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ミャンマー・インド視察報告書

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ミャンマー・インド視察報告書
ミャンマー・インド視察報告書
平成25年3月30日~平成25年4月6日
ミャンマー
ネーピードー市総合病院前
自由民主党神戸市会議員団:安井俊彦 平野昌司 安達和彦 平井真千子 橋本健 佐藤公彦
みんなの党神戸市会議員団:大石よしのり 高山晃一 山下てんせい 上原みなみ
2013 年 5 月 20 日
作成者: ミャンマー・インド視察団
目次
第一章 視察団員所見 ...................................................................................................................1
第二章 視察の目的・日程と訪問先 .........................................................................................21
<視察の目的> .......................................................................................................................................... 22
<視察日程と訪問先> ........................................................................................................................... 24
第三章 項目別視察報告 .............................................................................................................26
<上水インフラ> ..................................................................................................................................... 26
・ミャンマー ネーピードー市およびヤンゴン市 .........................................................26
・インド デリー市.............................................................................................................28
<港湾整備について> ........................................................................................................................... 30
・ミャンマー ヤンゴン市.................................................................................................30
(ヤンゴン市 ウラミン市長への親書) .........................................................................33
<医療産業都市としての提携について> ................................................................................... 34
・ミャンマー ネーピードー市総合病院 .........................................................................34
・インド MEDANTA 病院および APOLLO 病院 ..........................................................39
<神戸ファッションの海外展開について> .............................................................................. 44
・ミャンマー ........................................................................................................................45
・インド ................................................................................................................................46
<その他視察先> ..................................................................................................................................... 48
・ミャンマー ジャンクションハイパーマーケット .....................................................48
・人工都市 新首都ネーピードー.....................................................................................50
・デリー大学 RAMJAS カレッジ ......................................................................................54
・インド政府観光省 ............................................................................................................56
<総括> ......................................................................................................................................................... 57
ミャンマー・インド視察報告書
平成25年3月30日~平成25年4月6日
第一章
視察団員所見
ミャンマー・インド視察団
団長
自由民主党神戸市会議員団
安井俊彦
今回の海外視察で団長をさせて頂き責任を感じております。
海外視察を実施するにあたり、大きな命題を立てました。
① 海外視察のモデルとなれる様、視察目的を明確化し、先見性を持った調査透明性
を確保し、政務調査費が原資である事を常に自覚する事。
② 地方自治体は、海外との友好や親善関係は構築出来るが、近年は経済の視点も求
められるようになっている。そこでこの度は、主に神戸市の産業の活性化に役立
つ事を目標にした。他国の優れた制度や政策の収集は大切であるが、実際に訪問
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することで、これから発展が期待される国々と地方行政独自の外交を進め、将来
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において、神戸経済の一助となるよう身をもって、親交のきっかけを構築する。
以上の2つの命題を達成するために我々は努力を重ねました。
① 私の長い議員生活の中で、若い議員時代に海外に出向くことが必要であると実感
した。また、一会派だけでなく多会派で海外視察を行う事で相互に研鑽をするこ
とに意義があると考え、自由民主党神戸市会議員団とみんなの党神戸市会議員団
で視察団を結成し、ハードな日程で実施した。
② 視察目的を達成させるために、事前に勉強会を行った。特に神戸市の持つ売りの
部分、例えば、港関係、医療産業関係、水道事業関係、神戸コレクション関係、
バス等交通事業関係等、それぞれに担当議員を決めて事前研修を行った。これは
成果があり、各議員が真剣に取り組み、担当外の議員も学習会への参加率が高く、
かなりの知識の集約が出来たと考えています。港関係では、ミャンマーに神戸市
の港構築と港運営の技術やノウハウが活かされ、根づかせる事によって神戸港と
の強い絆が生まれ、物流と情報の拠点づくりを始めたいと考え、神戸市のみなと
総局と民間で、実際にミャンマーに実績を持ち開発事業を行っている株式会社国
際経済協力機構の岩本和久氏に議会にお越し頂き、学習をした。
分かった事は、ミャンマー最大の港ヤンゴン港は川口港であり、最深が9m で、
特殊な船でしか出入りが出来ない上に、満潮を待っての着船であるため、入港が日
に 2 回に限られており、その他は沖合に停泊し、小型のはしけ船で少しつ荷上をせ
ざるを得ない事であった。この事は、ミャンマー発展にとって最大事として、解決
せねばならない点であるのに、今まで援助して来た中国が何もしなかったのは何故
か。今になって日本政府もアメリカも、もっと深い港を構築するべくティラワの地
に港の構築工事を始めたと学んだ。
現在ミャンマーは開国を始め、経済活動が始動し、その成長は素晴らしいが今も
尚、現在のヤンゴン港の輸送に頼らざるを得ない現状であるという。そこで神戸市
の技術が、日本の ODA や他の政府資金及び民間によって活かすことが出来ないかを
す作業をする事とし、平野昌司議員がその役を果たして下さった。又、この件につ
いては民間で、主に日本より中古車を輸送している ECL エージェンシー株式会社の
本社営業部部長の鈴木一様、同社次長の山崎呈様、同社の平澤直揮様、三名が議会
に来て下さり、現状を聞き予備知識を得る事が出来た。次にミャンマーの医療状況
を知り、神戸市の医療をミャンマーに提供し、ミャンマー市民の健康に役立たせる
と共に、神戸市の優れた医療を発信してもらう事が狙いであった。この為に、ミャ
ンマーの医師団や病院経営者との面談は必要であった。前述の岩本和久氏が我々に
先立ちミャンマーに行き、政治の中心地であるネーピードーで関係者に会い、準備
をして下さるという影の努力をして下さった。我々も政府機関を使う事は知ってい
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考え、神戸市みなと総局の局長より、その旨をしたためた親書をヤンゴン市長に渡
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たが、それはお決まりの見学コースとなり、形式的な外交辞令に終る事を恐れたか
らである。この為に、平野昌司議員の商社マン時代のコネクションで、同氏にお願
いしたところ、自腹を切って神戸の為に努力して下さり、ネーピードーにて、ミャ
ンマーでも有名なネーピードー総合病院の視察により医療関係者との交渉を持つ事
が出来た。予想通り、病院の程度は低いものの、医療機器はドイツ、アメリカ、フ
ランス、日本製のものが入っていた。医師はシンガポール等で学んだ人が最高で、
他は軍の医師であった。それだけに神戸の医療に対する思いは、実感として伝わっ
た。それは、医師団が神戸市との交流を願っている生の声であった。もし実現する
なら、患者もナースも薬も神戸に方向づけが出来るチャンスであると確信した。し
かし、この競争にも韓国、中国、タイが出て来ている。何とかしたいものである。
さて、ミャンマーの港に関しては、安達和彦議員と平井真千子議員が、神戸市の
みなと総局より、神戸港の資料を入手して下さり、神戸港の状況説明に役立った。
又、神戸港との情報交換に、ヤンゴン市長が大きな関心を持ってもらう事に成功し
た。橋本健議員の患者さんである、在ミャンマー日本大使館二等書記官の前田敬さ
んがミャンマーに派遣されておられ、我々の視察団を励まし、又、現地の状況も説
明して下さり、大いに勉強になった。こうして議員自ら手さぐりで政府機関だけに
頼らず、一から学習を始める事により、時間と無駄な苦労はあったが、各議員が何
か成果を上げたいとの熱いものがあって食事とかホテルとか長時間バスに乗っての
移動にもなんの文句も出ず党派を超えて団結してくれた。
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次にインドも同じく神戸の種を植える事を狙っていたが、これは失敗した感があ
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った。インド人はプライドが高く、日本や神戸から、学ぶとか協調とかの意識はな
く、教えてやるとの姿勢であった。典型的なのが、水ビジネスである。この件に関
しては、大石よしのり議員が実に良くやって下さった。神戸の神鋼環境ソリューシ
ョンと交渉し、同社が神戸市と組んで、ベトナムで水ビジネスを展開している事か
ら、インドのニューデリーにて神戸市の水道技術が活かされ、ビジネスにならない
かとの命題に沿って、勉強会を開催して下さった。又、水ビジネスでは日本の先駆
者である東京都水道サービス株式会社と JICA 本部に勉強に行き、ミャンマーとイン
ドで神戸が水ビジネスをする為に必要な条件を頭に入れさせて頂いた。インドのニ
ューデリーの水道局の配水所に行って、懇談を始めたが、まず何を勉強に来たのか
から始まり、説明を受けた我々は神戸市の水はそのまま飲料として飲む事が出来、
又、漏水率は世界一低く、管理能力も高いので、協調の中で共に学んで行く為に、
神戸市との連携から始めてはどうかと提案した。インドの水道水は、そのまま飲む
事が出来、学ぶところは無いとの答弁であった。議員の中から、我々だって半数以
上の者が下痢をして、二人は高熱で休息していると申し上げると、コップに水を人
数分入れ、我々は飲める、皆様もどうぞと言われる始末であった。行った所が悪か
ったのか、インド側を怒らせてしまったのか、考えてみれば、水道から直接水を飲
める国は数少なく、その技術を押し付ける考えは止めなければならない反面、我が
国の先人が、明治時代、水道事業を始めるに当り、高度な技術を学んだ事に改めて
敬意を表する気持ちになった。帰国後、神戸に住むインドの人々に尋ねてみても、
私達も下痢をしますとの返答で、インドの水問題は深刻だが、改良する気持ちが無
いようですとの事であった。
インドについては、インド総領事館が本当に良くやって下さった。総領事のヴィ
カス・スワループさんの紹介で、アポロ病院との懇談と視察をさせて頂いた。主題
は、メディカルツーリズムの現状であった。驚いた事にメディカルツーリズムの売
上げが、総売上げの 20%~25%と、5年間で急成長している事だ。詳しくは、担当
の議員が報告して下さっています。心臓や臓器移植も年間 60~70 件行っており、何
も問題は無く、治療費も安く、問い合わせが多くあり、この部分も急成長するとの
事であった。安い理由は、人件費が低い上、手術に携わる医師が少なく、医師が麻
酔医も兼任するからである。我々の心配する人身売買に関わるのではないかとの問
で病院内の調査係が全力を挙げて調整する、との返答であった。年に1~2回は怪
しい申し込みがあるようだが、問題はないとの事であった。又、それだけ多くの生
体肝移植をして医療トラブルで訴訟等は無いのかとの問いに対して、医師は神に近
い存在で、医師を訴える事など考えられない風潮があり、訴訟はありえないとの事
であった。今後はメディカルツーリズムをアメリカやアラブに拡げて行く方向であ
り、その為に各国に連絡所を設けて、情報案内をすると共に、インターネットでイ
ンドに来て下さる患者を捜すとの事であった。しかし何よりも、各国からの医師の
紹介が多く、患者も安心をするという。これでは神戸は勝てない。神戸が医療産業
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いに対して、臓器移植の場合、近い親戚以外は認められず、申し込みがあった時点
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構想を始めて 13 年、既に 1,800 億円をつぎ込んで築きつつある学術的成果と技術及
び設備が全く活かされる事なく、埋もれている。一刻も早く始動すべきである。や
はり我々のポートアイランドの先端医療センター等を含めて世界中の医学界に PR と
視察に来て頂き、世界的なステータスを得る必要がある。我々がいかに訴えても、
このアポロ病院の医師団は神戸の医療産業について何の知識も関心もなく、思い余
った平野昌司議員がインターネットで、神戸の先端医療を見て下さいと主張するの
が精一杯であった。いかに神戸市の医療産業が内容はトップクラスであるが、世界
から離れているかが良く分かった。神戸市は世界の主たる医師を招待して評価を受
ける事を真剣に考える事。次に、インド、タイ、韓国、中国が狙う階層の患者さん
への国際医療貢献とは違う狙いを決める事。例えば、料金の事よりまず安全で、よ
り高度な医療を求める階層に対応出来る準備を考えなければならないと確信した。
この件では、事前に、佐藤公彦議員が用意をして下さって、神戸市アジア進出支
援センターの檀特センター長、ミャンマーアドバイザー浦氏、又インドアドバイザ
ー安間氏の話も役に立った。
次にインドで今後種まきができると思われるのは、神戸コレクションである。こ
の件については、上原みなみ議員が神戸コレクションの指導者である高田恵太郎氏
と神戸ファッション界のリーダーである株式会社イズムの小田倶義社長を招いてイ
ンドでの開催の可能性を探った。神戸コレクションは上海で大成功すると共に、次
はベトナム、タイを考えていると学んだが、インドではまだ考えていないとの事で
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あった。しかし、インドで観光局の局長に会い進言したところ、大変な興味を示し、
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「インドは、ファッションショーが好きな国で、是非開催して欲しい」との意見が
出た。その為の協力は惜しまないとの事で、今後、資金面も含めて、高田氏に相談
した上で、進めて行く事は、インドという大きな市場に、神戸ファッションの種を
埋める事になると思われる為、今後、引き続いて努力する事とする。
最後になるが、今回の視察団はそれぞれが自分の範囲内で努力して下さった。あ
てがいぶちでなく、自己流でしかも自分でコネクションを捜して行った。その事が
勉強であり、民間の状況を知る機会であった。高山晃一議員は自分でインターネッ
トや図書館で調べたミャンマーとインドの経済状況をレポートにして下さった。皆
が自分の視察として感じて下さっている、その気持ちの中に、我々は市民の代表と
して行くとの意識がいつも伴っている証であると信じている。インドのデリー大学
を訪れて、大学の研究成果がどのようにインド社会に反映され、産官学が協調され
ているか調べたが、まず、そんな意識は無く、単に学歴と就職の手段であった。学
長はなんと 20 年間、同職に就かれており、中国史の研究に携わっていたそうだ。学
長室にあるピアノを見つけた橋本健議員が古めかしいが威厳のあるピアノかと聞く
と、学長が現在、練習中との返事であった。橋本
健議員がピアノを弾き、皆が彼
を取り囲んだ。一挙に神戸市会議員の格式が向上したのである。私もピアノが弾け
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たらと思ったものだ。
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ミャンマー・インド視察団
副団長
自由民主党神戸市会議員団
安達和彦
4月1日夕刻、時間変更があり午後4時半、ヤンゴン市役所を訪問、ウラミン市
長以下、市の幹部4人と面会し、港湾・水道・医療・ファッション等々について懇
談させて戴いた。
私と平井真千子議員が担当した港湾の分野においても、神戸港の資料を手渡し、
ハード、ソフト両面に於いて神戸市のみなと総局で何かお手伝いすることがあれば
ということで懇談した。
ヤンゴンの港はもともと河川港であり、浚渫を重ねても水深が最大でも9メート
ル程度しか確保できず、大きなコンテナ船等が入れないため、とても国際港湾とい
えるようなものではなく、現在のヤンゴンから16キロ南のティラワというところ
にコンテナバースを建設中である。ただ、そのティラワ港も川の流域中にあり、河
川港の域を出ず、大水深バースは望むべくもない。
そこで、事前の調査で分かったことだが、ヤンゴンからかなり南のさらにその沖
合に埋め立て島を造って、そこに新たな港を設置する案が日本の国土交通省の出先
機関である OCDI との間で計画が進められているとのことであった。
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ウラミン市長は駐日大使も務められた経歴もあり、実際に神戸港を視察された経
験も持っておられ、埋め立て島であるポートアイランドの資料を非常に興味深く見
ておられたが、港に関しては、やはりヤンゴン市にその権限はなく、国の港湾局と
協議をしていかなければならないことがはっきりした。
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明くる朝4月2日、ホテルでの朝食会にお訪ね戴いたミャンマーに出向中の国土
交通省の三宅参事官と前田駐ミャンマー日本大使館二等書記官にもポートアイラン
ドの神戸港の資料をお渡しするとともに、意見交換させていただく中で、神戸との
間を取り持つパイプとなって貰うようお願いをさせていただいた。
訪問前、ミャンマーは世界最貧国の一つと聞いていたが、実際行ってみると、あ
まりそういったことを感じることもなく、むしろ終戦直後の日本の様にバイタリテ
ィーに溢れ、それでいて道徳心も高く、これからきっと間違いなく経済成長してい
く若い国であるとの印象を受けた。
一説にはレアアース等の埋蔵も確認されており、10年後20年後が楽しみであ
る。5月下旬には安倍総理もミャンマーを訪問し、巨額の ODA を約束しており、今
後十分日本のパートナーとして長くお付き合いできる国だと率直に感じた。
一方、インドもまた親日国家であり、深い交流が期待されるものの、文化の違い
があまりにも大きく、医療レベルも自分達の方が高いという意識などプライドも高
く、ファッション以外はなかなかビジネスには繋がりにくいのではないかとハード
ルの高さを実感した。
今後も引き続き、粘り強く交流を続けて行かなければと思った。
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ヤンゴン市庁舎にて
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自由民主党神戸市会議員団
平井真千子
今回の視察にあたり、出発までに何度も勉強会を重ね、ミャンマー、インドとの
交流の可能性について情報収集を行なった。特にミャンマー政府とも太いパイプを
もち現地で建設・交通など数多くの事業を行なう ABC グループの岩本氏、ミャンマ
ーへの中古車輸出の航路事業をてがけるイースタン・カーライナー(株)の方々に
ご協力いただけたことにより、ミャンマーでの視察内容をより濃いものとすること
ができた。
ミャンマーの首都ネーピードーについては一般のメディアからは詳しい情報を得
られず、我々の訪問に対しても大使館から目的など厳しく確認を求められ、医療関
係者との交流も直前まで実現が難しい状況であった。外国にオープンにされていな
い秘密の新首都であるということを改めて実感し、どんな町なのかしっかり目に焼
きつけて帰ろうという気持ちが高まった。無事病院の見学、医師達との交流を果た
すことができ、まだまだ医療施設としてのレベルは日本に比べるまでもなく低いが、
医師達の向上心や真面目さ、また日本から学べることは学びたいと交流を望む熱い
気持ちを感じることができた。
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そのような日本との交流に前向きで温かな姿勢はミャンマーでの訪問先全般で感
じた。アジアの最貧国と言われるだけあり道路や港湾なども粗末だし渋滞のひどさ
にも辟易するが、民主化と経済発展の波は止まることがないだろう。小さな渡し船
で混雑しているヤンゴン港も、イラワジ川に一本橋が架かるだけで状況は大きく変
わるに違いない。これから 10 年先が楽しみだし、そこに向けて日本が成長のパート
ナーとして存在感を発揮するべきだ。かつてミャンマーと日本は強い繋がりがあっ
たが、その伝統が全く現代に続いていない。我々のような地方議員のレベルでもミ
ャンマー人と心の繋がりをより深くもつことが必要だと思う。
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その後に訪れたインドでは、ミャンマーとの国民性の違いに驚くばかりだった。
経済的には既に発展をとげている国にも係らず、貧富や新旧の雑多に入り交じった
混沌とした街なみは聞きしに勝るものであった。
2つの大病院を視察したが、どちらも医師も含めて経営者としての自覚が大きく、
医療技術の向上以上に富裕な患者の受入れに対して熱心であるという姿勢は日本の
それとは異質なものだ。政治的には難しい関係にあるパキスタンからも医療目的な
らば入国を歓迎するなど政府も一丸となって取り組む、こういった合理的な線引き
がインドらしさなのだろう。インドと何か交流をもちたいなら、お互いに何を受け
取ることができるのか明確にする必要がある。漠然と良いものをもっているという
自信だけではだめだと、我々日本人の認識の甘さについて再認識することになった。
水道でも医療産業についても日本、また神戸が技術面でインドに劣るものは何もな
いだろう。しかし良いものを持っているというだけでなく、相手にそれを分からせ
なければ意味がない。
同じアジアでも国が違えば人も文化も全く異なる。体力的にハードな視察だった
が、国外への事業展開についてはもちろんこれまでの神戸市の事業についての反省、
また新たな価値の発見をすることができたのが収穫であった。
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ネーピードー市総合病院の見取り図
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自由民主党神戸市会議員団
橋本
健
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議員生活6年目にして初めての海外視察だった。渡航先は今後民主化の成熟にと
もなう経済発展が期待されるミャンマーと、人口世界第二位を誇るインド。水イン
フラ整備における神戸国際進出の可能性の調査、医療産業都市構想の熟成、港湾整
備における神戸の果たすべき役割の調査、ファッションに代表される神戸の文化の
発信を目的とした視察日程だった。調査の詳細は後掲の報告に代えさせていただく
こととして、本稿ではそこでは書けない私が見たことや感じたことを述べさせてい
ただくこととする。
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ミャンマーは御存知のとおり、民主化されて間もない今後の経済発展が期待され
る国である。旧首都のヤンゴン市内は人・車があふれかえっており、決して綺麗な
わけではないが活気あふれる東南アジア特有の雰囲気だった。車はそのほとんどが
日本製の中古車であり、なにか懐かしいものを感じた。ミャンマー入りしてすぐに、
現首都であるネーピードーへの移動だったが、途中の夜店での賑わいや、また日本
であれば定員5名の乗用車1台に15~20名の人が屋根の上に腰をかけ、あるい
はドアにつかまり移動している様に驚いたものだ。ジャングルを切り開いて作られ
た政治首都である新首都のネーピードーの雰囲気はヤンゴン市内のそれとは一変し、
綺麗な街ではあるが人工的であり、庶民の生活を感じるものはあまりなかった。ネ
ーピードー市総合病院での視察ではベッドが未設置の ICU や設備に乏しい検査室、
衛生管理が行き届いているとはいえない手術室などをみると「先端医療」が必要な
のではなく、「基礎的医療」の充実が喫緊の課題であることをすぐに理解した。同
時に日本の我々にできることは、人材の交流により医師の教育、医療技術の水準を
高めることだと直感できた。ヤンゴン市に戻って港湾の視察をさせていただいたが、
ここでは世界各国が競って参入を図っている様が見えた。岸壁整備は河口港である
ことで水深を確保できず大型船の入港が困難であるなどの事情はよく理解できたが、
それでも港湾施設の建設と輸送インフラの整備に力を注ぐ各国の事業者の存在を感
じた。ところで、私は国内外を問わず旅先では夜の街を歩くことにしている。変な
意味ではなく、街や国の雰囲気、住んでいる方の気質などが分かりやすいからだ。
ヤンゴン市内でも私の友人の友人である日本人が経営する飲食店があるとのことで、
訪問することを楽しみにしていたのだがあいにく郊外で起きた宗教対立による暴動
のため戒厳令が発令されておりホテルから外にでることはなかった。仏教徒の多い
ミャンマーの国民性は非常に穏やかで他人を思いやる優しいものだと聞いており、
事実現地でであった方はその通りであった。しかし、今回の暴動では多くの死者を
出すなどしており、このことを現地の方に話すと「ミャンマー人は優しいけど怒る
と何をするかわからない」と説明された。広い意味で「教育」が最も必要な国なの
かもしれないし、それが行き届けば大きく発展することになるだろう。再び訪問し
て国の変化を見てみたいと思った。
調査報告にはもちろん調査項目に対する調査結果と考察を記載するが、上記のよ
うなことは記載することができない。しかし、ここで私が記したことを抜きにして
本調査の意義を語ることはできない。国民性や国の事情を理解しなければ、私たち
にとっていくら理にかなったことを主張しても先方に理解されることはない。さき
の iPS 細胞の話など顕著なものだ。私たちがいかに限られた情報の中で、あるいは
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インドは入国前から驚くことばかりであった。飛行機の中は修学旅行生であふれ
る鉄道車両の様相であり、「なるほどこれがインドの国民性か」と知らされるとこ
ろから旅は始まった。宿泊したホテルは立派であったが、同僚議員が浴槽にお湯を
張ったところ赤水であったことが判明。やはり日本人の水道に対する感覚はひとま
ず捨てて調査をしなければならないと理解した。さきにも述べたが、私は旅先の夜
の街を歩くことを楽しみにしておりガイドに街への行き方を訪ねると「それはすご
く遠いよ。」との答えだった。ニューデリーに到着しそこで宿泊しているのだから
そんなはずはないと問うと「それでも遠いよ。」との答え。タクシーで行くからど
れくらいの時間がかかるかと訪ねるとすごく困った顔をされ、「行けないことはな
いけど、行かないほうがいい」とようやく理解できる答えが返ってきた。つまり、
治安がとても悪いので出歩かないでくれという意味だったのだ。どこまで信じれば
いいのかは分からないが、女性が襲われる事件は日常的に起きており、最近では偽
路線バスで女性を拉致し集団で暴行するといった手口の事件が頻発していると聞か
された。私の想像するインドとはまた違うもので到着早々驚かされたものだ。食事
はといえばカレーもしくはカレー風味のものしかなく、水が原因なのか、スパイス
が原因なのかは分からないが滞在中に約半数の議員が体調を崩したことも明記して
おく。インドの交通事情はうまく表現できない。とにかく道路は車であふれかえっ
ている。3車線の道路は自動的に5列の車列となり、車と車の距離はわずか 30cm 程
度。合理的なのは車やバイクの左サイドミラーは最初からついていないか、取り外
されていることだ。クラクションは意味もなく全員が常に鳴らしている状況。これ
なら接触事故くらいじゃ誰も文句を言わないだろうと思いきや、わずかな接触で車
を車線に放置し後続の渋滞を気にすることなく大喧嘩を始める人たちを何組か見た
ときには、「カルチャーショック」という言葉以外浮かんでこなかった。メダンタ
病院の調査での特記事項は、神戸の医療産業都市構想を説明する中で「iPS 細胞」に
ついて触れたところ、まったくといって理解されなかったことである。山中教授の
ことはもちろんだが、iPS 細胞という言葉すら認知されていなかったのだ。ここであ
たりまえのことに気づくこととなる。よく考えれば私たちだって昨年のノーベル医
学生理学賞が何だったのかと問われても答えられない。たまたま日本人の山中教授
が受賞されたから知っているだけなのだ。将来へ期待できる研究成果であることは
事実だが、それは海外の方たちも当たり前に共有しているものではないということ
である。また、水道局の調査での特記事項は彼らが自国の水事情についてあまり正
しいデータを出そうとはせず、さらに日本の水事情がこれほど発達しているという
情報すら持っていないようで、水に対する価値観の違いを見せつけられたことだ。
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ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
一方的な情報の中で生活しているかを再認識しなければならない。また、外国から
日本がどの程度認知されているのかを知る必要がある。今回の視察を認めていただ
いたおかげで、今後議会で容易に「水ビジネスの国際進出をはかるべきだ」とか
「iPS 細胞を売りに医療産業都市を推進すべきだ」などといった発言をすることはな
いだろう。それより以前にすべきことを認識できたからだ。市民の方からはなかな
か理解していただけない政務調査費を使っての海外視察だが、まさに先人たちのい
う「百聞は一見に如かず」であり、多くのことを学ばせていただいたことを記して
おく。さらに今回の視察でいちばん労を費やしたのは出発前の勉強会であることも
記しておきたい。安井団長の指揮の下、各議員が担当分野の事前勉強会を設定する
など綿密な準備と知識を得ることができたことはとても重要なことであった。旅程
はわずか8日間だが、準備期間を含めれば数か月にわたる視察ともいえる。いつも
は政策で対立するところのある「みんなの党」会派の議員と議論しながら進めるこ
とができたことが成果物をより大きなものとしたのは言うまでもない。総じて、非
常に有意義な視察であったことをお伝えさせていただく。感謝。
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ネーピードー市総合病院医師団との交流会
自由民主党神戸市会議員団
佐藤
公彦
この度の海外視察を行うにあたり、神戸市が推進する医療産業及び、水道事業、港湾事業
について、神戸市並びに市内中小企業の海外展開への可能性を探ることを目的として行うこ
とになった。
最初の訪問先は、ミャンマーの首都、ネーピードーにある市総合病院である。
建設費及び機材購入費などの総額は日本円で約 20 億円ということであったが、建物はそ
れほど堅牢なものではなく、屋根材はトタン屋根の型押しであった。開業から 10 か月を経
て、病院に従事している医者は、専門医が 15 名、看護師は 20 名という非常に少ない人員で
の病院経営である。医師は非常に若くて経験がまだ浅い方が非常に多いような印象を受けた。
また、視察中に院内で見かけた患者数は約 10 名程度であり、総合病院という印象はあまり
受けることができなかった。
また、メディカルツーリズムの調査として、インドの民間経営である MEDANTA 病院へ
の視察を行った。規模は神戸市立医療センター中央市民病院と同程度の病院であるが、海外
からの患者が 1 日に約 150 人程度来院している。メディカルツーリズムをどの様に行ってい
るかについては、特に行っていることはなく、患者が満足に治療を受けること自体が、宣伝
となって次の患者獲得につながっているという。
当病院では、日本の医療産業についての認知度はなく、特に山中教授による IPS 細胞のこ
とについても全く知らないということである。
従って、医療産業については、それぞれの医療レベルや立地条件などから神戸市との提携
を図ることは非常に難しいと考えられる。
幹線道路からは省庁の建物は見えず、人影も全くないという状態であった。何か異様な雰
囲気が佇む中で現れたのが、豪華絢爛な国会議事堂である。議事堂の前にある道路の幅員は
約 200mであり、たまたま道路の側面に土が崩れている所があったが、コンクリート舗装で、
厚みが 20 ㎝×20 ㎝の合計 40 ㎝であった。なぜ、このような舗装が必要なのかは不明だが、
おそらく軍用施設として使用できるよう設計されていると思われる。
水道事業については、ミャンマーのヤンゴン市長及びインドのデリー市に訪問したが、と
もに飲料水はペットボトルが普及していることから、飲料水に困っているという状況ではな
い。しかし、両市とも日本の水道は蛇口から飲めることにとても驚いていた。特にヤンゴン
市長は興味を持っていただいたようである。しかしインドのデリー市においては、興味を少
しも示すことは無かった。ここで思うことは、各国々での文化やインフラ整備の常識が違う
ことで、いくらこちらがいいと思っていても相手の常識には届かないということである。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
ミャンマーの首都、ネーピードーは人工的に創られた都市であり、各省庁が点在している
地区には建物が並んでいるのではなく、森林の奥に各建物が点在しているとのことである。
14
今回の視察にあたっては、目的とその効果を発揮するために事前勉強会を複数回行ってき
たが、各国の文明や文化、都市基盤や財政状況など、日本との隔たりをどの様に少なく出来
るのかといったことを行う必要がある。
インドでの交通事情では、自動車は日本と同じ左側通行であるが、自動車の左側のドアミ
ラーが無く、すべての車がぎりぎりで走行しており、朝から晩までクラクションが町中に響
いている状態である。
日本の先進的な技術を如何に海外へ展開するかについては、今回の結果が全てではないと
思うが、非常に難題であることは間違いない。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
しかし、この度の経験を糧として、次のステップへと生かさなければならないと改めて決
意したところである。
15
ヤンゴン港
ミャンマー・インド視察団
副団長
みんなの党神戸市会議員団
大石
よしのり
神戸の強み、「医療産業」。「港湾事業」、「水ビジネス」、「ファッション」、「観光
産業」等のセールス及び各国との連携を図るため、ミャンマー、インドを訪問した。
ミャンマーについては、医療産業は、国営に頼る部分が多く、最近半官半民で大きな総合
病院が建てられたが、発展途上の状態である。
医師の向上意識は高く強く、神戸での就学、就労を望む意思のある医師も見うけられた。
港湾は河川が中心となっており、沖合での港の開発まで踏み込まなければ、大型貨物船の
入港は無理。
神戸が天津港の開発を手助けしたようには、容易くはできないが、JICA との情報交換も
継続しながら、情勢を見守りたい。
ヤンゴン市長との会談では、「水インフラ」についての支援を切望されており、これも民
間企業と JICA の連携を神戸が繋ぐカタチをとっていきたい。
インドについては、各地各国の支援の手が拡がっているが、国内での貧富の差はもとより、
衛生等に対する国民の体質そのものを改善すべき部分が、多々見受けられた。
ホテル、寺院がいくら綺麗でも、町や通りが汚すぎる。車のクラクションが、うるさ過ぎ
ると言った、我慢の限界を超えるモノ。
観光局訪問時には、率直な意見は伝えたが、「10年後に、再訪問してほしい。計画をも
って、町の美化にも取り組む」と言った回答。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
「神戸コレクション」のインド開催については、非常に興味を示され、具体の動きに入る
ことになる。
16
みんなの党神戸市会議員団
高山
晃一
<神戸の成長戦略について>
英語で患者とコミュニケーションでき、患者の信頼が厚い医師、そして能力の秀
でた経営者は、インド独自の優位性が高い経営資源といえる。それらに、巨額の資
本を元に CT や MRI をはじめ世界標準の医療機器・衛生的な施設を好条件で重ね合わ
せることで、世界標準の治療を納得価格で提供するというメディカルツーリズムが
インドで成り立ち、高収益を上げ成長を遂げている。
医療産業都市構想に取り組む神戸市が持つ資源は当然インドとは異なり、神戸市
でインドと同様のメディカルツーリズムが成立するとは思われなかった。
神戸がこれまでに培ってきたものの中から優位性の高い資源を見極め重ね合わせ
る作業を、医療のみならずファッションなどそれぞれの分野でおこなうことにより、
神戸の成長戦略が明確になると思われた。
<人の交流について>
ミャンマーの人々が日本に親しみを感じている理由は、ミャンマー独立の父アウ
ン・サン将軍が日本で学んだことに由来する。
医療分野や水道事業などの基盤整備・まちづくりにおいて、日本がアジア新興諸
国と相互に協力する体制を築こうとすれば、ミャンマー・インドをはじめアジアの
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
若者が奨学制度などを活用して日本の大学・大学院で学び、日本で生活する、日本
の若者もアジアで学ぶ、そのような次代を担う人材の交流・育成を地道に重ねる取
り組みが重要であり、そうした取り組みが不足しているように感じた。
17
<日本の役割について>
日本は人口減社会を迎え、また日本を代表する企業の業績が悪化し、閉塞感が漂
い、活力が感じられない。ニュータウンのオールドタウン化などの課題にも直面し
ている。
その一方、ミャンマーをはじめ新興国はかつての日本と同様の高度成長期を迎え、
基盤整備が急ピッチで進められている。
そうした新興国にも 2050 年頃には現在の日本と同様に人口減社会が到来する。
アジア各地の新興国が日本と同じ轍を踏む必要のない環境汚染・オールドタウン化
などに関して日本が積極的に助言する、環境対策、オールドタウン化対策などを折
り込んだ基盤整備が新興国各地で実現するよう助言することが、日本だからこそで
きる貢献ではないかと考える。
みんなの党神戸市会議員団
山下
てんせい
この度、議員一期目の立場ながら海外視察に帯同させていただく機会を得たこと
に、まずもって感謝の意を表したいと思います。
今回視察したミャンマーおよびインドは、将来的に日本の良きビジネスパートナ
ーとして切磋琢磨していけるであろう国々です。ただ日本にいては、かの国の実情
やどういった協力を模索していけるのかといった情報が得難い地でもあります。
入ってくる情報は、民族同士の小競り合いや国際的な紛争のものばかりです。
そこでこの度の視察の大きなテーマは、私なりにかの国々のディマンドを探るこ
ととし、できうる限り見聞を深め、日本に持って帰ろうという決意で赴きました。
ミャンマーにて滞在した三日間で、早くも収穫を得ました。国民はみな勤勉かつ
愛国心に溢れ、戒律を重んじるといった、日本がかつて高度経済成長を成し遂げた
環境がそのまま現代に残っていたような印象を覚えました。
たまたま軍部が政権を担っていたために周囲の経済成長から立ち遅れただけで、
最貧国でも何でもない、資源も豊富に抱えている。
そして何より、社会的インフラが整備されることを望んでいる。このタイミング
だからこそ提言できることがそこここに転がっています。
一方インドにおいては、想定とは真逆の、いわば原始的な非消費社会に触れたこ
とが衝撃的でありました。
われわれが視察した機関や企業は、確かに高度成長を支えた知の集積でありました。
しかし移動の間に見た町の風景や、そこここで走り回ったり寝そべったりしている
動物、そして豊かさとは無縁の生活をおくっている人々の暮らしを垣間見たことの
ほうが収穫であったとも思っています。
そしてかの国において、極東の島国である日本の存在は、ちょうどわれわれが情
報を得難いように、まるで興味がないかのようでありました。よってわれわれが大
いに期待を寄せる山中教授の iPS 細胞について等、まるで知らない、興味がないと
いった反応でありました。このことから得た教訓は、我々の常識というものを一度
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
とりわけ緊急性の高い、医療の人材交流や技術の教授、港湾インフラの整備方針、
そして市民への何を教え、啓発すべきなのかといったことは、国政に委ねるまでも
なく、神戸市が先陣を切ることができると確信しております。また余談であります
が、ミャンマーの家電は SAMSUNG に席巻されていましたが、決め手はミャンマー
国民の需要を正しく把握しているか否かの話であって、技術や価格競争といった要
素ではないということを学んだことを報告させていただきます。
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外して、もっとプレゼンテーションしていかないといけないという反省でありまし
た。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
インド デリーの街並み
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インド ニューデリーの道路で木を運ぶゾウ
みんなの党神戸市会議員団
上原
みなみ
<ミャンマー>
ヤンゴン到着後、新首都ネーピードーに向けてほぼ夜通しのバス移動。道路は舗
装されておらず、街灯もない。おまけに車線もないため、対向車が正面から向かっ
てくるのには驚きました。道中で何度も見かけた乗り合いタクシー。トラックの荷
台に多くの乗客がいる状態で、非常に危険です。また、ライラックは魔よけの意味
があるらしく、子供たちが手に持ち、安全祈願にと運転手に売る姿が印象的でした。
顔にはタナカウッドという黄色いものが塗りつけられています。
ネーピードー到着後、改めて、ミャンマー人が素朴で親日的で、皆、幸せそうに
見えることに気づきました。現地通訳の女性に聞くと、この国では生活できるだけ
のお金があれば十分で、それ以上は寺院などに寄付をするという「欲」のない人た
ちが多いそうです。
ごみの収集も手作業、何時間もかかっている姿を見て、非効率だなぁ。日本のパ
ッカー車を持ってきたいなどと思いましたが、現状では効率化により仕事がなくな
る事の方が問題なのかもしれません。
地下資源の豊富な国、数年後には確実に富裕層が増えることでしょう。その点で
アジア各国が注目する国ですが、どうか「欲」に捕らわれることなく、純粋な国民
のまま、日本とも友好関係を築いて欲しいと願う視察でした。
素朴なミャンマーと比べると、 都会的な印象を受けたインドの人々。それに、ミ
ャンマーでは無かった物乞いの多さ。子どもが赤ちゃんを抱いて、道路の真ん中で
乗客に向かって手を出してきます。行政区域は感心するほど綺麗に整備されている
一方、その他の地区はごみが溢れています。交通量も多く、常態化する渋滞。ファ
ッションでいうと、洋服を着ている人に比べ、民族衣装を着ている人の割合の方が
低い印象でした。
医療ツーリズムで成功している病院を視察しましたが、世界中からトップクラス
の医師を集めるなど、国内の通常医療だけでも(現在患者の 20%を外国人が占める)
経営が安定しているように感じました。神戸市の医療産業構想に置き換えてみると、
世界的に優秀な医師確保など、民間資本でなければ困難なことがあるように感じま
す。しかし、「iPS 細胞の実用化」について質問したところ、「iPS 細胞」という言
葉自体知らないという回答。日本についても、殆ど興味を持っていないようでした。
「iPS 細胞」が実用化すれば、海外からの日本への注目度が高まり、国際的地位が向
上するはずです。世界の難病患者が神戸で笑顔になって帰国する。そんな日が一日
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
<インド>
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も早く来ることを心から願います。最後に、この度の海外視察で、ミャンマー、イ
ンドともに最も興味を示されたのが、「神戸コレクション」の海外展開。是非実現
したいと考え、取り組んでいく所存です。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
ミャンマー ネーピードーの THE
THINGAHA ホテルのごみ収集の様子
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インド
巨大な料金所
ミャンマー ヤンゴン市内の道路で乗
り合いタクシーに乗る人々
道路脇のいたるところに積まれたごみ
第二章
視察の目的・日程と訪問先
<視察の目的>
われわれ神戸市議会議員団有志10名は、本年3月30日から4月6日までミャ
ンマーおよびインドへの海外視察を行った。
われわれ神戸市会議員の第一の使命は神戸市の発展にとっていかに関与すること
ができるかを考えることであり、この度のミャンマーおよびインドの視察を通じて
得た知識・人との交流は、まさにその使命を推進できるものであったと自負し、こ
こにその成果を報告する。
この度の視察において、我々が掲げたテーマは以下の点である。
・上水インフラ整備
・港湾整備
・医療産業都市としての連携
・神戸ファッションの海外展開
・以上の諸点をふまえた人的交流の可能性
また当視察においてわれわれが心掛けた目標は、
・公費を使っている以上、できる限りの経費節約に努めること。
・現地にて団員一人一人が目的をもって、必ず成果を持ち帰るよう行動すること。
神戸市ではこれまでにおいて、地方自治体としての枠にとらわれない斬新な技術
を開発し、また神戸の特色を生かした地場産業の活性化に取り組んできた。
とりわけテキスタイルにおいては、女性向けファッション誌において神戸は先進
的であるという評価を不動のものにしている。
また神戸港は、阪神・淡路大震災の発災以前は天然の良港としてアジアの貿易の
拠点であった歴史があり、また発災後、国策の後手によって、残念ながらその座を
釜山港等に奪われたのち、起死回生の一手として掲げた医療産業都市計画が着々と
進行している。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
・神戸の、また日本の政治家として自覚をもち、現地にて良い評価を受け、その後
の行政施策や企業活動に寄与できるようふるまうこと。
22
そして上水インフラにおいても、官民連携による全国標準以上の技術を保持し、
そのノウハウを世界に伝承すべく、ベトナムにおいて連携事業を開始するに至って
いる。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
一方こういった神戸の強みを生かし、世界の各都市と有効連携を図るといった取
り組みについては、中国天津市における港湾開発事業を主導するといった実績があ
り、国際都市神戸としての責任と発信を今後も続けていくべきと考えている。
23
<視察日程と訪問先>
11:00
↓
神戸空港 海上アクセス関西空港行ターミナルに集合
関西空港 出発
TG623便 バンコク行き
15:45
バンコク空港 到着
17:55
バンコク空港 出発
↓
18:40
↓
TG305便 ヤンゴン行き
所要時間6時間45分
所要時間1時間15分
ヤンゴン空港 到着
即座にチャーターバスに乗り、首都ネーピードーへ
↓
3月31日 02:00
ホテルへ
ネーピードー市総合病院を訪問・質疑応答、視察
午後
ジャンクションショッピングセンターおよびネーピード
ーの行政区をバスにて視察
07:30
↓
4月2日
ネーピードー到着
午前
夜
4月1日
所要時間約7時間
ホテルにて、ネーピードーの医療関係者と交流
ネーピードーを出発
チャーターバスにてヤンゴンへ移動
所要時間約7時間
14:30
ヤンゴン到着 シュエダゴンパゴダ参拝後、ホテルへ
15:45
ホテルを出発
16:30
ヤンゴン市庁舎を訪問
17:30
ヤンゴン市内をバスにて視察
調査
19:00
夕食を兼ねて、現地で活躍する日本人と交流
08:30
ホテルにて、ミャンマー駐在の日本政府関係者と面談
ウラミン市長と面談
ヤンゴン港の状況を実地
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
3月30日 07:45
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09:30
ティラワ経済特別区を視察
11:00
ヤンゴンの一般市場を視察(アウンサーボジョーマーケ
ット)
12:00
ヤンゴン空港 到着
14:55
ヤンゴン空港 出発
↓
16:50
バンコク空港 到着
17:55
バンコク空港 出発
↓
4月3日
TG302 バンコク行き
TG315 デリー行き
所要時間1時間25分
所要時間4時間30分
20:55
デリー空港 到着
ホテルへ
終日
チャーターバスにてデリー市内視察
MEDANTA 病院を訪問・質疑応答、視察
4月4日
4月5日
12:00
デリー大学 RAMJAS カレッジを訪問・質疑応答、視察
15:00
APOLLO 病院を訪問・質疑応答、視察
終日
インド観光省訪問・質疑応答
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
デリー市水道局を訪問・質疑応答
25
21:00
デリー空港 到着
23:30
デリー空港 出発
↓
4月6日
TG316 バンコク行き
05:25
バンコク空港 到着
11:00
バンコク空港 出発
↓
TG672 関西空港行
所要時間3時間55分
所要時間5時間10分
18:30
関西空港 到着
リムジンバスにて神戸空港へ
19:30
神戸空港海上アクセスターミナル
到着
解散
第三章
項目別視察報告
<上水インフラ>
・ミャンマー ネーピードー市およびヤンゴン市
(面談日時および場所とご担当者)
4月1日 ヤンゴン市庁舎
U Hla Myint ヤンゴン市長
(ヤンゴン市庁舎にて:前列中央が U Hla Myint ヤンゴン市長)
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
Col. Kyaw Soe ヤンゴン市長秘書 他
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4月2日 セドナホテル
三宅光一 ミャンマー運輸省・ミャンマー港湾公社
前田敬
在ミャンマー日本国大使館
運輸交通政策アドバイザー
書記官
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
(左から安達議員、平野昌司議員、大石議員、安井議員、三宅参事官、前田書記官、
橋本議員)
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ミャンマーにおいて、飲料水はミネラルウォーターを購入するのが当たり前とな
っており、市場や露店等あらゆる場所で、様々な国内メーカーのものが販売されて
いる。
とりわけネーピードー市においては、都市として形成されてまだ2年であること
と、国家公務員を除いてそれほど人口が張り付いていないことから、上水のインフ
ラは発達しているとはいえない。よって近隣のホテルにおいては独自の浄水施設を
持つことが必要となるほか、井戸水との併用がなされている。つい最近までは上水
利用のために人工湖を用意し、その上澄み水を供与していたという。
またヤンゴン市においても、上水インフラはあるもののその普及率は 65%に止ま
り、また目下 JICA 援助によって河川の水を浄化し、利用可能にするプロジェクトが
進行しており、2040 年までには全世帯に水道がいきわたることを目標としているが、
それでも飲用に供するまでは至らない見通しであるという。
こういった状況をふまえて、神戸の水道技術を伝承する事を打診したところ、ウラ
ミン・ヤンゴン市長より「教えていただきたい。」との積極的な回答を得ることが
できた。
追ってのご連絡(NPO ミャンマー交流援護会より)では、「ヤンゴン市において、
日本の JICA と神戸のお力添えをいただき、何とか上水道の普及率向上のみならず、
飲用に適するレベルまでの浄化を目指していきたい。宜しくお願い致します」との
連絡を得た。
この事は、今回の視察にとっては、非常に大きな意味を持つ。
未だかつて、接点のなかった、ミャンマーの具体的な市と神戸市の連携を目指す、
礎となるであろう。
翌日、JICA から運輸交通政策アドバイザーの三宅参事官にお話を伺った。
「ヤンゴン市は水道の設備をする以前に、どうしようもないところにタンクローリ
ーで水を運んでいる状況であり、導管を敷設するという段階にはまだまだ至ってい
ない。蛇口がないところもたくさんある。」
また「タンクローリーで運んでいる水も含め、洗濯等に使用するまでである。飲料
に適する水は提供できていない。」という状況であるとの説明であった。
そこで安井団長および平野議員より、神戸市が神鋼環境ソリューションと共同で、
ベトナムの工業団地において水事業を展開していることを伝え、ミャンマーにおい
ての都市計画マスタープランに携わっていた三宅参事官に協力を要請した。
・インド デリー市
(面談日時および場所とご担当者)
インドの水道事情もまた、一般的には飲料に適さないという。その理由は従来の
上水と、地下水を混ぜて利用している事実にあるようで、そのため地下水量が年々
減少しているという問題をはらんでいる。
しかしその点に関してデリー市水道局は否定し、当地においてはフランスのノウ
ハウを使った高度浄水の技術を持っている事、またこのインフラによってガンジス
川の水を飲料可能にして供している事を主張していた。
ガンジス川の水を浄化したものを試飲提供されたが、浄化はされているようであ
るが、殺菌のレベルがどうも疑わしいものであり、参加した議員団の殆どが口を付
けなかった。
議員団が赴いたのが決裁権の無い、デリー北部の水道局(JAL)であったため、浄
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
4月5日 デリー市水道局
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水技術の伝承に関する提案については、全く反応を示さず、この場での連携の可能
性は低いと判断する。
日本との水道に対する考え方の根本的な違いは・・・「インドの水道水は、無料」
という点。
・課金制度がないために、水道収入がない。
・また、水圧が低い故に、浄水を遠く拡散できる力もない。
・水道事業として、抜本的な改革を望まれるであろうし、浄水整備もさることな
がら、課金集金の仕組みの構築も必要である。
また、今回インドにて宿泊したホテルでも、赤水の絶えない部屋も混在し、その
ことを水道局担当者に質問したところ、「ホテルなど大型施設は、独自に上水管を
引いてきており、その管が錆びたりしているのだろう」との非常に無責任な回答。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
デリー市との水道事業連携、技術提携については、訪問した当該部局ではなかっ
たため、交渉を断念し退座した。
今後は、事前のもっと入念な現地リサーチ(交渉相手や現況調査)の上で、訪問
すべきだったと猛省する。
29
(デリー市水道局との会談)
<港湾整備について>
・ミャンマー ヤンゴン市
(面談日時および場所)
4月1日 ヤンゴン市庁舎
U Hla Myint ヤンゴン市長
Col. Kyaw Soe ヤンゴン市長秘書 他
4月1日 ヤンゴン市内レストラン
藤井啓一郎 ミャンマー交流援護会理事長
白石喜彦
イースタンカーライナー株式会社取締役
Kyaw Thu Rein Lwin
イースタンカーライナー株式会社社員
4月2日 セドナホテル
三宅光一 ミャンマー運輸省・ミャンマー港湾公社
前田敬
在ミャンマー日本国大使館
4月1日
ヤンゴン市長訪問
運輸交通政策アドバイザー
書記官
ウラミン市長はかつて日本大使を務めた方で、神戸についてもよく知っており、
印象深かった地として六甲アイランドの思い出を語るなど友好の意を示された。
ヤンゴンはミャンマーのコンテナ貨物の集散地であるが、大水深港の新規建設の
必要がある。日本からの協力としては国交省の外郭団体 OCDI が調査団を派遣、適地
選定などに現在あたっている。そこで神戸市がハード面では協力できることがあま
りない。しかし港湾管理者として、港の管理運営、オペレーション、EDI、港湾会計
など国では弱いソフト面での協力ができるということを提案。ミャンマーの港湾関
係の方に神戸港にお越しいただき、視察やノウハウの提供などの交流をぜひしたい
という旨をお伝えした。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
U HLA MYINT ヤンゴン市長、ヤンゴン開発委員会委員長とその側近の方々と面談。
みなと総局岡口局長よりの親書と、神戸港のパンフレット、DVD 等をお渡しした。
30
ヤンゴン市はヤンゴン川下流のデルタ地帯に発達した都市であるため、港も大河
の川岸に設置されている2か所だけであり、ヤンゴン川の岸壁に作られた港とヤン
ゴン湾の浜辺に作られた港である。どちらも常に土砂の堆積に見舞われており、貿
易港として十分な深さを保持することが困難であると言われている。
実際現地にて確認したところ、貨物船が入港するには潮の干満にも影響され、ま
た最大でも9メートルの水深しかないということから、せいぜい5000トン程度
の船が入港できるまでであり、大型貨物船の入港は不可能である。そしてヤンゴン
川岸壁の港においては生活港湾としての役割が大きく、昔ながらの小型船による渡
し守や、地方に出港する中型船が出入りしていることもあり、航路においての安全
性を確保する事もまた難しいといえる。
よって実際的な貿易港を形成するためには、ヤンゴン市より下流にある拠点を開
発するか、外洋の沖合に人工島を形成するかという選択になる。ベンガル湾におい
ては様々なところで港湾開発が行われているが、日本はティラワ経済計画において
ODA 活用によって参画する事が出来ている。しかし日本企業の参画は鈍く、先日ヤ
ンゴン湾の港の国際入札(岸壁工事と港の経営)が行われた際、即日完売となった
にもかかわらず、日本企業は一社も参加していなかったという。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
これは完全に日本側の情報不足に起因しており、改めて現地の新鮮な情報を発受
信できる体制の構築が求められるという好例であろう。同じ轍を踏まないよう、早
急な対応が求められる。
31
以上の点から、神戸からの港湾開発参画に関し、人材派遣を軸とした協力の可能
性を探ったところ、ヤンゴン市の事業というよりは国家施策として港湾公社に伝手
を持つことが上策と考える。この点に関しては、三宅光一 ミャンマー運輸省・ミ
ャンマー港湾公社 運輸交通政策アドバイザーからもアドバイスをいただく事が出
来た。またヤンゴン港の開発としては、トランシップや内陸へのダイレクト航路と
いった、ハブではないが物流の拠点としての機能を強化する方針が適しているとい
う結論に達した。
ヤンゴン港
(ティラワ港への道路:車線がなく、舗装も完全ではない)
また4月1日に開催された、ミャンマー交流援護会理事長 藤井啓一郎氏・イー
スタンカーライナー株式会社取締役 白石喜彦氏との会食において意見が一致した
事項を以下に列記する。
・ミャンマーの保有する地下資源(希少金属・石油・天然ガス等)が、アメリカと
提携することで掘削できるようになる見通しであることから、この国は近いうちに
大きく発展する。そのうえで、港湾開発はもっとも重要である。
・ただしミャンマー人の国民性が真面目で勤勉であることから、きちんと教育・啓
発をすれば改善は進むであろう。また親日家が多く、日本の国民性と類似している
ことから、日本企業は仕事がしやすい環境に違いない。
・一方海外の政府や企業がどんどん進出しているのに対し、日本の政府のアクショ
ンや対応が鈍く、それが日本企業の迅速な決断や進出を阻害していると思われる。
・このままでは日本が乗り込んだ時に、大した仕事が残っていない状況になってし
まうことが懸念される。せっかく盛り上がりを見せている今であるからこそ、早急
な手当てが必要である。
以上の貴重な意見を参考にし、神戸としてできる最大のアクションを提起してい
きたい。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
・現在のヤンゴン市内は交通インフラが開発途上であり、道路環境が良くない。ま
た交通ルールの制定や啓発が遅れているため、無法な駐車の横行や慢性的な渋滞が
発生している。この解消は急務である。
32
(ヤンゴン市
ウラミン市長への親書 )
2013 年 3 月
親愛なる ウ・ラ・ミン様
神戸港は、1868 年の開港以来、日本を代表する国際貿易港として日本
の国民生活や産業基盤を支えてまいりました。また、神戸港は、世界の
海運のメインルート上にあり、北米、欧州、アジア、中国航路など多く
の国際定期航路を有し、世界 130 余国・地域、500 余りの港と結ばれて
います。
現在、神戸港は日本の重要港湾の一つとして官民一体となってハブ機
能強化に向け、ハード・ソフトの両面から整備を進め、国際競争力のあ
る港湾整備に取り組んでいます。
その中で、発展著しい東南アジア地域との物流は神戸港にとって重要
なものであり、近年の貨物量も大きな伸びを示しております。ミャンマ
ーにおいては、現在も神戸港とヤンゴン港との間で航路を有しており、
今後の経済発展が予想される中、相互の物流の増加に大きな期待を寄せ
ているところです。
今後、ヤンゴン港と神戸港の間の将来的な物流の増加を目指し、必要
に応じ、港湾整備への技術協力等、連携、協力していきたいと考えてお
ります。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
末筆ながら、両港の発展並びに関係者の皆様の今後益々のご健勝を心
より祈念いたします。
33
神戸市みなと総局長
岡口 憲義
<医療産業都市としての提携について >
・ミャンマー ネーピードー市総合病院
(面談日時および場所とご担当者)
3月31日 ネーピードー市総合病院
Dr. Min Then 院長代理
Dr. Win Myint Than
Dr. Zar Ni Hlaing
Dr. Min Zaw Aung
Dr. Myoh Tet Kyaw
三宅光一 ミャンマー運輸省・ミャンマー港湾公社
前田敬
在ミャンマー日本国大使館
運輸交通政策アドバイザー
書記官
当病院は以前から稼働はしていたが、国と民間企業が1:1の出資による JV によ
って再建設された施設であり、視察時点では開業して 10 か月目ということであった。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
4月2日 セドナホテル
34
(ネーピードー市総合病院の外観)
800 エーカーという広大な土地に、診療施設・入院施設・患者の関係者の宿泊施設を
併設した当病院の診療科目は8科目、病床数は 300 床ということである。将来的に
は 1000 床を計画としており、特にがんの手術に特化することを目指している。
しかし実際は、専門医師 15 名(パートタイムの医師を含めても 50 名)看護師は
20 名とかなり少なく、また、シンガポールの Mt.エリザベス病院等との提携はある
ものの、海外の大学等との連携は未だなされていない。よって人材育成の環境とし
ては未整備という印象を受ける。一方で医学交流の意欲は旺盛であり、日本に対し
ても、可能であるならば研修へ行きたいという医師が多いことには感心した。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
また当病院としての目標が、現在海外に治療に行っている患者を国内の施設で見
られるようにしたいというものである以上、医師研修や人材交流の窓口を設けるこ
とは有効であろう。
35
一方で医療機器に関しては、おそらく何らかのコーディネーターが入ったと見受
けられ、一通りの機器はすでに揃っていた。しかし人材不足から、全ての診療科が
稼働しているわけでもなく、そのため病院のニーズに適した機器が入っているかと
言えば疑問が残る。つまり「後先考えず、まず基本的な機器を導入した。」という
状態である。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
(ネーピードー市総合病院の医療機器)
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(ネーピードー市総合病院の病室:入院患者は、まだいない)
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
また同様に、医薬品の備蓄も乏しいと言わざるを得ない。これでは高度な医療技
術には対応できないであろう。
37
以上の観点から考察した結果、日本の医療技術や医療機器の使い方に関して教授
できることは多く、神戸にて人材育成や交流を行う可能性は極めて高いといえる。
またミャンマーの医師に医療技術を教授することで、日本の医療メーカーによって
製造された機器や医薬品を利用してもらう可能性が大きくなり、ひいては医療機器
の一大マーケットとなりえる。
同日夜に開催されたミャンマーの医療関係者との交流の中でも、人材交流に関す
る話題で大いに盛り上がった。
参加いただいた医師のうちの一人、Min Zaw Aung 医師は岡山大で学んだ経験があ
り、日本の医療技術や医療機器をミャンマーにも導入したいと思っておられた。こ
ういった経験を踏まえて、国際都市神戸が医療の分野で海外と接点を持つことは、
一地方公共団体の枠を超えて大いに国益に資するであろうということを、三宅光一
ミャンマー運輸省・ミャンマー港湾公社 運輸交通政策アドバイザーも指摘されて
いたことを付記しておく。
ミャンマーにおける医療施設は公立病院が主体であり医療費は基本的に無料だと
のことである。病院数は約 700 病院で 1 万人あたりの病床数が 6 床、人口 10 万人当
たりの医師数が 30 人、平均寿命は 64.7 歳(男性 63.0 歳 女性 66.4 歳 2010 年調べ)
という状況である。なお、日本では1万人あたりの病床数は 113 床、人口 10 万人あ
たりの医師数が 230.4 人/10 万人、平均寿命は 82.9 歳(男性 79.6 歳 女性 86.4 歳
2010 年調べ)である。単純に比較はできないが、感覚としてミャンマーの医療事情が
恵まれているとは言い難い。周辺の東南アジア諸国と比較しても医療事情が悪いと
評価できるのではないか。看護師についていえば、養成機関不足により医師総数よ
り少ないとのことであり、コメディカルも含めた医療体制は先進国のそれと同列に
比較することは困難である。医療費については原則無料であるが、薬剤については
自費となる。
インド MEDANTA 病院の外国人患者専用受付
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
*参考資料:モダンメディア 57 巻 11 号 309 頁 2011[海外における医療検査事情」
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・インド MEDANTA 病院および APOLLO 病院
(面談日時および場所とご担当者)
4月3日 MEDANTA 病院
Pankaj Sahni
Chief Operating Officer
Navneet Malhotra
Vice President
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
4月5日 Apollo 病院
39
Raj Kr Raina ゼネラルマネージャー
Dr. Raman Sardana
Dr. Rekha Choudhry
この度視察させていただいた 2 つの病院は、何れも民間経営のものである。
また何れもかなりの大型病院であるが、インドにおいてはこういった大型病院が
多数見受けられる。一方で個人経営のような病院は存在するのであろうが、街中に
おいてはあまり目立たないうえに、衛生的にも安全と言えるかどうかは疑わしい。
つまり、上と下の差が激しい状況であると言える。
この度のインドにおける病院視察の大きな目的は、メディカルツーリズムの状況
把握と連携の可能性を探ることであった。
MEDANTA・メディシティは 2009 年にインドにおける心臓外科の権威であるナレ
ッシュ・トレハン医師が創設した病院である。デリーに立地し、43 エーカーの敷地
に 1,250 床の医療センターやメディカルスクールなどを運営しているとのことだ。
メイヨークリニックをモデルにしたとのことだが、メイヨーとの違いは医療施設が
一か所に一体として存在する利点を挙げられていた。メイヨーが先端医療村に対し、
メディシティは先端医療センターというニュアンスなのかもしれない。トレハン医
師は GE と MOU(memorandum of understanding)の締結により、医療技術、臨床研
究開発など広範な分野で協力を受ける。スター性の高い、各分野でのトップ医師を
配置し患者の信頼獲得につとめている。
インド MEDANTA 病院にて
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
MEDANTA 病院は、メディカルツーリズムにて一日 150 人程度の受け入れを行っ
ており、また売り上げは全体の 15~20%を占めるに至っている。病院には外国人専
用の受付を設置し、また決済方法などを相談するファイナンシャルカウンターも設
置されているなどメディカルツーリストに対する差別化がしっかりと図られている。
その特徴は受け入れの容易さに表れており、空港からダイレクトに病院に迎え、出
入国審査も病院にて出来るという。またデリー国際空港に MEDANTA 病院の空港セ
ンターがあり、その場にて柔軟な受付・対応ができる。これはつまり国が民間の病
院機構に、そこまでの所掌事務を委任している事実を示しており、日本においての
対応と大きく異なる。
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(MEDANTA 病院での勉強会)
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
また病院としてのコーポレートアイデンティティは「治療技術の質」に置いてお
り、それを実現するために医師のスペシャリティを追求する点や、SIEMENS との技
術提携による先進性に主眼をおいている。一方で営業については、あくまで研修や
人材派遣・医師同志の人材交流のなかで培っていくまでに止め、世界各地に特別な
窓口を置いたり、オフィスを設けたりといった事はしていない。CEO である Mr.サ
マーの言を借りると「一人の患者が喜んで帰ればそれが宣伝になる。」という考え
方である。
41
さらに治療費の安さも売りにしており、その経費は対米で 10 分の 1 であるという
説明があった。
そういった考え方のため、営業のために外国の特定の都市と積極的に提携すると
いう指針はなく、あくまで「来るもの拒まず」といった姿勢であること、また、こ
れは我々も認識を改めねばならない視点であるが、日本の医療産業や医療技術につ
いての情報は、現地にてはほとんど持ち合わせておらず、興味も極めて低い点から
考えて、自発的な提携・交流を考えてもらう事は難しいと感じた。神戸の医療産業
都市構想の将来像について話した際も、当たり前のことではあるが実用可能な技術
以外に関心を示すことはないとのことだ。
(APOLLO 病院での勉強会)
また当病院設立にあたり、PPP によってデリー市から 25%の出資を受けて、その
恩返しとして患者の 10%は安く診療できるという便宜を図る・低所得者の基本診療
費は無料にするといったような官民協働の側面ももっており、その点がインドの在
外高官にも評価が高くなっている所以であろう。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
APOLLO 病院はインド初の株式会社病院であり毎年1~2の病院を新設している。
50 を超える病院、総病床数は 8,500 床、専門医を 4,000 人を抱える巨大病院グループ
である。ニューデリーの APOLLO 病院は、病床数 750 床・医師 500 名・看護師 2000
名という、デリー市有数の規模を持ち、また患者の内訳もデリー市内から 40%・イ
ンド国内から 40%・海外からのメディカルツーリズムで 20%となっている。JCI 認
定(Joint Commission International アメリカの医療機関評価機構)を取得して、メデ
ィカルツーリズムで重要な世界規格の評価基準として JCI 認定は高く評価されてお
り、外国人の患者獲得には大いに有効な認定であるとのことだ。日本では現在亀田
病院をはじめとする7つの病院で JCI 認定を受けているところであり、神戸でもメ
ディカルツーリズムを拡大するためにはかなり必要となるツールとなりえるだろう。
インドでの治療のメリットはやはり医療費の安さであり、APOLLO 病院が疾患・手
術ごとに提示する Price List はなんとも合理的なシステムであると感じた。
42
メディカルツーリズムに対しては、始まりは 10 年程度前、もともと近隣諸国に比
べて医療インフラが整っていたため、海外から治療のために患者が来院していた。5
年程前からメディカルツーリズムというカテゴリーが確立し、国の支援も受けて 3
年前からシステム化をしたということであった。現在、同事業は 100 万ドル市場と
言われており、APOLLO 病院においても売り上げで 20%を占めている。
一方セールスにおいては先に述べた MEDANTA 病院と同じような考え方を持って
おり、自発的には人材交流を図るために海外にてワークショップを設ける、大使館
に依頼する程度に止めている。言わば経営者にとって、医師が製品であり、かつ商
品であるといった考えから、医師のスペシャリティや医師同志のネットワークこそ
が営業であるという指針に帰結するわけである。
また医療と観光のパッケージについては、当病院においてはトライアルはしたが、
病院としての機能を考えると、観光するまでの余裕はない。また経費もかかる話で
あり、病院としては価格勝負にさらされている以上、そういったパッケージは断念
したという事であった。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
二つの病院に共通していえる事は、何のためのメディカルツーリズムなのかとい
う視点であり、ここでしかできない治療がある、または同じ施術を受けるにしても
廉価である、そういった患者目線のニーズがあって来院するのであって、病院自ら
がそれを喧伝する事はないという視点を持っているということである。もちろん何
らかの評判や情報をもとに選ばれる必要があるので、それは医師のネットワーク、
言い換えれば口コミに依存する、こういった手法で必要十分であるという考え方で
ある。
43
別の視点でこの二つの病院を見たときに、医療ツーリズムという言葉を除けば日
本には当たり前に存在する病院だということだ。日本国内に肝臓移植を行う病院が
多数あり、それを国民が各所で普通に受診できる状況だ。一方インドの事情は、メ
ダンタ病院やアポロ病院と同様の技術・規模の病院が多くなくインド国内からも通
常医療での受診のための多くの患者が集まり、また近隣国からの受診の機会が多い
ことも、メディカルツーリズムの成功に寄与する環境であることは否めない。
メディカルツーリズムにおける一番のメリットは高度な医療を安く提供できるこ
とであり、旅費を考慮してもお釣りがでる価格設定をしていることだ。
このように、神戸、いや日本のメディカルツーリズムの考え方が、世界のスタン
ダードではないという事を再認識すると共に、神戸の医療産業が世界で認知される
ためには、医師の人材交流を柱とした周辺諸国との関わり合いが重要であるとわか
った。またインドの病院との提携は、自発的には難しいであろう。
<神戸ファッションの海外展開について>
(面談日時および場所とご担当者)
・ミャンマー
4月1日 ヤンゴン市庁舎
U Hla Myint ヤンゴン市長
Col. Kyaw Soe ヤンゴン市長秘書 他
・インド
4月5日 インド政府観光省
Gajendra Kumar 北部地域管理者
LOTUS 旅行社社長
(インド政府観光省:前列左が Lajpat Rai
Gajendra Kumar 北部地域管理者)
LOTUS 旅行社社長、右から 2 人目が
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
Lajpat Rai
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両都市ともに、民族衣装と洋装のコラボレーションが進んでいることから、ファ
ッションへの関心が高まっている点、また韓国ドラマ等から影響を受け、おしゃれ
に関しての意識が向上している点から考えて、当地における日本のテキスタイルが
受け入れられる可能性は大いにあると考える。
・ミャンマー
ヤンゴン市長談・・・韓国ドラマ放送の影響で、韓国の洋服を買い求める人が出
てきた。日本の文化については無知だが、雑誌やテレビでの PR から始めれば、可能
性はあるのではないかと感じた。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
女性は化粧もせず、素朴な感じである(日焼け止めや美肌などの効果を求め、皆、
タナカウッドという木の成分を顔に塗っているため頬が黄色く見える)。まだファ
ッション自体が確立されていないと見受けられた。
45
(ネーピードー市総合病院で働く女性:頬にタナカウッドを塗っている)
また国民性として欲がなく、食べていけるだけのお金があれば、それ以外は寄付
をするという考え方であることから、ファッションに興味を持つのは、もう少し先
のように感じた。
しかし隣のタイ国の女性が、すでにファッションについて旺盛に興味を示し、購
買意欲も高まっていることや、宗教や祭りの文化がタイとほとんど同じであること
から、経済発展とともに同じような動きが起きることもまた、可能性は大きいと考
える。
・インド
インド政府観光省 Gajendra Kumar 北部地域管理者・・・インドでの神戸コレク
ション開催について、とても乗り気で、「成功を保証する」と言われた。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
若い女性は洋服を着ていて、ショッピングセンターでも日本と同じようなセクシ
ー系の洋服が売られている。
46
(インドのショッピングセンターにて)
日本の雑誌などは売られていないが、それは日本語が読めないからだそうで、市
場としては十分開けている感覚があった。
観光地を歩くと、多くのインド人が寄ってこられたので、日本人女性(モデル)
の容姿に対して人気があるのではないかという推測が出来た。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
在日インド人談・・・ファッションショーをするなら、映画産業が盛んなムンバ
イが良いとのこと。当地においてはアメリカのグラミー賞授賞式のように、華やか
なレセプションの機会を持っており、そこでは先進のファッションに身を包んだ女
優を見ることができる。
47
高田恵太郎プロデューサー談・・・神戸コレクションは、ファッション都市神戸
を元気にしたく立ち上げましたが、これまで継続出来ているのは、ビジネスとして
もきっちり成り立っているからです。海外公演の場合は、ビジネス的に成り立つ
か?と言う視点になります。現在、上海公演以外に、タイ、インドネシア等での開
催を検討中ですが、全てメインスポンサーが決まっての話だ。
以上の観点から考察すると、インドでの神戸コレクション開催は、通訳担当の方
が窓口になってくれることにもなったので、実現可能ではないかと考える。
国際機関の補助金などを受け、まずは一回やってみるという方法も模索してみたい
と思う。
<その他視察先>
・ミャンマー
3月31日
ジャンクションハイパーマーケット
ネーピードー市には大きなショッピングセンターは 2 か所あり、そのうち規模が
大きなものが当ショッピングセンターである。
その内容はメインである総合スーパーマーケット、洋服やアクセサリーや携帯電
話といった各種専門店、そして大型のシネコンが併設されている。日本で同様の施
設と言えば、イオンモールのようだといえばイメージしやすいかと思う。
マーケット内は賑わっていたが、客層は明らかに富裕層であり、よって物価に関
して言えば日本と大差ない印象を受けた。
以下、代表的な商品と価格を列記する(通貨単位:チャット
1 チャット=0.1 円)
(野菜・果物・米)
梨
1960/kg リンゴ
ゴーヤ 300/2 個
3200/kg
白菜
447/1 個 トマト
自国米 4000~6850/5kg タイ米
5200/5kg
850/kg グリーンアスパラ
PAWSAN 米
1702/10 本
9150/10kg
(その他食品)
キャンベルスープ 1400/缶
プリングルス 1980/個
カップの出前一丁
1400/個
LAY`S ポテトチップス
1450/袋
出前一丁袋
450/個
ケロッグシリアル 3950/箱
ビール 350ml
500~600
同 500ml
900
コカコーラ 350ml
380
同 1.5L 1600
(衣類等)
子ども用半そでシャツ
8200
子供用 T シャツ
4500
ニベア日焼け止め
2500
(電化製品)
110cc バイク
520000
三菱クーラー2.64kw
パナソニック電子レンジ
265000
冷蔵庫 パナソニックエコナビ付
洗濯機 パナソニック一層式
1030000
490000
68000
日立高級炊飯器
87000
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
(飲料)
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テレビ サムスン 43 型
424000
パソコン レノボノート型
東芝 40 型
473500
424000
特に白物家電において、廉価で必要十分なものが志向される傾向にあるようで、
サムソンの商品が価格的に席巻している印象を受ける。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
(ミャンマー ジャンクションハイパーマーケットにて)
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・人工都市
新首都ネーピードー
3月31日
ミャンマーの新首都に、行政機能と公務員宿舎を集約した地域が建設されている。
(ミャンマーの国家機関区域)
そのためエリアの内部は地図にも明記されておらず、山の中に迷路のような導線
が張り巡らされており、また国家機関地区の道路標識はすべてミャンマー語のみで
表示されている。そのため、ガイドがいなければどこに何の省庁があるのか判然と
しない。
また、各省庁の入り口にある案内はビルマ語と英語で記されているため、言語が
読めなければ案内の役目を果たさないという工夫もなされている。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
もともとはジャングルであった土地を切り開いて建設した人工都市であるために、
森の中に2階建ての庁舎を点在させ、道路からは庁舎は見えないようにするという
形をとっている。これはスパイ等、海外からの軍事的干渉に対する防衛の意味もあ
り、周囲を他国に囲まれている国家ならではの考え方といえる。
50
(ミャンマーの大蔵省)
各省庁敷地内のつくりはいずれも同じようで、省庁ごとの専用道路で森に入って
いけば、まず防火用の池があり、その奥に2階建ての庁舎がある。2階は大臣関係
のフロア、1階は次官関係のフロアである。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
その中でひときわ巨大で、かつ唯一エリア外からも望むことができるのが国会議
事堂である。
51
(ミャンマー
18 車線道路から臨む国会議事堂)
また、議事堂への導線となる道は中央分離帯のない18車線の広さを有し、有事
の際には飛行機の離着陸ができるほどの規模となっている。
公務員宿舎は、幹部用宿舎(一軒家または高級アパート)も一般職員用宿舎(ア
パート)も、湖(池)のまわりに庭園付で配置されている。イメージとしては、ゴ
ルフ場のなかに住宅を作ったような街並みといえば解りやすいか。そのため、外観
がどこも同じように見え、外部から来たばかりの人や住んで間もない住民は迷って
しまうのではないかと危惧する。実際に、省庁ごとに色分けされた建物となってい
るので日のあるうちはわかりやすいのだが、夜になると色の判別が難しくなるため、
迷う確率が上がるに違いない。
(ミャンマーの未運行のバス停)
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
交通は、バス停は設置されているものの、まだ運行はされていない。よってタク
シー代わりの乗合原付が足代わりとされており、道路の道端に待機している原付が
散見された。
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また居住区の道路標識については、ミャンマー語と英語の併記がされている。
ホテルは公務員居住区のさらに外側の丘陵地域に多く建設されており、ほとんど
がリゾートタイプ(庭園の中に2階建てもしくは平屋の建物が点在する)である。
もとがジャングルであったこともあり、一年中様々な彩の花が咲き乱れており、た
いへん美しい。
商業施設は、先に述べたジャンクションハイパーマーケットと公務員宿舎地区に
隣接するマーケットの2か所、それと旧村であるピンマナ村にある。ネーピードー
市街には、いわゆる歓楽街は全くなく、食事をするには5~10キロほど離れた、
ピンマナをはじめとする旧村まで足を延ばす必要がある。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
そのため旧村においては、ネーピードーができてからそのような来店者が増加し、
大いに潤っていると喜んでいた。われわれもピンマナのレストランにて食事をした
が、豪華な店ではなかったものの、空調もかかっており、地元のおいしい料理をい
ただくことができた。
53
ミャンマーで再利用された元神戸市営のバス車両
・デリー大学 RAMJAS カレッジ
(面談日時および場所とご担当者)
4月4日 デリー大学 RAMJAS カレッジ
RAMJAS カレッジ学長
Dr. Rajpal Singh Pawar
MAHATMA GANDHI UNIVERSITY アドバイザー
(デリー大学 RAMJAS カレッジでの勉強会:左側 Dr. Rajendra Prasad RAMJAS カ
レッジ学長、Dr. Rajpal Singh Pawar MAHATMA GANDHI UNIVERSITY アドバイザ
ー)
日本でいうカレッジというと、単科大学・小規模大学の印象となるが、デリー大
学をはじめ世界の大学においては意味合いが違う。
デリー大学においていうと、82のカレッジの集合体をして大学を構成しており、
またカレッジ単位においても複数学科を擁している。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
Dr. Rajendra Prasad
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なお学生数は、大学全体で22万人。RAMJAS カレッジ単体では5000人で、
うち留学生は60人。教授数は210名である。また学部は文学部・理学部・商学
部、美術学部・外国語学部で、日本語も教えられている。
インドにおいては学費が極めて安く、年額は理系学科で8000ルピー(約1万
6千円)それ以外の学科では6000ルピー(約1万2千円)である。
これは、大学の先生の給料の95%が国費から出ているためである。大学のみな
らず、インドの公教育は概ね無料であり、教育にかける予算は莫大なものとなって
いる。
インドでは日常の中に数学があり、それがインドの IT 産業を支えている。よって
就職に際し、PC の知識は必要不可欠であり、それを極める目的で RAMJAS カレッ
ジに入学する学生がほとんどである。また目的意識の高さから、自分が定めた目標
とする学問を究めるまでは卒業しないという。
入試については、インド州毎に入学者数が割り当てられており、教育が遅れてい
る州からは多くの学生をとる。しかしその門は極めて狭いということである。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
他大学との連携は、ワシントン大学やコペンハーゲン大学、釜山大学などで、日
本の大学との連携はない。なぜ無かったかという問いに対しては、まず「なぜかし
ようとしなかった。」という回答があり、分析としては学費や生活費が高い点や、
その負担をだれが担保するかという議論が進んでおらず、消極的であるということ
が挙げられていた。
55
また日本の政府役人は、形式だけで、具体的なアプローチがないことも指摘され
ており、それがクリアされたならば、連携を考えないわけではないともおっしゃっ
ていた。
学長は32歳から、当大学の学長を28年務められており、その選考にあたって
は専門である中国史を、海外にある資料から読み解くといった研究が高く評価され
たということであった。
・インド政府観光省
(面談日時および場所とご担当者)
4月5日 インド政府観光省
Gajendra Kumar 北部地域管理者
Lajpat Rai
LOTUS 旅行社社長
日本人観光客は、年間9万人。もっとも多い国はアメリカで、30万人。
日本の知名度は極めて低く、日本の観光局の仕事があまり見られないことを指摘さ
れていた。
インドとしては、20世紀後半の中国のようにプレゼンテーションやキャンペー
ンに力を入れることがなく、来たら話を聞くという対応をしているようである。曰
く「プロモーションは国と国でやるものであって、インドはそこはやっている。日
本はそういう点が弱いのではないかという見解から、そのような指摘に至ったので
はないかと考える。
またインド教育の IT への活用や、医者同士の人材交流といった話については、観
光省としては管轄外の話であるといい、やはりここにも縦割りの考え方は変わらな
い側面が見受けられた。
一方で Incredible India!という観光プロモーションのコンテンツのなかに、教育や
メディカルツーリズムも上がっており、まったく無関係ということはないと考えら
れる。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
この度の会談においては、神戸のファッションに興味を持たれ、ファッションシ
ョー開催の可能性について「good idea」との回答を得ることができた。
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<総括>
ミャンマー・インド視察団相談役
自由民主党神戸市会議員団
平野昌司
かねてより我々政務活動の一環として海外視察を考えていました。
視察テーマとして、福祉・環境、文化・観光、あるいは産業・経済と大きく 3 つ
のテーマにわけ、今の神戸ではどのテーマが優先されるべきかを検討しました。
神戸は震災で失われた多くの産業に変わって、日本全体から見ても例がない「医
療産業都市構想」を打ち出し、国の理解と支援をいただき基礎的な研究施設や病院
群などの基礎的なインフラが構築されてまいりました。そして多くの優秀な人材が
集まり、関連する企業の集積ができつつあります。しかし今ひとつ活発な賑わいが
見えず産業化が進んでいません。
医療産業都市として世界でも先進的な都市として走っていた神戸が、国家的なプ
ロジェクトとして取り組んだシンガポールやタイ、韓国などに先行され、議会とし
て危機感を抱いています。
過去にも中東やシンガポールを視察し、医療の国際交流や産業化について提言し
て参りましたが、今回も引き続き医療の国際交流や産業化について勉強することに
決定しました。
ミャンマー・インド視察報告書 | 2013/05/20
また、神戸経済を索引する「港湾事業」、「ファッション」や、これから期待で
きる「水事業ビジネス」など調査対象としました。
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そして、調査対象としてこれから急成長が期待される「ミャンマー」、そして神
戸と古くから縁のある「インド」を選びました。
医療や水、また港湾などは、その国にとって最重要な案件です。我々も一つずつ
関係者の説明や意見を聞き、一つの案件に 2 回、3 回と勉強会を重ねました。多くの
皆様のご協力を得て、また、こうした機会がなければおそらくご縁がなかった方々
ともお会い出来ました。
東京や金沢から貴重な時間を割き勉強会に来ていただきました。
その効果は顕著に現れ、今や具体的な活動に結びつつあります。
今回の視察は政務活動として、実のある活動であったとして総括とします。
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