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「法律家の仕事と家庭のバランスに関する調査」についての報告
「法律家の仕事と家庭のバランスに関する調査」についての報告 お茶の水女子大学 1 中村真由美 問題 女性の社会進出が進み、かつては男性がほとんどを占めていた職にも多くの女性が就くようになって いる。法曹職はその中でも特に、高度に専門的かつ伝統的に男性占有率の高い職業であるが、この分野 に女性が増えることが、家庭内における男女間の役割格差(家事・育児分担等)や、職場における男女 間の格差(職域・職階等)にどのように影響を与えているのか、さらには家庭内における役割負担がキ ャリア形成にどのように影響を与えているかについて知る為、調査を実施した。本報告ではこの調査の 単純集計結果から得られた知見について報告する。 2 方法 2-1. 調査項目 【職業に関する設問】 -職歴、入職経路、顧問先、公的活動、法曹を選択した理由、離職の検討の有無、 現在および将来やってみたい専門・得意分野、性別によって異なった扱いを受けた経 験など 【家庭に関する設問や、家庭と職業の双方に関わる設問】 -配偶者の有無、配偶者の方の仕事、居住状況、勤務先の育児休業制度・支援策、 子供の有無、年齢、子育て支援の有無、配偶者間の子育て負担割合、労働時間、 家事時間、収入・所得、男女の役割についての価値観など 2-2. 調査対象・手法・回収率など -日本女性法律家協会会員 997 名(弁護士 832 名、裁判官 113 名、検察官 32 名、教員 他 20 名、全て女性)。全数調査。郵送調査。回収率 40.6%。 -日本弁護士連合会会員より無作為抽出した弁護士 5187 名 (男性 3400 名 女性 1787 名)。無作為抽出(系統抽出法)。郵送調査。回収率 28.3%。 3 結果 女性法曹は性役割に関する価値観が非常にリベラルであり、育児支援の形態(外部からの支援を受け る割合の高さや、職場で個別の対応を受けられることなど)および所得の高さの点でも、一般の女性と は異なる「特別な集団」であるということが改めて浮き彫りになった。しかしながら、配偶者より重い 家事負担を背負っている点では、日本の働く女性が一般に抱えている困難を共有している側面も見うけ られた。また、女性法曹には性別によって異なる扱いを受けた経験を持つ者も多く、相手は上司よりも、 依頼者や他の法曹関係者が多いという意外な知見も得られた。報告当日には、さらに分析を進め、男女 弁護士の比較分析結果などもあわせ、男女弁護士の職域や家庭内役割分担における性差や、それらのキ ャリア形成への影響についても言及したい。