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「微小重力環境を利用した ガラス融液内対流制御技術の研究開発」 事後

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「微小重力環境を利用した ガラス融液内対流制御技術の研究開発」 事後
「微小重力環境を利用した
ガラス融液内対流制御技術の研究開発」
事後評価報告書
平成15年2月
新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術評価委員会
目
次
はじめに
事後評価分科会委員名簿
審議経過
評価概要
技術評価委員会におけるコメント
技術評価委員会委員名簿
1
2
3
4
7
9
第1章 評価の実施方法
1-1
第2章 プロジェクトの概要
2-1
第3章 評価
1.プロジェクト全体に関する評価
1.プロジェクト全体に関する評価
1.1 総論
1.2 各論
2.各個別技術に対する評価
3-1
第4章 評点法による評価結果
4-1
参考資料1 プロジェクトの概要説明資料
参考資料2 プロジェクト実施者からの補足資料
参考資料3 周辺動向調査
はじめに
「微小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術の研究開発」は、平成
11年度より3年間の計画で開始された。本プロジェクトは、ガラス製造にお
いて最も多くのエネルギーを消費する溶融プロセスの省エネ・高効率化のため、
ガラス溶融炉内の対流制御技術に関する研究開発を米国の研究機関との共同研
究により実施したものである。
平成14年度に、新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会「微
小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術の研究開発」分科会(分科会
長:今石 宣之 九州大学 機能物質科学研究所 教授(所長)
)において、当
該分野に係わる国内外の研究開発動向や社会情勢の変化も踏まえつつ、プロジ
ェクトの目的・政策的位置付け、目標・計画内容、研究開発体制や運営状況、
成果の意義、実用化可能性や波及効果等について事後評価を実施した。
本書は、これらの評価結果をとりまとめたものである。
平成15年2月
新エネルギー・産業技術総合開発機構
1
技術評価委員会
「微小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術の研究開発」
事後評価分科会委員名簿
(平成14年10月現在)
分科会
会長
分科会
委員
今石
宣之
九州大学
機能物質科学研究所
赤木
亮介
旭硝子株式会社 船橋工場
ディスプレイカンパニーCRT ガラス本部
小池
秀耀
株式会社富士総合研究所
計算科学技術研究センター
長坂
雄次
慶應義塾大学
理工学部 SD工学科
西野
耕一
横浜国立大学
大学院工学研究院
教授(所長)
主席技師
上席執行役員
教授
助教授
敬称略、五十音順
2
審議経過
第1回評価分科会(平成 14 年 10 月 22 日)10:00∼15:40
公開セッション
1.開会(分科会会長、挨拶、資料の確認)
2.分科会の公開について
3.評価の手順等について
4.評価の分担等について
5.周辺動向調査
6.プロジェクトの概要
非公開セッション
7.プロジェクトの詳細
8.全体に関する質疑
9.その他(感想など)
10.今後の予定
第7回技術評価委員会(平成 15 年 2 月 10 日)14:00∼16:30
1.評価報告書の審議/報告
3
評価概要
1.プロジェクト全体に関する評価
1.1 総論
1)総合評価
本事業は、省エネルギー達成を目的としていること、ガラス産業界全体に波
及する研究開発であることから、政策および社会ニーズと合致している。
研究開発段階では、研究推進委員会などからの提言により、研究方針や方法
の見直しがなされており、マネイジメント手法は評価できる。
最終成果として、新しい計測技術を開発し、高温ガラス融液の流速データを
取得したことは、世界でも初めてのケースであり、事業全体の目標は概ね達成
しているが、微小重力施設を使用して行った熱物性計測に関しては、目標の達
成度が低い。
実用化や事業化に関しては、基礎的研究に重点が置かれていたため、実現ま
でには多少の時間を要することは否めないものの、商業炉への展開など、各開
発技術の実用性は高い。
以上のことから、本事業は、的確なマネイジメントにより所期の目標を達成
した。ガラス業界全体のレベルアップを図るため、実用化を視野に入れた研究
が継続されることを期待する。
2)今後の研究開発の方向性等に関する提言
国内全体の省エネルギーの観点からすると、ランニングコストという点で事
業化できるのかの見極めと、溶融炉を構成する炉材の侵食など、設備の耐久性
についても評価が必要である。
ソフトウェアベースとなる数値解析技術は、開発したソースコードの整備・
マニュアル化によって実用的な研究成果があがる。今後の同様なプロジェクト
においては、企画立案段階からそのシミュレーションコードの公開法を検討す
る必要がある。
欧米との競争を考えると、本技術開発の成果を踏まえて、高度なプロセス・
シミュレータの開発に、直ちに着手することが強く望まれる。
また、微小重力施設は実験遂行上の制約が多く、費用も高いことから、今後の
同様なプロジェクトに関しては、使用頻度などを柔軟に検討する必要がある。
4
1.2 各論
1)事業の目的・政策的位置付けについて
本事業のような共通基盤技術の成果は、ガラス産業界全体に波及するもので
あること、シミュレーション手法の確立と基礎物性の将来的な必要性が明確に
記されていることから、設定した目的は的確であると判断する。また、省エネ
ルギーを達成するという方針は、国の施策と合致しており、政策的位置付けも
妥当である。
2)研究開発のマネジメントについて
研究推進委員会などのメンバーからの助言を得つつ、定期的な研究推進会議
が開かれ、研究目的達成に向けての真摯な議論がなされている。その結果、研
究方針や方法の柔軟な見直しがなされており、研究成果を生み出す大きな原動
力となっている。したがって、本事業におけるマネイジメント手法は評価でき
る。
一方、海外研究組織との連携は密接とは言えず、
「国際研究協力事業」としての
位置付けが曖昧であった。
3)研究開発成果について
新しい計測技術(振り子棒式流速計と表面流速観察技術)を開発し、高温ガ
ラス融液の流速データを取得したことは、世界でも初めてのケースであり、高
く評価できる。小型実験炉を製作して、流速計測とシミュレーションの比較検
討を行い、溶融炉内の熱対流をほぼ正確に評価できることを検証したことによ
り、シミュレータの高精度化と炉の対流制御技術の発展に、大きな貢献が期待
できる。事業全体の目標は、概ね達成しているが、微小重力下で行ったガラス
融液の熱物性計測は、従来技術を凌駕する結果になっておらず、目標の達成度
は低い。
4)実用化、事業化の見通しについて
シミュレーションに関しては、基本的要素技術の構築ができており、今後は
汎用なモデルへと進化させることによって、商業炉への展開など、実用的なプ
ロセスシミュレータへと発展することが期待できる。流速計測技術は、ガラス
融液以外の高温融液や高粘性・不透明流体への適用が可能である。
本事業は、基礎的研究に重点が置かれており、実用化と事業化への移行には、
多少の時間を要することは否めない。今後も、ガラス業界全体のレベルアップ
を図るため、継続した研究を期待する。
5
技術評価委員会におけるコメント
第7回技術評価委員会(平成 15 年 2 月 10 日開催)に諮り、了承された。技
術評価委員からのコメントは特になし。
6
技術評価委員会委員名簿
委員長
岸 輝雄
稲田 絋
大滝 義博
大西 匡
垣田 行雄
小柳 光正
瀬田 重敏
曽我 直弘
高村 淑彦
谷 辰夫
冨田 房男
西村 吉雄
丹羽 清
畑村 洋太郎
平澤 泠
三浦 孝一
村上 路一
独立行政法人 物質・材料研究機構理事長
東京大学大学院工学系研究科教授
株式会社バイオフロンティアパートナーズ代表取締役社長
豊田工機株式会社取締役会長
財団法人日本システム開発研究所専務理事
東北大学大学院工学研究科教授
旭化成株式会社特別顧問
独立行政法人産業技術総合研究所理事
東京電機大学工学部教授
諏訪東京理科大学工学部システム工学部長
北海道大学大学院農学研究科教授
東京大学大学院工学研究科教授
東京大学大学院総合文化研究科教授
工学院大学国際基礎工学科教授
政策研究大学院大学教授
京都大学大学院工学研究科教授
株式会社宇宙情報技術研究所代表取締役副社長
(合計17名)
(敬称略、五十音順)
7
第1章
評価の実施方法
第1章 評価の実施方法
本評価は、「技術評価実施要領」(平成 13 年 5 月制定)に基づいて技術評価を
実施する。「技術評価実施要領」は、以下の 2 つのガイドラインに定めるところ
によって評価を実施することになっている。
総合科学技術会議にて取りまとめられた「国の研究開発評価に関する大綱
的指針」(平成 13 年 11 月内閣総理大臣決定)
経済産業省にて取りまとめられた「経済産業省技術評価指針」
(平成 14 年
4 月経済産業省告示)
NEDO における技術評価の手順は、以下のように被評価プロジェクト毎に分科
会を設置し、同分科会にて技術評価を行い、評価報告書(案)を策定の上、技術評
価委員会において確定している。
「技術評価委員会設置・運営要領」に基づき技術評価委員会を設置
技術評価委員会はその下に分科会を設置
経済産業省
NEDO
理事長
評価報告書(確定) 報告
技術評価委員会
(親委員会)
事務局
評価報告書(案)
技術評価部
分科会D
分科会A
分科会B
図1
分科会C
評価手順
1-1
1.評価の目的
実施要領において、評価の目的は、
評価をする者(評価者)と評価を受ける者(被評価者)が意見交換を通
じ研究開発の意義、内容、達成状況、今後の方向性等について検討し、
より効率的・効果的な研究開発を実施していくこと、
高度かつ専門的な内容を含む研究開発の意義や内容について、一般国民
にわかりやすく開示していくこと、
限られた研究開発リソースの中で、国の政策や戦略に対応した重点分
野・課題へのリソース配分をより効率的に実施していくこと、とされて
いる。
本評価においては、この趣旨を踏まえ、本事業の意義、研究開発目標・計画の妥当
性、計画と比較した達成度、成果の意義、成果の実用化の可能性等について検討・評
価した。
2.評価者
実施要領においては、事業の目的や態様に即した外部の専門家、有識者からなる委
員会方式により評価を行うこととされているとともに、分科会委員選定に当たっては
以下の事項に配慮した選定を行うこととされている。
科学技術全般に知見のある専門家、有識者
当該研究開発の分野の知見を有する専門家
研究開発マネジメントの専門家、経済学、環境問題その他社会的ニーズ
関連の専門家、有識者
産業界の専門家、有識者
また、評価に対する中立性確保の観点から事業の推進側関係者を選任対象から除外
し、また、事前評価の妥当性を判断するとの側面にかんがみ、事前評価に関与してい
ない者を主体とすることとしている。
これらに基づき、分科会委員名簿にある6名が選任された。
なお、本分科会の事務局については、新エネルギー・産業技術総合開発機構技術評
価部評価業務課が担当した。
3.評価対象
平成10年度から平成13年度までの計画で実施されている「微小重力環境を利用
したガラス融液内対流制御技術の研究開発」プロジェクトを評価対象とした。
なお、分科会においては、当該事業の推進部室である新エネルギー・産業技術総合
開発機構 研究開発業務部、及び以下の研究実施者から提出された事業原簿、プロジ
1-2
ェクトの内容、成果に関する資料をもって評価した。
研究実施者
日本山村硝子株式会社
4.評価方法
分科会においては、当該事業の推進部室及び研究実施者からのヒアリングと、それ
を踏まえた分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施者側等と
の議論等により評価作業を進めた。
なお、評価の透明性確保の観点から、知的財産保護の上で支障が生じると認められ
る場合等を除き、原則として分科会は公開とし、研究実施者と意見を交換する形で審
議を行うこととした。
5.評価項目、評価基準
分科会においては、次に掲げる「標準的評価項目・評価基準」(平成 14 年 4 月 9
日、第3回技術評価委員会)に準じて評価を行った。プロジェクト全体に係わる評価
においては、主に事業の目的、計画、運営、達成度、成果の意義や実用化への見通し
等について評価した。各個別技術に係る評価については、主にその目標に対する達成
度等について評価した。
1-3
標準的評価項目・評価基準
【本標準的項目・基準の位置付け(基本的考え方)】
本項目・基準は、あくまでも標準的な評価の視点の例であり、各分科会にお
ける評価項目・評価基準は、被評価プロジェクトの性格、中間・事後評価の別
等に応じて、各分科会において判断すべきものである。
なお、短期間(3年以下)又は少額(予算総額5億円以下)のプロジェクト
に係る事後評価については、以下の「3.」及び「4.」を主たる視点として、
より簡素な評価項目・評価基準を別途設定して評価をすることができるものと
する。
1.事業の目的・政策的位置付けについて
(1)NEDO(国)の事業としての妥当性
単独で立ち上げる事業については、以下の項目により評価することとする。な
お、特定のプログラム制度(研究開発制度)の下で実施する事業の場合、以下の
項目を参照しつつ当該制度の選定基準等への適合性を問うこととする。【注1】
・「市場の失敗」
(行政改革委員会「行政関与の在り方に関する基準」
(平成 8 年
12 月)参照)に該当しているか。しない場合、民間活動のみでは改善できな
いこと、公共性の高いことが説明されているか。その際、当該事業に必要な資
金規模や研究開発期間、民間企業の資金能力等は示されているか。
・他の類似事業や関連技術動向を踏まえ、NEDO(国)の関与がなかった場合
(放置した場合)と比較して、NEDO(国)が関与することの優位性がより
高いものであるか。
・当該政策目的の達成に当たって当該事業を実施することによりもたらされる政
策効果が、投じた政策資源との比較において効率的・効果的であるか(費用対
効果はどうか)。(知的基盤・標準整備等のための研究開発の場合を除く)
(2)事業目的・政策的位置付けの妥当性
・評価時点或いは事業開始時点の時代背景認識から見て、事業の目的は妥当で、
政策的位置付けは明確か。
・政策課題(問題)の解決に十分資するものであるか。
・国としての国際競争力に資するものであるか。
2.研究開発マネジメントについて
(1)研究開発目標の妥当性
・目標達成のために、具体的かつ明確な開発目標、目標水準を設定しているか。
・目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。
・費用対効果分析が適切に行われているか。(エネルギー特別会計を使用してい
る場合には費用対効果分析を踏まえ定量的なエネルギー政策上の目標が立て
られているか。)
1-4
(2)研究開発計画の妥当性
・目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分を
含む)となっているか。
・目標達成に必要な要素技術を過不足なく取り上げているか。
・研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。
(3)研究開発実施者の事業体制の妥当性
・目標を達成する上で、事業体制は適切なものか。
・各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか。
・関係者間の連携/競争が十分行われるような体制となっているか。
(4)研究開発実施者の運営の妥当性
・意思決定、進捗状況、計画見直し等の検討が適切に行われているか。
・プロジェクトリーダー(サブテーマのリーダーを含む)が有効に機能してい
るか。
・プロジェクト開始後の情勢変化(目標未達が明らかになった場合を含む)へ
の対応は適切であったか。
(5)情勢変化への対応の妥当性
・技術動向や社会・市場ニーズの変化等に対応して、計画を適切に見直したか。
・計画の見直しに当たっては、時代背景の変化を考慮していたか。
3.研究開発成果について
(1)計画と比較した目標の達成度
・成果は目標値をクリアしているか。
・全体としての目標達成はどの程度か。
・立案時点または計画見直し時点の時代背景認識から見て、事業は研究開発と
して成功したといえるか。また、評価時の時代背景から見てどうか。
(2)要素技術から見た成果の意義
・世界最高水準、世界で初めて、又は国際水準から見て優れた成果があるか。
(ある場合は、その根拠及びインパクトが明確に説明されているか。)
・新たな技術領域を開拓するような成果の独創性が認められるか。
(認められる場合は、新たな技術領域の内容、その根拠、規模及び発展性はど
うか。)
・新たな市場創造につながるような新規性、先進性が認められるか。
(認められる場合は、新たな市場の内容、その根拠及び発展性はどうか。)
・汎用性のある(応用分野の広い)技術が開発されているか。
・当初想定していなかったような成果(派生技術等)はあるか。
・将来の時代背景の変化により、重要性の増すあるいは減る成果はどのような
ものか。
1-5
(3)成果の普及、広報
・論文の発表は、質・量ともに十分か。
・特許は適切に取得されているか。
・基本特許が的確に取得されているか。
・特許性は十分あると判断されるか。
・外国特許が適切に出願されているか。
・必要に応じ、成果の規格化に向けた対応が取られているか。
・広報は一般向けを含め十分に行われているか。
(4)成果の公共性【注2】
・成果の公共性を担保するための措置、あるいは普及方策を講じているのか。
(JIS 化、国際規格化等に向けた対応は図られているか、一般向け広報は積極
的になされているか等)
4.実用化、事業化の見通しについて
(1)成果の実用化可能性
・産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。
・公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか。
・公共性は実際にあるか。見込みはあるか。
(2)波及効果
・成果は関連分野へのインパクトを期待できるものか。
・当初想定していなかった波及的な成果はあるのか。
・プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果を
生じているか。
(3)事業化までのシナリオ
・コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果
等の見通しは立っているか。
【注1】
:
「必要性」の観点からの評価は、政策効果からみて、対象とする政策に係る
行政目的が国民や社会のニーズ又はより上位の行政目的に照らして妥当性
を有しているか、行政関与の在り方からみて当該政策を行政が担う必要が
あるか等を明らかにすることにより行うものとする。
(政策評価に関する基
本方針(閣議決定平成 13 年 12 月)参照)
【注2】:知的基盤・標準整備等のための研究開発のみ。
【全体注】:評価においては、プロジェクトに対する提言を含めて検討を実施するも
のとする。
1-6
第2章
プロジェクトの概要
当該事業の推進部室及び研究実施者から提出された事業原簿をもって、当該プロジェク
トの概要を示す。
「微小重力環境を利用した
ガラス融液内対流制御技術の研究開発」
事業原簿
0. 概要
制度名
事業名
微小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術
の研究開発
事業の概要
ガラス製造において最も多くのエネルギーを消費する溶融プロセスの
省エネ・高効率化のため、ガラス溶融炉内の対流制御技術に関する研究
開発を米国の研究機関との共同研究により実施する。具体的には、ガラ
スの高温領域の物性値を微小重力環境を利用して精密に測定する手法・
装置を開発し、測定を行う。また、ガラス融液内の対流を計測する手法・
装置を開発し、測定を行う。これらの結果をもとに、シミュレーション
により熱対流及びマランゴニ対流の影響を明確にし、新しい対流制御技
術を確立する。
1.NEDOの関与の必要
本技術開発は基本的な物性の測定方法とシミュレーション技術を開発
性・制度への適合性
し、対流制御技術を実証するものであり、その開発リスクは大きく、ま
た、結果も一企業というよりはガラス業界全体の省エネルギーに帰すも
のであって国が関与することが適当であると判断する。
2.事業の背景・目的・位置
エネルギー利用の効率化と地球環境の保全を図るため、ガラス製造業
付け
において最も多くのエネルギーを消費する溶融プロセスの省エネ・高効
率化が求められている。
しかしながら、ガラス溶融プロセスの省エネ・高効率化は従来技術の
改善に留まっているのが現状である。これは、ガラスの溶融・脱泡・清
澄過程からなる製造プロセスの解明が不十分であり、ガラス溶融炉内の
対流制御技術が確立されていないことによるものである。
本研究開発においては、ガラスの高温領域(1000℃∼1500℃)におけ
る物性値を正確に測定可能な手法・装置を開発するとともに、測定した
物性値を基にしてシミュレーションを行い、熱対流及びマランゴニ対流
の影響を明確にすることにより、新たな対流制御技術を確立する。さら
に、ガラス融液の脱泡・均質化の促進について、その対流制御技術の適
用性を評価することにより、ガラス製造プロセスの省エネルギー化に資
することを目的とする。
3.事業の目標
a .微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定
.微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定
(全体目標)
ソーダ石灰系ガラスの高温領域(1000 ℃∼1500 ℃)における表面張
力・粘性率を正確に測定可能な手法・装置の開発と測定を行う。
b .ガラス融液内の対流の計測と制御技術の検討
正確な物性値を使用したシミュレーション技術を開発し、熱対流及び
マランゴニ対流の影響を明確にすることにより、新しい対流制御方法を
確立する。
c .脱泡・均質化促進への新対流制御技術の適用性評価
本研究開発により提案された新しいガラス融液内対流制御方法の適用性
を評価し、ガラス製造プロセスの省エネルギー効果を試算する。
4.事業の計画内容
H11fy
H12fy
H13fy
総額
(単位:百万円)
(3年間)
一般会計
特別会計(電多)
特別会計(石油)
特別会計(エネ高)
132
116
112
361
総予算額(計)
132
116
112
361
2-1
研究開発体制
省内担当原課
運営機関
産業技術環境局 研究開発課
新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究開発業務部 研究助成課
委託先
日本山村硝子株式会社
再委託先
大阪府立大学
共同研究
工業技術院 大阪工業技術研究所(H12年度まで)
5.実用化、事業化の見通し
操炉および設計の要となる計算機シミュレーションがまだ発展途上の
段階にあるので、さらに、その精度の向上と信頼性の獲得に努めること
が急務である。そのためには更に、炉構造やその規模を変えて実験と計
算による流れの解析結果を蓄積する過程が必要である。その結果、多様
な炉構造に適応した流れの解析シミュレーションが可能になり、更に発
想を異にする新規な構造・システムを有する炉の提案を含めて、硝種、
溶解規模に対応した最適な炉設計技術を確立することができる。
6.今後の展開
(1)ガラス組成や投入される原料の形態によってはサイズなどの変更
は必要かもしれないが、小型連続溶融炉の開発という観点から本成果は
充分活用できる。
(委託先では同規模の溶融炉を設計して、電気用ガラス
の生産に用いる予定)
(2)生産炉において計測データの取り方(種類、場所など)を検討す
ることが次の段階として必要である。その結果、シミュレーションの実
行にそれらの結果を逐次与えながら、その場で炉内流れを可視化して炉
操作に適宜判断を下せるようになれば、計算機シミュレーション技術の
本来の姿となる。
(3)今回の流れ計測技術では水平面内の方向と強さが測定できる。今
後鉛直方向の計測技術の開発が必要である。
(4)本研究ではガラス融液自体が発熱体となるジュール発熱を用いる
ことは、対流を制御する目的から非常に優れていることが分かった。ま
た、そのことを融液内部で発熱させるという意味に解釈すると、液中燃
焼方式も再度検討の価値があるかもしれない。また、炉構造の検討に加
えて、全酸素燃焼、減圧脱泡技術、脱泡剤・ガラス組成の検討など個別
の要素技術の検討が残されていると思われる。
7.中間・事後評価
プレ事後評価(内部委員会)実施
8.研究開発成果
特許(出願)数:0(1)
、査読論文:3、学会発表:10
9.状況変化への対応
基本計画の変更
なし
変更内容
評価履歴
10.今後の事業の方向性
作成日
平成14年10月9日
2-2
−目次−
1.NEDO
1. NEDO の関与の必要性、制度への適合性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
の関与の必要性、制度への適合性
1.1 NEDO が関与することの意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.2 費用対効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.事業の背景・目的・位置付け
事業の背景・目的・位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.
事業の背景・目的・位置付け
2.1 事業の背景・目的・意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.2 事業の位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.事業の目標
事業の目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.
事業の目標
4.事業の計画内容
事業の計画内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.
事業の計画内容
4.1 事業全体、個別研究開発項目の計画内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.2 研究開発項目毎の内容の詳細・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.3 研究開発実施主体の体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5.実用化、事業化の見通し
実用化、事業化の見通し(政策目的達成時のイメージ)・・・・・・・・・・・・
5.
実用化、事業化の見通し
6.今後の展開
今後の展開(政策目的達成までのシナリオ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.
今後の展開
7.中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期
7. 中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期・・・・・・
中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期
8.研究開発成果
研究開発成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8.
研究開発成果
8.1 事業全体の成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8.2 研究開発項目毎の成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2-3
2-4
2-4
2-5
2-6
2-9
2-10
2-11
2-13
「微小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術の研究開発」
事業原簿
1 .NEDO の関与の必要性・制度への適合性
1.1NEDO
1.1
NEDO が関与することの意義
ガラス溶融プロセスの省エネ・高効率化は従来技術の改善に留まっており、不十分といわざるを
得ない。これは、ガラスの溶融・脱泡・清澄過程からなる製造プロセスの解明が未だ不十分であり、
ガラス融液内の対流制御技術が確立されていないことによるものである。この確立のためには、融
液内対流のシミュレーションとガラス溶融炉での実証が必要であるが、物質移動に関わる表面張
力・拡散係数等の基礎データが熱対流による影響のために正確に測定できておらず、これを利用し
た正確なシミュレーションが不可能であるというのが現状である。
本研究開発においては、ガラスの高温領域(1000 ℃∼1500 ℃)における物性値を正確に測定可
能な手法・装置を開発するとともに、測定した物性値を基にしてシミュレーションを行い、熱対流
及びマランゴニ対流の影響を明確にすることにより、新たな対流制御技術を確立する。さらに、ガ
ラス融液の脱泡・均質化の促進について、その対流制御技術の適用性を評価することにより、ガラ
ス製造プロセスの省エネルギー化に資することを目的としている。
微小重力を利用した物性について、金属材料のように電磁浮遊炉で浮遊できる試料では、すでに
データの収集が行われているが、ガラスのような誘電体では電磁浮遊炉で浮遊できないため測定さ
れていない。また、世界的にみてもマランゴニ対流に注目したガラスの研究は他に実施されていな
い。
このように、本技術開発は基本的な物性の測定方法とシミュレーション技術を開発し、対流制御
技術を実証するものであり、その開発リスクは大きく、また、結果も一企業というよりはガラス業
界全体の省エネルギーに帰すものであってNEDOが関与することが適当であると判断する。
1.2 費用対効果
省エネルギー効果を以下のように推定する。
ガラス製造炉内ガラス融液の対流制御により、品質に関係する脱泡、均質化の促進が可能となり、
操業温度の低下、滞留時間を短縮させることで約 30 万 kl/年の節減と推定する。
*操業温度150℃の低下(現行1500℃のため省エネ約10%)、滞留時間10%減(同10%)により、ガ
ラス溶融炉で消費されるエネルギー143万kl(原油換算)の20%である29万klの節減となる。
2 .事業の背景・目的・位置づけ
2.1 事業の背景・目的・意義
エネルギー利用の効率化と地球環境の保全を図るため、ガラス製造業において最も多くのエネル
ギーを消費する溶融プロセスの省エネ・高効率化が求められている。
2-4
製造業付加価値ベース精算指数当りエネルギー消費原単位
(指数)
120
100
80
60
40
20
製造業
鉄鋼
化学
窯業土石
紙・パルプ
0
(年度)
73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95
エネルギー・経済統計要覧 1997年度版,pp.60
しかしながら、ガラス溶融プロセスの省エネ・高効率化は従来技術の改善に留まっているのが現
状である。これは、ガラスの溶融・脱泡・清澄過程からなる製造プロセスの解明が不十分であり、
ガラス溶融炉内の対流制御技術が確立されていないことによるものである。
ガラスの溶融(反応)・脱泡・清澄過程の多岐にわたる複雑な現象を解明するためには、ガラス
融液の対流シミュレーション技術の確立が最も重要な位置を占めるが、シミュレーションに必須で
ある物質移動に係わる表面張力・粘性率などの基礎データは熱対流による影響のため正確に測定す
ることが困難である。このため、これらの物性値を熱対流の起きない微小重力下で測定する必要が
ある。他方、無重力下においても温度差に起因する対流(マランゴニ対流)が生じることが知られ
ており、これを実際のガラス溶融炉の対流制御に積極的に利用することにより、従来にない新しい
対流制御技術の開発が期待できる。
2.2 事業の位置付け
本研究開発においては、ガラスの高温領域(1000℃∼1500℃)における物性値を正確に測定可能
な手法・装置を開発するとともに、測定した物性値を基にしてシミュレーションを行い、熱対流及
びマランゴニ対流の影響を明確にすることにより、新たな対流制御技術を確立する。さらに、ガラ
ス融液の脱泡・均質化の促進について、その対流制御技術の適用性を評価することにより、ガラス
製造プロセスの省エネルギー化に資することを目的とする。
3 .事業の目標
(1)微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定
ソーダ石灰系ガラスの高温領域(1000℃∼1500℃)における表面張力・粘性率を正確に測定可能
な手法・装置の開発と測定を行う。
2-5
(2)ガラス融液内の対流の計測と制御技術の検討
正確な物性値を使用したシミュレーション技術を開発し、熱対流及びマランゴニ対流の影響を明
確にすることにより、新しい対流制御方法を確立する。
(3)脱泡・均質化促進への新対流制御技術の適用性評価
本研究開発により提案された新しいガラス融液内対流制御方法の適用性を評価し、ガラス製造プ
ロセスの省エネルギー効果を試算する。
4 .事業の計画内容
4.1 事業全体、個別研究開発項目の計画内容
研究開発項目
H11
H12
H13
(1)微小重力環境を利用したガラス融液の
高温物性の測定
(2)ガラス融液内の対流の計測と制御技術
の検討
(3)脱泡・均質化促進への新対流制御技術
の適用性評価
4.2 研究開発項目毎の内容の詳細
(1)微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定
ソーダ石灰系ガラスの高温領域(1000℃∼1500℃)における表面張力・粘性率を正確に測定する技
術を開発して、対流制御に必要なデータを集積する。具体的には、非接触振動測定装置を開発し、
微小重力下(落下塔を利用)や小型溶融炉内(比較用)においてガラス融液の高温物性を測定する。
さらに、シミュレーション結果との対比によって測定精度を検証する。
(2)ガラス融液内の対流の計測と制御技術の検討
微小重力下(落下塔を利用)や小型溶融炉においてガラス融液内の対流を計測及び観察する手法・
装置を開発し、測定を行う。また、実測結果とガラスの高温融液の正確な物性値を使用したシミュ
レーション技術を用いて、熱対流及びマランゴニ対流の影響を明確にし、炉の形状及び温度分布制
御の面から新しい対流の制御方法について検討する。
(3)脱泡・均質化促進への新対流制御技術の適用性評価
ガラス製造プロセスの省エネルギーに直接関係するガラス融液の脱泡・均質化の促進について、
本研究により開発された新しいガラス融液内対流制御方法の適用性を評価する。
2-6
4.3 研究開発実施主体の体制
ガラス融液内対流のシミュレーションには多くの正確な物性値が必要であり、かつ、微小重力下
での測定など高度な技術が要求されるため、微小重力環境を利用したガラスの研究に多くの実績を
有する米国ミズーリ・ローラ大学等と共同で研究開発を進める。
また、この分野に広範な知見、技術を蓄積している大阪工業技術研究所等と密接な連携をとりつ
つ、各機関の技術・ノウハウの結集により目標の達成にあたる。
(1)実施体制
<日本>
<米国>
経済産業省
補助
NEDO
委託
委託先(日本山村硝子(株))
再委託先(大阪府立大学)
共同研究
ミズーリ・ローラ大学
(ワーキングプラン)
共同研究
大阪工業技術研究所
研究実施場所
①〒663-8142 兵庫県西宮市鳴尾浜2丁目1−18
日本山村硝子株式会社 ニューガラス研究所
②〒660-0857 兵庫県尼崎市西向島町111番地
日本山村硝子株式会社 尼崎工場
[再委託]
大阪府立大学 工学部 航空宇宙工学科(最寄り駅:南海電車中百舌鳥駅)
〒599-8531 大阪府堺市学園町1番1号
[共同研究]
①通商産業省 工業技術院 大阪工業技術研究所 光機能材料部
〒563-8577 大阪府池田市緑丘1丁目8−31
(平成12年度まで)
2-7
(2)研究組織及び管理体制
イ.研究組織(全体)
日本山村硝子株式会社
再委託
大阪府立大学(公立)
日本山村硝子株式会社
ニューガラス研究所
日本山村硝子株式会社
尼崎工場
ロ.研究組織及び管理体制
①日本山村硝子株式会社
社
長
シェアードサービスセンター
ニューガラス研究所長
(リーダー)
経理システム部
ニューガラス研究所
大阪府立大学
ガラスびんカンパニー
尼崎工場
②大阪府立大学(公立)(共同研究先)
学 長
工学研究科長
工学部事務課長
航空宇宙システム講座
2-8
東研究室
5.実用化、事業化の見通し(政策目的達成時のイメージ)
ガラス製造の溶融プロセスは、①ガラス化反応・融解過程、②脱泡・均質化過程、そして③清澄
過程がある。本事業においては①と②の過程を対象として、それらの工程における省エネルギー、
結果としてのCO2排出抑制に資する技術を開発することを目標としている。
基本的にはより低温度、短時間で溶融する技術の開発が、省エネルギー化を達成することになる。
そのための要件として、少なくとも現形式(箱型)のタンク窯の操炉で最適化を考える限りは、以
下のことを考慮しなければならない。すなわち、①と②の過程は同一槽内で起こるが、一方それぞ
れの起こる領域は分かれており、互いの領域が重なってはならない。そして槽内でのガラスの滞留
時間は必要最小限で平均化されていることが望ましい。これらを満たした最適条件を見つけるため
には、正確な流れの解析に基づくことが唯一の方法である。
しかしながら、高温の故に極一部の炉底を除けばガラス中の温度分布すら測定されておらず、ま
して流れ測定においては測定方法すらない現状である。したがって、拠り所として計算機シミュレ
ーションによる研究が精力的に進められてきているが、まだ発展途上で確度的な不安もあり、一方、
溶融技術が経験工学的に発展してきた歴史的な経緯もあって、道具として計算機シミュレーション
手法が全幅の信頼をもって溶融技術者に受け容れられ、炉設計に活用されているという言うにはほ
ど遠い現状にある。
そのような背景の中で、本開発で得た成果を位置づけすると、➀実験と計算機シミュレーション
との併行した取り組みの中で互いの結果を摺り合わせて精度を向上させ、その結果、計算機シミュ
レーションの信頼度を向上させたこと、➁対流のパターンとガラス品質の関係を明らかにすること
により、流れを最適化できること(対流制御)、その結果100℃以上低い温度でもガラス溶融が充分
可能なこと、このことは現状の操炉条件がややもすると“安全の方向”、すなわち温度・時間共、高
温・長時間といったオーバー条件での操作である可能性を示唆しているかもしれない、➂表面張力
流を引き起こし積極的に流れをコントロールする技術の一つとして新たな要素技術の開発への可能
性を示すことができたことなどが挙げられる。
現在の生産用ガラス溶融炉がシンプルな箱型であるとはいえ、その構造においては非常に多様性
がある。対流を制御するための方法として、炉底やスロートの構造、バブリングや電気ブースティ
ングなど各々にはいろいろな技術が確立されている。そして、酸素燃焼、減圧脱泡技術、更には脱
泡剤を含む低温溶融組成の開発など新しい技術開発が進められている。このような個々の技術要素
を組み合わせてガラス融液の流れを制御し、低温度・短時間溶融技術を確立していくことが目標へ
の道筋となるが、流れの実態が正確に把握されていない現状では上記の技術要素を取込んだ炉設計
も、リスク回避のため経験的な積重ねによる手探りによっているといっても、抜本的な省エネルギ
ー型溶融技術を目指す観点からは過言ではない。操炉および設計の要となる計算機シミュレーショ
ンがまだ発展途上の段階にあるので、その精度の向上と信頼性の獲得に努めることが急務である。
そのためには更に、炉構造やその規模を変えて実験と計算による流れの解析結果を蓄積する過程が
必要である。その結果、多様な炉構造に適応した流れの解析シミュレーションが可能になり、更に
発想を異にする新規な構造・システムを有する炉の提案を含めて、硝種、溶解規模に対応した最適
な炉設計技術を確立することができる。
2-9
6.今後の展開(政策目的達成までのシナリオ)
6.今後の展開(政策目的達成まで のシナリオ)
今後のシナリオの大筋については前項で述べたとおりであるが、国がまとめた「産業技術戦略策
定基盤調査」のうち、
「ガラス産業技術戦略2025」の技術戦略ロードマップに「革新的溶融プロセス
設計のためのプロセスシミュレーターの開発」として掲げられているシナリオに、本プロジェクト
も沿ったものである。同時に、不断に検討し、改良されている各々の要素技術の成果を、その都度
生産に組み込み、活用して行く努力も怠ってはならない。
本開発の成果活用に関する今後の予想される展開を具体的に述べる。
今回の実験用に開発した炉はガラス500kgの内容量を持った連続溶融炉であるので、月産10トンか
ら20トン程度の生産には既に実用的な仕様になっている。そして、実験結果は対流を制御すること
によって実用ガラスと同程度の品質のものが、しかも低い溶融温度で得られている。ガラス組成や
投入される原料の形態によってはサイズなどの変更は必要かもしれないが、小型連続溶融炉の開発
という観点から本成果は充分活用できる。また、板ガラス、びんガラスといった類似組成をもった
大量生産されるガラス以外に、光学ガラス、電気用ガラスなどその他特殊用途の比較的少量でしか
も組成が多岐に亘っているガラスの溶融には、小型の炉が用いられているが、その効率化も重要な
課題である。委託先では同規模の溶融炉を設計して、電気用ガラスの生産に用いる予定である。
精度の高いシミュレーション結果を得るためには、プログラミング技術の善し悪しはもちろんの
こと、それぞれのガラス組成に対応した正確な物性値のセットが必要であるが、それらを迅速に測
定できる測定技術と機関などの社会的基盤が揃っていることが必要である。また、シミュレーショ
ン結果を高めるには、初期値や境界条件に用いる数値に実験値を当てることが有効であることが本
研究から分った。生産炉において計測データの取り方(種類、場所など)を検討することが次の段
階として必要である。その結果、シミュレーションの実行にそれらの結果を逐次与えながら、その
場で炉内流れを可視化して炉操作に適宜判断を下せるようになれば、計算機シミュレーション技術
の本来の姿となる。
炉内流れの計測が計算機シミュレーション技術を確立する上で重要であることは前に述べた。一
方、本研究で開発された流れの計測技術は実炉においても適用可能なものである。例えば、溶融プ
ロセスの最後部に当たるフィーダーにおける流れの状態を知ることは、成形工程を制御するために
重要である。今回の流れ計測技術では水平面内の方向と強さが測定できる。今後鉛直方向の計測技
術の開発が必要である。
現在の重油燃焼の大型タンク窯にも直接通電加熱を併用しているものもある。本研究ではガラス
融液自体が発熱体となるジュール発熱を用いることは、対流を制御する目的から非常に優れている
ことが分かった。また、そのことを融液内部で発熱させるという意味に解釈すると、液中燃焼方式
も再度検討の価値があるかもしれない。また、炉構造の検討に加えて、全酸素燃焼、減圧脱泡技術、
脱泡剤・ガラス組成の検討など個別の要素技術の検討が残されていると思われる。ただ、熱源に電
気を用いることの是非はわが国においてはコスト面から現状難しいが、今後新エネルギー開発が進
み、また環境問題からCO2排出がより厳しくなりCO2ガスの一括処理などエネルギー状況が変化する
ことなども想定して技術的な展開を図っていく必要がある。
2-10
7 .中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期
7.1 評価目的
「微小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術の研究開発」の目的、計画、運営、実施体
制などの評価項目に沿って、当初の目的に対して計画通りに研究開発が進んだか、そして、どのよ
うな成果が得られ、その成果の意義などについて、外部の専門家が客観的に評価する。
7.2 評価体制
日本山村硝子株式会社が評価委員会を設置し、そこにおいて「微小重力環境を利用したガラス融
液内対流制御技術の研究開発」の評価を行う。評価委員会の構成メンバーは、以下の通り。
「微小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術の研究開発」評価委員会
委員長
委員
委員
オブザーバー
牧原
(元
岩崎
多田
鈴木
柴田
石川
事務局
小見山 亨
森永 健次
河村 洋
近畿大学 理工学部 経営工学科
九州大学大学院 総合理工学研究科
東京理科大学 理工学部 機械工学科
正記 科学技術振興事業団 日本科学未来館 交流企画グループ グループ長
経済産業省 大阪工業技術研究所 光機能材料部 光材料物性研究室 室長)
晃
独立行政法人 産業技術総合研究所 電力エネルギー研究部門 宇宙技術
グループ
洋子 経済産業省 産業技術環境局 研究開発課(13年度)
恭一 旧 通商産業省 工業技術院 総務部 国際研究協力課(11、12年度)
雅敏 新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究開発業務部 研究助成課 主査
(13年度)
信二 新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究開発業務部 研究業務室 主査
(11、12年度)
日本山村硝子株式会社
7.3 評価対象
本研究の達成度、研究成果の客観性
7.4
教授
教授
教授
評価項目
A.プロジェクトの設計・運営に関するもの
1.目的・意義
2.国のプロジェクトであることの妥当性
3.研究開発体制
4.計画内容
B.プロジェクトの成果に関するもの
1.具体的な成果
2.学会発表リスト、論文提出リスト
2-11
3.特許等出願状況
4.広報、成果普及状況
C.総合評価
7.5 評価委員会
(11年度)
開催経過
平成12年1月21日
平成11年度第1回評価委員会開催
平成12年11月17日
平成13年3月16日
平成12年度第1回評価委員会開催
平成12年度第2回評価委員会開催
平成13年12月13日
平成14年3月28日
平成13年度第1回評価委員会開催
平成13年度第2回評価委員会開催
(12年度)
(13年度)
2-12
8 .研究開発成果
8.1 研究開発項目毎の成果
研究開発項 目毎の成果
8.1.1 微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性測定
8.1.1.1 開発目標及び実施状況
本項目「ガラス融液の高温物性測定」における最終目標は、ソーダ石灰系ガラスの高温領域(1000℃
∼1500℃)における表面張力を正確に測定可能な手法・装置の開発と測定を行なうことであり、目
標達成のため、「微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定」と「リプロン法によるガラス
融液の表面張力測定」とに分けて検討している。また、比較のために従来法による測定も行っている。
各項目の開発スケジュールを表に示す。
表
開発項目及び実施状況
研究開発項目
非 接 触 測定 法 によ る 表面 張 力 測
定
液滴振動法
平成 11 年度
平成 12 年度
平成 13 年度
実験装置の開発
浮揚機構の改良
白金炉の改良
及び実験・測定
及び実験・測定
及び実験・測定
リプロン法
光学系装置の準 常温流体の
備及び配置
従来法による表面張力測定
静滴法
ガラスの
表面張力測定
表面張力測定
実験装置の開発
及び測定
表面張力測定
リング引き上げ法
「微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定」では、ガラス融液の高温物性値を微小重
力環境を利用して精密に測定する手法・装置を開発し、測定を行なう。具体的には、平成 11 年度は、
非接触振動測定装置の試作及び落下実験を通しての技術確立を目標としている。平成 12 年度は、前
年度に製作した実験装置を改良し、溶融ガラスの浮遊技術を確立した上で、実験データの取得を目
標としている。平成 13 年度は、実験装置を 1400℃以上で測定可能な装置に改良し、実験条件及び
解析技術の向上を図り、データの精度を上げることを目標としている。
「リプロン法によるガラス融液の表面張力測定」では、熱物性計測技術法としてリプロン法を確
立し、ガラス融液の表面張力測定を試みる。そのため、平成 12 年度では、まず常温流体(水・シ
リコーンオイル)での表面張力測定を試み、リプロン法の原理について確認し、平成 13 年度から
は小型電気炉を備えた装置を試作し、レーザ光の高出力化、ロックインアンプによる S / N 比の向
上、データ処理法の改善などを行い、ガラス融液の表面張力測定を行っている。
2-13
8.1.1.2 実施内容及び結果
(1)微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定
平成 11 年度は、微小重力実験に耐え、試料を加熱・溶融できる電熱炉を備え、液滴を浮遊する機
構を有し、浮遊液滴の観測を可能とする実験装置の開発に着手した。問題となる浮遊機構としては、
ばねの復元力によるもの、及びガス流によるものを検討し、ガス流のノズルとしては、ガラス融液
と濡れにくい高純度のカーボンを使用した。実験では主に、実験装置の動作・性能確認や測定技術
の確認・改良などを行い、浮遊機構としてガス流を採用することにより、ガラス融液をノズルから
切り離すことに成功した。
平成 12 年度は、ガラス融液の安定浮遊を目指し、予備実験によりガス流ノズルの最適形状を模索
した。さらに、ガラス融液とカーボンとの付着を防ぐため、実験雰囲気を N2 ガスに置換できるよう
に装置を改良し、カーボンの酸化を低減することができた。実験では、ノズルとほんの一部接触し
た状態ではあったが、ガラス融液が振動する画像の取得に成功した。得られた画像から表面振動解
析を行った結果、ガス流による液滴の移動・回転成分等が含まれ、表面振動数のパワースペクトル
は複雑なものとなったが、表面振動数のピークを特定し、表面張力を算出することができた。
(結果
を図 3.1-1 にまとめる。)
平成 13 年度は、さらに高温域で測定を行うため、白金電熱炉の改良を行い、最高到達温度を 1500℃
まで伸ばすことができた。また、白金電熱炉でガス流を予熱することにより、ガラス融液表面の温
度低下を緩和した。さらに、ガス流浮遊装置のノズル形状に改良を加え、安定浮遊を確立した。実
験では、ガラス融液がノズルと接触せずに浮遊し、表面振動している画像の取得に成功し、解析を
行った結果、図に示すような表面張力の値が得られた。
(図において、静滴法は大阪府立大学、リン
グ引き上げ法は九州大学森永教授の測定による。)1300℃以上の高温域ではカーボンが消耗するため、
ノズル形状が維持できず、また、明るさでガラスも見づらくなったため、測定は困難を極め、画像
を取得するには至らなかった。
450
430
y = -0.0635x + 501.77
表面張力[mN/m]
410
390
y = -0.0208x + 399.17
370
350
y = -0.3062x + 796.19
330
310
液滴振動法
静滴法
リング引き上げ法
290
270
250
1400
1500
図
1600
1700
温度[K]
1800
1900
2000
液滴振動法と従来法による表面張力値の比較
(2)リプロン法によるガラス融液の表面張力測定
平成 12 年度は、まずリプロン法を用いることで液体の表面張力が原理的に測定可能であるかを
2-14
確認するため、前段階として常温流体(水・シリコーンオイル)での表面張力測定を行なった。実
験で必要となる光学系装置をリプロン法の原理に基づいて除震台上に配置し、レーザ光源としては
出力 5 mW の He-Ne レーザ (λ= 632.8 nm)を使用した。誤差は大きかったが、表面張力が原理
的に測定可能であることが確認できた。そこで平成 13 年度からは、出力 100 mW の半導体レーザ(λ
= 532 nm)に変更し、リアルタイム周波数解析装置である FFT アナライザとロックインアンプと Z
軸ステージを導入した。その結果、パワースペクトルの S / N 比が改善された。また FFT アナラ
イザの使用によりリアルタイムでパワースペクトルを得ることができ、わずかな光学系レンズの焦
点距離のズレを Z 軸ステージの使用により早急に修正できるため実験の高効率化が図れた。
平成 13 年度後半からは、高温ガラス融液の表面張力測定を試みた。ガラス融液は 1200∼1400℃
となるため、白金電熱炉を作製した。白金電熱炉の設置に伴い、光学機器の設置平面をポールと平
板を用いて上方に上げた。また炉内からの光の輻射を防ぐために、光電子増倍管の前に干渉フィル
タを設置した。高温測定における技術的問題点の洗い出しを行っているがガラス融液の表面張力を
測定できる状況には至っていない。
8.1.1.3 目標達成状況
(1)微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性測定
微小重力環境を利用してガラス融液の物性値(表面張力)を測定する装置を開発し、測定を行っ
ている。実験技術は大部分解決し,エラーバーの範囲で物性値の測定値を得ている。しかしながら、
高温域(1300℃以上)になると、ノズルとの付着などが起こり、溶融ガラスの完全な浮揚に至らな
い等の困難が現れ、測定は不能となっている。低温域についてのみデータが取得され、必要な温度
変化に対する表面張力勾配を得ており、地上で得られたデータと比較すると、値、その勾配ともに、
ほぼ妥当なものが得られている。
(2)リプロン法によるガラス融液の表面張力測定
液体表面にレーザを照射し、表面の状態の情報を含んだ反射光を捕捉できる光学系を組み立てて
いる。この装置により、常温流体(水、シリコーンオイル)については、良好な精度で表面張力を
得ることのできる技術を確立し、ガラス融液についてもこの方法により表面張力の測定が可能であ
ることが示唆されている。
非接触法による表面張力の測定を確立することは、高温融体を扱う学問分野からも待ち望まれて
いることであり、この本プロジェクトにおいてその可能性を見出したことは予想以上の成果である。
2-15
8.1.2 ガラス融液内の対流の計測と制御技術の検討
8.1.2.1 開発目標及び実施状況
溶融炉内のガラスの流れを把握することはガラス製造にとって最も重要である。しかし、現状で
は炉内の流れの実態を正確に把握することすら困難な状態にある。そこで、本項目の最終目標は、
正確な物性値を使用したシミュレーション技術を開発し、熱対流及びマランゴニ対流の影響を明確
にすることにより、新しい対流制御方法を確立することである。
まず、実炉を模した種々の温度条件の設定が可能な小型溶融炉を開発している。また、ガラス融
液温度計測、表面流計測及び内部流計測装置を開発している。一方、計算機シミュレーションコー
ドの開発・計算実験を行い、実験値との整合性について検討を行っている。
小型溶融炉の供給電力条件を変えて定常状態におけるガラス融液温度、ガラス融液表面流、ガラ
ス融液内部流などの計測を行っている。また、同条件での計算機シミュレーションを行い、炉内の
対流の把握及び制御を検討している。
また、シリコーンオイルや小型溶融炉の表面の一部を過熱して対流を計測する実験及び計算機シ
ミュレーションを行い、マランゴニ対流の効果について検討している。
表
開発項目実施状況
平成 11
年度
研究開発項目
1)小型溶融炉及び温度計測技術の開発
平成 12
年度
平成 13
年度
調査
炉設計, 温度制御技術開発
2)ガラス融液表面流計測技術の開発
装置試作, 測定技術開発
3)ガラス融液内部の流れ計測技術の開発
調査, 予備実験, 測定技術開発
4)計算機シミュレーション
二次元コードの開発
三次元コードの開発
原料投入要素の組み込み
対流把握
コード作成, 計算実験
コード作成, 計算実験
コード作成, 計算実験
5)マランゴニ対流の評価
シリコーンオイルのモデル実験
小型溶融炉での実験
計算機シミュレーション
モデル実験
モデル実験(レーザ)
小型溶融炉実験
計算機シミュレーションn
2-16
温度 / ℃
8.1.2.2 実施内容及び結果
(1)計測技術の開発
1)小型溶融炉及び温度計測装置
実験用の小型溶融炉はガラスびん生産炉を模して、炉材に電鋳煉瓦を用いたタンク炉にした。ガ
ラス溶融炉の大きさは、ガラス槽の内径が幅 500 mm・長さ 1000 mm・深さ 350 mm とした。上部加熱
は、3 ゾーンを独立制御できる間接加熱方式にした。下部加熱は、ガラス自体を抵抗発熱体として
ジュール熱を発生させる直接通電方式とした。局所的な電力集中を避けるため、3 対の平板電極を
用い、それぞれ独立に制御できるようにした。電極材料はモリブデンを選択した。溶融炉の上部か
ら測温用熱電対の挿入、ガラス融液表面流計測装置挿入、ガラス融液内部流計測装置挿入、ホット
スポット作製用電極挿入などを考慮した天井構造にした。
小型溶融炉内の温度計測は、1 本でガラス融液の上・中・下の 3 点を測定することが出来る Pt
で保護した 3 対式熱電対を 10 本、溶融炉上部からガラス融液中に直接挿入することにより 30 点を
同時に計測できるようにした。天井より上部ヒーター
の隙間を通し、直接通電加熱を行っているガラス融液
1450
上
内に挿入するため、挿入方法、保持方法、絶縁、ノイ
中
下
1400
ズ除去などに工夫を凝らした。また、ガラス温度以外
に、供給電力・炉内の空中の温度・スパウトのガラス
1350
融液温度・ノズルヒーター温度などを連続的に記録し
た。
1300
温度分布測定結果の一例を図に示す。
1250
-0.5
0
0.5
位置x / m
図 ガラス融液
内温度分布の一例
2-17
2)ガラス融液表面流計測技術
表面流観察のために市販のカメラを検討したが、満足できるものがなかった。また、当初、側壁
より斜めから観察を試みたが正確な表面流を捉えることができなかった。そこで、炉の上部より CCD
ヘッドを挿入し得る、ガラス融液表面流観察装置の開発をしている。
炉の上部から高温の炉内部へ CCD ヘッドを差し込むためには、厳重な断熱が必要であると共に、炉
内の雰囲気への影響を最小限にするため小型化が必要である。CCD ヘッド機能を維持するためには
約 40℃以下の温度に保持する必要があり、高温雰囲気(最高約 1500℃)からの断熱としてケーシン
グの水冷と CCD ヘッドの空冷を併用し、熱線(可視光は透過)からの断熱として反射タイプの ND
フィルタと赤外吸収フィルタを併用している。赤外吸収フィルタ単独では、熱線のため瞬時に破壊
する。ND フィルタは、耐熱性を考慮し、石英ガラス板にスパッタ法で Pt 薄膜を成膜している。ま
た、ガラス溶融炉内からの蒸発物付着を防止するため、フィルタ最表面を空気でパージしている。
measurement
computer simulation
-1
5
velocity, v / m h
ガラス融液の表面流を計測するため、ガラス融液
表面に浮かびガラス融液表面と同じ動きをするトレ
ーサーとして、珪石煉瓦を用いた。
ガラス融液表面に浮かべたトレーサーの動きをビ
デオに記録し、解析することによりガラス融液表面
流の計測を行った。
表面流計測結果の一例を、図に示す。縦軸の±は
方向を表しており、+はスロート側への流れ、−は、
投入口側への流れを示している。この結果のように、
ガラス溶融炉中央で反対方向に向かう流れを観察す
ることができた。
0
-5
-0.5
0
0.5
position, x / m
図 ガラス融液表面流及び
3) ガラス融液内部対流計測技術
計算機シミュレーションでの計
実際の溶融炉での流れに関する実験は、高温と輻
算値の一例
射の過酷な環境下のために、素地表面に限られてき
た。唯一、20 年前に Barklage 氏らが振り子式沈降
法で融液内部の流速測定にトライした報告例 1)があ
り、計画には無かったものの調査委員会のご指導を
得て取り組むことになった。
本研究では、振り子棒を用いてより簡単に精度良く
流れを測定するため、ひずみゲージを用いた流れ計測
装置を開発した。本装置はアルミナ球の付いたアルミ
ナパイプ,すなわち振り子棒を用いてガラス融液内の
流れによって球が受ける力を上部に伝え、上部でセン
サーを設けることにより、流れから受ける小さな力を
感知する仕組みになっている。このセンサーとしてひずみゲージを使用している。
この装置では、振り子棒を下げていくことにより、融液表面から順次内部の平面における流速と
流れの方向および温度を計測することができ、かつ、炉の天井に挿入孔を設けることにより任意の
位置で測定することができる。
2-18
ⅰ) 開発のポイント
本研究ではガラス中の流速を精度良く求めるために、特に以下の 4 点に工夫している。
① 10-5N オーダーの流れの力の検知方法
装置の上部ではアルミナパイプの上にアルミナの弾性率の 1/100 以下のアクリルパイプを直結し、
その上にひずみゲージを貼り付け、ホイートストンブリッジ回路上で、XY 方向の流れの振り子棒に
及ぼす曲げひずみのみを大きく測定することができるようにしてある。
② 振り子棒のたわみに作用する浮力と重力の分力の寄与に対する考慮
ガラス融液内の流速は鉛直な振り子棒(はり)に作用する曲げモーメントとアクリルパイプに作
用する曲げひずみから算出される曲げモーメントの釣り合いから算出することができる。しかし、
実際には流れの力により振り子棒はたわみ、そのたわみに作用する浮力と重力が X’方向に分力を
生じる。
図に振り子棒のたわみに作用する流れの力と浮力と重力の関係を示す。先に算出した流速はたわ
みに作用する浮力と重力の寄与を含んでいるので、仮の流速であるといえる。この仮の流速から振
り子棒のたわみを算出し、そのたわみに作用する浮力と重力の X’方向への分力の寄与を差し引く
ことにより、真の流速を求めている。
Rx
RZ
M
L
Z’
Fx’
Fb
sm
X’
Ff
θ
Fg
図 振り子棒のたわみに作用する流れの
力と浮力と重力の関係
③ 測定誤差諸要因の解析
振り子棒による測定に対する測定精度を確保するため、測定誤差諸要因について解析した。特に、
振り子棒の昇降に伴う傾きの変動については装置の設計・作製段階でできるだけなくすようにして
装置の鉛直性を確保した。ひずみゲージの傾斜,材料物性データのずれ等、諸々の誤差については、
振り子棒の XY 方向に荷重を作用させて検量実験を実施し、キャリブレーションを行うことにより装
置の精度を確保している。
2-19
④ 振り子棒周囲の流れ場の測定に及ぼす影響の考慮
左図に球を通り過ぎる一様な流れの棒に及ぼす影響,右図に球の有限流体内で受ける抗力と無限
流体内で受ける抗力の比の深さ依存性を示す。
左図に見られるように、球からの距離が近いほど流速が小さくなる関係を棒に作用する流れの流
速を算出する際に適用した。
右図では有限流体内では、球が素地面より上では流体の抵抗を受けないために、無限流体内より
も抗力が小さくなることを示している。この有限流体内で受ける抗力は球の深さが浅いほど小さく
なる。この効果を球の抗力を算出する上で適用した。
0
-2
-4
r/a
r/a
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
-8
-9
-10
-6
-8
Ratio of fluid resistance, 1- El*/El
-10
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
vθ
図
球を通り過ぎる一様な流れの
棒に及ぼす影響
図
球の無限流体内と有限流体内での
抗力の比の深さ依存性
2-20
ⅱ) ガラス融液内部対流計測装置
図にガラス融液内の流速を測定するための流れ計測装置を示す。装置の鉛直出し,昇降に伴う鉛
直性の保持、ひずみゲージのリード線等が風の影響を受けないようにすることは測定精度を確保す
るために非常に重要である。
なお、ガラス融液での実験に先立ち、シリコンオイルをガラス擬似液体として用いて、予備
実験を行い、装置の確立、理論の妥当性を検証した 2)。
図 流れ計測装置の写真
(左) 炉と装置の関係,(中央) 正面から見た装置,(右) ひずみゲージ貼付け部
ⅲ) ガラス融液内対流計測測定
この装置を用いて、ガラス融液内部の対流を測定した例を図に示す。横軸の上の軸は炉のセンタ
ーライン上の位置,下の軸は流速,縦軸は深さであり、各測定点はこの深さにおける流速を示して
いる。
まず、どちらのケースでも、ガラス素地面での流速測定結果と対流計測装置による流速測定結果
は良く一致している。また、ガラス融液内部の流速分布の測定結果と、コンピューターシミュレー
ションによる流速分布の計算結果は、素地面付近を除くと定性的に一致し、定量的にも比較的良く
一致している。同様の結果が他のケースにおいても得られている。
以上のように、3 方法の流速測定・計算値は相互に良い関連性をもった傾向を示し、これらの結
果を組み合わせることによって流れを考察することができることが判明した 3)。
2-21
position,x / m
-0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
Surface
measurement
0
depth,z / m
0
Throat
-0.1
-0.2
-0.3
Computer
Simulation
-6 -4 -2 0 2 4 6
Velocity,vx
/ (m / h)
図
-6 -4 -2 0 2 4 6
Velocity,vx
/ (m / h)
ガラス融液内部の X 方向の流速
1)Barklage-Hilgefort H., Merger K.W. and Voss H.-J : Glastech. Ber. 53 (2) (1980), 27-36.
2)Umihiko Mori, Hidekazu Hashima, Akio Konishi, Hajimu Wakabayashi, Toshihiko Hiejima,
Hideaki Yamamoto, Hisao Azuma and Masaki Makihara., In: Extended Abstracts of 19th
International Commission on glass, Edinburgh, Scotland, 2001, 459-460.
3)森 海彦,橋間 英明,小西 明男,若林 肇,比江島 俊彦,山本 英明,東 久雄,岩崎晃,牧原 正
紀:日本セラミックス協会 2002 年年会予稿集,2002,66.
4) 計算機シミュレーション
高温度である溶融炉内のガラス流れを把握することは困難であるが、実測値と計算結果が近けれ
ば、計算が定性的には炉内の流れを捕らえている可能性は高いと考えている。そこで、ガラス溶融炉
内部の流れと熱の分布を実験計測結果と併せ、炉内対流の把握と制御の基礎となることを目指して、
ガラスの高温物性値を用いた 3 次元のコンピュータ・シミュレーションコードの開発を行なってい
る。まず、高温ガラス流れのシミュレーションに必要な計算モデルとして、基礎方程式、輻射効果、
ヒーターによる熱源、表面張力などの高温物性値を検討している。物性値は温度依存性を考慮して
いる。また従来の研究では無視されてきた表面での境界条件として表面張力も加味している。これら
を踏まえて自由表面での表面張力によるマランゴニ流やヒーター熱源による浮力対流によって駆動
された 3 次元の流れ場( u, v, w )と温度場( T )を解析するプログラムを作成し、前小節にある小
型溶融炉を用いたガラス実験の測定値と比較することによって順次改良を重ねてきている。
11 年度は 2 次元のシミュレーションコードの開発を行ない、主に上部ヒーターの加熱による表面
張力流を調べている。12 年度は小型溶融炉実験を模擬できるように、上部だけでなく下部のヒータ
ーや側壁・下壁などの境界の熱伝導も考慮に入れたプログラムを作成している。13 年度は小型溶融
炉の改造に伴い、実験に対応した計算ができるようにコードを改良している。さらに、ガラス流れの
駆動力としての熱源や温度分布に基づく対流に加えて、原料投入・ガラス引っ張りによる流れを相
変化のないものとして考慮し、二つの流れが重畳した条件下でのシミュレーションコードの開発も
2-22
行なっている。
これらの数値計算から得られた結果をまとめると以下のようになっている。
● コンピュータ・シミュレーションで得た内部温度・流速分布、表面温度分布は小型溶融炉内部
●
の実測値と近い値を示している。このことから炉内の流れを把握できていると判断できる。
炉内の流れの制御については、測定値との比較した結果を踏まえつつ、さまざまな下部ヒータ
ーの条件や壁からの熱流失を利用して、炉内の高温ガラス対流を制御できる可能性を示してい
●
る。
投入したガラスの仮想粒子の軌跡から生産ガラスの質の評価を与えている。
(2)対流制御技術の検討
1)小型溶融炉内の対流の把握及び制御
まず、原料投入及び流出を行なわない条件での流れの把握及び制御の検討を行った。
上部ヒーターへの供給電力を一定にし、下部ヒーター3 対のうち中央と両端の供給電力の比を
徐々に変え、流れの比較を行なった。図に計算機シミュレーションで計算したガラス融液内の流れ
及び温度分布の例を示す。定常状態となったとき温度勾配はあまり差がないにもかかわらず、対流
が大きく異なることが分かった。中央に電力を集中すると中央部に強い上昇流が発生するが、両側
に電力を集中した場合も中央部に上昇流が発生する。中央に電力を集中させた方が上昇流の幅が小
さく、両側に集中させた方が上昇流の幅が広いことがわかった。また、中央部に電力を集中させた
方が、表面流、内部流ともに速度が速いことがわかった。したがって、本実験で使用した小型溶融
炉では、中央に電力を集中した方が攪拌効果の大きいことがわかった。
当初、電力供給に大きな差をつければ、強い温度分布がつくと予想していたが、予想に反して、
温度分布は弱く、炉内の温度分布の差だけでは対流は予想できないことがわかった。操炉上では、
強い上昇流が望ましいとされているので、上記のように電力供給分布を変えることによって望まし
い条件が設定できることがわかった。
(a)下部ヒーター中央の供給電力多い場合
(b)下部ヒーター両端の供給電力多い場合
図 ガラス融液内対流及び温度分布
2-23
2)マランゴニ対流の評価
①シリコーンオイルを用いて炭酸ガスレーザでホットスポット作製実験
槽中のシリコーンオイルにビーム径 5 mm の炭酸ガスレーザ(波長 10.6 μm)を照射して流れの
変化を調べる実験を行った。レーザー波長 10.6 μm において、使用したシリコーンオイルの厚さ
0.3 mm での透過率は 0.1%であるので炭酸ガスレーザはほとんど表層の 0.3 mm で熱に変換されてい
ると考えられる。したがって、この方法はマランゴニ対流の効果を検証するには適した方法である。
幅 100 mm、深さ 35 mm の容器にシリコーンオイルを入れ、中央に炭酸ガスレーザを照射してトレー
サの動きを観察した。その結果、マランゴニ対流の寄与が大きいと思われる対流を観察することが
でき、その流線及び表面流速度を求めることができている。
図 3.2-9 トレーサの軌跡(30 分露光写真)
シリコーンオイルサイズ:100 mm×35 mm
照射条件:炭酸ガスレーザ強度 1 W、ビーム径約φ5 mm、照射時間 30 分
シリコーンオイル:粘度 29.3 Pa・s(びんガラス 1312℃相当の粘度)
②小型溶融炉で、直接通電によるホットスポット作製実験
小型溶融炉において、天井より 40 mm 角の電極プレート 2 枚、40 mm の間隔を空けてガラス融液
表面に 8 mm 挿入し、電力を供給することにより、ガラス融液の表層付近のみを加熱した。図 3.2-10
に示すような表面流の差を観察し、マランゴニ対流の寄与を示唆していると考えられる。
ホットスポットなし
ホットスポットあり
ホット
スポット
0
0.1
0.2
0.3
位置X / m
図
ホットスポット作製による表面流の変化
(2 分ごとの位置)
2-24
③計算機シミュレーションによる解析
表面張力差による対流(マランゴニ対流)の効果を検証するため、計算機シミュレーションによ
り解析をおこなった。前章で行った小型溶融炉内での計算機シミュレーションの結果と比較するた
め、Ma( マランゴニ数)を 0 とした場合と 10 倍とした場合で計算した。左図に、上部加熱 6.0-6.0-6.0
kW、下部加熱 3.0-13.0-3.0 kW の条件での測定値より Ma を変えて計算機シミュレーションによって
定常状態まで計算した表面流速の分布を、右図にその時の温度分布を示す。結果より、この小型溶
融炉では定常状態になった場合、マランゴニ対流はほとんど寄与しないと考えられる。加熱開始時
の非定常な場合や、表層を局部加熱などの表層で温度差がある場合は寄与すると考えられるが、生
産炉の場合のような溶融炉全体を考えると、定常状態に近いためマランゴニ対流の寄与は小さいと
考えられる。マランゴニ対流を積極的に利用するためには,局部加熱装置などの配置が効果的かも
しれない
Ma
Y=0.0
Y=0.0
Ma
0.003
Ma=0.0
1450
1400
0.001
o
T (C )
u (m/s)
Ma=0.0
Ma x 10
Experiment
Ma x 10
Experiment
0.002
0
-0.001
1300
-0.002
-0.003
-0.5
1350
-0.25
0
0.25
1250
-0.5
0.5
x (m)
図
計算機シミュレーションで求めた
Ma を変えた場合の表面流速
-0.25
0
0.25
0.5
x (m)
図
計算機シミュレーションで求めた
Ma を変えた場合の表面温度
8.1.2.3 目標達成状況
ガラス溶融におけるエネルギーの効率化を図るためには、まず、炉内ガラスの流れの実態を把握
し、流れを制御することが重要である。これは世界的に見ても実験報告事例がほとんどない研究で
あるので、実態を反映する実験炉の開発、流れの計測装置及び技術の開発、そして実験的には求め
られない炉内全体にわたる対流について計算機シミュレーションにより流れを計算するためのコー
ドの開発というセットになった開発とそれらの結果に基づく考察が求められている。
本研究結果は、①各種測定を可能とするため、タンク炉タイプの小型溶融炉が作製されている。
すなわち、測定装置挿入孔を必要に応じて作製できるような構造を持ち、条件を変えた計測を可能
としている。②ガラス融液表面流を計測するため、薄膜作製技術を生かしたガラス融液表面流観察
装置を開発し、トレーサの動きから表面流を計測できる技術を開発している。③当初、実験的困難
性のため計画されていなかったガラス融液内部流計測について、途中から鋭意取り組み、予備実験
を重ねた結果、測定原理、装置、高温下における測定技術の開発などを進め、ガラス融液内部の流
れも計測している。④さらに、表面張力項も取り入れた三次元計算機シミュレーションのコードが
開発され、実験と計算の結果をフィードバックさせることによって改良が行われ、その結果、両者
はほぼ一致し、実験と計算機シミュレーションの両面から流れを把握することに成功している。
炉内ガラス流れの研究に関して、以前はグリセリン等を用いたモデル実験、近年は計算機シミュ
レーションによる解析が報告されているが、本研究のように小型の実験炉を用いて直接流れを計測
2-25
し、また、計算機シミュレーション結果とセットにして炉内流れを解析して、信頼性のある結果を
導いている報告は他にない。
ガラス溶融条件の最適化の検討においては、電力供給分布を変え、実験での測定データと計算機
シミュレーションの両面から対流条件と攪拌効果の違いを明らかにしている。また、その結果から
特筆すべきは、炉内温度分布計測からだけでは、必ずしも対流の強さを推定することは正しくない
ことを明らかにしている。さらに、計算機シミュレーションの仮想実験により、種々の対流制御の
可能性も示されている。
シリコーンオイル及びガラス融液で表面を局部加熱するにより、実験的に表面流を観察すること
に成功している。これはマランゴニ対流に起因する効果も一因と考えられ、局部加熱による表面流
速の増加が実験的に観察されたことにより流れを制御する上で、その技法を応用できる可能性を見
出している。
以上のように、実験と計算から結果を相互に活用して炉内の支配的な流れを把握し、対流を制御
する目標は、予想以上に達成されたと思われる。
2-26
8.1.3 脱泡・均質化促進への新対流制御技術の適用性評価
8.1.3.1 開発目標及び実施状況
本項目「脱泡・均質化促進への新対流制御技術の適用性評価」における最終目標は、小型溶融炉
において、新しいガラス融液内対流制御方法の適用性を評価し、ガラス製造プロセスの省エネルギ
ー効果を試算することである。開発項目実施状況は表 3.3-1 の通りである。目標達成のため、
「小型
溶融炉における流れの解析」と「流れの制御とガラス品質」とに分けて検討している。
「小型溶融炉における流れの解析」においては、生産工程を模し、ガラス原料を小型溶融炉
の投入口側から炉内に投入し、小型溶融炉の流出口側よりガラス融液を流出させ、下部電力パ
ターンを変えて、ガラス融液内部流れ・ガラス融液表面流れを計測している。更にガラス原料
投入・ガラス融液流出を加味した計算機シミュレーションコードに、電力値と境界値として炉
内壁に近いガラス融液温度測定値等を代入した計算機シミュレーション結果と流れ計測値を対
比し、シミュレーションコードを用いた小型溶融炉における流れ解析の精確性を検討している。
「流れの制御とガラス品質」においては、上記「小型溶融炉における流れの解析」実験と平
行して、流出するガラス品質を、シード(泡)の計数とシェルブスキー法によるガラスの均質
性で評価している。下部電力パターン・ガラス品質・トータル電力量の相関から、ガラス融液
流れの制御を行うことによる、省エネルギー効果の試算を行っている。また本実験で、ガラス
融液流れの制御を行うことにより、比較的低温で品質の良いガラス製造が可能ということを明
らかにし、溶融温度の低下に伴う省エネルギー効果の試算も行っている。
表
開発項目及び実施状況
研究開発項目
平成 11 年度
3.脱泡・均質化促進への新対流制
御技術の適用性評価
・評価方法、評価装置、サンプル取
得条件等の検討
(1)小型溶融炉における流れの解析
(2)流れの制御とガラス品質
2-27
平成 12 年度
平成 13 年度
8.1.3.2 開発内容および結果
(1)小型実験炉における流れの解析
ガラスの流れの脱泡・均質化促進への適用性を評価するために、ガラス原料を投入口から溶融炉
内に投入し、流出口よりガラス融液を流出させ、溶融電力パターンを変えてガラス融液内流れ測定,
ガラス融液表面流れ測定,ガラス融液温度測定を実施した。また、ガラス原料投入融液流出を加味
した計算機シミュレーションコードを開発し、当該計算機シミュレーション結果を援用し、流れの
解析を行った。
ガラスの引上げ量は 20 kg/ hr で、上部ヒーター供給電力は全て 10kW(合計 30kW)とした。下部
電力パターンは、投入口からスロートに向かって電力が減少するパターン 1,中央に最大の電力を
投入したパターン 2,投入口からスロートに向かって電力が増加するパターン 3 である。投入した
原料はカレットと生原料の比が 8:1 である。
ガラス融液内流れ測定は、投入口側がガラス原料で覆われているため、スロート側でのみ測
定を実施した。
測定結果の一例として図にパターン 2 の x 方向流速測定結果および比較として投入流出が無い条件
下での流速測定結果を示す。下部電力パターンはいずれも中央に最大の電力を投入したものである。
投入流出無し(6kW-10.4kW-6kW )
パターン2
パターン - P1 (12kW-14kW-7kW )
position,x / m
-0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1
0
Throat
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
depth,z / m
0
-0.1
-0.2
-0.3
-6 -4 -2 0 2 4 6
Velocity ,vx
/ (m / h)
図
-6-4 -2 0 2 4 6
1100 1200 1300 1400 1500
Velocity ,vx
/ (m / h)
Temperature,T / ℃
ガラス原料投入・ガラス流出時と投入流出無しの場合の x 方向流速の比較
ガラス融液の流れは原料投入,ガラス流出がない条件と比較して著しく小さくなった。この
原因としては原料投入によって原料投入・ガラス流出がない場合と比べてホットスポットがス
ロート側に寄り、その結果、スロート側での測定がホットスポット付近での測定になったため
と考えられる。
図に計算機シミュレーションのバッチカバレッジ変化による対流・温度変化を示す。計算機シミ
ュレーションからは、バッチカバレッジの領域が増加した場合、上昇流は、スロート側へ押しやら
れると共に、バッチによるガラス融液の冷却、上部輻射加熱のバッチによる遮断のため、ガラス融
液の温度低下が見られる。
炉内観察から厚いバッチ山は炉中心線投入口側 25%以内に収まっており、流れ測定,温度測定結
果もあわせ、(a)バッチカバレッジ投入口側 20cm□が最も適正なシミュレーション結果を与えた。
2-28
以上のように、ガラス原料投入ガラス流出の場合においても計算機シミュレーションは流れ
計測結果と良く一致した。
P-1(パターン 2,12.0kW-14.0kW-7.0kW)
(a)バッチカバレッジ:投入口側 20cm□
(b)バッチカバレッジ:50%
(c)バッチカバレッジ:75%
図
バッチカバレッジ変化による対流・温度変化
(2)流れの制御とガラス品質
ガラス溶融炉の投入口側からガラス溶融炉内に投入されたガラス原料は、ガラス融液表面におい
て高温に加熱され、熱分解・化学反応を起こし、泡を含んだ粘いガラス融液と化し、ガラス溶融炉
内で流れを形成しつつ、脱泡・混合・均質化過程を経てガラス溶融炉の流出口側より流出する。流
出するガラス中の泡量(シードカウント)、ガラスの均質性などのガラス品質は、エネルギー使用量
の多寡、ガラス引上げ量(本実験では 1 時間あたりのガラス流出量)の高低によっても左右される。
本プロジェクトでは、ガラス融液流れの適・不適による、流出ガラス中の泡量・ガラスの均質性の
変化に着目した。ガラス融液流れの適切化を図れば、同一エネルギー使用量、同一引上げ量でのガ
ラス品質の向上を達成できる。一方、同一ガラス品質、同一引上げ量でのエネルギー使用量を減ら
すことができ、省エネルギーにつながる。
本プロジェクトでは小型溶融炉を用い、ガラス原料としてびんガラスの製造に使われている珪
2-29
砂・ソーダ灰・石灰・清澄剤からなる生原料とカレットの 1:8 混合物を用い、ガラス引上げ量を約
20kg/h、上部 3 発熱体の電力パターンを 10kW-10kW-10kW と一定に保つ条件下、下部 3 電極の電力パ
ターンを下記 3 パターンに変化させてガラス溶融実験を行った。即ち、1.投入口からスロートに向
かって電力が減少するパターン、2.中央の電力が高いパターン、3.投入口からスロートに向かっ
て電力が増加するパターンの 3 パターンである。またトータル電力量との相関を見るため、一部パ
ターンでトータル電力量を変化させた実験も行った。各実験において、流出ガラスはリボンに成形
され、単位ガラス重量(g)当りの泡数(0.1mmφ∼0.5mmφ、シードカウント)を測定すると共に、
ガラスのシェルブスキー法による均質性、トータル電力量を記録した。本実験のシェルブスキー法
による均質性は、粉砕したガラス粉末を浮遊させた浸液に光を照射し、光の波長を走査することに
よって得られる透過スペクトルのピーク透過率値で表した。ピーク透過率値が高い程均質性が良い。
得られた結果を表にまとめた。
なお、本実験でのガラス引上げ量約 20kg/h におけるレジデンスタイムは、約 0.85 日と、フリン
トガラスびん製造における 1.1∼1.6 日より比較的短めであり、カレット比 89%は、通常のフリン
トガラスびんでの値 50∼60%より多めであった。
表
実験条件
パターン1
実験 No
パターン2
パターン3
P-4
P-5
P-2
P-1
P-3
投入口側
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
中央
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
スロート側
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
(小計)
30.0
30.0
30.0
30.0
30.0
投入口側
14.3
15.8
10.0
12.0
8.5
中央
9.3
10.0
11.7
14.0
9.5
スロート側
2.7
4.5
5.7
7.0
10.0
(小計)
26.3
30.3
27.4
33.0
28.0
56.3
60.3
57.4
63.0
58.0
中央上 a)
1330
1395
1360
1385
1330
ガラス融液
スロート側
1272
1343
1310
1365
1320
温度℃
電極中心上
1268
1340
1320
1375
1340
個/g
7.6
0.41
6.9
0.97
0.48
透過率%
72
76
66
64
73
19.7
20.3
20.3
22.4
20.0
上部電力
/kW
下部電力
/kW
(合計)
b)
スロート側
電極中心下
c)
シードカウント
均質度
引上げ量
Kg/h
a):炉中心、中央電極中心、生地面下 25mm のガラス融液の温度。
b):炉中心、スロート側電極中心、生地面下 25mm のガラス融液の温度。
c):炉中心、スロート側電極中心、炉底上 25mm のガラス融液の温度。
2-30
上記データから、単位引上げ量当りの溶解電力量を一定とした場合の、パターン間のガラス品質
(シードカウント、均質性)の変化、及びガラス品質(シードカウント)を一定にした場合の、パ
ターン間単位引上げ量当りの溶解電力量の変化を計算した。
表
パターン間のガラス品質(シードカウント、均質性)の変化
単 位 引 上 げ 当 り の KW/(kg/h)
パターン1
パターン2
パターン3
1.400
1.400
1.400
下部電力量
シードカウント
個/g
2.5
3.0
0.48
均質度
%
73.6
65.2
73.0
表
パターン間単位引上げ量当りの溶解電力量
パターン1
パターン2
パターン3
単 位 引 上 げ 当 り の KW/(kg/h)
下部電力量
1.485
1.517
1.400
省エネルギー
%
▲2.1
ベース
▲7.7
シードカウント
個/g
0.48
0.48
0.48
上記2表から、ガラス品質向上、省エネルギーのためには中央からスロート側にかけて下部電力
量を増加させるパターン(パターン 3)が有効であった。また、下部電力パターンを変える事によ
り約7%の下部電力省エネルギーを図り得る事が試算された。上部電力を考慮に入れると約 3%の
溶解電力省エネルギーである。 図に、溶融電力量が比較的近い、実験 No. P-3(パターン 3), P-2
(パターン 2), P-4(パターン 1)の計算機シミュレーションから得られた炉中央断面でのガラス
融液流れ及び温度分布を示す。バッチカバレッジは投入口側 20cm□と仮定している。左上部からガ
ラス原料が供給され、右下部のスロートから熔融ガラスが流出する。□は、下部 Mo 電極を示す。
2-31
P-3(パターン 3、8.5kW-9.5kW-10.0kW)
P-2(パターン 2、10.0kW-11.7kW-5.7kW)
P-4(パターン1、14.3kW-9.3kW-2.7kW)
図
下部電力パターンによる上昇流位置制御
パターン 1、2、3 とスロート側電極の電力量を増やすにつれ、上昇流の位置が、炉中心(投入口
からスロートへ 50%位置)から、65%、75%とスロート側へ移動する事が、図から見て取れる。ま
た、表の、b):炉中心、スロート側電極中心、生地面下 25mm のガラス融液の温度は、実験 No. P-3
(パターン 3、1320℃), P-2(パターン 2、1310℃), P-4(パターン 1、1272℃)と下降している
事が見て取れる。ガラス溶融炉において、スロート側 1/3 の領域は、リファイニングゾーンと考え
られており、この領域での温度が高い方が、有効な清澄を実現できる。即ち、ガラス融液の上昇流
位置を下部電力パターンで制御し、バッチのスロート側への流れを阻止しつつ、スロート側での高
温リファイニングゾーンを確保する事が、良質のガラスを得るために重要である。実験 No. P-4(パ
2-32
ターン 1、1272℃)において、最もシードカウントが大きいのは、スロート側 1/3 領域における、
温度不足、清澄不足によると考えられる。以上、下部電力パターンを変える事による、ガラス融液
対流、ガラス融液温度変化を通じた、ガラス品質制御の可能性が明瞭になった。
図は、実験 No. P-1(パターン 2)の計算機シミュレーションで得られた炉中央断面でのガラス
融液流れと温度分布(下図)、及び(a), (b), (c)断面におけるガラス融液流れと温度分布である。
バッチカバレッジは投入口側 20cm□と仮定している。C.L.は、炉中心線である。
中央部(b)では、
炉側面
Fig.に実験 NoP-3(パターン3),
P-2(パターン2),
C.L. 下部電極による加熱のため、
C.L.
に沿った上昇流が見られる。即ち、炉側面において、
P-4(パターン1)のコンピューターシミュレーショ
C.L.
下部電極毎に、下降流−上昇流−下降流と、複雑な
ンで得られた炉中央断面でのガラス融液流れ及び温
流れが生じ、攪拌効果を高め得ることが分かる。
度分布である。バッチカバレッジは 25%と仮定してい
る。左上部からガラス原料
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
P-1(パターン 2、12.0kW-14.0kW-7.0kW)
図
炉断面におけるガラス融液対流
投入口側(a)では、左上部投入口から炉内に入った冷たいガラス原料による冷却効果及び上部熱
線の遮断効果のため、炉中央線に沿ったガラス融液下降流が見られる。一方、投入口側電極の炉内
壁近傍ではほとんど流れが見られない。投入口側電極の炉内壁近傍における上昇流が見られないの
は、冷たいガラス原料による冷却効果に伴う下降力と、下部電極加熱による上昇力がほぼ釣り合っ
ていたためと考えられる。この事は下部電極加熱の増減により、バランスを破り、上昇流若しくは
下降流に変え得る事を示している。
小型溶融炉中心部(b)では、中央電極の炉内壁近傍に下部電力加熱による強い上昇流が見られる。
一方、スロート近くの下部電極を外れた位置(c)では、炉内壁近傍も含めて全体として下降流が見ら
れる。即ち、下部電極の炉内壁近傍で、下降流−上昇流−下降流という複雑なガラス融液対流パタ
ーンの存在が示唆される。かかる複雑な流れの制御も、電力供給パターンの変化により、可能と考
えられる。
以上のように、下部電力パターンを変化させる事により、上昇流の位置制御、炉内壁近傍におけ
る上昇流−下降流の繰返し制御等、炉内対流の制御が可能であり、その事を通して、ガラスの品質
の向上を図りうる事が明らかになった。
2-33
省エネルギー効果の試算
本実験において、下部電力パターンを、スロート上がりに変えることにより、同一引上げ量、
同一ガラス品質の下、約3%の溶融電力省エネルギーが可能である。
また、本実験において、溶解電力量が近い P-2, P-3, P-4 の実験中、最も良いガラス品質を示し
た実験 No.P-3(パターン 3)における、炉中心、スロート側電極中心でのガラス融液の上下平均温
度は表から 1330℃と計算できる。一方、フリントガラスびんタンク溶融炉におけるほぼ近い場所で
のガラス融液の平均温度は 100℃近く高い。溶解槽内部のガラス融液平均温度を下げた場合、作業
室以降のガラス融液温度はそのままとすると、スロート以前の溶解放熱損失、蓄熱放熱損失等の削
減が見込まれる。スロート以前の溶解放熱と蓄熱放熱等の合計は、文献 1)によれば、全出熱の 52.73%
である。また、溶解槽内部のガラス融液平均温度を 100℃下げた場合、外気温を 30℃としての外気
との温度勾配減少率は 100/(1430-30)=0.0714 である。放熱損失削減が、外気との温度勾配減少率
に比例するという仮定を入れ、概算すると、52.73×0.0714 = 3.8%の省エネルギーが可能である。
1)緒方晴彦:ガラス製造の現場技術, Vol. 2. (社)日本硝子製品工業会,1993, pp.88
また、本実験における小型溶融炉では、表の P-4, P-5 の比較ではスロート側電極中心平均温度
72℃減に対して 6.6%の溶解電力量減、P-2, P-1 の比較ではスロート側電極中心平均温度 55℃減に
対して 8.9%の溶解電力量減、平均すれば、スロート側電極中心平均温度 100℃減に対し、12.7%の溶
解電力量減が試算される。前記フリントガラスびんタンク溶融炉における省エネルギー効果に比べ
て数倍大きいが、これは、本実験における小型溶融炉では、タンク溶融炉に比して、ガラス重量あ
たりの放熱面積が大きい事と、断熱施工が少ないためと考えられる。
以上、ガラス対流の制御により、ガラス熔融炉の規模にもよるが、3∼13%の省エネルギーが可
能と考えられる。
8.1.3.3 目標達成状況
「小型溶融炉における流れの解析」においては、生産工程を模し、ガラス原料を小型溶融炉の投
入口から炉内に投入し、小型溶融炉の流出口側よりガラス融液を流出させ、下部電力パターンを変
えて、ガラス融液内部流れ計測・ガラス融液表面流れ計測・ガラス融液内部温度計測を行っている。
一方、ガラス原料投入・ガラス融液流出を加味した計算機シミュレーションコードに、電力値と境
界値として炉内壁に近いガラス融液温度計測値等を代入し、シミュレーション計算を行っている。
流れの実測値と計算機シミュレーション計算結果には、比較的良好な一致が見られる。即ち、本開
発計算機シミュレーションコードを用いて小型熔融炉における流れを解析し得ることを、確認して
いる。
「流れの制御とガラス品質」においては、先ず小型溶融炉下部電力供給パターンを変えることに
より、ガラス上昇流の中心位置の制御、炉内壁近傍における複雑な流れ制御等のガラス融液流れの
制御が可能であることを明らかにしている。
また、流出ガラスのシードカウント、シェルブスキー法による均質性の二品質評価を平行して行
うことにより、小型溶融炉の下部電力供給パターン調整を通じて、ガラス融液流れを制御し、単位
引上げ量当りの溶解電力量一定の条件下、より良好な品質を有するガラスの製造が可能であること
を明らかにしている。
更に、小型溶融炉の下部電力供給パターン調整を通じて、流れを制御し、一定のガラス品質条件
下、単位引上げ量当りの溶解電力量を削減しうること、即ち 3%近くの省エネルギーを実現できる
ことを試算している。
2-34
そして、ガラス融液流れを制御することにより、一般タンクガラス溶融炉より 100℃近く低いガ
ラス融液温度で、良好な品質のガラスが得られる結果を得ており、ガラス融液流れ制御にともなう
低温熔融による省エネルギー効果も試算している。
以上得られた知見は、タンク溶融炉における省エネルギー、ガラス品質改善の指針になるもので
あるといえる。更に、時代は個性的なガラスの多品種少量生産に向かっており、小型溶融炉はその
要である。ここで得られたガラス融液流れの制御方法は、大企業のみならず中小企業・ベンチャー
企業での小型溶融炉を用いた多品種・少量ガラス生産に直ぐ適用できる。
全体として目標以上の成果があったといえる。
2-35
8.1.4 国際研究協力
8.1.4.1 共同研究
本国際共同研究では、ミズーリ・ローラ大学と微小重力下でのガラスの高温ハンドリング技術を
高めるための基礎実験を共同で行った。平成 12 年度には情報交換を行い、その結果に基づいて平成
13 年には落下実験を行っている。平成 14 年度には落下実験で得られたサンプルの解析を行ってい
る。以下は落下実験の概要と得られた知見である。
加熱コイル上にガラスを塗布し、微小重力下で急速加熱することで、ガラス微小液滴を空中に浮
遊させた。微小重力終了後に、ガラスの微小液滴を回収し、粒径、赤外吸収スペクトル、X 線特性
を測定するとともに、温度履歴や液滴飛散分布から現象の分析を行っている。
本実験で判明したことは以下の通りである.
・高温状態でのガラスと基板との濡れ性に及ぼす基板材料の影響を調べた。
・ガラスの蒸発温度ならびにガラス化温度(または結晶化温度)の把握を行った。微小重力の影響
は、結晶化温度がより低くなることが判明し、微小重力が結晶化温度近辺の物性評価に有効であ
ることを示した。
・ガラス転移温度、ガラス転移温度領域での比熱、結晶化の活性化エネルギー、赤外スペクトルに
関しては、微小重力下および地上ではほとんど差が無かった。
・ガラスの蒸気が凝縮した際に、表面張力により丸くなるので、ガラス蒸気が共存しても物性測定
に与える影響は少ない。
・サンプル中に気泡が存在する場合にも、浮力のない微小重力環境で加熱された際に気泡が破裂し
てガラスの微小液滴を吹き飛ばしており、表面加熱が脱泡に有効であることが判った。
本実験の成果は、ガラス液滴を浮遊させるための基礎技術を高めることに貢献しており、有効な
ものである。
8.1.4.2
8.1.4. 2 国際調査
(1)海外研究機関訪問
以下のような海外の研究機関等を訪問し、本事業の研究開発内容を報告し、討論を行うとと
もに、ガラスプロセッシング、無接触浮揚、微小重力実験、落下実験等について調査を行って
いる。
1) Containerless Research Inc. (無接触浮揚技術)
同社の開発した、地上でノズル流、超音波による物質の浮揚制御技術を溶融ガラス浮揚に応
用出来ないか調査、検討を行っている。実際にガラス浮揚の地上実験を行い、報告書を提出さ
せている。落下実験との比較等参考としている.
2) ミズーリ・ローラ大学 材料研究センター(微小重力下でのガラスのプロセッシング)
共同研究の相手であり,全般的な協力、実験を行うと共に,Day 教授等より2つの論文を得てい
る。
3) MO-SCI (微小ガラス粒子)
ベンチャー企業による微小ガラス粒子製造のプロセスの見学、調査を行っている。
4) ドイツ航空宇宙研究機構(無接触浮揚技術)
電磁力による電気伝導物質の浮揚技術について調査を行っている。
5) 宇宙シミュレーション研究所(宇宙微小重力実験)
DLR の宇宙実験への取り組みの見学、調査を行っている。
6) 微小重力利用支援センター(宇宙微小重力実験)
2-36
ヨーロッパの行っている微小重力実験装置、実験運用について見学、調査を行っている。
7) ブレーメン大学(落下実験施設)
同大学の保持する落下実験施設、落下実験技術について、調査を行っている。
8) ミュンヘン工科大学(微小重力実験)
微小重力実験結果(相転移点近傍流体)について討論を行っている。
(2)微小重力科学情報収集
以下のような微小重力、ガラス問題の会議に出席し、微小重力環境下での実験、また、その
ための地上実験に関する情報収集を行っている。
1) 第 51 回国際宇宙航行会議
2) 第 5 回日本・カナダ微小重力科学ワークショップ
3) 第 1 回微小重力研究と応用の国際ワークショップ
4) 第 52 回国際宇宙航行会議
(3)ガラス融液内対流計測制御関連
以下のようなガラス融液内対流計測制御問題の会議に出席し、ガラス融液内流れ計測技術に
関する情報収集、ガラス溶融上の問題に関する情報収集を行っている。
1) 第 6 回ガラス溶融プロセス国際カンファレンス
2) 第 61 回ガラス問題カンファレンス
3) 第 19 回国際ガラス会議
ガラス融液内対流計測制御問題に関しては、本情報収集により、従来技術の長短が明らかと
なり、本プロジェクトの計測装置の材料、測定方式の検討に役立てた。その後の常温での粘体
流れ計測実験、小型溶融炉でのガラス融液内流れ測定装置の設計・作製、誤差要因の把握を経
て、小型溶融炉内の流れ測定が出来るようになり、本プロジェクトの推進につながったといえ
る。
又ガラス溶融上の問題に関しては、本情報収集により、商用炉におけるガラス流れ測定上の諸問
題、燃焼効率の向上策、計算機シミュレーション等の情報を得、本プロジェクトの遂行に寄与した
と評価できる。
2-37
8.2 成果公表
次ページ以下に成果公表リストを示す。
(1) 研究発表・論文
学会、シンポジウム等で合計 12 件の発表を行った。このうち海外での発表は 6 件であった。ま
た、論文投稿は、7 件(内予定1件)であった。
(2) 特許出願状況
特許に関しては、1 件の出願を行った。なお、リプロン法による表面張力測定に関して、特許出
願の検討を行っている。
(3) 広報、成果普及状況
雑誌でのプロジェクト紹介記事 3 件、講演 2 件の合計 5 件を行った。
2-38
成果公表リスト
① 研究発表・口頭発表
著者
牧原正記
東久雄
表題
発表先
年月
Containerless Glass Melting
Under
Magnetically
Levitated
Special Seminar
University of
1999.11.8
Condition
Missouri-Rolla
Three Dimensional Large
Amplitude Drop Oscillations in
Low Gravity: Experimental and
Special Seminar
University of
1999.11.8
Missouri-Rolla
Theoretical Analysis
若林肇
Introduction of our Research
Subjects on High-Performance
Glasses at the NihonYamamura Glass Company
Special Seminar
University of
Missouri-Rolla
1999.11.8
野村桂太郎、
微小重力環境を利用したガラス融
日 本マイ クロ グラ
2000.10.3
比江島俊彦、
液の表面張力測定
ビティー応用学会第 0
東久雄、牧原
16 回 学 術 講 演 会
正記、若林肇
(JASMAC16)
D.E.Day
A Review of Experiments on
Glasses in Low Gravity
日 本マイ クロ グラ
2000.10.3
ビティー応用学会第 1
16 回 学 術 講 演 会
(JASMAC16)
Pan-Pacific
2nd
Ray, D. E. Day, of glass forming melts in JAMIC low Basin Workshop on
M. Makihara
gravity drop shaft
Microgravity
Science (Pasadena)
2001.5
Pan-Pacific
2nd
Ray,
M. melts in low gravity drop shaft, Basin Workshop on
Makihara,
W. Part II: Melt solidification and Microgravity
Zhou, D. E. Day, glass formation
Science (Pasadena)
2001.5
D. Zhu, C. S.
Evaporation and solidification
D. Zhu, C. S.
Processing
森海彦、橋間英
Development a method for
Measuring molten glass flow
19th International
Commission on
Glass
2001.7.5
ガラス融液内対流計測手法の開発
日 本セラ ミッ クス
協会2002年年会
2002.3.25
和、小西明男、若
sodium
tellurite
林肇、比江島俊
彦、山本秀明、東
久雄、牧原正記
森海彦、橋間
英和、小西明
男、若林肇、比江
島俊彦、東久雄、
岩崎晃、牧原正記
2-39
ガラス実験炉を用いた流れの実験
日 本セラ ミッ クス
海彦、小西明男、 と計算による解析
協会2002年年会
橋間英和、 森
2002.3.25
若林肇、比江島俊
彦、東久雄、岩崎
晃、牧原正記
澤崎雅彦、比
3次元数値シミュレーションに
江島俊彦、東久
雄
よるガラス溶融炉内流れの解析
ガラス実験炉を用いた対流測定と
和、小西明男、若 計算による解析
森海彦、橋間英
林肇、比江島俊
日本流体力学会
2002.7.24
2002年年会
日本セラミックス
協会 支部連合学術
講演会
2002.9.20
彦、山本英明、東
久雄、岩崎晃、牧
原正記、河村洋
② 研究発表・論文発表
牧原正記
よくわかるガラスの宇宙・無重力
実験
マンスリー近畿
No362(11月号)
1999.11
牧原正記
微小重力環境を利用したガラスの
研究
NEW GLASS
14巻4号
1999.12
D. Zhu, C. S.
Evaporation and solidification
Journal
of
Ray, D. E. Day, of glass forming melts in JAMIC low Materials Science
M. Makihara
gravity drop shaft
Received
D. Zhu, C. S.
Processing sodium tellurite
Journal
of
Ray,
M. melts in low gravity drop shaft, Materials Science
Received
Makihara,
Zhou, D.
Day,
W. Part II: Melt solidification and
E. glass formation
森海彦、 橋間
英和、小西明男、
Development of a method for
Measuring molten glass flow
Glass Technology
Accepted
Glass
Received
若林肇、比江島
俊彦、山本英明、
東久雄、牧原正
記、河村洋
比江島俊彦、
Numerical
analysis
and
東久雄、澤崎雅
measurement of glass flow in the Berichte
彦、橋間英和、
small furnace
森海彦、小西明
男、若林肇
2-40
Technische
Measurement
and
numerical
英和、小西明男、 analysis of molten glass flow in
若 林 肇 、 比 江 島 the small electric furnace(仮題)
森海彦、橋間
Glass Technology
投稿予定
俊彦、山本英明、
東久雄、岩崎晃、
牧原正記、河
村洋
③ 特許出願状況
発明の名称
出願番号
出願日
高温炉内観察装置
特願2002-80154
2002.3.22
④ 広報、成果普及状況
発表形態
発表件名または記事の見出し
紹介記事
ガラス微粒子
講演
紹介記事
発表先
「地下につくられた小
さな宇宙」(地下無重力
センター)
2000.3
ガラスと微小重力、最近の動向
平成11年度 宇宙環境
について
利用の展望(宇宙環境利
用推進センター)
2000.3
特集
90-98
年月
−宇宙・無重力−
大 工 研 ニ ュ ー ス 44 巻 3
2000.3
大阪府立大学
2000.7.3
号
講演
紹介記事
異分野との共同研究事例−宇宙
技術とガラス製造−
微小重力環境を利用したガラス
融液内対流制御技術の研究開発
工学部
産学協同研究会
新技術 「ガラス溶融炉内の流
セラミックス誌
1号
れの解析」
2-41
38巻
2003.1
(掲載予定)
第3章
評価
第3章 評価
1.プロジェクト全体に関する評価
1.1 総論
1)総合評価
本事業は、省エネルギー達成を目的としていること、ガラス産業界全体に波
及する研究開発であることから、政策および社会ニーズと合致している。
研究開発段階では、研究推進委員会などからの提言により、研究方針や方法
の見直しがなされており、マネイジメント手法は評価できる。
最終成果として、新しい計測技術を開発し、高温ガラス融液の流速データを
取得したことは、世界でも初めてのケースであり、事業全体の目標は概ね達成
しているが、微小重力施設を使用して行った熱物性計測に関しては、目標の達
成度が低い。
実用化や事業化に関しては、基礎的研究に重点が置かれていたため、実現ま
でには多少の時間を要することは否めないものの、商業炉への展開など、各開
発技術の実用性は高い。
以上のことから、本事業は、的確なマネイジメントにより所期の目標を達成
した。ガラス業界全体のレベルアップを図るため、実用化を視野に入れた研究
が継続されることを期待する。
<肯定的意見>
○ 試験炉での溶融ガラスの温度・流速測定、シミュレーションとの対比、さらに品質
評価によって槽窯の最適操作を提案し、省エネルギー効果の試算まで実施したこと
は実炉レベルへの展開を考える上でより設備、仕様を具体化できるので、大きな成
果といえる。
○ 本研究開発では、小型溶融炉を作成し、温度分布および速度分布を測定するととも
に、あわせて、コンピュータ・シミュレーションを実施することにより、現在のコ
ンピュータ・シミュレーション技術により、溶融炉内の熱対流を正確に評価できる
ことを示した。さらにシミュレーションにより、高性能・省エネルギーのガラス溶
融炉を開発できる可能性を具体的に示した。本研究により、革新的プロセス・生産
性向上に不可欠なプロセス・シミュレータの開発が可能なことが実証された。
○ ガラス溶融炉内の流速分布の計測技術の開発、流速計測とシミュレーションとの比
較検討などの基礎的情報を得られたことは評価できる。
○ 実験結果から省エネルギー化が可能であることを実験的に確認した点はおおむね評
価できる。
○ 高温ガラス融液の対流制御によって融液の脱泡・均質化を促進し、省エネルギーを
3-1
達成するという研究目的に対して、新計測技術の開発、数値解析技術の構築、対流
制御の実証、省エネルギー効果の試算を系統的に実施することにより、所期の目的
が達成されている。開発された要素技術には高い実用性を有するものもあり、個別
の実用化が期待される。
○ ガラス溶融プロセスの高度化を目指して、熱物性計測、シミュレーションと流体計
測および炉の対流制御技術の開発という、ガラス業界では恐らく見過ごされてきた
基礎的研究開発のスタートを切ったという点では、全体としては評価できる。
<問題点・改善すべき点>
● ブースティング最適操作と品質評価の関連付けの点が弱いと感じる。特に測定デー
タ、シミュレーションの結果を通して、加熱パターンがどういうメカニズムで溶融
ガラス流れに影響し、品質に影響するのかをもう少し深く考察できたのではないか
と考える。
● 表面張力の新たな測定方法の確立には、さらに基礎的な研究を行う必要がある。
● 溶融炉内の流れの解析などの基礎的研究成果を実用炉設計・運転の最適化に結びつ
け得るか否か今ひとつ明確でない。
● 微小重力環境利用以外の地上での物性計測実験をより多数回実行し、微小重力下で
の実験結果の精度評価の規準データを用意するべきであった。より詳細なフィージ
ビリティスタディが中間期においても必要であろう。
● 微小重力環境を利用した物性値測定については、考案された測定原理には新規性と
発展性が認められるが、落下塔施設での微小重力実験特有の困難さもあり、従来デ
ータを凌駕する測定結果を取得するには至っていない。
● 本プロジェクトで提案している対流制御による省エネルギーを実際に普及させるた
めには、省熱エネルギーの観点だけでなく、コスト低減の観点からの解析・試算も
望まれる。
● ガラス融液の熱物性計測については、目標の達成度が低いと言わざるを得ない。
● 微小重力環境が大きな題目になっているが、事実上研究成果全体にはほとんど貢献
していない。
3-2
2)今後の研究開発の方向性等に関する提言
国内全体の省エネルギーの観点からすると、ランニングコストという点で事
業化できるのかの見極めと、溶融炉を構成する炉材の侵食など、設備の耐久性
についても評価が必要である。
ソフトウェアベースとなる数値解析技術は、開発したソースコードの整備・
マニュアル化によって実用的な研究成果があがる。今後の同様なプロジェクト
においては、企画立案段階からそのシミュレーションコードの公開法を検討す
る必要がある。
欧米との競争を考えると、本技術開発の成果を踏まえて、高度なプロセス・
シミュレータの開発に、直ちに着手することが強く望まれる。
また、微小重力施設は実験遂行上の制約が多く、費用も高いことから、今後
の同様なプロジェクトに関しては、使用頻度などを柔軟に検討する必要がある。
○ 国内全体の省エネルギーの観点からすると、電気ブースティングは電気代が高いた
め、ランニングコストという点で事業化できるのか見極めが必要である。また溶融
炉の炉材の侵食など設備の耐久性について評価も必要である。
○ マランゴニ対流については従来の知見、今回の微小重力環境での表面張力測定結果
から、実窯レベルの対流への影響度が小さいことをある程度予測、見積ることも初
期の段階で可能であったと思われる。対流制御技術の適用性評価を従来の電気ブー
スティング技術だけでなく。酸素燃焼や液中燃焼等の新技術の可能性まで追えたの
ではないかと考える。
○ 開発されたシミュレーションコードの公開法を検討する必要が有る。また、シミュ
レーションコードの汎用性、使いやすさに対する説明が望まれる。今後のプロジェ
クトにおいては、市販ソフトおよび大学とソフトハウスの共同体制を検討すべきで
あろう。
○ 物性計測に関する関連研究の継続が望まれる。また、ガラス業界の展望に添った形
での、基本的な研究、リスクの大きい研究などを NEDO の自由な企画として取り入
れることが望ましいと考える。
○ 落下塔施設などを利用した微小重力実験では、実験装置インテグレーションに多大
の労力とコストを必要とする。本プロジェクトにおける物性値測定のような優れた
アイデアを微小重力実験で結実させるためには、実験装置インテグレーションに対
する充分な人的・技術的サポートが不可欠である。
○ ソフトウェアベースとなる数値解析技術は、開発したソースコードの整備・マニュ
アル化があって始めて実用的研究成果となる。学術的研究成果でなく、実用的研究
成果を求めるのであれば、プロジェクト企画立案段階からそのことを陽に考慮すべ
きである。
3-3
○ 微小重力環境については、諸事情を勘案しても、今後このようなミスマッチがない
ようなに採択すべきである。
○ 本研究開発の位置づけは「プロセスシミュレータの開発の先駆けとなるもの」であ
り、その目的は十分達成できた。しかしながら、本研究の成果が実用化され十分な
効果を発揮するためには、高度なプロセス・ミュレータが開発されることが必要不
可欠である。このような高度なプロセス・シミュレータは一企業、一研究機関で開
発できるものではなく、ガラス産業や関連研究機関が一致し、国の関与の下に実施
すべきである。欧米との競争を考えると、本技術開発の成果を踏まえ、高度なプロ
セス・シミュレータの開発に、直ちに着手することが強く望まれる。
3-4
1.2 各論
1)事業の目的・政策的位置付けについて
本事業のような共通基盤技術の成果は、ガラス産業界全体に波及するもので
あること、シミュレーション手法の確立と基礎物性の将来的な必要性が明確に
記されていることから、設定した目的は的確であると判断する。また、省エネ
ルギーを達成するという方針は、国の施策と合致しており、政策的位置付けも
妥当である。
○ ガラス溶融プロセスの省エネ・高効率化のためにはプロセス自体の現象解明が必要
不可欠であり、高温下でのガラス物性測定、また実窯内の溶融ガラスの温度・流速
測定と対流シミュレーションによる解析の高精度化が必要になる。本研究開発の成
果がガラス業界全体に及ぼす影響は大きい。
○ ガラス産業の国際的産業競争力強化のためには、革新的プロセス・生産性の向上が
必要不可欠である。このためには、ガラス溶融炉の性格上、熱対流をはじめとした
溶融炉内の物理化学現象を解析できる高度なプロセス・シミュレータの開発が必要
不可欠である。欧米では、すでにこのようなプロセス・シミュレータの開発に着手
している。このような状況を考えると、本技術開発は基本的な物性の測定方法とシ
ミュレーション技術を開発し、対流制御技術の制御を目指すものであり、時宜にか
なっている。また、このような共通基盤技術はガラス産業全体の課題であり、政策
的位置付けも妥当である。
○ ガラス業界の将来展望の中で、シミュレーション手法の確立と基礎物性の必要性が
明確にうたわれており、本研究プロジェクトが事前に的確な目的を設定していたこ
とを評価する。
○ 微小重力を利用することを前提にしたプロジェクト設定が、色々な困難を引き起こ
した可能性がある。ガラス業界の明確な目標と、本プロジェクトの手法との間のマ
ッチングに関する検討が必要であろう。
○ 高温ガラス融液の対流制御によって融液の脱法・均質化を促進し、省エネルギーを
達成するという方針は技術的・施策的に合理的かつ実現性が高いと判断される。ま
た、数値解析技術をベースとして対流制御最適化を図るという戦略は、近年の数値
シミュレーション技術の進展を反映した妥当な選択である。数値解析の信頼性を担
保するためには、正確な物性値の入力と解析結果の実験的検証が不可欠で、それら
の点についても本プロジェクトでは充分に企画されている。しかしながら、考慮す
べき複数の物性値の中で、表面張力の重要性がやや過大評価されているきらいがあ
り、表面張力が引き起こす表面張力対流がガラス融液の脱法・均質化に重要な役割
を果たすか否かについての事前の検討が十分とは言えない。
3-5
2)研究開発マネイジメントについて
研究推進委員会などのメンバーからの助言を得つつ、定期的な研究推進会議
が開かれ、研究目的達成に向けての真摯な議論がなされている。その結果、研
究方針や方法の柔軟な見直しがなされており、研究成果を生み出す大きな原動
力となっている。したがって、本事業におけるマネイジメント手法は評価でき
る。
一方、海外研究組織との連携は密接とは言えず、
「国際研究協力事業」として
の位置付けが曖昧であった。
○ マランゴニ対流については従来の知見、今回の微小重力環境での表面張力測定結果
から、実窯レベルの対流への影響度が小さいことをある程度予測、見積ることも初
期の段階で可能であったと思われる。3年間という限られた期間内であるが、もう
少し早い段階で対流制御技術の適用性評価を従来の電気ブースティング技術だけで
なく。酸素燃焼や液中燃焼等の新技術の可能性まで追えたのではないかと考える。
○ 表面張力の測定法等、当初予想できない困難もあったが、計画を変更する等、適切
な対処がなされている。
○ 研究推進委員会および内部評価委員会のメンバーからの助言を得つつ、研究計画を
適宜変更・改良しつつプロジェクトを遂行した点でマネイジメント手法は評価でき
る。
○ プロジェクト担当者が予測・回避不能な落下塔施設の事故による、物性測定の進行
の障害は、プロジェクトマネージメントとは別の問題と考える。代替計測法の採用
などの工夫は評価できる。
○ マランゴニ効果がガラス融液対流に及ぼす検討課題が表面にですぎた嫌いがある。
マクロスケールでのマランゴニ効果への過大な配分は不必要で、壁面溶損などの局
所現象の法が実用上重要であったと思われる。(成果報告書およびプレゼンテーショ
ンにおいてマランゴニ効果に関する事項が比較的多かったと感じられたので、あえ
てコメントしておきます。)
○ 本プロジェクトを遂行する国内研究組織の中で定期的かつ頻繁な研究推進会議が開
かれ、研究目的達成に向けての真摯な議論がなされている。また、プロジェクト期
間中に外部評価委員会が5回開催され、そこでの評価結果を反映させた研究方針・
方法の柔軟な見直しがなされている。これらは、本プロジェクトの研究成果を生み
出す大きな原動力となっており、高く評価される。一方、
「国際研究協力事業」と謳
われているものの海外研究組織との連携は密接とは言えず、海外研究組織の研究成
果についても本プロジェクトの研究目的と、関連性は認められるが、方向性が合致
しているとは言い難い。基本計画において海外研究組織が指定されていることから、
連携確保については NEDO 側のマネイジメント支援が必要であったと考える。
3-6
3)研究開発成果について
新しい計測技術(振り子棒式流速計と表面流速観察技術)を開発し、高温ガ
ラス融液の流速データを取得したことは、世界でも初めてのケースであり、高
く評価できる。小型実験炉を製作して、流速計測とシミュレーションの比較検
討を行い、溶融炉内の熱対流をほぼ正確に評価できることを検証したことによ
り、シミュレータの高精度化と炉の対流制御技術の発展に、大きな貢献が期待
できる。事業全体の目標は、概ね達成しているが、微小重力下で行ったガラス
融液の熱物性計測は、従来技術を凌駕する結果になっておらず、目標の達成度
は低い。
<肯定的意見>
○ 溶融ガラスのオンラインでの流速測定、表面張力測定方法には新規性があり、シミ
ュレーションの高精度化に貢献する。
○ 本技術開発では、小型溶融炉を作成し、温度分布および速度分布を測定するととも
に、あわせて、コンピュータ・シミュレーションを実施することにより、現在のコ
ンピュータ・シミュレーション技術により、溶融炉内の熱対流を正確に評価できる
ことを示した。さらにシミュレーションにより、高性能・省エネルギーのガラス溶
融炉を開発できる可能性を具体的に示した。本研究により、革新的プロセス・生産
性向上に不可欠なプロセス・シミュレータの開発が可能なことが実証された。シミ
ュレーションにより熱流動を解析できる事は従来から考えられてきたことであるが、
溶融炉の実測により実証した意義は大きい。本技術開発の流速の実測は世界的に見
ても類をみないものと思われる。本技術開発は、今後の高度なプロセス・シミュレ
ータの開発に取って、極めて大きな意義がある。
○ 微小重力下での振動液滴法による溶融ガラスの表面張力測定装置を完成し、短時間
微小重力実験における液滴位置制御など、極めてデリケートな制御シーケンスをほ
ぼ確立できた点が評価できる。落下塔施設の事故などにより、十分な調整が不足し、
実験点数が少なかったことが惜しまれる。
○ 溶融ガラスの流速分布の計測法を開発したことは評価できる。シミュレーションの
検証のためにも貴重なデータが得られたものと評価する。
○ 未だ十分な定量的結論には至っていないが、ガラス融解炉の流動状態の制御および
低温・省エネルギー化の可能性を見出したことは評価できる。
○ 新しい計測技術(振り子棒式流速計と表面流速観察技術)が開発され、高温ガラス
融液の流速データが世界で始めて取得されている。ガラス融液対流について表面張
力を含む複雑な境界条件を丁寧に考慮した数値解析技術が構築されている。それら
の新技術を活用することによって、高温ガラス融液の対流制御が通電ジュール加熱
によって可能であることが明らかにされている。また、対流制御によってガラス融
液の脱泡・均質化が促進され、溶融温度低下による省エネルギー効果がもたらされ
3-7
ることを小型実験炉を用いたガラス製造を通じて実証している。これらの研究開発
成果は高く評価される。
○ ガラス溶融プロセスの高度化を目指して、熱物性計測、シミュレーションと流体計
測および炉の対流制御技術の開発という、ガラス業界では恐らく見過ごされてきた
基礎的研究開発のスタートを切ったという点では、全体としては評価できる。
○ 生産工程を模した小型溶融炉を使い、シミュレーション結果と流体計測結果を比較
し、流れの制御などに応用を試みる方向には、今後の発展が期待される。
<問題点・改善すべき点>
● ブースティング最適操作と品質評価の関連付けの点が弱いと感じる。特に測定デー
タ、シミュレーションの結果を通して、加熱パターンがどういうメカニズムで溶融
ガラス流れに影響し、品質に影響するのかをもう少し深く考察できたのではないか
と考える。
● 本技術開発の一つの柱は、高温時の基本的物性(表面張力)の測定である。この点
では、新たな測定方法に挑戦したが、測定結果の精度および実験の安定性について、
いまだ課題が残っている。
● 表面張力および粘度の計測の実施例が、プロジェクトの予定していたより、少なく、
精度の検証が不十分である点は残念である。落下施設の故障などにより、実験装置
の改良および操作条件の最適化が順調に進まなかったためと推察されるが、微小重
力実験結果の信頼性の検討が求められる。
● 実験炉での結果を定量的に評価するには、もう少し現実的なシミュレーションモデ
ルが必要と考えられる。
● 当該プロジェクトの主要目的の一つである微小重力環境を利用した高温ガラス融液
の物性値(表面張力と粘性係数)測定について、従来データを凌駕する測定結果を
取得するには至っていない。考案された測定原理そのものは新規性と発展性が認め
られるので、今後の改善が期待されるところであるが、実験遂行上制約の多い落下
塔施設(JAMIC)の使用を前提とすることなく、柔軟に検討することが望まれる。
● ガラス融液の熱物性計測については、目標の達成度が低いと言わざるを得ない。
● 微小重力環境が大きな題目になっているが、事実上研究成果全体にはほとんど貢献
していない。
● 諸事情を勘案しても、今後このようなミスマッチがないようにすべきである。
3-8
4)実用化、事業化の見通しについて
シミュレーションに関しては、基本的要素技術の構築ができており、今後は
汎用なモデルへと進化させることによって、商業炉への展開など、実用的なプ
ロセスシミュレータへと発展することが期待できる。流速計測技術は、ガラス
融液以外の高温融液や高粘性・不透明流体への適用が可能である。
本事業は、基礎的研究に重点が置かれており、実用化と事業化への移行には、
多少の時間を要することは否めない。今後も、ガラス業界全体のレベルアップ
を図るため、継続した研究を期待する。
<肯定的意見>
○ 「品質」を表現できる高性能なガラス・プロセス・シミュレータの開発は世界的に
ガラス産業の重要な課題となっており、欧米では国家プロジェクトとして実施され
ている。本プロジェクトの成果は、高度なプロセス・シミュレータの開発に必須な、
基本的物理現象(熱流動)のシミュレーション結果の妥当性を実証したものであり、
本技術開発の成果は高度なプロセス・シミュレータとその実用化の基盤技術を実証
的に確立したものである。今後、熱流動シミュレータに気泡モデル、清澄モデル、
燃焼モデル、バッチモデルなど組み込んでいくことにより、実用的な高性能プロセ
ス・シミュレータが開発可能である。
○ 本プロジェクトで得られた省エネルギー化の可能性に関して今後更に実用炉での検
証が進められると期待する。
○ シミュレーションの基本的要素技術は構築できたと考えられる。今後より汎用なモ
デルへと進化させると期待できる。
○ 新規開発された流速計測技術は、ガラス融液以外の高温融液や高粘性・不透明流体
へ適用可能であり、実用化が期待される。また、ガラス融液対流の数値解析技術に
ついても、高温物性とその温度依存性を考慮した実用的解析が可能であり、商業炉
への展開が期待される。対流制御による省エネルギー効果について、小型実験炉に
対する検討結果を大型商業炉にそのまま適用できるか否かの問題が残されてはいる
ものの、顕著な効果が見られることが実証されており、実用的選択肢として今後具
体的に考慮されることが期待される。
○ 高温炉内の流速分布測定技術については、分野が限定的であるが実用化あるいは事
業化の可能性がある。
<問題点・改善すべき点>
● 小型炉ではそれほど問題ないかもしれないが、国内全体の省エネルギーの観点から
すると、ある程度の規模の溶融炉を想定した評価が必要になる。特に日本ではも電
気代が高いため、ランニングコストという点で事業化できるのか見極めが必要であ
3-9
る。また、溶融炉の炉材の侵食など設備の耐久性について評価も必要である。
● 表面張力の新たな測定方法の確立には、さらに基礎的な研究を行う必要がある。
● 開発した振動液適法の実験装置の今後の応用に関して十分考慮すべきで、単発的な
開発に終わることは、極めて不経済である。
● 小型炉における基礎的知見を実用炉の改良に向けて展開する具体的、定量的解析手
段の確立が不可欠である。そのためには、より多くの要因を盛込んだ、総合的シミ
ュレーションコードの開発が必要である。
● 微小重力環境を利用した物性値(表面張力と粘性係数)測定について、実験コスト
の高さを考えると、例え高精度データが安定して取得されるようになったとしても、
果たして実用的方法となり得るかについて疑問が残る。数点のデータであっても大
きな科学的貢献をもたらすような特殊な物性値測定に限定せざるを得ないであろう。
対流制御による省エネルギー効果について、熱エネルギーの観点からは報告書通り
であるが、商業炉への普及を図るためには全体コストの観点からの評価・試算も必
要である。
● 学術的観点に重点の置かれた研究であり、全体的に実用化、事業化という観点はも
う少し先にある。
3-10
2.個別技術に対する評価
2.1 ガラス融液の高温物性の測定
急激な重力変化時に、ガス流量を変化させて液滴を適切な位置に制御する技
術を開発し得たことは高く評価できる。
液滴振動法以外の非接触表面張力計測法としてのリプロン法をガラスに適用
とする試みは評価できるが、目標に対しては達成度が低い。
<肯定的意見>
○ 落下塔で液滴振動法によってガラスの表面張力および粘度を計測する目的は十分達
成されたとは言えないが、急激な重力変化時に、ガス流量を変化させて液滴を適切
な位置に制御する技術を開発し得たことは高く評価できる。
○ 液滴振動法以外の非接触表面張力計測法としてのリプロン法をガラスに適用とする
試みは評価できる。
○ ガラス製造プロセスの高効率化の基礎研究として,ガラス融液の高温熱物性特に表
面張力に着目し,困難な測定にチャレンジしたことは評価できる。
<問題点・改善すべき点>
● 落下実験の温度が、濡れの課題から予定範囲に及ばなかったこと、実験回数が少な
かったためにデータの信頼性の検討が出来なかったこと、粘度計測に至らなかった
こと、は落下塔実験装置の開発に時間を捕とられたためであろうが、目標を達成で
きなかったと評価せざるを得ない。
● リプロン法が超高粘度のガラス融液に適応可能か否かの基礎実験として、高粘度の
シリコンオイルによる実験などが必要であった。
● ガラス融液の表面張力データを供給するという視点では,微小重力下でしかも試料
を浮遊させるという極めて困難な方法を行う理由は全くない。リング引き上げ法で
十分である。
● データの現状調査が不十分である。過去の研究について物質,温度範囲,測定法,
精度等を調査し,本研究で困難な方法にあえて挑む意味を明確にすべきであった。
● リプロン法をガラス融液に適用することには意義があると判断するが,残念ながら
理論・計測法・高温化どの点においても新規性・先進性は見られない。もう一段上
の工夫があれば,意味のある成果が得られたはずである。
3-11
2.2 ガラス融液内の対流の計測と制御技術の検討
1500℃以上に達する高温ガラス融液の内部流動測定は世界初の成果であり、
融液表面から深さ 350mm までの流速データが多点で取得されていることは高
く評価される。また、実際の小型溶融炉を用いて流速、温度分布を実測し、解
析結果の妥当性を実証したことにより、シミュレーションが基盤技術として確
立した。以上のことから、所期の目標は十分に達成している。
<肯定的意見>
○ 小型溶融炉を作成し、流速、温度分布を計測した。また、シミュレーションを行っ
た。両者の比較によりシミュレーションの結果は十分信頼性のあることを確認した。
この結果に基づき、主としてシミュレーションにより熱対流、マランゴニ対流の影
響を評価し、溶融炉の制御方法をシミュレーションにより検討可能であることを確
認した。個別技術(温度、流速分布の計測、シミュレーション)は目標値を十分ク
リアしている。
○ シミュレーションにより、溶融炉内の熱対流の挙動を評価できることは従来から予
想されたことであるが、実際の小型溶融炉を用いて流速、温度分布を実測し、シミ
ュレーション結果の妥当性を実証した例は、世界的に見ても無いと思われる。
○ ガラス産業の共通基盤技術であるガラス溶融炉プロセス・シミュレータの開発の見
通しが確立した。
○ 今後、高度なプロセス・シミュレーターの開発は、ガラス産業の国際競争力の強化
と言う観点から、いっそう重要となる。本技術開発の成果は、プロセス・シミュレ
ータの開発の基盤として重要性を増していく。
○ 1500℃以上に達する高温ガラス融液の内部流動測定は世界初の成果であり、融液表
面から深さ 350mm までの流速データが多点で取得されていることは高く評価され
る。振り子棒式流速測定技術の開発においては、気液界面の存在による抗力変化や
振り子棒のたわみに起因する浮力と重力の影響などが精緻に検討されており、ガラ
ス以外の高温融液への適用が期待できる汎用性のある測定手法に仕上がっている。
トレーサ追跡を利用したガラス融液表面流速測定は、測定原理・方法には新規性は
ないが、高温熱放射への対策を充分に施すことによって、貴重な実験データを取得
することに成功しており、評価される。
○ 融液対流制御技術の基盤をなす数値解析技術については、実際の小型実験炉を丁寧
にモデル化することによって、信頼性のある解析結果が得られており、スケールの
異なる商業炉への適用が期待される。また、加熱条件を変化させることによって融
液対流制御が可能であることを示したことは、熱対流現象の観点からは目新しさは
少ないが、実験結果に裏付けられた定量的データに立脚した結論として信頼性・有
用性が高いと判断される。
3-12
<問題点・改善すべき点>
● 目標は十分達成している。今後の発展的課題としては、以下のことがあげられる。
個別にはシミュレーションの精度の向上、さらに多くのデータの計測、最適設計手
法の開発等があげられるが、最も重要なことは、ガラス産業界の共通のプロセス・
シミュレータを開発し、関連する研究開発成果を、このシミュレータに組み込んで
いくことにより、知識、データの蓄積と普及を図る仕組みを早急に構築することで
ある。
● 新規開発した振り子棒式流速測定技術について、測定し易いシリコンオイル対流で
検証し、妥当な測定結果を得たと報告されているが、具体的な結果が平成13年度
報告書および平成12年度報告書に記載されていない。また、数値解析技術につい
ては、計算条件や計算方法の記述が表面的で、報告書のみからは内容の詳細を把握
することが難しい。改善が望まれる。
● 数値解析技術を移転・活用するためには開発した解析コードの整備・マニュアル化
が重要であるが、それについての検討が充分でない。この問題は、当該研究開発プ
ロジェクトに限らず、他のプロジェクトにおいても多々存在すると思われ、全体的
視点からの検討が必要であると考えられる。
3-13
2.3 脱法・均質化促進への新対流制御技術の適用性評価
小型試験炉での実験から、低温操作の可能性を確かめ、品質評価によって槽
窯の最適操作を提案したことは評価できる。また、省エネルギー効果の試算を
実施したことにより、実用炉レベルへの展開を考える上で、より設備や仕様を
具体化できる。
シミュレーションにおいて、ガラス品質予測の具体的課題のモデル化が不十
分であるので、より広範囲の要素を取り入れた総合的モデル化とシミュレーシ
ョンコードの開発が必須である。この件に関しては、予算的なこと含め、NEDO
の支援が不可欠になる。
<肯定的意見>
○ 試験炉での溶融ガラスの温度・流速測定、シミュレーションとの対比、さらに品質
評価によって槽窯の最適操作を提案し、省エネルギー効果の試算まで実施したこと
は実炉レベルへの展開を考える上でより設備、仕様を具体化できるので、大きな成
果といえる。
○ 小型炉を用いた実験から、低温操作の可能性を確かめ、従来の実用炉の操作条件が、
安全係数を過度に見積もっている可能性を示した点は評価できる。
○ 炉内の加熱熱量分布を変えた一連の結果は、シミュレーションで炉内流れを予測で
きることを示唆しており、今後のシミュレーションの位置付けを高めた点で重要で
ある。
<問題点・改善すべき点>
● ブースティング最適操作と品質評価の関連付けの点が弱いと感じる。特に、測定デ
ータ、シミュレーションの結果を通して、加熱パターンがどういうメカニズムで溶
融ガラス流れに影響し、品質に影響するのかをもう少し深く考察できると思われる。
● シミュレーションにおいて、ガラス品質予測の具体的課題のモデル化が不十分であ
る。動向調査、成果報告書等にあげられた、他の研究例に見られるような、より広
範囲の要素(気泡のモデル、ガスからの伝熱、内部輻射を含む複雑な形状の炉内の輻
射、燃焼フレームの影響 etc.)を取り入れた総合的モデル化とシミュレーションコー
ドの開発が必須であろう。市販汎用ソフトの普及により、単純な専用 3 次元シミュ
レーションコードをゼロから開発することは非効率的となりつつある。大学とソフ
トハウスの共同的関与体制が望まれる。(そのためには、NEDO 側もそれを奨励する
予算配分も含めた体制を整える必要が有ろう。)
● 本研究で実施した省エネルギーの推定手法はいま少し信頼性にかけると懸念される。
断熱材の熱物性値の不足などの要因があるが、より詳細な実験的検討がなされてい
たならばと、惜しまれる。
3-14
第4章
評点法による評点結果
評点法の実施について
1. 経緯
(1) 評点法の試行
通商産業省(当時)において、平成 11 年度に実施されたプロジェクト
の評価(39 件)を対象に、評点法を試行的に実施した。その結果を産業
技術審議会評価部会に諮ったところ、以下の判断がなされた。
数値の提示は評価結果の全体的傾向の把握に有効
評価者が異なっていてもプロジェクト間の相対的評価がある程度可
能
(2) 評点法の実施
平成 12 年 5 月の通商産業省技術評価指針改訂にて「必要に応じ、評点
法の活用による評価の定量化を行うこととする」旨規定された。
以降、プロジェクトの中間・事後評価において、定性的な評価に加え各
評価委員の概括的な判断に基づく評点法が実施されている。
2. 評点法の目的
評価結果を分かりやすく提示すること
プロジェクト間の相対評価がある程度可能となるようにすること
3. 評点の利用
評価書を取りまとめる際の議論の参考
評価書を補足する資料
分野別評価、制度評価の実施において活用
4. 評点方法
(1) 評点の付け方
各評価項目について4段階(A、B、C、D)で評価する。
(2) 評点法実施のタイミング
第 1 回分科会において、各委員へ評価コメント票とともに上記(1)の点
数の記入を依頼する。
評価書(案)を審議する前に、評点結果を委員に提示、議論の際の参考
に供する。
上記審議を行った分科会終了後、当該分科会での議論等を踏まえた評点
4-1
の修正を依頼する。
評価書(案)の確定に合わせて、評点の確定を行う。
(3) 評点結果の開示
評点法による評点結果を開示するが、個々の委員記入の結果(素点)に
ついては、「参考」として公表(無記名)する。
評点法による評価結果の開示については、あくまでも補助的な評価であ
ることを踏まえ、評点のみが一人歩きすることのないように慎重に対応
する。
具体的には、図表による結果の掲示等、評価の全体的な傾向がわかるよ
うな形式をとることとする。
4-2
5. 評点結果
3.0
1.事業の目的・政策的位置付け
2.3
2.研究開発マネジメント
3.研究開発成果
2.2
4.実用化・事業化の見通し
2.2
0.0
1.0
2.0
3.0
平均値
評価項目
1.事業の目的・政策的位置付けについて
2.研究開発マネジメントについて
3.研究開発成果について
4.実用化・事業化の見通しについて
平均値
3.0
2.3
2.2
2.2
A
C
B
B
素点(注)
A A A
B A A
A B B B
A B B B
(注)A=3,B=2,C=1,D=0として事務局が数値に換算。
4-3
(評点シート)
【記入方法、結果取扱いについて】
・各委員からは、各項目について、A、B、C、Dのいずれかを記入してく
ださい。
・各委員記入の結果(素点)は、「参考」として公表(無記名)いたします。
(1)事業の目的、政策的位置付けについて
A B
C D
A B
C D
A B
C D
A B
C D
<判定基準>
・非常に重要
・重要
→A
→B
・概ね妥当
・妥当性がない又は失われた
→C
→D
(2)研究開発マネジメントについて
<判定基準>
・非常によい
・よい
・概ね適切
→A
→B
→C
・適切とはいえない
→D
(3)研究開発成果について
<判定基準>
・非常によい
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
→A
→B
→C
→D
(4)実用化・事業化の見通しについて
<判定基準>
・明確に実現可能なプランあり →A
・実現可能なプランあり
→B
・概ね実現可能なプランあり
→C
・見通しが不明
→D
以
4-4
上
評価項目
事業の目的、政策的位置付け
評点
[ A B C D ]
評価に当たっての考慮事項
評価(委員限り)
非常に重要→A
NEDOの事業としての妥当性
[ a b c d ]
重要→B
事業目的・政策的位置付けの妥当性
[ a b c d ]
非常によい→A
研究開発目標の妥当性
[ a b c d ]
よい→B
研究開発計画の妥当性
[ a b c d ]
概ね適切→C
研究開発体制の妥当性
[ a b c d ]
適切とはいえない→D
研究開発運営の妥当性
[ a b c d ]
情勢変化への対応の妥当性
[ a b c d ]
非常によい→A
計画と比較した目標の達成度
[ a b c d ]
よい→B
要素技術から見た成果の意義
[ a b c d ]
概ね妥当→C
成果の普及広報
[ a b c d ]
妥当とはいえない→D
成果の公共性
[ a b c d ]
明確に実現可能なプランあり→A
成果の実用化可能性
[ a b c d ]
実現可能なプランあり→B
波及効果
[ a b c d ]
概ね実現可能なプランあり→C
事業化までのシナリオ
[ a b c d ]
概ね妥当→C
妥当性がない又は失われた→D
研究開発マネジメント
研究開発成果
実用化・事業化の見通し
[ A B C D ]
[ A B C D ]
[ A B C D ]
見通しが不明→D
4−5
参考資料1
プロジェクトの概要説明資料
本資料は、第1回「微小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術の研究開発」
(事後評価)
分科会において、プロジェクト実施者がプロジェクトの概要を説明する際に使用したものである。
微小重力環境を利用した
ガラス融液内対流制御技術の研究開発
概 要
新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究開発業務部
委託先:日本山村硝子株式会社
(1)
1.NEDOの関与の必要性
1.1 NEDOの事業としての妥当性
エネルギー・
環境
エネルギー・
環境
問題の解決
問題の解決
省エネルギー・
省エネルギー・
環境負荷低減技術の開発
環境負荷低減技術の開発
熾烈な世界的競争
産業競争力強化
ガラス溶融・
製造プロセスの
ガラス溶融・
製造プロセスの
解明と対流制御技術の開発
解明と対流制御技術の開発
産学官連携による
効率的推進
参考資料1-1
(2)
1.NEDOの関与の必要性
1.1 NEDOの事業としての妥当性
溶融プロセスの省エネ・
高効率化
溶融プロセスの省エネ・
高効率化
溶融プロセスの解明が未だ不十分
基礎データの精度が悪い(熱対流による影響)
本事業は、
基本的な物性の測定方法とシミュレーション技術
を開発し、対流制御技術を実証するものであり、
その開発リスクは大きく、最終的には業界全体の
省エネルギーに帰すもの
n
(3)
1.NEDOの関与の必要性
1.2 費用対効果
ガラス製造炉内
ガラス融液の対流制御
脱泡、均質化の促進が可能
仮定2
仮定1
操業温度の低下
(省エネ約10%)
滞留時間減
(省エネ約10%)
ガラス溶融炉で消費されるエネルギー143万kL
ガラス溶融炉で消費されるエネルギー143万kL
(原油換算)の20%である29万kLの削減
(原油換算)の20%である29万kLの削減
参考資料1-2
(4)
2.事業の背景・目的・位置付け
2.1 事業の背景
製造業付加価値ベース精算指数当りエネルギー消費原単位
(指数)
窯業(ガラス製造業)の
窯業(ガラス製造業)の
エネルギー消費原単位の
エネルギー消費原単位の
改善は他の製造業に
改善は他の製造業に
比べて低いレベルに
比べて低いレベルに
止まっている
止まっている
120
100
80
60
40
20
「産業技術戦略策定基盤調査」
「ガラス産業技術戦略2025 * 」
技術戦略ロードマップ
製造業
鉄鋼
化学
窯業土石
紙・パルプ
「革新的溶融プロセス設計のための
プロセスシミュレーターの開発」
0
*H11年度
H13年度改訂
(年度)
73 74 75 7 6 77 78 79 80 81 82 83 84 8 5 86 8 7 88 89 90 91 92 9 3 94 95
エネルギー・経済統計要覧 1997年度版,pp.60
(5)
産業技術戦略策定基盤調査
ガラス産業技術戦略2025 技術戦略ロードマップ
微小重力環境を利用したガラス融液
内対流制御技術の研究開発
参考資料1-3
(6)
2.事業の背景・目的・位置付け
2.2 事業の位置付け
省エネルギー・
省エネルギー・
環境負荷低減技術の開発
環境負荷低減技術の開発
ガラスの高温領域
(1000℃∼1500℃)
における物性値を正確に
測定可能な手法・装置を
開発
測定した物性値を基にした
シミュレーション
プロセスシミュレーターの開発
プロセスシミュレーターの開発
の先駆けとなるもの
の先駆けとなるもの
ガラス融液の
脱泡・均質化の
促進について、
その対流制御
技術の適用性
を評価
ガラス溶融・
製造プロセスの
ガラス溶融・
製造プロセスの
解明と対流制御技術の開発
解明と対流制御技術の開発
新たな対流制御技術を確立
(7)
3.事業の目標
n
微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定
ソーダ石灰系ガラスの高温領域(1000℃∼1500℃)における表面張力・粘性
率を正確に測定可能な手法・装置の開発と測定を行う。
<大阪府立大が担当>
n
ガラス融液内の対流の計測と制御技術の検討
正確な物性値を使用したシミュレーション技術を開発し、熱対流及びマラン
ゴニ対流の影響を明確にすることにより、新しい対流制御方法を確立する。
<大阪府立大・日本山村硝子が担当>
n
脱泡・均質化促進への新対流制御技術の適用性評価
本研究開発により提案された新しいガラス融液内対流制御方法の適用性を
評価し、ガラス製造プロセスの省エネルギー効果を試算する。
<日本山村硝子が担当>
参考資料1-4
(8)
4.研究開発実施体制
経済産業省
研究開発期間:平成11年度∼13年度
研究開発費 : 361百万円
補助
NEDO
共同研究
委託
ミズーリ・
ローラ大学
日本山村硝子(株)
研究推進委員会
共同研究
再委託
大阪府立大学
工業技術院 大阪工業技術研究所
(平成12年度まで)
(9)
4.研究開発実施体制
研究開発スケジュール
研究開発項目
H11年度
H12年度
H13年度
132
116
112
(1)微小重力環境を利用した
ガラス融液の高温物性の測
定
(2)ガラス融液内の対流の計
測と制御技術の検討
(3)脱泡・均質化促進への新
対流制御技術の適用性評価
開発予算展開(百万円)
総額 361百万円
参考資料1-5
1
5.成 果 の 概 要 (1) 研究開発項目 1)
微小重力環境を利用した
ガラス融液の高温物性測定
10
2
(11)
開発項目1)及び 実施状況
研究開発項目
平 成 11 年 度
平 成 12 年 度
平 成 13 年度
非接触測定法による表面張力
測定
液滴振動法
リプロン法
実験装置の開発
浮揚機構の改良
白金炉の改良
及び実験・測定
及び実験・測定
及び実験・測定
光学系装置の準 常温流体の
ガラスの
備及び配置
表面張力測定
表面張力測定
従来法による表面張力測定
静滴法
実験装置の開発
及び測定
リング引き上げ法
表面張力測定
最大泡圧法
表 面 張 力 測定
参考資料1-6
(12)
3
本研究の対象測定温度領域
(13)
4
440
420
表面張力[mNm]
400
液滴振動法
リング引上げ法
静滴法
最大泡圧法
y = -0.0635
x + 501.8
380
360
y = -0.0208x + 399.2
340
320
300
y=
280
260
1400
1500
-0.3
062
x+
y = 0.011x+299.0
796
.2
1600
1700
温度[K]
表面張力値の比較
参考資料1-7
1800
1900
目標達成状況: 項目 1)
(14)
5
微小重力環境を利用したガラス融液の高温物性の測定
n
微小重力環境を利用してガラス融液の物性値(表面張力)を測定する装
置を開発し、測定を行った。実験技術は大部分解決し、エラーバーの範
囲で物性値を得た。
n
また、リプロン法によるガラス融液の表面張力測定の可能性を示した。
n
各種の従来法によって表面張力を測定し、測定値を比較した 。
6
5.成 果 の 概 要 (2)
研究開発項目 2)
ガラス融液内の対流の計測と
制御技術の検討
参考資料1-8
(16)
7
開発項目実施状況
研究開発項目
平成11年度 平成12年度 平成13年度
1) 小型溶融炉及び温度計測技術の開発
2) ガラス融液表面流計測技術の開発
3) ガラス融液内部の流れ計測技術の開発
調査
炉設計, 温度制御技術開発
装置試作, 測定技術開発
調査, 予備実験, 測定技術開発
対流把握
4) 計算機シミュレーション
二次元コードの開発
コード作成, 計算実験
三次元コードの開発
コード作成, 計算実験
原料投入要素の組み込み (次節で述べる)
コード作成, 計算実験
5) マランゴニ対流の評価
シリコーンオイルのモデル実験
モデル実験
小型溶融炉での実験
モデル実験(レーザ)
小型溶融炉実験
計算機シミュレーション
計算シミュレーション
(17)
8
小型溶融炉の写真
参考資料1-9
9
流れ計測装置写真
ひずみゲージと
リード線
水冷ボックス
風防
小型実験炉と
対流計測装置
装置のひずみゲージ
貼付け部
(19)
10
参考資料1-10
(20)
11
12
Ma
Ma=0.0
Ma x 10
Experiment
Y=0.0
0.003
Ma
Ma=0.0
Ma x 10
Experiment
1400
0.001
o
T (C )
u (m/s)
0.002
Y=0.0
1450
0
-0.001
1300
-0.002
-0.003
-0.5
1350
-0.25
0
0.25
0.5
x (m)
1250
-0.5
-0.25
0
0.25
0.5
x (m)
計算機シミュレーションで求めた
Maを変えた場合の表面流速
計算機シミュレーションで求めた
Maを変えた場合の表面温度
参考資料1-11
(22)
13
目標達成状況: 項目 2)
ガラス融液内の対流計測と制御技術の検討
タンク炉タイプの実験用小型溶融炉を作製
測定装置挿入孔を必要に応じて作製でき、条件を変えた計測が可能。
n
n
ガラス融液表面流を計測するため、薄膜作製技術を生かしたガラス融
液表面流観察装置を開発
n
ガラス融液内部流計測計測についても、測定原理、装置、高温下にお
ける測定技術を開発
表面張力項も取り入れた三次元シミュレーションを開発
実験と計算の結果をフィードバックさせることによって改良
n
実験と計算機シミュレーションの両面から流れを把握することに成功した。
(23)
14
5.成 果 の 概 要 (3)
研究開発項目 3)
脱泡・均質化促進への
新対流制御技術の適用性評価
参考資料1-12
(24)
15
開発項目3)及び 実施状況
研究開発項目
平成 11 年 度
平成 12 年度
平成 13 年度
3.脱泡・均質化促進への新
対流制御技術の適用性評価
・評価方法、評価装置、サン
リボン作製装置設計・製作,
プル取得条件等の検討
ガラス品質評価方法の検討
(1)小 型 溶 融 炉 に お け る 流 れ の
溶融実験
解析
・ 計算機シミュレーション
コードの開発・計算実験
(2)流 れ の 制 御 と ガ ラ ス 品 質
品質測定・評価
(25)
ガラス原料投入、ガラス融液流出を加味した
計算機シミュレーションコードの開発
16
ガラス原料投入
ガラス原料の投入を考慮した より実際の生産炉に近いモデル
A)下部ヒーターの条件
20cm
20cm
15cm
10cm
B)ガラス原料が表面を覆う面積
以上の2点を変化させて計算する。
ガラス流出
スロート部
No. 下部ヒーター(kW)上部ヒーター(kW ) ガラス原料領域 ガラス流出口
P-1
12-14-7
10-10-10
20cm四方
10×15cm
P-2
10-11.7-5.7
10-10-10
20cm四方
10×15cm
P-3
8.5-9.5-10
10-10-10
20cm四方
10×15cm
P-4
14.3-9.3-2.7
10-10-10
20cm四方
10×15cm
参考資料1-13
1
7
(26)
溶融下部電力パターンによる流れの制御
溶融下部電力パターンによる流れの制御
パターン3, P-3
8.5kW - 9.5kW - 10.0kW (28.0kW)
y=0
パターン2, P-2
10.0kW - 11.7kW - 5.7kW (27.4kW)
パターン1, P-4
14.3kW - 9.3kW - 2.7kW (26.3kW)
18
目標達成状況: 項目3)
脱泡・均質化促進への新対流制御技術の適用性評価
・小型溶融炉の下部電力供給パターン調整
下部電力パターンの操作により流れの制御が可能であり、ガラス品質向上を図る ことができることを確認した。
・ガラス融液流れを制御
流れを最適条件に制御して溶融したガラスは、一定のガラス品質条件下で比較し たところ、現在のガラスびん生産における溶融温度よりも100℃以上も低い温度 でも溶融可能であることを確認した。低温溶融による省エネルギー効果(
約13%) を試算。
参考資料1-14
19
(28)
成 果 の 公 表
(1)研究発表・論文
学会、シンポジウム等で12件。内、海外で6件。
論文発表は7件。
(2)特許出願
1件の出願。 他 1件については検討中。
(3)広報、成果普及活動
雑誌での紹介、成果紹介記事3件。
講演 2件。
(29)
内外におけるガラス産業技術戦略
(プロセス技術関連から)
1997 米国 エネルギー省から
「Gl
ass Technol
ogy Roadmap」 発表
10年間の計画。 課題達成に優先順位。プロセス設計、 センシン
グ技術、燃焼モデル、環境・リサイクリング、等
2000 NEDO委託による調査報告書
「ガラス産業技術戦略2025年」発表
25年間のロードマップ。CO2削減、プロセスシミュレータの開発・検
証・実機化、環境負荷低減。
参考資料1-15
20
産業技術戦略策定基盤調査
ガラス産業技術戦略2025 技術戦略ロードマップ
21
(30)
微小重力環境を利用したガラス融液
内対流制御技術の研究開発
実用化、事業化の見通し
(政策目的達成時のイメージ)
省エネルギープロセスシミュレーターの
開発・
検証・
実機展開 (ガラス技術戦略ロードマップ2025)
1. プロセスシミュレーターモデルの開発
2. 高温物性の測定方法、流れの測定技術の確立
3. プロセスシミュレーターの検証
4. 新溶融システムの自動制御
5. 革新的ガラス溶融システムの普及
6. 多目的小型タンク炉への成果の実用(計画済)
参考資料1-16
22
(31)
23
(32)
今後の展開
(
政策目的達成までのシナリオ)
• 炉構造、規模を変えた実験データ及び
計算機流れ解析データの蓄積
• 計算機シミュレーション精度の向上と信頼
性の獲得
• 硝種、溶解規模に対応した最適炉設計技
術の確立
• 低温・
短時間溶融、省エネルギーの実現
(33)
研究開発項目 1)
微小重力環境を利用した
ガラス融液の高温物性の測定
参考資料1-17
(34)
実験装置
実験装置概略図
実験装置写真
(35)
測定方法
関係式
振動する液滴
ωl = l (l − 1)(l + 2 )
2
γ
ρa 0 3
ρa
1
τl =
⋅ 0
(l − 1)(2l + 1) µ
ωl :表面の角振動数
振動数
減衰時間
表面張力
粘性
2
l :振動のモード
τ l :振幅が初期値の
:振幅が初期値の1/
1/eeになるまでの減衰時間
a 0 :平衡形状半径
γ :表面張力
参考資料1-18
ρ :密度
µ :粘性
(36)
Area change
振動解析
融液の表面振動
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
Time (second)
周波数スペクトル
0
25
50
75
100
125
Frequency (Hz)
(37)
実験結果
Surface Tension [mN/m]
420
400
y = -0.0635x + 501.77 【微小重力実験】
380
360
y = -0.0208x + 399.17【リング引き上げ法】
340
320
300
1400
1500
1600
1700
1800
1900
Temperature [K]
高温融液の表面張力と温度の関係
参考資料1-19
2000
(38)
まとめ
微小重力実験により得られた表面張力の温度勾配
6.35×
6.35
× 10-5 [N/mK]
温度[[K] 質量
温度
質量[[g] 振動数
振動数[[Hz] 表面張力
表面張力[[N/m]
1433
1463
1563
1563
0.230
0.283
0.089
0.169
39
35
45
63
411.2
408.4
402.1
403.2
× 10-3
× 10-3
× 10-3
× 10-3
【液滴振動法
液滴振動法】
】による表面張力の値
(39)
試料組成
Composition of the glass sample
Compositi
on
SiO
2
CaO
Na 2O
Al2O3
Other
Mass rate
71.0%
13.5%
10.0%
2.5%
3.0%
参考資料1-20
(40)
リプロン法による
高温融液の表面張力測定
大阪府立大学 工学部 航空宇宙工学科
(41)
分散関係式
Laplace の式 と圧力方程式を液体表面に適用
ω 20
σ 
=   k3
ρ
Γ = 2νk 2
k
ω0
Γ
ρ
σ
ν
:リプロンの波数
:リプロンの角周波数
:リプロンの減衰率
:試料の密度
:試料の表面張力
:試料の動粘性率
ω0 と Γ は散乱光を周波数解析することによって得られる
パワースペクトル P (ω ) から求まる
P(ω ) ∝
Γ
(ω − ω0 )2 + Γ 2
ω0 : 中心角周波数
2Γ : 半値幅
参考資料1-21
(42)
Incident Beam
I (t ) = ES (t ) + ER (t )
2
= AS2 + AR2 + 2 AS AR cos (Ω S − ΩR )t + (φS − φR )
Photomultiplier Tube
Reference Beam
E R (t ) = AR exp [i (Ω Rt + φR ) ]
θ
Scattered Beam
ES (t ) = AS exp[i (Ω S t + φS )]
Liquid Surface 光ヘテロダイン法
(43)
M1
M2
SF
L1
Diffraction
Grating
L2
QWP
Semiconductor
Laser ( 100 mW )
L3
PBS
Sample
Photomultiplier
Tube
Experimental Apparatus
参考資料1-22
(44)
散乱光強度のスペクトル解析
5.88 kHz
0.1
1
10
0.1
100
1
10
100
周波数 ( kHz )
周波数 ( kHz )
Silicone100cSt (25℃)
Molten Glass (1365℃)
表面張力 実験値 21.1 [ mN/m ]
現在、明確なピークは得られていない
文献値 20.9 [ mN/m ]
(45)
表面張力の測定結果 (25℃)
Liquid
文献値
[ mN/m ]
実験値
[ mN/m ]
誤差
Water
74.0
60.3
18.5 %
Silicone oil 5 cSt
19.7
18.2
7.6 %
Silicone oil 10 cSt
20.1
18.8
6.5 %
Silicone oil 50 cSt
20.8
20.6
1.0 %
Silicone oil 100
cSt
20.9
21.1
1.0 %
参考資料1-23
(46)
原因と対策
ガラス融液の表面張力が大きく、容器とのメニスカスにより
液面が水平になりにくい
Fg
Fσ
=
Bo : 大
ρ gL 2
σ
Bo : Bond number
Fg : 重力による体積力 ( = ρgL3 )
Fσ : 表面張力による力 (
≈ σL )
水平になりやすい
容器側面
Bo =
Bo=410
Bo=100
Bo=10
L : 代表長さ
Bo=1
ρ : 液体の密度
直径方向
(47)
1
研究開発項目 2)
ガラス融液内の対流の
計測と制御技術の検討
参考資料1-24
(48)
2
1. 実験装置・計測技術の開発
(49)
3
1) 小型実験炉および温度計測技術の開発
ボード
上部ヒーター(間接加熱)
スパウトヒーター(間接加熱)
1
2
1
2
3
原料
ノズルヒーター
(間接加熱)
3
ガラス
流出
下部ヒーター
(直接通電加熱)
参考資料1-25
(50)
4
3対式熱電対と挿入位置
Y
天井
素地面
スロート
投入口
X
炉底
白金シース
3対式熱電対
10ヶ所の測定点 × 3対=30点の温度測定
→炉内温度分布測定,計算機シミュレーションの精度向上
(51)
5
2)ガラス融液表面流観察装置の開発
開発の方針
炉の上部よりCCDヘッドを挿入し、正確にガラス融液
表面流を観察する。
→ 厳重な断熱、炉内の雰囲気への影響を最小限にすることが
必要。
開発のポイント
① 高温雰囲気(最高約1500℃)からの断熱
② 放射光からの断熱
CCDまでの熱線を減らしたいが、可視光は透過させたい。
③ガラス溶融炉内からの蒸発物付着防止
参考資料1-26
(52)
6
ガラス融液表面流観察装置の模式図
Air
画像信号
CCDカメラ
ィルタ
フ
吸収
赤外
天井
ボード
Transmittance / %
100
80
60
2
40
20
0
3
4
1000
2000
Wavelength / nm
3000
100
NDフィル
タ
溶融炉内
石英基板
上に
Pt薄膜成
膜
Transmittance / %
Water
80
60
Pt(15 nm) / SiO2
40
Pt(5 nm) / SiO2
20
0
Pt(10 nm) / SiO2
1000
2000
Wavelength / nm
3000
(53)
7
ガラス表面流観察装置と撮影画像
トレーサー
参考資料1-27
8
(54)
3) ガラス融液内対流計測装置の開発
開発の方針
アルミナ球のついたアルミナパイプ,すなわち振り子棒で流れの力によっ
て受ける力を上部に伝達し、上部のセンサーでその力を感知する。
開発のポイント
① 10 -4 Nオーダーの流れの小さな力を測定できるようにする。
② 振り子棒のたわみに作用する浮力と重力のXY方向への分力の寄与を
考慮する。
③ 測定誤差諸要因を解析し対処する。
④ 振り子棒周囲の流れ場の測定に及ぼす影響を考慮する。
(55)
9
ガラス融液内対流計測装置の模式図
Z
50 mm
50 mm
50 mm
アクリル
パイプ
外φ 10 mm
内φ 7 mm
Y
X
ひずみ
ゲージ
アルミナ
パイプ
ガラスの流れの力, F
アルミナ球
参考資料1-28
10
(56)
振り子棒による流速の算出方法
n
’
x
棒(v )dz
i ①
t0
F球
t n-1
tn
M
t i-1
ti
l
Fi棒
n
t1
dA
Y
dr
r
R
π d 4 - d14
= 2
Eεx ②
32 d2
z
ひずみから算出できる曲げモーメ
σ
ント
M ' = x Iz
: I z = ∫ y 2dA y
y
(ⅱ) アクリルパイプに作用する曲
げ
(-)σmin
ti +ti−1 Fi
i=1 R+l−
2
O
z
(+)σmax
n−1
M = −∫ F球(vn ) dz − ∑∫
0
z
M
(ⅰ) 振り子棒(はり)に作用する
曲げモーメント
O
①,②式のつりあいから、仮の流速を算出すること
ができる。
d1
d2
しかし、仮の流速は振り子棒のたわみに作用する
浮力と重力のXY方向に分力の寄与を含んでいる。
11
振り子棒に作用する曲げモーメント
n −1 x
M x = − F球x − ∑ ∫
i =1 R +l −
ti +t i −1
2
f 棒 i (ti − ti −1)dx ①
Xs
Shear
Force
f l(L-R-l/2)
F sphereL
fl
F sphere
球
Bending
Moment
F = 6πηRv n (1 +
L
t0
t n-1
tn
R
F球
X
fi 棒
l
t1
参考資料1-29
3
Re ) i
16
IMAI ' s equation(1973)
f 棒i =
4p?vi
i
8
1
log
− ?+
Re
2
Re =
2 ρvi rsphere o r rod
η
γ= 0.57721
t i-1
ti
Z
12
RZ
Rx M
したがって、②式の曲げモーメントとつりあうため
①式を次式のように変形する必要がある。
z
n −1 z
M ' = − ∫ F (vn ) dz − ∑ ∫
球
L
0
Fb
s
X’
2
Molten
glass
θ
棒 (v )dz
M
+ ''①
i 振り子棒の任意の点のたわみsiは次式から算出する
ことができる。
d si
Ff
ti +t i −1 Fi
2
M ''= - ( F bi - Fg i ) si
Z’
Fx’
i =1 R +l −
dz2
M
= EI z
たわみの項の寄与を差し引くことにより、真の流
速を算出することができる。
Fg
(59)
振り子棒周囲の流れ場の測定に及ぼす影響
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
-8
-9
-10
(ⅰ) 球を通り過ぎる一様
な流れの棒に及ぼす影響
3 a a3
)sin θ
4 r 4r3
r/ a
vθ = - U (1 -
13
(ⅱ) 有限流体内で球の受ける
力の算出
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
vθ
0
φ0
r
H =r /a
R0
-2
H
θ
-4
-6
-8
-10
0
参考資料1-30
0.2
0.4
0.6
0.8
抵抗, 1- (El */6π)
1
14
測定誤差諸要因の評価
誤差要因
1. 振り子棒の昇降に伴う傾きの変動
影響
大
(0.025°以内の
鉛直性要)
振り子棒のXY方向に作用する浮力と重力の分力の差の変化
2. ひずみゲージの傾斜
(1) ひずみゲージ貼付け時のZ軸からの傾斜
(2) ひずみゲージ貼付け時のXY軸からの傾斜
(3) 振り子棒据付時のXY軸からの傾斜
Z
X
大
(校正要)
3. ひずみゲージ貼付け部肉厚の測定値からのずれ
断面2次モーメントの4乗項
4. ひずみゲージ周囲の温度変化
ほとんどない
ゲージ貼付け材料とひずみゲージの熱膨張率差
5. 空気の流れ
(
風防要)
振り子棒に曲げの力作用
15
流れ計測装置写真
ひずみゲージと
リード線
水冷ボックス
風防
小型実験炉と
対流計測装置
装置のひずみゲージ
貼付け部
参考資料1-31
16
2.コンピュータ・
シミュレーションコードの開発
(63)
17
開発経過
炉内の高温ガラス流体について
・実験値と計算値の比較
・対流の制御
・生産ガラスの質についての評価
(次節で述べる)
参考資料1-32
(64)
上部ヒーター
18
小型ガラス溶融炉
1
2
3
原料
1
2
3
下部ヒーター
計算領域
ガラス
流出
スロート部
Z
径4cm
計算モデル
Y
Lx=1.0m
Ly=0.5m
X
20cm
Lz
20cm
Lz=0.35m
Ly
Lx
仮定一覧
・ガラスは均一でNewton流体
・ガラス原料の相変化は考えない
・溶解ガラスは多粘性で層流
・表面からの蒸発・泡発生の過程・融解
による輻射特性の変化は無視
参考資料1-33
(65)
19
(66)
20
基礎方程式
3次元非圧縮性Navier-Stokes方程式 ・Boussinesq近似
∂u ∂v ∂w
+
+
=0
∂x ∂y ∂z
 ∂u
∂u
∂u
∂u 
∂p ∂  ∂u  ∂  ∂u  ∂  ∂u 
ρ 
+u
+ v + w  = −
+ µ  + µ  + µ 
∂x
∂y
∂z 
∂x ∂x  ∂x  ∂y  ∂y  ∂z  ∂z 
 ∂t
 ∂v
∂v
∂v
∂v 
∂p ∂  ∂v  ∂  ∂v  ∂  ∂v 
ρ  + u + v + w  = − +  µ  +  µ  +  µ 
∂x
∂y
∂z 
∂y ∂x  ∂x  ∂y  ∂y  ∂z  ∂z 
 ∂t
 ∂w
∂w
∂w
∂w 
∂p ∂  ∂w  ∂  ∂w  ∂  ∂w 
ρ 
+u
+v
+ w  = −
+ µ
 + µ
 + µ

∂x
∂y
∂z 
∂z ∂x  ∂x  ∂y  ∂y  ∂z  ∂z 
 ∂t
+ ρgβ (T − T0 )
 ∂T
∂T
∂T
∂T  ∂ 
∂T  ∂ 
∂T  ∂ 
∂T  •
ρC P 
+u
+v
+ w  =  κ eff
 +  κ eff
 +  κ eff
+Q
∂x
∂y
∂z  ∂x 
∂x  ∂y 
∂y  ∂z 
∂Z 
 ∂t
数値計算法:SMAC法により定常状態になるまで計算
2
1
(67)
物性値
比熱 Cp
一定の値
熱伝導率 κ
粘性率μ(T)
輻射熱伝導率 κrad(T)
温度のみの関数
表面張力 σ(T)
密度ρは浮力項でのみ温度依存性を考慮
境界条件
壁では、速度はゼロ、温度は実験データから外挿
自由表面では、表面張力と上部ヒーターからの熱流束を考慮
参考資料1-34
22
3. 温度及び流れ測定値による数値シミュレーション
解析結果の検証
23
(69)
実験炉での温度測定箇所
スロート
投 9
入
口
10
1
11
3
13
5
7
X
2
12
4
14
6
8
Y
TC
X
Y
9
-0.495
0
1
-0.35
0
11
-0.18
0
3
0
0
13
0.16
0
5
0.35
0
7
0.48
0
TC
X
Y
10
-0.495
0.19
2
-0.35
0.19
12
-0.18
0.19
4
0
0.19
14
0.16
0.19
6
0.35
0.19
8
0.48
0.19
参考資料1-35
単位: m
(70)
24
4
κ (W/mK)
1500
0.370
3
2
熱伝導率
Cp(J/kgK)
experiment data
2000
表面張力 σ (N/m)
2500
比熱
1000
500
0
600
800
1000
1200
1.5
1
0
1000 1200 1400 1600 1800 2000 2200
1400
0.365
0.360
-dσ/dT=2.07 X 10
0.355
0.350
16001650 1700 17501800 1850 19001950
o
温度 T ( C)
o
温度 T( C)
-5
温度 T (K)
2000
1500
1000
1300 1350 1400 1450 1500 1550 1600
25
aporoximated
exrerimental value
450
400
µ(Pas)
密度 ρ(Kg/m3)
2500
500
350
300
粘度
experimental value
3000
熱伝導率 κrad (W/mK)
3500
250
200
100
1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600
o
µ=exp(5441/(T-469.0)-3.409)
15
10
5
150
温度 T ( C)
20
温度
0
1300
o
1400
1500
1600
1700
温度 T (K)
T ( C)
体積膨張率 β (1/k)
1 0 1 0-5
9 1 0-5
8 1 0-5
-5
7 10
ガラス融液物性値の温度依存性
-5
6 10
-5
5 10
1300 1350 1400 1450 1500 1550 1600
温度
X=-0.35 (TC1)
0
-0.05
25
-0.10
z (m)
-0.15
-0.20
-0.25
-0.15
-0.20
-0.25
-0.30
-0.30
-0.35
1250
-0.35
1250
1300
1350
o
1400
1450
Y=0.0
1450
1300
T (C )
1350
o
1400
1450
T (C )
1400
T (C )
z (m)
-0.10
(71)
X=-0.18 (TC11)
ガラス表面温度
o
0
-0.05
o
T ( C)
1350
1300
1250
-0.50
-0.05
0
-0.05
-0.10
-0.10
-0.15
-0.20
-0.25
-0.30
-0.35
1250
X=0.16 (TC13)
Numerical values
-0.15
-0.20
-0.25
-0.30
1300
1350
o
T (C )
1400
1450
-0.35
1250
1300
1350
o
1400
T (C )
炉内温度分布の実験と数値計算との比較
参考資料1-36
-0.25
0
x (m)
Experimetal values
z (m)
z (m)
0
X=0.35 (TC5)
1450
0.25
0.50
(72)
26
ガラス融液表面での流速測定
measurement
computer simulation
velocity, v / m h
-1
5
0
-5
-0.5
0
position, x / m
0.5
27
小型実験炉の座標 と測定実施場所
Z
流れ計測
実施場所
流れ計測
実施場所
0.25 m
Y
素地面
-0.5 m
-0.18 m
-0.25 m
0
0.16 m
X
0.5 m
0.35 m
-0.35 m
スロート
0.5 m
1m
参考資料1-37
(74)
28
ガラス融液内部の流速測定
position,y / m
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
position,x / m
-0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1
Throat
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
Surface
measurement
0
depth,z / m
0
-0.1
-4 -2 0 2 4
Velocity,vy / (m / h )
-0.2
-0.3
Computer
Simulation
-6-4 -2 0 2 4 6
Velocity,vx
/ (m / h)
-6-4-2 0 2 4 6
Velocity,v x
/ (m / h)
1250 1300 1350 1400
Temperature ,T / (m / h )
29
4.数値シミュレーションによるガラス溶融炉内
流れの解析
参考資料1-38
30
(76)
●計算条件[ⅰ]下部ヒーターの条件
下部ヒーターの電力を変化させた場合の様々なケースについて
各々の対流を調べ、実験炉の測定データとの比較も行う。
No.上部ヒーター(kW)
A-1
6.0-6.0-6.0
A-2
6.0-6.0-6.0
A-3
6.0-6.0-6.0
A-4
6.0-6.0-6.0
A) 弱ー強ー弱
下部ヒーター(kW)
3.0-13.0-3.0(※)
4.5-12.0-4.5(※)
6.0-10.4-6.0(※)
7.5-8.0-7.5(※)
No.上部ヒーター(kW) 下部ヒーター(kW)
B-1
6.0-6.0-6.0
10.0-7.0-4.0
B-2
6.0-6.0-6.0
11.5-5.5-4.5
B-3
6.0-6.0-6.0
8.0-7.0-6.0
B-4
6.0-6.0-6.0 5.0-5.0-13.2(※)
B) 強ー中ー弱
No.上部ヒーター(kW) 下部ヒーター(kW)
C-1 6.0-6.0-6.0
9.0-3.0-9.0
C-2 6.0-6.0-6.0
7.5-6.0-7.5
C-3 6.0-6.0-6.0 9.0-4.7-9.0 (※)
C) 強ー弱ー強
(※)は実験値のあるもの
(77)
31
・下部ヒーターの条件
・壁からの熱損失
・表面バッチ(低温) の影響
対流制御
A
弱
強
弱
B
強
中
弱
C
強
弱
強
参考資料1-39
炉内対流特性
A)A)弱ー強ー弱
32
(78)
A‐1 (3.0-13.0-3.0 kW)
B) 強ー中ー弱
B‐2 (11.5-5.5-4.0 kW)
C) 強ー弱ー強
C‐1 (9.0-3.0-9.0 kW)
3(79)
3
1450
Temperature, T / ℃
Temperature, T / ℃
ガラス融液内部の温度
条件A
1400
1350
A
1300
1250
-0.5
0
0.5
1450
1400
条件C
1350
A
1300
1250
-0.5
Position, x / m
x
参考資料1-40
0
Position, x / m
0.5
34
5.数値シミュレーションによるガラス溶融炉内
流れの仮想実験
(81)
壁からの熱流失による対流の制御
境界での熱流束の条件を以下の式として、
壁からの熱流失を制御する。
κ eff
∂T
= h(TB − Ta )
∂n
参考資料1-41
h :熱伝達率
TB :境界の温度
Ta :周囲の温度
35
(82)
(熱流失)case1
36
Y-Z平面に起こる循環(二次流れ)を
強くして、全体の対流に及ぼす影響を
調べる。
側壁からの熱流失が実際の実験炉の100倍の値を
もつと仮定する。
Y=0.0
対称面
熱
流
失
37
(83)
(熱流失)case1 結果
熱流:Aタイプ
X=-0.14mでのY-Z平面
Y=0.0 m 対称面
側壁からの
熱流失大
○下部ヒーター電圧 (4.5-12.0-4.5 kW) caseA-2
参考資料1-42
(84)
(熱流失)case2
38
上昇流の強い範囲を炉底面から
の熱流失により制御する。
底面の一部の熱流失が実際の実験炉の300倍の
値をもつと仮定する。
流出領域は底面は[-0.1≦ X ≦ 0.1]の帯状の範囲
(下部ヒーターの真下の部分の底部)
X=-0.1
X=0.1
熱流失
(熱流失)case2 結
果
3(85)
9
熱流:Cタイプ
X=0.0mでのY-Z平面
Y=0.0 m 対称面
底面からの
熱流失大
○下部ヒーター電圧 (9.0-4.7-9.0 kW) caseC-3
参考資料1-43
4
0
(86)
6.表面局部加熱によるガラス流れへの効果
(87)
41
炭酸ガスレーザを用いた
ホットスポット作製
炭酸ガス
レーザ
シート状
レーザ
波長10.6 μm
観察
(カメラ)
シリコーン
オイル
+ トレーサ
シリコーンオイルサイズ
100 mm×35 mm
参考資料1-44
(88)
42
ホットスポット作製に
よるトレーサの軌跡
トレーサの軌跡(30分露光写真)
シリコーンオイルサイズ 100 mm×35 mm
照射条件:炭酸ガスレーザ(波長10.6 μm) 強度1 W、
ビーム径約φ5 mm、照射時間 30分
シリコーンオイル:動粘度:30000 cSt、粘度 29.3 Pa・s
(びんガラス1312℃相当の粘度)
43
(89)
小型溶融炉でのホットスポット
作製(直接通電)
参考資料1-45
4
4
(90)
小型溶融炉でのホット
スポット作製結果
ホット
スポット
0
0.1
0.2
0.3
位置X / m
ホットスポットなし
ホットスポットあり
2分後とのトレーサの位置
供給電力1.1 kW (58.7 V × 19.7 A)
45
Ma
Ma=0.0
Ma x 10
Experiment
Y=0.0
0.003
Ma
Ma=0.0
Ma x 10
Experiment
1400
0.001
o
T (C )
u (m/s)
0.002
Y=0.0
1450
0
-0.001
1300
-0.002
-0.003
-0.5
1350
-0.25
0
0.25
0.5
x (m)
1250
-0.5
-0.25
0
0.25
0.5
x (m)
計算機シミュレーションで求めた
Maを変えた場合の表面流速
計算機シミュレーションで求めた
Maを変えた場合の表面温度
参考資料1-46
46
(92)
目標達成状況
n
n
n
n
タンク炉を模した小型実験炉の開発、ガラス表面及び内部
の流れ計測装置・測定技術を確立した。
三次元計算機シミュレーションコードを開発し、実験と計算
の結果を絶えずやり取りすることによって、信頼できる流れ
の解析結果を得ることができた。
いろいろなパターンの電力供給分布で対流の違いを調べ、
熱源供給と放熱を変えることによって対流制御できる方策
を得た。
マランゴニ対流の効果を実験と計算シミュレーションによっ
て調べた。その結果、非定常状態では効果が認められた
が、定常状態ではその効果は認められなかった。
(1)
研究開発項目3
研究開発項目3)
)
脱泡・
均質化促進への
脱泡・
均質化促進への
新対流制御技術の適用性評価
新対流制御技術の適用性評価
最終目標
小型溶融炉における
1. 新しいガラス融液内対流制御方法
の適用性評価
2. ガラス製造プロセスの省エネルギー
効果の試算
93
参考資料1-47
(94)
(2)
計画内容の詳細
n
n
ガラス製造プロセスの省エネルギーに直接関係する、
ガラス融液の脱泡・均質化促進についての、
新しいガラス融液内対流制御方法の適用性評価
評価方法、評価装置、サンプル取得条件等の検討
(1)ガラス原料投入、ガラス融液流出下で
の、小型溶融炉内流れの解析
(2)流れの制御とガラス品質
(3)省エネルギー効果の試算
(95)
(3)
(
1
)
ガラス原料投入、
ガラス融液流出下での、
(
1
)
ガラス原料投入、
ガラス融液流出下での、
小型溶融炉における流れの解析
小型溶融炉における流れの解析
ガラス原料投入、ガラス融液流出
(溶融下部電力 3パターン)
n ガラス融液内部流れ、表面流れの計測
n ガラス原料投入、
ガラス融液流出を加味し
た計算機シミュレーションコードの開発
n 計測結果と、計算機シミュレーショ
ン結果
の対比
n
参考資料1-48
(96)
(4)
ガラス原料投入、
ガラス融液流出
ガラス原料投入、
ガラス融液流出
(
溶融下部電力 3
パターン)
(
溶融下部電力 3
パターン)
上部ヒーター
スパウトヒーター
フリントガラス
料
2
3
1
2
3
ガラス
流出
下部ヒーター
パターン2
P-2
P-1
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
30.0
30.0
P-2
P-1
10.0
12.0
11.7
14.0
5.7
7.0
27.4
33.0
57.4
63.0
20.3
22.4
パターン3
P-3
10.0
10.0
10.0
30.0
P-3
8.5
9.5
10.0
28.0
58.0
20.0
上 部電 力
下部 電力
12
18
10
16
8
kW
パターン1
P-4
P-5
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
30.0
30.0
P-4
P-5
14.3
15.8
9.3
10.0
2.7
4.5
26.3
30.3
56.3
60.3
19.7
20.3
上部電力 / kW
投入口側
中央
スロート側
(小計)
下部電力 / kW
投入口側
中央
スロート側
(小計)
(合計)
引上 (kg/h)
14
P-4
6
P-5
12
P-4
P-2
10
P-5
8
P-2
6
P-1
P-1
4
P-3
kW
(カレット/生原料=8) 原
1
P-3
4
2
2
0
0
投 入口 側
中央
スロー ト
側
投入口側
中央
スロート側
(5)
ガラス原料投入・
ガラス融液流出の有無による、
ガラス原料投入・
ガラス融液流出の有無による、
X
方向流れ変化(
計測結果)
X方向流れ変化(計測結果)
投入流出無し(6kW-10.4kW-6kW )
パターン2 - P1 (12kW-14kW-7kW )
X方向流速分布
position,x / m
-0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1
0
Throat
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
温度分布
depth,z / m
0
-0.1
投入・流出有
投入・流出有
無
-0.2
-0.3
-6 -4 -2 0 2 4 6
Velocity,vx
/ (m / h)
-6 -4 -2 0 2 4 6
Velocity,vx
/ (m / h)
下部電力分布
参考資料1-49
1100 1200 1300 1400 1500
Temperature ,T / ℃
(98)
(6)
ガラス原料投入、ガラス融液流出を加味した
計算機シミュレーションコードの開発
ガラス原料投入
ガラス原料の投入を考慮した より実際の生産炉に近いモデル
20cm
20cm
15cm
10cm
A)下部ヒーターの条件
B)ガラス原料が表面を覆う範囲
ガラス流出
スロート部
以上の2点を変化させて計算する。
No. 下部ヒーター(kW)上部ヒーター(kW ) ガラス原料領域 ガラス流出口
P-1
12-14-7
10-10-10
20cm四方
10×15cm
P-2
10-11.7-5.7
10-10-10
20cm四方
10×15cm
P-3
8.5-9.5-10
10-10-10
20cm四方
10×15cm
P-4
14.3-9.3-2.7
10-10-10
20cm四方
10×15cm
ガラス原料が表面を覆う
範囲を変えたときの流れ変化
ガラス原料が表面を覆う
範囲を変えたときの流れ変化
(
計算機シミュレーション結果)
(計算機シミュレーション結果)
実際に観察
実際に観察
(99)
(7)
ガラス原料が
表面を覆う範囲
投入口側
20cm□
内部流れ計測位置
内部流れ計測位置
50%
75%
パターン2, P-1
下部電力分布
12.0kW - 14.0kW - 7.0kW (33.0kW)
参考資料1-50
計算機シミュレーション結果例Ⅱ
計算機シミュレーション結果例Ⅱ
0.00
(100)
(8)
仮想粒子の温度履歴
仮想粒子の温度履歴
0.25
-0.05
0.20
-0.15
Y (m)
Z (m)
-0.10
-0.20
0.15
0.10
-0.25
0.05
-0.30
-0.35
-0.5
0.0
0.00
-0.5
0.5
0.0
1380
1380
1360
1360
1340
1340
1320
1320
1300
1280
1300
1280
1260
1260
1240
1240
1220
-2.0
-1.5
-1.0
0.5
X (m)
T (oC)
o
T ( C)
X (m)
-0.5
1220
-2.0
0.0
t (h)
A)-1
B)-1
B)-2
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
t (h)
A)-1
A)-2
A)-3
A)-4
流出口(スロート部)から逆算した仮想粒子20個の平均温度履歴
(101)
(9)
(
2
)
流れの制御と
(
2
)
流れの制御とガラス品質
ガラス品質
n
溶融下部電力パターンによる、流れの制御
流出ガラスの品質評価
(泡:シードカウント、均質性:シェルブスキー法)
n 解析
(溶融下部電力パターン、流出ガラス品質、トータル
n
電力量)
参考資料1-51
(10)
溶融下部電力パターンによる流れの制御
溶融下部電力パターンによる流れの制御
パターン3, P-3
8.5kW - 9.5kW - 10.0kW (28.0kW)
y=0
パターン2, P-2
10.0kW - 11.7kW - 5.7kW (27.4kW)
パターン1, P-4
14.3kW - 9.3kW - 2.7kW (26.3kW)
溶融下部電力パターンによる流れの制御。
溶融下部電力パターンによる流れの制御。断面の流れ
断面の流れ
C.L.
C.L.
(a)
(b)
(103)
(11)
C.L.
(c)
パターン2, P-1
12.0kW - 14.0kW - 7.0kW (33.0kW)
(a) (b)
(c)
下部電力分布
参考資料1-52
(104)
(12)
流出ガラスの品質評価、
及びガラス融液温度分布
流出ガラスの品質評価、
及びガラス融液温度分布
パターン2
P-2
P-1
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
30.0
30.0
P-2
P-1
10.0
12.0
11.7
14.0
5.7
7.0
27.4
33.0
57.4
63.0
6.9
0.97
66
64
20.3
22.4
P-2
P-1
1,360
1,385
1,310
1,365
1,320
1,375
パターン3
P-3
10.0
10.0
10.0
30.0
P-3
8.5
9.5
10.0
28.0
58.0
0.48
73
20.0
P-3
1,330
1,320
1,340
上部 電力
下 部電力
12
18
10
16
8
14
P-4
12
P-5
6
P-4
P-2
P-1
10
P-5
kW
パターン1
P-4
P-5
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
30.0
30.0
P-4
P-5
14.3
15.8
9.3
10.0
2.7
4.5
26.3
30.3
56.3
60.3
7.6
0.41
72
76
19.7
20.3
P-4
P-5
1,330
1,395
1,272
1,343
1,268
1,340
kW
上部電力 / kW
投入口側
中央
スロート側
(小計)
下部電力 / kW
投入口側
中央
スロート側
(小計)
(合計)
シードカウント (個/g)
均質度(透過率%)
引上 (kg/h)
ガラス融液温度
中央上
スロート側上
スロート側下
P-3
P-2
8
P-1
4
P-3
6
4
2
2
0
0
投入 口側
中央
投入口側
ス ロート側
中央
スロート側
レジデンスタイム:
0.85日
レジデンスタイム:
0.85日
カレット比:
89%
カレット比:
89%
(105)
(13)
流れの制御とガラス品質
流れの制御とガラス品質
P-4
下部電力小計a
引上 (kg/h)b
-1
a/b(kW/kgh )
シードカウント (個/g)
均質度(透過率%)
パターン1
P-5
-解析-解析-
P-2
1.430
1.30
73.6
参考資料1-53
(
a
/b
一定に規格化)
(
a
/b
一定に規格化)
パターン2
P-1
1.430
1.90
64.7
パターン3
P-3
28.6
20.0
1.430
0.48
73
(106)
(14)
(
3
)
省エネルギー効果試算Ⅰ
(
3
)
省エネルギー効果試算Ⅰ
(
下部電力パターン調整による
(
下部電力パターン調整による
シードカウント一定に規格化
シードカウント一定に規格化)
)
パターン1
P-4
下部電力小計a
引上 (kg/h)b
a/b(kW/kgh-1)
省エネルギー(%)
シードカウント (個/g)
パターン3
P-3
28.6
20.0
1.430
▲ 5.8
0.48
パターン2
P-5
P-2
30.8
20.7
1.484
▲ 2.2
0.48
P-1
30.5
21.3
1.518
ベース
0.48
下部電力の省エネルギー効果:
▲
5
.
8
%
下部電力の省エネルギー効果:
▲
5
.
8
%
溶解電力の省エネルギー効果:
約▲3%
溶解電力の省エネルギー効果:
約▲3%
(107)
(15)
小型溶融炉とガラスびんタンク熔融炉の
小型溶融炉とガラスびんタンク熔融炉の
融液温度比較
融液温度比較
シードカウント∼ 0.5個/g条件での一データ
ガラスびん フリント
タンク溶融炉
小型溶融炉
(パターン3)
スロート側電極中心上
ガラス融液温度/℃
1,320
ブリッジウォール
温度/℃
1,560
スロート側電極中心下
ガラス融液温度/℃
1,340
スロート側1/3
炉底貫通
ガラス融液温度/℃
1,300
(
平均)
1,330
(
平均)
差100℃
参考資料1-54
1,430
(108)
(16)
(
3
)
省エネルギー効果の試算Ⅱ
(
3
)
省エネルギー効果の試算Ⅱ
(
ガラス融液温度100℃低下による。
(
ガラス融液温度100℃低下による。ガラスびんタンク溶融炉
ガラスびんタンク溶融炉)
)
ガラス融液温度低下による放熱損
失減少個所(全出熱の52.73%)
100
×0.5275×100=3.8%
(1430-30)
省エネルギー効果:
省エネルギー効果:
▲
3
.
8
%
▲
3
.
8
%
びんガラス溶解炉熱精算図
びんガラス溶解炉熱精算図
緒方晴彦:ガラス製造の現場技術, Vol.2.(社)日本硝子製品工業会, 1993, pp88
(109)
(17)
(
3
)
省エネルギー効果の試算Ⅲ
(
3
)
省エネルギー効果の試算Ⅲ
(
ガラス融液温度100℃低下による。
(
ガラス融液温度100℃低下による。小型溶融炉
小型溶融炉)
)
P-5
スロート側電極中央上
ガラス融液温度℃
スロート電極中央下ガ
ラス融液温度℃
平均 ℃
差 ℃
溶解槽電力kW
差 kW (%)
ガラス融液温度
▲10 0℃ による
溶解電力削減(
%)
P-4
1,343
1,272
1,340
1,268
1,342
1,270
▲72
60.3
56.3
▲6.6
▲9.2
P-1
1,365
1,310
1,375
1,320
1,370
1,315
▲55
63.0
57.4
▲8.9
▲16.2
省エネルギー効果:
省エネルギー効果:
▲
1
2
.
7
%
▲
1
2
.
7
%
参考資料1-55
P-2
目標達成状況
目標達成状況
(110)
(18)
原料供給流出を加味した計算機シミュレーションコードを開発し、ガラス原料投入・
融液流出条件下での流れ計測により、正確性が概確認できた。
目標1. 小型溶融炉における
新しいガラス融液内対流制御方法の適用性評価
下部電力パターンの操作により、ガラス融液内対
流制御が可能であり、ガラス品質向上を図りうる事
を明らかできた。
目標2. ガラス製造プロセスの省エネルギー効果の試算
ガラス熔融炉の規模にもよるが、ガラス融液内対
流制御により、3∼13%の省エネルギーが可能と
試算できた。
参考資料1-56
参考資料2
プロジェクト実施者からの補足資料
コメント1:「総合評価」に関して
本事業は、省エネルギー達成を目的としていること、ガラス産業界全体に波及する研究
開発であることから、政策および社会ニーズと合致している。
研究開発段階では、研究推進委員会などからの提言により、研究方針や方法の見直しが
なされており、マネイジメント手法は評価できる。
最終成果として、新しい計測技術を開発し、高温ガラス融液の流速データを取得したこ
とは、世界でも初めてのケースであり、事業全体の目標は概ね達成しているが、微小重力
施設を使用して行った熱物性計測に関しては、目標の達成度が低い。
実用化や事業化に関しては、基礎的研究に重点が置かれていたため、実現までには多少
の時間を要することは否めないものの、商業炉への展開など、各開発技術の実用性は高い。
以上のことから、本事業は、的確なマネイジメントにより所期の目標を達成した。ガラ
ス業界全体のレベルアップを図るため、実用化を視野に入れた研究が継続されることを期
待する。
実用化に関して数十から数百トンレベルのガラス溶融炉に適用するためには
更なる実証試験が必要ですが、ガラスの種類は多岐に亘っているため、ガラス
溶融炉は大小さまざまな規模のものが必要とされています。現に電気・電子用、
光学用、その他特殊ガラスなど少量生産品には小型炉が使用されています。数
トンまでの規模の小型連続溶融炉は大型炉に比べて均質なガラスを生産するに
は技術的に難しく、また大型炉ほどは研究開発が進んでいません。過去には国
の助成を得て幾度か研究されたこともありますが、炉の構造とガラス品質の関
係が調べられた程度で、対流を制御して小型炉で良質なガラスを製造するとい
う技術的な開発段階には程遠い状況にあります。
連続溶解式の小型タンク炉開発・操炉の技術的な観点から、本研究の成果は
横型の小型商業炉に直接結びつくものであり、この意味からも成果の活用が望
まれます。
参考資料 2-1
コメント2:「今後の研究開発の方向性等に関する提言」に関して
国内全体の省エネルギーの観点からすると、ランニングコストという点で事業化できる
のかの見極めと、溶融炉を構成する炉材の侵食など、設備の耐久性についても評価が必要
である。
ソフトウェアベースとなる数値解析技術は、開発したソースコードの整備・マニュアル
化によって実用的な研究成果があがる。今後の同様なプロジェクトにおいては、企画立案
段階からそのシミュレーションコードの公開法を検討する必要がある。
欧米との競争を考えると、本技術開発の成果を踏まえて、高度なプロセス・シミュレー
タの開発に、直ちに着手することが強く望まれる。
また、微小重力施設は実験遂行上の制約が多く、費用も高いことから、今後の同様なプ
ロジェクトに関しては、使用頻度などを柔軟に検討する必要がある。
本研究成果の一つである対流制御技術の信頼性と低温溶融の可能性とを確証
して普及を図っていくことが、省エネルギー化の立場からすれば、今後研究開
発を進めていくべき方向性であると考えます。
本研究の目的は、現在の生産用ガラス溶融炉において対流を制御することに
よってガラス溶融の高効率化を目指すものです。主たる目標は重油燃焼炉式の
タンク炉を念頭においていますが、対流制御のために補助手段として電気ブー
スティング、バブリング、スターラーなどを併用するとしてもそれらは既に生
産炉において使用されており、論点はそれらの最適な配置と流れの制御に如何
に効果的に設備され、使用されるかということです。したがって、目的に近づ
く途中段階でも開発程度に応じてガラス溶融の効率化が計られ、コストメリッ
トはでると思います。まして、低温溶融が達成できればエネルギーコストの低
減と炉材等の長寿命化に貢献することは言うまでもありません。
以上のように、本成果の発展方向に問題解決の意味を含んでいると思います。
参考資料 2-2
コメント3:「実用化、事業化の見通しについて」に関して
シミュレーションに関しては、基本的要素技術の構築ができており、今後は汎用なモデ
ルへと進化させることによって、商業炉への展開など、実用的なプロセスシミュレータへ
と発展することが期待できる。流速計測技術は、ガラス融液以外の高温融液や高粘性・不
透明流体への適用が可能である。
本事業は、基礎的研究に重点が置かれており、実用化と事業化への移行には、多少の時
間を要することは否めない。今後も、ガラス業界全体のレベルアップを図るため、継続し
た研究を期待する。
総合評価のところで実施者の補足説明として述べましたように、ガラスの溶
融技術は多岐に亘っています。一方、本研究における炉内流れの解析技術は、
タンク溶融炉に共通な基盤技術ですので、本成果はいろいろの利用の仕方と発
展の方向があります。
今回実験に用いた炉はガラス内容量約0.5トン(ソーダ石灰ガラス)であ
り、板ガラスやびんガラス用の炉に比べると数百分の一のスケールですが、電
気・電子用ガラス、光学ガラス等の小型溶融炉では数トン以下、場合によって
は実験炉と同規模のものもあります。また、小型溶融炉では電気溶融炉が多く、
エネルギーや設備コスト面からも今回の成果を利用するにあたって特に問題と
はならず、むしろコスト低減に結びつくと考えられます。したがって、小型の
タンク溶融炉での成果の活用は可能と思います。
参考資料 2-3
コメント4:委員のコメントに関して
1)事業の目的・政策的位置付けについて
○(評価者コメント部分)しかしながら、考慮すべき複数の物性値の中で、表
面張力の重要性がやや過大評価されているきらいがあり、……。
2.個別技術に対する評価
2.1 ガラス融液の高温物性の測定
○(評価者コメント部分)ガラス融液の表面張力データを供給するという視点
では、……。リング引き上げ法で十分である。
○(評価者コメント部分)
データの現状調査が不十分である。過去の研究につ
いて……。
測定法、測定者により表面張力の値にかなり差があるというのは知られてお
り、リング引き上げ法が十分であるという確証はありません。したがって、本
研究では、通常用いられている 3 種の方法で測定し、やはりかなり差のある結
果を得ました。それで本研究途中においても敢えてこの研究項目の中止をせず、
革新的な非接触測定法を開発し、正確な値を測定する努力を続けました。
一方、表面張力項の流れへの影響についてこれまで検討されたことはなく、
事前調査(評価)にも限界がありました。実験と数値解析を同時に計画する本
研究において、表面張力が流れに寄与する程度の大小に関わらず、純粋の技術
的な側面から明らかにしておくべきよい機会と考えて計画しました。
参考資料 2-4
参考資料3
本資料は、第1回「微小重力環境を利用したガラス融液内対流制御技術の研究開発」
(事
後評価)分科会において、評価の事務局である新エネルギー・産業技術総合開発機構技術
評価部から、株式会社日鉄技術情報センターへ関連技術の周辺動向調査を依頼したもので
ある。
「微小重力環境を利用した
ガラス融液内対流制御技術の研究開発」
周辺動向調査報告書
㈱日鉄技術情報センター
参考資料 3-1
1.概要
概要
ガラス製造プロセスで消費されるエネルギーの殆どを占めている溶融炉における省
エネルギーを実現するためには、ガラスの溶融・脱泡・清澄過程を理解し制御すること
が不可欠である。
本研究開発においてはガラスの高温領域における物性値を熱対流の影響を避けた微
小重力下で正確に測定し、これを用いたシミュレーションモデルを開発することにより、
ガラス融体の流動に対する熱対流およびマランゴニ対流の影響を明かとして新たな対
流制御技術を確立しようとするものである。これによりガラスの溶融・脱泡・清澄過程
の最適化を図り、省エネルギーを実現する。
本プロジェクトは経済産業省の国際協力事業費補助金(エネルギー使用合理化技術開
発費等補助金に係わるもの)により新エネルギー・産業技術総合開発機構が進めている
国際協力事業の一つであり、日本山村硝子㈱に研究開発を委託(一部を大阪府立大学、
産業技術総合研究所、米国ミズーリ・ローラ大学と共同研究)し、平成 11 年から 13 年
度までの 3 年間研究が行われた。
2.周辺動向調査
1) 周辺プロジェクト
表 1 ガラス溶融プロセスないしはガラスの高温物性測定にかかわるプロジェクト
①
②
経済産業省関連
(文部科学省/NASDA)
)
「ふわっと‘92」(FMPT)/SL−J
③
宇宙実験協力/第1次微小重力科学実験室計
画(MSL-1) 米国航空宇宙局(NASA)/STS−
83,94
④
宇宙実験協力/第2次微小重力科学実験室計
画(IML-2) 米国航空宇宙局(NASA)/STS−
65
ガラス融体物性評価技術プロジェクト
NEDO/日本規格協会
H10∼12 1.1 億円
高純度・透明石英ガラスの省エネルギー型製造技
術の開発 地域コンソーシアム研究開発事業
H11∼13
M−8:ガラスの高温挙動(京都大学)
M−16:温度勾配及び超音波定常波のある場に
おける泡の挙動の解明(航空宇宙技術研究所)
M−18:無重力下での材料製造過程におけるマ
ランゴニ対流の研究(石川島播磨重工㈱)
FMPT、IML-2 で開発した大型灼熱炉を改修してス
ペースシャトルに搭載し、材料系微小重力実験と
して微小重力下での拡散に関する測定。
1997 年 4 月及び 7 月
微小重力下での熱駆動流の研究(NASDA)
1994 年 7 月
参考資料 3-2
2)ガラス産業の現状と将来予測
(1) ガラス産業の社会的、経済的動向
各産業分野の出荷額推移を将来見通しを含め図1に示す。板ガラスやガラスびんに代わっ
て機能性の高いガラスにシフトして行くことが予想されている1。
・ 建築関係や自動車を始めとする車両関係を主な市場とする板ガラスやCR
T用ガラスに代表される電気ガラスは、生産拠点の海外シフトの結果激減
しているが、高機能化・複合化など高級品指向を図りつつ主要材料の地位を
保つと思われる。
・ ガラス産業の1/3を占めるガラスびん産業も飲料容器の多様化の中で減
少したが、社会のリサイクル・リユースに対する理解の高まりにより現状
を維持
・ 今後はエレクトロニクス、情報通信関連のガラス製品の伸びが期待される
5000
4500
予測
4000
光ファイバー
製品出荷額(億円)
3500
板ガラス
3000
ガラス瓶
フォトマスク
2500
ディスプレイ基板ガラス
2000
電気ガラス
1500
ガラス繊維
1000
光通信用部品ガラス
ガラス食器
ガラス磁気ディスク
500
0
1980
図 1
1985
1990
1995
2000
2005
2010
ガラス産業各分野の出荷額推移(ガラス産業連合会)
(2)業界におけるエネルギー対策の取り組み状況1
表2に示すように、ガラス産業が使用している総エネルギーは、年間 205 万kl程度で
あり、わが国の産業全体が使用しているエネルギーの約1%である。そのうち板ガラス、
電気ガラス(CRT など)
、ガラスびんの3大製品が総使用量の80%を占めている。
1
ガラス産業技術戦略 2025 年(改訂版):ガラス産業連合会 (平成 14 年 3 月)
参考資料 3-3
表 2 ガラス産業のエネルギー消費量内訳
構成比
板ガラス
電気ガラス
ガラス瓶
ガラス繊維
コップ・食器など
LCD 基板ガラスなど
光学ガラス
合計
エネルギー消費量
重油換算(万kl/年)
60.1
56.0
53.3
24.6
5.3
4.1
1.6
205.0
29.3
27.3
26.0
12.0
2.6
2.0
0.8
100.0
3)板ガラス製造業の環境自主行動計画(板硝子協会
3)板ガラス製造業の環境自主行動計画 板硝子協会)
板硝子協会
(1)製造工程におけるエネルギー使用削減目標
最大の生産量を占める板ガラス業界では以下に示す自主行動計画を作成し、省エネルギー
実現を図っている。
・ 2005 年度の製造工程におけるエネルギー総使用量を 1990 年度対比 9%削減
・ 2010 年度の製造工程におけるエネルギー総使用量を 1990 年度対比 10%削減
図 2 板ガラス製造のエネルギー構成
表 3 板ガラス生
板ガラス生産量・エネルギー使用実績および見込み
1990 年度
生産量
a.C 重油(千 kl)
b.電力 (〃)
c.その他(〃)
エネルギー使用合計
a+b+c (〃)
1990 年度対比
原単位
1997 年度
1998 年度
2005 年度
2010 年度
備考
37,964
536
161
31
728
30,338
519
152
22
693
26,480
448
125
26
599
30,103
495
147
20
662
30,103
490
145
20
655
千換算箱
原油換算
〃
〃
〃
100.0
19.2
95.2
22.8
82.3
22.6
90.9
22.0
90.0
21.8
%
l/換算箱
参考資料 3-4
図 3 板ガラス生産、燃料使用量の年次推移
・1997 年度に C 重油使用が増加したのは、溶融炉の立ち上げが要因である
・1998 年度の自家発電による電力は、二重計上を避けるため電力使用量に含めず、自家発電時に使用した
燃料使用実績に含めた。
・2010 年度の生産量は 1995 年度並みと仮定した
※1990 年度以降、生産量の減少に伴い燃料使用量は減少しているが、逆に原単位は生産量減少と生産品種
増加による生産効率悪化の影響を受けている。
図3に示されるように、燃料使用量はほとんど生産量にリンクして推移しており、むしろ
将来生産拠点の海外シフトなどを考慮すると、注に示されるような生産量の減少による燃
料原単位の悪化を回避することが至上の命題となることは明らかである。
(2)CO2 排出実績および見込み
表 4
燃料起源
原料起源
排出量合計
燃料+原料
1990 年度対比
CO2 排出実績および見込み(炭素量換算)
排出実績および見込み(炭素量換算)
1990 年度
486
80
566
1997 年度
457
66
523
1998 年度
396
55
451
100.0
92.4
79.7
2005 年度
441
67
508
2010 年度
428
67
495
備考
千t−C
〃
〃
87.5
%
89.8
表4から、生産量の減少割合に対してエネルギー消費量は相対的に減少しておらず、ガラ
スの単位生産当たりのCO2排出量が増加すると推定していることがわかる。
参考資料 3-5
(3)ガラス溶融のエネルギー原単位
ガラス製造に必要なエネルギーは、ガラス化反応という化学反応には消費されず、大
部分はガラスの均質化などに必要な高温度を長時間保つために消費される。
図 4 板ガラス溶解炉における熱流れ図の例2
数字は燃料よりの入熱を 100 としたときの%、
( )内は×104kcal/h の絶対値
図 5 ガラスびん溶解炉における熱流れ図の例2)
2
ガラス工学ハンドブック p.312 朝倉書店(1999年7月)
参考資料 3-6
両者の熱効率の差はガラスびんの44%に対して、板ガラスでは28%とその差は大
きい。
図4および5より求めたガラス溶解炉のエネルギー構成を図6に示す。
2つのガラスびん表示のうち中央のものは時間当たりのエネルギー消費、右側のもの
は板ガラスとの生産性の差を考慮して単位重量当たりに換算したエネルギー消費量の
5,000
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
換
算
び
ん
ガ
ラ
ス
び
ん
(重
量
ガ
ラ
ス
ガ
ラ
板
)
排ガス熱損失
冷却・炉壁熱損失
バッチ水分蒸発熱
バッチ反応熱
ガラス持出顕熱
ス
4
溶解炉エネルギー(×10 kcal/h)
構成を示す。
図 6 ガラス溶融炉のエネルギー構成
両者の差は製品の品質に対する厳しさに由来し、表5に示すようにガラスびんにおい
ては気泡の存在や均質さにそれほどの厳密さは要求されないのに対し、板ガラスでは極
めて厳しい品質管理が求められる。特に気泡を除去するためにガラスの炉内滞留時間が
数倍以上異なるとされ、これが板ガラス溶解炉のエネルギー効率を大きく損なう理由と
なっている。
表 5 ガラスの種類と泡数の範囲、必要溶解面積の関係3
ソーダ石灰ガラス
びん・容器用ガラス
食器用ガラス
透明板ガラス
型板ガラス
3
泡数
(個/100g)
溶解面積
(m2/t/日)
20∼200
20∼200
0.005∼0.05
5∼50
0.3∼0.7
0.8∼1.4
1.4∼2.0
0.4∼0.8
作花ら編集 ガラスハンドブック 朝倉書店(1975)
参考資料 3-7
4)技術開発ロードマップ
ガラス産業連合会では今後四半世紀にガラス産業としてなすべき課題を以下の3テーマを
抽出し、図7に示すロードマップを作成している。
2000 年
2010 年
2020 年
2025 年
◎ガラス産業を発展させるための革新的プロセス・生産性向上技術
ガラス産業を発展させるための革新的プロセス・生産性向上技術
超精密成型・加工、表面処理技術の確立
プロセスシミュレータの開発∼実機化
ガラスプロセス、ガラス組成、リサイクルの
◎循環型社会の構築に向けた環境関連技術
循環型社会の構築に向けた環境関連技術
総合的な環境負荷低減
CO2排出量の削減
ライフサイクル汚染型環境負荷の削減
バージン資源使用量の削減
ライフサイクル最終処分量の削減
◎ガラスの特性を極限まで高める次世代高機能新材料技術
ガラスの特性を極限まで高める次世代高機能新材料技術
ガラス超微細構造制御、無秩序性制御、
特異組成探索、結晶化・分相、超溶融技術の確立
新機能ガラスの創出
超高透過率ガラス、非線形スイッチ用ガラス、
高屈折率差デバイス、構造用ガラス、着色コーティングなど
図 7 ガラス製造工程にかかわる技術開発ロードマップ
この中で本プロジェクトが係わるプロセスシミュレータの開発に関しては、次ページ図8
に示す課題と目標が示されている。
参考資料 3-8
2000年
2005年
2010年
プロセスシミュレータモデルの開発
溶融反応・発泡・脱泡メカニズムの解明
熱流動モデルの確立(溶融ガラス、燃焼、電気加熱など)
品質評価モデルの確立(気泡、均質度、砂利)
高温物性測定方法の確立
モデル群構築用データ
革新的溶融炉のための研究開発
革新的溶融プロセス基礎開発
プロセスシミュレータの検証
実験室規模による検証(ガラスの溶解、流動、伝熱、強制流動など)
小型タンク炉によるプロセスとモデルの検証(ガラス品質への影響把握など)
新溶融システムの自動制御
実験室規模の自動制御
モデル群を活用した自動制御
図 8 プロセスシミュレータ開発スケジュール
そして 2010 年以降に「革新的溶融プロセスの普及」として 2015 年までの“実機に
よる検証”を経て、2025 年までに“設計への取り組みと評価”に反映させるとしてい
る。
また、「循環型社会の構築に向けた環境関連技術」の項目中に、30∼70%の“C
O2排出量の削減”を目標とした“酸素燃焼法の確立”(2000∼2006 年)
、
“減圧脱泡技
術の確立” (2000∼2005 年)が挙げられており、2007 年頃からのシミュレーション
技術の適用が期待されている。
最大の課題といえる気泡の清澄プロセスシミュレーションについては以下の関係式
が必要だとしている4。
① 泡の浮上、吸収を表す基本式
② 熱流動計算
③ ガラス融液中のガスの濃度計算
④ 泡の消失プロセスの計算
⑤ 必要な高温物性(1000∼1600℃)
・
熱流動解析(粘度、熱膨張係数、熱伝導率、比熱、電気伝導
度/電気加熱)
・
気泡解析(ガス溶解度、ガス拡散係数、表面張力/減圧、加
参考資料 3-9
圧/O2、CO2、N2、SO2、Ar、H2O)
これらを念頭に置くとガラス溶融炉の数学的シミュレーションのためのサブシステ
ムは図9に示すような要素モデルが必要とされる。
図 9 溶融プロセスをあらわすモデル群(川地伸治:日本電気硝子)
シミュレーション技術開発の方向
物理現象(熱移動・物質移動)
化学的現象(環境・品質)
・燃焼空間とガラス浴の連成
・原料バッチ山の現象
・過渡現象のモデル化
・欠点・異物の挙動(気泡など)
・三次元化
4
Kawachi,S Advances in Fusion and Processing of Glass II, Tronto(1997)
参考資料 3-10
5)文献に現れた関連技術例
(1)研究目的を共有する周辺技術調査
表 6 省エネルギー、ガラス融液の均質化、脱泡技術など
<加熱方式>
・ 多孔式天然ガス専焼バーナの開発によりフレームの最適化を図り、平均エネルギー原単
位 2.5%向上(大阪ガス/実施例1)
・ FDI(燃料直接噴射)天然ガス酸素バーナにおけるシミュレーション。CO2発生量
の19%削減を実現(東京ガス/実施例2)
・ 酸素燃焼による省エネルギーの実施(旭硝子/実施例3)
・ 酸素燃焼による省エネルギーの実施(日本電気硝子/実施例4)
・ 全製造工程に必要なエネルギーの70%を占めるガラス溶解炉の天然ガスアトマイズ燃
焼方法による約6∼8%の燃費効率の上昇と,35∼40%のNOX排出低減を実現(山
村硝子)
<制御モデル>
・ 運転・操業管理システム(旭硝子)
・ ファジィ制御システム(日本電気硝子、東京工大)
・ 炉内伝熱が輻射支配になる高温炉の解析にモンテカルロ法を適用した例5
<炉構造など>
・ 溶解ガラス層の深さ,溶解炉各部に使用する断熱材料とその厚みを変化させ,エネルギ
ーロス,生産量,コストとの関係をコンピュータシミュレーション(K.T.G. Glassworks
Technology, Inc., PA, USA)
<添加物>
・ 粗溶融,清澄2段溶融過程での清澄剤Na2SO4の泡層,未融けい砂,残存気泡に対す
る効果(旭硝子)
(a)酸素燃焼炉の実用化検討
ガラス溶融の際、酸素だけで燃料を燃焼することによりエネルギー使用を削減する
『酸素燃焼炉』を実用化するための研究がガス会社が参加する形で行われている。
実施例1:例えば、大阪ガスでは図10
に示す多孔式天然ガス専焼バーナの開発
を行った。中心の主炎口ノズルと周囲の
補炎口ノズルの燃料ガス噴出速度の組み
合わせを調節することにより、図11に
示すようにフレームの長さと、バーナー
付近の輝度の調整が可能となる。
併せて空気の流入の最適化を行うこと
により低空気比燃焼が可能となり省エネ
ルギーを実現すると共に、NOx発生を
抑制することが出来た。
図 10 バーナー概念図
5
大森ら:日本機械学会論文集(B編)57
542 号 p.3491−3498(1991)
参考資料 3-11
図 11 火炎形状の調整
実施例2:また、東京ガスではオランダのIFRF(International Flame Research
Foundation)の天然ガス酸素燃焼火炎に関する国際共同研究募集に応募し、天然ガ
ス酸素火炎の測定などを通じてバーナー開発を行うと同時に、図12に示す要素か
らなる数値計算モデルを Brigham Young University(米)から導入し、バーナー配
置、燃焼量配分などの最適化を行った結果、重油−予熱空気燃焼と比較してCO2発
生量の19%削減を実現したとしている6。
図 12 数値解析モデルによる天然ガス酸素燃焼最適化シミュレーション(東京ガス)
6
藤崎ら 工業加熱,39(3)19-25(2002)
参考資料 3-12
実施例3:窒素がないことから排ガス量が少なく、排ガスによる熱損失が回避されるため
重油を使用しても表7のように著しい省エネルギーが旭硝子で実現されている7。
表 7 酸素燃焼による省エネルギー事例
空気燃焼
1,440
289
821
4,519
3,138
ガラス引き上げ量(kg/h)
エネルギー(重油:l/h)
電力 (kWh)
投入総熱量(千 kcal)
熱量原単位(kcal/kg-glass)
酸素燃焼
1,700
174
795
3,397
1,998
実施例4:日本電気硝子の事例を示した図13のように熱効率が 40∼50%向上す
る。また、同じ理由によりサーマルNOxの発生がなく、全体の発生量が半減する
と云われている8。
さらに、酸素燃焼により熱回収のための蓄熱室が不要となるため耐火物が 70%削
減されるなどのメリットも見こまれる。但し、酸素燃焼のための酸素分離設備が必
要で省電力、省コストの酸素供給システムが課題となる。
140
120
原単位指数
100
窯A
窯B
窯C
80
60
40
20
0
空気燃焼
酸素燃焼
図 13 エネルギー削減事例(日本電気硝子)
7
8
木村
新道
地球環境 2001.5 p.115
オートメーション.45(12)46-51(2000)
参考資料 3-13
(2)ガラス融体のシミュレーション技術調査
表8にガラス溶解炉に関連するシミュレーション研究開発の事例を示した。
表 8 関連するシミュレーションモデルの例
開発者
検討項目の特徴
非圧縮性
均一ニュートン流体
泡発生、輻射特性,反応などの影響は
無視
旭硝子(ガラス溶 比重変動シミュレーション
解炉)9
日本電気硝子(ガ 泡の清澄プロセスシミュレーション
ラス溶解炉)10
アルゴリズム
共通
本研究
核燃料サイクル
開発機構11
(ガラス固化開
発施設溶融炉)
東京ガス12
(天然ガス酸素
燃焼バーナーの
効果)
体膨張係数のパラメータ・フィッテ
ィング
異物を含んだ溶融ガラスの滞留に伴う
非定常現象のシミュレーション
泡の挙動に関する基本式、融液中のガス
濃度に熱流動計算をカップリングして
解く
3次元熱流動解析
Brigham Young Univ.モデル
燃焼空間
原料バッチ
溶融ガラス
をカップリングして計算
東京ガス13
輻射伝熱が支配的である加熱炉にお ふく射伝熱:モンテカルロ法とゾーン法
北海道大学
ける任意形状物体(鋼材)の加熱シ 流れおよび熱発生量分布:k‐ε二方程
ミュレーション
式乱流モデルと渦消散モデルを組込ん
だ有限体積法
微小重力下にお NASDA の宇宙実験技術開発プロ ・ 残留重力対流解析プログラム
ける物理現象の ジェクトの成果
・ マランゴニ対流解析プログラム
数値シミュレー
・ 対流凝固複合過程解析プログラム
ション14
・ 界面不安定性成長解析プログラム
(NASDA)
バーナー位置,燃焼量配分の最適化
IFRF燃焼実験炉でのデータを利
用
加熱過程が流動現象を規定することから、バーナーなど加熱手段のシミュレーションと流
動シミュレーションを組み合わせた形になっている。
また、表9に市販の汎用熱流動解析ソフトウエアの例を示した。近年では高性能の汎用プ
ログラムが計算機の性能アップのお陰もあって、スーパーコンピュータなどを必要とせず
比較的容易に利用することができる。
赤木:日本機械学会岱 5 期通常総会講演会講演論文集(III)(1998)
Kawachi,S : Advances in Fusion and Processing of Glass II. Tronto(1997)
11 須藤ら:核燃料サイクル開発機構公開資料
49p(1998)
12 藤崎ら:工業加熱
39,(3)p.19−25(2002)
13 大森ら:日本機械学会論文集(B編)57、542号、p.177−184(1991)
14 http://133.242.8.15/jdata/00152/
9
10
参考資料 3-14
表 9 市販の汎用熱流動解析ソフトウエアの例15
ソフト名
FLUENT
販売元
URL
フルーエント・アジアパシフィッ www.fluent.co.jp
ク
シーディ・アダプコ・ジャパン www.cdadapco.co.jp
主な機能
圧縮性または非圧縮性流体の熱流動、化学種
の輸送、化学反応と燃焼
STAR-CDソルバーは広範囲の物理現象をモデ
ル化するための解析機能、大規模計算の高速
化を図る並列計算機能を有し、化学反応解析を
可能とする”CHEMKIN”などと連成可能
FLOW-3D
エス・イー・エイ
www.seainc.co.jp
複雑な自由表面解析が可能な”Tru-VOF”搭載
CFX
cfxアジアパシフィック
www.cfx-ap.com
PHOENICS
CRC
www.crc.co.jp
移動格子、乱流、燃焼、輻射および多相流などの
強力なツールから構成
定常、非定常、2次元、3次元、層流、乱流、化学
反応、多相流などの計算可能
非構造格子系、移動境界、定常/非定常、層流
/乱流、非ニュートン流体、熱解析(伝導、対
流、輻射)、粒子追跡、化学反応など
3次元圧縮/非圧縮流体、燃焼、熱流体構造連
成、反応などさまざまな物理モデルを保有
STAR-CD
SCRYU/tetra クレイドル(日本で自主開発) www.cradle.co.jp
FIDAP
計算力学研究センター
www.rccm.co.jp
www.ad-tech.co.jp 2次元問題における伝導・対流・輻射を含む静
的あるいは過渡的な熱問題を解析。特に磁場の
影響と連成可能が特徴
α-Flow
富士総合研究所(産学共同開 www.fuji-ric.co.jp 自由表面を含む非圧縮性流体解析、燃焼・化学
反応を含む流れ解析、物質移動解析および熱
発)
一方、海外では以下のような団体がガラス溶解に関するシミュレーションを手掛けてい
伝導解析
ThermNet
アドバンストテクノロジー
FIELDVIEW 8 ヴァイナス
www.vinas.com
熱流体解析用ポストプロセッサ(スカラ、ベクト
ル、流線のアニメーション表示など
新しいシミュレーションの研究事例では16、変形する界面を取り扱う手法としてVOF
(Volume of Fluid)法がある。計算するセルの中に、ひとつの相として存在する体積割合
を関数として用いるもので、単一気泡の形状が流れ場の中で変形する様子や、複数の気泡の
相互作用、気泡同士の合体の様子などが求められる。また、気泡流、液滴流などのように連
続相のなかに細かい分散相が分布する流れについては、分散相の一つ一つを運動粒子とし
てラグランジュ的に解く方法が研究されている。さらに、流体運動を物理的にミクロに考
えれば、分子運動に帰着するが、位置と運動量の位相空間で定義される分布関数から導か
れるボルツマン方程式を運動量空間で積分し、さらに摂動展開することによりマクロなナ
ビエ・ストークス方程式を導くことができることから、連続体力学として表される流体運
動を分子動力学や、ボルツマン方程式を解くことによって表現する試みが進められている。
従来、わが国学界のガラス研究における関心は材料に新機能を発現させようとする応用面
と、そのための基礎研究としての構造論にあり、製造プロセスに関しての研究は企業の自
主的な活動として実施されてきたのが実情であった。 1992 年に産業界の要請で日本硝子
製品工業会を事務局としてスタートしたガラスプロセス研究会は産学共同コンソーシアム
の嚆矢であり、1998 年ニューガラスフォーラムのもとに発足した「高温融体プロジェクト」
15
16
インターネット上の各社ホームページより採取
大橋:日本原子力学会誌 40(6)p.442∼449(1998)
参考資料 3-15
も同様の趣旨である。
一方、海外で組織されているガラス製造プロセスに関係する産学官の共同機関には以下の
ようなものがある。
*ICG(国際ガラス会議)
*IFRF(国際火炎研究財団)
*Center for Glass Reserch(USA)
*British Glass Technology(UK)
*TNO-Institute of Applied Reserch(NE)
このうち国際ガラス会議は産学のミキサーのような機能を果たしており、ガラスの融体物
性、製造プロセスシミュレーション技術についても以下の技術委員会が設置されて活動し
ている17。 TC−12:(Gases in Glass)、 TC−18(Properties of Glass-Forming
Melts)、TC−21(Modeling of Glass Melts)
なお、シミュレーションに必要な要素アルゴリズムとして重要な、融体中の気泡挙動につ
いては神戸大学の冨山らによる数値気泡力学(気泡を含む流れの解析法比較)の研究事例
がある18。
17
18
田中:NEW GLASS 14(2)p.70−78(1999)
冨山ら:シミュレーション 17,
(3)p.26−34(1998)
参考資料 3-16
(3)ガラス高温物性<表面張力、粘性率など>の測定法)調査
(a)本プロジェクト:微小重力下における物性測定
* 表面張力&粘性:液滴表面の固有振動数による測定
* 表面張力&動粘度:リプロン法(液滴の表面波による散乱光の測定)
(b)ニューガラス高温物性評価方法の標準化プロジェクト:
電子用ガラス基板等に使われるいわゆるニューガラスは、要求される品質レベルが厳しい
上に溶解温度が高いことから高度な製造技術が求められ、特に溶融状態におけるガラス物
性の正確な把握が不可欠となっている。これに対処するために新エネルギー・産業技術総
合開発機構を委託元とし、
(財)日本規格協会から(社)ニューガラスフォーラムが再受託
したプロジェクトが総額 1.1 億円の受託費で平成 10∼12 年度に実施された。3カ年計画で
9つの物性値の測定技術について学界との連携による研究開発を進め、その成果を国際標
準として制定することを目指している。図14は当プロジェクト関連の計画である。
図 14 ニューガラス高温物性の評価方法の標準化プロジェクト/ニューガラスフォーラム
参考資料 3-17
チョクラルスキー法による半導体単結晶シリコンインゴットの製造においては、酸素
を始めとする不純物濃度の均質性向上と大口径化の両立は容易ではなく、その解明され
ていない問題の一つに表面張力勾配に起因するマランゴニ対流があるとされる。
そのためにはシリコン融液表面の表面張力を非接触,高速でその場測定が必要で、熱
的に励起された表面張力波(リプロン)からの散乱光をレーザーヘテロダイン検出し、
表面張力と動粘度を同時測定するリプロン法の開発が慶応大の長坂らにより行われた
19、20
。
一方、電磁的に浮揚させた液滴の形状振動から表面張力を決定する研究が米国の
Bayazitoglu. Y らにより行われたが21、わが国でもレイリータイプの弾性表面波(SA
W)ストリーミングにより励振された液滴振動による液体の粘性,表面張力,接触角の
測定が静岡大の松井らにより行われている22。
本プロジェクトに近い微小重力下での高温物性測定では、半導体材料としての良質な
シリコン単結晶製造に重要な役割を果たすマランゴニ対流制御に必要だとして、大阪大
の野城らにより地下無重力実験センター(JAMIC)の落下塔を用い溶融シリコンの
表面張力の測定事例や23、九州工業大学の向井によるシリコン融体の酸素濃度および
温度依存性測定の事例がある24、25。
なお、上述の野城は非鉄合金の鋳造に関するシュミレーションを行なうために、精度の高
い物性値のデータベースを確立することが必要であるとして、溶融Ni及びNi‐Cr合
金の表面張力及び密度の温度依存性を静滴法及び微小重力環境下で浮遊液適法で測定して
いる26。
長坂ら:日本機械学会熱工学部門講演会講演論文集 1994 p.16‐18( 1994)
長坂ら:日本伝熱シンポジウム講演論文集 38th、Vol2、p.541‐542(2001)
21 Bayazitoglu. Y:Phys Fluids
8,
(2) p.370‐383 (1996)
22 松井ら:電子情報通信学会技術研究報告
8(2)p.13‐19(1997)
23 野城ら:Thermophys Prop
20th p.268‐271 (1999)
24 向井ら:シミュレーション
19、(2)p.24−29(2000)
25 向井ら
日本結晶成長学会誌,24、
(4)p.369−378(1997)
26 野城ら:大阪大学先端科学技術共同研究センター年報
平成12年度(6)p.69‐72
(2002)
19
20
参考資料 3-18
6)特許調査:ガラス融液の均質化、脱泡技術など本研究が関係する技術
6)特許調査:ガラス融液の均質化、脱泡技術など本研究が関係する技術
(1)特許の検索論理式
対象:H05 以降(10 年間)の公開特許
データベース:P-search
① 溶融技術
ガラスの溶融プロセス C03B1/00∼C03B7/00 ∼800 件(A)
(A)*(均質+泡+脱気)∼ 148 件(①)
② 脱気技術
液体の脱気 B01D19 ∼1,500 件(B)
(B)*(溶融+ガラス+硝子)∼52 件(C)
(C)よりタイトルで絞り込み ∼11 件(②)
③ 測定法
③a 液体の流動性の測定
G01N11/00
∼659 件(D)
③b 液体の表面張力の測定
G01N13/02
∼60 件(E)
(D+E)*(溶融+ガラス+硝子) ∼67 件(F)
(F)よりタイトルで絞込み ∼40 件(③)
④ 微小重力、無重力状態
微小重力+無重力
∼380 件(G)
(G)よりタイトルで絞込み
∼43 件(④)
①+②+③+④ ∼242 件(算術和)
(重複は 4 件のみ)
参考資料 3-19
(2)検索結果の分析
a)ガラス溶解炉関連特許
ガラス溶解炉関連特許(129件)
目的
脱泡
均質化
省エネ
炉材
成分調整
操業方法
電磁力など
機械的攪拌
30
25
20
15
10
5
0
炉構造
出願件数
40
35
手段
図 15 過去 10 年間に出願公開されたガラス溶解関連特許
年間に出願公開されたガラス溶解関連特許
先に述べたようにガラス溶融炉においてエネルギー需要構造のうち所謂反応熱など
の占める部分は少なく、均質化、脱泡など品質確保のためにガラス融体を高温に長時間
保持するために費やされている。これを反映して図15に示すように特許も均質化や脱
泡に関するものが圧倒的に多い。その基本は減圧脱気及び機械的撹拌であり、これが実
現すると 1,600℃迄の加熱が不要となるのみならず、脱泡のための時間短縮が可能とな
るため消費エネルギーの30%が削減されるとされるが未だ研究開発の段階で実機化
には到っていない1。
①均質化に関するものには以下の要素技術を単独に、あるいは複数を組み合わせたものが
ある。
*オーバーフローブロック/スキーマブロック、仕切板、チャンネルブロック、連結管な
どの設置による均質部と不均質部の隔離、再混合の防止
*スターラーの配置、あるいはバブリングによる均質化
*加熱分布制御;バーナー配置、電極配置、電導性炉壁
*炉体冷却分布制御
*、加圧消泡、
参考資料 3-20
②脱泡に関するもの
減圧装置に①の各要素を組み合わせるものが殆どであるが、浴の深さを規定するもの、そ
の他、電磁力、磁気勾配による電磁ポンプ利用による泡浮上の促進、ガラス溶融窯で使用
されるフィーダーパーツ(耐火物)の表層をあらかじめナトリウム化合物と反応させて、
表層を改質させておくことにより、溶融ガラスとの接触時のガラス素地中への発泡を防止
する方法や母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が
20ppmとしたガラス溶解炉用材料で炉を内張りしたことにより、溶解ガラスにおける
泡の発生を抑えるなど耐火物が関係する発泡防止方法がある。
この際、金属酸化物を清澄剤として加える試みも行われている
③スターラー(撹拌装置)
撹拌装置そのものに関しての特許は大別して2種類あり、一つは電導性撹拌翼あるいは白
金または白金・ロジウム合金で装置を構成する材料に関するもの、またプロペラ翼やスパ
イラル翼など撹拌翼の形状やその取り付け方さらに回転速度制御の工夫に関するものであ
る。
b)物性測定法関連特許
その他(樹脂
など)
41%
粘度計
41%
気泡関連
9%
表面張力計
9%
図 16 過去 10 年間に出願公開されたガラス物性関連特許
ここででの特許検索式はガラスに限定せず、一般に高粘度物質に対する物性測定を検索し
たため、プラスティックなど低融点物質を対象とした測定法が含まれている。図16にお
ける「その他」とは溶融ガラスに適用する可能性がまったく認められない方法に対応して
いる。
測定法関連は全体で40件しかなく「その他の41%」を除くと、25件が辛うじて検討
対象となるが特許に見るガラスの物性測定技術の殆どは、製造現場でのプロセス制御を目
的としたオンライン計測に関するものであり、基礎物性の測定については宇宙空間での微
少重力下での装置に関するものが散見されるに過ぎない。
参考資料 3-21
3.CO
3.
2 削減効果
実施者から示される省エネルギー効果の数字に基づき、ガラス産業全体における
CO2削減量を計算する。
1
ガラス産業連合会が取りまとめた「ガラス産業技術戦略 2025 年(改訂版)」
によれば、
CO2 発生を30∼70% 削減するための技術的方策として以下の4項目が挙げられて
いる。
(ア)
酸素燃焼技術の導入
(イ)
減圧脱泡溶融法の確立
(ウ)
低温溶融法の開発
(エ)
CO2 固定化技術の開発
本研究の“流れ制御”による炉温低下による省エネルギー効果3∼13%は項目③に対応
することになる。
先に示した表2における板ガラス産業でのエネルギー消費量は重油換算で 601 千kl/
年である。したがって3∼13%の省エネルギーによる CO2 排出削減量は表10に示す値
となる。
表 10 省エネルギーによる CO2 排出削減量
省エネルギー
(%)
ゼロ
3%
13%
エネルギー消費
重油換算(千 kl
/年)
601.0
583.0
522.9
CO2 排出量
(千t/年)
1,665
1,615
1,448
CO2 排出削減量
(千t/年)
CO2 排出削減量
(千t-C/年)
0
50
217
0
13.6
59.1
地球温暖化防止法施行令におけるA重油のCO2排出係数=2.77(t-CO2/kl-A 重油)
表 4 に示した 1990 年のCO2排出量 566 千t-C/年に対して、3%省エネルギーケース
で 2.4%、13%削減のケースで 10.4%のCO2排出量削減となる。
参考資料 3-22
4.波及効果
ガラス溶解炉の中で起こっている現象の個々の要素については、寄与の大小はあるもの
の殆ど金属融体と共通であり、むしろ困難度の高いガラスの場で開発されたシミュレーシ
ョン手法は容易に金属融体の場に移転可能と思われる。
ガラス溶解炉の難しさは融体の粘度にある。鉄に代表される金属融体の通常の操作温度
における粘度は数cP(センチポアズ)で殆ど水のそれと同等であり、流動の活性化エネルギーが
10kcal/mol であるのに対し、ガラスのそれは103∼104cP で非常に高く、活性化エ
ネルギーが 20kcal/mol と高く温度依存性も大である。従って流動特性が温度に敏感で、こ
れはとりもなおさず加熱や冷却による場所の影響を受けやすいことを意味する。
さらに不透明な金属に対し透明度の高いガラスでは、熱の移動が拡散や対流伝熱だけ
でなく輻射によっても起こり、透明度に絡んで極めて複雑である。
より複雑な系であるガラス分野におけるシミュレーション技術の向上は他分野に対し大
きな貢献をもたらすであろう。
(1)シリコン単結晶の歩留り向上
CZ法によるシリコン単結晶育成において品質上問題となる課題の一つはシリカる
つぼより溶解・流入して結晶中に取り込まれる酸素濃度を任意のレベルで均一に制御す
ることである。このプロセスの酸素の移動速度は溶解・流入の起こる るつぼ−メルト
間境界層及び蒸発・流出の起こる自由表面近傍境界層内の拡散現象に支配される。
融液の対流は一般にるつぼや結晶の回
転による強制対流、融液の温度差に起因
する自然対流、融液の表面張力勾配に起
因するマランゴニ対流から構成され、本
プロジェクトの目指すところと重複する
部分が大きい。
凝固界面付近の子午面内の流速及び溶
流速分布
解酸素濃度分布のシミュレーション事例
を図17に示す27。
シリコン単結晶の製造規模はガラス
や鉄など基盤素材の場合と比較して多
くはないから CO2 削減効果は期待出来
ないが、製品単価が高いことから、歩留
まりの向上による経済効果は極めて大
溶解酸素濃度分布
きい。
図 17 シリコン単結晶引上げシミュレーション
27
沢田ら 鉄と鋼 77(8)1234-1342(1991)
参考資料 3-23
(2)連続鋳造タンディッシュにおける溶鋼中介在物の浮上除去による歩留り向上
製鉄プロセスには溶鋼を取り扱う工程が多々あるが、融体中の微細な粒子の挙動が製品品
質や生産性に寄与するところが大きい。
一つは精錬を目的として粒子
やガスを吹き込み、溶鋼中の特定
成分と反応させることにより成
分調整を行うものであり、他の一
つは反応の結果生成した固体な
いしは気体の生成物または反応
容器の耐火物由来の介在物を如
何に効率よく溶鋼から分離除去
するかの問題である。この両者は
ガラス溶融炉が抱える問題と殆
ど共通しているといってよい。
精錬済みの溶鋼を連続鋳造設
備により凝固させる工程では、図
18に示すタンディッシュと呼
ばれる樋を使用して溶鋼の流れ
を整え、この過程で介在物などを
浮上除去して凝固後の製品に悪
影響の及ばないようにいろいろ
な工夫がなされている。
図 18 連続鋳造設備の概念図28
タンディッシュの形状と製品
の品質との関係を示す事例を図
19に示す。タンディッシュ内
の溶鋼深さが大きいほど、ノズ
ルと側壁の距離が大きいほど渦
流れによる介在物の巻きこみが
少ないことが分かる29。
図 19 厚板品質に及ぼすタンディッシュ形状の影響
厚板品質に及ぼすタンディッシュ形状の影響
28
29
日本鉄鋼協会 わが国における鋼の連続鋳造技術史 p.634 (1996)
日本鉄鋼協会 鉄鋼便覧(製銑・製鋼編)p.633(1982)
参考資料 3-24
タンディッシュ内の溶鋼流動を温度と連成して解いたシミュレーションの事例を図20
に示す。堰の存在により流れが大きく影響されていることが分かる。また、出口部に到っ
ても自然対流による循環流が認められる8。
溶鋼
堰
モールド
図 20 タンディッシュ内流動シミュレーション
(3)高炉炉床溶銑流制御による耐火物寿命延長
図21に示した高炉炉床部では充填した
コークスの間隙を縫って、溶けた銑鉄が出
原料
高炉ガス
銑口へ集まってくる。この際、上部充填物
からの荷重が比較的軽度な周辺部は、中心
に比べて充填状況が疎であることから溶銑
が炉壁付近を通りやすく炉壁耐火物の損傷
熱風
につながり易い。
炉底レンガが損傷すれば高炉を 100∼
150 億円を投じて改修せざるを得ないこと
になる。従ってシミュレーションの結果で、
例えば複数個設置されている出銑口をどの
ような組み合わせて使用するかにより、損
溶銑滓
傷を軽減し炉の寿命延長が実現すればその
経済的なメリットは計り知れない。
図 21 高炉炉内概念図
参考資料 3-25
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