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特集に当たって
特集に当たって 本年の警察白書の特集テーマは、 「地域社会との連帯」である。 最近の刑法犯の認知件数は昭和期の約2倍の水準に達し、街頭犯罪・侵入犯罪や来日 外国人犯罪も増加するなど、国民は犯罪被害の不安をより身近に感じるようになってい る。他方で、治安悪化の一因に規範意識の低下や住民相互の人間関係の希薄化があり、 これらをいかにして改善するかが治安回復の鍵であるとの認識も一般的になりつつあ る。 こうしたことから、国民は警察に対し、街頭パトロール等地域社会に密着した活動の 強化を一層求める一方、防犯ボランティア団体の結成等により、自らの手で身近な犯罪 を抑止しようとする動きも広まっている。 また、治安の回復には、警察のパトロールや犯罪の取締りだけではなく、警察と関係 機関、地域住民が連携した社会全体での取組みが必要であることから、平成15年12月に 犯罪対策閣僚会議が策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」においても、 水際対策を始めとした各種犯罪対策のほか、犯罪の生じにくい社会環境の整備と、国民 が自らの安全を確保するための活動の支援を進めるべきことが示された。 警察では、国民と協力して地域の犯罪抑止を図るための施策や、国民が行う防犯活動 を支援するための施策を推進することが重要であるとの認識の下、こうした方向性を国 民に示し、理解を得たいと考えたことから、この特集テーマを選定したものである。そ こで、今回の特集では、全国各地の活動事例の紹介やアンケート結果の分析等により、 地域社会の安全をめぐる現状と課題を立体的に描くとともに、それに対処するための新 たな施策を提示することとした。 第1節では、交番・駐在所に関する国民の意識と現場の警察官の意見を紹介しつつ、 交番・駐在所に勤務する地域警察官の活動の様子や「空き交番」の解消策、交番機能の 強化策等を記述した。 第2節では、国民が行う防犯活動の支援や国民との様々な連携の実例を示すとともに、 防犯ボランティア団体の活動状況と参加者の問題意識を紹介し、その上で、国民の自主 的な防犯活動を促進するための新たな施策のあらましを記述した。 地域の犯罪抑止や防犯活動を進めることは、治安の回復にとどまらず、希薄化した地 域社会における連帯の再生にもつながるものである。本特集を通じ、「自らの安全は自 ら守る」という意識が国民の間で更に高まり、地域社会における様々な取組みと融合し、 豊かで住みよい社会が実現することを願うものである。 第 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 1 交番・駐在所の活動 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 交番・駐在所では、パトロールや巡回連絡等のあらゆる活動を通じて、管轄する地域の実態や 地域住民の要望を把握し、地域住民の要望にこたえるための活動を行っている。 また、昼夜を分かたず常に警戒体制を保ち、すべての警察事象に即応する活動を行うことにより、 地域住民の安全と安心のよりどころとなり、国民の身近な不安を解消する機能を果たしている。 (1)交番・駐在所の歴史 我が国に交番・駐在所が誕生したのは、明治時代である。 らそつ とんしょ 明治4年、明治政府は、東京で3,000人の羅卒(現在の警察官)を採用し、屯所(現在の警察署) を中心にパトロール等を行わせることとした。 らそつ その後、東京警視庁が設置された7年には、羅卒を巡査と改称するとともに、巡査を東京の各 「交番所」に配置した。ここでいう「交番所」には、当初は、現在の交番のような施設は置かれて とんしょ おらず、巡査が活動する場所として指定がなされているだけであった。巡査は、交代で屯所から 「交番所」まで行き、そこで立番等の活動を行った。 同年8月、東京警視庁がこの「交番所」に施設を設置することを決定し、そこを拠点に周辺地域 のパトロール等を行うこととなった。以降、施設の置かれた「交番所」が増えていき、14年には、 「交番所」は「派出所」と改称された。 「派出所」が全国に設置されるようになったのは21年のことであり、同時に、「駐在所」も設置 された。「派出所」の施設を拠点に交替制勤務を行う警察官と、「駐在所」の施設に居住しながら 勤務する警察官が、地域社会の安全の確保に当たるという、交番・駐在所を中核とする現在の地 域警察の原型がここに生まれた。 それから100年以上の月日を経て、平成16年4月1日現在、全国に交番は6,509か所、駐在所は 7,592か所設置されている。この数は、全国の市町村数の約5倍であり、正に全国津々浦々に交番・ 駐在所が設置され、地域住民の生活に密着した警察活動の拠点となっている。 大正時代の交番(派出所) 2 現在の交番 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 (2)交番・駐在所の勤務制 交番は、原則として都市部に設置され、その施設に交替で勤務する交替制の地域警察官により 運用されている。また、駐在所は、原則として都市部以外の地域に設置され、その施設に居住す る駐在制の地域警察官により運用されている。 交番の交替制勤務には、地域警察官が3つの班に分かれて交替する3交替制や、4つの班に分かれ 地 域 社 会 と の 連 帯 て交替する4交替制等がある。一般的には3交替制が採用されているが、警視庁では4交替制が採用 されている。 図1-1 交番の地域警察官の勤務の例(3交替制の場合) 1日目 0:00 当番日 2日目 非番日 3日目 8:30 休日又は日勤日 17:00 24:00 1日目 2日目 3日目 注: 又は は、勤務している時間帯を表す。 コラム 1 世界に広がる「KOBAN」 日本の交番が地域住民に与えている安心感や、治安維 持のために果たしている役割に注目して、類似の制度を 導入している国がある。 シンガポールでは、1983年に国内第1号の「ネイバ ーフッド・ポリス・ポスト(NPP)」を開設した。現在 は、NPPのほか、NPPより大きな施設である「ネイバ ーフッド・ポリス・センター(NPC)」を拠点に、事 件・事故への対応や、遺失物等の受理、地域住民からの 相談受理等を行っており、その存在が国民の間に定着し ている。 また、ブラジルのサンパウロ州では、「バーズィ・コ ムニターリオ・ダ・セグランサ(安全のための地域の基 ブラジルの「KOBAN」 地)」と呼ばれる施設を設置し、この施設を拠点に、徒 歩、自転車等によるパトロールや、地域住民との定期的 な会合を行っている。 3 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 (3)交番・駐在所の地域警察官の活動 交番・駐在所の地域警察官は、それぞれの交番・駐在所を拠点に、立番等による警戒、パトロ ール、巡回連絡、事件・事故への対応等の活動を行っている。 ① 立番、見張、在所による警戒 交番・駐在所の地域警察官は、施設の外に立って警戒に当たる立番、 施設の出入口付近で椅子に腰掛けて周囲の警戒に当たる見張、施設の 中で書類作成等に当たりながら外部への警戒を行う在所勤務を通じ、 犯罪及び事故の防止並びに犯罪の検挙、交通指導取締り等に当たって いる。 事例1 平成15年2月、交番前で立番中の地域警察官が、道路交通法違 反(転回禁止違反)の車両を発見したため、この車両を停止さ せて職務質問を行った。車両の運転手は免許証を所持していなかったため、 交番で運転手から事情を聞いたところ、業務上横領事件で指名手配されてい る者であることが判明し、運転手を逮捕した(岐阜) 。 立番 ② パトロール、巡回連絡 交番・駐在所の地域警察官は、管轄地域の実態 を把握するとともに犯罪及び事故の防止並びに犯 罪の検挙、交通指導取締り、少年補導等を行うた め、パトロールを行っている。 また、地域警察官がそれぞれ担当の地域を巡回 して家庭、事業所等を訪問し、犯罪の予防、災 害・事故の防止等、住民の安全で平穏な生活を確 保するために必要な事項の指導・連絡や住民の意 見・要望等の聴取を行う巡回連絡を行っている。 巡回連絡 ③ 事件、事故等への対応 交番・駐在所の地域警察官は、管轄地域で事件、事故等が発生した際には、直ちに発生現場に 向かい、犯人の逮捕、危険の防止、現場保存等の措置を採っている。 事例2 15年5月、交番の地域警察官が建設会社のビルでアラームが発報したとの通報を受け、現場に 急行し、パトカーの地域警察官とともにビル内を確認したところ、トイレ内に中国人の男が盗 品や侵入道具であるバールを持ったまま潜んでいるのを発見し、窃盗罪で逮捕した(大阪)。 4 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 第 1 章 ④ その他の活動 このほか、交番・駐在所の地域警察官は、地域住民からの様々な相談の受理、迷い子の保護、 遺失物・拾得物の届出の受理等の幅広い業務を行っている。 コラム 2 遺失物・拾得物の取扱い 地 域 社 会 と の 連 帯 交番・駐在所の地域警察官は、遺失物・拾得物を速やかに遺失者に返還するため、遺失・拾得届の受理 業務を行っている。15年中に警察が取り扱った遺失届は約325万件、拾得届は約551万件であった。拾 得届のあった金品のうち、通貨は約7割、物品は約3割が遺失者に返還されている。 表1-1 遺失物・拾得物の取扱い状況(平成11∼15年) 年次 11 区分 拾得届 遺失届 拾得届 遺失届 通貨(億円) 物品(万点) コラム 12 13 132 429 844 655 131 417 914 666 14 133 414 1,036 664 15 129 399 1,017 672 128 391 1,047 671 3 勤務基準 交番・駐在所の地域警察官は、交番・駐在所ごとにパトロール、巡回連絡、在所等に従事すべき時間を 定めた勤務基準に従って勤務している。 この勤務基準は、管轄地域の治安情勢により変更する必要がある場合、事件・事故等の発生のため勤務 基準に従って勤務できない場合等には変更される。 図1-2 交番の地域警察官の勤務基準の例 交番に3人の地域警察官が勤務する場合、3人の休憩時間や交番の外で活動する時間が重ならないよう勤務 基準を工夫している。 (1マスは1時間を表す。) 9時(交番での勤務開始) A警部補 ら B巡査部長 立 C巡査 見 ら ら 立 休 ら 在 休 見 休 巡 休 休 15時 巡 巡 ら 在 巡 在 休 在 巡 ら 休 巡 休 休 立 休 立 休 立 休 休 翌9時 (勤務終了) 0時 20時 在 ら ら 在 ら ら 見 休 休 ら 休 ら ら 休 ら 休 見 休 休 在 休 休 ら 休 ら 休 ら 在 ら ら 見 ら 立 立 見 在 注1:ら∼警ら(パトロール)、巡∼巡回連絡、在∼在所、立∼立番、見∼見張、休∼休憩を表す。 2:勤務の開始から終了までの24時間(1当務)のうち、活動時間は16時間、休憩時間は8時間である。 5 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 コラム 4 交番の1日の活動状況の例 下記は、16年7月某日の神奈川県大和警察署大和駅前交番の勤務日誌の抜粋である。同交番は、横浜市 中心部から西方に10数キロメートル離れた、相模鉄道本線と小田急江ノ島線の大和駅を中心とする、同警 察署管内では最も人通りの多い地域を管轄している。 この日は、同交番には6人の地域警察官が勤務していた。6人は、勤務基準に則して管内のパトロールや 立番・見張・在所勤務等を行いつつ、勤務日誌に記載されているような突発事案が発生するたび、迅速に その対応に当たった。勤務日誌を見ると、同じ時間帯に複数の事案が集中的に発生する場合が少なくない ことや、夜間が特に忙しく、勤務員は明け方頃まで突発事案の対応に追われ、仮眠を取ることもままなら ないことが分かる。 【勤務日誌】 8:30∼ 警察署における指示・教養 22:05∼ 酔っ払い保護 交番勤務開始 22:15∼ けんか 10:40∼ 違法駐車 22:30∼ けんか 10:50∼ 違法駐車 22:50∼ 窃盗事件(職場盗) 11:30∼ 交通人身事故 23:35∼ 12:00∼ けんか 0:03∼ 少年のい集 変死 0:10∼ 違法駐車 不法侵入センサー発報 12:50∼ 交通物件事故 窃盗事件(空き巣) 14:30∼ 交通物件事故 けんか 14:45∼ 道路不許可使用(露天商) 0:30∼ 少年のい集 16:30∼ 窃盗事件(出店荒し) 2:10∼ 少年のい集 17:00∼ 交通人身事故 4:20∼ 騒音苦情 18:00∼ 違法駐車 4:30∼ 酔っ払い保護 19:00∼ 窃盗事件(万引き) 4:35∼ 騒音苦情 20:30∼ 違法駐車 4:55∼ 交通物件事故 20:45∼ 違法駐車 21:30∼ 窃盗事件(空き巣) 8:30∼ 酔っ払い保護 故障車両移動措置 8:45∼ 酔っ払い保護 酔っ払い保護 8:50∼ 違法駐車 22:00∼ 酔っ払い保護 けんか (4)交番・駐在所に関する国民の意識 平成16年3月、警察庁は、「国民の交番・駐在所に関する意識調査」(注)(以下「国民意識調査」 という。 )を行った。 注:全国の満20歳以上の男女3,000人(層化二段無作為抽出法、210地点)に対して、地域の交番・駐在所に関する認知度、 「空き交番」に関する意識等に関するアンケートを行い、2,148人(71.6%)から回答を得た。 6 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 ① 交番・駐在所の認知度 国民意識調査によると、現在住んでいる地域を受け持つ交番・駐在所を知っているかと質問し たところ、「場所も交番・駐在所名も知っている」と答えた者は56.3%、「場所は知っているが、交 番・駐在所名は知らない」と答えた者は28.4%となっており、85%近くの者が自分の住んでいる地 域を受け持つ交番・駐在所の場所を知っていると答えている。 図1-3 地 域 社 会 と の 連 帯 現在住んでいる地域を受け持つ交番・駐在所の認知度 場所も交番・駐在所名も知っている 場所は知っているが、交番・駐在所名は知らない 場所は知らないが、交番・駐在所名は知っている 場所も交番・駐在所名も知らない 無回答 1.0% 56.3% 0 28.4% 20 40 60 0.5% 13.7% 100(%) 80 一方、現在住んでいる地域を受け持つ交番・駐在所の警察官を知っているかと質問したところ、 「顔も名前も知っている」と答えた者が4.8%であるのに対し、「顔も名前も知らない」と答えた者 が82.3%おり、大半の者が自分の住んでいる地域を受け持つ交番・駐在所の場所は知っているが、 そこで勤務している警察官を知らないことが分かる。 また、交番・駐在所の警察官の「顔も名前も知っている」と答えた者は、自宅近くにあるのが 交番であるという者では3.0%であるのに対し、自宅近くにあるのが駐在所であるという者では 14.4%となっており、交番より駐在所の警察官の方が認知度が高くなっている。 図1-4 現在住んでいる地域を受け持つ交番・駐在所の警察官の認知度 顔も名前も知っている 顔は知っているが、名前は知らない 顔も名前も知らない 無回答 顔は知らないが、名前は知っている 0.7% 0.8% 全体 4.8% 11.5% 82.3% 0.6% 0.9% 交番 3.0% 11.0% 84.5% 1.8% 14.4% 駐在所 0 10 0.0% 22.3% 20 30 61.4% 40 50 60 70 80 90 100(%) 7 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 ② 交番・駐在所の警察官の活動への満足度 交番・駐在所の警察官の活動に満足しているかと質問したところ、「どちらとも言えない」と答 えた者が57.3%で最も多く、また、「非常に不満である」、「少し不満である」と答えた者は18.6%で あった。これに対し、「非常に満足している」、「ある程度満足している」と答えた者は23.4%にと どまり、交番・駐在所の警察官の活動が、必ずしも国民の期待に十分こたえられているとは言え ない状況がうかがわれる。 図1-5 交番・駐在所の警察官の活動に満足しているか 非常に満足している ある程度満足している 非常に不満である 無回答 少し不満である どちらとも言えない 2.1% 0.7% 57.3% 21.3% 0 10 20 30 40 50 13.8% 60 70 80 90 4.8% 100(%) そこで、「非常に不満である」、「少し不満である」と答えた者に対し、不満である理由を質問し たところ、「パトロールしているのを見ないから」と答えた者が62.6%で最も多く、次いで「交番 が不在であることが多いから」(38.7%)、「家庭訪問(巡回連絡)に来ないから」(23.2%)となっ ている。また、「きちんと対応してくれないから」という回答も16.5%あった。このように、交 番・駐在所の体制が不十分であることや活動の量が不足していることのほか、活動の質の面につ いて不満を感じている者も少なくないことが分かる。 図1-6 交番・駐在所の警察官の活動に不満である理由(複数回答) パトロールしているのを見ないから 62.6% 38.7% 交番・駐在所が不在であることが 多いから 23.2% 家庭訪問(巡回連絡)に来ないから 16.5% きちんと対応してくれないから 10.5% その他 0 8 20 40 60 80(%) 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 コラム 5 地域警察官の適切な職務執行の確保 16年7月、埼玉県草加警察署の交番に入ってきた男性が、暴力団関係者に連れ出され、暴行を受けた上、 自動車で連れ去られて全治3ヶ月の重傷を負わされるという事案が発生した。その際、交番勤務員は、これ らの行為を制止せず、検挙活動もしないなど、適切な職務執行を怠っていた。 警察では、このような不適切な地域警察官の対応は、国民の警察に対する信頼と期待を揺るがしかねな 地 域 社 会 と の 連 帯 いものであることから、街頭における犯罪や暴力団に毅然と対決する姿勢を堅持すること、重要事件に発 展する可能性の高い事案等については幹部が現場指揮を行うことなどを徹底し、事案の再発防止を図って いる。 ③ 今後強化してほしい活動 交番・駐在所の警察官に今後どのような活動を特に強化してほしいと思うかと質問したところ、 「パトロール」が62.3%で最も多く、次いで「身近な犯罪の検挙」(35.5%)、「110番通報に対する 対応」 (23.5%)となっている。これに対し、 「交番・駐在所における警戒」は18.6%となっており、 警察官が交番・駐在所に常駐するよりも交番・駐在所の外に出てパトロールを強化してほしい、 という要望が際立って強いことが分かる。 図1-7 今後強化してほしい活動(3つまで回答) 62.3% パトロール 身近な犯罪の検挙 (犯人の逮捕等) 35.5% 110番通報に対する 対応 23.5% 住民の困りごと・ 要望等聴取、助言 22.6% 交通違反の取締りや 交通安全指導 20.6% 交番・駐在所における 警戒 活動内容や犯罪の予防等に ついての広報紙等による 情報提供 18.6% 15.5% 地域の防犯 ボランティア等との連携 14.4% 被害届、遺失物・拾得物の 届出への対応 13.9% 9.0% 家庭訪問(巡回連絡) 負傷者、家出人、 酔っぱらい等の保護 5.6% 2.6% その他 4.4% 特にない 0 10 20 30 40 50 60 70(%) 9 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 (5)パトロールの強化 国民意識調査の結果にもみられるように、現在、国民が最も強く望んでいる地域警察官の活動 はパトロールである。 これを受けて、交番・駐在所やパトカーの地域警察官は、事件・事故の発生状況を分析した上 で、犯罪が多発している場所や時間帯に重点を置いたパトロールを行っている。パトロールに当 たっては、不審者に対する職務質問、危険箇所の把握、犯罪多発地域の家庭や事業所に対する防 犯指導、パトロールカードによる情報の提供等を行っている。 ① 交番・駐在所の地域警察官によるパトロール 交番・駐在所の地域警察官は、徒歩や自転車、オートバイ、小型警ら車、ミニパト等で管轄地 域のパトロールを行っている。 平成16年4月、警察庁が交番の地域警察官を対象に実施したアンケート調査(以下「地域警察官 意識調査」という。)(注)によると、9割近くの者が「犯罪予防のための夜間のパトロール」を重点 的に行っていると答えており、次いで「少年非行等の予防のための繁華街でのパトロール」 (47.0%)、 「通学路、公園等子供の多い場所でのパトロール」(43.0%)となっている。 図1-8 パトロールを重点的に行っている時間帯及び場所(複数回答) 犯罪予防のための夜間 のパトロール 89.3% 少年非行等の予防のための 繁華街でのパトロール 47.0% 通学路、公園等子供の 多い場所でのパトロール 43.0% 交通が混雑しそうな場所 でのパトロール 13.2% 暴力団員の活動が活発な 地域でのパトロール 7.3% その他 重点的に行う時間帯や 場所は特にない 5.6% 1.6% 0 20 40 60 80 100(%) ② パトカーの地域警察官によるパトロール パトカーの地域警察官は、警察署や交番・駐在所を拠点に、地域の事件・事故の発生状況や、交 番・駐在所の地域警察官の活動状況に応じて、警察署の管轄する地域のパトロールを行っている。 注:地域警察官意識調査は、各都道府県警察から規模の大きい3警察署を選択し、そこで交替制勤務を行っている交番の地 域警察官のうち、勤務年数が10年以上で、階級が警部補以下の者1,947人に対して勤務実態、「空き交番」に関する意 識等に関するアンケートを行ったものであり、1,904人(97.8%)から回答を得た。 10 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 事 例 15年9月、深夜パトロール中のパトカ 地 域 社 会 と の 連 帯 ーの地域警察官が、空き巣が多発して いる地域を重点的に警戒していたところ、無人の 会社事務所の横に駐車している不審な車両を発見 した。会社事務所の周辺を確認したところ、窓ガ ラスが割られており、中に侵入していた男が窃盗 目的で会社事務所に侵入したことを自供したため、 窃盗未遂罪で逮捕した(北海道)。 パトカーによるパトロール ③ 職務執行力の強化 15年中の地域警察官による刑法犯検挙人員は30万7,228人で、警察による刑法犯の総検挙人員の 80.9%を占めている。 図1-9 地域警察官による刑法犯検挙人員の推移(平成11∼15年) 85.0 (%) (万人)40 35 地域警察官による検挙人員(万人) 総検挙人員(万人) 占める割合(%) 83.5 82.0 30 80.5 25 79.0 77.5 20 76.0 15 74.5 10 73.0 5 71.5 70.0 0 年次 区分 総検挙人員(万人) 地域警察官による検挙人員 占める割合(%) 11 12 13 14 15 315,355 248,111 309,649 232,481 325,292 246,672 347,558 269,501 379,602 307,228 78.7 75.1 75.8 77.5 80.9 このような検挙実績を更に向上させるため、警察では、地域 警察官の職務質問の技能、書類作成の能力等の強化を目的とし た研修・訓練を実施するとともに、卓越した職務質問技能を有 する者を選抜して、警察庁指定広域技能指導官又は都道府県警 察の職務質問技能指導員として指定し、職務質問技能の指導者 の育成等に当たらせている。 職務質問技能指導員による指導 11 第 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 2 交番機能の強化のために 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 (1) 「空き交番」の現状 近年、様々な要因により、交番に地域警察官が不在になることが多い「空き交番」が多数生じて おり、このような「空き交番」を解消し、交番の機能を強化することが喫緊の課題となっている。 ① 「空き交番」についての国民の意識 ア 「空き交番」の実態 国民意識調査において、この1ヶ月くらいの間に自宅近くの交番・駐在所の前(近く)を通った ことがあるかと質問したところ、1回以上「ある」と答えた者が67.1%であった。 図1-10 自宅近くの交番・駐在所の前(近く)を通ったことがあるか 1∼5回 5∼10回 10∼20回 21回以上 無回答 0回 0.6% 28.7% 0 13.6% 20 13.5% 11.3% 40 32.3% 60 100(%) 80 交番・駐在所の前(近く)を1回以上通ったことがあると答えた者に対し、交番・駐在所に警察 官が不在だったことがあるかと質問したところ、「不在だったことはない」と答えた者が27.8%、 「たまに不在だった」、「ときどき不在だった」、「ほとんど不在だった」、「いつも不在だった」と答 えた者が63.0%であった。 図1-11 交番・駐在所の前(近く)を通ったとき警察官が不在だった経験 不在だったことはない たまに不在だった ときどき不在だった ほとんど不在だった いつも不在だった 無回答 4.8% 27.8% 0 10 23.9% 20 30 40 17.9% 50 60 16.4% 70 80 9.3% 90 100(%) また、この1年くらいの間に自宅近くの交番・駐在所に行ったことがあるかと質問したところ、 1回以上「ある」と答えた者が15.4%、 「ない」と答えた者が84.5%であった。 図1-12 自宅近くの交番・駐在所に行ったことがあるか 1回ある 2∼3回ある 4回以上ある ない 無回答 3.7% 0.9% 0.2% 10.8% 0 12 84.5% 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%) 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 この1年くらいの間に自宅近くの交番・駐在所に1回以上行ったことがあると答えた者に対し、 交番・駐在所を訪問したときに警察官が不在だったことがあるかと質問したところ、「不在だった ことがある」と答えた者が56.1%、「不在だったことはない」と答えた者が43.9%であり、「不在だ ったことがある」と答えた者が過半数を占めている。 図1-13 交番・駐在所を訪問したときに警察官が不在だった経験 不在だったことがある 56.1% 20 0 地 域 社 会 と の 連 帯 不在だったことはない 43.9% 40 60 100(%) 80 これらの結果から、交番・駐在所の前(近く)を通ったり、交番・駐在所を訪問したりするとき に、相当の割合で交番・駐在所に警察官が不在である状態を経験していることが分かる。 イ 「空き交番」解消への要望 自宅近くの交番・駐在所に警察官が不在になることを減らしてほしいかと質問したところ、「大 幅に減らしてほしい」、「もう少し減らしてほしい」と答えた者が64.5%で、「今ぐらいでよい」、 「今よりも増えてもよい」と答えた者(13.7%)の4倍以上になっており、自宅近くの交番・駐在所 にもっと警察官にいてほしいという要望が強いことが分かる。 また、警察官が不在になることを「大幅に減らしてほしい」、「もう少し減らしてほしい」と答 えた者は、自宅近くにあるのが交番であると答えた者では69.3%、自宅近くにあるのが駐在所であ ると答えた者では58.5%であり、自宅近くにあるのが交番であると答えた者の方が、警察官が不在 になるのを減らしてほしいという要望がより強いことが分かる。 図1-14 交番・駐在所に警察官が不在になることを減らしてほしいか 大幅に減らしてほしい もう少し減らしてほしい 今ぐらいでよい 今よりも増えてもよい わからない 無回答 1.4% 総数 33.7% 30.8% 12.3% 1.1% 20.7% 1.0% 1.2% 交番 36.9% 32.4% 11.5% 17.0% 1.8% 駐在所 24.9% 0 33.6% 20 40 17.6% 60 0.8% 21.3% 80 100(%) 13 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 さらに、自宅近くの交番・駐在所に警察官が不在になることを減らしてほしいと答えた者に、 警察官が不在になることを減らしてほしい理由を質問したところ、「いざというときに助けを求め に行けない」と答えた者が80.8%と最も多く、次に「警察官が交番・駐在所にいるだけで安心」と 答えた者が51.6%、「交番・駐在所周辺で犯罪を抑止することができない」と答えた者が21.2%と なっている。 図1-15 警察官が不在になることを減らしてほしい理由(複数回答) いざというときに 助けを求めに行けない 80.8% 警察官が交番・駐在所 にいるだけで安心 51.6% 交番・駐在所周辺で 犯罪を抑止することが できない 21.2% 警察官にいつでも 気軽に相談したい 14.4% その他 1.4% 0 20 40 60 80 100(%) ② 「空き交番」についての交番の地域警察官の意識 ア 交番に警察官が不在であることに対する苦情を受けた経験について 地域警察官意識調査において、交番に警察官が不在であることについて地域住民から苦情を言 われたことがあるかと質問したところ、 「ある」と答えた者が75.3%であった。 図1-16 交番に警察官が不在であることについて地域住民から苦情を言われた経験 ある ない 無回答 1.7% 75.3% 20 0 23.0% 40 60 80 100(%) また、「ある」と答えた者のうち、苦情を言われる頻度が10年前より「増えている」、「やや増え ている」と答えた者が77.0%であり、「変わらない」と答えた者(17.2%)、「減っている」、「やや 減っている」と答えた者(3.1%)に比べて著しく多かった。 図1-17 苦情を言われる頻度が10年前より増えているか 増えている やや増えている 変わらない 44.5% やや減っている 減っている 32.5% 無回答 1.9% 1.2% 90 100(%) 17.2% 2.7% 0 14 10 20 30 40 50 60 70 80 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 この結果から、交番の地域警察官が日々の活動を通じて、地域住民の「空き交番」に関する不 満を直接感じていることが分かる。 イ 今後特に強化したい活動 交番の地域警察官として、地域の安全を確保するために今後どのような活動を特に強化したい と思うかと質問したところ、「身近な犯罪の検挙」(68.9%)や「パトロール」(65.8%)と答えた 地 域 社 会 と の 連 帯 者が多く、「交番における警戒」 (21.1%)と答えた者に比べて著しく多かった。 以上のことから、交番の地域警察官が地域住民の「空き交番」に関する不満を感じつつも、地 域の安全の確保のためには交番に常駐するよりも交番の外における活動を強化することが重要で ある、と思っていることがうかがわれる。 図1-18 今後どのような活動を特に強化したいと思うか(複数回答) 身近な犯罪の検挙 (犯人の逮捕等) 68.9% 65.8% パトロール 110番通報に対する対応 39.7% 家庭訪問(巡回連絡) 31.9% 住民の困りごと・要望等 の聴取、助言 24.3% 21.1% 交番における警戒 交通違反の取締りや 交通安全指導 20.0% 地域の防犯ボランティア等 との連携 活動の内容や犯罪の予防等 についての広報紙等による 情報提供 被害届、遺失物・拾得物の 届出への対応 17.1% 14.3% 13.6% 負傷者、家出人、 酔っ払い等の保護 3.8% その他 0.8% 特にない 0.1% 0 10 20 30 40 50 60 70 80(%) ③ 「空き交番」の生じる要因 交番に地域警察官が不在になることが多い「空き交番」が生じる主な要因として、次のような ものが考えられる。 ア 事件・事故の増加 過去10年間で、110番通報の受理件数は約1.8倍、刑法犯の認知件数も約1.6倍に増加しているが、 これに伴って、交番の地域警察官が交番の外で事件・事故に対応する時間が増加している。 15 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 イ パトロールの強化 交番の地域警察官は国民の強い要望を受けて、交番の外に出てパトロールを行う時間を確保す るよう努めているため、交番に地域警察官が不在となる時間が増加している。 また、夜間の合同パトロール等を効率的に行うため、一つの交番に近隣の交番の地域警察官を 集中配置して活動させる「ブロック運用」を行っているが、このために交番に地域警察官が不在 になることがある。 ウ 交番数の増加 治安情勢の変化や市街地の拡大等に応じて交番を増設してきたが、一方で、交番の増設に見合 った地域警察官の増配置ができない場合も多い。このため、それぞれの交番に必ずしも十分な数 の地域警察官が確保されず、不在になることが多い交番が増加している。 (2)交番機能強化方策の推進 交番は、地域住民の安全と安心のよりどころとして、地域社会に密着した活動を行っている。 「交番にいつも警察官がいてほしい」が、「交番の警察官のパトロールをもっと強化してほしい」 という、相反するともいえる要望は、正に地域住民が交番を拠点とした地域警察官の活動に寄せ ている期待が高いことを表している。 犯罪対策閣僚会議が平成15年12月に策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」でも、 「地域連帯の再生と安全で安心なまちづくり」の関連施策として「空き交番」の解消と交番機能の 強化が掲げられ、政府を挙げて取り組むべき課題とされている。 警察では、次のような対策を進めることにより、おおむね3年後には、交番に地域警察官が不在 になることが多い「空き交番」を解消するとともに、交番の機能を一層強化していくこととして いる。 ① 交番の体制強化 交番の地域警察官の増配置や交番の配置見直しにより、交番の体制を強化する。 ア 交番の地域警察官の増配置 13年度以降の地方警察官の増員分のうち、相当数を交番機能強化等のための要員として交番に 配置するとともに、警察内部の人員配置を見直すことにより、交番の地域警察官の増配置を行う。 イ 交番の配置見直し 交番・駐在所の配置数や設置箇所は、地域の人口、世帯数、面積、行政区画及び事件・事故の 発生状況等の治安情勢を勘案して決定することとされている。情勢の変化に応じて交番の配置を 見直し、適正で合理的な配置を目指す。 16 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 図1-19 「空き交番」の生じる要因 交番が6か所ある警察署を例として図示した。A交番やD交番のように地域警察官が1人だけ勤務する交番 では、パトロール、事件・事故への対応、ブロック運用による拠点交番への集中配置等により直ちに地域 警察官が不在になってしまう。F交番のように2人の地域警察官が勤務する交番でも、1人が事件・事故への 対応に従事し、もう1人がパトロールを行うなど、2人が同時に交番の外で活動すれば、地域警察官が不在 になってしまう。 地 域 社 会 と の 連 帯 犯人 逮捕 A交番【1人】 事件発生 不在交番 現場臨場、聞き込 み、犯人の身柄確保 ブロック運用 B駅前交番【3人】 捜査書類 C交番【2人】 の作成 犯人の身柄を引致 拠点交番 E交番【2人】 D交番【1人】 警 察 署 不在交番 パトロール F交番【2人】 人身事故処理 不在交番 パトロール 17 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 事 例 福岡県警察では、交番・駐在所の配置を管内の治安実態等に応じた効率的なものにするため、 交番・駐在所の再編計画を策定し、15年8月、これを県下一斉に実施した。その結果、交番が 276か所から224か所、駐在所が294か所から107か所に減少する一方、1交番当たりの平均配置地域警 察官数が6.8人から9.7人に増加した。また、夜間に交番やパトカー等で勤務を行う地域警察官数が平均し て約3割増加した。 ② 交番の支援機能の充実 事件・事故の対応のため地域警察官が一時的に不在になったときでも交番に訪れた人に適切に 対応することができるよう、交番の支援機能を充実させる。 ア 交番相談員の活用 都市部の主要な交番、警備派出所には交番相談員が 配置されている(16年4月1日現在で2,949人) 。 交番相談員は、警察官の身分を有しない非常勤の職 員であり、交番、警備派出所で事件・事故発生時の警 察官への連絡、住民の意見・要望の聴取、遺失・拾得 届の受理、被害届の代書及び預かり、地理案内等の業 務に従事している。その多くは、地域警察に関する経 験や知識を有する警察官OBである。 交番相談員が配置されている交番では、地域警察官 交番相談員(警視庁) はパトロールを始め交番の外で行う活動を強化することができ、また、交番に地域警察官が不在 の場合における来訪者の便宜が高まる。 交番相談員は、地域住民に分かりやすいよう、標章や制服を着用している。 図1-20 交番相談員の増員状況(平成7∼16年、各3月31日現在(16年のみ4月1日現在)) (人) 3,500 2,949 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 2,091 2,178 2,280 13 14 15 1,832 998 1,129 8 9 1,293 1,491 731 500 0 7 10 11 12 16 (年) イ パトカーによる支援の強化 警察では、警察署の管轄地域全域で活動できるパトカーを増強整備し、交番・駐在所の地域警 18 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 察官が徒歩や自転車によるパトロールを行っている間、その交番・駐在所の管轄地域で発生した 事件・事故への対応をパトカーが優先して行ったり、パトカーによる交番への立寄りを増やした りするなどして、交番・駐在所とパトカーの地域警察官の連携を強化している。 ウ テレビ電話等の設置 国民意識調査において、交番・駐在所の施設をどのように改善すればよいと思うかと質問した 地 域 社 会 と の 連 帯 ところ、「警察官が不在でも警察署等に連絡ができるようにテレビ電話等を備え付ける」と答えた 者が55.7%と最も多く、「相談や住民との話し合いを行うための部屋やスペースを整備する」 (20.1%) 、「地理案内板を整備する」 (19.1%)と比べて、著しく割合が高い。 図1-21 交番・駐在所の施設をどのように改善すればよいと思うか(複数回答) 警察官が不在でも警察署等に 連絡ができるように テレビ電話等を備え付ける 55.7% 相談や住民との話し合いを 行うための部屋やスペースを 整備する 20.1% 地理案内板を整備する 19.1% 交番・駐在所を訪れる 住民のための駐車場を 整備する 18.9% 障害者のためにスロープや 点字付きのインターホンを 備え付ける 18.6% その他 2.8% 特にない 20.2% 0 10 20 30 40 50 60(%) このように、警察官が不在でも警察署等に連絡 することにより警察がすぐに対処できるよう施設 の改善を求める要望が強い。このため、警察では、 受話器を上げただけで警察署とつながる電話、交 番に入ってきた人をセンサーで感知し、警察署と 音声で通話ができるようにする装置、交番を訪れ た人が警察署の警察官の顔を見ながら用件を伝え ることができるテレビ電話等の不在対策機器の整 備を進めている。 交番に設置されたテレビ電話 19 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 図1-22 「空き交番」対策 【「空き交番」の生じる要因】 ○ 事件・事故の増加 ○ パトロールの強化 ○ 交番数の増加 交番の体制不足 【対策】各都道府県警察において計画を策定し、地域住民の理解を得つつ推進 警察官の増員 ・ 平成13年度 ・ 平成14年度 ・ 平成15年度 ・ 平成16年度 2,580人 4,500人 4,000人 3,150人 うち約4割を交番機能の 強化等要員へ 交番の地域警察官の増配置 内部の人事 配置の見直し 交番の配置見直し 交番相談員の活用 パトカーによる支援 総 合 的 な 治 安 対 策 テレビ電話等の活用 【おおむね3年後の目標】 交番に地域警察官が不在になることが多い「空き交番」を解消し、交番機能を強化 ・交番は原則として1当務2人以上の配置とする。 ・警察事象の少ない交番は例外的に5人以下(警視庁の交番は7人以下) とするが 交番相談員、パトカー等による補完体制を確立する。 例外類型 約1,120所 (約18%) 「空き交番」 1,925所 (29.6%) 平成16年 6,509所 原則 3,646所 (56.0%) 例外類型 938所 (14.4%) 平成19年 約6,320所 原則 約5,200所 (約82%) ○ 原 則:1当務2人以上の交替制交番 ○ 例外類型:警察事象の少ない地域にある交番で1当務1人以上の交替制の警察官のほか日勤制の交番 所長等又は交番相談員が配置される交番 3人以上の警察官(交番相談員を含む。)が配置される日勤制交番 駐在型交番 20 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 3 地域社会との連携の強化 第 1 章 (1)交番・駐在所と地域社会との連携活動の現状 ① 地域社会との連携についての交番の地域警察官の意識 地域警察官意識調査において、地域の安全は警察だけで確保できると思うかと質問したところ、 「確保できない」と答えた者が94.9%であった。 図1-23 地域の安全は警察だけで確保できると思うか 確保できる 確保できない 分からない 無回答 2.1% 2.9% 94.9% 10 0 地 域 社 会 と の 連 帯 20 30 40 0.2% 50 60 70 80 90 100 (%) 「確保できない」と答えた者に対し、警察の活動以外に何が必要だと思うかと質問したところ、 「地域住民一人一人の自衛方策」と答えた者が78.3%、 「地域住民、ボランティア等の防犯活動」と 答えた者が51.6%、「他の行政機関による防犯施策の推進」と答えた者が47.7%であり、警察、地 域住民、行政機関等の連携した活動が必要であると考えている者が多いことがうかがわれる。 図1-24 地域の安全を確保するために必要だと思う活動(複数回答) 地域住民一人一人の自衛方策 78.3% 地域住民、ボランティアの 防犯活動 51.6% 他の行政機関による 防犯施策の推進 47.7% 学校、職域等における 防犯教育 42.3% 犯罪の発生しにくい 道路公園等の整備 33.3% 防犯設備、防犯機器の普及 28.6% その他 1.9% 分からない 0.3% 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%) また、現在、自分の勤務する交番と地域住民が地域の安全を確保するために連携して行ってい る活動は十分であると思うかと質問したところ、「十分である」、「ある程度十分である」と答えた 21 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 者が32.6%、 「どちらともいえない」と答えた者が33.1%、 「あまり十分でない」 、 「全く十分でない」 と答えた者が32.1%であった。 図1-25 現在、自分の勤務する交番と地域住民が地域の安全を確保するために連携して行っている活動は 十分であるか 十分である ある程度十分である どちらともいえない あまり十分でない 全く十分でない 3.9% 4.1% 28.7% 10 0 無回答 33.1% 20 30 40 28.0% 50 60 70 2.1% 80 90 100(%) 「あまり十分でない」、「全く十分でない」と答えた者に対し、何が原因で十分な連携がとれな いと思うかと質問したところ、「警察側が事件事故に追われ地域住民と連携する時間が不足してい るため」と答えた者が75.7%と最も多く、地域住民側の防犯や警察との連携に関する意識の不足を 指摘する回答を大きく上回った。 図1-26 何が原因で十分な連携がとれないと思うか(複数回答) 警察側が事件事故に追われて 時間が足りない 75.7% 地域住民側に防犯に 対する意識が足りない 39.9% 地域住民側に警察と 連携するという意識が 足りない 30.4% 警察側に地域住民と 連携するという意識が 足りない 17.2% 4.1% その他 分からない 0.8% 0 10 20 30 40 50 60 70 80(%) ② 交番・駐在所連絡協議会 交番・駐在所の地域警察官と地域住民が地域の治安に関する問題について相互に検討・協議し たり、交番・駐在所の地域警察官が地域住民の警察に対する意見、要望等を把握したりすること により、両者が協力して犯罪の抑止、交通事故の防止、災害対策等を図るため、交番・駐在所ご とに「交番・駐在所連絡協議会」が設置されており、平成15年末現在の設置数は1万3,450である。 22 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 交番・駐在所連絡協議会の委員は、幅広い意見・要望等を聴取することができるよう、地域の 実情に精通している地域住民の中から、職業、年齢、性別等を考慮して選定、依頼している。ま た、運営担当者には、交番・駐在所の地域警察官全員をもって充てている。 交番・駐在所連絡協議会は、定期会議を開催するほか、地域で犯罪や事件・事故が連続して発 生し、地域住民に不安が生じている場合等に随時会議を開催している。 地 域 社 会 と の 連 帯 交番・駐在所の地域警察官は、これらの会議を開催することにより、地域住民と協力して解決 できるような問題を把握し、その解決を図るよう努めている。 事例1 15年10月、交番の管轄する地域に女子大学 及び女子短期大学があり、学生に対する痴漢 やのぞき等が問題になっていたため、交番連絡協議会で 大学、学生、周辺の地域住民と話し合い、同交番の女性 警察官が窓口となって積極的に関連情報の交換を行って いる(長崎) 。 交番・駐在所連絡協議会(長崎) ③ 情報発信活動 交番・駐在所の地域警察官は、様々な活動を通じ て、地域住民に管轄地域の事件・事故の発生状況や その防止策等の身近な話題を伝えている。 例えば、ひったくりの発生が多発している場所や 不審者の出没する通学路といった、地域住民が知る ことによって被害の増加を防ぐことにつながる情報 や、地域住民からの情報提供により解決につながる 可能性のある事件を記した「交番速報」を、あらか じめ登録した送信先にファックスで送信したり、自 治会の掲示板のような地域住民の目に触れやすい場 所へ貼付したりしている。 また、地域の身近な出来事や事件・事故の発生状 況を記した「ミニ広報紙」や「交番新聞」を作成し、 地域住民への直接配布や、自治会等を通じた回覧等 を行っている。 このほか、地域警察官が地元のテレビ番組やラジ オ番組に出演して犯罪情報や防犯情報を説明したり、 インターネットのホームページを活用して情報発信 ミニ広報紙(警視庁) したりしている例もある。 23 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 管轄地域で空き巣等の犯罪が発生しているにもかかわ 事例2 らず、地域住民の間に「まさかこんな田舎まで泥棒は 来ないだろう。」との声が聞かれたことから、交番の地域警察官が 地域住民の注意を喚起するため、ケーブルテレビの地方公共団体 (市)のチャンネルを通じて、犯罪の発生状況や実施すべき防犯対 策を広報したところ、地域住民から大きな反響があった(福岡) 。 ケーブルテレビの放送画面(福岡) コラム 6 パトロールカード 交番・駐在所の地域警察官は、パトロール中に気付いた防犯上の注意事 項を伝えたり、空き巣等の被害者にパトロールを行っていることを知らせ て安心してもらったりすることなどを目的として、管内の地域住民にパト ロールカードを配布している。 パトロールカードには、交番名やパトロールを行った日時等が記載され ている。 パトロールカード(島根) ④ その他の活動 地域警察官意識調査において、自分の勤務する交番において地域の安全を確保するために地域 住民と連携してどのような活動を行っているかと質問したところ、「交番連絡協議会、防犯座談会 等の開催」(60.5%)や、「交番速報等による情報発信活動」(57.0%)のほか、「地域住民等との合 同パトロール」(29.7%)、「通学路における警戒等の子供の保護、誘導活動」(27.4%)、「放置自転 車の撤去や自転車の利用者に対する防犯指導」 (23.3%)等を挙げている。 事例3 16年3月、地域住民が防犯のために結成し たパトロール隊(5人)と駐在所の地域警察 官が夕方に合同パトロールを行っていたところ、別荘荒 しが発生している地域で、所有者が訪れていないはずの 別荘の部屋に明かりがついているのを発見したため、駐 在所の地域警察官が別荘内を確認し、所有者に無断で別 荘に入り込んでいた男2人を建造物侵入罪で逮捕した (千葉)。 合同パトロール(千葉) 24 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 第 1 章 図1-27 自分の勤務する交番において地域の安全を確保するために地域住民と連携してどのような活動を 行っているか(複数回答) 交番連絡協議会、 防犯座談会等の開催 60.5% 交番速報等による 情報発信活動 57.0% 地域住民等との 合同パトロール 29.7% 通学路における警戒等の 子供の保護、誘導活動 27.4% 放置自転車の撤去や自転車の 利用者に対する防犯指導 23.3% コミュニティルームを 活用した情報交換等 12.0% 危険箇所の点検、安全安心 マップの作成 9.8% 違法駐車追放キャンペーン 等の活動 7.5% その他 1.5% 特に行っていない 6.0% 0 事例4 地 域 社 会 と の 連 帯 10 20 30 40 50 60 70(%) 15年11月、登下校中の小学生に対する公然わいせつ事案が発生していたことから、交番の地 域警察官が交番速報等により地域住民に注意を呼び掛けるとともに、学校、保護者と協力して 小学校の通学時間帯の警戒活動を強化していたところ、学校近くで公然わいせつ事案が発生し、警戒中の交 番の地域警察官が直ちに現場に駆けつけ、犯人を検挙した(大阪) 。 (2)今後の展望 国民意識調査において、現在住んでいる地域で犯罪の被害に遭うのではないかという不安を感 じるかと質問したところ、「非常に不安である」、「少し不安である」と答えた者が63.0%であり、 「ほとんど不安はない」 、「まったく不安はない」と答えた者(36.8%)を大きく上回っている。 図1-28 現在住んでいる地域で犯罪の被害に遭うのではないかという不安を感じるか 非常に不安である 少し不安である ほとんど不安はない まったく不安はない 無回答 0.3% 8.3% 0 54.7% 10 20 30 40 32.3% 50 60 70 80 4.5% 90 100(%) 25 第 1 節 地域社会と交番・駐在所 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 一方、地域警察官意識調査において、地域住民の防犯に対する意識が高まってきていると感じ るかと質問したところ、 「とても感じる」、 「ある程度感じる」と答えた者が43.6%、 「全く感じない」 、 「あまり感じない」と答えた者が24.6%であり、犯罪の被害に遭うのではないかという不安感の高 まりとともに防犯に対する意識も高まりつつある一方、依然として防犯に関心の低い者も少なか らずいることがうかがわれる。 図1-29 地域住民の防犯に対する意識が高まってきていると感じるか ある程度感じる とても感じる どちらともいえない あまり感じない 全く感じない 無回答 3.7% 4.5% 0 39.1% 10 20 28.0% 30 40 50 21.7% 60 70 80 2.9% 100(%) 90 このような状況の中で、地域警察官意識調査において、地域住民と警察は今後どのような活動 で連携していく必要があると思うかと質問したところ、「犯罪情報、地域安全情報の提供」と答え た者が67.1%で最も多く、交番の地域警察官が、犯罪の発生状況等を地域住民に積極的に知らせる ことにより、その防犯に対する意識を高めることが重要であると考えていることがうかがわれる。 また、これに次いで多いのは「合同パトロール、地域における危険箇所の点検等の共同した防 犯活動」(52.9%)、「地域住民等の行う防犯活動へのノウハウ提供等の助言」(39.1%)であり、地 域住民と警察との協働の必要性も感じていることが分かる。 図1-30 地域住民と警察は今後どのような活動で連携していく必要があると思うか(複数回答) 犯罪情報、地域安全情報の 提供 67.1% 合同パトロール、地域に おける危険箇所の点検等の 共同した防犯活動 52.9% 地域住民等の行う防犯活動 へのノウハウ提供等の助言 39.1% 防犯ボランティア等への 装備、費用の支援 21.2% 違法駐車追放キャンペーン等 の活動 20.5% その他 1.1% 1.3% 連携していく必要は感じない 0 26 20 40 60 (%) 80 地域社会と交番・駐在所 第 1 節 第 1 章 警察では、交番機能の強化、パトロールの強化等を通じ、交番・駐在所の地域警察官が地域住 民等からの期待にこたえる活動を行うための基盤づくりを進めるとともに、交番・駐在所の地域 警察官と地域住民との連携を一層強め、地域住民とともに地域の安全の確保に努めていくことと している。 また、交番・駐在所の会議室で地域住民との情報・意見の交換を行ったり、防犯ボランティア 地 域 社 会 と の 連 帯 の活動のための活用を進めたりすることにより、地域住民との連携の拠点としての交番・駐在所 の役割を強化していくこととしている。 警察署で管轄地域の犯罪発生状況を分析したところ、1年間に発生する刑法犯の約3割がオート 事 例 バイ盗であり、盗まれるオートバイの約7割が管内の大学に通う大学生のものであることが判明 した。そこで、警察署の各交番・駐在所の地域警察官を中心に、オートバイ盗の多発地域の検問、交番・駐 在所連絡協議会の開催、大学におけるオートバイ盗防止対策の呼び掛け、ミニ広報紙の配布を行うとともに、 市役所等の協力を得て、市の広報紙を通じた呼び掛けやオートバイ盗防止の看板の作成を行った。その結果、 当該地域におけるオートバイ盗の発生件数は、前年の222件の半分以下である101件となった(千葉) 。 コラム 7 地域住民との連携を重視した交番・駐在所の整備 警察では、交番・駐在所の整備に当たっては、警察と地域住民との連 携が確保されやすくなるように配意している。このため、地域住民が交 番・駐在所に集まって、警察への防犯相談を行ったり、防犯ボランティ ア活動に関する会議を開催したりすることができるよう、コミュニティ ールーム等と呼ばれる会議室を設置するよう努めている。また、交番・ 駐在所の設置場所についても、地域住民が訪問しやすく、利用しやすい ところとするよう努めている。 このような観点から、都市部の住宅地であっても、夜間の事件・事故 の少ない地域には、交番ではなく駐在所を設置することがあり、勤務員 は、地域内の施設に居住して活動するという駐在所勤務の特性を生かし ながら、地域住民や地域社会との連携を深めている。また、新たに集合 住宅が建築される機会を捉えて、敷地内や建物内に交番・駐在所を整備 している例もある。 マンションの1階部分に整備さ れた都市部の駐在所(警視庁 中野警察署) 27 第 第 1 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 1 犯罪による被害を防止する ために 章 地 域 社 会 と の 連 帯 本項では、犯罪被害を防止するため地域住民や事業者等を対象に行っている情報提供、防犯相 談、防犯教育等の取組みを紹介する。 (1)犯罪情報や地域安全情報の効果的な提供 犯罪の防止に関する地域住民の意識を高め、また、地域住民が自主的に行う防犯活動がより効 果的なものとなるよう、警察では、地域住民に向けて、警察の有する犯罪情報や地域安全情報を 様々な媒体を用いて提供している。 提供する情報の内容については、地域ごとの犯罪の発生件数やその増減の状況を伝えるだけで はなく、多発している犯罪の種類や犯行手口を分析し、特にどのようなことに気を付けなければ ならないかを分かりやすく示し、性犯罪、ひったくり、空き巣等から身を守り、又は財産を守る ための方法の普及を図るなど、より具体的で有用なものとなるよう配意している。 情報提供の手段についても、巡回連絡で家庭や事業所を訪問するときや自治会の会合に参加す るときに警察官が直接説明したり、ウェブサイトやミニ広報誌、新聞の折り込みチラシを活用し たりするなど、少しでも多くの者に情報が届くような工夫をしている。また、犯罪の被害を受け やすい業種向けには、業界団体を通じることで、漏れなく情報が行き渡るように努めている。 事例1 埼玉県警察では、平成15年4月から、警察本部のホームページに「事件事故発生マップ」を掲 載している。この地図には、ひったくり、路上強盗及び死者又は重傷者を伴う交通事故の情報 が表示され、ウェブサイトの閲覧者が事件・事故の種別や発生時間帯を選択すると、過去3ヶ月の(交通死 亡事故にあっては16年1月からの)発生状況が図示される。縮尺の調整も可能で、地図を拡大すれば、身近 な地域の犯罪情勢をより詳細に知ることができる。 事件事故を選択してください □ ひったくり □ 路上強盗 □ 死亡交通事故 □ 重傷交通事故 時間帯を選択してください ○全時間 ○0・6時 ○6・12時 ○12・18時 ○18・24時 《拡大した場合の地図》 事件事故発生マップ(埼玉県警察ホームページより) 28 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 事例2 警視庁では、東京都安全・安心まちづくり条例に基づく犯罪情報の発信を行うため、16年度か ら、インターネットやGIS(地理情報システム)を活用した「犯罪情報発信システム」の運 用を開始し、次のような取組みを進めている。 ○ 電子メールによる犯罪情報の発信 メールアドレスを登録した者に対し、 ・ 子どもへの声かけ事案やひったくり、空き巣等の発生状況に関する情報 地 域 社 会 と の 連 帯 ・ どの市区町村で犯罪が多発しているかを知らせる情報 ・ 地域住民や市区町村による防犯対策の取組状況に関する情報 ・ 防犯対策に資するイベントに関する情報 を電子メールで送信している。 ○ ホームページによる犯罪情報の発信 ホームページに犯罪の発生件数の多寡を色分けして表示した地図を掲載し、どの地区がどのくらい危険で あるかを一目で読みとれるようにしている。閲覧者は、全刑法犯のほか、侵入盗、ひったくり等の罪種別に 犯罪の発生状況を把握することができる。また、防犯対策の情報も提供しており、例えば空き巣については、 犯行の手口やそれに対応した錠前、窓ガラス等の対策を紹介している。 ○ パソコンや携帯電話の使用に不慣れな者への情報発信の支援 警察署からの要請に応じて、管内の犯罪の発生状況を示した地図を警視庁本部が作成・送信し、それを警 察署が地域住民の目にする回覧板や広報誌に掲載することなどにより、パソコンや携帯電話を使うことに慣 れていない高齢者等にも犯罪情報が行き渡るようにしている。 犯罪情報マップ(警視庁ホームページより) 事例3 栃木県警察では、県内でコンビニエンスストアを対象とした強盗事件が多発していたことから、 被害に遭った店舗の防犯診断を行い、事件の発生状況、犯人に関する情報、店舗が講ずべき防 犯対策を「生活安全ニュース」に取りまとめた。15年3月から、これを県内のコンビニエンスストアに配布 して、経営者や従業員の防犯対策に役立てている。 29 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 生活安全ニュース(栃木) 事例4 北海道函館西警察署では、函館西防犯協会の協力を得て、16年3月から、「函西セーフティメー ル・ネットワーク」と称する情報提供サービスを開始した。希望者は、適宜送付される最新の 犯罪情報や防犯情報を記した電子メールを、パソコンや携帯電話で受信して手軽に見ることができる。 図1-31 函西セーフティメール・ネットワークの概要 配信情報 函館西警察署 提供 函館西防犯協会 一 学校関係 信 斉 児童・生徒 子ども 110番の家 保護者 (PTA) 30 地域住民 配 防犯ボランティア ア 企業等 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 (2)防犯相談 地域住民や事業者等の中には、犯罪被害に遭うことを不安に感じ、有効な対策を講じたいと考 えているが、十分な知識やノウハウがないため、困っている者も多い。このような知識やノウハ ウを有している警察では、それを広く国民に伝え、自主的な防犯活動を促進するため、犯罪の発 生状況、侵入手口等の分析結果をもとにして、 地 域 社 会 と の 連 帯 ・ ひったくり、空き巣、強盗等の被害に遭わないようにするための方策 ・ 錠前、防犯ガラス、防犯ブザー等の防犯設備や防犯機器 ・ 防犯灯の設置等、犯罪の防止に配意した公共空間・住宅の環境設計 に関する相談に対応している。 広島県警察では、錠前の付け替え 事 例 等の指導や防犯機器の活用に関す る相談活動を推進しているほか、優良な防犯 機器の普及促進を図っている特定非営利活動 法人広島県生活安全防犯協会と協力し、イベ ント会場等で最新の防犯機器や防犯グッズを 展示するコーナーを設け、そこで来場者から の防犯相談を受け付けている。来場者からは、 「 防 犯 ブ ザ ー は ど こ で 購 入 で き る の か 」、 「PTAの会合でチラシを配りたい」、「防犯機 器の正しい使い方が分かった」といった質 問・感想が寄せられている。 コラム イベント会場での防犯機器の紹介(広島) 8 生活安全アドバイザー制度 神奈川県の一部の市町村では、条例等に基づき、一定規模以上の建築や開発等を行う際に建築主と警察 が防犯面での事前協議を行う制度が導入されている。このような制度を効果的に運用するため、神奈川県 警察では、平成14年6月から必要な知識・経験を備えた警察官を「生活安全アドバイザー」に指定し、建 築主に対する助言・指導を行わせるなどしている。15年12月末現在、53人の警察官を指定し、県下全警 察署に配置している。なお、そのうち7人は、防犯設備士の資格を有している。 コラム 9 東京都安全・安心まちづくり条例の制定 東京都では、「東京都安全・安心まちづくり条例」を15年7月に制定し(同年10月施行)、住宅の防犯性 の向上に関して次のような規定を整備した。 ・ 犯罪の防止に配慮した構造、設備等を有する住宅の普及 ・ 防犯上の指針の策定(知事と公安委員会が共同で策定) ・ 建築確認申請時における警察署長による情報提供及び技術的助言 ・ 建築事業者、所有者等の上記指針に基づく措置に関する努力義務 ・ 建築主、所有者等に対する情報提供、技術的助言等 31 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 コラム 10 地方公共団体の防犯対策補助金制度の実施 埼玉県の朝霞市では、14年4月から、「朝霞市防犯対策補助金交付制度」を設け、住民の申請に応じて、 一般住宅及び共同住宅の玄関錠・補助錠の交換・取付けに対して費用の2分の1(限度額5,000円)を補助 している。 (3)参加・体験・実践型の防犯教育(学習) 地域住民が最新の犯罪発生状況や防犯対策を学習 することができるよう、警察では、幅広い層の国民 を対象とした様々な防犯教育を推進している。また、 その内容を容易に理解でき、学習効果が高まるよう、 防犯教育の実施方法は、主催者側から一方的に情報 を伝達するのではなく、受講者が参加し、体験し、 実践するものとなるよう努めている。 ① 地域安全マップの作成 地域安全マップとは、犯罪や事故の発生しやすい 箇所やその理由、実際に犯罪や事故が発生した場所 等を表した地図のことである。それを警察が作成・ 雨の日等、バスを待つ人 の列で歩道が埋まり、子 供たちは車道を通ること になる。 車からの声かけ犯 一女高(中島丁)あたり 6日頃 地域安全マップ(宮城) 提供して地域住民が活用することとしても一定の防 犯効果が期待できるが、地図の理解と活用の度合いを一層高め、また、地図の内容をより生活実 感に即したものとするため、警察では、地域住民が自らの手で地域安全マップを作成する取組み を推進している。地域住民は、警察から提供された犯罪情報だけでなく、自分や家族、友人等の 体験、警察と共同で行った危険箇所の点検活動を通じて得た情報に基づき地図の作成を行うこと になる。このようにして作成された地図は、防犯パトロールの実施経路や防犯灯の設置箇所の決 定にも生かされている。 事例1 高知県警察では、幼稚園児とその保護者が 参加する地域安全マップづくりを推進して いる。園児の保護者の多くは、子どもが連れ去り事件 や交通事故に巻き込まれることを心配しているため、 不審者の出没場所や通園路の道路交通の状況を書き入 れるなど、園児と保護者の双方の目から見た危険箇所 を地図に反映させている。参加した保護者からは、「安 全や地域に関心を持つことができた」、「今後の防犯対 策に役立てることができる」、「近所の人から事件情報 を聞くことができた」といった感想が寄せられている。 作成された地域安全マップ(高知) 32 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 ② 子どもの連れ去り防止訓練 地 域 社 会 と の 連 帯 子どもが被害者となる略取誘拐事犯を防止するため、警 察では、子どもとその保護者が参加する連れ去り防止訓練 を行っている。その内容は非常に実践的で、声かけ事案や 変質者の出没等を想定し、参加した子どもを不審者に扮し じ た職員に対峙させ、対処方法を具体的に教えており、「知 っている人でも保護者の了解なくついていかない」、「連れ 去られそうになったときは大声を出して逃げる」、「防犯ブ ザーや防犯笛を活用する」ことなどを身に付けさせている。 子どもに対する防犯訓練(三重) 事例2 三重県警察では、幼稚園児・保育園児や小学生が参加する誘拐防止教室を開催し、「子ども110 番の家」への駆け込み等の訓練を行っている。 ③ 街頭犯罪の防犯診断と被害防止訓練 路上強盗、ひったくり等の街頭犯罪の発生状況を分析した結果、被害者の性別、年齢等には偏 りがあり、犯行が行われる時間帯や場所にも一定の特徴があることが分かっている。国民がこれ らを正しく知り、適切な予防策を講ずれば、被害に遭う可能性を低くすることができるため、警 察では、犯罪が多発している時間帯や場所を通行する者に対して防犯診断を実施しているほか、 街頭犯罪の対象として狙われやすい女性や高齢者に参加を呼び掛けて、犯行手口を実演し、犯行 からの防御方法を習得させるための訓練を実施している。 事例3 愛媛県警察では、平成9年から、ひったく りの被害に遭いやすい女性を対象とした防 犯訓練を実施している。自転車に乗った犯人役の職員 が、被害者役の参加者に後ろから接近し、追い越す瞬 間に手に持っている鞄をひったくってみせるなど、参 加者の目の前で犯行の手口を再現した上で、車道側に 鞄を持たないこと、人気のない道では時々後ろを振り 返ることなど、具体的な防犯対策のノウハウを教示し ている。 ひったくり被害の防止訓練(愛媛) ④ 住宅の防犯診断 窃盗等を目的とする住宅への侵入を防止するため、警察では、住宅の防犯診断を実施している。 診断の中心は、建物錠と窓ガラスの防犯性能である。目の前で、ピッキングによって建物錠を開 錠したり、ガラスの破壊実験を行ったりして、参加者にそれらの防犯性能を体感させ、防犯性能 33 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 の高い製品への交換を促している。イベント会場や住宅展示場等の参集客を対象に実施するほか、 人の居宅を借りて、そこに近隣の住民を集めて行う場合もある。 事例4 富山県黒部警察署では、15年10月から、日本ロックセキュリティ協同組合と協力して、黒部 市内のマンションを訪問し、居住者の参加を得て、サムターン回し等の侵入手口に対処するた めの錠前の防犯診断を実施している。 事例5 香川県警察では、15年中49回にわたり、 県民が多数集まるイベント会場等に職員を 派遣して、「地域安全フェア」等参加・体験型の防犯講 習を実施した。そこでは、侵入盗を防止する効果の高い 最新式の錠前を展示したり、クイズ形式による防犯ガラ スの効果測定を行ったりしている。 クイズ形式による防犯ガラスの効果測定(香川) (4)犯罪防止に配慮した環境設計 警察では、道路、公園等の公共施設や住居の構造、設備、配置等について、犯罪防止に配慮し た環境設計を行うことによる、犯罪被害に遭いにくいまちづくりを推進している。 警察庁では、「道路、公園、駐車・駐輪場及び公衆便所に係る防犯基準」及び「共同住宅に係る 防犯上の留意事項」を定め、これらを含めた「安全・安心まちづくり推進要綱」を平成12年2月に 制定し、都道府県警察に示した。 道路、公園、駐車・駐輪場及び公衆便所に係る 防犯基準(抄) 1 道路 ○ 原則として、ガードレール、樹木等により歩道と 車道とが分離されたものであること。 ○ 防犯灯、街路灯等により、夜間において人の行動 を視認できる程度の照度が確保されていること。等 2 公園 ○ 植栽、いけがき、草むら、ぶらんこ等の遊戯施設 等につき、周囲の道路、住居等からの見通しを確保 するための措置がとられていること。 ○ 当該公園の周辺に、交番・駐在所、子ども110番 の家等が、又は当該公園に防犯ベルが設置されてい ること。等 3 駐車・駐輪場 ○ 管理者が常駐若しくは巡回し、管理者がモニター するカメラその他の防犯設備が設置され、又は周囲 から見通しが確保された構造を有すること。 ○ 駐車の用に供する部分の床面において2ルクス以 上、車路の路面において10ルクス以上の照度がそ れぞれ確保されていること。等 34 共同住宅に係る防犯上の留意事項(抄) ○ 基本事項 ・ 共用出入口、エレベーターホール等における見 通しの確保及び必要な照度の確保 ・ 住戸の玄関扉に係る防犯措置(破壊に強い材質、 こじ開け防止の措置等)、破壊及びピッキングに強 い錠の設置等 ○ 推奨事項 ・ 共同玄関扉へのオートロックシステムの導入 ・ エレベーターのかご内への防犯カメラの設置 等 ○ 特に配慮すべき事項 ・ 住戸の玄関扉における補助錠の設置 ・ 住戸の窓における破壊が困難なガラスの使用 等 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 警察では、これらに基づき、次のような施策を講じている。 ① 街頭緊急通報システム(スーパー防犯灯)の整備 街頭緊急通報システム(スーパー防犯灯)とは、非常用赤色灯、非常ベル、防犯カメラ、イン ターホン等を備えた防犯灯で、緊急時には警察への通報や映像の伝送をすることができるもので 地 域 社 会 と の 連 帯 ある。13年度及び14年度には国費によるモデル事業として、15年度からは国からの補助事業とし て整備しており、16年3月末現在の整備数は、全国23地区で計283基である。このほか、都道府県 における独自の事業として、全国8地区で計111基を整備している(東京、京都、大阪、香川、山 口)。 このシステムを使用した緊急通報により、公然わいせつ事件や傷害事件の被疑者を逮捕した例 もあり、事件の早期解決にも役立っている。 ② 子ども緊急通報装置の整備 子ども緊急通報装置とは、非常用赤色灯、非常ベル、通報者撮影カメラ、インターホン等を備 えた装置で、街頭に設置され、緊急時には警察への緊急通報をすることができるものである。14 年度に国費によるモデル事業として、各都道府県につき1通学区・7基ずつ、計329基を整備した。 このほか、大阪府が独自の事業として、6地区で計27基を整備している。 不審者に抱きつかれた女性がこの装置を使って緊急通報したため不審者がそのまま逃走した例 もあり、犯罪被害の防止に役立っている。 街頭緊急通報システム(スーパー防犯灯) 子ども緊急通報装置 ③ 街頭防犯カメラの整備 警視庁、石川県警察では、繁華街に、街頭防犯カメラの整備を行っており、警視庁では14年度 に計50基を、石川県警察では15年度に計33基を整備した。 35 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 ④ 「防犯モデルマンション登録(認定)制度」 防犯に配慮した構造、設備を有するマンションについて、防犯モデルマンションとして登録 (認定)する制度を整備・運用している(北海道、静岡、京都、大阪、広島、大分) 。 広島県では、11年9月から、委嘱を受けた一級建築士が審査を行い、その結果を受けて(社)広 島県防犯連合会が認定をする「防犯モデルマンション登録制度」を、全国に先駆けて整備してお り、15年12月末現在で85件が登録されている。 ⑤ 「防犯モデル駐車場登録制度」 自動車盗や車上ねらい等の多発を受け、防犯カメラ及びモニターの設置や一定以上の照度の確 保といった審査基準を満たす、防犯上優れた駐車場を認定する防犯モデル駐車場登録制度を整 備・運用している(京都、大阪、大分) 。 コラム 11 関係省庁協議会による「防犯まちづくりの推進について」の策定 内閣官房都市再生本部を事務局とし、警察庁、文部科学省及び国土交通省によって構成される「防犯ま ちづくり関係省庁協議会」では、防犯まちづくりの在り方について、仙台市長町地区ほか5地区をモデル地 区に設定して、調査検討を行った。15年7月、この調査検討結果から、市街地を「まちなかの商住混在地 区」、「大規模住宅団地を含む地区」、「密集市街地」、「郊外住宅地区」、「都市開発事業が予定されている地 区」の5類型に分け、それぞれの特性に応じた防犯対策や、関係省庁ごとの具体的な施策等を「防犯まちづ くりの推進について」として取りまとめた。 36 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 2 各分野で広まる連携 第 1 章 本項では、少年の健全育成を始め様々な目的のために行われている、警察と地域住民、ボラン ティア等との連携による活動を紹介する。 (1)地域安全活動と職域防犯団体の活動 地区防犯協会のほか、特定非営利活動法人(NPO法人)やボランティア団体によって、危険箇 地 域 社 会 と の 連 帯 所のパトロール、防犯に関する広報啓発活動、防犯懇談会の開催等の地域安全活動が幅広く行わ れており、多くの地域住民がこれに参加している。また、毎年10月には、(財)全国防犯協会及び 各都道府県防犯協会を中心に、全国地域安全運動が行われている。さらに、犯罪の被害を受けや すい業種や、犯罪に利用されやすい業種を中心に、組織的な防犯対策を講じるための職域防犯団 体が結成され、積極的な活動を行っている。 警察では、こうした活動にかかわる者と緊密な協力関係を保つとともに、活動の支援を積極的 に行っている。 (2)少年警察ボランティア活動 警察では、ボランティアを少年の健全育成のための重要なパートナーと位置付け、平成16年4月 現在、全国で約5万8,000人のボランティアを次のとおり委嘱しており、協力しながら街頭補導活動 その他少年の健全育成のための諸活動を推進している。 少年指導委員 約6,000人 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づき、 都道府県公安委員会から委嘱を受け、少年を有害な風俗環境の 影響から守るための少年補導活動や風俗営業者等への協力要請 活動に従事している。 少年補導員 約5万1,000人 街頭補導活動、環境浄化活動を始めとする幅広い非行防止活動 に従事している。 少年警察協助員 約1,000人 非行集団に所属する少年を集団から離脱させ、非行を防止する ための指導・相談に従事している。 また、警察では、少年とのふれあいの場として、警察署の道場を開放して、地域の少年に柔道 や剣道の指導を行う少年柔剣道教室を全国で開催し、職員が少年とともに汗を流している。15年 中は750警察署で、約4万4,000人の少年が参加した。 事例1 15年8月、ボランティアが中心となり、暴走族その他の非行集団からの離脱や立直りを支援す るため、非行集団の構成員やその離脱者等が参加するサッカーチームを結成した。このチーム は、地域住民や大学生の協力を得て、毎週2回、約2時間ずつの練習を行っており、県警察のサッカーチー ムとの試合も行った。今後は、地域のサッカーリーグに加盟する予定である(広島)。 37 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 事例2 警察の指導によって暴走族が解散した後、 その構成員であった者が、14年4月、ボ ランティア団体を結成し、駅舎、通学路等の清掃活動、 福祉バザーの開催、保育園の運動会の設営作業等の奉 仕活動を行うようになった。また、この団体の代表者 は、市の暴走族根絶推進協議会の下で暴走族加入阻 止・離脱支援促進アドバイザーとして委嘱され、活動 している(福岡) 。 ボランティア活動をする少年(福岡) 事例3 14年10月、校内で暴力をふるい、喫煙や飲酒をするなどの問題行動が目立った1人の中学3年生 を立ち直らせるため、少年補導員が中心となり、飲食店主、民生委員、教諭から成る少年サポー トチームが編成された。そこで、面接指導を行うほか、飲食店の手伝いをさせ、汗を流して食事を作り、他人 に喜ばれることの充実感を体験させるなどの取組みを行った結果、少年は、問題行動をすることが減り、また、 進路を真剣に考えるようになり、卒業後は自己の適性に合った職業を得ることができた(神奈川)。 コラム 12 少年警察ボランティアの声 (社)全国少年補導員協会が15年に行ったアンケート調査・インタビューによると、少年警察ボランテ ィアから、「少年補導員として活動しても、少年本人とその家族が無関心なら、いくら頑張っても、無駄な ケースが多い」、「青少年問題は地域との連携がなくてはできない。学校、地域、行政の横のつながりが大 事だ」といった問題点が指摘されており、日頃、様々な問題を抱える少年と接しているボランティアが、 少年非行に対する地域社会全体の意識の不足を問題視していることがうかがえた。 (3)子どもを守るために 最近、子どもが被害者となる重大事件が多発しており、国民の不安感も高まっていることから、 警察では、保護者を始め、地域住民、教育委員会、学校との連携を強化し、子どもに対する犯罪 やその前兆と思われる事案に関する情報を把握し、これを地域住民や関係機関・団体に提供する とともに、子どもの防犯対策の普及、警ら・警戒活動の強化、子どもの所在不明事案等の捜査の 徹底を図っている。 ① 登下校時の安全対策 平成15年中、子どもの略取誘拐事件や所在不明事案が相次いで発生したことを受け、警察庁で は、同年10月、15歳以下の少年の略取誘拐事案の実態に関する調査を行った。その結果、略取誘 38 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 拐事案は、路上での発生が半数以上を占め、登下校の時間帯の発生が多いことが明らかになった。 これを参考に、警察庁では、略取誘拐事案の防止のために指導啓発すべき重点事項を次のとおり 定め、ボランティアや関係機関と協力して、子どもに対する防犯教育や、保護者、学校、教育委 員会、地域住民への助言・連絡等を行っている。 ○ 子どもが「自分の身を自分で守る」ため身 に付けるポイント ・ 一人にならない。 ・ 知っている人でも保護者の了解なくつい ていかない。 ・ 万一連れ去られそうになったら大きな声 を出すなど抵抗して逃げる。 ・ 外に行くときは、保護者に行き先、帰宅 (予定)時間を告げる。 ・ 危険なことがあったときは、保護者にそ のことを話す。 事例1 ○ 保護者、学校、地域住民に対する呼び掛け ・ 子どもと共に通学路の点検や見直しを行 い、登下校時は、人通りの多い安全な道路 を通学路として利用させる。 ・ 学校や自宅周辺の見回りを行う。 ・ 不審者から子どもが声を掛けられたり、 不審者の出没があったときは、具体的な対 処方法を教える。 地 域 社 会 と の 連 帯 岐阜県養老警察署では、15年10月、子ど もが犯罪の被害に遭わないよう、地域住民 延べ1,900人と合同で、通学路の安全点検を行った。 事例2 静岡県では、12年から、女性ボランティ ア団体「富士エレガンス」が、富士地区防 犯協会と協力して、富士市内の小学校の新入生に人形 劇を用いた防犯講習会を開催し、防犯ホイッスルを配 付している。16年は、20校、2,404人の新入生を対 象に実施した。 事例3 地域住民による通学路の安全点検(岐阜) 京都府では、警察署が学校、幼稚園、子ど も会等で開催する防犯教室において、8年 から、女性ボランティア団体「平安レディース」が、 寸劇・紙芝居等を行い、子どもにも分かりやすい防犯 指導を実施している。そこでは、警察の提供した子ど も向けの防犯テキストや犯罪情勢等に関する資料が活 用されている。 平安レディースによる紙芝居(京都) 39 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 また、街頭でつきまといや声かけ等をされたときに、子どもが安全な場所に避難することがで きるよう、地域のボランティアの協力を得て、全国各地で「子ども110番の家」に対する支援を実 施している。あらかじめ「子ども110番の家」になることを引き受けた民家、商店では、事案発生 時に避難してきた子どもを保護し、警察への連絡を行うことにより、子どもが被害者となる凶悪 事件の未然防止を図っている。 事例4 長崎県警察では、16年3月から、「子ども 110番の家」の制度に協力するボランテ ィアに対し、避難してきた子どもの保護、不審人物・ 不審車両の特徴の聞き取り、警察への110番通報等の 要領を記したマニュアルを配布し、その活動を支援し ている。 子ども110番の家マニュアル (長崎) 警視庁こども110番 マーク ② 学校施設の安全対策 15年中に学校で発生した刑法犯の認知件数は46,723件で、11年の1.5倍に増加した。また、学校 へ不審者が侵入する事件も続発しており、11年には京都府で、13年には大阪府で、15年には再び 京都府で、児童が殺傷される事件が発生した。警察では、地域住民、教育委員会、学校関係者が 行う学校施設の安全管理に協力し、このような事件の発生防止を図っている。 警察庁は、文部科学省が14年12月に公表した「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」 の作成に協力した。このマニュアルでは、不審者の侵入防止等に関して必要と思われる対応例が 侵入事案の各場面に応じて整理され、日頃からこうした侵入事案に備えるための方策を解説して いる。警察では、学校や教育委員会に協力し、これを活用して、児童・生徒、教職員、地域住民 が参加する防犯訓練を実施している。 事例5 事例6 40 石川県警察では、学校、地域住民、警察が協力して学校内やその周辺の警戒に当たる「スクー ルサポート隊」の結成(13年10月)を支援した。 徳島県警察では、警察署が地域住民に学校の安全対策の協力を呼び掛け、これを受けた工業高校 の生徒たちが、防犯器具である「さすまた」を作成し、15年9月、小学校に寄贈した。 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 スクールサポート隊(石川) 事例7 事例8 「さすまた」の寄贈(徳島) 東京都教育庁は、14年8月、学校や児童館等に不審者が侵入したときの子どもの安全を確保す るため、これらの施設と警視庁とを結ぶ非常通報装置を設置した。 兵庫県警察では、15年6月から、通り魔事件その他学校へ波及するおそれのある事案を110番 で認知した場合には、警察本部から発生現場に一番近い学校に直接電話で連絡し、その後、学 校や児童館を結ぶ緊急連絡網を通じて近隣校へ注意を喚起する「学校緊急通報制度」を運用している。 事例9 秋田県警察では、15年8月から、不審者の警戒情報や他の都道府県で発生した子どもを被害者 とする特異な犯罪の情報を、警察本部から教育委員会や学校に電子メールで一斉に送信するシ ステムを運用している。 (4)より良き生活環境のために ① 風俗環境の浄化 最近では、歓楽街のほか、住宅地域でも、いわゆるピンクビラが貼付・配布され、性風俗店の 宣伝を行う捨て看板が設置されるなど、風俗環境が憂慮すべき状況にある。警察では、歓楽街を 中心に、いわゆるピンクビラや捨て看板を媒介とする売春事犯等の違法行為の取締りのほか、都 道府県風俗環境浄化協会その他の関係団体やボランティアと協力して、いわゆるピンクビラの除 去等の風俗環境浄化活動を行い、犯罪の防止や街のイメージの向上を図っている。 事例1 広島市の流川・薬研堀地区では、違法広告物が氾濫し、街頭での客引き行為が横行するなど、 風俗環境が悪化していたことから、平成15年5月、地区町内会、社交飲食店組合、区役所等の 関係者から成る「広島市中央部安全・快適な街づくり協議会」を組織し、毎月1回、歓楽街の合同パトロー ルを実施している。また、街頭での客引き行為や喧嘩を防止するため、防犯カメラを設置し、地区内の犯罪 の発生を減少させた。 41 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 ② 地域と連携した環境犯罪に対する取組み 最近では、悪質な産業廃棄物の不法投棄事案が多発していることから、警察では、産業廃棄物 事犯への監視体制を強化し、取締りを推進しているが、このような事案の発見には、地域住民や ボランティアが活躍している。例えば、警察本部長又は警察署長によって環境監視モニターとし て委嘱された地域住民やボランティアが、日常生活の中で廃棄物の不法投棄場所や不法焼却現場 等を発見した際に、警察への通報を行っている。 事例2 環境監視モニターとして委嘱された男性が、山中にタマネギ屑が大量に投棄され、異臭を放っ ているのを発見し、警察に通報した。この通報に基づき、警察官がパトロールを強化していた ところ、現場付近で、荷台にタマネギ屑の入ったプラスチックコンテナ20数個を載せた貨物自動車を発見 し、15年5月までに、関係者2人を廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反で検挙した(兵庫)。 (5)街からの暴力追放 警察では、地域住民や都道府県暴力追放運動推進センター、弁護士会等と一体となって、暴力 団を地域社会から排除するための活動を行っている。 ① 暴力団事務所撤去活動の推進 地域住民に大きな危険と不安を与える暴力団事務所に関し、地域住民は、賃貸借契約の解除や 暴力団事務所の使用差止め等を求める民事訴訟を提起したり、事務所の立退きを求める住民運動 を行ったりするなど、様々な活動を行っている。警察では、情報の提供や活動に参加する関係者 の保護対策等によって、これらの活動を支援している。 暴力団事務所前でシュプレヒコールを行う住民 42 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 事例1 鳥取県米子市に拠点を有する山口組傘下組織の暴力団事務所にけん銃が発砲される事件が発生 したことなどを契機として、平成13年9月、地域住民により、事務所の使用差止めと閉鎖を求 める運動を推進するための委員会が設立された。この委員会は、事務所の撤去を訴えて、街頭署名活動、立 て看板や横断垂れ幕の設置、住民大会の開催、街頭パレード等を積極的に行った。警察は、関係者の保護対 策を徹底して行い、警察署長名でこの暴力団に警告書を送付するなどの支援を行った。 その後、地域住民らが、事務所の所有者である暴力団組長を相手取り、使用差止請求訴訟を提起し、15 地 域 社 会 と の 連 帯 年3月、鳥取地裁米子支部は、住民の人格権が侵害されているとして住民側の請求を認め、暴力団事務所と しての使用差止めを命じる判決を下した。 ② 暴力団の義理かけ規制 暴力団関係者が多数参集する襲名披露や法要等の義理かけ行事は、対立関係にある他の暴力団 との抗争を誘発し、地域住民に危険を及ぼすおそれが大きい。警察は、会場となるホテル等に対 して暴力団による利用を拒否するよう協力を依頼するほか、暴力団に対して義理かけ行事を中止 するよう警告するなど、その阻止に努めている。また、実際に義理かけ行事が開催された場合に は、機動隊を現場に配置して警戒活動を行うなどしている。 暴力団の義理かけ行事に伴うボディチェック 事例2 暴力団の義理かけ行事に伴う車両検問 15年10月、山梨県警察は、稲川会傘下組織組長の襲名披露が県内の結婚式場で行われること を把握したため、式場の責任者に対し契約を解除するよう指導するとともに、同傘下組織に対 して義理かけ行事を中止するよう警告した。さらに、県暴力追放運動推進センターの会長である県知事名で、 ホテル、催事場に対して暴力団排除活動への協力を要請する文書が発出され、また、警察の取組みが報道さ れたことで、県内で暴力団排除の気運が高まった。この結果、同傘下組織から契約解除の申入れがなされ、 襲名披露の開催は阻止された。 ③ 繁華街からの暴力追放 暴力団や国際犯罪組織は、繁華街を重要な資金獲得のための場所として、様々な不当要求行為 や違法行為を行い、ときには利権をめぐって対立抗争を引き起こしている。 43 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 そこで、警察、地域住民、行政機関等が協議会を設置し、暴力団排除の決起大会を開催するな ど、様々な取組みを進めている。 事例3 15年7月、国内最大級の繁華街が存する東京都新宿区で、暴力団や国際犯罪組織を排除し、健 全な繁華街づくりを推進することを目的として、新宿繁華街犯罪組織排除協議会が設置され、 警察と地域住民や事業者等が協力して、不当要求防止責任者講習の実施や、会員との情報交換、合同パトロ ール等の活動を行っている。 協議会の発足式(東京) 夜間のパトロール活動(東京) (6)薬物乱用、銃器犯罪のない地域社会を目指して 警察では、薬物の危険性、有害性についての正しい知識を広めて薬物乱用を拒絶する意識を醸 成するため、啓発用資料を作成し、各種会合で活用しているほか、関係機関・団体及び地域住民 と協力して、啓発用ポスターの掲示やキャンペーンの推進等の広報啓発活動を行っている。また、 銃器の危険性、反社会性等について国民の意識を高めるための活動を行うとともに、国民に違法 銃器に関する情報の提供を呼び掛けている。 事 例 福井県警察では、薬物乱用防止推進委員、 少年警察協助員、教諭、生徒等と協力し て、祭礼会場、公民館、病院といった多くの者が集 まる場所でチラシを配布するほか、ポスターやパネ ルを展示するなどして、地域社会全体で薬物乱用を 拒絶する規範意識の醸成を図っている。 公民館でのパネル展示(福井) 44 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 コラム 13 ストップ・ガン・キャラバン隊の活動 ストップ・ガン・キャラバン隊は、銃器使用犯罪の被 害者の遺族や関係者、銃器問題に関心のある研究者等を 構成員として、平成9年に結成されたボランティア団体で ある。この団体は、警察その他の関係機関が開催する 地 域 社 会 と の 連 帯 「銃器犯罪根絶の集い」を始めとする各種大会で講演を行 い、けん銃の恐ろしさ、銃器犯罪の悲惨さを訴え、国民 の間に違法銃器を根絶しようとする意識を高めている。 15年は、「銃器犯罪根絶の集い・群馬大会」に参加した ほか、東京都、福岡県で、警察、地元新聞社、企業等と 協力して銃器犯罪根絶を訴えるイベントを主催するなど、 全国で活動を行っている。 ストップ・ガン・キャラバン隊の活動 (7)地域の交通安全活動 ① 全国交通安全運動 毎年春と秋に実施される全国交通安全運動は、広く国民に交通安全意識の普及・浸透を図り、 交通事故防止の徹底を図ることを目的としており、毎回、国民各層の幅広い参加を得た国民運動 として展開されている。 ② 地方公共団体が行う活動への協力・支援 警察では、地方公共団体が行う交通安全活動に対し、協力・支援を行っている。 事例1 青森県では、平成12年から、各市町村が、「高齢者の交通安全対策」、「飲酒運転の追放」、「シ ートベルト・チャイルドシートの着用」のうち1つのテーマを選び、それを重点的に展開する 「一自治体一施策運動」を推進している。青森県警察では、各市町村の交通安全担当者に対し、運動の進め 方を助言したり、交通関係団体に対する協力要請を行ったりするなどの支援を行っている。 飲酒運転追放の呼び掛け(青森) 街頭における自転車安全指導(山口) 45 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 ③ ボランティアが行う活動への協力・支援 警察では、地域交通安全活動推進委員や交通指導員等のボランティアが行う交通安全教育、広 報啓発活動が効果的なものとなるよう、交通安全教育の指導者に対する研修会を開催したり、交 通事故情報を提供したりするなどの支援を行っている。 事例2 15年、警察庁は、高齢者や身体障害 者による電動車いすの利用中の交通事 故を防止するため、全国8地区をモデル地区に指 事例3 14年以降、千葉県では、県に登録し たボランティアで構成する「交通安全 推進隊」を小学校の学区ごとに設置している。 定し、ボランティアを対象とした指導・教育研修 「交通安全推進隊」は、警察や市町村等の協力・ 会を開催した。その後、この研修会の参加者が主 指導の下、通学路での児童の保護・誘導といった 体となって、電動車いすの利用者を対象とした交 交通安全活動を実施している。 通安全教室等が実施された。 電動車いす安全利用講習会(和歌山) ボランティアによる児童の誘導(千葉) ④ ヒヤリ地図の作成 自治会や老人クラブの集会等では、参加者同 士が協力して、交通事故に遭いそうになるなど、 道路で「ヒヤリ」、「ハッと」した経験のある地 点にシールを貼るなどして、「ヒヤリ地図」を 作成している。この地図を作成する過程で、参 加者が交通事故防止に関する意見交換を行うこ とにより、地域の危険箇所を認知し、交通安全 意識を高める効果が得られることから、警察で は、作成手順を助言するなど、住民の自発的な 取組みを支援している。 46 ヒヤリ地図の作成(山形) 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 ⑤ 交通安全総点検 地 域 社 会 と の 連 帯 警察では、8年度から、道路管理者等と協力 して、高齢者、車いす利用者、児童等の幅広い 人々の参加を得て、地域が一体となって道路交 通環境の点検を行う「交通安全総点検」を実施 している。実施に際しては、健常者が車いすを 利用して点検を行ったり、点検を昼間と夜間の 2回実施したりするなどの工夫を凝らし、その 結果を交通安全施設の整備や交通規制の見直し 等に反映させている。 交通安全総点検の実施状況(東京) 47 第 第 1 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 3 防犯ボランティア団体の 活動 章 地 域 社 会 と の 連 帯 最近、地域の治安水準の悪化に対して強い問題意識を持つ地域住民によって、多くの防犯ボラ ンティア団体が結成されている。地域住民同士のつながりが希薄化していると言われる中、この ような団体は、「安全と安心」という地域社会全体の利益のため、地域の実態に即した防犯活動を 精力的に行っており、地域住民同士の「顔つなぎ役」としての役割や、支援関係機関の連携の結 節点としての役割を果たすことが期待される。 警察は、防犯ボランティア団体を、治安の回復のための重要なパートナーと考えており、その 熱意と行動力に大きな期待を寄せている。 (1)防犯ボランティア団体の現状 平成15年末現在、全国で活動中の防犯ボランティア団体は、警察が把握しているだけで、防犯 協会、少年警察関係団体等を除き、約3,000団体(注)あり、それらに所属して活動しているボランテ ィアの総数は約18万人に上る。 活動内容で多いのは防犯パトロールで、約9割の団体がこれを行っている。このほか、防犯広報 が約6割の団体で、環境浄化、防犯指導・診断、子どもの保護・誘導、危険箇所点検がそれぞれ約 4割の団体で行われているなど、1つの団体が複数の防犯活動を行っている例が多くみられる。 図1-32 防犯ボランティア団体の活動内容 防犯パトロール 防犯広報 環境浄化 防犯指導・診断 子ども保護・誘導 危険箇所点検 乗り物盗予防 防犯教室・講習会 放置自転車等対策 駐車・駐輪場警戒 地域安全マップ作成 その他 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 注:1つの団体が複数の活動内容に該当する活動を行っている場合は、複数計上した。 注:平均して月1回以上の活動実績(単に意見交換や情報交換のみを行う会議を除く。)があり、かつ、構成員が5人以上の 団体に限る。また、2以上の都道府県にまたがって活動している団体は除いている。 48 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 (2)防犯ボランティア団体の活動と警察との協働 警察では、防犯ボランティア団体の活動を一層活発化させるための支援措置を講じているほか、 「安全のために何かしたい」という人々が活動を始めるためのきっかけとなるような、ノウハウや 地域の犯罪情報の提供を行っている。 また、地方公共団体でも、地域の安全活動に従事する団体に対して、財政的支援を講じるなど、 地 域 社 会 と の 連 帯 その活動を支援する取組みが広がりつつある。 コラム 14 地方公共団体の支援制度 東京都の世田谷区では、平成15年7月、世田谷区地域安全安心まちづくり区民活動支援要綱を定め、 ・ 地域の犯罪、事故等の発生を防止するための活動 ・ 区民の生活安全に関する意識の啓発に係る活動 ・ その他安全で安心なまちづくりに資するために必要な活動 を行っている団体に対し、10万円を限度に、活動に使用する物品等の経費や活動中に事故に遭った場合の 保険に加入するための経費等を助成しており、同年中は98件の助成が行われた。 ① 取組み事例その1∼地域安全マップづくり∼ 高知県警察では、地域住民の自主的な防犯活動を促進するため、15年から、「安全・安心まちづ くり実践塾」を開催している。その活動の一環として、地域住民自らが地域の犯罪や事故の起こ りやすい危険箇所を把握し、犯罪や事故の発生状況を表わす地図を作成する「地域安全マップ活 動」を推進しており、その概要は、以下のとおりである。 ・ 受講者は、地域安全マップの作成方法や犯罪が起こり にくいまちづくり等に関する基礎知識を習得するための 講座を受講する。 講座の受講 ・ 参加者をいくつかのグループに分け、グループごとに班 長、副班長、調査役、地図係、写真係等を任命し、役割を 分担した上、街頭を歩いて危険箇所の把握活動を行う。 危険箇所の把握活動 49 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 ・ 把握した危険箇所の情報をもとに、参加者が協力して 地域安全マップを作成する。 マップの作成 ・ 各グループが作成した地域安全マップを発表するととも に、互いのマップを見比べて、地域の危険箇所やマップの 改善点等について検討する。 マップの発表と検討 受講者からは、「日頃聞けない専門的な防犯の知識について勉強ができてよかった」、「防犯ボラ ンティア同士が連携して取組みを進める必要があると感じた」、「気を付けて街を見たら、危ない と思う場所がたくさんあった」といった感想が寄せられた。実践塾の修了後、受講者は、地域安 全マップづくりを自主的に行うなど、地域の自主防犯活動のリーダーとして活躍している。 ② 取組み事例その2∼「民間交番」の設置∼ 仙台市青葉区では、窃盗やひったくりといった身近な犯罪の発生や少年非行を防止するため、 防犯協会会員を始めとする地域住民がパトロール活動を行っている。このような自主的な防犯活 動に対して、宮城県は、防犯活動の拠点となる施設の無償貸与を行っているほか、仙台北地区防 犯協会連合会は、事務所の備品、光熱費、パトロール用機材・装備等の提供を行っている。仙台 北警察署も、犯罪情報の提供、合同パトロールによ るノウハウの提供等の支援を行っている。 ア 「民間交番」の設置 当初、パトロール活動は、近隣の公園に集合した 上で開始していたが、より地域に密着した活動を行 うためには、活動の拠点となる施設が必要と考えら れた。そこで、青葉区の宮町防犯協会は、県及び県 住宅公社に働き掛け、県営住宅1階の空き店舗の無償 貸与を受けた。14年6月、同協会は、これを「宮町地 区防犯協会事務所」と名付け、パトロール活動等の 「民間交番」宮町地区防犯協会事務所 50 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 防犯活動の拠点である「民間交番」として、会員を 地 域 社 会 と の 連 帯 常駐させることとした。 この「民間交番」では、警察官や地域住民が立ち 寄って、地域における犯罪、事故等に関する情報の 交換を行うとともに、仙台北警察署からファックス で送られてくる犯罪情報等を参考にしながら、地域 住民への注意喚起を行うなど、地域安全情報の発信 を行っている。 警察との情報交換 イ 防犯パトロール活動 宮町防犯協会では、防犯指導隊員等が、毎月2回な いし3回、約1万4,000世帯が居住する地区内のパトロ ール活動を行っている。「民間交番」に集合した防犯 指導隊員等は、数人ずつ、いくつかの班に分かれ、 揃いの緑色のジャンパー、帽子、夜光チョッキを着 用し、トランシーバー、強力ライトを携行して地区 内を巡回し、 ・ 事件・事故、違法駐車、いわゆるピンクビラの トランシーバーを活用したパトロール活動 頒布を発見したときの警察への通報 ・ 防犯登録のない自転車や無灯火の自転車の利用者への声掛け等の防犯指導・安全指導 等を行っている。 「民間交番」が設置された仙台北警察署宮町交番の管轄地域では、設置前の1年間と設置後の1年 間を比べると、刑法犯の認知件数が136件(19.3%)減少した。 ③ 取組み事例その3∼京成小岩イエローベレー隊の活動∼ 東京都江戸川区では、商店会会長の「自分たちの街は自分たちで守る。夜間パトロールを通じ て地域の団結を高め、安心して買い物ができる街づくりに貢献したい」という呼び掛けにより、 15年6月、商店主等の地域住民が、防犯ボランティア団体「京成小岩イエローベレー隊」を結成し た。 この団体は、毎週土曜日の夜間にパトロール活動を行っているが、結成時に行った警察署との 合同パトロール活動を通じてそのノウハウを身に付け、現在では、隊員同士で意見交換を行い、 知識及び技能の向上に努めている。また、隊長が警察署と情報交換を行って、その情報をパトロ ール活動に反映させるなど、活動が効果的なものとなるよう工夫をしている。 51 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 ア パトロール活動の開始 京成電鉄小岩駅前を隊員の集合場所に定め、そこ に隊員が整列して、服装、装備品等の点検を行い、 隊長が、その日のパトロール活動の重点事項を指示 する。 イ パトロール活動 パトロール活動中は、活動経験の長い隊員が先頭 に立ち、通行人に必ず「こんばんは」と声掛けをす る。通常は歩いて活動するが、定期的に自転車で広 い範囲にわたる活動を行う。また、連休中は、不在 住宅を中心としたパトロール活動を行う。パトロー パトロール活動の開始 ル活動のポイントは、次のとおりとされている。 ・ 駐車場の警戒は、車両と車両の間までライトを照らす。 ・ 表通りを歩くだけでなく、裏通りにも注意を払う。 ・ 公園では、遊具、公衆便所の中も見る。 ・ 事件・事故が起きた施設に立ち寄って、異常の有無を確認するほか、防犯指導を行う。 ・ 大きな道路では両側の歩道に分かれて歩く。 ・ 後ろからの車の接近を先頭の隊員に教えて、事故防止に配意する。 52 パトロール活動 公園の公衆便所内のチェック 駐車場の警戒 公共施設管理者との情報交換 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 このほか、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等では、自転車に乗った買い物客に対 する防犯指導を行っており、自転車に乗っているときにひったくりの被害に遭わないように、前 かごに入れた鞄の上に、買った物を載せるなどの工夫を行うよう指導している。 ウ パトロールの終わり 地 域 社 会 と の 連 帯 パトロール終了時にも、隊員が整列し、そこでパトロール中に気付いた問題点を相互に確認す る。隊長は、確認された防犯上の問題点を、警察署、地方公共団体、商店会に連絡する。 コラム 15 地域住民による犯罪抑止対策 ∼東京都江戸川区小岩地区∼ 東京都江戸川区のJR小岩駅周辺では、い わゆる風俗店やモーテルが増加して生活環 境が悪化するとともに、ひったくり、自転 車盗等が多発している。14年中の犯罪の発 生件数は約1,400件で、5年前と比べて 30%以上も増加し、同年5月には暴力団員 による発砲事件が発生するなどして、地域 住民の不安感が一層高まった。 こうしたことから、小岩地区では、14年 9月、37の町内会が結集して「小岩地区防 犯カメラ設置推進委員会」を開催し、15年 3月までに住民やJR小岩駅周辺のスーパー マーケット、企業等から約3,000万円の寄 街頭に設置された防犯カメラ 付金を集めて、JR小岩駅周辺に防犯カメラ 60台を設置し、運用している。 これに対し、江戸川区は、防犯カメラの年間の維持費約250万円を負担して、活動を支えている。 また、15年6月、警察署長から委嘱を受けた郵便局、新聞販売店、ピザ販売店の従業員から成る防犯ボ ランティア団体「犯罪抑止パトロール隊」(隊員30人)が結成され、配達中に不審者や犯罪を目撃した場 合は警察へ通報を行っている。同隊は、警察署から犯罪情報の提供を受けるなど、警察との連携を図って おり、16年1月、住居に侵入したところを帰宅した家人に見つかって逃走中の窃盗犯を隊員が発見し、追 跡して取り押さえるなどの成果を上げている。 53 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 (3)防犯ボランティア団体の意識 これまでに紹介した防犯ボランティア団体の活動は、地域の治安を良好に保ち、市民生活の安 全と平穏を守るためになくてはならないものとなりつつあり、警察では、こうした団体との協力 関係を深めるとともに、その活動の支援策を積極的に講じていくこととしている。 そこで、警察庁は、防犯ボランティア団体の活動状況や参加者の問題意識等を把握するため、 平成16年4月、「防犯ボランティア団体に対するアンケート調査」(以下「防犯ボランティア団体調 査」という。 )(注)を実施した。 ① 活動を始めたきっかけ 防犯ボランティア団体調査において、防犯ボランティア団体の代表者が活動を始めたきっかけ について質問したところ、「自分が生活している地域での防犯活動の必要を感じたから」という回 答が最も多く(77.1%)、次いで「自治体・警察からの助言を受けて」(54.7%)、「他人の役に立ち たいと思っていたから」(29.7%)という回答が多かった。このことから、国民の間で治安に対す る危機感が高まっていることがうかがえる。 図1-33 活動を始めたきっかけ(複数回答) 自分が生活している地域での 防犯活動の必要を感じたから 77.1% 自治体・警察からの 助言を受けて 54.7% 他人の役に立ちたいと 思っていたから 29.7% 時間に余裕があったから 8.3% その他 11.8% 0.9% 無回答 0 10 20 30 40 50 60 70 80(%) ② 団体の結成時期 防犯ボランティア団体の結成時期について質問したところ、15年中に結成された団体は397団体 と、回答数全体の約3分の1を占めた。次いで、14年中に75団体が、13年中に45団体が、12年中に 41団体が結成されている。このように、15年に団体が急増し、16年も引き続き多くの団体が結成 されており、最近、地域住民の間で、自らの手で自らの安全を守ろうとする意識が高まっている 注:全国で活動中の防犯ボランティア団体で警察が把握しているもののうち、地域住民を主たる構成員とし、防犯パトロ ールを活動内容としている1,440団体の代表者に対して、活動を行う上でのニーズや警察・地域の反応等についてアン ケートを行い、1,159団体(80.5%)から回答を得た。 54 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 ことがうかがえる。 図1-34 地 域 社 会 と の 連 帯 団体の結成時期 450 397 400 350 300 250 218 200 150 96 85 100 50 0 昭 和 63 年 以 前 7 11 4 12 20 平 成 元 年 平 成 2 年 平 成 3 年 平 成 4 年 平 成 5 年 平 成 6 年 75 33 34 30 26 25 平 成 7 年 平 成 8 年 平 成 9 年 平 成 10 年 平 成 11 年 41 45 平 成 12 年 平 成 13 年 平 成 14 年 平 成 15 年 そ の 他 ・ 無 回 答 ③ 活動に参加するに当たって団体を知った経緯 防犯ボランティア団体の構成員が、どのようにして団体を知り、その活動に参加することが多 いのかについて質問したところ、「団体の防犯パトロール活動を実際に見て」という回答が最も多 く(51.8%)、次いで「人づてに話を聞いて」(38.9%)、「団体の活動内容について書かれた団体発 行のチラシ、パンフレットを見て」(33.9%)、「団体の活動内容について書かれた行政機関発行の チラシ、パンフレットを見て」(33.9%)という回答が多かった。 図1-35 活動に参加するに当たって団体を知った経緯(複数回答) 51.8% 団体の防犯パトロール活動を実際に見て 38.9% 人づてに話を聞いて 団体の活動内容について書かれた団体発行の チラシ、パンフレットを見て 33.9% 団体の活動内容について書かれた行政機関発行の チラシ、パンフレットを見て 33.9% 7.5% シンポジウム等のイベントに参加して 1.2% 団体のホームページを見て 29.5% その他 4.6% 無回答 0 10 20 30 40 50 60(%) 55 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 ④ 団体の活動に対する地域住民の反応 防犯ボランティア団体の活動に対する地域住民の反応について質問したところ、団体の活動に 地域住民が「好意的である」と考える団体は87.3%となっており、団体の活動が地域住民の理解を 得て行われていることがうがかえる。 図1-36 団体の活動に対する地域住民の反応 良い印象を持っていない 好意的である 特に感触はない・無関心である 無回答 0.8% 87.3% 0 10 20 30 40 1.0% 10.9% 50 60 70 80 90 100(%) ⑤ 全国での組織化・活性化 防犯パトロール活動を行う団体が全国でより多く組織され、その活動が活性化するべきだと思 うかについて質問したところ、「そう思う」と答えた団体は92.4%であり、「どちらでもいい」 (2.8%) 、「そうは思わない」 (2.3%)という回答は非常に少なかった。 図1-37 防犯パトロール活動を行う団体が全国でより多く組織され、活性化するべきだと思うか そう思う どちらでもいい そうは思わない 無回答 2. 2.8% 2.4% 92.4% 2.3% 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (%) 100 00(% ⑥ 団体に対する警察の対応 防犯ボランティア団体に対する警察の対応について質問したところ、60.6%の団体が「十分であ る」と答える一方、14.6%の団体が「不十分である」と答えている。 図1-38 団体に対する警察の対応 十分である どちらとも言えない 不十分である 無回答 2.3% 60.6% 0 56 10 20 30 22.5% 40 50 60 70 14.6% 80 90 100 00(% ( %) 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 ⑦ 団体が警察と連携する上での警察への要望 そこで、警察の対応が「不十分である」と答えた防犯ボランティア団体に対し、警察にどのよ うな対応を望むのか質問したところ、「防犯ボランティア団体に対する支援・協力意識や理解の促 進」という回答が最も多く(59.2%)、次いで「地域の犯罪情勢についての情報提供」(52.1%)、 「合同パトロールの促進」 (50.3%)という回答が多かった。 図1-39 地 域 社 会 と の 連 帯 連携する上での警察への要望(複数回答) 防犯ボランティア団体に対する 支援・協力意識や理解の促進 59.2% 地域の犯罪情勢についての 情報提供 52.1% 50.3% 合同パトロールの促進 ボランティアメンバーに 対する研修の実施等の活動 ノウハウの提供 38.5% 警察側の対応体制 (対応窓口等)の明確化 34.3% 活動拠点となる場所の提供 7.7% その他 18.9% 無回答 1.8% 0 10 20 30 40 50 60 70(%) ⑧ 活動を行う上での不満・不安 防犯ボランティア団体が活動を行う上での不満や不安の有無について質問したところ、「不満・ 不安がない」と答えた団体は60.7%と多かったが、他方で、3分の1を超える37.5%の団体が「不 満・不安がある」と答えている。 図1-40 活動を行う上での不満・不安の有無 ある ない 無回答 1.8% 37.5% 0 20 60.7% 40 60 80 100(%) 57 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 そこで、不満・不安があると答えた団体に対し、その内容について質問したところ、「活動中に 危害に遭うのではないか(危害に遭っても補償されない)」という回答が最も多く(60.2%)、次い で「活動がマンネリ化してきている」(40.2%)、「活動に参加する時間が十分に持てない」(36.6%) という回答が多かった。 図1-41 活動を行う上での不満・不安の内容(複数回答) 活動中に危害に遭うのではないか (危害に遭っても補償されない) 60.2% 活動がマンネリ化してきている 40.2% 活動に参加する時間が十分に 持てない 36.6% 活動に対する地域住民の理解が 得られにくい 19.8% 2.1% 家族(周囲)の理解が得られない 無回答 4.8% 0 10 20 30 40 50 60 70(%) これに関連して、団体の構成員が活動中に危害に遭った(遭いそうになった)ことがあるかに ついて質問したところ、91.0%の団体が「危害に遭った(遭いそうになった)ことがない」と答え たのに対し、6.4%の団体が「危害に遭った(遭いそうになった)ことがある」と答えており、実 際に身の危険にさらされた例は必ずしも多くはないものの、活動における不安感を裏付ける実例 もあることがうかがえた。 図1-42 活動中に危害に遭った(遭いそうになった)ことがあるか ない ある 無回答 2.6% 6.4% 0 91.0% 20 40 60 80 100(%) ⑨ 団体の運営上での不安 防犯ボランティア団体の運営を行う上での不安の有無について質問したところ、「不安がない」 と答えた団体は53.1%であるのに対し、半数弱に当たる44.3%の団体が「不安がある」と答えてい る。 58 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 第 1 章 図1-43 団体の運営上での不安の有無 ない ある 無回答 2.6% 44.3% 0 53.1% 20 40 60 地 域 社 会 と の 連 帯 100(%) 80 そこで、不安があると答えた団体に対し、その内容について質問したところ、「メンバーに若い 人が少ない(いない)」が最も多く(62.1%)、次いで「経費が足りない」(40.1%)、「活動に対する メンバーの熱意の維持が難しい」(28.6%)、「団体全体として、活動についてのノウハウの蓄積が ない」(26.5%) 、「活動内容に比べてメンバーの数が少ない」 (19.3%)という回答があった。 図1-44 団体の運営上での不安の内容(複数回答) メンバーに若い人が少ない (いない) 62.1% 経費が足りない 40.1% 活動に対するメンバーの熱意の維持 が難しい 28.6% 団体全体として、活動についての ノウハウの蓄積がない 26.5% 活動内容に比べて メンバーの数が少ない 19.3% 1.6% 無回答 0 10 20 30 40 50 60 70(%) ⑩ 行政が行うべきこと 防犯ボランティア団体の組織化や活動の活性化のために行政が行うべきだと思われることにつ いて質問したところ、「団体の活動成果についての積極的な広報」が最も多く(54.1%)、次いで 「防犯パトロール活動に利用できる道具の貸出・支給」(53.6%)、「防犯活動に関する経費の補助」 (45.0%)という回答が多かった。 59 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 図1-45 防犯ボランティア団体の組織化や活動の活発化のために行政が行うべきだと思われること (複数回答) 団体の活動成果についての 積極的な広報 54.1% 防犯パトロール活動に利用できる 道具の貸出・支給 53.6% 45.0% 防犯活動に関する経費の補助 28.5% 意見交換の場所づくり その他 4.5% 2.3% 特にない 1.5% 無回答 0 10 20 30 40 50 60(%) また、行政が行うべきこととして「防犯パトロール活動に利用できる道具の貸出・支給」と答 えた団体に対し、貸出・支給してほしい道具について質問したところ、「帽子、ジャンパー、腕章 等の服装類」という回答が最も多く(76.1%)、次いで「停止灯、懐中電灯」(53.3%)、「防犯ブ ザー」 (24.0%)という回答が多かった。 図1-46 貸出・支給してほしい道具(複数回答) 76.1% 帽子、ジャンパー、腕章等の服装類 53.3% 停止灯、懐中電灯 24.0% 防犯ブザー 18.3% 携帯電話、トランシーバー 9.2% ハンディメガホン 2.6% カメラ 4.0% その他 0.7% 無回答 0 10 20 30 40 50 60 70 80(%) さらに、行政が行うべきこととして「防犯活動に関する経費の補助」と答えた団体に対し、必 要とする経費補助の内容について質問したところ、「ボランティア保険代」という回答が最も多く (55.4%)、次いで「安全・安心マップや広報チラシ等の印刷費」(46.1%)、「用紙、文房具費等の事 務経費」 (28.0%)という回答が多かった。 60 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 図1-47 必要とする経費補助の内容(複数回答) 地 域 社 会 と の 連 帯 55.4% ボランティア保険代 安全・安心マップや広報チラシ等 の印刷費 46.1% 用紙、文房具費等の事務経費 28.0% ガソリン代 16.0% 活動拠点の維持費 (家賃、光熱費等) 13.3% その他 12.2% 3.3% 無回答 0 10 20 30 40 50 60(%) ⑪ 防犯ボランティアの声 防犯ボランティア団体調査には、自由回答欄が設けられた設問があり、そこには防犯ボラン ティア活動に従事する者の様々な感想や意見が記されていた。 その一部を紹介すると、「いろいろな人から感謝とねぎらいの言葉をかけられ、活動のはげみに なっている」、「地域の住民に期待されていることが分かり、これからも継続していくことが大事 だと思った」などのように、周囲からの感謝や期待がやりがいにつながっているとする回答が多 くみられた。 また、「活動を通じて、町内の人たちが話し合う機会ができた」などのように、防犯ボランティ ア活動が住民同士の人間関係づくりのきっかけになっていることを指摘する回答もあった。 さらに、「よく知っているつもりでいる自分の生活地域でも、普段気付かない危険な場所や死角 になっている場所が意外に多いことが分かった」などのように、防犯パトロール活動を通じて地 域の実情に関する理解が深まったとする回答もあった。 その一方で、「地域住民は自分で自分を守る意識がまだ低い。他人に依存する気持が大である」、 「防犯意識の強い人と全く人ごとのようにしている人と、人によって温度差がある」、「隣接町会と 連帯しての活動が必要であるというと賛同が得られるが、具体的な活動の話になると、協力を得 られない」などのように、住民の防犯意識を一層向上させる必要性を訴える回答がみられた。 このほか、防犯ボランティア活動の成果について、「地域住民の防犯に対する意識が高まってき たように思う」、「夜間パトロールをした結果、違法駐車をする車が見当たらなくなった」、「少年 の深夜はいかいがなくなった」、「暴走族が極端に減少し、近所の人たちから喜ばれている」、「隣 接地区で窃盗事件が発生している中、活動開始以降、自分たちの自治会の地区では窃盗事件が1件 も発生しておらず、活動の効果に驚いている」などのように、地域社会の安全と安心に貢献でき たことを実感していることがうかがえる回答が目立った。 61 第 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 4 地域社会の再生に向けて 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 (1)自主防犯活動の意義と行政による支援の要請 犯罪対策閣僚会議が平成15年12月に策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」では、 良好な治安は警察のパトロールや犯罪の取締りのみによって保たれるものではなく、治安の回復 には地域住民やボランティア団体が自主的に行う防犯活動を促進することが重要であるとされた。 こうした中、危機意識を共有する地域住民の間で自らの安全を自らが守ろうとする気運が高ま り、各地で防犯ボランティア団体の結成が相次いでいる。防犯ボランティア団体調査の結果から もうかがえるとおり、こうした団体の活動に対する地域住民の反応は概して好意的であり、その 手応えを感じ取った多くの団体からは、同様の取組みが全国で活性化することが望ましいとする 見解が示されている。それと同時に、活動や組織運営に関する不安を抱える団体もあって、これ が解消されるよう行政に支援と協力を求める意見が多い。 こうしたことから、警察としても、第1節で述べたとおり、地域に身近な交番・駐在所による警 察活動の強化を図るほか、地域住民が行う自主防犯活動についても、その支援策を効果的かつ強 力に推進することが求められている。 (2)自主防犯活動に必要な4つの支援 防犯ボランティア団体が新たに結成され、その活動が地域社会に根付いていく過程を分析する と、その活動を活性化するためには、治安問題への関心を呼び覚まし、又は一定の関心のある者 に参加・実行を促す働き掛けを行うとともに、活動を効果的で実践しやすいものとするための取 組みや、活動の継続に必要な環境の整備を推進することが重要であると考えられた。そこで、警 察では、防犯ボランティア団体調査で明らかとなった諸団体のニーズも参考にしながら、今後、 次のような4つの支援策を講じていくこととする。 ① 地域住民を守るための情報の提供 国民が犯罪被害に遭わないようにするための対策を講じ、また、防犯ボランティア団体が効果 的に活動するためには、自らの生活圏内でどのような犯罪が発生しているかを正しく把握するこ とが不可欠であることから、警察が有する犯罪情報・地域安全情報を、電子メール、ミニ広報誌、 マスコミ等様々な媒体を用いて提供していく。 ② 防犯活動に踏み出すためのきっかけづくり 「子どもが登下校時に事件に巻き込まれないか心配だ」、「ひったくりが多発していると聞いて 夜道を歩くのが怖くなった」といった危機意識を抱いていても、防犯対策に必要な知識を得、賛 同者を募ってボランティア活動を開始することは必ずしも容易でないことから、講習や訓練の機 会を設け、必要なノウハウを提供し、誰もが実践しやすい防犯活動の普及を図っていく。また、 防犯に関する悩みや関心を持つ者に的確なアドバイスができるよう、相談を受け付ける体制を一 層充実させていく。 62 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 ③ 効果的な防犯活動のための連携の強化 警察官が防犯ボランティア団体と合同で街頭をパトロールし、パトロール活動に際して配意す べき事項や重点的にパトロールすべき場所を教示するなど、防犯活動を効果的に行えるようにす るためのアドバイスを行っていく。また、防犯ボランティア団体が相互に情報交換を行い、活動 のノウハウを共有することのできるネットワークづくりを進めていく。 地 域 社 会 と の 連 帯 ④ 安定した活動を支える基盤づくり 地域社会全体の利益に資するボランティア活動が、一部の参加者の献身的な努力に依存するこ となく、安定的かつ円滑に継続できるようにするため、公益的な観点から、行政による活動拠点 の確保、ジャンパー、懐中電灯、防犯ブザー等の装備資機材の提供、活動に必要な経費の援助等 の基盤づくりを推進していく。 図1-48 地域住民による自主防犯活動に対する支援 地域住民による自主防犯活動に対する支援 【警察による4つの支援】 Step1 自分の身を守るために防犯には興味があるけど、 率先して何かをやるほどではないし・ ・ ・ Step2 地域の安全のために防犯活動をした いけど、 どうすればよいのだろう・ ・ ・ Step3 もっと防犯活動を 広げたいけど、 自 分たちだけでは 難しい・ ・ ・ 地域住民を守るための情報の提供 →例:Eメール等様々な媒体を用いた 犯罪情報や防犯情報の提供 防犯活動に踏み出すためのきっかけづくり →例:各種講習・訓練の実施、 地域安全マップの作成 効果的な防犯活動のための連携の強化 →例:合同パトロール等の実施 安定した活動を支える基盤づくり →例:活動経費の支援(装備資機材の充実等) 活動への参加を促進するとともに、既に行われている活動を強化する。 63 第 2 節 治安回復に向けた地域社会との協働 第 1 章 地 域 社 会 と の 連 帯 (3) 「 『犯罪に強い地域社会』再生プラン」の推進 以上のような考え方に基づき、市町村や消防と連携しながら地域住民の行う自主防犯活動を支 援し、地域社会の治安回復を目指すための総合的な施策として、平成16年6月、警察庁は、「『犯罪 に強い地域社会』再生プラン」を策定した。このプランは、次の2つの柱から成っている。 ① 自主防犯活動の拠点・基盤の整備 公的施設を活用するなどして自主防犯活動の拠点「地域安全安心ステーション」を設け、必要 な装備資機材を配備し、防犯パトロールや犯罪情報・防犯情報の集約と発信を行うほか、自主防 犯活動への参加を拡大するための取組みを推進する。また、車両を用いた防犯パトロールの効果 を向上させるため、国土交通省とともに、パトロール用車両に視認性の高い青色回転灯を装備す ることのできる新しい制度を設ける。 ② 効果的な自主防犯活動の実施に向けた支援 防犯情報の提供、講習・訓練の実施、活動経費の支援等の施策を組み合わせた、自主防犯活動 を総合的に支援するための制度「安全安心パトロール・サポート制度」を設けるとともに、警戒 活動や不審者情報等の共有に関する消防団等との連携を拡大する。 警察は、防犯ボランティア団体を地域の安全のための連携の結節点として捉えており、これを 媒介として地域住民と関係機関・団体が手を携えて一体となって行動することで、大きな力が生 まれ、地域社会における治安の回復につながるものと考えている。また、良好な治安という誰も が望む財産を得るためのこうした取組みは、地域社会を結束させ、失われつつある連帯を再生さ せる一助にもなるであろう。このため、今後、地域社会に密着した警察活動を強化するとともに、 「『犯罪に強い地域社会』再生プラン」を中心に、地域住民の自主防犯活動に対する4つの支援を推 進し、 「世界一安全な国、日本」の復活を目指していく。 64 治安回復に向けた地域社会との協働 第 2 節 第 1 章 図1-49 「犯罪に強い地域社会」再生プラン 地域住民の自主防犯活動の活性化 ∼「犯罪に強い地域社会」再生プラン∼ 効果的な自主防犯活動の実施 に 向 け た 支 援 自主防犯活動の拠点・基盤の整備 地域住民、ボランティア団体が管理・運営する安全安心 (防犯・防災等)のための自主的活動の拠点を公民館、 消防団拠点等を活用して整備。 警察、消防、市町村が連携してサポート。 地域安全安心ステーション 【安全安心のための3つの拠点】 安全安心パトロールの出動拠点 ○ 施設の整備 ○ 防犯・救助用資機材等の優先配備 安全安心パトロール・サポ ート 制度 市町村 警 察 消 防 連 携 安全安心のための自主的活動 の 参 加 拡 大 の 拠 点 ○ 地域住民が気軽に参加できる活動の支援 ○ 講習会、防犯指導・防災訓練等の利用、参加の拡大 消 防 と の 連 携 安全安心パトロール活動等での協力 地域住民、ボランティア団体 が行う自主防犯活動 活性化 ○ 消防団等との連携 ○ 不審者情報等の通報・連絡 など 「子ども110番の家」との連携 女性・子どもの一時的な保護と警察への通報を行う 「子ども110番の家」に対し、 ○ 講習会の実施 ○ ステッカーの配付 など 安全安心パトロール車両の防犯効果向上の支援 青色回転灯の装備 地域住民等が車両を使用して安全安心パトロールを行う 際に、視認性の高い青色回転灯を装備することができる ようにする。 <道路運送車両の保安基準の運用の見直し> ○ 地域における防犯情報の提供 ○ 講習・訓練 ○ 効果的な支援の仕組みづくり (共合同パトロール、ITの活用等) ○ 活動経費の支援 (被服等の装備資機材の充実等) など 支 援 安全安心情報の集約・発信拠点 【安全安心マップ】 ○ 安全安心マップの作成 ○ 安全安心情報の電子掲示板の運営 ○ 協議会の設置 地 域 社 会 と の 連 帯 地域コミュニティの結集 により、地域連帯を再生 安全安心パトロールの補完・代替措置 ○ 警備業者を活用したパトロール など 「 犯 罪 に 強 い 地 域 社 会 」 の 実 現 65