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IFRS
IFRS(国際財務報告基準)の概要
ITへの影響・最新動向を踏まえて
2010年11月15日
富士通株式会社
株式会社富士通総研
Copyright 2010 FUJITSU LIMITED & FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
IFRSの概要
1
Copyright 2010 FUJITSU LIMITED & FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
IFRS (国際財務報告基準)とは
IFRS = International Financial Reporting Standards
(国際財務報告基準)
 IFRSはIASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)が
設定する会計基準であり、国際的に統一して用いられる会計基準である。
(会計基準の“世界標準”: 「国際財務報告基準」「国際会計基準」と訳される)
 基準の設定主体はIASB(国際会計基準審議会)であり、IASBおよびその前身のIAS
(国際会計基準委員会)により設定された会計基準、国際財務報告解釈指針委員会
及びその前身の解釈指針委員会により発表された、解釈指針の総称。
設定主体
基準書の名称
適用指針の名称
IASC
(
国際会計基準委員会)
1973年~
IAS:International Accounting Standars
(国際会計基準)
SIC:Standing Interpretations Committee
(解釈指針)
IASB
(
国際会計基準審議会)
2001年~
IFRS: International Financial
IFRIC:International Financial
Reporting Standards
(国際財務報告基準)
Reporting Interpretations Committee
(国際財務報告解釈指針)
IFRS (国際財務報告基準)適用の目的と適用状況
 主に投資家保護を目的に、世界標準のIFRS適用を通じて、会計基準の世界的統一が
進行しつつある。
“世界統一尺度”の必要性の高まり
企業活動・資本のグローバル化
ステークホルダーのグローバル
への広がり 東証の売買高の
半分は外国人株主
統一的に、企業活動を図る尺度
の必要性の高まり
世界で上位の資本市場の会計基準*
米国
日本
EU各国
カナダ
スイス
香港
豪州
米国基準
日本基準
IFRS
2011年IFRS全面受入れ
IFRS 又は米国基準
IFRS
IFRS
<ご参考>近隣の主要各国の状況
韓国
2011年からIFRS強制適用
台湾
2013年からIFRS強制適用
中国
IFRSに近づけた新基準を公表済
(IFRSと同等かどうかの決定はされていない)
数年後には150カ国以上で採用になる見通し
*連結財務諸表における採用基準。個別財務諸表は自国基準を
使用する国がある
日・米のIFRSロードマップ
■ 金融庁企業会計審議会は2009/6/30に「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報
告)」を公表。2012年にIFRS適用の方針が決定され、強制適用決定の場合、2015年または2016年
にIFRSに基づいた連結財務諸表の開示が必要となる。
IFRSロードマップ
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
?
日本基準 中間報告案公表
の動向
任意適用開始
2010年3月期
米国基準
の動向
IFRS
の動向
2016
IFRSを強制適用す
るか否かの決定
強制適用の
判断(米)
IFRSの大幅な改訂
強制適用
最短で2015年3月期?
?
?
強制適用? 強制適用(以降
3年間で順次)
連結財務諸表への適用が検討されている(連
結先行)。個別財務諸表は日本基準のままと
なる可能性がある。
ただし、連結決算だけ対応すればよいのではな
く、決算に至るまでの会計情報の発生源であ
る業務プロセスにも影響がある。
日本基準とIFRSの主な違い
【日本基準とIFRSの概念の相違点】
日本基準(現状)
何が変わるか
IFRS
細則主義
原則主義
実質に基づく経営者の判断がより重要
損益計算書中心
貸借対照表中
心
企業評価は期間利益からプラス純資
産の増減へ
取得原価/時価混
在
公正価値重視
資産価値の変化が財務諸表に及ぼす
影響が大
IFRS適用にあたっては、上記概念に則って企業として会計ポリシーを明確化し、
収益認識、有形固定資産の償却、のれん、開発費、引当金、従業員給付等多岐
に亘る個別論点の内容を加味して企業としての制度/ルールを策定し、対応を
図ることが求められる。
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Copyright 2010 FUJITSU LIMITED & FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
原則主義とは?
 例外がない (no exceptions)
 基本原則(目的) (core principles (objectives))
 矛盾がない (no inconsistencies)
 概念フレームワークに直結 (tied to conceptual framework)
 判断 (judgment)
 最小限の適用指針 (minimum guidance)
(出典:David Tweedie,“World Wide Adoption of IFRSs”, Mar 2006)
(参考)
IFRSs:
FASB基準書:
約2,500ページ
約27,000ページ
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Copyright 2010 FUJITSU LIMITED & FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
(ご参考)経理部門の必要スキルの変化
現在
実務適応能力
5%
IFRS対応後は・・・
会計基準の理解
80%
会計基準の理解
20%
取引実態の把握
15%
実務適応能力
50%
取引実態の把握
30%
出所:
「国際会計基準(IFRS)導入による経営上の課題」橋本尚、2010-02-16
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【ご参考】 アドプションとコンバージェンス
■ IFRSとの差異を縮めるべく日本基準の改訂(コンバージェンス)が行われているが、IFRS
も変化しておりすべての差異が解消されてはいない。IFRSを自国基準とすることで差異を
解消するアドプションについても経団連・金融庁にて検討が進められている。
~
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年 ~
米国
基準
ギャップ
新基準の公表(IASB)
IFRS
・IFRSは丌変のものでなく成長している
(大幅な改訂が見込まれている。)
ギャップ
日本
基準
?
・IASBで開発したIFRSを自国基準に採用する
・日本基準をIFRSに近づけるために、様々な
改訂を行っている最中。今後も改訂は続く
⇒コンバージェンス(収斂)
⇒アドプション(適用)
【ご参考】日本会計基準のコンバージェンス項目
【直近に公表された日本会計基準の適用時期】
適用項目
コンバージェンスの一環で直近に公表された主な日本会計基準の公表日、早期適用時期、本適用時期
は以下の通りです。
N
o
項目名
07年
12月
2008年
2009年
1月
12月
1 セグメント情報
1月
2010年
12月
2011年
1月
12月
★
1月
12月
本適用
公表
2 資産除去債務
★
早期適用
本適用
公表
3 賃貸等丌動産
★
早期適用
本適用
公表
4 遡及修正
※年度末から適用
★
本適用
公表
5 包括利益表示
★
公表
6 工事契約
★
早期適用
早期適用
※年度末から適用 ※連結のみ。個別は審議中
本適用
公表
7 金融商品の時
価等に関する
適用指針
★
公表
本適用
本適用
早期適用
※年度末から適用
【ご参考】日本会計基準のコンバージェンス予定項目
コンバージェンス予定項目
出典:ASBJ(企業会計基準委員会) ホームページ(2010年9月17日現在)
コンバージェンス予定項目として、ASBJ (企業会計基準委員会)が計画している新会計基準は以下の
とおりです。
No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
項目名
2010年
10~12月
2011年
1~3月
4~6月
企業結合(ステップ2)
無形資産
連結の範囲
財務諸表の表示(フェーズB関連)
財務諸表の表示(非継続事業)
収益認識
負債と資本の区分
分類と測定(金融資産)
分類と測定(金融負債)
減損
ヘッジ会計
公正価値測定・開示
退職給付(ステップ1)
公開草案発表
会計基準発表
公開草案発表
会計基準発表
退職給付(ステップ2)
リース
認識の中止
引当金
排出権
保険
特別目的会社の連結
四半期
後発事象
論点整理
7~9月
公開草案発表
10~12月
会計基準発表
論点整理
公開草案発表
論点整理
会計基準発表
公開草案発表
会計基準
論点整理
会計基準
公開草案発表
論点整理
会計基準
公開草案発表
公開草案発表
会計基準
公開草案発表
会計基準
会計基準発表
会計基準発表
論点整理
公開草案発表
会計基準
公開草案発表
論点整理
会計基準
公開草案発表
論点整理2
公開草案発表
未定
未定
会計基準発表
公開草案発表
会計基準発表
公開草案発表
会計基準発表
IFRSのインパクト(例)
■ 企業においては、IFRSの適用によって、単に経理処理方法だけでは留まらず、広範囲に影響を及ぼすと想定され
ており、その影響や導入負担の大きさは「内部統制報告制度以上」とも言われている。
IFRS適用により影響が及ぶと想定される箇所
経営管理
税務
税務への影響範囲の見極めと、税
務メリットとIFRSとの両立の検討
内部統制
内部統制(財務報告に係る内部統制
他)の見直し
経営管理指標等の見直しやその他
制度の見直し(グループ経営管理制
度の再構築等)
業務
販売•生産管理等の会計•財務報告
に関連する業務プロセスの見直し
会計・財務報告
会計処理方針や財務報告プロセス
のIFRSへの変更(現行との差異の解
消)
情報システム
その他
財務会計システムの見直しやその
他関連する業務システムの見直し
(グループでのシステム統一•再構築
等)
その他、人事制度やIRなど諸制度や
業務の見直し
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Copyright 2010 FUJITSU LIMITED & FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
プロジェクト進捗上の留意点
まずは会計差異分析と影響額算定を繰り返すこと
とにかく手を動かしてやってみる
差異分析は事前の想定が困難、作業は暫定の連続だと覚悟
手戻りは当たり前、「差異分析→影響額」を何セットもこなす
社内を動かす
単なる経理処理の変更ではない
全社的な動きにするために、経営幹部、営業、製造現場をどう動かすか
情報システム部門の役割
 経理部門からの一方通行ではない
 IFRSの準拠性、業務の運用可能性・効率性をベースに判断を行う中で、経理部
門、主管部門、情報システム部門が密に連携する必要がある。
 主管部門、経理部門との質の高いコミュニケーションが重要。
 プロジェクトマネジメント
 期限が決められ、かつ複数論点への対応が同時並行で進むプロジェクト。
 中長期的課題と紐付けて対応
 ガバナンス強化、統合と標準化、基盤老朽化、保守期限、属人化、等々。
 中長期計画への折り込みが重要。
【どういったルールにするか】
自社の会計方針策定等
監査法人
経理部
【どういった仕組にするか】
業務の変更
主管部
サポート
サポート
【どういった仕組にするか】
情報システムの変更
情報システム部
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IFRSの
業務・情報システムへのインパクト
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Copyright 2010 FUJITSU LIMITED & FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
業務・情報システムインパクト(一般事業会社)
調達先
無形資産
マーケティング、
アフター
フォロー
研究開発
棚卸
資産
調達
調
達
先
有形
固定資産
収益認識
製造
物流
販売
販
売
先
リース
非継続
投資
連結の
遡及
事業
不動産
範囲
修正
経理・財務
外国為替
財務諸表
レート変動
の表示
の影響
従業員
給付
初度
適用
経営管理・人事・総務
※一部の影響をあげたものであり、すべての影響を網羅したものではありません。主要な影響があると考えられる箇所にテーマを
マッピングしているため、テーマがマッピングされていない業務へも影響が及ぶ可能性があります。
※現時点で見込まれる影響であり、今後の制度動向に注意が必要です。
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Copyright 2010 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
収益認識に係るインパクト例
 収益認識に係るインパクトの例は以下。
業務・情報システムへの影響(例)
IFRSのインパクト
・売上の認識タイミングが日本基準と異なる可能性がある。
・認識タイミングが異なった場合、売上計上日を把握するためのデ
ータ項目を増やす必要がある。
・割引、リベート等の処理が異なる可能性がある。
・割引、リベート等を売上から控除する必要がある可能性がある。
また取引先とのリベート等に係る契約に変更が必要となる可能性
がある。
・代理人としての取引として管理する範囲が拡大する可能性が
ある。
・売上計上額・タイミングが現状と異なる可能性がある。(売上計上
の基礎となるデータが変更となる可能性がある)
・複合取引として管理する範囲が拡大する可能性がある。
・カスタマー・ロイヤルティ・プログラムの処理が変更となる。
・売上計上額が現状と異なる可能性がある。
・正確な売上額の算出のために、詳細な顧客管理が必要となる可
能性がある。
※一部の影響をあげたものであり、すべての影響を網羅したものではありません。また、現時点で見込まれる影響であり、今後の制
度動向に注意が必要です。
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有形固定資産に係るインパクト例
 有形固定資産に係るインパクトの例は以下。
IFRSのインパクト
業務・情報システムへの影響(例)
・日本基準とIFRSで、取得価額とみなす範囲に差異(還付され
ない取得税、借入費用など)がある。
・資産台帳で、連結と個別の2つの取得価額の管理が必要となる可
能性がある。
有形固定資産-取得
・国庫補助金を積立金方式で処理している場合、変更(直接減
額または繰延収益として表示)が必要。
・資産除去債務について、日本基準とIFRSで資産除去債務と
して計上されるものが異なる可能性がある。
・連結と単体で異なる、または連結のみでしか計上されない資産除
去債務の管理が必要となる可能性がある。
・大規模検査費用の資産計上が必要となる可能性がある。
・連結のみで計上される資産の管理が必要となる可能性がある。
有形固定資産-減価償却
・減価償却単位がより詳細になる可能性がある。
・より詳細な単位での資産管理が必要となる可能性がある。
・減価償却方法、耐用年数、残存価額について、実際の費消パ
ターンにあわせる必要がある。また、見直しが毎年度末に必
要となるため、これらが変更される可能性がある。
・減価償却方法、耐用年数、残存価額を実際の費消パターンにあわ
せて管理できる必要がある。
・税務上の取扱いの方向性が不明確であるため、考慮が必要
・税務と会計の差異の管理が柔軟に行えることが必要となる可能性
がある。
・減価償却方法、耐用年数、残存価額の見直しにともなう変更が行
える可能性がある。
有形固定資産-減損
・日本基準とIFRSで減損の判断アプローチが異なるため、個
別と連結で減損処理が異なる可能性がある。
・減損の有無が異なる資産の管理が必要となる可能性がある。
・減損の兆候を把握する仕組みの整備が必要となる可能性がある。
・減損の戻入が発生する可能性があるため、減損後も減損しな
かった場合の帳簿価額を算定できるようにする必要がある。
・減損の戻入に備えて、減損しなかった場合の帳簿価額を管理し続
ける必要がある可能性がある。
※一部の影響をあげたものであり、すべての影響を網羅したものではありません。また、現時点で見込まれる影響であり、今後の制
度動向に注意が必要です。
17
Copyright 2010 FUJITSU LIMITED & FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
その他のテーマに係るインパクト例
 その他のテーマに係るインパクトの例は以下。
IFRSのインパクト
業務・情報システムへの影響(例)
・棚卸資産の評価減の方式について、洗い替え方式のみが認
められる。(切り放し方式は認められない)
・在庫マスター等において、評価減前のデータ保持が必要となる可
能性がある。
棚卸資産
外国為替レート変動の影響
・IFRSでは、「事業を営む主たる経済環境の通貨」としての機
能通貨を定義する必要がある。機能通貨以外での取引は外
貨建取引として通貨換算が必要となる。また、財務諸表を作
成する通貨として表示通貨が定義されている。
・在外子会社において、機能通貨が現地通貨以外となる場合、記
帳や為替換算を見直す必要がある。
・在外支店において、機能通貨が円以外となる場合、記帳や為替
換算を見直す必要がある。
無形資産
・減価償却方法、耐用年数、残存価額について、実際の費消パ
ターンにあわせる必要がある。また、見直しが毎年度末に必
要となるため、これらが変更される可能性がある。(有形固定
資産と同様の処理)
・減価償却方法、耐用年数、残存価額を実際の費消パターンにあ
わせて管理できる必要がある。
・研究開発費のうち、一定の要件を満たす開発費が資産計上さ
れる。
・開発費の資産計上に関する判定基準を明確化する必要がある。
・資産計上後の減損判定等の精緻化が必要である。
・減価償却方法、耐用年数、残存価額の見直しにともなう変更が行
える必要がある。
従業員給付
・有給休暇引当金の計上が必要となる。
・有給休暇引当金の算定方法を明確化する必要がある。引当金計
算を情報システムにて実施するかの検討が必要となる。
・退職後給付の処理が変更となる。(2011年Q1までに改訂予
定)
・退職給付債務の計算は外部に委託しているケースが多いため、
業務プロセス、情報システムへの影響は限定的になることが想定
される。
※一部の影響をあげたものであり、すべての影響を網羅したものではありません。また、現時点で見込まれる影響であり、今後の制
度動向に注意が必要です。
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Copyright 2010 FUJITSU LIMITED & FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
【ご参考】 IFRS対応へのシステム影響イメージ
子会社
連結PKG
出荷基準・純額総額表示など
販売管理
データ管理
項目追加
購買・棚卸資産
管理
有給休暇引当金・退職給付など
計算ロジック
変更
データ管理
項目追加
IFRS用組替
仕訳の追加
切放法から洗替法への変更な
ど
財務会計
計算ロジック変更
研究開発
開発費の資産化など
データ管理
項目追加
原価計算
人事給与
減価償却費(経費)、有給休暇
引当金(労務費)の影響など
計算ロジック
変更
連結会計
日本基準 IFRS
計算ロジック
変更
日本基準 IFRS
固定資産
計算ロジック
変更
法人税/IFRSそれぞれにおい
て償却計算・簿価の管理など
管理会計
(BI)
KPI等の見直し、経営管理方
法等の見直しなど
「IFRS対応に向けたシステム影響」は以下の観点から分析することが考えられる。
•データ管理項目等の追加が必要か
•計算ロジック等の変更が必要か
•日本基準とIFRSによる複数帳簿管理が必要か
•IFRSへの(あるいは日本基準への)組替仕訳入力機能が必要か
•システム間連携のインターフェースへの影響があるか
上記の分析は、経営管理を「IFRSベースとする」か「日本基準ベースとする」かの方針と整合性を保つ必要がある
19
Copyright 2010 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
連結先行で検討が進むIFRS適用に向けた考慮
 IFRSの適用に関しては、上場企業の連結決算に対しての適用が先行して検討されてお
り、単体に関しては当面日本基準での決算が求められる見通しのため、下記考慮が必要
となります.
単体決算 ⇒ 日本基準
組替処理が必要
<親会社で組替処理を行う場合>
(親会社で集中処理)
親会社:IFRSへの組替負担が大
子会社:組替に必要な情報提供が必要
連結決算 ⇒ IFRS適用
<子会社で組替処理を行う場合>
(子会社で分散処理)
親会社:連結決算処理に集中できる
子会社:IFRSへの組替負担が大
親会社
親会社
連結決算
連結決算
(IFRS)
IFRS組替
子会社
子会社
IFRS組替
必要情報
IFRS組替
必要情報
単体決算
単体決算
・・・
子会社
子会社
子会社
IFRS組替
必要情報
IFRS組替
IFRS組替
単体決算
単体決算
単体決算
子会社
・・・
IFRS組替
単体決算
IFRS適用にあたっての考え方
IFRS適用を契機として、今までにも増して経営の透明性が求められることが想定される中、
業務標準化ならびにグループ経営管理の高度化を推し進めることが肝要と考えます。
会
計
情
報
観
点
グ
ル
ー
プ
経
営
管
理
グループ経営情報
(予算/予測含む)を
共通基準(IFRS)で把握できる
グループ全体の実績情報
を共通の基準(IFRS)で
把握できる
IFRSベースの財務諸表が
開示できる
会
計
制
度
対
応
※連結決算時にIFRS組替え
モデルA
各社が個別の
業務を遂行する
個社別業務処理
モデルC
※グループ経営管理の方針に
に沿ってシステム全体を刷新
モデルB
※販売/物流等の基幹システム
は必要最小限の対応
グループ統一の
基準(IFRS)で
会計処理を行う
グループ全体の
基幹業務が
共通化される
グループ内業務処理共通化
業務プロセス観点
IFRS適用モデルA
モデルA:最終的な連結決算処理でのIFRS対応
連
結
会
計
日本基準
連結F/S
組替
・I/F連携基盤
・連結処理
日本基準
PKG
メリット
IFRS基準
連結F/S
管理会計
グループ分析用
システム化
・連結決算パッケージシステムの更新(導入)
対象範囲
IFRS基準
PKG
前提条件
単
体
会
計
会計
管理会計
連携
各社個別
システム
固定
資産
現地基準
仕訳
組替情報
販売
生産
現地基準
仕訳
現地基準
仕訳
組替情報
・グローバル経理規程等の整備/浸透
・現地基準(あるいは日本基準)F/SからIFRSへの組
替情報の正確性の担保
単体分析用
現地基準
F/S
組替情報
基
幹
業
務
①IFRSベースの連結財務諸表を開示できる
②既存システムへの改修は最小限で対応できる。
組替情報
人事
給与
現地基準
仕訳
組替情報
留意点
・管理会計(グループ分析)については連結パッケー
ジの粗い情報粒度のみで参照可能。(単体会計に
さかのぼった分析ができない)
・連結パッケージ収集が四半期毎である場合、子会
社の決算数値の把握が遅れる。
・会計業務、基幹業務の標準化がされていないため、
グループガバナンスを利かせるのが困難である。ま
た内部統制報告制度への対応も原則として各社毎
の対応が必要となる。
IFRS適用モデルB
モデルB:会計標準化によるグループ管理基盤の構築
連
結
会
計
日本基準
連結F/S
メリット
IFRS
連結F/S
・I/F連携基盤
・連結処理
管理会計
グループ分析用
日本基準
PKG
会計現地基準
・グローバル経理規程等の整備/浸透
・現地基準(あるいは日本基準)F/Sから
IFRSへの組替情報の正確性の担保
管理会計
会計
単体分析用
F/S
各社個別
システム
固定
資産
現地基準
仕訳
組替情報
販売
現地基準
仕訳
組替情報
モデル
A
と共通
前提条件
組替情報
・勘定科目の共通化
・会計業務標準化
・I/F連携基盤
・仕訳連携
基
幹
業
務
・連結決算パッケージシステムの更新(導入)
・グループ各社単体会計システムを共通化
IFRS
PKG
組替
単
体
会
計
システム化
対象範囲
①グループ各社の決算情報を明細レベルで
把握できる。事業別・拠点別・商品別の損益分析等。
②経理業務シェアードサービス化の基盤が構築
できる。
③決算早期化の基盤を構築できる。
生産
人事
給与
現地基準
仕訳
現地基準
仕訳
組替情報
組替情報
検討事項
留意点
・単体会計システムを導入する対象会社の
範囲の検討(主要会社のみ もしくは
原則全社対応等)
・本社主導の経理業務シェアードサービス等の検討
・税務調整対応へのフォロー
IFRS適用モデルC
モデルC:基幹業務の標準化・統合を含めたパフォーマンス向上
連
結
会
計
基
幹
業
務
メリット
・I/F連携基盤
・連結処理
日本基準
PKG
単
体
会
計
IFRS
連結F/S
日本基準
連結F/S
組替
IFRS
仕訳
IFRS
仕訳
現地用
組替
システム化 ・連結会計、単体会計、基幹業務を含めたERPモ
対象範囲
ジュールの全面導入。
IFRS
PKG
会計
固定
資産
管理会計
会計
税務申告に
必要
①グループ各社に対して共通の管理指標(KPI等)を
利用したマネジメント、予算予測情報管理、決算情報
の把握が可能。
②基幹業務に関する情報まで含めたグループ会社
管理が可能。 BIツール等活用の基盤となる。
前提条件
・グローバル経理規程等の整備/浸透
・ IFRSから現地基準(あるいは日本基準)
への組替情報の正確性の担保
・勘定科目の共通化
・会計業務標準化
モデル
A、B
と共通
現地F/S
・基幹業務の標準化
・トップダウンの会社方針としての業務改革
販売
生産
人事
給与
IFRS
仕訳
現地用
組替
IFRS
仕訳
現地用
組替
IFRS
仕訳
現地用
組替
検討事項
留意点
・二重元帳(IFRS基準、現地基準)の採用の検討
・二重元帳としない場合、元帳はIFRSベースとするか
現地基準ベースとするか(左図はIFRSベース)
・IFRS任意適用、強制適用タイミングに合わせたERP
導入シナリオ(既存システムとの連携等)の検討
・税務調整対応へのフォロー
IFRSの最新動向
(収益・リース・財務諸表表示)
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IFRS収益認識基準の改訂動向
収益認識基準の見直し
IAS第11号とIAS第18号を置き換えて、新基準へと改訂することを予定
収益認識
(Revenue recognition)
2010
2010
2010
2011
2011
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
ED
IFRS
IFRS収益認識基準の改訂動向
履行義務の充足
約束された資産(財又はサービスなど)を顧客に移転したとき、履行義務を充足し、
収益を認識
顧客が約束された資産に対する支配(control)を獲得したとき、約束された資産を移
転したことになる
IFRS収益認識基準の改訂動向
履行義務の充足
顧客が支配を得ている判断指標は以下
I.
顧客が当該資産に対して無条件の支払義務(unconditional obligation)
が存在
II. 顧客が当該資産に対して法的所有権(legal title)を保持
III. 顧客が当該資産を物理的に保有(physical possession)
IV. 顧客が当該資産のデザイン及び機能を指定(specifies the design or
function)
(IASB Staff Paper February 2010)
IFRS収益認識基準の改訂動向
履行義務の充足
IFRS収益認識基準の改訂動向
保証(warranty)の処理
保証の分類
保証の種類を以下の二種類に分類
a.
品質保証(quality assurance warranty)
保証の目的は、顧客に対して製造上の欠陥(製品が顧客に「移転した時点
で存在する」欠陥)をカバーすること
b.
保険的保証(insurance warranty)
保証の目的は、製品が顧客に「移転した後に生じた」問題をカバーすること
IFRS収益認識基準の改訂動向
保証(warranty)の処理 (続き)
保証の分類ごとの会計処理
分類により会計処理が異なる
a. 品質保証(潜在的な瑕疵に対する保証)
当該保証は履行義務を生じさせない。その代わり、企業が契約の中で特定
された資産を移転するという履行義務を充足していないという可能性を認
識。企業は報告期間の末日において、顧客に販売した資産に含まれる欠
陥の可能性や範囲を決定し、未充足の履行義務を決定
I.
企業が欠陥のある資産全体を交換する場合、当該資産について収
益を認識しない
II. 企業が欠陥のある資産の一部を修理する場合、修理のプロセスで
交換する必要のある構成要素に帰属する部分の収益について、認
識しない
b.
保険的保証(引渡し後に生じた丌良に対する保証)
当該保証は別個の履行義務を生じさせる。企業は取引価格の一部を、履
行義務に配分
IFRS収益認識基準の改訂動向
保証(warranty)の処理 (続き)
保証の分類ごとの会計処理
IFRS収益認識基準の改訂動向
保証(warranty)の処理 (続き)
製造物責任の法の影響
仮に製品が傷害又は損害の原因となった際に法令が企業に対して補償の支払を要
求するケースでは、そのような要求自体は履行義務と直接の関連はない
引当金としてIAS第37号(IFRS)もしくはASC450-20(偶発損失引当金)
(USGAAP)に従って処理
(IASB Staff Paper December 2009 3A p2)
IFRS収益認識基準の改訂動向
保証(warranty)の処理(DP後の動向:IASB/FASB暫定合意案)
(続き) 設例
取引金額が100であり、保証義務が10と見積ったケース
(保証義務は品質保証)
売上
未充足の履行義務(負債)
90
10
(保証義務は保険的保証)
売上
90
製品保証に係る別個の履行義務(負債) 10
(保証義務は補償としての性質)
売上
補償義務の引当金
100
10
製品保証(日本基準の処理)
製品保証引当金
製品保証引当金とは、製品の販売又は請負物件の引渡後一定期間内での補
修・交換等を無償で行う契約をしている場合、(日本基準では翌期以降に発生す
る補修貹用見積額を製品の販売等と対応させるため、)(IFRSでは期末日現在、
製品保証契約等によって企業が製品保証債務を負っている場合に負債に該当
するため、)引当計上を行うものをいう。
日本基準では、企業会計原則注解18の負債性引当金の例示科目であり、収益貹用アプ
ローチに基づき製品保証引当金を計上する。
(日本基準開示例:富士通 有価証券報告書 2009-03期)
重要な引当金の計上基準
製品保証引当金
契約に基づき保証期間内の製品を無償で修理・交換する貹用の支出に備えるため、過去
の実績を基礎として算出した修理・交換貹用の見積額を製品の販売時に計上しております。
IFRSリース基準の改訂動向
リース基準の見直し
リース
(Lease)
2010
2010
2010
2011
2011
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
ED
IFRS
リースに係るインパクト例
 リースに係るインパクトの例は以下。(公開草案:2011年2Qに最終化予定)
IFRSのインパクト
業務・情報システムへの影響(例)
リースの範囲
・サービスとリースの双方の要素が含まれており、サービスと
みなされる部分が識別可能である場合には、該当部分をリー
ス基準でなく収益認識基準に沿って会計処理を実施する。(6
項、B5-B8項)
・サービス区分とリース区分への分割判定が必要となる可能性が
ある。
・資産の支配が移転し、大半のリスクと便益が移転する取引に
おいては、リースでなく資産の売買処理とみなして会計処理
を実施する。(8項、B9-B10項)
・リース取引であるか売買取引であるかの判定が必要となる可能
性がある。
・リースに関連した資産・負債計上のロジック見直しが必要となる
可能性がある。
・リースに関連した資産・負債計上のロジック見直しが必要となる
可能性がある。
借手の会計処理
・オペレーティング・リースとファイナンス・リースの区分はなくな
り、リース使用権とリース料支払義務をオンバランス化する。(
10項、12項、B11、B14-B15項)
・オンバランスされるリース取引が増加する。
・リース期間開始後、見込まれる残リース期間やリース料に重
要な変更の兆候がある場合、リース使用権及びリース料支払
義務を再評価し、修正する。(B16項、17項、18項)
・リース条件や計画等の変更を把握する仕組みを作る必要がある
。
・当初認識時に、リースに関する資産と負債の金額に差異が発生
する可能性がある。
短期リース(借手の会計処理)
・短期リース(最長のリース期間が12ヶ月未満)においては、簡
便的な会計処理の採用が可能である。その場合、割引計算
をせずにリース料支払義務及びリース使用権を認識する。(
64項)
・短期リース物件に対しては、他のリース物件と異なった会計処理
が必要となる可能性がある。
※一部の影響をあげたものであり、すべての影響を網羅したものではありません。また、現時点で見込まれる影響であり、今後の制
度動向に注意が必要です。
リースに係る差異 イメージ
 リースに係る判定(借手側)の簡略化した差異イメージは以下
日本基準
及び
現行IFRS
中途解約不能
フルペイアウト
所有権移転 等
(IAS17号では数値基準無し)
重要性があるか
(IAS17号では無し)
Y
Y
売買処理(オンバランス)
N
N
賃貸借処理(オフバランス)
IFRS改訂案
Y
Y
使用権処理:簡便(オンバランス)
N
使用権処理(オンバランス)
短期リースか
リース基準に該当する取引
か
N
売買処理(オンバランス)
・リースのオンバランス判定について、ITによる自動化をしている場合、ロジック等の見直しが必要。
・IFRSの改訂を踏まえて日本基準の改訂も予定されているため、留意する必要がある。
・法人税法の改訂動向にも留意が必要である。
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IFRS財務諸表表示プロジェクト
財務諸表表示プロジェクトスケジュール
3フェーズに分けて見直しを実施中
A) 完全な1組の財務諸表と比較情報(2005年12月完了:IAS1に反映済)
B) 財務諸表の表示、包括利益見直し、非継続事業(現在審議中)
C) 期中財務諸表の表示(未着手)
2010
2011
2011
2011
Q4
Q1
Q2
下期以降
包括利益の表示
IFRS
IAS第1号とIAS第7号の置き
換え(非継続事業含む)
ED
IFRS
一般的特性(general features)
財務諸表の表示
分解の原則(disaggregation principle)
以下の要素を考慮して財務諸表の分解や表示方針を決定
a.項目の機能(企業が携わる主活動 ex 販売、生産、広報等)
b.項目の性質(収益、材料貹、労務貹)
c.項目の測定基礎(公正価値、取得原価)
(SD p47-50)
一体性の原則(cohesiveness principle)
一体性のある財務諸表を開示するため、財政状態計算書・包括利益計算書・キャッ
シュ・フロー計算書の三表におけるセクション、カテゴリー、サブカテゴリーにおいて分
解された情報を開示
(SD p58)
財務諸表のセクション、カテゴリー
セクション及びカテゴリーの区分
企業の財務諸表は以下のセクション、カテゴリー及びサブカテゴリーを含む
a.
事業セクション
I.
営業カテゴリー
1. 営業ファイナンス・サブカテゴリー
2. 投資カテゴリー
b.
財務セクション
I.
借入カテゴリー
II. 所有者持分カテゴリー
c.
法人所得税セクション
d.
非継続事業セクション
e.
複数カテゴリー取引セクション
(SD p62)
財務諸表のセクション、カテゴリー
事業セクション(SD IG3)
財政状態計算書
包括利益計算書
キャッシュ・フロー計算書
営業カテゴリー
・現金
・売掛金
営業カテゴリー
・収益
・売上原価
営業カテゴリー
・顧客からの現金収入
・サプライヤーへの現金支出
・棚卸資産
・有形固定資産
・買掛金
・減価償却貹
・営業貹用
・退職給付勤務貹用
営業ファイナンスサブカテゴリー
・年金負債
・リース負債
営業ファイナンスサブカテゴリー
・年金資産に関する期待運用収益
・退職後給付利息貹用
・リース利息貹用
・従業員への支出
・有形固定資産の購入
・営業貹用への支出
・年金制度への拠出
・リースへの支出
投資カテゴリー
投資カテゴリー
投資カテゴリー
・短期投資
・利息収益
・受取収益
・証券投資
・関係会社投資
・利息配当金
・利益/損失
・関連会社投資損益
・短期投資からの収入
・有価証券の購入/売却
・受領利息や配当
・関連会社投資支出
財務諸表のセクション、カテゴリー
財務セクション(SD IG4)
財政状態計算書
借入カテゴリー
・短期借入
・長期借入
包括利益計算書
借入カテゴリー
・利息貹用
キャッシュ・フロー計算書
・借入からの入金
・未払利息
・未払配当金
・借入返済
・利息の支払
・配当金支払
所有者持分カテゴリー
・資本金
・株式発行による入金
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