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『法学部・法学研究科ファクトブックⅠ』 (強み・特色編)

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『法学部・法学研究科ファクトブックⅠ』 (強み・特色編)
『法学部・法学研究科ファクトブックⅠ』
(強み・特色編)
1.他大学・他学部にない独自性(強み)
・・・P1
2.最近における特記事項
・・・P8
3.地域貢献
・・・P12
4.各界・メディア等で活躍している教員・卒業生
・・・P14
神戸大学法学部・大学院法学研究科
1.他大学や他学部等にない独自性(強み)
◆大学院教育の拡充
神戸大学大学院法学研究科は、優れた研究者を養成し、学界に送り出すことを最も重要な使命の 1 つとする。
そして、これにとどまらず、本研究科では、社会人として高度の専門知識を身につけた人材や、学部卒業後に
より高いレベルの教育課程を経て社会で活躍する人材育成のための大学院教育の必要性を早期に認識し、他大
学に先駆けてそれらのニーズに対応したコースを設けている。
本研究科は、博士課程に理論法学専攻と政治学専攻を置き、現行の中期目標において定める「人間性」、「創
造性」、「国際性」及び「専門性」を身につけた個性輝く人材を養成するため、研究者コースに加え、前期課
程では専修コース、社会人コース、法曹リカレントコースを、後期課程では高度専門職業人コースを設け、社
会の多様なニーズに応えている。平成 27(2015)年度には、博士課程前期課程の研究者コース及び専修コー
スで実定法科目を専攻する学生の募集を再開し、法科大学院を経由せずに研究者を目指す道を開き、より多く
の法学研究者を育成すること、及び、学部段階以上に高度な問題解決能力を備えた人材を実定法分野において
育成している。さらに、経済・産業のグローバル化を牽引するビジネス・リーダーを育成すべく、英語による
講義で修士号を取得できる GMAP in Law(Global Master Program in Law)コースを設置した(法学・経済学・
経営学の 3 研究科合同の Global Master Program の一環である)。そして平成 28(2016)年度から、博士課
程後期課程において、高度の実務専門性を体系的に身につけた国際的競争力のある法律家を養成することを目
的とする高度専門法曹コース(トップローヤーズ・プログラム)を開設する。
◆法科大学院
神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻(法科大学院)は、平成 16(2004)年度の創設以来、多くの優秀
な修了生を輩出し、司法試験においても全国でもトップクラスの合格率を維持してきた(累計合格率は約 70
%であり、全国 5 位の順位にある)。具体的には、累計修了生 805 名のうち、多数が検察官や裁判官として任
官しているほか(平成 17(2005)年以降現在までで 20 人が検事任用、20 名が裁判官に任官している)、弁護
士についても各事務所への安定した就職の実績がある(現在までに 344 人)。また、法曹資格をもって、企業
法務部に勤務する者(現在までに少なくとも 34 名)、国家公務員として勤務する者(現在在職中の者として、
国税庁と農林水産省にそれぞれ1名ずつ。このほか、公正取引委員会から法律事務所に転職した者が1名いる)、
議員秘書として勤務する者(1 名)など、法曹資格者の職域拡大にも貢献している。
そもそも、法科大学院開設に当たっては、本学の教育プログラム(カリキュラム)が、全国の多くの法科大
学院の範型となった。本学の法科大学院は、そうした中で、全国の法科大学院をリードするものとして位置づ
けられる。現在の法科大学院制度の喫緊の課題である法曹の職域拡大においても、上記のような進路実績のほ
か、在学生・修了生へのマレーシア法律事務所における研修機会を提供してグローバルな職域拡大に貢献でき
るよう、尽力している。
なお、法科大学院の認証評価においては、公法系の訴訟実務に関する授業科目(公法系訴訟実務基礎)の開
設、身体障害のある学生に対する全館バリアフリー措置、設置基準を相当数超えた専任教員の配置、自習室の
スペースの確保と専用図書の充実等が、本法科大学院の特に優れた点として挙げられている。
加えて、すべての法曹に必要な基本的な知識と豊かな応用能力を有する職業法曹の養成、および、いわゆる
1
神戸大学法学部・大学院法学研究科
ビジネス・ローを中心とした先端的法分野(特に、知的財産法分野)についての知識と能力を有する職業法曹
の養成という目的を明確にし、その達成のために、基本法律科目に関して段階的かつ着実な教育課程を展開す
るとともに、知的財産法をはじめとしたビジネス・ローや国際関係分野において多数の展開・先端科目を開講
している。このように法科大学院の「色」を明確に出す形で、充実したカリキュラムを提供していることは他
大学との比較でも神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻の強みである。
最後に、平成 24(2012)年に模擬法廷棟「ラ・クール」が供用を開始し、実務教育のさらなる充実化が図
られている。
◆EUIJ関西
日本で 2 番目の欧州研究教育拠点として、平成 17(2005)年に EUIJ 関西(EU インスティテュート関西)が
設置され、神戸大学はその幹事校として、EU に関するカリキュラムを展開するとともに、本学の他学部、関
西学院大学、大阪大学と共同で EU 科目を開設し、Certificate(大学が授与する学士号・修士号とは別に、E
U 研究につき所定の成果をあげた学部学生・大学院生に対し、EUIJ 関西が独自に授与するもの)を発行してい
る。また、春季、夏季に外交官、実務家、教員によるレクチャー、学生グループ・ディスカッションを行うた
めの合宿を行っている。法学部・法学研究科では、この関連で、欧州連合の高官や関係団体の専門家による特
別授業、講演を夏学期・冬学期それぞれ平均して最低でも4回~5回程度設けている。他の国立大学法学部・
法学研究科では必ずしも欧州との有機的連関が構築できていないものの、神戸大学は EUIJ の存在を活かし、
欧州地域の大学との研究教育交流を積極的に進めている。こういった連携関係もあり、英国やフランスといっ
た西欧諸国または東欧諸国からも留学生が着実に増えており、たとえば平成 26(2014)年度はポルトガルか
ら 2 名が正規課程の学生として、フランスから 1 名が交換留学生として、平成 27(2015)年度はブルガリア
から 2 名、ポーランドから 2 名が DDP(ダブルディグリープログラム)学生として、フランスから 1 名、イタ
リアから 3 名が交換留学生として修学している。
今後の国際社会における日本とEUとの関係は、最近になって日欧 EPA 交渉が本格化したことにも象徴され
るように、より深く、高度なものとなっていくことが予想されるが、EUIJ、及びその幹事校としての本学の活
動は、このような中で、きわめて重要な位置づけが与えられるものである。たとえば、その活動実績が欧州委
員会にも高く評価され、EUIJ 関西は第 1 期(平成 17(2005)年度~平成 20(2008)年度)、第 2 期(平成 2
1(2009)年度~平成 24(2012)年度)を経て、平成 25(2013)年 4 月から第 3 期の活動を行っている。
◆ジャーナリズム・プログラム及びPCC
平成 18(2006)年度より、朝日新聞社、神戸新聞社、読売新聞社の寄附、協力を得て、ジャーナリズム・
プログラムとして、各社ジャーナリストによる授業科目を開設し、学生の将来のキャリア選択の幅を広げる教
育を行ってきた。その教育効果もあり、近年多くの卒業生が朝日新聞、読売新聞、共同通信社、時事通信とい
った大手マスコミ企業に就職するに至っている。こういったジャーナリズム・プログラムの展開は関東私学に
あるものの、国立大学法学部・法学研究科においては極めて珍しい本研究科独自の取り組みである。
その後、このジャーナリズム・プログラムは、平成 23(2011)年度に設立されたパブリック・コミュニケ
ーション・センター(PCC)により、学生の情報発信力を多面的に伸ばす教育プログラムとして発展的に運営
2
神戸大学法学部・大学院法学研究科
されることとなり、ここでは、ジャーナリズム・プログラムとともに、公共性を意識し国内外で説明責任を果
たす人材育成を目指す国際公共人材育成プログラム(平成 23(2011)年度から平成 25(2013)年度実施)が
運営された。
法学部・法学研究科において、このような情報発信に焦点を当てたジャーナリズム教育や国際的に活躍でき
る人材の育成に向けた教育プログラムは、本学部、研究科における教育の特色として挙げることができる。
◆エコノリーガル・スタディーズ(ELS)・プロジェクト
エコノリーガル・スタディーズ(ELS)は、21 世紀の社会において法学と経済学が建設的な連携・協働を果
たすための基盤の形成を目指す学際的プロジェクトであり、研究活動と教育活動の二本の柱から成り立ってい
る。
研究活動の面では、法学的・経済学的側面が複合する課題を、法学と経済学の知見を活用しながら解決する
ことを目指しており、平成 21(2009)年度から平成 23(2011)年度の 3 年間は、「経済的・社会的規制にお
ける市場の機能とその補正をめぐる法律学的・経済学的検討」を実施し、平成 24(2012)年度以降は、「市
場に関する経済的・社会的規制の手法に関する法律学的・経済学的研究」というテーマの下、競争法・知的財
産法・労働法・社会保障法について個別法領域ごと、また領域横断的に、公正性と効率性の両方の観点からの
研究を継続的に行っている。
教育活動の面では、法学・経済学の両方の素養を法学部/経済学部2年生から4年生までの3年間で身につ
けられるようにデザインされた、小人数教育(法学部と経済学部合わせて 1 学年 30 名程度)中心のプログラ
ムを神戸大学において展開し、法学・経済学双方の知識と見方とを武器にしながら、両学問の融合が適切な対
処法を見出すのに不可欠である環境問題、経済と法が密接に連関した税制や社会保障制度といった制度設計・
制度改変の問題など、今日生じている多くの現代的社会問題を解決する力を有する学生を育てるための体系的
教育を行なっている。
なお、このように経済学との連関を重視した研究教育プロジェクトの展開も他の国立大学法学部・法学研究
科との比較において珍しく、神戸大学の独自性として強調できる。
◆GMAP in Law コース
2015 年 4 月に新しい修士課程のコースとして開始されている。国際ビジネス法に関する講義をすべて英
語で提供するコースであり、2 年間(又は単位取得ができれば 1 年間)で修了可能である。講義科目としては、
国際取引法、国際投資法、国際仲裁などがあり、①必修科目、②選択科目、③海外インターンシップ(1~3
ヶ月の間、海外法律事務所でのインターン)、④修士論文(またはリサーチペーパー)の合計 30 単位で修了
が可能である。今日、ビジネスの世界は国際化・英語化が急激に進んでいることから、修士の段階で英語に特
化したコースを履修することの意義は大きい。また、海外から多くの大学教授や実務家が招聘され、講義やセ
ミナー、シンポジウムに際して触れる機会があり、実務の世界に出る前からコネクションや人脈を形成するこ
とが可能である。また、法律英語に特化した教員(英国人)も講義に加わっており、法律英会話や英語執筆の
点でも充実したフォローが行われている。実際に、本コースに所属する院生は、英語力を格段に向上させてい
る。
3
神戸大学法学部・大学院法学研究科
◆継続的な教育プログラムの採択と改善・改良
平成 21(2009)年度から 22(2010)年度には、文科省の質の高い大学教育推進プログラムの支援を得て、
社会の法化と個人の判断能力を求める社会的ニーズに対応する学士の育成を目的として、「21 世紀型市民と
しての法学士養成計画」(教育 GP)に基づく教育プログラムを実施した。これらは、先に列挙した EUIJ やジ
ャーナリズム・プログラム、エコノリーガル・スタディーズ・プロジェクトなどと有機的に連関しつつ、学部
教育および大学院教育の質の向上に大きく寄与している。このように継続的に教育改善、改良を行っている本
学部・研究科の姿勢は、他大学の同種の学部・研究科と比べて強調すべき特徴といえる。
平成 24(2012)年度から 28(2016)年度には、文部科学省の「グローバル人材育成推進事業」のタイプ B
(特色型)に採択され、「問題発見型リーダーシップを発揮できるグローバル人材」育成のための諸活動を部局
内で推進している。
平成 25(2013)年度からは、本学に「日欧連携教育府」が新設され、平成 26(2014)年度から同府による
「EU エキスパート人材養成プログラム(Kobe University Program for European Studies;KUPES)が開始し、
本研究科では、学部 2 年次から博士課程前期課程まで一貫した体系的なカリキュラムを提供している。専門分
野以外にも、歴史・社会・政治・経済などを段階的学習できるように各種講義が配置し、英語による講義も行
っている。博士課程前期課程では、「日・EU 間学際的先端教育プログラム(EU-JAMM)」の仕組みを利用して、
本学の協定校に正式に入学し、ダブルディグリー取得を目指した留学(1 年間)を行うことができる。
平成 26(2014)年度から 28(2016)年度には、文部科学省の特別経費を受け、シチュエーショナルトレー
ニング・プログラム(STP)を実施している。具体的には、国際・国内双方における実務的、実践的な課題の
発見、遂行能力の向上を目的として、模擬安保理、模擬国連、模擬商事仲裁、模擬投資仲裁、模擬裁判、宇宙
法模擬裁判といった取組みを行っている。
◆大型科研費などの獲得
本研究科は、全国でもトップクラスの科研費採択率を誇る。全国の科学研究費の新規採択率が、平成 24(2
012)年度 28.3%、平成 25(2013)年度 27.3%、平成 26(2014)年度 26.9%、平成 27(2015)年度 26.5%で
あるのに対し、本研究科の場合には平成 24(2012)年度の新規申請 23 件に対して採択が 15 件で採択率が 65.
2%、平成 25(2013)年度の新規申請 20 件に対して採択が 13 件であり採択率が 65.0%、平成 26(2014)年度
の新規申請 25 件に対して採択が 13 件であり採択率が 52.0%、平成 27(2015)年度の新規申請 35 件に対して
採択が 15 件であり採択率が 43.0%であった。多くの教員が科研費による支援を得て、先端的な研究活動を行
っている(平成 27(2015)年時点において、専任教員 71 名(内、特命教員 4 名、助教 4 名含む)のうち 61
%にあたる 43 名(内、特命教員 1 名含む)が研究代表者を務めている)。科研費の中でも、特に近年採択さ
れた大型の基盤研究(A)のうち、本研究科教員が代表者であるものとして、「選挙ガバナンスの比較研究」(大
西裕、平成 23(2011)年度)、「積極的投票権保障の展開と効果に関する研究」(大西裕、平成 27(2015)
年度)、「集団的利益または集合的利益の保護と救済のあり方に関する解釈論的・立法論的検討」(窪田充見、
平成 23(2011)年度)、「私人の権利行使を通じた法の実現−法目的の複層的実現手法の理論化と制度設計の
提案」(窪田充見、平成 27(2015)年度)、「国際法の訴訟化への理論的・実践的対応」(坂元茂樹、平成 2
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神戸大学法学部・大学院法学研究科
3(2011)年度)、「経済的・社会的規制における市場の機能とその補正をめぐる法律学的・経済学的検討」
(泉水文雄、平成 22(2010)年度)、「市場に対する経済的・社会的規制の手法に関する法律学的・経済学
的研究」(泉水文雄、平成 24(2012)年度)、「少子高齢化時代におけるニーズ対応型・市民参加型福祉シス
テムに関する国際比較研究」(手嶋豊、平成 23(2011)年度)、「法的サービス供給をめぐる紛争の構造−専
門家の視角と利用者の視角の交錯を通じて」(樫村志郎、平成 24(2012)年度)、「多文化共生社会の変容
と新しい労働政策・宗教政策・司法政策に関する国際比較研究」(飯田文雄、平成 26(2014)年度)が挙げ
られる。また、若手研究(A)の採択として「戦争と武力行使に関する「法的説明」をめぐる国際政治と国内
政治の実証分析」(多湖淳、平成 24(2012)年度)が挙げられる。
このほか、多種多様な受託事業を実施している。たとえば、樫村志郎教授は「エスノメソドロジーの手法に
基づく法ディスコース分析の開発及び言語教育への応用に関する研究」を実施している。このほか、多湖淳教
授は「課題設定による先導的人文社会科学研究推進事業」(日本学術振興会)、「国際政治学における知的輸
出のための若手研究者グループ形成事業」(サントリー文化財団)、「対立と共存をめぐる国際政治分析‐科
学的な実証研究の成果報告」(野村財団)、「多様なデータが語る国際政治学研究の最先端」(社会科学国際
交流江草基金)、「神戸大学とエセックス大学の共同研究推進ワークショップ事業」(Daiwa Foundation Aw
ards)といった経費を用いて、英米独蘭などの国々の研究者との共同研究を進めている。
このような状況をふまえて、本研究科は、全国の法学部・法学研究科の中でも、法学政治学研究をリードす
る立場で活動をしている。
◆各種研究会の活動(関西における研究拠点としての証)
本学研究科の所属教員が分野をまたいで研究活動の情報交換をするため、定期的にスタッフ・ランチョンセ
ミナーを開催している(毎年 3~4 回程度実施)。法学と政治学とが相互に垣根を作らず、お互いが関心を同
じくする論点について協働を行うことが日本の法学・政治学の特徴であるとの認識に立ち、今後もこのような
活動を継続する予定であるが、こういった活動は他の法学部・法学研究科では比較的に珍しいことであると聞
いている。
このほか、神戸大学の研究会活動が各研究分野で「関西の拠点」となっていることを指摘できる。たとえば、
民事法分野について、神戸大学民法判例研究会が存在し、関係法のスタッフのほか、大学院生、または本研究
科の出身教員や他大学の教員などが毎回十数名~数十名程度集い、インターカレッジな活動を行っている。毎
月 1 回を定例とし、京阪神地域における民事法研究の中心的な活動の場となっている。
また、神戸大学大学院法学研究科法政策専攻(現、理論法学専攻)に在籍した学生などが中心となって法政
策研究会が結成され、定期的に法政策研究促進のため活動をしている。主体は関西圏の民間企業や地方自治
体・中央官庁出先機関・他大学研究機関等に勤務する本研究科の卒業生と研究科所属の関係教員であるが、法
科大学院や他分野の研究科(経済・経営等)・神戸大学以外の研究科在籍の研究者も入会できる。本会の活動
で特筆すべきは、法政策研究会が編集する形で『法政策学の試み(法政策研究)』という書籍を毎年度、信山
社出版から発行している点である。平成 10(1998)年以降、すでに 16 もの書籍が刊行されている(第一集か
ら第五集は阿部泰隆・根岸哲監修、第六集から第八集は根岸哲・井上典之監修、第九集から第十一集は泉水文
雄・井上典之監修、第十二集以降は泉水文雄・角松生史監修で発行)。
加えて、政治学・国際関係論分野については、神戸政治学研究会が毎月 1 回開催されている。これは、京都
大学・大阪大学を含め関西圏の各大学から発表者と参加者が多数集まってくる珍しい会である。同研究会につ
5
神戸大学法学部・大学院法学研究科
いては、海外で活躍している日本人研究者も年 2、3 回報告に訪れており、特に大学院生によい刺激をもたら
す良質の活動が続けられているといえる。
以上のほか、神戸大学公法研究会、判例刑事法研究会、神戸大学商事法研究会、神戸 IR(国際関係論)研
究会、神戸大学政治理論研究会などが活動している。
◆ゼミ活動を通じた学生海外派遣とグローバル展開(海外提携)
神戸大学法学部は通常大人数講義に偏りがちな法学部でありながら、質の高い少人数教育の提供を重視し、
3・4年次ゼミを中心に小規模のクラスで教育を行うことをモットーにしてきている。その結果、教授には必
ず半期に 1 コマはゼミ・少人数セミナー授業を持つことをルール化している。なお、こういったセミナー授業
は社会科学分野ではきわめて重要な「知の伝授の営み」である。特に、卒業論文を卒業要件としない法学部の
場合、セミナーでのレポートや報告文書作成がそれに代替するような教育効果を持ち、有効な教育手段となっ
ている。
ゼミ活動については、国際私法の齋藤ゼミは毎年 3 月に香港で開催される模擬国際商事仲裁国際大会(Vis
East Moot)に 2007 年から毎年参加している。また 2015 年にはシドニーで行われた Law Asia Moot に、2016
年春には模擬仲裁日本大会及びエディンバラと上海でそれぞれ開催される模擬仲裁大会にも参加する。2012
年の Vis East Moot では、同ゼミメンバーが総力を上げて作成した英文の準備書面が佳作に選ばれた。また、
第 3 回模擬仲裁日本国内大会(平成 22(2010)年)で優勝している他、これまでに数名が優秀弁論者賞を受
賞している。
他方、法学部には相対的に国内に目の向いた「内向き」の学生が多いとされるが、神戸大学法学部はグロー
バルな場で活躍する人材育成を目的と掲げ、多くの海外大学と学部・研究科レベルでの協定を結び、学生や教
員の交流・交換を積極的に進めている。
◆国際研究集会の開催と国際共同研究の実施
本研究科は頻繁に国際研究集会を開催しているが、これも他大学・他学部との比較において特筆すべきであ
る。EUIJ に関連して、たびたび欧州からゲストスピーカーが来学して講演している。このほか、エコノリー
ガル・スタディーズ(ELS)プログラムと関連し、平成 22(2010)年 10 月にはノーベル賞受賞者(平成 21(2
009)年)受賞)であるオリバー・E・ウィリアムソン教授を招聘し、講演会を開催した。また、平成 23(201
1)年 2 月にはハーバード大学の J.マーク・ラムザイヤー教授による講演会も実施した。その後も年数回の
ペースで講演会を実施し、直近では、ニューヨーク大学のカトリーナ・ワイマン教授による講演会を実施した。
こういった講演会の開催は ELS プログラムの学生を中心に勉学の意識啓発に繋がっている。
このほか政治学分野では、エセックス・神戸セミナーとして、英国の国際関係論研究者と日本の研究者が、
具体的な研究テーマに関して共同研究を推進し、国際雑誌で英語論文を発表する試みが進められている。
◆六甲台の5部局の連携による分野横断的な社会科学研究・教育の推進
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神戸大学法学部・大学院法学研究科
神戸大学六甲台キャンパスに位置する社会科学系の 5 部局(法学研究科、経済学研究科、経営学研究科、国
際協力研究科、経済経営研究所)は、連携して、学生の教育に当たっている。上記の法経連携プログラムはそ
の一例であるが、これらの部局は、一貫して、幅広い単位互換を認め、各部局における高度の専門教育を他学
部の学生も享受し、幅広いニーズに応える教育体制を一貫して維持してきた。
さらに、このような社会科学系部局の教育研究における連携は、平成 24(2012)年度より設置された社会
科学系教育研究府によって、より強固なものとして実現されることとなった。経済学研究科や経営学研究科と
は、法と経済学や政治経済学といったテーマ、国際協力研究科とは国際関係論・国際関係法と国際協力学分野
の融合といった側面で今後分野横断的な社会科学研究および教育を推進する考えである。
本学の社会科学系部局は、いずれも各専門領域において高い評価を受けているところであるが、このような
高い評価を有する各専門領域が共同して教育、研究等に当たる態勢ができていることは、本研究科を含む本学
社会科学系部局の特色、強みであるといえる。
7
神戸大学法学部・大学院法学研究科
2.最近における特記事項
以下にまとめたように、大学改革推進等補助金や特別経費を継続的に獲得し、法科大学院・法学研究科(研
究者養成)・学部の教育改善を積極的に進めている。法科大学院については、常に最上位グループの成績(合
格率ベース)を収めており、その質の高さには定評がある。このほか、パブリック・コミュニケーション・セ
ンター(PCC)の利用者のうち、藪恭兵氏(大学院修士課程 2 年)のように、外務省主催の大学生ディベート
大会に参加して最優秀賞である外務大臣賞を受けるようなケースが出てきており、推進するプロジェクトが着
実に成果をあげている。
◆平成 20(2008)年
■大学改革推進等補助金
専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム(19,200 千円)
概要 :法科大学院教育における総合法律教育の重要性と、そうした総合法律教育における手法
や教材に関する過去の蓄積が十分でないことを踏まえ、神戸大学法科大学院における総合
法律教育の実践を通じて、同教育に関する手法と教材の開発を行い、その成果を本学のみ
ならず、他の多くの法科大学院においても活用可能な一般的なモデルとして公開、提供す
ることを企画した。このため、法領域を横断する民事法総合、実務刑事法総合等の科目を
検証・改変し、新たな総合法律教育のパイロット授業を実施し、それに関わる研究会や公
開模擬授業を実施した。プロジェクトの成果物として、大内 伸哉(編著)『働く人をと
りまく法律入門』ミネルヴァ書房を刊行した。
■大学改革推進等補助金
質の高い大学教育推進プログラム(13,042 千円)
概要 :本学法学部における学士力-具体的には法学政治学の専門的知識を、各自の進路あるい
は市民生活の場において適切かつ有効に活用し、社会に存在する様々な問題を解決する力
-の育成・向上を図り、本学部の教育目的である「高度に専門化した社会における要請に
対応しうる問題解決能力を有した人材」及び「急激に進展しつつある国際的環境のもと、
法的・政治的な領域について国際的な貢献を行う能力を有した人材」の養成に資すること
を目指した。そのため、(1)政策判断能力育成のためのカリキュラム編成、(2)プレゼンテ
ーション能力の向上推進、(3)学部内 GP 展開のための総合的支援推進、(4)FD 及び質的評
価のための「教育カルテ」整備の4つの事業を行った。また、新規授業科目の実施、支援体
制の本格運用、新評価法の施行等、法学部における取組の充実・発展を図り、本取組を全
学の先導的取組とすることにより、本学の掲げる教育憲章ならびに神戸大学ビジョン 201
5 に掲げる人材養成機能の強化を図った。
8
神戸大学法学部・大学院法学研究科
■法科大学院・新司法試験成績
全国 4 位(合格率 54.7%)
◆平成 21(2009)年
■大学改革推進等補助金
質の高い大学教育推進プログラム(14,000 千円)
■法科大学院・新司法試験成績
全国 4 位(合格率 49.0%)
◆平成 22(2010)年
■大学改革推進等補助金
質の高い大学教育推進プログラム(13,750 千円)
■法科大学院・新司法試験成績
全国 9 位(合格率 34.0%)
■第 3 回模擬仲裁日本国内大会において齋藤ゼミ(国際私法)が全国優勝
◆平成 23(2011)年
■特別経費
ジャーナリズム・プログラムの拡充による国際公共人材の育成拠点形成(22、210 千円)
概要 :法学政治学の専門性と日英両言語での高いアウトプット発信能力を有した国際公共人材
を育成するための教育拠点を構築するため特別経費を申請し、プロジェクトを開始した。
具体的には、①学年や学部と研究科の垣根を越えて学生が集まって、法や政治にかかわる
取材や学外活動を企画する能動的教育を重視し、②英語による情報発信力教育を拡充して
プレゼン能力の認定制度を整えていくことを目指している。平成 23(2011)年度は英語
によるプレゼンテーション、国際公共問題に関わる授業を増設し、学生による自主企画(取
材等)を募集・実施した。加えて、事業実施主体となる法学研究科附属パブリック・コミ
ュニケーション・センターを開設した。平成 24(2012)年度以降は 23 年度の取組を改善
し、学部と大学院、留学生、学年の垣根を超えた「しなやかな人的ネットワーク」の定着
をはかり、カリキュラムだけでは得られない教育の仕組みを構築しつつある。
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神戸大学法学部・大学院法学研究科
■法科大学院・新司法試験成績
全国 5 位(合格率 46.6%)
◆平成 24(2012)年
■特別経費
ジャーナリズム・プログラムの拡充による国際公共人材の育成拠点形成(21,387 千円)
外務省主催「大学生国際問題討論会 2012」において本研究科院生(藪恭兵氏)が外務大臣賞を受賞
■法科大学院・新司法試験成績
全国 5 位(合格率 45.8%)
◆平成 25(2013)年
■特別経費
ジャーナリズム・プログラムの拡充による国際公共人材の育成拠点形成 (18,385 千円)
■法科大学院・新司法試験成績
全国 10 位(36.8%)
◆平成 26(2014)年
■特別経費
シチュエーショナル・トレーニングプログラムによる法学政治学の新展開(29,958 千円)
■国立大学改革強化推進補助金
事業化までを見通した最先端教育研究の推進とグローバルビジネスリーダーの育成(法学研究科分
3、248 千円)
■法科大学院・新司法試験成績
全国 9 位(30.8%)
◆平成 27(2015)年
■特別経費
シチュエーショナル・トレーニングプログラムによる法学政治学の新展開(25,464 千円)
神戸-ASP(ASEAN Plus)社会科学系教育交換センター次世代型ビジ ネスネットワークリーダー
10
神戸大学法学部・大学院法学研究科
の育成(27,889 千円)
■国立大学改革強化推進補助金
事業化までを見通した最先端教育研究の推進とグローバルビジネスリーダーの育成(法学研究科分
62,512 千円)
■法科大学院・新司法試験成績
全国 4 位(48.3%)
11
神戸大学法学部・大学院法学研究科
3.地域貢献
◆神戸新聞との連携による神戸地域講座・地域ジャーナリズム・ワークショップの開催
この事業では、兵庫県を中心に各方面で活躍されているゲストスピーカーを招聘し、その講演についての概
要記事を、神戸新聞社の論説委員や記者の指導を受け、学生が執筆する。記事は神戸新聞において順次掲載さ
れ、講演取材(要約)結果が広く地域社会に還元されている。
平成 27(2015)年度のゲストスピーカーは、牧秀一(神戸市東灘区の「よろず相談室」理事長)、田中浩
一(プロバスケットボール「HYOGO STORKS」代表)、藤井さち子(神戸学マイスターのボランテ
ィアガイド)、後藤正治(ノンフィクション作家)、奥平綾子(篠山市で発達障害児と家族の支援活動に取り
組む会社「おめめどう」代表)、高橋一郎(宝塚大学准教授・映画監督)の各氏である。
◆法学研究科による公開講座
法学研究科では研究科主催の公開講座を地域住民向けに開催してきた。平成 21(2009)年 7 月から 8 月に
かけて、主に政治学・国際関係論の教員が講義を担当して神戸大学公開講座を開催した。申し込み 205 名のう
ち、6 回中 4 回以上の受講を完了した住民が 147 名にのぼった(うち神戸市民は 77 名)。たとえば、曽我謙
吾教授は「強くなった日本の首相?小泉政権とそれ以降」というタイトルで講演を行い、一般市民にわかりや
すく現代日本政治に関する解説を行い、好評を得た。この種の企画は、神戸大学法学部・法学研究科が地域社
会に対してその存在意義を示す重要な機会ととらえ、聴衆のニーズを強く加味して企画を立てることにしてお
り、直近では、平成 26(2014)年度には「現代社会における家族の意味と役割−法の視点から」というテーマ
のもと神戸大学公開講座を開催した。
◆法律相談部
昭和 32(1957)年から継続的に活動を続けており、現在は神戸大学学生学会(学術的研究課外活動団体の
連合体)に属する公認課外活動団体である。顧問として池田千鶴教授が数十名の学生を指導し、毎週土曜日 1
4 時から 15 時半に定例法律相談会をこうべ市民福祉交流センターなどで実施している。定例相談会以外に他
都市で年に 2 回、移動法律相談と出張法律相談を開催している。地域社会に対する貢献を果たす学生主導の活
動として特記できる。
なお,平成 27 年(2015)年は,12 月 1 日までに 108 件の通常日程での相談に応じ、同 8 月の移動法律相談
(香川県・愛媛県で開催)では 91 件、10 月実施の出張法律相談(奈良県で開催)では 6 件の相談を受けた。
◆神戸大学法科大学院リーガルフェロー制度を通じた地域法曹と研究者・学生とのネットワーキ
ング
12
神戸大学法学部・大学院法学研究科
実務法律家を輩出する法科大学院の使命を全うするにあたり、現役の法律実務専門家と在籍学生のネットワ
ークを構築することが「神戸大学法科大学院リーガルフェロー」制度を通じて実施されている。具体的には、
平成 22(2010)年 4 月以降、法科大学院における教育・学修支援及び進路指導の推進に協力するのに相応し
い高い見識と経験を持つ学外の専門家に対してリーガルフェローの称号を付与し、継続的に教育指導を仰いで
いる。フェロー制度はフェロー間のネットワーキングにも一定の役割を果たしており、関西地域の法曹関係者
同士、そして彼らと大学研究機関との橋渡し機能を果たしている。平成 27 年現在、延べ 167 人のフェローが
在籍している。
◆サマーセミナーの開催
平成 23(2011)年度、神戸法学会が主催する形態で「サマーセミナー」を開催した。神戸大学大学院法学
研究科の日頃の研究・教育活動を紹介し、その成果を特に関西の法曹界に還元することを目的とした。兵庫県
弁護士会からは継続研修該当研修の認定を、大阪弁護士会からは研修義務化対象講座としての認定を受けた。
具体的には、労働法、独占禁止法、知的財産法、医事法、民法の各法分野について近時の動向 (立法や裁判例)
を理論的観点から検討・解説した。このようなサマーセミナーの開催は本研究科の独自性として特記できる。
◆地方自治体等における活動等
法学研究科の教員が有する専門知識をいかした活動として、地方自治体における各種委員等がある。これに
ついては、兵庫県個人情報保護審査会、同労働委員会、神戸市情報公開審査会、同保健医療審議会等、兵庫県、
神戸市及び近隣の都道府県、市町村を中心に、非常に多くの教員が積極的に参加している(本資料・項目4を
参照)。また、選挙研究を専門とする品田裕教授は、投票啓発等のための講演を関西各地で行っている。
【統計資料:関西・兵庫県・神戸市における地方自治体の活動への関与】
関西地域の公共団体に関する審議会・審査会・委員会(兵庫県・神戸市関係除く) 8 名
兵庫県関係の審議会・審査会・委員会のメンバー
10 名
神戸市関係の審議会・審査会・委員会のメンバー
11 名
出典:本資料項目4の記載情報の集約
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神戸大学法学部・大学院法学研究科
4.各界・メディア等で活躍している教員・卒業生
本研究科のスタッフはそれぞれの専門領域の専門家として、メディアにおいて多くのコメント、インタビュ
ーを求められている。たとえば、品田裕教授や泉水文雄教授、大内伸也教授、島並良教授等が、それぞれの分
野における高名な研究者として一般紙への寄稿、コメント等に応じている。
また、それぞれの専門領域で中心的な役割をつとめている研究者も多い。各学会との関係でいえば、きわめ
て多くのスタッフが、学会の理事長、理事をつとめている。また、各専門領域において司法試験委員、国家公
務員試験専門委員、法制審議会委員、科学研究費委員会専門委員等多数活躍している。
◆卒業生
さらに、卒業生も多様な分野において活躍している。たとえば、サントリーの元社長・元会長である故鳥井
信一郎氏が昭和 38(1963)年に法学部を卒業しているように、財界の中核を担う人材を輩出している(最近
では、平成 22(2010)年から神戸新聞の取締役社長に就任した高士薫氏が本学法学部の卒業生である)。こ
のほか、各企業の中堅を担う人材も多数輩出しているが、特に法務関連の業務に従事している人材が多い。ま
た、政界については、衆議院議員・参議院議員として多数の卒業生が活躍中であることに加え、地方政界でも、
地方自治体首長や議員として多数の学部・大学院卒業生が活躍している。
研究者の輩出という観点でみれば、本研究科の果たしている役割はきわめて大きい。博士論文を本研究科に
提出した卒業生の多くは、同論文を著書にまとめ、それらが学会賞や社会科学系の表彰を頻繁に受けている。
たとえば、村田晃嗣氏:第 2 回読売論壇新人賞優秀賞【平成 8(1996)年】、サントリー学芸賞【平成 11(1
999)年】、アメリカ学会清水博賞【平成 11(1999)年】、吉田茂賞【平成 12(2000)年】のほか、村井良太
氏:サントリー学芸賞【平成 17(2005)年】、楠綾子氏:吉田茂賞【平成 23(2011)年】、井上正也氏:サ
ントリー学芸賞【平成 23(2011)年】などである。博士論文をもとにした著書がこのように頻繁に表彰され
ている研究科は日本でもきわめてまれであり、本研究科の教育の質の高さを物語っている。
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