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児童健全育成シンポジウム記録集

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児童健全育成シンポジウム記録集
日時:平成25年8月11日(日)13:00~15:50
会場:タワー111
スカイホール(3F)
・スカイギャラリー(4F)
主催:富山県、(財)自治総合センター
共催:(一社)富山県児童クラブ連合会、富山県母親クラブ連合会、富山県児童館
連絡協議会
後援:富山県保育連絡協議会、富山県民間保育連盟、富山県保育士会、富山県子
育て支援センター連絡協議会、(福)富山県社会福祉協議会、富山県民生
委員児童委員協議会、富山県PTA連合会
このシンポジウムは全国モーターボート競走施行者協議会からの拠出金を受けて実施したものです。
はじめに
近年、少子高齢化や核家族化の進行に伴い、家庭や地域で子どもを育む力や、子ど
もたちが切磋琢磨し、たくましく成長する環境が失われつつあります。
このため、本県では、
「子育て支援・少子化対策条例」や「みんなで育てる とやま
っ子みらいプラン」、並びに平成 24 年度に策定した「新・元気とやま創造計画」に基
づき、子どもたちの笑顔と元気な声があふれる活気ある地域社会の実現に向け、家
庭・地域・学校・事業者・行政などが連携協力して、子育て支援・少子化対策のため
の様々な取組みを進めております。
こうしたなか、県では、平成25年が富山県置県130年となることを記念し、県
内の子育て中の保護者の皆さんが子どもの育ちにとっての地域の重要性や地域の中
で親子ともに成長することの意義について学ぶとともに、地域における子育て支援の
ネットワークづくりと活性化を図るため、児童健全育成シンポジウム「親と子の育ち
あい~地域の力が育てる元気なとやまっ子~」を開催しました。
このシンポジウムでは、杉浦太陽さんによるトークショー、関西大学の山縣教授に
よる基調講演、パネルディスカッションなどを行い、子育てや子育て支援、地域での
ネットワークづくりなどについて、熱心な発言・提言がありました。
当日の内容をまとめたこの記録集が、親と子が地域の中でともに育ちあう社会のあ
り方について、改めて考えていただく契機となれば幸いです。
平成26年3月
富山県厚生部児童青年家庭課
富山県置県 130 年記念
児童健全育成シンポジウム
「親と子の育ちあい~地域の力が育てる元気なとやまっ子~」
県内の子育て中の父母が子どもの育ちにとっての地域の重要性や地域の中で親子
ともに成長することの意義について学び、子育て支援や児童健全育成に関わる方が地
域での子育て支援について考えることにより、地域のネットワークづくりと子育て支
援の活性化に資するため、シンポジウムを開催しました。
開催日: 8月11日(日)13:00~15:50
場 所: タワー111 スカイホール(3F)及びスカイギャラリー(4F)
参加者: 一般参加者、地域子育て支援関係者、行政関係者等 370名
(3F スカイホール)
 知事挨拶
 トークショー「杉浦太陽の子育て 本日も晴天なり!」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
ゲスト:杉浦 太陽 氏(俳優)
 基調講演「子育て・子育ち・親育ち~親子の育ちを育む社会づくり~」・・・・・・2
講師:山縣 文治 氏(関西大学人間健康学部教授)
 座ったまま!親子ふれあい体操
 パネルディスカッション「子どもの育ちにいま必要な地域の力」・・・・・・・・・・・・5
パネリスト:山縣 文治 氏(基調講演講師)
神川 康子 氏(富山大学人間発達科学部教授)
傍田 裕子 氏(子育てサークルプリプリキッズ代表)
尾山 幸恵 氏(富山国際大学子ども育成学部4年生)
コーディネーター:陸田 陽子 氏(KNBアナウンサー)
(4F スカイギャラリー、3F スカイホールホワイエ)・・・・・・・・・・・・・・18
 パネル展示(富山県児童クラブ連合会、富山県母親クラブ連合会、富山県児童館
連絡協議会)
 遊びのコーナー(富山県児童クラブ連合会による工作コーナー)
杉浦 太陽 氏
プロフィール
1981年3月10日生まれ。大阪府出身。98年デビュー。01年『ウ
ルトラマンコスモス』主演。その後、ドラマ、映画、バラエティ、
などで幅広く活躍。NHK『キッチンが走る!』
、MBS『魔法のレ
ストラン』
、テレビ愛知『日曜なもんで!』などにレギュラー出
演中。また、NHK『キッチンが走る!』が第20回スポニチ文化
芸術大賞を受賞。
プライベートでは 2007 年に元モーニング娘。の辻希美さんと
結婚。現在、3 児のパパ。公式ブログ「太陽のメッサ○○食べ太
陽」(http://ameblo.jp/sunsuntaiyo/)
発言要旨
5歳、2歳、0歳の3人の子どもがいる。家事は役割分担というよりも「今、手が空いて
るけど、何か手伝うことないか」と聞くようにしている。自分が勝手にどんどんやって、余
計なお世話だったということもあるので。つまらないことで夫婦げんかになることもあるが、
お互い言い分を言ったら、
「せっかく2人でしゃべっているのに、時間がもったいない」とな
り、仲直りする。
1人目が生まれたとき、
「自分以外に、こんなに愛する存在があるのか」と思った。2人目
が生まれたとき、
「上の子以上に愛せるか」と思ったが、関係なかった。2人になろうが3人
になろうが、こんなに愛おしい存在が僕には3人もいるんだ、と幸せに思う。
子育ては、1人で抱え込むと育児ノイローゼにつながるので、妻の実家があり友達もいる
地元に引っ越した。困ったときに助け合えることと、地元のきずなや友達、近所付き合いは、
すごく大事だと思う。通勤は遠くなったが、妻の居心地のいい状態で、子育てしやすい環境
づくりになると思い、我慢できる。
たまに息抜きしたいと思ったときは、夫婦でデートする。お母さんに、いかにストレスを
溜めずに元気でいてもらうかを考える。お母さんがぴりぴりすると、家全体がぴりぴりする
ので。彼女のストレスを緩和させてあげるのが、僕のいつもすること。仕事柄、地方出張が
多いが、朝起きたときや空いた時間、寝る前などに妻へ電話して、コミュニケーションをと
る。子どもたちの様子も聞く。話すことでストレスが抜けていくから、ちゃんと話を、夫婦
でも聞いてあげるということを大事にしている。
イクメンと呼ばれるが、僕自身も意識せずそう呼ばれるようになった。やらなきゃ、やら
なきゃと意識すると大変だから、どうやったらつらくなくなるか自問自答しながら、
「つらい」
を「楽しい」に変えていった。近い将来の楽しみを家族みんなで考え、設定すれば、それを
目標につらいことも乗り切れる。それぞれ家庭のかたちがあると思うので、それぞれの家庭
の、何々家の楽しみ方を、決して無理せず、模索していってほしい。
1
山縣 文治 氏
プロフィール
1954 年、広島県生まれ。1982 年、大阪市立大学大学院中退
後、同助手。2012 年より関西大学人間健康学部教授、現在に
至る。主たる著書に、『「こうのとりのゆりかご」が問いかける
もの』
(共著、明石書店、2010)、
『国連子どもの代替的養育に
関するガイドライン』
(章担当、福村書店、2011)
、
『施設・里
親から巣立った子どもたちの自立』
(章担当、福村書店、2012)
他。社会活動としては、日本こども家庭福祉学会副会長、日本
社会福祉学会理事、日本子ども社会学会理事、家庭養護促進協
会副理事長など。
発言要旨
1
現代の子ども・子育て問題
今どきの若い人は子育てが下手だと言うが、それは、やったことがないから。子どもが育
つということを、テレビの中でしか見たことがない。現代社会に蔓延する3つの病気、生活
経験欠乏症、情報依存症、責任転嫁症と立ち向かわなくてはいけない。いかにして立ち向か
うか。批判していても良くならない。嘆いていても始まらない。考えながら動き、動きなが
ら修正する。何かわかって動いたら、子育てはもう遅い。焦らず慌てず諦めず、子どもの生
きる力、育つ力を信じながら、これからの新しい子育てを考えようと思っている。
2
みんなで子育てという視点
子どもは3つの場で育つ。第1次社会化の場は、家庭。第2次社会化の場は、地域。家と
少し違う文化、関わり方をする第3次社会化の場が、学校。その中の地域の部分は、かつて
神社、公園、商店街、川岸、隠れ家、青年団、子ども会、お祭りなど、いろんなものがあっ
て、世の中を生きていくルールを教えてくれた。仲の良くない人ともそれなりに付き合うと
いうのが生活。うまく相性が合わない人たちと、どうすり合わせていくのか、というのを覚
えていくのが、地域社会だった。保育所は、学校に近い第2次社会化の場、と言われていた
が、最近は、地域と一緒にもう1回やらないと、子どもが育たないのではないか、地域その
ものがうまくいかないのであれば、自分たちが地域の中に出かけていって、子どもの育ちを
考えていこう、という状況になっている。一般的に、地域子育て支援センターと呼ばれてい
るところが、こういうことをやろうとしてきている。地縁中心の地域社会から、地縁以外の
機能も強化して、一緒になって、地域社会を作っていく。保育所も地域の一員として、とき
には乳幼児期の核として、そこに関わっていく。NPOや子育て支援の様々なグループは、
かつてはなかった。なくても機能していたのが、意図的に作らないと、うまくいかなくなっ
た。
2
みんなで子育てをする目標は、大きく分けて3つある。1つは、現実的な問題解決、軽減。
今がしんどいわけだから、5年後に解決してもだめで、今、解決しなければ意味がない。待
機児童の問題も、5年後にゼロにしますという目標を立ててもらっても、その人にとっては
何の意味もない。2つめは、その人の育ちを考えたら、今ある問題を常に周りの人が解決し
てくれるという生き方を覚えてしまうと、自分自身で解決していこうという力が育たない。
今あるしんどさを、少しずつ和らげながらも、その中で、どうやってお母さん、お父さん自
身が問題を解決する力を高めていくのか、そういうところも、支援者には必要になってくる。
親子関係で言うと、子ども自身の問題解決能力。3つめは、そういう親子が、やっぱり地域
とつながっていく必要があるんだと思っている。親子が地域とつながっていく、地域の人た
ちと一緒になって解決し、解決される側だけでなくて、自分自身が、ときには解決する側に
変わっていく、立場を変えていく、そういう力の中で、育っていく、地域そのものができあ
がっていく。かつては、それが当たり前のようにできていたし、つながっていたが、今、一
時期それが弱まっている。その弱まっている部分を元のかたちに戻そうとしても、私は無理
だと思う。元の部分に、きっと良くないことがあったから、弱まっているわけだから、何か
新しい仕掛けで地域の力をつくり替える必要があるのんではないかと。そのヒントの一つが、
保育所や幼稚園のような公的な社会資源。それから NPO のように、住民型・市民型の社会資
源。新しい仕掛け、地縁以外の仕掛けで、もう一回つくり直す、ということができないのか
なということを考えている。
3
子育て支援の考え方
1) 子育て支援のターゲット
子育て支援のターゲットの1つめは、子ども。富山県の事業で言うと、社会に学ぶ14歳
の挑戦事業、中高生子育てふれあい体験事業、元気とやまウォークラリー開催事業。子ども
自身に直接働きかける取り組みとして、素晴らしいなと思って見ている。2つめのターゲッ
トは、親。特に乳幼児期の場合、子どもに直接向かうというのは少なくて、親を通じてとい
うことになる。この親を3つに分けて考えると、1つめのパートは、母や父。2つめは、家
族の一員としての役割。3つめは、人間。1人の人間として、あなたが大切である、いきい
きしてほしい、ということを視野に入れた子育て支援活動が必要なのではないかと考える。
富山県の事業で言えば、産後うつケア推進事業、ママたちの再チャレンジ事業。3つめのタ
ーゲットは、親子関係。富山県の事業で言えば、親学び推進事業、パパの育児スタート支援
事業、マイ保育園推進事業。結構、お父さん事業をしっかりやっておられるんだな、という
感じがした。4つめのターゲットは、地域社会。地域と離れて親子を支援するんじゃなくて、
地域の中で、あるいは地域と一緒に支援する、ということが重要ではないか。ハッピーファ
ミリーキャンペーンやシニアサポート事業、とやまっ子さんさん広場推進事業など。
先ほどの第2次社会化の場としての、地域社会と親子のつながりの重要性を考えると、育
つ子どもの支援、1 人の人間として育つ親への支援、地域社会で育む環境、という3つの「育」
の意味あいを作っていく、関わっていく、ということが「子育て支援」かなと思う。
人は「血縁」と「地縁」の中で生きてきた。ところが今、
「地縁」が少し揺らいできている。
若い世代の中に、
「地縁」を苦手にしている人たちが出てきた。そうした人たちは孤立してい
るのかと言えばそうでもなく、仲間や友人との「知縁」でつながっている。昔は、土地と知
3
り合いは一緒だったが、今は少しずれて、違う歯車を持つ人たちが増えてきた。それをもう
1回重ねて、元に戻すのは無理だが、必要なとき、例えば大きな事件・事故のときに、重な
ることができるかどうか。2つの「ちえん(血縁・地縁)」、3つの「ちえん(血縁・地縁・知縁)
」、
この歯車を同時に動かす道具、
「チェーン」をもう1回作り直さないといけない。チェーンで
結ぶ、それはネットワークを作ることではないかと思っている。仲間がみんな同一でなくて
もいい。いろんな仲間があって、必要に応じて重なっていく。かつての「地縁」も1つの大
きな歯車として残し、ほかの歯車も認めていって、必要に応じてつながっていく。
2) 親子を見るまなざしの転換
現代の親子を、親として、あるいは支援者として見るとき、ちょっと考えてみてほしい。
「楽しい」の反対は、
「苦しい」や「つらい」ではなく、
「楽しくない」ではないか。
「つらい」
の反対は、
「つらくない」ではないか。そう考えると、見え方がだいぶ違ってくる。つらいと
きもあれば、楽しいときもある。楽しいし、つらくない。つらくないけど、楽しくもない。
つらいし、楽しくない。
「楽しいし、つらくない」はいかにもよさそうだが、子どもの育ちの
段階を考えると、親がこんな状況にあっていいのは、小学校低学年ぐらいまでではないかと
思う。小学校高学年から中学生、高校生になったら、
「つらくないけど、楽しくもない」の方
がいいと思う。一定の距離感を持って子育てし、子どもに関わっている状況。実は人生では、
こっちの方がずっと長い。
「あんまり無理しない子育て」を支援しませんか、ということを考
えている。
「つらいし、楽しくない」状況は、すぐにも関わっていかなくてはいけないし、放
っておくと、虐待につながるので、避けないといけない。でも、この人たちの「つらい」と
いう言葉にあまりにも強く反応する必要はなくて、じっくり見てあげればいいのではないか。
3) 子育て支援の視点
それからもう1つお話したいのが、客観的事実以上に主観的事実を大切にする子育て。
「な
んで」より「なるほど」
。
「がんばってね」より「がんばってるね」という子育ての関わり方。
きっと親子は、必死になってがんばってる。がんばってる人に「がんばってね」と言うより
も「がんばってるね。ようやってるわ」と声かけする。
もう1つ、今を、時間の連続の中で捉える子育て。未来への期待が、基本的は楽しさを決
める。子どもが大きくなったら、こんな楽しいことがある、ということを伝えていかなけれ
ばいけない。しんどい、暗い話ばかりしてたら、決して楽しく思えないはず。子育ての楽し
さは、過去の評価に基づく未来への期待と現実で決まる。時間の連続を意識した見方を大切
に、と思っている。
子育て支援のポイントは、
「あせらない」
「期待しない」。子どもの育ちには時間かかる。親
の育ちも時間かかる。
「私がやったから、あなたはもっと育つべきだ」「私がこんなに頑張っ
てるのに、なぜあなたは」という言い方ではなくて、この子にはこの子の育ち方がある。楽
をしない。といっても、手抜きはだめ。しっかり関わっていかないといけない。それから、
「目立たない」
。親のほうが目立つ、支援者が目立つ子育て支援はだめ。「ないものねだりは
しない」
。与えられたものの中でやる。与えられた環境の中でやるしかない。
「いつも一緒よ」
というまなざし。
「でも、あなたのことを、ずっと見守ってるよ」というまなざしが非常に重
要だと思っている。そして、「あきらめない」こと。
4
パネリスト:山縣 文治 氏(基調講演講師)
神川 康子 氏(富山大学人間発達科学部教授)
傍田 裕子 氏(子育てサークルプリプリキッズ代表)
尾山 幸恵 氏(富山国際大学子ども育成学部4年生)
コーディネーター:陸田 陽子 氏(KNBアナウンサー)
陸田
さあ皆様、お待たせいたしました。ただいまからパネルディスカッションを始めたい
と思います。どんなふうにしたら、今の子どもたちを、明るい未来に向けて育てていけるか。
これから地域ができることを考えていきたいと思います。題しまして、
「子どもの育ちに今必
要な地域の力」です。では早速、パネリストの方々をご紹介いたします。先ほどご講演いた
だきました関西大学人間健康学部教授、山縣文治さんです。そして、富山大学人間発達科学
部学部長、神川康子さんです。子育てサークルプリプリキッズ代表、傍田裕子さんです。そ
して、富山国際大学子ども育成学部 4 年生の尾山幸恵さんです。コーディネーターは、私、
北日本放送、陸田陽子が務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。それでは、
まずトップバッター、こういうパネルディスカッションに大学生が参加するというのは、大
変珍しいことだと思いますし、このメンバーの中でも特に緊張してるんじゃないかなと思う、
4 年生の尾山幸恵さん。大学 4 年生ということは、今、何歳ですか。
尾山
22 歳です。
陸田
22 歳。じゃあ、トップバッターで、お話を聞いてみましょう。まだ大学生というこ
とで、子育てと言われてもピンとこないかもしれませんが、将来の結婚、出産、育児につい
て、どんなふうに考えていますか。
尾山
私は子どもが好きで、できるだけ多くの子どもを産んで、育てたいと思っています。
そのために、20 代のうちにできるだけ早く結婚して、子どもを産み、子育てをしたいな、
と考えているんですが、やはり自分の生まれた、この富山県で子育てをしたいという思いと、
あとは、自分の家族がいる家族の近くで子育てをして、安心した環境で子育てをしていきた
いなと思っています。
陸田 何かそれで、不安とかありませんか。
尾山
やはり、自分が地域で孤立してしまうとか、周りに知り合いがいなかったりとか、子
育ての仕方も、まだまだ全然わからない状態なので、そういう状態で子育てをするには、一
人で抱えるというのが、すごく不安です。そういった面では、周りに教えてくれる人とか、
支えてくれる人がいてほしいなと思います。
陸田 そうですね。地域の方々の手助けというのも、必要だということですよね。近い将来、
お母さんになるかもしれない若い世代の人たちも、不安を抱えているようですけれども、プ
リプリキッズの傍田さん、まず、この子育てサークルプリプリキッズ、どういう団体なのか、
というところから聞いてもいいですか。
傍田
このプリプリキッズというのは、南砺市で今、子育て支援センターの場所をお借りし
5
て、親子みんなで楽しく遊びましょうという遊びを提供するサークル活動をしております。
今、子育て支援センターというのが、10 年ほど前に比べるととても数が増えまして、幼稚
園や保育園が統廃合するときや、新しく施設をつくるときには、必ず子育て支援センターを
つくる、というふうな流れになっていますので、以前に比べると、とても支援活動が充実し
てきたように思います。何かあると、まず子育て支援センターに行って、いろんなお母さん
や、いろんな先生のお話を聞いたりということが、よりできるようになってきたなというの
が、活動していて実感します。この支援センターというところに、最近では、平日に休みの
取れるお父さんが、お子さんを連れて遊びにおいでるというのが見られるようになりました。
イクメンという言葉も浸透してきたんだなというふうに感じております。私自身も、子育て
をして、周りに誰もいないようではあったけれども、この支援センターに行って仲間ができ
て、いわゆるママ友ができて、子どもを育てるうちに、いろんなところに、今まで興味のな
かったところまで興味が広がって、絵本読み聞かせであったり、鉄道に心をときめかせたり、
とても興味の幅が広がったと思うので、ぜひ楽しく、みんなで育児ができたらいいな、とい
うふうに思っております。
陸田 今、鉄道に興味がとおっしゃいましたけど、お子さんは、男の子を育てて……。
傍田 男の子 2 人なので、鉄道にとてもはまりまして、一時、私、新幹線の描き分けができ
たぐらいになりまして、こういうの、皆さん、ママ鉄というんですね。中にママ鉄の誰かお
られたら、また今後、友だちになりましょう。
陸田
やっぱり子育て中というのは、子どもと親と一対一になりがちで、ママ友をつくる場
所が必要なのは、どの子育て中のお母さんにとっても、悩みの種なんですよね。そういう点
で、こういうサークルあると便利ですよね。さあ、それでは神川先生のほうからは、県内の
子育て支援策や、児童健全育成活動の現状についてもお伺いしてよろしいですか。
神川
杉浦太陽さんと同じ年の息子がいる神川です。息子にもぜひ、あのような話を聞かせ
たかったな、すばらしいなと思って伺いました。ぜひ、本当は富山で、子育てしてほしいな
と思っているんですけれども、今は東京のほうで子育てしています。富山県では、私も関わ
っておりますが、先ほどからもお話出ていますように、子育てに不安を抱えたり、それから
孤立した子育てということにならないようにということで、富山県が関わって、これで 8 年
になるんですが、
「親を学び伝える学習プログラム」というのを作成しております。「一体何
それ」とよく言われるんですけれども、やはり、昔は子育てって、周りの人たちを見ていた
り、兄弟がたくさんいたりして、子育ての情報というのは、何となく入ってきていたんです
けど、今なかなか、周りに子どもを見ること自体も少なくなっているので、実際にありそう
なエピソードを、これで 8 年かけて 40 エピソード、自分のリアルな話をするとなかなか打
ち明けにくかったりするんですけれども、ちょっとありそうな話を、40 ぐらい準備してい
ますので、それを使いながら意見交換をするということなんですね。そうすると、これ、実
際に小学生、中学生からも使ってもらったり、子育てをしている人ですとか、それからおじ
いちゃん、おばあちゃんで、子育てをサポートしている方ですとか、地域の方、見守り隊の
方とか、本当にいろんな方に使ってもらって、
「子育てって、こんなことで困るのかな」とか、
「こんなとき、どうしたらいいんだろうか」ということで、意見交換をしてもらって、疑似
体験をしてもらったり、実際の悩みを解決したり、というようなことで、ずいぶんと多くの
6
方々が参加してくださっています。だいたい参加するまでは、最初の DVD にもあったんで
すけど、「なんでこんなのがあるんだろう」と思われても、だいたい 99%、参加されると、
ちょっと子育てに自信が持てた、元気が持てた、ちょっとわくわくする、というようなこと
も言っていただけるので、百聞は一見にしかず、一度体験していただければありがたいなと
思っています。あともう一つ、
「子育て支援とやま賞」というのも、県は、これで平成 21 年
からということですので、5 回目ぐらいになるんだろうと思うんですが、やはり地域、学校、
そして家庭と言っていますけれども、企業の協力もないと、子育てというのはなかなか難し
い面もあるので、子育てに何らかの工夫をしている、応援している、働くお母さんたちを応
援しているような企業さんにも賞を出していこうということで、本当にささやかなことでも
いいんです。子どもさん連れのご家族にはサービスをするとか、託児室があるとか、子ども
さんにおもちゃをあげるとか、飛行機でも何かありますけれども。そんなことで、ささいな
応援でいいと思うんですが、そういう輪が広がれば、ということでやっております。全国で
は、101 人以上の企業が、一般事業主行動計画と、ちょっとややこしいですが、何かそうい
う工夫をしましょう、という義務付けをしているんですが、富山県には中小企業がやはり多
いということで、頑張って 51 人以上の企業の方々にも、もっともっと小さな企業の方にも、
子育てを応援する気風を醸成しましょう、育成しましょうということで、そういうことをき
っかけに、皆さんもいろいろと考えていただければ、もっと子育てしながら働いたりしやす
い環境になると思っています。
陸田
富山は共働き率が特に高い県でもありますからね。こういった企業の取り組み、いい
ですね。富山県内の現状を、神川先生にご紹介いただきました。では、山縣先生、全国的な
子育て支援の状況、他の県での先進的・特徴的な事例など、ご紹介いただけますか。
山縣
山縣です。県レベルの取り組みというのは、正直、そんなに多くないですね。富山県
がやっているものというのは、現にやっておられることは、よそもだいたいやっておられて。
特に、
「よそにものすごく新しいものがありますか」と言われると、正直、そんなにないです。
ただ、今、県がやるという時代ではどんどんなくなってきてるんですね。市町村でやる時代、
というようになってきたときに、市町村にはユニークな取り組みが結構あります。ただ、そ
れがよそで使えるかどうかは別にしまして。生活は、それぞれの地域と結びついたものです
から。例えば、大阪に池田市というところがあるんですが、そちらは、ダイハツという小型
車を得意にしている車のメーカーがあるんですね。池田市とダイハツさんが一緒になって、
車を貸してくれる。子どもが 4 人目からだったと思うんですけども。4 人目から 3 年間だっ
たかな、車を 1 台無償で貸してくれる。そういうかたちで、市町村と企業が一緒になった取
り組みがあるんですね。
陸田 ちょっと狭いかもしれない。
山縣
どうするの、と思いながらも、でも結構、利用者はあるようです。いわゆる 2 台目の
車、という意味ではないかと思うんですね。
陸田
4 人いたら、チャイルドシートを何個か付けたら、結構狭い感じもしますけど、それ
でも、すばらしいですね。
山縣
そうですね。それはおもしろいな、と思うんですね。ほかにも、私、比較的お勧めと
いうか、住民と一緒になった取り組みというのでは、三重県に、いなべ市という平仮名で「い
7
なべ」と書く市があるんですが、ここは 10 年前ぐらいからずっとお付き合いをしてるんで
すけれども、本当に丁寧に、先ほど傍田さんの話にあった支援センターとかと一緒になって、
子どもへの虐待の早期発見なんかも含めた非常に丁寧な仕組みをつくっておられます。
「こん
にちは赤ちゃん事業」という子どもが 4 カ月ぐらいのときにすべて回りましょう、という国
のお勧めの事業があるんですね。多くの市町村がそれをやってるんですけども、年に 1 回あ
るいは就学前の 1 回でどうするんだと。プラス、市町村の場合は乳幼児健診が 2 回から 3 回
ありますけども、足りないなと思ったいなべ市は何をしたかというと、市民の中で、そうい
う訪問活動の応援をしてくれる人を募って、一定の養成をして。プライバシーの問題や安全
の問題がありますので、その研修をして、その人たちに委嘱をして、例えば、健診に来なか
った家なんかをずっと訪問するという作業をやってるんですね。何回か訪問して出会えなか
ったら、それを行政につなぐ。そうすると、行政のほうが出掛けていく。全部行政の丸抱え
ではなくて、いわゆる無給の市民ですよね。そういう人たちと一緒になって活動していって、
絵本の読み聞かせをやったり、そういう人たちをセンターとか広場というふうに言われると
ころに連れて出るとか、そんな作業で、結構、丁寧に積み上げていっておられます。ほかに
も、お金にまつわるような、いわゆる金券的なもの。つまり現金ではないんだけども、提携
したお店なんかだけで使えるようないわゆるバウチャー券とカタカナで言うんですけども、
富山では子育て応援券と呼んでおられますが、比較的早く大々的にやられたというのが、東
京の杉並区というところが有名なんです。こちらのほうは、行政があまり仕切らずに、参加
したい企業が積極的に入ってくださいと。企業同士で競争するということを目標にした質の
良いサービスをするために、既成型の券ではなくて、どちらがより多く使えるかみたいな感
じで、企業が競争していく。だから、人によっては必ずしも良くないんではないかと。子ど
もをダシにした商業活動に過ぎないんじゃないかという批判もありますけども、利用者のほ
うの声を聞くと、決して評判悪くないですね。良いものが選べるということのようですので。
いろんな取り組みがされているということなんですが、いずれにしても、それぞれの地域と
文化の中で育ってくるものですから、よそでやってるから、富山でやったらうまくいきます
よ、と私は思っていません。富山には富山のやり方、言葉遣いがあるわけですから、そこの
中から必要なものを探してこなければ、なかなかうまくいかないのかな、というようなこと
は思います。
陸田
富山の子育て応援券と、この杉並区のバウチャー券の大きな違いというのは、やっぱ
り使用の用途が、緩い感じ?
山縣
そうですね。比較的、企業の側の考え方に沿っていると。それからもう一つは、今言
いました、はっきりと、役所のほうも「競争です」と、そういうことを前に出しておられる
という辺りで、おそらく富山の子育て応援券は、あんまり競争とかいう発想ではないですよ
ね。
陸田 神川先生、その点は。
神川
そうなんですね。富山の子育て応援券は、使用目的がだいたい限られていまして、お
子さんの予防接種ですとか、それから一時預かりですとか、そういう、子ども自身の育ちに
直接関わりのあるようなことで。あとは本当に、お母さんのリフレッシュにつながるような
ことにも使っていけるようになればいいかもしれないな、とは思ってます。
8
陸田
なるほど。杉並区のバウチャー券は、お母さんのリフレッシュみたいなことにも使え
るんだ。
山縣
お母さんが提案できるんですよ。この店と提携してほしいと。企業とお母さんが一緒
になって、ここを入れてほしいというようなことをやられてる。そこで行政は、よっぽど変
な企業だったら入れないとは思いますけども、かなり緩やかに、お母さんが必要なものは必
要なんだ、という発想でやりますね。
陸田 エステとか何か。マッサージとか。
山縣
そういうことも含めてオーケーですよ、というふうに言っておられました。
陸田
なるほどね。各地方でいろいろな取り組みがあるということがわかりました。さあ、
子育て、現在進行中の傍田さんにもお伺いしたいんですが、やっぱり子育ての悩みとか、子
育てサークル活動の課題なんていうのも、ありますでしょうか。
傍田
子育て中の悩みとしては、まず育児中の女性って、肩身が狭いと私は思っていまして、
どうしても富山県、共働き率がとても高いので、働かないで専業主婦として育児をしている
場合、周りから言われることがありますね。「優雅やね」「子育てだけできていいね」。半分、
嫌味に聞こえることがありまして。私は子育てに専念したいという思いから専業主婦になっ
てるんですが、そう言われるのもありますね。しっかり共働きしているお母さんたち、いき
いき働けているのかと思ったら、子どもはどうしても突然熱を出したりしますよね。そのと
きに、「すいません。休みます」と言ったときに、「え、また休むの?」と。なかなかスムー
ズに休みづらい、というお話もよく聞きます。あと、産休、育休取るにしても、
「え、また産
休?」という空気が、言わなくても流れると、「休みにくいね」とか、「この時期、妊娠はち
ょっと控えたほうがいいのかな」とか、多々考えるところもあるというふうに周りのお母さ
んたちから聞いていますので、働いてても何か言われ、働かなくても何か言われ、子どもを
持ってるだけで、とても大切な一大事業を私たちはしていると思うんですが、その割には、
いろいろ言われることがあるというのが、私の中では、悩みというか、大きいものがあると
思います。あと、働かないで本当は子育てに専念したいのに、経済的理由から働かなきゃい
けないという方もおられれば、本当はとても働きたいのに、仕事を辞めてしまって、その後、
職につながるものがない、という方もおられますので、自分の思った育児というのがもっと
できるようになったらな、というふうに思います。あと、サークルとしては、どうしても、
皆さん働かれますので、私たち現役ママがやっているサークルですから、
「私、働くわ」と言
った時点で、サークルのほうは一応「もう辞めます」というふうになるので、なかなかメン
バーが集まりません。やっぱりできれば、子どもを持っている今だからこそ、お母さん同士、
楽しいことができたらいいな、と思うので、もうちょっとメンバーが増えたらな、というふ
うに思っております。
陸田 やはり、そうですね。育児休暇の 1 年間だけは頻繁にサークル活動できても、それ以
降は仕事と家庭の両立プラスサークルというところまではいかない、というお母さん方。
「参
加したいんだけど」という方が多いですね。
傍田
そうですね。私たちも、定期ではないんですけど、週何回とかいう仕事をしつつ、サ
ークルのときは時間を空けて、今、サークル活動をやっているところです。
陸田
なるほど。わかりました。では、山縣先生にお伺いしますけれども、親が抱える問題、
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今の傍田さんからもありましたけれども、子育てにおける地域の重要性については、いかが
ですか。
山縣
先ほどの話でも、少しさせていただいたんですけども、女性、あるいは母と言ったほ
うがいいかな。母親が子育てをいつごろからしたのかという、そういうのを研究している人
がいらっしゃるんですね。その先生に話を聞いたことがあるのは、有名な、テレビなんかに
もよく出てこられた、もう亡くなられた方ですけども、河合隼雄先生という心理学の先生な
んですが、その先生と対談をする機会がありまして、
「山縣さん、子育て、女はいつごろから
したか知ってるか」と言われて、
「昔からやってたんちゃいますか」「いや、違う違う。戦後
ですよ」
。本当に一対一で親が全部、母親が全部背負うようになったのは、いわゆる第二次産
業、高度経済成長以降だと。第二次産業の時代になって、初めてそうなった。第一次産業の
時代はみんなでやってた。それどころか、家の中だけでなくて、地域の人も含めて。例えば、
どこかで田植えがある、稲刈りがあるとすると、子どもを籠か何かに入れて連れていって、
みんなが見てたと。暇な人が見てたし。決してお母さんだけが見てたわけではない。若い人
は労働力だから、必死で働いてたんであって、周りがみんなで見てたんですよ、というふう
に言われたんですね。その辺は、なるほどなと思ったんですよ。今、何が女性を苦しめてい
るかというと、一方で働かざるを得ないですね。働きたい時代から、もう働かざるを得ない
社会になってきた。にもかかわらず、家事や育児は一向に母の手から解放されない状況にあ
る。男性も、昔に比べたら協力するようになったと思います。明らかに協力するようになっ
たと思うんですが、でも女性が役に立つ部分で必ずしも協力してない、という調査がまたあ
るんですね。例えば、何かといいますと、今ちょうど夏の暑い時期で、野球なんか好きな男
性の方がいらっしゃると思いますけども、例えばお父さんが、育児をどこで協力しているか
というと、お風呂に入れるとか、遊ぶとかいう場面なんだそうです。お風呂に入れるという
のを、お父さんは子育てに協力していると言うけども、お母さんは、それを評価する人もい
ますけども、一部はどう答えてるかというと、お父さんがお風呂に入ってる間に、私は家事
をしていると。お父さんがビールを飲んでいる間は、お父さん、子どものことは見てない。
お父さんは自分の時間があるけど、私には自分の時間がないんだと。そこら辺が、社会全体
が十分気が付いていない、応援できていないところではないかな、というふうに思うんです
ね。ですから、傍田さんがおっしゃった話というのは、私も実感として思うんです。これか
らますます女性は働かざるを得なくなるし、育児休業制度が延びたとしても、強制しない限
り、女性はやっぱり不安だと思うんです、育児休業が単純に延びるだけでは。あるいは所得
保障があるだけでは不安で、要はその後、もう一回、同じようなかたちで社会に戻れるのか
どうかのところの保障がなければ、おそらくそう簡単に長く取れないんではないかなと思う
んですね。そこら辺りを、私たちが、世の中がどう気付いて応援できるか。家の中の話と、
会社の中の話と、地域の中の話。地域だけの問題ではないと、私は思いますね。
陸田 そうですね。育児休暇、1 人目はしっかり 1 年取っても、また続けて 2 人目になると、
本当は 1 年取りたいんだけれども 6 カ月ぐらいにしておこうかとか、3 人目になったら、す
ぐ産んで、2 カ月で復帰しないといけないんじゃないかと、お母さんのほうが周りにどう思
われるかというのを気にして、会社に言ってしまうとか、そういうこともあるのかもしれま
せんね。
10
山縣
周りの目と、もう一つは、やっぱり技術だと思いますね。世の中の変化、仕事の変化
も、例えば、1 年経ったら、おそらく最先端の企業だったら、やってる中身が相当変わって
しまって、言葉遣いも相当変わってしまっていると思うんですね。そこら辺に対する不安と
いうのがおそらくあるんではないかな、と思いますね。
陸田 確かに私も 1 人目のときは、みんなワープロで原稿を打ってたんですけど、復帰した
ら、パソコンに変わって、1 人 1 台パソコンが与えられてて、その変化に驚きましたし。あ
と、社内のやり取りも、すべてメールというのに変わっていて、びっくりした覚えがありま
す。さあ、今まで、ここまでの話を聞いていて、大学生の尾山さん、何か、悩みとか、不安
とか、何か感じたところはあるかと思うんですが、どうですか。
尾山
そうですね。私は今、保育士、幼稚園教諭を目指して大学に通っているんですが、で
きれば、結婚して出産しても、仕事を続けたいと思っているんですけど、今の話を聞いてた
ら、やはりまだ全然、仕事をしながら育児をするということが難しいというか、社会にそう
いったことが広まっていないというか、やりにくいところがあるのかな、と思って聞いてい
て、せっかく育児休暇制度があっても、それを活用して、職場へ復帰したときに、自分の居
場所があったりとかいうのも不安ですし、育休を終えたときに、職場環境が大きく変わって
いる、ということについて行けるかという不安もありますね。やっぱり、自分で努力すると
いうこともすごく大事なことだと思うんですけれど、周りの人たちにも、温かく見守ってく
れる職場環境があったらいいな、と思います。
陸田 今日の話を聞いて、
「えー、どうしよう」と、不安には思わないでほしいとは思うんで
すけれども。神川先生、そういう点で、やっぱり家族や地域の関わり方も、富山でも大事に
なってくると思いますよね。あまり若い人たちに不安に思われたら、大変ですもんね。
神川
本当に今、尾山さんのお話を伺って、その不安を煽ってしまうような環境にはしたく
ないなというふうに、すごく感じました。尾山さんなら大丈夫だと思うんですけど。まさし
く、いつの時代も、子育てって、毎回初めてですよね。そういう不安が、ご家族、お母さん
だけじゃないと思うんですが、お父さんもそうなんですが、丸ごとまずサポートしていくの
が、家族そのものだと思いますし、そんな家族がまた孤立しないように、地域がしっかりサ
ポートしていかなければいけない、といったときに、やはり何か困ってないかなということ
が、お互いの様子が見えるような環境づくりって必要だろう、と私は思っています。そのと
きに、
「どうしてるかな。子どもの声、聞こえるかな」とか、そういうことを隣同士とか、近
所同士で、さっき東京のほうでも、様子見、見合っていくというのがあったと思うんですが、
富山でも、しっかりと、そういうことをしていかなきゃいけないと思うんですね。富山は住
宅事情が良いので、家が広くて、隣が遠くてみたいな状況でなかなかわかりにくいので、ど
んどん声を掛け合っていく。挨拶から始めるコミュニケーションというのを地域で大事にし
て、地域が一つの家族だと思って関わっていかなきゃいけないというのが、まず第一点だと
思うんですね。そのためにも、なかなか若いときは、関わりにくいな、関わりたくないな、
と思っている地域の行事にも、思い切って参加していく、というようなことも非常に大事だ
ろうと思っています。そして、そのほかにも、完結してしまわないこと。よく若い女性が、
学生もそうなんですけれども、自分の思いどおりに、自分の家に入って、子育てしたいって、
結構思ってるんですね。結婚したら、子どもができたら、仕事を辞めて、自分が家族を迎え
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て、おやつをつくって、ごはんを全部作って。そんな理想どおりに、子育てはいかないこと
は、すでに始めてる人はわかっていらっしゃると思うんです。そこで、私はいつも言うんで
すけど、
「助けて」と言える受援力。
「助けて」ということを、
「誰か、これ手伝ってください」
。
さっきの杉浦太陽さんが、何をしたらいいかと奥様に聞く、とおっしゃってましたね。その
力って、富山県人、結構、プライドがあったりして、
「助けて」と言えなかったり、何をした
らいいのかということを、声掛けしにくいようなところが若干あるんじゃないかと思います。
みんな、自分で着実にやっていくのが、勤勉ですばらしいというふうに思いがちなところが
あるので、助けてもらうという力を付けていくことが必要だと思います。子どもは一人で育
てるよりも、できるだけ多くの人と関わらせ、そしてできるだけ多くの経験をさせることに
よって育ちます。そして子どもが育つのを見ていると、実は親も育っている、ということで、
前回の困ったときの対処方法と、次、同じような場面に遭遇したときの親の対処方法が、レ
ベルアップしていることに多々遭遇するんですね。ですから、恐れずに人と関わる、助けて
もらう、関わって、子どもが成長したら、きっと自分では気付かないけど、自分も成長して
いる、ということを周りが評価してくれると思います。そういう声掛けをし合うような社会
環境をもっともっと気軽につくっていけたらと。そのきっかけは、さっき言った親学びプロ
グラムもあるので、サークルに行きにくかったら、たまにの体験でいいと思うんですけど、
どこか今日のようなところにでもちょっと足運んでみようかな、ということでもいいと思っ
ています。
山縣
今の話、私はさっきのところでやりたかったんだけど、いわゆる「助けられ上手」と
いう言葉をよく使うんですね。助け上手の人たちと、助けられ上手があって、助けられる雰
囲気といいますか、それをどうつくっていくか、というのも非常に重要ではないかと思いま
す。それからもう一つ。尾山さんのところで、ちょっと私、暗い話をしすぎたというのを反
省してるんですが、今、続いているかどうかわかりません。5 年ほど前に、広島のタカキベ
ーカリーさんというパン屋さんなんですけども、いろんな多角経営しているパン屋さんが、
「私たちは育児休業と呼んでいません。育児留学と呼んでいます」と。いいなあと思ったん
ですよ。留学というのは、金を使うということですね。会社が家に派遣して、あなたが家で
しっかり育児をして、食生活がどうなってるか、近所のお母さんたちにドーナツを持って帰
ってくれたら、私たちの財産になるから、これを留学と呼ぶんだ、という言い方をされてて、
おもしろいなと思ったんです。やってることは、一緒なんですね。ほとんど変わらないんだ
けども、休業と呼ばれるのと留学と呼ばれるのでは、お母さんたちは全然意識が違うと言っ
てました。すごく行きやすい。しょっちゅう、情報も会社のほうへ返すんですよ。そうする
と、会社のほうから、
「これ、ちょっと調べて」とかいうのがやってきて。休んでるんだけど
も、仕事をしてる感じを自分たちは持ててます、ということを、まさに留学中のお母さんが
おっしゃってて、非常にいいなと思った記憶があります。
陸田 良い言葉ですね。育児留学。神川先生、いいんじゃないですか、これ。
神川
投資している感じですね。成長する自分に投資してる。
陸田 会社と遮断されてるんじゃなくて、
「お盆だから、ちょっと帰省しようか」みたいな。
さあ、それでは、傍田さんにもお伺いしましょう。子育てサークルを主催されてる立場から、
これからの子育て、どうしていったらいいか。どんなふうにお考えですか。
12
傍田
まずやっぱり、仕事、育児がしっかりと両立していける社会づくりですね。だから、
今の育児留学という言葉、とてもすばらしい言葉だと思うので、これがどの企業に行っても、
育児留学しますと言えるような環境になれば、仕事を続けたい方にとってはとてもやりやす
い状況になると思います。あとやっぱり、専業主婦になって、しっかりと子どもと向き合い
たいというお母さんが、思うような育児ができるように、子育て支援センターというところ
を大いに利用していただきたい。私も毎日のように子育て支援センターに行ってました。何
か悩み事があると、そこの先生に聞いたり、悩み事を相談したり、体重を測ってもらったり、
本当にいろいろしていただいたので、そのところに、どんどん足を運んで、一人で子育てを
しない、ということをしていったらいいんじゃないかと。これ、私のお母さんの言葉なんで
すが、自分一人で育てたらだめと。神川先生も言われましたが、自分の子どもだと思うな、
社会の子どもだと思え、と言いました。なので、それを肝に銘じて、みんなで助け合ってい
く。
「助けて」を言えずに一人で抱え込まないように、そういうふうに今、育児進行形ですが、
これからも、お母さんたちも、そういうふうにみんなで楽しくできたらいいな、というふう
に思っています。
陸田
尾山さんは、この後、結婚して、子育てをしていくと思うんですけれども、社会や自
分の周りの環境、どんなふうだったらいいな、と思いますか。
尾山
そうですね。やはり最初に申し上げたように、周りに家族がいるという環境が、一番
いいなと思うのと、あとは地域で、地域みんなで、自分の子どもを育ててもらえるような、
環境になったらいいなと思います。また、私も 2 人以上は、必ず子どもを産みたいと思って
るんですけれど、そうなってきたときに、やはり経済的にも苦しくなったりとかして、気が
引けるというところもあると思うんですけれど、私の住んでいる射水市に、第 3 子以降の保
育料が無料とか、中学 3 年生までの医療費が無料化、という制度があって、そういった経済
的な支援もしていただければ、自分の子どももたくさん産めるような環境になるんじゃない
かなと思います。だから、富山県全体に、こういった行政の施策も広がっていったらいいな
と思います。
陸田 今、尾山さんから、3 人以上産みたいなという希望、発言がありましたけど、神川先
生、でも、産みたいなと思っていても、現実は産めないという実情があるんですよね。
神川
そうなんです。私、今、少子化対策に何をしたらいいのかということで、子育て家庭
に対する支援施策検討部会というのの、座長をさせていただいているんですけれども、どう
したら子育て家庭が子どもを 3 人以上持つ家庭が増えるのかと。本当に、なかなか頭が痛い
問題なんですけど、やはり、それぞれの生き方というのがあるので、子どもを産むことだけ
がうちの目的じゃないと言われる方もたくさんいらっしゃいますし、よくよく富山県のこと
を考えてみると、昔から教育県富山と言われていて、教育にも非常に熱心ですし、勉強し終
わってから結婚して子育てしようと思うと、どうしても子どもを産む年齢が高くなってしま
う。そうすると、今度は、遅く産むといろんな問題がありますよ、という、ちょっと脅しみ
たいなこともかかってくると、短期間にどうやって 3 人をもうければいいのか、何か焦りみ
たいなものも生じてくると思うんですね。子育てには、もうちょっと、ゆとりも必要という
ことで考えると、いろんな対策は考えられると思います。皆さんからも、ぜひアイデアいた
だきたいと思うんですが、生涯学んでいくわけですから、親としても学んでいくわけなので、
13
例えば、大学生しながら、社会人しながら、学びながら、子どもを産んだり育てたりするこ
とも可能になるような社会づくりをしていかなければいけないかなと。産みたい人がいつで
も子どもを育てていけるような社会体制をつくる。特に地方都市富山は、これからの活力と
かということを考えると、何といってもこれは、なかなか若い方には伝わりにくいんですけ
れども、人口が減少していくというのは、ちょっと寂しいことでもあると思うんです。さっ
きからも、子どもの声が聞こえてるというのは、何となくうきうきして楽しい。
「泣いてるな」
とか思ったりする、そんなことに明るさや未来の希望を感じるような地域社会を共有してい
けたらいいな、ということを感じました。でも、その短い期間の中で、産み育てていくこと
のできる、繰り返し、育児休業を取ったり、それからまた、社会復帰をしたりすることをし
っかり支援していく企業のあり方ですとか、休業中もまた、ときどきリフレッシュも兼ねて、
もう一回社会に出れるように時代の流れに付いていけるような研修期間をつくるとかという
ふうにして、やり方はいくらでもあるだろうな、というふうに思っています。何よりも、子
どもを持つことに躊躇するとしたら、大学生などにもよく聞くんですけれども、何よりも経
済的な負担も大きいじゃないかと。富山県は、みんな教育熱心だから、大学にもやってやろ
うと思ったら、今の経済情勢も不安定な状況の中でどうやって子育てするんだろうというの
も不安になってきます。そういう意味では、もっと学費などを支援したり、保育費を支援し
たりするような、そういう費用の問題を解決するということも重要なんじゃないかと。とき
には、多子世帯、双子さんが産まれても、私の友だちに三つ子を持ってる人いるんですけど、
そういう人も、元気が出るような支援対策も、大いにしていけばいいと思いますし、学生の
段階、中高生の段階から、ライフプランを立てて、どのくらいで結婚して子どもを持てば 3
人が可能になるのか、どうやっていけば、共働きをしながら子育てができるのか、という目
安を持つような教育も必要だと思ってます。私、大学生によく言うんですけど、教育の一番
大きな成果は何かというと、教育を受ける人たちが増えることによって、乳幼児の死亡率が
まず下がるということ。そして、子どもが健やかに育つ確率も高くなるということ。生涯学
び続け合っていけば、それだけ子どもが生涯、次につなぐまで、社会を豊かにしてくれるこ
とにつながっていく、と思っているので、尾山さんのような若者がどんどん増えるためにも、
教育はとても大事なので、学びながら、結婚したり子育てをしたり、働いたり。もう「二兎
を追う者」という言葉もありますけど、五兎でも十兎でも、追える社会環境づくりというの
を、特に富山県はやっていく必要があるかな、と思っています。住宅事情は幸い良い状況で
はありますけれども、本当に子どもを育てるというのは、どういうことなのか。もし時間あ
れば、後で言おうと思っていたんですけれども、やはり身近な家族のお父さんが、お母さん
が、お互いに子育て中の相手を応援するという姿勢ですとか。おばあちゃま世代が嫁や娘の
子どもを預かったときに、
「仕事するなら預かるけど、遊びに行くんだったら預からないよ」
と、私も言われたことがあって、それがいまだにショックだったりするんで。リフレッシュ
して、留学してる間、見てもらって、どれだけ元気を出して、また子どもに気持ちよく関わ
れるか、ということを体験してきていらっしゃる方、多いと思うんで、ぜひぜひ、
「遊びに行
くんでも何するんでも、見てあげるよ」ぐらいの元気な若いおばあちゃんたち、多いわけで
すから、そういう地域の力も大いに利用していけたらいいな、というようなことを思ってま
す。もっと若い人の意見をいっぱい聞いて、良い社会環境にできたらなと思っています。
14
陸田 ありがとうございます。出産年齢とか、結婚する年齢によっては、子ども 3 人ほしい
といっても、なかなか女性の体のほうで産めなかったりという、そういうことを、子どもた
ちに知らせる、という教育も必要ですよね。さあ、山縣先生、今のこの富山県の取り組みな
どを聞いて、いかがでしょうか。
山縣
途中でも言いましたように、私は、県としての取り組みは、非常に広範に丁寧に蓄積
されているような気がします。ただ、批判するわけではなくて、どこの県でもそうなんです
が、政策効果というのが、なかなか現れない領域なんですよね。施策はあるけども、それで
はっきり世の中が変わるかというと、なかなか変わらない。例えば、3 人目の話についても、
富山は結婚のところからやっておられますよね。結婚を促進するところから。未婚の状態を
仮に「空」と私は呼ぼうと思うんです。空をゼロにする。ゼロにするというのは、結婚する
状態のイメージなんですが。政策効果というのは、空をゼロにする政策効果というのはほと
んど出てこないんですよ。今、各県でやってるような様々なマッチングシステムなんかは、
あんまり効果出てないですね。ゼロを 1 にする政策効果も、あんまり出ていません。でも、
1 を 2 にする政策効果って、比較的出るんですね。1 人目を産むと 2 人目は比較的誘導しや
すい。でも、2 を 3 にするというのが、また難しい。急にそこで下がるんですよね。ゼロを
1 にするよりは簡単そうなんですけど、3 にする難しさ、今言われたように、しんどさもあ
るけども、おそらく、出産のスタートが最近遅くなってると。30 前半で出産を始めると、3
人目になると 40 近くなってしまう。おそらくスタートが遅いということも、だんだん 3 人
目の辺りでしんどくなってくる、という部分はあるんではないかなと思うんです。そこら辺
りで、空をゼロにする作業って、なかなか自分の中で良いものを持ってないんですけども、
ゼロを 1 にしたり、1 を 2、3 にするという、産むという決意をされた方に一押しする、背
中を一押しするやり方というのは、今までやられている中でも、プラス、もしやっておられ
なかったらという前提ですけど。例えば、妊婦教室なんかがありますよね。わが子の時も何
回か行ってみましたし、いろんな市町村で関わってみたんですが、ほとんど専門家による子
育て講座とか、保健講座のようなものになってます。私が関わったところでは、それをやめ
ましょうよと。お母さんに話してもらいましょう、先輩のお母さんに講師になってもらって、
専門家は、周りで相談コーナーだけで座っててもらったらいいんではないか。むしろ、交流
をすることのほうがいいんではないか、というふうにやってみたら、産まれたかどうかは別
にして、良かったという評価は、かなり出てます。非常に具体的だったと。悪いところもわ
かりました、というふうなことを言われました。それからもう一つは、こういうお母さんた
ちと出会ってて、私の反省でもあるんですけども、ついつい子ども中心に考えてしまいます
から、例えば、子育て支援をやると、子どもの年齢層で親を集める傾向がある。3 歳未満児
のお母さんとか、3 歳児のお母さんという感じで、子どもの年齢段階で集める傾向があるん
ですけども、お母さんの一部は、それがつらいと。「20 歳代のお母さんのところに、40 に
なって行くの、しんどいんですわ」と。ときには、お母さんの世代の関わりがあってほしい。
そうすると、話す中身が似通ってくるんですね。杉浦太陽の話ができる世代と、例えば沢田
研二しかできない世代が、おるわけです。その世代間の差というのがあって、そこを一気に
子どもで集めてしまうと、お母さんにとっては、つい、若いお子さんの子育てという言い方
をされると、自分たちは非常に「ここにいていいのかな」と思ってしまう、というのを言わ
15
れたので。そういう親の立場に立った、いろんな集め方も必要なのかな、というふうに思い
ました。
陸田
なるほど。お母さん世代でというのは、新しいですね。私も子どもが小さいころの子
育て教室というのは、0 歳児のお母さん、1 歳児のお母さん、そんな感じ。傍田さんも、そ
うですよね。
傍田
だから、とっても若いお母さんと、私みたいに、少し後に産んだお母さんだと、年齢
差をすごく感じます。
陸田 その点、そうですね。例えば 40 ぐらいのお母さんが集まると言えば、その 40 のお
母さんで、今まさに 0 歳の子育てしてる人もいれば、もう大学生なのよという人もいて、そ
の中での、いろいろなアドバイスというのは受けられるわけですもんね。なるほど。さあ、
山縣先生、せっかくですから、子育て支援のあり方、地域ネットワークづくりは、今後、ど
んなふうに進めていけばいいのか、という提言をお願いいたします。
山縣
これは私の中で一つです。要は、地域にあるいろんな資源が、違いを乗り越えて仲間
になろう。批判し合うんではない。それぞれ存在するものは、私は、意味があると思ってま
す。ただ、そこに来る人たちの、量が多いか少ないかだけの違いだけであって、少ないもの
は意味がないわけではなくて、それが好きな人もいるわけですから、お互いの違いを理解し
合って、いろんな子育てのグループがあって、それがときどき仲間になれる。うちの辺では、
こんな問題が起こってるよとかですね。それが共有できて、それはうちでも起こってるから、
一緒にやろうかとか。今であれば、例えば、傍田さんなんかも感じておられると思うんです
が、支援センターにしても、サークルにしても、イベントがないと人が来なくなっています。
イベントに終わってる。だから、何もないということを特徴にしているグループ、癒やしと
いう安らぎの時間を提供しましょうというグループのところは、今、利用者がどんどん減っ
てるんですね。イベントだけを求めてぐるぐる回って来ると。そうすると、どこかでそれを
止めないと、終わらない。A さんのところで、ずっとやり続けてたら、うまくいかないわけ
で、イベントはこれぐらいにしませんかと。地域の中のイベントは、ゼロにしたらまた大変
なんで、これぐらいにしませんかとか、調整をする、そういうネットワークがいるのかな、
というふうに思ってます。
陸田
さあ、時間のほうも迫ってまいりました。子どもの育ちにいま必要な地域の力、とい
うテーマでお送りしてきましたが、最後の皆さん、一言ずつ感想、提言をお願いしたいと思
います。では、大学生、尾山幸恵さんから一言。
尾山
自分で今思っていることと、現実って違うというところをちゃんとわかった上で、今
から、どう地域に、自分が、地域の一員として力を尽くしていけるのか、ということを考え
ていく必要があるかな、と感じました。
陸田
ありがとうございます。では、傍田裕子さん。
傍田
育児をまず楽しむ。楽しいこともつらいことも、楽しんで、味わって。みんなででき
れば、にこにこ育児ができる環境が整えば、それを若い人たちが見て、親御さんたちが、ど
んどん「じゃあ、私も結婚して、どんどん子どもを産んで」と思える人が増えると思うので、
今、子育てしている私たちが、子育てを自分たちなりに充実させていくことが大事なんじゃ
ないかな、と思うので、みんな、楽しく育児していきましょう。
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陸田 ありがとうございます。では、神川先生、お願いいたします。
神川
私も、なんか働きながら、ずっと暴走してきたように思うんですが。忙しいなとか、
子育てしながら、大変だなと思うことは、本当に山ほどあったんですけど、振り返ったら、
さっき山縣先生のご講演にもあったように、つらいなと思ったことがないんですね。なんか、
能天気なのかもしれませんが。そういうので、周りのいろんな支えがあったからだ、という
ことを確信しているんです。そういう意味で、私は家庭の中でも、地域でも、身近なところ
で、いつも学生たちにも言うんですけど、できるときに、できることを、できる人が、する
と。さっき先生が言われた資源と同じだと思うんですが、そういうことで、支え合っていく
ことができれば、みんなの学び合いと豊かな人生が、ある程度実現できるんじゃないかな、
と思ってるんです。さっきの杉浦太陽さんの話を聞いて、一言、付け加えることにしました。
できるときに、できることを、聞いて、すると。確かに、勝手に、私も夫が洗濯干したりす
ると、
「え、こんな干し方したの?」と言ってしまうので、何をしてほしいかを、お互いに伝
え合う。
「助けて」ということを言い合って、できるときに、できることを、できる人が、聞
いて、すると。
「聞いて」だけを入れることに、今日からしました。
陸田 T シャツは、こんなふうに干してほしくないとか、ありますよね。では最後に、山縣
先生からもお願いいたします。
山縣
そうですね。家に帰っても、杉浦太陽さんも、キムタクもいないと。現実である今の
環境の中でどう育てるか、関わっていくか、ということです。そこの中で私は、手の届くさ
さやかな小さな目標をたてるということ。周りから見たら小さいかもしれないけど、あなた
にとっては楽しい目標を立てませんか。親に対しても、支援者に対しても、両方思ってます。
私は子どもの小さいころ、どういう目標を立てたかといいますと、一番はっきり覚えている
目標の一つは、夜、用があって妻がいないとき、
「今日はお母ちゃん、お出かけだから、お父
さんと一緒に寝ようね」と一生懸命言って、寝るんだけども、夜泣きのときに、第一声が「お
母ちゃん」と泣くんですわ。
「お母さん」と泣くんですよ。目標をどう立てたか。
「お父さん」
と泣かしたいと。第一声は「お父さん」と泣かしたい。一生懸命やって、半年ぐらい一生懸
命「お父さんと言え」というふうに、ずっと言ってたら、言いました。ものすごいうれしか
ったです。それが順番に重ねていくことで、小さな目標なんだけども、妻と共有できる。今
日、夜泣きで「お父さん」と泣いたんだよと言ったら、
「へえ、何もしてないのに」と言うけ
ど、「でも、泣いたからいいやん」と。そういうのを、ずっと積み重ねていった。そういう、
手の届く、しかもそれが、自分でも夫婦で楽しめる、地域の人も楽しめるような目標。そう
いうのをつくっていかれるというほうがいいのかなと。あんまり大きな夢を持たずに、少し
ずつ歩んでいくほうが人間らしいかな、と私は思ってます。
陸田
ありがとうございました。さあ、今回のシンポジウムで、子育てを支える、家族のき
ずなですとか、地域の輪について、皆さんが考えるきっかけになればうれしく思います。本
日は、山縣文治さん、神川康子さん、傍田裕子さん、尾山幸恵さんに、パネルディスカッシ
ョンに参加していただきました。どうもありがとうございました。
17
◎スカイホールホワイエ
☆富山県母親クラブ連合会パネル展示
☆富山県児童館連絡協議会パネル展示
◎スカイギャラリー
☆富山県児童クラブ連合会による工作コーナー
・コケコッコー(音の出るおもちゃ)
・ひらひらトンボ(飛ぶおもちゃ)
・わりばしクルンコ(動くおもちゃ)
18
Fly UP