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約2.2MB - 一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会
管路内設置型下水熱利用システムの実証事業 [H27年度成果概要] 積水化学工業株式会社 環境・ライフラインカンパニー 1.本事業について 1-3. 実施地域 1-1. 事業概要・目的 ヨークベニマル若林店 (スーパーマーケット) 住所:宮城県仙台市 若林区若林二丁目7番35 管路改築更新技術と併せた下水熱利用システムについて、実使用下に おける評価検討及び下水熱利用事業を普及促進するための課題整理 ルート:仙台駅よりタクシー15分 1-2. 事業背景 震災から1ケ月後、国土交通省により「下水道地震・津波対策技術検討 委員会」が設置され、第3次提言(H23.8.15)の中で、下水道施設の本 復旧にあたっては『地域の復興のシンボルとして、将来に希望を描ける ような拠点として、また地域の活性化に寄与する施設として次世代の 技術を取り込む』との基本方針が打ち出された。また7月には,委員会 の下に「復興支援スキーム検討分科会」が立ち上げられ、この分科会 の中で当社が「管路の下水熱利用システム」を仙台市に提案し、平成 24年3月までフィージビリティスタディ(事業化に向けた調査:以下FS)が 行われた。 FSでは当初、復興に資するという目的実現のため、仮設住宅や復興住 宅への下水熱供給を念頭に検討を進めた。しかし、費用負担の問題な どの現実的な課題に直面したため方向を転換し、復興住宅予定地に 隣接して建設が予定される商業施設(飲食店)を対象に検討を進めた 。 最終的に、国交省の交付金と資源エネルギー庁の補助金を活用し、熱 利用に係るイニシャルコストを当社が負担して、仙台市との共同研究と することで、実証事業が実現した。 現地地図と設置エリア 1-4. 実施体制 担 当 役 割 仙台市 システム対象下水管渠の提供 積水化学 システム構築・データ収集・整理 ヨークベニマル様 ヒートポンプ設備機器設置フィールド提供,給湯利用者 ゼライス様(地権者) 当該共同研究のゼライス様所有地での実施承諾 共同研究者 協力者 1 1-5. 1-6. 事業の特徴 設備概要 従来型システムとの違い 本システムは、年間を通してほぼ一定の安定した温度が保たれている下 水道の特性を利用し、市街の広範にわたって設置されている下水管路か らエネルギーを回収し、再生可能なエネルギーとして効率的に活用する。 機器類 補強材入り 熱回収管用プロファイル スペック 給湯加熱能力:35.4kW(50Hz) 貯湯タンク 貯湯量:2800L(4m3) 熱源水循環ポンプ 200V,2.2kW ブライン一次配管 延長:89.5m(埋設深さ700~1000㎜) 給水 下水管 給湯利用 貯湯タンク 熱源水 循環ポンプ 追炊き ポンプ スーパーマーケット (㈱ヨークベニマル様) 一次側配管 更生管 仙台市との連携したポイント 水熱源ヒートポンプ 水熱源ヒートポンプ 合流式 熱回収管 本施設の工夫点 B-DASH事業にて実証を行っている技術ではあるが、実際の下水道管 には,取付管の接続箇所や屈曲箇所が存在する為,それらを考慮して 熱回収管の割付配置等を設計する必要があった。 負荷条件 ・調理場等での給湯利用 ・利用温度 40℃ ・利用水量 4600 L/日 仙台市向けシステム概略図 本事例を実施する場所の選定にあたり、管路更生の有無・管径・延長と いった下水道事業者側の条件の他に、熱需要者を探し出す必要があり、 候補地選定に最も苦労した。 熱供給先が食品を扱う商業施設であったことから,「下水熱」というイメー ジの問題や、先行事例がないことから、本事業を理解していただき、協 力を得るまでに仙台市のご担当者と共に時間をかけて説明した。 本事業の場所が開発行為地区であり,既に開発事業が始まっていた為、 開発事業者との早急な調整が求められた。 システム概要 ・用途 ・管路径 ・管種 ・管路長 :商業店舗(㈱ヨークベニマル様)での給湯利用 :Φ1200㎜ (更生後 Φ1030㎜) :雨水・汚水合流式下水管 : 44.5 m 管路更生と同時に熱回収機能を付加 また、本システムは、新管敷設時に対応出来ると共に、需要が高まって いる老朽管路更生システムと組合わせることで、耐震性能を付加できる など、機能を高度化した管路として資産価値を上げることが可能。 システム概略図 更生管一体型概略図 従来型システムとの違い 2 施工,システム設置状況 (管更生,熱源システム工事) 施工前 施工後 熱回収本管 (PE) 更生管(PVC) 熱回収管(PE) 腐食劣化・曲がり散見 貯湯タンク 熱回収管接合状況 制御盤 2014年2月の降雪時の様子 ヒートポンプ 熱媒体循環ポンプ 3.平成27年度の事業 2.平成25~26年度の事業内容 3-1. 平成27年度補助事業の内容 年間性能データ(ヒートポンプCOP) 500 5 400 4 300 3 200 2 100 1 0 0 11月 12月 1月 2月 消費電力(kWh) 3月 4月 5月 6月 給湯出力(kWh) 7月 8月 9月 10月 ヒートポンプCOP(-) 消費電力,給湯出力,ヒートポンプCOP年間推移 ヒートポンプCOP(-) 消費電力,給湯出力(kWh/日) 2013年11月~2014年10月までの性能データを示す。 年間通じて安定して稼働しており、平均のCOP=3.82と良好な運転となっ た。また、降雪後の雪解けの影響もなく、安定稼働を継続中。 ・付着物などの性能への影響評価 :定期的な管路内チェックとデータ検証 ・維持管理性評価 3-2. 目標・仮説 設備費用回収年を10年となるようなランニングコストを実現すること 目標 「消費電力量対従来品15%減」 3-3. データの分析・評価手法 ●日積算給湯能力=(給水-給湯温度差)×(給湯流量)×(比熱) ●CO2排出量(ton)=消費電力量(kWh)×CO2排出原単位(ton/kWh) ●消費電力量削減量=従来システムの消費電力量-本システムの消 費電力量 ●投資回収年=(システムコストの増分)/(従来システムのランニングコ スト-本システムのランニングコスト) 3 3-4. 実証データ グラフ1.下水温度,外気温度 下水温度は年間通じて安定しており、特に冬季において気温との温度 差が大きく、給湯利用の場合は効果を得やすい。 グラフ2.消費電力,給湯出力,ヒートポンプCOP年間推移 昨年度同様良好な運転となった。(平均COP=3.66) グラフ3.従来機器(空気熱源HP)とのCOP比較 同規模の空気熱源式より高いCOPを維持しており、特に冬季の効果 が大きい。 グラフ4.従来機器(空気熱源HP)とのCO2排出量比較 同規模の空気熱源式よりCO2削減ができ、対環境性も高い。 4 25 450 下水水位(mm) 外気温(℃) 20 外気温度、下水温度(℃) ・月別平均下水温度は年中通して14~25℃で安定 ・雨天時や積雪時も問題なくシステム稼働 ・空気熱源HPと比較して、消費電力およびCO2排出量を約39%削減 400 下水温度(℃) 15 350 300 250 10 200 5 下水水位(mm) 3-5. 分析・評価結果(仮説検証) 150 3-6. 考察 100 0 良好な結果の要因として、復興住宅のオープンによる地域住民の増加 に伴う下水量増加によるものと推察する。 50 -5 0 グラフ6.2014年12月の下水水深 25 2013年12月平均水深:188㎜⇒2014年12月平均水深:194㎜ 450 下水水位(mm) 外気温度(℃) 外気温度、下水温度(℃) 下水温度(℃) 15 350 300 250 10 200 5 下水水位(mm) 20 400 4.平成28年度に向けて 今年度の評価を継続して実施する予定。特に、管路内汚れなどが採熱性 能に与える影響を確認し、製品へフィードバックする狙い。 150 100 0 50 -5 0 グラフ5.2013年12月の下水水深 問い合わせ先:積水化学工業株式会社 環境・ライフラインカンパニー また、普及拡大に関しては、地方自治体へ向けて、管路データを活用して 、需要候補地の選定、適用管路の調査、採熱量試算、システムの効果を まとめ、案件形成に向けてシステム提案している。主に自治体で所管す る建物の設備更新や新規建設計画に対して折込活動を推進している。 また、同時に一般ユーザー(大手企業)向けとして、環境貢献企業などの イメージアップを促すようなシステム提案を展開中。 5