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福祉サービス利用援助事業・法人後見事業からみる生活支援事例集
連絡先一覧 □社会福祉協議会 名 称 電話番号 名 称 電話番号 広島市社会福祉協議会 (082)543-6325 安芸高田市社会福祉協議会 (0826)45-2941 呉市社会福祉協議会 (0823)25-0266 江田島市社会福祉協議会 (0823)40-2501 竹原市社会福祉協議会 (0846)22-5131 府中町社会福祉協議会 (082)285-7278 三原市社会福祉協議会 (0848)63-0570 海田町社会福祉協議会 (082)820-0294 尾道市社会福祉協議会 (0848)22-8385 熊野町社会福祉協議会 (082)855-2855 福山市社会福祉協議会 (084)928-1334 坂町社会福祉協議会 (082)885-2611 府中市社会福祉協議会 (0847)47-1294 安芸太田町社会福祉協議会 (0826)32-2226 三次市社会福祉協議会 (0824)63-8975 北広島町社会福祉協議会 (0826)82-2680 庄原市社会福祉協議会 (0824)72-7120 大崎上島町社会福祉協議会 (0846)62-1718 大竹市社会福祉協議会 (0827)52-2233 世羅町社会福祉協議会 (0847)22-3162 東広島市社会福祉協議会 (082)423-2800 神石高原町社会福祉協議会 (0847)85-2330 廿日市市社会福祉協議会 (0829)20-1182 ∼福祉サービス利用援助事業・法人後見事業からみる生活支援事例集∼ □家庭裁判所 名 称 電話番号 管轄区域 本 庁 (082)228-0494 広島市, 廿日市市, 東広島市, 大竹市, 安芸高田市のうち八千代町, 山県郡, 安芸郡, 三原市 のうち大和町 呉支部 (0823)21-4992 呉市, 竹原市, 江田島市, 豊田郡 尾道支部 (0848)22-5286 尾道市, 三原市(大和町を除く), 世羅郡(世羅西支所区域を除く) 福山支部 (084)923-2806 福山市, 府中市, 三次市のうち甲奴町, 神石郡, 庄原市のうち総領町 三次支部 (0824)63-5169 三次市(甲奴町を除く), 庄原市(総領町を除く), 安芸高田市(八千代町を除く), 世羅郡の うち世羅西支所区域 □広島法務局 名 称 電話番号 名 称 電話番号 本 庁 (082)228-5201 福山支局 (084)923-0100 廿日市支局 (0829)31-0164 三次支局 (0824)62-5070 東広島支局 (082)422-2338 海田出張所 (082)823-2251 呉支局 (0823)21-9288 可部出張所 (082)812-2548 尾道支局 (0848)23-2882 □公証人役場 名 称 電話番号 名 称 電話番号 広島公証人合同役場 (082)247-7277 尾道公証役場 (0848)22-3172 東広島公証役場 (082)422-3733 福山公証役場 (084)925-1487 呉公証役場 (0823)21-2938 三次公証人役場 (0824)62-3381 あんしんサポートセンターかけはし (社福)広島県社会福祉協議会 〠732-0816 広島市南区比治山本町12-2 TEL: (082)254-2300 FAX: (082)256-2228 ※本事例集は, 「広島県地域支え合い体制づくり事業(委託事業)」により, 作成しました。 (平成25年2月) ( 社 福 )広 島 県 社 会 福 祉 協 議 会 あんしんサポートセンターかけはし 目次 は じ め に 【福祉サービス利用援助事業による支援事例】 CASE 1 : 生活費を3日程度で使い切り, 子どもの養育ができていなかった事例 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 2 CASE 2 : 地域との関わり方がわからず, 孤立していた事例‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4 CASE 3 : 閉じこもりになり, 地域との関わりを自ら拒んでいた事例 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6 わが国は, どこの国も経験したことがない本格的な少子高齢・人口減少社会に入り, 人とのつな がりの希薄化による孤独, 孤立から発生するさまざまな生活課題が顕在化しています。 CASE 4 : 失業のため, 生活の居場所がなかった事例 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8 特に, 独居高齢者, 認知症高齢者, 高齢者のみの世帯, 知的や精神に障害がある人の世帯では, CASE 5 : 知人の不適切な金銭管理により, 福祉サービスを全く利用していなかった事例 ‥‥‥‥ 10 金銭管理がうまくできず, 多重債務に陥る, 食糧確保が難しい, 電気代や電話代などの支払いが滞 CASE 6 : 生活費がなく, 生きる気力を失っていた事例 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 12 り, 生活に支障をきたすなど, 判断能力が不十分なために日々の暮らしが安心して送れない状況 【福祉サービス利用援助事業から成年後見制度による支援に移行した事例】 CASE 7 : 退院後, 医療との関わりが不十分だった事例 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14 CASE 8 : 悪質商法に対し, 親子とも対応方法に困っていた事例 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 【法人後見事業による支援事例】 CASE 9 : 息子の介護放棄(ネグレクト) により十分な医療を受けていなかった事例‥‥‥‥‥‥‥ 18 CASE 10: 持病があるにも関わらず, 医療受診を拒否していた事例 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20 があります。 本会では, 各市町社協と連携し, 日常の金銭管理や各種サービス利用の支援を柱とした「福祉 サービス利用援助事業」 をはじめ, 身上監護及び財産管理を柱とした社協による 「法人後見事業」 を推進しています。また, これらの事業は密接に関係しているため, 平成24年度から広島県の補 助を受け, 「あんしんサポートセンターかけはし」 を開設し, 生活課題を抱えた人を支える一体的な 仕組みづくりに取り組んでいます。 一方, 本県では, 「第5期ひろしま高齢者プラン」に基づいて, 医療, 介護, 見守り・生活支援, 住ま い, 予防を一体的に進める地域包括ケア体制づくりにより, 生活者一人ひとりの課題解決をめざし 住み慣れた地域で安心して生活できる地域づくりにむけて ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 22 つとして, 福祉サービス利用援助事業や法人後見事業により, その役割を十分に担っていくべき 【参考資料】 福祉サービス利用援助事業と法人後見事業の実施状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 22 判断能力が不十分な人を守る制度・事業 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 23 福祉サービス利用援助事業 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 23 成年後見制度 (法定後見) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 24 任意後見制度 ています。 このなかで, 社協は “見守り・生活支援” の分野から, より有効な自立支援の手立てのひと ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 25 だと考えています。また, 県域, 市町域に, この地域包括ケア推進体制をつくることは, 高齢者のみ ならず, 障害者や子育て支援など, 多くの生活課題の解決にもつながります。 本事例集は, 個別の生活支援から, 地域支援を行う地域包括ケアの必要性を紐解くものとして 作成しました。生活課題の入り口がどこであれ, 関係分野の専門職等が連携し, 地域住民を巻き込 みながら関わることで, 何らかの生活課題を持った人々の生活が安定し, 社会的な自立につな がっていくことをご理解いただければ幸いです。 連絡先一覧 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 裏表紙 ◎本事例集における用語の使用について なお, 本事例集の作成にあたっては, 各市町社協からの事例提供とともに, 5市町社協の担当者 に企画会議に参画いただきました。改めて, 関係者の皆様に深く感謝申しあげます。 本事例集では, 一部を除き, 次のように用語を使用しています。 社協:社会福祉協議会 かけはし:福祉サービス利用援助事業 専門員:福祉サービス利用援助事業において,初期相談から支援計画の策定,利用契約の締結に至るまでの業務を行う担当者 生活支援員:福祉サービス利用援助事業において,支援計画に基づいて具体的な支援を行う担当者 成年後見人等:補助人,保佐人,成年後見人の全てを指す場合に使用 法人後見:法人が行う補助,保佐,成年後見の全てを指す場合に使用 平成25年2月 (社福) 広島県社会福祉協議会 会 長 山 下 三 郎 ※プライバシー保護のため,本事例集に登場する人物は全て仮名です。併せて,内容に差し障りのない範囲で,本人に関する情報等を一部加工しています。 ※本事例集は,本会の許可なく複製・転載することを禁じます。 01 C A SE 1 生活費を3日程度で使い切り,子どもの養育が できていなかった事例 3 1 かけはし 支援開始後・ ・ ・ 福祉サービス利用援助事業 (かけはし) 利用前の様子 連携 連携 連携 生活保護 “ かけはし ” 生活に関する相談 ・子どもの養育費の積立て ・近所付き合いでトラブルが起こるたび転居を繰り返している 【関係機関と連携して行った支援】 【生活課題】 ・自立に向けた家事支援 ・家族全体の生活の見守り ・生活保護や児童手当が支給されると見通しを立てず3日程度 民生委員 生活の見守り・声かけ ・福祉サービスの利用調整 ・通院, 服薬の見守り, 声かけ で使いきるため, 子どもの養育費が支払えない 木村さん ・子どもの学校, 幼稚園での生活の見守り ・体調が良くない日は, 家事が難しい 【連携した関係機関等】 ・料理をすることが難しいため, 子どもを含め十分な食事ができ 障害者生活支援センター, 福祉事務所, 訪問介護事業所, 病院, 訪 ていない サービス提供 問看護事業所, 民生委員, 幼稚園, 小学校, 就労継続支援事業所 ・子どもを大事にしすぎ, 学校に行かせないことがあり, 子どもは 4 十分な教育を受けていない かけはしを 利用するきっかけ 提案 子どもの見守り 訪問看護 サービス提供 現在の様子 【生活状況】 ・福祉, 医療サービスを適切に利用できるようになり, 家族3人, 楽しく 生活している 【障害者生活支援センター → 木村さん → 社協】 ・近隣と良好な関係をつくれるようになり, 地域とのつながりが少しず ・見通しを立てた金銭管理が難しい様子から, 障害者生活支援セン が拒否したため, 利用につながらなかった AFTER ・生活に必要な支出の確認・計算(月1回) ・幼稚園, 小学校に通う子どもと3人で一緒に生活している ター担当者が木村さんに “かけはし” を紹介。そのときは木村さん 子どもと同居 木村さん 【“かけはし”による支援】 【生活状況】 2 精神 障害者 かけはし B EFO RE 40歳代 つできてきた 障害者生活 支援センター 木村さん ・その後, 手元にお金がないために子どもに食事を提供できないこと ・1か月の収支結果と計画の確認を支援することで, 少しずつ見通し を立てた金銭管理ができるようになった があり, これがきっかけで, 木村さんは子どものために自立をめざす 相談 ことを決意した ・子どものために, 少しずつ貯金ができるようになった ・ホームヘルパーと一緒に食事を作り, 栄養のある食事がとれるよう ・自分では生活費の管理が難しいと感じた木村さんは, 自分で社協 へ連絡し, 利用を申し出た 【改善したこと】 になった 社協 ・就労継続支援事業所に通うことで, 日中の居場所と楽しみができた ・近所付き合いのトラブルが減った 支援を振り返って・ ・ ・ “かけはし” 初回相談時, 木村さんは「自分で生活費を管理したい」という思 いが強く, “かけはし” 利用につながりませんでした。 しかし, 子どもに対する深い 愛情がある木村さんは, 子どものために自立をめざすことを決意し, “かけはし” を利用することになりました。その気持ちの変化をきっかけに, 木村さんの生活 全体がさらに安定するよう, 関係機関で連携し, 支援を進めた結果, 木村さんは ホームヘルパーと一緒に食事を作ったり, 自ら居室内を掃除したりするなど, 少 しずつ様子が変わり, 子どもも毎日学校や幼稚園に行くようになりました。 02 木村さんから 「お金のことや, 生活のことを相 談できるところがあって, 本当に 良かった」 「まだ体調に波があるけれど, 子 どものために頑張りたい」 これからに向けて・ ・ ・ 障害者生活支援センターの担当者にすすめられ, 木村さんは, 就労継続支援事業所に通い始めました。今では, 利 用者や職員との会話が日々の楽しみになっているようで, いきいきした表情をしています。子どもたちも, その様子を 見て嬉しそうです。 木村さんの支援には, さまざまな関係機関が関わっているため, 定期的に関係者で会議を開催し, 木村さんに関す る情報の共有や, 支援の方向性を検討しています。これからも木村さんが, 子どもたちと一緒に安心して地域で生活 できるよう, それぞれの役割を明確にしながら支援を進めていきます。 03 C A SE 2 地域との関わり方がわからず, 孤立 していた事例 1 【“かけはし”による支援】 ・夫の死亡後, 知人が田中さんの通帳等を預かり, 金銭管理を 連携 連携 ・通帳, 銀行印等の預かり く, 1日のほとんどを病院で過ごしている 【関係機関と連携して行った支援】 【生活課題】 ・医療費や公共料金等の滞納の整理 ・自分で金銭管理をしたことがない 地域住民 生活の見守り・ ボランティア 保健師 田中さん ・知人による金銭搾取への対応 ・福祉サービスの利用調整 ・知人が金銭管理を行っているが, 医療費や公共料金等の滞納 【連携した関係機関等】 が増えている 福祉事務所, 病院, 保健師, 民生委員, 訪問介護事業所, 地域住民 ・惣菜を買って食べるが, 十分な栄養がとれていない ・多重診療となっている 4 ・居室内の清掃ができていない かけはしを 利用するきっかけ 民生委員 生活の見守り・声かけ ホームヘルパー サービス提供 現在の様子 【生活状況】 ・さまざまなサービスを利用しながら, 地域にとけこんだ生活を 送っている 【病院 → 福祉事務所 → 社協】 ・週4日, 楽しそうに就労継続支援事業所に通っている 病院 田中さん が田中さんの預貯金を搾取していることが明らかになり, 福祉事務 連携 【改善したこと】 ・自分のために生活費を適切に使うことができるようになった ・住民参加型在宅福祉サービスで買い物を手伝ってもらった 所担当者は社協に相談。田中さんに “かけはし” の利用をすすめる 結果, 1人で買い物ができるようになった ことにした ・日常の居場所ができ, 多重診療がなくなった ・田中さんは状況が理解できず, 「 知人にはとても世話になってい ・訪問介護の利用で, 居室内の環境が整い, 十分な食事がとれ 相談 る」とはじめは利用を拒否したが, 関係者と連携して説明を繰り返 社協 福祉事務所 支援を振り返って・ ・ ・ “かけはし” 利用当初, 田中さんは関係者の誰にも心を開かない状況でした。そのた め, 田中さんの様子について関係機関で情報を共有しながら支援を進めました。さま ざまな関係機関が関わったことで, 田中さんは, 困ったことがあるときに相談できる関 係機関が増え, 安心につながり, 心を開くようになりました。 田中さんは, 今では, 趣味の旅行のために貯金を始めるようになりました。自分の生 活について自分で決め, 楽しみを見つけていくことにより, 田中さんは自分に自信がも てるようになったようです。 04 “ かけはし ” ・生活費のお届け ・福祉サービス等利用料の支払い ・地域にいる知り合いはその知人だけで, 病院以外に拠り所がな した結果, 田中さんは納得し, 利用につながった 連携 連携 ・収支の見直し ・預貯金の払戻し 行っている 所担当者が田中さんに関わり始めた。状況を確認した結果, 知人 AFTER かけはし 支援開始後・ ・ ・ 【生活状況】 ・医療費を滞納していることがきっかけで, 病院相談員と福祉事務 一人暮らし 田中さん 3 福祉サービス利用援助事業 (かけはし) 利用前の様子 2 知的 障害者 かけはし B EFO RE 50歳代 ※住民参加型在宅福祉サービス…地域で住民同士がお互いの暮らしを支え合う有償の活動・サービス るようになった ・就労継続支援事業所の通所者や, 地域に友だちができた これからに向けて・ ・ ・ 田中さんから 「“かけはし”を契約する 前の暮らしは, 正直しん どかった。今は安心して 生活ができるよ」 “かけはし” の利用により, 生活費を自分のために適切に使うことができるようになり, 就労継続支援事業所への通所や地域住民との関わり, 地域行事への参加など, 田中さ んの日々の楽しみが増えました。 田中さんの判断能力は, “かけはし”支援開始当初とほとんど変わりませんが, 親族 や財産のことを考えると, 今後, 成年後見制度の利用の必要性が高くなると思われま す。そのときには, 関係機関と連携して申立てを行い, 田中さんが安心して生活できる 就労継続支援事業所の 担当者から 「田中さんが明るくなり, 事業所内全体の雰囲気 が良くなった」 ように支えていきます。 05 C A SE 3 閉じこもりになり, 地域との関わりを自 ら拒んでいた事例 認知症 高齢者 AFTER 3 1 福祉サービス利用援助事業 (かけはし) 利用前の様子 連携 かけはし 支援開始後・ ・ ・ 連携 生活に関する相談 介護支援専門員 “ かけはし ” 【“かけはし”による支援】 【生活状況】 ・預貯金の払戻し ・生活費のお届け(月2回) ・夫が亡くなった後は1人で生活していた ・新聞代, 配食サービス利用料等の支払い ・県外に住む娘以外に家族はいない 一人暮らし 小林さん かけはし B EFO RE 70歳代 連携 ・住民主体の移動支援活動の利用手続き ・通所介護, 訪問介護サービスを利用しながら, 自分でできる家事 ・通帳, 銀行印等の預かり はできる限り行っていた 【関係機関と連携して行った支援】 【生活課題】 小林さん ・生活の見守り, 声かけ ・日常的な買い物 ・物をなくすことが増え, 金銭管理や貴重品の保管が難しくなって ・福祉, 医療サービスの利用調整 きている 【連携した関係機関等】 ・新聞代等は手渡しで支払っているが, 手持ちの生活費を紛失し, 介護支援専門員, 訪問介護事業所, 通所リハビリテーション 払えないことがある 事業所, 民生委員, 地縁組織, 地域住民 ・いつも部屋のカーテンを閉め, 外部との関わりを自ら拒んでいる ・徒歩で買い物に行けるが, 足腰が弱いため, 重たい物を持って帰 サービス提供 ・ 見守り 地縁組織 移動支援活動 地域住民 民生委員 生活の見守り・声かけ ることが難しい 4 相談 2 かけはしを 利用するきっかけ 【介護支援専門員 → 社協】 【生活状況】 ・地縁組織を中心とした見守り活動や住民による移動支援 小林さん 介護支援専門員 ・小林さんから, 「財布をどこに置いたかわからなくなって探すことが 度々あり, 預貯金の払戻しも不安…」と介護支援専門員に訴えが 報告・相談 関へ同行し, 払戻しを支援したりしていた ・貴重品を紛失する回数が増え, 小林さんの不安も大きくなったた 支援を振り返って・ ・ ・ “かけはし”利用の契約を結ぶために小林さんのもとを訪問したとき, 小林さんは 「人と話をすることがないので寂しい」とつぶやきました。そこで, 社協職員は地縁 組織の会長に, このことを伝え, 関係機関を交えて協議を重ねた結果, 小林さんを 地域で支えていくため, 地縁組織のメンバーに生活支援員として “かけはし”支援を 行ってもらうことにしました。このことがきっかけで, 地域とつながりができ, 小林さ んは住民による移動支援活動も利用するようになりました。現在, 小林さんは, 少し ずつでも地域との関わりをつくっていこうと前向きになっています。 06 ※地縁組織・ ・ ・地域内のつながりによって形成された住民主体の活動組織 活動を利用して, 安心した生活を送っている 【改善したこと】 ・通帳等を預かることで, 紛失する不安がなくなった あった。はじめは介護支援専門員が一緒に財布を探したり, 金融機 め, 介護支援専門員は社協へ相談した 現在の様子 ・新聞代等の必要な支払いが計画的にできるようになった ・地域住民とのつながりができ, 一緒に外出するようになった ・商品の重さや大きさなどを気にせず, 買い物ができるよう 社協 になった 小林さんから 「今まで人との関わりを拒否し てきたけど, このままではいけな いと思った」 「関係者や地域の人が気にかけ て訪ねてくれることが嬉しい」 これからに向けて・ ・ ・ 少しずつ地域とのつながりができ始めた小林さんですが, 自分から進んで声をかけることはまだ苦手な様子です。 小林さんの負担にならないよう配慮しながら, 地縁組織を中心に生活の見守りを続けています。 現在は身体状態が安定し, 食欲もあり, 元気な様子の小林さんですが, “かけはし” 利用開始当初から比べると, 時々, 訪問介護サービスの時間を忘れるなど, 物事に対する理解力や判断能力等が低下し始めています。そこで, 関係機関 や地域住民と連携して, 小林さんの日々の暮らしを見守り, 支えていますが, 今後, 理解力や判断能力の低下がさらに 進めば, 福祉サービス利用などさまざまな契約を結ぶことが自分では難しくなるため, 成年後見制度の利用が必要に なると思われます。そのときは娘に協力を依頼し, 申立人になってもらう予定です。 07 C A SE 4 失業のため, 生活の居場所がなか った事例 知的 障害者 鈴木さん 一人暮らし 3 1 AFTER かけはし 支援開始後・ ・ ・ 福祉サービス利用援助事業 (かけはし) 利用前の様子 【“かけはし”による支援】 【生活状況】 ・高校卒業後, 職を転々とし, 現在は失業中 ・公共料金等の支払い ・預貯金の払戻し(月2回) ・3年前自宅が半焼。半壊状態の家で生活していた ・1か月の収支の確認, 見直し ・通帳, 銀行印等の預かり ・母親は福祉施設入所中。親族とはほとんど関わりがない 【関係機関と連携して行った支援】 【生活課題】 ・就職活動, 就労に関する相談 ・アパートへの転居 ・失業中のため, 収入がない ・転居後の生活の見守り, 声かけ ・自宅が崩壊する危険がある 【連携した関係機関等】 生活に関する相談 勤務先の会社 連携 “ かけはし ” 連携 地域住民 鈴木さん 福祉事務所, 地域包括支援センター, 障害者生活支援セン ・手元に生活費があると, 見通しを立てずに食材をまとめ買いす ター, 民生委員, 大家, 近所の商店, 地域住民, 勤務先の会社 るなど, 計画的な金銭管理が難しい ・近所の商店への未払いや携帯電話等の利用料の滞納がある 近所の商店 ・いつも同じ服で, 汚れや臭いがついたまま出歩くため, 地域住民 生活保護 から疎まれているが, どうしたら良いかわからない 2 4 相談 かけはしを 利用するきっかけ 委員に相談 以前母親のことで関わりがあった地域包括支援セン ・民生委員は, 生活の見守り・声かけ 現在の様子 的に使いながら, 安定した生活を送っている ・関係機関や地域住民の見守り, 声かけがあり, 地域 にとけこんだ暮らしを送っている 鈴木さん 民生委員 状況確認 報告 【改善したこと】 ・計画的な金銭管理ができるようになった ターに連絡。地域包括支援センター, 障害者生活支援センター, 福祉 ・転居費用を貯め, アパートに転居できた 事務所, 社協の専門員が鈴木さんのもとを訪問し, 現状を確認した ・転居や就職活動に必要なものを買いそろえられ, 生 ・金銭管理は, “かけはし” により支援をすることにした 支援を振り返って・ ・ ・ “かけはし” 支援開始当初は収入がないため, 鈴木さんは転居することに 対し, 拒否を示していました。 しかし, 関係機関と協議を重ね, 連携して就職 に向けて支援し, 給与収入が得られるようになったことから, 転居費用の積 み立てができ, 鈴木さんは転居を前向きに考えるようになりました。 また, 近所の商店の未払いを完済できたことで, 鈴木さんは気兼ねなく 商店で買い物ができるようになりました。商店との関わりがきっかけで, 今 では積極的に地域の行事などに参加しています。 民生委員 ・就労開始後は生活保護が停止になり, 給与を計画 活環境が整った ・収入のことについては, 生活保護を申請した結果, 支給が決定した 08 大家 【生活状況】 【民生委員 → 地域包括支援センター → 社協】 ・鈴木さんが, 金銭管理がうまくできないこと, 収入がないことを民生 かけはし B EFO RE 20歳代 情報共有 鈴木さんから 「滞納返済などの手続きを手伝って もらうことができ, 本当に助かった」 「“かけはし”を利用する前は, どう したら良いのか不安でたまらなかっ た」 ・就職活動の結果, やりがいのある仕事が見つかった これからに向けて・ ・ ・ 鈴木さんは, 工場で働いていましたが, 「同僚とコミュニケーションがうまくとれない」 「単純作業なのにこなせない」 など仕事のことで悩むことがあり, 関係機関と連携して生活を見守り, 相談に対応していました。鈴木さんは悩んだ結 果, 転職し, 介護の仕事を始めました。鈴木さんは, 仕事を通じて人と接することに生きがいを感じたようで「天職を見 つけた」と嬉しそうに話します。 身の回りのことなど自分でできることが少しずつ増え, さらに自立へとつながるよう, これからも関係機関, 地域住民 と連携して支援していきます。 09 C A SE 5 知人の不適切な金銭管理により,福祉サービスを全 く利用していなかった事例 1 連携 生活に関する相談 ・預貯金の払戻し ・生活費のお届け(月2回) 山田さんの通帳を預かり, 金銭管理を支援するようになった。工 ・1か月の収支の確認 ・公共料金等の引き落とし手続き 場を退職後も, 元同僚が継続して金銭管理を支援している ・通帳, 銀行印等の預かり ・家族は入院中の兄のみ 【関係機関と連携して行った支援】 【生活課題】 生活に関する相談 金銭搾取の対応 “ かけはし ” 連携 連携 生活環境の整備 ・介護保険サービスの利用調整 ・市営住宅への転居, ・見通しを立てた金銭管理が難しい ・生活の見守り, ゴミの処分などへの声かけ ・地域行事への参加の働きかけ ・元同僚から十分な生活費を渡してもらっていない 【連携した関係機関等】 ・ゴミの処分や家事等が難しいが, 福祉サービス等を利用してい 山田さん 地域包括支援センター, 行政(福祉課), 訪問介護事業所, 通所リハ ない ビリテーション事業所, 民生委員, 地域住民 ・家の老朽化が激しく, 住居として適していない ・近所との付き合いはほとんどなく, 地域で孤立している 状況把握 かけはしを 利用するきっかけ 4 民生委員 地域住民 現在の様子 サービス提供 生活の見守り・ 声かけ 【生活状況】 ・福祉サービスを利用しながら, 地域で自立した生活を送っている ・元同僚の関与はなくなり, 関係機関や地域住民の見守りにより, 安心した日々を過ごしている 【地域包括支援センター → 社協】 地域包括支援センター 山田さん あり, 金銭搾取が疑われるため, “かけはし” について山 相談 田さんに説明してもらいたいと社協に相談があった とんど預貯金が残っていなかった “かけはし” による支援を開始した当初は, 福祉サービスを利用していないうえに, そこで, 関係機関と連携し, 福祉サービスの利用を提案するだけでなく, 山田さん が転居先の地域とのつながりができるよう, 社協担当者は, 民生委員に生活の見守 りをお願いしました。民生委員は山田さんの事情を地域住民に説明し, 見守りや声 かけへの協力を依頼しました。これがきっかけで, 地域住民の理解も深まりました。 ・市営住宅に転居できた 自分でできるようになった ・地域住民にゴミの処分方法を教えてもらい, 関するアドバイスをもらうことで, 生活リズムが整い始めた 社協 支援を振り返って・ ・ ・ 地域とのつながりも希薄だったため, 山田さんは寂しさを感じていたようです。 ・計画的な金銭管理ができるようになった ・女性の生活支援員に, 金銭管理に関する支援だけでなく, 家事に ・通帳等は, 地域包括支援センター担当者と連携して, 元 同僚に働きかけ, 返還してもらったが, その通帳には, ほ 【改善したこと】 ・貯金ができ, 生活に必要な家電等をそろえられた に山田さんの手元に渡っていない使途不明な払戻しが 10 AFTER 【“かけはし”による支援】 ・50代のときに胃を患い入院。当時, 勤め先だった工場の同僚が 出し, 預貯金を払戻してもらっている。 しかし, その一部 一人暮らし かけはし 支援開始後・ ・ ・ 【生活状況】 ・自宅に電話がなく, 生活費がなくなると元同僚に手紙を 山田さん 3 福祉サービス利用援助事業 (かけはし) 利用前の様子 2 知的 障害者 かけはし B EFO RE 60歳代 ・地域住民とのつながりができ, 地域行事に参加するようになった 民生委員から 「山田さんは良い人だし, 地 域 の 行 事をい つも手 伝ってくれて, 地域のみ んなも助かっているよ」 これからに向けて・ ・ ・ 現在, 山田さんは, 関係機関や地域とのつながりのなかで生活を送っています。以前は食事内容に偏りがあり, 体調 を崩すことがありましたが, 関係機関と支援方針を考え, 山田さんに訪問介護の利用を提案し, 調理支援などを開始し たことで体調も安定し, いつも明るい表情をしています。 唯一の家族である兄は, 病弱のため入退院を繰り返しています。この先, 身寄りが全くなくなることが予想され, 状 況によっては成年後見制度の利用が必要になると思われます。そのときには, 社協が山田さんの成年後見人等とな り, “かけはし” から引き続いて支援し, できるだけ長く地域で生活できるよう支えたいと考えています。 11 C A SE 6 生活費がなく, 生きる気力を失っ ていた事例 認知症 高齢者 一人暮らし 岡本さん AFTER 3 1 かけはし 支援開始後・ ・ ・ 福祉サービス利用援助事業 (かけはし) 利用前の様子 【生活状況】 生活に関する相談 金銭搾取への対応 【“かけはし”による支援】 ・体調不良で入退院を繰り返し, 生活福祉資金貸付制度を利用して生 ・公共料金等の支払い支援 ・預貯金の払戻し 計を立てていたが, それでも生活が苦しかったため, 消費者金融から ・生活費のお届け(月2回) ・通帳, 銀行印等の預かり 借金をして生活していた 【関係機関と連携して行った支援】 ・肺の慢性疾患のため, 働けなくなり, 自動車会社を早期退職後, 兄弟を頼 連携 連携 かけはし B EFO RE 60歳代 連携 介護支援専門員 “ かけはし ” サービス調整 ・生活環境の整備 ・債務整理 ・家族関係, 近隣関係の見守り りに近所に引越してきたところ, 金銭を搾取されるようになった 【連携した関係機関等】 ・収入がないため, 生活保護を受けながら生活している 介護支援専門員, 地域包括支援センター, 訪問介護事業所, 福 【生活課題】 祉用具レンタル会社, 病院, 福祉事務所, 弁護士 弁護士 債務整理 岡本さん ・消費者金融からの借金の取り立てがあり, 兄弟や知人からも 金銭の搾取を受けている 4 ・一度にまとめて預貯金を払い戻すが, 計画的に生活費を使うことが難しい。 生活福祉資金の返済も止まっている ・月末には生活費がなくなり, 食事がとれないことが度々ある ・ 「もう死にたい」と, いつもつぶやき, 生活意欲が減退している 2 ため, 地域包括支援センターが関わるようになった ・体調のこともあり, 近所を出歩くことは少ないが, 地 域住民が岡本さんの様子を気にかけて訪ねて来て くれることが楽しみになっている 【支援により改善したこと】 ・兄弟や知人からの金銭の搾取がなくなった 岡本さん 地域包括支援センター ・岡本さんが月末には生活費がなく, 困窮した生活を送っていること 紹介してもらいたいと社協に相談 相談 ・社協専門員が岡本さんに, “かけはし” について説明をしたところ, “かけはし” による支援を開始した当初, 岡本さんは, 兄弟や知人から “かけはし” を解 約するよう迫られ, どのように対応すれば良いか迷い, 精神的に不安定になって, 声を荒 げたり, 自殺願望をほのめかしたりすることがありました。そのようなときも関係者で連 携し, 本人や兄弟, 知人との話し合いを重ねることで, 岡本さんを守ることができました。 弁護士に依頼していた債務整理が完了し, 生活環境が整っていくにつれて, 岡本さん は生活に対する意欲を取り戻しました。 “かけはし”支援を開始した頃と比べ, 岡本さん 12 費が不足することがなくなった るようになった ・冷蔵庫など家電をそろえ, 生活環境が整った ・債務整理を弁護士に依頼し, 過払い金が戻ってきた 社協 支援を振り返って・ ・ ・ は表情がとても明るくなりました。 ・計画的な金銭管理ができるようになり, 月末に生活 ・医療受診や訪問介護サービスが定期的に受けられ を知った地域包括支援センター担当者は, “かけはし” を岡本さんに 利用を希望され, 契約を結ぶことになった 現在の様子 ・生活環境が整い, 地域で安定した生活を送っている 【地域包括支援センター → 社協】 ・岡本さんは, 肺の疾患により, 思うように外出ができない状態だった 医療受診 【生活状況】 状況把握 かけはしを 利用するきっかけ サービス提供 生活保護 岡本さんから 「定期的に生活費を持っ てきてくれるので, 今は 不安なく過ごせる」 「いざというときの貯金 ができて, 嬉しい」 ※生活福祉資金貸付制度…低所得者や高齢者, 障害者の生活を経済的に支えるとともに, その在宅福祉及び社会参加の促進を図ることを目的とした 貸付制度 これからに向けて・ ・ ・ 岡本さんは, 関係者, 地域住民による見守りにより, とても穏やかに日々を過ごしています。以前のような自暴 現在, 自棄な発言はなくなり, 「生きていて良かった」 「たくさんの人が自分を支えてくれて, 有難い」など前向きな発言が増 えてきました。 先日も自宅で転倒することがありましたが, 関係者で連 岡本さんの身体状態は少しずつ低下してきているようで, 携し, 再発防止のために介護用品を購入して住環境を整えました。 これからも地域や関係機関と連携し, 岡本さんの「できるだけ長く在宅生活を送りたい」という希望に添えるよう, 役割を分担しながら, 支援を続けていきます。 13 C A SE 7 退院後, 医療との関わりが不十分だ った事例 認知症 高齢者 中村さん 一人暮らし AFTER 3 1 かけはし 支援開始後・ ・ ・ 福祉サービス利用援助事業 (かけはし) 利用前の様子 【生活状況】 【“かけはし”による支援】 ・定年退職後, 年金を受給しながらアパートで生活していた ・家賃, 医療費, 公共料金, 転居費用等の支払い ・若い頃からギャンブル好き。そのことが原因で兄弟とは疎遠 ・収支の確認, 見直し ・脳梗塞のため入院していたが, 中村さんは早期退院を強く希望し, ・生活費のお届け(月2回) ・通帳, 銀行印等の預かり サービス提供 連携 訪問看護 入院治療の継続を拒んだことから, 途中で退院。福祉, 医療サービ 【関係機関と連携して行った支援】 ・転倒骨折, 脳梗塞再発による再入院, 退院に関する支援 ・在宅医療サービス等の調整 ・市営住宅への転居 ・預貯金がほとんどなく, 入院費や家賃等の支払いが滞っている ・成年後見制度の利用のための手続き ・インスタント食品やお菓子が好きで, 偏食傾向にある ・脳梗塞による構音障害があり, 会話によるコミュニケーションがと りにくく, 地域とのつながりがない 状況把握 かけはしを 利用するきっかけ 4 中村さん 介護支援専門員 生活の見守り・ 声かけ 地域住民 サービス提供 連携 市営住宅転居 【連携した関係機関等】 病院, 地域包括支援センター, 障害者生活支援センター, 行政 (福祉課), 介護支援専門員, 訪問看護事業所, 訪問介護事業 現在の様子 所, 民生委員, 地域住民 【生活状況】 ・申立ての結果, 社協が中村さんの保佐人になり, さまざまな福祉, 医療 サービスを活用することで, 在宅で安心した生活を送っている 【病院相談員 → 社協】 ・退院後の在宅生活を支援しているが, 預貯金を計画的 民生委員 サービス調整 ・判断能力の急激な低下 ・入院, 入居契約が自分では難しい ・緊急時に対応できる親族及びキーパーソンの不在 ・歩行困難で外出が難しく, 定期的な医療受診を受けていない 2 連携 “ かけはし ”から成年後見制度への移行を必要とした理由 ・部屋は急階段があるアパートの2階にあり, 転倒の危険性が高い 生活に関する 相談 “かけはし” ・ 法人後見 連携 スを利用しながら在宅生活を再開することになった 【生活課題】 連携 かけはし↓法人後見 B EFO RE 60歳代 【改善したこと】 中村さん 医療費等の未払いを完済した ・計画的な金銭管理ができるようになり, に使うことが難しく, 入院費や家賃等の支払いが滞って 病院相談員 いるようなので, “かけはし” を中村さんに紹介してもら ・栄養不足が改善し, 体調が安定した いたいと病院相談員から社協に相談があった ・社協専門員が中村さんのもとを訪問し, “かけはし” につ 相談 いて説明をしたところ, 利用を希望し, 契約を結ぶことに なった 支援を振り返って・ ・ ・ 入院中, 中村さんの意識がもうろうとなり, 意思確認が難しいときもありまし たが, 本人の思いをできる限り確認し, 関係者会議を何回も重ね, 何が最善なの かを考えながら支援を行いました。その結果, 在宅生活の受け入れ体制を迅速 に整えることができました。 転居は中村さんの身体状態を考えたうえでの提案でした。住み慣れた場所 を離れることが本当に適切なのか関係者間でも悩みましたが, 中村さんはその 頃を振り返り, 「安全なところへ引越しできて, 良かった」と話します。その様子 ・バリアフリーの公営住宅に転居でき, 生活環境が整った ・定期的な往診, 訪問リハビリテーションにより体調が安定し, 以前より コミュニケーションがとりやすくなった 社協 中村さんの家族から 「入院や退院に関する支援は, 家族だけでは円滑に進めること が難しかったと思う」 「第三者が支援する事業や制度 があって本当に良かった」 これからに向けて・・・ 成年後見制度の利用申立てにあたっては, 中村さんの兄に申立人となることを依頼しました。このことがきっかけ で, 兄弟から協力が得られるようになり, 兄に関係者会議への同席をしてもらっています。今では, 中村さんは, 兄と 時々連絡をとっています。 現在, 中村さんは毎日近所を散歩するなど, 穏やかに日々を過ごしていますが, 医師からは脳梗塞の再発の可能性 が高いと言われています。できるだけ再発を防げるよう, また, 再発したときには迅速に対応できるよう, これからも関 係機関と連携して支援を進めていきます。 を見て, 家族も安心しています。 14 15 C A SE 8 悪質商法に対し,親子とも対応方法に困 っていた事例 1 【生活状況】 子どもと同居 松井さん(母) かけはし 支援開始後・ ・ ・ 松井さん(息子) 親と同居 連携 AFTER 連携 介護支援専門員 サービス調整 “ かけはし ” ・法人後見 成年後見制度 利用支援 連携 ・収支の確認 ・福祉サービス利用料や商店の買い物代等 ・食べ物の好き嫌いがあり, ホームヘルパーが調理するものはほ の支払い ・生活費のお届け ・通帳, 銀行印等の預かり とんど食べず, 外食か惣菜を食べている 介護提供 【関係機関と連携して行った支援】 ・悪質商法への対応 ・同居の息子への生活支援 以上に物を買わされている ・成年後見制度利用申立て手続き準備 【生活課題】 “ かけはし ”から成年後見制度への移行を必要とした理由 ・訪問販売で布団を買ったところ, 高額な請求が届き, どのよ ・認知症による判断能力の低下 ・悪質商法による被害防止 ・在宅生活が限界となっているが, 入所契約を自分で結ぶことが難しい うに対応すれば良いかわからず, そのままになっている ・松井さんも息子も計画的な金銭管理が難しく, 商店での買い物 代金の未納が増えている ・居室内は, ほとんど掃除しておらず, ゴミが散らかっている ・好きなものしか食べず, 栄養が偏っている かけはしを 利用するきっかけ 状況把握 提案 4 自治会長 かけ ・声 守り の見 生活 ・いつも近所の商店で掛買いをしているが, 近所の人に必要 松井さん (母) 松井さん (息子) 民生委員 近所の商店 息子への支援 現在の様子 【連携した関係機関等】 介護支援専門員, 訪問介護事業所, 行政(障害者福祉関係 課, 福祉事務所), 自治会長, 民生委員, 消費生活センター, 近所の商店, 特別養護老人ホーム 【生活状況】 社協が松井さんの成年後見人となり, 福祉施設入所を支 ・申立ての結果, 援したことで, 十分な介護を受けながら, 安心した生活を送っている 【介護支援専門員 → 社協】 ・松井さんが, 訪問販売で高額な布団を買ったことを知った介 精神 障害者 【“かけはし”による支援】 精神障害がある息子と2人で生活している ・福祉サービスを利用しながら, 2 認知症 高齢者 かけはし↓法人後見 3 福祉サービス利用援助事業 (かけはし) 利用前の様子 50歳代 連携 B EFO RE 70歳代 ・息子は, 福祉, 医療サービスの利用を開始し, 関係機関や地域住民 松井さん(息子) の見守りにより, 自立をめざして地域で生活している 松井さん(母) 護支援専門員は, 松井さんに“かけはし” を紹介。はじめは 【改善したこと】 「通帳を預けたくない」と利用を拒否していたが, 関係機関 介護支援専門員 や地域住民からの勧めや声かけから, “かけはし” の利用を前 向きに考えるようになり, 利用につながった ・特別養護老人ホーム入所契約を結び, 松井さんが十分な介護を 受けられる環境が整えられた ・松井さんへの支援を開始したところ, 精神障害がある息子も 相談 自分では見通しを立てた金銭管理が難しいことが明らかに なり, 専門員は息子に “かけはし” を利用することを提案。息 ・悪質業者から親子を守ることができた 社協 ・親子とも, 計画的に生活費を使えるようになり, 買い物代金の未納 がなくなった これからの自分の生活について考えられるようになった ・親子それぞれ, 子も利用を希望した 支援を振り返って・ ・ ・ 松井さんへの支援がきっかけで家族全体の課題が明らかになり, さまざまな機関と 連携することで, 息子に対する支援もできるようになりました。今では, 多くの関係機 関, 地域住民が2人の生活を支えています。 認知症が進行し, 在宅での生活がかなり困難な状態であっても, 息子のことが心配 で福祉施設入所を拒否していた松井さんでしたが, 親子への支援を行うようになった 松井さんから 「息子も“かけはし” を利用するようにな り, 関わる関係者が増 えて安心した」 これからに向けて・ ・ ・ 松井さんは現在, 特別養護老人ホームで安定した生活を送っています。 しかし, 判断能力, 身体能力ともに少しずつ 低下し始めています。それでも松井さんは, 「あの子は元気でやっているかしら・ ・ ・」と, いつも息子のことを気にかけ, 母としての思いを今も強くもっています。 息子は, 訪問介護などさまざまなサービスを利用しながら地域で生活しています。最近, 精神科デイケアを利用する ようになり, 体調が良いときは, 特別養護老人ホームに立ち寄り, 松井さんのもとを訪ねています。このことが親子2人 ことで安心し, 福祉施設入所を前向きに考えるようになりました。 の楽しみになっています。これからも, 良い親子関係が続くよう, 定期的にそれぞれの支援者が情報を共有しながら支 松井さん親子への支援に関する協議を重ねたことにより, 円滑に成年後見制度利 援を進め, 様子を見守っていきます。 用に移行することができました。 16 17 C A SE 9 (ネグレクト) 息子の介護放棄により十分な医療を受け ていなかった事例 認知症 高齢者 坂本さん 3 1 社協による法人後見 開始後・ ・ ・ 成年後見制度を利用する前の 様子 【生活状況】 ・通帳の再発行 ・通帳等貴重品の保管, 管理 ・5年前, 脳梗塞を発症したことが原因で, 認知症の症状がみられ ・入院契約, 特別養護老人ホーム入所契約 ・福祉, 医療サービ るようになった ス利用料支払い ・滞納していた医療費等の整理, 支払い ・在宅で生活していたが, 息子が坂本さんの介護を放棄したた ・消費者金融からの督促への対応 ・関係機関は, 成年後見制度の利用が必要と考えているが, 息子 【連携した関係機関等】 が申立人になることを拒否し, 申立て準備が止まっている 法人後見 サービス提供 坂本さん サービス提供 院, 特別養護老人ホーム, 弁護士 ・消費者金融から身に覚えのない督促状が届いている 連絡がとれなくなった ・息子が坂本さんの通帳等を所持したまま家を出て, 成年後見制度を 利用するきっかけ 4 成年後見制度 利用に関する支援 親族 見守り 弁護士 債務整理 現在の様子 【生活状況】 【地域包括支援センター → 社協】 ・入院から特別養護老人ホームへ入所となり, 安定した介護 ・以前から行政や地域包括支援センターが関わりをもっていたが, 親族 サービスを受けながら安心した生活を送っている による申立てが難しい状態となった ・成年後見人が選任されたことにより, 親族が安心し, 時々, 姪 坂本さん 地域包括支援センター ・審理の結果, 坂本さんに対し, 後見が開始され, 社協が坂本さんの成年 相談 【成年後見制度の利用を必要とした理由】 ・坂本さんの判断能力の程度 ・坂本さんの財産を守り, 管理する者の不在 ・入院契約, 施設 契約が自分では難しい ・医療費等滞納, 消費者金融からの借金の督促への対応が難しい 支援を振り返って・ ・ ・ 成年後見制度利用前は, 医療などに関する契約や債務について, 坂本さんの代わ りに対応することが難しい状態でしたが, 成年後見人(社協)が選任され, 坂本さん の代わりとなって手続き等を行うことが可能になりました。 頼れる親族がいないため, 坂本さんへの支援を行うにあたっては, 関係機関と連 携を図りながら対応方法の検討を何度も重ねました。坂本さんは在宅での生活を希 望していましたが, 身体的にも環境的にも困難な状況だったので, 坂本さんに説明 が坂本さんのもとを訪ねている 【改善したこと】 ・入院契約, 施設入所契約を結ぶことができた 後見人となった 18 連携 行政(高齢者支援課), 福祉事務所, 地域包括支援センター, 病 ・今まで息子が金銭管理をしていたが, 医療費等を滞納している し, 特別養護老人ホームの入所手続きを行いました。 虐待対応 ・リハビリに関する調整 ・入院看護, 生活の見守り 【生活課題】 成年後見人等候補者になってもらいたいと相談があった 連携 【関係機関と連携して行った支援】 め, 症状が悪化し, 再入院となった ・申立人を首長とし, 申立て手続きを進めるにあたり, 社協に坂本さんの AFTER 【成年後見人として行った支援】 ・夫とは死別。その後は息子と2人で暮らしていた 2 一人暮らし 法人後見 B EFO RE 80歳代 ・債務への対応を弁護士に依頼し, 整理できた ・医療費等の滞納を支払い, 福祉, 医療サービスの適切な利用 ができるようになった 社協 親族から 「息子が母親に関わって いたときは, どう対応した ら良いかわからなかった」 「成年後見人がついて, 安 心した」 ・成年後見人ではできないことへの協力を親族に依頼できた これからに向けて・ ・ ・ 社協が成年後見人として後見業務を開始した当初, 坂本さんと親族は関係が疎遠であったため, 坂本さんの支援 にあたって協力を得ることは難しい状況でした。 しかし, 成年後見人の役割や, 坂本さんの支援にさまざまな関係機関 が関わっていることを伝えると, 親族は安心されました。今では姪が坂本さんの支援に関わり, 関係者会議などにも出 席しています。 これからは, 姪を中心に, 親族だからこそできることを協力してもらう予定です。息子は今も連絡がとれず, まだ課題 として残っています。今後は, 坂本さんの権利と財産, そして生活を守るため, その都度関係機関や親族等と丁寧に検 討していきます。 19 C A SE 10 40歳代 持病があるにも関わらず, 医療受診を 拒否していた事例 3 1 【生活状況】 【成年後見人として行った支援】 ・半年前まで母親と2人で生活していたが, 母親はガン治療のた AFTER 連携 連携 連携 ・入院契約, グループホーム入居契約 ・年金再交付手続き 管理 ・生活に必要な費用の支払い ・通帳等貴重品の保管, め長期入院することになった ・警戒心が強く, 特定の人以外とは接触を拒んでいる ・栄養の確保 ・生活の見守り, 声かけ 【生活課題】 【連携した関係機関等】 ・体調の自己管理が難しく, 持病の糖尿病が悪化している 福祉事務所, 保健師, 病院, 民生委員, 近所の商店, グループ ・体調不良が続き, 楽しみだった地域行事に参加できなくなった ホーム, 訪問介護事業所 ・医療受診, 福祉サービス利用を強く拒否している ・多額の現金を近所の商店に置いたまま帰宅するなど, 金銭価値がわからない 4 ・障害年金の更新手続きが止まっている 成年後見制度を 利用するきっかけ 相談 連携 近所の商店 原田さん 保健師 生活に関する 相談 民生委員 生活の見守り・声かけ サービス提供 サービス提供 現在の様子 ・成年後見人が財産を管理し, 必要な契約を代わりに結ぶこと で, 十分な福祉, 医療サービスを受けられる環境が整い, 穏や 親族 かな日々を過ごしている 福祉事務所 ・関係機関で協議を重ねた結果, 成年後見制度の利用の必要があるとの結 首長が申立人になり, 申立てた ・母親以外の親族は近隣にいないため, 状況確認 ・審理の結果, 本人に対し後見が開始され, 社協が原田さんの成年後見人に選任された 【成年後見制度の利用を必要とした理由】 ・原田さんの判断能力の程度 ・体調不良が続いているが, 医療受診していない ・知人からの金銭 搾取の疑いが強い ・障害年金の更新手続きができていない ・その他さまざまな生活課題がある 支援を振り返って・ ・ ・ 原田さんは, 他者に対する警戒心が非常に強かったため, まずは信頼関係を構築する ことを重要視しながら支援を進めました。 法人後見を開始した当初, 原田さんは医療受診を強く拒否し, 詳しい病状がわからない 状況でした。 しかし, 関係機関と連携し, 原田さんに受診の必要性を丁寧に説明すること で, 医療受診を受け入れるようになりました。そして, 医師による往診の結果, 糖尿病が悪 化していることから緊急入院しました。このことで, 糖尿病の治療や生活習慣の立て直し ・医療受診, 入院ができ, 退院後はグループホームに移り, 自立 をめざして生活している 【改善したこと】 論になった 20 サービス提供 【生活状況】 いないようで心配だ」と福祉事務所へ相談があった につながりました。 法人後見 ・福祉サービスの利用調整 ・医療受診の調整 えているが, 適切な支援ができていない ・遠方に住む親族から, 「原田さんは十分な生活費を知人から渡してもらって 知人への介入 【関係機関と連携して行った支援】 ・母親の知人が, 原田さんの金銭管理, 身の回りに関することを支 【福祉事務所 → 社協】 一人暮らし 社協による法人後見 開始後・ ・ ・ 成年後見制度を 利用する前の様子 2 原田さん 法人後見 B EFO RE 知的 障害者 ・原田さんの財産を守ることができた ・糖尿病治療を行うことができ, 症状が安定した ・入院契約, グループホーム入居契約を結ぶことができた ・障害年金の支給が再開された 原田さん ・他者への警戒心が少しずつ緩和され始めた 保健師から 「元気になって本当 に良かった。1人の 命が救われた」 「成年後見制度が あって良かった」 これからに向けて・ ・ ・ 原田さんは現在, グループホームで他の入居者と楽しく生活を送っています。他者との関わりを拒むことはほとん どなくなり, 最近では, 「嬉しい」 「楽しい」という気持ちや, 「ありがとう」という感謝の思いを自分から表すこともあり ます。原田さんは, 長期入院中の母親のことが気がかりなようですが, 今まで母親と面会したことがありません。その ため, 関係機関と連携し, 原田さんが母親に面会できるよう支援を進めています。 また, 母親は認知症が進行し, 判断能力の低下が進んでいます。そのため, 母親も成年後見制度を利用することを 関係機関と協議しているところです。社協が母親の成年後見人受任候補者になり, 親子2人の成年後見人として支 援することも考えています。 21 住み慣れた地域で安心して生活できる地域づくりにむけて 判断能力が不十分な人を守る制度・事業 一人ひとりの住民は, 個々の社会環境の違いから, 百人 判断能力が不十分であることから, 権利侵害を受けやすい人の権利を守り, 生活を向上させるための制度として, 福祉 サービス利用援助事業や成年後見制度があります。これらの制度・事業を, 本人の判断能力の程度や必要な支援に応じて, 百通りの生活課題をもちながら暮らしています。特に高 齢者や障害者は, 複合的な課題があり, それらの課題を解 決していくためには, 多分野・多職種の連携がなければ, ・介護サービスの質の向上と給付 の適正化 ・介護サービスの基盤の充実など ・医師,看護師の人材育成 ・かかりつけ医の普及,在宅 医療の推進など 活用することが重要になります。 本人の判断能力等の状況 望ましい支援につながっていきません。 ・常設型ふれあいサロン ・NPO・ボランティアの育成など 地域包括ケアシステムは, 医療, 介護, 生活, 住まい, 予 防等の観点から, さまざまな社会資源が連携し, 当事者が 安心して, 生きがいをもって暮らせる, 自立に向けた支援 判断能力が 不十分 著しく不十分 社協が取り組んでいる「福祉サービス利用援助事業」 や「法人後見事業」は, 生活支援という視点から, 当事者 との関わりをもとに, 医療や介護, 住まい, 見守り・生活支 援等を推進する機関・専門職との連携により, 当事者の生 これからは, 自助, 共助, 公助を組み合わせた地域包括 ・介護予防サービス ・介護予防事業の推進など □相談・助言・情報提供による支援では, 本人 が選択, 決定することが困難である。代理 による支援で本人を守る必要がある □日常生活の範囲を超える法律的な支援が ・サービス付き高齢者向け住宅 ・公営住宅のバリアフリー化など ケアシステムにおいて, 見守り等の生活支援分野からの 制度・事業 □相談・助言・情報提供などの支援があれば, 福祉サービス利用援助事業 日常生活について本人が選択, 決定するこ 本人ができる限り地域で自立した生活を継 とができる。自分らしい生活を送ることが可 続できるよう支援するために, 福祉サービス 能である の利用援助や日常的な金銭管理等の支援を 行います ※ただし, 疎遠, 音信不通により頼れる親族が いないなど, 将来的な支援のキーパーソン が不在の場合は, 成年後見制度の利用を検 討する必要がある システムとして位置付けられています。 活の安定や質の向上を支援しています。 参考資料 (引用:第5期ひろしま高齢者プラン) 必要な状況である 入所契約の代理, 高額な資産や不動産管 例:入院, ネットワークの構築がますます求められています。 理の代理, 相続の手続き 等 □財産侵害や虐待があり, 本人の生活全体を 守る必要がある □福祉サービス利用援助事業の契約内容に 参考資料 福祉サービス利用援助事業と法人後見事業の実施状況 福祉サービス利用援助事業は, 平成11年10月に始まり, 年々利用者が増加しています。また, 法人後見事業は, 平成16 年度から事業を実施する社協が少しずつ増え, それとともに, 受任件数も増加しています。今後, 高齢者の増加, 障害者の地 成年後見制度(法定後見) 財産管理及び身上監護に関する契約など の法律行為全般について支援を行います ※本人の判断能力の程度に応じて, 「補助」 「保佐」 「成年後見」の3つの類型にわかれ ます ついて, 理解や意思確認が困難な状況であ る 判断能力がかなり低下しており, 常に第三者による代理の支援 を必要とする 域生活への移行等により, 福祉サービス利用援助事業利用者及び, 社協が実施する法人後見において受任する件数は, さ らに増加すると見込まれています。 【福祉サービス利用援助事業の年度末時点の実利用者の推移】 (人) 800 659 600 564 500 (人) 593 470 20 受任件数 実施社協数 47 40 16 30 12 28 377 385 400 300 258 200 132 172 10 75 100 5 0 平成11年度 平成13年度 平成15年度 平成17年度 平成19年度 平成21年度 平成23年度 8 23 20 279 福祉サービス利用援助事業 (社協) 50 728 700 【法人後見実施社協数と年度末時点の法人後見受任件数の推移】 6 2 2 3 2 1 4 0 平成16年度 平成18年度 3 15 7 8 7 4 福祉サービス利用援助事業は, 本人と契約を締結することによって, 福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理の支援 等のサービスを提供し, 地域で自立した生活を支えるための仕組みとなっています。そのため, 本事業を利用するかどうか は, 最終的に本人の判断に委ねられます。また, 具体的な支援の方法は, 相談・助言・情報提供を基本とし, 利用者本人が選択・ 決定することを大切にしています。福祉サービス利用援助事業の利用については, お近くの社会福祉協議会へご相談くだ さい。 ■支援内容と利用料 6 平成20年度 平成22年度 0 支援内容 ①福祉サービスの利用支援 ②日常的金銭管理の支援 本事例集は, 福祉サービス利用援助事業及び, 法人後見事業を実施する市町社協から事例提供いただき, 企画 会議において取りまとめ作業を行い, 作成しました。 ◎ 事例集企画会議メンバー 22 ③書類等の預かり 利用料 1,500円/1回(2時間程度) 1,500円/1か月 ■契約後の支援 (社福)三 原 市 社 会 福 祉 協 議 会 福祉支援課 かけはし専門員 野 上 晃 (社福)福 山 市 社 会 福 祉 協 議 会 福祉サービス課 主 事 竹 廣 陽 子 ・契約時に定めた支援計画に沿って, 担当職員がサービスを提供します。 (社福)庄 原 市 社 会 福 祉 協 議 会 総 務 課 主 任 津 秋 淳 司 (社福)東広島市社会福祉協議会 在宅福祉課 主 事 岡 村 智 行 ・支援計画が適切なものであるか, 定期的に見直しをします。 (社福)江田島市社会福祉協議会 総 務 課 課 長 澤 田 ひとみ ・必要に応じて, 支援計画の変更や, 貴重品等の追加の預かり・返還をします。 ・利用者が相談したいことがあるときは, 必要に応じて, 担当職員が利用者のもとを訪問します。 23 ■契約の終了 参考資料 ※民法第13条1項 所定の行為 ・本人の意思に基づいて, いつでも契約を解約することができます。 ・居住の移転や長期入院等で支援を続けることが難しくなった場合, 契約を終了することがあります。 ・本人が死亡した場合, 契約は終了となります。本人からの預かり物は, あらかじめ定めておいた預かり物受取人または相 続人に返還します。 ①預貯金などの元本を領収すること, これを利用すること ⑦贈与を断ること, 遺贈を放棄すること, 負担付贈与を ②借金すること, 保証すること 受け取ること, 負担付遺贈を受けること ③不動産その他の重要な財産に関する権利を得ることや失うこと ⑧新築, 改築, 増築, 大修繕をすること ④原告として訴訟行為をすること ⑨土地について, 5年を超える賃貸借をすること, 建物について3年 ⑤贈与をすること, 和解すること, 仲裁契約をすること を超える賃貸借をすること 相続を放棄すること, 遺産分割をすること ⑥相続を承認すること, ■成年後見制度等への移行 本人が, 次のような状況になった場合, 利用者, 親族, 関係者等と成年後見制度への移行を検討します。 ■成年後見人等の業務 成年後見人等は与えられた権限の範囲内において, 財産管理または身上監護に関する事務を行います。 ○判断能力が低下し, 福祉サービス利用援助事業による支援が困難になった場合 ○財産侵害や虐待があった場合 ○日常生活の範囲を超える法律的な支援が必要になった場合 ○入院, 入所契約が必要となった場合 ○高額な財産の管理が必要な場合 ○疎遠, 音信不通等により頼れる親族がいない場合 ①財産管理に関連する事務 ・財産の保全, 日常的な金銭管理 等 ②身上監護に関連する事務 ・本人の生活に必要な契約の締結, 費用の支払い, 処遇の監視, 異議申立等の法律行為 福祉サービス利用料の支払い等) (例:施設入所・入院の契約, ・上記の法律行為に付随する事実行為 本人の生活状況の把握や意思確認, 住居や保健・福祉等のサービスに関する情報収集, 関係先との連絡調整等) (例:通帳等の書類の保管, 成年後見制度(法定後見) 成年後見制度は, 判断能力が不十分な状況にある場合に, 財産管理や施設への入所などの身上に関する事柄等につい て, 本人の思いを大切にしながら支援を行う人を家庭裁判所が選び, 本人が不利益を被らないように守る制度です。判断能 力の程度によって, 「補助」 「保佐」 「成年後見」の3つの類型があります。 制 度 要 件 開始の手続き 申立権者 本人の同意 医師による鑑定 本人 名 称 支援者 監督人 同意権・取消権 代理権 責務 24 補 助 判断能力が十分でないながらも 自分で契約等ができるかもしれな いが, 不安な部分が多く誰かの支 えが必要であったり, 代わりにして もらった方がよい程度の人 保 佐 成年後見 日常の買い物等は自分で判断し 通常は判断能力がないために, 自 てできるが, 車を購入する, 不動産 分だけで物事を適切に決定する を売却する等の重要な財産行為 ことが難しく, 買い物に行ってもつ は, 自分では適切に判断すること り銭の計算ができず, 必ず誰かに ができないため, 常に誰かの援助 代わってもらうなどの援助が必要 が必要である程度の人 である程度の人 必要 不要 不要 原則として不要 必要(省略する場合あり) 必要(省略する場合あり) 被補助人 被保佐人 成年被後見人 補助人 保佐人 成年後見人 次のようなとき, 成年後見人等は任務が終了します。 《法定後見が終了》 《法定後見の利用は継続され, 成年後見人等が変更》 ・成年被後見人等が死亡したとき ・成年後見人等を辞任したとき ・成年被後見人等の判断能力が回復して,成年後見 ・成年後見人等が解任されたとき 人等による支援が必要なくなったとき ・成年後見人等が死亡したとき 任意後見制度 ※本人の状況等に応じて, 家庭裁判所が選任する。 (親族, 弁護士, 司法書士, 社会福祉士等の個人または法人) 補助監督人 保佐監督人 成年後見監督人 ※家庭裁判所が必要と認めるとき, 本人もしくはその親族からの請求があったときに選任することができる。 民法第13条1項所定の行為 日常生活に関する行為以外 付与の対象 付与の手続き 補助開始の審判+同意権付与の 審判+本人の同意 保佐開始の審判 成年後見開始の審判 本人, 補助人 本人, 保佐人 本人, 成年後見人 付与の対象 見人等が一定期間の支援を行った後に行い, 成年後見人等は, 審判の内容に従って本人の財産のなかから報酬を受領し 本人, 配偶者, 四親等内の親族, 市町長, 未成年後見人, 未成年後見監督人, 保佐人, 保佐監督人, 補助人, 補 助監督人, 任意後見受任者, 任意後見人, 任意後見監督人, 検察官 申立ての範囲内で家庭裁判所が 定める民法第13条1項所定の行 為の一部 取消権者 成年後見人等への報酬については, 報酬付与の申立てにより家庭裁判所が決定します。報酬付与の申立ては, 成年後 ■成年後見人等の任務の終了 ■補助・保佐・成年後見の概要 (判断能力) ■報酬 ます。成年後見監督人等への報酬についても同様です。 成年後見制度(法定後見) を利用するには, 本人の住所地を管轄する裁判所に申立てを行います。 対象者 ※看護や介護等といった事実行為は成年後見人等の業務に含まれません。 ※成年後見人等が活動したときの交通費や通信費などは, 実費を本人が負担することになり, 本人の財産のなかから支払われます。 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」 財産に関する全ての法律行為 付与の手続き 補助開始の審判+代理権付与の 審判+本人の同意 成年後見開始の審判 身上配慮義務 本人の意思を尊重し, 本人の心身の状態及び生活の状況に配慮する義務 保佐開始の審判+代理権付与の 審判+本人の同意 任意後見制度は, 現在は判断能力のある人が, 将来認知症などで判断能力が低下したときに, 財産管理や身上監護に関 する法律行為を本人に代わって行う人(任意後見受任者) をあらかじめ自分自身で決めておく制度です。 利用するには, 本人と任意後見人になることを引き受けた人(任意後見受任者)が公証人役場に行き, 公正証書による任 意後見契約を結びます。本人の判断能力が低下したときには, 本人や任意後見受任者等が家庭裁判所に申立てを行い, 家 庭裁判所が任意後見監督人を選任します。このときから任意後見受任者は正式に任意後見人となり, 任意後見契約に基づ き, 本人への支援を行います。 原則として, 任意後見は法定後見より優先されます。 任意後見人は, 代理権による支援となります。同意権・取消権は付与されません。 しかし, 代理権の範囲が狭すぎたり, 本人について同意権・取消権による保護が必要な場合等, 本人の利益のために特に必要と認められる場合は, 法定後見の申立ての 検討が必要になります。 25