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page101-200 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
用語 ブラスト 説明 砂状の粒子を素材表面に高速で当て,素材表面の塗装/表面処理 の 密着性を向上させるためのプロセス フラッタ Flutter 翼に作用する空気力、慣性力、弾性復元力が関連して機体が動的不 安定となり調和振動が持続する現象。発散振動で構造破壊に至る場 合もあることから、飛行安全上最も注意を払うべき事象と位置付けら れる。一般的に機体の軽量化(低剛性化)を進めるとフラッタ特性は悪 化することから、航空機の高性能化と飛行安全性を両立させるために は、設計段階でフラッタ発生速度を精度良く予測する技術が必要とな る。 プリプレグ Prepreg 複合材を製造するための素材。強化繊維を一方向に引き揃え、また は織物にし、一定の割合で樹脂(母材)を含浸させた材料。 プログラム・ローンチ Program Launch 機体開発が正式に開示されること。 プロセス・スペック Process Spec 製品を製造するための作業環境,材料,設備,道具および手順を規 定した仕様書。 プロセスウィンドウ Process window 製品を製造するための温度,圧力,時間等の適用範囲。 プロビジョン Provision 将来的な発展性を考慮し,発展的改修が容易に可能となる設計思想 が盛り込まれていることを意図する。 ペイロード Payload 有償搭載量と訳す。 航空機がそれ自体の移動を目的とせずに 2 点間を飛行するとき、当 該地点間を移動させることを目的としてその機体に搭載している物品 を言う。民間旅客機の場合は乗客、乗客の手荷物、貨物の合計。 ベーン・メイン形式 Vane-Main 主翼下面の圧力の高い空気をフラップ上面に導くことで性能を高める スロット(隙間)が 2 カ所にできるように作られたダブル・スロッテッド・フ ラップの一種。主翼とフラップの間に巡航時には隠れてしまうベーンと 呼ばれるキャンバーの大きな小翼を設けている。 ベリーカーゴ形態 Belly Cargo Configuration 客室などのあるメインデッキの床下にサブデッキとして貨物室を配した 機体のこと。 関連;ダブルバブル胴体断面形状 ヘルスモニタリング Health Monitoring System 機体システムの異常,故障状態を含めた健全性をモニタすること。重 大故障が発生した場合にはパイロットに機体の異常状態を通知し,安 全な飛行を維持するが,影響の小さな異常状態であっても整備員に 通知することで,より効率的な整備作業を支援する。 ボイド マスクレスピーニング 内部に発生する欠陥の一種。一般に泡状,トンネル状のものが多い Maskingless Peening 微粒子ショットでは,表面粗度変化が小さいことや,ショットにより導入 されるひずみ量が極めて小さいため,通常のショットピーニング後の 部材表面の形状変化や表面粗度変化,ひずみの導入などを防ぐ目的 で行われるマスキングが不要となる。このようなマスキング無しで行う ショットピーニングのことを指す。 17 用語 マルチブロック構造格子 Multi-Block Structured Grid 説明 空力計算格子を複数のブロック(構造格子)で分割して表現する格子 のこと。単一の計算格子を用いた場合、格子直交性を保持したままで 複雑形状に沿った形で格子線を滑らかに形成するのは非常に困難と なるが、空間格子を複数のブロックに分割することで、複雑形状に対 しても直交且つ滑らかな格子生成が可能となる。 モジュラー・アビオニクス Modular Avionics アビオニクス・システム構成方式の一つであり,キャビネット・タイプの シャーシ内に各種機能に応じて分割された複数モジュールを装備した もの。従来の LRU 方式に比べ機能の統合/共通化が図れるため,重 量やスペースの効率化が期待できる。また,モジュール単位での交換 が可能となるため,従来 LRU 方式に比べて交換単位の細分化が期待 できる。 ユニバーサルデザイン Universal Design 言語の違い、左右の利き手の違い、障害の有無、年齢性別の差異に 関係なく利用することができる設計・工業デザイン ラグ部品 LUG 耳金部品, 可動による荷重分散機構を付与するための部品。 リアマウント Rear Mount エンジンを胴体後部側方に搭載する方式、またはその方式でエンジン を搭載した機体形態を言う。小型機、ビジネスジェット機に多く見られ る形態。例: MD-80、CRJ200 など。 リーク試験 リージョナル・ジェット 漏れ試験。ファスナシール部からの漏れの有無を確認する試験。 Regional Jet 旅客がそれ程多くない路線や大空港と地方空港を結ぶ路線に運航さ れるジェット機。一般に、100 席未満の小型ジェット機を指す。 リモート・アクセス Remote Access 遠隔地のコンピュータからサーバーへアクセス環境。セキュリティ対策や データの一元管理を行う上で1つのサーバーにデータを集約する必要 がある。そこでサプライヤーや外注はサーバーへレモテ Access を行い、 そのコンピュータが目の前にある時と同じように直接操作することが 可能となる。 リレーショナル・モデリング Relational Modeling 形状を定義する上で参照する機体外形や基準となる要素を各 3D モデ ル間で共有参照することで、参照先の形状変更(仕様変更、形状変更 等)に追従して自動更新するモデリング手法。。特に概念設計時にお ける様々な仕様検討を迅速に展開する必要がある場に有効となるモ デリング手法である。 レーザトラッカ Laser Tracker レーザーによる計測装置の1つ。測定位置にリフレクターと呼ばれる 反射装置にレーザーを当てて測定する。 液層プロセス成型技術 製品の形状になるようあらかじめ繊維シート等を金型内にセットし、そ こに溶融したマトリックス樹脂を加圧注入して繊維に樹脂を含浸させ、 型を加熱して成形する複合材料の製造方法。また、マトリックス樹脂 のフィルムを繊維シートと共にセットして、それを熱で溶融させて含浸 させる方法もある 干渉抵抗 他の物体からの影響により発生する抵抗。 幹線機 旅客数が多い主要路線で運航される機材。一般に、100 席以上の機 材を指す。 感圧塗料(PSP) Pressure-Sensitive Paint 特定有機分子の燐光が酸素分子により弱まる消光作用と呼ばれる性 質を利用した塗料。気圧による酸素濃度変化に対応する発光強度を 計ることで物体上の圧力分布を測定する。温度依存性も持っている。 18 用語 感温液晶 説明 温度変化に強く依存し,波長領域の光を選択的に反射する性質を持 つ液晶。数種類混合することにより所望の温度範囲で発色させること ができる。感温塗料に対して計測系が簡素ですむという利点がある。 層流領域と乱流領域とで温度差があることを利用して遷移の判定が 可能になる。 感温塗料(TSP) Temperature Sensitive Paint 感圧塗料と同種の塗料であるが、感圧塗料よりも温度感度が大きく、 圧力感度が小さい特性を持つ。 規定適合性 regulation compatibility 航空法等の規定に対する整合性 型式証明 Type Certification 航空機の型式ごとにその設計が基準に適合していることを証明する 行為 計画図 Layout 現段階で MJ の計画図フェーズでどこまで定義するのか未定のため、 用語として削除をよろしくお願いします。 計算格子 CFD 解析を行う時にシミュレートすべき領域(物体表面,物体周りの空 間)を網目状に分割したもの。計算格子が細かいほど解析精度は向 上するが,解析時間も増大する。 古典積層理論 Classical Lamination Theory 複合材料は炭素繊維等の強化材の方向による異方性が強く、異なる 角度方向を重ねあわせた積層体として構造要素に用いることが多い。 積層体の機械特性を、積層板の中央面に垂直な断面は変形後も中 央面に垂直という仮説を用いて単層板特性から予測する理論を古典 積層理論と呼び、現在でも多くの航空機複合材適用部に使用されて いる。 航空交通流管理システム 民間航空機、自衛隊機及び米軍機を含めた我が国の空域を飛行する 計器飛行方式の機体毎の飛行諸元を実時間で監視し、各経路と管制 官負荷の平準化により、我が国の空域全体の運行効率あげるための プロジェクトである。設備の整備が昨年度から開始され、10 年間近い 計画が進められている。 航法精度要件 Required Navigation 従来は、航空機の誘導は管制官がレーダにより行ってきたが、航空機 Performance が集中する空港周辺では混雑時間帯にあっては管制官の負荷が上 がり、遅延の原因となってきた。経路毎に航空機に航法精度を要求 し、航空機の自動制御により航空路幅を逸脱しないことを航法精度と して求める運航方式である。これにより、安全性と運行効率の向上 (経路間隔を狭める、管制官負荷を低減)の両立が期待されている。 高 Re 数遷音速風洞 流体運動を支配する最重要パラメータである Re 数はスケールに比例する 為、通常の風洞試験では模型縮率に応じて実機よりも小さくなるが、 風洞を極低温環境にする事で Re 数の構成要素である粘性係数を変 化させ、模型スケールで実機の Re 数を時実現する風洞。 三次元主翼 実際の主翼。 残留応力 溶接や塑性加工により生じた塑性変形の不均一性に起因して,材料 内部の力の釣り合いを満足するために発生する材料内部に潜在的に 有する応力。 残留強度試験 損傷を受けた部材が耐えうる最大強度を測定する試験。 19 用語 磁気攪拌溶接 説明 TIG 溶接の欠点であるブローホールを発生させないため、磁気発生装 置により金属溶融部に力を発生させ回転、攪拌しブローホールを散逸 させる手法 自己反射補正法 計測点の輝度を計測する際、計測点で反射した計測点以外の発光 (自己反射)を同時に計測してしまうことによる誤差を除去する補正 法。 自動積層技術(テーププレー 自動複合材積層技術の一種で、従来の幅広テープでは出来ない複雑 スメント) な曲面の積層を可能とする技術。複合材の幅によってファイバー (Automated Fiber Placement)、トウ(Automated Tow Placement)、テ ープ(Automated Tape Placement)の種類がある 失速特性 主翼の失速(剥離)による飛行特性。剥離は翼全体で同時におきるわ けではなく,翼の一部が剥離し始めたのち徐々に主翼全体に広がる。 その剥離の仕方(剥離の始まる位置や広がる速度等)により飛行特性 が大きく変わる。 樹脂ブリード Resin bleed 複合材を成形する際に、余剰の樹脂を流し出すこと。 樹脂リッチ層 Resin rich layer 樹脂が必要以上に含まれる層。 出発信頼性 Dispatch Reliability あらかじめ定められた時間通りに航空機を運航できる能力のこと。航 空機自身に起因する事態で出発が 15 分以上遅れると定時出発でき なかった扱いになる。 巡航翼型形状 真空チャック 高揚力装置を展開していない翼断面形状。クリーン翼型。 vacuum chuck 真空チャックの原理は、下の図に示すようにワークとチャックの接触面 を真空にすることにより、ワークが大気圧に押され、チャック面にワー クが吸着することを利用したものである。真空チャックのワーククラン プ力は、メカクランプと比較して非常に弱いのが特徴であり短所でもあ るが、使い方よっては大変便利なチャッキング方式といえる。 推進系インテグレーション 推進系(エンジン)と機体との統合設計。エンジンの推力効果等も考慮 する必要がある。 線形空気力ツール Liner Aerodynamic Force 線形理論に基づいて構築された非定常空気力計算ツールのこと。代 Calculation Tool 表的なものとして、汎用構造解析ソフト NASTRAN で使用されている Doublet Lattice Method があるが、衝撃波を伴うような流れ場の非線 形性を模擬することができないため、遷音速での計算精度がしばしば 問題となる。 繊維蛇行 Fiber wrinkle 繊維強化複合材の強化繊維に生じるしわ,うねり。 遷音速 Transonic Speed 機体の飛行速度や気流の速度を、流れの特性毎に亜音速・遷音速・ 超音速・極超音速と分類したものの一つ。音速近傍の速度。概ねマッ ハ数 0.8 から 1.2 まで(問題となる流れ場による)。遷音速の流れは亜 音速の流れや超音速の流れが入り交じっており、大変複雑になってい る。 遷音速ディップ現象 Transonic Dip Phenomena 航空機のフラッタ発生速度が遷音速領域において急激に低下する現 象のこと。遷音速流中にある翼の振動に伴い、翼面上に存在する衝 撃波が前後に移動したり、あるいは衝撃波強さが変化することによっ て生じるとされている。 20 用語 層流境界層 説明 境界層(物体から主流までの速度勾配の大きい領域)の大部分が層 流であるもの。 造波抵抗 遷音速や超音速の速度領域では,流体の粘性や剥離によって抗力が 生じる。これは衝撃波の発生によって,その後方の気流の流速の低 下や運動量の損失を生じた結果であり,船が水面に波を立てて進む 状態と似ているので,造波抗力または造波抵抗という。(wave drag) 損傷許容設計 構造には、はじめから損傷(亀裂)が存在することを前提として、その 亀裂が大きくなっても、急激には成長せず、構造全体の破壊に至るこ とが無いように配慮し、破壊に至る前に点検で発見して修理を行える ようにする設計法。 耐食性 水分等に伴う腐食に対する耐性。航空機の場合は,海面上を飛行す るため,塩水に伴う腐食を対象にする場合が多い。 探傷子 知識ベースモデリング 非破壊検査で使用するためのセンサーのこと。 Knowledge Base Modeling パラメトリックモデリングの一部で、設計意図や仕様を知識(Knowl edge)として 3D データに組み込み、ミスの削減や設計自動化につなげ 生産性を向上するためのモデリング手法。CATIA V5 では、主にパラメ ータ(A,B,C,D)、式(A+B)、ルール(C の場合 A+B、D の場合 A-B)およ びチェック(A+B>0 の時警告を発生)などがある。 低コストエアライン Low-Cost Airlines 生産性の効率化によって低い運航費用を実現し、低価格・簡略化した 航空輸送サービスを提供する航空会社。米国、欧州で発達し、アジア にも広がりつつある。 低歪成形技術(低歪冶具) 加工後のそり、ねじれ等の変形を防ぐ複合材成形技術 抵抗発散特性 主翼(翼型)は揚力一定の条件においてマッハ数が増加していくと 徐々に抵抗が変化していくが,あるマッハ数に達すると衝撃波の発達 により急激に抵抗が増加する。これが抵抗発散(drag divergence)で あり,そのときのマッハ数を抵抗発散マッハ数(MDD)という。この MDD と揚力との関係を抵抗発散特性という。 突合せ継手 材料の端面同士を接触させて接合する継手。これに対して,リベット 継手のように板を重ねて表面同士を接触させる継手を重ね継手とい う。 二次元翼 熱可塑成分 翼型。翼断面形状。 Thermoplastics element 熱を加えると軟化し、室温に戻すと硬化する樹脂成分。ポリエチレン 樹脂,ポリエーテルエーテルケトン樹脂等(⇔Thermoset element:熱 硬化成分。エポキシ樹脂,フェノール樹脂等) 粘性解析 流体粘性を考慮した解析。NS(Navier-Stokes)解析。 薄肉鋳造 比較的大型の複雑形状部品でも最少板厚を 1mm 程度の薄肉化が可 能な鋳造技術 非構造格子 Unstructured Grid CFD 計算に使用する計算格子の1種。格子配列が規則的に並んでい ないため、構造格子と比較して非構造格子と呼ばれる。非構造格子で は、計算空間を六面体や四面体、三角柱(プリズム)や四角錘(ピラミ ッド)といった種々の格子タイプで埋めることができるため、構造格子と 比較して複雑形状に対する形状融通性に優れている。 21 用語 非破壊検査 説明 部品の健全性を破壊することなく検査する手法。代表的なものには, 放射線検査,超音波検査等がある。 非平面翼 Non-Planar Wing T 型尾翼に代表される揚力面が交差する形態の翼の総称。平面翼と 異なり、各揚力面の上下・ピッチ振動だけでなく、ヨー・ロール振動をも 考慮した非定常空気力計算を要するとともに、各揚力面の空力干渉 による影響も重要となるため、解析予測することが非常に難しい。 微粒子ショット法 Fine Particle Shot Peening ショットピーニングの一種で,投射材として平均粒径 40-200μm の微 細な粒子を高速で投射することにより,表面粗度変化を抑制しつつ表 層のみに高い圧縮残留応力を付与することで,優れた疲労特性向上 効果や摺動特性を得る冷間加工プロセス。 標準離着陸経路 SID/STAR Standard Instrument SID:計器飛行方式で飛行する航空機が滑走路から航空路に合流す Departure、Standard るための標準飛行経路を利用する出発方式 Terminal Arrival Route STAR:計器飛行方式 で到着する航空機が航空路から計器進入方式 を開始するまでを定めた標準経路を利用する進入方式 複合材 Composite Material 2 つ以上の互いに異なる材料要素を組み合わせて、元の要素は出来 上がった材料中で元の形を残しつつ、個々の要素に無かった特性を 生み出した人工の材料。(繊維強化プラスチックなど) 並列解析 1つのCFD解析を複数のCPUを使用して行うこと。CPU 数に比例して 解析時間が大幅に短縮できる。 融着材 熱を加える等して固体を解かし、粘性を上げるまたは液状にして他の 物質同士を接着することができる材料。 揚抗比 翼弦長後退角 Lift-Drag Ratio L/D と同意 主翼平面形において各翼弦の 25%位置がなす後退角。ちなみに 0% 翼弦長後退角とは前縁後退角のこと。 乱流境界層 境界層(物体から主流までの速度勾配の大きい領域)の大部分が乱 流であるもの。 乱流抵抗 気流の乱れにより物体表面に発生する摩擦抵抗 22 Ⅰ.事業の目的・政策的位置付けについて Ⅰ. 事業の目的・政策的位置付けについて 1. NEDO の関与の必要性・制度への適合性 1.1 NEDO が関与することの意義 環境適応型高性能小型航空機研究開発事業(以下、本事業という。)は、これまでに官民で進め られてきた様々な要素技術開発の成果を最大限活用して、材料・構造・システム単位による要素 技術を開発し、完成機体開発のために必要な全機統合技術(全機インテグレーション技術)を開 発・実証するものである。 本事業は、経済産業省が策定した「民間航空機基盤技術プログラム」の一環として実施するも のであるが、同プログラムでは、航空関連技術は、欧米等先行諸国の他、アジア諸国も含めた競 争激化が進む中で、大きな技術波及効果によって環境をはじめ、情報、材料等の分野に高付加価 値を生み出すものとして位置づけられ、航空機関連技術の戦略的な研究開発を行うことにより、 我が国航空機産業の基盤技術力の維持・向上を図ることが必要とされている。本事業は、小型航 空機の環境適応及び高性能化を目指す要素技術の開発と全機統合技術の開発・実証を行うもので あり、同プログラムの目的に合致したものである。 また、同プログラムは、民間航空機関連技術について、平成 23 年度(2011 年度)までに、材 料・構造・システム関連等の中核的要素技術力の一層の強化・保持、機体及びエンジンの完成機 開発能力の獲得、また、こうした基盤技術力の維持・向上、これらを用いた航空機・エンジン等 の国際共同開発への参画、並びに環境適合等の要請に対応した民間航空機及びエンジン開発への 取組を通じて、我が国航空機関連産業の発展を目指している。本事業は、小型航空機の要素技術 開発及び全機統合技術の開発・実証により、平成 23 年度までに環境適合及び高性能の完成機開発 能力を獲得しようとするものであり、小型航空機の機体開発に関して、同プログラムの目標の実 現を図るものである。 航空機の開発は、先端技術と高度な材料・部品等をシステム統合する分野であり、国が定めた 科学技術基本計画の重点分野である「材料」、「環境」、「製造技術」等の分野の要素技術を包 含し、特に今後不可避と考えられる環境負荷低減を実現するための技術的課題を多く含み、地球 温暖化対策として同計画の「環境」分野と関連する。また、同基本計画の「社会基盤」分野にお いて、航空機は、国民生活を支える基盤技術として掲げられ、豊かで安心・安全で快適な社会を 実現するために、国民の利便性を向上させ、質の高い生活を実現するための研究開発を推進する ことが求められている。このように、国の科学技術基本計画にも、本事業を含めた航空機の開発 が適切に位置づけられている。 民間航空機開発には巨額の開発投資が必要となり、また民間旅客機の世界市場は、ボーイング、 エアバス等の特定の航空機メーカーにより占められており、YS-11 以来全機開発の経験がない我 が国航空機産業が新規に市場参入していくことは容易ではなく、事業化のリスクが大きい。国際 的にも航空機開発は国家レベルでの戦略の下で展開が図られており、我が国においても経済産業 省の「民間航空機基盤技術プログラム」をはじめとした国家レベルでの政策の下で航空機開発が 進められている。 したがって、上記のとおり、本事業については、 「民間航空機基盤技術プログラム」等の我が国 政府の政策方針に合致し、一方で開発リスクの極めて高い事業であることから、その推進に当た っては国(経済産業省及び NEDO)が関与すべき事業であると考えられる。そして、研究開発事業 -Ⅰ-1- の方法としては、本事業による開発成果を活用して事業化を担うことが期待される航空機メーカ ーを中心とした研究開発主体に対する助成事業(助成率 1/2)として実施することが適切である。 1.2 実施の効果(費用対効果) 本事業は、小型民間航空機の要素技術開発と全機統合技術の開発・実証を行うものであるが、 本事業の実施の効果としては、以下のものが期待される。 (1)機体完成能力の獲得による航空機産業の発展 我が国の民間航空機産業は、YS-11 の開発以降小型ビジネス機を除く旅客機の全機開発を実施 していないが、国際共同開発により機体開発に参画し、技術力を着実に向上させ、発展を続けて きた。今後の更なる発展に向けては、機体完成能力を獲得することにより、全機を取り纏めるプ ライム・メーカーとして世界の民間航空機市場に参入していくことが必要である。特に、小型航 空機市場は、ボンバルディアとエンブラエルが先行して事業を拡大しているが、今後さらなる需 要拡大が見込まれる分野である。従って、本事業の成果として、小型航空機の機体完成能力を獲 得することにより、我が国航空機産業の飛躍的な発展が期待される。なお、70~90 席の新規機材 需要は今後 20 年間で約 4,700 機、うち欧米で約 3,000 機と予測される。 (2)環境問題への対応 地球温暖化対策など環境問題への対応は、我が国を含め国際的に取り組むべき重要な課題であ る。航空分野においても、今後航空需要の堅調な進展が期待される中で、航空機の運航に伴う温 室効果ガス(二酸化炭素)の排出を抑制していくことが必要となっており、このためには航空機 の運航に伴うエネルギー消費の効率化が求められる。本事業は、環境適応型高性能小型航空機の 実現を目指しており、同クラスのジェット旅客機に比して、機体の軽量化・低抵抗化等により大 幅な燃費削減を目指している。本事業の成果を活用して、環境負荷の低い小型航空機が運航され ることによって、温室効果ガスの排出抑制に大きく寄与するものと期待される。 (3)関連産業への技術波及効果 航空機関連技術は、環境をはじめ、情報、材料等の分野に高付加価値を生み出す大きな技術波 及効果を有している。本事業においては、先進材料/加工・成形技術、情報技術を駆使した先進 空力設計技術、コクピット技術や操縦システム技術、大規模生産システムの CAD/CAM 技術等の要 素技術開発を実施している。これらの成果は、航空機製造分野はもとより、大型構造物製造分野、 情報処理機器製造分野及びバーチャルプロトタイピング分野など広範な分野への技術波及、ひい ては新規産業の創出に資することが期待される。(図Ⅰ-1 参照) -Ⅰ-2- 航空機製造分野 その他製造分野 機体 装備品 エンジン 技術波及 構造 部品,材料 製造技術,情報技術 新規分野 【図Ⅰ-1 関連産業への技術波及効果】 2. 事業の背景・目的・位置付け (事業の背景) 我が国の国産旅客機開発は、戦後 7 年間の航空機製造の禁止期間を経て、米軍機の修理等によ る先進諸外国の技術へのキャッチアップから始まり、1950 年代後半以降、戦後初の国産旅客機全 機開発である YS-11 の開発を行うに至ったが、182 機の製造を経て 1982 年に開発会社は解散し、 その後今日に至るまで国産旅客機の全機開発は行われてこなかった。YS-11 開発終了後、我が国 の航空機メーカーは国際共同開発に重点を置き、海外機体メーカーのパートナーとして世界水準 の技術を獲得し、例えば B767(1978 年開発開始)で約 15%、B787(2005 年開発開始)では約 35% の参画比率を得るまでとなっている。これらの開発実績やエンジンの国際共同開発により、我が 国の航空機産業の生産規模は 1 兆円規模に達している。1980 年代以降防衛予算が伸び悩む中で、 我が国航空機産業の成長の牽引役は民間航空機部門であり、今後ともこの傾向に基本的な変更は ないと考えられる。 我が国航空機産業が民間航空機部門で更なる発展を遂げるためには、カナダやブラジルの航空 機産業の急成長に見られるように、部品・構造材製造に留まらず、全機開発を取り纏めて、事業 を成功させ、ビジネスに関するノウハウを蓄積することが必要である。このためには、民間航空 機の全機システムを纏め上げる能力を獲得する必要があるが、現状では、我が国航空機産業が有 する全機開発能力は、民間航空機全機開発に必要とされるものとは異なる防衛分野に限られてい る。民間航空機では要求が多様、かつ変化が激しい民間市場需要に合致するシステムをまとめあ げる必要があり、そのためには市場性、コストを念頭に置き、臨機応変にシステムにフィードバ -Ⅰ-3- ックする能力を獲得することが求められる。 現状の航空機の世界市場は、大型・中型機の市場はボーイングとエアバスに 2 分され、その市 場への参入は直ちには困難である。一方、100 席以下の小型機の市場は、ボンバルディアとエン ブラエルが先行して事業拡大をしているものの、今後更なる需要拡大が見込まれる分野であり、 中国・ロシアがこの分野への新規参入をねらっている中、我が国としても市場参入が期待される。 また、世界の民間航空需要が今後も順調に増加していくと予測されている一方で、航空機に対 する環境面、安全面への対応について社会的要請が高まっており、航空機産業として、これらの 要請に応えられる機材の開発が求められる。 (事業の目的・位置付け) これまで述べてきたとおり、航空機関連技術は、大きな技術波及効果を有し、環境をはじめ情 報、材料等の分野に高付加価値を生み出すものである。我が国航空機産業の基盤技術力の維持・ 向上を図るとともに、関連分野への技術的波及を図るためには、航空機関連技術の戦略的な研究 開発を行うことが必要であり、また、我が国の航空機産業の更なる発展には、YS-11 以来 40 年間 途絶えていた民間航空機の完成機開発能力を獲得し、需要拡大が見込まれる小型航空機の市場分 野を対象に新規参入を図ることが望ましいと考えられる。また、今後開発される航空機は、地球 温暖化等の環境負荷の低減、安全性の向上など社会的要請に的確に対応できるものであることが 必要である。 本事業は、上記の背景や政策目的を踏まえ、環境適応型高性能小型航空機の開発を行うことと し、軽量化等による環境負荷の低減に資する複合材料や先進加工・成形技術及び先進空力設計技 術、操縦容易性の実現を可能とし安全性の向上等に資する情報技術、開発・生産システムの効率 化を図るシステム技術等の航空機関連技術の開発・実証を行い、これらの技術を活用した小型航 空機(70~90 席クラスジェット旅客機と同規模)の試作・試験を行うこととしている。 世界の民間航空機市場は主として欧米企業の寡占状態にあり、我が国航空機産業は参入できて いない。しかし、本事業の成果を活用することにより、航空機産業の技術力が強化され、社会的 要請に応える魅力的な航空機の全機開発能力が獲得されることで、世界市場における我が国航空 機産業の発展が期待できる。また、前述の通り、本事業は経済産業省の「民間航空機基盤技術プ ログラム」の一つとして位置付けられており、本事業が所期の成果を達成することにより、その 政策目的を実現できるものである。 -Ⅰ-4- Ⅱ. 研究開発マネジメントについて Ⅱ. 研究開発マネジメントについて 1. 事業の目標 1.1 研究開発目標 本事業では、欧米等先進諸国の他、アジア諸国を含めた競争激化が進む中、大きな技術波及効 果によって、環境、情報、材料等の各分野に高付加価値を生み出す航空機開発技術について、航 空機の機体完成能力を獲得し、環境適合等の要請に対応した民間航空機開発の取り組みにより、 我が国航空機産業の発展を目指している。 小型ジェット機市場は、ボンバルディアとエンブラエルが先行しており、激しい競争を行って いる。このように激しい競争環境において、後発の機体メーカーが参入し、一定の市場シェアを 獲得するためには、オペレータにとっての価値が他機よりも明白に大きいことが求められる。オ ペレータにとって最も重要な価値判断指標は、経営収支への寄与度である。即ち、機材の価格、 飛行乗務員費、燃料費、整備費等で構成される直接運航費(DOC=Direct Operating Cost)が小さく (支出)、同時に機材取り回し時間や非稼働時間の減少等によって収入増大が見込める機材が競争 力を持つ。他方、環境面、安全面への社会的要請の高まりを受け、航空機製造業界には、これら の要請に応える機材を提供することが求められる。以上のような認識を踏まえ、環境適合性向上 及び運航費削減の手段として「①環境負荷低減=燃料使用量の削減」の技術、製造コスト(=価格 を通じて運航費削減に寄与)削減手段及び安全向上策として「②操縦容易性向上」の技術、同様に 製造コスト削減手段として「③IT(CAD/CAM)を活用した開発・生産システム効率化」の技術等が、 今後求められる重要技術と考えられるため、以下に示す目標を設定し、研究開発を進めることと した。 1.1.1 環境負荷低減 本事業開始時点での同クラスのジェット旅客機の燃費に比して、機体の軽量化・低抵抗化によ り 1 割程度、新エンジンの搭載を含めて 2 割程度の燃費削減を目標とする。 1.1.2 操縦容易性の確保 操縦計器類のデジタル化と、操縦システムにおける動力伝達システムの合理化により、高度の 知識と的確な判断力を求められるパイロットの訓練や操縦における負担を軽減し、これらにかか る時間とコストを大幅に削減する。 1.1.3 開発・生産システムの効率化 最新の情報技術を活用した CAD/CAM を試みることにより、実証に必要な機体の設計・試作に要 する時間とコストを抜本的に圧縮する。 1.2 目標設定の理由 マーケットの現状と将来動向を踏まえ、上位政策目標を達成するために、前項の 3 つの研究開 発目標を設定した。本項では各目標の設定根拠と上位政策目標との関係を概説する。 -Ⅱ-1- 1.2.1 環境負荷低減 1.2.1.1 環境適合性向上の観点 ジェット航空機では DOC の約 25%を燃料費が占める。この燃料消費量の削減は、運航経済性の みならず、国際的に大きな課題となっている環境負荷の低減に不可欠な要素となっている。この ような状況において、2 割程度の燃費向上は直接的な化石燃料使用量の大幅な減少を意味し、二 酸化炭素や窒素酸化物等の排出量を削減し、環境適合性の向上に寄与するものである。企業化後 の機材の調達が拡大することにより、単位輸送量当たりの燃料使用量は減少し、環境に優しい航 空輸送システム構築に寄与することができる。 1.2.1.2 市場ニーズとの適合性/競争上の優位性 燃料費は DOC の 25%程度を占め、加えて近年の燃料費高騰によるエアライン収支への影響が拡 大している為、燃費削減に対するニーズはますます増大しており、2 割程度の燃費削減は、新型 機への市場ニーズに対して競争上の優位性を有している。 本機が既存競合機に対して、機体のみで 1 割程度、新エンジンを含めて 2 割程度の燃費優位性 を持つ場合、当該既存競合機はエンジン換装のみではこれに対抗する事ができず、機体の大幅改 修を余儀なくされる。また、先行者の優位性は既に運用されている機体との「共通性(部品、整 備手順等)」にあるので、共通性の減少を招く機体大幅改修は、自らが築いた優位性を放棄するリ スクを冒す事になる。このため、2 割程度の燃費優位性は容易には覆されないと考えられる。 1.2.2 操縦容易性の確保 1.2.2.1 安全性向上の観点 民間航空機の事故率は 20 年以上の間ほぼ一定で推移し、順調な航空輸送量の増大に伴って事故 数・死者数共に増大傾向にある。事故の主要因(Primary Causes)の 70%をパイロット(の不適切な 対応)が占めており、一般にヒューマン・ファクタ問題として知られる。この問題を解決しないと 航空輸送システムに対する信頼感が揺らぎかねず、関係諸機関が其々の領域で多面的な対処策を 講じている。 このような状況下、機体メーカに求められる最大の責務はマン・マシン・インターフェース設 計を改善して、設計に起因するヒューマン・ファクタ問題による事故を発生させない事である。 近年の輸送量の増大に伴う空域混雑度の悪化と情報通信技術の高度化・高精度化を背景として、 パイロットが把握すべき情報量、判断すべき事項の量が増大し続けており、依然としてパイロッ トの負担軽減のためのハードウェア/ソフトウェアの改善、特にマン・マシン・インターフェー スの改善が求められる。 コックピット内の表示様式、スイッチ類レイアウト、操縦桿、操作マニュアルなどを代表とす る「目に見えるインタフェース」の改善、自動操縦システム作動ロジックなど「目に見えないイ ンタフェース」の改善、機体に働く空気力を常に触覚で感知できる操縦系統などは、いずれもマ ン・マシン・コミュニケーションの改善をもたらし、ヒューマン・ファクタに起因する事故を減 少させ、安全性向上に寄与する。 パイロットに求められる素養を持つ人材は限られている上に、機長に必要な総合的技量を養う には長期間の訓練と経験を要する。リージョナル・ジェット機の小型化・高頻度化が進むと、必 -Ⅱ-2- 要なパイロット数は増大するが、今後も現在と同じ水準でパイロットを確保するならば、パイロ ット不足が深刻化するおそれが大きい。安全性を向上させつつ、パイロットに高度な技量を求め ずに、パイロット不足を克服するには、 「操縦・操作が容易な、即ち、高度な技量を要さず操縦で きる航空機」が必要である。本目標は当該ニーズに対応するものである。 1.2.2.2 運航経済性向上の観点 燃料費と同様に飛行乗務員費(大部分がパイロット費用)が DOC の中で大きな割合を占めてい る。欧米の例を見ると、月平均のフライト時間に比して給与水準が高く、機種限定免許のために 単一機種しか操縦できず(従って必要なパイロット数が多い)、しかも初期/機種転換訓練に極め て膨大な時間(即ちコスト)がかかる事が原因となっている。これらの解決には、 「簡単に操縦でき る」航空機が、初期/機種転換いずれの訓練時間も減少させると共に、高度な知識量・技量を要 しないことでパイロット不足傾向を緩和し、当該技量に応じた適切な給与水準となることを促す ことで、オペレータの運航経済性を向上させる為、機体競争力向上に資するものとなる。 1.2.3 開発・生産システムの効率化 1.2.3.1 運航経済性向上の観点 DOC の中で大きな比率を占める費目に「オーナシップ・コスト」がある。本費目は減価償却費、 保険費用、及び機材調達資金の借り入れに伴う利子で構成され、いずれも機体価格に連動してい る。オーナシップ・コストを下げるには機体価格を減じる必要があり、低価格でも利益を確保で きる低コスト開発・生産能力が低価格実現の源泉となる。航空機開発・生産システムは「大規模 複雑システム」の典型であり、コンピュータ処理能力とネットワークの広がりが不十分であった これまでは、(情報不足の状態でも)「それなりに」的確な推察・判断ができる人間系の介在が不 可欠であった。その一方で、人間系の介在/手書き書類の存在などはシステム化・自動化を阻み、 情報収集・管理が非効率となると同時に、ミス/失念/コミュニケーション・ギャップ等による 後戻りループを生む。また、高度な情報収集能力と推察力、判断力を要するため、適切な人材が 限定される欠点もある。急速に発展する IT 技術・ツール群とネットワーク・インフラの普及を最 大限に有効活用して、デジタル化・システム化を進めて開発・生産プロセスを高効率化/短時間 化すれば、低コストで航空機を開発・生産できる能力を獲得でき、機体価格の低減を通じて、オ ペレータの運航経済性向上に寄与できる。また、IT 技術を活用した整備マニュアル類/部品カタ ログ等はオペレータの機材運用効率向上に大きく寄与するポテンシャルを持っている。開発・生 産プロセスの効率化を阻む要因の一つに、非電子化情報の存在に伴う非効率があるが、同様の状 況がオペレータの整備作業等でも発生する。IT 技術を用いて、必要な整備情報、即ち整備プロセ スや交換部品等の情報をタイムリーに入手できれば、整備作業の高速化、機材ダウンタイムの削 減等を通じて、直接運航費の中で大きな比率を占める整備費を削減する事となる。上記のサポー ト・システムは、競合機との差別化を意味し、研究開発後の競争力獲得をも意味する。 -Ⅱ-3- 1.2.3.2 産業競争力向上の観点 前項で記載した開発・生産システムの効率化は、企業の基盤的競争力の強化を意味するもので あり、本研究開発完了後の民間小型ジェット機事業のみならず、他事業も含めた技術力の向上に 資するものである。また、 「大規模複雑システム」の典型である航空機開発・生産システムを効率 化できる方法論は、一企業、一産業を越えて汎用化が可能であり、我が国産業界の競争力向上に も一定の寄与ができると見込む。 前項、本項の観点から、IT 技術を有効活用した開発・生産システムの効率化は、適切な目標で あると言える。 -Ⅱ-4- 2. 事業の計画内容 本事業では、1.項で記載した事業の目標を達成するために必要な要素技術(拘束条件の策定を 含む) (表Ⅱ-2-1)の開発実証、及び要素技術を実証するための小型航空機開発に必要な作業(試 作機の詳細設計・製作及び試験、総合調査研究)を、計画(表Ⅱ-2.1-1)に基づき実施する。作業 項目の相互関係を図Ⅱ-2-1、①~⑤の各要素技術(表Ⅱ-2-1)の小型航空機への適用計画を図Ⅱ -2-2 にそれぞれ示す。 【表Ⅱ-2-1 事業の目標を達成するための要素技術(研究開発テーマ)】 事業の目標 目標を達成するための要素技術 ① ② 拘束条件(機体基本仕様)の策定 環境負荷低減 軽量化・低コスト化に資する先進材料/加工・成形技術 ③ 低抵抗化を実現する先進空力設計技術 画像・情報処理技術を活用して、操縦容易性を向上させる ④ コックピット・システム技術 操縦容易性の確保 ⑤ ⑥ 電子制御技術を活用した軽量・低コスト操縦システム技術 開発・生産システムの効率化 大規模機械システムの設計・製造の短時間化、低コスト化 のための最新の CAD/CAM 技術の航空機設計・製造への適用 環境適応型高性能小型航空機研究開発 ①拘束条件(機体基本仕様)の策定 製品化/企業化を睨み, 市場競争力を高める。 拘束条件の元で 要素技術の 開発を実施する。 総合調査研究 要素技術開発 ⑥設計・製造の短時間化,低コスト化 フィードバック 研究開発成果を 実証する。 要素技術開発 ②先進材料/加工・成形技術 ③先進空力設計技術 試作機の詳細設計・製作及び試験 研究開発成果を実証する。 ④コックピット・システム技術 ⑤低コスト操縦システム技術 【図Ⅱ-2-1 作業項目の相互関係】 -Ⅱ-5- 拘束条件(機体基本仕様) (機体形状,構造様式,装備品レイアウト等) 先進材料/加工・成形技術 コックピット・システム技術 低コスト操縦システム技術 先進空力設計技術 【図Ⅱ-2-2 要素技術の適用計画】 研究開発の期間は、平成 15 年度(2003 年度)から平成 23 年度(2011 年度)までの 9 年間とす る。但し、全期間を 2 期に分け、第 1 期は平成 15 年度~平成 19 年度の 5 年間、第 2 期は平成 20 年度~平成 23 年度の 4 年間とする。(図Ⅱ-2-3 参照) 第 1 期には要素技術開発及び機体基本仕様(含む、エンジン仕様)策定を実施し、第 2 期には 小型航空機(サイズとしては、70~90 席クラスジェット旅客機と同規模)を試作し、飛行を含め て所要の試験を行い、研究開発実証を実施する。 なお、本事業では、下記の通り評価時期及び当該時期における達成目標を設定している。 【中間目標】 (1) 平成 17 年度 ①市場動向等を踏まえ、機体仕様の基本構想を完了していること。 ②上記目標である環境負荷低減、操縦容易性の確保及び開発・生産システムの効率化を実 現するために必要となる要素技術等の試作機の開発への適用について、下記(2)項の目標 の達成の目途が得られていること。 (2) 平成 19 年度 ①機体外形状、荷重、構造・装備等、機体の基本的な仕様設定を完了していること。 ②上記目標である環境負荷低減、操縦容易性の確保及び開発・生産システムの効率化を実 現するために必要となる要素技術等の開発の成果が試作機の開発に適用できる水準に到 達していること。 (3) 平成 21 年度 試作機製造着手に必要な設計及び地上要素試験等を完了していること。 -Ⅱ-6- 【最終目標】平成 23 年度 試作機の飛行試験等により、上記の環境負荷低減、操縦容易性の確保及び開発・生産シス テムの効率化の目標達成を実証すること。 H15 年度 H16 年度 H17 年度 H18 年度 H19 年度 H20 年度 H21 年度 H22 年度 H23 年度 H24 年度 (2003) (2004) (2005) (2006) (2007) (2008) (2009) (2010) (2011) (2012) 第1期 第2期 中間評価 ▽ 中間評価 ▽ 中間評価 ▽ 事後評価 ▽ 初飛行 ▽ 機体仕様検討・概念設計 設計・試作・試験 要素技術開発 要素技術実証 【図Ⅱ-2-3 研究開発期間】 2.1 研究開発の内容 2.1.1 要素技術開発の拘束条件の策定 (a) 研究開発の必要性と目的 各要素技術の開発に際しては、実用化時・実運用時の拘束条件を前もって定め、当該拘束条件の もとでの開発目標達成を目指す必要がある。 代表的拘束条件は、各技術を搭載する小型ジェット機の性能要求と当該要求を満足するように設 計された機体基本仕様である。直接的な拘束条件となる機体基本仕様策定作業に先立ち、企業化時 の運航環境や市場環境、競合環境を綿密に調査・推定し、機体基本仕様の設計条件を策定する必要 がある。 (b) 研究開発の具体的内容 1) 機体要求仕様/性能目標等の策定 小型ジェット機市場で競合する同クラス他機の機体仕様、運航仕様、顧客要求等を調査し、必要 十分な競争力を確保できるよう、機体が満足すべき仕様/運航性能目標/運航条件等、最上位の拘 束条件を設定する。また、燃費向上など技術開発目標の運航コストへの寄与度を定量的に評価する ツールとして、国内外のエアラインの運航コスト実績を調査し、DOC(直接運航費)推算モデルを策 定する。 2) 機体設計条件の策定 1)の作業結果を踏まえ、機体設計を具体化する為の設計条件を策定する。主として機能・性能要 求である 1)に加えて、 FAR Part 25/耐空性審査要領等に規定される安全性に係る条件を織り込み、 設計条件とする。 -Ⅱ-7- 3) 機体基本仕様の策定 2)項で設定した設計条件に基づき、要素技術研究開発成果を搭載する機体の基本仕様を策定する。 基本仕様策定の過程で、設計データ取得を目的とする風洞試験、部分構造試験などを実施する。 本作業は主として三菱重工業が担当するが、企業化時の役割分担を念頭に、3)項作業の一部であ る主翼構造基本設計作業、及び上流過程である 1)項/2)項の一部を富士重工業が実施する。 エンジン・装備品等についても、企業化時を念頭に置いて適切なサプライヤを選定し、必要に応 じて共同で設計作業を実施する。 なお、本事業開始当初は 30 席クラス機を対象として上記作業を実施したが、主として市場 環境の変化により検討対象を 70~90 席クラスに変更したため(3.項参照)、各種拘束条件の 再設定行い、同様のプロセスに沿って機体基本仕様の策定作業を実施している。 2.1.2 軽量化・低コスト化に資する先進材料/加工・成形技術 (a) 研究開発の必要性と目的 航空機機体構造の軽量化及び低コスト化は環境適合性の向上、運航経済性向上のための基本的要 請であることから、高性能金属材料や複合材料の適用、低コスト化を目的とした新工法の適用が求 められている。 このため、材料分野では、金属材料の材料強度向上や組立て自動化に加え、構造様式の大幅変更 に踏み込んだ抜本的な変革が必要であり、また複合材料についても製造コストの抜本的な低減技術 を確立することが必要である。 加工分野では、応力伝達の合理化と部品点数の削減を可能とするため、これまで小型二次 構造部材に留まっていたリベットを用いない一体化技術を大型一次構造まで拡大することが 重要である。 近年、金属接合が不可能である航空機用高力アルミニウム合金において、材料を溶かさず に接合できる摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)の活用が期待を集めている。 航空機用複合材料の製造技術において、プリプレグ法に比べて飛躍的に低コストの樹脂含 浸法(VaRTM:Vacuum-assisted Resin Transfer Molding)が導入されつつあるが、更に強度 特性を増すことにより、航空機構造への適用が期待される。 本研究開発では、航空機金属構造様式及び複合材料製造方法の革新により、航空機の飛躍 的な軽量化と低コスト化を図るための技術の開発・実証を行う。 (b) 研究開発の具体的内容 1) FSW による金属一体構造技術の開発 FSW による金属接合を利用した軽量で低コスト一体構造を次のステップで開発する。 a. 各種の金属接合一体構造様式に対するコスト/重量低減効果の明確化 b. 各種継ぎ手様式の製造性及び継ぎ手強度特性の明確化 c. 金属接合一体構造のコスト/重量最適設計技術の開発 d. 航空機一体構造製造設備の開発 e. 部分構造モデルの試作/評価による製造性及び一体構造成立性の実証 f. 金属接合一体構造の構造健全性保証(損傷許容設計)技術の開発(許容値データ取 得を含む) -Ⅱ-8- g. 金属接合継ぎ手に対する検査技術/補修技術の開発 2) VaRTM 等による航空機複合材料部材製造技術の開発 航空機に適用可能な高品位 VaRTM 素材等を用い、航空機構造部材の低コスト製造技術を開 発する。 a. 各種構造様式に対応した製造基本プロセスの設定 b. 航空機部材製造設備の開発 c. 設定プロセスにて製造した複合材料の許容値データの取得 d. 部分構造モデルの試作/評価による製造性及び構造成立性の実証 e. 検査/補修技術の開発 2.1.3 低抵抗化を実現する先進空力設計技術 (a) 研究開発の必要性と目的 ジェット航空機では直接運航費の約25%を燃料費が占める。この燃料消費量の削減は運航経 済性の観点から重要であるのみならず、国際的な大きな課題となっている環境負荷の低減に 不可欠な要素となっている。 航空機の燃料消費量を改善し、化石燃料使用量、すなわち二酸化炭素/窒素酸化物等の排 出量を削減するための研究開発が必要となっている。 燃料消費量は空力効率、即ち空力抵抗に大きく左右されるため、設計手法/試験手法等の 技術分野に踏み込んで、小型ジェット機の空力抵抗低減に資する技術の開発・実証を行う。 (b) 研究開発の具体的内容 1) 高揚抗比主翼の設計技術 高い遷音速揚抗比を実現する翼型、及び平面形状を策定するための設計技術。 2) 高効率高揚力装置の設計技術 簡素な機構を持ちながら、高い離着陸性能をもつ高揚力装置の設計技術。 3) 推進系インテグレーションを含む全機干渉抵抗低減技術 推進系や翼胴フェアリングの全機揚抗特性への影響を極小化し、全機空力抵抗を低減する 設計技術。 4) 実機空力特性推定技術 開発初期段階から精度良く揚抗特性を推定するための風洞試験技術(計測技術)及び計算 空力技術の改善。 2.1.4 画像・情報処理技術を活用して、操縦容易性を向上させるコックピット・システム技術 (a) 研究開発の必要性と目的 コックピットは航空機の全てのシステムを集中的に制御する中枢であり、同時に飛行安全の「最 後の砦」であるため、遭遇しうるあらゆる事象に対応できるよう、極めて多数の表示・操作手段が 装備されている。 パイロットは多数の計器類等から発信される極めて多くの情報を、限られた時間で認識し、 適切な処置を判断し、即座に適切な操作を行う必要がある。昨今の電子技術の発達に伴い、 情報の統合処理/統合表示や操作の自動化といったソフトウェア/ハードウェア両面の革新 がなされ多少改善したものの、逆に近年の輸送量増大に伴う空域混雑度の悪化と情報通信技 術の高度化・高精度化を背景として、パイロットが把握すべき情報量、判断すべき事項の量 -Ⅱ-9- が増大し続けている。依然としてパイロットの負担を軽減するためのハードウェア、ソフト ウェアの改善が必要である。 本研究開発では、人間特性と調和するマン・マシン・インターフェイス技術等の開発、実 証を行い、ヒューマン・エラーの誘発を極力排除し、また、低コストのコックピット・シス テムを開発することにより、航空機の安全性の向上、運航経済性向上に資することを目的と する。 なお、本技術の確立により、民間航空機分野のみならず、航空機以外の広範囲な分野にお いて高度情報通信システムを利用するための共通基盤技術が形成されることが期待される。 (b) 研究開発の具体的内容 1)人間の特性を活かした操縦マニュアル等の最適表示技術 2)コンピュータ・グラフィックを駆使した機体内外の状況認識サポート技術 3)操作ミスの余地を極小化する最適操作機器設計技術 2.1.5 電子制御技術を活用した軽量・低コスト操縦システム技術 (a) 研究開発の必要性と目的 航空機の操縦システムは、人間による直接操作から、電子・情報技術を活用して自動化を進めた 制御へと徐々に移行してきている。実際、自動化はシステムの信頼性向上に伴って徐々に拡大し、 パイロットの負担を低減した。しかし、こうした操縦システムの電子制御化は、安全性・信頼性基 準への適合性証明を困難にするのみならず、人間の感覚・能力との乖離が生じることにより、ヒュ ーマン・エラーによる事故が増大したり、操縦システムの過度の複雑化により、機体重量及び機体 価格の増大を招いたりしている。 我が国では、電子技術を駆使した民間機用操縦システムの開発実績がなく、国際共同開発 プログラムにおいても当該システム分野への参画は実現していないため、将来民間航空機市 場に主導的に参画する際には、操縦システムにおける技術の高度化を図ることが極めて重要 である。 本研究開発では、パイロット特性と電子制御技術を適切に調和させること等により、ヒュ ーマン・エラーを誘発せず、操縦が容易で、且つ軽量・低コストの操縦システムを開発し、実 証する。 (b) 研究開発の具体的内容 1)ヒューマン・エラーを誘発しにくく、操縦が容易な操縦システム構築技術 2)機器、配管・配線類等を最小にするためのシステム構築技術 2.1.6 試作機の詳細設計・製作及び試験 (a) 研究開発の必要性と目的 上記 2.1.2~5 の新技術開発成果を実証するため、70~90 席クラスジェット旅客機と同規 模の試作機を設計・製作し、技術実証試験を行う。 -Ⅱ-10- (b) 研究開発の具体的内容 1) 実証試験計画、規定適合性証明計画及び試作機開発計画の策定 各技術開発の成果が、最終的に実用レベルに到達したか否かを各種地上試験及び飛行試験にて 確認する。従って試験は実運用と同等の環境で実施する事が条件となり、必然的に試験供試体で ある試作機は、 「実運用」が可能な仕様・性能を持つ事が必須条件となる。 また、飛行試験を実施する為、安全性確保に必要な一連の証明作業が必須となる。 上記の諸条件を踏まえて、実証試験計画(地上実証試験、飛行実証試験) 、安全性の証明に関 わる試験(規定適合性証明試験)等の計画、及び試作機開発計画を策定する。規定適合性証明計 画策定に際しては、航空局等と綿密な調整を行う。 2) 試作機の詳細設計 2.1.1 項作業の成果である機体基本仕様を踏まえ、1)項の計画に従って、試作機の詳細設計を 実施し、試作機の製造図面、及び安全性の証明に必要な規定適合性証明文書を作成する。 全機取り纏めと主翼以外の構造は三菱重工業が担当し、主翼は富士重工業が担当する。試作機 に搭載するエンジン及び各種装備品は、企業化時のフォーメーションを見据えつつ、適切なサプ ライヤから購入する。エンジン・装備品と機体とのインターフェース設計はサプライヤと共同で 実施する。 3) 試作機の製作及び技術確認試験 詳細設計結果に基づき、試作機の製作を行う。試作機製作に必要な治工具、製造設備は適宜製 作/購入し、必要に応じて製造プロセス開発等も実施する。試作機の規定適合性証明の一環とし て、製造プロセス認証の取得など必要な作業を実施する。 試作機の製作過程において、必要な技術確認試験を逐次実施する。 尚、試作機の製造機数と各号機の役割分担は、研究開発期間中に所定の実証を完了する事(最 終目標への到達) 、及び、実証完了迄に要する総費用をミニマムとする事を勘案して最適な計画 を設定する。 4) 規定適合性証明取得 試作機による技術実証飛行試験に先立ち、一連の規定適合性証明行為を完了する。2)項で作成 した図面・解析書などのドキュメント類に加え、全機静強度試験などの規定適合証明試験の結果 を整理して航空局等と調整、実運用環境における飛行実証に必要な準備を整える。 5) 技術実証試験 開発した新技術の有効性を実証するため、地上実証試験及び飛行実証試験を行う。 2.1.7 大規模機械システムの設計・製造の短時間化、低コスト化のための最新の CAD/CAM 技術の 航空機設計・製造への適用 (a) 研究開発の必要性と目的 大規模で複雑なシステムのインテグレーションは a.(物理的な部品を含め)情報量が極めて多い。従ってインターフェイスも極めて多い。 b.情報を共有すべき関係者が極めて多い。 -Ⅱ-11- c.(インターフェイスが多く、贅肉を極限まで削った設計であることから)変更の影響 範囲が極めて広範。 といった課題を有している。 特に、大規模機械システムである航空機の開発製造における作業の効率化を実現するた めには、正確かつ定量的な現状把握、変更(系に対する擾乱-可能性を含む)による影響 の定量的な推定を可能とするとともに、段階の異なる各作業工程での関係者における情報 の周知、同時意志決定を可能とすることが重要であり、技術面からこれらの解決を図る必 要がある。 (b) 研究開発の具体的内容 コンピュータの処理能力の向上、通信ネットワークの速度の向上、3D-CAD の多用などのハ ードウェアと高速通信プロトコル、セキュリティソフトウェア、マネジメント支援ツール(リ ンク付け機能を中核とする因果関係定義ツール)等のソフトウェアを活用することにより、 航空機分野において以下の開発、実証を行う。 ① 低コストと高品質を両立する設計プロセス ② 最小製造コストを実現するデジタル・マニュファクチャリング・ツール ③ 最適工程順設計を実現するバーチャル・ファクトリ技術 2.1.8 総合調査研究 (a) 研究開発の必要性と目的 総合調査研究として、以下の 2 項目につき、航空分野の動向等に関する知見を有する財団 法人日本航空機開発協会(以下、JADC と略す)が担当する。この結果を、適時、試作機の設 計及び試験等に反映するとともに、本研究開発事業終了後の製品化/企業化を睨み、当該製 品の市場競争力を高めることを目的とする調査活動と位置付ける。 (b) 研究開発の具体的内容 1) 技術調査(航空機を取り巻く運航環境等の調査等) これまで JADC が主体に実施してきた市場調査及び受託研究等の成果を踏まえ、航空機の将来 の市場性を左右する運航環境等(代表例は以下の通り)を調査する。 a. 環境問題 欧州の一部の空港では既に環境付加税が開始されており、環境負荷の低い航空機の市場ニ ーズが高い。JADC は市場調査を通じて蓄積した成果を踏まえ、航空機を取り巻く環境問題の 法的規制、課題及び対策案等の調査検討を実施する。 b. 将来航空管制 大量輸送と運航コスト低減の市場ニーズに対応するために、航空管制に対応した航空機に よる市場性確保が必要である。JADC は経済産業省の受託研究として実施してきた「航空機用 先進システム基盤技術成果」及び「次世代高信頼性アビオニクス技術」の研究を通じて取得 したアビオニクス統合技術の研究成果を活用して、将来航空管制への対応要件、課題及び対 策案等の調査検討を実施する。 -Ⅱ-12- c. 多用途機の仕様調査 小型航空機の運用範囲(用途)拡大のため、各種航空機の運用事例調査し、小型航空機にお ける運用方法及び必要な技術要素(システム機能)を調査する。 d. その他 ・Modeling & Simulation 技術 設計の効率化及び将来の市場性を開拓するなどの観点からの動向を調査する。 ・高機能客室サービス 旅客航空機の集客能力を左右する要因の一つである、客室安全性、快適性及び客室サ ービスの向上につき運航者の取組みを含む動向を調査する。 中でも、近年問題となってきた乗客持ち込みの携帯電子端末及び高度医療機器との電 磁干渉問題と対策動向についても調査する。 ・運航範囲の拡大 気象等による航空機の運航制限、遅延が発生している。これらに対応するため、最新 センサ技術等の適用による運用範囲の拡大につき、その現状、課題及び見通し等を調査 する。なお、この調査は「c. 多用途機の仕様調査」とも連携して取り組む予定である 2) これまでの研究開発成果の活用支援 JADC は、自らがこれまで研究開発等で進めてきた開発成果を環境適応型高性能小型航空機へ 適用するための支援を行う。また、JADC が収集した文献、技術収集データ及び新規の技術検討 情報の提供等の支援作業も伴わせて行う。 -Ⅱ-13- 【表Ⅱ-2.1-1 「環境適応型高性能小型航空機研究開発」研究開発計画及び年度別予算推移】 年度 研究 開発項目 H15年度 H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度 H23年度 項目① 『拘束条件の設定』 顧客要求・運用実態・他機調査/評価など (1) 機体要求仕様・性能目標策定 (2) 機体設計条件の策定 機体仕様設定・風洞試験など (3) 適用機体基本仕様の策定 (4) 拘束条件・機体基本仕様の見直し 項目② 『先進材料/加工・成形技術』 ▽中間評価 (1) 摩擦攪拌接合(FSW)設計技術 ▽中間評価 (1) 製造プロセス開発 (2) 構造成立性の確認 (3) 耐空性証明計画立案・調整 ▽プロセス確定 (4) 詳細製造プロセスの設定 ▽プロセス承認 (5) 許容値取得/部分工作試験用設備導入 (6) 設計許容値取得 (7) 部分構造モデルによる工作試験 (8) 部分構造試験 (9) 実機大部品用設備/治具導入 (10) 実証試験 (2) 軽量/高強度/低コストVaRTM (1) 強度・剛性基本特性のスクリーニング (2) 品質安定性の確保 (3) 低コスト工法の抽出 ▽#1実大試作、評価 (4) 製造プロセス検証と低コスト目処付け (5) 製造時不適合・検査手法の洗い出し ▽実大尾翼製作、評価 (6) 実機部品製造/組立 (7) 耐空性証明計画立案・調整 (8) 実大尾翼強度試験 (9) 材料特性・設計データ取得・実証試験 (3) 低コスト製造技術の開発 (a) 課題抽出と一次評価 (b) 解析技術開発及び製造プロセス設定試験 板金部品の高精度化/微粒子ショットの適用化 等 プロセスのドキュメント化 (c) プロセスのドキュメント化 ▽製造手順へ反映 (効果検証) 項目③ 『先進空力設計技術』 飛行試験による評価 (1) 高揚抗比主翼の設計技術 (基本) (詳細) (確認) 風洞試験による評価 (基本) (詳細) (確認) 風洞試験による評価 (2) 高効率高揚力装置の設計技術 (3) 推進系インテグレーションを含む 全機干渉抵抗低減技術 風洞試験による評価 (4) 低騒音フラップ/ギヤ/境界層設計 (計測方法試行) (基本) (詳細) (確認) 風洞試験による評価 項目④ 『コックピット・システム技術』 (1) コックピット構想策定 (2) コックピット初期仕様の策定 コックピット・シュミレーション (3) 要素技術試験 (4) 耐空性証明計画の策定/調整 (5) コックピット初期仕様の見直し ▽コックピット基本仕様 (6) コックピット計画設計 (7) コックピット詳細設計 (8) コックピット製作 (9) 地上実証試験 飛行前審査▽ (10) 飛行実証試験 -Ⅱ-14- 【表Ⅱ-2.1-1 「環境適応型高性能小型航空機研究開発」研究開発計画及び年度別予算推移】 年度 研究 開発項目 H15年度 H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度 H23年度 項目⑤ 『軽量・低コスト操縦システム技術』 (1) 操縦システム構想策定 (2) 操縦システム初期仕様の策定 パイロット・シュミレーション (3) 要素技術試験 (4) 耐空性証明計画の策定/調整 ▽操縦系統基本仕様 (5) 操縦システム計画設計 (6) 操縦システム詳細設計 (7) 操縦システム製作 (8) 地上実証試験 飛行前審査▽ (9) 飛行実証試験 項目⑥ 『実証機の詳細設計・製作・実証試験』 (1) 開発計画(試験計画等)の策定 ▽実証機基本仕様 (2) 実証機の計画設計 (3) 実証機の詳細設計 (4) 実証機の製作 (5) 地上実証試験 飛行前審査▽ (6) 飛行実証試験 項目⑦ 『開発・生産システムの効率化』 (1) DE/DM/VFの実用化 (a) デジタル・エンジニアリング技術 【DE=Digital Engineering/DM=Digital Manufacturing/VF=Virtual Factory】 ツール調査~プロセス構想策定 システム開発/効果検証/マニュアル・作業スペック化 ▽実用化(実証機設計に適用) (b) デジタル・マニュファクチャリング技術 (効果検証) ツール調査~システム構想策定 システム開発/効果検証/マニュアル・作業スペック化 ▽実用化(実証機設計)▽実用化(実証機製作) (c) バーチャル・ファクトリ技術 ツール調査~システム構想策定 (効果検証) システム開発/効果検証/マニュアル・作業スペック化 (2) 高効率設計・製造情報マネジメント手法 ▽実用化(実証機製作) プロセス構想策定 (効果検証) プロセス構築/試行/効果検証 (要すれば改良) ▽実用化(実証機設計に適用) (効果検証) 項目⑧ 『総合調査研究』 (1) 技術調査 (a) 環境負荷低減 (ア) 環境動向調査 (イ) ICAO動向調査 (ウ) 運航による環境負荷低減構想調査 (エ) 機体要件調査 (b) 将来航空管制 (凡例: (ア) ICAO構想調査 ) (イ) 実機例調査 国内の将来航空管制はH19 から運用開始のため、実運用 での評価結果の反映を予定 (ウ) 将来航空管制計画と機体要件調査 (エ) 機体システム構想 (c) 多用途機 (ア) 実機例調査 (イ) Option仕様調査 (ウ) 機体システム構想 (d) その他 (ア) Modeling &Simulation技術 (イ) 高機能客室サービス ・ 高機能客室システムの動向調査 ・各種方式及び技術課題の調査 ・機体システム構想 (ウ) 運航範囲の拡大 (2) これまでの研究開発成果の活用支援 一般会計 (百万円) 特別会計 (百万円) 総予算額 (百万円) 343 - 876 343 915 876 -Ⅱ-15- 1,539 915 1,584 検討中 1,539 1,584 2.2 研究開発の実施体制 本事業においては、新エネルギー・産業技術総合開発機構が、原則本邦の企業、研究組合、公 益法人等の研究機関(原則、国内に研究開発拠点を有していること。ただし、国外企業の特別の 研究開発能力、研究施設等の活用あるいは国際標準獲得の観点から国外企業との連携が必要な部 分はこの限りではない。 )から、公募によって本事業の助成対象となる研究開発実施者を平成 15 年 5 月に選定した。 上記公募により三菱重工業株式会社、富士重工業株式会社、財団法人日本航空機開発協会を助 成先として、また独立行政法人宇宙航空研究開発機構(採択時は航空宇宙技術研究所)、国立大学 法人東北大学が共同研究先として選定され、三菱重工業を中心にして密接な連携を取りながら本 事業を推進する。 企業化=市場参入に必要な産業競争力を構成する種々要素の中で、本事業では、差別化を生み 出す基本技術を「実用レベル」まで高める事を目指しており、条件が整えば、それら「実用技術」 を適用した小型ジェット機事業への進出を目指す。各要素技術を「実用レベル」に高めるには、 搭載対象となる小型航空機の性能目標/機体仕様から定まる条件を満足させる事は当然ながら、 企業化時のパートナリング構成等から定まるその他の拘束条件(製造設備条件等)を全て満足さ せる必要がある。従って、研究開発事業ではあるが、将来の企業化をも見据えた体制を組む必要 がある。 上記の背景を踏まえ、本事業では三菱重工業が幹事会社となる。上述の各種拘束条件を策定し、 担当の要素技術開発を実施すると同時に、共同開発者を含む全体を取り纏める。富士重工業は、 企業化時に主翼パッケージの設計・製造を担当する事を想定し、主翼を対象として、基本仕様の 策定、及び先進材料/加工・成形技術の研究開発を担当する。日本航空機開発協会(以下、JADC と記す)は、従来から経済産業省所管の試験研究の取り纏めを担当しており、先進技術の知識集 積が顕著である。本研究開発で実用化対象とする要素技術のうちの幾つかは同協会所管の試験研 究を基盤としている。本事業では、総合調査研究として、将来運航環境の推定(即ち、機体仕様 策定時に勘案すべき運航条件)を中心とする技術調査等を担当する。 宇宙航空研究開発機構と三菱重工業との間で共同研究契約を締結し、先進空力設計技術研究開 発分野、コックピット/操縦システム研究開発分野、先進材料/加工技術研究開発分野、及び試 作機試験分野等に於いて共同研究を実施する。同様に、東北大学と三菱重工業との間でも先進空 力設計技術研究開発分野における共同研究を実施する。 平成 15 年度~平成 23 年度の研究開発体制図は図Ⅱ-2.2-1 に示す通りである。 -Ⅱ-16- 2.3 研究開発の運営管理 上述の通り三菱重工業が幹事会社となり富士重工業及び日本航空機開発協会を取り纏め、全体 計画や作業進捗を総括する。各社間の連携は、報告会等の開催、日常的な連絡(電話、メール等) により実施し、情報の共有等を図ることとしている。 また、本事業の成果である小型航空機の受取手と想定される国内外のエアラインとは、積極的 に交流を持ち、市場要求の聴取や研究成果の評価等を実施することとしている。 なお、NEDO としては、これらの研究開発実施者の開発状況を適時把握し、所要の指導等を行う と共に、半年に一度報告会を開催し、各社から作業の進捗及び成果について報告を受けることと している。 -Ⅱ-17- < 経済産業省 実 施 体 制 > 産業技術環境局研究開発課(予算原課) 製造産業局航空機武器宇宙産業課(政策原課) 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 助成率:1/2 三菱重工業株式会社 (幹事会社) 富士重工業株式会社 財団法人日本航空機開発協会 (共同研究) (共同研究) 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 < 国立大学法人東北大学 役 割 分 担 > 三菱重工業株式会社 ・研究開発全体取りまとめ ・要素研究開発、飛行試験実施 【共同研究】独立行政法人宇宙航空研究開発機構 ・先進材料/加工・成形技術開発 ・先進空力設計技術の評価 ・コックピット評価,操縦システム開発 【共同研究】国立大学法人東北大学 ・計算風洞による空力解析及び形状設計実施 富士重工業株式会社 ・主翼開発 ・先進材料/加工・成形技術開発 財団法人日本航空機開発協会 ・これまでの関連研究開発成果の活用支援 ・航空機を取り巻く環境調査及び評価 【図Ⅱ-2.2-1 「環境適応型高性能小型航空機研究開発」の実施体制図(平成 15 年度~平成 23 年度)】 -Ⅱ-18- 3. 情勢変化への対応 3.1 事業開始当初の認識 本事業開始当初(平成15年)は以下の状況に着目し、30席クラスジェット機に一定規模の需要 が見込まれると考え、30~50席クラスのジェット旅客機を想定した要素技術の開発・実証を目指 した。 ①乗客の利便性向上及び航空会社の収益性向上を目的として、近年航空機運航における機材の 小型化・多頻度化の動きが進んでいる。他方、従来小型機の主役であったターボプロップ機 は、機内騒音・振動等の快適性に対する不満及び安全性への不安から、乗客に敬遠される傾 向にある。かかる背景から、1990年代半ばに登場した50席クラスジェット機は北米を中心に 爆発的な売行きを示している。 ②一方、現在約3、000機が運航されている19~30席クラスのターボプロップ機は全て生産が終 了しており、航空会社のジェット化への期待も強いが、これらを直接代替し得る、運航経済 性に優れた30席クラスジェット機は出現していない。 3.2 市場環境の変化 当初、リージョナル・ジェット機に対する国内エアラインの需要は、あまり大きくないと考え ていた。しかしながら、その後、2009年の羽田空港拡張計画が現実味を帯びてきたことから、今 後国内エアラインが機材構成を見直す方針であり、その結果、70~90席クラス機の需要が拡大す ることが見込まれるに至った。 また、研究開発と並行して市場調査を継続した結果、エアラインの価格競争の激化、燃料費の 高騰、米国エアラインの経営悪化に伴うパイロット・スコープ・クローズ(注)の緩和等により、 海外においても70席クラス以上の機体の需要拡大が想定される。 (注)大手エアラインのパイロット組合と会社との労使協定で、グループ内の傘下のリージ ョナル・エアラインが運航できる機材(座席数・機数)を制限するもの。 3.3 計画変更内容 70~90席クラスの市場は、今後20年間で4,700機程度と予測されるなど、市場規模については大 きいものの、競合環境が激しい市場と考えられていた。しかしながら、上記の市場環境変化によ り、特に国内需要の獲得により事業性の向上が期待されることから、平成18年度政府予算案の決 定を踏まえ、想定する機体を平成18年2月に70~90席クラスに変更した。 また、機体サイズ変更に伴い、下記の変更を行った。 (1)燃費削減目標値の内訳 当初は同クラスのジェット旅客機に比して、機体のみ(形状、空力技術、軽量化等)で2割程度 の燃費削減を目標としたが、競合機種が比較的設計の新しいものに替わったため、燃費削減目標 設定の前提条件が異なるものとなった。そのため、適用する要素技術等の変更はないものの、そ の適用効果や比較基準が異なることから、機体で1割程度、新エンジン搭載を含めて2割程度の燃 費削減を目標とすることとした。(図Ⅱ-3.3-1参照) -Ⅱ-19- 25 競合機に対する燃費改善量,% (エンジンの寄与を除く) 20 大アスペクト比主翼 ② 15 先進翼断面形状 /自然層流翼 ① 10 ③,④ 空力・構造同時最適化 5 推進系干渉抵抗低減形状 70-90 席クラスへの特化 /扇型シートアレンジ採用 ④ 低抵抗機首 複合材適用 0 高性能高揚力装置による 主翼小型化形状 -5 ④,⑤ 現時点 70-90 席クラス機 (対 EMB175) 事業開始時 30 席クラス機 (対 ERJ135) ①100席以上への拡張性を持たせず、70-90席クラスに特化したこと、及び扇型シートア レンジの採用により、競合機より胴体を小型化 ②70~90席クラスの競合機は、比較的大きなアスペクト比を採用しているため差が減少 ③巡航マッハ数が高くなったこと、および主翼前縁にも高揚力装置が付いたことから、 自然層流の実現が困難 ④70~90席クラスの競合機は、30席クラス機と比べ設計が新しい(約10年) ⑤70~90席クラスでは競合機に比べ、高い航続性能と離着陸性能が要求され、高性能高 揚力装置を採用しても他機に比べて主翼の小型化が困難 【図Ⅱ-3.3-1 燃費改善量変化の理由】 (2)研究期間 機体仕様の再検討及びエンジン等装備品メーカによる開発律速等により、試作機開発が平成20 年度以降となるため、研究期間を4年間延長した(平成15~平成19年度:5年間→平成15~平成23 年度:9年間)。(図Ⅱ-3.3-2参照) なお、期間全体を、平成15年度~平成19年度末までの第1期、平成20年度~平成23年度の第2期 に分割し、第1期には要素技術開発と機体基本仕様策定、第2期には試作機の設計・製造及び試験 を実施することとした。 併せて、開発費総額を500億円から600億円に変更した。 -Ⅱ-20- (3)中間目標・最終目標の内容・時期 研究期間の変更に伴い、中間評価の実施頻度を増やすと共に事後評価の時期と当該時期での達 成目標を変更した。 H15 年度 H16 年度 H17 年度 H18 年度 H19 年度 H20 年度 H21 年度 H22 年度 H23 年度 H24 年度 (2003) (2004) (2005) (2006) (2007) (2008) (2009) (2010) (2011) (2012) 変更後 中間評価 ▽ 中間評価 ▽ 中間評価 ▽ 事後評価 ▽ 初飛行 ▽ 機体仕様検討・概念設計 設計・試作・試験 要素技術開発 要素技術実証 変更前 中間評価 ▽ 事後評価 ▽ 機体仕様検討・概念設計 初飛行 ▽ 設計・試作・試験 要素技術開発 要素技術実証 【図Ⅱ-3.3-2 研究期間の変更】 なお、本変更に当たっては、以下の手続きを実施している。 ・平成17年 9月 産業構造審議会航空機委員会にて機体仕様変更等が了承 ・平成17年12月 機体仕様変更等を反映したH18年度政府予算案が閣議決定 ・平成18年 1月 有識者に開発目標の変更等につき意見聴取 ・平成18年 2月 NEDO運営会議による審議・了承/基本計画変更を決定 3.4 今後の方針 当該市場は需要規模が大きく参入するに値する一方で、先行する海外メーカの強力な競合機が 存在し、熾烈な競争が予想される。従って、本事業の研究開発成果により技術的及び経済的優位 性を高める等の事業化に向けた取組みや、市場を含めた課題の検討を行い、平成19年度に要すれ ばその後の計画を見直す。 -Ⅱ-21- 4. 中間評価結果への対応 中間評価を平成 18 年度、平成 19 年度、及び平成 22 年度に実施する予定である。 5. 評価に関する事項 本プロジェクトでは下記の通り事前評価を実施した。 ①評価実施時期 :平成 15 年度 ②評価手法 :外部評価 ③評価事務局 :機械システム技術開発部 ④評価項目 :別紙Ⅱ-1 の通り ⑤評価委員 :別紙Ⅱ-2 の通り -Ⅱ-22- 別紙Ⅱ-1 審 査 基 準 [1]事業者評価 (1)航空機をシステムとして取りまとめる技術的能力を有すること。 評価 評価点の意味 A 十分な能力を有する C 不十分 (2)航空機開発実績(技術開発実績及び製造実績)を有すること。 評価 評価点の意味 A 十分な実績を有する C 不十分 (3)航空機技術開発体制及び製造設備を現在及び将来にわたり定常的に有すること。 評価 評価点の意味 A 十分な体制及び設備を有する C 不十分 (4)航空機技術開発というハイリスクを踏まえ、助成事業の自己負担分の調達に関し十分 な経理的基礎を有すること。 評価 評価点の意味 A 十分な経理的基礎を有する C 不十分 (5)航空機技術開発及び航空機製造事業を実施するに足る経営基盤、財務体質及び事務管 理能力を有すること。 評価 評価点の意味 A 十分な経営基盤、財務体質及び事務管理能力を有する C 不十分 [2]事業化評価(実用化評価)(10) (1)助成事業計画が実用化に向けた民間航空機技術開発計画として妥当であること。 評価 評価点の意味 A(5) 妥当である。 B(3) 条件付きで妥当である。 C(1) 妥当と言えない。 (2)民間航空機の実用化に係る企業化計画が具体的かつ市場性を含めて妥当であり、助成 事業者がその実施能力を有すること。 評価 評価点の意味 A(5) 企業化計画が妥当であり、助成事業者に十分な実施能力が認められる。 B(3) 企業化計画が妥当でないか、もしくは、助成事業者の実施能力に十分と は言えない点が見受けられる。 1 別紙Ⅱ-1 C(1) 企業化計画が妥当とは言えず、助成事業者にも十分な実施能力が認めら れない。 [3]技術評価(10) (1)技術開発課題を達成するための研究開発の具体的提案を有し、かつそれが妥当で優れ ていること。 評価 A(5) 評価点の意味 技術開発課題を達成するための研究開発の提案が極めて具体的であり、妥 当で優れている。 B(3) 技術開発課題を達成するための研究開発の提案が概ね具体的であり、妥当 で優れていると判断できる。 C(1) 技術開発課題を達成するための研究開発の提案が具体性を欠いていると共 に、妥当性を欠いている。 (2)小型航空機(サイズとしては、30~50 席クラスジェット旅客機と同規模)の試作、飛 行実施による目標達成確認について、提案された研究開発が十分有効であること。 評価 評価点の意味 A(5) 極めて有効な研究開発である。 B(3) 概ね有効な研究開発である。 C(1) あまり有効とは認められない研究開発である。 [4]総合評価 上記[1]~[3]の評価を踏まえつつ、総合的な視点から主観的な総合評価を 行う。 評価 評価点の意味 A 非常に良い技術開発助成事業である。 B 普通の技術開発助成事業である。 C あまりよいとは考えられない技術開発助成事業である。 [5]その他 予算規模の妥当性について、 「妥当」又は「疑問」で評価。 (結果は採択時の交付金の算定に使用、上記総合評価の枠外) [6]審査方法 上記[2]~[3]の評価点の合計点により総合評価をするが、上記[1] (1)~(3) 及び[3](1)において1つでも「C」が付けられたもの、又は、 [4]総合評価におい て「C」が付けられたものは、評価点の如何に係わらず不採択とする。 以上 2 別紙Ⅱ-2 環境適応型高性能小型航空機研究開発 技術審査委員 ・氏名(ふりがな) 所属・役職 ・氏名(ふりがな) 所属・役職 ・氏名(ふりがな) 所属・役職 ・氏名(ふりがな) 所属・役職 ・氏名(ふりがな) 所属・役職 ・氏名(ふりがな) 所属・役職 ・氏名(ふりがな) 所属・役職 鈴木 真二(すずき 東京大学大学院 宮下 工学系研究科 徹(みやした 国土交通省 五十嵐 航空局 展雄(たけだ 中井 しんご) 総務部長 のぶお) 由紀子(かきもと 賢一(りのいえ 生活環境学科 人間工学研究室 けんいち) 工学研究科 武(なかい 先端エネルギー工学専攻 ゆきこ) 生活科学部 東京大学大学院 教授 航空機安全課長 新領域創成科学研究科 実践女子大学 李家 技術部 UFJベンチャー育成基金 東京大学大学院 垣本 航空宇宙工学専攻 とおる) 伸吾(いがらし 財団法人 武田 しんじ)・・・委員長 航空宇宙工学専攻 たけし) 全日本空輸(株)企画室 主席部員 1 助教授 教授 教授 Ⅲ. 研究開発成果について Ⅲ.研究開発成果について 1. 事業全体の成果概要 1.1. これまでの経緯 本事業は、平成 15 年度の開始当初は 30~50 席クラスの機体を想定して、要素技術開発の拘束条 件たる機体仕様策定作業や、各要素技術開発等に着手した。その後、主として市場環境の変化に伴 い、想定する機体クラスを変更、70~90 席クラスをターゲットとする事とした事は前述の通りである。 事業全体の成果概要、目標に対する達成度等の記述に先立ち、これまでの経緯概要を纏める。 【図Ⅲ-1.1-1 これまでの経緯 (機体座席数と機体形状)】 FY H15 (2003) 機体形態 3列胴体・リアマウント (25席/34席/(45席)) FY H16 (2004) 4列胴体・ウィングマウント (38席/50席/(70席)) 30席クラス市場の縮小傾向が判明。 → 50席超への拡張ポテンシャルを付与。 FY H17 (2005) 4列胴体・ウィングマウント (70席/90席) 機材ニーズ大型化進展+国内ニーズ適合性 → 70-90席にシフト 1.1.1 事業開始当初(平成 15 年度) 平成 15 年度以前の市場調査によって以下の事項が判明していた。 ① 世界で数千機が運用されている 19 席ターボプロップ機の代替需要が見込まれた。 ② 19~30 席クラスのターボプロップ機は全て生産中止となった。 ③ 乗客のターボプロップ離れのマインドを受け、エアラインにはジェット機志向が強い。 ④ 30 席クラスの既存リージョナル・ジェット機の競争力は強くない。 ⑤ 50 席では大きすぎる路線が国内にも存在する旨、エアラインに確認した。 上記を踏まえ、30~50 席クラスを新規参入ターゲットと設定して本事業をスタートし、50 席程度が座 席数上限となる「3 列胴体/エンジン・リアマウント方式」の機体構想を策定した。 Ⅲ-1 1.1.2 平成 16 年度~平成 17 年度 その後の市場調査によって、以下の事実/傾向が判明した。 ① 9.11 テロ、引き続いて起こった SARS やイラク戦争の影響で旅客数が低迷した。加えて、古く は Southwest に始まり、Jet Blue(米国)や Easy Jet/Ryan Air(欧州)等の低コストエアライン が低運賃を武器にシェアを伸ばし、運賃低下が継続した。 (正確にはこれらの影響が各エアラインの業績に明白に現れ始めた。) ② 上記を受け、小型機材では採算確保が困難と主張するエアラインが増加した。 ③ 19 席ターボプロップ機の退役/米国本土以外への流出(アラスカ等、特殊環境での用途)、 旅客用途以外への転用(貨物機)が想定以上に急速に進展し、代替すべき 19 席ターボプロ ップ市場が急速に縮小した。結果、相対的に多く残る 30 席クラスターボプロップ機の代替需 要を狙うのが適当と考えられた。②を勘案すると、30 席クラスターボプロップ機の代替機材は、 同じ 30 席クラスではなく、50 席クラス以上と見込まれた。 ④ 50 席クラスの競合機(CRJ-200 及び ERJ-145)は、共に、50 席機と 70 席機の間のコモナリテ ィが弱く、50 席~70 席のコモナリティは大きな優位性になり得ると考えられた。 上記を受けて機体構想を見直し、30~50 席を基本としつつ、70 席クラスへの発展ポテンシャルを有 するよう、4 列胴体を採用した。競合機との差別化を明確化すべくエンジン搭載位置を主翼下に変更し、 新開発エンジンの採用を追及する事とした。 1.1.3 平成 17 年度下期以降 更にその後のエアライン訪問結果等から、以下の状況/傾向が判明した。 ① 旅客需要は一過性の低迷から回復したが、低コスト・エアラインのシェア拡大~運賃低下/ 下げ止まりの傾向は変わらず、これに加えて、燃料価格の高騰がエアライン経営の悪化に 拍車をかけた。コストは増大、収入は低下しているため、採算分岐座席数は上昇し、小型機 材では採算が確保できないと主張するリージョナル・エアラインがますます増加した。 ② 米国を中心に大手エアラインの経営破綻(連邦破産法:Chapter 11 申請)が相次ぎ、これを 主な理由にスコープ・クローズが緩和する傾向が生じた。即ち、70~90 席クラスの機材導入 を人為的に阻んできた障害が(徐々にではあるが)緩和する傾向が生じた。 ③ 国内では羽田空港再拡張が 2009 年に計画され、これを機に機材構成を見直す可能性が高 い。効率が良くない既存 120 席クラス機の代替候補として、70~90 席クラスにニーズが存在 する事が判明した。その一方、路線需要はあるものの、運航採算性成立が困難な 30~50 席 クラスへの国内ニーズは見込めない事が明確になった。 上記を踏まえ、対象機体クラスを 70~90 席に見直し、本事業の実行計画も前述の通り変更した。 4 列胴体/エンジン翼下搭載なる基本機体形状は維持したまま、胴体断面径の見直し、胴体延長 等を施した機体構想を設定した。新開発エンジンは引き続き追求し、その他の新技術候補と併せて、 市場ニーズへの対応/競合機との明白な差別化を狙う事とした。 70~90 席クラスは市場規模が大きく(今後 20 年間で約 4、700 機の新規需要が見込まれる)、競合 Ⅲ-2 機に伍して一定のシェアを獲得できれば量産事業の採算性成立が見込める一方、競合環境は 30~ 50 席クラスよりも厳しい。直接の既存競合機は CRJ700/900(カナダ・Bombardier 社)及び EMB170 ~175(ブラジル・Embraer 社)であるが、ロシア(RRJ 計画)及び中国(ARJ 計画)も当該クラスへの参 入を狙って機体開発を進めている。また、地域/エアラインによっては、効率の悪い 100~120 席クラ ス既存機(例えば B737-600 や古い F100、Avro RJ 等)を 90 席クラス機で代替する事を検討しており、 この場合、100 席超の機体に対する優位性も必要となる。いずれにしても、市場参入を果たし、且つ、 事業成立に必要な一定以上のシェアを獲得するには、エアラインから見て、競合他機よりも明白に優 位である事が必要である。 これ以降、機体を「MJ」と称する。90 席クラス機を「MJ-90」、ファミリー機である 70 席クラス機を 「MJ-70」と称する。尚、客室内の座席アレンジ(座席ピッチ、ラバトリ・ギャレーの配置他)はエアライン /投入路線(乗客層)等によって異なるため、MJ-90 の座席数は厳密に「90 席」ではなく、「90 席程度」 である事を付言する。 Ⅲ-3 1.2. 事業目標~各研究開発テーマの達成目標と中間目標 本項では、事業全体目標と各研究開発テーマの関係を整理し、中間評価時点の事業全体目標を 各研究開発テーマの目標に分解する。 本事業を構成する研究開発テーマは下記の通り①~⑧の 8 項目ある。 【表Ⅲ-1.2-1 研究開発テーマ一覧】 分野 研究開発テーマ 条件設定 ①個別要素技術開発の拘束条件の策定 (機体基本仕様の策定まで) 要素技術開発 ②先進材料/加工・成形技術の開発 ③先進空力設計技術の開発 ④コックピット・システム技術の開発 ⑤軽量・低コスト操縦システム技術の開発 実証に伴う実施事項 ⑥試作機の詳細設計・製作及び試験 大規模システム統合技術 ⑦開発・生産システムの効率化 研究開発全般に関わる調査等 ⑧総合調査研究 事業全体の開発目標と研究開発テーマの対応を表Ⅲ-1.2-1 に示す。 【表Ⅲ-1.2-2 事業目標と研究開発テーマの対応】 事業の目標 環境負荷低減 研究開発テーマ (目標達成手段) 現時点での同クラスのジェット旅客 ①拘束条件の策定 機の燃費に比して、機体の軽量化・ (機体基本仕様の策定) 低抵抗化により 1 割程度、新エンジ ②先進材料/加工・成形技術 ンの搭載を含めて 2 割程度の燃費 操縦容易性の確保 削減を目標とする。 ③先進空力設計技術 操縦計器類のデジタル化と、操縦シ ④コックピット・システム技術 ステムにおける動力伝達システムの 合理化により、高度の知識と的確な 判断力を求められるパイロットの訓 ⑤軽量・低コスト操縦システム技術 練や操縦における負担を軽減し、こ れらにかかる時間とコストを大幅に 削減する。 開発・生産システム 最新の情報技術を活用した の効率化 CAD/CAM を試みることにより、実証 に必要な機体の設計・試作に要する 時間とコストを抜本的に圧縮する。 Ⅲ-4 ⑦開発・生産システムの効率化 ①で設定する機体サイズ、基本形状、運用条件等は、②~⑤の要素技術開発の拘束条件となる。 燃費目標(新エンジンを含めて 2 割削減)は、②による軽量化、③による設計手法開発、双方の成 果を①の機体基本仕様に適用し、新エンジンの寄与分と併せて燃費目標の達成を狙う。即ち、機体の 燃費が合否判断の指標となる。 ④及び⑤は、①:機体仕様との整合性を確保しつつ、パイロット・ワークロードを軽減する(ヒューマ ン・ファクタに十分配慮したワークロード配分を実現する)コックピット及び操縦システム仕様を策定す る事が目標。訓練に要する時間/コストはエアライン方針によって異なる事、定量的な確認は量産仕 様の機体をエアラインに投入した後でなければ実施できない事から、本事業では、エアライン・パイロ ット等のレビューを通じた設計妥当性/目標適合性評価の結果が合否判断の指標となる。 ⑥は、②~⑤の開発成果を踏まえて①で策定した機体基本仕様を受け、機体詳細設計~実証試 験を行う。実証試験には飛行試験を含むため、飛行安全確保の観点から、耐空性規定への適合性を 証明する必要がある。本項目には、航空当局との各種調整を始めとして、規定適合性証明に要する 全作業が含まれる。本項目の作業の大部分は事業目標達成を実証する試験の「準備作業」と位置付 けられ、直接的には合否判断には関係しないが、試作機を用いた地上試験/飛行試験の結果は、① の機体仕様、及び、②~⑤の要素技術開発成果の到達点を最終評価する材料となる。 ⑦は、開発・生産プロセス効率化を実現する為に、設計・生産設計・製造及びプロジェクト・マネジメ ント各作業に係るシステム開発(プログラム開発/カスタマイズ等)/プロシージャ開発(ルール設定 /ドキュメンテーション等)を行う。効率化可否/程度が合否判断の基準となる。詳細は後述する。 ⑧は、研究開発全般に係る調査作業である。①~⑦の研究開発作業と並行して、将来の運航環境 等を調査・推定し、機体への要求策定(①及び将来の企業化時)に資する。本項目の作業は、作業① の支援と位置付けられる為、直接的には合否判断に関係しない。 尚、後述するように、②~⑤の研究テーマには個々に開発目標を設定しているが、必ずしも全ての 目標が上述した事業目標と直接的にリンクしている訳ではない。例えば、②では、重量目標に加えて コスト目標を設定している。燃費には寄与しないが、「近い将来の事業化」を上位政策目的とする本事 業では、目標とする事業化スケジュールに照らして実用性を判断する必要があるために必須の指標 である。 Ⅲ-5 第 1 回及び第 2 回中間評価時点の達成目標は以下の通り。 【表Ⅲ-1.2-3 第 1 回及び第 2 回中間評価時の達成目標】 第 1 回中間評価 【目標 1】 市場動向等を踏まえ、機体仕様の基本構想を完了していること。 (~平成 17 年度) 【目標 2】 環境負荷低減、操縦容易性の確保及び開発・生産システムの効率 化を実現するために必要となる要素技術等の試作機の開発への適用につい て、第 2 回中間評価時目標の達成の目途が得られていること。 第 2 回中間評価 【目標 1】 機体外形形状、荷重、構造・装備等、機体の基本的な仕様設定を (~平成 19 年度) 完了していること。 【目標 2】 環境負荷低減、操縦容易性の確保及び開発・生産システムの効率 化を実現するために必要となる要素技術等の開発の成果が試作機の開発に 適用できる水準に到達していること。 第 1 回中間評価時点の目標は、以下の通り言い換える事ができる。 【目標 1】 「機体仕様の基本構想策定を完了している事。」 【目標 2】 「表Ⅲ-1.2-2、②~⑤及び⑦にて、それぞれ当初計画通りの成果を獲得し、平成 19 年度 末時点には試作機(⑦は試作機詳細設計以降の作業への)適用が可能と見込まれる事。」 事業の目標(最終目標)は、試作機(開発作業)による実証(試験)を通じて初めて達成度が評価で きるものである為、その達成手段である研究開発テーマ②~⑤及び⑦を対象とする中間評価段階の 目標(【目標 2】)は「最終目標達成の目処が得られている事/・・・の水準に達している事」との表現に ならざるを得ないが、事業者において計画した個々のテーマの具体的な確認項目、評価/検証手段 等を記した(本事業は、事業者が主体的に取り組む研究開発事業に対し、NEDO がその事業費の一 部を負担する補助事業)。目標達成度の自己評価では、これら評価/検証ステップを計画通り実行し たか否か、その結果は想定どおりであったか否か、等を勘案した。(1.3 項を参照。) 同様の目的に供する為、研究開発テーマ①(機体仕様策定作業)も、仕様の妥当性、競争力等の 確認手段を記した。 表Ⅲ-1.2-4 に各研究開発テーマを細分化した開発項目それぞれについて、(最終的な)開発目標、 第 1 回/第 2 回中間評価時点での評価指標(評価・検証手段)を纏める。 Ⅲ-6 【表Ⅲ-1.2-4(1/6) 各開発項目の目標と評価・検証手段 (最終/第 2 回中間評価時点/第 1 回中間評価時点)】 ①個別要素技術の拘束条件 最終(事業)目標/確認手段 第 2 回中間評価時点 第 1 回中間評価時点 (機体基本仕様)の策定 【目標】 ①燃費 2 割削減;対 EMB175 【目標】 ①機体基本仕様の策定を完了 (燃費 2 割削減;対 EMB175) 【評価・検証手段】 ①競争力(燃費 2 割削減を含む) ・飛行試験で確認 【評価・検証手段】 ①技術的成立性 【目標】 ①機体仕様の基本構想策定を完了 (燃費 2 割削減;対 EMB175) 【評価・検証手段】 ①技術的成立性 ・詳細風試で空力特性を確認 ・基本風試で空力特性を初期確認 ・エンジン基本仕様設定を完了 ・エンジン初期仕様の設定を完了 ・構造基本仕様設定を完了 ・構造初期仕様の設定を完了 ・装備品基本仕様設定を完了 ・主要装備品の初期仕様設定を完了 ・CATIA 等でレイアウト成立性を確認 ・レイアウト成立性を概略確認 Ⅲ-7 ・DER 等に規定適合性を基本確認 ②競争力(燃費 2 割削減を含む) ②競争力(燃費 2 割削減を含む) ・詳細風試で空力特性を確認 ・基本風試で空力特性を初期確認 ・燃費競争力を解析で確認 ・燃費競争力を解析で初期評価 ③エアライン要求適合性 ・エアライン・インタビューにて確認 ③エアライン要求適合性 ・エアライン・インタビューにて確認 【表Ⅲ-1.2-4(2/6) 各開発項目の目標と評価・検証手段 (最終/第 2 回中間評価時点/第 1 回中間評価時点)】 ②先進材料/加工・成形技術 (a) FSW (胴体一般部) 最終(事業)目標/確認手段 【目標】 第 2 回中間評価時点 【目標】 ①重量: アルミ・リベット構造と同等以下 ①構造成立性を確認 ②パネル製造コスト: 50%減 ②重量・コスト目標達成を概ね確認 (対アルミ・リベット構造) 【評価・検証手段】 ①実機強度試験で強度特性他を確認 ②規定適合性は航空局承認取得に目処 ③試作機製造過程で量産コストを確認 (初期コストから量産コストを見通し) 第 1 回中間評価時点 【目標】 ①構造成立性に目処付け (安全性・生産・運用に致命的欠陥がない事) ③設計データ(許容値)取得を概ね完了 ②重量・コスト目標の達成に目処 ④プロセス・スペック等の策定を完了 ③設計データ、スペックのドラフト版を策定 ⑤試作機製造設備の設置を完了 ④平成 19 年度末試作機適用準備完了に目処 【評価・検証手段】 ①実大構造要素試験で強度特性を確認 (胴体一般部を模擬したバレル供試体) ②航空局の了承を取得; -設計データ取得試験計画 【評価・検証手段】 ①クーポン試験・部分構造要素試験で; -基本特性(静・疲労・亀裂進展等)を確認 -耐食性付与方法の成立性を確認 -製造プロセス成立性を初期確認 -プロセス・スペック等 Ⅲ-8 ③規定適合性につき、DER 評価で確認 (b) 低コスト複合材 (A-VaRTM)(尾翼) 【目標】 【目標】 ①重量:15~20%減(対アルミ構造) ①構造成立性を確認 ②量産コスト:アルミ構造と同等 ②重量・コスト目標達成を概ね確認 ①実機強度試験で強度特性他を確認 ②規定適合性は航空局承認取得に目処 ③試作機製造過程で量産コストを確認 (初期コストから量産コストを見通し) ②規定適合性につき、DER の初期評価 【目標】 ①構造成立性に目処付け (安全性・生産・運用に致命的欠陥がない事) ③設計データ(許容値)取得を概ね完了 ②重量・コスト目標の達成に目処 ④プロセス・スペック等の策定を完了 ③設計データ、スペックのドラフト版を策定 ⑤試作機製造設備の設置を完了 【評価・検証手段】 (工具・治具仕様、検査方法等) 【評価・検証手段】 ①実大構造強度試験で強度特性を確認 (静強度・疲労強度・残留強度等) ②低コスト工法の成立性を確認 ③航空局の了承を取得; -設計データ取得試験計画 -プロセス・スペック等 ④規定適合性につき、DER 評価で確認 ④平成 19 年度末試作機適用準備完了に目処 【評価・検証手段】 ①クーポン試験・部分構造要素試験で; -基本強度特性(静・疲労・CAI 等)を確認 -製造プロセス成立性を初期確認 (治具、加工・組立段取り、検査方法等) ②規定適合性につき、DER の初期評価 【表Ⅲ-1.2-4(2/6)(続き) 各開発項目の目標と評価・検証手段 (最終/第 2 回中間評価時点/第 1 回中間評価時点)】 ②先進材料/加工・成形技術 (c) 低コスト複合材主翼 (RTM 他) 最終(事業)目標/確認手段 【目標】 第 2 回中間評価時点 【目標】 ①重量:15~20%減(対アルミ構造) ①構造成立性の確認 ②コスト:アルミ構造と同等 ②製造スペックの策定 第 1 回中間評価時点 【目標】 ①構造成立性に目途付け ③重量・コスト目標達成の確認 ④適用可否判断 【評価・検証手段】 【評価・検証手段】 【評価・検証手段】 ①設計データの取得 ①基礎強度データの取得 ①クーポン試験での基礎強度特性データ取得 ②実機強度試験で強度特性他を確認 ②概念設計に基づく重量の確認 ②主翼燃料タンク成立性確認試験(耐雷及び ③規定適合性は航空局承認取得に目処 ③概念設計に基づくコストの確認 シール性) ④実大成形試験での製造性の確認 ⑤DER 評価 Ⅲ-9 (d) 低コスト金属主翼 (FSW 他) 【目標】 【目標】 【目標】 ①重量:アルミ・リベット構造と同等以下 ①構造成立性の確認 ①構造成立性に目途付け ②コスト:接合コスト 20%減 ②製造スペックの策定 ②重量・コスト目標達成の目途付け (対アルミ・リベット構造) ③重量・コスト目標達成の確認 ④適用可否判断 【評価・検証手段】 【評価・検証手段】 【評価・検証手段】 ①設計データの取得 ①接合プロセスの確認 ①接合プロセスに目途付け ②実機強度試験で強度特性他を確認 ②基礎強度データの取得 ②クーポン・部分構造要素試験での基礎強度 ③規定適合性は航空局承認取得に目処 ③概念設計に基づく重量の確認 特性データ取得 ④概念設計に基づくコストの確認 ⑤DER 評価 【表Ⅲ-1.2-4(3/6) 各開発項目の目標と評価・検証手段 (最終/第 2 回中間評価時点/第 1 回中間評価時点)】 ③先進空力設計技術 (a) 高揚抗比主翼 (b) 高効率高揚力装置 最終(事業)目標/確認手段 【目標】 ①解析精度の実機実証 第 2 回中間評価時点 【目標】 ①解析精度の詳細風試による確認 -計算格子自動生成ツール開発、等 【評価・検証手段】 (d) 実機空力特性推定技術 ①確認風試による確認 -解析精度/燃費低減効果 ②飛行試験による最終確認 N/A 【評価・検証手段】 ①詳細風試による確認 -燃費低減効果 ③機体設計適用の過程で計算速度を評価 【目標】 Ⅲ-10 ②推定精度向上 ①基本風試(低速半裁)・詳細風試適用 -同右 【目標】 ①摩擦抵抗の推定精度向上 及び予測手法 ①詳細風試による検証 フラッタ特性解析技術 【目標】 ①空力現象理解の促進 ②推定精度向上 (映り込み補正、等) 【評価・検証手段】 ①基本風試への適用 -圧力データ等との比較による精度評価 【目標】 ①摩擦抵抗評価ツールの遷移判定条件構築 ②空力的見地からの製作要求設定 【評価・検証手段】 (ウ) 非平面翼の遷音速 ①基本風試で解析精度を初期確認 ②機体設計に適用、燃費低減効果を確認 【評価・検証手段】 N/A 【評価・検証手段】 -解析精度 ①空力現象理解の促進 (ア) 光学的計測技術 (イ) 乱流抵抗低減 ①高精度解析手法の確立(CFD 技術) ③計算速度の向上 (全機干渉抵抗低減) (MDO)を含む) 【目標】 ②同時最適化技術(MDO)の確立 (c) 推進系インテグレーション (空力・構造同時最適化技術 第 1 回中間評価時点 【目標】 ①解析精度の実機実証 【目標】 ①同右 ※第二段階: N-S ベース解析ツール 【評価・検証手段】 ①確認フラッタ風試による確認 ②飛行試験による最終確認 【評価・検証手段】 【評価・検証手段】 ①要素風試による検証 【目標】 ①非平面翼・遷音速フラッタ解析ツール開発 ※第一段階: Euler ベース解析ツール 【評価・検証手段】 ①フラッタ風試による解析精度確認 ①予備フラッタ風試で解析精度を初期検証 -Euler ベースの解析ツール ②機体設計適用の過程で計算速度を評価 -NS ベースの解析ツール 【表Ⅲ-1.2-4(4/6) 各開発項目の目標と評価・検証手段 (最終/第 2 回中間評価時点/第 1 回中間評価時点)】 ④コックピット・システム技術 最終(事業)目標/確認手段 【目標】 ①実機コックピットの完成 第 2 回中間評価時点 【目標】 ①コックピット基本仕様の確定 ②ワークロード低減効果の実証 第 1 回中間評価時点 【目標】 ①コックピット基本構想の設定 -コックピット・レイアウト/機器配置 -画面コンテンツ(Normal/Emergency) -操作パネル -システム・アーキテクチャ -アビオニクス機器要求、等 【評価・検証手段】 ①エアライン要求適合性 ・パイロット評価にて確認 (実機相当シミュレータ及び実機) ・エアライン・インタビューにて確認 Ⅲ-11 ②規定適合性 ・航空局承認取得に目処 (航空局パイロットによる実機評価) 【評価・検証手段】 ①エアライン要求適合性 ・パイロット評価(エアライン) (コックピット・シミュレータ) ・エアライン・インタビューにて評価 ②技術的成立性(含コスト目標適合性) ・装備品メーカとの協議で基本合意 ③規定適合性 ・DER 及び航空局評価で概ね確認 【評価・検証手段】 ①パイロット要求適合性 ・パイロット評価(社内パイロット) ②技術的成立性(含コスト目標適合性) ・装備品メーカとの協議を開始 ③規定適合性 ・規定適合性証明計画の策定 【表Ⅲ-1.2-4(5/6) 各開発項目の目標と評価・検証手段 (最終/第 2 回中間評価時点/第 1 回中間評価時点)】 ⑤操縦システム技術 最終(事業)目標/確認手段 【目標】 ①実機操縦システムの完成 第 2 回中間評価時点 【目標】 ①操縦システム基本仕様の確定 ②ワークロード低減効果の実証 第 1 回中間評価時点 【目標】 ①操縦システム基本構想の設定 -操縦システム方式の選定 -システム構成 -設計要求 -制御ロジック/パラメータ案 -操縦システム構成機器要求、等 【評価・検証手段】 ①飛行性/操縦性要求適合性 ・パイロット評価 (実機相当シミュレータ及び実機) ・エアライン・インタビューにて確認 Ⅲ-12 ②規定適合性 ・航空局承認取得に目処 (航空局パイロットによる実機評価) 【評価・検証手段】 ①飛行性/操縦性要求適合性 ・パイロット評価 (操縦シミュレータ) ・エアライン・インタビューにて評価 ②技術的成立性(含コスト目標適合性) ・装備品メーカとの協議で基本合意 ③規定適合性 ・DER 及び航空局評価で概ね確認 【評価・検証手段】 ①飛行性/操縦性要求適合性 ・シミュレーション運動解析 ②技術的成立性(含コスト目標適合性) ・装備品メーカとの協議を開始 ③規定適合性 ・規定適合性の見通し ・規定適合性証明計画の策定 【表Ⅲ-1.2-4(6/6) 各開発項目の目標と評価・検証手段 (最終/第 2 回中間評価時点/第 1 回中間評価時点)】 ⑦開発・生産システムの効率化 最終(事業)目標/確認手段 第 2 回中間評価時点 第 1 回中間評価時点 (a) デジタル・エンジニアリング、デジタル・マニュファクチャリング及びバーチャル・ファクトリ技術の実用化 (ア) デジタル・エンジニアリング 【目標】 (イ) デジタル・マニュファクチャリング ①試作機設計・製作作業に適用 (ウ) バーチャル・ファクトリ ②コスト低減効果の実証 【目標】 ①デジタル・エンジニアリングに付き; -作業プロセス設定を完了 -主要システム開発が概ね完了 【目標】 ①デジタル・エンジニアリングにつき; -最新ツールの機能評価を概ね完了 -主要システム構想策定を概ね完了 ②デジタル・マニュファクチャリング及びバー ②デジタル・マニュファクチャリング及びバーチ チャル・ファクトリ技術につき; ャル・ファクトリ技術につき; -作業プロセス設定を概ね完了 -最新ツールの機能評価を概ね完了 -主要システム開発準備を完了 【評価・検証手段】 【評価・検証手段】 ①過去事例との(単位)工数比較 ①機体基本仕様策定作業への試適用 ②同じく不具合発生頻度比較 ②部品試作/試験供試体製作への試適用 【評価・検証手段】 ①機体初期仕様策定作業への試適用 Ⅲ-13 (b) 高効率設計・製造情報マネジメント手法の開発・実用化 (ア) 設計・製造情報の 一括管理システム 【目標】 (a)項に同じ 【評価・検証手段】 (a)項に同じ 【目標】 【目標】 ①作業プロセス設定を概ね完了 ①最新ツールの機能評価を概ね完了 ②主要システム開発が概ね完了 ②システム構想策定に着手 【評価・検証手段】 ①機体基本仕様策定作業への試適用 【評価・検証手段】 ①社内レビュー ②部品試作/試験供試体製作への試適用 (イ) プロジェクト・マネジメント手法 【目標】 【目標】 【目標】 ①試作機開発管理作業に適用 ①作業プロセス設定を完了 ①主要項目の管理構想策定を概ね完了 ②コスト低減効果の実証 ②主要システム開発を概ね完了 ②システム構想の策定を概ね完了 ③文書化(ルール化)を概ね完了 【評価・検証手段】 ①過去事例との(単位)工数比較 ②同じく不具合発生頻度比較 【評価・検証手段】 ①18~19 年度開発管理作業への試適用 【評価・検証手段】 ①社内レビュー 1.3. 目標達成度 1.3.1 事業全体の目標達成度 第 1 回中間評価時点の 2 つの上位目標に対する達成度を下記に示す。各研究開発テーマの成果 概要と中間目標に照らした達成度を 1.3.2 項に纏める。 【目標 1】 「機体仕様の基本構想策定を完了している事。」 70~90 席機クラスの機体仕様の基本構想策定を完了した。 従って、目標 1 は達成した。 【目標 2】 「表Ⅲ-1.2-1、②~⑤及び⑦にて、それぞれ当初計画通りの成果を獲得し、平成 19 年度 末時点には試作機(⑦は試作機開発作業への)適用が可能と見込まれる事。」 表Ⅲ-1.3-1 に示す通り、ほぼ全ての研究開発テーマにおいて当初想定通りの成果を得た。 従って、目標 2 は達成した。 尚、表Ⅲ-1.3-1 及び 1.3.2 項の「達成度」,「評価」欄の記号の意味は以下の通り。 ◎: 当初想定以上の成果を獲得 ○: 想定通りの成果を獲得 △: 概ね想定通りの成果を獲得したが、一部未達又は課題あり ×: 実施せず、又は、所望の成果を獲得できず Ⅲ-14 【表Ⅲ-1.3-1 各研究開発テーマの目標と達成度纏め(1/2)】 研究開発テーマ 目標 達成度 ①拘束条件の策定 (機体基本仕様の策定) 機体仕様の基本構想策定を完了している事。 ○ ②先進材料/加工・成形技術 ①構造成立性に目処付け (安全性・生産・運用に致命的欠陥がない事) ②重量・コスト目標の達成に目処 ③設計データ、スペックのドラフト版を策定 ④平成 19 年度末試作機適用準備完了に目処 ○ ①構造成立性に目処付け (安全性・生産・運用に致命的欠陥がない事) ②重量・コスト目標の達成に目処 ③設計データ、スペックのドラフト版を策定 ④平成 19 年度末試作機適用準備完了に目処 ○ 低コスト複合材主翼(RTM 他) ①構造成立性に目途付け ○ 低コスト金属主翼(FSW 他) ①構造成立性に目途付け ○ 高揚抗比主翼/高効率高揚力装置/ ①高精度解析手法の確立(CFD 技術) ②同時最適化技術(MDO)の確立 ③計算速度の向上 -計算格子自動生成ツール開発、等 ◎ ①空力現象理解の促進 ②推定精度向上 (映り込み補正、等) ○ FSW (胴体一般部) 低コスト複合材(A-VaRTM)(尾翼) Ⅲ-15 ③先進空力設計技術 推進系インテグレーション(MDO を含む) 実機空力特性推定技術 -光学的計測技術 実機空力特性推定技術 ①摩擦抵抗評価ツールの遷移判定条件構築 -乱流抵抗低減及び予測手法 実機空力特性推定技術 -非平面翼の遷音速フラッタ特性解析技術 ①非平面翼・遷音速フラッタ解析ツール開発 ※第一段階: Euler ベース解析ツール ○ ○ 【表Ⅲ-1.3-1 各研究開発テーマの目標と達成度纏め(2/2)】 研究開発テーマ ④コックピット・システム技術 ⑤軽量・低コスト操縦システム技術 Ⅲ-16 ⑦開発・生産システム デジタル・エンジニアリング の効率化 デジタル・マニュファクチャリング、及び 目標 ①コックピット基本構想の設定 -コックピット・レイアウト/機器配置 -画面コンテンツ(Normal/Emergency) -操作パネル -システム・アーキテクチャ -アビオニクス機器要求、等 ○ ①操縦システム基本構想の設定 -操縦システム方式の選定 -システム構成 -設計要求 -制御ロジック/パラメータ案 -操縦システム構成機器要求、等 ○ ①最新ツールの機能評価を概ね完了 ②主要システム構想策定を概ね完了 ○ ①最新ツールの機能評価を概ね完了 バーチャル・ファクトリ技術 高効率設計・製造情報マネジメント手法の開発・実用化 -設計・製造情報の管理システム 高効率設計・製造情報マネジメント手法の開発・実用化 -プロジェクト・マネジメント手法 達成度 ○ ①最新ツールの機能評価を概ね完了 ②システム構想策定に着手 △ ①主要項目の管理構想策定を概ね完了 ②システム構想の策定を概ね完了 ○ 1.3.2 各研究開発テーマの成果概要と目標達成度 (平成 17 年度末時点) 本項では、各研究開発テーマの成果概要と表Ⅲ-1.2-4 に纏めた中間評価時点での目標に照らした 目標達成度を記載する。 (1) 個別要素技術開発の拘束条件の策定(機体基本仕様の策定まで) 成果概要は以下の通り。 ① 機体仕様と技術的成立性 (a) 真円断面・114”径の 4 列座席胴体、後胴床上+前胴床下の荷物室配置、エンジン翼下搭載 (ウィングマウント形態)を外形上の特徴とする機体仕様の基本構想策定を完了した。最大限 の共通性を持ちつつ、70 席クラス/90 席クラス双方で必要十分な競争力=燃費優位性等を 確保するよう、70 席クラスと 90 席クラスのファミリー構想を併せて策定した。 (b) 機体構想/初期外形形状(風洞試験模型用の OML)策定の過程で、エンジン/主要装備品 の初期仕様/配置構想、構造初期仕様等を併せて設定、レイアウト成立性を確認した。空力 特性評価を目的とする風洞試験模型設計・製作作業と並行して、構造仕様最適化を目的と する各種トレードオフ検討や装備品メーカとの技術協議を実施中である。 ② 競争力 (a) エンジン燃費改善(対 EMB-175 エンジン、SFC=▲10%)を前提とした解析ベースの推定 (CFD 解析による空力特性を用いたミッション計算)では、MJ-90(90 席クラス)は同クラスの 代表的競合機:EMB175 に対して 20%強の燃費優位性を確保している。 (b) 初期外形形状の空力特性について基本風洞試験で評価中であるが、高速特性(巡航特性) は概ね解析通りの結果となっている。エンジン SFC の改善量見込みは 10%を上回っており、 燃費目標(機体・エンジン合計で▲20%)は達成見通しありと言える。 ③ エアライン要求適合性 (a) 当該機体仕様について、日米欧各地域のカスタマ候補エアラインのレビューを受けた。 (b) 過度な客室快適性(=乗客と壁との足元/頭部クリアランス等)=過度に大きい胴体断面を 避けて 70~90 席クラスで燃費(運航経済性)を最適化する基本コンセプトには、ほぼ全ての エアラインが賛同した。個別エアラインの事情(スコープ・クローズ対応等)を勘案して、主とし て客室レイアウトに関する細部仕様をカスタマイズする必要があるものの、機体構想は概ね 受け入れ可能との感触を得た。 Ⅲ-17 目標達成度を纏める。 目標 機体仕様の基本構想策定を完了している事。 評価・検証 ①技術的成立性 ・基本風試で空力特性を初期確認 ・エンジン初期仕様の設定を完了 ・構造初期仕様の設定を完了 ・主要装備品の初期仕様設定を完了 ・レイアウト成立性を概略確認 ②競争力(燃費 2 割削減を含む) ・基本風試で基本空力特性を初期確認 ・燃費競争力を解析で初期評価 ③エアライン要求適合性 ・エアライン・インタビューにて確認 手段 達成 成立性を 初期確認 競争力を 初期確認 適合性を確認 総合評価 ○ (2) 先進材料/加工・成形技術の開発 (a) FSW (胴体一般部) 成果概要は以下の通り。 ① 構造成立性 (ア) クーポン試験/構造要素試験にて、静強度はリベット構造に勝る事を確認した。 (イ) 疲労強度は、面外荷重負荷時、及び、断続接合部でリベット構造に劣る。両条件が重なる マウスホール部を模擬した構造要素試験の結果、MJ で想定する荷重では疲労寿命が設 計寿命を大きく上回るものの、リベット構造に劣る事を確認した。従って、応力を下げる設 計上の配慮が必要である。 (ウ) 亀裂進展特性はリベット構造に劣る。目視検査で見落とす可能性がある最大亀裂寸法(2 inch=50 mm を想定)に達した後、破断までに要するサイクル数は、リベット構造の 1/3 程 度である。安全性を確保するには検査間隔を短くする等の措置を要し、整備費増大をもた らす為、実用化の観点からは致命的欠陥となる。 原因は接合時の熱による引張残留応力である事が判明した為、ローラを接合部に押し付 けるバーニシング加工で残留応力を除去する方法を評価した。バーニシング処理後の亀 裂進展速度はリベットよりも低下し、当該処理の成立性を確認した。 ② 製造プロセス (ア) 予め耐食性を付与した部品を接合しても強度・耐食性に悪影響がない事を確認した。 (イ) 開発初期段階における薄板パネル試作では、接合に伴う熱によって非常に大きな歪を発 生したが、その後の治工具/工具の改良によって、リベット組立パネルと同等の精度を実 現できる事を確認した。治工具構想と共に、基本製造プロセスの策定を完了した。 また、欠陥検査手法として、超音波検査手法の成立性を初期確認した。 ③ 重量・コスト (ア) 重量は現段階ではリベット構造と同等、即ち、目標通りと見込む。但し、疲労特性/亀裂 Ⅲ-18 進展特性はリベット構造に劣る事、リベット構造のような「クラック・ストッパ」が存在しない 一体構造様式である為に、規定適合性証明の過程で、応力を下げる設計とせざるを得な い場合には重量が増大するリスクは残る。 (イ) 他方、量産コストはリベット構造と比較評価を実施中である。胴体スキン~フレーム接合 への適用を止めてスキン~ストリンガ接合のみへの適用とした事から、コスト効果は当初 想定よりも小さくなる見込みである。 ④ DER レビュー (ア) 規定適合性証明計画を策定し、DER レビューを受審した。規定適合性の証明を危うくする 致命的欠陥は存在せず、技術的成立性は見込めるとの評価であった。但し、実機設計/ 荷重を模擬した試験条件で、多くの試験データを系統的に蓄積する必要ありとの指摘を 受けた。 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 手段 ①構造成立性に目処付け (安全性・生産・運用に致命的欠陥がない事) ②重量・コスト目標の達成に目処 ③設計データ、スペックのドラフト版を策定 ④平成 19 年度末試作機適用準備完了に目処 ①クーポン試験・部分構造要素試験で; -基本特性(静・疲労・亀裂進展等)を確認 -耐食性付与方法の成立性を確認 -製造プロセス成立性を初期確認 (工具・治具仕様、検査方法等) ②規定適合性につき、DER の初期評価 達成 評価を継続 概ね達成 概ね達成 初期確認を 完了 完了 評価 ○ (b) 低コスト複合材(A-VaRTM)(尾翼) 成果概要は以下の通り。 ① 強度・剛性及び成形プロセス開発 3 ストリンガパネルの圧縮強度試験を実施、目標許容歪 4000μを達成できる、即ち 15%を超 える重量軽減を達成できる可能性が高い事を確認した。また、熱サイクルが強度に与える影 響を評価して殆ど影響がない事を確認した。疲労強度特性の確認が課題として残るものの、 尾翼桁間構造に適用できる性能を持つと判断した。 3 ストリンガパネル供試体製作に先立って製造プロセスを設定、強度評価に耐える供試体を 製作できる、即ち成形プロセス自体の基本的成立性を確認した。プロセス・スペック策定を進 める為、強度特性に影響を与えうる成形パラメータ(樹脂注入温度、昇温速度、樹脂ブリード 量)を変化させて強度特性(CAI 強度)のばらつきを評価した。結果、プロセス変動への依存性 (強度ばらつき)はプリプレグ材と同等若しくは小さく、安定した品質/強度を実現できる事を確 認した。 Ⅲ-19 ② 低コスト工法 成形プロセス簡素化を目的に、織物技術を活用した製織ドライプリフォーム開発に着手した。 第一歩として、I 型ストリンガプリフォームの基本特性を評価した。部分的な繊維うねりや樹脂リ ッチ等の品質課題は残るが、弾性率は予測可能、破壊荷重/破壊モードも想定通り、損傷許 容性も既存方法(NCW)と同等である事を確認した。また、プリプレグはスキンプライドロップオ フ部に 100:1 のランプレシオが必要だが、ドライプリフォームはドレープ性(なじみ性)に優れる 為、25:1 でも良好な品質が実現できる事を確認した。重量減への寄与も期待できる。 ③ 実大構造の試作/コスト 実大垂直尾翼を試作し、製造性・品質面で大きな問題はない事を確認した。また、試作過程 で取得したデータをもとにコストを評価した。トータルコストはプリプレグ構造よりも 20%以上削 減でき、メタル構造コストの約 1.1 倍程度まで低減できる見込みを得た。 ④ 規定適合性 規定適合性にかかる課題、規定適合性証明方法等について、複合材構造 DER 及び JCAB 殿との協議を開始した。 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 手段との 対応 ①構造成立性に目処付け (安全性・生産・運用に致命的欠陥がない事) ②重量・コスト目標の達成に目処 ③設計データ、スペックのドラフト版を策定 ④平成 19 年度末試作機適用準備完了に目処 ①クーポン試験・部分構造要素試験で; -基本強度特性(静・疲労・CAI 等)を確認 -製造プロセス成立性を初期確認 (治具、加工・組立段取り、検査方法等) ②規定適合性につき、DER の初期評価 達成 達成 達成 達成 完了 評価を開始した 総合評価 ○ (c) 低コスト複合材主翼(RTM 他) 成果概要は以下の通り。 ① 要求仕様への適合性 主翼複合材化への代表的な仕様である、耐雷性/液密性(シール性)の確保について評価 試験を実施した。 耐雷試験では、候補耐雷材の試験後損傷状況比較、想定した耐雷構造様式での耐雷試験 結果から、耐雷材選定、耐雷構造コンセプトに関する妥当性を確認した。 ファスナシール試験では、ファスナシール部を模擬した供試体を用いてリーク試験及び疲労 試験を実施し、シールコンセプトの妥当性を確認した。 ② 低コスト製造技術 Ⅲ-20 製造コスト低減のために、表面処理法の検討、RTM 適用性試験を実施した。 表面処理法の検討ではテープ試験を実施し、大面積、表面の凹凸に関わらず短時間での 作業が可能であるブラスト適用の目処を得た。 RTM 適用性試験では基礎特性データを取得し、複合材で問題となる圧縮強度、HTW (Hot-Wet)強度が高く、強度上の適用目途を得た。また、作業性(含浸性)も良好で、材料コス トが安価であることから、コスト低減の目途も得られた。 目標達成度を纏める。 目標 ①構造成立性に目途付け 達成 評価・検証 ①クーポン試験での基礎強度特性データ取得 完了 手段との ②主翼燃料タンク成立性確認試験(耐雷及びシール性) 完了 対応 総合評価 ○ (d) 低コスト金属主翼(FSW 他) 成果概要は以下の通り。 ① 要求仕様への適合性(FSW) FSW 接合部、構造要素部を模擬した試験片で強度データを取得、FSW 適用の目途を得た。 ② 接合プロセス確立(FSW) 試験片、供試体製作を通じて、接合条件、接合治具コンセプト等のデータを取得し、基本接 合プロセスを確立した。 ③ 修理・検査技術の確立(FSW) 修理性確認試験を実施し、静強度の低下が見られたものの、再 FSW によって内部品質上は 修理が可能であることを確認した。強度低下の対策として、重量影響を考慮した許容値設定方 法の検討、その他修理法検討も含めた検討が必要である事が分かった。 ④ 低コスト製造技術の確立(FSW 他) 低コスト製造技術として、Age Forming 適用性試験を実施し、FSW パネルの Age Forming 成 形性を確認、実用化に向け、製造プロセス/スペック構築に資する基本データを取得した。 機体規模の大型化によって厚板への FSW 適用が必要となるが、厚板では接合速度が低下 することから、接合速度を増大するための対策が課題である。 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 手段との 対応 ①構造成立性に目途付け ②重量・コスト目標達成の目途付け ①接合プロセスに目途付け 達成 課題あり 基本プロセス を確立 ②クーポン・部分構造要素試験での基礎強度特性データ取得 総合評価 Ⅲ-21 完了 ○ (3) 先進空力設計技術の開発 (a) 高揚抗比主翼/高効率高揚力装置/推進系インテグレーション(MDO を含む) 成果概要は以下の通り。 ① 高揚抗比主翼の設計技術 高精度 CFD と MDO 技術を活用したクリーン主翼設計技術を開発した。本技術を設計に適用 し、従来よりも短期間で、他機よりも厚い翼厚比を保ちつつ低抵抗化を図り、高速巡航時の空 力設計要求を満足する機体形状を策定、風洞試験模型を設計・製作した。基本風洞試験で空 力特性を評価中であるが、速報では概ね解析通りの空力特性が得られている。 ② 高効率高揚力装置の設計技術 高効率な高揚力装置設計技術の獲得を目的に、従来は他機例等のデータベースや風洞試 験、簡易解析に多くを依存していた高揚力装置設計につき、CFD 解析技術、MDO 技術を用い た設計技術を開発した。特に、世界的にも例のない、初期設計段階における 3 次元高揚力装 置展開時の CFD 解析技術適用を実現し、風洞試験以前に高揚力装置形態の性能評価を可 能とした。 ③ 推進系インテグレーションを含む全機干渉抵抗低減技術 風洞試験等では推算が困難ゆえに飛行試験開始後に問題が顕在化するリスクを有する、 推進系を中心とした全機インテグレーションにつき、CFD 解析技術による推算を可能とした。 さらに、MDO 技術を活用した推進系搭載形態における最適化ツールを開発・実用化した。本 ツールを活用して空力設計要求を満足する機体形状設計を実施した。 ④計算作業効率化 形状及び解析格子作成作業の大幅な効率化と、大規模並列解析による解析時間短縮等に より、従来手法に比して設計時間を半減できる事を確認した。 目標達成度を纏める。 目標 ①高精度解析手法の確立(CFD 技術) 達成 ②同時最適化技術(MDO)の確立 達成 評価・検証 ③計算速度の向上 -計算格子自動生成ツール開発、等 ①基本風試で解析精度を初期確認 手段 ②機体設計に適用、燃費低減効果を確認 効果を確認 ③機体設計適用の過程で計算速度を評価 速度向上を確認 達成 確認中 総合評価 ◎ (b) 実機空力特性推定技術-光学的計測技術 成果概要は以下の通り。 光学的計測技術である感圧塗料計測技術につき、主翼の推進系搭載部の如く、複雑な形状を Ⅲ-22 持つ部分で発生する自己反射に伴う誤差を除去する補正法を開発し、風洞試験で有効性を検証 して技術を確立した。本技術によって感圧塗料計測適用範囲が拡大すると共に、計測精度が向 上した為、実機開発への適用が可能となった。 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 手段 ①空力現象理解の促進 ②推定精度向上 (映り込み補正、等) ①基本風試への適用 -圧力データ等との比較による精度評価 達成 達成 完了 総合評価 ○ (c) 実機空力特性推定技術-乱流抵抗低減及び予測手法 成果概要は以下の通り。 実機性能推算において最も困難である抵抗推定につき、乱流摩擦抵抗推算に供する遷移予 測ツールを整備し、要素風洞試験を経て遷移判定条件を設定した。本遷移予測ツールを活用す れば、風洞試験結果から実機抵抗を推定する際の推定精度向上が期待できる。 目標達成度を纏める。 目標 ①摩擦抵抗評価ツールの遷移判定条件構築 評価・検証 ①要素風試による検証 達成 完了 手段 総合評価 ○ (d) 実機空力特性推定技術-非平面翼の遷音速フラッタ特性解析技術 成果概要は以下の通り。 MJ で想定される非平面翼形態に適用できる、衝撃波・粘性効果を考慮可能な CFD(Euler/ Navier-Stokes)による空気力計算をベースとした遷音速フラッタ解析ツールを開発した。(第一段 階として Euler ベースのツール) 当該ツールで T 尾翼フラッタ風洞試験の検証計算を実施し、線形解析(NASTRAN)では捕捉で きない遷音速領域でのフラッタ速度低下を精度良く推算できることを確認した。 さらに、ウィングマウント形態主翼のフラッタ風洞予備試験の検証計算を実施し、遷音速効果 の小さい亜音速領域では線形解析(NASTRAN)と同等のフラッタ速度推算精度が得られることを 確認した。平成 18 年度にウィングマウント形態主翼のフラッタ風洞本試験を実施し、ウィングマウ ント形態主翼に適用した際のツール精度を検証する(亜音速~遷音速)。 また、64bitPC の導入によって、大幅な計算時間短縮を実現できる見込みを得た。 Ⅲ-23 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 手段 ①非平面翼・遷音速フラッタ解析ツール開発 ※第一段階: Euler ベース解析ツール ①予備フラッタ風試で解析精度を初期検証 達成 検証完了 ②機体設計適用の過程で計算速度を評価 速度向上確認 総合評価 ○ (4) コックピット・システム技術の開発 成果概要は以下の通り。 ① ディスプレイ・システム構想の策定 環境条件等を設定のうえ RFI(提案要求)に纏めてサプライヤに発行し、アビオニクス・メーカと の技術調整を交えながら、以下の特徴を有する次世代コックピットのディスプレイ・システム構想 を策定した。 (ア) グラフィックを用いた高い状況認識性の実現 (イ) 将来 CNS/ATM 環境下で必要とされる、より高度なシステムへの拡張性の確保 (ウ) ペーパーレス・コックピットの推進 さらに、アビオニクス機能構成(標準/オプション)を設定するとともに、以下の特徴を有する機 器構成を設定した。 (エ) CMS(Central Maintenance System)による整備性向上の実現 ② コックピット・レイアウト構想の策定 ヒューマン・エラーの誘発を極力排除することを目的とし、以下の特徴を有するコックピット・レ イアウト構想を策定した。 (ア) 大型ディスプレイ 4 面を配置し、可能な限りの表示占有率を確保した主計器盤 (イ) 良好な操作性及び外界・計器からの視線移動が最小であることを考慮して、自動操縦関連 の操作機器を中心に配置したグレアシールド (ウ) 前方に高ワークロード下での操作が求められる機器及び表示ディスプレイとの近接性が求 められる操作機器を、後方にはエンジン出火時の手順の流れを考慮して消化系統パネルを 配置したセンター・ペデスタル (エ) 使用頻度の低い各装備システムの操作系を中心に、想定される出発前操作手順に沿って 配置されたオーバーヘッド・パネル ③ コックピット構想の初期評価 実物大の簡易モックアップを製作し、図面のみでは評価が困難なパイロット・インタフェース等 に関する仕様の初期評価を行った。複数のパイロットによる評価を実施し、基本仕様が妥当であ ることを確認すると共に、コメントをコックピット構想に反映した。 Ⅲ-24 ④ コックピット・アレンジ基本設計 CATIA 上でコックピット・アレンジを3次元定義し、コックピット・アレンジの基本設計を実施した。 機首外形形状、アビオ機器配置、パイロット視界等の検討を行い、詳細なコックピット・アレンジ案 を設定した。さらに、CATIA の Human モジュールを用いたパイロットの操作性評価を行い、設計 の妥当性を確認した。 ⑤ パイロット・ワークロード評価ツールの準備 パイロット操作に関するワークロードの先行評価を目的として、パイロット・ワークロード評価ツ ールを JAXA と共同で準備した。コックピット設計結果を用いた評価作業に供する予定である。 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 手段 ①コックピット基本構想の設定 -コックピット・レイアウト/機器配置 -画面コンテンツ(Normal/Emergency) -操作パネル -システム・アーキテクチャ -アビオニクス機器要求、等 ①パイロット要求適合性 ・パイロット評価(社内パイロット) ②技術的成立性(含コスト目標適合性) ・装備品メーカとの協議を開始 ③規定適合性 ・規定適合性証明計画の策定 達成 適合性を確認 協議を開始 作成を開始 総合評価 ○ (5) 軽量・低コスト操縦システム技術の開発 成果概要は以下の通り。 ① 操縦システム基本構想の設定 軽量・低コストな操縦システムの開発を目指し、MJ 商品性の向上に寄与できる操縦システム・ アーキテクチャを以下の通り構築した。 (ア) 代表的なシステム・アーキテクチャを候補案としたトレードオフ検討を実施のうえ、操縦容易 性の確保、開発リスク低減、開発/量産コストの抑制、競合機からの先進性等を重視し、 Simplified Fly-By-Wire 方式を採用した。 (イ) 均一な操縦特性を実現する Scheduled Gearing 機能、片エンジン故障時の自動補償機能で ある Thrust Asymmetry Compensation 機能、パイロット認知性を向上させる"Soft" Protection 等の各種機能を付加し、操縦容易性の実現を図った。 (ウ) FHA (Functional Hazard Assessment) / FTA (Fault Tree Analysis)等により機体レベル安全 性解析を行い、安全性に関する要求を満足するシステム構想を設定した。 (エ) 油圧システムは、信頼性要求を考慮のうえ独立した 3 重冗長構成を採用した。 (オ) 機器に対する要求を RFI に纏めてサプライヤに発行、共同検討に向けて調整中である。 Ⅲ-25 ② 飛行性/操縦性設計要求案の設定 JAXA と協力して基礎フライトシミュレーション試験によるパイロット評価を行い、操縦特性とパ イロット・レーティングの関係を評価するとともに、飛行性/操縦性に関する定量的な設計要求案 を設定した。 ③ 飛行制御ロジック/パラメータの設定 以下に示す作業を行い、飛行制御ロジック/パラメータを設定した。 (ア) 汎用の数値解析プログラムを活用し、飛行制御ロジック/パラメータの設定作業に必要とな る机上検討用の操縦システム解析ツールを準備した。 (イ) 飛行制御ロジック/パラメータ案を構築した。 (ウ) Pitch / Roll / Yaw 各種特性につき、解析ツールを用いた操縦性の初期評価を実施した。 (エ) 設計要求案を満たすよう、要すればロジック/パラメータの見直しを実施した。 (オ) 設計要求を満たすことを確認した。 ④基本フライトシミュレーション用フライトシミュレータの整備 設計した飛行制御ロジック/パラメータの妥当性確認を目的とした基本フライトシミュレーショ ン試験の準備作業として、MJ-90 の運動を模擬するフライトシミュレータの整備を以下の通り実 施した。 (ア) 既存のフライトシミュレータを活用し、大規模なハードウェアの改修を伴うことなく、操縦シス テムの基本的な操縦性を評価可能な設備を構築した。 (イ) 社内パイロットによるレビューを行い、整備したフライトシミュレータが操縦性評価に供しうる ことを確認した。 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 手段 ①操縦システム基本構想の設定 -操縦システム方式の選定 -システム構成 -設計要求 -制御ロジック/パラメータ案 -操縦システム構成機器要求、等 ①飛行性/操縦性要求適合性・シミュレーション運動解析 ②技術的成立性(含コスト目標適合性) ・装備品メーカとの協議を開始 ③規定適合性 ・規定適合性の見通し ・規定適合性証明計画の策定 達成 完了 協議を開始 作成を開始 総合評価 ○ (6) 開発・生産システムの効率化 (a) デジタル・エンジニアリング、デジタル・マニュファクチャリング及びバーチャル・ファクトリ技術 成果概要は以下の通り。 Ⅲ-26 ①デジタル・エンジニアリング 2 次元図面を廃して 3 次元設計データのみを正とする為に、寸法や注記を 3 次元データ内に定 義する手法を構築し、単品/組立双方で成立性を確認した。パラメトリック・モデリング及びリレー ショナル・モデリングは、機首及び主翼桁間に試適用して、機能の成立性と有効性を確認した。 全機を対象とする「フル・リレーショナル・モデリング」に拡充する為に必要となる、共有データ(座 標系など)の階層/関係に係る構想を策定した。また、CATIA と連携した設計作業支援システム として、重量・重心計算マクロの作成、干渉チェック機能の成立性確認等を実施した。 複数の国内外メーカによる共同開発体制を想定し、設計データを一元管理するために必要と なるリモート・アクセス環境について、構想を策定して有用性の確認を開始した。 ②デジタル・マニュファクチャリング及びバーチャル・ファクトリ 全機 3 次元モデル(デジタル・モックアップ)を作成し、デジタル・ヒューマンを用いて、整備性/ 製造性をシミュレートする機能を評価し、十分に実用に耐え得る事を確認した。 また、CATIA/ENOVIA で管理される設計データを製造部門で活用する為のデータフローを策 定した。データ加工/変換等を行う事なく、タイムリーに工程設計/製造性評価に供する事がで きる事を確認した。また、2 次元図面しか扱えないサプライヤの出現を想定して、3 次元データか ら 2 次元の作業指示書を作成する手段を構築した。 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 ①デジタル・エンジニアリングにつき; -最新ツールの機能評価を概ね完了 -主要システム構想策定を概ね完了 ②デジタル・マニュファクチャリング及びバーチャル・ファクトリ 技術につき; -最新ツールの機能評価を概ね完了 ①機体初期仕様策定作業への試適用 達成 達成 適用中 手段 総合評価 ○ (b) 高効率設計・製造情報マネジメント手法の開発・実用化-設計・製造情報の管理システム 成果概要は以下の通り。 CATIA、ENOVIA 及び DELMIA を軸として、形態管理システムや購入品調達システム等と統合 して機体開発/生産に係る情報を一括管理するシステムの構築を目指しているが、現時点では (a)項のシステム/プロセスの構築を優先しており、製図工程以降のシステム構築には着手して いない。設計に係る形態管理の仕組み等から順次着手する予定である。 Ⅲ-27 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 ①最新ツールの機能評価を概ね完了 ②システム構想策定に着手 ①社内レビュー 部分的評価 未達 未完 手段 総合評価 △ (c) 高効率設計・製造情報マネジメント手法の開発・実用化-プロジェクト・マネジメント手法 成果概要は以下の通り。 汎用ウェブブラウザ上で機能する作業管理システム構想を構築し、プロトタイプ・システムを試 作した。機体のライフサイクル全てに亘る作業をカバーする事を想定して作業項目を階層化し、 作業内容、責任者、スケジュール、成果及び進捗等を、WBS 番号をキーにして管理する事を狙う。 平成 18 年度に試行に移行する。 また、要求管理/要求適合性管理を目的に、汎用ツールをカスタマイズした管理システム構想 を策定した。これも同様に試行に移行し、平成 20 年度以降の本格開発に備える。 目標達成度を纏める。 目標 評価・検証 ①主要項目の管理構想策定を概ね完了 ②システム構想の策定を概ね完了 ①社内レビュー 達成 達成 レビュー中 手段 総合評価 Ⅲ-28 ○ 1.4 特許・意匠登録及び成果の普及について 成果の権利化、普及等に資する活動状況を以下に纏める。 (1) 特許/意匠登録 平成 15 年度~平成 17 年度に、特許 6 件、及び意匠登録を 2 件出願した。 表Ⅲ-1.4-1 に特許/意匠登録の内容等を示す。 (2) 論文投稿・発表等 プロジェクト概要や研究開発成果の対外公表に努めてきた。複合材、FSW など要素技術開発成 果の幾つかは国際学会でも発表し、注目を集めている。平成 15 年度~平成 17 年度の件数は以下 の通り。表Ⅲ-1.4-2 に論文投稿・発表、展示、及び報道の内訳を示す。「環境問題」分野は JADC、 他は MHI が担当した。関連報道は多数に及ぶが、全貌把握は困難であるため、把握できた報道に 限定して掲載した。 ○学会等での口頭発表: 36 件 ○学会誌等への論文投稿: 32 件 ○Airshow 等への展示: 5件 ○プロジェクト関連の報道: 20 件 (3) 成果の公開 (2)項の件数に含まれるが、代表的事例を以下に示す。 (a) Airshow Farnborough と Paris にて毎年交互に開催される Airshow に模型、パネル等を展示している。 図Ⅲ-1.4-1 に平成 17 年 6 月に開催された Paris Airshow に展示した機体模型とパネルを示す。 【図Ⅲ-1.4-1 Paris Airshow に展示した機体模型と展示パネル】 Ⅲ-29 (b) JA2004(国際航空宇宙展) 2004 年 11 月に横浜にて開催された航空宇宙展にて客室モックアップを展示した。図Ⅲ-1.4-2 に展示した客室モックアップの様子を示す。 【図Ⅲ-1.4-2 JA2004 における客室モックアップ展示】 (c) 海外貿易会議 2 年に一度シンガポールにて開催される Singapore Airshow に併せて、経済産業省主催で開催 される海外貿易会議にてプログラムを紹介している。平成 15 年度及び平成 17 年度の当該会議 に参加した。 (4) エアライン等への訪問 事業の成果たる機体が存在している訳ではないので、必ずしも成果の普及には相当しないが、 国内外のエアラインを頻繁に訪問し、要求把握/取組状況の普及に努めている。参考に、図Ⅲ -1.4-3 に平成 14 年 9 月~平成 18 年 3 月の訪問エアライン数と回数を記す。 地域 訪問 延べ訪問回数 エアライン数 日本 9社 78 回 米国 28 社 57 回 欧州 12 社 30 回 アジア 9社 10 回 合計 58 社 175 回 代表的エアライン 【図Ⅲ-1.4-3 エアライン訪問の状況】 Ⅲ-30 【表Ⅲ-1.4-1 特許・意匠登録一覧 (平成 15 年度~平成 17 年度) (1/3)】 出願国 日付 出願番号 No. 種類 名称 内容 1 特許 航空機、移動体、移 断面が略円形状の機体と、前記機体内に設けられた床上に、複 日本 出願:平成 16 年 2 月 5 日 特願 2004-029717 号 出願中 動体に対する座席 数並べて設けられた座席を備え、前記座席のうち少なくとも前記 PCT 出願:平成 16 年 10 月 1 日 PCT/JP04/14482 出願中 配置 機体の内壁面に近接する側の第一の座席が、前記機体の進行 加盟国 日本 出願:平成 16 年 2 月 5 日 特願 2004-029718 号 出願中 日本 出願:平成 16 年 2 年 26 日 特願 2004-051033 号 出願中 日本 出願:平成 16 年 2 月 27 日 特願 2004-052956 号 出願中 登録番号 状況 方向に対し、当該機体の中心側に向けて斜めに配置されている ことを特徴とする航空機。 2 特許 航空機、移動体 機体内の床上に前後に間隔を隔てて複数設けられた座席と、前 列の座席の下方にて、荷物を、当該荷物の少なくとも後端部を 床面から上方に持ち上げた状態で収容する荷物収容部と、を備 えることを特徴とする航空機。 3 特許 Ⅲ-31 航空機、移動体、座 機体内の床上に前後に間隔を隔てて複数設けられた座席本体 席 と前記座席本体に設けられ、前列の座席の下方の前記床面に 形成された凹部内に伸展可能なフットレストと、を備えることを特 徴とする航空機。 4 特許 航空機 機体内の床上に前後に間隔を隔てて複数設けられた座席と、前 記座席の下方に形成された、前記座席と前記床の隙間よりも大 きな寸法を有した略箱状の荷物を収容できる荷物収容部と、を 備え、前記荷物収容部は、前記座席の下方の前記床に凹部が 形成され、前記凹部に、前記荷物の寸法が最も長い方向を前記 床に直交させた状態で、前記荷物の下部が収められるようにな っており、前記座席は、前記荷物収容部に前記荷物を出し入れ するため、座面が上方に跳ね上げ可能となっていることを特徴と する航空機。 【表Ⅲ-1.4-1 特許・意匠登録一覧 (平成 15 年度~平成 17 年度) (2/3)】 No. 種類 名称 内容 5 特許 亀裂進展抑制方法 【課題】溶接継手構造体の溶接接合部において、亀裂の進展を 及び溶接継手構造 抑制または阻止することができる亀裂進展抑制方法を提供する 体 こと。 出願国 日付 出願番号 登録番号 状況 日本 出願:平成 17 年 7 月 26 日 特願 2005-215432 号 出願中 日本 出願:平成 18 年 3 月 15 日 特願 2006-070794 号 出願中 【解決手段】ストリンガ13のフランジ部13aに重ね合わせたスキ ン11を溶接により接合してなる溶接継手構造体の亀裂進展抑 制方法が、スキンとフランジ部13aとを摩擦撹拌接合により溶接 して摩擦撹拌接合部14を形成する溶接接合工程と、摩擦撹拌 接合部14に圧縮の残留応力を付与し、摩擦撹拌接合部14を 貫通して接合部裏面側まで到達する塑性ひずみを入れる圧縮 残留応力付与工程とを備えている。 Ⅲ-32 6 特許 金属部材の製造方 【課題】金属材料表面のショットピーニング処理を伴う、航空機や 法及び構造部材 自動車等に用いられる構造部材等の金属部材の製造におい て、ショットピーニング処理の前後で金属材料の表面粗さをほと んど変化させずに疲労特性を向上させることを目的とする。 【解決手段】 平均粒径が200μm以下の投射材を用いて金属 材料表面に対してショットピーニング処理をおこない、前記金属 材料表面の、前記投射工程前の表面粗さに対する前記投射工 程後の表面粗さの比を、0.8以上1.5以下とする。 【表Ⅲ-1.4-1 特許・意匠登録一覧 (平成 15 年度~平成 17 年度) (3/3)】 No. 種類 7 意匠 8 意匠 名称 飛行機 飛行機 内容 Nose 部分 全体 出願国 日付 出願番号 登録番号 状況 Ⅲ-33 日本 出願:平成 15 年 10 月 27 日 意願 2003-031658 号 出願中 米国 出願:平成 16 年 4 月 27 日 出願:29/204221 意匠登録 登録:平成 16 年 12 月 28 日 登録:D500282 済み カナダ 出願:平成 16 年 4 月 22 日 出願:106682 出願中 OHIM 出願:平成 16 年 4 月 22 日 出願:000165972 意匠登録 (EU 連合) 登録:平成 16 年 4 月 22 日 登録:000165972 済み 米国 出願:平成 16 年 4 月 27 日 出願:29/204220 意匠登録 登録:平成 16 年 12 月 28 日 登録:D500281 済み カナダ 出願:平成 16 年 4 月 22 日 出願:106683 出願中 ブラジル 出願:平成 16 年 4 月 27 日 出願:DI6401387-1 意匠登録 登録:平成 16 年 8 月 17 日 登録:DI6401387-1 済み OHIM 出願:平成 16 年 4 月 22 日 出願:000165964 意匠登録 (EU 連合) 登録:平成 16 年 4 月 22 日 登録:000165964-01 済み 【表Ⅲ-1.4-2 対外発表、投稿、展示、報道の内訳 (1/4)】 全般 地域航空フォーラム静岡 模型+パネル展示 平成 15 年 11 月 全般 航空宇宙学会中部支部・航空宇宙フェア '03 プログラム紹介 平成 15 年 11 月 ○ ○ 全般 流体力学会中部支部設立記念講演会 プログラム紹介 平成 15 年 12 月 ○ 全般 名古屋空港関係者懇親会 プログラム紹介 平成 16 年 1 月 ○ 全般 国際貿易会議(Singapore) プログラム紹介 平成 16 年 2 月 ○ 全般 Farnborough Airshow リーフレット+パネル展示 平成 16 年 7 月 ○ 全般 JA2004 (国際航空宇宙展) 客室モックアップ(4 列・110"径)展示 平成 16 年 11 月 ○ 全般 日本航空宇宙学会 年会 パネルディスカッション プログラム紹介 平成 17 年 4 月 全般 Paris Airshow 模型+リーフレット+パネル展示 平成 17 年 6 月 全般 国際貿易会議(Singapore) プログラム紹介 平成 18 年 2 月 ○ 全般 航空宇宙学会中部支部特別講演会 プログラム紹介 平成 18 年 3 月 ○ ○ ○ Ⅲ-34 将来航空管制による航空機運航面からの温室効果ガス削減の 環境問題 航空環境研究 研究動向 (JADC) 平成 16 年 3 月 複合材 SAMPE Europe 2004 A-VaRTM Process for Primary Aircraft Structures 平成 16 年 4 月 ○ ○ 空力設計 航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム 2004 二次元高揚力装置周りの流れ場解析とその検証 平成 16 年 6 月 ○ ○ 複合材 みらいせんい展(繊維機械学会) 3 ストリンガパネル展示 平成 16 年 8 月 製造技術 第 42 回飛行機シンポジウム レーザー溶接による航空宇宙製品製造技術開発 平成 16 年 10 月 ○ ○ 空力設計 第 42 回飛行機シンポジウム 2 次元高揚力装置風洞試験における風洞壁干渉の CFD 解析 平成 16 年 10 月 ○ ○ 空力設計 第 42 回飛行機シンポジウム 2 次元フラップにおける Re 数効果 平成 16 年 10 月 ○ ○ 空力設計 第 42 回飛行機シンポジウム 航空機高揚力装置展開時の空力解析 平成 16 年 10 月 ○ ○ 平成 16 年 11 月 ○ ○ 平成 16 年 11 月 ○ ○ 平成 17 年 1 月 ○ ○ 空力設計 空力設計 空力設計 4th International Symposium on Advanced Fluid Information 4th International Multidisciplinary Design Optimization of Wing Shape for Regional Jet Symposium on Advanced Fluid Towards the development of Environmentally Friendly High Information Performance Small Jet Aircraft 平成 16 年度科研費シンポジウム 小型民間機空力設計における産官学連携研究成果の適用 ○ ○ 報道 時期 展示 論文タイトル/活動内容等 投稿 学会名称/報道機関名等 発表 分野 【表Ⅲ-1.4-2 対外発表、投稿、展示、報道の内訳 (2/4)】 Conference on 環境問題 (財)空港環境整備協会大気環境委員会 複合材 SAMPE Europe 2005 空力設計 空力設計 Evolutionary AIAA 23rd Applied Aerodynamics Conference 35th AIAA Fluid Dynamics Conference and Exhibit in Toronto High-Fidelity Multidisciplinary Design Optimization of Wing Shape for Regional Jet Aircraft CNS/ATM 運航による温室効果ガス等の 低減研究の動向につ いて (JADC) A-VaRTM for Primary Aircraft Structures High-Fidelity Multidisciplinary Design Optimization of Aerostructural Wing Shape for Regional Jet 平成 17 年 3 月 ○ ○ 平成 17 年 3 月 ○ 平成 17 年 4 月 ○ ○ 平成 17 年 6 月 ○ ○ 平成 17 年 6 月 ○ ○ The Application of MDO Technologies to the Design of a High Performance Small Jet Aircraft - Lessons learned and some practical concerns – Residual Strength for A-VaRTM structural elements(National Ⅲ-35 複合材 ICAF2005 Review の一部) 平成 17 年 6 月 ○ Fatigue and Crack Propagation Properties of Friction Stir FSW ICAF2005 Welded Lap Joint and Panel Kriging モデルを用いた小型ジェット旅客機主翼形状の多分野 平成 17 年 6 月 ○ ○ 平成 17 年 8 月 ○ ○ 平成 17 年 9 月 ○ ○ 空力設計 第 15 回設計工学・システム部門講演会 空力設計 IEEE Congress on Evolutionary Computation 空力設計 日本機械学会年次大会講演論文集 遷音速小型旅客機に於ける多分野融合最適化 平成 17 年 9 月 ○ ○ 構造解析 International KRASH Users' Seminar A Study of Water Impact Response with the DRI/KRASH 平成 17 年 9 月 ○ ○ 意匠設計 応用人間工学発表会 旅客機の客室デザイン 平成 17 年 9 月 ○ ○ 2005 JSASS-KSASS Joint International Symposium on The Application of MDO Technologies to the Design of a High Aerospace Engineering Performance Small Jet Aircraft 平成 17 年 10 月 ○ ○ 2005 JSASS-KSASS Joint International Symposium on Efficient Multidisciplinary Design Optimization for Regional Jet Aerospace Engineering Wing Using Kriging Model 平成 17 年 10 月 ○ ○ 第 43 回飛行機シンポジウム 多分野統合最適化技術を用いた高性能小型民間機の設計 平成 17 年 10 月 ○ ○ 空力設計 空力設計 空力設計 融合最適設計 Data Mining for Multidisciplinary Design Space of Regional-Jet Wing 報道 International Multi-Criterion Optimization 時期 展示 Third 論文タイトル/活動内容等 投稿 空力設計 学会名称等 発表 分野 【表Ⅲ-1.4-2 対外発表、投稿、展示、報道の内訳 (3/4)】 計への適用 平成 17 年 11 月 ○ ○ 平成 17 年 11 月 ○ ○ SAMPE Japan jisse9 2005 A-VaRTM Material and Fabrication Process for Aircraft Primary 複合材 (発表は東レ社より) Structures 空力設計 三菱重工技報 構造解析 第 8 回 材料の衝撃問題シンポジウム 航空機の着水衝撃試験とシミュレーション 平成 17 年 12 月 複合材 三菱重工技報 航空機複合材一次構造への VaRTM 適用化研究 平成 17 年 12 月 44th AIAA Aerospace Sciences Meeting and Exhibit、 Multidisciplinary Design Optimization of Wing Shape for a Small Reno Jet Aircraft Using Kriging Model 空力設計 Ⅲ-36 空力設計 複合材 環境適応型高性能小型航空機設計における多分野統合最適 化技術(MDO)の適用 44th AIAA Aerospace Sciences Meeting and Exhibit、 Reno Aerodynamic Optimization of Multi-Element Airfoil SAMPE Europe 2006 A-VaRTM for Primary Aircraft Structures 平成 17 年 12 月 ○ ○ ○ ○ 平成 18 年 1 月 ○ ○ 平成 18 年 1 月 ○ ○ 平成 18 年 3 月 ○ ○ 報道 CeNSS を活用した大規模 CFD 解析技術の民間航空機空力設 時期 展示 平成 17 年度宇宙科学情報解析センターシンポジウム 論文タイトル/活動内容等 投稿 空力設計 学会名称等 発表 分野 【表Ⅲ-1.4-2 対外発表、投稿、展示、報道の内訳 (4/4)】 報道 時期 展示 論文タイトル/活動内容等 投稿 学会名称等 発表 分野 全般 Wing 誌 「GJ(30~50 席クラスジェット機)」 インタビュー 平成 15 年 5 月 ○ 全般 日経産業新聞 「国産初のジェット開発」 平成 15 年 9 月 ○ 全般 NHK 番組「おはよう日本」 「世界を狙う国産ジェット機」 平成 15 年 12 月 ○ 全般 ビジネスウィーク誌 「小型旅客機開発について」 平成 16 年 3 月 ○ 全般 航空技術誌 「環境適合型高性能小型航空機の研究開発プロジェクト」 平成 16 年 3 月 ○ 全般 Wing 誌 「小型旅客機開発試作開始」 インタビュー 平成 16 年 4 月 ○ 全般 日刊航空通信 「三菱重工、明春にも小型ジェット機体基本仕様策定へ」 平成 17 年 1 月 ○ 全般 日刊航空通信 「小型旅客機事業開発推進専門委」審議再開へ 平成 17 年 2 月 ○ Ⅲ-37 全般 日刊航空通信 「三菱重工、小型リージョナル・ジェット 機体仕様決定へ」 平成 17 年 3 月 ○ 全般 日経新聞 MJ 関連記事 平成 17 年 4 月 ○ 全般 Japan Times 誌 “Japan tries to get aerospace industry off the ground” 平成 17 年 5 月 ○ 全般 航空ファン誌 「日の丸旅客機」 MJ 平成 17 年 7 月 ○ 全般 日刊航空通信 「日本ブランドの航空機輸出に貿易保険適用へ」 平成 17 年 8 月 ○ 全般 日刊航空通信 「MJ 事業化の可否、平成 19 年度末までに判断」 平成 17 年 9 月 ○ 全般 Wing 誌 開発プロジェクト特集 平成 17 年 9 月 ○ 全般 日経産業新聞 「国産ジェット旅客機 開発事業見直し」 平成 17 年 9 月 ○ 全般 朝日新聞 「旅客ジェット、挑む国内勢 成長市場、2010 年代参入めざす」 平成 17 年 10 月 ○ 全般 読売新聞 社説 「商業化へ開発を加速できないか」 平成 17 年 10 月 ○ 全般 日刊航空通信 「MJ、今年度末までに機体仕様・事業化目標を設定」 平成 17 年 12 月 ○ 全般 産経新聞 「日の丸ジェット開発加速」 平成 18 年 1 月 ○ 2. 研究開発項目毎の成果 2.1. 個別要素技術開発の拘束条件の策定 (機体基本仕様の策定) 個別要素技術の実用化開発に際し、最も重要な拘束条件は機体仕様である。 本項では機体仕様の策定状況について記す。前項で記載の通り、本事業開始当初は 30~50 席ク ラスを想定、その後、市場環境変化等を踏まえて 70~90 席クラスを想定する事とした。以下、2.1.1 項 に 30~50 席クラス、2.1.2 項に 70~90 席クラスの機体仕様検討成果の概要を記す。 2.1.1 30~50 席の機体構想 2.1.1.1 機体要求仕様/性能目標等の策定 (1) 競合環境の評価 200 席以下のジェット旅客機の機種と座席数の関係を図Ⅲ-2.1-1 に示す。30~50 席クラスには、 生産中の機体として Embraer 社の ERJ135(37 席)/145(50 席)シリーズと Bombardier 社の CRJ200 (50 席)があり、これらが直接の競合機となる。 ERJ135/145 シリーズのベースライン機は ERJ145(50 席)であり、ERJ135(37 席)は ERJ145 の 胴体を短縮した機体である。ベースライン機の ERJ145 は、1989 年にプログラム・ローンチ、1996 年 に型式証明を取得しているが、1980 年代前半に開発された 30 席ターボプロップ機の EMB120 と部 品を極力共通化することを狙った為に胴体径が EMB120 と同じである等、機体設計上の制約を有し ている。また、ERJ135 は ERJ145 の胴体短縮型である為、50 席クラス機体に要求される構造強度を 持つように設計されている為に 30 席クラス機としては機体重量が重くなっているなど、30 席クラスに 最適化された機体となっていない。 CRJ200 は、1988 年に機体構想が発表され、1990 年にプログラム・ローンチ、1992 年に型式証明 を取得しているが、この機体は、1970 年代後半に開発されたビジネスジェット機の Challenger 600 を 原型とする派生型機であり、機体のベースが古く、また、運航頻度が小さいビジネスジェット機ベー スゆえに、必ずしも多頻度運航のリージョナルジェット機に適した設計とはなっていない。 即ち、MJ の直接の競合機である ERJ135/145 シリーズ及び CRJ200 はともに、ベース機体/技 術が古く、このクラスに最適化された機体ではない。 B717 B737-600 B737-700 B737-800 B737-900 Boeing A318 A319 A320 A321 Airbus MJ-35 MJ-50 ERJ135 ERJ145 MJ EMB170 EMB175 EMB190 EMB195 Embraer :生産中 CRJ200 CRJ700 CRJ900 :計画中/開発中 Bombardier C Series Bombardier RRJ60 RRJ75 :共通の設計による ファミリー関係 RRJ95 :設計変更を介した ファミリー関係 Sukhoi ARJ21-700 ARJ21-900 AVICⅠ 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 座席数(1クラス) 130 140 150 160 170 【図Ⅲ-2.1-1 民間ジェット旅客機の機種と座席数(200 席以下)】 Ⅲ-38 180 190 200 (2) 要求仕様 競合機の仕様を調査し、また、このクラスの機体を運用している国内外エアラインの意見及び要 求を聴取して、機体に対する要求仕様を設定した。 MJ の競合機である ERJ135/145 シリーズ及び CRJ200 に対するエアラインの大きな不満は、① 客室仕様、②運航費、③信頼性の 3 つであり、逆に、これら 3 点の改善が、次世代リージョナルジェ ット機に強く求められている。MJ は、これら 3 点全てで競合機を明白に凌駕し、エアラインの要求に 応えることを狙いとした。 ①客室仕様 MJ の競合機は、座席幅、通路幅、客室高、窓側座席の足元広さ等の客室寸法が幹線機 (B737、A320 等)と比べて狭く、幹線機に対して客室快適性で著しく劣っている。また、オーバヘッ ドビンが小さい為、幹線機では持ち込み可能な手荷物を機内に持ち込むことができず、乗客の利 便性を損なっている。 エアラインの多くは、リージョナルジェット機を幹線機と同じエアライン名で運航し、また、特に米 国では、リージョナルジェット機は幹線機への乗り継ぎ路線で使用されている為、幹線機と比べて 著しく劣る既存リージョナルジェット機の客室仕様は、エアライン及び乗客にとって大きな不満点 となっている。 そこで、MJ では、幹線機並の快適性を実現する客室仕様を要求とし、また、幹線機で持ち込 み可能な手荷物を機内に持ち込めることを要求とした。 ②運航費 運航費は、エアラインが最も重視する項目の一つであり、MJ は、既存機に対して明確な優位 性を有する必要がある。次世代リージョナルジェット機にエアラインが求める運航費は、既存機に 対して 10~15%程度低いことであり、従って、MJ の運航費は、既存競合機に対して 15%低いことを 要求とした。 ③信頼性 運航の定時性及び信頼性は、エアラインの旅客輸送事業の基本であり、エアラインにとって非 常に重要な項目である。ところが、既存リージョナルジェット機は、幹線機と比べて、出発信頼性 が概して低く、これが、エアラインの大きな不満となっている。 そこで、MJ では、幹線機並の出発信頼性を実現することを要求とした。 以上の 3 点を機体に課する主要要求とし、その他の項目もエアラインから聴取した要求を満足す るよう、機体に対する要求仕様を表Ⅲ-2.1-1 の通り設定した。 Ⅲ-39 【表Ⅲ-2.1-1 要求仕様 (1/2)】 要求仕様 項目 1.客室 (1) 座席数 (2) 座席ピッチ (3) 座席幅 (4) (5) (6) (7) 窓側座席の足元広さ 通路幅 客室高 オーバヘッドビンに収納 可能な手荷物サイズ MJ-35 MJ-50 38 席 @シングルクラス 50 席 @シングルクラス 31 in 18.0 in (アームレスト間) 5.5 in (座席中心線と壁との距離) 18.0 in 78.0 in 24 in × 16 in × 10 in (最大サイズ)が横置き可能な事 22 in × 14 in × 9 in (標準サイズ)が縦置き可能な事 (8) オーバヘッドビン容量 (9) ギャレー (10) ラバトリ 1.8 cu.ft/seat 冷たい飲み物と温かいコーヒーが提供できること 1 箇所 前方・後方のどちらでもエアラインが選択できること (11) PBB 適合性 (12) ビルトイン・ステア 必要 エアラインがオプションとして選択できること 2.貨物室 (1) 貨物室容量 (2) Unusual Baggage 7.0 cu.ft/seat ゴルフバッグ、スキー板等が搭載可能なこと 3.運用自重(OEW) (1) 飛行乗務員重量 360 lb (180 lb × 2 人) 135 lb (135 lb × 1 人) 75 lb (25 lb × 3 人) (2) 客室乗務員重量 (3) 乗務員荷物重量 4.エンジン (1) 共通性(Commolality) 必要 (2) PBTH Program 5.システム (1) 共通性(Commolality) (2) Weather Minima 6.グラウンドハンドリング (1) ターンアラウンドタイム 7.構造 (1) Design Life 必要 Flight Crew Type Raging が共通であること Maintenance Program(整備要綱)が共通であること CATⅡ(標準) CATⅢa(オプション) 15 分 20 分 Design airframe life : 60,000 flight hours Design take-off/landing cycles : 80,000 cycles Design service life : 20 years Ⅲ-40 【表Ⅲ-2.1-1 要求仕様 (2/2)】 項目 要求仕様 MJ-35 MJ-50 8.性能 M 0.74 (Normal Cruise) M 0.78 (High Speed Cruise) (1) 巡航速度 (2) 最大運用高度 37,000 ft (3) 航続距離 (4) 初期巡航高度能力 (5) 上昇性能 (6) 片発上昇限 (7) 離陸滑走路長 1,900 nm 1,700 nm 【条件】 Full pax×220 lb、ISA、LRC、FL370、No wind、 代替空港 100 nm 37,000 ft @ISA+10℃、Takeoff at MTOW 500 ft/min @ISA+10℃、35、000 ft、Takeoff at MTOW 17,000 ft @ISA+15℃、95%MTOW 4,800 ft (1,460 m) 5,500 ft (1,680 m) @MTOW @MTOW 【条件】 ISA、SL、No wind、Dry level hard RW (8) 着陸滑走路長 4,400 ft (1,340 m) 4,850 ft (1,480 m) @MLW @MLW 【条件】 ISA、SL、No wind、Dry level hard RW (9) アプローチ速度 140 kt 以下 @MLW 9.騒音及びエミッション 76 dBA 以下 @Worst seat (1) 客室騒音 (2) 空港騒音及びエミッション Stage 4 及び ICAO 要求に合致すること 10.信頼性 (1) 出発信頼性 99.5%以上 11.直接運航費(DOC) (1) 直接運航費(DOC) ERJ135 に対して 15%減 Ⅲ-41 ERJ145 (或いは CRJ200) に対して 15%減 2.1.1.2 機体構想の策定 (1) 構想/差別化方針 機体構想については、本事業開始当初の①3 列座席配置胴体/エンジン・リアマウント形態機と、 その後の市場環境の変化を踏まえて 50 席超への拡張性を持つよう設定した、②4 列座席配置胴体 /エンジン・ウィングマウント形態の二つがある。①は簡単に概要を記載するに留め、変遷理由を 含めて、②4 列座席配置胴体/エンジン・ウィングマウント形態を中心に記載する。 ①3 列胴体/エンジン・リアマウント形態機 機体構想策定に際する基本認識/コンセプトは以下の 2 点である。 ・ 競合機は全てターボプロップ機やビジネスジェット機を起源に持ち、30~50 席クラスのリージ ョナルジェット機として最適設計されたものではない為に、競争力があまり高くない。 ・ 既存小型ターボプロップ機の代替として運用されるため、 (a) 30~50 席クラスリージョナルジェット機の運用に最適化する。 (b) 開発リスクを内包し、かつ、製造・運用コスト増に繋がる複雑な機構や新技術の適用は 避け、既存技術を中心とした簡素な機体とする。 上記のコンセプトに基づいて、機体の基本構想を以下のように設定した。 ・ 競合機と同じ、38 席及び 50 席の二つの機体サイズを持つファミリーとする。 ・ 30~50 席の既存機と同様に、3 列座席配置の胴体形状とする。 ・ 開発リスクを抑制する為、開発経験を持つエンジン・リアマウント形態(エンジンが後部胴体 の両側に付いた形態)を採用する。 機体三面図を図Ⅲ-2.1-2 に、胴体断面形状を図Ⅲ-2.1-3 に、また適用技術構想を図Ⅲ-2.1-4 に示す(「Aero-Structure MDO Application」については、詳細を 2.1.1.3 項に示す)。 競合機(ERJ135)との仕様・性能比較を図Ⅲ-2.1-5 に示す。市場要求を満たし、競合機に対し て十分な競争力をもつ機体構想となっている。 Ⅲ-42 ① 後退角:主翼重量軽減と単純フラップの採用を狙い、エアライン が受け入れ可能で最も低い巡航マッハ数=0.74M で最適化。 ② 極力シンプルな構造/メカとする工夫(主翼ピン結合/ヒンジタイ プのベーン・メイン形式フラップ/スラットなし、等)。 CHARACTERISTIC DATA WING VERT. TAIL HORIZ. TAIL AREA , SQ. FT. TIP CHORD , IN. ROOT CHORD , IN. ASPECT RATIO TAPER RATIO SWEEP C/4 , DEG. 484 40.6 123.9 9.00 0.30 20.0 93 95.7 136.6 2.0 0.7 42.5 121 37.8 83.9 4.7 0.45 26.0 DIHEDRAL , DEG. MAC , IN. VOLUME COEFF. 2.5 96.5 - 117 0.086 TBD 63.7 1.15 【図Ⅲ-2.1-2 3 列胴体/エンジン・リアマウント形態機の三面図】 キャビン快適性/利便性が顧客(来客)満足度を大きく左右する。 快適性/利便性及びエアラインの運航効率の観点から; ① 競争力向上に寄与する箇所には必要十分な 差別化を行う。(荷物収納スペース、座席 幅、フラット床) ② 効かない箇所はぎりぎりまで寸法を削る。 クラス最大のOverhead Bin(ローラ付バック収容可能) 通路高さ US Male 50%ileが立てる(MR) (他機並み) 必要最小限の幅 必要十分な頭上クリアランス (頭が傾かない) クラス最大規模(MR) 737クラス並みの足元スペース (乗客が普通に足を下ろせる)(MR) Brief Caseも収容可能な Underseat Stowage Full Flat Floor (MR) (MR) : Market Requirement 【図Ⅲ-2.1-3 3 列胴体/エンジン・リアマウント形態機の胴体断面形状】 Ⅲ-43 Aero-Structure MDO *1 Application (Wing, AFT fuselage) Latest Super Critical Wing Tech. Single (or Double) Slotted Flaps (1 segment per each side) Clean Leading Edge (No L.E. High Lift Device) High Aspect Ratio, Shallow Swept-back Wing *1 Multi-Disciplinary Design Optimization ・ 競合機よりも高い揚抗比 ・ 部品点数を少なくする為のシンプルな形態 【図Ⅲ-2.1-4 3 列胴体/エンジン・リアマウント形態機の適用技術構想】 性能/経済性 客室快適性 カーゴ容積/座席数 ヘッドクリアランス@窓際席 140% 120% 100% 80% 60% 40% 20% 0% 通路幅 MJ-35 MJ35 ERJ135ER シート幅 足元広さ@窓際席 燃費/座席数 乗客数 140% 120% 100% 80% 60% 40% 20% 0% 上昇限度 最大通路高 航続距離 必要滑走路長 ERJ135ERの諸量を100%とした場合の比較 ・ 客室快適性を左右するヘッドクリアランス、シート幅および足元広さ、最大通路高で ERJ との差別化を図った。 ・ 巡航マッハ数を低く設定することにより、簡素・軽量で空力性能の良い機体となり、航 続距離と燃費で ERJ に勝る。 ・ ERJ に劣る部分についても、ミニマムの市場要求を満たしている。 【図Ⅲ-2.1-5 3 列胴体/エンジン・リアマウント形態機の競争力評価】 Ⅲ-44 巡航マッハ数 ②4 列胴体/エンジン・ウィングマウント形態機 1 項で記載した通り、既存小型ターボプロップ機の代替需要が小さい事が判明した為、当初想 定していた需要のうち、残る、既存 30~50 席リージョナルジェット機の代替/新規需要を主要タ ーゲットとする必要が生じた。これは、より明白な競争優位性を確保する必要がある事を意味す る為、基本コンセプトを以下の通り見直した。 ・ 70 席までのグロスポテンシャルを持たせた、38、50 席のファミリーとする。 ・ 競合機との差別化を強める為、比較的滑走路が短い都市型空港を活用できる離着陸性能、 競合機よりも長い航続距離性能を持たせる。加えて、相対的に競争力が高い競合機に対し て十分な運航経済性を持たせるために、新技術・新機能の適用を増やす。 ・ 太い胴体/広い客室を持つ 70 席クラス EMB170 シリーズとの競合を念頭に、客室快適性を 更に向上させて幹線機並みとする。また、ユニバーサルデザインの導入などで「人に優しい」 機体として、差別化の一助とする。 上記に基づき、機体の基本構想を以下のように変更した。 ・ 胴体径を増して、4 列座席配置の胴体とする。 ・ エンジン・ウィングマウント形態(エンジンが主翼下面に付く形態)を採用する。 表Ⅲ-2.1-2 にリアマウント形態に対するウィングマウント形態の優劣評価を纏めた。「≒」は両 形態に差がない事、「○」はウィングマウント形態が優位、「△」はウィングマウント形態が劣位に ある事を示す。ウィングマウント形態が総合的に優位にたつことが判る。主要な理由は以下の通 りである。 【表Ⅲ-2.1-2 4 列胴体/エンジン・ウィングマウント形態機の選定理由】 項目 評価 理由 離着陸性能 ○ ウイングマウント仕様故に複雑となる高揚力装置を活用し、競合機より短い滑走路での運用を可能と し、路線開拓が可能である。 乗降性 ○ 長いエアステアが必要であるが、パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ(PBB)が使用可能となる。リー ジョナル機の使用環境が幹線機に近づいた為、PBB適合性が大きなメリットとなる。 整備性 ○ エンジン、水平尾翼への良好なアクセス性を獲得。 FODの実績はリアマウント形態と同様。 カーゴ取り扱い ○ リアマウント使用では使えなかったエンジン取付部のスペースを利用し、大きなカーゴドアとした。 グロスポテンシャル ○ ウイングマウント仕様機体では、客席の中央付近に主翼を配置できる為、胴体をストレッチした際にも 重心最前方距離がリアマウント仕様機体ほど大きく変化しない。よって、バラスト等による調整なしで 重心移動を許容範囲内に収めることが可能。 キャビンの快適性 ○ EMB170/190シリーズがリージョナル機のde-facto standardを塗り替え、既存のERJ145やCRJはもは や時代遅れとなっている。EMB170/190シリーズ並みの快適性を提供し得る新4列胴体は必須。 燃費 ≒ 僅かに1%劣る。但しERJ135よりは十分勝り(13%)、市場要求に合致する。 乗客の安心感/ 商品としてのインパクト ○ 幹線機と同じ機体仕様であり、違和感が無い。大型機の標準を取り込むことを外観でもアピールする。 またウイングマウント仕様が小型機に拡大、トレンド化してきた為、将来の競合機に対する先手として 重要視した。 機体重量 ≒ 2%減少する。太い径の胴体と長い脚による重量ペナルティがあるが、前縁高揚力装置を設けるために 主翼面積を小さくでき、さらにエンジンを主翼に取り付けることで主翼重量が減少する効果の方が大き いため、全機重量は減少する。 騒音 ≒ 地上及び客室騒音共に有意な差は生じるが、顧客要求としては低く、評価を左右する程ではない。 機体価格 △ スラストリバーサや高揚力装置が複雑化するため、価格は若干高くなる。 Ⅲ-45 30 席クラス機に関する両形態の比較を図Ⅲ-2.1-6 に、また適用技術構想を図Ⅲ-2.1-7 に示す (適用技術の概要は 2.1.1.3 項に示す)。ウィングマウント形態機について、次項に仕様を示す。 後縁高揚力装置 zエンジン排気との干渉を避ける為、フラッ プをファウラータイプに変更する 前縁高揚力装置 zバリアブル・キャンバとして利用し、上昇・ 巡航性能を改善する zナセル・パイロン影響による失速特性の悪化を補う為に必須 z高い離着陸性能により運用可能な路線を拡大できる z副次的には、高速特性を更に重視した主翼設計が可能で、 巡航時の揚抗比が改善できる 客席アレンジ変更 z客室快適性を重視し、3列から4列キャビンに変更 主翼へのエンジン取付け zエンジンへのアクセス性が良くなる zエンジンのInertia relief効果により、主翼重量軽減 z主翼-ナセル空力干渉最小化やスラストリバーサの配置上 ショート ダクト形式のエンジンが有利 荷物室扉拡大 zナセルが無い為、作業性が良くなり、荷物室扉も拡大で きる 脚長 zエンジンと地面とのクリアランス確保の為増大 z地上高増加に伴いボーディングブリッジを利用できるが、脱出スライドが必要となる 【図Ⅲ-2.1-6 形態比較】 新コックピット/操縦システム 【安全性・操縦性向上】 【軽量化・整備コスト低減】 空力設計 +Variable Camber 【燃費向上】 FSW胴体パネル 【低コスト化】 A-VaRTM尾翼 【軽量化】 新コンセプト・キャビン 【手荷物制限なし】 【快適性向上】 "More Electric"システム 【燃費向上・整備コスト低減】 新エンジン 【燃費向上・整備コスト低減】 複合材主翼 【燃費向上・整備コスト低減】 【図Ⅲ-2.1-7 4 列胴体/エンジン・ウィングマウント形態機の適用技術構想】 図中の【】は各技術の適用目的を示す。 Ⅲ-46 2.1.1.3 機体基本仕様の策定 (1) 機体仕様の概要 4 列座席配置胴体/エンジン・ウィングマウント形態について仕様の概要を記す。 ①ファミリーコンセプト エアライン意見を踏まえて、38 席機(MJ-35)、50 席機(MJ-50)および 70 席機(MJ-70)間のコ モナリティ(仕様共通性)と経済性・性能のベストバランスを追求した。 トレードオフ検討の結果、70 席機は必要なエンジンサイズと主翼面積が、他の 2 機種と隔たり が大きくなる事が避けられない為にコモナリティを減らし、先行して開発する 30 席クラス機と 50 席 クラス機への「70 席クラス機との共通化によるペナルティ」を減らすこととした。(図Ⅲ-2.1-8) MJ ファミリー各機種の三面図を図Ⅲ-2.1-9 (1/3)~(3/3)に示す。 MJ-35 MJ MHI MJ-70 MJ-50 High Commonality ERJ135 Embraer EMB170 EMB175 EMB190 EMB195 ERJ145 No Commonality Bombardier CRJ200 CRJ700 CRJ900 座席数 (1 class) Low Commonality 30 70 50 90 110 項目 CRJ200 ⇒ CRJ700 ERJ145 ⇒ EMB170 胴体 ストレッチ(後胴新設計) 新規(3列席⇒4列席) シュリンク ストレッチ 新規 同一 面積増大 異なるメーカ 同一(De-rated) 同一系列 (コアは同一) 面積増大 主翼 高揚力装置 前縁スラット追加 同一系列(異なるコア) 及びFADECの有無 エンジ ン (GE CE34-3B1⇒FD34-8C1) 搭載位置 (AE3007AS⇒GE CF34-8E) MJ-35 ⇔ MJ-50 ⇔ MJ-70 (ファミリー基本案) 同一 変更 同一 同一 (リアマウント) (リアマウント⇒ウイングマウント) (ウイングマ ウント) (ウイングマ ウント) パイロット タイプレーティング 新規 同一 同一 Training Difference Level C Training Difference Level D (推定) Training Difference Level A (目標) Training Difference Level A (目標) システム 同一系列 新規 同一 共通性(コモナリティ) 小 無し 大 以降訓練必要 【図Ⅲ-2.1-8 ファミリーコンセプト(コモナリティ)】 Ⅲ-47 同一系列 (エアコンパッ ク等の容積拡大) 大 Dime nsion an d We igh t M J-3 5 Dim ensio n Span Ove rall Length Ove rall Heigh t 7 4.1 ft (22.6m) 7 8.2 ft (23.8m) 2 8.1 ft (8.5 7m) Thrust (S ea Level / Static ) Weigh t Max T akeo ff We ight Max Landing Weight Max Ze ro Fue l We ight Op erational Empty We ight 2 × 7,530 lb (3 3.5 KN) 4 6,7 37lb 4 2,1 08lb 3 7,9 19lb 2 7,9 98lb (21,200 kg) (19,100 kg) (17,200 kg) (12,700 kg) 8.57 m 22.6 m 23.8 m 【図Ⅲ-2.1-9 (1/3) MJ-35 三面図】 Dime nsion an d We igh t M J-5 0 Dim ensio n Span Ove rall Length Ove rall Heigh t 7 4.1 ft (22.6m) 8 8.1 ft (26.9m) 2 8.1 ft (8.5 7m) Thr ust (S ea Level / Static ) Weigh t Max T akeo ff We ight Max Landing Weight Max Ze ro Fue l We ight Op erational Empty We ight 2 × 8,520 lb (3 7.9 KN) 5 2,2 49lb 4 6,9 58lb 4 3,6 51lb 3 0,6 44lb (23,700 kg) (21,300 kg) (19,800 kg) (13,900 kg) 8.57 m 22.6 m 26.9 m 【図Ⅲ-2.1-9 (2/3) MJ-50 三面図】 Ⅲ-48 Dimension and Weight MJ-70 Dimension Span Overall Length Overall Height 単位: mm 79.6 ft (24.3 m) 99.3 ft (30.3 m) 28.6 ft (8.7 m) Thrust (Sea Level / Static) TBD Weight Max Takeoff Weight Max Landing Weight Max Zero Fuel Weight Operational Empty Weight 69,400 lb (31,500 kg) TBD TBD 37,000 lb (16,800 kg) 主翼面積25%増加 24268 24.3 m 9320 8707.3 エンジン換装(同系列、サイズアップ) 5066.96 439.82 2236.99 8.7 m STATIC GROUND AT MTOW 3270.79 STATIC GROUND AT MTOW 11921.8 30.3 m 30279.93 【図Ⅲ-2.1-9 (3/3) MJ-70 三面図(参考;初期仕様における 70 席機の例)】 Ⅲ-49 ②適用技術構想 2.1.1.2 項で記載した通り、競合機に対する明白な優位性を確保するために、以下の新技術の 適用を狙う事とした。(f)~(h)は 4 列胴体・ウィングマウント形態への見直し後に追加した項目であ る。(図Ⅲ-2.1-7 参照) (a) 新コックピット/操縦システム パイロットの状況認識性/操作性向上を通じて特に緊急時のワークロード低減を図る新コッ クピットと、低コスト且つ操縦容易性を実現する操縦システムを開発し、安全性向上とパイロッ ト訓練コスト低減等を狙う。2.4 項および 2.5 項に概要と開発状況を示す。 (b) 高効率主翼/空力・構造 MDO 高精度な CFD 解析技術と、種々の拘束条件のもとで形状を最適化する MDO (Multidisciplinary Design Optimization : 多変数同時最適化)技術を組み合わせて主翼設計 を行う。2.3 項に先進空力設計技術の概要と開発状況を示す。 (c) FSW 胴体パネル FSW(Friction Stir Welding : 摩擦攪拌接合)は材料を溶かさずに金属同士を接合する加工 法で、溶解溶接ができない航空宇宙用の高力アルミ合金の接合が可能である。この技術を腐 食やファスナ孔を起点とする疲労亀裂が問題となる胴体パネルに適用して、構造信頼性向上 とコスト低減を狙う。2.2.1.1 項に、胴体適用を想定した FSW 技術について、概要と開発状況を 記す。 (d) A-VaRTM 尾翼 A-VaRTM(Advanced Vacuum-assisted Resin Transfer Molding)技術は、プリプレグを使用し ない RTM 成形法のひとつで、予め織って成形した繊維に真空引きで樹脂を含浸させ、大気圧 下で加熱硬化させる方法である。軽量である事に加え、プリプレグやオートクレーブが不要ゆ えに低コスト化が期待できる。2.2.1.2 項に、A-VaRTM 技術の概要と開発状況を示す。 (e) 複合材又は FSW 主翼 主翼は、複合材適用とメタル(FSW+Aged Forming)適用の双方についてトレードオフ検討を 行う事とした。複合材の場合は、上下面パネルはプリプレグ、桁は RTM(Resin Transfer Molding; A-VaRTM は RTM 工法の一種)とする構想で、メタルの場合は、上下面パネルを FSW と Aged Forming で成形する構想である。2.2.2 項に、技術概要と開発状況を示す。 (f) 新エンジン 競合機に搭載されている既存エンジン-General Electric 社製 CF34-3 や Rolls Royce 社製 AE3007 に対し、低燃費かつ高性能な次世代エンジンをエンジン・メーカが研究中で、これら次 世代新エンジンを採用する。 Ⅲ-50 (g) More Electric システム(以下、ME と称す) エンジン効率低下の一因であるエンジン抽気を廃して電気式システムに置換したものの総 称で、全機エネルギー効率向上による燃費向上や、整備に手間がかかる抽気系統の削減で 整備工数削減が期待される。(図Ⅲ-2.1-10 を参照) (h) 新コンセプト・キャビン 同じ胴体径で居住性を向上できる(窓側座席の足元クリアランスを大きくできる)扇形座席配 置を検討する。次項に扇型座席配置構想の詳細を示す。 APU Bleed Duct/Leak Sensor Pneumatic Starter No Bleed APU APU Anti-Ice Duct/Leak Sensor Starter Generator Engine Bleed Duct/Leak Sensor Air Cycle Machine OBIGGS 電気式 ECS Pack No Bleed OBIGGS 電気式 Anti/De-Ice System More Electricシステム 従来システム 【図Ⅲ-2.1-10 適用新技術候補:ME Ⅲ-51 ③全機レイアウト (a) 客室設計 幹線機並みの客室快適性を実現するに際し、乗客快適性に大きく影響すると思われる寸法 は代表的幹線機の一つであるボーイング B737 と同等にする事を目指した。非円形に比して重 量メリットがある円形断面胴体を前提とすると、胴体径を決めるのは窓側座席の足元クリアラ ンス要求となる。胴体断面積=胴体濡れ面積は機体の空力抵抗に直結するため、クリアラン ス要求を満足させつつ、極力胴体径を小さくする方法を検討し、4 列座席を扇形に配置する新 しいレイアウト(以下、扇型座席配置と称す)を考案した(特許出願済み)。 扇型座席配置は、窓側で 7°、通路側で 3°、座席を通路側へ向けて設置するもので、窓側 座席の足元クリアランスと乗客間のクリアランスを拡大する効果を持つ。CRJ200 より僅か 4”大 きい 110”の胴体径で、CRJ200 を大きく凌駕する事は勿論、胴体幅 115“の EMB170 や 6 列座 席胴体のボーイング B737 に匹敵する居住性(クリアランス)を持たせることができる。(図Ⅲ -2.1-11 および図Ⅲ-2.1-12) 扇型座席配置を含む客室居住性・快適性は、キャビン・モックアップを製作して評価した。複 数の国内エアライン殿にも評価頂いて意見を頂き、好評を得ている。図Ⅲ-2.1-13 には社内評 価の様子を示した。尚、モックアップ製作は平成 15 年度「加速」財源を用いて作業を加速した 事を付言する。 部位 要求 新4列胴体 EMB170 CRJ200 305形態 (参考) 頭 6.0" 6.0" 6.0" 4.4" 5.0" 足 6.0" 6.0" 9.0" 4.5" 5.5" 内装-乗客 クリアランス 座面幅 アームレスト幅(中央) 新4列胴体 EMB170 CRJ200 305形態 (参考) B737 18.0" 18.3" 17.3" 18.0" 17.0" 2.0" 2.0" 1.8" 2.0" 2.0" 20.0" 20.3" 19.1" 20.0" 19.0" 幅 18.0" 19.8" 15.0" 18.0" 20.0" 高さ 79.0" 79.0" 73.5" 78.0" 86.6" 乗客間(乗客中心間)寸法 通路 EMB170 CRJ200 MJ 新4列座席配置胴体 3列座席配置胴体 132“ 78“ 2“ 2“ 18“ 2“ 18“ 2“ 18“ 2“ 18“ 2“ 79“ 18“ 1.8 “ 17.3“ 1.8 1.8 “17.3“ “ 1.8 1.8 17.3“ “ “ 15“ 1.8 17.3“ “ 73.5“ 86“ 86“ 103“ 101“ 2“ 2“ 18“ 2“ 2“ 18“ 101“ 108“ 37“ 110“ 106“ 115“ 【図Ⅲ-2.1-11 新 4 列座席配置胴体:胴体断面形状比較】 Ⅲ-52 2“ 18“ 19.75“ 2“ 18“ 79“ 扇形配置での客室構成 – 38席機 ・ 最前列は標準的な車椅子でアクセス可能 (機内持込用車椅子であれば最後尾まで問題なくアクセス可能) ・ 同等の快適性を確保する従来型配置の胴体に比べ、胴体径を4in縮小 →燃費2%低減 ・ 浅い角度での扇形配置により、窓側座席においても違和感のない快適さを実現 ・ ラバトリー横には座席なし(“トイレの番人”なし) 窓側座席の足元クリアランス拡大 扇型座席配置 乗客間の肩のクリアランス拡大 扇型座席配置により、110inの胴体径でEMB170及び幹線機並みの客室快適性を実現 標準的な車椅子 【図Ⅲ-2.1-12 新 4 列座席配置胴体:扇型座席配置】 Ⅲ-53 【図Ⅲ-2.1-13 キャビン・モックアップ評価(社内試験)】 Ⅲ-54 (b) 全機アレンジ 設定した MJ ファミリーの中で 30 席クラス機は最も小型のエンジン・ウイングマウント形態のジ ェット旅客機となる為、他機では問題にならなかった運用上の課題が潜在する可能性がある。全 機アレンジの検討に際しては、図Ⅲ-2.1‐14 に一例を示すエンジン・ウイングマウント形態機の一 般的な設計考慮事項に加えて、空港での地上サービスやカーゴ搭載時のアクセス性、非常脱出 スライドとエンジンとのクリアランス設定、等に留意した。(図Ⅲ-2.1‐15 (1/2)~(2/2)) また「人に優しい」機体の具体策として、バリアフリー実現の為にパッセンジャー・ボーディング・ ブリッジ(Passenger Boarding Bridge、以下、PBB と称す)が使えること(図Ⅲ-2.1‐16)や、カーゴ 搭載時の作業性向上を狙って設定した、広い開口部(カーゴドア)/内部で立って作業できるカー ゴ室等の特長についても、デジタル・モックアップ等を用いて基本的な成立性を確認した。(図Ⅲ -2.1‐17) WATER SPRAY INGESTION ZONE 22deg ② 12deg STATIC GROUND LINE COLLAPSED NOSE GEAR ③ ① ① Collapsed nose gear condition criteria 前脚座屈時にナセルが地面に接触しないよう、機首構造と主脚を結ぶ線より上にナセルを収める。 ② Roll clearance criteria 離着陸時にナセルが地面と接触しないよう、主脚より12度をクリアランスとする。 ③ Criteria for water spray 前脚によるwater spray角を22度とし、この範囲より外側にエンジンインテークを配置する。 【図Ⅲ-2.1-14 エンジン・ウイングマウント形態:機体アレンジ上の設計考慮事項の例】 Ⅲ-55 ・ 全長が短い30席クラス機でも、地上支援設備が同時にアクセスすることが可能。 地上サービスの問題がターンアラウンドタイムを長くする事はないことを確認した。 【図Ⅲ-2.1-15 (1/2) 全機アレンジ成立性確認:地上サービス】 【図Ⅲ-2.1-15 (2/2) 全機アレンジ成立性確認:非常脱出スライド配置】 Ⅲ-56 ・ 一般的な PBB が使用できるように設計。(バリアフリーを実現) ・ 空港設備との適合性を確認。 ・ 有用性について国内外エアラインの支持を得た。 競合機における身障者の乗降(CRJ-200) 【図Ⅲ-2.1-16 全機アレンジ成立性確認:PBB 適合性】 1194 mm 1895 mm ドア面までの距離 2237 mm デジタルHuman Model 身長:1880mm Self-Propelled Conveyor -Belt Loader:AHM925 搬送積載物:手荷物、貨物、郵便物 ベルト面高さ:先端部:最低 1.2m(47in) 最高 3.5m(138in) ベルト長さ:7m CRJ200のカーゴハンドリング 【図Ⅲ-2.1-17 全機アレンジ成立性確認:カーゴ室配置】 Ⅲ-57 ④空力 燃費性能を ERJ135 比で 20%改善する事が目標である。燃費には空力抵抗低減が最も有効で ある為、後述する CFD 解析技術や MDO 技術を最大限活用して、離着陸背機能要求を満足しつ つ、高効率な空力形状を設定すべく空力設計を行った。以下に概要を記す。 (a) 高揚抗比主翼(先進翼断面形状)設計 遷音速領域における衝撃波の発生を抑制し、同クラス他機よりも大きな翼厚比/浅い後退 角(*1)で所望の MDD(抵抗発散マッハ数)を実現する低抵抗主翼断面形状を設定した(図Ⅲ -2.1-18)。詳細は 2.3.1 項に示す。尚、(*1)の狙いは、主翼構造重量軽減、良好な低速空力特 性確保、燃料容量余裕の確保である。 z/c[%] MJ wing 同類他機 wing z/c[%] 10 後退角:27°、厚み比: 9.8 % 5 後退角20°、厚み比: 11% x/c[%] 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 -5 1 00 x/c[%] -1 0 :同類他機 CLwing :MJ 巡航CL MDD (注)グラフは試設計のもの。本機設計ではMDD 要求0.78に合わせて翼厚比を12%に増大。 【図Ⅲ-2.1-18 高揚抗比主翼(先進翼断面形状)】 Ⅲ-58 (b) 主翼と推進系との空力干渉低減設計 主翼とエンジン/エンジン排気の空力干渉は、エンジン・ウィングマウント形態特有の空力 課題である。干渉による抵抗増大(主翼揚力の減少を含む)を最小限に抑制する事、翼とナセ ル間に衝撃波が発生、剥離してバフェット現象を引き起こさないようにする事が必要である。 機体仕様設計と並行して開発中の CFD 解析技術を用いてエンジン吸排気を模擬した解析を 行い、上記を満たす主翼形状とナセル配置を設定した(図Ⅲ-2.1-19)。詳細は 2.3.2 項に示す。 ロングナセルの場合 ショートナセルの場合 【図Ⅲ-2.1-19 推進系統合 CFD 解析結果(圧力分布)】 また、空力干渉抵抗の更なる軽減を図る為に、空力デバイス(「リップレット」)を検討した。 (ア) 背景及び目的 一般に、ショートナセルにはナセル配置の自由度があるが、空力以外の制限(地上とのク リアランス、タービンディスクのバースト等)から、必ずしも空力的に最適な配置とならない。 また、上昇時の低 CL 飛行において主翼-ナセル干渉が大きく、抵抗が増大する。 そこで、ショートナセルのファンカウル後縁にリップレットを装着し、主翼-ナセル干渉低減 効果を評価する。 (イ) 検討結果 CFD(オイラー+境界層補正コード)を用いて、全機形態で、エンジン吸排気を模擬した解 析を実施した(図Ⅲ-2.1-20)。リップレット形状(幅、長さ、角度等)をパラメトリックに変更し、 最適形状を設定した(図Ⅲ-2.1-21)。 図Ⅲ-2.1-22 に示すように、リップレット装着により主翼-ナセル干渉パターンが変化する。 その結果、主翼-ナセル間の超音速領域が減少し、パイロン内舷側でのバフェット危険性が 低減する事を確認した。また、図Ⅲ-2.1-23 に示すように、リップレット装着により低 CL 飛行 時の L/D が(若干ではあるが)改善できる事を確認した。 Ⅲ-59 Cp -1.4 リップレット +1.0 【図Ⅲ-2.1-21 最適リップレット形状】 【図Ⅲ-2.1-20 全機圧力分布(マッハ 0.74)】 Mach 1.5 0.6 0.5 (a) リップレットなし CL CL 0.4 リップレットあり 0.3 0.2 リップレットなし 0.5 0.1 0.032 (b) リップレットあり 【図Ⅲ-2.1-22 マッハ数分布(マッハ 0.74、CL=0.3)】 Ⅲ-60 0.034 0.036 0.038 C 0.04 CDD 0.042 0.044 0.046 【図Ⅲ-2.1-23 ドラッグポーラー(マッハ 0.74)】 (c) 高揚力装置設計 比較的滑走路が短い都市型空港での運用に必要となる離着陸性能と、長い航続距離性能 の両立には、高性能の高揚力装置が必須となる。その一方、機体価格/製造コストやエアライ ンにおける整備コストを抑制する必要もある。 後者の要求を踏まえて、シンプルな後縁シングル・スロッテッド・フラップ+前縁スラットを採 用し、その拘束条件下で所望の性能を達成すべく空力設計を行った。 MDO(多領域同時最適化)技術と組み合わせた CFD 解析技術を活用して、離着陸時の CLmax 及び L/D 要求値を達成できる見込みを得た。(図Ⅲ-2.1-24) 高揚力装置設計結果(HLD展開図) 着陸形態、M=0.167、Re=7.52e6、α=24° 【図Ⅲ-2.1-24 高揚力装置設計例】 上記を含めて全機空力形状を設計し(図Ⅲ-2.1‐25)、空力設計のみによる燃費削減は、 ERJ135 に対して 11.5%との見込みを得た。(図Ⅲ-2.1-26)詳細は 2.3.3 項に示す。 【図Ⅲ-2.1-25 全機 CFD 解析結果 (表面圧力分布)】 Ⅲ-61 ERJ-135 Wing 90% Fuselage E/G Inst. Ⅲ-62 ・太い胴体径及び短いアームのために 尾翼面積が大きいことによる 濡れ面積 51%増加 ・小型エンジン 濡れ面積 48%減少 ・胴体径が大きい ことによる(3列→4列) 濡れ面積15%増加 ・先進スーパークリティカル翼 ・MDO 95% ・Wing Mount形態による 干渉抵抗低減 100% ・大アスペクト比(8→10) Drag Contribution to Block Fuel % 105% Tail 11.5% 85% Others MJ-35 【図Ⅲ-2.1-26 ERJ135 との比較:空力設計のみによる燃費への寄与内訳】