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ワークショップ報告書 「社会課題/ニーズをとらえた研究開発戦略の立案

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ワークショップ報告書 「社会課題/ニーズをとらえた研究開発戦略の立案
CRDS-FY2014-WR-06
ワークショップ報告書
「社会課題/ニーズをとらえた研究開発戦略の
立案方法等に関するワークショップ」
平成26年6月17日(火) 開催
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
目 次
1. 開催趣旨 ………………………………………………………………………………………… 1
2. 開催日時等 ……………………………………………………………………………………… 1
3. 主な成果 ………………………………………………………………………………………… 1
4. プログラム ……………………………………………………………………………………… 3
5. プレゼンテーション …………………………………………………………………………… 4
5.1. 開会挨拶および開催趣旨、JST/CRDS による2つのアプローチ
∼∼ 公的機関からのプレゼンテーション ∼∼……………………………………………… 4
5.2. CSTI における課題抽出プロセス SIP と ImPACT の例から …………………… 33
5.3. 戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)における戦略目標の
策定プロセスについて………………………………………………………………… 45
5.4. 第 10 回科学技術予測調査における方向性およびテーマ設定について ………… 56
5.5. RISTEX における社会的課題の探索と領域設計
∼∼ 民間企業からのプレゼンテーション ∼∼…………………………………………… 74
5.6. COCN の推進テーマ活動 …………………………………………………………… 91
5.7. 三井物産戦略研/技術フォーサイトの取り組み(2020 年技術展望) ……… 107
5.8. 三菱電機における研究開発 ………………………………………………………… 113
5.9 IBM 基礎研究部門と GTO 作成プロセス ………………………………………… 120
6. 総合討論 …………………………………………………………………………………… 124
6.1 総合討論におけるコメント ………………………………………………………… 125
6.2 総合討論 ……………………………………………………………………………… 134
7. 閉会挨拶 …………………………………………………………………………………… 143
参考資料…………………………………………………………………………………………… 146
CRDS-FY2014-WR-06
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
1
1
開催趣旨
2
開催日時等
3 主な成果
1.開催趣旨
イノベーションや経済成長などに対する科学技術の貢献を、明確に打ち出そうとする動
きが世界的に強まっている。こうした中、
公的資金による研究開発戦略の立案においても、
社会課題 / ニーズを反映した方法が試みられるようになっている。しかし、例えば研究開
発戦略の中心となる領域 / 課題の探索方法についてみると、従来から実施されてきた科学
技術分野の研究動向に基づくものに比べ、社会課題 / ニーズを反映させるための方法はい
まだ模索段階にある。また、様々な機関において実施されている社会課題 / ニーズをとら
える取り組みに関し、相互に情報交換し、議論できる場も十分には形成されていない。
そこで科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では、社会課題への
対応やニーズ発掘等を織り込んだ研究開発戦略等を検討している関係者が、各機関で実施
している検討方法を相互に紹介し、
共通の問題点等を議論するワークショップを開催した。
ワークショップには、社会課題 / ニーズを反映したプロセスを採用している公的機関に加
えて、社会トレンド等の把握等に積極的に取り組んでいる民間企業の参加を得て、研究成
果の社会や市場への浸透も視野に入れることを試みた。また、これらを通じた、各機関で
の検討方法の改善や関係者間でのネットワーク形成につなげることも企図した。
2.開催日時等
日時:6 月 17 日(火)13:15 ~ 17:45
場所:JST 東京本部別館 2階 A 会議室
参加人数:約 90 名(うち、講演者、主催者等 15 名)
3.主な成果
各機関からのプレゼンテーション及び総合討論を通じて、研究開発戦略の立案に関し、
参加者の間で次のような点についての共通認識を持つことができたと言える。
◇課題解決/ニーズ志向は、21 世紀の研究開発戦略の大きなトレンドである。ただし、
長期的な視野で見た時の基礎研究の重要性は十分に認識する必要がある。
◇課題解決/ニーズをとらえた研究開発戦略をどのように策定するかが重要となる。
しかし、現状では方法上の課題も多いため、各機関での実践的な取組みを積み上げると
ともに、行政、公的機関、民間企業、研究者(アカデミア)等の立場・役割の相違を認
識した上での相互の連携が不可欠である。
◇課題解決/ニーズをとらえた研究開発戦略策定における課題は次の点に集約することが
できると考えられる。
・問題やニーズ(What)の多様性とそれらの相互関係の複雑さ
・What の多様性と複雑性に応じたファンディングの仕組みをどう作るか(How)を確
立することの困難さ。
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
◇課題解決/ニーズをとらえた研究開発戦略を、実際のファンディングとして運営する際
の課題として、次の点が考えられる。
・資金提供機関は、何をどこまで決めるべきか。例えば応募者の自由度も重要ではない
か
・研究成果の評価をどのように行うか(特に新たに設定された領域について)
◇学術的価値と経済的価値の連続性をどのように実現するかが重要である。
◇研究開発戦略において未来社会のデザインが必要とされている。その際、社会とは何か
といった根源的な問いについても検討することが必要である。
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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4. プログラム
進行:中本フェロー
13:15 ~ 13:25 開会挨拶および開催趣旨 笠木副センター長
13:50 ~ 14:05 CSTI における課題抽出プロセス SIP と ImPACT の例から
総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)原山優子議員
14:05 ~ 14:20 戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)における戦略目標の
策定プロセスについて
文部科学省(MEXT)岩渕秀樹 基礎研究推進室長
14:20 ~ 14:35 第 10 回科学技術予測調査における方向性およびテーマ設定について
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)小笠原敦動向センター長
14:35 ~ 14:50 RISTEX における社会的課題の探索と領域設計
JST 社会技術研究開発センター(RISTEX)津田博司室長
14:50 ~ 15:00 質疑応答
15:00 ~ 15:15 休 憩
進行:飛田フェロー
~~ 民間企業からのプレゼンテーション ~~
15:15 ~ 15:30 COCN の推進テーマ活動
産業競争力懇談会(COCN)
中塚隆雄 事務局長
15:30 ~ 15:45 戦略研/技術フォーサイトの取り組み(2020 年技術展望)
株式会社三井物産戦略研究所 友田敦久 取締役 新事業開発部長
15:45 ~ 16:00 三菱電機における研究開発
三菱電機株式会社 宮原浩二グループマネージャー
16:00 ~ 16:15 IBM 基礎研究部門と GTO 作成プロセス
日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 川瀬 桂 部長
16:15 ~ 16:25 質疑応答
~~ 総 合 討 論 ~~
16:25 ~ 17:35 司会:前田フェロー
コメンテータ:ソニーコンピュータサイエンス研究所 所 眞理雄エグゼクティブアドバイザー
17:35 ~ 17:45 閉会挨拶 吉川センター長
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プログラム
13:25 ~ 13:50 JST/CRDS による2つのアプローチ 笠木副センター長
~~ 公的機関からのプレゼンテーション ~~
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
5. プレゼンテーション
5.1. 開会挨拶および開催趣旨、JST/CRDS による2つのアプローチ
笠木副センター長 ♫఍ㄢ㢟㻛䝙䞊䝈䜢䛸䜙䛘䛯◊✲㛤Ⓨᡓ␎䛾❧᱌᪉ἲ➼䛻㛵䛩䜛䝽䞊䜽䝅䝵䝑䝥㻌
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今日はお忙しい中を、私どもの予想を上回る多数の方にご参加いただきまして、厚く御
礼を申し上げます。
このワークショップによって、我々が考えている共通の課題について少しでも相互に理
解が進み、また、ある種のより良い方法を見つけることができればと考えております。ぜ
ひ、積極的に議論にご参加いただき、忌憚のないご意見をいただければと思っております。
私の役割は、こうして最初のご挨拶を申し上げるとともに、社会的な課題あるいはニー
ズを捉えた研究開発戦略の立案方法に関して、これまで CRDS で試行したり、悩みなが
ら進めてきたことがございますので、それを皮切りにご紹介をさせていただき、その上で
また、皆様方からそれぞれのご関連の話をいただいて、その後、大いに議論していただき
たいと考えております。よろしくお願いいたします。
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さて、我々はこれまで研究開発戦略立案ということについて、CRDS 独自に二つの方
法をここまで試行してまいりました。今日は、私のほうからこういう骨格でお話をしたい
と思います。
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プレゼンテーション
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まず、現政権がイノベーションに最も適した国を目指すということで、いろいろな科学
技術政策が打たれているわけです。要は研究開発あるいはイノベーション力において秀で
た国になる必要あるだろうということです。政策のプロセスとしては、STI 政策の立案、
その方法論、それから、その政策的なインパクトとか、あるいは政策過程の評価、こうい
うものは当然、科学技術基本計画や科学技術イノベーション総合戦略にあらわれてくるわ
けですが、そういうものを的確に PDCA を回しながら進めていくということが肝心かと
思います。
これらは一つのセクターで進める話ではなくて、産業界あるいは学会等の全てのセク
ターがシンクタンクも含めて連携をしていく必要があるということと、そこで練られる科
学技術イノベーション政策を研究現場にきちっと伝えていくこと、それらの意味合いを研
究者に伝えて、研究者にも責任を持ってそこに参画をしていただくということが 2 番目
の重要なことかと思います。
それから、これもよく言われることですが、人材育成を図り、科学技術の分野に若い方々
が持続的に意思を持って入ってきていただけるような仕掛けをつくっていく、あるいはイ
ノベーションも国際的に開かれたオープンイノベーション時代に入ってきていますので、
そういう中で、なおかつ知財を守り、きちんとした事業をつくれるようなイノベーション
の形を作り上げていくことも重要かと思います。
次に、科学技術イノベーションにおける ELSI の問題、これは言うまでもなく国民の付
託を得られるような科学技術イノベーションというのは、どういうことなのかということ
を常に考えていく必要があります。社会とのコミュニケーションということについても
我々は大きな責任を持っていると考えております。今後の科学技術政策は、2030 年ある
いは 2050 年を展望しながら、なおかつ直面する大震災からの復興再生、あるいは 2020
年のオリンピック/パラリンピックというマイルストーンがありますので、それらに向け
て動いていくということになると思います。
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プレゼンテーション
実は CRDS は設置・設立されましてから 10 年を経ました。昨年秋に CRDS の設立 10
周年のシンポジウムを開催したのですが、その折に CRDS は今後、公的シンクタンクと
してどういう方向に動いていくかということをお約束しました。ここにありますように、
公益性、独立性を保ち、国際的リーダーシップを発揮して、客観的根拠に基づき実効性あ
る提言を広く発信したいと考えています。CRDS の中ではいろいろな仕事をしていますが、
特に客観的な根拠に基づく政策オプションの提言、科学的助言の形成、具体的な研究開発
課題の設定、それから、ここに書いてございます、イノベーションに向けた産学官民の連
携支援、特に今日のような場がそうなのですけれども、イコールフッティングの議論の場
を形成をしていくということも、重要なミッションだと考えております。
ワークショップ報告書
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さて、CRDS ではさまざまな提言を出しているわけですが、吉川センター長が提唱し
ているコンセプトを示したものがこの図です。
単に科学技術のサイドからこういうことをすべきだということを訴えていくのでは、社
会的な理解も得られないし、適切な科学技術政策にもなり得ない。我々が理念的に目指し
ているのは、一方で専門的な課題の抽出を行う、科学技術としての専門的な抽出を行うと
同時に、いったい社会が何を求めているかということについても謙虚に耳を傾けていくと
いうこと、その結果としてその二つが出合ったところ、つまり“邂逅”が成立したときに
戦略的プロポーザルを出す、といいうことをやっていこうということです。
この理念は大変多くの方の共感を呼ぶところですが、これを具体的な研究開発戦略の提
案のプロセスにどういうふうに組み込むかということについては、確立された一つの明確
な答えがあるわけではないと我々は理解をしています。そこで、さまざまな方法論を試す
ということになるわけです。
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その邂逅を実現し、社会的期待に応えるための二つのアプローチを今日はご紹介をした
いと思います。
一つは、従来の分野あるいは領域ごとに考えているという視点からでは、課題解決は十
分には語られていなかったのではないかという問題意識に基づくものです。課題解決ある
いは課題達成という言葉は、
第 4 期基本計画から明確に打ち出されたと思いますけれども、
そうは言いつつ、依然として例えばエネルギーの分野あるいはライフサイエンスの分野、
あるいは情報の分野といった、分野ごとに(社会的な)問題の抽出が行われていなかった
のか。そうだとすると、部分的な問題解決にはなっても、それが全体として国民にわかる
ような寄与になり得るかということについては、
疑問を持たざるを得ないというわけです。
したがって、分野融合もなかなか起こりにくいということで、一つの方法として課題解決
型アプローチを一昨年度に試行したのです。
もう一つは課題解決型アプローチの問題点として、どうも未来志向で新規性のある社会
像が描きがたいということが分りました。(課題解決型では)何となくよく知られたよう
な課題があがってしまったのではないか、という疑問点が出てきて、二つ目の未来創発型
アプローチということを昨年度に試行しました。これはまだ、中途段階にあるといってよ
ろしいかと思います。
こういう二つのアプローチについて、ご紹介したいと思います。
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プレゼンテーション
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まず、課題解決型ですが、この図には、概念的なことを描いてあります。
まず、現状のファクトをきちんと見ましょうということです。それには、ここに書いて
あるような人口動態や社会インフラの老朽化といったことがあり、これらは否定しがたい
事実です。そして、もう少し先を見てみると、社会全体が変化していくある種の方向性と
いうことに気がつくだろうと。例えばグローバル化であるとか、情報化であると、こうい
うことは恐らく 10 年ぐらいまでその方向で動くだろうということです。ここまでは我々
がさまざまなデータから同定できる事実、FACTS・TRENDS と言っていいと思います。
そして、これを延長したところに VISION が描かれます。延長したところに見える社
会の姿が国民の多くが望んでいる社会そのものかというと、
必ずしもそうではないだろう。
FACTS・TRENDS から演繹される社会とあるべき社会の姿の間に差が出てまいりますか
ら、
これをどういうふうに埋めるかということが DESIGN の問題になってきます。そして、
ここに科学技術も含めたさまざまな知識の付与が必要になります。我々は特に科学技術の
面から何が貢献できるかということを考えますので、別途行われる専門家により抽出され
た研究開発課題との結び付けによって、初めて“邂逅”ができるだろうという概念です。
CRDS-FY2014-WR-06
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
11
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全体のプロセスは、4つのステップからなる手順を踏んでいきます。各 Step ごとにワー
クショップを繰り返し、最初に FACTS、TRENDS を把握し VISION を描く、さらにシ
ナリオをつくり、それが実際に実現するための要求分析、要件検討を進めることで、初め
て研究開発課題との邂逅を果たすという、そういうプロセスです。
各 Step について、細かい話になりますが、ざっとご説明いたします。
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11㻌
まず、1 回目のワークショップの前にさまざまな報告書等を整理いたしまして、社会的
課題の一覧というロングリストをつくり上げます。そして、
ワークショップ 1 回目でグルー
プワークを実施して、現在認識されている問題である FACTS、TRENDS を議論、さら
に実現すべき社会、VISION についても議論いたします。
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5
プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
12
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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この VISION に基づいてまとめた結果として5つのテーマが出てまいりました。国際
連携ができる社会、地球環境・エネルギー問題への対応力がある社会等々、これをテーマ
と呼んでいますけれども、VISION としてこの五つのテーマをくくり出したということで
す。
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2 番目の Step では、それぞれのテーマを実現するための方法を検討していきます。2
回目のワークショップを行い、この Step で行うシナリオを描くための軸を繰り出します。
また、続けてシナリオの作成も行っていきます。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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例えば、テーマ 3 の「社会インフラの保守、修復、構築力がある社会」ですが、これ
を実現するための方向性として、
「ストックを強化をしていく」
、それから、
「運用を重視
する」、これは二つの相反する方向です。また、日本の中を見てもわかるとおり、
「画一的
なインフラ」をつくっていくのか、各地に「多様なインフラ」をつくっていくのかという
違った方向性もあるわけです。そうしますとこの場合、4 象限になりますけれども、それ
ぞれの方向性において複数のシナリオが描けると、そこに当然、また違った科学技術の課
題が生じるということになります。
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この 4 象限それぞれについて、そういう方向に進んだときに、一体、どういうことを
要求されるのかということがその次のステップの議論であります。ここではさらに少し絞
りまして、5つのテーマのうち、2、3、4 についてさらに検討を進めました。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
14
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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そして、先ほどの四つの象限に応じて、ストック強化×画一とか、ストック強化×多様
であるとか、この 4 象限においてそれぞれ例えば地域あるいは国とか、そういうレベル
で、一体、どういうニーズがここに出てきているのかということを全部書き下すわけです。
これらの要望を一体、どういう機能的な要求として我々が理解するかが、科学技術に落と
していくときにどうしても必要になるわけですが、それをこの 3 つ目の Step で、ワーク
ショップも開催して行いました。
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20㻌
こうして社会の姿から要請される具体的な機能の要求、要件として書き下したものをリ
スト化したものを作成し、これらを実現するための研究開発課題と結びつけ、ある種のま
とまりのある文脈でくくれるものを見つけていきます。
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独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
ボーダーレスな世界
の中での国家
に関わるもの
ボーダーレスな世界の
での国家に
15
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‫ۋ‬テーマ㻝:国際連携ができる社会
国家という
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の中で認識されるもの
国家という枠組
認識されるもの
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‫ۋ‬テーマ㻞:地球環境・エネルギー問題への対応力がある社会
ᵐᵋᵏ
日本におけるエネルギーベストミックスの実現に向けた既存エネルギーの革新と次世代エネルギーの
拡大に関する技術開発
ᵐᵋᵐ
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ᵐᵋᵑ
高効率エネルギー都市の創造に向けた実空間における人、物、エネルギーの流れの解明と効率化に関する技術開 発
ᵐᵋᵒ
エネルギー環境政策立案への活用に向けた社会予測技術の開発
ᵐᵋᵓ
エネルギー長期安定供給確保のための国際戦略を支える基盤技術の構築
䕺テーマ㻟:社会インフラの保守・修復・構築力がある社会
ᵑᵋ1
自然災害対応型社会インフラのデザインと構築
ᵑᵋᵐ
地域・都市単位での、インフラ構築・保守・運営の最適化
䕺テーマ㻠:心身の健康寿命がのばせる社会
超高齢化・人口減少を見据えた社会デザインに資する予測科学の推進
ᵒᵋᵐ
高齢者が社会的・経済的価値を生み出す社会システムの構築に向けた研究開発
ᵒᵋᵑ
医療の最適化に資する疾患リスクマネジメントシステムの構築
ᵒᵋᵒ
超高齢社会における低コスト医療・介護システムの構築
ᵒᵋᵓ
医療・健康産業の国際化に資する研究開発プロセスの革新
個人に
個人に関するもの
䕺テーマ㻡:㻝人ひとりが能力を発揮できる社会
21㻌
こうしたプロセスを経て、ここに掲げてあるような 12 の項目、我々はサブセットと呼
んでいましたが、これらをつくり上げたわけです。この全部について作業を進めることが
できれば良いのですが、マンパワーも時間も限られていますので、昨年度はこのうちの 3
項目、
「高効率エネルギー都市の創造に向けた・・・・」
、「自然災害対応社会インフラの
デザインと構築」、それから、「・・・・疾患リスクマネジメントシステムの構築」を取り
上げて検討しました。
これらは、社会が今後、今の FACTS と TRENDS で動いて行った時にどうしても対応
が必要になる項目、しかも科学技術の支援が不可欠な項目である、と理解することができ
ます。
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独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
5
プレゼンテーション
ᵒᵋᵏ
ワークショップ報告書
16
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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高効率エネルギー都市の創造に向けた実空間における人、物、エ
ネルギーの流れの解明と効率化に関する技術開発
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自然災害対応型社会インフラのデザインと構築
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医療の最適化に資する疾患リスクマネジメントシステムの構築
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これらの 3 項目について昨年 1 年間かけて改めて議論をし、最終的に今月の末には、
例えば「都市におけるエネルギー利用の高効率化に向けた課題達成型研究開発戦略」とい
うタイトルで、3 本のプロポーザルが出る予定です。
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これらを簡単に紹介しますが、これは、
高効率のエネルギー利用都市についてのプロポー
ザルの概要を、1 枚の絵にしたものです。ここでもファクト(原状)
、トレンドに始まって、
必要な機能があって、それに対してどういう研究開発領域があって、最終的に高効率なエ
ネルギー利用都市ができるという、そういう内容になっております。
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独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
17
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都市はエネルギーでいうと、専ら消費にかかわる部分ですが、都市ごとの機能に応じた
エネルギー政策が、あまり議論されていません。そこで、都市を性格別に見てみると、例
えば人口に対して CO2 の排出量などを見ていくわけですが、都市の性質に応じて違いが
あります。昼と夜で人口が違うベットタウンだと、特徴が著しいわけです。
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5
プレゼンテーション
0.0
ワークショップ報告書
18
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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こうして類型的に都市を分けていきますと、現在の都市におけるエネルギー利用の状況
というのは、業務部門、家庭部門、運輸部門でそれぞれ随分違っているということが見え
てきます。こうしたことが見えたときに初めて丁寧な議論ができると思っています。
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これは都市内のエネルギーフローで、細かいことは申し上げませんけれども、都市にエ
ネルギーが燃料として、あるいは電力として入ってきたときに、どういうふうに最終的に
使われるかということを示しています。
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ワークショップ報告書
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19
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に大きな問題点を抱えていますよということが見えてきます。あるいは中規模な都市であ
ると、また、違ったところにエネルギーを高効率にするという対策が見えてまいります。
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ワークショップ報告書
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こうしたことをレビューをしていきますと、都市でのエネルギー消費の主要方策として
は、例えばここに挙げる9つの課題が出てきます。ネットワーク上の需給調整とか、再生
可能エネルギー利用促進とか、あるいは次世代自動車の普及促進というようなことが出て
きます。そして地域ごとに違う重みを持って、この方策が施されるべきであります。
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これは結果として、これは国全体にどれぐらいインパクトがあるのかということを推定
をしたものです。2010 年度に対してエネルギー消費が削減できるポテンシャルをあらわ
しているわけですが、これをおよそ推定してみると、例えば人口 20 万以上の都市だけに
対して考えても、全体の 1 割ぐらいはいくというようなことが出てきます。マクロに議
論しているときには、こういう具体的な数字を対策とともに示すことは難しいですけれど
も、人が多く住む都市というところに注目して、初めてこういう議論ができるということ
であります。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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具体的には例えば建物であれば、可視光とそれから熱線をそれぞれ別に制御する技術で
あるとか、これは産総研の例でありますが、あるいは海外の例でもシースルーの太陽電池
モジュールを建物に敷き詰めるということで、電気も熱もうまく利用できるということに
なります。
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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そういうようなことをこのプロポーザルでは言っていて、主要な事項としてはエネル
ギーの変動を平準化させるとか、むしろ、集約化して効率化するとか、あるいは削減ポテ
ンシャルとしては非常に大きいんですよということもここで申し上げた、さらにはこうい
う研究開発を進めるためには、一つの省に投げてプロジェクトで進めるという形ではなか
なか進まないということで、問題は非常に大きいのですが、例えば第 5 期基本計画等を
考えるときには、こういう問題の構成が必要なのではないかと言えると思います。
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これは社会インフラのものです。社会インフラのモニタリングのシステムをきちっとつ
くり上げる、そこで生まれるデータをさまざまな形で有効に使っていくという、そういう
ことを提案しました。
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これは人の一生を通した健康維持戦略のものです。現在は高齢者とか病気になった方々
を対象にした医療が思い浮かべられるわけですが、これからの時代は生まれる前から健康
管理が十分できて、一生、健康で生きるということができる、そういう医療健康維持戦略
というものを進めるべきだという、これが 3 番目のプロポーザルです。
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もうひとつの未来創発型です。
現在、急速に発展している科学あるいは技術の分野から将来を演繹し、さらにここで一
体何が起こるか、を考えて行きます。当然、科学技術の光だけでなく影の面がありますか
ら、そこに対して我々の課題というものがまた浮かび上がってきます。現在、急速に動い
ている科学技術から演繹される社会と、そこで生まれる問題を含めて相互にやりとりして
いきますと、今、進んでいる科学だけを進めればよいという話ではなく、それを補完する
さまざまな社会科学も含めた対応が必要だということが見えてくる。こうした形での“邂
逅”というものがありうるだろうと考えたわけです。
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ワークショップ報告書
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時間の関係で細かいお話は省略をいたしますが、これも複数のステップとワークショッ
プを実施しながら進めました。
まず、さまざまな公表されている資料、情報をもとに、いま最も、急速に動いている科
学分野がどこかをまず見ていきました。
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そうして我々がくくり出したものが、例えば医療と病院が全く違う形になってしまうで
あろうとか、人と機械の関係は変わっていくだろう等というようなことを、大きく変わっ
ていく我々の生活の姿としてくくり出す。これは現在の基礎科学として非常に急速に進ん
でいる分野から演繹される姿であります。
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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そこで、こうしたドライビングフォースとなるような科学技術を特定して、最終的には
ここに六つの分野それぞれの中にドライビングフォースとなる科学技術をアイデンティ
ファイしまた。こういうものは放っておいても科学として発展していくわけですが、それ
をそれぞれ統合していくと一つの姿が見えてきて、しかも、それを補完する科学も必要だ
ということが出てきます。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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これは生体統合モデルの例ですが、基礎科学の分野あるいは臨床分野の新しい進展が
あって、それに対して将来の姿として病気を早期に予測できる等のプラスの面もあります
し、あるいはマイナスの面、情報漏えいや、健康状態が本人の意思とは関係なくコントロー
ルされてしまうとかいうことが出てくる。では、これら全体を視野に入れた研究開発戦略
策はどうあるべきかを、もう一回、研究開発の側に戻って考えていくという流れをとりま
す。
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けではなくて、それを総合的に例えば「医療と病院の変容」という視点で見たときに、変
わっていく社会の姿、生活の姿が見えてきて、新しい研究開発の課題も補足的に出てくる
ということです。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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この 2 番目の方法については今後、具体的なテーマの構成について検討を進めること
になっておりまして、1 年後にレポートがまとまると思います。そこまで待たないと、
まだ、
最終的な評価は申し上げられませんけれども、これは第 2 の方法として有力な方法では
ないかと思っています。特に人文社会系の専門家の方々と、そういう急速に発展する基礎
科学技術の分野との対話というのでしょうか、そういうことがこういうプロセスの中でで
きないといけないと思っております。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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科学技術イノベーションは、国際的なメガコンペティションの時代になっています。先
日の OECD のワークショップでも、国はこれまで脇役というか、触媒として動いてきた
わけですが、むしろ、産学官民の連携を促す政策的なリーダーシップをとる、あるいは研
究開発のリスクテークをする形で、より積極的な役割が求められるようになった。各国の
競争になっているということの意味は、そういうことなのです。その上で、社会的な課題
の適切な把握をどうやって進めるか、それから、研究開発の効果的な推進をどうするかと
いうこと、これが見えないと競争に勝てないということになります。
それから、もう一つは政府、支援機関で、研究開発課題抽出がどんなふうに進められて
いるのかということについては、パブリックから見て十分に公正で透明なプロセス、方法
でないといけないということで、このこともこういう方法論を議論するときに肝心な点で
あります。
我々はいろいろと調査をいたしました。ヨーロッパを初めとして、こういう方法論につ
いてさまざまな議論が検討されておりますけれども、まだ、確立された方法はないし、多
様な試みがなされているというふうに理解しております。今日は、そういう意味で各方面
の方々から、そういうご経験とかお知恵をいただいて、また、CRDS の仕事にも反映を
させていただきたいと思っております。
どうもご清聴ありがとうございました。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
質疑応答
○質問者1 最後のスライドで、研究開発プログラム立案推進に社会的信頼を得ることが
肝心であると書かれてありますが、具体的にどのようにして信頼を得ることができるの
か、何か具体的なお考えとかをお持ちでしょうか。
○笠木 具体的に何か一つあれば済むという問題ではおそらくないと思います。
ですから、
それぞれの立場のステークホルダーがそれぞれにきちんと意識しながら行動していくこ
とがまず大事だと思います。ただ、今日も午前中、CRDS の中で議論をしていたので
すが、例えば第5期基本計画がこれから各方面で議論がされると思いますけれども、そ
ういう議論のプロセスで、単に新聞などで目立ったテーマだけが報道されて、国民ある
いは現場の研究者が一喜一憂するというような状況は決して好ましいものではないと思
います。各セクターが責任を持って参加するために情報公開もし、あるいはどういうプ
ロセスで基本計画が構成されていくのかということも見せて、それぞれのセクターが産
業界も研究者もあるいは政策担当者も、責任を持って参加をしていくという姿を国民に
見せていくことが大事だと思います。これを具体的にどうやるかということは大変難し
いですけれども、それぞれの立場でやれることというのは相当あるのではないかという
ふうに考えていますが。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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∼∼ 公的機関からのプレゼンテーション ∼∼
5.2. CSTI における課題抽出プロセス SIP と ImPACT の例から
総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)
原山優子議員
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先生がいらしたころに比べて、我々が自から施策をつくる機会が多くなりました。その中
でも特に、(基本的な方針が)課題解決型に重心をおいていますが、その中で具体的に何
を実践してきたかについて今日は少しお話しさせていただければと思います。
先月に内閣設置法が改正されまして、CSTP ではなく CSTI になり、
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込まれました。これは単純に言い回しが変わっただけではなく、概念としてイノベーショ
ンというものが我々の所轄するべき範囲の中に入り込んだという現実です。それと同時に
科学技術イノベーション施策の推進機能の強化ということが一つの柱になっております。
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プレゼンテーション
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さて今日は、二つの施策について、その中で設定した課題をどのように抽出したか、そ
のプロセスについてお話しさせていただければと思います。
まず、戦略的イノベーション創造プログラム、長くなりますので SIP と呼ばせていた
だきます。ここの特徴というのが戦略的ということなので、戦略性を持たせるということ
と、ここでの一番の特徴というのは府省連携ということが大きな柱となっております。
この中で幾つかのテーマが抽出されましたが、その根本となる考え方がどこからきてい
るかというと、産業競争力会議の提案の中で示された日本の経済の再生のための4つの戦
略目標から来ています。国民の健康寿命の延伸、クリーンかつ経済的なエネルギー需給の
実現、安全・便利で経済的な次世代インフラの構築、世界をひきつける地域資源で稼ぐ。
先ほどの笠木先生のお話の中にあったものとオーバーラップするものが入っております。
この4つの柱を受けて、総合科学技術会議で科学技術イノベーション総合戦略を検討し
ました。総合戦略の中には5つの柱がありまして、この4つに加えて震災からの復興とい
うことが掲げられております。
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さて、これを受け取った側では、次世代インフラ、エネルギー、地域資源、健康長寿の
4つのテーマに対して議論し、テーマごとに有識者議員からのペーパーがとりまとめられ、
本会議に提出されました。その1つの医療に関しは、ご存じのように健康・医療戦略推進
本部というのが設置されましたので、それ以外のテーマに関して、我々が検討したという
ことです。
このペーパーをつくるための作業をどのように実施したかというと、まず事務局がさま
ざまなデータを収集して、ベースとなる資料集をつくりました。同時にさまざまな外部の
有識者の方々と意見交換をさせていただいきました。既存の資料の調査、あるいは議論の
進め方などについてもお話を伺いながら進めていきました。意見交換をした機関は学会、
学術会議の他、シンクタンク機能を担っている機関などです。COCN や産業界の方たち、
経団連からもお話を伺いました。
これらの情報をもとにしながら、有識者議員だけではなくて、外部の専門家を集めた形
でのテーマごとの会議体を設けて議論していきました。この結果が有識者議員のペーパー
として取りまとめられ、その中のエッセンスが総合戦略の中に盛り込まれました。そして
総合戦略のエッセンスを具現化するための一つのツールとして、総合科学技術会議がみず
からの予算を持って遂行するプログラムを作り出したのです。
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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各テーマについては公式、非公式の議論を継続的にかなりインテンシブで行ったわけで
すが、健康長寿に関することを除いたエネルギー、次世代インフラ、地域資源の3つのカ
テゴリーについて全部で 10 個を SIP の課題として取り上げることとしました。先ほど申
し上げました震災復興というのがそのままでは入っていませんけれども、この中の 10 個
の中に要素的には盛り込まれているという整理です。
先ほども申し上げましたように、このテーマを絞り込む際には、複数の府省で具体的な
施策に落とし込むとことが想定されるもの、分野の融合・横断という、既存の枠に捉われ
ない形で進める必要があるものという点を基準として考えました。
先ほどの CRDS の方法では、課題解決と未来創発の2つのタイプがありましたが、こ
れはどちらかというと前者の課題解決の方の、具体的な既存の課題をいかに解決するかと
いうアプローチと捉えていただければと思います。ですから、現実性やプラグマティック
な要素が多分に含まれています。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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これらの 10 個の課題では、1課題に1名、プログラムダイレクターという方をアサイ
ンすることにいたしました。
その課題における期待を示したペーパーを我々の方で用意し、
それに対してどのような具体的なプロポーザルを出していただくというコンテストをさせ
ていただいて、その中から府省連携という大任を担っていただけそうな方を(政策参与と
して)選んだということです。それぞれのテーマごとに(政策参与が)アサインされた後
に、再度、中身の詳細な検討をさせていただいて、現時点でおおむねファイナライズされ
たところです。具体的なアクションや中身また次のステップですが、
公募という形を経て、
それぞれの PD のもとにいろいろな機関がつく形となります。
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次に革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)です。SIP と ImPACT の違いは何か、
とよく聞かれますけれども、こちらは先ほどの笠木先生のお話であれば、未来創発のほう
に近い考え方だと理解していただければと思います。
既存の枠組みの延長線を見ていくというやり方もあるわけですけれども、それだとかな
り限定的なプロジェクトしかできないのではないかと危惧するところがありました。
かつ、
これは日本だけの話ではなく、先ほどの OECD の話もありますし、また、G7、G8 の国々
の科学技術担当大臣が口をそろえて同じようにおっしゃるのですが、財源的に限界がある
ときにより具体的な効果があることのほうに着目されやすい、
(資源が)集中しやすい。
そうなると、チャレンジングなプロジェクトにお金をつけることはなかなか難しくなって
いるということがあります。
今では、基礎研究においてすらインパクトは何かというふうに問われるような時代に
なっていますが、政府の役割というのはチャレンジングなことを可能にすることではない
か。それがここの趣旨です。そういう意味で ImPACT という名前もつけたのですが、難
しいのはどのように課題を設定するかということです。
チャレンジングであればあるほど、
初めからこれだという箱を想定することは難しくなるわけです。しかし完全にフリーにし
てしまった場合にはどこに行ってしまうかわからないので、どこで折り合いをつけるかが
大きな課題でした。
目標と定めるところは、2つ大きな切り口があるのではないかと設定しました。1つは
我が国の産業競争力というものを飛躍的に高める、これは必ずしも科学技術だけとは限り
ません。いろんな側面、社会的な側面も加味した形で考えなくてはいけないということで
す。それと、1つの切り口というのが社会的な課題というものに挑戦する。この社会的な
課題と言っているのは、今日、我々が直面している課題のみならず、想定し得る将来的な
課題、
あるいは日本の世の中をこういうふうに変えたいというチャレンジングなものです。
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これらの中で、それぞれの府省でできることであれば、我々の存在意義はないことなの
で、難しいと思われていることを想定して設定するテーマの考え方が出てきました。その
中で、例えばハイリスク・ハイインパクトですが、これまでの延長線のではない、それが
できたらば、相当な社会的に社会の仕組みというのが変わるであろうというものです。
それから、もちろん、技術的な革新もあるし、これと同時に新たな価値というものを生
み出すものであって、それを可能にするのはなるべくチャレンジングな人、いわゆるアン
トレプレナーシップを発揮する人というのが、これを仕掛けることによって生み出される
ということを期待しているという側面と、これは先ほどの質問にもあったようになかなか
難しいところですが、最後に書いたように、社会と共有しながら進めていきたいというこ
とです。単直に言えば、専門化のひとりよがりになってはいけないということで、いかに
一般の人を巻き込んでいくか、これも大きな課題です。この後話しますプログラムマネ
ジャーには、ここにも注力していただくことを予定しております。
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先ほど申し上げた二つの観点、産業競争力と社会的課題というものにどういうものがあ
るかということを、いろんな情報収集のことから始めました。もちろん、既存のデータを
集めるのと、先ほどと同じようにさまざまなエキスパートの方にお集まりいただき、議論
させていただきました。また、こういう分野の専門でもって既にレポートなども出してい
らっしゃる、議論を内部でしていらっしゃるところの組織と一緒に議論させていただいた
ということがあります。
二つ目の項目ですが、飛躍的なところ、これまでの淡々としたことの延長線ではないと
ころで、どういうことが可能であるかということを議論させていただきました。
さらにそれらを俯瞰する形でテーマを深掘りして際に一番難しかったのは、余りにも漠
然としていると公募したときに誰もこの中身について理解できないだろうということと、
逆に絞り込みし過ぎてしまうと、さまざまな発想を持っている方たちを萎縮させてしまっ
て、本来、持っているポテンシャルのアイデアというものを出し切れないのではないだろ
うかということがありました。その中間線のどこがいいかということを相当議論したとい
うのが現実です。
この二つのプロジェクト、特に ImPACT に関しては、これまでこういう形のプロジェ
クトを運営したことがないわけです。やり方そのものもイノベーションなわけですので、
試行錯誤的なところがありますが、一歩ずつ進んでいくところと、テークノートしておき、
1ラウンドを回ったところでもう一回振り返って、あそこのところはこういうふうにした
ほうがよかったのではないかというふうな分析ができるように、ノートをとっているとい
うことをやっていました。
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具体的な進め方ですが、CSTP が幾つかのテーマを設定すると、テーマごとに手を挙げ
てくる方がいる。CSTP が決めるのは、提案されたプロジェクトそのものではなく、プロ
グラム・マネージャーと呼ばれている“人”なのです。人を決定して、プログラム・マネー
ジャーは手を挙げるときに、みずからがどういうコミットメントで、何をしたいというこ
とと同時に、その中で具体的なプログラムというものも提示していただく。
それをパッケー
ジで見ていくのですが、ここで選ぶのは人そのものです。採択後に、それぞれが持ってく
るプログラムをブラッシュアップし、具体的なプロジェクトを選定して走らせていく。プ
ロジェクトはプログラム・マネージャーが自らデザインして実行していく形をとります。
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プレゼンテーション
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テーマを絞り込むまでに、かなりの方にコミットしていただいたというのが現実です。
各省、もちろん、関連する省庁とのやりとり、それから、経団連など経済界の方たちや産
業競争力懇談会にも意見募集をしました。それから、分野ごとに専門家に集まっていただ
いて議論したこともあります。ImPACT の構想の中で、具体的なプロポーザルとしてど
ういうものが可能かという案を作成する中でも、皆様にご協力いただいたという経緯があ
ります。
内部での議論では、具体的な例題を挙げることによって手を挙げる人がこれに引っ張ら
れてしまうのではないかというところも危惧しました。可能な限り、皆さんの持っている
ポテンシャルの中で新しい発想を出したいということがあったので、必ずこれはあくまで
も例題ですというのを明示した形で具体的な案を書きました。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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最終的に5つのテーマが示されました。テーマのところに赤字で書いてあるところが大
きな題目となったものです。これを公開して、これに対して手を挙げていただいたという
ことですが、先ほど笠木先生の方で1年近くかけて練りこんだものと、そんなに違和感の
ないものが出てきていると思います。これらも、相当な作業をしてここに行き着いたわけ
です。ぱっとひらめいた話ではなく、これらにベースには情報、エキスパートの方たちの
意見を理解した形で煮詰めたエビデンスがあります。
1つ目は、資源制約からの解放と、日本というのはものづくりの国であるということ
なので、新しいものづくりの形というものを提唱できないだろうかというものです。2番
目は、生活様式を変える革新的省エネ・エコ社会ということで、これまでの延長線の省エ
ネだけではない考え方、新たな街あるいはビルディングの環境を提唱してくださいという
ことを言っています。しかし、これらを実際にすすめた時に、次の段階で社会的な課題に
さかのぼることができるかというのがなかなか難しいところです。
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このプロセスの中で学習したことというのは対話の重要性です。対話というのは、単に
総合科学技術会議と関連省庁だけではなくさまざまなアクター、それから、ここが弱かっ
たというのは一般社会、国民です。ここまで取り入れていくことができなかったというの
があります。我々としては Learning-by-doing なのでこれはテークノートして、今後、何
か施策を打つときには反映していきたいと思っております。
最も難しかったのはテーマの粒度です。もう1つは鍵となるアクターは誰かということ
を漠然とした段階では抽出できないので、参加する方のコンビネーションによってテーマ
の設定に関しても変更があったということもありました。
課題として、Technology-push と Demand-driven とよく言われますが、これらを対
比的に考えるのではなく、両方を融合する形で持っていかなくてはいけないということ
があります。また、Social innovation という言葉を入れたのですが、Product(Process)
innovation にプラスする形で持っていかなくてはいけないという認識です。
ということで、我々の試行に、今日の議論も参考にさせていただきながら、今後の活動
に生かしていければと思います。ありがとうございました。
質疑応答
○有本:総合科学技術・イノベーション会議というレイヤーは、決定がなされる最も上位
のレベルです。それぞれのレイヤーの役割と責任の範囲はどこまでか。ここを皆が認識
しながらでないと大きなギャップが出るので、後でこの点も議論させていただきたいで
す。
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5.3. 戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)における戦略目標の策定プロ
セスについて
文部科学省(MEXT)岩渕秀樹 基礎研究推進室長
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社会課題を捉えた政策、戦略立案の方法の一つの例として、典型的な研究ファンディン
グのメカニズムである戦略創造事業においてどのような戦略立案を行っているのか、ある
いは行おうとしているのかについて、今日はご説明させていただきたいと思います。
戦略目標の策定プロセスは、日々進化していますけれども、今年度は特に文科省研究振
興局にて、この策定プロセスのあり方について検討を行う委員会を設けており、ここでの
議論の内容を紹介することも兼ねております。
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よく使われますストークスによる研究の分類を、JST の戦略創造事業とは何なのかと
いうことを簡単にご説明するために使わせていただきます。左側と右側で、左側は用途を
考慮しないサイエンス・フォー・サイエンスの研究、右側は用途を考慮するサイエンス・
フォー・ソサエティの研究ということができると思います。上と下は、サイエンスとして
の根本原理を追及する研究とそうではない研究と分けられています。
例えば、科研費はボーア型、また民間企業はエジソン型。JST の戦略創造というのは、
サイエンス・フォー・ソサエティ、右側の象限であり、かつ科学的な根本原理を追求する
研究であるという上側の象限、すなわち、
右上のパスツールの象限というものがファンディ
ングの対象であると認識しております。
右上の象限をどう進めていくのか、ということが研究戦略立案で非常に大事になってま
いります。
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用途を考慮した基礎研究、すなわちパスツール型の研究にファンディングを行う施策に
はどういうアプローチがありうるのかを文科省の検討会でも議論をし、およそ二つのアプ
ローチがあるのではないのかという整理をしております。左側のアプローチ、赤いほうが
「出口を見据えた研究」に関するファンディング、右側の青いほうが「出口から見た研究」
に関するファンディングというような形で概念整理をしているところです。
左側は、研究者が主体となって社会経済的な価値を有する目標を見据えて基礎研究を推
進するものです。右側は、まず出口、課題から始まります。課題を認知している人間とい
うのは必ずしも研究者とは限らず、社会あるいは経済のさまざまな現場におられる方とい
うのは課題をよくご存じであるわけです。研究者ではない方、例えばプログラム・マネー
ジャーが主体となって直面する課題を解決するために、どういう研究が必要だろうかとい
う形で研究に取り組むというのが、
「出口から見た研究」だと考えております。
JST の戦略創造事業の基礎研究は、研究者が主体であるという左側のタイプ、「出口を
見据えた研究」であると自らのアイデンティティを捉えています。一方、先ほどの SIP
は原山先生のご説明にもありましたように、課題解決型アプローチをとられている。ImPACT は主体が研究者ではなくてプログラム・マネージャーであるというあたりに「出口
から見た研究」の要素があると考えられます。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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JST の戦略創造では、文部科学省が戦略的な目標を立て、それに従ってファンディン
グを行っていきます。目標を一旦定めますと、事業としては JST がその目標に従いまし
て研究課題を公募し、ファンディングを行うという形になっているわけです。
今日のこの後の話は、文部科学省でこの戦略目標をどのように設定するかです。
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これが今、文部科学省の検討会において考えている戦略目標策定プロセスです。今まで
もおおよそこうした形でやっておりましたが、今後はこういうステップを意識しながら戦
略創造における戦略目標をつくっていこうという、戦略目標の策定プロセスに関するス
キーム図です。上から Step1、Step2、Step3 というステップに沿って目標を策定してい
くということです。
先ほども申し上げましたように、この戦略創造事業はパスツール型研究のうちの出口を
見据えた、研究者の着想、研究者を主体とする基礎研究に対するファンディングの仕組み
です。社会課題を捉えた戦略をつくるわけですけれども、Step1 は社会課題の分析ではあ
りません。先ほどの原山先生の課題解決型の議論とは違い、Step1 は国内外における基礎
研究の研究動向の俯瞰から始めます。研究者が主体であり、研究者のすぐれた着想がどこ
にあるのか、どういう着想なのかというところをできるだけ体系的、俯瞰的に探索すると
ころから戦略立案を始めるわけです。リソース・ベースト・ビューというか、そういう形
の取り組みです。
Step1 では、我が国の研究動向の俯瞰として例えば科研費の成果集、データベースを分
析する。あるいは世界の研究の俯瞰ということでは、サイエンスマップを描くことによっ
て論文(の発表状況)を可視化し、成果の状況を時系列的に追うようにする。論文に基づ
くサイエンスマップや科研データベースに基づいて俯瞰します。
論文の情報に依存したエビデンスですと、3 年ぐらい前のフロントラインしか見えませ
ん。最近 1、2 年の動向はわからないので、Step1 を補完するために、Step2 では最先端
の研究者にヒアリングなどをしながら、サイエンスマップでは追い切れていない最先端の
すぐれた研究の着想をお聞きします。Step1 と Step2 を総合して、すぐれたシーズのあ
りか、すぐれた研究者の着想のありかを把握をさせていただきます。
ここまでですと、まだサイエンス・フォー・ソサエティになってはおらず、サイエンス・
CRDS-FY2014-WR-06
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
フォー・サイエンスの話にとどまっていますが、Step3 で産業界などのユーザーとの対話
を行います。
Step1 と Step2 で、例えば 30 個ぐらいの注目研究領域があらわれてきたとしますと、
個々の 30 個の研究動向について、実際に社会経済的にはどんな意味があるのか、波及効
果の大きさ、広がりあるいは実現時期の近さをニーズを有しておられる方々、経済界の方
が典型的にそうですけれども、あるいは公共的なニーズを有している方などにお聞きしま
す。ユーザーとの対話の中から社会経済的価値について推量するというプロセスを Step3
で行います。
そうしますと、30 個の注目研究領域の中から社会経済的なインパクトという観点でベ
スト 5 とかベスト 10 が現れてきて、3つのステップを終えた段階で文部科学省としては、
戦略目標というものを定めていく形になります。
CRDS-FY2014-WR-06
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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Step1 では、科研費の成果報告書をビッグデータとして扱いキーワード分析等を行い、
科研費の最先端の成果のありかを同定する。あるいは 2 年に 1 回程度、科学技術学術政
策研究所のほうでサイエンスマップを描いておられますので、こうしたものを見ます。サ
イエンスマップは論文の被引用度に基づく注目論文、注目研究領域の推定手法ですけれど
も、マップの形で可視化されますので、我々がすぐれた研究者の着想のありかを知る上で
役立たせていただくことになります。
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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Step2 の注目研究者へのヒアリングということについては、典型的には JST の研究開
発戦略センターというのは一つの研究者が集積している場ですし、あるいは日本学術振興
会でいえば学術システム研究センターといった場がございますので、そうしたところにお
集まりの有識者の方々にサイエンスマップなどを見ていただいて、補完的な意見を聴取す
るということを考えているわけです。
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その後、ステップ 3 ということで社会経済のニーズと研究者の着想との邂逅をするわ
けです。ここについては、CRDS の未来創発型アプローチや、また、ワークショップの
やり方、ニーズをくみ取るためにどういう層のユーザーに聞き取ればいいのかという、こ
うした様々の知見が CRDS にはあると考えられるので、そういうものも参考にしながら
戦略目標を立てていくことを考えております。
CRDS-FY2014-WR-06
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
5
プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
54
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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「出口を見据えた研究」を JST の戦略創造事業のアイデンティティとして取り組んでい
るわけですが、出口というのは幅広い言葉で、
「出口を見据えた研究」と言うと非常にシャー
プな社会課題を同定してその解決のために研究するというイメージとなり、では課題解決
型研究と何が違うのかということがよく言われます。
「出口を見据えた研究」という研究者が描く出口のイメージと、右側の「出口から見た
研究」
、社会の課題を実際に抱えている産業界の方々などが思う出口というのは若干違う
のではないか。出口のイメージには幅があるのではないかと思っております。
我々は左側の「出口を見据えた研究」における出口のイメージで出口を捉えております
ので、出口の粒は広がりがあるもので、出口の実現までの時間というのは相対的に長いも
のです。こうした意味で我々は出口というものを使っているということです。右側はいわ
ゆるロードマップ、産業界の方が描くような出口のイメージで、同じ“出口”と言う言葉
を使っていても、その意味するところに違いがあることに留意していただければと思って
おります。
CRDS-FY2014-WR-06
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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先ほどの笠木先生のご説明の中にも、透明性の高い形で戦略立案を行う必要があるとい
うようなお話がありましたが、文部科学省の戦略目標策定のプロセスは、今までこうした
形できちんと定式化したことはなかったのですが、今後はこうした PDCA サイクルを確
立したいと思っております。
これは我々の戦略目標策定に関する PDCA サイクルを図示したものですけれども、審
議会等におきまして戦略目標に立てる指針と、こういう方法で戦略目標を立てるというレ
シピを定めていただき、それに基づいて文科省が戦略目標を策定する。
その戦略目標にのっ
とって JST は研究の課題を公募する。その結果、研究領域ごとの評価が行われ、戦略目
標の評価が行われると。戦略目標の評価がなされる。それがまた戦略目標策定指針の改訂
という形でフィードバックされるというような形で戦略目標を立てていくというところで
す。
質疑応答
○有本 科学と行政と政治、ファンディング機関と研究現場、これらの接続が重要です。
だから、上(のレイヤー)にいくほど早く決めないといけないという、時間の制約もあ
るわけです。(その制約の中で)それぞれの責任範囲がはっきりしない。行政官なのか、
それとも我々のようなシンクタンクなのかいうところをはっきりさせておかないといけ
ない。行政官は、1 年か 2 年で異動してしまうので、彼らがどこまで持続的、安定的に
できるのか。肝心なのはディシジョンとマネジメントのメカニズムです、科学と行政、
政治と(の接続)、これを常に考えながらやらないといけない。
CRDS-FY2014-WR-06
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
5.4. 第 10 回科学技術予測調査における方向性およびテーマ設定について
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)小笠原敦動向センター長
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本日は、科学技術予測調査の方向性についてお話したいと思います。
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2001-2005㻌
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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私どもの科学技術予測調査は、科学技術庁時代の 1971 年から 5 年に1回行われており、
現在、第 10 回を実施している途中です。かつての科学技術予測調査は、主には技術シー
ズをベースとした課題が何年ごろに実現するのかを 3,000 ~ 4,000 名の専門家の方にアン
ケートし、技術年表のような形で出していくというのが主な仕事でした。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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こうした科学技術予測調査も年を追うごとに従って重要性の認識というのが変わってき
ております。2005 年くらいまでは基本計画と完全なリンクを、技術のロードマップ的な
ものは非常に役立ったと言われてきまし、第 3 期科学技術基本計画やイノベーション 25
に展開する際は社会にわかりやすい形で出すこともしてきました。こうした中、前回の第
9 回のあたりから方向性が変わって来ています。その方向性の1つは課題解決型でバック
キャストへの変化ということと、分野の概念自体が古いのではないかというような考え方
が出てきたこと、システムソリューションの考え方、オープンイノベーションへの対応等、
従来の延長では対応できない変化が到来したというのが 2010 年のときの結果となってお
ります。
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プレゼンテーション
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その中で、今回の第 10 回科学技術予測調査に関しましても、文科省内でいろいろと聞
いても内閣府内で聞いても、主に言われることは、
「もはや科学技術予測調査の時代は終
わった、社会課題からのバックキャストに軸足を移すべき」という議論と、技術戦略マッ
プ、これは METI で主に作っていましたけれども、その技術戦略マップも「ライバル国
に開発手順を教えることになるだけなので、非公開にしたほうがいいのではないか」とい
う議論と、さまざまな技術シーズから見たアプローチが限界にきたということがあります。
また、個々の技術課題の羅列だけでは戦略が見えないというご指摘もあり、新たな方向性
を検討しなくてはいけないという状況になりました。
そこで私どもも、ワークショップのスタイルで社会課題を抽出するという方法をとり、
昨年度は、この方法で課題を抽出するという作業を実際に行ってみました。こうしたやり
方は、ドイツの BMBF でのものや、日本では慶應の SDM も行っていますけれども、そ
の手法を参考にして我々も検討するということを行いました。
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ワークショップ報告書
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そして、このビジョン調査を行いました。イノベーション総合戦略から大まかな方向性
をブレークダウンすることと、また、この調査に関しては日経 BP 社と組んでやったので、
それで、日経 BP の記事データベースを含めたところからブレークダウンをして、社会課
題を抽出するということを行いました。
どのようなテーマが出てきたのかというと、マクロな観点から確実に起こるであろう変
化というのは、いわゆるデモグラフィの変化、人口構成の変化というところと、あと、も
う一つはペティ=クラークの法則で言われるサービス産業化、第三次産業化の流れという
ところがマクロな流れの大きなものとして、そうした人口構成の変化、それと知識社会化、
サービス化の議論というのを中心にして幾つかの課題を選びました。
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プレゼンテーション
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それが、次からのスライドにもあるワークショップ①から⑦にも相当するものなのです
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トワーク化という部分がありますけれども、また、都市・地域・コミュニティの論点、製
造業のサービス化といった論点で議論を行いました。
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独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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ビジョン調査に基づいて、個々の社会変化に対する技術的な打ち手は何かを、このよう
に挙げました。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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ここで問題になったことがいくつかあります。
まず、社会課題から入った場合も、ブレークダウンされた個々の技術課題というのは多
岐にわたってしまって、研究開発テーマとして再構築した場合に、非常に点在したような、
散在したような感じを受けるということです。
また、社会課題の解決には多くの場合には社会的手法による解決というのが主になって
いて、技術課題にブレークダウンされるものが限定されるということがあります。
さらに、技術課題にブレークダウンされた場合も、最先端の科学技術が適用されるより
も、既存技術を適正に使用することによって達成されるという場合が比較的多く、そうな
ると必ずしも公的セクターとか大学で研究開発されるテーマにリンクしない。これは我々
も文科省の機関ですから、文科省の研究開発テーマ、その基礎テーマに落ちるということ
が非常に少ないというのが少し問題点として挙げられました。
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5
プレゼンテーション
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では、どのような課題例があるのかを具体的に見ていきます。
例えば水の課題では、社会課題から見た場合、安全安心な水とか、おいしい水とか、水
のインフラをどうしようという問題とか、あと、災害対応、レジリエントな社会構築とか、
水製造の問題があり、現実には自然災害リスクや財政下での制約がありますが、津波アー
カイブの作成といった研究開発には非常にすんなりと落ちていきます。
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一方、もう少し技術的なところをブレークダウンしていくと、例えば FIRST で扱われ
た研究開発では、大型化を達成するためには非常に逆浸透膜の高性能化が求められるわけ
ですけれども、高性能化の実現をさらにブレークダウンしていくと、例えばクラスターサ
イズまでの状況をきちんと調べるとか、適切なモデリングをして調べるとか、シミュレー
ションをきちんとやらなくてはいけないとか、幾つかの技術課題に落ちてくる。しかし、
それら新しい分野になかなかつながらないという現状があります。
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プレゼンテーション
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基礎研究のほうから見ていくと、水の問題は簡単に見えて意外と測定が難しいです。計
測するのもテラヘルツを使ったり、放射光を使ったり、かなり大型の機器を使わないと見
えない部分もあります。クラスターを計算するのも大規模な計算が必要で、計算科学も必
要となります。水の基礎研究というのはかなり多面にわたっています。
しかし、水の基礎研究の例を一見すると、今度は社会に結びついてこない形になる。こ
こで大きなギャップが生じてくることになります。
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Physics, 11, Issue 39 (2009)㻌
Acta Crystallographica, D64, 237247 (2008)㻌
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これは、昨年、Nature に分子研の成果が載ったものですけれども、水の結晶化が崩れ
ていく様子とかいうのをシミュレーションで描き出したというものです。これが実際の
我々の社会生活の中で何に役に立つのかというと、例えば、おいしさを感じるというのは
実は水のクラスターサイズによるという基礎と結びついている部分があります。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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http://www.aqua-cultech.com/mt/archives/cat5/index.html㻌
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先ほどの逆浸透膜により純水を製造するということは、有機物材料を突き詰めていくと
いうことが一つあるのですが、一方で、水を生体の中で通す穴が体の中にもあって、アク
アポリンとして知られているのですが、これは非常に抵抗が少なく水の分子だけを通して
いきます。逆浸透膜を通すときは非常に大きなエネルギーを必要とするので、エネルギー
を多く使ってしまいますが、こうした生体膜の機能を使うとエネルギーがほとんどなくて
透過していくということが重要になってくる。
ただ、こうした生体膜の知識と逆浸透膜をつなぎ合わせるところを考える人がいないと、
ここはつながらないことになります。普通は技術を社会に出していくところでつなげるシ
ナリオを書くと、だけれども、我々が見ていって一番ギャップを感じるところというのは、
基礎研究のテーマから技術課題につなぐところのシナリオであるということも分かってき
ており、そこをうまくつなげないと(課題解決に資する)基礎研究テーマになりません。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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基礎研究をやっている研究者からは、それが社会のどこにつながっていくのかがよくわ
からない場合があります。どういう技術としてつなげて、その技術が社会に出ていくのか
という、そこのステップを極めないといけないということがわかってきました。
社会課題から入ると基礎研究領域まで到達しない、基礎研究から入ると社会課題まで到
達しない。ただ、社会で求められる技術はサイエンスの領域にまで達していて、基礎研究
と技術、技術と社会をつなぐシナリオが必要となっています。
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5
プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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あともう一つ重要な論点というのは、科学・技術と科学技術政策を包括したもう一つの
大きな上位概念の形成が重要なのではないかということです。
そういう意味で今回の技術予測は、バックキャスティングの要素といわゆるフォーキャ
スト、フォーサイとの要素の両方をつなぎ合わせたような形になっており、両方合わせた
形で課題解決型のシナリオプランニングという形で作成をしていきます。一方、こうして
出てきたシナリオは経済的にどんな波及効果があるのかということを、これは黒田先生に
もご協力いただいて実際に産業連関分析を回して分析しており、政策形成実践プログラム
への活用も考えております。
これから第 10 回の調査を行っていきますが、そのときに全体を統一するコンセプトと
して、Data Science とか eScience、それと Data enhanced Science & Technology の概
念を置くということで、現在8分野で検討しておりますけれども、それぞれがデータをど
のようにして活用して発展していくのか、ビッグデータの問題も絡めて考えております。
予測調査そのものも Evidence based ということで、エビデンスをきちんとつくるとい
うところに力点を置いておりまして、今までの技術予測は、何年に何ができるという年表
をつくるのが大きな目的だったところがありますが、そうではなく、重要なのはどの部分
なのかというところに専門家の意見を集約することをします。
特に欧米では、デルファイ調査というのは何年に何ができるというよりも、例えば診療
ガイドラインの作成とか、専門家のコンセンサスの形成に非常に役立てています。ですか
ら、専門家の意見集約ということを、政策オプションの妥当性をいろいろな集団に問うて
いくということを含めて、検討したいと考えています。CRDS でご検討されている内容や、
岩渕室長のところで検討されている内容についても、我々のプラットフォームをエビデン
スを出していくという形で使っていただけたらと考えております。
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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5
プレゼンテーション
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10 回の予測調査が進んでおりまして、分野割はこのようになっております。デルファ
イ調査を 9 月ごろまでに行っていく予定ですので、よろしくお願いいたします。
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
5.5. RISTEX における社会的課題の探索と領域設計
JST 社会技術研究開発センター(RISTEX)津田博司室長
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社会技術研究開発センター(RISTEX)では、社会問題の探索と抽出を経て、領域まで
持っていくという作業をしています。これまでの事例をご紹介しながら、今後、少し変え
ていこうと検討しているところを少しお話しさせていただきます。
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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まず、社会技術とは何かについて少し触れておきます。社会技術とは、「自然科学と人
文・社会科学の複数の領域の知見を統合して、新たな社会システムを構築していくための
技術」、また、「社会を直接の対象として社会に今ある問題、それから、将来、起こり得る
問題を解決することを目指す技術」と捉えております。 RISTEX のアプローチの特徴ですが、社会問題の抽出ということに関してはまず俯瞰
をし、また、俯瞰したものから抽出する際にはステークホルダー、いわゆる問題の関与者
と呼ばれる方々と密接なコミュニケーションをはかります、また、研究開発を進めるに当
たっては、当然、分野融合のアプローチをとるべきであり、
また、
そこにもステークホルダー
との協働が求められます。ステークホルダーとのインタラクションも含めて PDCA サイ
クルを回しながら最終的な成果を出し、それを社会へ実装するということを強く意識した
研究開発を進めております。
先ほど小笠原センター長のほうから、社会とそれから基礎研究をつなぐのは難しいとい
うお話がございますが、我々はどちらかというとアプローチ自体は人文・社会科学に少し
軸足を置いたアプローチをとっており、
最新技術の開発というよりも、
むしろ、
今ある技術、
我々は適正技術という言い方をしているのですが、それらと組み合わせるなどして、いろ
いろな知見を融合させること自体も、社会技術ではないかというふうに捉えています。
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プレゼンテーション
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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これが RISTEX のオペレーションの全体像です。まず、問題の探索・抽出をし、それ
を研究開発領域というところまで昇華させ、
その領域のもとでファンディングを行います。
そのファンディングを行った結果を最終的には社会へ適用させていく、いわゆる社会実装
というところまで一気通貫でやっていくのが我々の役割と考えています。当然、その過程
においては社会とのインタラクションというのを常に意識して進めているところです。
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の、それが如実にあらわれた領域の設定になっているかと思います。高齢問題とか環境問
題、それから、子どもの安全であったりとか、安全安心とか、そういった領域となってい
ます。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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これは領域の体制です。JST の他の制度、CREST やさきがけなどと同じような設計に
なっておりますが、総括を置き、アドバイザーの方にも参加していただいて、そのもとで
プロジェクトを採択して研究開発を進めるようになっています。特徴的なのは、ここにハ
ンズオン型マネジメントと書いていますが、我々のほうからプロジェクトの介入していく
ようなマネジメントスタイルをとっています。これを対話と協働という言い方をすること
もあるのですが、こういうアプローチをしながら、なるべくプロジェクト側と価値共創す
るようなプロセスを重視しております。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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これが今日の肝の部分になると思うのですが、領域を設計するのにどんなプロセスを経
ているかを示したものです。問題の抽出、分類整理から始め、テーマ別ワークショップや
インタビューを実施し、最終的には検討した結果を公開フォーラムという形で出し、パブ
リックコメントをもらいながら、研究開発領域まで昇華させていくプロセスを経ています。
これまで、これらを大体 1 年ぐらいかけてやっていました。
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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高齢社会領域には、平成 22 年度から取り組んでいます。領域総括は東大の秋山弘子先
生にお願いしております。この領域をつくる時にとったプロセスですが、まず、問題の抽
出と分類整理から始めました。政府が出している白書 25 種類ぐらいのほか、書籍、新聞、
雑誌を調査してテキストマイニングの手法で頻度の高いキーワーを抽出しました。
そして、
840 課題ぐらいが出てきたのですが、それをさらに KJ 法で 53 のカテゴリーまで絞り込
んでいくという作業を実施しました。
これを踏まえて社会問題のマップをつくり、それをベースに有識者の方に来ていただい
てワークショップを開催しました。この時には、リスク、地域格差、環境、人材・教育、
高齢社会というようなものが、社会問題として我々が取り組むべきものではないかという
ご指摘を受けました。最終的にセンターの中で検討いたしまして、この三つ、教育、食と
生活、それから、高齢社会にさらにまた絞り込みを行いまして、絞り込んだものをベース
にまたワークショップを開催して議論しました。
これらを経て、最終的に社会の問題俯瞰マップを作成したのですが、黄色が食品で、教
育が紫のところで、高齢社会が緑のところになっています。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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この後、社会動向、政策動向、研究開発動向等も同時並行的に調査をし、RISTEX と
してこの時期においては高齢問題というものを取り上げるべきではないかという結論に達
しました。この高齢問題に最終的に絞り込んだ後に、高齢問題についてもうちょっと深掘
りをしなければいけないということで、①から④までの作業をしました。
まず、関連の研究者の動向やファンディングの状況なども調べながら、どんなテーマが
この領域では開発すべきテーマとなり得るのかというところの抽出を行いました。それを
ベースにまたワークショップ等も行いまして、最終的に領域という形につくり上げていき
ました。領域案を公開フォーラム、③ですけれども、こういったところに諮って、一般市
民の方にも来ていただいて、
「こういう領域をやろうと思うんですが、どうでしょうか」
という形でパブリックの意見も反映させて領域をつくり上げる作業をしました。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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82
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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領域を設定するに当たっては最終的にこのような絵ができました。高齢領域の場合は、
課題なのか、研究開発テーマなのか、ほとんど混在している状況になるのですけれども、
この中で横串を刺すものは何かといった場合には、このときには地域というキーワードが
浮き上がってまいりました。こういうものを全体でやるのではなくて、コミュニティとか
地域レベルで取り組んでいくのが、我々のアプローチとしては重要ではないかと考えた次
第です。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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(これらのプロセスを経て)最終的に、
「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」
という領域を設定しました。社会技術として取り組むべき理由には、これらが挙げられま
すので、我々としても(領域として設定する)意義があるだろうと考えた次第です。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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領域の目標については、ここは先ほどの必要性を踏まえながら、様々な関与者、フィー
ルドにおける実践的研究を重視しなければいけない、また、新しい評価手法の開発や余り
現場に入らないような研究開発も同時並行で進めていかなければいけないだろうというこ
とも目標に掲げています。また、研究開発拠点の形成やネットワークの形成も大事である
ということで、それらも目標として掲げています。また、領域ではコミュニティという言
葉を使っているんですが、コミュニティの定義を少しここでは広く考えておりまして、単
純に地域のコミュニティということではなくて、例えば共通の目的や価値に基づいて活動
する人々の集まりも含めてコミュニティと呼ぼうという定義をしました。
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我々は領域として「こういうところをやるべきだ」というものを作成しました。その上で、
どういうプロジェクトを採択すべきかを見ていったわけですが、公募なのでぴったりとい
う提案が来ないケースもあります。
ただ、
なるべく全体が埋まるようなプロジェクトのポー
トフォリオを立てたいというふうに思って取り組んできた次第です。この採択プロジェク
トを見ていただく限り、見た目で少し横に延ばしている部分もあるのですが、全体的には
埋まっているのではないかなというふうに考えています。
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13㻌
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さて、今後、社会技術としての推進方針について、昨年度検討を行いました。その結果
がこの4つです。
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さらにこれらを集約するとこの3点となります。問題の構造化とか抽出とか俯瞰とか、
そういったプロセスをもう少し強化すべきではないかと考えております。また、研究開発
領域のつくりといいますか、
領域そのものの設計も少し変える必要があると思っています。
これまでは研究開発領域と申しますと、
二軸で広がりを示すものと捉えられていましたが、
ストーリー性を加味し、より三次元化するようにしたいと思っています。つまり、領域を
見れば、この領域は何を目標にしているかわかるような、
そういうたてつけにしたいと思っ
ています。そのため、シンクタンク機能を強化しつつ、
我々はファンディングと両方を持っ
ていますので、一体的に、効果的に相乗効果を上げることによって、より社会技術研究開
発を強く進めることができると考えております。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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そこで、RISTEX の中に俯瞰・戦略ユニットを 26 年度から設置することとしました。
このユニットで問題の俯瞰、抽出、領域の設計も担当します。先ほど申しましたように領
域にストーリーをつくり、そのストーリーに沿って最適なプログラムをつくっていくこと
を想定しています。例えばあるプログラムは 5 年であり、あるプログラムは 3 年、もし
くはあるプログラムは大規模、あるプログラムは比較的小規模なものという形で、フレキ
シブルに設計できる形にしたいと思っています。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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また、領域をつくるだけではなくて、つくった人たちがマネジメントにも関与するよう
なリソース配分をしたいとも考えています。揺りかごから墓場と書けなかったので天国ま
でというふうに書いておりますが、そこまで一気通貫でプロデュースするというような体
制をとりたいと思っています。
また、社会実装という言葉が最近、よく使われているんですけれども、我々自身、社会
実装とは何なのか、よくわかっていない部分がまだあります。社会実装をまず我々自身が
分析すべきだろうということで、我々のこれまでの成果を分析しながら、社会実装はどん
な類型化ができるのかということを少し考えてみたいと思います。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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今後は、CRDS さんとも連携しながら、新しい俯瞰のやり方や問題抽出のやり方も考
えていきたいと思います。特に問題を構造化するということをやってみたいと思います。
我々は、どちらかというと局所最適化を図ることに陥ってしまう部分があります。問題の
中のボトルネックはどこなのかというものも、もう少し可視化できるような作業なり、方
法論がないかということで、いろいろ検討を進めているところです。
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長のもとで、これからも邁進してまいります。今日はありがとうございました。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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∼∼ 民間企業からのプレゼンテーション ∼∼
5.6. COCN の推進テーマ活動
産業競争力懇談会(COCN) 中塚隆雄 事務局長
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私どもの活動の概要をご理解いただいている方が今日は多いと思いますので、できるだ
け今回のテーマに関係したところに少し時間を割くようお話したいと思っております。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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と民間がやるべきことをはっきり分けていく、というのが基本方針です。決して官におね
だりはするなということを活動しているメンバーには言っています。そして、政府ととも
に実現を図っていこうというのが発足の趣旨です。企業会員 34 社で、基本的にはものづ
くり系の会社が中心です。会のエンジンである実行委員会は、これからお話しします推進
テーマを決めていくプロセスにおいても、彼らの知見が一番影響があります。基本的には
企業の CTO 相当職にあったような方、それから、総合科学技術会議の事務局の経験者の
方にも入っていただいています。年間活動経費までわざわざ書いていますのは、わずか
1,700 万でこの活動をしているというところに一つの活動の意思が込められておりますの
で、ご理解をいただきたいと思います。
COCN はよく経団連とどういう関係かと聞かれることがあります。基本的には、経団
連とは常に政策のベクトルを合わせております。ただ、経団連さんがどちらかというと産
業界の代表ということで、非常に大きな方向性の提言をされるのに対して、我々はできる
だけ現場の具体的な提言をしていくということで、補完的な関係にあります。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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それから、活動の理念ですが、手弁当精神、軽いフットワーク、小さな事務局というと
ころです。大きく二つの活動をしておりますが、一つは今日の話題の中心であります推進
テーマ活動で、COCN の基本の活動です。もう一つ、内閣府を初めいろいろな府省に政
策提言をさせていただいております。これらは推進テーマ活動を踏まえて出てきた課題、
これをもう少し高い次元で解決していただきたいという活動になっております。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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COCN の推進テーマ活動ですが、先週決まったばかりのものを含めますと全部で 76
テーマあります。字そのものが小さいので、テーマのばらつきという形で見ていただけれ
ばと思いますが、左のほうに社会的課題、産業基盤の課題というのがございまして、社会
的な課題を解決するために産業基盤の課題解決が必要とも考えております。発足の 2006
年から、今年が 9 年目の活動です。
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独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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95
COCN 㻌
4㻌
推進テーマ活動は、実はプロジェクトと研究会という二つに分かれております。外から
見ていただくと余り分けていただく必要はないかなと思います。ただ、上のほうの赤いと
ころに書いてありますとおり、基本的には COCN というのは会として何かをしていると
いうよりは、COCN という場を使っていただいて会員が自主的に活動するプラットフォー
ムであるというふうにご理解いただいたほうがいいかと思います。
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5
プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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推進テーマを決めるプロセスですが、先ほどから皆さま方のお話と比べますと、恐らく
あまり労力をかけていないほうではないかと思います。
まず、1 月から 2 月ぐらいに実行委員会でフリーディスカッションをし、いろいろ方向
性を検討していきます。それで、3 月に会員にアンケートをいたしまして、それを回収し
て実行委員会で 2 回から 3 回議論するのですが、そのプロセスでこれはもう少し細かく
理解をしたいというテーマには、活動企画書を出してもらったり、提案元に来ていただい
てヒアリングをしたりという形で、6 月上旬に、今年でいえば先週 11 日に決定しました。
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COCN 㻌
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会員へのアンケートの項目は、タイトル、内容、そのテーマを COCN が取り上げたと
きにあなたの参加の意思はどうですかと、つまり、リーダーシップをとる気はありますか、
メンバーとして参加するだけですか、それともジャストアイデアとしてのご提案ですかと
いうことを聞きます。
ただし、このアンケートをしますときに、今年の 2014 年の例ですけれども、フリーディ
スカッションをしてきた実行委員会の方からキーワードを出して、やや誘導的にアンケー
トに回答していただくようにしました。資源・エネルギー・環境の制約とか、超高齢社会、
レジリエントな社会、この辺は国の政策と大きくは合っていると思います。その手段とし
ての技術基盤とか人材の育成という捉え方をしています。それから、重要な新テーマの掘
り起こしということで、例えば今年入れたキーワードでいいますと、デュアルユース、社
会科学との連携、技術の受容性、このあたりは先ほどからずっと出てきておりますし、女
性の活躍、オリンピック/パラリンピック、ベンチャー、コンサルティング、農林水産業、
技能の伝承というようなことが入っております。
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プレゼンテーション
ワークショップ報告書
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COCN 㻌
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次に、このテーマをどのように絞り込むかということですが、産業界からの提案という
ことですので、非常に大事にしておりますのが、特定の企業や業界の事業上の利害に偏ら
ないこと。それから、提案者の熱意とそれを本当に引っ張っていくリーダーがいますかと
いうところを大変重視しております。また、現場からの提案になっているかということ、
つまり、研究開発部門のスタッフの提案ということではなくて、必ずバックに何らかの事
業的な裏づけがあるかということを見ております。あとは、当然ですが、これまでのテー
マの継続性や新規性、国の政策との整合性を見ていきます。
ただ、公の会ではありませんので、網羅的に全てをカバーしなければいけないとか、政
策的にバランスがとれた形で推進テーマを選ぶということは余り気にしておりませんし、
実際に決めるときには目利きでもある実行委員の知見と見識と、それから、大事なのが行
動力です。後で少し出てきますけれども、実行委員というのはそれぞれのテーマの担当を
持ちまして、日常からアドバイスしていきますので、テーマリーダーの他に実行委員自身
にもある程度のリーダーシップがないと、なかなかうまくまとまらないというのが実態か
と思います。
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COCN 㻌
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これは今年度の例ですが、45 件の提案があり、活動企画書を出したのが 13 件、ヒアリ
ングをしたのが 5 件、最終的には 9 件を選びました。1 件、まだ、ペンディングで検討中
のものがありますが(* 注 本報告後テーマ化を決定)
、今のところこういう内容です。
COCN 㻌
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プレゼンテーション
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10㻌
推進テーマの活動は、リーダーを中心に自主的に進めております。特に事務局から人が
入るということはありません。それから、テーマ活動のメンバーは COCN の会員でなく
とも、この企業のこういう人たちの話を聞きたいとか、この大学のこの先生がいいレポー
トを書いておられるので、とかいう形で、自由にこの指とまれで参加いただけます。それ
から、関連府省の方にも、関心を持っていただいておりますが、メンバーにすると利害相
反がありますので、オブザーバーとして聞いていただくということがあります。それから、
先ほど申し上げたとおり、担当実行委員が中間報告、最終報告の指導までしております。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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COCN 㻌
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11㻌
問題は活動の成果ですが、社会実装、それから、事業化、産業化、雇用の創出というの
が我々の成果だと思っており、イノベーションというのは、企業によって事業化されて初
めて実現するものだというのが基本的な考え方です。研究開発プロジェクトとか実証実験
は、途中経過的な成果ではあると思いますが、我々としては最終成果とはみなしておりま
せん。それから、先ほど来、いろいろな方がおっしゃっていますけれども、技術だけでは
なくて規制緩和とか、特に国民の理解が必要だということは、我々も今、非常に強く感じ
ているところです。
成功例と失敗例というと語弊がありますが、例えば比較的うまく回っている例では、
「交
通物流ルネサンス」という新交通システム(ITS)の分野があります。これは 2006 年に、
これを進める推進母体である ITS-Japan という NPO 法人の中に設置したプロジェクト
です。当時、内閣府から社会還元加速プロジェクトに指定いただいたり、また、経済産業
省の愛知県豊田市のスマートシティ実証につながりました。実証だけではなくて、実装、
事業化するためのプロジェクトということで、「都市づくり・社会システム構築」を 2012
年まで 3 年間続け、その上で昨年はそれを海外に展開するためのプロジェクトを実施しま
した。これが実は原山先生からご紹介のあった SIP の中の「自動走行システム」
で、
この間、
一貫してトヨタの方がリーダーシップをとってきておられます。
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プレゼンテーション
ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
COCN 㻌
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一方、
「生活文化ルネサンス」が同じ 2006 年にスタートしたのですが、こちらはブレー
キのかかった例です。振り返ってみますと、たいへん強い産業への危機感から、テーマを
実行委員会のトップダウンで決めていったところがあります。そして、エレクトロニクス
関係のいろいろな会社にお声をかけて参加を要請いたしました。若手も含めてたいへん活
発な活動をし、良いレポートができたのですが、検討組織はレポートができた途端に消
えてしまいました。つまり、その後のフォローアップができない状態になった。これは
COCN からしてみると決して成功とは呼べないということです。
私どもでは、これまで 67 件のテーマで提言をこれまでやってきましたが、成功と失敗
を分けるものをあえて言うとすれば、
「テーマ選定時のポイント」
にある通り、
このメンバー
は本気でやる気か、あるいはリーダーが誰かが明確に見えているか。この2点が一番大事
ではないか思います。特に産業界からリーダーがちゃんと出るということ、また、特に大
学の方にリーダーシップをとっていただくときには、必ず事務局に産業界、企業が入る形
にしております。それから、参加メンバー個人の活動ではありませんよ、個人が属する企
業としてのコミットがありますかというところもたいへん大事です。そして、持続的に活
動を維持する推進主体を設置する用意があるかということです。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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COCN 㻌
先ほどご紹介のございました SIP では、SIP というのは府省連携で出口を目指して国
として大事に育てていただく分野だと思っておりますが、実は 10 件のうち 7 件の課題に
COCN の提言したテーマがかかわっております。青で書いておりますのが私どものテー
マの内容で、その上の黒が SIP としての課題でございます。
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プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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14㻌
活動の成果と PDCA サイクルの回し方とですが、実は我々も困っている大きな課題で
す。結局、最も確かな PDCA の回し方は、我々の経験からいうと2つあります。1つは
提言した後、それを実際に現場で推進する主体がつくられて活動しているところは、いや
応なしに PDCA が回ります。もう1つは我々は今、9 年目ですけれども、2 ~ 3 年ごと
に同じカテゴリーで少し視点の違うテーマ設定をしていきますと、流れとしてこの辺の検
証ができるということも経験から言えることです。
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15㻌
発表者の個人見解ですが、COCN の活動にもいろいろ課題があります。皆さま方にお
わびを兼ねて申し上げなければいけないのは、COCN は今、いろいろなところで活動を
ご理解いただき、
「こんな活動を一緒にしないか」とか、
「こういう意見交換をしないか」
とか、たくさんお声をかけていただいているんですが、小さく軽いフットワークと手弁当
精神でできる範囲には限界があります。そこのところは大きな矛盾といいますか、我々の
課題だと思っております。
こういう課題があるとはいえ、これからの方向性としても有志が自由に集まって具体
的に集うプラットフォームでありたいと考えております。実行委員会自体が一種のワーク
ショップのようなところがあり、自由に議論をしております。それから、必ずしも経団連
のように産業界の総意という形にはならないにしても、何かとがった活動をしていきたい
なというふうに思っております。引き続きぜひよろしくお願いいたします。
質疑応答
○笠木 先の方で話された絞り込みや、後の方で話された評価などの言葉から、どういう
テーマを選ぶかの基準がいくつか見えてきています。例えば国の政策との親和性である
とか、あるいは事業化、産業化、雇用、規制緩和等、そういうキーワードで絞られるの
だろうと思います。しかし私は、産業界なので、もう少し具体的な指標として、経済的
なインパクト、どれぐらいのポテンシャルがあるのか、あるいは、これが事業化される
時に大手企業の内部のような形で新事業として実施するのか、外にベンチャーを育て将
来、大きな会社が買い取る形とするのかといったスキームを考えているのか等、もう少
し産業界として、具体的な R&D から実際の事業に至るプロセスを見ておられるのかな
と思ったのですが、そうでもないのでしょうか。
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プレゼンテーション
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○中塚 先ほどご説明しました検討のプロセスの中にありました活動企画書の中には、提
案の背景であるとか、それが実際にどういうインパクトを与えていくのかとか、想定さ
れる課題とか、その解決の仮説であるとかを全部書いてあります。その中に、経済的イ
ンパクトというのは当然のことながら、書き込んでもらいます。ただ、例えば雇用が 1
万人できるとか、売上げが 1,000 億出るとかいう基準を持っているわけではなく、
フィー
ジブルな提案であるねということを判断する一つの目安としてみています。また、残念
ながら、実行委員会の方からベンチャーに関するもの提案してほしいと言っています
が、なかなかベンチャーらしいといいますか、本当の新機軸というのは比較的少ないで
す。大企業中心の会員ですので、その中で確実に事業化していけるかという考え方が強
い感じがいたします。その辺で先ほどの SIP か、ImPACT かといえば、COCN は極め
て SIP 的なテーマの追い方をしているかなというふうに思います。
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5.7. 三井物産戦略研/技術フォーサイトの取り組み(2020 年技術展望)
株式会社三井物産戦略研究所 友田敦久 取締役 新事業開発部長
本日は、社会課題への対応やニーズの発掘に対する手法ということをお話いたしますが、
その前に三井物産戦略研究所について簡単に説明させていただきます。
私どもの研究所は 1999 年に設立いたしました。前身は 1960 年代にさかのぼります。
その当時の話を簡単に致しますと、三井物産と三菱商事は、皆さんもご存じかもしれま
せんが、第二次大戦後に GHQ の命令によって解体されましたが、その後、50 年代にな
るとぽつぽつと合併が認められるようになりました。1960 年に三井物産は大合同を果た
したのですが、そのときの社長である水上達三が、今後の世界は技術と情報だと考え、技
目を負っております。三井物産には営業本部が 12 ありますが、5 年先までのことは営業
本部がやる、5 年から 10 年先の、まだビジネスになるかどうかわからないところを我々
が調査研究してつなぐという形でやっております。私どもの部は、40 名の体制ですけれ
ども、三井物産から出向しているのは私を含めて 6 人、あとの 34 名はいろいろなメーカー
さんや他の業界の方に来ていただいています。例えば大手通信業界の方や病院に勤務され
た方や化学会社のエンジニアの方、また、大手電機メーカー、自衛隊、こういった方々が
私の下におりまして、40 人の部を形成しております。
早速、本題のほうに移っていきます。
技術フォーサイトの取り組みにあたっては、3つの原則を考えました。1つは技術の全
体俯瞰においては必ず技術の網羅性がある、すなわち、必ず抜けがないということ。2点
目は商社として取り組むに足る評価視点を加えるということ。3点目は研究者、私どもの
部にいる人間はエンジニアですので、自分の夢があって、自分がしたいことをピックアッ
プするのではなく、なるべく大局感を持って、かつ公平に見る。すなわち、恣意的に自分
が好きだからやるというような分野は選ばない。この三つを前提として取組みました。
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プレゼンテーション
術部と調査部の2つの部をつくりました。この二つが 1999 年に合併し三井物産戦略研究
所になったのです。したがって、設立後 15 年の会社ですけれども、実際は 55 年の歴史
があるとお考え下さい。
技術部は現在、新事業開発部となり、私が担当している部なのですが、その名のとおり、
新しい技術やイノベーションを調査して、それを三井物産のビジネスにつなげるという役
ワークショップ報告書
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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៏
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
109
さて取組手法ですが、まず、フォーサイト1とフォーサイト2という項目を立てました。
フォーサイト1は、先ほども申しました技術の網羅性を重視し、抜けのない全体俯瞰を
行うために、先ほど小笠原センター長からご説明のあった文部科学省科学技術・学術政策
研究所のデルファイ調査の結果を用いて分野を特定し、
網羅性を持たせました。
これによっ
てまず、抜けがないという前提としました。
その上で視点を変えて見ていきます。全体的に、商社的にもわかるような分野にもう1
回、デルファイ調査の中身を組み直し、173 の領域を抽出しました。これから、(下方に
図示してあるように)定点観測が 97 と、重点観測と重点取り組みを 23、10 と絞ってい
きました。
その方法ですが、取組みの4つのカテゴリーを、△が未着手、○が定点観測、◎が重点
観測、☆が重点取組としました。定点観測は 10 年後以降にビジネスになるだろうと考え
領域、ビジネスになるだろうと思っている領域です。
そのときの評価の視点ですが、ニーズからくるものを市場規模、市場継続性、新市場創
出の3つだと考えました。それにシーズからくるものを実現性、革新性、応用発展性の3
つとし、これらの6つの評価ポイントでそれぞれに、二重丸、丸、三角を全部の領域につ
けていきました。これによって、最終的に定点観測になるだろうという領域が 97、重点
取組に関しては 10 に分類できたということです。
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5
プレゼンテーション
ている領域、重点観測は 5 年から 10 年でビジネスに資するだろうという領域、さらに重
点取組は三井物産の営業本部と一緒にやろう、すぐ 5 年先にもくるのではないかという
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ワークショップ報告書
110
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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1
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
111
173 の領域を抽出した際の分野は 11 あり、上から化石燃料・核エネルギー、クリーン
エネルギー等であり、それぞれ数しか書いていなくて恐縮ですけれども、カテゴリー分類
した結果を示しています。
下側に書いていますのは、それぞれの 10 分野に対して灰色で囲っているのが重点取組、
それぞれ記載しているのが重点観測になっています。例えば、交通・運輸・インフラ分野
では自動運転は重点取組で、これは営業本部と一緒になって、これをどうビジネスにつな
げるか検討しましょうということになります。一方移動体用二次電池については重点取組
ではありません。現実には移動体用二次電池はリチウムイオンが既に市販化されています
けれども、ここで言っている二次電池は先の未来の二次電池ということなので、重点観測
はするけれども、取り組みはまだ早いというような考え方で分類しています。
あります。例えば 10 年後に本当に存続しているのかと、そのときに今はもうかっている
けれども、また、お金を張っていいのかという議論がありまず。そういうところを見てい
きたいという思いが一つと、シェールガスとかインターネットもそうですけれども、それ
が起こったときにどういう世界になるかと予測できましたかという問いが社内にもありま
す。そこら辺を今後、見ていきたいという思いで、フォーサイトを手掛けております。
質疑応答
○質問者2 この結果を外部に出すということは別に構わないのでしょうか。非常に会社
にとっては重要なノウハウだと思うのですが。
○友田 そうですが、この領域を示したからといって、
すぐビジネスが創造できるとは思っ
ておりません。それともう一つ、言い忘れましたけれども、フォーサイト 2 というの
がございまして、これは海外研究機関、シンクタンクの技術レポートを 61 本、分析し
た結果もございます。そういう意味では、その内容は市販されて皆さんもごらんになれ
るものもあります、ここら辺の中身は。従って、どの分野を抽出するかといっても、毎
年、見直しますし、これがどうビジネスにつながるかというのは多分、各社の考え方に
よると思います。また、我々はどういうふうにビジネスにするかということは書いてい
ませんので、特に問題はないと思っている次第です。
○笠木 重点取組及び重点観測領域は、先ほどのご説明ですと、技術的目標に対して評価
の視点が、市場の規模に始まり、応用、発展性もありわけです。これらを評価しようす
すると、この表題だけではなのでしょうが、割と大きいテーマになっているので、この
六つの指標で仮に評点をつけなさいといっても難しいですよね。それから、この6つの
指標がこれでいいのか、あるいは6つの指標が全く同じ重みでいいのかというようなこ
ともあるのではないかと思うのですが、そのあたりはどのような決め方をするのでしょ
うか。6項目で点をつけたときに、総合点の高さだけで見るのでしょうか。
○友田 新しい技術で、これは多分お金になるのではないかと気づく商社マンが結構いる
ので、その勘と、フォーサイト分析の結果は、大体一致するのです。ですから、評価を
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プレゼンテーション
なぜ、こんなことを商社が手掛けるのかということですけれども、我々として非常に怖
いのは、自分たちがやっているビジネス領域が数年後にまだ残っているのかと言う危惧が
ワークショップ報告書
112
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
点数にしてはどうかとか、軽重をつけて市場規模は 10 点にするけれども、トータルで
市場継続性は 3 点でいいのではないか、
という議論もあります。けれども、
今のところは、
現在の形で精査しつつ作業をしていって経験を積み、n 数が増えていくと、それなりも
のができ上がってくるのではないかと期待しています。
○有本 友田さんの部には外部の人が多いですよね。そういう意味では多様性はあるのか
もしれないが、評価の視点にあるようなかなり「ばくっ」とした視点で、特に領域を
23 から 10 に持っていくところには、物産の DNA のようなものが効いてくるというか、
よく知った人が判断するというところではないかと思うのですが、この評価をする人は
どういう人なのでしょうか。
○友田 分野ごとに、1チーム 3 人ぐらいのチームをつくります。チームでいろいろな
情報をネットで調べたり、集めたりします。チームには、リテラシーが高い人を極力集
めるようにしています。ただ、スーパーマンやオールマイティな人がいるわけではない
ので、試行錯誤でどんどん進めていくようにします。それと、先ほどの重点取組 10 を
選んだ理由には、既に営業本部もやりたいと手を挙げてきて、それなりに検討を一緒に
やりましょうというような話が来ているものです。戦略研がこれだけ調べてくれたら、
営業がその先をやりますというところまでいっているのが 10 テーマあるということで
す。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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5.8. 三菱電機における研究開発
三菱電機株式会社 宮原浩二グループマネージャー
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三菱電機は事業本部制をとっており、実際に事業をやっている事業本部と、それを横串
で支える共通部門から構成されています。私が所属しておりますのは開発本部で横串の方
になります。当然のことながら、三菱電機の全ての事業本部の研究開発を下から支えると
いう役割を担っています。ちなみに三菱電機は単独で社員が 3 万人で、連結で大体 12 万
4,000 人、去年の売上げが約 4 兆円の規模の会社です。
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開発本部の組織は、国内だけでなく海外にもあります。アメリカではボストン、こちら
はケンブリッジの MIT の横にあります。それから、ヨーロッパの研究所は、フランスと
イギリスの2拠点に分かれています。中国は開発本部の所属ではなく、三菱電機の中国支
社の所属で、支社の中に推進室をつくり、三菱電機開発本部から研究者を送っています。
どちらかというと中国の現地の工場を助ける役割ですけれども、アメリカやヨーロッパの
研究所は日本にある研究所の一歩先の研究をやってもらうという位置づけになっていま
す。国内の3つの研究所は実際の事業に役立てること、海外の研究所はその一歩前の将来
の研究をやり、その結果を国内の研究所に供給し、次の国内の研究所から各事業本部に技
術を提供するという仕組みになっています。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
115
(#4 スライド省略)
三菱電機の研究開発の全てのスキームは、縦軸が(研究の)費用、横軸が事業化に至る
期間で構成されています。
縦軸の費用ですが、私どもは工場のことを製作所と呼ぶのですが、事業本部や製作所か
らのお金で運用する事業本部費用、それから、各事業本部がみんなでお金を出し合い、全
社の共通費用として実施する共通費から成り立っています。
開発本部で実施する研究は、まず、受託開発です。これは事業部のお金を使って事業部
のために実施する研究開発です。もちろん、これは今日明日の製品の製品にかかわること
が多いので、事業化に至る期間は比較的短期です。
これ以外に、共通費を使って開発本部が独自でやる研究開発として4つがあります。先
に結びつけて事業本部に貢献するということを考えたものです。
基礎研究は先行開発よりは先、具体的には 3 年、4 年から 10 年以上先のことをやる研
究です。産学官連携というのは国プロのことを言っています。基盤研究というのは弊社の
場合、多くの製品があるのですが、それらで共通に使える技術というのがあるわけです。
例えば熱の解析技術や、電磁界の解析技術などは、短期、中期という話ではなくてずっと
やっていかなければいけないので、基盤技術という考え方で研究開発をやっています。
(#5 スライド省略)
それぞれの運用の仕組みは次の通りです(産学官連携を除く)
。
まず、受託開発ですが、受託開発、事業部がスポンサーですので、ここから研究依頼を
受け各研究所はその成果物を返すことになります。ここのテーマ設定ですが、基本的には
事業本部が製品責任を持っているわけですから、事業本部がテーマを設定し、それについ
て研究所にできませんかという問いかけがくる。それに対して研究所が受けて成果物を渡
すということになります。
次に、先行開発と呼ばれる仕組みです。先行開発というのは、先ほども申しましたよう
に 3 年から 5 年で製品化にしたいと考えており、いいアイデアがあった場合、これをで
きるだけ早く事業化まで持っていくということで、他の研究アイテムよりもかなり予算を
かけて、一気にやってしまおうというスキームになっています。こちらは提案するのは各
研究所です。各研究所の中でもいろんな審議をしてもらって、それを開発本部の方に提案
していただきます。その提案書を見てヒアリングして審議し、採択するか不採択にするか
を決めていく仕組みになっています。
それ以外に長期に、ずっとやっていかなければいけない研究ということで基礎研究や基
盤研究があります。こちらは各研究所で閉じた仕組みになります。研究所の中の研究部門、
部とか課が自分たちの所長に対して、こんなことをやりたいと提案して、それを所長が審
議して採択する、不採択にするかを決めます。
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5
プレゼンテーション
行開発、基礎研究、産学官連携、それから、基盤研究です。
先行開発は、事業化に至る期間が 3 年から 5 年で、3 年から 5 年後には上述の受託開発
ワークショップ報告書
116
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
開発本部は、受託開発の中身はそれほど気にしていません。事業本部がやっているわけ
ですから、それについてはそれほど文句を言うことはありませんし、自由にやっていただ
いて構わないと思っています。それから、基礎研究、基盤研究のところも開発本部は絡み
ません。なぜかというと、ここに絡むことによって若い人の例えば突拍子もないアイデア
が、言葉は悪いですけれどもはねられてしまうのではないか。そういったことを避けると
いう意味でも、ここも自由にやってもらいたいと考えているので、ここにもコミットはし
ていません。
現在はこういう枠組みでやっているわけですけれども、2つほど課題があると思ってい
ます。1つは三菱電機は、どうしてもテクノロジードリブンというか、技術オリエンティ
ドな会社だと思うのですが、余りにも技術オリエンティド過ぎないかという課題意識があ
ります。
もう1つは長期、10 年後や、さらに先を見た研究開発が必要ではないかということが、
課題意識としてあります。
一番良いのは、長期を見ていたものがだんだん寄ってきて基礎研究になり、先行開発や
受託開発になり、製品になることです。このサイクルが定常的に回るような仕組みという
のをつくっていきたいと思っています。
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今からの時代というのは、グローバル・アンド・オープンイノベーションの時代だと思っ
ています。グローバルな視点でオープンイノベーションをいかに進めていくか、というこ
とが大事だと思っています。
余りにもテクノロジードリブンですと、自前主義というか、自分がやりたいことを各研
究部がやってしまうと、本当にそれがお客さんの役に立っているのか、お客さんの課題に
対するソリューションになっているのかということについて、若干、疑問があります。
そこに、例えばオープンイノベーションという概念を持ち込むことで、ない技術は他の
会社や大学、独立行政法人から持ってくればいいではないかという考えで割り切ってしま
う。自分の技術にそれほど固執する必要はないのではないかということを今、開発本部の
中で啓蒙活動を一生懸命やっているところです。特に三菱電機としては今まで同業他社さ
ん、競業他社さん、異業種他社さんとの連携というのが非常に弱かったと思っていますの
で、そのような技術交流を昨年あたりから推進しています。
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5
プレゼンテーション
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ワークショップ報告書
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118
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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5㻌
それから、将来を見据えた研究開発についてですが、今日は皆さんが課題解決というこ
とで先のことを話されていますけれども、遅ればせながら、我々もそういうことを考えな
ければいけないと思い、昨年ぐらいから、こういう活動を本格化しています。これを私た
ちは「未来の社会をデザインする研究開発」と名づけています。これは、我々の技術開発
によって新しい事業をつくり、未来社会をデザインするという概念を表しています。
この最初の出発点ですが、皆様の発表にもありましたように、社会・市場動向を見て、
10 年先、20 年先、30 年先はどんな社会になるのか、どんな課題があるのかというのを
考えます。例えば課題があるとすれば、
その課題を解決したのがあるべき未来社会である、
その課題を解決するために我々は何をすればいいのかを考えるという活動になります。
ここでのポイントは、what と how をいかにたくさんつくるかということだと思います。
直接的な課題は何であるかということが what、それをどう解決するかが how です。課題
をどう解決するかはたくさん選択肢があっていいと思うわけです。私どもは自動車メー
カーではありませんが、例えば今、技術ドリブンでいくと自動運転が叫ばれるわけですが、
本質のところは例えば交通事故のない社会をつくるというのが what であるわけです。そ
の時、how にはいろいろあり、自動運転かもしれないし、新交通システムかもしれないし、
あるいは車の素材がスポンジのようになって、ぶつかっても壊れないということかもしれ
ない。こういう how をどれだけたくさん出せるかが、競争力の源泉にもなると思い、こ
ういう活動を一生懸命やっていきたいということで、進めているところでございます。ご
清聴ありがとうございました。
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ワークショップ報告書
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質疑応答
○原山 先ほど #5 のスライドのところですが、開発本部の研究開発の中で海外の拠点は
どういうふうに位置づけられ、基礎研究と基盤開発という開発本部は直接タッチしない
ほうのカテゴリーに入るのか、別枠なのか、その辺を教えてください。
○宮原 ほとんどが基礎研究と基盤開発のところになります。ですが、一部、事業部の研
究になることがあります。一部なる、というのは基盤技術のような形で、例えば非常に
先端的な制御技術があって、これをやることで直接的に事業部に貢献できるだろうとい
うようなすり合わせはありますが、ほとんどはこちら(基礎研究と基盤開発)です。
○原山 そのすり合わせは開発本部の方がやるのですか、
向こうから持ってくるのですか。
○宮原 海外研についていうと、すり合わせは国内の研究所と海外研でやっています。開
発本部が関与することはないです。
言葉が前面に押し出されています。しかし、今日の説明ではイノベーションという言葉
が入っていません。イノベーションは、
事業化とイコールで位置づけられているのでしょ
うか。それから、#6 の図では、グローバルイノベーション、オープンイノベーション(の
動き)に対してどうするのかが示されていますが、三菱電機の中でイノベーションとい
うのはどういう形で組み上げられているのか、そこのところを伺えればと思います。
○宮原 先行開発という仕組みがある種のイノベーションの源泉だと考えており、ここに
集中してリソースを割いています。ここでは、研究を実施した後に事業部に受け取って
ほしいのですが、始める時は事業部のコミットメントは求めていません。いいアイデア
だったらやってくださいということを言います。そのかわり、1 年あるいは 2 年したら
ちゃんと事業部のコミットメントをとって下さい、ということでやっています。ですか
ら、ある意味で、ここでの研究開発テーマは事業部が思ってもいなかったようなものか
もしれません。それがイノベーションの源泉なるのではないかと考えています。
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プレゼンテーション
○A ( 大学 ) 今までの三菱電機の対外的な発表を聞いていると、イノベーションという
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
5.9 IBM 基礎研究部門と GTO 作成プロセス
日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 川瀬 桂 部長
(スライド省略)
IBM 東京基礎研究所で、ストラテジー&オペレーションズを担当しております。
本日は IBM 基礎研究部門で毎年作成している GTO(Global Technology Outlook)の
プロセスについてお話いたします。これは非公開で、限られたお客様にシェアさせていた
だくというものですので、(スライドで写している資料の)配付は禁止になっております。
申しわけないのですが、配付資料なしで進めさせていただきます。
通常は GTO の中身の説明をしているのですが、今日は作成のプロセスに関して説明し
ていただきたいというご依頼を受けていますので、作成のプロセスを重点的にお話しさせ
ていただきたいと思います。と申しましても、実は作成のガイドのようなものがあるので
すが、社内用なものでそのままお見せできないので、数枚のスライドを使い、どういうこ
とをやっているのかというのを口頭でご説明させていただきたいと思います。
< IBM について>
GTO がどういうものかで何で必要なのかをご理解いただくために、まず IBM はどのよ
うなところかを説明させていただきます。現在、全世界で約 40 万人(社員が)おりまし
て、約 170 カ国でオペレーションしております。非常に大きくて多国籍で動いていると
いうのが特徴です。現在の CEO はバージニア・ロメッティという女性がやっておりまして、
非常にダイバーシティに気を配っている会社でもあります。
IBM の基礎研究所ですけれども、現在、12 カ所で約 3,000 名、ニューヨークにあるワ
トソン研究所、それと東京、ハイファー、チューリッヒ、この四つが古くからある古い 4
研究所と言われています。その後、チャイナ、インディアができまして、その後、ここ
2010 年以降、急激に世界に足を広げてきています。主に新興国にシフトしております。
こういった理由の一つとしましては、現地でいい人を雇用したいというのと、同時に世界
中から色々な情報を仕入れたい、アフリカでこれから起ころうとしていることを現地に行
かずしてわかるわけがないでしょう、ということを言われております。
これらの研究所は、ニューヨークにヘッドクオーターがあるのですが、基本的には対等
な関係で、12 カ所の研究所とストラテジー軸というものがあります。どういった研究分
野をやっていくかというストラテジーが4つ IBM の研究所にはあります。過去において
は非常に多かったのですが、
今は4つにまとめています。それを縦軸に、
横に 12 の研究所、
ジオグラフィの軸があります。そういった意味で、全ての研究者は基本的には 2 人のボ
スがいる。このマトリックスのどこかにはまっているという形になっております。
こういっ
た非常に複雑な組織、複雑な人の関係、
なおかつ 3,000 人いる中でどうやって戦略をつくっ
ていくのかということが重要な話になってきています。
(GTO の他に)イノベーションをつくり出すための仕組みについても検討しています。
その一つが GIO(Global Innovation Outlook)です。これは、IBM の研究部門ではなく
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
121
マーケティング部門が主導でやっておりまして、今後、イノベーションがどんなところで
起きるかとか、イノベーションを起こす必要があるエリアはどこかというような議論を社
員を含めて、研究者だけではなく外部のインフルエンサー、オピニオンリーダーの方々と
ともにディスカッションして、報告書をまとめて公表するということをやっています。
ここ数年、ちょうど 3 年前に IBM100 周年イベントがあり、その後もいろいろなイベ
ントが続いているため、GIO を結構やるのが大変なものですから、2011 年からはやって
いないです。日本からは経済産業省の方とか、いろいろな企業の方にも参加していただい
ておりまして、ホテルに何泊かするというのを年に 2 ~ 3 回やり、
報告書をつくる形でやっ
ていました。
< GTO について>
GTO は 1985 年からやってきています。当時の名前は 10 Years Outlook で、今後 10
2001 年からは、Global Technology Outlook として、一部の社外の方と内容をシェア
させていただく形としました。もちろん、機密のところは外した形でシェアさせていただ
いていますが、こういったことを IBM は考えているというようなことを語ってきました。
この辺はお話としても非常におもしろいことで、皆様からもいろいろな好意的なご意見
を受けておりましたけれども、時代の流れが早くなってきています。3 年から 10 年先の
業界、IBM がいるのは IT 業界です、IT 業界の新しいトレンド、破壊的なトレンドを見
つけるというところにフォーカスしています。
それと IBM の技術戦略では、技術だけではなくて、この結果をもとに会社事業戦略に
も活用しています。特に 2008 年以降、この 5 ~ 6 年はさらに加速度がついており、3 年
後ではなくて来年、IBM がやらなければいけないことを取り上げますという形になって
きています。毎年、4 つから 8 つのテーマを、Global Technology Outlook としてお話し
させていただいております。
先ほどの COCN の中塚様からも、上手くいった例と上手くいかなかった例のお話があ
りましたが、IBM は昔からいいストラテジードキュメントをいっぱい作っては実行でき
ないというのがありました。社内でもグッド・ストラテジー、プア・エグゼキューション
というようなことを盛んに言われ続けていました。
GTO は何が重要かというと、実行を伴う計画です。ストラテジーというのは意思で
あると、言ったからにはやるというものを作る、なおかつ来年から言った人がやるのが
GTO です。
< GTO の作成プロセス>
最初の段階では勉強会などをやります。外部から、オピニオンリーダーを呼んできて講
演を聴いたりします。世界中に研究所があるのでテレビ会議で夜中に聞いたりもしていま
す。
3 月ごろに最初のインプットを求められます。これは、3,000 人全員参加の形で、3,000
人が皆、1つアイデアを出すことが求められます。これらについて、12 の研究所の中
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5
プレゼンテーション
年後にどうなるか、IBM はどういうふうに見ているか、IBM が語る 10 年後の将来、テ
クノロジー・ロードマップであるアウトルックでした。
これは主に戦略をつくるために使っ
ておりました。
ワークショップ報告書
122
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
でプレスクリーニングをやり、本社に集まるアイデアは 100 から 300 ぐらいです。その
100 から 300 のアイデアを、3 日から 4 日かけて全部レビューします。
次に、KJ 法のような方法を使ってアンブレラトピックと呼ぶ、20 から 30 ぐらいのグ
ループにまず固めます。これをやるためには、
まず先ほどの 100 から 300 のアイデアを、
(1
件につき)5 分で説明する、というのを通しでやります。説明するほうも大変ですが、聞
くほうはもっと大変だと思います。これが4月~6月頃です。
専属チームは実は 2 人しかいません。毎年交代する 2 人の専属 GTO 作成チームをつく
り、GTO を監督している VP(バイスプレジデント)の下にディレクターとその専属の 2
人を付け、合わせて 4 人が主にコーディネートします。5 分間のピッチを丸 4 日間ぐらい
聞いて、アンブレラトピックにまとめます。そして、各アイデアが属するグループで話し
合うように依頼します。
ここから先は、おおよそ 1 カ月に 1 度ぐらいのペースで、VP のレビューが入ってきま
す。それに対して、自分たちの提案について、内容を精査され、どんどん絞られていきま
す。落とされるものや、これとこれは一つにまとめろ、というような話が出てきます。
こうして、夏ぐらいからは、残った 10 個ほどに対してエグゼクティブがスポンサーと
してつきます。スポンサーとなったエグゼクティブも共に、そのアイデアを最後まで引っ
張っていくという話になります。ここから先は、
外部のシンクタンクの情報も使いながら、
マーケットトレンドとか、オポチュニティは言っているとおりなのかを裏づける話をして
いきます。そういう厳しいことをやって、
残り最後は 4 つから 8 つぐらいが残るのですが、
クリスマスの前の週に CEO と CEO 直下のエグゼクティブに対して、基礎研究所のトッ
プであるシニアバイスプレジデントが、その年の GTO を説明します。
課題として、自分たちの都合のいいような提案をしているのではないかというのがあり
ます。提案にあたっての「べからず集」があり、この中には自分が行っている既存のプロ
ジェクトを正当化するために使ってはだめだというようなことが書いてあります。もちろ
ん、そんなのはすぐ分かり、その辺は基本的には VP がちゃんとレビューします。レビュー
の過程では、新しい話か、去年とどう違のか、
今まで IBM がやってきていることとどう違っ
て、何でこれをやらなければいけないんだ、ということをかなり詳細に聞かれます。
もちろん新しい話ほど受けるわけです。そういった意味で、3,000 人から集めてきた新
しい話は残りやすいので、3,000 人が勝手に提案しているわけですが、網羅性は非常に確
保されているというふうに考えています。こうしたボトムアップのところと、トップダウ
ンでの経営層の意思が入っていますので、IBM としての投資価値、戦略的に実行する価
値としての網羅性の両方が担保できているというような仕組みで動かしております。
以上、簡単に GTO 作成プロセスに関して述べさせていただきました。どうもありがと
うございました。
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質疑応答
○所 御社は大体 10 年ごとに社長がかわられ、ここ数代はその回ごとにビジネスドメイ
ンが変わり、ハードウエアからソフトウエア、ソフトウエアからサービス、サービス
からインフラへとなっています。そういう変化と GTO は、社長がかわっていく中でも
GTO をやっているのか、GTO の成果というのがビジネスドメインの変更、もしくは社
長の変更ということにも絡んでいるのでしょうか。こんなことを聞いていいのかわかり
ませんが、雰囲気だけでもお知らせいただければ大変ありがたいと思います。
○川瀬 GTO は、研究所のトップが CEO に対してピッチする話ですので、当然、CEO
がかわったら言うことは変えなければいけません。上ばかり見ていてもいけないのです
けれども、上のディレクションにある程度、沿っていないといけません。もちろん、そ
こでカバーできていない話をするのは重要ですけれども、サイクルがどんどん短くなっ
○所 そうすると社長の意思というものを全社に伝え、そういう方向で頑張れよという役
目も果たしているということでよろしいでしょうか。
○川瀬 CEO からの研究所に対する期待は、必ずしも CEO の意向だけではなく、世の
中の情勢の変化も反映しています。これだけスピードが速いところにきていますので、
そこに合わせなければいけない。そういったところも大きいと思います。
○笠木 先ほど必ず次年度に実行するのだというおっしゃり方をされたのですが、それは
何を意味しているのでしょうか。基礎研のレベルでの研究を開始するのか、事業化まで
のプロセスを全部組み立てて、開発部門も含めて一斉にある種、動き出すということな
のでしょうか。
○川瀬 両方あります。ケース・バイ・ケースです。必ずやるのは、基礎研究所の中にプ
ロジェクトを置くことです。そこでリーダーシップをとれるのは、提案者が行うのが自
然です。提案者のモチベーションはそこにあります。それと、事業部との協業も行われ
ることもあります。
○ A(大学)
GTO と GIO との相互関係といいましょうか、これはどういうようになっ
ているんでしょうか。
○川瀬 GIO が対象とするものは、IBM だけではなく、世の中全体で、社会として今後、
どういったところでイノベーションが必要であるとか、どういうところでイノベーショ
ンが起こるであろうか、というようなところを社外のオピニオンリーダーの方と話し合
うというものです。必ずしも解決法まで求めているわけではなくて、こういったところ
に将来、誰かしらがアドレスしていかなければいけないことを見出していきます。一方、
GTO は、IBM の研究部門が、これはもう IBM としてやる必要がある、ということを言っ
ているものです。
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プレゼンテーション
てきているということは、それだけ研究所に対する CEO の期待が変わってきていると
いうことだと思います。
ワークショップ報告書
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6.総合討論
○前田 本日は、このフレームの中に示されている様々な機関・組織から、社会課題 / ニー
ズを捉えた研究開発戦略を検討している、その中身をお話しいただきました。おそらく
粒度とかフェーズとか呼ばれるものは、それぞれで違っているのですが、どの例でも共
通して、社会がどうなるのかということ考えています。また、それらをどのように研究
開発課題と結びつけていくかの段階では、企業活動であるのか、あるいは政策を検討す
るレベルなのかによって、
その方法は異なるのですが、
それぞれで似たようなことをやっ
ているなというところはつかんでいただけたのではないか、と思います。
それらについてこれから質疑、あるいは議論に入るわけですが、これに先立ちまして、
コメンテータとしてソニーコンピュータサイエンス研究所の所エグゼクティブアドバイ
ザーにお話いただきます。よろしくお願いいたします。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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6.1 総合討論におけるコメント
コメンテータ:ソニーコンピュータサイエンス研究所 所 眞理雄エグゼクティブアドバイザー
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CRDS-FY2014-WR-06
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6
総合討論
今日はこういう過大なお役目をいただいてしまいました。吉川先生のこのイニシアチブ
につきましては、最初のころから参加させていただいていますので、そういうご縁もあっ
てのことかと思っております。
今日は論点がたくさんあるので、全部に触れることはできないと思うんですけれども、
私なりのコメントをさせていただきたいと思います。
ワークショップ報告書
126
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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まずは課題解決型研究開発の歴史的必然、これは 20 世紀は欧米主導で与えられた課題
について追いつけ、追い越せ、これが科学技術政策だったと思います。シーズオリエンティ
ド、分野志向のリニアモデルがまだ成立していました。これは 1980 年ぐらいから危なく
はなってきていますが、こういうことが成立していました。
21 世紀は目的志向のオープンイノベーションに大きく変わり、チェスブロウの教科書
がその基本になっておりますけれども、最近ですと google x の騒ぎ、それから、イーロン・
マスクという、これはスペース X とか、それから、テスラモーターズというのをつくった、
まだ 40 歳そこそこの人ですけれども、世の中のページがまた 1 枚、めくれてきているの
ではないかなと思っています。
こういうときにほかと同じことをやっていても絶対にトップに立てません。
それから、社会的なニーズに基づく新たな課題を発見して、研究開発を推進することが、
学術、産業の振興の唯一の方向になったということです。ここで余りこちらに振り過ぎて
しまうと、探索型基礎研究にお金が一切つかなくなってしまう。これは後でまた芽がどこ
にも出てこないということになってしまうので、
これはこれで問題があります。それから、
多様性の維持というのは実は長期戦略を立てるときには一番重要なので、短期、中期、長
期、我々はおそらく、中期ぐらいを狙っているのですが、長期のことも考えておかないと
まずいよということは、頭の隅に絶対に入れておかなければなりません。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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てくるわけです。
それから、課題設定の良否の判断です。合意ベースでいくのか、目ききにやらせるのか、
いろんな議論がいまだに続いております。それから、検証可能性って何なのか。テーマ設
定の検証可能性、これは検証できるようなものではないわけです。世の中は動いていって
いるわけですから。そうするとある種の説明責任というか、説明可能性というところにな
るのかと私自身は思っています。
それから、今日は社会技術研究開発センターからのお話もありましたけれども、実際に
科学、技術だけの問題かというのは大きなポイントになってきて、制度、政策、それから、
さらにそのベースになる長期的な教育のプランというのも大変重要になってきていると思
います。健康寿命を考えるときに定年制を考えなくていいのみたいな、こういうことは実
際には一番重要なことです。
社会的期待と研究開発領域との邂逅では、既存の研究開発領域における過去の成功体験
に縛られる可能性が極めて強いということ、
これは戒めておかないといけないと思います。
それから、ファンディング・エージェンシーが決めるところがどこまでなのか、研究提
案者もしくはプロジェクトマネジャーが決めるのは何なのか。
それから、
研究にセレンディ
ピティを求めているわけですが、シナリオどおりに全てがいくとは限らないし、楽しくも
ない、おもしろくもない、大きなことも出ない。ここら辺の伸びしろというか、遊びをど
ういうふうに担保していくかは、ものすごく大きなポイントになってくると思います。
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6
総合討論
ここで、社会的期待とは何か。
実は本当は多様な価値観があって、人々の暮らしが中心なのか、企業や経済成長が目的
なのか、国力増大なのか、人によって違います。
時間軸につきましても、10 年、30 年、100 年、地球温暖化ですと 30 年とか 100 年になっ
ワークショップ報告書
128
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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さて、アプローチが二つ出されまして、これについて何かコメントをしてほしいという
ことなので、まず、課題解決型アプローチからお話します。
この新たなアプローチによる大きな成果が、私はあったと思います。
現実に「都市におけるエネルギー利用の高効率化に向けた ・・・」、それから、
「強靭で持
続可能な ・・・」
、それから、
「人の一生涯を通した健康維持戦略」
、こういう3つのものが
議論をされて提案をされていくということだそうですが、ここで一番重要なのは、なぜ戦
略課題としたかの説明ができる、それだけの十分な資料というのを持っている、エビデン
スベースでちゃんとプロジェクトを選んでいるということができた。
一方、ちょっと心配なのは先ほど申し上げましたが、既存の研究開発領域の縛りを感じ
ます。これは実は邂逅するときに、既存の研究開発領域からのフィードバックに強く頼り
過ぎてしまうというところがあるのではないかなということと、もう少し伸びしろのある
テーマ設定がよいのではないか。Step4 の邂逅で、頑張ってまじめにやり過ぎてしまった
ということがあるのではと思います。
今回、初めてこういう形での戦略提言をされて、これは良いのだけれども、余り全部自
分たちでやってしまうと、少しずれたところが拾いにくい。場合によると、ぴったりの提
案よりも周辺の提案のほうがおもしろい提案であったり、結果的にいい結果が出るという
ことも十分あります。このあたりの許容度というか伸びしろ、それから、提案者側も拡大
解釈できるような、そういう部分も重要ではないかと思います。私はソニーコンピュータ
サイエンス研究所の運営をしていますけれども、こっちが思ったとおりのことなんて研究
者からは出てきません。そういう人をおだてて研究してもらうのが僕の仕事なので、全く
当て外れなことを私が言っていたらすぐ首になってしまいますけれども、そういう範囲で
揺れながら決めているというのもよいのではないかなと思います。
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でも、検討中の戦略スコープは私はたいへん良いと思っています。
「医療と病院の変貌」
、
「人と機械の新たな関係」、「人の能力とコミュニケーション」
。これら3つを見ているとお
もしろいのは、3つとも我々の生活に密着したテーマで、なぜこのテーマを選んだかは多
くの人が直感的に理解できる。それから、使う技術は限定していないのです。目標が書い
てあるのです。先ほど what と how でとらえることが三菱電機の方のお話にありました
けれども、what を中心にして how のほうは許容度をたくさん持たせておいて、とんでも
ない技術が出てくる方がよろしいのではないか。
それから、関係性を重視したテーマであることです。おそらく偶然だとは思うんですけ
れども、3つのテーマとも間に「と」が入っています。1つのことを掘り下げて研究成果
が出る時代は、デカルトの時代からずっとあります。そういう、物理のような、きれいな
分野もありますが、我々が解決しなければいけない問題、もしくはデザインしていかなけ
ればいけない問題というのは、1つのことを解いたら全部が上手くいくという世界制覇方
程式のようなものはないのです。ですから、全てが相互関係でいく、そういうところを一
から始めていくという意味では、「何と何」というようなテーマ設定の仕方がたいへん良
いのではないかと思っています。
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総合討論
二つ目のアプローチは、未来の社会をデザインして実現するということだと思います。
手法として、ファクト、トレンド、ビジョンを一体として検討するということですが、こ
れは大変いいと思います。
ここでは社会的期待と研究開発領域の邂逅のかわりに、ドライビングフォースとしての
科学技術を特定すると私は理解しました。ここは間違っているかもしれないのですが、両
者の本質的な違いというのは何なのかなというところが余りまだ明確に出てきていない、
ドライビングフォースとして科学技術というのももちろん重要だと思いますが、これはど
こからどうやって選んでくるのかが分かりにくかったです。
ワークショップ報告書
130
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
こういう表現をしていくと、制度や政策や長期的な教育の方針なども同時に議論できる
可能性があると思います。一方、ドライビングフォースとしての科学技術分野を特定し過
ぎてしまうと、これが弊害になるかもしれない。これはまだ今後のご検討をされていくと
いうことなので、中間的な段階で私が感じたのは、こういうことです。
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さて、評価方法を変えないと、テーマにいくら良いものを選んでも、研究者がやること
は過去の評価方法にのっとった研究開発しかしなくなります。でも、皆さんの意図は、新
しい方法で新しい研究をしてほしい、開発をしてほしい、もしくはビジネス化をしてほし
いということだと思うのです。研究開発推進政策の目的は、人々の暮らしをよりよいもの
にして、かつ経済の発展を促進することです。これは表裏一体だと思いますが、今やイン
クリメンタルな成果ではなくて、新領域を本当に創設することが大変重要です。
これまでの評価は論文中心。これは既存分野で論文を書くわけですから、既存分野での
評価です。それから、分野細分化による限定的な効果、それから、最近、問題になってお
りますが、過度な競争を招いているのではないかということも言われております。
また、社会への還元や政策との連携に距離があり過ぎる。著名な論文誌にの論文が出た
ぞ、すごい、ネイチャーに載った、サイエンスに載った。これがビジネスになるまで 10 年、
20 年かかるわけです。そうすると、そこでの評価というのはどういうふうに考えていっ
たらいいかというのは重要なことになってくると思います。
論文中心の評価のままでは新領域を創設することはできない、とかなり断定的に言って
いますが、特に大学ですとポスドクの間に何通、論文を書かなければいけないみたいなこ
とが物すごく重石になっていると聞いております。そういう中で、若い人に新領域を、と
いってもなかなかできないのではないかなと思うし、適切な評価軸、評価方法を与えるこ
とによって新領域の創設が加速される。そうする以外はないと僕は思っています。それで
は、論文中心の評価以外の方法があるのか。私はあると思っています。
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てもらう。それから、最終年度あるいは終了後の早い時期に教科書や総合的学術書を出版
し、あるいはジャーナルを発刊し、新領域の創成を確定する。
領域の中で何かいい仕事をするのではなくていい領域をつくるということです。いい領
域をつくるには、実は論文はセカンダリーな順位とするのですが、それでも、皆さん、論
文を書きます。大学の先生は絶対に書きます。そういうものを集めたときに、本当に新し
い領域として創成できるような分野になっているかというのが、評価のポイントなるべき
だと僕は思っています。そうは言ってもなかなか実行するのは難しいかもしれないんです
けれども、やらなければいけないと思っています。
2.としてビジネスプロポーザルによる評価です。これは経済的価値になりますが、プ
ロジェクトの中期からビジネスプロポーザルを作成してもらって、ビジネス実施のための
チームを構成する。チームアップというのは物すごく重要で、皆さんがおっしゃっている
のですけれども、チームアップをビジネスプロポーザルの中に入れていく。
研究のプロジェ
クトマネジャーとビジネスプラン実行のプロジェクトマネジャーは異なってもよいと思い
ます。同じ人ができればベストだと思いますが。それから、実効性並びに波及効果の大き
さ。極端に言えば、城下町がつくれるような大きなビジネス、新規ビジネスの創成の可能
性が高いかどうかを判断し、必要な支援を継続的に行う、こういう制度が実は必要ではな
いかと思います。
下の青字のとこですが、これまでは学術的な価値と経済的価値の連続性がなかった。学
術的価値は文科省、経済的価値は経済産業省や総務省、そういうことで今までなかなか一
気通貫にできていなかった。今は皆さん、そういうことに気がついてやり始めていると思
CRDS-FY2014-WR-06
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6
総合討論
それは、1.として、著書による研究成果の評価です。学術的な評価は最終的に新た
な分野を確立する立派な教科書ができるか、その分野の専門書が書けるか。初年度から 2
年度目においてテーマの重要性や関連分野に関する議論をホワイトペーパーや新書やパン
フレットなどにまとめて、その意味、価値並びに重要性を社会に知らしめ、皆さんに知っ
ワークショップ報告書
132
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
うのですが、まだまだ、具体的に連続性をどうやって担保するかという方法ができていな
かったのではないかと思います。必ずしも1の全てが2につながる必要はないと思います。
これは無理です。学術的な価値があるということと、それが経済的な効果を生むというこ
とは必ずしも一致しない。だから、学術的な方は軽く見てしまうという意味ではなく、そ
れはそれの評価をすればいいのであって、でも、1と2を通して実行できるようなことを
つくっておくというのが、これからは非常に重要です。そのため1と2を通して実行でき
る人材の育成が今後の我が国の研究開発、
産業推進のために必須ではないかなと思います。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
133
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最後に、新しいことをやるというのは実はレガシーとの戦いです。みんなが応援してく
れると思ったら大間違いで、100 人のうち 99 人はやめろという、そういう中で本当にい
いと思うものをどうやって支える仕組みをどうつくるか。これが非常に重要なことだと
思います。それから、もう一つは対象によって必要な時間が異なる。3 年で出るのもあれ
ば 10 年かかるのもあります。プログラムで 5 年と決めてしまうようなものが多いですが、
どうしたら画一的ではなくて、柔軟性を備えた支援ができるだろうかというようなことも
考えておく必要があります。そして、最終的にはこれまでは何か問題点を解決するという
形の課題だったものを、今後は、未来はどういう社会にすべきかをデザインし、それを実
現するような科学技術という方向にいくのがよろしいと思います。
私も、苦しみながらご理解を周りからいただけない中から、オープンシステムサイエン
スという本を日本語、英語で出しましたし、ディペンダビリティに関しても日本語と英語
で出して、これに関する論文はまた別に出ているんですけれども、こういう形でまとめて
いくというのを自分でもやってみました。これがベストだということはわかりませんけれ
ども、いろいろな方法の中の一つとして、こういうこともお考えいただけたらと思います。
どうもありがとうございました。
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6
総合討論
深掘りの科学、つまりデカルトの還元主義に代表される万能だと思われていた科学方法
論から、カール・ポッパーの反証可能性だとか、それから、トーマス・クーンのパラダイ
ム変化だとかによる科学の進展。こういう議論があって、その後、余りこういう議論はな
い。最近、私が考えていることは、関係性を重視した科学、オープンシステム的な科学へ
のシフトが重要で、これが 21 世紀の科学であり、技術であるというふうに思っています。
そして、人々の暮らしや産業経済に総合的に貢献するような新領域の創生の重要性、そし
て、波及効果の大きな巨大新規ビジネスの創成、こういうことが容易になるような制度を
つくっていくことが必要だと思います。
ワークショップ報告書
134
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
6.2 総合討論
○前田 まず、プレゼンテーションいただいた方々から他の機関の方法に関して、あるい
は CRDS の方法に対して、ご質問ですとか、あるいはこういったことが気になるといっ
た点について、ご意見をいただきたいと思います。所さんから出していただいた、ファ
ンディング・エージェンシーがどこまで戦略を決めていいのか、というあたりは非常に
大事なポイントではないかと思います。
○原山 それぞれの機関での試行錯誤、悩みながらやっているある種のノウハウ的なもの
を出していただいいたので、これらはそれなりに吸収させていただけたかと思います。
次に、最後の所さんのお話ですが、まず、イノベーションにはいろんな定義がありま
すけれども、
(社会に)実装したい、実現したいということであれば、遊びの部分、自
由度がない限り意味がないわけです。
(基本的には)個人の自由でやることではあるの
だけれども、それだけではなかなか回らない時に、国の役割が出てくるわけです。そう
すると、国は箱(枠組み)のようなものをつくり、税金も使い、それなりの説明責任が
出てくると、なるべく遊びの部分というのを少なくしたいというロジックになります。
これと相反するロジックにいかにつないでいくかが、まさに CRDS や RISTEX で議論
している話です。しかし、これらをどこまで担保できるか、というのが私の一番の悩み
どころです。なるべく新しい考え方を出したいのですが、お膳立てすればするほど逆の
方向にいってしまいます。どうしたらいいか、というところです。
また、最後の方でおっしゃっていたレガシーとの戦いもあります。新しい社会をデザ
インするところが一つの肝と思うのは、課題解決の話はどっちかというとネガティブな
話です。もっとポジティブな形で我々の次の世代にどういう社会のポテンシャル、可能
性をつくる視点の方が、もっと伸びしろのあるところにいくのでしょうか。
最後に、必ず評価という話が出てくるのですが、論文だけの評価ではないほうがいい
というのは、皆さん、同意しているのでしょうが、代替するものがなかなか見出し切れ
ないでいます。我々がやっていることの一つは、
提案する方がみずから、
自分のアクショ
ンをチェックする方法を書いてもらう、というやり方を考えています。
「本を書けばいいんだよ」というのは、私の師であるネーサン・ローザンバーグに私が言
われたことそのままです。これで踏ん切りがついたというところもあります。ですので、
サイエンスをしている人たちの中で、価値観の問題を、広げる形での価値観をどうした
らいいのかを同時に考えていかなくてはいけないと思いました。
○所 ありがとうございます。逆の順になってしまいますが、まず、論文主義、論文で評
価するというのは、実は最近のことです。もちろん、20 世紀に入ってからですが。そ
れまでは本を書くということが学術成果だったと思います。それから、往復書簡みたい
な形で(研究成果)が公表される形で科学技術が進んでいった。貴族さんがやっていた
とか、パトロンがいてやっていて、科学技術を職業とする人たちがいなかったというこ
ともあるのでしょう。だから(本を書くことで)大きなスコープで大きな体系をつくる
ことができ、それを我々は教科書として 17 世紀、18 世紀、19 世紀の成果を今でもちゃ
んと読むことができるということになっています。
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ワークショップ報告書
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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10 年後、20 年後に、誰が個々の論文を読むかといったら、読まないですよね。技術
の断片ではなくてもっと大きな、まとまった成果を、我々はこの世に生を受けたのだか
ら、何かやらなくてはという、そういう面からの本の重要性があると思います。教科書
でもいいから一度書くとその領域が全部見えて、自分のやっていることの重要性という
のが本当によくわかるので、私の研究所でも徹底的に本をちゃんと書けということを指
導しております。
伸びしろの件は、アメリカとかヨーロッパでは、大体 5%から 10%ぐらいは自由裁
量という形があり、それは途中からの計画変更に使ってもよいし、プロジェクトマネ
ジャーが新しいものを興してもいいという形で使われていると聞いています。これは暗
黙のコンセンサスが彼らの社会にはあり、それが実はよりよいものをつくっているとい
う合意もある。細かなことでの合意ではなくて、使い方に対しての合意があるというこ
と、そういう裁量権があるということです。
それから、研究成果はリニアには出ずに、場合によると、ぼこぼこになった後にぼんと出
てくることもあるので、上に立つ人というか、マネージをする人が我慢しなければなら
ない、自分が受けとめて我慢しなければならないところも非常に重要だと思いました。
と思います。
○前田 今日は民間企業の方に来ていただいているので、例えば実際に戦略をつくってい
らっしゃる方にお話しいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○宮原 CRDS さんの邂逅のやり方は、我々も参考にしなければいけないなと思ってい
ます。
気になっている点は、サイエンスであれば、おそらくグローバルで突き詰められると思う
のですが、社会的課題となりますと、日本での社会も違うし、アメリカも違う、インド
も違っており、グローバルな視点で社会的課題をどう捉えるかは、ひとつの課題だと思
います。CRDS さんからアイデアがありましたらお聞かせいただければと思います。
○前田 グローバル視点ということで(CRDS の事例を紹介すると)、お手元に社会的課
題の一覧という A3 の資料 1 を配ってあります。課題解決型アプローチのスタートとし
たものですが、ここでは俯瞰的に社会課題を見ようとしており、この段階では日本も世
界もないな、グローバルな視点であげたつもりです。この資料は、RISTEX の津田さ
1 本報告書 別紙1
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総合討論
○原山 論文は成果とみなされる部分を出しているのですが、
その背景には失敗した体験、
また、仮説までいかなかったものや、何か見つけたけれども今のトレンドではないもの
という、それらの積み重ねというのは山ほどあります。しかも、公的なお金を使ってい
るけれども、それが可視化されていないことが問題であり、その辺をシェアできる場を
つくっていくのが、公的なセクターのひとつの役割ではないかと思っています。そのあ
たりについて意見をいただければと思います。
○所 今はリポジトリーという形で、論文が査読を通らなくても公開されます。そういう
中には失敗も全部エビデンスとして出されるので、こうした方法もあると思います。歴
史が後で見てくれる、という形になると思うのですが、そういうことは現実にはできる
ワークショップ報告書
136
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
んが説明された中にある、社会課題探索の結果も踏まえていますので、世界的な白書で
すとか、広く見たものを取り入れています。ここが出発点なのですが、先ほど笠木副セ
ンターから説明がありましたように、テーマを絞っていく際には、日本の中で顕著なも
のということで3つのテーマ、エネルギー、社会インフラ、健康長寿を選んだことにな
ります。グローバルには見るけれども、CRDS は国レベルでの研究開発戦略を考える
ところなので、日本の国内にフォーカスした次第です。
○有本 社会というものが科学技術政策のスコープに入ったことで、社会とは一体、何か
ということを問われるようになった。だが、ローカルな地方都市のニーズもあるし、ナ
ショナルレベル、アジアレベル、グローバルレベルもあり、極めて難しい。社会技術セ
ンターで社会実装の実績があるのは、限定的な社会にしているからです。私はせいぜい
30 万人くらいの都市だと思うのですが、ハンズオンで首長が見え、その首長が本気で
やってくれることが我々に伝わるとのは。
しかし、社会技術センターの(大きさの)ものを、今度は数百万人の地域で実施するには、
例えば近畿地方でどうするかというところにステップアップできないかというところ
で、現在、模索されていると思います。津田さんにも是非コメントをいただきたいです。
一番難しいのは、我々 CRDS でも 2 つのアプローチを検討してきましたが、
(こうした研
究開発戦略を)社会につなげていくには、今度はファンディングとして展開することに
なるわけですが、その全体を受け皿にするファンディング制度がまだない。そのため、
バラバラにならざるを得ない。
SIP でもそうです。私は、SIP の一つである自動走行システムの推進委員会の委員を
担当していますが、各省がバラバラになっているものをどうインテグレーションするの
かというところが課題です。
○津田 有本さんのご指摘のとおり、我々は、コミュニティベースのアクションリサーチ
と言われているものを推進しております。アクションリサーチは、局所依存といいます
か、そのときの課題解決には非常に重要で効果的なアプローチだと思いますが、それを
いかに普遍化させて他地域にも展開可能なものにするかというのは、非常に難しいとこ
ろです。なるべく科学的根拠に基づいたものとして、誰でも使えるようなものにしてい
くというのが我々のプロジェクトの目標になっています。
先ほどのグローバルな視点ということに関しては、おそらく我々が取り組む課題は、
アジア共通の課題が多いのではないかと思います。例えば高齢化の問題もそうですし、
環境、地球温暖化の問題もそうです。それから、防災という面でも多分、いろいろな共
通課題があると思います。日本の方法論やモデルが、最終的にはアジアなどにも輸出で
きるようなモデルにできたら一番よいと思います。まだ、そこまでいった事例はないの
ですが、例えば津波からの防災という面では、いろいろな事例が非常に良い結果を生ん
だこともありますので、そういったものをどんどん海外にも移していくというようなこ
ともやっていきたいと思います。
○B(行政)
本日集まった方には立場の違いがあり、また組織の規模によってできる
こととできないことがあると思います。例えば原山先生は、オールジャパンで考える
CSTI の議員でいらっしゃるから、一部の人だけを幸せにしますとは言えないのではな
いか。ただし、ImPACT の 500 億円、SIP の 500 億円は国全体の科学技術関係経費の
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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3 兆何十億円から比べると小さい額です。科学技術関係経費も国の総予算の 90 兆円か
ら見ると少ない額で、それで全部ができるわけではないけれども、そこでなるべく多く
の人を幸せにしなければならないというところが、つらいところだろうと思います。
例えば JST の戦略創造事業は、新しい科学の流れをつくるという、まさにそこをやっ
てきました。弱かった点はビジネスモデルができていないことで、ビジネスにつながっ
ているものは多くはないです。けれども、それをやろうとしており、あるいは、そのや
り方をどうするか、どう幸せにできるかを考えているわけです。それが、おそらく原山
先生のところでは PM や PD というマネジメントしてくれる人に注目する形となって
いるのだろうと思います。戦略創造事業では、さきほど岩渕さんも言われたように、実
際に PI でやる人に注目している。持っているリソースと立場によって変わらざるを得
ません。CRDS では、オールジャパンで考えオールジャパンで提言し、だけれども最
後の JST は何をやれるかと考える、つまり大きなビジョンで見るけれども、最後の落
としどころとしては JST で何ができるかを考える。社会技術センターは、幸せにする
○所 企業で研究をやる場合、研究成果が出たからおしまい、ということはないですよね。
必ずどこかでビジネス、自社でなくても最近はいいわけですけれども、どこかで何かビ
ジネスにしていきます。あるいは、先ほど IBM の川瀬さんが言われましたが、小さい
ものであれば特許だけ書いておく形でよしとすることが、コスト感覚としても見合って
います。いかに大きなチャレンジをビジネスの側でしてもらうか、全てが無理でも、そ
ういう面をどうやって CRDS の研究戦略の中から出していくかは、これから重要なポ
イントになっていくと思います。
そのときに CRDS の提案を受け止めるのが総合科学技術イノベーション会議だとい
うのであれば、それでリンクがとれます。今だと経済産業省さんとはろ難しいかもしれ
ないですが、内閣府だったらできると思うので、そういうパスを考えておくというのは、
現実的な打開策になるのではないかと思います。
○前田 学術的価値と経済的価値の連続性というポイントを出していただきましたけれど
も、これに関して原山先生、続いて文科省の岩渕さんからも何かコメントをいただけれ
ばと思います。
○原山 全てがビジネスに伝わるものでもなく、必要な時にビジネスの目が入ることが大
事だと思います。研究者や PI そのものがビジネス化するケースは非常にまれなのです
が、ビジネスの場に引っ張り込んで来られる可能性を持たせなくてはいけないと思いま
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総合討論
対象をぐっと絞り込み、成功に結びつける。こうした対応性が必要なのではないか。
どの程度の規模で何をどう実施するか、建前と実際にできることとをタテとヨコで考えて
いき、多様なことに迫っていかないと、なかなか(課題は解決)できない。民間の方は
もう少しクライアントの制約があるのでしょうし、また COCN は少し別の観点になる
のでしょう。こうしたトライアルをどう評価していくか(が重要と考えられます)
。
先ほどの評価論では、論文以外の流れが出てきたとか、新しいビジネスとか、多様な
評価をして、あとは責任の問い方になると思います。ImPACT や SIP についても、
(プ
ログラムを運営する側が)責任をとるようにすると、
(研究の)実施がやりやすくなる
と思います。
ワークショップ報告書
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す。日ごろから、お茶を飲みながら話すなどして、ビジネスをつくり込むことを可能に
する環境が大事で、ではどういう仕掛けをつくるかというのが、考えるべき点なのだと
思います。先ほどBさんがおっしゃった多様なシステムというのが重要で、研究者も自
分の今いるフェーズに合わせて一番マッチしたところに応募することができる、しかも
出口志向の場合もあれば、そうではない場合もあるという、そういう多様性というのを
いかに担保するかというのも政府の役割だと思うし、その中のウエートづけもしなくて
はいけないと思います。
それから、さきほどのグローバルとローカルの話ですが、課題そのものは、いろいろ
な国の人と話していてもほとんど同じです。
課題はグローバルな共通の課題なのですが、
それに対する解はスペシフィックなもので、ローカルかもしれないし、国かもしれない
し、地域かもしれないです。解を出すことを歴史的な背景やいろいろなコンテクストの
中でやらなくてはいけない。それらの解を見出した時に、RISTEX のようにある種の
共通分母的なモデルを見出す作業をしなくてはいけない。それには、プラスの投資をし
ないとできないと思います。そして他の地域でのスペシフィックなものに落とし込める
かという、その試みもしなくてはいけない。その対象は、日本かもしれないし、海外か
もしれない。プラスアルファの伸びしろを付けないと、個別解で終わってしまうように
思います。
○有本 さきほど申し上げた SIP の自動走行システムでの経験ですが、ワーキンググルー
プも含めて、非常にうまく回り始めています。自動車会社の人や、各省の課長クラス、
電波の規制の担当者なども出てきています。内閣府の方が一生懸命、事務をやっている
わけですが、これをもう少しプロフェッショナルにする必要がある。また、各省の課長
が 1 年か 2 年で変わってしまうので、総合科学技術会議レベルでまとめるのは、もの
すごくしんどいですよね。
また SIP での良いケースが集まってくると思うので、これらをメタフェーズで見た
時に、どういうやり方がいいのか、マネジメント、ファンディングの仕方などを、ぜひ
CRDS でも分析したいと思います。SIP の運営の仕方をもう少しインスティチューショ
ナルなものにし、他のところのマネジメントや運営に移転していくような仕組みにして
ほしいと思います。
○原山 さきほど RISTEX に対して申し上げたのと同じことを、みずからもしなくては
いけないのだと思います。SIP は、ファンドとしては科学技術予算全体からみると微々
たるものですが、実施することがまず大事です。実践の現場というのは試行錯誤であり、
大変なことだと思います。それをやり放しではなく、社会実験として見て、そこから何
を学ぶかです。
CSTI は初めのきっかけはつくるけれども、半永久的にうちでやるべきとは思ってい
ません。仕掛けをつくり、受け取ってもらえるものは投げていくというやり方になると
思います。それはファンディング・エージェンシーになるかもしれないし、そうでない
やり方を考えなくてはいけないのかもしれない。でも、初めにやらないことには何も事
が起こらないわけです。
CSTI の事務局が(各 SIP に)張りついているのは、CSTI としてのコミットメント
があることに加えて、PD の人に対しても我々も責任をとりながら一緒にやりますとい
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うことを示しているわけです。やり放しではないこと、いかにその次のところに持って
いくかという段階をやりたい、やらなくてはならないと思っています。
○友田 CRDS さんの課題解決型アプローチと未来創発型アプローチは、参考にさせて
もらいたいと思うのですが、それぞれの検討結果の内容がかなり違っています。すなわ
ち、エネルギーと社会インフラ、心身、個人に関するものが課題解決型アプローチから
出てきており、未来創発型では、医療と病院の変容、人と機械、人の能力とコミュニケー
ションとなっています。基本的にはアプローチは別であっても、10 年後なり先の未来
のコンセンサスが同じであれば、アプローチは違ってもほとんど同じものが出てくるは
ずだというのが、我々がフォーサイトを行った時の感覚です。
要は、我々で実施したフォーサイト1も2も、おおむね一緒の結果になる、世界が見
ているのもこれと同じになるということです。これは先ほどの日本かグローバルかとい
う議論にもなりますけれども、技術を商社的に分析した結果においても、世界が見てい
○笠木 所さんのコメントでは、我々が試みた2つの方法について、どちらかといえば好
意的な評価をいただいて、特に課題解決型研究開発というのは歴史的な必然であるとま
でおっしゃっていただいたのですが、一方で、複数の方々から、それぞれの方法に問題
があって、例えば社会的な課題を深掘りをしていくというプロセスと、一方で基礎研究
の課題をしっかりグリップするというところには大分ギャップがあるとか、そういう意
味で、未来創発型の方も必要であるというような話もあったのでしょうか。
評価についてのお話は素晴らしいご指摘で、論文主義ではなくて著書であるとか、新
しいジャーナルの発足というようなことは、私は炯眼だと思いって聴いておりました。
またビジネスプロポーザルというようなものに対する評価も、今後は政策レベルで進行
していく必要があります。しかし、(総合討論の図で)一番上に書いてある、資金投入
に至るプロセスの正当性とか、透明性が担保されているということ(の意味)を、実は
必ずしもじゅうぶんに理解されていないのではないかと思います。
岩渕さんの方ではそれを何とか担保しようと、新しい戦略創造事業のデザインをして
いるわけです。検討会の場でも私は申し上げたのですが、必ずしも SIP あるいは ImPACT と違った形をとらなければ、文科省では基礎研究をファンドできないというよう
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総合討論
るところと日本が見るべきところは同じであるはずだというのが個人的な見解です。し
たがって、山の全容、山の頂上がどこかというのが決まっていないのではないかと思い
ます。アプローチが違っても、つまり富士山を静岡から登っても山梨から登っても同じ
ところに行き着くはずであるのに、何で違うのかを単純に疑問に思います。
○笠木 課題解決型であるべき姿を描いたシナリオ書や、
そこに含まれるいろいろな要素、
システム、機能を、エネルギーや社会インフラといった題名が全部表しているわけでは
ないので、どちらのアプローチにおいても描いている山の全体像が互いに相反している
わけではないと思います。双方のアプローチから出てきた(部分的な)セットが違うと
いうことで、あるべき姿として描いている(全体の)話は、双方に共通に存在している
と思っています。
○前田 もう一回り大きな絵を描けば同じになると思うのですが、
(2つのアプローチで
は、)やや対比的になることを狙った面も少しあります。
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な考えは必要ないのではないかと思っています。基礎研究を目的を持って進め、社会の
課題の解決につなげるというやり方について、多様な提案のプロセスがあり得て、
(そ
れらのファンディング事業を)内閣府あるいは総合科学技術会議で実施しても、あるい
は文科省で実施しても、経産省で実施しても、両方で実施しても良い。もっと多様な形
で研究開発のプログラムをつくってもいいのではないかと思います。そういうことが、
今日のいろいろな手法の紹介の中からくみ取れるのではないかという気がします。結果
的にそういうことがちゃんと見込まれたときに、
(総合討論の図で)上に描かれている
風船の二つがちゃんと見えてきて、右側の風船のところは多分、評価になると思うので
すが、こういう形を是非つくっていただきたいですし、我々も是非応援させていただき
たいと思っております。
○所 私は友田さんのご意見には反対でして、山は見た方向や、見る人でも違うのだと思
います。それをどう表現すると政策的に受け入れやすい表現になるのか、
研究者が頑張っ
て研究をやるぞと思うか。どうやってエンカレッジし、賛同者をふやしていくかという
ことなのであり、事実(注:山そのものの姿)を超えた表現というのが、これから必要
なのだと思います。そういう意味では、最初の方のアプローチは割とスタティックとい
うか、理性に基づいている、基づき過ぎてしまうと言えます。ところが、二つ目の未来
創発型は、
「こういうふうにしていこうよ」という意思があらわれています。どちらが
いいかを判断するのは難しいのだと思いますが、そうやって日本を動かしていくという
姿も必要なのではないかなというふうに持っています。
○友田 ありがとうございます。私が言っているのは、
アプローチに対する評価ではなく、
出た結果の違いという点を言いたかったのです。ただ、先ほどのご説明でそうではない
と、もっと前後、全体を見た上で抽出しているということなのですが、結果のところだ
けを見ると違和感があったのだと思います。
○所 結果が同じでなければいけないのは、どうしてなのでしょうか。時間的にも、24
年度の検討結果と 25 年度の検討結果は違いますし、おそらく山自体も、どういう証拠
でそうなったということも違っていくのではないでしょうか。両方(のアプローチから
出るもの)は違っていて構わないと思っています。答えは絶対に一つではないというこ
とだと思うのですが、違いますか。水かけ論になってしまいますね。
○B(行政) それは、「同じだ」とおっしゃっているのだと思います。要するに見ている
範囲は一緒でも、人間って同じものを見ても、どこにそのときの関心がいくかという問
題があるから、手法の違いからくるよりも時代の少しの違いで、より後のほうが健康と
か、そういう人の関係になっていったのは政策的ないろんな背景があるような気がしま
す。前のほうはそうでない。ですから、隣人は全部一緒でも、どこが見えているかとい
うのは、そのときのマインドセッティングによって変わるのではないか。そういうこと
をおっしゃっているので、余り変わらないのではないかなと思っています。
○原山 今の議論ですが、このプロセスの中でも誰が中に入って議論するかによって大分
違ってくると思います。CRDS の場合にはかなり問題意識を持った人たちなので、こ
ういう結果になったのだと思います。未来創発の方はどちらかというとウィッシュ的な
ところがあるので、かなりノーマティブな話まで踏み込んでいます。前者の方は割と先
ほど冷静に、理で詰めていくところがあって、エビデンスベースになっているわけです。
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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その違いも最終的な姿にインパクトを与えたのではないかと思います。
○前田 同じ頂上を目指しているのかもしれないけれども、課題解決型は頂上ではなくて
五合目で、五合目まではみんな行かなければいけない。その先は富士山よりも八ヶ岳型
で幾つかオプションが分かれる感じでしょうか。何か折衷案的なところですが。
○C(行政) お話を拝聴していて感じたことを申し上げたいと思います。
まず、NISTEP の小笠原さんのスライド #15 ですが、
「社会課題の解決には、多くの
場合には社会的手法による解決が主となり、技術的課題にブレークダウンされるものが
限定される」とあるのですが、こうしたアプローチの良い所として、制度とか政策とか
教育が(技術と)同時に議論できることがあります。おそらく、このように議論をして
いかないと、かなり良い技術を開発しても、それが問題解決にきちんとつながっていく
ことにはならない、逆に問題解決に必要な技術開発の課題というのも出てこないという
ことがあります。また、(スライド #15 の)3 番目の四角ですが、「技術課題にブレーク
ク型研究所を自称しており、コントラクトリサーチのファンディングを通じた研究開発
を推進していくことが JST のある種の存在意義だと思います。そういう観点から、未
来創発型アプローチを通じた、新しい重要なイシューのあぶり出しをやっていただける
といいと感じております。
○小笠原 私どもが実施してきたことに関しても、悩んでいるところは(CRDS 他の機
関とも)かなり一緒だと感じております。我々の場合は少し科学技術寄りに落とさなく
てはいけないということがあるのですが、先ほどCさんからもご指摘がありましたよう
に、一つの社会課題というのは教育も含めて幅広く解決しなくてはいけない、相互的な
セットで解決しなくてはいけないということがあります。こうした方向性も含めて何か
方向性が見つけられたら良いと考えております。
また、IBM さんが GTO の他にコーポレートビジョンというものを数年に 1 回設定
して、大きく技術者も経営者もそちらの方向に振ることをやっておられ、
最近ではスマー
ター・プラネットという概念がありましたが、そういう全体の流れを位置づけるような
コンセプトが打ち出せると、研究も社会も同じ方向を向いていけるということがありま
す。そういうキャッチフレーズを、内閣府さんも含めて CRDS さんや我々でいろいろ
と検討できたらと考えております。
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6
総合討論
ダウンされた場合でも、最先端の科学技術が適用される場合よりも、既存技術を適正に
使用することによって達成される場合が多い」ということですが、既存技術をいかに適
正に使用するということは、非常に重要な視点だと思っています。政策研の議論で、こ
ういう課題が出たことは非常に良かったと思います。私も政策研のオリジナルメンバー
なので、ぜひ、政策研はこういうところをあぶり出してほしいと思います。
いわゆる課題解決型と未来創発型のアプローチの中で特に重要だと思ったのが、
RISTEX の津田さんのプレゼンテーションの中では、「自然科学系の技術の社会化の観
点から、研究開発を推進する」と書かせていただいていますが、研究開発段階ではなか
なか想起できない問題が、必ずというと言い過ぎかもしれないけれども、あり得るとい
う点です。そこを予見しながら研究開発を推進することが未来創発型では重要であり、
そういうところで CRDS で研究課題を提起していただければ、ファンディングの方で
は、社会技術研究開発の新しいファンディング先となる。JST はバーチャルネットワー
ワークショップ報告書
142
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
○中塚 先ほどもお話に出ていた SIP では PD が、また ImPACT で PM というように、
新しい人材がこれから出てきますし、その人材が技術とマーケット、技術と社会という
のを結びつける非常に大事なキーパーソンになっていくのだと思います。また、これは
結果論ですが、先ほどもご説明したように、10 件の SIP の課題の中で 7 件は COCN が、
何らかの形で絡んでおり、実は PD のうち3人の方は COCN のプロジェクトリーダー
でもありました。外からお招きしたリーダーも入れると 4 人になります。COCN のプ
ロジェクトは、小さなものではありますが、新しい若い世代を含めて、社会と技術を結
ぶ人材育成の場という観点も意識して課題を選んでいくとうことも非常に大事ではない
かなと思います。
○川瀬 基礎研究の成果をどのようにして世の中に出していくかは非常に難しい問題だと
思いますが、所先生もおっしゃっていたとおり、新しいエリアをつくるという点が、確
かに基礎研究として一番いい点だと思います。短期の研究成果を求められる場合は、研
究をやっているときからキャッチャーを意識する、
研究成果を誰にキャッチしてもらう、
というところが明確になっているはずです。三菱電機の方もおっしゃっていましたけれ
ども、事業部と組んでやるときは事業部のコミットメントをもらって下さいというのは、
非常に短期の場合だと思います。一方、基礎研究は、上手くいくかどうかもわからない
し、出る結果もどちらに出るのかがよく分からないわけですから、キャッチャーを決め
にくいというのがあると思います。ただし、研究成果はある程度のタイミングで幾つか
が出てくるはずなので、それをキャッチする仕組みはつくっておかないと、単にやりま
した、計画で言ったとおりの成果が何か出ました(とはなりますが)
、社会には還元さ
れないのではないか。そこをフォローアップしていくようなもう一つ別の仕掛けとして、
基礎研究を引き継いで事業まで持っていけるプロジェクトマネジャー、ビジネスができ
るプロジェクトマネジャーを連れてくればいいのではないかと思います。
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7. 閉会挨拶
○吉川 貴重な時間をいただきまして本日の感想を申し上げたいと思います。本日のよう
な議題を取り上げるようになった歴史、なぜ、こうした議論が出てきたのかをお話しま
すと、科学研究がどのように社会に還元されるか、先ほどの所さんの話しでいうと学術
的価値が社会的価値になるかということを定式化したいということが、まずあったわけ
です。では社会的価値というのは一体何なのか。それは社会が期待することではないの
かということで、
“社会的期待”という概念を出しました。社会的期待というものを掘
り起こせば、それに向けて行く人が科学者にも出てくるだろう。これは全部が行く必要
はないのですが、出てくるだろうということです。
それでは、社会的期待とは何だろう。私たちは社会的期待の発見研究という学問分野
をつくろうということにしました。そして、何といっても、社会科学者あるいは人文科
学者が社会的期待というものを実は取り扱っている。しかし、残念なことに人文科学者
や社会科学者は、過去の出来事を説明することに力をかけていて、社会的期待という将
来、起こってくるようなものをあまり見てはいません。社会的期待には幾つものフェー
ズがあり、明示されているもの、潜在的なもの、浮遊しているものもある。そういった
もの全体を呼んでいるので、一種の予測問題になるわけです。予測問題というのは科学
として非常に扱いにくい。気候変動などでは予測をやっていますが、特に社会科学では
予測をやるのは品がないとされ、分析までしからないことになっています。
それを何とか壊さなければいけない、というのが今回のプロジェクト(注;社会的期
待に応える研究開発戦略の立案方法の検討)の根幹にあったわけです。社会科学者の協
力も求めてみたのですが、それは十分にできておらず、このプロジェクトについて社会
科学者がどういうふうに参画するが、非常に大きな課題として残されています。
もうひとつ言うべきことは、社会的期待というものを設定し、それに向かって歩けと
科学者が言われたときに、それは科学者が自分の研究課題の選択の自治を持つという科
学の基本的な自由に抵触するのではないかという話です。それは外形的には抵触するよ
から、科学研究で一般的に行われていることです。したがって、課題を科学者が発見す
るこのプロジェクトは科学研究の自治を犯すものではありません。これを成功させるた
めには研究者の間の真の協力が必要で、それは新しい挑戦です。いまのところ全部を
これにするのではなく、CRDS として出す戦略のテーマは 7 対 3 の割合としています。
7は解決者としての科学者が自ら社会的課題を設定してプロジェクトを作る、3 は発見
され合意された社会的期待解決を目指すプロジェクトです。これでやってみようという
わけです。実は、3 の割合でやる方は、社会的期待というものに誘導されて科学者たち
が集まり、知的好奇心だけで研究しているのではなく課題解決を自発的な研究の動機と
するスタイルの研究をする科学者が出てきた時、その人たちをどういうふうに社会的に
遇するのか、その人たちをどうやって育てるのか、あるいはその人たちがどうやって普
通の科学者と協力するのかというようなノウハウが、次第に方法論として実験的に明ら
かになってくるだろうと考えられます。
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7
閉会挨拶
うに見えます。しかし、課題を解決する科学者がそれを与えられるという形があるとし
ても、その課題が解決者自身ではないにせよ科学者によって発見されたものであるとす
れば、それは科学コミュニテイの中で科学者が発見し、それを科学者が解決するのです
ワークショップ報告書
144
「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
科学研究の方法論を人類は把握していて共通の財産となっているのですが、イノベー
ションの方法論は多くの努力がされながら歴史的に残っていないのです。イノベーショ
ンの方法論というのを我々人類がまだ手にしていないとすれば、それを一つの理論ある
いはノウハウとして歴史的に継承していくということも非常に大きな問題です。こう
いった方法論的な面は、今日は話題になっていなかったのですが、たいへん大きい問題
だと考えています。これ(イノベーションの方法論を確立すること)は、社会からの投
資で行われた科学の基礎研究というものが、社会に還元されるための一つの責務だろう
と考えています。
本日の話で非常に重要なことは、まず、政治があり、総合科学技術イノベーション会
議があり、各府省があり、ファンディング機関があり、そして実際にそれを使う大学、
研究機関があり、そして研究者がいるという、いわば縦型のパスがあります。企業では、
そのパスはずっと短いのだと思いますが、経営者がいて、研究部があって、研究者がい
る。そういう大きな社会的構造があるわけです。そのアウトサイダーのような形で、イ
ンディペンデントな助言者としてのアカデミーとか、シンクタンクというのが存在して
います。こうした形は、今の日本では、少なくとも外形的にはできてきているわけです。
さて問題は、例えば政治や科学者といった、こうした各セクターがどういう構造で何
を決めるかということと、セクター間の関係をどうするかということ、それは役割と協
力構造ですが、この二つの問題がいわば解けていないということです。
解けていない状況で、例えば SIP というものをやると、SIP には各セクターの意思
決定や、あるいは研究の行動者が入ってくるのですから、たいへん難しいものを内包
しているわけです。SIP の悲劇などと言ってはいけないのですが、そうならないでほし
いと思います。SIP には大きな期待がかかっているし、結果が見えているものもあると
いうことではありますが、本当に結果が出るということは難しい面があると思います。
SIP のテーマを見てみると、自動走行システム以外は非常にまだ若いテーマです。自動
走行というのはご存じのように、何十年と自動車業界がやってきたわけですから、これ
はかなり可能性が見えています。難しいテーマを責任者がどのようにやっていくのかが
たいへん大きな問題だと思います。ImPACT も難しいです。個々のセクター自身のミッ
ションと構造をどう明確にするか、それから、つながりをどうするのか、この二つが課
題です。
次に言えることは、科学技術の政策というものは、マクロな政策であるということで
す。最後の実行者は研究者ですけれども、ここでのミクロな政策を決めているのが実は
研究機関とか、研究グループです。ミクロからマクロまでをつなげること、これは科学
においても難しいのですが、どのようにつなげるかが非常に難しいわけです。小笠原さ
んの話にあった水の話はミクロな政策で、科学の専門家でなければわからない。こうい
うミクロな科学政策というものと、専門の一つ一つは分からなくてよいから、全体を俯
瞰できるマクロな科学政策の両方が必要です。
どうやって幾つもある階層の中でそれ
(科
学的知識)が伝わっていくのかという仕組みを、今日は実感的には分かったのですが、
それをもう少し深めて、あるいは定型化し、そうしたのを前提として協力するというこ
とが望ましいと思います。
こうした政治から科学者までを含めた科学者コミュニティが自己変革を遂げるための
感受性をどこが持つのかは非常に重要なことです。残念だったのは、日本版 NIH とか、
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「社会課題 / ニーズをとらえた研究開発戦略の立案方法等に関するワークショップ」
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日本版 DARPA という言い方で、これは外国のまねをするということを公言しているこ
とです。日本は、明治以降も営々と日本的なものをつくってきたのに、それらに依拠し
た方法論が出てこなかったということを意味していて、これは我々が反省しなければい
けないことです。何か新しいことをやろうと思った時に、日本版何何というのは使いた
くないと私は思うし、外国ばかりを見るのはもうやめにしようではありませんか。
本日のような空間的な協力と時間的な継続性の積み重ねが大事です。本日お集まりい
ただいた方々は各組織 / 機関のいわばステークホルダーですので、是非これを共有し、
今後の発展に持っていければと思います。本日は本当にありがとうございました。
7
閉会挨拶
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■社会的期待・邂逅に関する横断グループ メンバー■
☆吉川 弘之 センター長
☆笠木 伸英 上席フェロー
◎前田 知子 フェロー(政策ユニット)
岩城 拓 主査(戦略推進室)
中本 信也 フェロー(ナノテクノロジー・材料ユニット)
飛田 浩之 フェロー(ライフサイエンス・臨床医学ユニット)
☆総轄責任者、◎リーダー
CRDS-FY2014-WR-06
ワークショップ報告書
「社会課題/ニーズをとらえた研究開発戦略の
立案方法等に関するワークショップ」
平成 26 年 8 月 August 2014
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター Center for Research and Development Strategy
Japan Science and Technology Agency
〒 102-0076 東京都千代田区五番町 7 番地 K s 五番町 10F
電 話 03-5214-7481
ファックス 03-5214-7385
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