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世界の宇宙産業動向 - 一般社団法人 日本航空宇宙工業会

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世界の宇宙産業動向 - 一般社団法人 日本航空宇宙工業会
工業会活動
世界の宇宙産業動向
1.世界の宇宙産業売上高推移
世界の宇宙産業売上高推移に関しては、米
宇宙産業売上高推移を示す。2014年における
世界の宇宙産業売上高は3,300億ドルで、2013
国のスペース財団(Space Foundation)が発行
年の3,025億4,000万ドルと比べて9.1%増加し
している「Space Report」に報告がある。
2009∼2013年の年平均増加率5.2%を大幅に上
Space Reportで報告されている世界の宇宙産
回った。
業売上高は、商業宇宙活動と政府の宇宙支出
2014年の商業宇宙活動による売上高は、世
で構成されている。商業宇宙活動の売上高は
界の宇宙産業売上高の約四分の三を占めた。
「商業宇宙製品およびサービス」と「商用イ
宇宙船、宇宙ステーションおよび地上設備、
ンフラストラクチャーおよび関連産業」の2
打上げサービス、研究開発、保険を含む「商
部門、政府の宇宙支出は「米国政府宇宙予算」
用インフラストラクチャーおよび関連産業」
と「非米国政府宇宙予算」の2部門となって
部門は、2014年において4部門中で最も高い
おり、これらの4部門で世界の宇宙産業売上
増加率と売上高となり、世界の宇宙産業売上
高は構成されている。
高への最大の貢献部門となった。その売上高
図1に、2009年から2014年における世界の
は、2013年の1,084億8,000万ドルから17.7%増
図1 世界の宇宙産業売上高推移(出典:資料*1)
12
平成27年8月 第740号
加し、2014年は1,276億5,000万ドルであった。
万ドルから2.9%増加して、2014年429億6,000
この伸びは主に、全地球型衛星航法システム
万ドルとなったが、依然として2012年の470
(GNSS)レシーバーの販売によるものである。
億4,000万ドルの支出よりも低いままである。
次に情報通信、地球観測(EO)、測位、航行
2014 年 の 米 国 を 除 く 国 の 政 府 宇 宙 投 資 は
支援、時刻同期サービスを含む「商業宇宙製
12.9%増大し、362億1,000万ドルだった。
品およびサービス」部門の売上の増加率は緩
やかとなった。その売上高は、2013年の1,202
億5,000万ドルから2014年の1,231億8,000万ド
ルまで2.4%増加した。
2.商業市場における衛星産業の動向
(1)衛星産業の概要
世界の衛星産業売上高推移に関しては、米
2014年における世界の政府宇宙支出は7%
国 の 衛 星 産 業 協 会(SIA:Satellite Industry
増加して791.7億ドルとなった。2013年に支出
Association)がレポートしている。SIAの委託
が減少した主な原因は米国の大幅な予算削減
でThe Tauri Groupが調査/研究を行っている。
の影響であった。世界の宇宙産業売上高に占
SIAレポートでは衛星産業の市場を①衛星
める政府宇宙支出の割合は2013年と変わらず
を使った通信/放送等のサービスを提供する衛
2014年も24%となった。
星サービス、②衛星製造、③打上げロケット
米国政府の宇宙支出は2013年の417億5,000
製造および打上げサービスからなる打上げ産
図2 世界の衛星産業総売上高と分野別内訳〔2009年~2014年〕(出典:資料*2)
13
工業会活動
業、④地球局、衛星通信/管制/電話設備、衛
増加した。
星携帯電話端末/GPS端末からなる地上機器の
(2)衛星産業の分野別動向
4分野に分類している。
②の衛星製造売上高は、大学で製造された
①衛星サービス分野
衛星を除外しているが、民間企業によって製
表1に世界の衛星サービス分野における
造された民生向けや政府向け衛星を含んでい
総売上高の内訳を示す。2014年の総売上高
る。③の打上げ産業売上高は、民間企業や政
は1,229億ドルで、全セグメントの売上高が
府が実施するペイロード打上げサービスを含
増加している。2014年の衛星サービス分野
ん で い る が ISS(国 際 宇 宙 ス テ ー シ ョ ン:
の増加率は4%で前年よりも減少しており、
International Space Station)ミッションなどの
2009年からの増加率は依然として減少傾向
打上げは含まない。
にある。
図2に、2009年から2014年までの民生分野
衛星テレビ、ラジオ、ブロードバンドで
における、世界の衛星産業総売上高と分野別
構成される一般消費者向けサービスセグメ
内訳を示す。2014年の衛星産業総売上高は、
ントは、衛星サービス分野の総売上高に最
2013年から4%増加して2,030億ドルとなった。
も貢献した。衛星テレビ放送(DBS/DTH)
これは世界の経済成長率2.6%を上回り、また
の売上高は、衛星サービス分野総売上高の
世界の宇宙産業売上高3,227億ドルの63%に相
77%を占め、一般消費者向けサービスセグ
当する。4分野の売上高(シェア)は、衛星サー
メント売上高の94%を占めている。衛星有
ビスが1,229億ドル(60.5%)、衛星製造が159
料テレビ放送の加入者は新興市場を中心に
億 ド ル(7.8 %)、打 上 げ 産 業 が 59 億 ド ル
増加を続け、全世界で約2億3,000万人となっ
(2.9%)、地上機器が583億ドル(28.7%)で
た。衛星テレビ放送(DBS/DTH)の売上高
ある。売上高は4分野とも前年2013年よりも
の42%は米国で発生している。
表1 世界の衛星サービス分野における総売上高の内訳〔2009~2014年〕(出典:資料*2)
(億ドル)
年
年増加率
総売上高
一般消費者向サービ ス
衛星テレビ放送(DBS/DTH)
衛星ラジオ放送(DARS)
衛星ブロードバンド
固定衛星通信サービ ス
中継器リース
ネットワークサービス
移動体通信サービス
音声
データ
リモートセンシング
2009
10%
928
753
718
25
10
144
110
34
22
7
15
10
2010
7%
992
809
769
28
12
150
111
39
23
7
16
10
2011
9%
1,078
886
844
30
12
157
114
43
24
7
17
11
注:中継器リースにはDTH衛星テレビプラットフォーム向け容量を含む。
ネットワークサービスにはVSATネットワークを含む。
14
2012
5%
1,135
933
884
34
15
164
118
46
24
7
18
13
2013
5%
1,186
981
926
38
17
164
118
46
26
8
18
15
2014
4%
1,229
1,009
950
42
18
171
123
48
33
9
23
16
平成27年8月 第740号
高精細度テレビジョン(HDTV)のチャ
移動体通信サービスの売上高は2013年の
ンネル数は更に増加しプレミアムサービス
6%増加から2014年は25%増加へと急激に
による収益増が発生している。最初の商業
増加した。移動体衛星サービスの音声売り
4K Ultra HD(UHD)放送は米国で2014年後
上げは2013年の11%増加から2014年は19%
半から開始された。主に生放送を取り扱う
の増加に、データ売上高は2013年の5%増
UHD放送がさらに2015年から開始される。
加から2014年は27%増加となった。データ
この背景には周波数帯を2.5倍節約する圧縮
売上増加の主要因は航空機へのデータサー
技術の継続的改良がある。
ビスの影響による。
衛 星 ラ ジ オ 放 送(DARS)の 売 上 高 は、
リモートセンシングの売上高は、リモー
2014年に10%増加した。衛星ラジオ放送の
トセンシング会社の米国政府への売上が牽
加入者は、米国の顧客を中心に2014年に7%
引役となり成長を続け9%増加した。新規
増加して約2,730万人となった。衛星ブロー
参入会社は資本の調達、衛星の開発、初期
ドバンドの売上高は、2013年の17億ドルか
コンステレーションの開発を継続してい
ら2014年は18億ドルへと増加した。衛星ブ
る。
ロードバンドの収益の増加率の方が、衛星
ブロードバンドサービス加入者の増加率よ
②衛星製造分野
りも若干高い。
SIAの報告において衛星製造分野の売上
固定衛星通信サービスの売上高は2013年
高は、衛星が打上げられた年に集計される。
の横ばいから2014年は4%増加した。中継
図3に衛星製造分野の売上高推移を示す。
器リース売上高、ネットワークサービス売
2014年の衛星製造分野の売上高は、2013年
上高ともに2013年の横ばいから2014年は
から1%増加して159億ドルとなった。衛星
4%の増加となった。
の打上げ数は2013年の101機
(Cubesat91機を
図3 衛星製造分野の売上高推移〔2009年~2014年〕(出典:資料*2)
15
工業会活動
含めると192機)から2014年は121機(Cubecat
図4に打上げ産業分野の売上高推移を示す。
135機を含めると256機)と大幅に増加した。
打上げ産業分野の売上高は2013年には7%
衛星の総打上げ数に占めるCubesatの割合は
減少したが、2014年は9%増加した。2014
53%であり大部分がリモートセンシングに
年の商業打上げは73回と2013年の62回から
使用される。衛星製造分野売上高のうち通
増加したが、これは欧州と米国の商業打上
信衛星の割合は33%である。また軍事衛星
げが増加したためである。
は2013年の30%から増加し38%を占めてい
商業衛星打上げ産業分野の売上高に占め
る。Cubesatは前年同様1%以下である。
る政府機関の割合は2013年の70%から2014
米国の衛星製造分野の売上高は2013年か
年は72%に増加しており、引き続き打上げ
ら9%減少した。米国企業は2014年に打上
産業分野売上高の主要な牽引者であり続け
げた衛星の29%を製造し、世界の衛星製造
た。米国は商業打上げの41%と最大のシェ
分野売上高の62%を獲得した。Cubesatを含
アを持っているが、米国政府の衛星打上げ
めると米国企業は2014年に打上げた衛星の
が売上の34%を占めている。
62%を製造し、世界の衛星製造分野売上高
の63%を獲得した。米国が2014年に打上げ
④地上機器分野
た130機の衛星のうちCubesatは99機であっ
地上機器分野の売上高は、衛星サービス
た。米国の衛星製造分野売上高の75%は米
分野に次いで2番目に大きい。図5に地上機
国政府の支出である。
器分野の売上高推移を示す。地上機器分野
は、ネットワーク機器、衛星航法装置、民
③打上げ産業分野
生機器(衛星テレビ、ラジオ、ブロードバ
SIAの報告において打上げ産業分野の売
ンド、モバイル機器)で構成されている。
上高は、打上げが行われた年に集計される。
SIAの報告においてネットワーク機器には、
図4 打上げ産業分野の売上高推移〔2009年~2014年〕(出典:資料*2)
16
平成27年8月 第740号
注:民生機器には、衛星テレビ、ラジオ、ブロードバンド、モバイル機器が含まれる
図5 地上機器分野の売上高推移〔2009年~2014年〕(出典:資料*2)
ゲートウェイ、ネットワークオペレーショ
3.世界の衛星製造実績
ンセンター(NOCs)、衛星ニュースギャザ
世界の衛星製造実績は、Futron社がSatellite
リング(SNG)機器、フライアウェイアン
Manufacturing Reportで公表している、衛星の
テ ナ、超 小 型 ア パ ー チ ャ タ ー ミ ナ ル
打上げ実績とその製造企業から毎年集計*1す
(VSATs)が含まれる。また、民生機器には、
衛星テレビ、ラジオ、ブロードバンド機器、
ることが出来る。
2009年から2014年における6年間の国別衛
移動体衛星端末、スタンドアローン衛星ナ
星製造数を図6に示す。また、2014年の衛星
ビゲーションデバイスが含まれるが、ス
製造実績に対する製造企業別シェアを図7に
マートフォンなどのデバイスで使用される
示す。
チップセットは含まれていない。地上機器
2014年の衛星製造実績は世界全体で121機
分野の売上高は、2014年に5%増加した。
で 2013 年 に 比 べ て 20 機 増 加 し た。こ れ は
ネットワーク機器の売上高は2014年に6%
SkysatやOrbcommのような200㎏以下の衛星が
増加した。衛星航法装置は2014年の地上機
2013年の10機から2014年は22機に増加した影
器全体の売上高の53%を占めているが、装
響による。2009年から2014年の6年間の年平
置が集計に含まれるスタンドアローンか
均衛星製造実績は103機であり、今後も世界
ら、含まれない埋め込みチップセットに移
全体で100機以上の衛星製造が見込まれる。
行していることから、売上高は311億ドル
米国の衛星製造数は2013年の25機から2014
で変わらないが、割合は2013年の57%から
年は31機と6機増やし、順位は1位を保った。
4%ポイント減少した。民生機器の売上高
ロシアの衛星製造数は2013年の22機から2014
はすべてのセグメントで増え、売上高の合
年は28機と6機増やし、順位は2位を保った。
計も15%増加した。
欧州の衛星製造数は2013年の21機から2014年
17
衛星製造数
工業会活動
注:上図の棒グラフは表の記載順に従い、左側から米国、ロシア以下の衛星製造数を示している。
図6 国別衛星製造数〔2009年~2014年〕(出典:資料*3)
企業別衛星製造数
(機)
図7 2014年の衛星製造実績に対する製造企業別シェア(出典:資料*3)
18
平成27年8月 第740号
は25機と4機増やし、順位は3位を保った。中
4.世界のロケット打上げ実績
国の衛星製造数は2013年の17機から2014年に
世界のロケット打上げ実績に関しては、米
21機と4機増やし、順位は4位に保った。日本
国連邦航空局の商業宇宙輸送オフィス(FAA/
の衛星製造数は2機増加し、2013年の4機から
AST:The Federal Aviation Administration s
2014年は6機となった。
Office of Commercial Space Transportation)が
2014年の衛星製造実績に対する製造企業別
シェア1位はロシアの衛星製造会社ISS-レシェ
Commercial Space Transportation:2014 Year In
Reviewを公表している(資料*4参照)
。
ト ニ ェ フ(Information Satellite Systems -
同レポートに基づく2009年から2014年にお
Reshetnev Company)で13機である。同様に2
ける6年間の国別ロケット打上げ実績を図8
位は欧州Thales Alenia社の10機、3位は国営
に、2014年打上げのロケット別内訳を図9に
企 業 の 中 国 宇 宙 技 術 研 究 院(CAST:China
示す。
Academy of Space Technology)となっている。
*1 2014年も2013年に引き続きCubesatと呼ばれる10
×10×10㎝を基本形とする超小型衛星が多数打
上げられているが売上高としては1%以下であ
り、また、本稿の趣旨に従い集計から取り除いた。
米国、ロシア、欧州、中国、日本、インド、
多国籍及びイスラエルの打上げプロバイダ
は、2014年に合計92回の打上げを行い、その
うちの23回は民生用だった。これは、2013年
までの5年間の平均値合計79回、うち商業打
注:上図の棒グラフは表の記載順に従い、左側から米国、ロシア以下の打上げ回数を示している。
図8 国別ロケット打上げ回数〔2009年~2014年〕(出典:資料*4)
19
工業会活動
図9 2014年打上げのロケット別内訳(出典:資料*4)
上げ22回よりも多い結果となっている。以下
打上げを行ったが、民生用打上げはなかった。
各国の2014年における世界の民生用打上げの
中国は2年続けて民生用打上げがなかったこ
要約である。
とになる。
米国では2014年に23回の打上げを行った
インドは2014年に4回の打上げを行ったが、
が、これは2013年に比べて4回多かった。23
そのうち1回は民生用打上げであった。2013
回の打上げのうちの11回は民生用だったが、
年には3回の打上げを行ったが、民生用打上
これは2013年よりも5回多かった。
げはなかった。
ロシアは毎年最も多くの打上げを続けてい
イスラエルは2014年に偵察衛星Ofeq10を搭
る。2014年には2013年と同数の32回の打上げ
載したShavitロケットの打上げに1回成功し
を行った。2014年の商業打上げは4回であり、
た。これは2010年以降、イスラエルにとって
2013年から8回減少した。ロシアはロシア衛星
初めての軌道上打上げである。イスラエルは
通信社(RSCC:Russian Satellite Communications
2014年、民生用打上げを行わなかった。
Company)向けのExpress AMR4 GEO通信衛星
日本は2014年に4回の打上げを行ったが、
を搭載したプロトンMロケットの第3段が高
民生用打上げはなかった。2013年には3回の
度160㎞で破壊され衛星を軌道に投入するこ
打上げを行ったが、民生用打上げはなかった。
とができなかった。
欧州は2014年に11回の打上げを行ったが、
そのうち6回は民生用打上げであった。2013
年には7回の打上げを行ったが、そのうち4回
は民生用打上げであった。
中国は2014年に16回の打上げを行ったが、
民生用打上げはなかった。2013年には15回の
20
多国籍企業Sea LaunchのZenit 3SLは2014年
に1回の民生用打上げを行った。2013年には1
回の民生用打上げを行ったが失敗している。
商用静止衛星の打上げは2014年に10回行わ
れ た が、こ れ は 2013 年 に 比 べ て 1 回 多 い。
2007年以降静止軌道への商用打上げの回数は
減少を続けている。
平成27年8月 第740号
5.商業衛星打上げの需要予測
表2にCOMSTACとFAAによる2015年以降の
米国連邦航空局の商業宇宙輸送オフィス
商業衛星の需要と商業打上げ需要の予測を示
(FAA/AST:The Federal Aviation Administration s
す。ここで対象とする衛星は、商用の静止軌
Office of Commercial Space Transportation)と
道(GSO)衛星と非静止軌道(NGSO)衛星
商業宇宙輸送諮問委員会(COMSTAC:The
であり、非静止軌道衛星には、商業衛星と商
Commercial Space Transportation Advisory
業打上げロケットを利用する政府(民事と軍
Committee)は、商業宇宙打上げサービスに
事)ミッションが含まれる。商業打上げロケッ
対する世界の需要予測を行っている(資料*
トを使わない衛星は含まれていない。図10に
5参照)。
打上げ回数の1993年から2013年までの実績
・COMSTAC
「The COMSTAC 2015 Commercial
データと2014年から2017年までの予測を示
す。
Geosynchronous Orbit(GSO)Launch Demand
Forecast」(2015年商業静止軌道(GSO)打
COMSTACレポートによれば、2015年から
上げ需要予測)
;静止軌道で運用する商業
2017年までの3年間における商業静止軌道衛
衛星の需要と静止軌道への商業打上げ需要
星の市場予測は年平均25機と2014年から2016
の予測
年 ま で の 年 平 均 22.3 機 と ほ ぼ 同 数 で あ る。
・FAA「2015 Commercial Space Transportation
2015年から2017年に打上げが計画されている
Forecast for Non-Geosynchronous Orbit
商業静止軌道衛星の39%は5,400㎏以上の最も
(NGSO)」
(2015年商業非静止軌道(NGSO)
重いクラスであり、7%は2,500㎏以下の最も
宇宙輸送予測);LEO、MEO、ELI、EXTの
軽いクラスとなっている。
ような非静止軌道への商業衛星打上げ需要
また、同期間における商業静止軌道衛星の
の予測
打上げ回数予測は年平均17回である。他方、
表2 商業衛星および商業打上げロケットの需要予測(出典:資料*5)
年
2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 合計 平均
商用静止衛星/非静止衛星打上予測 (単位:機)
商用静止軌道衛星
(COMSTAC予想値)
24
25
26
−
−
−
−
−
−
−
75
非静止軌道衛星
(FAA予想値)
65
136
151
104
92
92
87
86
87
86
986 98.6
衛星合計
89
161
177
−
−
−
−
−
−
− 1,061 106.1
25.0
軌道別商業打上回数予測 (単位:回)
静止軌道
(中型−大型ロケット)
16
17
18
−
−
−
−
−
−
−
51
非静止軌道
(中型−大型ロケット)
13
17
15
13
11
10
10
10
10
10
119 11.9
非静止軌道
(小型ロケット)
1
2
4
2
1
0
1
0
1
0
12
打上合計
30
36
37
−
−
−
−
−
−
−
182 18.2
17.0
1.2
21
工業会活動
図10 2014年までの打上げ実績とその後3年間の打上げ予測(出典:参考資料*5)
2015年から2024年までの10年間における商業
た、2015年から2024年までの10年間に986機
非静止軌道衛星の打上げ回数予測は年平均
のペイロードが打上げられる計画に対して
11.9回である。これは通信用コンステレーショ
131回しか打上げが計画されていないのは、
ン向け衛星や国際宇宙ステーションへの乗員
マイクロ衛星や小型衛星を一度に打上げる計
や貨物輸送の定常化により、それ以前の10年
画のためと考えられる。
間の年平均7回から大幅に増加している。ま
図11に2015年から2024年までの非静止軌道
図11 2015~2024年までの非静止衛星分野別予測(出典:参考資料 *5)
22
平成27年8月 第740号
図12 2015~2024年までの非静止衛星打上げ分野別予測(出典:参考資料 *5)
(NGSO)衛星の分野別打上げ機数予測を、図
12に分野別打上げ回数予測を示す。
6.Cubesat
Cubesatの動向に関してはSIAがケーススタ
FAAレポートによる非静止軌道衛星の市場
ディとしてレポートしている。2014年には
予測では、2015年から2024年までの10年間に
135機のCubesatが打上げられたが、そのうち
打上げられるペイロードは986機で、打上げ
101機がリモートセンシングを目的とした商
回数は131回である。
用目的であり2013年の8機から大幅かつ急激
2015年から2024年までの非静止軌道衛星分
に増加した。また135機中84機がISSから軌道
野別の打上げ数の合計を分析すると、商用貨
へと放出され、28機がロケットの打上げ失敗
物・乗員輸送分野の打上げは全体の60%を占
で失われた。Cubesatの大部分、93機は米国の
めており、最近開発された打上げロケットを
Planet Labs社が製造・運用している。2005年
使用している。その他商用分野は全体の21%
から2014年までに製造されたCubesatの費用は
を占めている。商用リモートセンシング分野
総額で100万ドル以下である。Cubesat は技術
は7%を占めているが昨年の報告よりも少な
の進歩による機器の小型化と開発・製造費用
い回数となっている。これはスカイボックス・
が安価である長所を生かして、2014年から多
イメージング社のような会社が小型ロケット
数の衛星の連携により、システムとしての機
の代わりに複数機の同時打上げを計画した影
能を持たせるコンステレーションとしての商
響による。商用通信分野の打上げは全体の7%
用利用を目的に打上げが開始された。
を占めているが低軌道通信衛星コンステレー
しかし3U(10×10×30㎝)サイズのCubesat
ションの置き換えが完了する2017年以降計画
では満足な推進系を搭載することが困難であ
されていない。技術試験・実証分野の打上げ
り、商用利用にはもう少し大きな超小型衛星
は全体の5%を占めている。
(200㎏以下)が適していると考えられる。
2014年にSkybox社が、商用目的で超小型衛
23
工業会活動
図13 Cubesatの年別打上げ数推移(出典:資料*2)
星Skysat2機の打上げに成功した。最終的には
分野で1%増加、③打上げ産業分野で9%増
24機の衛星コンステレーションとして高解像
加、④地上機器分野で5%増加した。2013
度の光学画像を提供する計画となっている。
年に大幅に減少した打上げ産業分野ではあ
また2015年にはOneweb社が軌道上に多数の
るが、欧州と米国の商用打上げが増加した
データ通信機能を有する超小型衛星を打上げ
ことから2014年度は大幅に増加することと
る具体的な計画を発表しており、これらの動
なった。
きが注目される。
・衛星産業を構成する4分野の売上高シェア
は、①衛星サービス分野が61%、②衛星製
7.まとめ
以下、世界の宇宙産業動向についての要約
を示す。
造分野が8%、③打上げ産業分野が3%、④
地上機器分野が29%である。
・2014年における我が国の衛星製造数は6機、
・商業宇宙活動と政府の宇宙支出で構成され
ロケット打上げ回数は4回であり、各種資
る世界の宇宙産業売上高は、2014年に9.1%
料に掲載された国別のデータによれば、イ
と大幅に増加し、成長を続けた。これは世
ンドとほぼ同数の世界第5位である。
界の経済成長率の2.6%を上回る。
・衛星産業の売上高は2014年に4%増加し、
世界の宇宙産業売上高の63%を占めた。
・2014年は135機のCubesatが打上げられたが、
うち101機が商用目的であり、2013年の8機
から大幅かつ急激に増加した。
・衛星産業を構成する4分野の売上高は、①
・2014年には商用目的の超小型衛星(200㎏
衛星サービス分野で4%増加、②衛星製造
以下)Skysatが2機打上げられた。2015年に
24
平成27年8月 第740号
はOneweb社がデータ通信機能を持つ超小型
衛星を使用した衛星コンステレーションの
具体的計画を発表しており、今後の動向が
注目される。
2015, SIA/The Tauri Group
*3.“Futron Satellite Manufacturing Report”,
January 2015, Futron
*4.“Commercial Space Transportation 2014
Year in Review”
, February 2015, FAA AST
参考資料
*5.“2015 Commercial Space Transportation
*1.
“The Space Report 2015”
, Space Foundation
Forecasts”
, April 2015, FAA AST & COMSTAC”
*2.
“State of the Satellite Industry Report”
, May
〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部 部長 佐古 理〕
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