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ポスター - 国立天文台
日本天文学会2010年春季年会(広島大) B25b エッチングによる TMT主鏡ガラス材の サブサーフェスダメージ層除去 秋田谷 洋 (あきたや ひろし) 国立天文台・ELTプロジェクト室 山下 卓也、大島 紀夫、家 正則、他ELTプロジェクト室メンバー(国立天文台) 舞原 俊憲、所 仁志、高橋 啓介(ナノオプトニクス研究所) 2. エッチング試験 TMTの主鏡製作に向けて : Thirty Meter Telescope (TMT; 図1)は、 2018年の完成を目指し、ハワイ島マウナケア山に国際協力による建設 を計画している、口径30mの光赤外線望遠鏡である。TMTの主鏡は、 1.44m径の六角形非球面分割鏡を492枚敷き詰めて製作する(図2)。 国立天文台ELTプロジェクト室は、日本がTMT主鏡の製作を分担する ことを目指し、鏡面加工の実証試験を進めている。 極低膨張ガラス材 オハラ クリアセラム-Z HSなど 非球面高精度研削 大型精密研削機 ~0.5-1μm 精度の形状出し subsurface damage(SSD)除去 研磨 or フッ酸エッチング 10-20μm程度のダメージ層除去 図1: Thirty Meter Telescope(TMT) 最終研磨 (& 六角形切断) 研磨(方式未定) 測定 (方式未定) ~34nm形状、2nm rmsの面出し 30m 鏡面完成(反射膜蒸着etc.へ) 図3: TMT主鏡製造プロセス案 図2: 分割鏡配置図 Hed & Edwards (1987) 図4 : subsurface damage(SSD) Fine et al. (2005) 3. 結果と考察 #1200 研削サンプル x (mm) x (mm) 図6 : エッチング後の断面形状測定 (研削直 後の低周波形状は差し引き済み) 大きなえぐれ 幅~20μm 図7 : エッチング処理面 エッジのマイクロスコー プ拡大像 研削のみ 500μm エッチング実施 (20μm深さ) 50 x 50 mm エッチング処理 100mm #3000 エッチング面 10mm 図9 : 砥石回転方向に垂直な方向の断面形状 研削面 #1200 #3000 実線 : エッチング面 点線 : 研削面 深さ(μm) 深さ(μm) 図10 : 断面形状(砥石回転に垂直方向; 40mm長さ)に対する深 さの頻度分布。#3000では最大深さ~2.6μm。>2μm深さの占める 割合は全体の0.4%、1-2μmは4.8%。#1200では最大深さ11μm。 6-11μm深さの占める割合 0.5%。 4. まとめ x100 #3000 x20 #1200 エッジ部分は エッチング後も鋭 い形状を保ってい る(図7)。 TMT分割鏡の 面取り幅 ~0.35mm内で、 十分良好な形状 である。 #3000研削サンプル (#1200研削サンプルも同様) x100 (100μm sq.) 図8 : サンプル表面のマイクロスコープによる拡大像。砥石回転は水平方向。 (3) エッジ形状 20 μm 8 μm 頻度 (log) x20 (500μm sq.) x100 (100μm sq.) (1)研削面 エッチング 処理 x20 (500μm sq.) (2)エッチング面 エッチング 非処理 #3000 研削サンプル 表2 : フッ酸エッチング 処理液 フッ酸 処理面大 50mm x 50mm (残り半分 きさ はマスク) 処理厚 面あたり約20μm 厚 加工者 (株) 関島光学目盛工業所 1,5 μm #1200 エッチング面 20μm除去 所要時間 200 秒 235 秒 事前研削 粒度 #3000 #1200 部分的に深い溝や窪みは生じているが(後述)、サ ンプル全体にわたる大局的な形状の崩れは~1μm 以内であった(図6)。研削形状精度(~0.5-1μm)と同 程度、除去深さ(~20μm)と比較して十分小さい。 20μm 表1 : 測定サンプル・事前研削 材質 極低膨張ガラス クリアセラム-Z HS・TMTグレード (オハラ) 大きさ 50mm x 100mm x 5mm厚 研削砥 粒度#1200(砥粒径~12μm)、 石 #3000(同~5μm) 2種 研削機 N2C-1300D および SGU-52 (ナガセインテグレックス社製) 加工者 ナノオプトニクス研究所 図5 : 測定サンプル 表面粗さは若干悪化している(表4)。 部分的に、深い溝・窪みが発生している(#3000で深 さ最大2.6μm、#1200で最大~11μm)(図8-10)。窪 み・溝が占める面積はわずかではあるが、研削形状 精度より深いため問題となる。 溝・窪みは砥石回転方 表4 : 表面粗さ(rms) 向に連なっている(図11)。 研削粒 表面粗さ(rms) エッチング前→後 研削面に存在する微小な 度 溝や窪みが、エッチングに #3000 0.06μm→0.29μm よって深く成長したものと #1200 0.3μm→0.6μm 見られる。 (a) #3000研削 (b) #1200研削 (2) 一様性 – 大局的な形状 3次元測定機 NH3-SP 本研究の目的 : フッ酸エッチングは、SSD層を高速に溶解し て除去するため高効率の手法と見込まれる。一方で、以下の 課題がある。 1. 事前の研削形状・面粗さを崩さない一様な除去 2. 1.5m大の部材を扱える大型処理槽の実現 (現有設備は φ70cmまで対応化) そこで本研究では、フッ酸エッチングの有用性を検証する手 始めとして、小さな研削サンプルに対してエッチング処理を施 し、上記課題のうち、「1.一様な除去」について、現有設備での 達成精度を評価した。 極低膨張ガラス材の小サンプルの両 面を事前に研削加工した。2種の研削条 件でサンプルを2枚作成した(表1)。 そのうち半分の領域について、フッ酸 エッチング処理を行ない(表2、図5)、加 工面の評価を行った。 (4) 一様性 – 局所的な形状 表3 : エッチング処理所要時間 20μmの除去に対して 約3-4分で処理が完了し た(表3)。研磨(2週間 /(枚・10μm))に比べて非 常に高速度である。 エッチングによるSSD除去 : SSDの除去には、SSD層を研磨 で丹念に取り除く方法が主に採られてきた。しかし、TMT分割 鏡のように、大型で多数の鏡面を加工する場合、加工時間が多 大となる(例えば、除去速度0.5mm3/minの磁気粘弾流体研磨 機の場合10μm除去に約2週間/枚)。そこで我々は、高効率の SSD除去法としてフッ酸エッチングに注目した。 エッチング面 (1) 処理速度 Subsurface Damage(SSD)の発生: 現在想定しているTMT 主鏡鏡面加工プロセスは図3の通りである。そのうち、非球面形 状加工で用いる研削加工によって、ガラス材の表面下にサブ サーフェスダメージ(subsurface damage=SSD)と呼ばれる、微 細な破砕構造が生じる(図4)。想定している研削条件では、最大 で20μm程度の深さのSSDが生じると見込まれる。 SSDは、鏡に対して、経年変形・破壊や反射蒸着膜の劣化な どの悪影響を及ぼす。よって、後に続く工程で完全に取り除かな ければならない。 50mm 1. 本研究の背景と目的 100μm 図11 : #3000研削・非 エッチング面(左側)とエッ チング面(右側; ~20μm 深さ)の境界部分。非エッ チング面の淡い溝がエッ チング面の太い溝につな がっている。 小ガラス研削サンプルに対して、20μm深さ 表5 : フッ酸エッチング処理面評価まとめ のフッ酸エッチングを行い、処理面の評価を #3000 #1200 行った(表5)。 研削面 研削面 処理速度、処理の大局的な一様性、エッ 処理速度 200秒 235 秒 ジ形状は良好。 ~1μm ~1μm 一様性(大局的) 部分的に、研削形状精度を超える深さの 一様性(局所的) 溝・窪みあり 溝・窪みあり 溝・窪みが生じる。 溝・窪みの最大 2.6μm 11μm フッ酸エッチングをSSD処理法として確立す 到達深さ るためには、深い溝・窪みの深さを軽減する <0.5μmまで <0.5μmまで 必要がある。これらは、研削面の微小な傷が 平坦 平坦 エッジ形状 原因となっているとみられる。よって、解決の 稀なえぐれ 稀なえぐれ ~20μm ~20μm ためには研削面の質の向上 (研削条件改善、 研削前の若干の研磨)が有効と考えられる。 評価 ◎ ○ △~× ◎ * 連絡先 -----------------------------------------------181-8588 東京都三鷹市大沢2-21-1 自然科学研究機構 国立天文台 ELTプロジェクト室 研究員 秋田谷 洋 (AKITAYA, Hiroshi) E-mail : hiroshi.akitaya [atmark] nao.ac.jp Tel : 0422-34-3524 Fax : 0422-34-3527 ------------------------------------------------