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112 - 明海大学 歯学部 坂戸キャンパス

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112 - 明海大学 歯学部 坂戸キャンパス
112
明海歯学(J Meikai Dent Med )38(2)
, 112−127, 2009
Multi-detector CT における内視鏡モードの唾液腺管応用への検討
−幾何学的影響に関する画質評価−
小澤
智宣§
印南
山秋
永
史
小宅
小泉
麗来
伸秀
篠原
奥村
勇輝
泰彦
明海大学歯学部病態診断治療学講座歯科放射線学分野
要旨:Multi-detector computed tomography(MDCT)の登場により画像の診断能が格段に向上され,日々の診療に欠く
ことのできないものとなっている.この MDCT を利用した画像構成には各種あるが,今回はその中で内視鏡モードに注
目した.この内視鏡モードは大腸などの体内の空間をあたかも実際の内視鏡で観察しているかのような画像を得ることが
できる.本研究はこの内視鏡モードを口腔内の特に唾液腺の診断への応用を考えた.実験ではファントムを使って画像解
析を行った.画像解析は modulation transfer function(MTF)
,Wiener spectrum(WS)解析専用ファントムを使い撮像の最
適条件や最適位置を調べ,ダクトを想定した内部再現性を評価しその有用性について検討した.その結果以下の結果を得
たので報告する.
1 .MTF, WS 解析ではガントリー中心部から 40 mm 以内が良好な画像が得られることがわかった.
2 .MTF, WS は 20 mAs, 80 kV の条件で低下がみられ,sharpness では再構成関数の値が小さくなるにつれて低下がみら
れた.
3 .内部再現性の評価ではダクトの走行に対して Z 軸方向にできるだけ平行,もしくはスライス方向に対し 90°±15°以
内での傾きで撮像する場合,歪みの少ない画像が得られることが示唆された.
4 .内径が細くなるにつれて内面再現性が低くなることが認められた.
以上の結果から,唾液腺の内視鏡モードを幾何学的に評価することにより撮像の至適条件が得られ,その使用に有用性
が示唆された.
索引用語:MDCT,内視鏡モード,唾液腺
Study on Multi-detector Computed Tomography in the Virtual
Endoscope Mode to Phantom of Saliva Gland Duct Application
−Image Quality Evaluation of Geomety−
Tomonori OZAWA§, Hisashi INNAMI, Reira OYAKE, Yuki SHINOHARA,
Fumi YAMAAKI, Nobuhide KOIZUMI and Yasuhiko OKUMURA
Division of Dental Radiology, Department of Diagnostic & Therapeutic Sciences, Meikai University School of Dentistry
Abstract : The diagnosis ability of the radiographic imaging has been greatly improved by the advent of multi-detector computed tomography(MDCT)
, Which is now a the prerequisite to the diagnosis and treatment of a variety of diseases. MDCT conducted in the virtual endoscope mode can be used for various image compositions, and the space in a structure such as the large
intestines can be visualized similarly as with an actual endoscope. Using a phantom of a salivary gland duct, I performed the image analysis to determine whether this endoscope mode could able to be applied to the oral cavity. I searched for the optimum
conditions and the best position for taking pictures, and evaluated whether the salivaly gland ducts could be reproducibly imitated
by the phantom. Modulation transfer function(MTF)
, Wiener spectrum(WS)analysis were used to examined the utility of MDCT
in the virtual endoscope mode for use in the oral cavity.
内視鏡モードの唾液腺管応用への検討
113
As a result, the following conclusions were made :
1. The best image was obtained within 40 mm from the center part of the gantry by the MTF and the WS analyses.
2. Decreases in the MTF and the WS as the decrease were seen at 20 mAs and 80 kV, and the decrease were seen in the sharpness
of the image decreased as the value of the reconstruction function became smaller.
3. The image was somewhat distorted when pictures were taken of the parallel or the direction of the slice by the inclination
within 90°
±15°as much as possible Z axially for running of the duct in the evaluation of internal reproducibility.
4. The influence was admitted to go out easily in an inside form as the inside diameter became thin.
The salivary gland phantom was evaluated geometrically by MDCT in the virtual endoscope mode, and the optimal conditions
were obtained from the above-mentioned results. The utility of MDCT in the mode was thus suggested.
Key words : MDCT, virtual endoscopy, salivary gland
緒
言
D イメージの再構成も容易になった3−5).この結果 3 次
元方向の画像化のみならず,multi planner reconstruction
歯科領域の画像診断は口内法エックス線撮影に始ま
(MPR)による治療のシミュレーション,あるいはボリ
り,その後パノラマ撮影装置の開発を加えこの 2 つの撮
ュームレンダリングによる軟部組織表示が行えるように
影方法が中心をなしてきた.近年コンピュータの発展に
なってきた.その結果,コンピュータによる画像処理,
伴い画像のデジタル化が進み,新しいモダリティーの開
画像解析による適切な診断が可能になってきた.現在,
発が行われ臨床の現場に導入されるようになってきた.
多列センサーによる multi-detector CT(MDCT)により
その代表はエックス線 computed tomography(CT)ある
広範囲の組織を短時間のうちに撮影することが可能とな
いは magnetic resonance imaging(MRI)である.特に CT
った.歯科領域においても MDCT による撮影は一般的
の登場は放射線診断にとって新しい時代の始まりとなっ
なものとなってきている.各種画像再構成の一つである
1)
内視鏡モードは大腸などの内部空間をあたかも内視鏡で
現在 CT を代表とする新しい画像検査法に MRI, posi-
観察しているような画像構成のできる方法6−13)である
た .
tron emission CT(PET-CT), ultra sonography(US)など
(Fig 1).著者らはこの方法が口腔内へ応用できるかど
があり,診断に欠く事のできない方法となっている.こ
うかを検討した.口腔領域への応用は唾液腺管が考えら
れらの画像検査方法の特徴は従来の X 線フィルムを使
れる.すなわちワルトン管,ステノン管あるいは腺体内
用した方法とは異なり,各種センサーを用いたデジタル
画像形成法である.得られた情報信号はアナログ−デジ
タル変換されコンピュータによって各種画像再構成アル
ゴリズムで処理された後,画像形成後モニター上に表示
される.
CT は当初,シングルスライス CT として開発され2),
臨床上,画像診断の飛躍的な向上がもたらされた.従
来,体軸方向の横断面断層像を画像化することは技術的
に難しいとされていた.また同時に軟部組織と硬組織を
画像として明瞭に区別して表示することも難しいことで
あった.しかし CT はその技術的な進歩により体軸方向
に対する断層像の画像化あるいは軟部組織,硬組織の画
像の明瞭化が実現し診断能が飛躍的に向上した.その後
シングルスライススパイラル/ヘリカル CT の普及によ
り体軸方向の連続的離散的データの採取が可能となり 3
─────────────────────────────
§別刷請求先:小澤智宣,〒350-0283 埼玉県坂戸市けやき台 1-1
明海大学歯学部病態診断治療学講座歯科放射線学分野
Fig 1
Virtual endoscopy mode of MDCT.
114
小澤智宣・印南 永・小宅麗来ほか
明海歯学 38, 2009
導管に適応が可能であれば唾液腺疾患の画像診断の向上
ヤーファントム(以後ワイヤーファントムとする;Fig
に大いに寄与できるものと考えられる.
3)である.滷Wiener spectrum(WS)測定用ファントム
本研究は MDCT の画像表示法である内視鏡モードの
は直径 200 mm の円柱型のアクリルファントム(ニチゲ
歯科領域での臨床応用にあたり,MDCT の唾液腺撮影
ン,東京,以後水ファントムとする;Fig 4)で,内部
時における物理学的特性について検討した.特に診断可
に生理食塩水を満たしたもの,澆先端表示能計測用コー
能な組織の MDCT による最小分解能の評価,ノイズ特
ン状アクリルファントム(ニッシン,亀岡,京都,以後
性,あるいはガントリー内での位置依存性など,幾何学
ダクトファントムとする;Fig 5)は 14 mm×14 mm×
的について解析を行ったので報告する.
100 mm のアクリルブロックに底辺が直径 4.0 mm,高さ
材料および方法
1 .材料と装置
100 mm の円錐型の空洞をくり貫いたものを作製して実
験に用いた.
2 .方法
本 実 験 で は MDCT は SOMATOM Emotion 6 ( SIE-
撮像条件
MENS, München, Germany : SOMATOM ; Fig 2)を使用
実験 1)−4)に使用した撮像条件は頭頸部の撮像を行
した.この装置は 6 列センサーの MDCT(5.0 MHU, 0.8
う際に使用する条件で,最小限の被曝で診断可能な画像
秒/回転,最大ピッチ 10.8,最高スキャン画厚 40.5 mm/
が得られる条件14−15)である(Table 1).また撮像方向は
sec),使用する被写体として 3 種類のファントム漓直径
すべての実験で頭部から脚部方向とした.MTF の測定
60 mm のポリプロピレン製シリンジの中心に直径 0.2
方法はワイヤー法16−18)で行った.この方法はワイヤーか
mm の銅ワイヤーを固定し,内部に蒸留水を満たしたも
ら得られた画像データを point spread function(PSF)
,line
ので,modulation transfer function(MTF)計測用銅ワイ
spread function(LSF)に変換し MTF を測定する方法
Fig 2
MDCT.
Fig 4
Fig 3
MTF measurement phantom.
Wiener spectrum measurement phantom.
内視鏡モードの唾液腺管応用への検討
Fig 5
Cone-shaped acrylic phantom.
Table 1
Basal condition of experiment 1−4.
Slice collimation
Reconstruction
Pitch
mAs
Voltage
Sharpness
Pixel
FOV
Table 2
Fig 6
115
Experimental arrangement of MTF.
Basal condition of experiment 5−6.
Slice collimation
Reconstruction : 1.0 mm
: 2.0 mm
で,構造が簡便であるため,ファントムを回転中心付近
に配置することにより位置依存性,再構成開始角度,幾
何学的影響を極力減らすことが可能である19, 20).WS 値
はノイズスペクトルからフーリエ 変 換 し WS を求め
た.得られた画像データによる MTF 及び WS の空間周
波数解析は内田ら21, 22)の記載の方法を行った.
実験 5),6)に使用した条件は,実験 1)−4)を基本
1.0 mm
1.25 mm−overlap 0.6 mm
1.0
60 mAs
130 kV
H 70 s
512×512
300 mm×300 mm
: 3.0 mm
Pitch
mAs
Voltage
Sharpness
Pixel
FOV
1.0 mm・2.0 mm・3.0 mm
1.25 mm overlap 0.6 mm/4.0 mm
overlap 2.0 mm
2.5 mm overlap 1.2 mm / 4.0 mm
overlap 2.0 mm
4.0 mm overlap 2.0 mm
1.0
60 mAs
130 kV
H 70 s
512×512
300 mm×300 mm
にスライス厚と reconstruction 条件のみを変化させて行
った.1 mm, 2 mm 及び 3 mm 厚スライスを撮像し,recon-
行に固定(Fig 6)する.次に基本条件(Table 1)から
struction 時にそれぞれの厚みの画像が次の画像と半分に
下記の一定の条件だけを変化させたのち,field of view
重なり合うように設定したものと,1 mm スライスと 2
(FOV)300 mm×300 mm にて撮像を行った.今回撮像
mm スライスの reconstruction 条件が 3 mm スライスと
に用いた条件は管電圧(80 kV, 110 kV, 130 kV),管電
同じ reconstruction 条件になるように設定したものとを
流(20 mAs, 40 mAs, 60 mAs, 80 mAs, 100 mAs, 120 mAs,
使用した(Table 2).
140 mAs),pitch(0.50, 0.75, 1.00, 1.25, 1.50),reconstruc-
1 )ガントリー中心部における MTF 解析
tion ( 0.2 mm , 0.4 mm , 0.6 mm , 0.8 mm , 1.0 mm , 1.2
0.2 mm 銅ワイヤーがガントリー中心から 20 mm オフ
mm),sharpness(H 10s, H 30s, H 50s, H 70s, H 90s)の 5
セットした位置に来るように,生理食塩水で満たされた
種類をそれぞれ条件変化させ 5 回撮像を行った.撮像し
ワイヤーファントムをアクリル容器上に Z 軸方向と平
たデータはファントムの中心部に合わせ,FOV 60 mm
116
小澤智宣・印南 永・小宅麗来ほか
×60 mm に再構成23)しなおしたのち,digital imaging and
明海歯学 38, 2009
ファントムをガントリー中心部に Z 軸方向と平行とな
communication in medicine(DICOM)形式に変換してそ
るように設置し,それぞれ X 軸方向,Y 軸方向,XY
れぞれ MTF を測定,5 回平均値を求めた.
平面上の 45°方向(XY 軸)及び Z 軸方向の 4 つの方
2 )ガントリー内位置変化における MTF 解析
向にオフセット(center, 20 mm, 40 mm, 60 mm, 80 mm,
ガントリー中心部に実験 1)と同様な条件でワイヤー
100 mm)させ 5 回撮像を行った(FOV 300 mm×300
mm).その後実験 1)と同様に,撮像したデータをファ
ントムの中心部に合わせ,FOV 60 mm×60 mm に再構
成し直した後,DICOM 形式に変換しそれぞれ MTF を
測定,5 回平均値を求めた.
3 )ガントリー中心部における WS 解析
ガントリー中心部に水ファントムをアクリル上に Z
軸方向と平行となるように固定(Fig 7)し,実験 2)と
同様,基本となる条件から変化させ 5 回撮像を行った
(FOV 300 mm×300 mm).撮像したデータは空気やアク
リルが測定範囲内に写り込まないようにするため FOV
150 mm×150 mm に再構成しなおし,DICOM 形式に変
換してそれぞれ平均値の WS を測定した.
Fig 7
Experimental arrangement of WS.
4 )ガントリー内位置変化における WS 解析
ガントリー中心部に実験 3)と同様に水ファントムを
設置し,それぞれ X 軸方向,Y 軸方向,XY 軸及び Z
軸方向の 4 つの方向に移動(center, 20 mm, 40 mm, 60
mm, 80 mm, 100 mm)させ 5 回撮像を行った(FOV 300
mm×300 mm).その後実験 4)と同様にその平均値の
WS を測定した.
5 )ダクトファントムによる先端表示能解析
ガントリー中心部にダクトファントムの先端が頭頂方
向に来るように内部に空気を封入したファントムを生理
食塩水を満たしたアクリルの水槽内に固定した(Fig
8).その後,X 軸から Y 軸方向(X−Y 軸),Z 軸から
X 軸方向(Z−X 軸),Z 軸から Y 軸方向(Z−Y 軸)に
Fig 8 Experimental arrangement of using cone-shaped acrylic
phantom.
Fig 9
Direction where duct phantom is moved.
それぞれ角度(0°
,15°
,30°
,45°
,60°
,75°
,90°)を 2
方向(Fig 9)(A-side と B-side とした)に変化させ,最
117
内視鏡モードの唾液腺管応用への検討
終的に計 180°変化させ撮像を行った.撮像スライスは
像を行った.画像解析は MPR 上にてダクトファントム
下記の 5 通りで各 5 回ずつ撮像を行った.
に対して垂直になるようにダクトの実寸上の 直 径 2
・1 mm スライス
(再構成スライス厚 1.25 mm 再構成間隔 0.6 mm)
mm φ と 4 mm φ の位置をスライスし,二値化(ウィン
・2 mm スライス
(再構成スライス厚 2.5 mm 再構成間隔 1.2 mm)
ドウ幅 1,センター値−400)したものをモニター上で
・3 mm スライス
(再構成スライス厚 4.0 mm 再構成間隔 2.0 mm)
最大まで拡大し長径と短径の比を計測し平均値をだし
・2 mm スライス
(再構成スライス厚 4.0 mm 再構成間隔 2.0 mm)
た.統計学的処理は実験 5 同様に角度ごとに行った.尚
・1 mm スライス
(再構成スライス厚 4.0 mm 再構成間隔 2.0 mm)
2 mm φ の位置で先端が見えないものに関しては除外し
画像解析は MPR 上にてダクトファントムに対して垂
た.統計学的処理は A-side と B-side に対し同じ角度,
直になるように 100 枚のスライスを作成し,実寸大(最
条件ごとに行い,有意水準 5% において unpaired t-test
も再現精度が良いとされる Z 軸に平行にしたものを基
により比較検討をおこなった.
準24)とした)に二値化(ウィンドウ幅 1,センター値−
結
400)したものをモニター上で最大まで拡大し画面上で
果
1 .ガントリー中心部における MTF 解析
ダクトが見えなくなるところまで計測し平均値をだし
た.統計学的処理は A-side と B-side に対し同じ角度・
Reconstruction, pitch に関してはどの条件でも条件範囲
条件ごとに行い,有意水準 5% において unpaired t-test
内においては差はみられなかった(Fig 10a, b).mAs
により比較検討を行った.
に関しては 20 mAs のみで差がみられたが,その他の条
6 )ダクトファントムによる真円度解析
件では著明な差は認められなかった(Fig 11).Voltage
ガントリー中心部にダクトファントムの先端が頭頂方
に関しては 80 kV のみが低い値を示したが,110 kV と
向に来るように内部に空気を封入したファントムを生理
130 kV においては差は見られなかった(Fig 12).一方
食塩水を満たしたアクリルの水槽内に固定した.撮影条
sharpness に関してはすべての条件で著明な差がみられ
件は実験 5)と同様に行い,それぞれ角度ごとに 5 回撮
た.特に硬組織での H 90s で最も MTF が良好となり,
1
1
0.8
3.0
2.0
1.0
0.5
0.33
0.6
0.4
0.2
MTF
MTF
0.8
0.50
0.75
1.00
1.25
1.50
0.6
0.4
0.2
0
0
0
0.5
1
1.5
cycles/mm
0
0.5
a : reconstruction
Fig 10
1.5
b : pitch
MTF in center part of gantry.
1
1
20mAs
40mAs
60mAs
80mAs
100mAs
120mAs
140mAs
0.6
0.4
0.8
MTF
0.8
MTF
1
cycles/mm
0.6
80KV
110KV
130KV
0.4
0.2
0.2
0
0
0
Fig 11
0.5
1
cycles/mm
MTF of mAs in center part of gantry.
1.5
0
Fig 12
0.5
1
cycles/mm
1.5
MTF of voltage in center part of gantry.
118
小澤智宣・印南 永・小宅麗来ほか
明海歯学 38, 2009
1
1
0.8
H10s
H30s
H50s
H70s
H90s
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
0
0.5
Fig 13
1
0
1.5
cycles/mm
MTF of sharpness in center part of gantry.
Fig 15
1
0.5
1
1.5
cycles/mm
MTF in movement Z axis from center part of gantry.
1
0.8
center
20mm
40mm
60mm
80mm
100mm
0.6
0.4
0.8
MTF
MTF
center
20mm
40mm
60mm
80mm
100mm
0.6
MTF
MTF
0.8
0.2
center
20mm
40mm
60mm
80mm
100mm
0.6
0.4
0.2
0
0
0
0.5
1
1.5
cycles/mm
0
0.5
a : X axis
1
cycles/mm
1.5
b : Y axis
1
MTF
0.8
center
20mm
40mm
60mm
80mm
100mm
0.6
0.4
0.2
0
0
0.5
1
1.5
cycles/mm
c : XY axis
Fig 14
MTF in movement from center part of gantry.
5
5
10
10
4
4
10
10
3.0
2.0
1.0
0.5
0.33
2
10
3
WS
WS
3
10
0.50
0.75
1.00
1.25
1.50
10
2
10
10
10
1
1
0
0.5
cycles/mm
a : reconstruction
Fig 16
WS in center part of gantry.
1
0
0.5
cycles/mm
b : pitch
1
内視鏡モードの唾液腺管応用への検討
5
軟組織条件になるにつれて H 10s まで低下がみられた
10
(Fig 13).
4
10
2 .ガントリー内位置変化における MTF 解析
3
WS
119
10
X 軸方向,Y 軸方向,XY 軸方向では中心から 20 mm
80kV
110KV
130KV
2
10
にワイヤーファントムをオフセットした場合が最も良好
であった.またこの 3 軸に関しては center と 40 mm オ
10
フセットした場合が同じ結果で,それ以上ワイヤーファ
1
ントムをオフセットするにつれて低下がみられた(Fig
0
0.5
1
cycles/mm
Fig 17
14a−c).Z 軸方向では他の 3 軸とは異なりすべての距離
において変化がみられなかった(Fig 15).
WS of voltage in center part of gantry.
5
5
10
10
4
4
10
10
H10s
H30s
H50s
H70s
H90s
2
10
20mAs
40mAs
60mAs
80mAs
100mAs
120mAs
140mAs
3
WS
WS
3
10
10
2
10
10
10
1
1
0
0.5
1
cycles/mm
0
0.5
cycles/mm
a : sharpness
Fig 18
b : mAs
WS in center part of gantry.
5
5
10
10
4
4
10
10
10
2
10
center
20mm
40mm
60mm
80mm
100mm
3
WS
center
20mm
40mm
60mm
80mm
100mm
3
WS
1
10
2
10
10
10
1
1
0
0.5
0
1
cycles/mm
0.5
cycles/mm
a : X axis
b : Y axis
5
10
4
10
center
20mm
40mm
60mm
80mm
100mm
WS
3
10
2
10
10
1
0
0.5
cycles/mm
c : XY axis
Fig 19
WS in movement from center part of gantry.
1
1
120
小澤智宣・印南 永・小宅麗来ほか
明海歯学 38, 2009
3 .ガントリー中心部における WS 解析
Table 3 Statistics processing diameter in point according to
angle of Z−X axis.
Reconstruction, pitch に関してはほとんどどの条件でも
差はみられなかった(Fig 16a, b).Voltage に関して 80
Reconstruction
Connection
Phantom Angle
kV が 110 kV と 130 kV と比べ低下がみとめられ(Fig
17),sharpness, mAs では値が大きくなるにつれて低下
がみられた(Fig 18a, b).
4 .ガントリー内位置変化における WS 解析
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
*
*
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
*
*
X 軸方向,Y 軸方向,XY 軸方向では center と 20 mm
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
オフセットした場合が最も良好であった.40 mm 以上
にオフセットするにと序々に低下がみられた(Fig 19a−
c).Z 軸方向では他の 3 軸とは異なりすべての距離にお
Table 4 Statistics processing diameter in point according to
angle of Z−Y axis.
5
10
Phantom Angle
Reconstruction
Connection
4
10
center
20mm
40mm
60mm
80mm
100mm
WS
3
10
2
10
10
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
*
*
*
*
*
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
*
*
*
*
*
*
*
*
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
1
0
0.5
1
cycles/mm
Fig 20
WS in movement Z axis from center part of gantry.
2.5
2
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
1.5
1
0.5
Diameter in Point (mm)
Diameter in Point (mm)
2.5
2
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
1.5
1
0.5
0
0
0°
15°
30°
45°
60°
75°
0°
90°
15°
Phantom angle
45°
60°
75°
90°
Phantom angle
a : A-side in Z−X axis
b : B-side in Z−X axis
2.5
2.5
2
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
1.5
1
0.5
0
Diameter in Point (mm)
Diameter in Point (mm)
30°
2
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
1.5
1
0.5
0
0°
15°
30°
45°
60°
75°
Phantom angle
c : A-side in Z−Y axis
Fig 21
Diameter in point.
90°
0°
15°
30°
45°
60°
75°
Phantom angle
d : B-side in Z−Y axis
90°
内視鏡モードの唾液腺管応用への検討
いて変化がなかった(Fig 20).
Table 5 Statistics processing diameter in point according to
angle of X−Y axis.
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
5 .ダクトファントムによる先端表示能解析
1 )Z−X 軸,Z−Y 軸
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
15°の 位 置 で ほ と ん ど の 条 件 に お い て 有 意 差 ( p
*
*
*
*
*
*
<0.05)が認められた(Tables 3, 4).また A-side, B-side
*
*
ての条件において低下がみられた.また先端径の太さは
とも Z 軸から角度がつくにつれて 75°をピークにすべ
1 mm(1.25−0.6),2 mm(2.5−1.2),1 mm(4.0−2.0),2
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
mm(4.0−2.0),3 mm(4.0−2.0)の順番で分解能が良
く,細いところまで観察できた.同じスライス厚であっ
2.5
2
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
1.5
1
0.5
Diameter in Point (mm)
Diameter in Point (mm)
2.5
2
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
1.5
1
0.5
0
0
0°
15°
30°
45°
60°
75°
90°
0°
15°
Phantom angle
45°
60°
75°
90°
b : B-side in X−Y axis
Diameter in point.
3.5
3.5
3
3
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
Length Diameter
Length Diameter
Fig 22
30°
Phantom angle
a : A-side in X−Y axis
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
1.5
1.5
1
1
0°
15°
30°
45°
60°
75°
90°
0°
15°
Phantom angle
30°
45°
60°
75°
90°
Phantom angle
a : A-side in Z−X axis
b : B-side in Z−X axis
3.5
3.5
3
3
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
1.5
Length Diameter
Length Diameter
Reconstruction
Connection
Phantom Angle
121
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
1.5
1
1
0°
15°
30°
45°
60°
75°
Phantom angle
c : A-side in Z−Y axis
Fig 23
Length diameter in 2 mmφ .
90°
0°
15°
30°
45°
60°
75°
Phantom angle
d : B-side in Z−Y axis
90°
122
小澤智宣・印南 永・小宅麗来ほか
明海歯学 38, 2009
ても reconstruction 時の pitch が厚くなる程分解能が低
2 )X−Y 軸
下する傾向にあった(Fig 21a−d).
すべての角度において角度依存性がなく同一条件の
reconstruction 時の変化が少なかった(Table 5).またス
ライス厚は厚く,reconstruction 時の pitch が厚くなる程
Table 6 Statistics processing inside diameter at 2 mmφ according to angle of Z−X axis.
Reconstruction
Connection
Phantom Angle
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
分解能は低下した(Fig 22a, b).
6 .ダクトファントムによる真円度解析
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
1 )2 mm φ Z−X 軸,Z−Y 軸
Z−X 軸,Z−Y 軸ともに Z 軸から X 軸,Y 軸方向に
*
角度がつくにつれて長径/短径比が増大する傾向にあっ
*
た.真円度はスライス厚,reconstruction 厚が小さい程
良く,一番真円形に近かった角度はどの条件でも Z 軸
方向の 0°であった.一番比率が大きく真円形から遠か
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
Table 7 Statistics processing inside diameter at 2 mmφ according to angle of Z−Y axis.
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
Phantom Angle
Reconstruction
Connection
Reconstruction
Connection
Phantom Angle
Table 9 Statistics processing inside diameter at 4 mm φ according to angle of Z−X axis.
*
*
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
*
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
*
*
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
Table 8 Statistics processing inside diameter at 2 mmφ according to angle of X−Y axis.
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
Table 10 Statistics processing inside diameter at 4 mm φ according to angle of Z−Y axis.
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
Phantom Angle
Reconstruction
Connection
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
*
*
*
*
*
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
*
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
*
*
*
3.5
3
2.5
2
Length Diameter
3
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
1.5
1.5
1
1
0°
15°
30°
45°
60°
75°
Phantom angle
a : A-side in X−Y axis
Fig 24
Length diameter in 2 mmφ .
90°
*
*
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
3.5
Length Diameter
Reconstruction
Connection
Phantom Angle
*
0°
15°
30°
45°
60°
75°
Phantom angle
b : B-side in X−Y axis
90°
3.5
3.5
3
3
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
Length Diameter
Length Diameter
内視鏡モードの唾液腺管応用への検討
1.5
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
1.5
1
1
0°
15°
30°
45°
60°
75°
90°
0°
15°
30°
Phantom angle
60°
75°
90°
b : B-side in Z−X axis
3.5
3.5
3
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
Length Diameter
3
Length Diameter
45°
Phantom angle
a : A-side in Z−X axis
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
1.5
1.5
1
1
0°
15°
30°
45°
60°
75°
0°
90°
15°
30°
Phantom angle
Fig 25
45°
60°
75°
90°
Phantom angle
c : A-side in Z−Y axis
d : B-side in Z−Y axis
Length diameter in 4 mmφ .
3.5
3.5
3
3
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
1.5
Length Diameter
Length Diameter
123
1mm1.25-0.6
2mm 2.5-1.2
3mm 4.0-2.0
2mm 4.0-2.0
1mm 4.0-2.0
2.5
2
1.5
1
1
0°
15°
30°
45°
60°
75°
90°
0°
15°
30°
Phantom angle
a : A-side in X−Y axis
Fig 26
45°
60°
75°
90°
Phantom angle
b : B-side in X−Y axis
Length diameter in 4 mmφ .
ったのが 90°であった.その比率最大は,3 mm(4.0−
2.0)の Z−X 軸での 2.81 と Z−Y 軸での 2.91 であった.
Table 11 Statistics processing inside diameter at 4 mm φ according to angle of X−Y axis.
くなる程増大の比率が顕著になった(Fig 23a−d).また
A-side, B-side の有意差は角度別では大きな変化は認め
られなかった(Tables 6, 7).
2 )2 mm φ X−Y 軸
Reconstruction
Connection
またスライス厚は厚く,reconstruction 時のピッチが厚
Phantom Angle
0° 15° 30° 45° 60° 75° 90°
1 mm
2 mm
3 mm
2 mm
1 mm
*
1.25−0.6
2.5−1.2
4.0−2.0
4.0−2.0
4.0−2.0
*
X−Y 軸内では一定した真円度であった.真円度はス
ライス 厚 ,reconstruction 厚 が 小 さ い ほ ど 良 い .3 mm
(4.0−2.0)スライスの場合にはどの角度においても約 3
(unpaired t-test n=5, p<0.05)
124
小澤智宣・印南 永・小宅麗来ほか
明海歯学 38, 2009
倍の比率になりひずみが大きくなった(Fig 24a, b).ま
精度が良いワイヤー法を推奨している.本実験では円柱
た A-side, B-side の有意差は角度別では大きな変化は認
ファントム内に直径 0.2 mm の銅線を挿入し,エリアシ
められなかった(Table 8).
ングの影響を受けないよう FOV を小さくとり,0.2 mm
3 )4 mm φ Z−X 軸,Z−Y 軸
以下のサンプリングでワイヤーをスキャンしワイヤー像
Z−X 軸,Z−Y 軸ともに Z 軸から X 軸,Y 軸方向に
角度がつくにつれて長径/短径比が増大する傾向にあっ
の LSF を求めた.この LSF をフーリエ変換することに
よって MTF を求め空間分解能の評価を行った.
た.一番真円形に近かった角度はどの条件でも Z 軸方
近年 MDCT の登場により CT 画像の体軸方向の画像
向の 0°で,一番比率が大きく真円形から遠かったのが
評価が重要となってきた.つまり MDCT は寝台移動速
90°であった.その最大は,3 mm(4.0−2.0)の Z−X 軸
度,スライス厚,画像構成間隔,補間計算方法の設定に
での 1.61 と Z−Y axis での 1.60 であった.またスライス
より,従来の CT としては異なる画像特性が現れる.し
厚は厚く,reconstruction 時のピッチが厚くなる程変化
たがって画像評価には従来の CT 評価基準で不十分であ
したが,増大の比率は直径 2 mm ほどではなかった(Fig
る.CT の進歩が早く,規定された評価法,ファントム
25a−d).また A-side, B-side の有意差は直径 2 mm の時
はまだない状況である.したがって本実験においてはワ
と同様に角度別に大きな変化は認められなかった(Ta-
イヤーファントム法を使用し MTF を求めた.
bles 9, 10).
1 .ガントリー中心部における MTF, WS 解析
4 )4 mm φ X−Y 軸
条件変化の MTF 測定,WS 測定での変化の割合が大
X−Y 軸内では一定した真円度であった.真円度はス
きかったのは再構成関数の sharpness と voltage の 2 種
ライス厚,reconstruction 厚が小さいほど良い.一番真
類であった.Sharpness について最も MTF が良好であ
円度が低かった 3 mm(4.0−2.0)スライスの場合でもど
ったのは硬組織条件の H 90s であるが,橘ら31)の報告に
の角度においても約 1.5 倍強程度となり安定していた
よると実際にアクリル球を 3 D 画像で測定するとエッ
(Fig 26a, b).また A-side, B-side の有意差は直径 2 mm
ジ強調の強い再構成関数を用いた場合歪みが大きくなる
の時と同様に顕著な変化はみられなかった(Table 11).
としている.実際に応用する再構成関数は MTF, WS と
考
実際の構成画像を考慮し総合的な検討が必要であると考
察
えられる.Voltage では,MTF で 80 kV, 110 kV, 130 kV
21 世紀初頭で最も注目されている放射線医学の技術
の順で大きくなるにつれて良好な結果が得られたが,110
の一つに,MDCT がある.ヘリカル CT は(シングル
kV と 130 kV とでは 80 kV ほど差がみられなかった.
スライスヘリカル CT)は,1990 年に Kalender ら
25, 26)
に
また WS でも MTF と同様な結果がえられた.最も良好
よって発表され,その有用性の故に急速に広がった技術
な画像を得ようとするとどうしても必要以上の線量が求
である.最も大きな利点は,漓高分解能の画像が得られ
められるが,MDCT の被曝ということを考えるとでき
ること,滷短時間撮像が可能なこと,澆広い領域の撮像
るだけ少ない線量で最も効率の良い画像が求められ
27, 28)
.MDCT は 1998 年頃から臨
る32).130 kV と 110 kV とで観察に支障がない程度の差
床に広がってきたが,ヘリカル CT の有用性を高めてき
であれば 110 kV が最も適していると考えられる.mAs
たといえる.MDCT を応用することにより,心電図同
では MTF で最も低下が早かった 20 mAs 以外の 40 mAs
期画像,脳機能画像,CT 透視,三次元高分解能画像,
から 140 mAs までではほとんど変化がなかった.山本
CT 血管造影等その有用性のために臨床応用が急速に広
ら33)の報告によると 10 mAs から 300 mAs まで変化させ
がってきた.今回我々はその CT の応用技術の一つであ
て MTF を測定した場合,50 mAs から 300 mAs までは
る内視鏡モードを口腔内に応用できないかと考えファン
大体同じ曲線を描き,それ以下の 10 mAs と 30 mAs と
トムを使った画像解析により基礎的な研究を行った.こ
ではかなりの開きがあると報告している.このことから
の結果から唾液腺への画像診断法の応用を確立すること
300 mAs までの線量を受けなくても 40 mAs 以上であれ
を目的とした.
ば MTF, WS は良好だということがわかった.一方,pitch
が行えること等である
現在 CT 装置の評価法は,日本医学放射線学会と日本
と reconstruction の条件変化においては MTF, WS とも
放射線技術学会による基準16, 29, 30)がある.CT の空間分解
変化はあまり認められなかった.Pitch が 2.5 以上であ
能評価は,CT スライス面におけるワイヤー法とコント
ると MTF, WS が低下するという報告34)があるが,これ
ラスト法の 2 種類がある.各学会の基準では簡便で測定
は普段撮像している条件とはかけはなれているため今回
内視鏡モードの唾液腺管応用への検討
125
実験では考慮しなかった.今回の結果ではあまり変化が
ころまで観察できたと考えられる.また 90°の位置につ
認められなかったが,3 D に再現したときはこの pitch
いてよくみえるようになったのは 2 値化においてコンピ
と reconstruction が最も影響を与える条件35)になってく
ュータのソフト上での閾値の条件が関わっているのだと
るので今後の検討と課題としたい.
考えられる.撮影時は常に寝台が移動しているので長く
2 .ガントリー位置変化における MTF, WS 解析
引き伸ばされた内面がコンピュータの処理で先端が見え
ガントリー位置変化による測定では X 軸,Y 軸,及
び X−Y 軸の中間の 45°方向では中心から 20 mm の位
るようになりこのような結果になったと考えられる.
4 .ダクトファントムによる真円度解析
置で最も MTF が良好であった.普通回転中心が最も良
ダクトファントムを使った 2 mm φ と 4 mm φ の表示
好になると考えられる.しかし,中心は常に検出器の中
能解析では,X−Y 軸では A, B-side とも角度別の特徴的
心付近に投影されるため,限られたアライメントのデー
な変化は認められなかった.これは実験 6 の結果と同じ
タからの画像形成となる特異的な状況になると考えられ
様にダクトファントムの設置している X−Y 平面とスラ
る.したがって,中心から僅かにずらすことによって複
イス方向が常に一定の角度で入射しているためと考えら
数のセンサーからのデータの取得が可能となるために一
れる.角度変化による変化はほとんど認めらないもの
番良好な結果になったと思われる.また今回 center と 40
の,再現性が他の平面と比べ 90°以外すべてにおいて再
mm の位置でも大体同じ曲線であったことからガントリ
現性が悪いので,この平面上を走行する構造物は信憑性
ー中心から 40 mm 以内の位置で良い画像が得られると
に乏しくなる.一方,Z−X 軸と Z−Y 軸では Z 軸方向
考えられた.WS では MTF とは違い,ROI を広範囲に
にファントムを向けた場合,細い 2 mm φ でも再現性が
設定しているため MTF のような特異的な結果が得られ
実際のファントムとほぼ変わらないことがわかる.実際
なかったが center から離れるにしたがって低下するの
ダクトを観察する場合,実験結果から走行方向と Z 軸
で,中心に近いほどノイズが少ないことがわかった.Z
をできるだけ平行に撮像することが最も信頼性のおける
軸では他の軸とは違い,center から 100 mm までほぼ同
画像を得ることができる.唾液腺管は耳下腺のステノン
じ曲線であった.これは MDCT の撮像でベッドが Z 軸
管でも太さが 3 mm39)なので,今回実験で行った 4 mm φ
方向に移動しながら連続したデータの採取を行っている
は解剖学的見地40)から実際より太いものではあるが,内
ため実際は移動していても画像は常にガントリー中心の
径が太ければ太いほど再現性が良く,細ければ細いほど
データを測定しているためと思われる.また,今回のフ
再現性が悪くなることがわかった.以上の結果から細い
ァントム実験では Z 軸方向の位置変化の考察のみであ
唾液腺を観察対象と考えた場合,十分にその走行方向を
36)
ったが,木村ら の報告によると,Z−Y 軸の場合,0°
考慮して撮影に望まなければならないことがわかった.
が MTF 最も良好になり,90°になると低下していき,
また実際の口腔内には金属などの補綴物があることが多
X−Y 軸の場合,変化がみられなかったとしている.こ
く,アーチファクトの原因ともなるのでガントリーの角
のことからも最も撮影に適した方向と位置は Z 軸に平
度を変化させたりすると効果的41, 42)と思われる.しかし
行で,中心から 40 mm 以内であることがわかった.
角度が大きくなると採取した MPR 画像が XYZ 軸とも
3 .ダクトファントムによる先端表示能解析
に空間分解能の劣化が認められる43)ことから,できる限
ダクトファントムを使った先端径の実験では,X−Y
軸では A, B-side とも角度別の特徴的な変化は認められ
なかった.これはダクトファントムの設置している X−
Y 平面とスライス方向が常に一定の角度で入射してい
り頭部の位置と角度の調整のみの最適な条件で撮像する
ことが望ましいと思われる.
結
論
るためと思われる.Z−X 軸及び Z−Y 軸では 15°の位置
MDCT を使用して口腔内の唾液腺管の仮想内視鏡モ
ではほとんどの条件においても有意差が認められた.こ
ードの応用を目的として,2 種類のファントムを使って
れは寝台を移動させながら時計回りにガントリーが回転
検討した結果.以下の結論を得た.
して撮像されているため,体軸に対して垂直に切ってい
1 )撮像は 20 mAs 以下,及び 80 kV 以下の条件で,MTF
るように見えていても実際はファントムに対して斜めに
切っているためと考えられる37, 38).その為,一方の 15°
傾けたファントムに対し,切ったスライス方向に対して
エックス線が垂直にファントムに入射するので細かいと
及び WS で低下が認められた.
2 )Pitch, reconstruction は条件範囲内での変化は MTF,
WS に影響されにくいことがわかった.
3 )再構成関数での画像処理が最も MTF, WS が影響さ
126
小澤智宣・印南 永・小宅麗来ほか
れやすいことが示唆され,再構成関数の値が小さくな
るにつれて低下がみられた.
4 )観察する部位をガントリー中心から半径 40 mm 以
内で撮像した場合,良好な画像が得られることが示唆
された.
5 )より細いダクトの中を観察したい場合,スライス厚
は薄く,reconstruction も細かい条件で行ったほうが
良好な再現性が得られることが示唆された.
6 )歪のないダクトを観察したい場合,ダクトの走行に
対して Z 軸方向にできるだけ平行,もしくはスライ
ス方向に垂直になる 15°方向以内での傾きで撮像する
場合,歪みの少ない画像が得られることが示唆され
た.
7 )直径 4 mm 以上の径のダクトでは画像の変化が少な
いが,細くなるにつれて内面の形態に影響が出やすい
ことが認められた.したがって角度に関しては対象と
する構造物の走行に合わせて撮像方向を決定した方が
よいことがわかった.
稿を終えるにあたり,御助言を賜りました機能保存回復
学講座歯科生体材料学分野 中嶌 裕教授,形態機能成育
学講座生理学分野 外崎肇一教授に深く感謝致します.
尚,本論文の要旨は日本歯科放射線学会第 49 回学術大
会(愛知)及び日本歯科放射線学会第 207 回関東地方会・
第 28 回北日本地方会・第 16 回合同地方会(福島)におい
て発表した.
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(受付日:2009 年 5 月 28 日
受理日:2009 年 6 月 17 日)
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