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⑦ 折り紙で三角形の外心・内心を探そう
⑦ 折り紙で三角形の外心・内心を探そう <教材観> ・コンパスと定規を用いる作図よりも、折り紙による作図のほうが優れている点は、各辺の垂 直二等分線や内角の二等分線(折り目)が簡単に引けるところである。また、折り紙を広げ たときに、3 本の折り目が実際に1点で交わることを見ることによって、外心や内心が強く 印象に残るに違いない。 ・「重心・外心・内心」の作図方法は、機械的に暗記させるのでなく、「重心・外心・内心」と いう言葉の使い方から、その性質を考えさせ、それぞれの作図方法(中線、垂直二等分線、 角の二等分線を引く。)が必然的に思い出されるようになってほしい。 ・余力のある生徒には、四角形や五角形、また四面体などの空間図形にも発展させて考えさせ たい教材である。 <指導観> ・折り紙での作業を通して、図形の性質を考えさせることによって、学習への興味・関心を持 たせることを重視する。また、図形の性質を論理的に考察し、的確に表現する能力も身につ けさせたい。 ・外心や内心について、数冊の教科書を調べたところ、「はじめに外心や内心の作図方法を提示 し、その後で外心や内心の特徴を考える。」という展開がほとんどであった。これとは逆に、 本時では「こういう特徴を持っている点はどういう点だろう。」という課題から出発する展開 をし、生徒が考える場を設けることにした。 ・ 「定理の提示のあとに証明の解説」という講義調の授業ではなく、実験や作業を取り入れるこ とにより、「重心・外心・内心」に関する理解を深め、それらの知識を定着させることが期待 できる。 <学習指導案> 指導対象学年 1 年 場所 教室 科目名・単元名 数学 A・平面図形 使用教材 教科書 折り紙 厚紙 三角形や円などの基本的な図形の性質についての理解を深め、図形の見方を 単元の目標 豊かにするとともに、図形の性質を論理的に考察し処理できるようにする。 学習目標 外心・内心の性質を理解し図示できるようにする。 ・簡単な作業を通して、図形の性質を調べようとしている。 (関心・意欲・態度) ・「重心・外心・内心」という言葉の使い方から、その性質を考える。 評価規準 (数学的な見方や考え方) ・「重心・外心・内心」の意味が理解できる。 (知識・理解) ・「重心・外心・内心」が図示できる。 (表現・処理) 本 時 の 展 開 指導上の留意点 過 学習項目 学習活動 観点別評価 程 指導のねらい (□:指示・説明 ○:発問・活動) (⇒:評価方法) 導 前 時 の 復 習 を ○適する語・数値を入れて完成しよう。 ・重心という言葉の使い方 入 する。 からその性質を考える。 「三角形の3つの 線は1点で交わ り、その交点を 心という。 (数学的な見方や考え方) ・重 心 の 意 味 が 理 解 で き 心は 線を : の比に る。 (知識・理解) 内分する。」 ⇒生徒の取組を観察する。 ○<実験>厚紙から切り取った三角形を 数学的知識の 指で支えてみよう。 意味付け・活用 (重心を求めずに、まずは山勘で数回挑戦 の場面 させる。その後に、きちんと重心を求め 展 開 させ、重心では水平に保たれることを確 認させる。) 課 題 1 を 理 解 <課題1> ・3つの頂点から等距離に する。 三角形 ABC の3つの頂点から等距離 にある点を求めてみよう。 ある点の求め方をまとめ る。 □外心、外接円について説明する。 垂 直 二 等 分 線 ○条件を緩くした、「2点 B,C から等距 ・必要な場合は、ヒントを の性質を確認 与える。 離にある点はどこか。」について、考え する。 てみよう。 数学的考察・処 理の場面 折り紙を使っ て外心の性質 を調べる。 数学化の場面 外心の性質を 論理的に考察 する。 ○それでは、3 点から等距離にある点はど こか。 □「三角形の各辺の垂直二等分線の交点を 求めればよい」(☆)ことに気づかせ、 折り紙を利用して、(☆)を確認させる。 ○折り紙で外心を探そう。 (1) 折り紙から三角形を切り取る。 (2) 各辺の両端を合わせて折り目をつけ る。 (3) 3 本の折り目をつけてから、もとの三 角形へ広げる。 (4) できた3つの線の交点が求める点 (5) クラス全員が「3つの線は1点で交わ った。」か挙手で確認。(鈍角三角形の 場合は、3つの線の延長上に交点がで きる。) ○OA=OB=OC を確認してみよう。 (6) 外心と各3つの頂点を結んで線(半 径)を引き、その線を合わせると、ぴ ったり重なる。 →外接円の半径が等しいことが折り紙 で確認できる。 □論理的な証明を説明する。「三角形の 3 辺の垂直二等分線は1点で交わる。」→ 「外接円をかくことができる。」 <課題2> 三角形 ABC の3辺から等距離にある 課題2を理解 点を求めてみよう。 する。 ・簡単な作業を通して、図 形の性質を調べようとし ている。 (関心・意欲・態度) ⇒机間指導により生徒の取 組を観察する。 ・外心という言葉の使い方 から、その性質を考える。 (数学的な見方や考え方) ・外 心 の 意 味 が 理 解 で き る。(知識・理解) ・外心が図示できる。 (表現・処理) ⇒机間指導により生徒の取 組を観察する。 ・外 心 に つ い て は 説 明 す る。次の内心については 生徒に論理的に証明させ る。 ・必要な場合は、ヒントを □内心、内接円について説明する。 与える。 角 の 二 等 分 線 ○条件を緩くした、「2 辺 BA,BC から等 ・生徒から考えを引き出し 距離にある点はどこにあるか。」につい の性質を確認 ながら、求め方をまとめ て、まず考えてみよう。 する。 る。 ○それでは、3辺から等距離にある点はど こか。 □「三角形の3つの内角の二等分線の交点 を求めればよい。」(★)ことに気づか せ、折り紙を利用して(★)を確認させ ・簡単な作業を通して、図 る。 形の性質を調べようとし ○折り紙で内心を探そう。 ている。 数学的考察・処 (1) 折り紙から三角形を切り取る。 (関心・意欲・態度) 理の場面 (2) 各頂点を先頭に隣り合う辺と辺を合 わせて折り目をつける。 (3) 3 本の折り目をつけてから、もとの三 角形へ広げる。 (4) できた3つの線の交点が求める点(内 心)。 (5) クラス全員が「3つの線は1点で交わ った。」かを挙手で確認。 ○内心と各辺との距離が等しいことを確 認してみよう。 (6) 内心を頂点にして3辺を合わせると、 ぴったり重なる。 →内接円の半径が等しいことが折り紙 で確認できる。 数 学 化 の 場 面 ○「三角形の 3 つの内角の二等分線は1点 で交わる。」→「内接円をかくことがで 内心の性質を きる。」を論理的に証明してみよう。 論理的に考察 □証明は生徒に板書させる。説明も生徒に する。 させる。 折り紙を使っ て内心の性質 を調べる。 ⇒机間指導により生徒の取 組を観察する。 ・内心という言葉の使い方 から、その性質を考える。 (数学的な見方や考え方) ・内 心 の 意 味 が 理 解 で き る。(知識・理解) ・内心が図示できる。 (表現・処理) ⇒机間指導により生徒の取 組を観察して評価する。 ・内心という言葉の使い方 から、その性質を考える。 (数学的な見方や考え方) ⇒板書・発表を通して評価 する。 ま と め 本 時 の ま と め □<課題>(レポートを提出させる。) ・重心・外心・内心の定義 と課題の提示 重心・外心・内心について定義や性質 や性質を考える。 をまとめておこう。インターネットで重 (数学的な見方や考え方) 心・外心・内心を検索し、さらに発展的 ⇒レポートに基づき評価す る。 に学習しよう。 <解説> (1)平面図形に関する内容は、新学習指導要領から高等学校で教えることになった内容であ る。高校の教員にとっては、これらを基礎から教えるのは初めての経験になるので、十分 に準備して授業に臨まなければならない。 (2)インターネットで内心や外心を検索すると、「折り紙で作る内心・外心」が見つかり、こ のホームページのものと本時の授業内容はほぼ同じであった。この他にも、「砂が教える内 心・外心」「塩で幾何学」など授業の参考になるような実践例・応用例をいろいろと見つけ ることができる。これらを十分に研究して、授業の教材として取り入れるとおもしろい。 「塩で幾何学」に紹介されていることを、実際に実験してみたところ、内心や外心と見 事に一致し、とても楽しい気分になれたので、生徒にもぜひ経験させたい。ここに内容の 一部を紹介する。 三角形の厚紙を(コップが三角形の中に隠れるように)逆さまにしたコップにのせて、 その上にまんべんなく塩を降らせると、三角錐ができる。この頂上の真下の点が、三角形 の内心となる。 三角形の内心に印をつけておく 三角錐の頂上の真下が内心 (3)三角形には、五心(重心・外心・内心・垂心・傍心)があり、旧学習指導要領ではこの 五心について一通りの説明がなされていたが、新学習指導要領では、垂心・傍心が割愛さ れ、三心だけの扱いとなった。しかし、それほど負担にならないと判断できるような場合 には、垂心については、発展的に学習しておいてもよいのではないかと考える。なぜなら、 垂心が関係するものとして、「3垂線は1点で交わる」や「オイラーの定理」があり、これ らには座標幾何やベクトルを使った証明もあるが、平面幾何ならではの証明があり、これ らの証明には「おもしろい」「美しい」「すごい」といったような数学的好奇心を刺激する ものがあるからである。 ・「3垂線は1点で交わる」の証明 $ 5 ) 4 ( 頂点 A、B、C から対辺 BC、CA、AB またはその延長上に下ろした垂線を、 それぞれ、AD、BE、CF とする。 % ' また、A、B、C を通り、対辺に平行な 直線を引き、△PQR を作る。 このとき、 四角形 BCAR と四角形 BCQA は平行四辺形となるので、A は辺 QR の中 3 点で、AD は辺 QR の垂直二等分線である。 同様に、BE は辺 RP の垂直二等分線、 CF は辺 PQ の垂直二等分線である。 よって、3垂線 AD、BE、CF は△PQR の外心で交わる。 (証明終) & ・オイラーの定理 △ABC の外心 O、重心 G、垂心 H は一直線上にあり、OG:GH=1:2である。 証明1 $ △ABC において、辺 AB の中点を M、 外心 O を通る直径を BD とする。 また、外心O、垂心Hに対して、CM と OH の ' 交点を G’とする。(この G’が△ABC の重心と一 0 致することを以下に示す。) まず、H は垂心より + 2 * BC⊥AH・・・① AB⊥CH・・・② 次に、BD が直径より、 BC⊥DC・・・③ AB⊥DA・・・④ % & ①③より AH//DC ②④より CH//DA ゆえに、四角形 AHCD は平行四辺形である。 したがって、AD=CH・・・⑤ 次に△ABD に着目して、中点連結定理により、AD=2OM・・・⑥ ⑤⑥より、CH:OM=2:1・・・⑦ 次に、△CHG’と△MOG’について、 ∠G’CH=∠G’MO(錯角) ∠HG’C=∠OG’M(対頂角) よって△CHG’∽△MOG’・・・⑧ ⑦⑧より、CG’: G’M=2:1 したがって、G’は中線 CM を2:1に内分しているので、△ABC の重心Gと一致する。 以上のことから、3点外心 O、重心 G、垂心 H は一直線上にあり、 OG:GH=1:2が成り立つ。 証明2 外心 O、重心 G に対して、点 H’を 3点O、G、H’はこの順にあり、OG:GH’=1:2・・・①を満たすようにとる。 (この点 H’が△ABCの垂心と一致することを以下に示す。) BCの中点をMとする。 △OMGと△H’AGについて Gは重心より、GM:AG=1:2・・・② また、∠MGO=∠AGH’(対頂角)・・・③ よって、①②③より △OMG∽△H’AG A ゆえに、∠OMG=∠H’AG したがって、OM//AH’・・・④ また、Oは外心より、OM⊥BC・・・⑤ ④⑤より、AH’⊥BC・・・⑥ さらに、ACの中点をNとすると、 N △ONGと△H’BGについて O Gは重心より、NG:BG=1:2・・・⑦ G また∠NGO=∠BGH’(対頂角)・・・⑧ H よって、①⑦⑧より △ONG∽△H’BG C B M ゆえに、∠ONG=∠H’BG したがって、ON//BH’・・・⑨ また、Oは外心より、ON⊥CA・・・⑩ ⑨⑩より、BH’⊥CA・・・⑪ ⑥⑪より、点 H’は△ABCの垂心Hと一致する。 以上のことから、3点O、G、Hは一直線上にあり、 OG:GH=1:2である。