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ビクセンの本気
いっかくじゅう座 S星付近からバラ星雲 ペンタックス645D ISO1600 露出 5 分×4 中判カメラで使うと、中望遠 感覚で広い領域の星雲を写し 取ることができる。カメラは 無改造なので赤い Hα散光星 雲の写りは弱い。画面右側が 暗く落ちているのはカメラの ミラーボックスによるケラレ。 中判対応「ツチノコ」のデジタル復活 ビクセンの本気 ビクセン VSD100F3.8 ハレー彗星接近時の80年代末から2000年代前半まで発売していた ペンタックス100EDUF/SDUFの血統を受け継ぐ ハイエンド写真鏡がビクセンから発売された。 アイソン彗星接近を前に、天体写真マニアの熱い視線を浴びることになった VSD100F3.8のパフォーマンスをチェックしてみよう。 レポート/古庄 歩+編集部 ■ VSD100F3.8鏡筒の主な仕様 対物レンズ形式 有効径 / 焦点距離 イメージサークル ドローチューブ径 フィルター径 VSD100F3.8 と そ の 設計資料。シャープな 星像を結ばせることは もちろん、組み立て調 整の容易さや製造コス トを 考 慮しな け れば、 良い設計とはいえない。 5群5枚構成 SDアポクロマート 100mm / 380mm F3.8 φ70mm (最周辺光量約60%) φ89mm φ112mm (対物レンズ飾り環の内側) φ58mm (Cリングの先端) 鏡筒長 / 外径 / 重さ 497mm / 115mm (鏡筒バンド径)/ 4.5kg 付属品 六角レンチ1.5mm、専用アルミトランクケース 専用オプション (別売)ファインダー脚台座、 カメラマウント645D用、 VSDエクステンダー1.58× (開発中) 、 VSDレデューサー0.79× (開発中) ● 問い合わせ先 株式会社ビクセン カスタマーサポートセンター TEL 04-2969-0222 URL http://www.vixen.co.jp/ SD ED 2013 年の CP+ビクセンブースで何の前触れ もなく展示された V-SDP125S。それは誰が見 ても旧 ペンタックスのフラッグシップモデル 「SDP」そのものだった。これは、設計資料 などを旧ペンタックスから引き継いだビクセン が試作したもので、天体写真ファンは近い将来 ビクセンから高性能フォトビジュアル望遠鏡が 「復活」するのではないかという期待を抱いた。 前群にSDレンズ、後群にEDレンズ を配置した 5 群 5 枚とすることで、4 群 4 枚構成(SDレンズ 1 枚)では補 正しきれなかった青ハロや非点収差、 コマ収差などの諸収差を極めて高い レベルで補正している。また、光学 系のすべての面に、ビクセン独自の 「AS コ ー ティン グ(Astronomical Special Coating)」を施こし、1 面あ たり最大透過率 99.9%を得ている。 その期待は半年後に「VSD100F3.8」として 現実のものとなった。VSD100 はペンタックス 100SDUFⅡをベースにし、デジタル時代に対応 した新しいアストロカメラだ。口径 10cmF4と、 望遠鏡というよりカメラレンズに近いスペックを 持つ旧 100SDUF は、その太く短い外観から「ツ チノコ」という愛称で親しまれたが、VSD100 もそのシルエットを踏襲している。 SDUFⅡを発展させてデジタル対応 本機の開発は旧ペンタックスから特許を含む 各種技術情報がビクセンに有償譲渡されたこと から始まった。ハイエンド写真鏡をラインナッ プに加えたいビクセンと、長年培ってきた望遠 鏡関連のテクノロジーを埋没させまいとする旧 ペンタックスの思惑が一致した結果といえる。 開発のベースとなったペンタックス100SDUF Ⅱは、銀塩時代に高い評価を得てきたアストロ グラフだが、デジタル時代に求められる結像性 能を得るにはそのコンセプトを受け継ぎつつ新 たに光学設計をやり直す必要があった。銀塩 時代には 30μmで足りた星像直径も、デジタ ル時代では 10μm 以下が要求されるからだ。 前 面 の 対 物 レ ン ズ 飾 り 環 に は、 「Q U I N T U P L E T( 5 枚 玉 ) S D A P O C H R O M A T」とある。 前群に SDレンズを含む 2 枚、後群に 2 枚と ように、熟練した職人が一品ごとに丹精込めて 4 群 4 枚だった SDUFⅡに対し、VSD100 は後群 造り上げるというイメージがあるが、コストや をEDレンズ 1 枚を含む 3 枚構成とすることで、 品質管理の点からは、よりシステマチックな製 より高い設計の自由度を得た。 造体制を構築する方が望ましい。 計算上の鋭像を求めるだけでなく、それを 実現するための個々の光学エレメントのバラつ ビクセン研究開発部の 伝甫 淳さん。大学卒業後、旭光 学工業株式会社(ペンタックス)光機部にて、望遠鏡 / 双眼鏡 / スコープ類を担当。2009 年 9 月から現職に。 レーザー干渉計で精度を保障 き(硝材の品質や研磨誤差)を一定範囲に収 ビクセンは、VSD100 の開発にあたり新たに めつつ、レンズ間隔や傾きなどの組立公差を レーザー干渉計を導入し、個々の光学エレメ できるだけ緩くするのが優れた光学設計といえ ントの面形状が設計誤差範囲内に収まっている る。VSD100 開発の中心になったビクセン研究 かをより高い次元でチェックする体制を整えた。 開発部の伝甫さんは、2009 年 9 月にビクセン また、各レンズの 5 種類の硝材全てに精密アニ に移る前は、ペンタックス株式会社光機部で望 ール処理を施し、均質でムラのない特性の硝 遠鏡・双眼鏡関連製品の企画から開発・設計 材を用意した。レンズセルやスペーサーなどの を担当してきただけに、光学機器メーカー的 機械部品も適切な公差解析と精密な加工・品 な設計思想を持っている。 質管理を行う事で、マニュアル通りに組み立て 天体望遠鏡というと、鏡面研磨に代表される れば、所定の光学性能が出るようにした。 月刊 星ナビ 2014 年 2 月号 41 「極端にいえばレンズを入れてセルを締め込む 前群の 2 枚と、後群の 3 枚のレンズがそれぞ きなイメージサークルを活かす重量級の大判 だけ(研 究 開 発 部 部 長 藤 本さん)」でよく、 れレンズセルに収められ、一体で削り出された 冷却 CCDカメラを問題なく接続できる。 組立調整コストを大幅に削減することができる。 チューブで連結するという構造をとっている。 ヘリコイドはカメラレンズの合焦機構として 一定以上の性能が保証されているということは、 接眼部やカメラに続く鏡筒は、光学チューブと おなじみのものだが、本機のヘリコイドは 15 ユーザーにとっても「当たり外れ」がなく安心 は独立して対物レンズ枠に接続されている。フ 条もの複列多条の螺旋でできている。多条に して購入できるというメリットがある。 ードもこの対物レンズ枠に接続されているので、 なればなるほど谷と山の当たり面が増えて回転 「完成品」として出荷されるVSD100 は、購 対物レンズ枠は、物理的なたわみが発生しな 時の応力が分散され、より滑らかな回転が得 入後もユーザーの手を煩わせることがない。多 いようかなり肉厚に、かつ光学エレメントの基 られるとともに大きな荷重に耐えることができる くの天体望遠鏡には 3 点の押し引きネジを組み 点として高精度に加工されている。 ようになるが、その分、切削難易度は高くなる。 合わせた光軸修正装置が備わっているが、本 絶妙なさわり心地のヘリコイド 機にはそれがない。というより「光軸が狂わな い」ように設計され、組み立てられているからだ。 バーニヤ目盛で 20μmまで合焦を追い込む を発注した時には廃棄寸前だったという。モノ ことができる大型のヘリコイドも づくりは、造り続けないと技術が継承されない 15 条もの複列多条ヘリコイド(上写真のペン先)が、高精度で滑らかな繰り 出しを実現している。ヘリコイドは最大繰り出し長 35mm、各種アダプター は繰り出し24mmで合焦するように作られている。ヘリコイド端点からのバッ クフォーカス(筒外焦点距離)は116mmと余裕があり、さまざまなパーツ を取り付けられる。ドローチューブ後端の M84ネジや、カメラマウントのスリ ーブ径は旧ペンタックス鏡筒と同規格でパーツを流用することができる。 カメラマウントのスリーブ は精度を出すためほとん どアソビがなく、カメラを 付けたまま差し込むのは 困難だ。このスリーブと2 本のロックネジにカメラ回 転機能を持たせている。 直焦ワイド アダプター Tリング イモネジ(↑)でアタリを調 整し、テーパーを側面から押 す( ▲ )ことで固定する。 接眼部の スケアリング 調整機構 42 月刊 星ナビ 2014 年 2 月号 実際、この 15 条螺旋を削り出せる旋盤は日本 には 1 台しか存在せず、VSD100 のヘリコイド SDUFⅡから引き継 い だ 仕 様 だ。 ことを改めて認識させられる。 ペンタックス6×7 や 645といった 次に接眼部を見てみよう。ドローチューブ内 中判銀塩カメラを滑らかに繰り出 径は 84mmと太く、後端にスケアリング調整機 すために必要とされた機能で、デ 能を持たせたリングが装着されている。先に、 ジタル時代の現在でも本機の大 光学系の調整機構は備わっていないとしたが、 メーカー公表値では接眼部 の耐過重 3kg だが、試写に 使った大型の冷却 CCDカメ ラ FLI PL16803+フ ィ ル タ ー ホ イ ー ル(約 5.5kg)で もたわみは発生せず、安定 して撮影することができた。 ただし、これだけ重くなると 差し込みスリーブでは不安 なのでドローチューブにダイ レクトに接続するリングを製 作した。この 場 合、本 機 の スケアリング機能を使うこと はできない。メーカー純正 の鏡筒バンドは後日発売予 定だが、広く使われている 115mm 径なので入手に困 ることはないだろう。 ここで微調整を行うのは、カメラの撮像面と光 付属の専用アルミトランクケース 軸の直交だ。 ペンタックス645Dを含め、市販のデジタル 一眼レフカメラのマウント面とセンサーの平行 は高い精度で保証されているが、冷却 CCDカ メラではスケアリング調整が必要な場合も出て くる。デジカメユーザーからすると別売オプショ ンにしてほしいところだが、広いイメージサー クル全面にわたり、F3.8 の明るさゆえのシビア なピントを引き出してほしいというメーカー側 のメッセージと受け取ることにしよう。 ドローチューブ後端からのバックフォーカス は 116mmと、フランジバックの大きいペンタ ックス645D や、大型フィルターホイールを装 着した冷却 CCDカメラにも対応できる。 眼視アダプターも標準装備され、31.7mm ファインダー台座は、旧ペンタックス鏡筒互換。 ビクセン製ファインダーの装着には、専用の「ファイン ダー脚台座(右写真は製品版とは形状が異なる) 」が必要。 径のアメリカンサイズアイピースを差し込める。 口径 10cmF3.8 は、焦点距離 25mm のアイピ ースで 15 倍・瞳径 6.7mm、20mmで 19 倍・ 瞳径 5.3mm の明るい視野を得るが、本機の本 分は「アストログラフ(写真鏡) 」で、高倍率 での眼視観測には適さない。 鏡筒にねじ込まれたフードの先端は衝撃緩衝用ゴムリン グになっていて、衝撃から光学系を守り、大型のヘリコ イド合焦ゴムリングとともに外見上のアクセントにもなっ ている。 コンパクトな鏡筒なので、鏡筒バンド位置が限られ、 大型冷却 CCDカメラやペンタックス645D などを取り付けると前後バランスが取りに くい。ここはアリガタやプレートを使って赤 緯バランスを出す必要がある。 アストログラフの名に恥じない鋭像 では、その「アストログラフ」としてのパフォ ーマンスを見ていこう。 F3.8 の速写性は露出時間を大幅に短縮させ てくれる。筆者が使った感触では、光害のな い天体写真撮影地で「ISO1600、 露出 5 分」 で適正露出に届いてくる。「ISO3200 なら150 APS-C サイズのセンサーを持 つペンタックスK-3+単焦点望 遠レンズ(smcPENTAX DA★ 300mmF4ED[IF]SMD) と並べると、その大きさが実 感できる。 秒」ですむので、焦点距離を考えればオート ガイダーなしでも追尾エラーを気にしなくてもよ さそうだ。短い露出時間で多数枚撮影し、コ ンポジットで S/Nを高めていく方法が本機には 適しているのかもしれない。 光害地では、その明るさゆえすぐに飽和レベ デジタル一 眼レフカメラであるペンタックス 645D の最周辺では円周方向に星像が伸び、 ルに達してしまう。デジタル一眼レフカメラで 645D はフォーマットサイズが異なる。前者の 中心方向にやや尖った三角形に歪む。しかし、 のカラー撮影は難しいものの、モノクロ冷却 ペ ンタックス 645 はブ ロ ー ニ ーフィル ム を 作例(45 ページ)を見てもわかるようにその CCDカメラでの撮影や、ナローバンドフィルタ 56×41.5mm(セミ判)で使い、後者のイメ 程度は小さく、A4プリントに引き伸ばす程度で ーを使って撮影を楽しむことができる。 ージセンサーは 44×33mm なので、銀塩時代 は気が付かないほどだ。 380mmという望遠レンズのテリトリーに入り の「645」より、 「645D」の方がひとまわり小さい。 周辺光量はセミ判をカバーするといっている 込む焦点距離は、より大きな対象や広い星野 テスト撮影では、このペンタックス645D、 だけあって実に豊富だ。メーカー発表値では、 を一度に撮影できることを意味している。モザ 35mm 判フルサイズのキヤノンEOS 5D MarkⅡ、 イメージサークル 70mm の最周辺で 60%とい イク撮影が必須だった対象もワンショットで撮 大判の冷却 CCDカメラとして、FLI PL16803を うことだが、FLI PL16803 による実測値では、 影できるので、撮影時のパフォーマンスは大幅 用 い た。FLI PL16803 の セン サ ー サ イズ は 35mm 判 フ ル サ イズ の 最 周 辺 で 82%、FLI に向上するとともに、フルサイズ以上の広さを 36.8×36.8mm の正方形だ。 PL16803 の最周辺で 77%だった。 持つラージフォーマットのカメラならば、複数 35mm 判フルサイズでは最周辺まで十分満 レデューサー(焦点距離 300mm F3.0)と、 の対象を合わせた「星野写真」を撮影するこ 足できる星像だった。微光星の星像を見るとそ エクステンダー(焦点距離 600mm F6.0)も とが可能だ。 の直径は 1.5ピクセル程度。EOS 5D MarkⅡの 開発中とのことだが、F3.0 は、カメラレンズの 本機の特徴は「645 判(セミ判)」をカバー ピクセルサイズは 6.41μm なので、追尾誤差 300mmF2.8 望遠に匹敵する明るさになり、レ する広大なイメージサークルだ。ちなみにここ やシンチレーションを考えれば 10μm 未満に デューサー使用時の最周辺光量は 35mm 判フ でいう中判フィルムの「645 判」と、現行機の 収まっているといえる。 ルサイズで 71%と発表されている。 43 冷却 CCDカメラで撮像し、画像処理によっ 後玉からの射出瞳が大きく、包括角が大きい 系のアストログラフはイメージサークルを広く て 淡い散光星雲を背景宇宙から浮かび上がら 本機は作例のようにケラレが顕著に発生する。 取ろうとすると副鏡を大きくせざるを得ず、光 せるためにはフラット補正が必須の作業だが、 デジタル一眼レフで、精度の良いフラット補正 量ロスが大きくなり、思ったほど明るさを感じ 周辺減光が大きいと、より精度の高いフラット を行うのは難しく、ケラレ部分をトリミングして ないこともある。 フレームが必要になる。この点、周辺光量が しまうのが効果的な対処法だろう。 一方で屈折望遠鏡はそのようなロスがない。 豊富な本機はフラット補正が容易で初心者でも 使いやすい。 ビクセンの「本気」の一本 新コーティングによる高い透過率も相まって思 った以上のリズムで撮影を進めることができた。 しかし、ここで注意したいのは、デジタル一 今回の試写を通して感じたことは、F3.8での 天体写真のムーブメントは、一発必中の長時 眼レフカメラのミラーボックスによるケラレだ。 撮影は「軽快」そのものだということだ。反射 間露出ではなく、多数枚の短時間露出から良 質のフレームを抽出してコンポジットするという 方向に流れつつある。本機はそんなニーズに 確実に応える光学系であることは間違いない。 価格は 62 万円とユーザーから見れば決して 最周辺光量 77% 82% φ70mm のイメージサークル(良像範囲) 最周辺光量 60%(メーカー公表値) FLI PL16803 36.8×36.8mm の実写フラットフレーム VSD100F3.8 のメーカー公表良像範囲と 各種カメラフォーマット(実寸表示) 。四隅 の光量(青文字)は、冷却 CCDカメラの 実写からの実測した値。 安いとはいえない。100SDUFⅡ (約 40 万円) が設計された 15 年以上前とは光学製品をとり 90% まく状況が大きく変わっていることも一因だ。 VSD100 は、SDレンズ・EDレンズ各 1 枚を 100% APS-C 16.7×23.4mm 35mm 判フルサイズ 24×36mm 含む 5 枚玉で、個々の硝材だけの価格を見て も100SDUFⅡを設計した時と比べてほぼ 10 倍 になっている。ゴーストやフレアを抑え、高い コントラストを得るために、光学面の全てにそ れぞれの硝材に最適化した多層膜コーティング ペンタックス645D 33×45mm を施したことや、先に触れた硝材のアニール処 ペンタックス645 41.5×56mm 理、こだわりの 15 条ヘリコイドなども、コスト を押し上げる要因になっている。 それでも、レーザー干渉計の導入をはじめ、 VSD100を実現させるため費やした時間や、製 造技術の獲得のために投入した資金を回収す るにはこの価格設定でも「遠く及ばない」とし ながらも、本機の開発で得た経験は後の製品 開発にフィードバックされ「 (ビクセンの)全体 のクオリティを押し上げることにつながる」とい 輝星の周りのハロには、旧 SDUF や SDHF、大口径望 遠レンズなどと同様に同心 円方向に切れ込みが入るが、 これは後玉の口径食による 回折の影響だ。 うのが、同社の戦略的な判断だ。 決して大きくないハイエンド写真鏡の市場に 大きな投資をして新製品を投入することはメー カーにとっても冒険である。ビクセンの英断に 敬意を表するとともに、本機を継承する今後の 展開も大いに期待したい。 オリオン 座 の M42 から馬 頭 星 雲、M78 ま で をフレ ーミングした。右下がペン タックス 645D、左上がキ ヤノンEOS 5D MarkⅡによ るもの。どちらもフォトショ ップの周辺減光補正を手動 で行っただけでフラットフレ ームによる補正はしていな い。後 玉 が 大 きく明 る い VSD100F3.8 で は、ミ ラ ーボックスによるケラレが 顕著に出る。この点はミラ ーレス一 眼や冷 却 CCDカ メラを使った方が有利だ。 44 月刊 星ナビ 2014 年 2 月号 11 月 17 日のアイソン彗星。八王子の自宅から都心方 向の東の低空を撮影したので、光害もあり条件は最悪 だった。 「ISON 迎撃用」として同彗星が近日点を通過 する11 月 29 日に発売開始となった VSD100F3.8 だが、 本機が活躍する前に彗星自体が消滅してしまい、結果的 にこれが本機が捉えた唯一のアイソン彗星の姿となった。 FLI PL16803 IDAS LPS-P2 露出 30 秒×20コマ 中心部 35mm 判フルサイズの 最周辺部 最周辺部 400%拡大 400%拡大 ぎょしゃ座の散光星雲と散開星団M38 400%拡大 冷却 CCDカメラ FLI PL16803(センサーサイズ: 36.8mm×36.8mm)によるLRGBカラー合成 L=露出 10 分×6 RGB=露出各 5 分×3 10micron GM1000HPS 赤道儀による電動追尾 (今回の作例はすべてノータッチ追尾) 広いイメージサークルを活かし、35mm 判フルサイズ 超のラージフォーマットで星雲・星団を一網打尽にす るのは実に気持ちが良い。ペンタックス645D で対角 約 8.3° 、作例の FLI PL16803 で対角約 7.8° 、35mm 判フルサイズで対角約 6.6° となり、双眼鏡的写野が得 られる。作例の最周辺を 400%拡大すると、星像がご くわずかに変形しているのがわかるものの、注意して 見なければ気がつかないレベル。400%は、作例をお よそ 72cm 四方に引き伸ばした大きさで、縦横比は異 なるが新聞紙を広げた大きさに相当する。この拡大率 でポスターにしても星像や画質に不満はない。 45