Comments
Description
Transcript
最新 欧州ころがり軸受技術トレンド
連 載 第8回 乾式デュアルクラッチのための 革新的な軸受装置コンセプト* 工学士(FH)Ernst Masur, 工学士(FH)Jens Baumann, 工学士(TH)Georg von Petry ** 訳:吉武立雄*** *Inovatives Lagerungskonzept zur Abstützung einer trockenen Doppelkupplung **Schaeffler Technologies GmbH&Co.KG,Herzogenaurach ***よしたけたつお:海外軸受技術研究グループ (E—mail:yoshitake-tatsuo@coast. ocn.ne.jp) デュアルクラッチ変速機の普及は拡大している。 ムがエンジンにつながることになる1)。切り替え この変速機に使用されるクラッチ用玉軸受に関し 時においても力を間断なくスムーズに伝えるため て画期的な開発が行われた。新 4 点接触玉軸受, に,二つのクラッチは自動的に作動する。乾式デ シール,フランジ,軸と内輪との一体化などが主 ュアルクラッチに用いられる軸受装置には,非常 要テーマとなっている。グリース量,ボールの進 に高い荷重が加わるため,それに応じて使用条件 みと遅れによる影響,その他についても考察され は厳しくなる。高い熱が発生することによって, ているので,参考になるところが大と考える(訳 軸受システムにさらに荷重が付け加わる。それ以 者) 。 外にも,エンジンと変速機との避けがたいミスア ライメントも調整する必要がある。このような要 要約 求に応えるべく,シェフラー社が DCT635 デュア 乾式デュアルクラッチ変速機の場合,クラッチ ルクラッチ変速機用に開発した革新的な軸受装置 切り替えがどのようにスムーズに行われるのかが のコンセプトを例として示すことにする(図 1) 。 特に重要になる。その鍵を握っているのがクラッ チの軸受装置と案内システムである。それに加え デュアルクラッチの構造と作動メカニズム て,この変速機の使用寿命が尽きるまで,この軸 ほとんどの動力伝達装置は,安全性を確保する 受装置は発生してくるすべての荷重,温度,振動 ために,クラッチアクチュエータが故障した場合 に耐えなくてはならない。このような要求に対す にはクラッチが自動的に切れるようになっている。 るソリューションとして開発された軸受装置を以 下説明することにする。 はじめに 現在,乗用車用デュアルクラッチ変速機は,自 動車産業とその自動車部品産業の新規開発分野ア イテムとして位置づけられている。マニュアル変 速機よりも低い燃費と自動変速機の快適性の二つ を同時に達成することが開発のターゲットとされ ている。マニュアル変速機の非常に効率の良いシ フト機構とシンロメッシュ機構を備えている,こ の新世代の変速機が機能するためには,二つに分 離した,切り替え可能なクラッチが必要になる。 この二つのクラッチごとに,異なった変速システ 第 57 巻 第 7 号(2013 年 7 月号) 図 1 DCT635 デュアルクラッチの断面図 93