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慶應-国連グローバルコンパクトプロジェクト活動報告(第一報) - G-SEC

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慶應-国連グローバルコンパクトプロジェクト活動報告(第一報) - G-SEC
慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所
Sharing Information on Progress
責任ある経営教育報告書
(第一報・日本語版)
2010.10
Keio University
Global Security Research Institute
Sharing Information on Progress
慶應―国連グローバルコンパクトプロジェクト
ご挨拶
慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所(G-SEC)は、地球規模の課題に関
する学際研究と教育目標を推進すべく、2000 年 6 月に設立されました。とりわ
け科学技術、環境政策、情報技術、アジアにおける安全保障、ヒューマンセキ
ュリティなど、今日的な諸課題に関する研究を重ねています。複数のプロジェ
クトは理論的、実践的、そして政策的な側面から実を結びつつあり、当研究所
は究極的には、研究と教育を通じた地球社会の持続的な発展と継続を目指して
います。
本研究所は 2008 年に「責任ある経営教育」(the Principles for Responsible
Management Education: PRME)への参加を表明しました。慶應―国連グロー
バルコンパクトプロジェクト (Keio-UNGC Project) は、このイニシアチヴの原
則を実現させるべく設立されました。倫理的で責任ある企業経営に焦点を当て、
これまで PRME の基本理念の実践を試みてまいりました。この 18 カ月で、本
プロジェクトは 3 つの主だった活動を始動させています。1 つ目に企業倫理と企
業の社会的責任に関する調査研究、2 つ目に本学学生と一般に開かれた教育の実
践、3 つ目に企業、市民社会の諸組織、そして研究者間の対話と協力関係の構築
です。
この冊子は、私たちが取り組んできた活動成果の概要をかいつまんでお知ら
せするはじめての報告書です。本プロジェクトは立ち上げから日も浅いため、
「強固な基盤づくり」を重視しています。「強固な基盤」が意味するものとは、
しっかりとした組織体制、資金的な裏付け、そして事務所や建物のような調査
研究の拠点――もっともこれらは重要な経営資源でもあるのですが――、当初
私たちにはそうした持ち合わせがほとんどありませんでした。かつて著名な武
将が「人は石垣、人は城」という言葉を遺したように、PRME と UNGC の掲
げる原則を信念とする人々のつながりこそが「強固な礎」なのだと考えていま
す。私たちは学術研究の立場から、人の紐帯に内在する知の力を信じています。
梅津
光弘, Ph.D.
G-SEC 上席研究員
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Keio University
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Sharing Information on Progress
Ⅰ
活動成果
公開セミナーシリーズ
これまで当プロジェクトは、14 回を数えるセミナーシリーズを開催してきま
した。各回、国連職員、NGO/NPO の責任者、国連グローバルコンパクト・ジ
ャパンネットワークの職員、そして国内の著名企業から CSR に取り組む実務家
をお招きしています。このセミナーシリーズは、原則として一般公開されてお
り、実業家、NPO/NGO 職員、学生、研究者との間で企業倫理とその実践につ
いて議論を交わすまたとない機会を提供してきました。また慶應義塾の学生が
企画の段階から主体的に参加し、時期を得て共同研究の成果も報告しています。
こうしたことから本セミナーシリーズの運営自体に、責任ある経営教育の機会
を学生に与える含意があります。
概要
・場所:G-SEC ラボラトリー
(三田キャンパス東館6階)
・時間:講演と質疑応答を合わせて 2 時間程度
・参加方法: 公開 (要事前予約, 定員 100 名)
・対象: 学生、研究者、実業家、起業家
・ねらい:①責任ある経営教育を念頭にした企業実践に関する最新情報の共有
② 大学院生と学部学生による研究成果の発表
③ 責任ある経営教育と企業倫理学発展のための新たな手法の探求
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ボルヴィック「1ℓ for 10ℓ」プログラムの実証研究
慶應―UNGC プロジェクトは、ボルヴィック「1ℓ for 10ℓ」プログラムについ
ての共同研究を行いました。このプロジェクトはダノンウォーターズオブジャ
パンが主催するもので、
“cause-related marketing; CRM”とよばれる寄付連動
型の商品販売の1つです。フランス・ダノン社製の飲料水「ボルヴィック」を
一本購入するごとに、ダノングループが収益の一部からユニセフに寄付します。
また寄付を受けたユニセフは、アフリカ・マリ共和国での井戸の掘削事業を通
じて、ボルヴィック 1 リットルあたり、清潔で安全な飲料水、10 リットルの供
給を約束します。近年、日本の多くの人々は、国内企業による CRM のような努
力に興味を示しはじめています。
学生たちはこの共同研究で、日本の消費者が CRM の要素を持ち合わせるプロ
ジェクトをどのように受け入れ、また反応するのかを示そうと試みました。ウ
ェブ上でのアンケート調査と計量的な分析の両面から突き詰めるとともに、現
地のマリ共和国に赴いて、発展途上国における飲料水供給の実情を視察してき
ました。そして寄付を原資とする資金が現地の飲料水不足を緩和すべく井戸の
掘削に効率的で効果的に投じられていることを検証しました。最終的に、学生
たちは、NGO および NPO との共同事業を通じた企業の社会的責任プログラム
の可能性と限界を理論的に分析しています。
またプロジェクト型調査の研究成果を、多くの場面で報告してきました。2008
年秋に行われたアメリカ経営倫理学会(the Society for Business Ethics)の年
次大会で初めてその成果を披露するとともに、2008 年から 2009 年にかけて
G-SEC のオープンリサーチセミナーで 3 回にわたり報告しています。
研究概要
着眼:日本におけるボルヴィック「1ℓ for 10ℓ」プログラムの実証研究
目的:企業による寄付的貢献を伴う新たな市場動向の分析と、その社会的役割
の探求
期間:2008 年 7-9 月
方法:マリ共和国における現地調査と日本の消費動向に関するアンケート調査
結果:ボルヴィックという製品名の認知度、企業による貢献の意識、地球規模
の課題解決への期待によって、潜在的な消費の動向は影響を受ける。それ
にともない消費者は、企業の社会貢献活動に関する情報を異なる情報源や
媒体から得ている。
提言:地球規模の課題に企業が貢献する重要性が揺らぐことはない。また
NGO/NPO との連携を通じて効率的な経営管理を推進できることを確認する。
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オープンセミナーの日程
注
ゲストのご芳名、所属、肩書は講演当時のものです。
【2008 年度】
第1回(7 月 18 日)
「企業の持続的な社会貢献活動を考える
――ボルヴィック「1ℓ for 10ℓ」プログラムの実証研究を手がかりに」
講演者 吉沢直大 氏
ダノンウォーターズオブジャパン株式会社
ボルヴィック「1ℓ for 10ℓ」プログラムプロジェクトリーダー
報告者 商学部梅津光弘研究会代表
第2回(10 月 2 日)
「アフリカ地域におけるNPO/NGOや国際機関の役割と課題」
講演者 土屋萬佐子 氏
NGO FAN SABA 代表
浦上綾子 氏
財団法人 日本ユニセフ協会 個人・企業事業部
第3回(1 月 8 日)
「2008 年度ボルヴィック「1ℓ for 10ℓ」プログラムの調査結果より考察する
企業の社会への役割と可能性」
報告者 商学部
梅津光弘研究会代表
「第1回 Global Forum for Responsible Management Education 緊急報告」
講演者 梅津光弘
G-SEC 上席研究員
【2009 年度】
第4回(4 月 28 日)
「金融機関における実務経験からコンプライアンスを考える」
講演者 栗田暁
氏
元・みずほフィナンシャルグループ
法務・コンプライアンス部参事役
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第5回(5 月 27 日)
「CO2削減対策をコストからチャンスへ
――世界 40 大都市で展開する「CCIビル省エネ改修プログラム」」
講演者 光橋翠 氏
ウィリアム・J・クリントン財団
クリントン気候イニシアチブ、シティー・ディレクター
第6回(6 月 23 日)
「地雷除去に挑む――豊かで平和な大地への復興」
講演者 雨宮清 氏
山梨日立建機 代表取締役社長
第7回(7 月 10 日)
「ユニクロにおける全商品リサイクル活動について」
講演者 小柴英子 氏
株式会社ファーストリテイリングCSR部
第8回(10 月 6 日)
「Acadex――コンゴ小学校設立プロジェクトの挑戦」
講演者 サイモン・ベデロ 氏
慶応義塾大学環境情報学部講師 Acadex 小学校プロジェクト 代表
第9回(11 月 23-24 日)
「慶應―国連グローバルコンパクトプロジェクト」(パネルセッション)
展示・制作 商学部梅津光弘研究会
G-SEC 第3回年次コンファレンス
in SFC Open Research Forum
六本木アカデミーヒルズ
第 10 回(12 月 8 日)
「CSRオフィサーの実務」
講演者 金田晃一 氏
武田薬品工業株式会社コーポレート・コミュニケーション部
CSR・コーポレートブランディング シニアマネジャー
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第 11 回(1 月 12 日)
「UNGC ジャパン・ネットワークの活動」
講演者 榎本裕子 氏
UNGC ジャパン・ネットワーク事務局次長
Yuko Nishitani 氏
Ken Iwama 氏
Tokio Marine Group CSR Office
【2010 年度】
第 12 回(4 月 2 日)
「グローバリズムと日経GSRプロジェクト」
講演者 原田勝広 氏
日本経済新聞社 編集委員
第 13 回(5 月 12 日)
「Table for Two の運動」
講演者 上村悠也 氏
Table for Two 大学連合代表
第 14 回(6 月 15 日)
「イオンサプライヤーCoC(取引行動規範)
――プライベートブランド商品の製造過程での社会的責任の取組」
講演者 西面和巳 氏
イオン株式会社グループ環境・社会貢献部
SA8000 推進グループマネージャー、イオンサプライヤーCoC 事務局長
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Ⅱ
6 原則への適用
本セクションでは、慶應―UNGC プロジェクトの活動と PRME の掲げる 6
つの原則がどのように符合するのかについて、その概略を提示します。2008 年
に PRME に加盟して以降、私たちはつねにこのイニシアチブの掲げる目的、意
義づけ、方法、研究、パートナーシップ、そして対話について思索と検討を重
ねてきました。以下、PRME が示す6つの原則をご紹介するとともに、本プロ
ジェクトのこれまでの取り組みがその理念をいかに実践するものであるのかを
ご説明します。
注記 PRME6原則(the 6 principles)の原文は、同イニシアチブのウェブサイト
に掲載されています(http://www.unprme.org/the-6-principles/index.php)。今回、
報告書の日本語版を作成するにあたり、訳文を次の文献から引用しました。
梅津光弘 (2008) 「慶應―国連グローバル・コンパクト・プロジェクト」,
『G-SEC Newsletter』, 10, p.4
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原則 1. 目的
学生たちが、将来において、持続可能なビジネス・社会を自ら造り上げ、ある
いは持続可能なグローバル経済の一員として活躍できるような教育を提供する。
Purpose
We will develop the capabilities of students to be future generators of
sustainable value for business and society at large and to work for an
inclusive and sustainable global economy.
本プロジェクトのオープンセミナーでは、毎回、多彩な講演者をゲストとし
てお迎えし、その講義内容はどれも学生に感銘を与えるものとなっています。
慶應義塾の学生諸君の大半が卒業後には就職を果たし、日本の主要な企業で働
くことでしょう。その卒業生間のネットワークはとても強い結びつきを持ち、
まさに地球規模の広がりを持つものです。そのため私たちは、学生諸君の将来
の影響力が、未来世代の持続的な発展を押し広げるとともに、PRME の掲げる
原則にぴたりと一致するものとなることを期待しています。
原則 2. 意義づけ
UNGC でも謳われているような「グローバルな社会責任」を、日々の学術研究
や教育活動の中にしっかりと意義づける。
Values
We will incorporate into our academic activities and curricula the values of
global social responsibility as portrayed in international initiatives such as
the United Nations Global Compact.
慶應―国連プロジェクトでは、地球規模の社会的責任の意義を、学術的かつ
教育的に詳しく考える活動のよい手本となることを目指しています。
「ボルヴィ
ック 1ℓ for 10ℓ」プログラムと日本国内に向けて多くの示唆に富む調査研究に
参加したことは、その意義を深めるうえでよい事例だといえます。ささやかな
一歩ではありますが、学生が本プロジェクトに参加したことはまさに画期的な
変化となりました (第 1 回、6 回、10 回セミナー)。
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原則 3. 方法
「責任あるリーダーシップ」を効果的に教育し、定着させるための枠組み・教
材・カリキュラムの開発や、場の提供に努める。
Method
We will create educational frameworks, materials, processes and
environments that enable effective learning experiences for responsible
leadership.
前章でご紹介したように、本プロジェクトは、学生たちが地球規模の責任に
ついてよく考える数多くの機会を提供してきました。
「ボルヴィックの 1ℓ for 10
ℓ」プログラムからユニクロ社によるリサイクルプログラムまで、学生たちは、
企業の小さな取り組みでも個々に創意工夫を凝らすことが、やがては顕著な違
いとなって表れる現実を目の当たりにしました。このプロジェクト型教育とい
う試みは、教室における伝統的な講義形式による教育のありかたを一変させる
最も効果的な教育手法の1つとなるかもしれません。 (第 3 回、9 回セミナー)
原則 4. 研究
持続可能な社会・環境・経済をつくりだす上で、企業はどのような役割を果た
し、影響力を持つのか、ということについての社会的な理解を深めるために、
理論・実証の両面から研究を重ねる。
Research
We will engage in conceptual and empirical research that advances our
understanding about the role, dynamics, and impact of corporations in the
creation of sustainable social, environmental and economic value.
「ボルヴィック 1ℓ for 10ℓ」プログラムの研究のみならず、企業倫理や企業
の責任に関する個別共同研究は 40 以上行われてきました。その成果はすべて、
日本語により執筆されています。これらのプロジェクトのうちの 2 つは、2009
年に東京で開催されたオープンリサーチフォーラムで報告されました(第 3 回お
よび 9 回セミナー) 。
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原則 5. パートナーシップ
企業経営陣が、社会・環境に対する責任を果たそうと取り組む時は、彼らと積
極的に関わるとともに、そういった取り組みが効率的かつ効果的に遂げられる
方法を探求する。
Partnership
We will interact with managers of business corporations to extend our
knowledge of their challenges in meeting social and environmental
responsibilities and to explore jointly effective approaches to meeting these
challenges.
私たちはこれまでダノンジャパン社、日本とマリのユニセフ協会、そして、
両国を架橋する国内の NGO、ファンサバ(FAN3: fan saba)との関係を構築しま
した。
「1ℓ for 10ℓ」プログラムにかかわるこれらの組織との提携と支援を受け
てはじめて、マリへの調査旅行が現実のものとなったのです。またビジネスの
一線で活躍する実務家をお呼びしてビジネスの実情と経験を伺う機会を設けて
きました。具体的に、第 4 回セミナーでは法務の担当者をお招きし、第 6 回セ
ミナーでは地雷除去機会の開発に責任を負ってきた山梨日立建機の社長から貴
重な話を伺いました。また第 13 回セミナーでは、発展途上国への食料支援を目
的とした寄付連動型の販売プログラムを手掛ける人物をお招きし、第 14 回セミ
ナーでは、社会的な責任への企業の取り組みを支援する実務家をお招きしまし
た。この実務担当者は、国際的な流通網を管理するための倫理綱領を開発して
きた人物でもあります。これらの実務家や経営者との交流を通じて、学生たち
は実践家たちによる企業の変革を学び取ってきました。
原則 6. 対話
地球規模での社会的責任及び持続可能性に関して、教育者、実務家、政府、
消費者、メディア、市民団体、その他各種関係組織・ステイクホルダー等の間
での対話やディスカッションを支援・促進する。
Dialogue
We will facilitate and support dialog and debate among educators, business,
government, consumers, media, civil society organizations and other
interested groups and stakeholders on critical issues related to global social
responsibility and sustainability.
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私たちにはさまざまなステイクホルダーと意見交換の場を設けてきました。
実務家(第 1 回、4 回、6回、7回、10 回、11 回、14 回セミナー) , 国連 (第 2
回セミナー), 市民社会組織(第 2 回、5 回、8 回、11 回、13 回セミナー), メディ
ア (第 12 回セミナー), そして学術研究者 (第 3 回、8 回セミナー)などです。毎
回、講演後には、質疑応答の時間を多くとるように努めました。そこでの意見
交換は講演終了後にもしばらく続くこともしばしばありました。
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Ⅲ 今後の展望
本プロジェクトの第一報として、2008 年から 2010 年までの活動概要を説明し
てきました。前章では、個別の取り組みと PRME の 6 原則との関係を中心に述
べています。この試みはまだ端緒に着いたばかりで、さらなる改善の余地もあ
ります。そのため反省を込めて今後についていくつかの展望を示したいと思い
ます。
【さらなる企業との提携】 この 2 年間、プロジェクトはダノンウォーターズ
ジャパンとの提携のもとに有意義な経験を重ねてきました。同社との共同研究
を通じて、経験を伴った思索と考察という財産を得ることができましたし、な
により多くの学生たちは、プロジェクト型教育の機会を得てきました。私たち
はこうした企業との共同作業をさらに発展させたいと考えています。幸いにも、
日経 GSR プロジェクトという、8 企業と 8 つの学生チームが参画する新たな共
同研究の機会をすでに得ています。またほかにも積極的な研究活動と教育的な
経験を心待ちにしています。
【セミナーからカリキュラムへ】 定期的に開催してきた公開セミナーシリー
ズは、多くのステイクホルダーにとって新たな出会いや意見交換をする実りの
多い機会となっています。ですが私たちは、この試みを教育課程に組み替える
大幅な改編を望んでいます。もともと私たちは、学校が公式に認定する専攻の
単位を学生が取得することを念頭において、多彩な講義を立ち上げる計画を立
ててきました。
この企画を実現させるためには、責任ある経営教育という新たな専攻を発足
させて、その運営に寄付を募る基金の設立が不可欠です。たしかに昨今の全世
界的な金融危機の広がりによって、新たな基金設立の現実味はいささか遠のき
つつあるかもしれません。しかし本プロジェクトがこれまで培ってきた経験か
ら、責任ある経営教育に軸足を据えつつ、将来のリーダーを育成するうえで実
効力のある教育課程を構想できると考えています。
【他大学との連携と協働】
文部科学省の白書によると、日本国内には 750 を
超える大学が設立・運営されています。そのうち 340 あまりの大学が経営学や
商学部を擁しています。またビジネススクール(経営管理研究科)の数は 50 に
のぼります。これらの学校では、「企業倫理(経営倫理)」や「企業の社会的責
任(CSR)」といった科目名で講座を開講するところが増えています。しかしそ
れらの講義では、企業の責任や倫理といったテーマを主流とすることにあまり
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熱心ではないようにも思われます。
日本国内で PRME の加盟は、法政大学と慶應義塾大学の 2 校にとどまってい
ます。そのため PRME の普及に向けてより強固なネットワークづくりと行動が
待たれます。幸いなことに隣国の中国と韓国でも同じような状況にあり、PRME
の東アジアネットワークを構築すべく計画を立案しているところです。2010 年
秋に韓国で初のシンポジウムの開催が予定されています。3カ国間の友好関係
を強化・確認するのみならず、日本、中国、韓国から新たに PRME に加盟する
学校が現れる強い動機づけとなることを願ってやみません。
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Sharing Information on Progress
責任ある経営教育報告書
(第1報・日本語版)
2010.10
慶應義塾大学
グローバルセキュリティ研究所
〒108-8345 東京都港区三田 2-15-45
www1.gsec.keio.ac.jp/
慶應―国連グローバルコンパクトプロジェクト
梅津光弘
プロジェクトリーダー, G-SEC 上席研究員,Ph.D
武谷香
G-SEC 客員研究員, M.Sc
木村倫子
G-SEC 客員研究員, 修士
髙田一樹
日本学術振興会特別研究員(PD)
G-SEC 客員研究員
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