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世界の宇宙産業動向 - 一般社団法人 日本航空宇宙工業会
工業会活動 世界の宇宙産業動向 1.世界の宇宙産業売上高推移 世界の宇宙産業売上高推移に関しては、米 宇宙産業売上高推移を示す。2014年における 世界の宇宙産業売上高は3,300億ドルで、2013 国のスペース財団(Space Foundation)が発行 年の3,025億4,000万ドルと比べて9.1%増加し している「Space Report」に報告がある。 2009∼2013年の年平均増加率5.2%を大幅に上 Space Reportで報告されている世界の宇宙産 回った。 業売上高は、商業宇宙活動と政府の宇宙支出 2014年の商業宇宙活動による売上高は、世 で構成されている。商業宇宙活動の売上高は 界の宇宙産業売上高の約四分の三を占めた。 「商業宇宙製品およびサービス」と「商用イ 宇宙船、宇宙ステーションおよび地上設備、 ンフラストラクチャーおよび関連産業」の2 打上げサービス、研究開発、保険を含む「商 部門、政府の宇宙支出は「米国政府宇宙予算」 用インフラストラクチャーおよび関連産業」 と「非米国政府宇宙予算」の2部門となって 部門は、2014年において4部門中で最も高い おり、これらの4部門で世界の宇宙産業売上 増加率と売上高となり、世界の宇宙産業売上 高は構成されている。 高への最大の貢献部門となった。その売上高 図1に、2009年から2014年における世界の は、2013年の1,084億8,000万ドルから17.7%増 図1 世界の宇宙産業売上高推移(出典:資料*1) 12 平成27年8月 第740号 加し、2014年は1,276億5,000万ドルであった。 万ドルから2.9%増加して、2014年429億6,000 この伸びは主に、全地球型衛星航法システム 万ドルとなったが、依然として2012年の470 (GNSS)レシーバーの販売によるものである。 億4,000万ドルの支出よりも低いままである。 次に情報通信、地球観測(EO)、測位、航行 2014 年 の 米 国 を 除 く 国 の 政 府 宇 宙 投 資 は 支援、時刻同期サービスを含む「商業宇宙製 12.9%増大し、362億1,000万ドルだった。 品およびサービス」部門の売上の増加率は緩 やかとなった。その売上高は、2013年の1,202 億5,000万ドルから2014年の1,231億8,000万ド ルまで2.4%増加した。 2.商業市場における衛星産業の動向 (1)衛星産業の概要 世界の衛星産業売上高推移に関しては、米 2014年における世界の政府宇宙支出は7% 国 の 衛 星 産 業 協 会(SIA:Satellite Industry 増加して791.7億ドルとなった。2013年に支出 Association)がレポートしている。SIAの委託 が減少した主な原因は米国の大幅な予算削減 でThe Tauri Groupが調査/研究を行っている。 の影響であった。世界の宇宙産業売上高に占 SIAレポートでは衛星産業の市場を①衛星 める政府宇宙支出の割合は2013年と変わらず を使った通信/放送等のサービスを提供する衛 2014年も24%となった。 星サービス、②衛星製造、③打上げロケット 米国政府の宇宙支出は2013年の417億5,000 製造および打上げサービスからなる打上げ産 図2 世界の衛星産業総売上高と分野別内訳〔2009年~2014年〕(出典:資料*2) 13 工業会活動 業、④地球局、衛星通信/管制/電話設備、衛 増加した。 星携帯電話端末/GPS端末からなる地上機器の (2)衛星産業の分野別動向 4分野に分類している。 ②の衛星製造売上高は、大学で製造された ①衛星サービス分野 衛星を除外しているが、民間企業によって製 表1に世界の衛星サービス分野における 造された民生向けや政府向け衛星を含んでい 総売上高の内訳を示す。2014年の総売上高 る。③の打上げ産業売上高は、民間企業や政 は1,229億ドルで、全セグメントの売上高が 府が実施するペイロード打上げサービスを含 増加している。2014年の衛星サービス分野 ん で い る が ISS(国 際 宇 宙 ス テ ー シ ョ ン: の増加率は4%で前年よりも減少しており、 International Space Station)ミッションなどの 2009年からの増加率は依然として減少傾向 打上げは含まない。 にある。 図2に、2009年から2014年までの民生分野 衛星テレビ、ラジオ、ブロードバンドで における、世界の衛星産業総売上高と分野別 構成される一般消費者向けサービスセグメ 内訳を示す。2014年の衛星産業総売上高は、 ントは、衛星サービス分野の総売上高に最 2013年から4%増加して2,030億ドルとなった。 も貢献した。衛星テレビ放送(DBS/DTH) これは世界の経済成長率2.6%を上回り、また の売上高は、衛星サービス分野総売上高の 世界の宇宙産業売上高3,227億ドルの63%に相 77%を占め、一般消費者向けサービスセグ 当する。4分野の売上高(シェア)は、衛星サー メント売上高の94%を占めている。衛星有 ビスが1,229億ドル(60.5%)、衛星製造が159 料テレビ放送の加入者は新興市場を中心に 億 ド ル(7.8 %)、打 上 げ 産 業 が 59 億 ド ル 増加を続け、全世界で約2億3,000万人となっ (2.9%)、地上機器が583億ドル(28.7%)で た。衛星テレビ放送(DBS/DTH)の売上高 ある。売上高は4分野とも前年2013年よりも の42%は米国で発生している。 表1 世界の衛星サービス分野における総売上高の内訳〔2009~2014年〕(出典:資料*2) (億ドル) 年 年増加率 総売上高 一般消費者向サービ ス 衛星テレビ放送(DBS/DTH) 衛星ラジオ放送(DARS) 衛星ブロードバンド 固定衛星通信サービ ス 中継器リース ネットワークサービス 移動体通信サービス 音声 データ リモートセンシング 2009 10% 928 753 718 25 10 144 110 34 22 7 15 10 2010 7% 992 809 769 28 12 150 111 39 23 7 16 10 2011 9% 1,078 886 844 30 12 157 114 43 24 7 17 11 注:中継器リースにはDTH衛星テレビプラットフォーム向け容量を含む。 ネットワークサービスにはVSATネットワークを含む。 14 2012 5% 1,135 933 884 34 15 164 118 46 24 7 18 13 2013 5% 1,186 981 926 38 17 164 118 46 26 8 18 15 2014 4% 1,229 1,009 950 42 18 171 123 48 33 9 23 16 平成27年8月 第740号 高精細度テレビジョン(HDTV)のチャ 移動体通信サービスの売上高は2013年の ンネル数は更に増加しプレミアムサービス 6%増加から2014年は25%増加へと急激に による収益増が発生している。最初の商業 増加した。移動体衛星サービスの音声売り 4K Ultra HD(UHD)放送は米国で2014年後 上げは2013年の11%増加から2014年は19% 半から開始された。主に生放送を取り扱う の増加に、データ売上高は2013年の5%増 UHD放送がさらに2015年から開始される。 加から2014年は27%増加となった。データ この背景には周波数帯を2.5倍節約する圧縮 売上増加の主要因は航空機へのデータサー 技術の継続的改良がある。 ビスの影響による。 衛 星 ラ ジ オ 放 送(DARS)の 売 上 高 は、 リモートセンシングの売上高は、リモー 2014年に10%増加した。衛星ラジオ放送の トセンシング会社の米国政府への売上が牽 加入者は、米国の顧客を中心に2014年に7% 引役となり成長を続け9%増加した。新規 増加して約2,730万人となった。衛星ブロー 参入会社は資本の調達、衛星の開発、初期 ドバンドの売上高は、2013年の17億ドルか コンステレーションの開発を継続してい ら2014年は18億ドルへと増加した。衛星ブ る。 ロードバンドの収益の増加率の方が、衛星 ブロードバンドサービス加入者の増加率よ ②衛星製造分野 りも若干高い。 SIAの報告において衛星製造分野の売上 固定衛星通信サービスの売上高は2013年 高は、衛星が打上げられた年に集計される。 の横ばいから2014年は4%増加した。中継 図3に衛星製造分野の売上高推移を示す。 器リース売上高、ネットワークサービス売 2014年の衛星製造分野の売上高は、2013年 上高ともに2013年の横ばいから2014年は から1%増加して159億ドルとなった。衛星 4%の増加となった。 の打上げ数は2013年の101機 (Cubesat91機を 図3 衛星製造分野の売上高推移〔2009年~2014年〕(出典:資料*2) 15 工業会活動 含めると192機)から2014年は121機(Cubecat 図4に打上げ産業分野の売上高推移を示す。 135機を含めると256機)と大幅に増加した。 打上げ産業分野の売上高は2013年には7% 衛星の総打上げ数に占めるCubesatの割合は 減少したが、2014年は9%増加した。2014 53%であり大部分がリモートセンシングに 年の商業打上げは73回と2013年の62回から 使用される。衛星製造分野売上高のうち通 増加したが、これは欧州と米国の商業打上 信衛星の割合は33%である。また軍事衛星 げが増加したためである。 は2013年の30%から増加し38%を占めてい 商業衛星打上げ産業分野の売上高に占め る。Cubesatは前年同様1%以下である。 る政府機関の割合は2013年の70%から2014 米国の衛星製造分野の売上高は2013年か 年は72%に増加しており、引き続き打上げ ら9%減少した。米国企業は2014年に打上 産業分野売上高の主要な牽引者であり続け げた衛星の29%を製造し、世界の衛星製造 た。米国は商業打上げの41%と最大のシェ 分野売上高の62%を獲得した。Cubesatを含 アを持っているが、米国政府の衛星打上げ めると米国企業は2014年に打上げた衛星の が売上の34%を占めている。 62%を製造し、世界の衛星製造分野売上高 の63%を獲得した。米国が2014年に打上げ ④地上機器分野 た130機の衛星のうちCubesatは99機であっ 地上機器分野の売上高は、衛星サービス た。米国の衛星製造分野売上高の75%は米 分野に次いで2番目に大きい。図5に地上機 国政府の支出である。 器分野の売上高推移を示す。地上機器分野 は、ネットワーク機器、衛星航法装置、民 ③打上げ産業分野 生機器(衛星テレビ、ラジオ、ブロードバ SIAの報告において打上げ産業分野の売 ンド、モバイル機器)で構成されている。 上高は、打上げが行われた年に集計される。 SIAの報告においてネットワーク機器には、 図4 打上げ産業分野の売上高推移〔2009年~2014年〕(出典:資料*2) 16 平成27年8月 第740号 注:民生機器には、衛星テレビ、ラジオ、ブロードバンド、モバイル機器が含まれる 図5 地上機器分野の売上高推移〔2009年~2014年〕(出典:資料*2) ゲートウェイ、ネットワークオペレーショ 3.世界の衛星製造実績 ンセンター(NOCs)、衛星ニュースギャザ 世界の衛星製造実績は、Futron社がSatellite リング(SNG)機器、フライアウェイアン Manufacturing Reportで公表している、衛星の テ ナ、超 小 型 ア パ ー チ ャ タ ー ミ ナ ル 打上げ実績とその製造企業から毎年集計*1す (VSATs)が含まれる。また、民生機器には、 衛星テレビ、ラジオ、ブロードバンド機器、 ることが出来る。 2009年から2014年における6年間の国別衛 移動体衛星端末、スタンドアローン衛星ナ 星製造数を図6に示す。また、2014年の衛星 ビゲーションデバイスが含まれるが、ス 製造実績に対する製造企業別シェアを図7に マートフォンなどのデバイスで使用される 示す。 チップセットは含まれていない。地上機器 2014年の衛星製造実績は世界全体で121機 分野の売上高は、2014年に5%増加した。 で 2013 年 に 比 べ て 20 機 増 加 し た。こ れ は ネットワーク機器の売上高は2014年に6% SkysatやOrbcommのような200㎏以下の衛星が 増加した。衛星航法装置は2014年の地上機 2013年の10機から2014年は22機に増加した影 器全体の売上高の53%を占めているが、装 響による。2009年から2014年の6年間の年平 置が集計に含まれるスタンドアローンか 均衛星製造実績は103機であり、今後も世界 ら、含まれない埋め込みチップセットに移 全体で100機以上の衛星製造が見込まれる。 行していることから、売上高は311億ドル 米国の衛星製造数は2013年の25機から2014 で変わらないが、割合は2013年の57%から 年は31機と6機増やし、順位は1位を保った。 4%ポイント減少した。民生機器の売上高 ロシアの衛星製造数は2013年の22機から2014 はすべてのセグメントで増え、売上高の合 年は28機と6機増やし、順位は2位を保った。 計も15%増加した。 欧州の衛星製造数は2013年の21機から2014年 17 衛星製造数 工業会活動 注:上図の棒グラフは表の記載順に従い、左側から米国、ロシア以下の衛星製造数を示している。 図6 国別衛星製造数〔2009年~2014年〕(出典:資料*3) 企業別衛星製造数 (機) 図7 2014年の衛星製造実績に対する製造企業別シェア(出典:資料*3) 18 平成27年8月 第740号 は25機と4機増やし、順位は3位を保った。中 4.世界のロケット打上げ実績 国の衛星製造数は2013年の17機から2014年に 世界のロケット打上げ実績に関しては、米 21機と4機増やし、順位は4位に保った。日本 国連邦航空局の商業宇宙輸送オフィス(FAA/ の衛星製造数は2機増加し、2013年の4機から AST:The Federal Aviation Administration s 2014年は6機となった。 Office of Commercial Space Transportation)が 2014年の衛星製造実績に対する製造企業別 シェア1位はロシアの衛星製造会社ISS-レシェ Commercial Space Transportation:2014 Year In Reviewを公表している(資料*4参照) 。 ト ニ ェ フ(Information Satellite Systems - 同レポートに基づく2009年から2014年にお Reshetnev Company)で13機である。同様に2 ける6年間の国別ロケット打上げ実績を図8 位は欧州Thales Alenia社の10機、3位は国営 に、2014年打上げのロケット別内訳を図9に 企 業 の 中 国 宇 宙 技 術 研 究 院(CAST:China 示す。 Academy of Space Technology)となっている。 *1 2014年も2013年に引き続きCubesatと呼ばれる10 ×10×10㎝を基本形とする超小型衛星が多数打 上げられているが売上高としては1%以下であ り、また、本稿の趣旨に従い集計から取り除いた。 米国、ロシア、欧州、中国、日本、インド、 多国籍及びイスラエルの打上げプロバイダ は、2014年に合計92回の打上げを行い、その うちの23回は民生用だった。これは、2013年 までの5年間の平均値合計79回、うち商業打 注:上図の棒グラフは表の記載順に従い、左側から米国、ロシア以下の打上げ回数を示している。 図8 国別ロケット打上げ回数〔2009年~2014年〕(出典:資料*4) 19 工業会活動 図9 2014年打上げのロケット別内訳(出典:資料*4) 上げ22回よりも多い結果となっている。以下 打上げを行ったが、民生用打上げはなかった。 各国の2014年における世界の民生用打上げの 中国は2年続けて民生用打上げがなかったこ 要約である。 とになる。 米国では2014年に23回の打上げを行った インドは2014年に4回の打上げを行ったが、 が、これは2013年に比べて4回多かった。23 そのうち1回は民生用打上げであった。2013 回の打上げのうちの11回は民生用だったが、 年には3回の打上げを行ったが、民生用打上 これは2013年よりも5回多かった。 げはなかった。 ロシアは毎年最も多くの打上げを続けてい イスラエルは2014年に偵察衛星Ofeq10を搭 る。2014年には2013年と同数の32回の打上げ 載したShavitロケットの打上げに1回成功し を行った。2014年の商業打上げは4回であり、 た。これは2010年以降、イスラエルにとって 2013年から8回減少した。ロシアはロシア衛星 初めての軌道上打上げである。イスラエルは 通信社(RSCC:Russian Satellite Communications 2014年、民生用打上げを行わなかった。 Company)向けのExpress AMR4 GEO通信衛星 日本は2014年に4回の打上げを行ったが、 を搭載したプロトンMロケットの第3段が高 民生用打上げはなかった。2013年には3回の 度160㎞で破壊され衛星を軌道に投入するこ 打上げを行ったが、民生用打上げはなかった。 とができなかった。 欧州は2014年に11回の打上げを行ったが、 そのうち6回は民生用打上げであった。2013 年には7回の打上げを行ったが、そのうち4回 は民生用打上げであった。 中国は2014年に16回の打上げを行ったが、 民生用打上げはなかった。2013年には15回の 20 多国籍企業Sea LaunchのZenit 3SLは2014年 に1回の民生用打上げを行った。2013年には1 回の民生用打上げを行ったが失敗している。 商用静止衛星の打上げは2014年に10回行わ れ た が、こ れ は 2013 年 に 比 べ て 1 回 多 い。 2007年以降静止軌道への商用打上げの回数は 減少を続けている。 平成27年8月 第740号 5.商業衛星打上げの需要予測 表2にCOMSTACとFAAによる2015年以降の 米国連邦航空局の商業宇宙輸送オフィス 商業衛星の需要と商業打上げ需要の予測を示 (FAA/AST:The Federal Aviation Administration s す。ここで対象とする衛星は、商用の静止軌 Office of Commercial Space Transportation)と 道(GSO)衛星と非静止軌道(NGSO)衛星 商業宇宙輸送諮問委員会(COMSTAC:The であり、非静止軌道衛星には、商業衛星と商 Commercial Space Transportation Advisory 業打上げロケットを利用する政府(民事と軍 Committee)は、商業宇宙打上げサービスに 事)ミッションが含まれる。商業打上げロケッ 対する世界の需要予測を行っている(資料* トを使わない衛星は含まれていない。図10に 5参照)。 打上げ回数の1993年から2013年までの実績 ・COMSTAC 「The COMSTAC 2015 Commercial データと2014年から2017年までの予測を示 す。 Geosynchronous Orbit(GSO)Launch Demand Forecast」(2015年商業静止軌道(GSO)打 COMSTACレポートによれば、2015年から 上げ需要予測) ;静止軌道で運用する商業 2017年までの3年間における商業静止軌道衛 衛星の需要と静止軌道への商業打上げ需要 星の市場予測は年平均25機と2014年から2016 の予測 年 ま で の 年 平 均 22.3 機 と ほ ぼ 同 数 で あ る。 ・FAA「2015 Commercial Space Transportation 2015年から2017年に打上げが計画されている Forecast for Non-Geosynchronous Orbit 商業静止軌道衛星の39%は5,400㎏以上の最も (NGSO)」 (2015年商業非静止軌道(NGSO) 重いクラスであり、7%は2,500㎏以下の最も 宇宙輸送予測);LEO、MEO、ELI、EXTの 軽いクラスとなっている。 ような非静止軌道への商業衛星打上げ需要 また、同期間における商業静止軌道衛星の の予測 打上げ回数予測は年平均17回である。他方、 表2 商業衛星および商業打上げロケットの需要予測(出典:資料*5) 年 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 合計 平均 商用静止衛星/非静止衛星打上予測 (単位:機) 商用静止軌道衛星 (COMSTAC予想値) 24 25 26 − − − − − − − 75 非静止軌道衛星 (FAA予想値) 65 136 151 104 92 92 87 86 87 86 986 98.6 衛星合計 89 161 177 − − − − − − − 1,061 106.1 25.0 軌道別商業打上回数予測 (単位:回) 静止軌道 (中型−大型ロケット) 16 17 18 − − − − − − − 51 非静止軌道 (中型−大型ロケット) 13 17 15 13 11 10 10 10 10 10 119 11.9 非静止軌道 (小型ロケット) 1 2 4 2 1 0 1 0 1 0 12 打上合計 30 36 37 − − − − − − − 182 18.2 17.0 1.2 21 工業会活動 図10 2014年までの打上げ実績とその後3年間の打上げ予測(出典:参考資料*5) 2015年から2024年までの10年間における商業 た、2015年から2024年までの10年間に986機 非静止軌道衛星の打上げ回数予測は年平均 のペイロードが打上げられる計画に対して 11.9回である。これは通信用コンステレーショ 131回しか打上げが計画されていないのは、 ン向け衛星や国際宇宙ステーションへの乗員 マイクロ衛星や小型衛星を一度に打上げる計 や貨物輸送の定常化により、それ以前の10年 画のためと考えられる。 間の年平均7回から大幅に増加している。ま 図11に2015年から2024年までの非静止軌道 図11 2015~2024年までの非静止衛星分野別予測(出典:参考資料 *5) 22 平成27年8月 第740号 図12 2015~2024年までの非静止衛星打上げ分野別予測(出典:参考資料 *5) (NGSO)衛星の分野別打上げ機数予測を、図 12に分野別打上げ回数予測を示す。 6.Cubesat Cubesatの動向に関してはSIAがケーススタ FAAレポートによる非静止軌道衛星の市場 ディとしてレポートしている。2014年には 予測では、2015年から2024年までの10年間に 135機のCubesatが打上げられたが、そのうち 打上げられるペイロードは986機で、打上げ 101機がリモートセンシングを目的とした商 回数は131回である。 用目的であり2013年の8機から大幅かつ急激 2015年から2024年までの非静止軌道衛星分 に増加した。また135機中84機がISSから軌道 野別の打上げ数の合計を分析すると、商用貨 へと放出され、28機がロケットの打上げ失敗 物・乗員輸送分野の打上げは全体の60%を占 で失われた。Cubesatの大部分、93機は米国の めており、最近開発された打上げロケットを Planet Labs社が製造・運用している。2005年 使用している。その他商用分野は全体の21% から2014年までに製造されたCubesatの費用は を占めている。商用リモートセンシング分野 総額で100万ドル以下である。Cubesat は技術 は7%を占めているが昨年の報告よりも少な の進歩による機器の小型化と開発・製造費用 い回数となっている。これはスカイボックス・ が安価である長所を生かして、2014年から多 イメージング社のような会社が小型ロケット 数の衛星の連携により、システムとしての機 の代わりに複数機の同時打上げを計画した影 能を持たせるコンステレーションとしての商 響による。商用通信分野の打上げは全体の7% 用利用を目的に打上げが開始された。 を占めているが低軌道通信衛星コンステレー しかし3U(10×10×30㎝)サイズのCubesat ションの置き換えが完了する2017年以降計画 では満足な推進系を搭載することが困難であ されていない。技術試験・実証分野の打上げ り、商用利用にはもう少し大きな超小型衛星 は全体の5%を占めている。 (200㎏以下)が適していると考えられる。 2014年にSkybox社が、商用目的で超小型衛 23 工業会活動 図13 Cubesatの年別打上げ数推移(出典:資料*2) 星Skysat2機の打上げに成功した。最終的には 分野で1%増加、③打上げ産業分野で9%増 24機の衛星コンステレーションとして高解像 加、④地上機器分野で5%増加した。2013 度の光学画像を提供する計画となっている。 年に大幅に減少した打上げ産業分野ではあ また2015年にはOneweb社が軌道上に多数の るが、欧州と米国の商用打上げが増加した データ通信機能を有する超小型衛星を打上げ ことから2014年度は大幅に増加することと る具体的な計画を発表しており、これらの動 なった。 きが注目される。 ・衛星産業を構成する4分野の売上高シェア は、①衛星サービス分野が61%、②衛星製 7.まとめ 以下、世界の宇宙産業動向についての要約 を示す。 造分野が8%、③打上げ産業分野が3%、④ 地上機器分野が29%である。 ・2014年における我が国の衛星製造数は6機、 ・商業宇宙活動と政府の宇宙支出で構成され ロケット打上げ回数は4回であり、各種資 る世界の宇宙産業売上高は、2014年に9.1% 料に掲載された国別のデータによれば、イ と大幅に増加し、成長を続けた。これは世 ンドとほぼ同数の世界第5位である。 界の経済成長率の2.6%を上回る。 ・衛星産業の売上高は2014年に4%増加し、 世界の宇宙産業売上高の63%を占めた。 ・2014年は135機のCubesatが打上げられたが、 うち101機が商用目的であり、2013年の8機 から大幅かつ急激に増加した。 ・衛星産業を構成する4分野の売上高は、① ・2014年には商用目的の超小型衛星(200㎏ 衛星サービス分野で4%増加、②衛星製造 以下)Skysatが2機打上げられた。2015年に 24 平成27年8月 第740号 はOneweb社がデータ通信機能を持つ超小型 衛星を使用した衛星コンステレーションの 具体的計画を発表しており、今後の動向が 注目される。 2015, SIA/The Tauri Group *3.“Futron Satellite Manufacturing Report”, January 2015, Futron *4.“Commercial Space Transportation 2014 Year in Review” , February 2015, FAA AST 参考資料 *5.“2015 Commercial Space Transportation *1. “The Space Report 2015” , Space Foundation Forecasts” , April 2015, FAA AST & COMSTAC” *2. “State of the Satellite Industry Report” , May 〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部 部長 佐古 理〕 25