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フィルム加飾(フィルム貼合・転写加飾)

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フィルム加飾(フィルム貼合・転写加飾)
フィルム加飾(フィルム貼合・転写加飾)
2016年8月22日
MTO技術研究所
所長 桝井捷平
1.フィルム加飾(フィルム貼合・転写加飾)
プラスチック加飾技術
は、表 1 に示すように、
非常に広範囲にわたり、
多くの技術がある。この
中で、「フィルム加飾技
術」は現在最も活発な動
きのある加飾技術であ
る。 家電、OA機器、携
帯電話などに使用されて
いるプラスチックの筐体
の表面加飾には、以前は、
二次加飾の印刷、塗装、
蒸着、メッキ等が多く用
いられてきた。しかし、
製品形状が複雑化し、機
能性付与が求められ、さ
らに環境負荷の問題、コ
スト面などから、印刷、
塗装、真空蒸着、着色
などで加飾したフィ
ルムまたはシート(以
下「加飾フィルム」と
称する)を用いて、フ
ィルムを成形品表面
に貼合せる、あるいは
印刷、塗装、真空蒸着
などの加飾面を転写
させる「フィルム加飾
技術」が多く用いられ
るようになった。加飾
技術の中における「フィルム加飾技術」の位置づけは、図 1 のとおりである。加飾品
質も高いが、コストもかかる技術であり、このことを念頭に置いた対応が必要である。
2. 加飾フィルム
加飾フィルムならびにフィルム転写・貼合技術は大日本印刷㈱、日本写真印刷㈱が
先駆者で、数十年前から事業化していたが、近年この分野への参入メーカーが著しく
増え、ベースフィルム、意匠表現の異なる加飾フィルムが多く供給されている。
3.1 加飾用の基本フィルム
加飾用の基本フィルムと
しては、表2に示すように
PMMA、PC、易成形
PETが使用され、最近高透
明PPが供給され、新しい展
開が進んでいる。また、欧米
では、自動車外装用の特殊多
層構造フィルムが使用され
ている。
加飾フィルムに使用され
ている主要な基本フィルム
の性能比較は表3のとおり
であり、目的、使用する方
法によって使い分けがされ
ている。
PMMAは古くから用い
られており、表2の各社か
らほぼ同様なグレードが供給され、MMA/PCの2、3層フィルムも供給されている。
その他、ソフトアクリルのみを供給しているメーカーもある。
性能バランス
のよい易成形
PETが転写フ
ィルムとして使
用されており、特
殊なフィルムと
して、東レ1)
が図2に示すよ
うに、金属調フィ
ルムPICAS
USを供給し、携
帯電話端末やノートパソコンに採用され、家電銘板、自動車内装でも検討が進んでい
る。近赤外光透過金属光沢調
加
調
種類
積層
本格展開 開始 帝人デュポンも同様なMLFを供給し、
リンテックは新素材ラミネートフィルムREVI を発表している。
近年、出光ユニテッ
2)
ク
が、ポリマー設計
で高透明化を実現し
たPPフィルム、
ピュアサーモを供給
ししている。
易接着
特徴
成形性 良
好 伸
系素材 中
高 耐熱性
性良好
最
印刷適
低比重
軽量 低
化
光線透過率
耐候性良好
図3に示すような新展開を行っている。東レはオレフィン系の離型フィルムを供給し
ている。さらに、後述の表9に示すように、海外においては、自動車外板用として、各種
ラミネートフィルム(ドライペイントフィルム)が供給されている。
3.2 加飾フィルムの構成と意匠表現
転写成形(IMRおよびOMR)と貼合成形(IMFおよびOMF)で、フィルム
の構成ならびに
厚さが異なる。代
表的な加飾フィ
ルム構成例を図
43)、4)に示す。
加飾フィルム
の意匠表現は、古
くから用いられ
ていたグラビア
印刷と蒸着や着
色等を組合せた
意匠表現以外に、
塗装、薄肉多層構造、
さらにロールシボ転写、塗装後部分はがしによる意匠表現等が使用されている。意匠
面はフィルムの表面、裏面、両面のものがあり、さらに表面にエンボスなど各種加工
を施したものが使用されている。
加飾フィルムの意匠表現例を図55)~7)、代表的な加飾フィルムを表4に示す。
3.3 最近の注目される加飾フィルム例
各社から各種の工夫された加飾フィルムが供給されている。
図6~9に最近の各種展示会で展示された注目される加飾フィルム例を示す。
3.4 加飾フィルムへの各種機能付与
最近、加飾は単なる加飾から下記のような各種機能を付与した加飾へと展開して
いる。
表面特別性能付与 温度
変色 撥水等
表面触覚性能付与
表面 保護性能付与 傷
冷感等
防止 指紋付着防止 耐光
各種一般機能付与 坑菌 帯電等
性 防水 防湿等
電気 光性能付与 電波透過 赤外線過
等
臭覚性能付与 芳香等
聴覚性能付与 金属音
等
フィルム加飾は、機能性付与性にも優れている。図10~12に機能性付与例を示
す。(一部フィルム以外も含む)
4.フィルム加飾の成形方法
フィルム加
飾に用いられ
る成形方法を
二次加飾も含
めて表5、図1
4に示す。
成形方法と
しては射出成
形等によるイ
ンモールド加
飾と成形品に
後から加飾す
るアウトモー
ルド加飾成形
に分類される。
インモールド
加飾はさらにフ
ィルムを成形品
に残すインモー
ルド貼合
(IMF)と
意匠面のみを成
形品に転写する
インモールド転
写(IMR)に分
類される。
成形品にあと
から貼合、転写さ
せるアウトモー
ルド加飾としては、オーバーレイ成形、ホットスタンプ、水圧転写法等がある。
従来はインモールド成形が主であったが、布施真空がオーバーレイ成形である
TOM工法(Three-dimension Over-lay Method)8)を開発して、適応性がさらに広が
った。射出成形によるインモールド転写、貼合、オーバーレイ成形ならびに水圧転写の
3次元フィルム加飾工法の一般的な比較を表6に示す。
4.1 インモールド加飾成形(IM-D)
インモールド加飾成形の代表的な方法として、NisshaIMD5)(日本写真
印刷)を図15に示し、IM-Dの用途例を図16、図17に示す。
また、インモールド加飾における部品設計の基本、デザインの制約を図189)、
図19に示す。
4.2 アウトモールド成形(OMD)
アウトモールド加飾成形の代表的
な方法として、布施真空のTOMの工
程および特徴を、図20、21に示す。
TOM工法に代表されるOMDは、
インモールドでは困難なフィルムの
端面巻き込み、テクスチュア(表面凹
凸)の保持、多数個取り可能、プラス
チック以外の基材の使用可能等の特
徴があり、さらに大型成形が容易で、
少量多品種成形にも適しており、
採用が拡大して
いる。
布施真空の他,
浅野研究所㈱10)
ナビタス㈱11)も
開発している。図
22に示すよう
に、フィルムの上
下の差圧を利用
して賦形する基
本原理は同一で
あるが、それぞ
れに特徴があり、
自動車内装部品
を中心に採用が
進み、日本からアジア、欧米へと展開が進んでいる。最も先行している布施真空の
TOM工法による製品例を図23、24に示す。当初、非自動車部品からスタートした
が、現時点では自動車の内装部品が中心である。大きな部品
部品
辺
高級車
表面加飾品 汎用車
織物調
木目調
塗装レス外板の動向については、後述する。
加工 成形品 使用
部品 使用
周
多
4.3 その他のアウトモールド成形
IM-L(インモ-ルドラベリング)は、図25に示すように、フィルム(箔)を延伸せず
に、展開のみで変形、貼合する方法で、各種食品容器に使用されている。
水圧転写は図264)、12)に示すように、水に浮かべた印刷などを施した水溶性フィル
ムに成形品を押し付けて転写する方法である。
ホットスタンプは、図27に示すように印刷箔などを熱圧着して転写する方法で、
通常はフラット面への転写であるが、村田金箔13)はシリコン発熱パッドを用いて局面へ
の印刷を可能としている。
5.塗装レス加飾と自動車ボディパネルへの展開
図28に塗装レス加飾
技術のニーズと対応をま
とめて示す。塗装などのウ
エット方式の加飾は優れ
た加飾技術であるが、VO
C ( Volatile
Organic
Compounds)排出問題、作
業性、コストの問題があり、
「塗装代替え(塗装レス)
加飾技術」が注目されてい
る。表7に示すように、そ
の代替え技術として、特別
な表面層を用いない加飾
( N S D 、 Non Skin
Decoration)
とフィルム
貼合・転写に
代表される
ドライ法に
よる表面加
飾がある。
NSDで、
塗装、めっきなどの課題が解決されるが、意匠性の表現には限界がある。
高い意匠性を要求される場合は フィルム加飾が有効である。ただ、塗装などは、古く
から使用されており、豊富な技術の蓄積があり、設備の償却が終わっているものが多く、
新規設備を必要とするフィルム加飾と塗装の実用的なコストを比較すると、フィルム加飾
の方が高くなることもあり、なかなか一気には代替えが進んでいないのが現実である。し
かしながら、フィルム加飾で、VOCは約30%低減し、VOC対策は世界的な要求であ
って、いずれ代替えが必須になると思われる。
塗装が使用されている自
動車のボディパネルも例外
でない。自動車外板の成形
方法を表8に示す。欧米に
おいて、フィルム加飾によ
る塗装レス自動車外板が、
2000年代に一部実用化
され(図2914))、表9
に示す自動車外装仕様を満
たすフィルも販売された。
しかし、その後広く実用化
されるに至っていない。そ
の他、モールドインカラー
(着色コンパウンドからの成
形)、着色シートの熱成形も塗
装レス自動車外板の成形技術と
して実用化され、フィルムラッ
ピングも検討されている。(図
3015)-17))
日本でも下記の動きがあり、
加飾外板の採用が進むことが期
待される。
1)布施真空㈱が、フロントグ
リル部品を制作し、他の外装部
品も試作。
2)2015年の3次元表面加
飾技術展で、Smart の内外装部
品の多くをTOM成形で試作した部品に置き換えた車が展示され、大きな反響(図31)。
3)自動車外装仕様を満たすフィルムが、各社で開発・試作(省略)。
そのような中で、布施真空㈱では、自動車外板の成形を主対象として、TOMを発展さ
せたNeo-TOMを開発した(図32)。
そして、図33に示すように、
ダイハツ㈱のキャスト18)の
ルーフパネルにフィルム加
飾が採用され、三菱化学㈱が
開発したバイオPC着色材
料デュラビオを用いた外装
部品の開発18)も進められて
いる。また、スリーエムジャ
パン㈱のラッピンフィルム
20)
も利用されている。さら
に、柔らか素材EV21)がリ
モノなどにより試作されて
いる。
6. フィルム転写・貼合加飾の用途、市場規模
国内、海外におけるフィルム加飾製品例は既に、各成形方法の中で示した。
㈱富士経済の資料18)によれば、加飾フィルムの市場は、2012 年は、41,250 千m2、
1,062 億円の規模で、2017 年は金額ベースで 36.8%伸びると予想されている。内訳
では、2012 年で、IM-Dが 52.1%と依然として高い比率を占めるが、2017 年には
38.6%に減少し、自動車用IMLが 14.5%から 16.1%、さらにOMDが 0.8%から 5.7%に
拡大すると予想されている。
7.今後の動向・展望
プラスチックの加飾技術全般の動向としては、
1)自動車,家電製品,日用品などにおいて、今や若い世代を中心に、製品表面の見栄え
は購入を判断する重要な要素になっており、加飾は今後もますます盛んになると考え
られる。ただ、加飾はコストアップになり、「見栄え」は世代、性別、個性で非常に
差ある。
2)「特別な表面層なし加飾」は「低コスト加飾技術」として、金型加工、射出成形の技
術の進歩等で、さらに拡大していくと思われる。
3)多品種少量生産にも対応できる加飾技術が重視される。
4)環境に優しい素材(バイオマス樹脂、顔料、塗料など)の利用による加飾が拡大して
いくと考えられる。また、環境に好まし状態で行える加飾(インモールドコーテイン
グ、レーザー加飾、UV硬化インクジェット印刷など)が普及していくと思われる。
5)機能性フィラー着色/高品位転写成形、FIML/IMC(In-Mold Compound)、
二色成形/IMC、FIML/メタライジング等加飾 技術の組合せでより高付加価
値された加飾も展開が進んでいくと思われる。
「フィルム加飾」は現時点では最も活発な動きがある加飾技術であるが、やはりコスト
がかかる加飾技術であり、上記の動向を踏まえた対応が必要で、対応を誤ると何時まで
も主流であり続けるとは限らない。
1)コストパフォーマンスの追及。
本物志向、高級志向分野への対応とコスト重視分野を分けた対応が必要である。
2)多品種少量生産対応
全般的に多品種少量生産が求められ、フィルム貼合・転写加飾では「TOM工法」が
拡大すと予想される。
3)環境対応の観点で、基本フィルムをはじめ、意匠表現に使用するインキ、塗料、着
色材も、バイオマス材料の利用が求められる。
4)フィルムへの各種機能性付与、他の加飾技術との組合せ等による高付加価値対応が
求められる。
6.参考文献
1) 東レ㈱ http://www.toray.co.jp/news/film/nr080821.html
2) 出光ユニテック㈱ 技術資料
3) 麗光㈱ http://www.reiko.co.jp/product/color/
4) 阿竹浩之;プラスチックへの加飾技術全集 P121,技術情報協会(2008)
5) 藤井憲太郎;コンバーテック, 36,(8), (2008)
6) ウェーブロック アドバンスト テクノロジー㈱h ttp://www.wavelock-at.co.jp/catalogue/pdf/
jp_catalog.pdf
7) 龍田化学㈱ http://www.tatsutachemical.co.jp/product/asheler/
8) 布施真空㈱,3次元表面加飾技術展2015 他
9) Sabic
http://www.sabic-ip.com/gep/Plastics/en/ProductsAndServices/IMDHome/
in_mold_decoration.html
10) 浅野研究所㈱,3次元表面加飾技術展2015
11) ナビタス㈱,3次元表面加飾技術展2015
12) (有)ミズノ http://www.mizuno-s.net/mfs.html
13) 村田金箔㈱ 技術資料
14) http://www.ptonline.com/articles/where-the-action-is-decorating-with-formable-films
15) http://www.ptonline.com/articles/where-the-action-is-decorating-with-formable-films
Styrolution,
http://www.plastics.gl/automotive/styrenic-polymers-in-automotive-interior-and-exterior/
16) SENOPLUST,http://www.senoplast.com/en/applications/automotive-vehicle-technology
17) 塗料の研究 No156 Oct.2014 (関西ペイント)
18) ダイハツ㈱ http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/newface/160146.html
19) 三菱化学㈱ http://news.mynavi.jp/news/2015/01/28/078/
20) スリーエム㈱ http://www.mmm.co.jp/car_care/car_wrapping/
21) リモノ,http://www.asahi.com/articles/ASJ5N4TZ3J5NULFA00S.html
22) 富士経済 http://www.group.fuji-keizai.co.jp/press/pdf/130912_13069.pdf
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