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(1)学長の任務

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(1)学長の任務
【1】はじめに
(1)学長の任務
本学「学則」第12条第1項によれば、学長の任務は、「学長は校務を掌り、所属職員を
統括する」とある(学校教育法第58条第2項では「学長は、校務をつかさどり、所属職
員を統括する」と規定されている)
。この包括的な規程は最低限の要件を示しているにすぎ
ないが、その規程の前提には、安定した入学者が確保され、卒業時の学生も約100%近
く内定可能な右肩上がりの 20 世紀の高度成長期の状態を前提にしているように思えてなら
ない。
私学が入学定員を計画的に削減し、定員確保のための全学を挙げて入試対策に精力を注
いでいる中でも、半数近い私立大学が定員割れを起こし、出口の 4 年生の就職内定率も5
0%台の最悪にある危機的な状況に加え、私大経営の財政赤字が累積している中での学長
職の公務は、まさに組織のゴーイング・コンサーン(組織の継続や生き残り)としての戦
略性が問われることになる。
しかも、これからは後述するように、日本国内しか通用しない鎖国状態の学部教育から
国際的に通用する学士課程教育への質的変更に対応できる大学とそうでない大学との格差
が広がり、大学生き残りの勝負が決まるとなると、実は大学改革の本質は構成員の教職員
の意識改革であり、目先の課題より人間の意識が喫緊の課題である。
以上の状況を考慮すれば、本学学則のように、学長は組織内部の均衡を維持するだけで
は組織のゴーイング・コンサーンは保証できない。つまり、組織の静的な状態の職務から
組織を崩壊させない改革の戦略的な展開が期待されるのが現代の学長職である。
(2)学長職の現状
ところが、それだけの重大な任務を負う学長職は、実は手足を縛られて日々泳いでいる
側面がある。たとえば、本学では教員の実質な人事権は学部や研究科委員会にあり、職員
の人事権も法人にある。さらに、教育権(カリキュラムの編成や入学・卒業判定等)は両学
部教授会に委ねられ、学長の改革プランを遂行するための事業資金の手当ても理事会や経
営会議(常務理事の会)に懇願をしないと実現できない状況がある。また、研究教育の責
任者である学長は、法人予算編成の委員会のメンバーからも外れている。学長の職権で自
由に裁量できる予算はまさにゼロに等しいのである。
ただ、幸いなことに本学では、理事会、経営会議が学長の意見に耳を傾けてくれる友好
的な雰囲気があるので救われているだけであり、時代に対応する果敢な戦力を展開するに
はきわめて権限のない窮屈な制度上の職位にあることに変わりはない。
【2】現代の大学の状況と大学改革
(1)高等教育の未来図と大学の機能
さて、そもそも自己点検・評価の中軸となる基本思考は、大学のアイデンティティの確
認作業であり、それは具体的には建学の精神や教育理念の再認識と実行ということになろ
1
う。すなわち、各大学は研究を志向する大学なのか教育を主に志向する大学なのか建学の
精神により大きく分かれることになる。また、研究を志向する大学はその主力をどのよう
な領域で行うのか他大学と異なる特徴のある研究が求められる。また、教育を主に志向す
る大学でも当然その教育内容の特徴が要求される。
平成 17 年の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」では、核大学の個性や特
徴を明確化するために 7 つの大学の機能別の方向性を提示した。①世界的研究・教育拠点、
②高度専門職業人養成、③幅広い職業人養成、④総合的教養教育、⑤特定の専門分野の教
育・研究、⑥地域の生涯学習機会の拠点、⑦社会貢献、である。本学では③に特化するの
ではなく、④や⑥との総合連携の機能施策を選択する必要があろう。
そもそも、大学の機能は基本的には教育と研究であるが、実はこの教育と研究との不明
確化こそ、本物の研究者も生まず、本物の教育者も生まない中途半端な大学を形成してき
た。「大学は研究と教育」というこの固定概念が、反対に伝統的な大学を身動きのとれない
ものにしていた側面がある。このように、これからの大学や大学教育に求められるキ-ワ
-ドは画一ではなく個々の大学の「個性化」である。このように現代の大学は、組織改編
や改革の時代から、新しい大学ブランドや大学文化の創設の時代に突入したと言える。
(2)伝統的な大学の制度疲労と新しい大学像の台頭
そもそも大学改革のうねりは、18歳人口激減による大学冬の時代という直接的な要因
以外に、戦後の日本経済・社会時代の終焉という大きな間接的時代要因がある。官民一体、
国家主導型で歩んできた戦後日本経済の構造が、制度疲労を起こし、官僚主導から民間主
導型変革で日本の新たなる経済建設に入ることと軌を一にした改正である。この日本の経
済構造の変化に呼応するように、戦後、文部省主導型で歩んできた日本の高等教育の構造
やその役割も大きな変化を迎え、各大学の自由な民意による創意の競争により新しい教育
制度の確立への模索が始まったのである。
このように新基準が描く理想的な状況は、多くの特徴を有する大学が我が国に生成、発
展し、その教育や研究内容で競争をし、その判定は消費者である学生や父兄に委ねる社会
教育構造の形成にあると思われる。大学に市場原理の導入を導入することは、自由な発想
と競争の促進を促し、生き残れる大学とそうでない大学との自然淘汰を容認したものでも
ある。現代のユニバーサル化した大学の入試は、依然入試の競争選抜を保つ大学と入試は
形式的なもので事実上全員入学の大学との二分化が起こり、その格差が広がっている。
特に、厳格なまでに各学問体系のカリキュラムを規制していた文部科学省が、平成3年
に大学設置基準を大綱化し、詳細な規程を外し、大学の自由意思を尊重し、自由競争の促
進を保証したことは、一方では、その競争に破れる大学の容認でもある。日本の銀行は潰
れないという戦後の神話の一つが迷信で終わったように、文部科学省が大学は潰さないと
いう神話は現代の一部 4 年制大学や短期大学の状況を見れば迷信であることがわかる。
(3)大学の自己点検・評価の現代的機能
その意味で新設大学を中心に現代の大学は生き残りをかけた時代に突入して久しい。特
2
に、中央学院大学のように戦後高度成長期のベビ-・ブ-ムやこの団塊の世代の2世世代
を収容するための認可された大学の大衆化を前提にした大学は、現在、18歳人口激減に
より、創立時の一つの社会的使命を終了した。18 歳の人口は昭和 41 年の 249 万人をピー
クに平成 22 年には 122 万人へと減少を続けている。
本学がこれからの新しい時代の要請に応えるためには、既存の組織や制度を一度全て破
壊して、新たな創造をする心構えを持つ気持ちで時代に対応するしか道はない。しかも、
それを自らの手で遂行しなければならないのであるから、状況は難しさを超えている。
このように、大学の自己点検・評価は、大げさに言えば今までの中央学院大学を総括して、
生まれ変わる問題点を認識する意識革命の手段である。21世紀に向けて建学の精神が
脈々と適用できるように大学を再構築して、土台からの組換えが必要となる。
加えて、中央学院大学も45年以上を経て規程や制度も疲労を起こして機能が低下して
いる。所属している人間の意識も昔のままの状況が続いているかのような現象を散見する。
どのように制度(受け皿)を変えようとしても、そこに載る中身が変わらなければどうし
ようもない。かつて、大学審議会が学長権限強化を検討し、国公立大学法人では学長が理
事長を兼ねてかなり権限強化が普及したように、また、教授会に代わる代議員制や教員人
事の弾力性を持たせるための多元的な契約教員制度を提言しているのも既存の大学教員へ
の意識改革を狙った側面があることも忘れてはならない。
現代社会における高等教育は以下のような問題と課題を提示している。
(注1)本節は拙稿「平成10年―12年度実施に伴う第二巻中央学院大学自己点検・評価報告書発刊に
あたり」、
『平成10年―12年度実施
自己点検・評価報告書―第二巻』
(中央学院大学
第二期自己
点検・評価実施委員会)、3-4頁を加筆修正した。
【3】現代の高等教育の抱える課題の概要
(1)学士力の構造
グローバル化の社会変革や高度情報通信技術の発達は、大学教育においても「何を勉学
したか」から、「何ができるようになったか(課題探求能力)」が求められている。中央教
育審議会の学士課程教育の答申(平成20年12月24日)でも、「学士力」は、従来の学
部の組織上の教育ではなく、学位修得の教育課程を重視し、3つの教育方針(入学、教育
課程、卒業の質保証)を前提に、教養教育や専門教育、さらに地域や産業界などとの連携
を通じた人間力や社会人力(知識・理解、汎用的技能、態度・志向性、統合的な学習経験
と創造的思考力)の育成を国策としている。
過去の大学教育の改善手法のひとつとして、コンピュータによる授業支援手法やeラー
ニングによる授業・自学自習支援手法などを試行し、コア・カリキュラムのモデル化など
を教務委員会に諮問をしてきた。その過程で、教育を行うにあたり、①教育のカリキュラ
ムや授業の方法、②大学の環境や設備、③社会や学生のニーズ、④教員の要件、⑤学習成
果(Learning Outcomes)の測定(大学設置基準、第2条の2、第25条の3)などについ
3
ても議論が必要であった。
教育環境や時代の変化に伴う学生の多様化は、①を支援するFD活動以上に到達目標を
共通基盤にして、学習成果の測定手法を明確化し、PDCAサイクルに連動する手法の開
発が必要とされる。我々は、学士力の質の保証をはかる場合に、「課題探求能力」育成をP
DCAサイクルで管理するための学習効果の測定方法のモデル化の報告を行う必要がある。
教育には、①体系的思考、②論理的思考、③判断的思考を育成する段階があるが、会計
教育の質保証の試みとして、コア・カリキュラムを前提に、それぞれの講義の到達目標(学
位水準基標)をモデル化とした。また、学習者が到達目標に至っているかを判定するため
の、標準的な判断基準データ(講義目標達成判断指標)として利用できる評価基準の在り
方などについても検討が急務である。
(2)学士力の運用
そして、これら教育の質保証を評価する基準は、期末試験のみにではなく、受講態度、
基礎・標準・応用テーマの理解など複数の基準からなるものとして議論しなければならな
い。例えば、各科目ごとの A:必須知識(習得知識の基層部分)→しっかりとした理解が必
要なため知識を試す論述問題を中心に課す、B:基本知識(習得しておくべき知識)→正誤
問題、計算問題、簡単な論述問題等、到達目標の分野に応じた理解を促すような問題を課
す、C:応用知識(習得しておいた方がよい知識)→調べて理解することを前提に、知識の
整理を促すような問題を課す、等の内容面の検討である
教育ビックバンと称される現在の大学教育改革は、伝統的な入口管理から出口管理を基
本とし、コア・カリキュラムの学位水準基標の策定とその客観的評価を柱としている。こ
の改革の背景には、アメリカCLAや欧州のボローニア・プロセスの世界的な共通質保証
のうねりがある。我が国の高等教育の質保証と共通化の後には国際的教育水準が待ちかね
ている。国際化とユニバーサル化は、選抜実質入試から全員合格形式入試へ、入口の入学
管理から出口の就職の出口管理へ、ラーニング・アウトカムズ(就業力、社会人基礎力重
視)の測定重視へ、研究中心から学生教育中心の大学へと質的転換がなされ、これに対応
できない大学が受験者を減少し競争市場から退場している。
(注2)本節は拙攻「巻頭言―新たな大学情報化の展開と教育の相対化」、
『大学教育と情報』
(私立大学情
報教育協会)、Vol.16,No.1(通巻118号)を加筆修正した。
【4】大学の構造と分析
(1)私立大学の建学の精神と教育理念
一般に建学の精神とは、その大学が既存の大学では満足できない新大学の設立の動機や
趣旨であり、それは個々の大学を流れる血液のようなものである。また、大学設立の動機
は許認可権を有する文部科学省やその背後にある学生・教師・父兄、地域社会等の利害関
係者の同意も得られなければならない。
この建学の精神は時として教育理念や創立者の人生訓が混在する。そもそも理念として
4
の建学の精神は、大学の独自性、従って、存在意義を端的にうたい、その精神が大学の機
構(研究・教育・事務の行為と物、金、人の要素と判断と規定という三つの立体的組織機
構)の隅々にまで生かされていなければならない。
したがって、教育理念や人生訓はこの建学の精神から導かれる一部分でしかない。大学
の隅々まで血液のように流れる建学の精神と教育実践で具現化された教育理念とは、概念
上は区別されるべきものであるが本学の場合は混在している点に特に特徴がある。
(注3)中央学院大学十年史編纂委員会『発展への序章』(中央学院大学)、昭和51年、では、建学
の精神(産学共同)と教育の理念を明確に区別しているが(29頁、45頁)
、中央学院大学20
周年記念事業年史部会編『新たなる創造に向けて』(中央学院大学)、昭和61年、建学の精神イ
コ-ル公正な倫理観と社会観の確立、という教育の理念になっており、建学の精神と教育理念の
混在現象が見られる(18頁)。
(2)中央学院大学の建学の精神と教育理念の変遷
まず、過去の歴史の中で中央学院大学の建学の精神または教育理念をそれぞれの形で明
確にうたっているのは、次の四つである。それらは、別個のものではなく、次節(3)で
まとめているように、中央学院大学の建学の精神または教育理念をそれぞれのかたちで具
現しているものと考えることができる。
まず、第一の建学の精神(教育理念)は、昭和41年4月1日付け、文部省に届出した
中央学院大学設置要項の冒頭にある建学趣意の「産学協同」による研究・教育である。こ
の主旨は現在でも「中央学院大学学則」第1条(目的)に「本学は学校基本法(昭和22
年法律第25号)及び学校教育法(昭和22年法律第26号)に則り、国家的・社会的要
請に応じ、産学協同の立場に立って広く知識を受け人格の陶治に努めると共に、深く専門
の諸学科を教授研究し併せて有為の人材を養成することを目的とする」と明記されている。
産業界と大学が提携して、人的・資金的協力をするこの「産学協同」の発想自体は、当時
の大学では非難され、否定的な雰囲気があった。両者の連携に警告を鳴らす当時の社会風
潮の中で、その発想自体は非常にユニ-クであった。
(注4)昭和 40 年設立当時の関係者の証言によれば、当初、中央学院大学は、証券会社との連携で証
券大学構想があっという。これが実現すれば、正に「産学共同」であったが、当時の証券不況の中
で証券会社の参画計画が頓挫したという(中央学院大学十年史編纂委員会『発展への序章』(中央
学院大学)、昭和51年、28頁、33―34頁)。
これに対し、第二の建学の精神(教育理念)は、設立時の際、学生や父兄に配付された
パンフレットや説明会での「マスプロ教育に対する少数精鋭教育」である。それを具現化
した授業が1年次からのプロゼミナ-ル教育であった。当時は学生運動の絶頂期であり、
多くの大学が正常な授業や入学試験ができなかった。この異常な時代への反省として、一
人ひとりが大切にされる新しい大学の設立が謳われた。初代学長の湯村栄一先生も全学生
との対話集会でも、この「宿命に生まれ・運命に挑み・使命に燃ゆ」を青年の生き方とし、
5
熱心に説かれていたことを思い出す。
第三の建学の精神(教育理念)は、第2代、4代、6代学長の石本三郎氏時代に哲学・
倫理学者の石本氏の下で、新たなる建学の精神「公正な倫理観と社会観の確立した経済人
の育成」が提唱された。そして、この建学の精神は、法学部設立により「公正な倫理観と
社会観の確立した経済人の育成」の「経済人」が削除され、
「公正な倫理観と社会観の確立」
となる。中央学院大学の建学の精神(教育理念)と言えば、この第三のものが現時点では
一般的であるが、開学時には、この建学の精神(教育理念)は開学時には存在していなか
った。
現在、公式な文書(学報、学生要覧等)での建学の精神を具現化した教育理念と
して下記の文言である。
「教育理念-中央学院大学の教育は公平な社会観と倫理観の涵養をめざし徹底した少数
教育を通じて実力と創造力をそなえた有能な社会人の育成を目的とする」
第四の建学の精神(教育理念)は、本学母体、「中央商業」の創始者の一人、高楠順次郎
の仏教主義による人間完成または「愛と信頼」である。この高楠順次郎と本学母体「中央
商業」との結びつきに着目し、その理論を研究なされたのは、本学商学部元兼任講師の山
崎誠史氏の研究により、その後、この「愛と信頼」は、付属高校の一つである『中央学院
高校』でも建学の精神として謳われ教育されている。また、平成14年を基軸年とした法
人100周年記念事業の建学の礎を研究する過程の中で、山崎氏の高楠順次郎研究が活か
され、高楠順次郎初め7名の創立者の軌跡が詳しく調べられ、高楠順次郎の仏教思想に基
づく人生訓「誠実に謙虚に生きよ
を慎み
温かい心で人に接し
奉仕と感謝を忘れるな
常に身
反省と研鑽を忘れるな」も発見され、二つの附属高校ではこれを建学の精神とし
て、大学においては学長椎名の下で卒業式・入学式やその他の式典での口上としてその教
えの普及に努めた。
(注5)山崎誠史稿「第1章/高楠教義解説」
、山崎誠史他共著『高楠教義論考』
(つくばね舎)、昭和
63年、3-66頁。石本三郎先生古希記念論文集「愛と信頼」編集委員会編『愛と信頼』(丸善
プラネット)、1992年、献呈の辞、2頁。中央学院100年史編集委員会編『中央学院100
年史』、「第1章
建学の礎と中央商業学校の誕生」、平成14年(学校法人中央学院)。
(3)中央学院大学の建学の精神と教育理念
それでは、過去の議論を踏まえ、21世紀の中央学院大学建学の精神と教育理念はどの
ように考えればよいのであろうか。まず、中央学院大学設立時の建学の精神「産学協同」
は、当初の証券大学構想の挫折とともに消えうせたことは、歴史的資料から明白である。
そこで、当時の学生運動の反省、特にマスプロ教育のアンチテ-ゼとして少数精鋭教育
がうたわれ、かつ、その少数精鋭教育を土台に人間教育重視の「公正な倫理観/社会観の
確立」が形成され、現在に至っている。しかしこれは、教育理念であり、建学の精神の全
てを含むものではない。
21世紀の建学の精神は、過去の中央学院大学や法人の歴史に脈々として継承され、か
つ、発展したものでなければならない。まず、本学設立時の産学共同思想を再度、着目し
6
なければならない。実は、産学共同思想の根幹にあるものは、実学をめざして発展してき
た母体「中央商業」の実践的教育であろう。アメリカ流に言えば、プラグマティズム(実
用主義)である。
(注6)プラグマティズム(pragmatism)の思想の下では,観念と実在が一致することが強調される(W.
ジェイムズ著、増田慶三郎約『プラグマティズム』[岩波書店]、1997 年、7 頁)。わが国の商業・法
律の教育では、観念を重視し、実学を軽視する風潮があるが、この反省が今求められていることは
周知の通りである。
商学にしても法学にしても、極めて実践性が要求されるプラクティカルな側面を有して
いる。この実践的な教育を通して、人間性に裏打ちされた教養型専門人材育成と研究こそ、
開学時の建学の精神に相通じるものである。
次に、教育理念としては、一貫したゼミナ-ル教育を基軸にした少数教育の実践である。
このゼミナ-ル教育を基軸にした各学生の個性に合わせた少数教育の実践こそ、中央学院
大学が創設以来、実践してきた財産であり、それは立派な教育理念として今後も堅持する
価値を有する。また、少人数教育とは単に教室の学生数という近視眼的な見方をとらない。
例えば、100名の授業でも教員が一人ひとりのリポートを添削し、一人一人にコメント
を付したり、授業中の学生への声かけやオフィスー・アワーでの指導なども含まれる。
中央学院大学は、国家の官僚を育てる明治以来のいわゆるエリ-ト教育をする大学では
ない。むしろ、良いものを持ちながら、偏差値教育や受験競争に馴染めず、高校時代まで
力が発揮できなかった学生を大学で自信を植えつけ、社会に送り出すことを任務としてい
る。つまり、高校までコンプレックスに悩み、あまり達成感を味わったことのない学生に、
目標を見つける機会を与え、やればできるという自信を植えつけることを教育の目標とす
る大学なのである。スーパーアスリートが一人もいない中での箱根駅伝12回出場実績は、
本学の教育理念を具現化した象徴例である。
このような学生は、磨き上げると素晴らしい光を放つようになる。これこそ、教育関係
者の冥利に尽きる瞬間である。このような大学であるからこそ、建学の精神も少数精鋭教
育を目指しているのである。岩石を磨ききれない学生に光るチャンスを与える大学である
から、一人一人の学生が大切にされ、教職員はこのため、自分の研究時間を割いても、学
生指導に熱心にあたらなければならないのである。そして、学生指導には教職員関係なく、
全学を挙げて取り組む姿勢こそ、正に中央学院大学の教育の本来の姿なのである。
過去も現在も、中央学院大学は研究で生計を立てる大学ではない。高校時代まで、どち
らかといえば自信のない学生を育成することで、社会にその真価を問い生きていく大学で
あることを忘れてはならないと思う。
このように過去の中央学院大学に生きている精神
を総括すれば、建学の精神は「人間性に裏打ちされた教養型専門人材育成とそれを実現す
るFD/SD開発、そして教員の自由闊達な研究を通じて、導かれる教育の理念が、一人
ひとりの学生が尊重され、大切にされる学生の人生と歩む大学としての少数精鋭の個性化
教育にある」であるといえる。ここに、過去の歴史を踏襲し、かつ、21世紀に向けての
7
新しい建学の精神の再認識があるといえる。
大学は新しい社会的使命に向かい、前進しなければならない。中央学院大学が目指すは、
全国区の大学ではなく地域貢献型の地方区の大学である。それはビジネスに例えれば、百
貨店でなく個性を有した専門店であろう。広範にして漠然とした人間教育ではなく、ビジ
ネスやロ-の専門プロフェッションのための基礎教育の充実、マスプロ教育でない少数教
育主義であり、教職員全ての人々がこのプロフェッションとしての責務を果たし、組織も
実践的な能力給と昇進(降格)の制度がこの建学の精神を背後から支えなければならない。
高度成長期時代のベビ-ブ-ムや団塊の二世を収容するための大衆化された新設大学の社
会的使命はいまや完全に終焉を迎え、これから新たなる本当の挑戦が始まろうとしている。
(注7)中央学院大学をめぐるプロフェッションの研究については椎名市郎、Frederic
Stiner,Jr,
M.Susan
Stiner
M.
著『現代アメリカアカウンティング・
プロフェッション』
(第一書林)、平成3年、及び一連の三名による国際共同論文を参照されたい。
(注8)本節は拙稿「平成10年―12年度実施に伴う第二巻中央学院大学自己点検・評価報告書発
刊にあたり」、『平成10年―12年度実施
自己点検・評価報告書―第二巻』(中央学院大学
第二
期自己点検・評価実施委員会)、7-10頁を加筆修正した。
【5】自己点検・評価の構造と機能
(1)中央学院大学と自己点検・評価の意義
大学を研究する学問分野は、最近、特に重要視され、その研究業績も出版物も多い。そ
の研究の多くは、次の三形態に分かれると思われる。まず、第一は、いわゆる古典的な研
究分野である。中世大学の歴史発展研究等から近代の大学論を論証する戦後の伝統的な大
学論である。第二は、現代の普遍的な大学論である。この多くは、欧米、特に、アメリカ
の一部の先進的な大学モデルを一つの理念型として捉え、日本の問題点を浮き彫りにする
形態である。第三は、ケ-ス・スタディ研究である。発展している大学や新しい試みに挑
戦している特定の大学の実例研究である。
自己点検・評価での基本問題の認識は、このような従来の大学研究ではカバ-できない
個々の大学の個別的な研究・教育体制や運用のセルフチェックと相互・外部チェックにあ
る。そもそも各々の大学には、企業規模に例えれば、いわゆる大企業、中小企業、零細企
業の規模の相違がある。また、企業の業種に例えれば、社会科学系列や人文・自然科学系
列、理工系列等の学問領域の相違もある。しかも、それぞれの大学にはそれぞれの設立時
の事情やその後歩んできた歴史もある。加えて、大学の財産といえる人的資源、特に教員
や学生の資質は千差万別である。
自己点検・評価の根底に流れる精神は、既存の大学の改革であり、正に個々の大学の教
職員、特に個々の教員や職員の意識改革にある。教育現場の責任は大方、各々の大学の教
員に責任があるという視点である。人間性に裏打ちされた教養型専門人材育成とそれを実
現するFD/SD開発、そして教員の自由闊達な研究を通じて、導かれる教育の理念が、
8
一人ひとりの学生が尊重され、大切にされる学生の人生と歩む大学としての少数精鋭の個
性化教育にある。
(2)中央学院大学の自己点検・評価の機能的側面
さて、中央学院大学の自己点検・評価には、次頁の三つの大学を支える論点がある。即
ち、「中央学院大学とは何か」、というアイデンティティーの問題、そこから派生する「教
育の問題」、そして小規模大学の「財政基盤」の問題である。もちろん、研究の問題も教育
と連動するので重要ではあるが、中央学院大学の場合、将来は別として、少なくとも過去
も現在も大学の研究成果を財源にして大学を賄い、かつ運営できる状況ではない。あくま
でも教育を主体にした大学であることは、設立以来、現在まで一貫して流れることである。
もちろん、ここでの研究とは、個々の教員の研究レベルを問題にしているのではない。
大学全体としての研究では収入が賄えないし、外部に知的ノウハウを提供して運営費用を
まかなうほどの充実した研究環境もないということである。中央学院大学が置かれている
状況は、個々の教員の研究を大切にしながらも、教育を主体にした大学であるという、基
本的認識がまず重要である。
以上の関係を示すと、
(図表1)中央学院大学の機能的問題のようになる。
(図表1)中央学院大学の機能的問題
大学のアイデンティティー確立の問題
(建学の精神の歴史的認識と現代的建学の精神の再認識)
研究教育の理念の問題
大学財政の問題
(教育に基盤を置いたカリキュラム
やFD、それを支える研究)
(資金の確保と適正な運営)
これらの三つの大学を支える柱は、大学の機能的側面に着目した点に特徴がある。大学
がどのような社会的機能を有して、学生や父兄、そして社会に臨もうとしているかを問う
ている。その中心理念は、中央学院大学でなくてはならない、独自の存在意義の検討にあ
る。中央学院大学を選び、入学してくる学生がいるかぎり、需要者(消費者)側からは大
学に対するニ-ズはあるが、大学側にこれが本当にあるのか、という問題提起なのである。
これを、「建学の精神」と称すれば、正に大学独自の精神的存立基盤は、大学のアイデンテ
ィティーの認識である。
次いで、そのアイデンティティーから派生する教育理念の問題がある。この教育理念と
そこから導かれるカリキュラムや授業形態の確立は、中央学院大学でしか教育できないも
のの体系でなければならない。
9
そして最後に重要な要素は、これらを実現するための財政の裏付けである。大学冬の時
代とは、主に、この財政の次元の問題としてとらえているケ-スが多い。もちろん、大学
に経営的発想を取り入れることは危険である、という見解もある。しかし、私立大学は、
この経営基盤を抜きにして語ることはできない。むしろ、大学財政の問題は、全てに優先
されて検討されなければならない最大課題である。経営抜きにして私立大学、ましては中
央学院大学を語ることはできない。
実は、この包括的な自己点検・評価実施委員会が開催されるまで、中央学院大学では、
この重要な三点を今まで全学、または法人あげて議論されたことがなかった。
以上が、中央学院大学の自己点検・評価の機能論の認識である。
(3)中央学院大学の自己点検・評価の構造的側面
中央学院大学の機能論を論じる場合、そのしくみがどうなっているかの構造面の認識が
まず重要となる。中央学院大学の構造は次のように理解することができる。すなわち、大
学の構造は3つの側面で整理することができる。(図表2)中央学院大学の構造的認識を参
照されたい。
(図表2)中央学院大学の構造的認識
教育体制
研究体制
もの
事務機構
設備
かね
財務
ひと
組織
規程
判断
まず、横の列に大学の行為の流れがある。大学には、研究行為と教育行為とそれらを支
える事務行為がある(研究・教育・事務)。また、その行為には縦の列として、行為を支え
る基本要素の流れがある。即ち、物や設備、資金、そして人材である(もの、かね、ひと)。
この物、金、人が研究・教育・事務を支援する構造となっている。
(注9)このモデルは「CJモデル」といい、会計学者の青柳文司教授の学説に含まれている。青
10
柳文司教授によれば、C(Convention),J(Judgment)で会計モデルの立体
的解釈を可能にした。この会計モデルを参考に私自身が大学モデルに書き換えたものが、
(図表2)
大学の構造的認識である(青柳文司著『会計・情報・管理』(中央経済社)、昭和54年、105
頁)。
(4)中央学院大学の意思決定構造
さらに、これらを支配する立体的な判断基準の流れが中央学院大学では最も重要である。
この判断基準には、諸規程と判断がある(規程と判断)。諸規定は集団の約束事であり、遵
守されるものであるが、簡潔にして明瞭な文言からなる「規程集」のみでは大学は運営で
きない。規程はあくまでも約束事であり、大学の現実の姿をすべて投影しているものでは
ないからである。そこには政治的妥協もあれば、事件、事故を教訓に緊急避難的に作成さ
れたものもあろう。国家の規定の遵守もあろう。
この意味で、規程は大学の組織人の行動を拘束するものではあるが、それがあるという
ことと(存在)、適性かつ的確に運営しているかという(当為)こととは別の次元の問題で
ある。つまり、規程さえ整っていれば、大学が問題なく運営できると思うこと自体が、幻
想なのである。規程は人間を拘束する一つの幻想として理解した方が本質にあう。つまり、
一つの規程の選択と適用には、常に人間の適正な判断が要求されるし、かつ時代が激変す
ればする程、静的な安定性を有する規程の適応に限界が見え隠れするのである。
定型的(日常的)意思決定の業務は比較的人間の判断が介入する問題が少ないとしても、
-中央学院大学では意外とこの次元でも多い-大学の根幹に係わる非定型的意思決定の場
合、規程の主旨を理解し、または規程を乗り越えた判断を行う必要がでてくる。学長や学
部長、理事会等の要職はむしろこのような例外管理の判断のためにあるといっても過言で
はない。
トップのこの重要な「判断」には、次の三つの次元がある。まず、
「こうである」という
事実の認識基準が最初のレベルである。次に、
「こうしたい」という個々人の価値判断が発
生する。そして、最終的に「かくすべき」という当為判断が形成される。この当為判断が
規程の選択と適用の適正な判断を生み、規範理論を形成する重要なレべルとなる。
すなわち、もし単に「こうしたい」という第二の個人価値判断のレベルで大学が運営さ
れてしまうと、そこには個人的人間の欲望が表面に出て、組織と個人の混同が行われる可
能性が強まる。当為判断は、認識判断と価値判断から導かれるもので、現状を認識し、将
来を見据えた、公正な判断のレべルを意味することを忘れてはならない。
いづれにしても、大学はこのように研究・教育・事務の行為と物、金、人の要素と判断
と規定の三つの立体的構造から成立していることの認識が自己点検・評価では重要である。
特に、最後の判断基準が重要であるが、自己点検・評価を論ずる場合、常にこのような構造
の鳥瞰図的な視点を保持する必要があると思われる。従来の大学論の場合、研究の面とか、
教育の面とか、あまりにも特定の領域に終始するものが多い。全体的な視野の欠如の中で
の自己点検・評価は危険である。なぜなら、大学の構造は全体的なしくみを抜きにして論じ
11
た場合、偏ったものの見方しかできないからである。
(注10)本節は拙稿「9.自己点検・評価の構造と機能」
、『平成10年―12年度実施
評価報告書―第二巻』
(中央学院大学
自己点検・
第二期自己点検・評価実施委員会)
、239-242頁を加筆
修正した。
【6】学長第1期目のロードマップとその成果と課題
(1) 学長ロードマップのフレームワーク
おおよそ選挙に立候補する学長は、4年間の任期に何を目指し、何を遂行するか明示を
する必要があるし、選挙で選ばれたらその施策案を遂行する責任がある。そして、毎年そ
の成果を自己評価・点検し、しかるべき会議等に報告責任がある。以下の、私の学長ロー
ドマップは平面的で時間概念も考慮されていない原始的なものであるが、おそらく本学で
は初めての試みと認識している。
別添「大学のロードマップ」参照
12
(2)学長ロードマップの遂行状況
① 学長を中心とした大学行政の主要な動き(平成22年4月~)
(1)学長基本方針<FD/SDの実施>
・ 講演会とワークショップ
平成22年度FD/SD(7/28)
・ 第1回教職員人事研修(12/22)
・ 学長プロジェクト
⇒
我孫子市がキャンパス計画「地元力向上推進プログラム」
(2)人事
・ 就職部次長、就職課長、国際交流(留学生)センター事務課長の就任
(3)危機管理
・衛生委員会より教室での「急病人・けが人発生時の対応マニュアル」作成
(4)教育関係
・ 学生募集支援業務への外部コンサルタント導入
・ 川村学園女子大学と本学との事務部門連携
・ OB高校教員等の組織化準備
・ 学生支援推進事業関連での新卒者雇用に関する緊急対策としてキャリアカウンセラ
ーの配置
・ 外国人出入国管理業務を円滑にするため入管協会への加入(10/1)
・ 先進的カリキュラム開発大学への視察(11/29、30
学長他関係者)
・ 韓国からの留学生募集調査(12/7から11 入試委員長、法学部関係者)
・ もう一つの東海道駅伝2011に学生自治会・体育会の学生参加(2/12・13)
(5)学内規程
・ 中央学院大学学部長会議規程改正
・ 中央学院大学委員会設置規程改正
(6)国際交流
・ 台湾逢甲大学大学院から37人来校(6/24)
・ 大連外国語学院継続教育学院への表敬訪問(10/21、商学部長他関係者)
・ 大連経貿外語学院他3校との教育提携に関わる視察(10/21~24)
(7)我孫子市等地域関連事業
・ 我孫子市教育委員会からの大学連携学生ボランティア要請
・ 大学コンソーシアム柏・地域学リレー講座(7/10)
・ ゆめ半島千葉国体我孫子市実行委員会委員
・ あびこカッパまつり実行委員会委員派遣、チア・リーディング応援部の参加
(8/28)
・ アドバイザリーボード地域リーダーとの教育懇談会(10/6)
・ 学生チャレンジプロジェクト(我孫子市国際交流協会活動への留学生参加)
・ あびこ国際交流まつりへの留学生参加(11/21)
13
・ 我孫子市災害救援ボランティア講座に学生10名、教員1名が受講
(12/4、10、11)
・ 大学コンソーシアム柏「学生による都市政策ワークショップ」への学生参加
(2/16、17)
(8)後援会・学友会
・ 入学式後の保護者対象説明会
・ 平成22年度中央学院大学後援会総会(5/22)および各支部総会
・ 後援会主催大学見学会(6/17、18、22)
・ 中国・四国地区地方会(10/23、24)
・ 学友会から学生支援と学内環境整備への協力
学友会との提携による緊急奨学金・奨励金の制度の新設
建物内外のベンチ・テーブル等の設置
・ 学友会創立40周年記念事業の一環として学友会への要望 3 件
・ 学友会創立40周年記念
第2回ホームカミングデー開催(10/30)
(歴代学長による記念講演会)
10/30 第 5 代学長 高木幸道氏、11/17 第 10 代学長 大久保皓生氏
(9)その他
・ 学生食堂の店舗充実(我孫子市商工会を通じて、OBによる出店)
②学長を中心とした大学行政の主要な動き(平成21年度)
(1)学長基本方針<FD/SDの実施>
・ 女性の声(5/15・18)
・ 主任の声(6/29、7/1・3)
・ 新任教員の声(7/7)
・ 中堅教員の声(9/9・15)
・ 一般職員の声(12/11・15)
・ 講演会とワークショップ
・ 学長プロジェクト
⇒
平成21年度FD/SD(7/29)
我孫子市がキャンパス「地元力向上推進プログラム」
(2)人事
・ 学生支援センター長、国際交流(留学生)センター長の選任
・ 財務部長、サポートセンター次長、国際交流(留学生)センター課長、教務課長、学
生課長、研究所事務課長の異動
(3)危機管理
・ 中央学院大学危機管理規程及び中央学院大学危機管理基本マニュアル
・ 衛生委員会新型インフルエンザ対応マニュアルの整備(5/29)
・ 本学非常勤講師(1名)罹患に伴う対応(7/5)と本部の立ち上げ(7/6)
14
・ 新型インフルエンザ対策本部の設置(9/15発足)
(4)教育関係
・ 学生成績評価制度方法GPA検討依頼
・ 教育職員免許法施行規則の一部改正(教職実践演習)と教職課程認定申請
・ 平成21年度外部資金導入プロジェクト『大学教育・学生支援推進事業』申講・採択
・ 地元力向上推進プロジェクト
「我孫子市がキャンパス」学生チャレンジプロジェクト発足(7/7)
・ もう一つの箱根駅伝に学生自治会・体育会の学生参加(1/9・10)
・ 平成22年度新任教員(FD)スタートアップセミナー(3/25)
(5)学内規程
・ 中央学院大学管理運営組織に係る関連規程改正(5/19)
・ 中央学院大学専任教員の資格に関する規程正
(6)国際交流
・ 国際交流の推進
国際交流(留学生)センターの設置
・ 大連外国語学院継続学院との「1+4」教育提携による現地入試
・ 長春工業大学来校(7/15)
・ 台湾逢甲大学大学院から41人来校(7/29)
・ 理事長、学長の8月中国・モンゴル表敬訪間(8/11~17)
・ 平成21年9月大連外国語学院職員招聘
(7)我孫子市等地域関連事業
・ 我孫子市教育委員会からの大学連携学生ボランティア要請
・ 我孫子市平和事業推進市民会議委員派遣
・ 我孫子市水道事業運営審議会委員派遣
・ 我孫子市情報公開・個人情報保護審査会委員派遣
・ 我孫子市国際化推進基本方針見直し検討委員会委員派遣
・ 防災士及び災害救援ボランティアの認証資格取得に係る我孫子市の協力要請
・ アドバイザリーボード地域リーダーとの教育懇談会(6/9)
・ コンソーシアム柏・地域学リレー講座(7/18)
・ 学生チャレンジプロジェクト(我孫子市国際交流協会活動への留学生参加)
・ あびこカッパまつり実行委員会委員派遣、チア・リーディング応援部の参加
(8/29)
・ あびこ楽校フェスティバルサッカー教室開催(9/22)
・ あびこ国際交流まつりへの留学生参加(11/22)
・ 我孫子市総合計画審議会委員派遣
・ あびこ楽校協議会委員派遣
・ 我孫子市商工観光事業振興審議会委員派遣
15
・ 市民活動フェアinあびこ2010への参加予定
「地元力向上推進プロジェクト」(3/6・7)
(8)後援会・学友会
・ 入学式後の保護者対象説明会
・ 学友会新執行部発足と大学との連携、学友会への要望(5/14)
・ 平成21年度中央学院大学後援会支部総会
・ 後援会総会
後援会慶弔金支給規程改正(5/23)
・ 後援会主催大学見学会(6/18・19・23)
・ 後援会中・四国地区支部地方会において「教育懇談会」開催(3/13)
(9)その他
・ 学内にコンビニを導入する可能性について検討の開始
セブンイレブン10/26オープン(学生サービスの向上)
③学長を中心とした大学行政の主要な動き(平成20年度)
(1)学長基本方針<FD/SDの実施>
・ FD講演会(7/30)
・ 職員研修(9/5)
・ FD研究会(2/4)
(2)人事
・ 法人局長、大学局長、総務部長、学事部長、就職部長、学長企画部長、入試広報課長、
企画課長、学事部特命事項担当課長の異動
(3)危機管理
・消防、避難訓練の実施(9/5)
(4)教育関係
・ 大学基準協会による大学評価ならびに認証評価の結果、大学基準に適合していると認
定される(2008年4月から2015年3月)
・ 学生相談室へのスーパーバイザーの委嘱
(5)学内規程
・ 中央学院大学における公的研究費の運営及び管理に関する規程制定
・ 中央学院大学における公的研究費の不正に係る調査の手続きに関する細則
・ 中央学院大学科学研究費補助金管理運用に関する取扱い要領
・ 中央学院大学大学院業績優秀者の奨学金返還免除候補者に関する推薦規程制定
・ 中央学院大学特任教授に関する規程制定
・ 中央学院大学客員教員に関する規程制定
(6)国際交流
・ 台湾逢甲大学大学院から40人来校(4/23)
16
・ 京畿大学校との学術交流提携(6/27)
・ 経営行動研究学会第8回「日本・モンゴル国際シンポジウム」開催(8/5・6)
・ 京畿大学校来校(9/27)
・ ワイカト大学来校(11/7)
・ 長春工業大学との学術交流提携(3/3)
・ 大連外国語学院継続教育学院との「1+4」教育提携(3/16)
(7)我孫子市等地域関連事業
・ 我孫子市と中央学院大学との包括協定と覚書調印
・ 我孫子市商工業振興基本条例検討委員会委員派遣
・ 我孫子市市民体育館および有料公園施設等指定管理者選考委員会委員派遣
・ ゆめ半島千葉国体我孫子市実行委員会委員派遣
・ 学生と市民向けに「裁判員制度シンポジウム」開催(6/12)
・ コンソーシアム柏・地域学リレー講座(8/9)
・ 卒業式・入学式の校歌斉唱を我孫子市混声合唱団「響」に依頼
(8)後援会・学友会
・ 入学式後の保護者対象説明会
・ 平成20年度中央学院大学後援会総会、支部総会
・ 後援会主催大学見学会(6/19・20・24)
・ 大学アドバイザリーボード開催(9/22)
・ 学友会運営に関する要望書(9/24)
・ 後援会中・四国地区支部地方会において「教育懇談会」開催(3/22)
(9)その他
・ 大学基準協会大学評価委員会各分科会委員派遣
④学長を中心とした大学行政の主要な動き(平成19年度)
(1)学長基本方針<FD/SDの実施>
・ FD・SD講習会(3/12)
(2)人事
・ 学生課長、入試広報課長補佐の異動
(3)危機管理
・ 衛生委員会委員の発令(10/1)
(4)教育関係
・ 学生サポートセンター設置
・ 平成19年度外部資金導入「特色ある大学教育支援プログラム」の申請
・ パソコンスタディルーム、模擬法廷教室のリニューアル
(5)学内規程
17
・ 中央学院大学における公的研究費の運営及び管理に関する規程
・ 中央学院大学における公的研究費の不正に係る調査の手続き等に関する細則
・ 中央学院大学科学研究費補助金管理運用に関する取扱い要領
・ 中央学院大学大学院業績優秀者の奨学金返還免除候補者に関する推薦規程
(6)我孫子市等地域関連事業
・ 我孫子駅前インフォメーションセンター整備事業検討委員会委員派遣
・ 我孫子市水道事業運営審議会委員派遣
・ 我孫子市商工観光事業振興審議会委員派遣
・ 我孫子市個人情報保護審議会委員派遣
・ 我孫子市都市計画審議会委員派遣
・ あびこ楽校協議会委員派遣
・ 我孫子市環境審議委員会委員派遣
(7)後援会・学友会
・ 入学式後の保護者への学長特別挨拶
・ 平成19年度中央学院大学後援会総会、支部総会
・ 後援会主催大学見学会(6/21・22・26)
・ 学友会から在学生への資格講座受講料補助
(8)その他
・HP上の学長メッセージの年間発信回数の増加
18
【7】学長の自己点検・評価―我が大学の現状と課題
(1)組織情報
(1) 事業規模及び主要な財務データ(平成22年4月1日現在)
(単位:千円
2006 年度
大学院学生数
2007 年度
)
2008 年度
8
23
33
3,530
3,454
3,375
帰属収入
5,581,615
5,526,142
5,593,036
(学生生徒等納付
4,371,756
4,365,023
4,288,569
消費支出
5,633,443
5,664,830
5,753,623
基本金組入額
▲340,100
▲369,728
▲264,527
消費収支差額
▲391,928
▲508,416
▲425,114
学部学生数
金)
(2) 教職員数
2006 年度
2007 年度
2008 年度
教員数
202
204
202
(うち 非常勤教員)
(128)
(129)
(124)
職員数
87
85
84
(うち 非常勤職員)
(13)
(13)
(13)
大学院教員数
5
7
8
(うち 非常勤教員)
(4)
(6)
(6)
(2)取り巻く環境変化の認識
(1) 外部環境
① 18 才人口の減少と志願者数の激減
② 文部科学省のリベラルアーツ教育や国際化への大学改革の行方
③ 経済不況(授業料の入り口と就職出口)
④ 多様化した若者像(自分で考え主体的に動き、自己管理できる人間との現状の乖離)
⑤ 一律補助金の削減と競争的資金の導入による疲弊
⑥ 大学と大学院との機能別棲み分け
⑦ リスクの増大(定員割れ、天災・病気等)
(2) 内部環境
① 教員の意識の保守化(教授会含む)
② 職員の意識の吸い上げの困難さ
③ 新法規に基づく理事会の責任や義務に対する共通認識
④ 留学生や不本意就学者への対応
⑤ 多様化する入試制度がもたらす制度疲労
⑥ 設備投資に基づく減価償却費の増加による消費収支の赤字
⑦ 保護者や地域住民などのクレームの増加
19
(3)我が大学の「建学の精神・創業者の思い」
建学の精神「公正な倫理観と社会観の涵養」は、専門知識だけの偏った人間ではなく、人と
しての総合力を培うという意味です。例えば、学内上げてのマナー向上キャンペーンなどにも
この精神が受け継がれています。そして、両学部は相互に関連性を持ちながら有益な授業を受
けられるようにしている。
(4)わが大学の理想的な姿を求めて点検・評価
(1) 理想像
① 大学の精神、教育理念が文章化され、常に目にふれられ、会議や教室で繰り返されること。
② 年に一度の特別講演や正規のカリキュラム等で学生や保護者に語りかけることが出来る
こと。
③ 理念を具現化した目に見えるものが具体的に累積され、年次計画に反映されること。
(2) 現状
① 学長や組織リーダーが叫んでいるのみで、組織全体に伝わっているとは思えない。
② 入学式・卒業式・保護者会などの行事のみで理念や戦略が常態化されていない。
③ 具現化を包括的に認識し計数的に測定できていない。
(3) どのように伝達しているか
① HP・学報・大学行事・大学から配布する冊子(リーフレット)で伝えている。
② 奉仕の精神などに関し、学生ボランティアなど具体的実践例で伝える努力をしている。
(4) 難しい点
① 特に関心を寄せない教職員・学生が多いこと。(特に、伝達者としての教員の無関心)
② 同じことを常に発することで空気のような存在になり、感動が薄れること。
20
(5)本学の顧客とステイクホールダー(学生を中心)の点検・評価
具体的対象顧客
顧客ニーズの分析
(1) 在学学生
社会に出るための基礎力や人間力の養成ニーズ
(2) 高校受験生
勉学から就職まで面倒見の良いアットホームな大学
(3) 高校教員
教育システムへの信頼性、安定性、学生情報の高校へ
のフィードバック
(4) 保護者
一人前の人間として育成し、就職先を得ること
(5) 卒業生
母校の近況情報提供や生涯学習支援
(6) 就職先
ドロップアウトしない人材、社会人基礎力(チームワ
ーク、主体性等)
(7) 地域住民
生涯学習への機会、学生を採用した地域の活性化
(8) 地域社会
知的財産の提供(審議会への委員、その他)
(6)本学の顧客と市場の変化の点検・評価
どのような変化を予測するか
変化に対応するためにどのような課題があるか
(文部行政の施策の大転換①)
① コア・カリキュラムの策定
(1) 大学の国際化戦略
② ラーニングアウトカムズの測定
③ FD/SDの質的変化に対応
(文部行政の施策の大転換②)
教員以外に職員の地域社会を巻き込んだ社会的教育
(2) リベラルアーツ教育
システムの構築
(3) 学生・保護者のニーズ
① 厳しいクラブ活動型(専門型学生)から楽しい同
好会型(不本意就学者)学生の増加
② 反対に、保護者の大学行政への関心の高さ(モン
スターペアレント)
(4) 社会の変化(特に産業界) ① 大学教育への不信感の増大
② 大学との人的交流(教員としてインターンシップ
として)の欲求増大
21
(7)本学が提供すべき教育価値の点検・評価
製品・サービスは何ですか
どのような顧客価値か
(1) 教育内容(カリキュラム) ① 企画プロセス:倫理観を有した教養専門型人材
と人的資源(研究より教育重視
の教員育成)
育成のためのカリキュラムの毎年の見直し編成
② 提供プロセス:個性化(12 のコース)、情報化(I
BM提携)、国際化、初年次からの就職指導、親
しみやすい教職員(アットホーム)
、資格講座
③ 関係プロセス:基礎ゼミから専門ゼミへの一貫
性、学友会講座、地域での教育
(2) 学生サービス
① 企画プロセス:競争校の設備に劣らないこと、目
安箱の設置
② 提供プロセス:個性化(12 のコース)、情報化(I
BM提携)、国際化、初年次からの就職指導、親
しみやすい教職員(アットホーム)
、資格講座
③ 関係プロセス:OB・OGの講義、後援会の授
業見学、年間 1,400 名の社会人への講義の開放
(3) 設備・施設(教育環境)
① すべての施設のリニューアル化(完了)
② 快適なキャンパス
③ 憩いの場の確保
④ 学長室・教員室・研究室の開放
(4) 保護者・学友会・地域との ① 年に何度かの保護者の授業見学と教員との懇談
ネットワーク
会
② 学友会講座を通じてのネットワーク作り
③ 地域への学生ボランティア(地域も教育に参加)
④ 地域リーダー(教育委員会、商工会議所、国際
交流協会などのアドバイザリーボードによるネ
ットワーク
(5) 提供価値
① 12 コースの(専門)個性化、情報化、国際化の人
材育成カリキュラム
② (人間力・社会人基礎力)21 世紀型市民として
のリベラルアーツ型教育
③ スキルの高い教職員の採用と育成
④ PC も含めてネットワークを生かした教育
⑤ 100%に近い就職率
22
(6) 独自性
① 一人ひとりが大切にされる大学
② “ボトムからのアップで化けさせる”教育
③ “アットホーム”なゆとりある大学
④ “マナー向上”で人に優しい大学
⑤ 学ぶ喜び、役立つ喜びを感じる大学
⑥ 職員が教育に参加できる大学
⑦ 環境のよい大学
⑧ 地域密着型
(8)独自能力(大学資源)の点検・評価
資源の種類
(1) 術・ノウハウ
独自能力を発揮できる経営資源は、何か
① 建学以来続く一人ひとりに目が行き届く教育技術
や校風(DNA)
② 基礎ゼミや専門ゼミとの連携による少人数教育、
迅速な苦情対応
③ アカデミック・アドバイザーや学生支援センター
等の一人ひとりの学生支援
④ 必要な経営資源は“研究より教育に情熱を注げる
人材”の確保(教育重視の姿勢)
(2) 装置・設備・施設(道具) ① 開学時の施設をすべて新しくした
② 地震や災害に強い大学(リスク管理)
③ 学生の憩いの場の確保(学長による早朝学内巡回)
④ 学長室、教員室、研究室等の開放
(3) 財務活動(資金の調達)
① 寄付金活動の工夫と常態化
② 500 万以上の競争入札制度の導入と 3 年契約によ
る見直し
③ 後援会、学友会からの定額寄付、奨学金の獲得
④ 専門投資家による投資運用
⑤ 外部競争資金の獲得
(4) ビジネスパートナー
① 3 年間に一度取引業者の見直しと 3 年間の安定契
約(変化と安定)
② 後援会、学友会との教育支援
③ 地域への知的財産の提供(市への 70 の委員会への
委員派遣、公開講座、生涯学習講座)
④ 地域にボランティアで学生派遣をする。地域を活
性化するための地域リーダーを大学に呼んでの研
究プロジェクト。セブンイレブンなどの地域開放。
23
(9)教職員重視思想の点検・評価
教職員とどのような関係を築きたいか
現在、教職員からどのような評価を受けている
か
・業績評価(数値)による欧米型管理より双方 ・“アットホーム”なのんびりとした大学であ
向のコミュニケーションの価値観の共有(結果 ること、くつろげる雰囲気を持てる大学(欠点
としては甘さが残る)
志向や標準化への反省)
・TopのVisionが明確にあり、教職員 ・学長ロードマップが“一人よがり”の感があ
にとってわかりやすい関係
り、コミュニケーションをすべし。学長が交替
したら引き継げるのか
・カルロス・ゴーンではないが、経営者が一番 ・学長が汗をかいて仕事していることは認める
仕事をし、先頭で汗をかいて現場を充分理解し が、もう少し仕事を配分して他人に任せること
た上での関係を築く
も大切との批判あり
・建学の精神を活用して判断基準の統一性や公 ① 学長は教職員を母体としているのに給与の
正な態度を堅持した関係
交渉になると理事会側になる(財政再建)
・教職員を重視するとどのような具体的メリッ ② 統一基準の不在(法人、大学全体)
トがあるのかが明確になる関係
③ 定員割れをしないで倒産しない安心した大
学(安定性)
④ スキルアップのチャンスがある大学(FD・
SD の半期回数 13 の実施)
⑤ 自分の意見が何らかのカタチで制度に反映
できる大学(減点主義から加点主義へ)
⑥ 大学の戦略や方向性が明確な大学(戦略策
定中)
⑦ 努力すれば報われる人事報酬制度(達成、
成長、評価、責任)
⑧ 組合の既得権が強くて改革の足かせになら
ない大学(話し合いを重視)
(ある警告)
労使団体交渉の殺伐たる風景がその後の経営哲学の原点となった。交渉や闘争で最低限のもの
は得られてもそれ以上のものや人の幸せは絶対に得られない(川越胃腸病院
24
望月智行氏)
(10)一般論としての教職員重視と今後の変化の点検・評価
どのような変化を予測するか
変化に対応するためにどのような点が課題
となるか
(1) 組織的能力の育成の質的変化
・集団主義が崩れ、個人主義から利己主義
へと教職員の意識が変化(義務より権利重
視)し、学生教育にも影響を与える
(2) 個人における教職員の能力開発の ・多様化(世代間より個人間)した人間や
バラツキ
情報ツールの発達によりコミュニケーショ
ンが取れなくなることが課題
(3) 教職員の満足度の変化
① 給与や地位を最優先としない多目的価
値観
② 研究より教育を軽視する傾向から学生
や周囲の人間と関係が築けないで教育
を放棄する者も出てくるのではないか
と思う(簡単に解雇できない)
(4) 実は学生よりも教職員が一番問題にな ① 教職員のマナーやルール違反の散見
る時代
② 学生に注意される教職員の増加の恐れ
③ 日本語能力も問われる教職員質低下
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