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27号 - 北摂里山博物館

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27号 - 北摂里山博物館
2013
清荒神社叢林のタマミズキ 撮影・森本敏一
も く じ
自然離れを助長する予断と偏見・・・・・・足立 勲 1
環境体験学習 宝塚市立西山小学校編・・・・編集部 11
刺すハチ・刺さないハチ・・・・・・・・・大谷 剛 2
こんなものみーつけた・・・・・・・
続・宝塚の貝類・・・・・・・・東 良雄・足立 勲 5
足立 勲・中所ゆう子・松田和美・菊田 穣 13
北摂里山 松尾湿原 スズメウリは多年草か・・・・・・・・・・・編集部 15
戻ってきたハッチョウトンボ・・・・・足立 勲 8
2012 年度事業報告 ・・・・・・・・・・・・事務局 16
宝塚の山 (3)・・・・・・・・・・・・・・森田 至 9
思い出日記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
自然離れを助長する予断と偏見
足 立 勲
わたしの年代では爬虫類嫌いは圧倒的に多数派で、
ニホンマムシについても予断と偏見、迷信が沢山あ
わたしも、いまだに苦手である。ところが、近ごろは
る。口から子どもを産む、そのために邪魔になる毒牙
トカゲやカエルが好きでたまらないといった都会っ子
をヒトなどに噛付いて落とす、1m 程も飛びつく、赤
に出会う機会も多く、実に羨ましいと思う。好きと嫌
まむしは精力剤として効果抜群などと、信じている大
いという正反対の心情を分ける要因は、幼少年期にお
人や子どもが田舎には多いのだ。このような迷信を人
ける自然体験教育の在り方にありそうである。自然度
間の予断と偏見がでっち上げたということを教材にし
の高い環境で育った田舎っ子の中に 嫌い派 が多い
たいと思い、ヘビ嫌いのわたしが過去に 2 年間飼育観
のはどうしたことなのか。
察をした。
それは有毒生物との付き合い方に顕著に現れる。ハ
ニホンマムシは狩りの手段としての毒牙と熱セン
チは有毒動物の事故件数ではトップで、怖い昆虫の代
サーを有しており、好物のネズミ類を 20 ∼ 30 日毎
表にあげられる。教室にハチらしき昆虫が 1 匹現れて
に与える、脱皮前は黒褐色でも脱皮後は赤マムシに変
も、怖い昆虫と決め込んで、パニックになることも珍
身、口から産むというのはまっかな嘘で、卵胎生で尾
しくない。子どもがシマヘビを見つけて遊んでいると、
部生殖器から生まれる。当たり前のことでも実験や観
引率者がキャーと叫び、全員を遠ざける場面に遭遇す
察による確認は面白いうえに、説得力抜群の教材にな
ることもあった。これらは科学的な知識に基づいた考
る。
え方や行動とはとても言えない。
おそらく有毒生物から身を守るために、昔から大人
有毒生物に対する予断と偏見はどのようにして蓄積
が教え込んだ「誤った知識」も危ない生き物に近づか
されるのだろうか。被害に遭遇する、恐怖心が生じる、
せないためには「重要な知識」であったのだろう。意
触らぬ神にたたりなしとする態度が最も安全・安心と
外と豊かな自然に恵まれた農山村の方でよく聞く話
なり、PTSD を伴うのだ。自己防衛のためには止むを
だ。このように科学的な見方によらない予断と偏見が
得ないとは云え、動物からみればヒトは捕食対象では
自然離れを助長する一因になっている事例はいくらで
なく外敵だから、命がけで自己防衛をしているのは、
もありそうだ。したがって、自然体験の機会は多いに
実は動物たちであるはずである。
越したことはないが、今後は正しく指導できる人材の
育成こそが重要になってくる。 ( 会長 )
間伐後の猪ノ倉谷
−1−
刺すハチ、刺さないハチ
大谷 剛 ( 兵庫県立大学名誉教授 )
はじめに
枚に進化した合理的なグループで、まだまだ新種も見
ハチをさわったとたんに焼け付くような痛み・・・
つかるだろう。 多くの人は小さいときから何度となくこの痛みを経験
最後の第四位が、ハチ・アリの仲間である。4776 種。
している。再び経験したいとは思わない痛みは、「ハ
こんなに種数が多いのは寄生バチのグループが半数を
チは刺すもの」という印象を過剰に植え付ける。「刺
越えるからだ。そもそも種類の多い「昆虫」が寄生の
さないハチ」の存在は無視される。過剰印象だから、
対象である。未発見の寄主もまだまだいるに違いない。
仕方がないが、「刺すハチ」と「刺さないハチ」で、
つまり、新種発見の余地がここにも残されている。
どちらが多いと思われるだろうか。答えをすぐに出し
てはつまらないので、もう少しヒントを出してから、
再度質問しよう。
ハチ目昆虫
ハチ目 ( もく ) は、胸と腹の間がくびれていない「広
腰亜目 ( こうようあもく )」と、はっきりくびれてい
日本の 4 大昆虫
る「細腰亜目 ( さいようあもく )」に大別される(図 2)。
日本で採集できる昆虫は、名前がついているものに
限定すると、約 3 万 2 千種である。このうち、4000
種を超えるグループは四つあって、4 大昆虫という(図
1 参照)。第一位は、甲虫類。前翅が硬くなって「鞘翅 ( さ
やばね )」になっている仲間で、10319 種もいる。つ
まり、ランダムに昆虫を 3 匹捕らえたら、1 匹は甲虫
という計算だ。第二位は、チョウ・ガの仲間。大きな
翅に粉がついているヤツだ。とくに武器などはもたず、
口はストローみたいな長い吻となり、くるくるとゼン
マイ状に巻いているので、噛むこともできない。しか
に対して有利になっているらしい。6250 種。第三位は、
図 2. ハチ目昆虫のグループ分け。大きく 2 目に分けられ、
細腰亜目の一部がつかめば「刺す」有剣類に分けられる(『昆
虫─大きくなれない擬態者たち(大谷剛 2005)より』)。
ハエ・カ・アブの仲間で 5300 種。多くは不快昆虫で、
前者に含まれるハバチ・キバチ・クキバチの仲間は、
脊椎動物の糞や死体、腐敗物など何でも食べ、翅は 2
幼虫の餌が植物なので、尻先の動きは単純でよく、腰
し、翅の粉(鱗粉)がクモの巣対策をはじめ、捕食圧
のところがくびれていない。そうすると、翅はハエや
アブと違って 4 枚あるのだが、なんかハエっぽくて、
見かけた人もハチとは思わず、ハエの一種だと思って
いるのではないだろうか。広腰亜目の産卵管は人の皮
膚を突き破るほど鋭くないので、「刺さないハチ」な
のである。
細腰亜目のほうの寄生バチの仲間は産卵管を現実に
使用している。この産卵管は目的の餌昆虫の皮膚を突
き破れるが、人の皮膚は無理である。ただし、例外は
あって、ヒメバチ科アメバチ亜科の 69 種は人の皮膚
図 1. 五大昆虫の種数とその割合(『昆虫─大きくなれない擬
態者たち(大谷剛 2005)より』)。
-2-
を突き通す鋭さをもっている。したがって、アメバチ
類は「刺すハチ」、それ以外の寄生バチはすべて「刺
さないハチ」である。
を少し開いて指の隙間からハチを観察する。ハチのほ
細腰亜目のうち、寄生バチを除いたグループは産卵
うは手の甲しか見えない。この顔を覆った姿勢で、ゆっ
管を毒針に改造したハチたちで、毒針を「剣」とみな
くりと秒速 10cm のスピードでハチの巣から遠ざかっ
して、
「有剣類」と呼ぶ。このハチたちは「刺すハチ」で、
ていく。ハチたちは巣を守るために偵察・警戒・攻撃
体を圧迫されると、反射的に圧迫部分を毒針で刺して
をするわけだから、巣から遠ければ遠いほど、その意
しまう。このグループの大半は、メス一匹一匹が単独
欲は少なくなっていく、ということになる。さらに、
生活を送っていて、「自分の巣を守るために」攻撃を
この顔覆いの姿勢はもう一つ利点がある。両手が顔を
しかけてくることはない。つまり、普通の人が考える
覆うという役割を担っていると、最悪の「払いのけ行
「刺すハチ」ではない。一般的に「刺すハチ」といえば、
動」ができないのだ。素晴らしい。顔を防御した上に、
「攻撃してくるハチ」のことである。有剣類のうち、
「攻
「擬似攻撃行動」も阻止するのである。
撃してくるハチ」はすべて「社会性」または「集団性」
のハチである。スズメバチやアシナガバチ、マルハナ
有剣類という刺すハチ
バチやミツバチが社会性のハチたちで、働きバチたち
有剣類は、すべて「刺せる」仲間で、セイボウ上科、
は、自巣に接近する大型の動物に対して、捨て身の毒
スズメバチ上科、ハナバチ上科の 3 グループに大別さ
針攻撃をしかけてくるのである。
れる ( 図 3)。セイボウ上科 149 種は「青蜂」のセイ
セイボウ上科
攻撃バチと偵察バチ
ここでハチ側にたって弁護すると、「攻撃してくる
ハチ」は最初から捨て身の攻撃をしかけてくるわけで
はない。最初は偵察バチが出て、対象物の周りを飛び
回って様子を見る。本当の敵かどうか。この時点で、
大半の人はハチの恐怖におののいて、目からこめかみ
ハ
ナ
バ
チ
上
科
ス
ズ
メ
バ
チ
上
科
あたりに来たハチを手で払いのけようとする。これは
本能的というか、無意識な行動で、「この払いのけは
絶対にしないで」と口をすっぱくして言っても無駄な
努力、必ず払いのけ行動をしてしまうのである。2cm
ほどのハチにとって、15cm ほどもある手のひらが高
速で左右に振り動かされる。これがハチにとって自分
図 3. 有剣類 1386 種の内訳。産卵管は毒針に進化し、卵は
毒針の根元から出てくる。巣を守るために攻撃してくるの
は、社会性の種だけである。
たちを「攻撃する」実体となる。この実体のおかげで
ボウで、他の昆虫に寄生する寄生バチの生活に後戻り
ハチは存分に攻撃することができる。「本当の敵なの
したと考えられる仲間である。スズメバチ上科は、ア
だ」。
リ類 260 種、ツチバチ類 91 種、ベッコウバチ類 105 種、
ハチ側が本当の敵とみなしても、当の本人は攻撃し
スズメバチ類 85 種に分けられ、アリ類はすべてが社
たつもりはさらさらない。手で払っただけだ。それな
会性、スズメバチ類には社会性の種が含まれている。
のに刺してきた。何というヤツラだ。「ハチは何もし
ハナバチ上科は、アナバチ類 297 種とハナバチ類
なくても刺してくる」昆虫だ。危険だ。駆除しなければ、
399 種に分けられ、前者は多くの昆虫を餌として狩り
ということになる。すっかり悪者である。45 年もミ
集めて幼虫の餌にする。後者は餌を昆虫から花粉と花
ツバチに付き合ってきた私には悲しい誤解と感じてし
蜜に切り替え、多数の虫媒花を「育種」して被子植物
まう。
の進化に著しく貢献した。ミツバチやマルハナバチな
偵察バチがブンブンいってまとわりついたとき、ど
どの社会性のハナバチをはじめ、多数の単独性の種が
う対処したらいいだろうか。まず、ハチの目に注目し
日本列島に分布している。
よう。ハチの目は複眼である。複眼は動きには敏感、
「有剣類は、すべて刺せる」と書いたが、アリの半
色も識別できるが、形の把握はかなりいいかげんであ
数は毒針が退化して、蟻酸を吹き付ける形に進化して
る。そこで、両手で顔を覆うのがいい対処となる。指
いる。刺せるアリでも退化ぎみのものが多く、刺され
-3-
ても重大なことにはならない。この程度の「刺し方」
部にハチ擬態を見つけることが出来る。
なら、ハナバチ上科ハナバチ類の単独性のメンバーが
ハチ目でも「刺さないハチ」は、体形がハチなのだ
そうで、ちょっとチクッとする程度である。そして、
から、捕食圧がかかれば「刺すハチ」に擬態する種が
カリバチ(狩人バチ)も獲物を麻酔するのが目的の注
当然にも出てくる。広腰亜目のニホンキバチなどは、
射器なので、「ヂグッ」とはするが、社会性のハチに
アシナガバチの雰囲気を漂わせる。ハバチにも刺すハ
比べると、さほど「痛くない」。
チの擬態と考えられるものが散見される。寄生バチの
このように見てくると、「刺せるハチ」の有剣類の
仲間もアメバチ類を除けば、「刺さないハチ」なので、
うち、単独性のハチは積極的に攻撃してくることはな
ハチ擬態が散見される。
いので、一般的感覚での「刺すハチ」にはあてはまら
ないことになる。もし、有剣類をすべて「刺すハチ」
雄バチという「刺さないハチ」
としても「刺さないハチ」とどちらが多いかという最
ハチの毒針は産卵管から変化したものなので、すべ
初の質問に戻ると、ここまで読んだ方は、答は明らか
ての雄バチは「刺さないハチ」にならざるをえない。
であろう。「刺すハチ」のほうが少なく、「実質的な刺
獰猛なオオスズメバチでも、雄バチは「刺さないハチ」
すハチ=攻撃してくるハチ」は圧倒的に少ないのであ
でしかない。そして、羽化してからは巣に戻らず、単
る。
独で自由生活をするスズメバチやアシナガバチの雄バ
チたちは、「刺さないハチ」であることがばれると、
ハチ擬態
たちまち捕食者に食べられてしまうので、雌バチに擬
ハチを異常に怖がる人は多いが、虫を食べる小鳥の
態せざるをえなくなる。遺伝的には雌バチと共通の遺
大半もハチが嫌いである。もちろん、刺されるのが嫌
伝子セットを大量にもっているわけだから、ちょっと
なのである。ハチまたはハチっぽく見えるものを避け
捕食圧がかかると、「ハチ擬態」してしまうのである。
ようとする。茶色にオレンジ色、または黒色に黄色の
この証拠になるのが「刺しまね行動」である。毒針が
縞々模様が「刺すハチ」のイメージである。この縞々
まったくないのに、「刺す」行動をするのである。
模様を見たら、避ける行動に出る場合、この模様を「警
告色」と呼ぶ。このイメージは刺すハチ間で共通して
いて、互いに擬態していると見なせる場合、
「ミュラー
型擬態」と呼んでいる。また、毒針をもたないのに、
「ト
ラ縞模様」はもっていて、鳥などの捕食者に避けられ
る場合、「ハチ擬態」という。
四大昆虫はもともと種数が多いので、ハチ擬態は多
数見つかる。甲虫の仲間では、ハチがよくやってくる
花上をうろつくハナカミキリ類の一部と、樹液あたり
図 4. セイヨウミツバチの雌バチ(女王バチと働きバチ)
と雄バチ(『昆虫─大きくなれない擬態者たち(大谷剛
2005)より』)。
をうろつくカミキリ類の一部が体形からいって「ハチ
に化ける」要件を備えている。大半の甲虫は触角が短
いので、長い触角をもつカミキリムシ科の甲虫は、ハ
この例外にあたるのはミツバチの雄バチである ( 図
チの長さに短くすると、ハチに似てくる。
4)。まったくというほど似ていない。刺しまね行動も
チョウ・ガの仲間では、昼行性のスカシバガ科が科
まったくしないのである。ミツバチでは雄バチが「雄
全体としてハチ擬態である。チョウ目の特徴である鱗
の集合場所」(DCA) と呼ばれる空中の特定の場所に群
粉の大半を捨てて、透明な「ハチの翅」を手に入れて
れ集まり、一日に数回そこに訪れるのだが、終了する
いる。オオスカシバはスカシバガ科ではなく、スズメ
と、また巣に戻るのである。巣に戻れば、毒針をもっ
ガ科の昆虫だが、スカシバガ科と同じ路線で、羽化後
ている数万の働きバチに囲まれている。捕食者の付け
すぐに鱗粉を振るい落とす。
入る隙はあまりない。ミツバチの雄バチは働きバチに
ハエ・カ・アブの仲間では、ハナアブ類の多数、ア
「ハチ擬態」してはいないのである。
ブ科の一部、ムシヒキアブ科の一部、カガンボ科の一
−4−
続・宝 塚 の 貝 類
東 良 雄 足 立 勲
はじめに
宝塚市域に分布する陸産貝類についての現況を 2012 年(当会報)に報告したが、今回は第 2 報として淡水
産貝類について報告する。前回同様に標本の確認と文献に基づいた調査により宝塚の生物多様性の現状を明ら
かにしようとするものである。写真については紙面の許される範囲で注目すべき種について掲載した。
*) 宝塚市では未発見であるが周辺地域には分布している種。
宝塚市の淡水産貝類目録
腹足綱 Gastropoda
前鰓亜綱 Prosobranchia
中腹足目 M esogastropoda
タニシ科 Viviparidae
1 オオタニシ Cipangopaludina japonica
2 マルタニシ Cipangopaludina chinensis laeta
3 ヒメタニシ Sinotaia quadrata histrica
4
5
カワニナ科 Pleuroceridae
クロダカワニナ Semisulcospira kurodai
カワニナ Semisulcospira libertina libertina
6
オオカワニナ Semisulcospira libertina gigas
境野、大原野、長谷など、三田市福島大池
切畑、玉瀬、境野大池など
波豆川、猪名川町民田、伊丹市池尻
7 ミスジカワニナ Semisulcospira libertina japonica
8* チリメンカワニナ Semisulcospira reiniana
9
10
11
12
13
有肺亜綱 Pulmonata
基眼目 Basommatophora
サカマキガイ科 Physidae
サカマキガイ Physa acuta(外来種)
波豆川、仁川・武庫川合流点、猪名川町民田 モノアラガイ科 Lymnaeidae
ヒメモノアラガイ Austropeplea ollula
大ツラ川など西谷一帯、川西市笹部
コシダカヒメモノアラガイ Galba truncatula(外来種)
三田市青野ダム、西宮市香枦園、猪名川町笹尾
ハブタエモノアラガイ Pseudosuccinea columella(外来種) 三田市青野ダム、猪名川町笹尾
モノアラガイ Radix auricularia japonica
西谷西部
ヒラマキガイ科 Planorbidae
14 ヒラマキミズマイマイ Gyraulus chinensis spirillus
15 インドヒラマキガイ Indoplanorbis exustus (外来種)
16* ヒラマキガイモドキ Polypylis hemisphaerula
17
仁川狸谷川、境野大池、尼崎市塚口
境野、切畑、長谷、猪名川町笹尾
立合新田、切畑、下佐曽利、大原野、最明寺川
惣川、坊川、僧川、足洗川、篠山市後川
立合新田などの西谷地域の山間渓流 市街地一帯
西宮市広田神社、伊丹市昆陽池、尼崎市東富松
カワコザラガイ科 A ncylidae
カワコザラガイ Laevapex nipponicus
西谷、逆瀬川なかよし橋、川西市黒川、猪名川町笹尾
市街地一帯
加東市社町、池田市
猪名川流域、猪名川町笹尾
二枚貝綱 Bivalvia
古異歯亜綱 Palaeoheterodonta
イシガイ目 Unionoida
イシガイ科 Unionoida
18 ドブガイ Anodonta woodiana
19* タガイ Anodonta japonica
20 ヌマガイ Anodonta lauta
21* カラスガイ Cristaria plicata plicata
22* マツカサガイ Inversidens japanensis
23* トンガリササノハガイ Lanceolaria grayana cuspidata
- 5 -
波豆川
尼崎市東富松∼三井グランド
平井2丁目岩谷池、伊丹市瑞ガ池
100万年前の化石が仁川小学校付近から産出
東条町横谷、尼崎市東富松∼三井グランド
尼崎市東富松、西宮市甲武橋、東条町横谷
伊丹市池尻
24
カタハガイ Pseudodon omiensis
波豆川、大原野、尼崎市東富松
25
26
鮮歯亜綱 Heterodontida
マルスダレガイ目 Veneroida
シジミ科 Corbiculidae
タイワンシジミ Corbicula fluminea(外来種)
マシジミ Corbicula leana
南部市街地
切畑、波豆川、大原野、長谷、猪名川町栃原
おわりに
淡水産貝類 20 種のうち、5 種が外来種であった。また陸産貝類のうち8種が外来種である。(コハクオナジマ
イマイは国内移入種)今後は外来種の分布拡大などについて調査をし、環境の変化を把握していきたいと考える。
〈参考文献〉
東 正雄 1971 京阪神の動物.198pp .六月社.大阪.
東 正雄 1993 伊丹市周辺の淡水貝類.伊丹の自然 第10 号:1-12
東 良雄 1996 モーリシャス島で見た生物.兵庫県生物部会誌Vol.20:8-13.
波部忠重 1990 日本産非海産水棲貝類目録(その1 ∼ 3).ひたちおび54:3-6, 55:3-9, 56:3-7.
環境省自然保護局 2002 生物多様性調査 動物分布調査報告書(上・下)(陸産及び淡水産貝類)
環境省自然環境局生物多様性センター1342pp.
紀平 肇 1990 琵琶湖・淀川淡水貝類.131pp. たたら書房.鳥取.
紀平 肇他 2003 日本産淡水貝類図鑑①琵琶湖・淀川産の淡水貝類.159pp. ピーシーズ.東京.
山下幸一 1993 カワコザラガイの学名命名者. かいなかま27(3): 17-19.
松田和美 2012 ヒラマキミズマイマイ宝塚で初記録 宝塚の自然(宝塚市自然保護協会)26号:4
図 1 クチベニマイマイ
図3
)
(20.5 × 31.3
アワジオトメマイマイ(5.7 × 9.0
図5
ヤマナメクジ(約120
図 2 ヤマタカマイマイ
)
図 4 アズキガイ
)
図6
- 6 -
)
(24.1 × 29.2
(10.5 × 5.2
ヤマタニシ(17.7 × 19.8
)
)
図7
シリオレギセル(19.5 × 4.7
図 9 オオタニシ
(38.2 × 27.7
図8
図 10 マルタニシ
図 11 ヒメタニシ
(44.3 × 34.5
(31.5 × 19.5
)
図 14モノアラガイ
)
(17.2 × 11.4
)
)
チビギセル(14 × 3.4 )
図 13 ミスジカワニナの生態 (♀)
)
図 15 ヒメモノアラガイ(8.3 × 5.8
)
図 16 ハブタエモノアラガイ(14.5 × 7.9
1
図 17 サカマキガイ (9.4 × 5.0
)
図 20 ヌマガイ (94.8 × 61.7
図 18 カワコザラガイ(1.4 × 3.5
)
- 7 -
)
図 19 ヒラマキミズマイマイ(1.1 × 5
図 21 カタハガイ(71.4 × 36.8
)
)
)
北摂里山・松尾湿原 36 年ぶり 戻ってきたハッチョウトンボ
足 立 勲
はじめに ず、植生の面から貴重な湿原と評価されたようである。
宝塚市立自然の家敷地内にある松尾湿原 ( 市指定天
1973 年から 1978 年の間に姿を消したであろう。
然記念物 ) に、環境悪化で姿を消した小さな小さなト
筆者は継続観察していたにもかかわらず、フィールド
ンボが 2012 年に 36 年ぶりに戻ってきた。ボランティ
ノートには 1975 年以降の記録が存在しない。したがっ
ア団体などによる 20 年近い環境の再生活動の成果が
て 1976 年には絶滅していたものと考えられる。
現れ、虫屋の夢が実現した物語である。
湿原を救う取組み
日本で一番小さいトンボ 1998 年、湿原再生の取り組みを始めた。県立大学
ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea は、トンボ
服部研究室(県立人と自然の博物館)の服部保教授の
科の昆虫。日本で一番小さなトンボとして知られてい
指導助言を受け、宝塚市自然保護協会と上記研究室な
る。( 写真1,2) 兵庫県レッドデータCランクである。
どの混成メンバーで 5 年間。兵庫方式による集水域の
♂♀ともに成虫の体長 ( 頭から腹端まで ) は一円玉
里山管理をはじめた。2003 年には宝塚エコネット
( 直径2㎝ ) の中に入ってしまう大きさである。♂は羽
(TEN) が加わり、現在は TEN が中心になり保全活動を
化直後は橙褐色だが成熟すると体全体が赤みを帯び、
進めている。湿原面積も拡大している。
羽化後 20 日ほどで鮮やかな赤色となる。( 写真 1) ♀
は茶褐色で、腹部に黄色や黒色の横縞がある。( 写真2)
36 年ぶりに戻ってきた
翅の大半は透明だが、付け根付近は美しい橙黄色に。
信じられないことが起った。2012 年 6 月 8 日 TEN
会員の伊藤格氏によって、ハッチョウトンボの成虫2
個体が確認されたのである。実に 36 年ぶりのことで
あった。最も近くの生息地からは約 5 ㎞である。
2012 年 7 月 14 日 TEN 及び協会会員 10 名で生息
個体数調査を実施した。( 写真 3) 調査員を所定の区画
に配置し、一斉に目視により個体数を確認する方法で、
写真 1. 成熟個体♂
♂16、メス 3 個体を確認。うち♂2個体は他地域か
写真2. 成熟個体♀
らの飛来個体とは考えられない未成熟個体であった。
普通に見られた 40 年前
結果、前年までに他地域から自然移入し、繁殖し、
1973 年に宝塚市立少年自然の家がオープンした。
定着しはじめたものと結論付けた。
当時は敷地内にある松尾湿原は滲水湿原の代表昆虫で
あるハッチョウトンボの宝庫であった。6 月から 8 月
には無数の個体が見られた。
しかし、その後キャンプ場利用者の踏み込みなどに
より遷移の進行に拍車がかかるとともに、集水域の常
緑樹林化が進行し、1997 年ごろにはハンノキ、アカ
マツ等が侵入している状態になっていた。
1976 年に絶滅か
1978 年松尾湿原が天然記念物に指定されたが、当
時の調査記録にハッチョウトンボは確認されておら
- 8 -
写真 3. 協会会員と TEN 会員による生息数調査 2012,7,14
宝
我孫子の峰(あびこのみね)仮称
我孫子の峰は標高 445.3m で三角点はない。
中山連山の西のピークであり、外観上は立派な山容
であるがなぜか山名がついていない。伝承では「我孫
塚
子の峰」の名があり、中腹に中山寺があったとされて
いる。山頂にかけての「我孫子本神所」に巨岩群が鎮
座しているところが見どころだ。
の
Part 3
はじめに 市役所付近より。中山寺奥の院の目印はイチョウ。
ハイキングルートは阪急中山駅起点で中山寺奥の院
森田 至
を目指す。足洗川ルートと、参道ルートがあるが、ど
ちらも一般的だ。奥の院から最高峰に向かう道をたど
ずいぶん昔になるが、私は山歩きを楽しむための要
り、すぐ左手に白龍大明神のサインがある。それをた
素は以下の六つあると考えていた。
どると山頂に着く。
1)地図上での計画と、山行後の記録。
2)尾根、谷、滝、岩などの地形。
山頂間近にある「上の神所」
3)稜線や山頂からの展望。
名板のない山頂▼
4)少し冒険を取り入れたスリル。
5)自然界の不思議や神秘性。
6)よい仲間との話題の共有化。
以上である。
しかし、近年5)の要素が一番の楽しみになった。
自然の不思議や神秘に出会うためには自分の感覚・感
性を豊かにしていなければ出会えない。
「心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども
聞こえず、食らえどもその味を知らず」という言葉が
あるが、いい得て妙である。
まず興味を持つことから始まる。興味を持てば知的
好奇心も湧いてくる。自然を楽しむためには感覚・感
性を磨くことが一番である。本来なら子どものころに
感覚・感性を磨いておくのがベストであるが中高年に
なってからでも遅くはない。 シリーズ3回目は北摂山域の中山連山の三山(我孫
子の峰・中山・満願寺西山)を紹介する。このうち「我
このコースは林野庁指定の自然休養林の中心部に
なっている。足洗川ルートは樹木の種類も豊富で、以
前の調査では 300mくらいの距離で 70 種以上確認で
きた。ササユリがひそかに生育し、他ではあまり見か
けないイイギリも生育している。
奥の院付近から山頂にかけ、コジイーカナメモチ群集
の自然林が見られ、二次林とは趣を異にする。
孫子の峰」は仮称である。
- 9 -
中山(なかやま)
満願寺西山(まんがんじにしやま)
中山は標高 478.0mで二等三角点がある。中山連山
満願寺西山は標高 361.6mで四等三角点があり中山
の中心部であり中山最高峰と呼ばれている。中山連山
連山の東のピークである。山頂は展望のきかない狭い
は馬蹄形をしており馬蹄形の内側は住宅地である。宝
スペースで、縦走路から少し西に入り込んだところに
塚市民には一番身近な山で、四季を通じて手軽に歩け
あり見落としやすい。満願寺西山の語源は満願寺の西
る所だ。山頂からは北面に展望が開け、山座同定する
にあることからついたと思われる。因みに三角点の点
のも楽しみの一つである。
名は「最明寺」である。
ガイドブックに載っているので遠方から来られる方
も多く、山頂はいつもにぎわっている。
写真スペース(山容)
キャプション
市役所付近より東の稜線のピークが山頂。
ハイキングルートは阪急山本駅を起点とし、最明寺
川沿いに進む。途中寄り道をして最明寺滝を往復する
とよい。ふじガ丘に下る峠から本格的な登りになり、
ピピアめふより。三角山の右手に見えるのが山頂。
中山最高峰へのルートはたくさんあるが、連山縦走
岩登りのスリルを味わうことができる。このコースの
をしたい方は、阪急山本駅起点で、清荒神もしくは中
特徴は展望のよさにある。
山寺に下山するのが一般的である。実歩行時間は約4
山頂からいろいろエスケープする道もあるが、ほと
時間が目安となる。
んどのハイカーは最高峰まで歩く。
四等三角点がある山頂だが、スペースは狭い。
二等三角点の標石の方位が西に 45 度傾いている。
中山連山は六甲連山の花崗岩とは異なり、有馬層群
平成 14 年に山火事があり無残な姿になった。その
という地層で、岩石が風化してできた山道は粘土質に
後、地下茎起源のワラビや、パイオニア植物のハギが
なっている。縦走路で見られる植物はアカマツ、コナ
火事の熱で発芽し、徐々に緑を回復させた。因みに、
ラ、ソヨゴを中心とした二次林で、マツタケがとれる
万葉集でハギが多いのは、奈良時代の乱開発による裸
という話をよく耳にする。
地化が原因だといわれている。
- 10 -
環境体験学習
宝塚市立西山小学校編
当協会が学習支援の依頼を受けた学校の子どもたちからの声です。
もぬけないから土にしっかりとつかまっているんだな
と思いました。ミゾソバは名前のとおり水のぞばにあ
りました。りくにいる生きものさがしではぼくはよこ
7cm のサワガニを見つけました。ほかには、7cm ぐ
らいのツチイナゴを見つけました。川の近くにミミズ
がたくさんいました。草が切られているから切った人
はいけないなと、思いました。
生き物を今よりもっともっとすきになりました。
◆がんばった <金ざわかずき>
7 月 17 日 ( 火 ) さかせ川にいきました。2 組は川
からやりました。そしたらすぎ本君は 10cm の魚をつ
かまえてすごいなと思いました。ぼくはその日はじめ
て動いているヤゴとドンコの赤ちゃんが生まれるとこ
ろをはじめて見ました。でもあまの君とまつ村君がヒ
メタイコウチをつかまえていたからすごいと思いまし
た。ヒメタイコウチはぜつめつきぐしゅだからです。
◆逆瀬川たんけん <はたさゆり>
まずわたしは川の中に入りました。するとほかの友
だちが石にゼリーみたいなたまごがついているのをみ
つけました。大きさは、やく3 mm ぐらいでたくさん
ついていました。そのしょうたいドンコはそんなに生
むのと思いました。「人間はおかあさんといっしょに
ずっといるけど、魚は生まれた時からおかあさんがい
ないからたべられるかもしれないから、たくさん生ん
で少しでも大きくなるように魚が工夫しているんだ
よ。」と教えてもらいました。それでわたしは、「スイ
ミーとにているな。」と思いました。ほかに、
「サワガニ」
りくではさいしょにしょく物をかんさつしました。
や「カワニナ」がいました。
それでセイタカアワダチソウがぼくのしんちょうより
次は、植物をみました。春よりは花とかはなかった
高いからびっくりしました。それでいくら引っぱって
けど、せの高さに葉っぱがたくさんありました。植物
- 11 -
で一番大きくてたくさんあったのは、「ギシギシ」で
晴れたからうれしかったです。
した。せが高すぎてこしをぬかすところでした。
春とくらべたら植物も高くなっていました。春にな
さいごにかんそうを言います。さかせ川たんけんは
かった植物も水の生き物もいました。まつ村さんとあ
きせつごとにいくけどいくたびにちがう生き物が調べ
ま野くんたちが見つけたヒメタイコウチがすごいと思
られるので、秋も楽しみです。
いました。キツネノボタンの実はトゲが入っていたけ
ど、キツネノボタンの花はトゲがなくすごくきれいで
した。オオキンケイギクは、すごくきれいな花でオレ
ンジ色をしていました。セイタカアワダチソウは、セ
イタカってあるからせが高いからセイタカアワダチソ
ウって名前がついているんだと思いました。
◆大発見のさかせ川たんけん <まつ村おうが>
今日、1,2時間目にさかせ川に入りました。
さいしょに植物を調べました。セイタカアダチソウ
の高さがぼくよりも高くてこんなに育つんだなと思い
ました。ホソムギは名前のとおり細い麦みたいでした。
水の中の生き物はいっぱいいました。サワガニは春
◆2回目のさかせ川たんけん<上野そうたろう>
にとったやつよりも赤くて大きかったです。トンボの
さかせ川でいろんなしょく物を見つけました。
ヤゴもいっぱいいました。カワニナはいつでもいっぱ
ボクがふしぎだと思ったしょく物ベスト3
いいます。あいちけんとひょうごけんでしかとれない
めずらしいヒメタイコウチがさかせ川で2ひきも見つ
かりました。見つけたのはぼくとあまのくんでした。
〈関連記事が 13 ページにあります。〉
【1 番】トゲジシャのふしぎな所は、葉っぱ全体にト
ゲがあるからです。
【2番】セイタカアワダチソウのふしぎな所は、1m
い上のびていっぱいあったからです。
【3番】キツネノボタンは、くきについているトゲボ
ンボンみたいな玉がたねにあったからです。
◆夏と春のちがいを見つける <ま野なが子>
きょうひさしぶりにさかせ川たんけんに行きまし
た。1回目の時は雨で、2回目も雨で、3回目やっと
- 12 -
短報
宝塚の生き物
会員及び市民の皆様から寄せられた自然の中での発見記録を掲載しています。
凡例:兵庫県レッドデータブックを「兵庫RDB」と表現する。
ヒメタイコウチ 小学生が逆瀬川で発見
年月日 2012 年7月 17 日
態や分布域に謎が多
場 所 宝塚市・逆瀬川、西山橋上流
い。甲山湿原や宝塚
発見者
足 立 勲
市北部の丸山湿原に
松村 桜雅、甘野 健
(宝塚市立西山小学校 当時 3 年生)
は分布するが、逆瀬
撮影者 足立 勲
川水系では初記録で
【コメント】珍しい昆虫 2 個体を小学生が環境体験学
ある。
習の授業中に発見した。カメムシ目のヒメタイコウチ
今回の発見場所は流水域で、たまたま増水で流さ
Nepa hoffmanni で、兵庫 RDB の A ランクである。体
れて来た個体である。従って逆瀬川上流域に滲 ( 湧 )
長約 20mm、尾端の呼吸管は約 2.5mm、体形は長卵
水湿原の存在が裏づけられたことになる。小学生の
形(葉状)である。後翅が萎縮し、飛べない。湿原や
発見が宝塚の生物多様性調査に貢献したことになる。
浅い水域など局所的に生息する。移動能力が低く、生
国内では兵庫、愛知など 8 府県にのみ記録がある。
脆弱な生態系で生育するサデクサ
年月日 2012 年 10 月 19 日
て い る た め、生
場 所 宝塚市・武庫川 育地が年々縮小
発見者・撮影者 森田 至
さ れ、将 来 的 に
【コメント】サデクサ Persicaria maackianah はタデ
森 田 至
消滅する可能性
科イヌタデ属の一年草である。兵庫 RDB では C ラン
クに指定されている。形態はミゾソバやママコノシリ
ヌグイに似る。花で同定するのが困難で、本種は葉の
があるので取り上げ
形と托葉で同定することになる。葉は細長いほこ型で、
托葉は歯牙状で丸く茎を抱く。数年前から存在を確認
托葉は歯牙状で丸く茎を抱く
していたが、河川の寄洲という脆弱な生態系で生育し
カゴタケを虚空蔵山で発見
ることにした。
菊 田 穣
年月日 2012 年 10 月 31 日
2012 年 10 月に同じと
場 所 三田市藍本
ころを通った時、同行し
発見者・撮影者 菊田 穣
た妻が丸い幼菌を拾った。
【コメント】2011 年 2 月、ある団体のハイキングで「虚
「カゴタケ違うか、置いと
空蔵山」を案内した。登りは表参道を、そして帰り
けばよいのに」と言った
は裏参道を通った。表参道のヒノキ林を下山中、図
が、も う 採 っ た 後。帰 宅
鑑で見たことのある、変わったキノコを拾い参加者
して庭に少し埋めて様子
に「これもキノコやで!」といったが名前が出てこ
を見たが乾燥してひび割
ない。レジ袋に入れて持ち帰った。帰宅後しらべた
れてきた。家内が皮を剥
ら「カゴタケ Ileodictyon gracile」だった。
くとムクムクと広がり可愛い「カゴタケ」が現れた。
- 13 -
クチキコオロギ 武庫川渓谷で確認
松 田
和 美
年月日 2012 年 11 月 21 日
場 所 武庫川渓谷
発見者 / 撮影者 松田和美
同行者 吉橋輝子
【コメント】クチキコオロギ Duolandrevus coulonianus は
姿も名まえもコオロギ科のようだが、分類上はマツム
シ科である。写真個体(♀)は木に取り付けられた名
札の裏に潜んでいた。「♂・♀とも短翅で飛ぶことはで
きず移動能力に乏しいこと、一生に 2 年以上を要する
ことなど安定した環境が必要(※)」とされる。兵庫
RDBでCランクに指定されているほか、複数の都県
でレッドデータに指定されている。 ※レッドデータブックあいち 2009
梅雨明けの竹藪にアカダマキヌガサタケ発見
年月日 2011 年7月21日
2007 年 に 新 種
場 所 三田市八景町
と確認されたキ
撮影者 菊田 穣
ノ コ だ っ た。日
【コメント】梅雨明けの竹やぶに写真のようなキノコ
本自然保護協会
を発見。2000 年 6 月に傘が開いていないのを撮影
「自 然 保 護」№.
していたので、ひょっとしたら出ているかなと探し
515 に、大垣内
に出かけた。「あった、あった」モウソウやぶのあち
宏氏が 2006 年
こちに、開いたのやら解けかけのやら。図鑑で見て
6 月 9 日に甲山
いた「キヌガサタケ」だ。携帯で写して、『人博』の
の神呪寺の竹や
秋山先生にメールした。翌日、先生が確認に来られ
ぶで撮影したも
て「アカダマキヌガサタケ」だと連絡いただいた。
のが掲載されて
幼菌が赤みがかっているのとマントが粗いのとで、
いる。
菊 田 穣
松 田
年月日 2012 年 9 月 5 日
場 所 JR 武田尾駅
発見者 松田和美 同行者 森本敏一 小島マサ子
JR武田尾駅構内でおもろい蛾をみつけ
【コメント】
た。ムクツマキシャチホコ Phalera angustipennis(シャ
チホコガ科 Phalera 属)である。駅前のサクラの木に
とまらせるとその擬態の巧さにつくづく感心させられ
た。Phalera 属にはほかにも小枝によく似た種がある
が、写真個体は黄色斑縁取りが黒いこと、その横の白
紋が明瞭なことなどからムクツマキシャチホコと同定
した。宝塚市教育委員会がまとめた「宝塚の昆虫Ⅲ」
にはJR武田尾駅での採取記録(15-Ⅷ-1991)がある。
- 14 -
和 美
スズメウリは多年草か
菊田 穣
スズメウリは本当に一年草だろうか。
1 図鑑によると
「本州、四国、九州および済州島の原野や水辺など
にはえる一年草」
(牧野・新日本植物図鑑・北隆館)。
「水
辺を好んではえる一年生のつる草」(検索入門 野草
図鑑・保育社)とあり、(フィールド版・日本の野生
植物 草本・平凡社)では一年草・多年草の説明はない。
新しい芋 古い芋
▲トリカブト
考えてみると、ジャガイモもトリカブトもそしてツメ
レンゲも親は枯れて、子ども?が横にできるから擬似
多年草といえる。 インターネットで調べたが、擬似多年草は分からず、
チゴユリは擬似一年草とあった。擬似一年草と言うの
はおかしいと思う、擬似多年草の間違いだと思う。し
▲白い地下茎
2 ところが
かし、チゴユリも確かに擬似多年草だ。
十数年前にスズメウリを鉢作りで育てたことがあ
サクラソウやエビネ
る。秋になり実が白くなったので、置き場所を変える
もそのように思えるの
ために植木鉢を動かしたところ、植木鉢の下に白い地
だが・・・。
下茎のようなのを見つけた。よく観察すると一本の蔓
多年草と疑似多年草
が鉢の底にもぐり込み、その蔓の先端が肥大してまる
との区別はどこで決ま
で地下茎のようになっているものだった。その肥大し
るのだろうか。
た蔓を翌年まで植木鉢で伏せておき、春になって見る
しかし、今のところ
とその肥大した蔓から新しい芽が伸び出していた。そ
図鑑では疑似多年草と
れを畑の隅に植えて様子を見ていると、新しい芽はど
いう説明はなく、ヤマ
んどん茂り、秋には実をたくさんつけた。
ノイモも多年草と説明
それ以来、私は『スズメウリは多年草だ』と思っている。
されている。
新しい芋 古い芋
3 擬似多年草
2011 年、兵庫県立人と自然の博物館の藤井俊夫主
任研究員にそのことを話すと、「擬似多年草といえる
な」と言われた。擬似多年草とは、例えばヤマノイモ
のように植えた親芋が秋には枯れてしまって横に新し
い芋ができている、このようなのをいうと教えていた
▲ヤマノイモ
だいた。
- 15 -
2012(平成24)年度 事業報告
月 日
事 業 名
主催・協
力の別
事 業 内 容
場 所
市立宝塚自然の家・
武田尾
人数
49
4
7 観察会「ギフチョウ観察と渓のサクラを見よう会」
主催
ギフチョウと武田尾渓谷のサクラの観察
4
17 助成金事業報告会
協力
平成23年度「夢作り応援事業」の報告と
阪神北県民局
諸団体との交流
55
4
29 平成24年度総会と講演会
主催
平成24年度総会
講演会「生物多様性と里山・まち山・都
市山」 講師 服部 保氏
114
5
2 ガーデンフィールズ出展
協力
わくわく体験3DAYS展示とワークショップガーデンフィールズ
350
5
20
主催
甲山周辺の歴史、地質、地形、生物など
逆瀬川・甲山・仁川
の不思議を観察
20
5
21 希少生物保全(協働:宝塚エコネット)
主催
ケナシベニバナヤマシャクヤク保全活動 長尾山
17
6
7 ヤガミスゲ記者発表
主催
ヤガミスゲ記者発表
3
157
甲山周辺の不思議を観る
「不思議発見ウォーキング」
市立西公民館
宝塚市役所
6
15
観察会「ホタル観察の夕べ」
16
主催
環境学習・自然観察会・ネイチャーゲー
ム
市立宝塚自然の家
とホタルの生態について学習、
フィールドでホタルの観察
7
14 希少生物調査(協働:宝塚エコネット)
主催
ハッチョウトンボの生息調査
市立宝塚自然の家
16
8
2 「教師のための環境学習」
協力
環境体験学習の支援方法について
市立宝塚自然の家
137
8
9 観察会「水辺の生き物探検」
主催
水辺の生き物の採集と観察
市立宝塚自然の家
猪倉谷
54
9
19 観察会「秋の鳴く虫」
主催
秋の鳴く虫についての学習と観察
清荒神清澄寺周辺
47
10 14 「きずきの森でネイチャーゲームと自然観察」
協力
ネイチャーゲームを通して
自然体感と動植物の観察
きずきの森
38
1
11 ~ 環境アセスメント(5日間)
16
協力
岩谷池の生態系自然環境アセスメント
岩谷池
(宝塚市平井山荘)
32
11 23 環境学習「湿原保全と紅葉の里山ハイク」 主催
松尾湿原保全と周辺の間伐、
里山についての学習とクラフト
市立宝塚自然の家
53
12
1 宝塚市環境フォーラム
協力
基調講演とパネルディスカッション
及び展示
市立東公民館
250
1
19 武庫川探検「野鳥観察」 主催
武庫川の水鳥など冬の野鳥観察
武庫川左岸
(武庫川町・美座周辺)
21
2
15
~ 宝塚ミニ環境展
21
協力
宝塚ミニ環境展に出展
アピア1
250
3
19 助成金事業報告会
協力
平成24年度「夢作り応援事業の報告と
諸団体との交流
阪神北県民局
49
1663
合計対象人数
調査活動 ●ホタル調査;荒神川 6/11,18,27
●ヤマシャクヤク保全活動;5/21
●カワラサイコ調査;4/17,26, 5/15,18,25, 6/4,22, 7/13, 8/29, 9/26, 11/19. 12/,5,8,12
●タコのアシ保全;8/6
●会報発行;第27号
啓発活動
●他団体との共催;宝塚市環境フォーラム、同ミニ環境展、阪神北県民局「ひょうごエコフェスタ2012」イベント、
ガーデンフィールズ出展
協働事業
●宝塚エコネット、さぎ草会、いのちをつなぐ食育の会、ひょうご・宝塚ネイチャーゲームの会、環学OB会
講師派遣
●兵庫県阪神北県民局環境学習
●市内外の小学校などへの環境体験学習の支援活動 学校数延べ21校 対象者1870人 派遣数延べ42名
- 16 -
協会の行う様々な行事に参加した皆さんの思い出を掲載しています。今後も皆さんの声をお寄せください。
初めて見たギフチョウ 自然環境と子ども達
宮本健矢(小学 1 年)
馬殿禮子(会員)
しぜんがみれてよかった。ぎふちょうがうごけなく
昨今の子どもの心痛問題を考えるとき、このような
て、ちょっとふしぎだった。はじめてみれてうれしかっ
自然と触れる企画は心育上でも重要だと感じます。
た。ひろったおにぐるみがおいしかった。
ホタルの夕べでの足立先生の理解しやすいお話は、
さすが教育者であり研究者だと敬服しました。
幻想的な自然の営みに感動しましたが、それ以上に
観察の視点も定まりいい体験でした。
人も自然界の生物で、自然界の生物から学ぶことが
多く、もっと体験的に学びたいと思いました。
ある教育施設で、不登校の子らが散策中に見た小川
の小魚を、「小さな魚が一生懸命泳いでいた」と語っ
撮影 松田和美
たのを思い出しました。自然からのメッセージを受け
止めたのですね。
また見たいな
土橋俊介(小学 2 年)
<はじめてしったこと>
ヒメボタルはめずらしいホタルだということ。ホタ
ルぜんしゅるいがどくをもっていること。
<かんそう>
またホタルを見に行きたいです。
家族で見たホタル
<思ったことに◎○△をかきましょう>
有山朋樹、紀子(文)、真紗(まあさ)、歩佐(あゆさ)、
☆ バスで来た △つまんなかった(かなしかった)
晃翔(こうしょう)、凛平(りんぺい)、加奈留(か
☆ スライドショーを見た なる)、潤亜(うまあ)
○たのしかった
6 月 16 日(土)ホタル観察の夕べに参加させてい
☆ ホタルをさがした
ただきました。有山と申します。当日は大雨でしたが
◎すごくたのしかった
ホタル観察の時は少し雨がおさまりました。ホタルの
☆ ホタルをつかまえた
光跡に感動させていただき、子供達にとっても勉強に
◎すごくたのしかった
なったと思います。帰りの車の中ではホタルのクイズ
☆ かい中でんとうをてらしてかえった
やそれぞれが感じたことを少し興奮したように話して
○たのしかった
いました。本当にありがとうございました。
☆ バスで家までかえった
△つまんなかった(かなしかった)
- 17 -
自感謝 ホタル観察会
村上ふみ子
梅雨も本格となった 15 日、ホタルの観察の夕べで
はお世話になりました。街灯やアスファルトの環境に
慣れてしまった現在ですが、雨の中の蛙の歌を聞きな
がら歩く夜道が意外と明るいことに気づきました。
今回、初めて参加しましたが沢山のホタルに出会え
たのも初めての経験でした。協会の皆様にも感謝して
います。ありがとうございました。
わあ きれい
思わず上がる歓声
ハヤブサを見た
暗さの中でこそ際立つ
松本奈緒(小学 1 年)
ホタルの明滅の幻想的な
ハヤブサのはやく飛んでるところがすごかったで
美しさ、 子供の頃に
す。オナガガモのはなしがよくわかりました。トリじゃ
見た光景を
ないけど、ムクロジの木のみでセッケンをつくってみ
想い出しました。
ました。 はじめてのハヤブサとカワセミ
宮武優羽 ( 小学 3 年 )
むこ川にあんなめずらしい鳥がいるなんてしりませ
んでした。
ハヤブサやカワセミをわたしは見たことないから
うれしかったです。こういうふうに鳥たちもくふうし
てすをつくってるとおもいました。来年もさんかした
いです。ありがとうございました。
ほんものを見た喜び
宮武真由美
とても勉強になりました。本で見た事があっても、
私達が出会える事はないと思っていた鳥達が、こんな
に身近に居たのには、おどろきました。
また、ぜひ参加させて頂きます。ありがとうござい
ました。 後世に残したい自然環境
三木信子
いよいよ梅雨入りとなりました。
昨夜は子供の頃を思い出すような螢の観察の夕べに
参加させていただき有難うございました。足立先生の
お話も分かりやすく興味深く一生懸命に聞きました。
螢の生態など知らないことだらけでした。科学の進
歩はめざましく、日々我々はその恩恵にあずかりなが
ら生活をしていますが、懐かしい自然環境は絶対に後
世に残していかねばとつくづく思った一夜でした。
- 18 -
2012.4.7 「ギフチョウとサクラを見よう会」桜の園で
編集後記
★寄稿頂いた昆虫生態学者の大谷剛先生の記事で「刺さないハチ」の存在に驚かれた
方も。予断と偏見で自然に接することへの警告でもあります。★東良雄さんらによる
貝類リストは宝塚の生物多様性の現状を把握する上で、重要です。★編集者として、
会員さんから様々な感想を頂くのは楽しいものです。今月号は臨床心理学者の馬殿禮
子先生から寄せられた感想は大いに励みになります。★「宝塚の山」シリーズの森田至
さんは、ついに山名「我孫子の峰」を命名しました。★次号にむけて原稿をお送りく
ださい。いつでも受け付けいたします。 ( 編集部 )
27号
発行日 2013(平成25)年3月31日
発 行 宝塚市自然保護協会
本 部 〒665-0842 宝塚市川面3-7-19 Tel 0797-84-1208
事務局 〒665-0833 宝塚市清荒神1丁目2-30-911 Tel 0797-87-2267
http:www.naturezuka.com e-mail : [email protected]
印 刷 株式会社WAVE印刷 製 作 宝塚市自然保護協会 会報編集部
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