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Sonoclot ユーザーガイド

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Sonoclot ユーザーガイド
米国 Sienco 社製
血液凝固・血小板機能分析装置
Sonoclot ユーザーガイド
心臓バイパス手術編
Version 0.1
アイ・エム・アイ株式会社
〒343-0824 埼玉県越谷市流通団地 3-3-12
Tel:048-968-4442 Fax:048-968-4443
http://www.imimed.co.jp
e-mail:[email protected]
1
Sonoclot は Sienco®社の登録商標です。
Sonoclot Analyzer は米国および外国の特許によって保護されています。
2
目次
第 1 章 止血 ― 心臓バイパス手術におけるその重要性
要約
4
止血管理・検査の必要事項
4
止血管理と Sonoclot
4
第 2 章 止血の基礎
止血の基本的な仕組み
5
フィブリンゲル形成
5
血餅退縮(血小板機能)
6
線溶
6
第 3 章 Sonoclot による総合的な止血評価
Sonoclot の測定原理
7
Sonoclot Signature
7
Sonoclot の測定値
8
Sonoclot Signature の各相
8
第 4 章 心臓バイパス手術におけるヘパリン管理
ヘパリン
10
ヘパリンが凝固に及ぼす影響
10
ヘパリン管理の目的
12
凝固活性剤
12
ベースライン
13
高用量ヘパリン療法
13
バイパス手術後
14
血小板機能
14
第 5 章 Sonoclot Signature のビジュアル・インデックス
第 6 章 技術サポート
お問い合わせ
17
データ解析ソフトシグネチャービューワーから Signature Group をエクスポートする手順 17
3
第 1 章 止血 ― 心臓バイパス手術におけるその重要性
要約
心臓バイパス手術を受ける患者は止血能が低下します。止血能の低下にはさまざまな要因が関
与します。たとえば、ヘパリン投与による血液凝固の抑制、血液の希釈、人工心肺回路と手術侵襲
による凝固因子・血小板の活性化、プロタミン投与によるヘパリン中和と血液凝固能の回復、出血
による凝固因子・血小板の欠乏などです。
バイパス手術中の抗凝固管理が不十分だと血栓症の危険性が高まります。一方、過剰な抗凝
固は止血能の回復を遅らせます。正確な抗凝固管理はバイパス手術中の血栓症リスクを低下させ、
術後の出血性合併症の可能性を減少させます。
バイパス手術後には、凝固因子・血小板の欠乏、ヘパリンの残存、修復しきれない血管損傷など
により、止血障害を生じる恐れがあります。血液成分療法は出血の管理に欠かせませんが、血液製
剤の過度の使用は避けなければなりません。
止血と臨床管理は、患者の転帰と治療費に影響を及ぼします。総合的な止血管理を効果的に
行うことは、心臓バイパス手術を支える重要な要素です。
止血管理・検査の必要事項
心臓バイパス手術チームは、ヘパリン投与の管理、ヘパリンの中和および出血合併症の治療を行う
必要があります。心臓バイパス手術の全体を通して止血管理に求められる事項として、術前には凝
固障害スクリーニングと抗凝固療法の妥当性評価、術中には抗凝固管理、術後には回復期間を
通じて総合的な止血能の評価を行わなければなりません。
技術の進歩は手術室に最新の機器を次々に送り込みます。先進機器は凝固能、血小板機能お
よび全体的な止血能の総合的評価を可能にします。また、POC(ポイント・オブ・ケア;患者のそばで
使用できる)機器としての利便性も兼ね備えています。
止血管理と Sonoclot
Sonoclot は、止血の全過程で生じる血液粘稠度の変化を、全血試料を用いて検出・定量する
粘稠度測定器です。Sonoclot を用いる止血検査は進化を遂げ、抗凝固・出血管理をはじめとす
る心臓バイパス手術に必要なさまざまなニーズに対応しています。総合的な止血モニタリングによる抗
凝固管理により臨床的出血を管理する、利便性と費用効率に優れた方法を統合的に提供できる
のは、Sonoclot の製品ラインをおいてほかにありません。
4
第 2 章 止血の基礎
血液は、液体からクロット塊に変化し、完全な血餅に成長した後、溶解して液体に戻るという生体
力学的能力を持っています。この生理的過程には血液凝固だけでなく、血小板の活性化、血餅の
退縮、線維素溶解(線溶)など、止血の他の側面も関与します。このような一連の凝固・止血反応
の連鎖が一部でも弱まると、出血性合併症や血栓症の危険性が高まります。
止血の基本的な仕組み
凝固過程とは、クロット塊形成の開始に至るまでの、血液または血漿内で生じる一連の反応をい
います。
凝固過程は、カスケード(滝のように連続する反応の連鎖)仮説により説明されてきました。長年に
わたる研究によりこの仮説は修正・拡大されてきましたが、今なお、ほとんどの凝固検査の基礎となっ
ています。凝固カスケード仮説は、フィブリン形成の開始に至る反応の経路として、内因系、外因系、
共通系の 3 つの経路を定義しています。
内因系経路と外因系経路は、第 X 因子が活性化されて第 Xa 因子となるところで共通系経路に
収束します。
フィブリンゲル形成
血液検体中にトロンビンが生成されると、フィブリノゲンがフィブリンモノマーに変化します。フィブリンモ
ノマーは自ら重合してフィブリンゲルを形成します。フィブリンゲルの形成は、トロンビン生成率、トロンビ
ン中和率およびフィブリノゲン量の影響を受けます。
5
血餅退縮(血小板機能)
血小板が正しく機能すると、血餅退縮が起きます。下の写真は、血餅退縮における血小板の役
割を示しています。黒いひも状の小片がフィブリン鎖です。フィブリン鎖は互いに結び付いてゲルを形成
します。血小板はフィブリンゲルの複数の点に付着してゲルを絞るように退縮(収縮)させます。
線溶
線溶系の活性化によりフィブリン塊は最終的に溶解します。プラスミノゲンの活性化により生成する
線溶酵素プラスミンがフィブリン鎖を切断し、フィブリン分解産物を生成します。フィブリン分解産物は
重合しないため線溶は進行し、フィブリンゲルは溶解します。
正常な止血における線溶過程は、凝固、フィブリンゲル形成または血餅退縮よりもずっと遅い速度
で進みます。血餅が完全に形成される前に溶解が始まると線溶亢進となり、血餅は液体に戻ってし
まうこともあります。
6
第 3 章 Sonoclot による総合的な止血評価
Sonoclot は、患者の止血能を総合的に評価する最新式の止血分析器です。心臓バイパス手術
の周術期における患者の止血能評価のため、手術室や ICU で使用する POC(ポイント・オブ・ケア;
患者のそばで使用できる)装置です。Sonoclot なら、凝固、フィブリン形成、血餅退縮、そして線溶
亢進(存在する場合)を含む止血の全過程に関する正確な情報を得ることができます。
Sonoclot の測定原理
Sonoclot の測定原理は、微量粘稠度計と同じです。振動プローブが検査試料の内部を運動す
る時に受ける抵抗を検出します。液体の粘稠度が高ければ高いほど、出力信号は強くなります。出
力信号は標準粘稠度に較正され、「Clot Signal」単位に正規化され、レポートされます。
Sonoclot Signature
血餅が形成し成長するにつれて血液の粘稠度は経時的に変化します。一連の凝固シグナルが描
く曲線は、Sonoclot Signature と呼ばれます。典型的な Sonoclot Signature を下に示しま
す。Sonoclot Signature は検査ごとに生成され、データ解析ソフト シグネチャービューワー (デ
ータ収集・保存・検索ソフトウェア)を実行するパソコン上に表示することができます。
7
Sonoclot の測定値
Sonoclot Signature の形は止血の過程をたどります。Sonoclot Signature から止血の特
定の側面を表す数値、すなわち、活性化凝固時間(ACT)、凝固速度;クロット形成度合い(Clot
Rate)、血小板機能値(PF;Platelet Function)が抽出されます。結果は装置の液晶ディスプレ
ーに表示されます。これらの数値と Sonoclot Signature の関係を理解することは、各数値の意
味と関連する止血の各側面を理解するのに役立ちます。これらについては以下の項で詳しく説明し
ます。
Sonoclot Signature の各相
Sonoclot による検査では、血液検体に凝固活性剤を添加してクロット形成を開始します。装置
が描く Signature Viewer は、止血能の特定の側面を示す成分(相)に分けられます。
凝固反応相
最初の相は凝固反応相(液相)です。検査開始時、すなわち血液検体がまだ液体の状態にある
時点から、フィブリノゲンがフィブリンに変換し始める時点、すなわち血液検体の粘稠度が上昇を始め
る時点までの相をいいます。Sonoclot は自動的に「活性化凝固時間(ACT)」を算出します。活性
化凝固時間は、Sonoclot Signature 上で血液粘稠度が Clot Signal で 1.0 単位上昇した
時点に相当します。
フィブリンゲル形成相
フィブリンゲル形成相は、フィブリノゲンがフィブリンに変換しフィブリンゲルを形成する相をいいます。
Sonoclot は自動的に「凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)」を算出します。Clot Rate
は、クロット形成初期における Sonoclot Signature の最大の傾きで表されます。
8
血餅退縮相
血餅退縮は、Sonoclot Signature のピークとして現れます。Sonoclot は自動的に「血小板
機能値(PF;Platelet Function)」を算出します。PF は血餅退縮の質を数量化したもので、0(血
餅退縮なし)~約 5(強い血餅退縮)のスケールで表示されます。従来、血小板機能は Sonoclot
Signature から手作業で計算していました。研究者はそれぞれ独自の方法や指標を用いて血餅
退縮を数量化してきました。Time-to-Peak(ピーク到達時間)、R2(第 2 の傾斜)、Peak
Angle(ピーク角度)、Upslope(上り傾斜)、Downslope(下り傾斜)など、さまざまな指標が使
用されています。これらの指標の中には有用なものもありますが、Sonoclot Signature の形は変
化に富んでいるため、異なるユーザー間で解釈の一致をみることは困難でした。しかし、PF; 血小板
機能の数値化により、血餅退縮の特性評価に便利な指標を自動的に得ることができるようになりま
した。
9
第 4 章 心臓バイパス手術におけるヘパリン管理
ヘパリン
ヘパリンは自然に存在する多糖類です。アンチトロンビン(血液内に存在するタンパク質のひとつ)と
結合することによりヘパリン‐アンチトロンビン複合体をつくり、さまざまな凝固因子および凝固反応に
影響を与えます。未分画ヘパリンは、心臓バイパス手術で最も一般的に使用される抗凝固薬です。
ヘパリンが凝固に及ぼす影響
ヘパリンがフィブリンゲル形成に及ぼす影響はさまざまです。フィブリンゲル形成に対するヘパリンの作
用は大きく分けて 2 つあります。ひとつは高濃度のヘパリンが凝固反応相を延長して活性化凝固時
間(ACT)を延長する作用、もう一つは、クロット形成相を延長して凝固速度;クロット形成度合い
(Clot Rate)を低下させる作用です。Sonoclot Signature のヘパリン用量‐反応を下に示します。
このヘパリン用量‐反応は、同じ血液検体に異なる濃度のヘパリンを添加し、Sienco 社のカオリン
ACT キット(kACT)を使うことにより得られます。
活性化凝固時間(ACT)はヘパリンの用量に応じ、ほぼ直線的に変化しています。カオリン ACT キ
ット(kACT)により活性化凝固時間(ACT)を測定するという方法は、高用量のヘパリン管理に適し
ています。
重要:異なる機器や活性化剤を使用して測定した活性化凝固時間(ACT)は値が大きく異なる可
能性があります。異なる方法で測定した活性化凝固時間(ACT)に基づいてヘパリン管理を行う場
合は、ヘパリン投与の一貫性を確保するため、機器間または試薬間で測定方法の比較を行う必要
があります。
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凝固速度の変化は直線的ではありません。ヘパリン濃度が高いほど凝固速度;クロット形成度合
い(Clot Rate)は遅くなります。凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)は低い濃度のヘパリン
に対しては感度が非常に高いですが、ヘパリン濃度が高くなるとその変化に対する感度が低下します。
活性化凝固時間(ACT)と凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)を組み合わせることにより、
ヘパリンの抗凝固効果をより総合的に評価することができます。凝固速度;クロット形成度合い
(Clot Rate)は活性化凝固時間(ACT)よりヘパリン濃度に対する統計学的有意性が高いという
最近の報告もあります。また、凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)はクロット形成の抑制と
いう重要な抗凝固効果を示す指標でもあります。活性化凝固時間(ACT)はクロット形成開始の遅
延を示しますが、ヘパリン投与の真の目的はクロット形成を抑制することです。モニタリングで知りたい
ことはヘパリンによるクロット形成の遅延ではなく、クロット形成の抑制であることを考慮すれば、凝固
速度;クロット形成度合い(Clot Rate)の方がより特異的な指標であると考えられます。もっぱら活
性化凝固時間(ACT)のみを測定する ACT 測定器と比較すると、凝固速度;クロット形成度合い
(Clot Rate)からも実際のクロット形成の特性を評価できる Sonoclot は、ヘパリン管理におけるよ
り優れたモニタリング装置であると言えます。
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ヘパリン管理の目的
治療中のヘパリン投与を適切に行うことにより、患者の転帰は改善します。ヘパリンの投与量が足
りないと不必要なクロット形成の危険性が高まり、多すぎれば出血の危険性が高まるからです。ヘパ
リンは代謝されます。心血管バイパスの手術中は、ヘパリン濃度を望ましい治療域に維持するため、
ヘパリンを定期的に再投与する必要があります。正確なヘパリン投与を行うためには、ヘパリン再投
与のタイミングを判断するためのモニタリングが必要となります。
凝固活性剤
凝固検査は、血液検体の採取、活性化、分析など、多くの独立した過程で構成されます。検査
に使用する凝固活性剤によって検査結果は影響を受けます。すべての用途に使える万能な凝固活
性剤はありません。心血管手術を受ける患者の止血環境は、大きく分けて二つの状態があります。
一つは、高用量のヘパリン療法により血液凝固が抑制されている状態。もう一つは、血液凝固が正
常に機能している状態です。これら 2 つの止血環境に対してそれぞれ適切な活性化剤を用いること
で、より特異的な止血管理が可能になります。
高用量のヘパリン療法を受けている患者では、通常、セライトやカオリン等の標準的凝固活性剤を
使ってヘパリン療法の管理を行います。これらの凝固活性剤はベースラインの検査やプロタミン投与
後の凝固能評価に使用されることが多いのですが、ヘパリンをほとんど、あるいはまったく含まない血
液検体の場合、高濃度ヘパリンを含まない検体に最適化された凝固活性剤を使用することによって、
検査の性能が著しく改善することがあります。心血管手術中の凝固管理においては、2 つの異なる
凝固活性剤を使用することを Sienco 社は推奨します。すなわち、高用量ヘパリン療法の管理には
カオリン ACT キット(kACT)を、ベースライン検査やプロタミン投与後および ICU 検査にはガラス粒
ACT+キット(gbACT+)を使用するのです。これら 2 種の凝固活性剤の性能の違いを理解すること
が大切です。
下図は、カオリン ACT キット(kACT)と ガラス粒 ACT+キット(gbACT+)による Sonoclot
Signature のヘパリン用量‐反応です。
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下図は、両活性化法による Sonoclot Signature の活性化凝固時間(ACT)および凝固速
度;クロット形成度合い(Clot Rate)に関するヘパリン用量‐反応グラフです。
いずれの凝固活性剤についても、活性化凝固時間(ACT)とヘパリン濃度は直線的な関係を示し
ています。カオリン ACT キット(kACT)はヘパリン濃度の高い領域にまで及んでいますが、ガラス粒
ACT+キット(gbACT+)はヘパリン濃度の低い範囲にとどまり、1 IU/mL を超えません。カオリン
ACT キット(kACT)は高用量ヘパリン療法の管理には適していますが、低濃度のヘパリンに対する
感度は低く、残存ヘパリンを検出する性能は低いと考えられます。一方、ガラス粒 ACT+キット
(gbACT+)による活性化凝固時間(ACT)は、低濃度の残存ヘパリンに対しても顕著な延長を示
します。したがって、残存ヘパリンの検出にはガラス粒 ACT+キット(gbACT+)が推奨されます。
重要:高用量ヘパリン療法にガラス粒 ACT+キット(gbACT+)を使用しないこと。
ベースライン
ヘパリンを投与する前に血液検体を検査することは、患者の止血能を把握するのに有用です。こ
れにガラス粒 ACT+キット(gbACT+)とヘパリナーゼ入ガラス粒キュベット(H-gbACT+Kit)を使用
した測定比較による検査が推奨されます。この検査では、Sienco 社が推奨するガラス粒 ACT+キ
ット(gbACT+)を使用し止血能を総合的に評価する系列と、ヘパリナーゼ入ガラス粒キュベット
(H-gbACT+Kit)を用いて評価する系列の 2 系列で検査を行います。ヘパリナーゼ(ヘパリン中和)
評価を行う理由は、予期せぬヘパリンの混入や、前に投与したヘパリンの残存によりベースラインの検
査が影響を受けていないかどうかを確認するためです。下図の Sonoclot Signature は、ベースラ
インに少量の予期せぬヘパリン混入があることを示しています。
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高用量ヘパリン療法
Sonoclot を用いるヘパリン管理法は、他の活性化凝固時間(ACT)測定器を用いる方法と似
ています。Sonoclot ではさらに、活性化凝固時間(ACT)の算出後にクロットが形成する速度を数
値化した凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)を得ることができます。凝固速度;クロット形成
度合い(Clot Rate)は活性化凝固時間(ACT)よりもヘパリン濃度に対する特異性が高いという報
告も複数あります。また、抗凝固管理の目的はクロット形成の予防です。凝固速度;クロット形成度
合い(Clot Rate)は、クロット形成に対するヘパリンの効果をより直接的に示します。ヘパリン管理に
おいては、活性化凝固時間(ACT)と凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)の両者に、閾値
(しきい値)を設定するという方法が推奨されます。活性化凝固時間(ACT)が閾値を下回る、ある
いは凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)が閾値を超える場合に、ヘパリンを再投与するの
です。高用量ヘパリン療法における一般的な凝固速度; クロット形成度合い(Clot Rate)は 6 未
満です。
バイパス手術後
バイパス手術後には凝固に関する懸念が 2 つあります。適切なヘパリン中和と全体的な止血能の
確保です。
プロタミンを投与した後にヘパリンの残存と凝固因子の欠乏が検出されることがあります。このような
場合には、ヘパリンを中和した検体と中和しない検体の 2 系列で検査を行うことにより、全体的な止
血能の特性を総合的かつ特異的に評価することができます。
下図はプロタミン投与後の検査結果の一例です。ガラス粒 ACT+キット(gbACT+)により、活性
化凝固時間(ACT)が延長していることと、凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)が低下して
いることがわかります。このことから、ヘパリンの残存または凝固因子の欠乏が疑われます。ヘパリンを
中和した検体(ヘパリナーゼ入ガラス粒キュベット)では、ガラス粒 ACT+キット(gbACT+)より、正
常な活性化凝固時間(ACT)と凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)を示しています。また、
正常な血餅退縮もみられます。この例に見られるようなヘパリンの残存は、標準的な活性化凝固時
間(ACT)を測定するだけでは、容易に見過ごされてしまいます。
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血小板機能
Sonoclot Signature の血餅退縮相は、血液検体で血餅の退縮が起こっている時間に相当し
ます。この相は血餅を退縮させる活性化血小板の影響を受けます。このことは、抗血小板凝集薬に
より血小板機能を抑制した検体の Sonoclot Signature と比較するとわかりやすくなります。
血小板凝集を抑制することにより、その機能を低下させると、血餅退縮は弱まり、最終的には消失
します。フィブリン塊の形成後、Sonoclot Signature はどんどん平坦化していきます。注意すべき
点は、血小板抑制の影響が、凝固反応相(活性化凝固時間;ACT)にも、フィブリンゲル形成相
( 凝 固 速 度 ; ク ロ ッ ト 形 成 度 合 い ;Clot Rate ) に も 見 ら れ な い こ と で す 。 血 小 板 機 能 値
(PF;Platelet Function)は血餅退縮に特異的な指標であり、血餅退縮がまったく認められなくて
も、フィブリン塊が形成していないということではありません。血小板機能値(PF;Platelet Function)
が低いという結果が得られれば、血小板(血液成分)療法を行う際の有用な指標になります。
重要:血小板機能値が有効であるためにはフィブリン塊が形成していなければなりません。
ヘパリンの存在、凝固因子の欠乏、フィブリノゲンの減少などはすべて血餅退縮障害の原因になりま
す。血小板機能の低下を正しく認識するためには、まず、Sonoclot Signature の形状や活性化
凝固時間(ACT)および凝固速度;クロット形成度合い(Clot Rate)からフィブリン塊の形成が十分
に確認できていなければなりません。活性化凝固時間(ACT)と凝固速度;クロット形成度合い
(Clot Rate)からフィブリン塊の形成能力の低下が疑われる場合は、血小板機能値(PF;Platelet
Function)を血小板機能の低下の指標とする前に、凝固障害を修正する必要があります。
15
第 5 章 Signature Viewer のビジュアル・インデックス
この章はユーザーによって提供された Signature を掲載し、作成する予定です。
16
第 6 章 技術サポート
お問い合わせ
Sonoclot、データ解析ソフト シグネチャービューワー、または Sonoclot Signature の解釈に関
する技術サポートについては、Sienco 社またはアイ・エム・アイ株式会社までお問い合わせください。
Sienco 社連絡先:
アイ・エム・アイ株式会社連絡先:
〒343-0824 埼玉県越谷市流通団地 3-3-12
Tel:048-968-4442 Fax:048-968-4443
e-mail:[email protected]
Sonoclot Signature の解釈には経験が必要です。また、その解釈が正しいかどうかを確認する
ことは、Sonoclot の初心者にとって、たいへん有用です。Sienco 社は、Sonoclot Signature
の解釈(英語のみ)を含む技術サポートを提供します。データ解析ソフト シグネチャービューワーを使
用することにより、ユーザーは Sonoclot Signature を Sienco 社の技術スタッフと共有することが
できます。Signature を送付するためには、まず送付したい Signature を Signature Group
にまとめ、データ解析ソフト シグネチャービューワーから Signature Group をエクスポートし、そして
エクスポートしたファイルを [email protected] 宛てに E メールで送付してください。データ解析
ソフト シグネチャービューワーからデータをエクスポートする手順を以下に説明します。
データ解析ソフト シグネチャービューワーから Signature Group をエクスポートする手順
1.エクスポートしたい Signature Group を選択してください。ファイル・メニューの「Export
Signature Group(Signature Group をエクスポートする)」を選択してください。エクスポー
ト・ダイアログ・ボックスが開きます。
2.エクスポート・ダイアログに、エクスポートする Signature Group のファイル名を入力します。注:
このファイル名には完全なファイルパスが含まれます。テキスト・ボックスにはファイルパスを使用し、
ファイルパスに任意の名前を追加してください。完全なファイルパスの後ろおよびユーザーのファイル
名の前にウィンドウズのファイルパス記号「¥」をつける必要があります。ファイルパスを使用しない場
合、ファイルはユーザーのバードディスクのルート・ディレクトリに書き込まれます。
3. ファイル名に「.xml」の拡張子をつけてください。
4.「Save(保存する)」ボタンを押してください。
5.ファイルをデフォルトのファイルパスで保存した場合、そのファイルはユーザーのデータ解析ソフト シ
グネチャービューワーのデータ・フォルダ内のエクスポート・データ・フォルダに保存されます。デフォルト
では、ユーザーのデータ解析ソフト シグネチャービューワーのデータ・フォルダに「My Signature
Viewer Data」という名前がつけられ、ユーザーのドキュメント・フォルダに保存されます。
6.エクスポートしたファイルを E メールに添付し、質問を添えて [email protected] まで送付し
てください。
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