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TRAVEL AT HIGH ALTITUDE

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TRAVEL AT HIGH ALTITUDE
ii 高所医学ハンドブック
このハンドブックについて
このハンドブックは、実際に山に
行き、とりわけ、高所の人体への影
響や高所医学に、とても興味をもっ
ている人たちによって書かれた物で
す。このハンドブックの内容は、現
在の知識に基づいた1つの指針(ガイ
ドライン)として取り扱うとよいで
しょう。
高山病の研究は、容易でなく、広
い分野ではないものの、大成には未
だほど遠いものです。高所へ行く前
には、誰もが医療アドバイスを受け
るよう勧められます。また、高所で
病気にかかった場合は、その場所か
らでも医療アドバイスを受けること
を勧めます。
初版:2007
本版:2008
著者と出版者はその情報が正確で、できるだけ最新であることを確認するため常に努力を
払ってきている。しかし、このハンドブック内の忠告や情報の結果として生じた、いかな
る不利益、損害、不都合も、責任を負いかねるものである。
本サイト内の全ては著作権を有している。我々は、版権所有者が認める限り、このハンド
ブックの非営利目的での使用を奨励するものである。©MEDEX 2007,2008
ISBN 0-901100-76-5
このハンドブックはこのウェブサイトからダウンロード可能です;
www.medex.org.uk
高所医学ハンドブック iii
目次
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
15
16
17
18
19
20
21
22
はじめに
高所の研究
高所とは?
高所って世界のどこに
あるの?
ヨーロッパ
北南米
アフリカ
アジア
オーストラリアと近隣諸島
南極
高度順応
高所の影響
急性高山病(AMS)
脳
高地脳浮腫(HACE)
肺
高地肺水腫(HAPE)
心臓と血液
胃と腸
腎臓と膀胱
関節と筋肉
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
35
36
39
40
41
42
43
44
手足
目
口と歯
耳と鼻
月経と避妊
睡眠
子どもが高所に行く場合
ポーター
緊急時の行動
事故記録カード
薬
酸素
持病や体調
きれいな自然環境を
維持するために
推薦図書
インターネット上の
関連情報
Credits
急性高山病スコア日誌
健康カード
1 高所医学ハンドブック
はじめに
1991年、メラ峠(5,415m)で、若い元
気なクライマーが死んだ。そのクラ
イマーは医師と一緒だったが、その
医師は重い高山病が命を脅かすこと
を知らなかった。
この悲劇を目の当たりにした山岳
医療に興味を持つ医師数名が、高
山病を研究しその知識を人々に普及
しようと、「Medical Expeditions」を立
ち上げた。
それから10年後のメラ峠。Medical
Expedition のメンバーの目の前で、今
度は年輩の日本人女性が昏睡に陥
り、友人を残して息を引き取った。
ひたすら研究と啓発をしたにも関わ
らず、また命が失われた。命を救う
為には、まだまだすべき事がたくさ
んあるのだ。
1990年代初めから、Medical
Expeditionsの仲間達は、山岳医療の研
究に励んでいた。
彼らは、高所登山に関わる医師の
知識を向上させようと、最善を尽く
してきた。
このハンドブックは、高所の旅が
人の体にどのような影響を与えるか
に注目し、なぜ人が高所で不調を感
じたり病気になるのか、その理解を
深めるためのものである。具体的に
は、高所に関わる病気をどう予防す
るか、かかった場合に何をすべき
か、実際の経験と症例を例にあげて
説明をしている。
メラ峠での悲劇は高所に行ったこ
とで引き起こされた。しかし、簡単
な注意を守れば、いずれも防ぐこと
ができたはずである。
Medical Expeditionsは、医師や高所医
学を学びたい人々に、その教育を
行っている。
誰もが高所で健康に過ごすため
に、このハンドブックを活用して欲
しい。
高所医学ハンドブック 2
高所の研究
これらの活動を詳しく知りた
このハンドブックは、高所の
旅と高所の医学の発展を願う2つ い方、参加されたい方は、ウェ
の関連組織(Medical Expeditions と ブサイトをご覧ください。
Medex)が共同で作成したもので
ある。
Medical Expeditions の目的は
・高所に関わる病気をあらゆ
る視点から調査する事
・登山者、それに関わる医師
に対して、自然や高所に関
わる病気の原因と予防につ
いて教育する事
であり、1992 年に創立され、そ
の研究と教育活動は国際的に高
い評価を得ている。
Medical Expeditions は、比較的大
きな遠征グループを対象にした
長期的な研究を専門に行ってお
り、典型的な研究規模は、75 名
の6週間に渡る高所滞在である。
Medex は、登山者と医療関係者
の連携をはかり、世界中の高所
遠征の企画面で、Medical
Expeditions の仕事を支援してい
る。Medex は1994 年のエベレス
ト、1998 年のカンチェンジュン
ガ、2003年のホング遠征を成功
させている。
3 高所医学ハンドブック
高所とは?
いい質問だね!
このハンドブック
では、海抜ゼロ
メートル付近から
標高2,000m より高
い場所へ行くこと
について話してい
こう。
私達は、平地で
生活しているた
め、高い場所へ行
く時は、体を慣ら
す必要がある。
標高が体へ与える影響は1,5002,000m 辺りから現れる。標高を上
げ、酸素の量が変化するにつれ、
徐々に体は適応を始める。2,500m付近
まで一気に登ってしまうと、十分に
適応できていないため高山病が起こ
り易い。
多くの人は、高所に慣れるための
十分な時間さえ取れば5,000mから
5,500m(エベレストベースキャンプ)の
標高に適応できる。しかし、5,500m
以上になると、殆どの人は適応でき
なくなり、脳や体の機能は低下し健
康状態も悪化する。
高所へ移動するということは、何
が違うんだろう?一番大きな違い
は、高所へ行くほど、気圧が低くな
り、酸素が“少なくなる”ことだ。
つまり高所では一回の呼吸で入っ
てくる酸素は体にとって十分ではな
い。酸素の役割は、気付かないうち
に、体を動かすエネルギーを作り出
したり、脳の働きや消化、傷の治癒
など人が生きていくための正常な機
能全てを担うのだ。
体の酸素が不足すると、体が順応
しようとして、呼吸は速く深くな
り、酸素を運ぶ赤血球が増える。こ
れらの変化には時間がかかるため、
ゆっくり登れば、健康でいられる
し、短時間で標高を上げれば、急性
高山病のような病気にかかる恐れが
ある。
エベレスト
9,000m
デス
ゾーン
8,850m
8,000m
7,000m
極高所
キリマンジャロ
6,000m
5,985m
5,000m
超高所
4,000m
富士山
3,775m
3,000m
高所
2,000m
丹沢山
1,567m
1,000m
海抜
レベル
0m
高所医学ハンドブック 4
高所って世界のどこにあるの?
世界には人々が行くことので
きる高所がたくさんある。どこ
へトレッキングやクライミン
グに行くか、どこを通って行
くかは、自分自身で選ぶこと
ができるが、高所をスキーで
滑ったり、ドライブやサイク
リングで通過したり、高所に
ある町や都市へ飛行機で降り
立つ場合など、予期しなかっ
た体調の変化を起こすかもし
れない。
高所は、アクセス方法に
よって、健康に及ぼす影響が
それぞれ異なるため、旅行前
に、行く場所についてよく調べ
ておこう。
5 高所医学ハンドブック
ヨーロッパ
世界の高い山域の名前を誰か
にたずねたら、おそらくヒマラ
ヤ、アンデスという名前があが
るだろう。
ヨーロッパの山もまた、高山
病を引き起こすほど標高が高い
ということは、あまり知ら
れていない。
事実、ヨーロッパアルプ
スへ休暇を過ごしに来る人
や登山初心者は、高山病の
ことを殆ど、あるいは全く
知らない、という人が多
い。観光旅行に来ただけで
も、高所による頭痛が起き
たり、他の症状が起きる人
もいる。
ヨーロッパアルプスで
は、ケーブルカーや山岳電
車、スキーリフトを使え
ば、簡単にあっという間
に、高所に行けてしまう。
車で峠を超える場合にも、
標高2,000m を越える場所がたく
さんある。
ヨーロッパアルプスやヨー
ロッパ東部で山小屋を使う旅で
は、特に寝ているときに、高山
病にかかり易い。
家族4人でグリンデルワルド(1,034m)から山岳電車でユングフラウヨッホまで登り、その
後は歩いて3,650mの山小屋までピクニックに行った。高所に着いて4時間後、11歳の男の
子が激しい頭痛を訴えた。家族は歩いて下山を始め、電車に乗った。その子は下山中も
具合が悪かったが、谷に下りるとすぐに元気になった。彼の症状は、家族が聞いた事も
無い「急性高山病」であった。
高所医学ハンドブック 6
北南米
ロッキー山脈
でのスキーやク
ライミングは、
高山病にかかる
恐れがある。人
によっては、こ
の地域の町や都
市に滞在するだ
けでも、高所の
影響を受ける。
例えば、コロ
ラド州にある
レッドビルとい
う町は標高
3,000m以上に位置するのだ。
北米の名だたる山々は緯度の
高い場所にあるため、赤道の同
じ標高と比べると、気圧が低
い。南米アンデス山脈では、ク
スコ(3,326m)やラパス(3,600m)と
いった場所に、いきなり飛行機
や車で到着できるため、途中で
高度順応をしないまま高所に到
着することになる。インカのよ
うな高所トレッキングを行う場
合は、まず数時間安静にし、最
初の数日間はゆっくり過ごして
から、出発すべきである。
FIFAはボリビアのラパスでの
国際フットボール試合を禁じて
いる。これは、少ない酸素に順
応している地元チームが、非常
に有利だからである。
ある会社員が、何百万ドルという大契約をまとめるため、重要な商談の前日、ボリビア
のラパス(3,600m)に飛行機で到着した。彼の会社は経費を節約するために、彼に高度順
応するための数日間を与えなかった。彼は商談で説明を始めたものの、ひどく気分が悪
くなり、結局契約を失ってしまった。次回は、必ずや高度順応を行うだろう。
7 高所医学ハンドブック
アフリカ
アフリカの問題の多くはキリマン
ジャロ登山で起こっている。高い山
を登る際、一日300mずつ標高を上げ
ることが推奨されているが、グルー
プ登山の多くは、それより遥かに早
いペースで標高を上げている。これ
は、キリマンジャロ登山の費用が、
山に何日滞在するかで決まるからで
ある。キリマンジャロなどの高い山
に挑む前に、近くの山で順応する、
という方法もある。
旅行会社の中には、そういったツ
アーを企画し始めているところもあ
る。安全に登山を成し遂げるために
は、時間を惜しまないことだ。
旅行会社に、最近のツアーでは何
人が参加し、何人が登頂(あるいはギ
ルマンズポイントへ)できなかったか
を訊くと良い。何日かけてキリマン
ジャロトレッキングを行っているの
かも訊ねてみよう。安全に登るに
は、8-10日必要である。
山岳医療のトレーニングを受けた、経験豊かな英国人山岳ガイドが、キリマンジャロ山
(5,895m)にグループをガイドした。彼らが途中で出会ったグループは、意識朦朧とした
17歳の男の子を抱え、とてもうろたえていた。そのガイドは、デキサメタゾンを注射
し、彼の命を救うために急いで下山を始めた。小屋に到着すると彼は衛星電話で、英国
の山岳医に連絡し、夜通し下山するようアドバイスを受けた。2日後、男の子は元気に回
復した。そのグループに、高所で起きる病気について知っている人がいたならば、命の
危険は避けられたであろう。残念ながら彼らは痛い思いをしてその教訓を得たのだっ
た。
高所医学ハンドブック 8
アジア
高所トレッキングやクライミング
に最も人気のある地域といえば、世
界の中でもこのアジアである。
通常ネパール、パキスタン、イン
ドから入り、ゆっくり標高を上げて
登っていく。標高の高い場所にヘリ
ポートなどもあるが、できるだけ空
から山に降り立つことは、避けよ
う。空路でホテルエベレストビュー
(3,860m)に到着した人の84%は急性高
山病にかかっている。
一方、チベット平原へは、飛行機
で入ったり、バスや鉄道で高い峠を
超えて到着するため、ゆっくり標高
を上げることができない。到着後
は、急性高山病の症状を注意深く観
察し、標高に順応するまで、運動は
最小限にとどめよう。
あるグループが、ラサからエベレストベースキャンプまでサイクリングをした。わずか8
日間の間に5,000mの峠を2つ越えてきたのだった。9日目の朝、標高4,150mで、メンバー
の一人の女性がめまいと吐気を感じ、震えてまっすぐ歩くことができなくなった。昼に
なってもよくならず、グループは下山を決定した。しかし下山にはさらに高い5,150mの
峠を超えなければならず、病人の顔色は蒼白し、口元はがらがらと泡を吹き、ほとんど
息ができなくなった。ひとたび峠を越えると、彼女の状態は持ち直した。4,100mでグ
ループは一晩過ごした。地元の医師に、「高血圧」と間違った診断を受けたが、幸いに
も彼らは高山病治療薬を持った医師に出会った。翌日彼らはトラックで2,400mまで下
り、治療を受けるためにカトマンズに到着した。
9 高所医学ハンドブック
オーストラリアと近隣諸島
ニュージーランドには3,000m
を越す山がたくさんあるが、下
山をしなくてはならないほどの
高山病は殆ど起きていない。一
方、マウントクックでは凍傷が
よく起こる。
オーストラリアの最高峰マウ
ントコジオスコ(2,200m)は、気
軽に登れ、標高による問題は起
こりそうにないが、それでも無
いとは言えない。
パプアニューギニア/インド
ネシアには3,000mを越す山が多
く、最高峰は4,884mの
プンチャック・ジャヤ
(別称:カルステン
ツ・ピラミッド)であ
る。多くの観光客が登
山を中止せざるをえな
い急性高山病の症状を
訴え、なかには死亡し
た登山者もいる。でき
ればアフリカの高い山
を目指すように、ゆっ
くり順応しながら標高を上げる
べき山と言える。
さらに、登山道の状態が悪
かったり、正確な地図がなかっ
たり、ぬかるんだ雨の多い季節
や、限られた医療設備、熱帯地
特有の病気などが、楽しい週末
を悪夢に変えてしまう。
ボルネオのキナバル山
(4,101m)は、短時間で登ること
ができるため、急性高山病の発
生率が高くなっている。
1982年に2人のクライマーがマウントクックの山頂で、2週間悪天候で閉じ込められた。
天気が回復し、彼らが救出された時、2人とも寒さと高所のため、足が凍傷になり、足を
切断することになった。その後、2人はそれぞれに、この山頂に戻ってきた。そして一人
は、エベレストの山頂にも立ったのだった。
高所医学ハンドブック 10
南極
南極の平均標高は2,300m。地
球上で、最も寒く、最も緯度が
高く、最も風が強く、最も乾燥
し、どこよりも氷りで覆われて
いる大陸です。最高点はビンソ
ン山頂の4,892m、氷の深さは
4,700mにも及びます。
南極を訪れる人は、任務や組
織された遠征隊が多く、高所の
環境でどうすべきかの訓練を受
けています。一方、南極は、個
人の旅にも門戸を開いており、
いくつかの会社は登山ツアーを
提供しています。極地は、緯度
が高いため、気圧が低いことを
覚えてきましょう。低気圧に覆
われると、一層気圧が下がりま
す。気圧が低いと、酸素の量も
少ないため、地球のどこよりも
低い標高で、高山病を発症して
しまいます。
極限の寒さは、高所によって
引き起る問題を、一層悪化させ
てしまうのです。
元気な66歳の女性旅行者が、標高887mのパトリオットヒルキャンプから、2,800mの南極
に空路到着した。彼女は写真を撮るために、300m先の旗まで走って行った。彼女は息が
切れ、頭痛がして、そこから30歩のNSF(アメリカ国立科学財団)リサーチ基地までは、支
えてもらわないと歩けなかった。酸素と水分をもらい、痛み止めを飲み、しばらくして
飛行機まで自分で歩けるようになった。翌日彼女はパトリオットヒルキャンプで、すっ
かり元気になった。
11 高所医学ハンドブック
高度順応
酸素が少ない状態に、体がゆっく
りと慣れていく過程を高度順応と呼
びます。
人によって、慣れる速さは違うた
め、全ての人に当てはまるきまりは
ありません。しかし、優れたガイド
ラインがあります。
標高3,000m以上では、ゆっくり標高
を上げるようにし、一日の終わりに
睡眠をとる標高を300m以上あげない
ようにします。日中、それ以上標高
をあげて行動しても、夜寝る時に標
高を下げるのであれば、構いません
(「高所を歩き、低所で寝る」)。
もし、それより高くまで登って下
山できない場合は、体が慣れるま
で、その標高で休息日をとりましょ
う。
このグラフでは、とてもゆっくり
標高をあげています。人によって
は、もっと速いペースでも快適に登
ることができます。しかし、グルー
プで登る場
合、一番ゆっ
くり標高に慣
れる人のペー
スで行動すべ
きです。その
ペースを守れ
ば、グループ
全員が健康で
いられます。
2、3日おきに
休息日をとる
と、より順応
しやすくなり
ます。
車や飛行機で高所へ行くと、急性
高山病にかかりやすくなります。
旅行前に、計画している経路の標
高を調べておくことは、とても役に
立ちます。グラフに、毎晩寝る標高
を線で描いてみましょう。標高が分
からなければ尋ねましょう。高山病
を起こしそうな日を
見抜く、一番良い方
法です。
高所医学ハンドブック 12
高所の影響
高所へ行く人は、高山病への
対策をとらなければなりませ
ん。正しい対策をとれば、大き
な問題は起こらないでしょう。
間違った対策は、自分ばかりか
仲間の旅行も中止にするような
不幸な事態になりかねません。
毎日、自分の
体調に正直にな
ることはとても
重要です。自分
に何が起こって
いるかを知るこ
とが、自分の命
を救います。
高所では、とても不思議な変
化が体に起こります。高所へ
行った人の多くは、頭痛、息切
れ、不眠、食欲低下を経験した
ことがあると言うでしょう。こ
れらは急性高山病の症状です。
急性高山病は、不快な症状を起
こしますが、最初は命の危険が
迫っているわけではありませ
ん。しかし急性高山病のひどい
症状があるのにもかかわらず標
高を上げると、脳や肺に水がた
まる病気(脳浮腫、肺水腫)を起
こし、たちまち死んでしまうこ
とがあります。
高所での体の変化は、その他
に、おしっこがたくさん出た
り、体のバランスが不安定に
なったり、視力の変化、爪の伸
び方が変わるなど、あまり皆さ
んが知らないものもあります。
次のページでは、皆さんが高
所で体験しそうなことと、その
対策を紹介します。高所で快適
に過ごすための話題が中心です
が、長い間体調を壊してしまう
話や、死に至る話もあります。
高所で自分の体がどうなってい
るのか気付くことは、とても興
味深く、旅の楽しみの一つにも
なります。実際、自分の体がそ
んな大きな変化に対応できるほ
ど素晴らしいと思うと、一層体
のことを知りたくなるかもしれ
ません。
13 高所医学ハンドブック
急性高山病 (AMS)
急性高山病の症状には
頭痛
吐き気や気分不良
嘔吐
倦怠感、だるさ、疲労感
食欲不振
めまい、ふらつき
睡眠障害
があります。
簡単なチェックシート(次ページ)
を用いて、Medexの遠征隊では一日2
回全員が自分の状態をチェックして
います。
巻末のチェックシート(P43急性高
山病スコア日誌)を用いて、毎日登山
中の体の様子を記録すると良いで
しょう(チェックシートのコピーをを
用意しておく)。体調は隠さず、正直
に仲間に伝えましょう。登って標高
を上げるか、休息日にするか、もし
くは下山するか、といった方針を決
定するのに役立ちます。登山により
得られる喜びや達成感も大切です
が、メンバーの健康もまた大切で
す。
•
•
•
•
•
•
•
病気や体調が悪いことを隠して知
らせなかったり、体調が悪い人を無
理やり登らせたりするのは危険で
す。高度順応には個人差があり、人
によっては徐々に標高を上げる必要
のある場合があります。
体力がないからといって、急性高
山病になり易いわけではありません
が、無理をすると急性高山病のリス
クとなりますので禁物です。例えば
運動に慣れていなければ、登山中に
疲労を感じることはよくあります。
同様にテント泊に慣れていないのに
毎晩テントに泊まった場合、睡眠不
足になる可能性があります。食事も
普段食べ慣れていないものかもしれ
ません。
大切なことは症状がだんだん良く
なっているのか、悪くなっているの
かを判断することです。悪くなって
い る と し た ら 少 な く と も 5 0 0m か ら
1,000m、睡眠をとる標高を下げること
です。そして時間をかけて体を高度
順応させることです。手遅れになら
ないよう、早めの判断が大切です。
出発前に:
•
•
•
急性高山病の症状についての知識を深めましょ
う。
アセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)は高
山病の治療に用いる薬ですが、万が一アセタゾ
ラミドを使わざるを得ない場合に備えて、アセ
タゾラミドの副作用を日本にいる間に確認して
おくことが必要です。
アセタゾラミド(スルホンアミド系薬剤)にアレ
ルギーの有る人もいますので、登山前に医師に
相談しましょう。
高所医学ハンドブック 14
点数
急性高山病 評価シート
頭痛
消化器(胃腸)
症状
疲労・脱力
めまい・
ふらつき
睡眠障害
まったくなし
軽い
中等度/かなり
激しい頭痛(耐えられない)
まったくなし
食欲がない、少し吐き気
かなり吐き気や嘔吐
強い吐き気や嘔吐(耐えられない)
まったくなし
少し感じる
中等度/かなり
強く感じる(耐えられない)
まったくなし
少し感じる
中等度/かなり
強く感じる(耐えられない)
快眠できた
いつものようには眠れなかった
何度も目が覚めて殆ど眠れなかった
まったく眠れなかった
合計
0
1
2
3
0
1
2
3
0
1
2
3
0
1
2
3
0
1
2
3
高所では:
•
•
頭痛を含めて3つ以上の急性高山病の症状
がある場合、これ以上標高を上げてはいけ
ません。
頭痛を含めて3つ以上の急性高山病の症状
があり、症状が改善しない場合や悪化傾向
にあるなら標高を下げるべきです。
アセタゾラミド(ダイアモックス®)は急性高山病の影響を抑える薬で、標高を一気に上
げざるを得ない場合に有効です。また睡眠時の周期性呼吸を改善し血中酸素の低下を防
ぎます(P.28参照)。アセタゾラミドは高度順応を促しますが、急性高山病の症状を消失さ
せるものではありません。薬を飲んでいても、急性高山病、高地脳浮腫、高地肺水腫に
なることがあります。アセタゾラミドに対するアレルギーが出る場合があります。また
副作用として手、足、顔面などにチリチリとした皮膚を刺すような感覚の出ることがあ
りますが大きな問題とはならず、服用を中止すれば改善します。利尿薬としての作用も
あり尿の量や回数が増えることがあります。
15 高所医学ハンドブック
脳
脳が正常な活動を維持するために
は大量の酸素が必要です。標高が上
がると酸素が少なくなるため脳の活
動に影響します。酸素が不十分だ
と、脳が腫れて頭の中の圧が高くな
ることもあります。
高地脳浮腫(high altitude cerebral
oedema: HACE)は脳が腫れることに
よって起こり、
治療しないでい
るとあっという
間に命の危険が
生じることがあ
ります。一方、
脳が腫れても、
何の症状も感じ
ない人もいます
が、一般には脳
が腫れると、以下に示すいくつかの
症状(あるいは全部)が生じてきま
す。
頭痛:高所ではしばしば生じます。とりわ
け、普段から頭痛や片頭痛を持っている人
に生じ易い症状です。
バランスの悪化:細かな動作を行ったり、
バランスを保つ機能に影響が出ます。高齢
の人や体が高所に順応している人では影響
がはっきりしないことがあります。動作が
鈍くなり判断力が低下するため事故を起こ
す危険が高くなります。
気分の変化:またとない旅でも、良い時も
悪い時もあります。悪い時には気分が落ち
込んだりふさぎ込んだりします。気分の変
動はつきものだということを自覚しておい
てください。
高山病・高地脳浮腫:該当する各項目を参
照してください。
脳卒中:ものの見え方やしゃべり方に障害
が出たり、手足・顔面の麻痺は脳卒中の兆
しです。(一部の片頭痛では、「前兆(前触
れ)」の時に似たような症状が起きることが
あります。)
出発前に:
•
•
•
高地脳浮腫と脳卒中の兆候を理解しておきま
しょう。
必要があれば薬などを用意しておきましょう。
どのような楽しみや心配があるか調べておき、
調子の悪い時に誰に相談すれば良いか考えてお
きましょう。
高所では:
•
•
•
頭痛:頭痛の引き金になる脱水・疲労・飲酒を
避けるようにします。頭痛時は痛み止めを使用
します。
脳卒中:酸素があれば投与し、速やかに下山し
ます。医師の診察が必要です。
体調を正直に受け止めましょう。
私は体を引き起こしましたが頭は痛く、咳き込んでいました。咳と頭痛はひどくなって
いきました。何かが口に「まとわりついている」ような感じがしました。他の人に会っ
た時、何とか頑張って自分の話し方が不明瞭でないか確かめようとしました。その時に
なって初めて自分がブツブツと支離滅裂なことしかつぶやけないのに気づきビックリし
ました。周りの人たちも驚いているようでした。私はぽつぽつとしか声を出せず、左腕
に力は入らないし、左手はピリピリし、顔の左半分は麻痺し、頭痛が続いていました。
しまった!!!、と思いました。幸いにも最善の治療を受け、直ちに下山したおかげで命を
助けてもらいました。
高所医学ハンドブック 16
高地脳浮腫 (HACE)
診断に役立つ検査:以下のことができますか?
主な症状:
•
•
•
•
•
•
•
•
•
ひどい頭痛
動作に時間がかかり、ぎこちない
普段と違った振る舞い:協力的でない、攻
撃的になる、ぐったり怠けがちになる
•
ものがぼやけて見える
•
変なものが見えたり、聞こえたり、感じた
り、におったりする
•
吐き気・嘔吐が止まらなくなる
目を閉じて人差し指で自分の鼻に触れるこ
とはできますか。素早く繰り返してみてく
ださい
片方の足の踵を、もう一方の足のつま先に
触れるようにおいてまっすぐ歩いてみてく
ださい
目を閉じて両腕を組んだ状態でまっすぐ
立ってみてください
簡単な暗算はできますか
以上のことができなかったり、いくつかがう
まくできない時は高地脳浮腫を疑ってくださ
い。脳浮腫はそれだけで急激に症状が出現し
たり、急性高山病や高地肺水腫に伴って引き
起こされることがあります
頭が混乱する
意識がもうろうとしてくる
どうしたら良いか、急変時の対処:
•
•
•
•
•
•
•
具合の悪くなった人に付き添ってください。絶対に一人だけにしないように
直ちに下山してください。後にしたり、翌朝まで待ったりしてはいけません
上半身を真っ直ぐにして座らせ、体を保温してください
酸素投与を開始してください。加圧バッグを持っているなら使用してください
ステロイド(デキサメタゾン)を投与してください
アセタゾラミドを投与してください
万一、どうしてもすぐに下山できない時は、加圧バッグを暫く使用する必要があります
守らなかったら?
意識消失-混乱、傾眠
呼吸が弱くなる
「死亡」
最悪の場合、症状が起きてから1時間も経たないうちに死亡することもあります
「急性高山病」、「高地肺水腫」と「高地脳浮腫」は
同時に起こり得ることを覚えておこう。
一に「下山」、二に「下山」、三、四がなくて五に「下山」!
17 高所医学ハンドブック
肺
高所では空気が薄くなるので酸
素が少なくなる。その影響を補
うために呼吸がより深くより速
くなる。こうして高所に順応す
ることで、高所でも何とかやっ
ていくことができる。それで
も、平地と同じ運動を高所で行
えば、さらに息が切れるのは当
然である。
あまり自分では気づかない
が、血液にも変化が起きて、体
が必要とするところへよりたく
さん酸素を送ることができるよ
うになる。
理由ははっきりし
ていないが、高所
では空咳が出るこ
とがある。咳はわ
ずらわしいが、た
いした問題となら
ない。一方、呼吸
に関してもっと深
刻な問題が生じる
ことがある。肺に
水がたまり「高地肺水腫」を引
き起こすことだ。
「高地肺水腫」になると、休
んでいてもひどい息切れが起こ
り、咳をした時には血のにじん
だ泡のような痰が出ることがあ
る。一度「高地肺水腫」になっ
た人は、同じ標高まで上ると再
びかかることが多い。
こうなったときは重症で、命
にかかわることもあり、見逃し
てはならない。
出発前に:
•
定期的に運動しなさい。運動の種類は、高
所で計画しているのと同じようなものが望
ましい。体力不足が原因で、息切れしない
ように!
高地では:
•
•
•
•
ゆっくり歩きなさい
十分な休息をとりなさい
競争ではありません。早く適応する人もい
ますが、気にしないように!
後述する「高地肺水腫」の徴候を見逃して
はなりません。そのときは、できれば医療
関係者を探しなさい。疑いがあれば下山し
なさい。
ある医学調査探検隊の登山経験豊富な女性が、標高5,200mに達した時、彼女の血液中の
酸素が通常生きていられる限界よりも低くなっていることがわかった。肺は水浸しで、
めまいがして、夜には息苦しくなった。下山するためには一度高いところを通らなけれ
ばならず下山はかなわなかった。そこで、はじめに500mgのアセタゾラミドを、その後
250㎎を一日3回内服した。24時間後、多量の尿が出た後、彼女の血液中の酸素は正常レ
ベルに戻った。(注意:呼吸困難の多くはアセタゾラミドだけでは改善しません。このような例もある
として読んで下さい。日本語版に編集者追記)
高所医学ハンドブック 18
高地肺水腫(HAPE)
主な症状:
•
•
•
•
•
チェックポイント:
•
•
呼吸困難
疲労困憊
咳
泡のような痰、ひどくなると血のにじんだ
痰
唇、舌、爪が青白くなる
(いわゆるチアノーゼ)
•
•
•
最近の登山歴があるかどうか
運動後に息が回復するのに時間がかかるか
どうか
休んでいるときも息が切れるかどうか
呼吸回数が増えているかどうか
背中/肩甲骨の下に耳をつけて、呼吸時に
「ブツブツ」というような断続的な音が聞
こえるかどうか
「高地肺水腫」は高所に到着後1-2時間から数
日でおこり、下山中にも起こり得る。
すべきこと:
(このような状態ではすぐに医師に連絡をとり、薬の投与は医師の監督下が望ましい。日本語版に編集者追記)
•
•
•
•
•
•
•
具合の悪くなった人に付き添ってください。絶対に一人だけにしないように
直ちに下山してください。後にしたり、翌朝まで待ったりしてはいけません
上半身を真っ直ぐにして座らせ、体を保温してください
酸素投与を開始してください。加圧バッグを持っているなら使用してください
ニフェジピン(降圧薬:カルシウム拮抗薬)を投与してください
アセタゾラミドを投与してください
万一、どうしてもすぐに下山できない時は、加圧バッグを暫く使用する必要があります
もし気付かなかったら?
呼吸停止
「死亡」
重症の場合、症状が出てからわずか1時間で死に至ることがある
「急性高山病」、「高地肺水腫」と「高地脳浮腫」は
同時に起こり得ることを覚えておこう。
一に「下山」、二に「下山」、三、四がなくて五に「下山」!
19 高所医学ハンドブック
心臓と血液
高所への登山は心臓にも影響
を与える。薄い酸素や運動が心
拍数を上げる。これは通常問題
とならないが、狭心症などの心
臓病がある場合は心臓に負担の
かかることがある。血圧も少し
上昇するが、その影響は通常気
づくことはない。
高所では赤血
球がより多く作
られる(少ない
酸素に対応する
ため)ことも高
所の影響の一つ
である。これに
より、血液が濃
くなって、循環
が悪くなること
がある。このこ
とを心に留め、
水分を多めにとるように注意し
なくてはならない。もし、不整
脈、高血圧、狭心症などの心臓
病を持っている場合、あるいは
心臓の手術をしたことがある場
合は、医師に相談して、心臓へ
の負担を重くしないように登山
計画をたてる必要がある。ふだ
ん薬を内服している場合は、十
分な量を持っていくことを忘れ
ないように。
健康状態が良ければ、高所へ
の登山は、平地で激しい運動を
する以上の負担を心臓にかけな
い。
遺伝性の「鎌状赤血球」を
持っている人は、危険性が高く
高所への登山は避けるべきであ
る。
高所では:
登る前に、高所でするのと同じレベルの運
動を家でも行いなさい。
•
•
•
•
処方された薬は忘れずにすべて持っていく
ようにしなさい。
•
出発前に:
•
•
•
できるだけ体を鍛えなさい。
ゆっくり歩きなさい、競争は避けなさい
休憩を十分に取りなさい
水分を十分に取りなさい
ちょっとでも変だと思ったら、それ以上登
らずに、その標高に留まりなさい
体調不良が続くなら下山しなさい
Medex(Medical Expenditions)が企画した旅で、ある日、私の血圧は168/118に上昇し
た。同行した医師は、登山中には普通のことで、高所に慣れれば解決する、といった。
たとえ私が元気だと感じても、休憩日を取るように、助言された。
高所医学ハンドブック 20
胃と腸
高所では食欲がなくなるかもしれ
ない。急性高山病によって体調不良
と思うことがあるかもしれない。い
つもと違う食べ物は食欲に影響を与
えたり、下痢の原因となることがあ
る。
高所は、水や衛生環境が良くない
場所が多い。このため、下痢になり
やすくなる。予防は治療に勝る。ボ
トルに入った水や濾過した水はあま
り安心して飲むことはできない。甲
状腺の病気や妊娠中でないとすれ
ば、ヨード消毒が最善である。
下痢になった場合は、脱水になら
ないように、消毒した水や経口補水
液をたくさん飲みなさい。旅行者下
痢症は細菌によって起こることが多
い。抗生物質が有効である。
消化不良や痔といった持病がある
場合は、旅行前に医師を受診せよ。
痔は高所では悲惨な状況になること
出発前に:
•
•
•
•
安全な水の入手法を確認せよ。そうすれば
心配せずにたくさん飲める
経口補水液の粉末を携行し、その使い方を
確かめておけ。
旅行者下痢症とその治療法を確認してお
け。
自然の中で使用したトイレットペーパーを
どう処分するか、グループで決めておけ。
がある。消化不良がある場合、それ
を悪化させる作用のある鎮痛剤の使
用は避けなさい。
乳飲料やカード(ヨーグルト)は、
こうした問題を和らげるかもしれな
い。
ウンコの山と腐ったトイレット
ペーパーは環境を破壊する。放置す
るな!
高所では:
•
•
•
水を飲め!
口にできるものがないときのために、好物
のスナックを携行せよ。
手洗い!
旅行者下痢症にかかった登山者が、パタゴニアの氷河を歩いていた。彼は突然下痢をも
よおし、ロープでつながって歩いている仲間に、止まって欲しいと頼み、その場でサロ
ペットをおろすはめになった。その夜露営場所で、彼は抗生剤を飲み、翌日も登山を続
けることができた。
21 高所医学ハンドブック
腎臓と膀胱
順応中には、尿量が増える。
これは良い反応だが、日中およ
び夜間に、何度もトイレに行か
なくてはならない。
高所のように乾燥した日射し
の強い環境下で運動をすると、
脱水を引き起こすことがある。
旅行者下痢症にかかると、いっ
そう脱水が悪化する。喉の渇
き、頭痛、疲労は、脱水の兆候
である。一日に数リットルの水
を飲むことで予防できる。一日
に必要な尿量の目安は、透明
で、十分な量の尿を最低4回はす
ることである。
頻回の痛みを伴う、少量の排
尿は脱水の兆候である。2リット
ルの水を飲んでも症状が改善し
なければ、尿路感染症が疑われ
る。抗生剤による治療が必要に
なる。
高齢男性に多い前立腺肥大
は、一般に平地の生活では、頻
尿や急な尿意を引き起こす。高
所へ行くと、さらに痛みを伴う
残尿感が起こることもある。疑
いがあれば、旅行前に、医師の
診察をきちんと受けること。
出発前に:
•
•
•
夜中に使う為のシビンを購入しよう。
高所では:
女性が立ったまま排尿する為の補助具もあ
るので検討しましょう。
女性は排尿を隠すのにスカートが活用でき
るかもしれない。
•
•
•
水分補給せよ!
水分補給せよ!
水分補給せよ!
ある健康な登山者が、標高を上げた一日の終わりに頭痛と倦怠感を覚えた。彼女は急性
高山病になっているのではないかと心配し、レモンジュースで味付けた水を2リットル飲
んだところ、劇的に回復した。
高所医学ハンドブック 22
関節と筋肉
普段はしないような運動を休
暇でたまに行うと、たいていの
人は体のあちこちが痛くなる。
快適な旅を楽しむためには、ス
キー、ハイキング、乗馬、サイ
クリングなどの旅の種類によら
ず、出発前に体を鍛えておくこ
とが大切だ。
関節痛が高所で起こり易い、
という研究報告はない。
膝の関節と足の筋肉は痛みを
起し易い。テーピングやサポー
ターは有効だ。しかし、そのよ
うな補助具に頼らなくても良い
ように筋力をつけるのが一番。
2本の登山用ストックを上手に
使えば、膝への負担を軽くでき
る。とくに下り坂で膝への負担
が大きい場所で役立つ。日常生
活でも膝に問題を抱えている人
は、登山用ストックを使うと良
い。膝への荷重を軽くするため
に、太り過ぎの人は体重を減ら
したり、ザックを軽くしよう。
高所では:
出発前に:
•
•
•
どのような種類の運動でも良いので、やり
易い運動で心拍数を上昇させる。
旅行に出発する前、少なくとも1ヶ月前か
ら毎週一回は、まる一日をかけてそれぞれ
の旅行目的に適した練習をする。
2本の登山用ストックを使う予定があるな
らば、あらかじめ使い方に慣れておく。
•
•
•
関節や筋肉に痛みを感じ始めたら、ペース
を落とし、荷物を軽くし、できれば休息日
を設ける。
日常生活で膝に痛みを抱えている人は、忘
れずに、現在内服している鎮痛剤を持ち歩
く。
気温が下がるので、体が温かく保てるよう
に、重ね着の準備をする。
私の乗馬旅行の経験で、初日に6時間乗馬して膝が死ぬほど痛くなった。私は「旅に出る
前に少なくとも3回は乗馬訓練をしておけば良かった。」と後悔した。私はそれから数日
間の旅行中ずっと膝の激痛に耐え続けなければならなかった!
23 高所医学ハンドブック
手足
高所では日焼けや凍傷を起こす危
険性が高い。高所は紫外線が強いの
で簡単に日焼けを起こす。低い気温
に低酸素が加わると皮膚は簡単に凍
傷を起こす。とくに血行障害(たとえ
ばレイノー病)がある人は凍傷になり
易い。
寒さ、又は寒さに強風が加わる
と、体のどの部分でも凍傷になる危
険性がある。皮膚の色が白くなる・
感覚が麻痺する・硬くなる、といっ
た症状は、凍傷の始まりのサインで
ある。凍傷になった指を温める時に
は、強い痛みを伴う。皮膚は赤くな
り、かゆみを伴い、しみのように変
色したり腫れ上がる。凍傷が進行す
ると水疱を作り、最後には皮膚は黒
くなり、壊死する。これは深刻な凍
傷で、手の指と足の爪先を切断する
ことになるだろう。
体から突き出した部分-唇、足の
つま先、あご、手の指、耳-は日焼
けや凍傷を起こし易い。これらの部
分は十分保護する必要がある。
高所で、手、顔、足首がむくむこ
とはよく経験する。これ自体は深刻
な問題では無いが、むくみの原因に
なるような他の問題が体に起こって
いないか、確認すると良い。
高所では:
出発前に:
•
•
•
日焼け止めクリームを用意する。(SPF値
15-30)
紫外線を防止できる全身を被う服装を用意
する。
暖かい手袋、靴下、帽子、靴を用意する。
ただし、それらのサイズは自分の体に丁度
良い大きさであること。
•
•
•
•
常に手や足を乾燥した状態に保つ。濡れてい
たら、すぐに手袋や靴下を交換する。
体に合ったサイズの衣類や装備を身につけ
る。
日焼け止めクリームを定期的に塗る。
皮膚に直射日光、寒気、風が直接当たらない
ように体を被う。
ヒマラヤで雪崩に巻込まれて9人が死亡し、数人がケガのためにヘリコプターで病院まで
搬送された。遭難現場に残されたポーターたちは登山客の荷物を背負って、自力で下山
した。しかし、その中の幾人かは、帰路で凍死した。ポーター達の服装は極寒の気象条
件にはとても耐えられないほど貧弱だった。しかし、彼らは登山客の荷物を開けようと
しなかった。彼らは暖かい高所登山用衣類が詰っていた登山客の荷物の脇で亡くなっ
た。
高所医学ハンドブック 24
目
高所における強い紫外線は目の熱
傷、いわゆる雪目を生じることがあ
る。これは溶接工で見られる「電気
性眼炎」に似たもので、目の中に砂
が入ってゴロゴロする様な感覚があ
る。対処としては休息、目の覆い、
目薬の使用、鎮痛剤服用などが有効
である。紫外線は雲を通過して地上
に到達するため、曇っていても雪や
氷河の上ではきちんとしたサングラ
スやゴーグルが必要である。ファッ
ション用ではなく登山用の物を選ば
なければならない。度入りのサング
ラスやゴーグルを作ることも可能で
ある。
コンタクトレンズも使用可能であ
るが、厳密な衛生管理-高所では容
易ではないのだが-が求められる。
一日毎の使い捨てコンタクトレンズ
は有用であるが、夜には必ずとり外
す必要がある。レーシックなどの
出発前に:
•
•
•
雪焼け防止用のゴーグルやサングラスを準
備しよう。
レーザー屈折矯正手術では高所に於
いて視界のぼやけることがあるが、
標高を下げれば治る。旅行直前の
レーザー治療はやめなさい。
目の奥に微小な出血(網膜出血)が
生じることがあり、視野が斑になる
ことがある。通常危険な状態ではな
く、2-3週間で
消失する。高
所で片方でも
視野を失った
なら標高を下
げなければな
らない。
高所では:
•
•
•
コンタクトレンズと洗浄液を選ぼう。
もし眼鏡をかけているなら、予備を準備し
よう。
•
明るい時間帯はゴーグルを着用しよう。
もしゴーグルを紛失した場合は、ダンボー
ルの様な厚紙に細いスリット作り、見える
ようにしよう。
スタッフがゴーグルを持っていること、着
用していることを確認しよう。
コンタクトレンズを使用している場合は、
衛生管理を徹底しよう。
ある29歳の男性はエベレスト登山に際して一日毎の使い捨てソフトコンタクトレンズを
使用していた。彼は4日間そのレンズを替えず、登頂日にはゴーグルではなくサングラス
を着用していた。8,600mの標高で彼の視野はぼやけ始め、山頂に到達した時には彼は何
も見えず歩く方向もわからなくなっていた。彼は2人のシェルパに支えられながら下山し
た。彼は雪目と細菌感染を患っていた。医師は彼の目からコンタクトレンズを取り除い
たが、傷跡は残り、彼の視力は生涯完全には戻らなかった。その代償は大きかったと言
える。
25 高所医学ハンドブック
口と歯
口や喉は、呼吸することで、
乾燥する。水分をしっかり摂
り、トローチを使うようにす
る。陽射しで下唇がひどく日焼
けすることがある。日焼け止め
はその予防に有効である。
旅行出発前に歯医者に行くよ
うにする。数日(或いは数週)に及
んで歯が痛むと旅行を台無しに
しかねない。
歯に関わる問題は全て予防可
能である。口の中を清潔に保っ
ておかないと、若者が陥りがち
な親知らずのトラブルを引き起
こすことがある。詰め物のとれ
た歯や治療していない虫歯は、
高所の冷たい空気に触れると具
合が悪くなるだろう。
ボロボロになった虫歯は、糖
分のとり過ぎでひどく傷むこと
があり、歯根の治療や抜歯が必
要になる。しかし、遠征中にそ
ういった治療を行うことは多く
の場合不可能である。
歯や歯肉の感染は、大抵はア
モキシシリンやメトロニダゾー
ルで、短期間で軽快する。腫れ
を抑えるのにイブプロフェンも
有効である。
出発前に:
•
•
•
•
出発の少なくとも6週間前にレントゲンで
歯のチェックをしよう
唇に塗るための雪焼け止めクリームを購入
しよう
リップクリームを購入しよう
トローチを購入しよう
高所では:
•
•
•
口や唇、喉を潤すために水分をしっかり摂
ろう
クリームで唇を保護しよう
歯の腫れや激しい歯痛に対しては抗生物質
とイブプロフェンを服用しよう
このページの著者はナムチェ・バザール歯科診療所で働いていた。1ヶ月の間に、7つの
遠征隊(エベレスト、ローツェ、ヌプツェ、アマダブラム、プモリ)から登頂を目指す登
山家達が歯の治療に訪れた。その誰もが激しい歯の痛みのために登頂を諦めることと
なった。出発前に歯のチェックを受けていたものは一人もいなかった。
高所医学ハンドブック 26
耳と鼻
標高が上がるにつれ耳や鼻の
トラブルは増加します。耳や鼻
への日焼けやスキントラブルは
悩ましい問題です。
内耳の変化は急性高山病
(AMS)でよくみられる「めま
い」や「ふらつき」といった症
状を引き起こします。
高所で一番問題となり易いの
は鼻詰まりです。生死を分ける
ような状況に比べると、些細な
問題に見えるかもしれません
が、鼻詰まりは肺を健常に保つ
ために必要な、空気の加温や加
湿といった過程に問題を起こし
ます。
息を吸う際、空気が加温・加
湿されていないと、喉の痛みや
頑固な咳、最悪の場合には、酸
素の通り道として必要な肺の一
部にまで傷害を引き起こすこと
もあります。
高所では:
•
•
出発前に:
•
•
手袋の親指の部分に柔らかく吸収性のある
当て布があることを確認する。鼻を拭くの
に便利!
ティッシュペーパーやハンカチ、強力な日
焼け止めを持参する。
•
•
•
めまいは急性高山病(AMS)のサインかもし
れない
つばの広い帽子を被り、耳、鼻、そして鼻
腔の中まで日焼け止めを塗ること
サングラスに鼻ガードを付けること(間に
合わせのものでも良い)
定期的に鼻をかむこと
肌が乾燥したり割れるのを防ぐために皮膚
保護剤(例:ワセリン)を使うこと
一人の風邪をひいた登山者が、ひどい鼻水のまま、ランタンの雪と氷河を2日かけて登っ
た。日焼け止めは鼻水で洗い流されてしまい、結果として鼻の下側は雪面からの照り返
しによってひどい日焼けを負う事となった。完治するのに1週間近くかかった。
27 高所医学ハンドブック
月経と避妊
女性へ-高度順応中は鉄分を
多く含む赤血球が増加します。
もし日頃から過多月経があるよ
うなら、鉄を補充するため、鉄
剤の服用について事前に医師と
相談した方が良いでしょう。
旅行中の月経や生理用品など
の処理は難しい問題です。避妊
の方法を変えることで月経期間
をコントロールすることが出来
ます。これには計画をたてるこ
とが必要です。
高所で混合避妊ピルを服用し
た場合には下肢血栓症のリスク
が高まる可能性があります。し
かし実際には、標高4,500m以上
に1週間以上滞在しないのであ
れば、健康かつ活動的で煙草を
吸わない女性ではリスクは低い
と考えられ、月経時期をコント
ロールするためにピルを服用し
ている女性も多くいます。
プロゲステロンはどの標高で
も安全とされ、「ミニピル」と
して手に入れることが出来ま
す。注射、インプラント式での
避妊や子宮内避妊システム(ミ
レーナ)も月経を止めるのに有
効である可能性があります。
女性と男性へ-コンドームの
様なバリア法は病気に対して完
全な防御策とはなりません。禁
欲はいつでも効果的です。コン
ドームのようなゴム製品は分解
に時間がかかるので、適切に処
分してください。
子宮内の胎児の臓器は初めの
3ヶ月間に形成されます。この
時期は高所へ行くことを避ける
のが最善の選択と思われます。
出発前に:
•
出発の6ヶ月前から避妊、月経コントロー
ルをする計画をたてる様にしましょう
ある旅行者はキリマンジャロ(5,895m)の登頂に成功した後、東アフリカ海岸や遊技場へ
遊びに行き祝杯を上げた。彼はマラリアにはかからなかったが、HIV陽性となって帰国し
た。
高所医学ハンドブック 28
睡眠
高所に到達して最初の数日に
見られる睡眠障害は、しばしば
みられる症状で、正常の反応と
言えます。なかなか寝付けな
かったり、夜中に何度も目が覚
めたり、朝になると熟睡できな
かった・疲れが残っている、な
どと感じることがあるでしょ
う。
睡眠不足は、体
がどの程度順応で
きているかと関連
しており、体が順
応するにつれ、普
通は睡眠も改善し
ます。
急性高山病の人もひどい睡眠
不足になりますが、これは順応
不足をほのめかしています。
その他に、寒さ、他の人のい
びき、寝心地の良くないベッド
やテントも、睡眠不足の原因と
出発前に:
•
•
•
快適に眠れるように、高品質な寝袋やマッ
トなどを購入しましょう
耳栓を持参しましょう
閉塞性睡眠時無呼吸の治療中であるなら、
専門医に相談しましょう。
なります。
高所では排尿回数が増えるこ
ともあり、睡眠時間が短くなり
ます。
多くの変化は、呼吸回数が増
加することが原因です。夜間に
「周期性呼吸」となる人もいま
す。周期性呼吸とは、速い呼吸
の後に引き続き短い間呼吸が停
止し、時に目を覚ます現象で
す。海抜2,800m以上の高所では
しばしば見られ、海抜5,000m以
上の高所では、ほとんどすべて
の人に見られます。同じテント
で寝ている仲間を心配させるか
もしれませんが、高度順応する
に伴って改善するでしょう。
いびきは、乾燥した埃っぽい
空気を吸い込むことでひどくな
ることがあります。
高所では:
•
•
•
睡眠時間を多く確保することを心がけま
しょう
遅くなってからのカフェインやアルコール
摂取は控えましょう。
2、3日経っても睡眠障害が続くようなら、
それ以上標高を上げないほうが良いでしょ
う。また、順応のために標高を下げること
も考慮しましょう。
ほとんど眠れませんでした!同じテントで寝ている仲間が、頻繁に起きておしっこに
行っていたので。
29 高所医学ハンドブック
子どもが高所に行く場合
高所では、子どもにも成人と
同じような問題が生じますが、
子どもは具合が悪くなっても、
うまく伝えることができないも
のです。子どもが高所に順応で
きるように、ゆっくり時間をか
ける必要があります。
幼い子は、自分の体調をうま
く訴えることができません。保
護者が、機嫌、食事、睡眠、遊
んでいる様子から、状態を考え
る必要があります。そして、も
しいつもと比べて調子が悪いよ
うなら、高山病と考え、それ以
出発前に:
•
•
•
•
出発3カ月前までには、担当医に計画を相
談しましょう。
衣服、安全な水の確保、慣れない食べ物、
日焼け防止、サングラス、退屈しのぎの手
段、現実的な無理のない目標について、検
討しておきましょう。
もし高所で自分のお子さんが、具合が悪く
なった場合、誰に救援を求めるか、また、
もし自分自身の具合が悪くなった場合に、
誰がお子さんの面倒をみるのか、考えてお
いてください。
お子さんにとって有意義な計画であるか、
確認しましょう。
上標高を上げずに
同じ標高にとどま
るか、もしくは回
復するまで標高を
下げたほうが良い
でしょう。
少し大きくなる
と、急性高山病の
症状を訴えること
ができますし、症
状も成人と同じで
す。症状が、高山
病によるものだと
考えられるのなら、同じ標高に
とどまるか、もしくは症状が改
善するまで標高を下げたほうが
良いでしょう。
高所では:
•
•
•
高山病にかかった子どもの治療は成人と同
様ですが、体重40Kg以下の子どもに対して
は、薬剤の投与量を減量し、シロップ製剤
が好まれます。
体重、薬剤、投与量が記載された、薬剤手
帳を携行しましょう。
高山病に対しては、標高を下げることが最
善の手段であることを肝に命じましょう。
4歳になるトミーは、標高3,290mに位置する、コロラドのアラパホ-ベイスンスキー場
に連れられていった。彼は、山の標高の低いところでは、友達と楽しく遊んでいたが、
初日の夜、山の上にある宿泊施設で泊まっていると、とても調子が悪くなった。次の
日、ひどい状態になり、食事を受けつけなくなった。トミーは医師の診察を受け、急性
高山病と診断され、標高を下げるように勧められた。山を下りて6時間後、彼は調子を取
り戻した。
高所医学ハンドブック 30
ポーター
ど)、食料、飲料
個人(あるいは旅行会社)で
• 医療と生命保険
ポーターを利用する場合には
ポーターに対する責任が生じま • 体調不良時に下山する際の配
慮
す。つまり、自分自身に対して
と同様、ポーターの健康や安全 • 適量の荷物
にも配慮しなければなりませ
ん。
トレッキッングに同行する
ポーターは、いつも高所で生活
しているわけではありません。
旅行者と同様に高山病になるこ
ともあります。過去には、体調
を崩したポーターは役に立たな
いものとみなされ解雇されまし
旅行会社(あなた自身)の確認事項
た。また一人で下山した。多く
1.ポーターの安全に関するIPPGの5つの
のポーターが途中で命を落とし
ガイドラインに従っていますか?
ました。
2.ポーターの装備や健康ついて、どの
国際ポーター保護団体(The
ような方針ですか?
International Porter Protection Group:
3.ポーターがきちんとした待遇を得る
ために、トレッキングスタッフにど
IPPG)は、すべてのパーティが守
のような教育をしていますか?
るべき規範を明示しています。
4.現地の地上職員によるポーターの訓
この中にポーターに対して次の
練や管理について、どのような方針
ようなものを用意するように述
ですか?
べています。
5.トレッキング後のアンケートで、
ポーターへの待遇がどうだったか、
• しっかりとした衣服と靴
お客さんに尋ねていますか?
• 十分なシェルター(テントな
クルバハダル(Kulbahadur)は33歳のポーターです。エベレスト国立公園で体調不良のた
めに荷物が持てなくなり、トレイルのそばに置き去りにされました。その後、他のグ
ループにより意識不明の状態で発見され、結局両足を凍傷のために失いました。彼は雇
われていた会社の名前も同行していた登山者の国籍も一切知りませんでした。
31 高所医学ハンドブック
緊急時の行動
この項を読んでいるのは、
何かを計画中であるか、なん
らかのトラブルが生じている
ためかもしれません。どのよ
うな状況でも、最も大切なこ
とは慌てないということで
す。緊急時の対処に役立つこ
とを次にあげます。
1) まずは、自分自身、傷病者、
メンバー全員が安全である
か、確認しましょう。誰かが
低体温症になっていれば、他
のメンバーもなり得る可能性
があります。必要ならば、安
全な場所へ移動しましょう。
・正確な場所は?
・事故の概要は?
・救助隊員に危険が及ぶ状況は?
・事故現場への到達方法は?
・傷病者の人数は?
・必要な物品は?
傷病者を増やしてはいけませ
ん。
2) 責任者を一人決めましょう。
3) 必要な情報を集めましょう。
4) 救助を要請しましょう。でき
るだけ早く。ラジオや電話は
山中ではつながらないことが
あることを知っておきましょ
う。最初に現在地を知らせま
しょう。どこで事故が起こっ
たかがわかります。正確に伝
えましょう。
5) 傷病者にできる限りの手当を
しましょう。損傷の重症度に
より手当の優先順位を決めま
す。基本的なファーストエイ
ド(応急手当)で大丈夫です。
簡単な副子(添え木)や優しい
言葉かけが大きな役に立ちま
す。
6) 現場からの退避を考えましょ
う。現地で可能な搬送方法(背
負う、馬など)、車やヘリコプ
ターでの搬送など。
7) 救助が来るまで、全員が暖か
く安全で過ごせるようにしま
す。救助はすぐに来ることも
あれば、何時間や何日もかか
ること
があり
ます。
ヘリコプターの着地点について
•
•
•
•
•
固くて水平な(勾配10度以下)、直径100
歩程度(直径60-70m)の場所を見つける
吹き飛ばされそうな物や人間を遠ざけ
る
石で「H」を作る、明かりを点滅させ
る、明るい色の衣類を用いるなど、目
立つような工夫をする
ひとりが着地点の風上に立ち両腕で
「Y」を作る
乗組員から指示があるまでヘリコプ
ターに近づかない
高所医学ハンドブック 32
事故記録カード
できるだけ事故記録カードは現場で
記入してください。記入した項目
は、緊急スタッフにとって大切な情
報で、後の治療にも役立ちます。
傷病者個人向け:
氏名:
生年月日:
グループ向け:
アレルギー:
正確な場所:
服薬:
事故のタイプ:
(何が起きたのか)
過去の医学的問題:
周囲の危険:
最後に飲食した時間:
その場所への行き方:
(どうやって貴方の所へ行くか)
何が起きたのか:
傷病者の数:
損傷:
必要な物品:
受けた治療:
時間:
記載者氏名:
日付:
サイン:
33 高所医学ハンドブック
薬
高所への旅行にはそれなりの
薬を持参すべきです。そのうち
のいくつかは処方薬、つまり医
師の指示が必要な薬です。命を
救うのに必要な薬もあります
し、症状を和らげ旅行を楽し
むために役立つ薬もありま
す。
次のページに高所で使用す
る薬剤の簡単なリストを示し
ます。持っていくい薬を決め
る際に参考にしましょう。た
だし、推奨される医薬品は変
わることがあるので、出発前
に再確認しましょう。
違法な医薬品所持の誤解を避
けるために、医薬品に関して
は、医師からの文書を必ず所持
しましょう。
出発前に:
•
•
•
次のリストを医師のもとへ持っていき、何
を持っていくか、どのようにそれを使うか
話し合いなさい。
医薬品は国内で買いなさい。酸素を除いて
全ての医薬品はグループの担当者が管理し
よう。医薬品は海外のほうが安いかもしれ
ない。しかし偽物も多い。
アレルギーを必ず確認しよう。
高地では:
•
•
•
自分の薬と医師からの手紙を確認する。
容量、用法を記載したラベルをつけて、医
薬品を、複数のジップロックで保管しよ
う。紛失に備えて2か所以上の場所に分け
て保管しよう。
薬は水で飲むと、早く効く。
私は肩に針で刺されたように痛みを覚えた。3分後、かゆみが出てきた。その後、
気を失うように、誰かの腕の中に倒れた。チームの誰かが救急箱を持ってこいと
叫んだ。酸素、アドレナリン、抗ヒスタミン薬、点滴が、瞬く間に行われ、1時間
後、私は回復し始めた。翌日、私は旅行を続けることができた。命をチーム医師
の素早い対応で救われた。私は以降、「エピペン®」を常に携行している。万が
一、再び刺されたときのために。
高所医学ハンドブック 34
以下は、国内外で入手可能な薬剤を訳していますが、使用前に、必ず医師の
診察を受けてください。薬剤情報は更新されることがありますので、最新情
報の確認が必要です。
35 高所医学ハンドブック
酸素
高所では、大気中の酸素不足が原因で、
様々な高山病の症状が出てきます。これを
解決する根本的な方法は、もっと酸素を取
り込むことに他なりません。つまり高所で
は、「下山する(標高を下げる)」ことが、
簡単で効果的な方法なのです。もし下山が
無理なら、以下の二つの方法が酸素不足を
補うために役立ちます。
(1) 酸素ボンベ 酸素ボンベに酸素マスクを
接続し、そのマスクを着けて呼吸をするこ
とで、酸素を吸うことができます。(同時
に、まわりの空気も少し吸うことになりま
す)。ボンベから酸素が一定量流れ続ける
「コンスタントフロー」キットを使用し
て、流量の目盛りを毎分2リットルに合わせ
たとすると、300リットルのボンベは2~3時
間で空になります。いっぽう、吸う時だけ
酸素が流れてくる「デマンドフロー」キッ
トを使えば、同じボンベでも、6~9時間は
酸素を供給してくれます。
(2) 加圧バッグ 「急性高山病」、「高地肺
水腫」、「高地脳浮腫」と判断された場
合、その傷病者を「加圧バッグ」に収容し
ます。この加圧バッグは「ポータブルアル
ティチュードチャンバー(PAC)®」、「セル
テックバッグ®」、「ガモウバッグ®」など
が知られています。足踏みポンプなどで
バッグの中に空気を送り込み、バッグ内を
加圧することで、内部では2,000mほど標高
を下げたときと同じ程度の酸素を体に取り
入れることができます。症状を改善させる
ためには、傷病者を1時間は加圧バッグに留
まらせる必要がありますが、さらに数時間
の加圧が必要な場合があるかもしれませ
ん。加圧バッグ内に限りませんが、頭のほ
うを高くした姿勢にしてあげると、傷病者
は呼吸がより楽にできるようになります。
さて、加圧バッグは命を救うバッグ(救命装
置)になることが期待されますが、以下のよ
うな問題点もあります。
•
•
•
•
•
バッグで隔てられてしまうので、中の傷
病者と話すことが困難。
意識のない傷病者を中に入れる場合、誰
かが付き添って様子を見る必要がある。
加圧するため、鼓膜障害を起こすことが
ある。
バッグ内の換気のため、ポンピングを継
続する必要がある。
症状は、一
時的にしか
改善しない
ことが多
い。
ある夫婦が、マラングルート経由でキリマンジャロ(5,895m)に挑みました。2日間登っ
て、彼らはホロンボハット(3,760m)に達しましたが、到着して2時間後、ご主人が呼吸困
難を感じ始めたのです。その夜、彼は咳とともにピンク色の泡のような痰を吐き、つい
には意識を失ってしまいました。彼は「高地肺水腫(HAPE)」と判断されたので、急いで
「ガモウバッグ」に収容され、4時間の加圧が行われました。幸いにも彼は意識を取り戻
し、ポーターの助けを借りて下山することが出来ました。その後、入院した病院で彼は
すっかり元気になりました。
高所医学ハンドブック 36
持病や体調
病気を持っていても、高所での登
山や旅行をしている人はいます。持
病や体調の問題があるのなら、あら
かじめ医師の診察を受け、高所に行
くことが可能かどうかの判断を仰ぐ
とともに、登山や旅行中の注意や対
処法についてよく相談する必要があ
ります。
遠出の際には、持病や体調不良が
あると、より健康を害する恐れがあ
ります。健康を損ねないための努力
をすることが鍵です。安全を優先し
て、当初の計画を中止するか、ある
いは一部変更することも心得ておき
ましょう。
出発前に:
•
•
•
•
•
•
•
•
•
少なくとも出発の半年前までには、かかりつけ医師や高所旅行に精通した専門家を訪れ、高所旅行を取
りやめなければならないような病気や体調が潜んでいないかなど、チェックしてもらいましょう。
現地で具合が悪くなった場合の医療計画をたて、何が必要になるか確認しておきましょう。現地で受け
られる医療支援(薬、医療機器、医療者、移動手段など)を調べておきましょう。
自宅や旅行先で医療、健康相談をする連絡先を一覧表にしておきましょう。
同行者全員に、自分の健康状態、起こるかもしれない症状や、そうなった時の対処法などを知っておい
てもらいましょう。自分の健康状態は、自分と行動を共にする人たち全員の旅行の成否や安全にも関わ
るということを忘れないようにしましょう。
必要に応じて自分も同行者も、応急手当の訓練を受けましょう。
常用薬や緊急用の薬が入った箱などを用意し、自分専用の薬箱であることが他の人にもすぐわかるよう
に、箱の表に記しておきましょう。また、薬の使い方を書いた紙なども忘れずに入れておきましょう。
さらに、予備の薬も用意して同行者に渡しておけば、大事な薬を自分でなくしても、慌てずに済むで
しょう。
自分の持病のことや投薬内容、緊急時の対処法などを書いた診断書を、主治医に依頼して書いてもらい
ましょう(必要な言語に訳して)。
ワクチンを打つ前に、医師又は看護師に自分の病状について伝えましょう。
持病に対してと、旅行に伴う危険との両方をカバーする保険に入りましょう。ただし、保険料が非常に
高くなったり、補償内容が限られるものもあります。
高所では:
•
•
•
•
•
自分の医療情報(病名、服薬内容、アレルギーなど)が記載されたカード(メモ)やブレスレットなどを常
に携行しましょう。
毎日、飲んだ薬や体調の変化を書き留めましょう。
高所へ向かっている時に体調が悪くなってきたときは、それが高山病であるかもしれないと考えましょ
う。そして、もし高山病の可能性があるのなら下山しましょう。
体調が悪くなったときは、隠さずにまわりの人たちにそのことを伝えましょう。
家族、友人など、自分以外の同行者の健康状態にも注意を払いましょう。
37 高所医学ハンドブック
糖尿病
出発前に:
•
•
•
•
•
•
•
•
旅行を予約する前に、眼科で目の検査を受けましょう。もしも、自分の目に障害が出ている場
合は、超高所へ行くのは避けましょう。
旅行を予約する前に、血液の循環や神経の障害について、専門医に診てもらい、高所登山への
アドバイスをもらいましょう。
出発の数か月前から、血糖コントロールを良好な状態に保ちましょう。
高所や寒いところでも使える丈夫な血糖測定器(と予備)を手に入れましょう。
高所でどんな食事が出てくるかを事前に確認し、高所での食事療法の計画をたてましょう。
インスリンの投与量が変更になった場合に備えて、予備を持って行きましょう。
激しい運動をするときや、体調が悪いときでも、糖尿病をコントロールできるように練習して
おきましょう。
イギリスには、糖尿病患者の登山支援組織(Mountains for active diabetics (MAD))があります。
高所では:
•
•
•
•
血糖が下がった時のために、ブドウ糖・血糖測定器・薬をいつも持ち歩きましょう。
インスリンを凍らせないようにしましょう。例)肌に近い内ポケットに入れる など
感染症にかからないように気を付けましょう。もしも具合が悪くなったら、すぐに助けを求め
ましょう。決してインスリンを打つのをやめてはいけません。
インスリンの必要量は、運動により減り、安静により増えることを覚えておきましょう。
心臓の状態と高血圧
出発前に:
•
•
•
心臓の検査を受けましょう。また、現地で新たに胸痛が出現した場合の緊急用の薬についてア
ドバイスをもらいましょう
出発のしばらく前から、安定した良好な血圧を保ちましょう。
血圧の薬を、運動時や高所や寒いところで使っても問題が無いのか主治医に確認しましょう。
高所では:
•
もしも気分が悪くなった場合は、それ以上登ることはやめて、下山することも考えましょう。
仲間にも伝えましょう。
アレルギー/アナフィラキシー
もしもアレルギー/アナフィラキシー反応が起こり、一旦落ち着いたとしても、何の前触れ
もなく24時間以内に再び悪化することがあります。できるだけすぐに医療を受けるように
しましょう。
出発前に:
•
アレルギー/アナフィラキシーが起こった場合の薬について(アドレナリン、抗ヒスタミン剤、ス
テロイドなど)医師に相談し、必要なものを準備しましょう。
高所では:
•
•
自分のアレルギーについて、ブレスレットやネックレスなど見える所に表示したメディカルIDを
身につけましょう。
主治医にアドレナリン自己注射器(エピペン®)を処方されている場合は、いつも持ち歩き、使え
るように用意しておきましょう。
高所医学ハンドブック 38
肺の状態
出発前に:
•
•
•
自宅での軽い息切れですら高所では深刻な状態になりかねないことを覚えておきましょう。
必要なワクチンは新たに接種し、また有効期間の切れたワクチンは再接種しましょう。インフ
ルエンザワクチンの接種も考慮しましょう。
トレーニングをしましょう。低めの標高、緩めの強度から始めましょう。
高所では:
•
•
急がず徐々に標高を上げるようにしましょう。
具合が悪くなった時は、じっとして調子がよくなるのを待つのではなく、必要に応じて薬を
使ったり、標高を下げるようにしましょう。
喘息
一部の人は、冷たい空気や運動が引き金となり、喘息が悪化することがありますが、通常、高所に
行くと体内のステロイドの産生が増加し、空気中のアレルゲンが減ることにより、喘息は良くなる
人が多いです。
出発前に:
•
•
•
•
•
喘息が落ち着いていないのであれば、高い所へ行ってはいけません。
旅行先にあわせて、必要なワクチンと有効期間の切れたワクチンの接種計画をたてましょう。
インフルエンザワクチンの接種も考慮しましょう。
予備の吸入薬/スペーサー(吸入補助器)、ステロイドを用意しましょう。
自分の喘息発作の引き金となるものを予め知っておき、旅行中は避けるようにしましょう。
トレーニングをしましょう。低めの標高、緩めの強度から始めましょう。
高所では:
•
•
•
常に吸入薬を持ち運びましょう。
具合が悪くなった時は、じっとして調子がよくなるのを待つのではなく、必要に応じて薬を
使ったり、標高を下げるようにしましょう。
抗炎症薬(アスピリンやイブプロフェンなど)の使用は避けましょう。
てんかん
出発前に:
•
•
•
てんかん発作が落ち着いていることを確認しましょう。少なくとも6か月間は発作の無い状態が
目標です。
運転や仲間とのクライミング中に発作が起きた場合の問題点を、確実に仲間にも理解してもら
いましょう。
抗マラリア薬を飲む場合、抗てんかん薬と一緒に飲んで良いか確認しましょう。
高所では:
•
•
•
•
病気を避けましょう。抗てんかん薬の効果に影響を与えることがあるからです。
自分のてんかん発作の引き金になる因子(例 アルコール、疲労)をあらかじめ知っておき、それ
らを避けるようにしましょう。
抗てんかん薬は、睡眠に影響を与えたり、動作(靴のヒモを結ぶ、まっすぐ歩くなど)が上手く
できなくなる可能性があります。これらの症状は、高山病によっても起こります。もし疑わし
ければ下山しましょう。
てんかん発作は、場所によっては生命を脅かしかねません。また、発作後はぐったりすること
があるので、休息が必要です。
39 高所医学ハンドブック
きれいな自然環境を維持するために
高所の自然環境
は、平地に比べ、も
ろいものなのです。
一度壊れてしまう
と、元に戻るには非
常に時間がかかり、
自然が受けたダメー
ジはどんなものでも
長く影響が残ってし
まうのです。水や燃
料、食べ物の調達や
下水の処理は自宅で
はあまり気にならな
いかもしれません。
しかし、高所では水や燃料、食べ物の調達
やトイレなどの処理を自分で責任をもって
行わなければなりません。あなたが高所で
どう行動したかが、地元の人々やこの後に
この地を訪れる人々に影響を与えることに
なるのです。また宿泊施設の中には宿泊者
を歓ばせるため高所でありながら便利で快
適な宿泊施設にしようと、高所の貴重な資
源をギリギリまで利用している所もあるの
です。
売ってしまうことがあるので注意しま
しょう。
森林もまた貴重です:
•
•
•
•
•
•
•
•
川や沢を汚さないようにしましょう。
シャワーを浴びるのは温かいものであれ
冷たいものであれ、やめましょう。洗面
器一杯の水で何事もすませましょう。
無駄に木を集めて燃やすことは是非とも
やめましょう。
植林計画があれば支援するのも良いで
しょう。
ゴミは大きな問題:
•
水は限られている:
•
•
木材は貴重です。
•
水洗トイレではなく環境に配慮したトイ
レを使いましょう。
ペットボトルの水は買わないようにしま
しょう。空のボトルを置いていく場所は
ありません。
高所へ持ち込んだものはすべて持ち帰り
ましょう。ゴミにならないよう不要な包
装は家で外してから持参しましょう。
使い終わった電池は、持ち帰りましょ
う。
グループ全体のゴミについて考え、よく
ない習慣があれば改めましょう。
トイレは、適切な場所に深く掘った穴を
使いましょう。糞便は深く埋めるか、あ
ちこちに分散して埋めるようにしましょ
う。自然の中で糞便が分解されるのに何
年もかかります。持ち帰るのも一つの手
です。
衛生用品(ちりがみ、ナプキン)の処分方
法もきちんと計画しましょう。
高所に生育する動植物の命は、とてももろ
い:
作物は育ちにくい:
•
•
十分な供給量があるところで食料を調達
しましょう。
へき地で食料を調達する場合は、その地
域の人々が冬を越すのに必要な食料まで
•
•
•
植物を根こそぎ採取する事はやめましょ
う。
また植物が生えている地面を傷めないよ
うにしましょう。
野生の生き物を保護しましょう。
高所医学ハンドブック 40
推薦図書
The High Altitude Medicine Handbook(高所医学ハンドブック), by Drs Pollard &
Murdoch
Bugs, Bites, and Bowels(虫刺されと下痢), by Dr Wilson-Howarth
Altitude Illness: Prevention & Treatment(高山病:予防と治療), by Dr Stephen Bezruchka
Pocket First Aid and Wilderness Medicine(簡便な応急手当と野外での医療活動),
by Drs Jim Duff and Peter Gormley
41 高所医学ハンドブック
インターネット上の関連情報サイト
British Mountaineering Council (BMC) www.thebmc.co.uk/medicine
Certec www.certec.eu.com
Epilepsy action website www.epilepsy.org.uk/info/sportsandleisure/index
Foreign & Commonwealth Office travel advice www.fco.gov.uk/travel
Frostbite www.christopherimray.co.uk/highaltitudemedicine/frostbite.htm
Gamow Bag www.chinookmed.com
General travel information www.fitfortravel.nhs.uk
International Porter Protection Group (IPPG) www.ippg.net/guidelines/index.html
International Society for Mountain Medicine (ISMM)
www.ismmed.org/np_altitude_tutorial.htm
Kathmandu Environmental Education Project (KEEP) www.keepnepal.org
MEDEX www.medex.org.uk
- has a full list of UK doctors holding the UIAA Diploma of Mountain Medicine
Mountains for Active Diabetics (MAD) www.mountain-mad.org.uk
Oxygen (constant flow system) www.topout.co.uk and www.poisk-ltd.ru
Oxygen (demand flow system) www.summitoxygen.com
Portable Altitude Chamber (PAC) www.treksafe.com.au
Union Internationale des Associations d’Alpinisme (UIAA) www.theuiaa.org
高所医学ハンドブック 42
CREDITS
Medex would like to thank the following for their written contributions:
Damien Bailey
Denzil Broadhurst
Mike Brookes
Keith Burgess
Simon Currin
Gerald Dubowitz
David Geddes
Sandra Green
David Hillebrandt
The Joints / Muscles
Finding out about High Altitude, What is
High Altitude, Where in the World is
High?, Europe, North & South America,
Africa, Asia, Acclimatisation, The Effects
of Altitude, Acute Mountain Sickness
What to do in an Emergency
Sleep
Preface
The Heart / Blood, Sleep
The Mouth / Teeth
The Joints / Muscles
HAPE, HACE, The Stomach / Bowels,
The Kidney / Bladder, The Reproductive
Bits
Mark Howarth
Olly Kemp
Juliette Levement
Mandy Jones
Ian Manovel
Alex Martin-Bates
Dan Morris
Stephan Sanders
Eli Silber
Chris Smith
Jill Sutclife
Henriette Van Ruiten
Catharine Wilson
Jeremy Windsor
The Eyes, Healthy Environment
The Lungs
The Lungs, Sleep
Sleep
Pills & Potions
Pre-Existing Conditions
The Eyes
Children at High Altitude
The Brain
Europe, HAPE, HACE, Porters,
Healthy Environment
Healthy Environment
The Extremities
Africa, Australasia, Antarctica,
Acute Mountain Sickness, The Lungs
The Ears / Nose, Oxygen
Medex would like to thank the following for their case studies:
Jim Duff, Gill Macquarie, Martin Rhodes, Ronnie Robb, Jacky Smith
Medex would like to thank the following for their photographs:
Bruce Bricknell
Denzil Broadhurst
Simon Currin
Diana Depla
Gerald Dubowitz
Rachel Hamilton
David Hillebrandt
Annabel Nickol
Gill Macquarie
Nick Mason
Page 33
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Page III, 9, 10, Back cover
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Ronnie Robb
Stephan Sanders
Dorje Sherpa
Chris Smith
Jacky Smith
Catharine Wilson
Jim Duff
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Page 8
Front cover, Page II, 5, 11, 15, 19,
21, 22, 28, 30, 31, 39
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Page 35
Medex would also like to thank:
All those who commented on the booklet drafts
The UIAA for their supporting grant
Editors:
General: Denzil Broadhurst, Chris Smith
Medical: Simon Currin, David Hillebrandt, Jim Milledge, Paul Richards
翻訳(Translator):
大城和恵(Kazue Oshiro)
本田元人(Haruhito Honda)
師田信人(Nobuhito Morota)
薊 隆文(Takahumi Azami)
山本太郎(Taro Yamamoto)
三浦 裕(Yutaka Miura)
濱田 拓(Taku Hamada)
笹尾 玄(Gen Sasao)
國吉保孝(Yasutaka Kuniyoshi)
川村暢子(Nobuko Kawamura)
川本雅司(Masashi Kawamoto)
粂井志麻(Shima Kumei)
Page II, III, 1-12, Back cover
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Page 17, 18, 19
Page 20, 21, 33
Page 22, 23, 40, 41, 42
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Page 28, 29, 43
Page 30, 31, 34
Page 35, 36, 44
Page 37, 38
編集(Editor):
大城和恵(Kazue Oshiro), 木幡武史(Takeshi Kohata)
監修(Supervision):
増山 茂(Shigeru Masuyama), 堀井昌子(Masako Horii)
43 高所医学ハンドブック
急性高山病スコア日誌
高所医学ハンドブック 44
健康カード
名前:
生年月日:
緊急連絡先:
住所:
電話番号:
氏名:
関係:
飲んでいる薬や
塗り薬、貼り薬、吸入薬:
アレルギーの有無と内容:
重要な健康上の問題
例) 糖尿病、高血圧など
(治療はしていなくても、指摘
されているものはすべて)
これまでに受けたり、現在受
けている治療の内容
例) 手術、薬物治療、時期
加入している保険
健康保険名(国保など)
保険者番号
民間保険:会社名、保険の
種類連絡先
自分の写真:
TRAVEL AT HIGH ALTITUDE
(高所医学ハンドブック)
またとないような旅、特色のある休暇、高所でのスキー、あるいは遠征登山
を計画していますか?
高所や空気の薄い環境下では、順応のためあなたの体に変化が起こります。
その変化をいくらか理解するために、このハンドブックは書かれました。あ
なたが健康を維持しながら旅を楽しむために、役立つ情報、助言、話が溢れ
ています。最も重要なことですが、重篤な高山病、これは依然として人々が
その危険に気づかず死に陥ってしまう病気で、これについても扱っていま
す。
このハンドブックは以下により推薦されています。
英国山岳ガイド協会 (Association of British Mountain Guides :BMG)
英国山岳協会 (British Mountaineering Council : BMC)
国際山岳連盟 (International Mountaineering and Climbing federation : UIAA)
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