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フランス学術情報 - 日本学術振興会
フランス学術情報(平成 25 年 6 月分) 平成 25 年 6 月 18 日 ストラスブール研究連絡センター フランス高等教育研究省(MESR) ●「France Europe 2020」 2013 年 5 月 21 日、フランス高等教育研究省ジュヌヴィエーヴ・フィオラゾ大臣は、研究・技術移 転・イノベーションに関する戦略的アジェンダ”France Europe 2020”を発表し、次のように語った。 「フランスでは 2010 年度研究開発総予算 446 億ユーロ(国内総生産の 2.3%)のうち、192 億ユー ロが研究への公的資金投資に充てられた。”France Europe 2020”は研究における国家レベルの戦 略であり、高等教育研究に関する法に記されている他、技術移転とイノベーションを優遇する特別 措置を含む。研究に関する国家戦略は定期的に見直しが行われ、高等教育研究機関や ANR を 始めとした研究支援機関と協力して実施する予定である。 “France Europe 2020”は、フランスにおける研究が科学、技術、経済、社会面の今後数十年間の 課題に立ち向かえるよう促す目的を持っている。健康、食の安全、資源の適正な管理、気候変動、 エネルギー移転、都市持続性のモビリティとシステム、数量経済と宇宙技術の開発、フランスの再 産業化等は研究とイノベーションの関係者が一体となって取り組むべき課題である。産業界の競争 力向上と透明化のため、欧州規模・世界規模のコラボレーションの発展が望まれる。同時に、長期 的な視野に立っての基礎研究支援も続けていく。 ANR も戦略的に”France Europe 2020”や”Horizon 2020”と足並みを揃えた支援内容の充実を 図る。 フランス大統領が 2013 年 2 月 5 日にコレージュ・ド・フランスで約束したとおり、“France Europe 2020”の実施により、フランスにおける研究が知の創造の基礎となり、イノベーションを推進すること でフランスの再興につながることが期待される。 ・フランス高等教育研究省 “France Europe 2020 : Édito de Geneviève Fioraso” (2013 年 5 月 21 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid71884/france-europe-2020-edito-de-genevieve-fio raso.html ●「高等教育研究分野での日仏協力強化」 2013 年 6 月 8 日、オランド大統領の訪日に当たり、フランス高等教育省フィオラゾ大臣が山本一 太内閣府特命担当大臣と共に第 8 回日仏科学技術協力合同委員会に出席した。 フランスにとって高等教育研究分野における日本との協力には二つ目的がある。一つは二国間で の学生や特に理系研究者のモビリティを増加させること、もう一つは、既に科学分野の連携の更な る強化である。 日本は研究開発への民間投資が全体の 79%、国民総生産(GDP)の 3.64%と世界でもトップであ る。原子力の分野において、日本の ITER(国際熱核融合実験炉)への貢献度は高く、現理事長は 日本人*である。宇宙分野では 2005 年より協力関係にある。また、日仏関係においては、ライフサイ エンス、持続性エネルギー・グリーンイノベーション、環境、情報・ロボティクス、物質科学・ナノテクノ ロジー、宇宙の 6 分野及び大規模研究施設に焦点を当て、更なる協力を推進している。バイオテク ノロジー分野では、フランスの若手起業家集団 Cellecis と 2012 年ノーベル生理学・医学賞受賞者 の山中伸弥教授(京都大学 iPS 細胞研究所長)との共同研究が行われるなど、日仏間の更なる協 力強化が期待される。 今回の来日では、フィオラゾ大臣出席の下、物質科学分野における物質・材料研究機構 (NIMS)、サンゴバン(Saint-Gobain)、CNRS の国際合同研究室発足に係る覚書、フランスのシンク ロトロン・ソレイユ(SOLEIL)、Spring8、理化学研究所播磨研究所間で協力を推進する覚書の署名 式が行われた。この二件の覚書は 2013 年 5 月 21 日に発表された”France Europe 2020”の目的に 合致するものである。 フィオラゾ大臣は東京大学と CNRS の国際共同研究室である LIMMS 及び東京大学、CNRS、 ボルドー大学の新エネルギー研究開発連携拠点オフィス Next-PV を訪問する機会にも恵まれた。 フランスは毎年 2,000 名の日本人学生を受け入れているが、日本におけるフランス人学生は 1,000 名に満たない。フランスを外国人学生にとって魅力ある国にし、受け入れ体制の整備、複数 年に渡る滞在許可証の発行、英語とフランス語での授業の提供等で 2020 年までに日本人学生の 数を二倍にしたい。 フランスは日本にとって第四番目のパートナーである。環境、社会、経済面の問題解決に向けて、 また、競争力や持続的雇用の創出を目指して、高等教育研究の分野での日仏協力関係の更なる 強化を図りたい。 *本島 修氏(核融合科学研究所前所長) ・フランス高等教育研究省 “Coopération franco-japonaise pour l'enseignement supérieur et la recherche” (2013 年 6 月 8 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid72300/cooperation-franco-japonaise-pour-l-enseig nement-superieur-et-la-recherche.html ・在日フランス大使館「新エネルギー研究開発連携拠点オフィス NextPV 設立」(2012 年 12 月) http://www.ambafrance-jp.org/article6561 ・外務省(2013 年 6 月発表)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/technology/nikoku/ja_fr.html ●「高等教育研究機関における同性愛差別について」 2013 年 5 月 17 日国際反ホモフォビアの日に、フランス高等教育研究省は、大学職員に向けた 冊子を発行した。この資料は、高等教育機関の教職員に送られ、特定の学生が自分の性的志向 や性同一性に関連した差別を受けていることに関する理解を促すものである。高等教育研究省は、 反ホモフォビアと対決する政策を遵守する姿勢で、ジュヌヴィエーヴ・フィオラゾ大臣は 5 月 16 日、 ナジャット・ヴァロー=ベルカセム大臣からの招聘を受けて、女性権利省を訪問し、この計画の実行 に関する説明を行った。 ・フランス高等教育研究省 “Le M.E.S.R. pleinement mobilisé dans la lutte contre l'homophobie à l'université” (2013 年 5 月 17 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid71885/le-m.e.s.r.-pleinement-mobilise-dans-la-lut te-contre-l-homophobie-a-l-universite.html ●「外国人学生の受け入れと就職の促進に関する討論」 2013 年 6 月 13 日、フィオラゾ高等教育研究大臣はフランス国民議会にて外国人学生・研究者の 受け入れがフランス社会に望ましい影響を与えるという旨の説明を改めて行った。以下に概略を示 す。 フランスでは、海外からの学生数は 2005 年と比較して 2 倍に増えており、また 2020 年には更に 倍増すると言われている。毎年 29 万人の外国人がフランスで勉強することを選択し、博士号の 41%が外国人学生によって取得されている事実からも、フランスの大学の国際性の高さが窺える。 一方で、近年フランスは、高等教育の求心性という点で他国に抜かれつつある。米国、カナダ、豪 州、ドイツ、北欧諸国はすでに海外からの学生の受け入れを推進する政策を行っており、フランス も戦略を立てることが求められている。 多くの外国人研究者はフランス国内で優れた研究を行っており、彼らは学会において大事な役 割を果たしている。また、外国人留学生がフランスへの理解を深めることでフランスの言語・文化・ 価値を世界に伝える良き「外交官」となろう。そして将来、フランスが他国とパートナーシップを築く 基礎となり、ひいてはフランス経済にも好影響をもたらすであろうことを鑑みると、外国人を受け入れ ることの大切さがわかる。 国際社会での競争力をつけるためには、BRICs やアフリカなど、今後の発展が期待される地域 へも目を向けていく。さらに、言語の壁をなくすため、外国語による授業を大学内に設けていく。 海外からの学生の受け入れを強化するために、査証発行や入学に関する手続きの簡素化、複 数年の滞在許可証の発行、優秀な外国人学生の修了後の就職支援等が必要である。 ・高等教育研究省 “Assemblée nationale: débat sur l'immigration étudiante et professionnelle” (2013 年 6 月 13 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid72404/assemblee-nationale-debat-sur-l-immigrati on-etudiante-et-professionnelle.html ・JSPS ストラスブール研究連絡センター「海外における高等教育に関する動向」(平成 25 年 4 月分) ●「ロレーヌ、アルザス、アビニョンにおける高等教育機関の連携」 2013 年 6 月 4 日、フランス高等教育研究省において、ロレーヌ、アルザス、アビニョンにおける高 等教育研究機関の協力協定(2013 年から 2017 年)に関する署名式が行われ、同地域の大学長ら 関係者が出席した。学生の成功を優先とした各地域内における大学間の協力に 5 年間で 800 万ユ ーロの支給及び初年度からの 80 のポジションの提供が約束された。本協力によって、地域発展や より多くの学生の資格取得を目指す。 ・フランス高等教育研究省 “Signature des premiers contrats de site pour la Lorraine, l'Alsace et Avignon”(2013 年 6 月 4 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid72210/signature-des-premiers-contrats-de-site-po ur-la-lorraine-l-alsace-et-avignon.html ●「第 5 回科学・研究・社会フォーラム」 2013 年 5 月 23 日、コレージュ・ド・フランスにて第 5 回科学・研究・社会フォーラム(主催:ル・モン ド、La Recherche、共催:ADEME、INRIA、INSERM、IRSTEA)が開催され、高等教育研究省から もフィオラゾ大臣が参加者にメッセージを伝えた。 フィオラゾ大臣は”Assises”高等教育諮問委員会を受けて同日国民議会に提出された高等教育 研究関連法案についての二つの目的を再確認した。一つ目は、同世代における高等教育終了 50%の達成とすべての学生の成功を目的とした若者の能力向上、二つ目は、経済、社会面での大 きな困難に立ち向かうため、基礎研究のみならずテクノロジーや技術移転等応用研究に関する新 しい戦略目標の設定を行うことである。 また、本目的を達成するために、外国人学生の受入、研究・技術移転・イノベーションに関する戦 略的アジェンダ”France Europe 2020”を念頭においた欧州各国との連携に力を推奨していく。 ・フランス高等教育研究省 “5e édition du Forum Science, Recherche et Société”(2013 年 5 月 24 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid71883/5e-edition-du-forum-science-recherche-etsociete.html ●「国立教育・高等教育行政監察委員の報告書」 国立教育・高等教育行政監察委員が 2012 年の年次報告書を提出した。報告書では教育機関 における公共サービスの質保証のために有益な改善点を提案している他、私立の高等教育に関 する苦情にも言及している。高等教育研究省フィオラゾ大臣は、2013 年 5 月 30 日、特にトゥーロン とベジエにあるポルトガルのフェルナンド・ペッソア大学で発生した問題に触れ、私立の高等教育 機関において自主性と自由を尊重する一方で、不正行為が学生に与える悪影響について注意を 払うよう関係者に注意を促した。 ・フランス高等教育研究省“Réaction à la remise du rapport de la médiatrice de l'Education nationale et de l'Enseignement supérieur”(2013 年 5 月 30 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid72118/reaction-a-la-remise-du-rapport-de-la-medi atrice-de-l-education-nationale-et-de-l-enseignement-superieur.html ●「フランス‐スイス間の協力体制強化」 2013 年 6 月 3 日、高等教育研究省フィオラゾ大臣はローザンヌにて「イノベーションフォーラム フランス・スイス 2013」及びジュネーブにて第 14 回大学・科学・テクノロジーに関するフランス・スイス 間協力会合に出席した。今回のスイス訪問で、特に科学と大学、研究とイノベーション、CERN や ITER 等大規模な国際プロジェクトの分野での二国間の協力関係の強化が確認された。 ・フランス高等教育研究省“Renforcer la coopération franco-suisse sur le plan scientifique et universitaire”(2013 年 6 月 3 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid72161/renforcer-la-cooperation-franco-suisse-surle-plan-scientifique-et-universitaire.html ・フランス高等教育研究省“L'innovation au service de la transition énergétique”(2013 年 6 月 4 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid72169/l-innovation-au-service-de-la-transition-en ergetique.html ●「宇宙と研究に関する欧州連合の競争審議会」 2013 年 5 月 30 日、ブリュッセルにて宇宙と研究に関する欧州連合の競争審議会が行われ、フィ オラゾ大臣がフランス代表として出席した。同審議会では、宇宙産業政策と高性能計算に関する決 議案が採択された他、Horizon 2020 について研究費利用制度の簡素化が満場一致で可決され、 予算に関する方向性の確認が行われた。それぞれの議題に関するフランス政府の立場は次のとお り。 ○宇宙産業政策 フィオラゾ大臣は欧州委員会の地球観測プログラムであるコペルニクスに関し、Galileo の打ち上 げ成功により、宇宙利用に関する欧州独自の地位が確立され、欧州内の大規模研究グループや 中小企業にとっての雇用創出や商機の開拓が可能となったと、フランスの貢献度に触れた。 ○高性能計算 研究、イノベーションの発展、競争力強化において、高性能計算を利用した戦略が欠かせず、科 学、産業界においていかに大容量のデータの恩恵を被るかがフランスにとって賭けとなる。 フィオラゾ大臣は、ERC のプログラムや Marie Curie Action による優れた基礎研究の支援、若手 研究者のモビリティ向上政策の重要性を再確認した。また、LEIT(Leading Enabling Industrial Technologies)プログラムの更なる支援の必要性の強調、ITER(国際熱核融合実験炉)プロジェクト を含む EURATOM(欧州原子力共同体)予算に関する早急な議論の実施を求めた。 さらに、「欧州のミクロ・ナノ‐電子工学の将来的戦略」に関する閣議では、安価で高性能な電子 チップの生産を倍増させ、欧州全体で生産量世界第 2 位を目指すという目標が掲げられ、ドイツの ドレスデン、オランダのアイントホーフェン・ベルギーのルーヴェン、フランスのグルノーブルが、欧 州の 3 大電子工学強化拠点にすることなどが紹介された。 ・高等教育研究省 “Conseil de compétitivité de l'U.E. consacré à l'espace et à la recherche”(2013 年 5 月 30 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid72119/conseil-de-competitivite-de-l-u.e.-consacre -a-l-espace-et-a-la-recherche.html ・欧州議会 “Council Conclusions on “EU Space Industrial Policy - Releasing the potential for economic growth in the space sector”” http://www.consilium.europa.eu/uedocs/cms_data/docs/pressdata/en/intm/137341.pdf ●「Innovation Night Paris 2013:革新的な企業家の支援」 2013 年 6 月 4 日の”Innovation Night des Technodays Paris 2013”(STMicroelectonics 主催)に出 席した高等教育研究省フィオラゾ大臣は経済成長の誘発剤としてのミクロ電子工学の重要性を強 調し、イノベーションの支援と競争力強化の必要性を説いた。 フィオラゾ大臣は、5 月 30 日に行われた欧州連合競争審議会の「欧州のミクロ・ナノ‐電子工学の 将来的戦略」に関する議論に触れて、ミクロ電子工学の推進が、イノベーションと競争力を培うと同 時に、フランスおよび欧州の経済成長や雇用の源になることを挙げた。また、フランスが研究開発 に割く予算に対して特許申請に割く予算の割合が少ないことを指摘し、特許申請に関わる政策を 推進する必要があると説明した。 ・高等教育研究省”Innovation Night Paris 2013 : accompagner et soutenir les entrepreneurs innovants”(2013 年 6 月 4 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid72170/innovation-night-paris-2013-accompagneret-soutenir-les-entrepreneurs-innovants.html フランス高等教育研究省(MESR)、フランス国立研究機構(ANR) ●「未来への投資プログラム:核安全と放射線防御」 2013 年 5 月 17 日、フランス厚生大臣マリソル・トゥーレーヌ氏、環境・持続可能開発・エネルギー 大臣デルフィーヌ・バト氏、高等教育研究省ジュヌヴィエーヴ・フィオラゾ大臣、投資委員会委員長 ルイ・ガロワ氏は、未来への投資プログラム「核安全と放射線防御における研究」に関し、23 プロジ ェクトを選出したと発表した。 2011 年 3 月の福島での事故の教訓を生かし、核物質の安全と放射線防御に関する研究を深め、 専門知識を強化する必要から、同プロジェクトの公募が行われた。特に官民の協力を中心に複数 の研究機関、企業の連携による同分野の研究を支援することを目的とし、全体で 5,000 万ユーロが 支給される。本プログラムの運営は ANR が担当する。 ・フランス高等教育研究省 “50 millions d'euros pour la Recherche en sûreté nucléaire et en radioprotection” (2013 年 5 月 17 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid71887/50-millions-d-euros-pour-la-recherche-en-s urete-nucleaire-et-en-radioprotection.html ・ANR “AAP Recherche en Sûreté Nucléaire et en Radioprotection” (2013 年 5 月 22 日) http://www.agence-nationale-recherche.fr/informations/actualites/detail/aap-recherche-en-surete-nucl eaire-et-en-radioprotection/ フランス国立科学研究センター(CNRS) ●「CNRS と Air Liquide の研究協力」 CNRS と世界的なガスメーカーの Air Liquide が、2013 年 6 月 19 日に共同研究協定に署名す る。 Air Liquide は三大陸に 8 つの研究センターを有し、エネルギー分野のリーダーである。CNRS の 1,100 研究室と Air Liquide が共同で研究開発を実施することで、エネルギー、環境、健康、技術分 野における新規市場の開拓、産業界における協力強化を目指す。本目的達成のため、CNRS と Air Liquide は戦略委員会を設ける。 ・CNRS “ Air Liquide et le CNRS : un nouvel élan donné à leur collaboration”(2012 年 5 月 23 日) http://www.cnrs.fr/dire/actualites/2013/mai/airliquide-020513.htm ●「Patrick Couvreur 研究グループ、2013 年欧州発明家賞を受賞」 パリ第 11 大学(Université Paris-Sud)と CNRS の合同研究グループ(代表:Patrick Couvreur 氏) が欧州発明家賞 2013 を研究部門にて受賞した。今回の受賞は、抗がん剤を微小カプセルに埋め 込み、ヒトの健康な組織を傷つけることなくがん細胞に直接投薬できるナノ薬剤の発明が評価され たことによる。 *Patrick Couvreur 氏は 2011 年 12 月にパリで開催の日仏ワークショップ「ナノテク革命」(主催:JSPS ストラスブール 研究連絡センター、ENS Cachan)の講演者の一人 ・CNRS “ Patrick Couvreur et son équipe lauréats du prix de l'inventeur européen 2013”(2012 年 5 月 29 日) http://www.epo.org/learning-events/european-inventor/finalists/2013/couvreur_fr.html ・European Patent Office “Fighting cancer with nanotechnology” http://www.epo.org/learning-events/european-inventor/finalists/2013/couvreur/feature.html ●「Antoine Joux 氏、ゲーデル賞を受賞」 コンピュータ科学・理論の分野で優れた論文を発表した研究者に与えられる 2013 年ゲーデル賞 に、フランスから Antoine Joux 教授(Université de Versailles St-Quentin-en-Yvelines/ CNRS・PRISM 研究所)が選ばれた。Joux 氏は、他 2 名の受賞者(Dan Boneh 氏(米スタンフォード大学)、Matthew K. Franklin 氏(米カリフォルニア大学))と共に、非常に効率的かつ柔軟で安全な暗号の概念と構 想に貢献したことが評価された。また、ペアリング暗号という分野を確立させ、同分野における安全 の定義を提唱、新しい応用に関する提案を行ったことも受賞につながった。フランス人の受賞は、 2002 年の Géraud Sénizergues 氏に続いて 2 人目となる。 ゲーデル賞は EATCS(欧州理論計算機学会:European Association for Theoretical Computer Science)が情報理論での優れた研究成果に敬意を表するため 1992 年に設立した。 ・CNRS “ Antoine Joux reçoit le prix Gödel pour son modèle en cryptographie”(2012 年 6 月 3 日) http://www.cnrs.fr/ins2i/spip.php?article491 ・EATCS “Gödel Prize - 2013” http://www.eatcs.org/index.php/component/content/article/1-news/1584-goedel-prize-2013 フランス国立研究機構(ANR) ●「未来への投資プログラム:脱炭素エネルギー分野の協定調印」 2013 年 6 月 6 日、投資委員会委員長 Louis Gallois 氏、SAS PIVERT 研究拠点代表 Jean-François ROUS 氏、ANR 会長 Pascale Briand 氏は、未来への投資プログラムにおける脱炭素 エネルギー分野での優れた研究所(Institut d’Excellence)としては初めてとなる PIVERT(Picardie Innovations Végétales Enseignments et Recherches Technologique、ピカルディー・植物イノベーショ ンに関する教育研究テクノロジー拠点)を発足させる協定書に署名を行った。 コンピエーニュに設立される同研究拠点は、植物化学、第三世代のバイオ精製に関する技術と 経済、油性あるいは森林由来のバイオマスを専門とする。欧州初となる同分野の研究拠点である PIVERT は、油性バイオマスを再生可能な化学製品に開発すること、具体的には食品、健康、化粧 品、建築材料分野での応用を目指す。 未来への投資プログラムにおける脱炭素エネルギー分野の募集は 2010 年 10 月に、第二回募 集は 2011 年に行われ、計 9 プロジェクトが既に選出されている。 ・ANR “Investissements d’avenir : signature de la convention de la SAS Pivert”(2012 年 6 月 7 日) http://www.agence-nationale-recherche.fr/informations/actualites/detail/investissements-davenir-sign ature-de-la-convention-de-la-sas-pivert/ ・フランス首相官邸“Investissements d’avenir : signature de la convention de la SAS Pivert”(2012 年 6 月 6 日) http://investissement-avenir.gouvernement.fr/content/investissements-d%E2%80%99avenir-signatur e-de-la-convention-de-financement-de-la-sas-pivert ・PIVERT ホームページ http://www.institut-pivert.com/fr/a-propos-de-p-i-v-e-r-t/ ●「ARP FUTURPROD」 ANR では事業計画をより綿密に準備するために、将来ビジョンを検討するワークショップ(APR) を支援している。2011 年末には産業化の再生を図る中で「生産システムの未来」に関するワークシ ョップが行われ、2013 年 5 月 28 日のワークショップではその最終報告がまとめられた。報告書では 生産システムの未来に関するシナリオの提示、と欧州社会における産業界の賭けと変化に対する 分析が行われている。また、経済、社会、環境面での課題解決をめざし、早急に開始すべき優先テ ーマの提案も行われている。 ・ANR “ ARP FUTURPROD : rapport final en ligne ”(2012 年 6 月 7 日) http://www.agence-nationale-recherche.fr/informations/actualites/detail/arp-futurprod-rapport-final-e n-ligne/ フランス高等科学研究所(IHÉS) ●「アーベル賞 2013」 2013 年 5 月 21 日、ノルウェー・オスロにて、米プリンストン高等研究所名誉教授でベルギー出身 の Pierre Deligne 氏にアーベル賞 2013 が授与された。アーベル賞はニールス・ヘンリック・アーベ ル財団*によって、数学分野で優れた業績を上げた研究者を表彰するために 2002 年に創設された。 今回の受賞では、代数幾何学への貢献、表現理論や関連分野へ与えた影響の大きさが評価され た。 Deligne 氏はブリュッセル自由大学卒業後、フランスのエコール・ノルマール・シュペリエールで 授業を聴講し、後に IHÉS で教授として 1970 年から 1984 年迄研究を行った経歴がある。過去に 1978 年のフィールズ賞、1988 年のクラフォード賞、2004 年のバルザン賞、2008 年のウルフ賞も受 賞している。 *Niels Henrik Abel は 1802 年に生まれたノルウェーの数学者、26 才で夭折するまで数々の業績を残し、二項定理を 最初に証明したことでも知られている。 ・IHES “Prix Abel 2013 ” http://www.ihes.fr/jsp/site/Portal.jsp?document_id=3302&portlet_id=826 ・アーベル賞ホームページ http://www.abelprize.no/