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10 栄養素の機能と代謝(6)ミネラル(ノート)
10 栄養素の機能と代謝 3-8 ミネラルの機能/3-9 水の機能 Ca濃度を高めようとする。 3-8 ミネラルの機能 • 骨は吸収と形成を繰り返し、活発に代謝している。 • 人体を構成する元素の96%は水素(H)、炭素 • 成長期には運動と十分な栄養で骨密度が増加。 (C)、窒素(N)、酸素(O)である。これ以外を総 • 最大骨塩量(ミネラル量)は20∼30歳で得られる。 称してミネラルという。 • 閉経後・老齢期で骨量は減少。この時期にCa摂取量が • 必須ミネラルは16種が知られている。 不足するとPTHが分泌されて骨吸収が亢進し、骨粗鬆 • 体内に10g以上含まれ、1日の必要量が100mg以上の 症のリスクが高まる/運動と十分な栄養補給で骨量の 主要ミネラル:カルシウム(Ca)、リン(P)、カリ 減少は抑制される。 ウム(K)、イオウ(S)、塩素(Cl)、ナトリウム • 日本ではCaの平均摂取量は目標量を下回っている。 (Na)、マグネシウム(Mg)の7つ。 • それ以外のミネラル(微量元素):鉄(Fe)、亜鉛 リン(P) (Zn)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ヨウ素(I)、 • 約85%が骨・歯に存在。他は細胞膜のリン脂質、核 セレン(Se)、モリブデン(Mo)、コバルト 酸、ATP(アデノシン3リン酸)の成分として存在。 (Co)、クロム(Cr)。 • 細胞内の主要な陰イオン(陽イオンはカリウム)。 • リンは加工食品や清涼飲料水に多く含まれている。 (1)骨とミネラル • カルシウムとリンの比率は1:2∼2:1が望ましい。カル カルシウム(Ca) シウムが不足気味なのに対してリンは豊富に摂取でき • Caは体重の約2%、リンは体重の約1%。体内に多く存 るので不足よりも摂り過ぎに注意。 在するミネラル。 • Caの99%はリンとともに骨に存在(リン酸カルシウ マグネシウム(Mg) ム:ヒドロキシアパタイト)し、1%は血液や細胞外液 • 50∼65%は骨に存在し弾性維持に関与。約30%は筋肉 に含まれ血液凝固、神経刺激、筋肉収縮などの生体機 細胞内に存在。 能調節に関与。 • 約300種類の酵素反応に関与。 • 骨:支持組織であると同時にCaの貯蔵庫。 • 通常の食品以外からの摂取上限量は350mg。 • 血漿中Caは約10mg/100mLに、以下のように維持され ている/Caの(1)骨から血中への溶出(骨吸収) (2)鉄の機能と代謝 (2)腎臓からの尿中排泄(3)腸管での吸収(図 • 赤血球の血色素(ヘモグロビン)の成分/体内鉄 7)。 (2.3∼3.8 g)の約65%はヘモグロビンと結合。 • 血漿中Ca濃度が低下すると/副甲状腺ホルモン • 筋肉ではミオグロビンと結合して筋肉内の酸素の受け (PTH)が分泌され、(1)骨吸収が刺激され(2) 渡しに関与。 腎臓ではCaの排泄を低下させるとともに(3)ビタミ • ミトコンドリアではチトクロムCなどの酵素(エネル ンDを活性化してCaの腸管吸収を高めることで、血漿 ギー生産)の成分。 37 10 栄養素の機能と代謝 3-8 ミネラルの機能/3-9 水の機能 • この他、フェリチンなどと結合して肝臓、脾臓、骨髄 • 鉄欠乏の3つの進行段階(図8) に貯蔵されている。 1. 貯蔵鉄が低下(血清フェリチン濃度の低下、潜在性 • 健常成人男子:貯蔵鉄600∼1,000mg、組織鉄は約 鉄欠乏) 500mg、血清鉄は約3mg。 2. 血清鉄飽和度の低下(早期鉄欠乏) • 骨髄でヘモグロビンに合成→赤血球として血液中を循 3. 血中ヘモグロビンが低下(鉄欠乏性貧血) 環(約120日間)→脾臓で分解→再びヘモグロビン合 • 食品中の鉄:ヘム鉄(動物性食品)と非ヘム鉄(植物 成に利用される。 性食品)があり、ヘム鉄のほうが吸収率が高い。 • 体外への排泄:出血以外には、胆汁や腸管剥離細胞に • 非ヘム鉄は吸収率が低いが、肉・魚・ビタミンCとと 含まれて排泄。 もに摂取すると吸収率が上昇する。 • 血中ヘモグロビン濃度が12g/100mL未満を貧血。 • 体内の鉄貯蔵量が少ないと鉄の吸収率は上昇する。 • 血清フェリチン濃度は貯蔵鉄量の鋭敏な指標。1μgが • 女性の80%以上が鉄の摂取不足。 貯蔵鉄8∼10mgに相当。 • 上限量0.8g/kg体重/日。過剰で鉄沈着症。 38 10 栄養素の機能と代謝 3-8 ミネラルの機能/3-9 水の機能 (3)電解質としての機能の調節 イオウ(S):含硫アミノ酸(メチオニン、システイ ナトリウム(Na+)と塩素(Cl-) ン)の構成成分なので、たんぱく質が不足していなけれ • 細胞外液の主要な電解質。細胞内外の水分量の平衡、 ばイオウが不足することはない/グルタチオン、インス リン、チアミン、ビオチン、CoAの構成要素。 浸透圧の調節、酸塩基平衡(pH調節)などに関与。 • Naが不足することはほとんどなく、むしろ過剰摂取に コバルト(Co):ビタミンB12の構成要素。 よる高血圧・胃がんの発症リスクの上昇が懸念。 • 血圧を上昇させない食塩摂取量は3∼5g/日の範囲 で、日本高血圧学会の指針では7 g/日。 9 水の機能 • 日本人の食塩摂取量(中央値)は成人男子が約11g/ 日、成人女子が約10g/日。目標量は男子が10g/日未 (1)水分の分布 満、成人女子が8g/日未満。 • 標準的な成人では体重の60%が水分/細胞内液が 40%、細胞外液が20%。 • 細胞外液のうち、体重の約5%が血漿(血液の液体部 カリウム(K+) 分)。他は細胞間や組織間に存在。 • 細胞内液の主要な電解質 • 交感神経の抑制、Na排泄促進、血管拡張などの作用で (2)水の機能 血圧低下。 • 種々の物質の運搬。 • 野菜、果物などから十分量(3,500mg/日)を摂るこ • 体温の保持や調節(比熱が高いので好都合)。 とが望ましい。 • 視覚(レンズ)や聴覚(内耳の水)に関与。 • 神経の興奮性の維持や筋肉収縮を調整する役割もあ • 関節腔で潤滑剤。 る。 • 電解質により浸透圧の平衡を保ち、細胞の形態を維 (4)酵素反応の活性化作用 持。 • 酵素の構成成分あるいは活性化因子:銅(Cu)、亜鉛 (Zn)、マンガン(Mn)、セレン(Se)、モリブデ (3)水分出納 ン(Mo)。 • 1日に1 / 20が置き換わるが、体水分量はほぼ一定 で、1日の変動は1%以下。 銅(Cu):鉄の代謝や輸送に関与。銅の欠乏で貧血、 • 成人の水の出納は1日に2∼3 L。 白血球減少、骨・皮膚の異常。 入 亜鉛(Zn):細胞の成長と分化に関与。欠乏の影響は代 謝回転の速い組織に現れる。欠乏で皮膚炎、創傷治癒 遅延、味覚障害、食欲不振、慢性下痢、血球減少、成 長障害。 出 飲料水 1,200 mL 尿 1,300mL 食物 800 mL 大便 100 mL 代謝水 300 mL 不感蒸泄 900mL (不可避尿) (500 mL) マンガン(Mn):骨、肝臓、腎臓に多い。植物性食品 に豊富で、特に茶葉に多い。 セレン(Se):酵素の構成成分。克山病:心臓疾患。セ (4)脱水 レンの少ない土地で収穫された作物を摂取したために • 体水分の1%程度の低下から喉の渇きを感じ、2%程度 セレンが欠乏/魚介類、肉類、卵黄に豊富なので日本 の不足で頭痛、めまい、吐き気、低血圧、倦怠感など で欠乏することはない。 の脱水症状が現れる。 • 高張性脱水:電解質よりも水分が多く失われて、体液 (5)その他のミネラル が高張になる脱水/発汗や水分摂取不足など/下垂体 クロム(Cr):インスリン作用を増強/脂質代謝維持に から抗利尿ホルモン(ADH、バソプレッシン)が分泌 必要。 され、口渇が現れるとともに尿細管での水の吸収を促 進して尿量を減少させる。 ヨウ素(I):甲状腺ホルモン(基礎代謝に関与)の構成 • 水のみを大量に摂取させると細胞外液の浸透圧が低下 成分/海藻に豊富なので日本で不足することはない/不 (低張性脱水)し、水分が細胞内などへ移行する。こ 足(甲状腺機能低下症)でも過剰(甲状腺機能亢進症) のため、塩分(ナトリウム)を補給する必要がある。 でも健康上の問題がある。 • 低張性脱水:水分よりも電解質が多く失われて体液の 浸透圧が低張になる脱水。 39 10 栄養素の機能と代謝 3-8 ミネラルの機能/3-9 水の機能 • 乳幼児:腎機能が未熟なため水を失いやすく(濃縮力 ミネラルの欠乏症 が弱いので水を多く排泄してしまう)、高温時の発汗 • マンガン:経口的に食品を摂取している人での欠乏症 も多いので脱水しやすい。 の報告はないが、中心静脈栄養を受けている1例で、 • 高齢者:体内の予備水分量が少なく、喉の渇きも感じ 血清のマンガン低値を伴う欠乏症が報告されている。 にくく水分を摂らないので脱水しやすい。 • クロム:完全静脈栄養法下のクロム欠乏は・・・ • 腎臓機能に異常があり水が排泄できないと、体液が過 • モリブデン:長期完全静脈栄養施行中症例のみにモリ 剰になる(浮腫、むくみ)。浮腫の部位は皮膚を押さ ブデン欠乏症が発生している。 えるとくぼみができる。下肢や顔面、特にまぶたに現 れやすい。 • (脱水量は体重減少量で分かる:体重50 kgのヒトが運 動後に体重が1 kg減少していたら、ほぼ1 Lの水分が体 から失われている。体重の2%(1kg 50kg 100= 2%)の脱水という) ミネラルにはこんな作用も・・・ Ca 不足で怒りっぽく Zn 不足で味盲 K 過剰で心臓停止(腎透析患者 果 物の多食で心停止) Cu, Zn, Mn 抗酸化酵素SODの成分 Se グルタチオンペルオキシダーゼ (抗酸化)の成分 Mg にがり Caとの比 1:2∼2:1 P I (Caは不足気味 vs Pは過剰気 味) 甲状腺ホルモンの成分:基礎代 謝、過剰でやせ、不足で体温低 下 体内のミネラルの存在割合 40