがあります。プラッ
* タイヤが地面(路面)
をつかむ状態をいい、
そのときの力をグリッ
プ力という。タイヤが
地面をしっかりつかん
でいる状態を、グリッ
プがよい
(優れている)
、
グリップ力が大きいな
どと表現する。
トホームがつながるまでが、冬用タイヤとして
の使用限度です(写真3)。
柔らかいゴムも経年変化で次第に硬くなり、
性能が低下して滑りやすくなります。保管状態
にもよりますが、2~3年で柔らかさを保てなく
なり始めるので、溝の深さはあっても冬道では
写真4 チェーン着装規制看板
路面状況によってはスタッド
レスでも通行できない。
使用しないほうがよいでしょう。なお、プラッ
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