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オーストラリア人観光客の 周遊可能性について
オーストラリア人観光客の 周遊可能性について Trip Extension Possibility of the Australian Tourists Visiting Niseko To Other Areas in Hokkaido (社)北海道開発技術センター 企画部地域政策研究室 研究員 中村 幸治 国土交通省 北海道開発局 小樽開発建設部 蜷川 浩一 「支笏洞爺ニセコルート」の概要 ~美しい湖と秀峰、火山に出逢えるルート~ 支笏洞爺国立公園とニセコ積丹小樽国定公園の2つの国立・国定公園を走る支笏洞爺ニセコルートは 美しい湖と秀峰、火山に出会える地域です。支笏洞爺ニセコルートは3つのエリアで構成されています。 ニセコ羊蹄エリア テーマ:羊蹄山とニセコの自然 が与える感動のみち ニセコ羊蹄エリアは羊蹄山のあ る美しく季節感のある風景と尻 別川をはじめとしたニセコの自 然を体験することにより、訪れ ウェルカム北海道エリア た人に感動を与えるルートです。 テーマ:ここからはじまる北海道 【関係市町村数】 17市町村 (ウエルカム北海道エリア・・・・・2市) (ニセコ羊蹄エリア・・・・・・・・9町村) (洞爺湖エリア・・・・・・・・・・4市町) 【活動団体数】 22団体 (ウエルカム北海道エリア・・・3団体) (ニセコ羊蹄エリア・・・・・・・11団体) (洞爺湖エリア・・・・・・・・・・8団体) 2006年5月現在 ウェルカム北海道エリアは新千歳 空港に降り立った来訪者が多様な 自然、清らかな水、広がりのある 農地とおいしい食、彩り美しい庭 のある街並みなどにり会うことが できる北海道の魅力をはじめに体 感できるルートです。 洞爺湖エリア テーマ:美しい洞爺湖と火山がおり なすエコミュージアムルート 四季折々に美しい表情を見せる洞 爺湖と今なお噴煙を上げる昭和新 山。洞爺湖エリアは美しい洞爺湖と 火山を体感できる屋根のない博物 館、エコミュージアムのルートです。 はじめに (各エリアにおける外国人観光客の現状) 【ニセコ羊蹄エリア】 ・豪人観光客急増 ・主にスキー目的 ・長期滞在型 (10日~14日) ・個人旅行型 【洞爺湖エリア】 ・主にアジア圏の 観光客 ・温泉や火山目的 ・短期滞在型 (3~4泊) ・団体旅行型 【ウェルカム北海道エリア】 ・アジア圏を中心に JRを利用する外国 人が増えている ・例年「氷涛まつり」 は、中国などから の海外ツアー客ら で賑わう ・主に通過型 ~3エリア連携による周遊観光促進の目的~ ニセコには無い他の地域の資源・魅力を活用することによる、 「リピーター率の上昇」や「滞在日数の延長」など ニセコ羊蹄エリアにおける外国人観光客の実態 (1)外国人観光客入り込み数(延べ宿泊数)の推移 (人泊) 60,000 55,320 平成16年は 平成13年の 約13倍 50,000 40,000 27,312 30,000 20,000 10,000 0 7,612 6,121 4,216 9,943 13,833 4,715 H13 H14 ニセコ町 H15 H16 倶知安町 ニセコ町・倶知安町における外国人観光客延べ宿泊数の推移 (北海道観光入込客数調査報告書 2005年) ニセコ羊蹄エリアにおける外国人観光客の実態 (2)外国人観光客入り込み数(延べ宿泊数)の月別変動 (人泊) 25,000 12~3月が顕著 20,574 20,000 15,458 15,000 5,000 0 9,882 8,808 10,000 3,636 2,695 287 224 112 758 79 1,803 88 1,735 87 69 165 129 63 40 22 23 1,021 倶知安町 ニセコ町・倶知安町における月別外国人旅行者延べ宿泊数 (北海道観光入込客数調査報告書 2005年) 3 月 2 月 1 月 12 月 11 月 ニセコ町 10 月 9 月 8 月 7 月 6 月 5 月 月 4 1,395 ニセコ羊蹄エリアにおける外国人観光客の実態 (3)外国人観光客の国別入り込み数(延べ宿泊数)の現状 ニセコ町 オーストラリ 不明 ア他 7% 北米他 7% 3% ヨーロッパ 3% 倶知安町 不明 0% 韓国 30% 韓国 台湾 香港 0% 1% 9% シンガポールその他アジア 1% 3% ヨーロッパ 1% 北米他 2% その他アジア 4% オーストラリア他 83% シンガポール 3% 香港 25% 韓国 シンガポール 北米他 台湾 18% 台湾 その他アジア オーストラリア他 香港 ヨーロッパ 不明 韓国 シンガポール 北米他 台湾 その他アジア オーストラリア他 香港 ヨーロッパ 不明 ニセコ町における国別外国人旅行者 倶知安町における国別外国人旅行者 延べ宿泊数 延べ宿泊数 (北海道観光入込客数調査報告書 2005年) (北海道観光入込客数調査報告書 2005年) ・ニセコ町は全体の70%強を「韓国・台湾・香港」といった 東アジア地域が占めている ・倶知安町では全体の83%を「オーストラリア他」が占め、 東アジア地域からの観光客は全体の14%程度に過ぎない 倶知安町(ひらふ地区)における オーストラリア人観光客入り込み急増の背景 ・オーストラリアの好景気・オーストラリアドル高 ・9.11テロ事件で日本の安全性が見直された ・地域資源の優位性(特にパウダースノー) ・ニセコ地域でアウトドアビジネスを始めたオーストラリア 人実業家たちを中心とした口コミによる情報発信・広報 ・飛行近距離 (新千歳8時間<カナダ17時間<欧州20時間) ・時差(日本1時間<欧州6時間<カナダ17時間) ・安価(日本21万円<カナダ25万円<欧州27万円) 調査の目的と概要 ニセコ地域を訪れる外国人観光客(主にオーストラリア人旅行者) の周遊・レクリエーション活動に対するニーズを 明らかにすること 【調査1】 観光事業者を対象とした ヒアリング調査 【調査2】 外国人観光客を対象とした モニターツアーによる 実証的な検証 支笏洞爺ニセコルートにおける外国人観光客の 「今後の周遊観光の可能性」について考察 調査1 観光事業者を対象としたヒアリング調査 (1)ヒアリング調査概要 調査期間 平成17年12月19日(月)~20日(火) 倶知安およびニセコの宿泊業および観光事業者 調査対象 5箇所(ランドオペレーター、ホテル等) ○外国人利用の現状 (国別内訳、平均宿泊日数、グループ形態、年齢層等) ○滞在形態 調査項目 (スキーでの外出時間、多い問合せ内容、苦情や要望等) ○モニターツアー意向 ○外国人誘致の意向(今後の意識や戦略) ○景観社会資本等に関する要望等 調査1 観光事業者を対象としたヒアリング調査 (2)観光事業者を対象としたヒアリング意見整理 ○外国人利用の現状 ・オーストラリア、香港、シンガポール在住の白人層が主流。 であるが、台湾在住のアジア層も滞在している。 ・年代別では家族(夫婦40~50歳代)、仲間同志(20~30歳代)が中心。 ・スキー志向別ではコアな層(スキーが主目的)、他目的のある層 (同伴者、子供)とに大きく分かれる。 ・形態別では家族(同伴の子供は中高生程度が中心)、仲間同志 が中心だが、基本はFIT(Foreign Independent Tour:個人旅行者 の略)が大半を占めている。 調査1 観光事業者を対象としたヒアリング調査 (2)観光事業者を対象としたヒアリング意見整理 ○滞在形態 ・平均滞在日数は、10日前後と長期滞在。 ・コアなグループ 8:00~16:00までスキー、 夜はアフタースキーを楽しむ傾向。 ・ファミリーや高所得層は午前中スキーを楽しみ、 午後は休憩、夜はアフタースキーを楽しむ傾向。 ・JRを使い、小樽、札幌へ観光に行っている層も結構みられる。 調査1 観光事業者を対象としたヒアリング調査 (2)観光事業者を対象としたヒアリング意見整理 ○その他)苦情や要望 ・言葉が通じない。対応できるスタッフ不足。 ・道路標識がわかりにくい。 ・詳細な観光情報提供の不足。 ・ATM、キャッシュカードが使えない。 ・周辺観光エリアへの交通アクセスの不便さ。 ・スキー以外のメニュー(自然体験等)の問合せも多い。 (特に、奥さんや子供連れに多い) ・日本的なこと(着付、お茶、お花等)についての問合せが多い。 ・地元の特産品を提供するレストランが少ない。 ・お土産のレベルが低い。 調査1 観光事業者を対象としたヒアリング調査 (3)ヒアリング調査結果のまとめ ○滞在形態 ・ほとんどのグループが長期滞在 ・基本はFIT(Foreign Independent Tour:個人旅行者の略)が大半 ○興味のあるテーマ ・「自然体験」や「日本文化」 ・地元の食事や買い物に対する関心が高い ○その他 ・スキー以外のアクティビティに関する問い合わせが多い ・各種情報発信に対する要望も多数挙げられている 調査2 外国人観光客を対象としたモニターツアー 【調査目的】 ①ニセコ地域を訪れる外国人旅行者(主に豪人旅行者)の周遊・ レクリエーション活動に対するニーズ把握 ②広域周遊環境改善による支笏洞爺ニセコルート全体の魅力度 向上、集客力の増加 ③連携事業によるエリア間の連携強化 調査2 外国人観光客を対象としたモニターツアー (1)モニターツアー実施概要 支笏湖方面ツアー 支笏湖方面ツアー 日 時 平成18年2月15日(水) 支笏湖ビジターセンター 訪問地 道の駅「フォレスト276」 支笏湖ビジターセンター 丸駒温泉(温泉) 支笏湖氷濤まつり 丸駒温泉(温泉) 休暇村支笏湖(日本料理、温泉) 参加者数 12名(豪人8,露人2,香港人2) 休暇村支笏湖 調査2 外国人観光客を対象としたモニターツアー (1)モニターツアー実施概要 洞爺湖方面ツアー 洞爺湖方面ツアー 日 時 平成18年2月22日(水) 訪問地 まっかりスノーモービルランド まっかりスノーモービルランド 道の駅「230ルスツ」 昭和新山雪合戦 洞爺湖遊覧船 昭和新山雪合戦 火山科学館 旭ホテル(日本料理、温泉) 参加者数 20名(豪人18,香港人2) 旭ホテル(日本料理、温泉) 調査2 外国人観光客を対象としたモニターツアー (2)モニターツアー調査概要 調査方法 参加者によるヒアリングシートへの記入式調査 ○ツアーの基本催行条件に対する評価(五段階評価選択式) ・期間、時間帯、参加費用 ○ツアーの内容に対する評価(五段階評価選択式) 調査項目 ・訪問地、情報提供 ○有料にした場合の適正価格(自由記述式) ※上記3項目については、ツアー毎の全参加者数で割った 平均値を算出している。 支笏湖方面ツアー 参加者数 洞爺湖方面ツアー 12名(豪人8,露人2,香港人2) 20名(豪人18,香港人2) 調査2 外国人観光客を対象としたモニターツアー (3)支笏湖方面ツアー調査結果 支笏湖休暇村 4.8 ツアー満足度 4.8 支笏湖氷濤まつり 4.6 移動中の楽しみ 4.8 4.8 移動時間 4.4 4.1 丸駒温泉 支笏湖ビジターセンター 4.0 案内・申込方法 道の駅フォレスト276 4.0 ツアー時間設定 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 ツアーの基本催行条件に対する評価点 5.0 4.3 0.0 1.0 2.0 3.0 ツアーの内容に対する評価点 【ヒアリング意見抜粋】 ・すごい体験をした。次はもっとゆっくり過ごしたい ・湖と背景の山並みなどの自然に究極の美を感じた ・現地のスタッフが親切で演出・対応もすばらしかった ・温泉の景観・サービスは、ファーストクラスだった ・今まで食べた中で最高の日本料理だった ・温泉でのマナー等を英語で解説してほしい ・英語標記、パンフレット、解説の充実を望む 4.0 5.0 調査2 外国人観光客を対象としたモニターツアー (4)洞爺湖方面ツアー調査結果 旭ホテル 5.0 火山科学館 ツアー満足度 5.0 移動中の楽しみ 5.0 3.8 洞爺湖遊覧船 3.5 移動時間 昭和新山・雪合戦 4.7 4.6 道の駅230ルスツ 案内・申込方法 3.7 4.7 まっかりスノーモービルランド 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 ツアーの基本催行条件に対する評価点 5.0 3.2 ツアー時間設定 4.6 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 ツアーの内容に対する評価点 【ヒアリング意見抜粋】 ・現地スタッフの方々の対応がとても良かった ・森林や自然体験のできる散策コースがあると良い ・スノーモービル、雪合戦はとても興奮した ・温泉、浴衣、食事、畳など日本文化を体験できた ・女将さんの真のホスピタリティが嬉しかった ・英語インフォメーション、解説の充実を望む ・土産品の選択肢が少なかった。充実を望む 5.0 調査2 外国人観光客を対象としたモニターツアー (5)モニターツアー調査結果 ①ツアー満足度について ツアー満足度 移動時間に対 する評価 移動中の 楽しみ 2.5時間 (約90㎞) 4.8 4.4 4.8 1.5時間 (約50㎞) 5.0 4.7 5.0 実移動時間 (休憩含む) 支笏湖方面 ツアー 洞爺湖方面 ツアー ②適正価格について 有料にした場合の適正価格※ 実際にかかった経費 (標準偏差値) (今回は日帰りのみ実施) 日帰り 1泊2日 提供メニュー バス代 支笏湖方面 ツアー 10,200円 20,400円 (7,837円) 4,500円 3,300円/人 洞爺湖方面 ツアー 12,400円 24,500円 4,500円 2,000円/人 (4,093円) (5,587円) (10,624円) ※ ツアー毎の全参加者数で割った平均値を算出している。 モニターツアー調査の効果 ○「観光事業者ヒアリング」と「モニターツアー」の 結果(シーズ・ニーズ)が一致した ○参加者のツアーに対する評価(満足度)が非常に高く、 モニターツアー自体は成功だった ○地域の方々の「あたたかいおもてなし」が 高い評価(満足度)につながった ○事業として成立する可能性が明らかになった ○地域の活動団体等が外国人観光客のニーズを確認する ことができた(ビジネスとしての可能性を感じた) ○トランスポーテーション会社等の設立に向け地域住民 が動き始める等、ビジネス展開の足がかりとなった 周遊観光促進の6つのポイント ①スキー以外のアクティビティの充実 ②おもてなし料理と買い物 ③移動中の景観、立ち寄りポイントの充実 ④移動手段、交通アクセスの充実 ⑤適切な情報発信・情報提供 ⑥地域住民のホスピタリティ おわりに・・・ 成功のキーワードは、 地域住民の「あたたかいおもてなし」 シーニックバイウェイ活動団体主催の 「外国人観光客モニターツアー報告会」が 平成18年6月14日(水)に予定されるなど、 ビジネス展開に向けた動きが進み始めています。