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椎体形成術 Ⅱ - 日本IVR学会

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椎体形成術 Ⅱ - 日本IVR学会
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:米虫 敦
連載 4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2005 日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
椎体形成術 Ⅱ
関西医科大学 放射線科学教室
米虫 敦
当施設では IVR - CT システムを使用して, 経皮的椎体
1 ∼ 3)
。CT は水平断面での穿刺角
形成術を施行している
度の決定・確認, 手技終了時のセメント分布状況の確認
に使用している。透視は頭尾方向での穿刺角度の決
定・確認, 実際の穿刺, セメント注入時のモニターに使
用している。なお, CT 透視機能は当施設のシステムに
は搭載されていない。
椎体までの穿刺経路は, 原則として片側椎弓根穿刺
(uni-pedicler approach)を選択している。片側穿刺で不
十分なセメントしか注入できなかった際には対側穿刺
を追加しているが, 実際に対側穿刺が必要となる症例は
きわめてまれである。上位胸椎レベルにおいては, 椎弓
根 を 経 由 さ せ ず に い わ ゆ る costovertebral groove
approach を使用する施設もあると聞くが, 当施設では
術後に穿刺関節に疼痛が残る症例を経験したため, 胸椎
レ ベ ル で も 経 椎 弓 根 的 ア プ ロ ー チ( t r a n s p e d i c u l a r
approach)
(図 1)を基本としている。
椎体静脈造影については賛否両論があるが, 我々は陰
性造影剤である炭酸ガスを用いて, 原則全例で椎体静脈
4)
造影を行っている 。以下に実際の手技について段階を
追って解説する。
当施設における主な使用機材一覧 1)
1. IVR-CT
Advantx - ACT (GE Medical System)
2. 穿刺針
Osteo-site Bone Biopsy Needle Murphy M2-13G - 10b
(Cook :メディコスヒラタ社より入手)
3. 骨セメント
Osteobond copolymer bone cement (Zimmer)
滅菌バリウム(バリウム原末として堀井薬品工業より
入手。当施設において乾熱滅菌)
2)
4. 骨セメント注入器具
Medallion 1 p シリンジ(Merit Medical Systems :
シーマン社より入手)
Osteoject Bone Cement Delivery System(Integra
Neuro Sciences :シーマン社より入手)
4)
5. 炭酸ガス発生装置
CO2 注入機:ガスター
(旭計器工業: http://www.asahigauge.co.jp)
CO2 ボンベ
(日本炭酸瓦斯: http://www.ntg.co.jp/)
74(192)
フィルター
(富士システムズ: http://www.fujisys.co.jp/)
前処置・前投薬・準備
1. 検査前日の夕食後より以下を内服。
ファロム 3錠 毎食後 4日分, ノバミン 6錠 毎食後 1日分,
セルシン(2 m)1 錠 眠前 1 日分。
2. 術当日は朝昼絶食(内服・飲水は許可)。血管造影室
でルートキープ, 膀胱内バルーンカテーテル挿入。
3. 術前に塩酸モルヒネ(10)1A, 硫酸アトロピン(0.5)
1A, アタラックス P(25)1A を筋注。
4. ポリメチルメタクリレート系骨セメントは温度によ
って硬化時間が変化する。作業可能時間を長くする
ために骨セメント・注入器具は使用直前まで冷凍庫
5)
内で冷却しておく 。
手技
1. 手技開始前に側面透視下で棘突起を打診し, 治療椎体
を最終確認する。目標の椎体を間違えないようにする。
2. 皮膚に CT ガイド穿刺用グリッドを貼り, CT を撮像,
穿刺経路を決定する。原則として椎弓根を通るルー
トを選択する(図 1)。関西医大では片側穿刺を使用
しており, 対側はバックアップ用としている。多椎体
を一期的に治療する際には, 穿刺針のハンドル同士が
干渉する為, 左右の椎弓根を互い違いに穿刺する。
3. 患者皮膚にマークし, 消毒する。側面透視下に皮膚∼
椎弓根までの経路を 1 %キシロカイン 10 p +カテラ
ン針で麻酔する。この際, CT 画像を参照に Axial 方向
の角度を決定する(図 1)。頭尾方向の角度は側面透
視で決定する。麻酔に使用したカテラン針は本穿刺
の参考用にそのまま残しておく。確認 CT 撮像前に必
要に応じてカテラン針の位置の調整を行う。
4. カテラン針の位置を CT で確認する。カテラン針の位
置を参考に, 穿刺針を椎弓根の骨皮質を穿破するまで
挿入する。この際透視は不使用で, CT 画像とカテラ
ン針を参考に穿刺を行っているが, 手技に習熟しない
内は, 透視を使用して十二分な確認をしつつ穿刺を行
う方が良いと思われる。
5. CT で穿刺針の角度を確認する。角度に不具合があれ
ば修正を行い, 再度 CT で確認する。角度に問題がな
ければ, 側面透視に移行する。
6. 側面透視下に椎体内に穿刺針を刺入していく。椎体
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:米虫 敦
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
図 1 経椎弓根的アプローチ (transpedicular approach)
椎弓根を介して椎体内へ穿刺針を進めるのが合併症
を低減させるために肝要である。
の腹側 1/3 程度に針先を進めるのを目標とする。骨粗
鬆症の骨は一般的には非常に柔らかく,“腐った木材
を刺しているような”感触がする。骨硬化性の変化
を伴った骨折は非常に堅く, 穿刺針を進めるのにかな
りの力を要する。「ハンマー」を使用して穿刺針を進
める施設もあるようだが, 我々は使用していない。
7. 陰性造影剤の炭酸ガスで, 椎体静脈造影を行う(別項
参照)4)。
8. 骨セメント準備。洗面器に氷を入れ, その上から滅菌
シーツを被せる。骨セメントを滅菌シーツ越しに氷
冷しながら調製する。注入時の視認性アップのため,
滅菌バリウムを添加する(別項参照)。我々の使用し
ているオステオボンドは, 粘性が比較的高い骨セメン
トである。そのため, 10 p シリンジの“お尻”から
セメントを詰め, その後, 10 p シリンジを使用して
セメントを“分注”している。シリンジに“弾込め”
した骨セメントは氷冷した生理食塩水に漬けておき,
注入直前まで冷やしておく 5)。
9. 側面透視下で慎重に骨セメントを注入する。椎体外
にリークが起これば注入を中止する。可能であれば
穿刺針の位置を動かして追加注入を試みる場合もあ
るが, 初期の症例ではあまり欲張らないことを勧め
る。椎体骨内にセメントがしっかり入れば注入を終
了する。椎体後壁近くまでセメントが達した場合も,
脊柱管内へのリークを避けるために注入終了する。
注入中にシリンジが堅くてセメントが注入できなく
なった場合は「シリンジのゴムに骨セメントが詰ま
っている」のが原因のことが多い。あきらめて新し
いシリンジを使用するか, シリンジのゴムを生理食塩
水で洗浄する。使用直前まで弾込めしたシリンジを
氷冷生食で冷やしておけば作業可能時間は十分ある
ので, 焦らずゆっくり注入する。海外では PVP 用に
粘性の低い骨セメントが開発されているため, RSNA
や SIR の技術講習会では「セメントが少し固まり始め
てから骨内への注入を開始するのが静脈リーク・肺
塞栓を回避するのに重要」と, レクチャーされている。
しかしながら, 我々が使用しているオステオボンドは
粘性が高いため, このような配慮の必要性は低い。
10. 注入直後には, 椎体内のセメントは高圧になってい
る。セメント注入直後に針を抜くと, 穿刺経路に沿っ
てセメントが皮下にまでリークする可能性がある。
使い残しのセメントが体外で十分固まったのを確認
してから抜針する。セメントが固まるのを待つ間に
は「針まで一緒に固着しないように, 穿刺針を 1 分に
1 回くらいの割合で廻す」という意見がある。抜針
後, 消毒してガーゼで被包し, CT で骨セメントの分
布を確認する。
11. 患者は術後 2 時間, 背臥位で安静とする。2 時間後は
完全フリーとしている。ただし, たいていの患者は前
投薬と手技による疲れの影響で, 夜まで入眠している
ことが多い。術当日, 患者に疼痛について尋ねると著
明な疼痛の改善を見ることが多いが, この時点では前
投薬のモルヒネの影響が大きいと考えられる。また,
術後数日間は「穿刺部の痛み」が残存することがあ
る。PVP により圧迫骨折自体の痛みが消失していて
も「術前と同じ場所(本当は穿刺部の皮膚)が痛い」
との訴えが少なからず存在する。術前の叩打痛との比
較・穿刺点に一致した痛みなどで鑑別が可能である。
術後検査・フォローアップ
術後 1 ∼ 3 日目に, 胸腰椎の単純写真(二方向・治療
部位以外も含めて), 疼痛 VAS を評価する。症状の緩和
を確認した後, 術後 2 ∼ 5 日程度で退院とする。術後の
フォローアップは, 近医に依頼している。定期検診とし
て, 1 ヵ月後, 4 ヵ月後, 10 ヵ月後, 22 ヵ月後, 34 ヵ月後
に, 外来受診を指示している。外来での経過観察では理
学所見・疼痛 VAS 評価・単純写真を評価している。ま
6)
た, 疼痛増強時にも外来受診を指示している 。新規骨
折発生の約半数は椎体形成術後 1 ヵ月以内に発生する。
このため, 1 ヵ月後の定期検診では MRI 撮像を必須と
し, 単純写真では発見できない不全骨折や骨髄浮腫を検
7)
索する 。退院後の生活指導として, 患者には「骨粗鬆
症の治療は継続しなければいけない」「背骨を捻るよう
な体操や運動は避けて, あまり無理をしない」「疼痛再
発時には, 再骨折の可能性があるのですぐに来院を」と
説明している。
手技上のちょっとしたコツ等
1. 初めて手技を行う前に, 必ず経験者の手技を見学した
1)
り CD-ROM やビデオを観たりして, 実際の手技を体
験してみる事を勧める。また, 手技に慣れるまでは,
椎体の模型を参照しながら手技を行う。
(193)75
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:米虫 敦
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
2. 椎体形成術は, 術者被曝量の高い手技であることを念
頭に置き, 被曝軽減に留意する。我々のデータでは,
オステオジェクトを使用して年間 526 手技, 1 p シリ
ンジを使用して年間 243 手技で, 実効線量が被曝限度
2)
となる可能性がある 。被曝防護として, 側面透視時
には必ず I.I.側に立つ。管球側にパラメディカルが近
づいた際には透視を切り, 離れる様に指示する。骨は
動かないので, 考えるときには Last Image Hold を使
用して透視を切って考える。絞りもできるだけ使用
する。
3.「側面透視」「正面透視」は, 対象となる椎体に対し
て側面・正面になるようにする(透視台に対して側
面・正面ではない)。
4. 慣れてくると, 麻酔時にカテラン針が骨に当たる感触
で, 骨の形状が大まかに判るようになる。透視に頼ら
なくても, 椎体に対するカテラン針先端の位置が予想
できる様になる。
5.「先端がベーベルカットの針を使用すれば, 針の進行
方向をコントロールできる」という意見もあるが,
ダイヤモンドカットの針の方が使用し易い印象であ
る。最近では手技中に先端形状を変更できる穿刺針
も開発されている(我々は使用経験なし)
。
6.(非常に感覚的な, 主観的な表現で申し訳ないが…)
悪性腫瘍に対する IVR をやってきた感覚で「全然薬
が入らなかった。手技的には不完全∼失敗に近い」
というくらいのセメント注入量で, 疼痛緩和には劇
3)
的な効果がある 。逆に“セメントの量を欲張り過ぎ
る”と合併症や効果の面で劣るような印象がある。
学術的な意味は少ないと考えるが, 参考までに関西
医科大学での 1 椎体当たりの骨セメント使用量を提
示する。初期には骨セメントや機材の冷却技術が不
完全であったため, 技術的にセメントの大量注入が
困難であった。技術が向上するにしたがって“審美的
に美しく充分量の骨セメントを注入しよう”という意
識が働き, 骨セメントの注入量が増加している。最近
では骨セメントの量を控えめにする意識が働き, 骨セ
メントの注入量は意図的に少なく抑えられている。
1 椎体あたりの平均注入量の変化(関西医大)
3.1 p(2002 年)
3.5 p(2003 年上半期)
4.7 p(2003 年下半期)
3.6 p(2004 年上半期)
3.5 p(2004 年下半期)
3.0 p(2005 年)
炭酸ガスによる椎体静脈造影 4)について
穿刺針先端位置の確認のため, 椎体静脈造影を施行す
ることに関しては賛否両論がある。針先の位置が椎体
内に存在している確認, クレフトの有無, 肉眼的な骨片
76(194)
移動の有無, 椎体外への造影剤リークの経路などが椎体
静脈造影によって確認可能である。椎体静脈造影につ
いて否定的な主な意見として, 椎体内に残留した陽性造
影剤がセメント注入の障害影となる点, セメントと粘度
が異なる造影剤ではセメントの挙動を予想できない点,
手技が煩雑となる点などが挙げられる。しかしながら
炭酸ガスは, 造影能は非イオン性造影剤に劣るが, 陰性
造影剤のため椎体内に造影剤が残留してもセメント注
入の障害影とならない。我々は全例で陰性造影剤であ
る炭酸ガスを用いて椎体静脈造影を施行している。腰
椎で 20 p, 胸椎 10 p の炭酸ガスを使用している。陰性
造影剤の見え方に慣れないうちはネガポジ反転処理を
4)
行うと, 通常の陽性造影剤の見え方になる 。
滅菌バリウム作成
バリウムの滅菌法について
1. 滅菌法について
エチレンオキサイドガス滅菌はタンパク質を変性さ
せる事によって滅菌を行うが, その生成物には発癌性が
あることが知られている。FDA はバリウムの滅菌法と
してエチレンオキサイドガス滅菌・オートクレープ滅
8)
菌を許可していない。日本薬局方 ではガス滅菌(ガス
法)について「人体に悪影響をもたらすものもある」
「滅菌後の微生物の死滅を定量的に測定, 又は推測でき
ないものもある」としている。バリウムの滅菌法とし
ては,「乾熱滅菌(加熱法:乾熱法)」が安価で確実な滅
菌法である。乾熱滅菌は, 乾燥空気中で加熱することに
8)
よる滅菌法であり, 日本薬局方 では「主としてガラス
製,磁性,金属製の物品, 鉱油,油脂類又は粉体の試料な
ど」に用いると規定している。乾熱滅菌法以外の滅菌
法としては「照射法:放射線法」を用いることも可能
であると想像されるが, 日本薬局方 8)では「主としてガ
ラス製,磁性,ゴム製,プラスチック製または繊維性の物品
などで放射線照射に耐えうるもの」と放射線法の適応
を規定しており, 本邦においては「照射法:放射線法」
をバリウム粉末に適応することは避けたほうが望まし
いと考えられる。
乾熱滅菌機は, 大学であれば(おそらくは)基礎系の
研究室に設置されていると思われる。滅菌機自体も, 単
にチャンバー内を高温にすることで滅菌可能であるた
め, 比較的安価である。いわゆる“家庭用のオーブン”
は通常の乾熱滅菌機よりも加熱性能が一般的に高く, 家
庭用のオーブンを用いて規定時間の加熱することによ
って乾熱滅菌を行うことができる。Leibold らは 191;
9)
8)
で 12 分間の加熱と報告しているが , 日本薬局方 にお
ける加熱温度と加熱時間の規定は以下の通りである。
8)
日本薬局方 の基準(加熱法:乾熱法)
160 ∼ 170;: 120 分
170 ∼ 180;: 60 分
180 ∼ 190;: 30 分
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:米虫 敦
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
2. 滅菌の確認について
医薬品の製造工程で滅菌を行う際には「日本薬局
方:最終滅菌体及び滅菌指標体」に準じる滅菌バリデ
8)
ーションが必要である 。具体的には, 熱滅菌に強い抵
抗力を持った微生物が封入されたバイアルを滅菌して,
滅菌が完全に行われている確認を行う作業である。日本
8)
薬局方 では,「Bacillus Sublitis ATCC # 9372」を乾熱法
の滅菌指標体と指定している。Bacillus Sublitis var.niger
は現在呼称変更されており, Bacillus Atrophaeus と呼ばれ
ている。具体的な商品名, 入手方法は以下の通りである。
米国レーベン社製バイオロジカル・インディケータ
スポア・サスペンション型(Vial 型)
菌種: Bacillus atrophaeus(ATCC # 9372)
(Wet 型)
6 剰個 D/SUS - 0.1 - 1 - 6 0.1p/Vial
(代理店)
(有)スギ・コラボレーション
(http://www14.plala.or.jp/sugi-c/)
→滅菌指標体の培養判定についても(有)スギ・
コラボレーションにて手配可能である。
1, 8, 10)
3. 具体的なバリウムの滅菌方法
消化管造影用のバリウムには微量の香料が含まれて
いる。乾熱滅菌を施すと香料が炭化して茶色に着色し
てしまう。そこで, 100 %バリウム原末を入手して, 骨
セメントに添加している。バリウムの濃度は 30 %程度
までならば骨セメントの強度に影響がないと知られて
いる。我々は, Osteobond 20n 粉末にバリウム 5n を添
加して使用している。Osteobond 粉末自体にも 10 %の
バリウムが含まれている。
大量のバリウム原末を手作業で計量するのにはかな
りの労力を要するため,「薬局の分包機」を使用して
5n ずつ計量している。5n のバリウム原末をアルミホ
イルで二重に包装して乾熱滅菌を行う。滅菌時にバイ
オロジカル・インディケータも同時に滅菌する。我々
8)
の施設では日本薬局方基準 を遥かに上回った条件と
して 230;・ 120 分で滅菌している。バイオロジカル・
インディケータは培養試験に提出し, 日本薬局方に定め
8)
られた滅菌バリデーション とする。
滅菌済みのバリウム(アルミ二重包装)は外装を不潔
状態として保存する。使用時に外装を取り除き, 内装を
清潔状態で術者が取り出す。
骨粗鬆症による圧迫骨折の成績
数多くの報告があるが, どの報告も良好な臨床成績を
11)
1, 3, 6, 12)
収めている 。我々の成績
では, 術前に病変椎体
の骨髄浮腫が 1/2 以上であった症例で平均 4.6, 1/2 以下
であった症例で平均 3.7 の VAS 改善が得られたが, 骨髄
浮腫が認められない症例での改善は平均 2.7 であった。
骨髄浮腫が認められない椎体は陳旧性の圧迫骨折と考
えられ, この改善は placebo に過ぎない可能性もある。
全体では, 著効(VAS 値が 5 以上低下)が 46 %, 有効
(VAS 値が 2 以上 5 未満の低下)が 37 %, 無効(VAS 値が
変化なしまたは 1 以下の低下)が 14 %, 悪化(VAS 値が
増加)が 3 %であり, 少ない頻度ではあるが術後に疼痛
が悪化する症例が存在している。
合併症(術後の新たな圧迫骨折も含む)
経皮的椎体形成術における重篤な合併症の発生率は
骨粗鬆症性圧迫骨折の患者で 1 %以下, 悪性腫瘍の患者
で 5 %以下であり,
一時的な神経障害(骨粗鬆症:1 %, 悪性腫瘍:5 %)
永続的な神経障害(骨粗鬆症:< 1 %, 悪性腫瘍:2 %)
肋骨または椎体の骨折(< 1 %)
アレルギー反応(< 1 %)
感染(< 1 %)
症候性の肺セメント塞栓(< 1 %)
大量出血(< 1 %)
死亡(< 1 %)
11)
などが主な合併症として報告されている 。1999 年か
ら 2003 年 6 月 27 日までに FDA に報告された合併症は 52
症例であり, 経椎弓根的アプローチ(transpedicular
approach)
(図 1)で約 5 万例に 1 例, 外側アプローチ
(lateral approach)で約 3000 例に 1 例の死亡が報告され
ている。また, 多椎体を一期的に治療する際にも死亡例
が多く, Kyphoplasty では椎弓根骨折, 脊髄圧迫の危険
13)
性が増すと報告されている 。
中長期的な合併症としては, 新規の圧迫骨折が重要で
あり, 術後に疼痛が再燃した症例については第一に鑑別
しなければいけない合併症であると考えられる。厳重
な follow up を行うと 36 %の症例で新規の圧迫骨折が観
察され, 新規圧迫骨折のうち 68 %が治療隣接椎体に発
6)
生し, 43 %は術後 1 ヵ月以内に発生した 。初期には圧
迫骨折の新規発生は経皮的椎体形成術による合併症で
はなく, 骨粗鬆症性圧迫骨折の自然経過であるという意
見が主流を占めたが, 近年では椎体形成術後の新規圧迫
骨折のリスクファクターが明らかとなっている。治療
椎体の著明な椎体高改善 14), 骨セメントの椎間板への
7, 15)
などが主なリスクファクターであり, 椎間板
リーク
へのリークは新規骨折の発生をオッズ比で 4.6 倍上昇さ
7)
せる 。
【文献】
1)Komemushi A, Tanigawa N, Kariya S, et al : Percutaneous Vertebroplasty for Compression Fracture
under IVR-CT System Guidance : Indications, Technique, Results, and Complications Presenting in an
Interactive CD-ROM in HTML Format. Radiological
th
Society of North America 90 Scientific Assembly and
Annual Meeting, 2004.
2)Komemushi A, Tanigawa N, Kariya S, et al : Radiation exposure to operators during vertebroplasty.
J Vasc Interv Radiol 16 : 1327 - 1332, 2005.
(195)77
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:米虫 敦
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
3)Komemushi A, Tanigawa N, Kariya S, et al : Percutaneous vertebroplasty for compression fracture :
analysis of vertebral body volume by CT volumetry.
Acta Radiol 46 : 276 - 279, 2005.
4)Tanigawa N, Komemushi A, Kariya S, et al :
Intraosseous venography with carbon dioxide contrast agent in percutaneous vertebroplasty. AJR Am J
Roentgenol 184 : 567 - 570, 2005.
5)Chavali R, Resijek R, Knight SK, et al : Extending
polymerization time of polymethylmethacrylate
cement in percutaneous vertebroplasty with ice bath
cooling. AJNR Am J Neuroradiol 24 : 545 - 546, 2003.
6)Tanigawa N, Komemushi A, Kariya S, et al : Radiological Follow-up of New Compression Fractures Following Percutaneous Vertebroplasty. Cardiovasc
Intervent Radiol 29 : 92 - 96, 2005.
7)Komemushi A, Tanigawa N, Kariya S, et al : Percutaneous Vertebroplasty for Osteoporotic Compression
Fracture : Multivariate Study of Predictors of New
Vertebral Body Fracture. Cardiovasc Intervent Radiol, in press, 2006.
8)第十四改正日本薬局方, 平成十三年三月三十日厚生
労働省告示第 111 号, http://jpdb.nihs.go.jp/jp14/.
9)Leibold RA, Gilula LA : Sterilization of barium for vertebroplasty : an effective, reliable, and inexpensive
method to sterilize powders for surgical procedures.
AJR Am J Roentgenol 179 : 198 - 200, 2002.
78(196)
10)Mathis JM, Barr JD, Belkoff SM, et al : Percutaneous vertebroplasty : a developing standard of care
for vertebral compression fractures. AJNR Am J
Neuroradiol 22 : 373 - 381, 2001.
11)McGraw JK, Cardella J, Barr JD, et al : SIR Standards of Practice Committee : Society of Interventional Radiology quality improvement guidelines for percutaneous vertebroplasty. J Vasc Interv Radiol 14 :
827 - 831, 2003.
12)Tanigawa N, Komemushi A, Kariya S, et al : Percutaneous Vertebroplasty : Relationship between Vertebral Body Bone Marrow Edema Pattern on MRI and
Initial Clinical Response. Radiology, in press : 2006.
13)Nussbaum DA, Gailloud P, Murphy K : A review of
complications associated with vertebroplasty and
kyphoplasty as reported to the Food and Drug Administration medical device related web site., J Vasc
Interv Radiol 15 : 1185 - 1192, 2004.
14)Kim SH, Kang HS, Choi JA, et al : Risk factors of
new compression fractures in adjacent vertebrae after
percutaneous vertebroplasty. Acta Radiol 45 : 440 445, 2004.
15)Lin EP, Ekholm S, Hiwatashi A, et al : Vertebroplasty : cement leakage into the disc increases the risk of
new fracture of adjacent vertebral body. AJNR Am J
Neuroradiol 25 : 175 - 180, 2004.
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:小林 健
連載 4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2005 日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
椎体形成術 Ⅱ
金沢大学医学部 放射線科
小林 健
適応
骨転移による圧迫骨折
骨転移による椎体圧迫骨折では, 骨折による疼痛の緩
和, 骨折の進行による神経症状の予防, 転移腫瘍の増大
を抑制することが治療の対象となる。この中で, 疼痛の
緩和に対しては非ステロイド鎮痛薬やオピオイド麻酔
薬による薬物療法や放射線治療が従来の治療法であり,
神経症状を伴うものや孤立性転移の場合には手術療法
が応用されている。
経皮的椎体形成術の特徴は, 1. 即効性のある治療効果
が期待される, 2. 転移により脆弱化した椎体の強度補強
が得られる, 3. 局所麻酔下で施行でき, 手術と比較する
と低侵襲である, 4. 放射線治療後の再発にも応用でき
る, 5. 他の治療法と併用可能である, が挙げられる。し
かし, 骨転移による神経障害に基づく症状の軽減に対し
て有効性はないこと, また, 低い頻度ながら骨セメント
製剤の骨外漏出による神経障害の出現や肺塞栓の出現
といった合併症が報告されており, 適応決定を慎重にし
なければならない。
以上を考慮すると悪性腫瘍の椎体骨転移に対する経
皮的椎体形成術の適応は, 現時点では以下のように考え
るのが良いと思われる。
①経皮的椎体形成術の適応条件
1. 従来の疼痛緩和治療が有効でなく, 疼痛による日常
生活が制限されている。
2. 外科手術適応がない。
3. 椎体内に転移が限局しているか, 椎体外へ腫瘍が進
展していても脊柱管面や椎間孔面などの神経走路
の骨皮質が保たれている。
4. 1 回の治療が 3 椎体以内である。
5. 4 週間以上の生存が見込まれる。
②経皮的椎体形成術の適応決定には慎重を期す必要の
あるもの
1. 脊柱管面への腫瘍の露出があるが, 神経学的な症状
のないもの
2. 椎体の破壊が進んでおり, 椎体の高さが 3 分の 1 以
下に扁平化しているもの
3. 多椎体に転移があり, 1 回の治療で 4 椎体以上行う
必要がある。
③経皮的椎体形成術の適応とすべきではないもの(原則
禁忌とすべきもの)
1. 出血時間が 5 分以上の出血傾向がある。
2. 38 度以上の発熱がある。
3. 薬物による維持療法が必要な心不全を伴っている。
4. 椎体病変に活動性炎症の疑いがある。
5. 腫瘍により脊柱管狭窄が認められ脊髄と腫瘍が接
しているが, 神経症状は呈していない。
④従来の治療より経皮的椎体形成術を優先して行うこ
とや, 疼痛のない患者に椎体補強として行うこと, 神
経症状が既に固定している患者に疼痛緩和に対して
行うことに関しては一定の見解がなく, 施行には十分
な説明と同意が必要である。
手技
CT 透視
CT 透視を用いて行う利点は, CT 透視を間欠的(1 ∼ 3
秒)に用いることで透視画面で針と椎体の関係を瞬時に
確認できること, 骨セメント製剤に滅菌バリウムなどを
添加しなくても骨セメント製剤がよく見えるため, 骨セ
メント製剤の性状が一定となること, CT 寝台を治療椎
体の範囲で連続的に動かしながら CT 透視をみてセメン
トを注入することでセメントが容易に観察でき, 少量の
セメント漏出をチェックできることが挙げられる。し
たがって, より安全な経皮的椎体形成術が可能となると
1)
考えられる 。一方, 欠点としては見ている CT 断面以
外のセメント分布が確認できないこと, 頭尾方向の椎体
と針の関係の把握に経験が必要であること, CT 断面内
に術者の手が入ると手の被曝量が多くなることが挙げ
られる。
以上を踏まえて, CT透視を用いた我々の手法を述べる。
①CT 寝台に腹臥位で患者を寝かせた後, CT 下穿刺用マ
ーカーを罹患部位周囲の皮膚上に貼付し, CT 撮影を行
い, 穿刺部位と経路を決定する(図 1)
。治療前の画像
でガントリーを傾ける必要があることが想定された場
合には, 前もって患者の下にバスタオルを敷いて患者
の体位を調整し, 最初に側面スカウト像を撮影して,
角度が適切かどうか確認の上 CT撮影を行う。無論, ガ
ントリー角度を側面スカウトで調整しても構わない。
②穿刺部位の消毒と覆布の後, 術者被曝軽減のため I-I
デバイスなどの CT 透視用穿刺針保持器具を用いて局
(197)79
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:小林 健
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
所麻酔用のカテラン針を保持し, CT 断面内で針が動
くように CT 装置の赤色レーザー光線を利用し調整す
る。光線が穿刺部と針の頭を同時に照らしていれば,
断面内で針を進めることが可能である。CT 透視での
間欠的確認(1 ∼ 3 秒の透視時間)を繰り返し, 皮膚,
皮下の経路, 穿刺部骨膜を十分に麻酔する。CT 透視
だけではなく, 患者に違和感や電撃痛がないか常に聞
き, 対話しながら麻酔する。
③皮膚面を鋭利刀メスで切開し, 小型ペーアンで鈍的剥
離を行った後, I-I デバイスでセメント注入用の針を
保持し, CT 透視を間欠的に用いて慎重に針を経路に
沿って進める。この時, 椎弓へ針が刺さる部位で針先
を十分に固定し, 穿刺経路の最終確認をすることが重
要である。なぜならこれ以降は穿刺針の方向は変更
しようとしても変更できる程度に限界があるためで
ある。椎弓部を進める際には根神経の障害がないか
を確認するため, 患者と対話し電撃痛がないか確認す
ることが大切である。CT 透視面で問題なく見えても
電撃痛を訴える場合には, 神経根より末梢を損傷する
可能性が高いので, 注入針を抜いて穿刺経路や穿刺断
面を変更し手技を繰り返す。椎弓部を過ぎた後は椎
体前 3 分の 1 ないし前 4 分の 1 の部位に注入針を進め
る(図 2)。注入部位に針が挿入された段階で, X線透
図 1 PVP 前の CT 撮影 40 代前半女性 乳癌第 12 胸椎
転移
図 2 セメント注入針を挿入しているところ
80(198)
視で針と椎体の関係を再確認する場合もある。この
時点で穿刺した針から椎体造影を行うかどうかにつ
いては様々な意見がある。当初, 我々は椎体造影を行
っていたが, 最近では原則撮影をしていない。主な理
由は造影剤が椎体内や周囲に貯留すると, CT 透視の
感度が高いため注入する骨セメントと見分けがつか
ないためである。
④骨セメントを冷所より取り出して粉末であるポリマ
ーと液体であるモノマーを混ぜ合わせ骨セメントを
作成する。冷所で保管するのは骨セメントの硬化時
間が温度により強く影響され, 室温ではかなり早く硬
化が始まるためである。通常 1 分程度で用手注入でき
る硬度となり, 数分間注入可能な硬度を保つ。注入可
能となった骨セメントを Osteoject の耐圧シリンジに
充填し, プランジャーを装着, 耐圧チューブをセット
した上で, リユースドライバーに装着する。耐圧チュ
ーブと注入針をセットすれば注入準備が完了する。
⑤CT の寝台を頭尾方向に連続的に動かしながら CT 透
視を用い, ゆっくりとセメントを注入する(図 3)。こ
の際, セメントの高吸収が観察できる範囲を網羅して
寝台を動かし, 断層面外でのセメント分布の範囲を観
察することが大切である。注入当初は最も粘性が低
いため静脈内への漏出が起こりやすく注意が必要で
図 3 Osteoject を用いて CT 透視下にセメント注入して
いるところ
図 4 骨セメント注入後 CT 画像
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ある。もし, 静脈内に漏出した場合には, 20 ∼ 30 秒
程度待つことで硬化が進み, それ以降の静脈内への漏
出をむしろ防ぐことができるため, 静脈内への漏出が
観察されてもあわてる必要はない。セメント注入中
は加圧による疼痛が生じることを前もって良く説明
するが, 実際の注入時には患者の血圧, 血中酸素分圧
の監視の他に, 患者と対話し患者に異変がないか十分
注意する。
⑥骨外漏出が無い場合には良好なセメント分布が確認
できるか, 予定注入セメント量を決めておいてそれに
達した時点で注入を終了とする(図 4)。予定量とし
ては我々は腰椎, 下部胸椎で 4 ∼ 5 p, 中部胸椎から
頸椎では 2 ∼ 4 p 程度とし, 治療前の椎体の容積をみ
て個々に決めている。注入セメント量や分布と治療
効果が必ずしも相関しないと言われており, 我々の経
験でも相関していないため, 良好なセメント分布を得
るために無理に注入量を増やす必要は無いと考えて
いる。脊柱管や椎間孔への漏出や大静脈への漏出な
ど, 危険部位への骨外漏出を観察した場合には直ちに
注入を中止する。このような場合には注入量や分布
が不足している場合でも合併症が生じないことを確
認することが重要であり, その日は治療を終了し必要
に応じて後日別の経路から再注入をすることが望ま
しい。
⑦注入終了後, CT にてセメント分布を最終確認し, ま
た, 患者の状態をチェックする。
器具の種類と使用方法
経皮的椎体形成術では, 日常の IVR で使用することの
少ない骨セメント製剤や穿刺針, 骨セメント注入用具が
あり, その使用方法を熟知することが大切である。
1. 骨セメント製剤
経皮的椎体形成術に用いられる骨セメント製剤は
Polymethylmetacrylate(PMMA)と呼ばれるアクリル性
セメント製剤が一般的である。日本ではハイドロキシ
アパタイトを用いた骨セメント製剤もあるが, 粘性が高
く硬化に時間がかかり高価であることから, 一般的には
本手法で使用されることは少ない。PMMA 製剤には,
Osteobond(ジンマー社製), Surgical Simplex P(ストラ
イカー社製), Cranioplastic(コッドマン社製)などがあ
り, それぞれ粒状性や硬化時間, 重合温度に違いがある
(表 1)。いずれも 10 %程度のバリウムを混和されてお
り, X 線で視認可能とされているが, 製剤そのものでは
椎体のような複雑な構造の部位に注入した場合には静
表 1 骨セメント製剤の特徴
Osteobond
Surgical Simplex P
Craniopalstic
注入可能時間
硬化時間
熱効果
3∼5分
7 ∼ 12 分
高い
3∼5分
7 ∼ 12 分
高い
5 ∼ 12 分
12 ∼ 20 分
普通
脈への漏出や脊柱管への漏出がわかりにくいため, 後述
するように滅菌バリウムを 30 %程度混和し視認性を高
めることが推奨されている。
使用する場合にはポリマーである粉末にモノマーで
ある液体を混和し, 十分に重合してゲル状にして注入す
る。PMMA 製剤の注入は製剤によって異なるが, 1 ∼ 2
分で注入可能となり, 可能時間(Do 時間)は 3 ∼ 12 分程
度で, 硬化自体は 7 ∼ 20 分程度で完成する。この硬化時
間には温度の関与が指摘されており, 注入時間をある程
度確保するため, 製剤は使用直前まで冷所で保管するこ
とが推奨されている。また, 混和する際に氷水をバット
に敷き詰めた上で行ったり, シリンジに詰めた後にも滅
菌氷水に入れておくなどの工夫をすることは有効である。
PMMA 製剤は硬化する際, 60 ∼ 70 度前後の重合熱を
発生させることが知られている。この重合熱により骨
セメント周囲の椎体には 3 ∼ 4 a の範囲で壊死が生じる
ことは確認されており, 注入範囲を決める際に考慮すべ
き事項である。また, 硬化した PMMA 製剤の硬度は椎
体の硬度の 3 倍程度と極めて硬いため, 骨粗鬆症の場合
には注入椎体の隣接椎体に骨折が誘発される危険性が
指摘されており, これも念頭に入れておく必要がある。
2. 骨セメント注入針
骨セメント製剤が粘稠性が高く, 椎体という硬い構造
へ刺入する必要性があるため, 注入する針はある程度の
太さが必要となる。日本では経皮的椎体形成術用の注
入針としては使用できる針がないため, 骨生検針や骨髄
生検針が代用として用いられる。最近では 11-14 Gの針
が用いられることが多く, Osteosite 針(Cook 社製)や
Ossiris(八光社製)など使用されることが多い。
それぞれ, 針の太さ, 針の長さ, 先端の形状, ねじ切
りの有無, 目盛りの有無, 三重針構造など特徴があり,
罹患椎体の状態や使用目的で選択することが可能であ
る。
3. 骨セメント製剤注入用具
骨セメントの注入には少容量のロック付きディスポ
シリンジ(1 ∼ 2.5 p)を用いるか, 専用の骨セメント注
入器が用いられる。ロック付きのディスポシリンジは
安価で手に入りやすく, 過剰な圧入になりにくい利点が
ある。しかし, シリンジ内へのセメントの充填や注入時
のシリンジの交換に手間取ることがあったり, 用手的な
注入となるため十分な注入時間が確保できないなど欠
点も認められた。
専用の骨セメント注入器は欧米では多数の製品が使
用できるが, 日本では現時点では Osteoject(シーマン社
製)のみが使用可能である。この特徴は, 注入器とシリ
ンジ+延長チューブが別になっており, 注入器は再使用
が可能となっている。注入用シリンジに骨セメントが
10 p まで充填可能であり, 1 回の充填で必要な注入量の
セメントを充填可能であること, 専用の 27 b 長の耐圧
延長チューブがついており注入時の術者の手の被曝の
軽減に役立つこと, 1 回転で 0.5 p の注入が可能となっ
(199)81
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:小林 健
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
ており緩徐で強力な注入ができること, そのため, 注入
可能時間の延長が得られ十分量のセメントが注入しや
2)
すいことが挙げられる 。欠点として, 値段が高価であ
ることや, 強圧が注入直後も継続することがあり, 注入
を中止した後もセメントの漏出が続くことがあると言
われている。したがって, 注入を中止する際には最適な
分布の直前で一旦加圧を止めてその後ゆっくりと注入
を追加するか, 注入直後に注入器の回転を逆に回して圧
を逃がす工夫が望まれる。
治療効果
骨腫瘍に対する治療効果
骨腫瘍について経皮的椎体形成術による疼痛緩和効
果のまとまった報告は少ない。Weill らは 37 例の骨腫瘍
症例で 73 %の良好な疼痛緩和が得られ, 無効であった
3)
ものは 2 例のみであったと報告している 。一般的には
骨粗鬆症による圧迫骨折と比較しその効果は若干低下
4)
すると言われているが , 多くの報告では無効例は
10 %以下であり, その有効性は高いものと考えられる。
82(200)
自験例の成績では 80 例 126 椎体での椎体腫瘍の治療
成績では, 著効(VAS が 2 以下まで低下, または, 治療に
より VAS が 5 以上低下)が 67 %, 有効(著効以外の VAS
低下)が 28 %, 無効は 5 %であった。
【文献】
1)小林 健, 高仲 強, 松井 修, 他: CT 透視を用い
た経皮的椎体形成術の有用性. IVR 会誌 14 : 343 348, 1999.
2)小林 健, 高仲 強, 眞田順一郎, 他:経皮的椎体形
成術における Osteoject の使用経験. IVR 会誌 20 : 38 40, 2005.
3)Weill A, Chiras J, Simon JM, et al : Spinal metastases ; indications for and results of percutaneous
injection of acrlic surgical cement. Radiology 199 : 241 247, 1996.
4)Cotton A, Boutry N, Cortet B, et al : Percutaneous
vertebroplasty ; state of the art. Radiographics 18 : 311 323, 1998.
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:田中法瑞
連載 3
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2005 日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
椎体形成術 Ⅱ
久留米大学医学部 放射線医学教室
田中法瑞
適応
骨粗鬆症による圧迫骨折
米国では, 2003 年には 7 万例, 2004 年には 10 万例の経
皮的椎体形成術が施行され, このうち約 70 %が骨粗鬆
症による圧迫骨折であったといわれている。また骨粗
鬆症性圧迫骨折に対する椎体形成術の長期の有効性に
関する prospective study も報告されている 1)。
骨粗鬆症による圧迫骨折に対する椎体形成術の適応
を考える際に, ほとんどの椎体圧迫骨折は保存的治療に
より 4 週から 6 週の経過で治癒していることを知るべき
2)
である 。しかし, 保存的治療にて治癒せずに慢性の経
過をたどる患者も多く見られることも事実である。骨
粗鬆症による圧迫骨折における椎体形成術の適応は, こ
の保存的治療により軽快しない疼痛である。では, どの
程度の期間の保存的治療で改善しない患者が椎体形成
術の適応となるのか。臨床症状だけでなく, 脊椎 X 線写
真, MRI などの画像診断は適応を考える際に重要とな
る。すなわち,(1)4 週から 6 週の保存的治療で疼痛の
改善が認められない症例,(2)椎体の圧潰が進行する症
例(図 1),(3)圧迫骨折を生じた椎体内に cleft を認め
る症例, が適応と考えている。椎体内に cleft の見られ
る症例では圧潰が進行しやすく, 同時に疼痛が遷延する
傾向にあるので, これらの症例は重複すると思われる。
しかし, 単純 X 線写真で cleft が認められなくても, MRI
で cleft が確認されることは多く, また MRI で cleft が証
明されないでも椎体形成術の際に骨セメントの注入パ
3)
ターンから cleft の存在が示唆される症例もある 。また
(4)脳梗塞後遺症, パーキンソン病, その他圧迫骨折に
よる安臥床が寝たきりの原因となることが予想される
基礎疾患を有する患者の場合には, 保存的治療で経過を
観ることよりも, 早期離床を目的とした椎体形成術が患
者の大きな利益となる。
治療椎体のレベルの決定には, 術直前の MRI による
画像診断で椎体の不安定性を描出することが基本であ
るが, 加えて術直前に透視下に椎体の叩打痛を確認する
方法も非常に有用である。
慢性期圧迫骨折における椎体形成術の適応について
は, そのすべてが保存的治療によって軽快しなかった圧
迫骨折と考えてよい。しかし, 骨折から 1 年以上経過し
た椎体は, MRI の T 1 強調画像で既に高信号化しており,
このような症例では 6 ヵ月以内の症例と比較すると椎体
4)
形成術の疼痛緩和効果は小さい 。我々の施設での経験
でも, 受傷から 6 ヵ月以内の骨粗鬆症性圧迫骨折での
VAS score の改善は平均 6.4 であったのに対し, 13 ヵ月か
ら 24 ヵ月経過した慢性期圧迫骨折における VAS score の
改善は 5.4, 24 ヵ月以上経過した症例では 2.8 の改善とい
う結果であった。すなわち, 慢性期の圧迫骨折患者の疼
痛は, 圧迫骨折による椎体の不安定性による疼痛ではな
く, 骨折による malalignment の結果としての変形性脊
椎症, およびこれによる筋肉痛による要素が大きい。X
線写真や CT, MRI で椎体の不安定性の原因となる椎体
内の cleft や偽関節を確認できれば適応となる(図 2)。
亜急性期, 慢性期のいずれにおいても, 椎体形成術の疼
痛緩和のメカニズムは椎体の安定化であるので, 臨床症
状とともに MRI などで画像的に椎体の不安定性を描出
できることが, 治療効果, 適応には重要となる。骨粗鬆
症性圧迫骨折に対する椎体形成術前に必要な画像検査
を表にまとめたが, いずれも椎体の不安定性の部位を特
定するための検査である(表 1)。多椎体の慢性期圧迫
骨折と変形のみの症例で, MRI では痛みのレベルを特
定できない場合にも, 骨シンチが疼痛の責任椎体の特定
に有用であるとする報告もある 5)。
扁平椎化した高度の骨粗鬆症性圧迫骨折に対する椎
体形成術についても, 治療効果が認識され現在では禁忌
6)
とはされていない 。重度の心疾患や高度の認知症につ
いては, 局所麻酔を原則とする腹臥位での手技と骨セメ
ントの心筋への副作用などを考慮して禁忌としている。
予防的治療に関しては, 現在のところ正当化されては
いない。治療した椎体に隣接した椎体に再骨折の頻度が
高いことは事実であるが, 近い将来再骨折する椎体を正
表 1 骨粗鬆症性圧迫骨折の椎体形成術前に必要な画像検査
Imaging for identification of symptomatic fractures
(= imaging the instability of the vertebral body)
MRI (STIR : high, T1-wighted images : low, and
Gd-enhanced fat saturated MR imaging)
Dynamic X-ray study (flexion and extension)
Bone scintigraphy, in some cases
CT : evaluation of the integrity of the posterior wall of the
vertebral bodies for determination of the appropriate
needle path.
(201)83
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:田中法瑞
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
確に予測することはできず, またその確率は多くとも年
間 30 %程度であることを考えると, 予防的治療は常に
overtreatment となる可能性がある。椎間腔への一定以上
の量のセメントの漏出により, セメントが漏出した椎間
に隣接する椎体の骨折のリスクが高まるという報告もあ
るが, この場合にも隣接椎体が予防的治療の対象になる
7)
という合意が得られるには至っていない 。しかし, 短
期間に多椎体の圧迫骨折を繰り返すいわゆる“骨折のカ
スケード”と呼ばれる現象や, 椎体形成術後に隣接椎体
8)
の骨折を繰り返す症例があることも事実である 。欧州
では, 多椎体の圧迫骨折に対して, 隣接の未骨折椎体を
含めて積極的に予防的治療を行い良好な治療成績を得て
いる施設もあり, 今後検討すべき課題であると思われる。
手技
透視
X線透視を使っての椎体形成術は, DSA 血管撮影装
置を使って施行される。欧米では, 椎体形成術は DSA 装
a b c d
図 1 骨粗鬆症性圧迫骨折における適応:椎体の圧潰の進行
60 代男性。階段から転落して受傷, 第 5 胸椎圧迫骨折。a) 受傷時, b) 1 ヵ月後, c) 2 ヵ月後の胸椎 X 線写真側面像:
胸椎の圧潰と骨折線(椎体下面)の離開が進行している。疼痛も増強した。
d) 椎体形成術後の胸椎 X 線側面像:骨折線を挟んで椎間腔へ骨セメントの漏れが認められる。術直後より疼痛は完
全に消失した。このように椎体の圧潰が進行する症例は保存的治療での治癒は困難で, 椎体形成術の良い適応となる。
a b c
d
図 2 慢性期圧迫骨折の適応:椎体内の air-filled cleft の存在
70 代女性。受傷から 18 ヵ月経過した慢性期圧迫骨折(第 12 胸椎)a) 圧潰し
た椎体内に air-filled cleft が見られる。b) 術後 cleft は骨セメントで充填されて
いる。c) 術前, d) 術後の CT 正中矢状断像: VAS score で 3.5 の改善が認めら
れた。慢性期圧迫骨折であっても cleft のある症例は適応となる。
84(202)
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:田中法瑞
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
置での透視下に行われており, CT を用いている施設はほ
とんどない。通常 Bi-plane DSA で施行されるが, C-arm の
single-plane DSA 装置でも手技は可能である。透視を用
いる場合には, 可能であれば bi-plane DSA を使用すべき
である。透視を使用することのメリットとしては,(1)
穿刺手技が容易で時間を要しない,(2)そのまま静脈造
影ができる,(3)骨セメント注入に際し, セメントの動
きをリアルタイムでモニターできる, という点が挙げら
れる。またデメリットとしては,(1)椎体後縁と脊柱管
の関係など解剖学的に立体的構造が把握しにくいとこ
ろがある,(2)同一椎体の再治療や両側穿刺の際など,
セメントが既に入っている場合に新たなセメントの注
入がしにくいことが挙げられる。
透視を用いた穿刺法には,(1)bilateral transpedicular
approach,(2)latero-transpedicular approach,(3)
latero-vertebral approach,(4)latero-anteropedicular
approach などが行われているが, 本稿では最も標準的
な穿刺法である経椎弓的アプローチである latero9)
transpedicular approach について概説する 。これは,
基本的に 1 椎体に対して片側の椎弓からの 1 回の穿刺の
みで骨セメントの注入を行おうという方法であり, 時間
的にも材料費や X 線被曝の観点からも合理的と思われ
る(図 3)。ただし, 椎体内に無理のない理想的な骨セメ
ントの分布を目的として, 最初から両側の椎弓に穿刺
し, 両側同時に骨セメントを注入している施設もある。
片側・両側にかかわらず, 透視を用いた経椎弓的アプ
ローチでは, まずX線の working projection の方向の決
定が極めて重要である(図 4)。(1)正面管球を左右方向
に動かし, 目的とする椎体の棘突起を中央に見える角度
に設定する。(2)正面管球を頭尾方向に動かし, 目的と
する椎体の中央に椎弓根が位置するように角度を決め
る。(3)正面管球を穿刺する椎弓の方向に振り, 椎弓根
の外側が消える角度に決定する。この時, 椎弓根は「J」
の字に見える(右側椎弓の場合には「逆 J」の字)
。
次に穿刺部位を決定する。穿刺位置は, 椎弓の中央で
はなく, 外側が望ましい(図 5)。すなわち, 片側のみの
穿刺でセメントを椎体全体に注入させるためには, 椎体
中央まで穿刺針の先端を到達させることが必要であり,
そのためには椎弓のできるだけ外側から骨を穿刺し, 椎
体後縁で椎弓の内側に達するように, 椎弓を対角線で貫
通させる感覚で穿刺することになる(図 6)。左右方向,
頭尾方向でも椎体の中央に針の先端を導くためには, 椎
図 3 Latero-transpedicular approach (unilateral)
1 椎体に 1 本の穿刺針を椎体の中央に進め, 椎体全体
に骨セメントを注入する方法。時間的にも, 材料費,
X 線被曝の観点からも合理的な方法である。
a
b
c
図 4 Latero-transpedicular approach : working projection の決め方
a) X 線透視正面管球を左右方向に動かして治療椎体の棘突起を中央におく。b) 正面管球を頭尾方向に動かして椎弓
根を椎体の中央に定める。c) 正面管球を左右方向で穿刺する椎弓の方向に振り, 椎弓の外側の皮質が消えるまで斜
位をかける。この位置で穿刺を開始する。
(203)85
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弓と椎体の解剖学的関係から, 骨の穿刺部位としては 2
時, 10 時方向, すなわち右経椎弓的アプローチでは 2 時
方向, 左経椎弓アプローチでは 10 時方向に穿刺するの
が最も合理的である(2 o’
clock and 10 o’
clock puncture
technique, 図 5)。術前に椎体内の頭側に cleft があるこ
とが確認される場合など椎体頭側をねらう場合には, こ
れよりやや尾側(3 時, 9 時又は 4 時 8 時方向)の穿刺が
有利となる。
透視を用いた骨セメントの注入時の留意点について
述べる。椎体形成術の合併症のほとんどは, 椎体外への
セメントの漏れが原因であり,「液体物質での椎体の塞
栓術との認識」をもって慎重に注入することが何より
a
肝要である。まず, 注入時には血管造影室のライトを全
て消し真っ暗な状態にし, 少なくとも 2 人の術者がモニ
ターでセメントの動きを注視する。特に注入開始時に
は, bi-plane の透視を同時に見ながら注入する。骨セメ
ントの注入には, Osteoject(Sheenmann 社)または
LeVeen 10 '(Boston Scientific 社)を用いている。
セメント注入をどこで止めるか(治療の end-point)も
本治療での問題となる。ここでは, セメントの量(1 椎
体あたり 3 '以下と 3 '以上)と疼痛緩和効果の間には
相関がなかったという報告があること, 合併症のほとん
どはセメントの過注入に原因があるという, 2 点に留意
5)
して end-point を決定することが重要である 。具体的
b
図 5 Latero-transpedicular approach : 穿刺位
置の決め方
a) 左経椎弓的アプローチの場合には, 椎弓
上外側の 10 時の位置(矢印)で, b) 右経椎弓
的アプローチの場合には 2 時の位置(矢印)
で骨を穿刺する。
a
b
図 6 Latero-transpedicular approach : 穿刺針の経路の決め方
a) 穿刺部は椎弓の上外側(10 時の位置)b) 椎体後縁では穿刺針は脊柱管側の骨皮質の近くとなるようにす
る。椎弓を対角線で穿刺することによって, 穿刺針を椎体の中央に進めることができる。
86(204)
2005 日本 IVR 学会「技術教育セミナー」:田中法瑞
技術教育セミナー / 椎体形成術-Ⅱ
a
b
図 7 静脈造影の必要性の有無を考える際に重要な脊椎の血管解剖
a) 椎体内静脈造影側面像:早いタイミングで下大静脈が造影されており, 椎体内静脈が下大静脈に直接還流してい
ることがわかる。 b) 剖検例(a とは別症例):椎体内から静脈が, 直接下大静脈に連続している。穿刺針の先端がこ
の静脈内に位置する可能性もあることを考慮して, 慎重にセメントを注入すべきである。
には, 透視を用いる場合には(1)椎体外(静脈, 椎間腔)
への leak が見えた時,(2)椎体の後縁から 1/4 より背側
にセメントが注入された時, のいずれかを end-point と
し て い る が , 術 前 の MRI な ど で 椎 体 内 の cleft な ど
instability の原因となっている部分に良好なセメントの
充填を認めたならば, それ以上の注入については無理を
しないことが重要である。
DSA 透視下での骨セメント注入前の椎体内静脈造影
(intraosseous venography)については, 造影を行った
後セメントを注入した群と造影を行わずにセメントを注
入した群で合併症の頻度に有意差が見られなかったとい
う報告があり, 特に米国では静脈造影を省略する施設が
10)
多いようである 。しかしながら, 直接下大静脈に還流
する high flow の椎体内静脈の存在も稀ではなく, 静脈造
影を省略した場合, このような静脈に穿刺針の先端が入
っていることを確認することなしにセメントを注入する
リスクもあることを認識すべきである(図 7)
。血管造影
を省略した塞栓術は考えられないのと同様に, 合併症の
リスクを最小にする細心の注意を怠ってはならない。
術後管理
術後2時間は, 背臥位でのベッド上安静としている。こ
の際にはパルスオキシメーターによるSaO2のモニターを
含むバイタルのチェックは必須である。術後 3 日以内に,
炎症反応を伴わない発熱(37.5;前後)が約 30 %に, また
一過性の嘔吐が 10 %に認められたが, いずれも骨セメン
トへの生体反応である可能性があるが, 重篤な副作用と
はならない。翌日からは歩行を許可しているが, 隣接椎
体の再骨折の約 67 %が術後 1 ヵ月以内に生じているとい
う報告があり, 1 ヵ月は患者が痛みを訴えない場合にも,
コルセットを装着するように指導している。術後 72 時間
後に疼痛をVAS scoreで評価した後, 退院としている。
【文献】
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venography safe? Evaluation of 205 consecutive procedures. AJNR Am J Neuroradiol 23 : 913 - 917, 2002.
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