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第3編 (PDF 9.32MB)
第3編
省資源・
新エネルギービジネス部会
第1章 省資源・新エネルギービジネス部会の検討概要
1.検討テーマ
省資源・新エネルギービジネス部会は、道路空間の有効利用を通じて低公害車利用やリサイク
ル社会実現などに寄与するビジネスモデルを研究するとともに、必要となる関連制度の見直しや
公的支援のあり方などについて検討・提言することを目的とするものである。
平成 14 年度は、低公害車の燃料・エネルギー源となる天然ガスや水素の供給にかかわる道路空
間利活用を中心に検討するとともに、道路空間を利用した静脈物流、道路空間における新エネル
ギーの導入、及び低公害車システムの運用の 3 テーマについて検討を加えた。
平成 15 年度は、平成 14 年度における検討事項を基礎として、モデル事業等の検討を通じて事
業実施にあたっての具体的な課題の抽出、課題を解決するための方策、事業実施に向けた取組み
に関する具体的な提案等を行う。
平成 15 年度のテーマは、
平成 14 年度のメインテーマのうちモデル 2 に関する具体的な検討(テ
ーマ 1)、メインテーマモデル 1 とサブテーマ 2 を融合させた新たなテーマの検討(テーマ 2)、
サブテーマ 1 およびサブテーマ 3 に関する詳細検討(テーマ 3 およびテーマ 4)の 4 つのテーマ
について検討を行うこととした。なお、平成 15 年度はメインテーマ、サブテーマという設定をな
くし、全てのテーマについて同様により深い検討を行った。
テーマ 1:道路空間を活用した地域分散型エネルギーとしての水素の輸送モデルの検討
テーマ 2:CNG 自動車の広域活用などに資する SA、IC への CNG 導入
テーマ 3:広域的・低環境負荷型の循環物流に資する道路の利活用の検討
テーマ 4:新しい充電システムや蓄電装置を導入した AE バスの導入に関する検討
223
2.活動の概要
(1)調査検討の進め方
調査検討の進め方については、それぞれのテーマについてワーキンググループを組成し、参
加メンバーの主体的な調査と意見交換を中心に検討を進めた。参加メンバーは、部会員から改
めて希望を募り決定した。
各ワーキンググループには幹事を置き、幹事を中心に部会員による調査検討を進めた。事務
局はそのサポートと報告書としてのとりまとめを行うほか、必要に応じて調査も実施した。
・ 研究会には、本部会の他に 2 つの部会を設けると共に、それぞれの部会において検討した
結果を、総会で報告する。
・ 総会及び部会では学識経験者を部会長とし、検討を進める。
・ 部会の部会員の中から副部会長を定める。
・ 部会の委員は、(財)道路新産業開発機構の賛助会員企業から募る。
・ 部会の下に、部会委員の中から希望者で構成するワーキンググループを設け、部会審議資
料の作成を行う。
総
エコロード
ビジネス部会
会
都市活性化
ビジネス部会
省資源・新エネルギー
ビジネス部会
ワーキンググループ
図3− 1
道路環境ビジネス研究会の構成と省資源・新エネルギービジネス部会
検討体制
●部会長
:早稲田大学理工学部
大聖泰弘
教授
●副部会長
:トヨタ自動車株式会社
東京技術部
田坂一美
担当部長
山藤
客員教授
●委員
:関西学院大学大学院総合政策研究科
224
泰
表3− 1
ワーキンググループのメンバー企業
ワーキンググループ名
テーマ1
道路空間を活用した地域分散型エネルギー
としての水素の輸送モデルの検討
幹事
○
テーマ2
CNG自動車の広域活用などに資する
SA、ICへのCNG導入
○
テーマ3
広域的・低環境負荷型の循環物流に資する
道路の利活用の検討
○
テーマ4
新しい充電システムや蓄電装置を導入した
AEバスの導入に関する検討
○
○は幹事
メンバー
社名
新日本製鐵株式会社
東京電力株式会社
富士電機株式会社
株式会社建設技術研究所
JFEエンジニアリング株式会社
大成建設株式会社
東京ガス株式会社
東京電力株式会社
株式会社東芝
日本工営株式会社
古河電気工業株式会社
松下電器産業株式会社
清水建設株式会社
シャープ株式会社
セントラルコンサルタント株式会社
株式会社長大
株式会社東芝
株式会社日立製作所
前田建設工業株式会社
株式会社オリエンタルコンサルタンツ
小糸工業株式会社
サンケン電気株式会社
新神戸電機株式会社
東京電力株式会社
三井造船株式会社
(2)活動の経過
各テーマについて 3∼6 回のワーキングを開催した。その結果をもとに、全メンバーが集まる
部会で討議した。
表3− 2
部会/WG
省資源・新エネルギービ
ジネス部会
8月
9月
◇
第1回
8/4
①道路空間を活用した地
域分散型エネルギーとし
ての水素の輸送モデル
の検討
平成 15 年
10 月
◇
第2回
10/22
スケジュール
11 月
12 月
○
第1回
10/3
②CNG 自動車の広域活
用などに資する SA、IC
への CNG 導入
○
第1回
9/10
○ ○
第2 回 第3 回
10/1 10/15
③広域的・低環境負荷型
の循環物流に資する道
路
○
第1回
9/18
○
第2回
10/15
④新しい充電システムや
蓄電装置を導入した AE
バスの導入に関する検
討
○
第1回
9/26
○
第2回
10/9
1月
◇
第3回
1/13
○
第2回
1/6
○
第4回
11/19
○
第5回
12/25
○
第3回
12/16
○
第3回
11/18
225
○
第4回
12/25
平成 16 年
2月
3月
○
第3回
3/16
○
第6回
3/17
○
第4回
3/3
○
第5回
3/10
4月
◇
第4回
4/5
第2章 道路空間を活用した地域分散型エネルギーとしての水素輸送モ
デルの検討
1.事業の全体イメージと検討課題
平成 14 年度は、道路空間を活用した水素の生成・輸送・供給ビジネスモデルを想定し、道路空
間への水素供給施設の設置の可能性、水素パイプライン輸送の技術的・経済的な可能性、パイプ
ラインの敷設・運用に関する制度的枠組みや道路管理者と民間事業者の関係のあり方、および高
速道路 IC や SA を活用したエネルギー充填ステーション設置・運営に関する事業のあり方につい
て基本的なイメージを描いた。その上で、水素製造、水素貯蔵、水素供給施設の整備などに関わ
る法制度、物理的・技術面可能性、経済性や財源などに関する検討を行った。
今年度は、14 年度の結果を踏まえ、具体的な場所や規模、想定される需要などを念頭に置いて、
水素輸送についてパイロット事業の実施を想定した検討を行った。
事業モデルとしては、平成 15 年 10 月に策定されたエネルギー基本計画において分散型エネル
ギーシステムや水素エネルギー社会の実現に向けた取組が、政策上明確に位置付けられたことか
ら、地域分散型エネルギーとしての水素エネルギーの利用を志向し、水素を燃料電池自動車用燃
料および定置用燃料電池用燃料に利用するために、道路空間を活用して副生水素を需要地に供給
する事業計画を検討した。検討課題は以下の 5 点である。
・ 具体的な副生水素供給源・需要地域・輸送ルートの設定
・ 需要地域における水素需要量の設定
・ 上記の前提条件に基づいた水素パイプラインの口径・敷設ルートの設定
・ 道路空間を利用した水素パイプライン輸送に関して、技術的な側面から検討を行い、概略
的なコスト比較を天然ガスパイプライン輸送との間で行う。
・ 事業を具体化するにあたっての制度面の課題抽出と対応策の検討
226
2.事業の前提条件
(1)水素供給源の設定
水素の供給源は、製品製造時に副産物として発生する副生水素の利用を前提に具体的な供給
源として、千葉県君津市の新日本製鐵㈱(以下、新日鐵)君津製鐵所内の COG(コークス炉ガ
ス)からの副生水素を利用することとした(COG 中に約 55%含まれる水素は現在、製鐵所内
で炉の燃料として利用されている。COG は分離精製設備により比較的容易に、燃料電池自動車
等への高純度水素に精製可能である。また量的ポテンシャルも大きく、当面の燃料電池自動車
や定置用燃料電池の普及段階の水素需要に対して十分対応可能な発生量を有している)。
(2)水素需要地域の設定
水素需要の中心となる地域は、水素パイプラインの敷設を予定している君津市から千葉市に
至る市および新日鐵君津製鐵所に近接する富津市。これらの全ての需要想定の対象となる地域
を総称して「京葉エリア」とした。運輸需要については自動車の移動性を考慮して千葉市周辺
の市を加え、これらの地域を総称して「京葉エリア+」とした。
・ 全ての需要想定の対象となる地域:千葉市、市原市、袖ヶ浦市、木更津市、君津市、富津
市。
・ 運輸需要想定の場合に対象となる地域:市川市、船橋市、習志野市、八千代市、佐倉市、
四街道市、八街市
八千代市
船橋市
市川市
佐倉市
習志野市四街道市
八街市
千葉市
新日本製鐵
君津製鉄所
市原市
袖ヶ浦市
木更津市
君津市
全ての需要想定の対象と
富津市
なる地域
運輸需要想定の場合に対
象となる地域
図3− 2
京葉エリアの概要
227
(3)水素需給の設定
水素需給の想定は主体ごとに以下の 3 点を設定した。需要量は水素パイプラインの敷設を前
提とすることから、燃料電池の普及開始時期にあたる 2020 年時点における年間需要量とした。
・ 京葉工業地帯からの水素供給(産業供給)
・ 燃料電池自動車への燃料供給(運輸需要)
・ 水素利用型定置用燃料電池への燃料供給(民生需要)
1)京葉工業地域からの水素供給(産業供給)
我が国の水素需要量は 1999 年で約 163 億 m3 と推定され、このうち石油精製が約 67%(109
億 m3)、化学(アンモニア)合成が約 21%(35 億 m3)であり(岩谷産業資料)、両者で現状の
水素需要の約 9 割を占めている。したがって、産業用水素需要は、石油精製および石油化学の
2 部門が主となっている。京葉エリアには製油所としては、極東石油、出光興産、富士石油、
コスモ石油が立地しており、これらの製油所の周辺には石油化学工場も立地している。
・ 石油精製部門:接触改質装置や水素製造装置の設備能力から推定すると、各製油所の水素
需給バランスは個別には過不足があるが、全体としては最大 1 億 Nm3/年が供給可能であ
ると想定した(表3− 3参照)。
・ 石油化学部門:アンモニア合成に大量の水素を利用している一方で、エチレン製造の際に
水素が発生している。石油化学工場は製油所と併設されており、水素を含む様々な物質・
エネルギーがやりとりされている。コンビナート全体で見た場合、水素はやや過剰もしく
は需給バランスが釣り合っていると考えられる。
・ まとめ:産業需要全体としては、現状では水素は余剰あるいはバランスが釣り合う状態に
あり、コンビナートとして製油所と石油化学が一体的に運用されている実情を踏まえると
水素を外部から購入する可能性は低いと思われる。よって、今回の推定では産業需要は見
込まないこととした。また、石油精製部門より最大 1 億 Nm3/年が供給可能であると想定
したことから、産業供給を 1 億 Nm3/年と設定した。
228
表3− 3
製油所/所在地
対象装置
京葉工業地帯の水素需給想定(石油精製)
極東石油
出光興産
富士石油
千葉製油所
千葉製油所
袖ヶ浦製油所
コスモ石油
千葉製油所
市原市千種海岸
市原市姉ヶ崎海岸
袖ヶ浦市北袖
市原市五井海岸
合計
水素消費装置
ナフサ脱硫
28,000
25,000
43,000
38,000
134,000
上段:能力[BBL/D]
(20SCFB)
13,430
12,070
20,655
18,275
64,430
下段:水素消費量[Nm3/D]
*灯油脱硫
39,250
63,500
39,250
67,000
209,000
()内は化学的水素消費量
(40SCFB)
37,740
61,115
37,740
64,430
201,025
*軽油脱硫
39,250
63,500
39,250
67,000
209,000
(330SCFB)
311,610
504,050
311,610
531,845
1,659,115
間接脱硫
−
39,000
47,000
35,000
121,000
422,195
508,725
378,845
1,309,765
40,000
−
72,000
112,000
1,426,320
2,218,720
−
38,500
(450SCFB)
直接脱硫
−
(1000SCFB)
水素化分解
38,500
(1000SCFB)
926,160
水素消費量合計[Nm3/D]
水素発生装置
上段:能力[BBL/D]
下段:水素発生量[Nm3/D]
792,400
−
−
926,160
1,288,940
1,791,830
878,730
2,419,715
6,379,215
接触改質
27,000
17,000
29,900
36,500
110,400
(1000SCFB)
649,485
408,935
719,270
878,050
2,655,740
764,750
1,311,000
513,000
1,406,000
3,994,750
1,414,235
1,719,935
1,232,270
2,284,050
6,650,490
Nm3/D
125,295
-71,895
353,540
-135,665
271,275
kNm3/Year
45,733
-26,242
129,042
-49,518
99,015
水素製造
[Nm3/D]
水素発生量合計
水素供給余力
229
2)燃料電池自動車への燃料供給(運輸需要)
運輸需要については、政府の燃料電池自動車の普及予測台数を前提に、京葉エリア+におけ
る普及台数を推定し、1 台あたりの必要水素量から設定した。
・ 普及の前提:燃料電池自動車の普及予測台数は 2010 年で 5 万台、2020 年で 500 万台。最
初に普及の中心地になるのは JHFC が行われている南関東エリアなど。
・ 京葉エリア+における乗用車台数と見通し:京葉エリア+の 2020 年における乗用車台数
は 142 万台と推定。
・ 京葉エリア+における燃料電池自動車の普及見通し:
単純に自動車台数で案分すると 500 万台の 2.25%で 11.2 万台。
CNG 自動車の普及状況を参考にすると、南関東エリアの普及台数は 47.8%(2001 年)
を占めており、初期のインフラ整備が特定地域に集中する燃料電池自動車でも同様な傾
向を示すことが考えられる。40∼50%の構成比になるとすると、200∼250 万台となり、
千葉県における普及台数は 43∼54 万台になると見込まれる。京葉エリア+の普及台数
は乗用車台数から案分すると 21.5∼27 万台となる。この場合、必要となる水素量は 1.6
∼2.0 億 Nm3/年となる。
ただし、京葉エリア+の中で運輸需要の場合にのみ対象とした地域の需要については、
他地域でも水素を補給することが想定されることから需要量は 50%程度になると想定
した。したがって、運輸需要の水素量を 1.2∼1.5 億 Nm3/年と設定した。
3)水素利用型定置用燃料電池への燃料供給(民生需要)
民生需要については、政府の定置用燃料電池の普及予測台数を前提に、京葉エリアにおける
住宅タイプ別の普及台数を試算し、定置用燃料電池 1 台あたりの必要水素量から設定した。
・ 普及の前提:
定置用燃料電池は 2020 年には 1,000 万 kW、680 万台(家庭用 570 万台、業務用 110
万台程度)が導入されると予測されている。必要となる水素量は 349 億 Nm3/年。
家庭用燃料電池への燃料供給は当面の間は天然ガスが中心になる見通し。水素供給イン
フラが整備された場合は、パイプライン近傍の地域に水素供給が広がる可能性はある。
したがって、水素供給インフラが整備され、地域によっては既存の天然ガスを改質して
いる燃料電池の燃料を代替し、水素を利用するようになると設定した。
・ 京葉エリアにおける燃料電池普及の見通し(2020 年時点の総導入量)
:
新築戸建へは 1.0 万台、1.0 万 kW の燃料電池が導入されると試算。
既存戸建へは 2.5 万台、2.5 万 kW の燃料電池が導入されると試算。
新築集合住宅へは 0.25 万台、0.25 万 kW の燃料電池導入されると試算。
業務用については 3.5 万 kW の燃料電池導入されると試算。
以上の結果、京葉エリアに 2020 年の時点で導入されている燃料電池の出力数は 7.25 万
kW となり、水素需要量は 2.5 億 Nm3/年となる。
既設の燃料電池への水素供給割合を推定することは前例が無く困難なことから、今回の
230
推定では仮に水素需要量の 50%が水素の直接供給に代替されると仮定する。したがって、
副生水素から供給する民生需要の水素量を 1.25 億 Nm3/年と設定した。
4)総需要量および輸送水素量
以上の想定をまとめると以下の通り。
・ 京葉工業地帯からの水素供給(産業供給):最大 1 億 Nm3/年の供給が可能
・ 燃料電池自動車への燃料供給(運輸需要):1.2∼1.5 億 Nm3/年の需要
・ 水素利用型定置用燃料電池への燃料供給(民生需要) :1.25 億 Nm3/年の需要
試算の結果、京葉エリア全体の 2020 年における総水素需要は 2.45∼2.75 億 Nm3/年と設定
できた。供給力としては産業供給により、最大 1 億 Nm3/年があることから、1.45∼1.75 億 Nm3/
年程度の水素が京葉エリアで不足する。
本モデルでは、2020 年時点の水素需要を想定して試算しているが、実際には 2020 年以降も
水素を供給する必要があり、それを勘案して総水素需要は 3 億 Nm3/年、君津製鐵所からパイプ
ラインで送る水素量としては 2 億 Nm3/年と設定した。
水素パイプライン(主に国道 16 号)
京葉コンビナート
3
1 億 Nm /年供給
京葉エリア
新日本製鐵
3 億 Nm3/年程度の需要
君津製鉄所
2 億 Nm3/年供給
全ての需要想定の対象と
なる地域
運輸需要想定の場合に対
象となる地域
図3− 3
京葉エリアにおける水素需給量設定の概要
231
3.事業の基本的な枠組み
(1)水素パイプライン口径検討の前提
「2.事業の前提条件」において設定した以下の水素需要量前提に基づいて口径の検討を進め
る。
年間需要供給量(運輸・民生需要、産業供給)
{2020 年ベース}
・君津からの供給量:2 億 Nm3/年
・京葉工業地帯からの供給量:1 億 Nm3/年
・千葉市での需要量:3 億 Nm3/年(運輸需要:1.5 億、民生需要:1.5 億)
(2)パイプライン口径設定の考え方
1)年間供給量の時間流量への換算
君津からの供給量は 2 億 Nm3/年と設定できたが、パイプラインの口径設定を行うためには、
年間供給量を時間流量に換算する必要があり、運輸需要および民生需要について以下の考え方
に基づいて換算を行った。
・ 運輸需要:水素タンク等バッファが設置される前提で時間流量一定として換算
・ 民生需要:定置用燃料電池による電力変換が主になるとの想定*から、別途、民間電力需
要の年平均/時間平均 Max の割合を設定した。検討の結果、年間供給量を時間流量に単純
換算した場合の 2.5 倍の時間流量が必要となった。
以上より、時間平均流量は、運輸需要(1 倍)
、民生需要(2.5 倍)の平均(運輸需要:民生
需要=1:1)を取って 1.75 倍とし、これを口径検討に用いた。
*民生需要については、必要とする電力の全てを燃料電池で賄う前提であるが、実際には負荷変動部分につ
いては系統電力から賄われる可能性が大きく、時間流量の数値としては、設定値よりも小さくなると考えら
れる。しかし、本モデルは、2020 年以降の予測の難しい時期を想定しているため、設定値については一定
割合の設備能力の余裕分を含んでいるとみなし、口径設定を行った。
2)圧力条件等
・ 圧力については、千葉市にて水素タンク機能も踏まえ 1MPA に降圧する。パイプライン計
画圧力は最大 7MPA、最高ガス流速は 20m/s とする。ライン圧損もあり、①より算出され
る時間平均流量に対して、送出側にて最大 7MPA になる様に口径を設定する。
・ 2020 年以降の水素需要量増加も見込み、余裕を見た口径設定とする。
・ 水素需要サイドの流量変動及び需要の伸びについては、京葉コンビナート、君津双方で均
等に対応するものとする。
232
(3)パイプライン口径の検討
1)Case.1(基本検討)
最も基本となる検討として、
「(2) パイプライン口径設定の考え方」で設定した諸条件に基
づいてパイプライン口径を試算した。
○検討条件
・ 千葉市着圧:1.1MPA(千葉市最低着圧を 1.0MPA とし余裕をみて 1.1MPA とした)
・ 千葉市到着流速:20m/s 以下
・ 流量:1,438,356Nm3/D(3 億 Nm3/年の日平均流量の 1.75 倍)
○検討結果
・ パイプライン口径:350A(外径:355.6mm 管厚:14.3mm)
・ 新日鐵君津発圧:1.24MPA
・ 千葉市到着流速:17.6m/s
Case.1 で検討した結果、上記の条件を満足させるパイプライン口径は 350A となった。ここ
で施工性(特に施工後の復旧時間)
・建設費等を考慮すると、より小口径が望ましいと思われる。
よって次に Case.2 として到着圧力を上げ、小口径化を検討した。
2)Case.2(小口化検討)
○検討条件
・ 千葉市着圧:2.1 MPA、3.1MPA、4.1MPA、5.1MPA、6.1MPA における配管口径の検討
・ 千葉市到着流速:20m/s 以下
・ 流量:1,438,356Nm3/D (3 億 Nm3/年の日平均流量の 1.75 倍)
○検討結果
7MPA 仕様のパイプラインを考慮に入れると、
本条件ではパイプライン口径 200A となった。
また君津発圧は、流量・口径が決定している本条件では操業費の観点から 3.66MPA での送圧
が望ましいと考えられる。
233
表3− 4
小口化検討の結果
千葉市着圧(MPA) パイプライン口径
君津発圧(MPA) 終点流速(m/s)
2.1
250A
2.41
16.8
3.1
200A
3.66
17.2
4.1
200A
4.54
13.1
5.1
200A
5.46
10.6
6.1
200A
6.41
8.9
よって本モデルで用いるパイプライン口径等の検討結果は以下の通りとした。
表3− 5
本モデルのパイプライン口径等
パイプライン口径
200A
新日鐵君津発圧
3.66MPA
千葉市着圧
3.1MPA
終点流速
17.2m/s
3)Case.3(最大流量における検討)
上記の条件について千葉市における最大流量を求め、将来的な需要増加にどの程度対応可能
であるか検討を行った。
○検討条件
・ 新日鐵君津発圧:7.0MPA
・ 千葉市到着流速:20m/s
・ パイプライン口径:200A
検討の結果、最大供給可能量は約 11 億 Nm3/年となった。これは 3 億 Nm3/年(2020 年)の
需要に対して供給能力は約 360%の余裕があることを示しており、2020 年以降の水素需要の増
加に対しても新日鐵君津発圧を高めることで対応できることを示している。
表3− 6 最大流量における検討結果
パイプライン口径
200A
新日鐵君津発圧
7.0MPA
千葉市着圧
5.7MPA
新日鐵君津流量
2,017,680 Nm3/D
五井南海岸流量
1,008,840 Nm3/D
千葉市流量
3,026,520 Nm3/D
終点流速
20.0m/s
234
(4)パイプライン敷設ルートの検討
輸送(パイプライン敷設)ルートについては、需要との兼ね合いから、君津市−千葉市の場
合、一般道(国道 16 号)、館山自動車道、民地が検討対象となる。本モデルでは、京葉工業地
域の水素もパイプラインで千葉市まで輸送することを想定していることから、一般道(国道 16
号)と民地を検討対象とした。パイプラインの敷設ルートは、千葉国道事務所にて図面にて既
存の埋設物の概要を把握するとともに、実際に君津市−千葉市間を走行して決定した。
検討の結果、主に国道 16 号を利用することで総延長 42.7km のパイプライン敷設ルートとな
った。途中、コンビナート部を通過するため、土かぶりを深くすることや橋ではパイプライン
を添架(河川をパイプラインが横断する際、パイプラインを橋梁に添わせる施工方法)し、線
路の横断など、通常の敷設が難しい部分は推進(河川、道路、鉄道をパイプラインが横断する
際、横断部にパイプライン口径よりやや大きいトンネルを構築し、その中にパイプラインを敷
設する工法)部を設ける必要があるなど、通常の敷設が行える一般部は全体の 6 割強であった。
次項以降にルート図、特殊部(添架部・推進部)の位置、添架部・推進部の概念図および例
を示した。
表3− 7
君津市−千葉市間パイプラインの敷設形態
敷設形態
延長(m)
一般部(土かぶり 1.5m)
26,780
コンビナート部(土かぶり
14,040
1.8m)
特殊部
添架部
1,390
推進部
490
42,700
総延長
235
236
図3− 4
パイプライン敷設ルート
237
図3− 5
特殊部の位置
図3− 6
添架部・推進部の概念図
238
図3− 7
添架部の例
239
図3− 8
推進部の例
240
図3− 9
推進部の例
241
図3− 10
添架部の例
242
図3− 11
推進部の例
243
図3− 12
添架部の例
244
4.水素パイプライン用鋼材の選定
(1)操業条件の設定
水素は都市ガスの主成分であるメタンにくらべ分子の大きさが小さくラインパイプの金属内
部に侵入しやすいため、強度や延性が劣化する水素脆性が懸念される。そこで本モデルにおけ
る操業条件(水素濃度、圧力、温度)を設定し、それらの条件下で水素脆性をどの程度考慮す
る必要があるのかを文献にて調査した。
○操業条件
・ 水素濃度:100%(99.999%レベル)
・ 圧力
:7MPA
・ 温度
:15℃(常温)
(2)水素パイプライン用鋼材の条件
100%気体水素で使用されているパイプライン用の鋼管については、一般的に以下の条件を満
たさなければならないと考えられている。ただし、繰り返し荷重(地震のような周期的に変動
する荷重)、疲労、遅れ破壊(使用環境から水素が材料に侵入することにより材料が脆くなり、
ある時間が経過した後に破壊に至る現象)等、実際の水素パイプラインと同じ条件での長期試
験は行われていない。尚、操業条件(圧力<低いほど有利>や温度<低いほど有利>)によっては、
従来の鋼管でもほぼ問題ないと考えられている。
・ 最大で API 5L X65 以下程度(API はパイプライン鋼管の規格で AmerICan Petroleum
Institute(アメリカ石油学会)の略称で、API 5L はガス・石油パイプラインに使用され
る材料規格で国内を含めて世界中で使用されている規格。X65 は強度を示しており世界的
にはより強度のある X70、X80 も使用されている)の比較的低いグレード鋼管を採用する。
・ 合金成分と製造法が規定される耐サワー用基準材(湿潤でかつ硫化水素が存在するサワー
環境(例えば石油井)で使用される材料)とする。中央偏析が少なく、均質な微粒組織を
持つこと。
・ 非常に高い品質。非常に少なく、非常に小さな介在物
・ 低い Mn、非常に低い S(10ppm 以下)、比較的低い C、低い硬化性
・ 内面部分へのマイルドな水素脆性を許容するために、天然ガスパイプラインよりも厚い管
厚とし、パイプ強度と靭性を維持する。
鋼材の腐食、割れ問題解決のために設立されたアメリカの規格である NACE(National
Association of Corrosion Engineers)の「NACE TM0284」の腐食液では 1∼2ppm の水素濃
度が検出されている。文献調査によると現状の操業条件では、鋼材中の水素濃度は 0.2ppm 程
度と想定されることから、NACE の基準を下回ることになる。規格の 1/10 程度の水素濃度であ
ることと下記に示したように世界では多様な口径、長さ、圧力の水素パイプラインが運用され
ていることから、NACE 環境下で割れを起さないことを保証された材料(耐サワー材料)を用
いれば水素脆化の問題は少ないと考えられる。
245
表3− 8
代表的な世界の水素パイプライン(参考)
場所
AGEC, Alberta CANADA
AirLiquide, France
Air Products, Houston, TX
Air Products, Louisiana
Chemische Werke Huls (Air Liquide)
Cominco, B. C., CANADA
Gulf Petroleum CANADA
Hawkeye Chemical lowa
ICI Bilingham U. K.
Philips Petroleum
口径(mm)
273
various
114∼324
102∼305
168∼273
5
168.3
152
203
長さ(km)
圧力(MPA)
3.7
3.79
290.0
100.0
0.35∼5.5
48.0
3.45
215.0
∼2.5
0.6
30
16.0
3.2
2.75
15.0
30
20.9
12
出典:新日本製鐵㈱
246
5.施工方法
「4.水素パイプライン用鋼材の選定」と関連して溶接・検査方法、防食対策、敷設方法に対し
て都市ガスをベースとした相違点の有無をはじめとして整理した。
(1)溶接
前記の材料の知見は鋼管の縦溶接部も含めた鋼管材料の評価であり、円周溶接部についても
同等と考えられる。溶材についても同等で耐サワー基準材に準じた選定を行う。
(2)検査
溶接部のX線検査等の現状の都市ガス技術と同等と考えられる。
(3)防食
導管の外面にポリエチレンを塗覆装し、外部電源から導管に電圧をかけて防食を行う等の現
状都市ガス防食技術と同等と考えられる
(4)敷設方法
敷設方法については、敷設場所が国道 16 号であり車両衝突や意図的な行為等からのパイプラ
インの安全性を考慮すると都市ガス同様埋設が望ましい。
247
6.安全対策システム
(1)漏洩検知
地上設備において、水素はメタンに比べ分子量が小さいためバルブ、機器、計器等の隙間に
侵入し漏洩しやすいと考えられる。そこで地上設備が設置される建屋内で漏洩水素を検知する
センサーが重要となってくるが、現在市販されている水素ガス検知センサーで検知可能である。
一方、道路下においては都市ガス導管同様に定期的な漏洩検査が必要と考えられる。埋設導
管からの漏洩水素を道路上で検知するための移動計測水素検知センサーは現状なく、上記建屋
用定置センサーを移動計測可能にする等の装置開発が必要と考えられる。
また、都市ガスでは漏洩時に人が検知できるように硫黄系化合物の付臭剤を使用しているが、
水素利用する燃料電池では硫黄は触媒を劣化させるため、触媒への影響が極めて少ない付臭剤
の開発が進められている。これまでにジエチルスルフィドなどいくつかの水素用付臭剤が開発
されている。
(2)監視システム、遮断システム
パイプラインの監視システム及び遮断システム(遮断弁)は都市ガスのシステムと基本的に
同様と考えられる。ただし、遮断されたパイプライン内のガスを放散する際、水素は着火エネ
ルギーが都市ガスより小さいため、放散システムはこの点を考慮する必要があるとの指摘もあ
る。
248
水素パイプライン監視システム概念図
【監視センター】
Ethernet
補助操作卓
HUB
凡例
RT
RT
TA
TA
DSU
DSU
ホストコンピューター
マン・マシン・インタフェース
RT
カラー
ハードコピー
PLC:
UPS:
PI/O:
DSU:
TA:
TEL:
RT:
レーザプリンタ
PI/O
UPS
プログラマブルロジックコントローラー
無停電電源装置
プロセス I/O
回線終端装置
ターミナルアダプタ
デジタル電話機
ルーター
:
遮断弁
:
放散設備
衛星通信
親局
FM :
流量計
衛星通信
DDX-P
(TCP-IP ソケット)
電話回線通信
INS-P 又は DDX-P
(TCP-IP ソケット)
249
DSU
TEL
TA
DSU
RT
VSAT
TA
RT
VSAT
PLC
PLC
DSU
UPS
TA
受配電設備
VSAT
UPS
RT
UPS
PLC
受配電設備
受配電設備
コンビナート
P
水素パイプライン 200A
FM
【新日鐵㈱君津製鐵所】
P
P
FM
P
水素プラント
P
市内へ
FM
放散設備
放散設備
【五井南海岸】
図3− 13
水素パイプライン監視システム
【千葉市】
放散設備
7.まとめ
(1)技術的側面から評価した水素パイプライン敷設コスト
本モデルでは、新日鐵君津製鐵所の COG 由来副生水素を水素供給源に、君津市から千葉市、
更にはその周辺地域を需要地にそれぞれ設定し、水素パイプラインの敷設事業の検討を行った。
検討では需要量からパイプライン口径を検討した結果、既存の天然ガスパイプラインとほぼ同
様な範囲で口径設定が可能であったことから、パイプラインの敷設ルートは天然ガスパイプラ
インを敷設する場合のルートを選択することができた。
材料や施工方法については、既存の文献から天然ガスパイプラインと同様な材質・方法を用
いることが可能であると判断できた。天然ガスパイプラインの敷設コストをベースとして、水
素ガスパイプラインを材料、施工方法、安全システム等の項目で検討し、概略の敷設コスト比
較したところ、本モデルで設定した条件下では大幅なコストアップが生じる項目は無かった。
表3− 9
項
目
水素パイプラインの対天然ガスパイプライン概略敷設コストの評価
対天然ガスコスト
備
考
材料
△
耐サワー材料の使用
溶接
△
同上
検査
○
防食
○
敷設
○
漏洩検知
△
監視システム
○
遮断システム
○
移動計測センサー開発、付臭剤開発
△:コストやや上昇、○:コスト同等
したがって、本モデルで需給を想定して技術的側面から具体的な検討を行った結果、水素パ
イプラインの敷設コストは天然ガスパイプラインおよび都市ガス導管と比較してほぼ同等であ
ると判断され、水素を輸送することに起因するコスト上昇要因(水素脆性への対処など)は小
さいことが明らかになった。
(2)本モデルの課題と対応策
水素パイプラインについては、国内での具体的な敷設事例が少ない事もあり、関連する法規、
基準、安全指針については、高圧ガス保安法、消防法(危険物)等に一部記載があるものの、
共同溝法には規定が無いなど、水素パイプラインの敷設に関して統一的かつ具体的に規定がな
されていないのが現状である。本モデルでは技術的な側面から検討を行い、法規等については
天然ガスパイプラインと同等な取り扱いで可能であると設定した。したがって、水素パイプラ
インの敷設コスト評価については、法規等の内容により大きく変化する可能性がある。
今後、水素パイプラインを含めた広範囲での水素利用に関連した法規等が整備されていくこ
250
とになるが、適正な基準の策定のために、実証研究の推進や様々な場所で敷設が進んでいる海
外の事例および基準整備の状況を整理するなど情報を整理していく必要となる。また、水素自
体が馴染みのない物質であることから、社会の水素に対する認知度・親和性を高めるために、
安全性や水素エネルギーに関する情報提供など社会啓発の為の取組も必要と考えられる。
この様な働きかけを通じて、水素パイプラインに対して、技術的な見地から適切な基準、安
全指針が整備されれば、今回の検討でまとめた様に既存の天然ガスパイプラインの敷設コスト
に対して極端に高コストな構造になる事もなく、適切な副生水素の発生源と需要地があれば、
地域エネルギーとしての水素エネルギーの普及が促進されると考える。
今回は、道路空間利用に焦点を当て、水素供給の幹線パイプラインを中心に検討を進めたが、
実際には末端までのパイプライン網において、たとえば民生用の燃料電池までの水素供給や圧
力、流量コントロール、民生用ベースでの安全の考え方や、燃料電池自動車用の水素ステーシ
ョンでの上記と同様の課題、更には負荷変動対策など対応すべき課題は数多く残っている。最
終的にはこれらを供給パイプラインシステムの考え方、仕様も含めた上ではじめて、水素パイ
プライン供給コストの評価、天然ガスとの比較も出来ると考える。
251
第3章 CNG 自動車の広域活用などに資する SA、IC への CNG 導入
1.ワーキングの趣旨と検討課題
本ワーキングでは、圧縮天然ガス(以下 CNG)を燃料とする天然ガス自動車(以下 CNG 自動
車)の普及を促進するために、高速道路のサービスエリア(以下 SA)、パーキングエリア(以下
PA)、インターチェンジ(以下 IC)等高速道路施設への天然ガススタンド(以下 CNG スタンド)
整備にかかる建設費および維持費の試算と、CNG 自動車が十分普及した時点における採算性の検
討をおこなうものとする。
また同時に、風力・太陽光・バイオマス発電などの新エネルギーと、CNG スタンド整備に伴っ
て導入される天然ガスの SA への導入可能性について検討を行うとともに、これからの低環境負
荷型 SA のイメージに関するいくつかのアイデアを提示することとする。
252
2.CNG スタンド整備に向けた検討
(1)CNG 自動車の現状と普及のための課題
CNG 自動車の現状と普及のための課題を整理・分析することによって、本ワーキングの意義
を確認する。
1)CNG 自動車普及の推移
日本における CNG 自動車の普及台数は、近年 40∼50%の伸びを示しており、2003 年度に
は 2 万台を超える見込みとなっている。
(台)
18000
16,561
16000
フォークリフト等
バス
塵芥車
トラック
小型バン
乗用車
軽自動車
合計
14000
12,012
12000
10000
7,811
8000
5,252
6000
3,640
4000
2000
1,211
421 759
49 123 243
2,093
0
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
出典:(社)日本ガス協会資料
図3− 14
CNG 自動車普及の推移
政府は、2010 年 CNG 自動車を含むクリーンエネルギー自動車の普及台数の目標を、348 万
台としており、そのうち 100 万台を CNG 自動車が占めると見込んでいる。現在全国には、約
7,500 万台の自動車が走行しており、2010 年時点で大きな変化がないと仮定すると、約 1.3%
を CNG 自動車が占めることとなる。2003 年度における CNG 自動車普及見込みを 2 万台とす
ると、7 年間で年率約 75%の伸びが必要となる。この見通しは、①インフラ整備の促進
援制度の継続
②支
を前提とし、今後自家用トラックへの普及が促進されるものと仮定し推計した
ものである。
2)CNG 自動車の特徴
CNG 自動車の環境性は、ディーゼル・ガソリン車と比べ優位性があり、ハイブリッドに比べ
ても優れているが、燃料供給インフラ数で劣る。
航続距離は 200∼350km 程度といわれており、
都市内走行の場合は数日に 1 回の充填が必要であり、大都市圏以外における燃料供給インフラ
の整備が進んでいない現状では無充填での長距離走行はほぼ不可能である。しかし、4 トン以
下のトラックはすでに広く使用されており、10 トンクラスの大型車も一部で市場投入されてい
る。また出力も従来の中型バスやトラック相当であるため、短距離走行トラック向きであると
いえる。
253
表3− 10
環境性能(排出ガス性能)
CO
CNG自動車
ディーゼル車1)
ハイブリッド車2)
HC
1.44
2.22
1.71
0.06
0.87
0.67
NOX
0.05
3.38
1.69
(g/kWh)
PM
0.00
0.18
0.02
1) 新短期(H15年)規制値
2)ディーゼルハイブリッド車
※ 車種は重量車
出典:
「天然ガス自動車の普及に向けて 2003 年版」
(社)日本ガス協会
※ガソリン車を 100 とした場合
出典:
「天然ガス自動車の普及に向けて 2003 年版」
(社)日本ガス協会
図3− 15
環境性能(CO2 排出量)
表3− 11
ディーゼル
52,000
電気
燃料供給インフラ数
1)
46
LPG
1,900
2)
CNG
224
1) 急速充電用エコステーション
2) 急速充填設備
※2003 年 3 月現在
出典:
(財)エコ・ステーション推進協会、全国エルピーガススタンド協会、
(社)日本ガス協会
また、燃費を単純に一般車と比較することは出来ないが、km あたりの燃料費を比較した場
合、一般車と同程度かやや有利である。
254
表3− 12
燃費
小型バン
CNG自動車
ガソリン車
燃料消費率
3
19.3km/m
15.8km/L
燃料単価
3
72円/m
100円/L
燃料費
3.7円/km
6.3円/km
出典:国内市販車のカタログ値(10.15モード走行)
2tトラック
CNG自動車
ディーゼル車
燃料消費率
3
6.65km/m
6.73km/L
燃料単価
3
72円/m
72円/L
燃料費
10.8円/km
10.7円/km
出典:H7低公害車重点的導入検討調査(横浜市)
注:上記試算における天然ガス燃料単価は、CNG 自動車向けの市販価格の一例をもとにしている。
航続距離の問題が解決し、燃料供給インフラが整備されれば、大型低公害車としての優位性
が発揮できる可能性がある。なお、航続距離が現在の水準(200km∼350km)であれば、都市
内走行には充分である。
表3− 13
燃料別航続距離
ディーゼル ハイブリッド1) ガソリン
(電気)
1.0
1.1
0.8
0.2
LPG
0.8
CNG
0.4
1) ディーゼルハイブリッド
※ ディーゼル車を1.0として比較
※ 比較対象は2t車クラスのトラックを想定。ただし、電気自動車のみ小型乗用車
出典:CNG 以外は東京都環境改善事業研修テキスト(平成 11 年)より
CNG はガソリンとの熱量比較をもとに計算
3)CNG 自動車普及による地球温暖化対策効果
1997 年 12 月に開催された気候変動枠組条約第 3 回締約国会議(COP3)で採択された京都
議定書により、我が国は 2012 年までに 1990 年比△6%の温室効果ガスの排出削減目標が定め
られた。政府が策定した地球温暖化対策推進大綱では、運輸部門は 2010 年時点で 1990 年比
+17%とされたが、これも何も対策をとらない場合約 40%増となるところを、約 4,600 万トン
の CO2 を削減する対策を推進して達成されるものである。
255
(百万tCO2)
350
運輸部門の削減量
300
300
267
254
250
217
23%
17%
4,600万t
削減
254
17%
200
1990年比増加量
150
100
50
0
1990
1995
2001
2010
国土交通省資料をもとに WG 作成
図3− 16
運輸部門における温室効果ガス排出量と削減目標
表3− 14
部門別 CO2 排出割合(2001 年)
機関
排出量(百万tCO2)
比率(%)
自家用乗用車
131
48.9
自家用貨物車
51
19.2
営業用貨物車
44
16.3
バス
5
1.8
タクシー
5
1.8
自動車計
235
88.0
内航海運
14
5.4
鉄道
7
2.6
航空
11
4.0
運輸部門計
267
100.0
出典:国土交通省資料
ここで、2010 年に CNG 自動車が 100 万台普及した場合の CO2 削減効果を試算した。CNG
自動車の車種別の普及割合が現在と同じと仮定すると、100 万台普及した状況での車種別台数
は表3− 15に示すとおりであり、全自動車に占める割合は約 1.4%である。ここで CNG 自
動車の CO2 排出削減率を、対ガソリン車(乗用車)37%、対ディーゼル車(トラック、バス、
特殊用途車)20%と設定すると、CO2 排出量で 0.37%、約 87 万トン CO2 の削減量である。
256
表3− 15
CNG 自動車車種別構成比(実績および予測)
CNG自動車
自動車保有台数 2001年現在 2010年目標
トラック
17,726,154
6,697
404,384
234,244
770
46,495
53,487,293
7,238
437,051
特殊用途車
1,429,840
1,856
112,071
大型特殊車
324,533
−
−
73,202,064
16,561
1,000,000
バス
乗用車
合計
出典:
「国土交通白書」平成 15 年、日本ガス協会資料
4)利用者動向(トラック事業者を対象にして)
近年トラック事業者に低公害車を積極的に導入する傾向がみられるが、これは環境意識の高
まりや、首都圏ディーゼル車規制や NOX・PM 法施行など規制強化の影響によるものと考えら
れる。各事業者で低公害車に対する方針の違いはあるが、CNG 自動車を導入している事業者は
主に 2 トンクラスの集配車を対象にしており、その理由は一日あたりの走行距離が短いこと、
決まったルートを走行することが多いため充填が容易なことである。
表3− 16
事業者
主要トラック事業者の低公害車導入方針
低公害車に対する方針
CNG 車導入状況
A
2012 年度を目処に 7,000 台の CNG 車を導入(集配車の 3 分の 1) 1,110 台/19,654 台
B
今後 10 年間で 5,500 台のハイブリッド車を導入
236 台/11,736 台
C
2012 年度までに 20,000 台のハイブリッド車を導入
153 台/33,511 台
事業者インタビューおよび公表資料より
257
表3− 17 導入に積極的な事業者の意見
分類
事業者の意見
・ 環境面の優位性 ハイブリッドなどと比べた場合、PM がほとんど O、
NOX、CO2 の排出も少ない。
導入促進の動機
・ トラックの実績 2∼3 トントラック製造の実績が長く、メーカーの選
択肢も多い。
・ 価格は一般車に比べ高いが、差額の一部が補助対象である。
・ 企業イメージの向上に役立つ。
・ 2012 年までに 7,000 台導入する計画。その用途は主に集配車。
・ 10 トン CNG 車は市販されているが、燃料充填なしの長距離走行が出
今後の導入方針
来ないため、実用的ではない。
・ 高速道路上にステーションが整備され、実用的な大型 CNG 自動車が
市販されれば、長距離車への導入も検討する。
・ スタンド整備をする際には充填能力に注意する必要がある。大型車を
対象とする場合は、500Nm3/hの圧縮機が 2 機程度必要。
・ 長距離輸送に CNG 自動車を導入するとの前提で、現在の CNG 自動
インフラ整備に対
する要望
車の能力(1 充填 300km 程度)であれば 200∼250km 間隔で 1 ヶ所、
能力が向上するのであれば 400km 間隔で 1 ヶ所整備程度して欲しい。
(400km はドライバーの休憩のタイミング)
・ IC に併設してスタンドを整備し、高速道路からも一般道からも利用で
きるのであれば非常に便利である。高速料金を 2 度払いしなくてよい
のであれば、SA よりもむしろそちらの方がよい。
事業者インタビューより
5)メーカー動向(トラックメーカーを対象にして)
国内メーカーで CNG 自動車を市販しているのは 6 社(2003 年 10 月現在)である。2 トン
車と 4 トン車が主であり、5 トン車以上(5 トン、7 トン、10 トン)を製造しているのは 1 社
のみである。
主な販売先としては、運送事業者(用途:集配車)
、スーパー、食品メーカー(用途:配送車)、
自治体(用途:塵芥車、作業車)である。これらに共通するのは、航続距離が短い、または決
まった経路を走行するという利用目的である。
事業者インタビューの結果、大型 CNG 自動車開発の課題と見通しは、以下のようなもので
あることが分かった。
・ 課題は航続距離(現在は約 200km)。方策は、燃料タンクの高圧化・軽量化、燃費の向上。
・ 国土交通省の次世代低公害車開発促進会議の天然ガス WG では、平成 17 年度には東京∼
大阪をノンストップで走行できる大型天然ガス自動車の開発を目指している。
6)CNG 自動車普及の課題
以上までの調査を総合すると、特徴・利用者動向・メーカー動向別にみた CNG 自動車の普
258
及の課題は以下のとおりである。
① CNG 自動車の特徴からみた課題
・ 車両性能
航続距離が、ディーゼルと比べ短い(2 トン車で約 200∼350km 程度)
。
4 トン以上の大型車の販売は一部のメーカーのみ。
・ 燃料供給インフラ
一般のガソリンスタンドの数(52,000 ヶ所)に比べ、はるかに少ない(224 ヶ所)。
高速道路上(SA)では 3 ヶ所(上郷 SA(上下)、海老名 SA(上))のみ営業中。
② 利用者動向からみた課題
・ イニシャルコスト(購入価格)は、国・トラック協会等の補助を利用すれば若干の負担増
ですみ、燃料費は、ガソリン、ディーゼルとほぼ同等であるため、集配車など短距離走行
車を中心に導入が進んでいるが、航続距離の短さ、燃料供給インフラ数および市販車種の
制約があるため長距離利用大型車として導入されない。
③ メーカー動向からみた課題
・ 大型 CNG 車開発の課題は、主に燃料タンクの高圧化・軽量化、燃費の向上といった、航
続距離増大に向けた課題。
以上より、CNG 自動車普及を促進するためには、技術開発による航続距離増大と燃料供給イ
ンフラの整備が同時になされる必要がある。本ワーキングでは、そのうち燃料供給インフラの
整備促進のため、中圧導管近傍の SA、IC を対象とした CNG スタンド建設費試算と採算性検
討、都市ガス供給エリア外の SA を対象とした L-CNG スタンド(スタンドで液化天然ガス
(LNG)を気化することで圧縮天然ガスを製造する方式のスタンド)整備の検討を行うものと
する。
【CNG スタンドと L-CNG スタンド】
現在ほとんどのCNGスタンドは、天然ガスを導管により供給されるタイプのため、設置付近に中圧
導管が敷設されていることが必要である。一方L-CNGスタンドは、タンクローリーで陸送したLNGを
貯蔵するタイプであるため、都市ガス供給エリア外でも設置可能であることと、圧縮器ユニットが不
要なため電力消費量が少ないことなど有利な面があるが、国内での事例は少なく法規制による設置上
の制約も多い。
259
従来型 CNG スタンド
圧縮機ユニット
ディスペンサー
蓄ガス器
M
中圧導管
L-CNG スタンド
LNG
ディスペンサー
蓄ガス器
液ポンプ
気化器
出典:ガスエネルギー新聞
図3− 17
従来型 CNG スタンドと L-CNG スタンド
(2)CNG スタンド建設に関する可能性調査
具体的な SA、IC を対象として、CNG スタンドおよび L-CNG スタンド建設に係るコストを
試算した上で、採算性の検討を行う。
また本ワーキングでは、将来的な CNG 自動車の普及のためには、CNG スタンド利用に関し
て、現状と比べ利用者に対する利便性をより向上させることが必要であると考え、以下の仮定
をおいて CNG スタンド整備を検討した。
・ IC 敷地内または IC 近傍に整備した CNG スタンドに対しては、一般道利用車と高速道路
利用車双方から利用できるものとする。その際、高速道路利用車は料金計算上高速道路か
ら出ていないものとして扱われるものとする。
これは以下の 2 種類のタイプいずれかの CNG スタンド整備形態を想定している。
1)IC 敷地内での整備形態
このタイプは、オフランプに分岐を設け、料金所を通過せずに CNG スタンドを利用できる
ような形状にするものである。この場合、CNG スタンドを設置する敷地が確保できるかという
物理的な問題と、道路管理者(例えば日本道路公団)が敷地を CNG スタンドのために貸与す
るかという実質的な問題があるが、法規制上は一般の民地に CNG スタンドを設置する際と同
様、消防法、高圧ガス保安法、建築基準法に従う。
260
一般道
料金
出口
スタンド利用車
天然ガススタンド
(高速、一般道から利用可)
バリア
料金
高速道路本線
図3− 18
IC におけるスタンド整備形態
∼IC 敷地内での整備形態∼
2)IC 近傍の一般道路沿道での整備形態
このタイプは、高速道路敷地外に CNG スタンドを設置するという点では、現在ある CNG ス
タンドと同様であるが、スタンド利用の自動車は高速道路外に出なかったものとして扱われる
というものである。
CNG スタンド利用の自動車をの識別や、スタンド利用車に対する継続利用の扱いなど技術的
課題の解決にあたっては、ETC の活用なども考えられる。
天然ガススタンド
(一般道から利用可)
本線
料金所の出入りがないものと扱う
方法:
1.ETC を利用した、スタンド利用車の特
例扱い。
2.スタンド利用券など発行。
料金所
通常の課金
料金支払あり
一般道
図3− 19
IC におけるスタンド整備形態
261
∼IC 近傍の一般道路沿道での整備形態∼
3)検討対象 SA、IC の選定
① 検討対象地選定の考え方
長距離走行車を主な対象と考え、150∼200km 程度の間隔で高速道路上または IC に整備す
ることを想定する。
・ 東名は上郷(東京から約 300km)に整備済みであるため、100km 間隔または 150km 付近
に整備を検討。
・ 関越道は東京∼新潟が約 300km のため、100km 間隔に整備を検討。
・ 東北道は東京∼仙台が約 400km のため、150km 間隔または 200km 付近に整備を検討。
・ また同時に、首都圏内の中距離運行車(東京∼隣接県)も利用対象と考え、主要幹線道路
沿いへの整備も想定する。
・ 一般道を走行する自動車と、高速道路を利用する自動車双方が利用できるように、高速道
路 IC 付近を中心に検討。
・ 設置場所は、SA および IC の 2 種類とし、スタンドへの燃料供給形態については、導管に
よる天然ガス供給と、タンクローリーによる LNG 輸送の 2 形態を想定する。
対象地選定のフローは以下のようになる。
ケーススタディ候補地
SA
IC
中圧導管の配置
LNG 基地の配置
LNG ローリー輸送
図3− 20
導管輸送
対象地選定のフロー
262
② 選定結果
上記の手順をもとにして、検討対象 SA、IC を以下のとおり選定した。
表3− 18 検討対象 SA、IC
種別
個所
選定の理由
富士川 SA
東京から約 120km
(東名)
SA
IC
供給方式
導管からの距離
導管
50~250m
那須高原 SA
東京から約 150km
(東北道)
東京∼仙台走行の燃料補給
国見 SA
東京から約 300km
(東北道)
東京∼仙台走行の燃料補給
堀之内 PA,IC
東京から約 200km
(関越道)
東京∼新潟走行の燃料補給
所沢 IC
国道との交差部(R463、R254) 導管
(関越道)
東京∼新潟走行の燃料補給
4)CNG スタンド整備コストの試算
コスト試算は以下の手順で行った。
263
LNG 輸送
LNG 輸送
導管
LNG 輸送
10m
420m
570m
LNG ローリー輸送
導管輸送
イニシャルコスト
CNG スタンド建設コスト
パイプライン建設コスト
ランニングコスト
LNG 輸送コスト
原料費(天然ガス/LNG)
人件費・メンテナンス費・電力費等
図3− 21
CNG スタンド整備コスト試算のフロー
① イニシャルコスト
(i)CNG スタンド建設コスト
スタンドの設備は、導管による天然ガス供給のタイプ(CNG スタンド)と、タンクローリ
ーによる LNG 供給のタイプ(L-CNG スタンド)では異なるため、それぞれ試算をした。
(a)CNG スタンド建設コスト
公表資料(環境省「低公害車ガイドブック 2002」)および既存事業者に対するヒアリング調
査をもとに、CNG スタンドに必要な設備とその設置コストの試算を行った。CNG スタンドの
主な設備は、圧縮機、蓄ガス器、ディスペンサーで構成されている。大容量の圧縮機を用いて
蓄ガス器なしで急速充填を行う方式もあるが、一般的な圧縮機能力 250Nm3/h 程度の CNG ス
タンドを想定して、設備コストの試算を行った。必要な設備と概略費用は次のとおり。
公表資料およびヒアリング結果ともに費用に幅はあるが約 1 億円と考え、整備コスト試算で
は建設費を 100,000 千円とする。
264
表3− 19
機器名称
CNG スタンド設置に必要な設備と設置コスト
費用(環境省公表値)[千円]
費用(ヒアリング結果)[千円]
18,000∼26,000
20,000∼25,000
蓄ガス器ユニット
8,000∼15,000
9,000∼13,000
ディスペンサー
7,000∼12,000
6,000∼11,000
制御装置
4,000∼10,000
5,000∼6,000
受電装置
5,000∼10,000
7,000∼8,000
4,000∼9,000
2,000∼3,000
圧縮機ユニット
都市ガス設備
キャノピー
障壁等
3,000∼10,000
1,000∼3,000
5,000∼10,000
その他
機械基礎
構内舗装
5,000∼30,000
30,000∼40,000
90,000∼120,000
90,000∼120,000
据付調整
その他
合計
出典:
「低公害車ガイドブック 2002」環境省、事業者ヒアリング
(b)L-CNG スタンド建設コスト
先にも述べたとおり、SA、IC によっては都市ガスの中圧配管との距離が離れており、パ
イプラインの敷設が現実的でないケースも想定される。この場合は、LNG をタンクローリー
で輸送し、昇圧、気化することによって CNG 自動車に充填する L-CNG スタンドが現実的で
ある。なお、平成 14 年度から L-CNG スタンドも NEDO(新エネルギー・産業技術総合開
発機構)のクリーンエネルギー自動車等導入促進対策補助金の補助対象設備となっている。
L-CNG スタンドは、国内での事例が非常に少なく、また必要な設備等に関する公表された
資料が存在しないため、L-CNG スタンドを実際に運営している事業者、建設を行ったエンジ
ニアリング事業者、CNG スタンド建設および LNG 取り扱いを行っている大手ガス事業者に
対してヒアリングを行い、必要設備およびその設置コストの試算を行った。その結果 1 億
4,240 万円という値になったが、今回は 1 億 4,000 万円とおいて以降の試算を行った。
265
表3− 20
L-CNG スタンド設置に必要な設備と設置コスト
機器名称
費用(ヒアリング結果)[千円]
LNG 貯蔵タンク
15,000
LNG ポンプ
10,000
LNG 気化設備・付臭タンク
21,000
蓄ガス器ユニット
10,000
ディスペンサー
13,000
制御設備
4,600
受電設備
6,000
キャノピー
3,000
障壁等
3,000
その他
機械基礎
56,800
構内舗装
据付調整
その他
142,400
合計
出典:事業者ヒアリング
(ii)パイプライン建設コスト
SA、IC へ天然ガスを導入するためには、既設の中圧導管から分岐導管を新設して CNG ス
タンドに接続する必要がある。敷設にかかるコストは、距離、地形に加えて導管の圧力や管
口径によっても異なるため、対象となる SA、IC ごとに算出した。試算は、地形図によって
距離・敷設工法などの条件を設定し、また想定される需要によって管口径と圧力を設定しワ
ーキンググループにおいて試算を行った。結果は「⑤採算性の検討」で示す。
② ランニングコスト
(i)LNG 輸送コスト
L-CNG スタンドへの天然ガスの供給は、LNG 基地からのタンクローリーによる輸送によ
って行われることになる。定常的に輸送する場合の距離別、ローリー積載量別の輸送コスト
の例を以下に示す。輸送コストは、輸送する距離や頻度によって異なるためケースバイケー
スであり、実際に検討する場合には LNG 供給事業者とよく協議する必要がある。
266
表3− 21
LNG 輸送単価
走行距離
6.2 トン積ローリー
9.6 トン積ローリー
100km
12 円/kg
10 円/kg
150km
14 円/kg
12 円/kg
200km
16 円/kg
14 円/kg
※ 参考:LNG 1kg=約 1.2Nm3
出典:事業者ヒアリング
(ii)原料費、人件費・メンテナンス費・電力費等
CNG スタンドおよび L-CNG スタンドを運営している事業者を対象としたヒアリングを行
い、それぞれのコストに関するデータを収集した。下表に圧縮機能力 250Nm3/h 程度で、年
間販売量 50 万 Nm3 程度の CNG スタンドおよび L-CNG スタンドのランニングコストの試
算結果を示す。
L-CNG スタンドは CNG スタンドと比べ、ユーティリティコストである電力費が大幅に低
い。これは、L-CNG スタンドでは LNG ポンプで昇圧を行うため、コンプレッサーが不要と
なることから、電力料金を 10 分の 1 程度に抑えることができるためである。
また、人件費については、今回の検討では 240 万円/年(アルバイト 1 名常駐:時間単価
1,000 円×8hr×300 日)と仮定した。現時点では、CNG/L-CNG スタンドの利用者がそれほ
ど多くないこともあり、専任の担当者を設置していないケースが多い。このような場合既存
設備(ガソリンスタンドなど)のスタッフが適宜対応しており、年間販売量が 50 万 Nm3 程
度まではアルバイト 1 名で対応可能と考えた。
表3− 22
原料費、人件費・メンテナンス費・電力費
CNG スタンド
L-CNG スタンド
備考
[千円/年]
2,400
2,400
1 名×1,000 円/hr×8hr/日×300 日
メンテナンス[千円/年]
2,900
1,800
事業者ヒアリングより
区分
人件費
電力費
[円/Nm3]
6.3
0.68
事業者ヒアリングより
原料費
[円/Nm3]
63
40∼50
CNG:CNG スタンド実績値 1)
LNG:事業者ヒアリングより 2)
1) 原料費 63 円は利用台数が少ない現在のスタンド実績値である。自動車供給用天然ガス卸価格は使用量によっ
て変化する契約単価であるため、利用台数が増加すれば原料費はこれより少なくなるものと考えられる。
2) LNG 原料費は、ある事業者の例として 40 円/Nm3(気体換算)という実績値が得られたが、この金額は、CNG
自動車以外の天然ガス供給用も含んだ値であり、自動車燃料用のみであればこれより大きくなるものである。
したがって、コスト試算では原料費に幅を持たせ 40∼50 円/Nm3(気体換算単価)とする。
【原料費が変化した場合の採算分岐点】
今回の試算では天然ガス原料費を63円/Nm3に、LNG原料費を40∼50円/Nm3に設定しているが、天然
ガスの場合は需要量が多くなった場合には単価も減少すると考えられ、一方LNGの場合は実際にはよ
り高額となる可能性がある。そこで、以下に示すようなコスト条件での採算分岐点(収支が均衡する1
日あたり充填台数)を参考のため試算した。
267
a) CNG スタンドの場合
条件:スタンド建設費にはパイプライン敷設費用は含まない。
補助金9,000万円が補填されるものとする。
販売価格は78円/Nm3とする。
電力費は販売量に比例する。
63円/Nm3の場合、年間740kNm3の販売量確保が必要で、1日あたり車両台数に換算すると123台とな
る。ところが上記需要量が確保できた場合、より少ない単価での契約が可能となる。単価はガス事業
者ごとに設定されている価格体系にしたがって決定されるため、実際の事業計画にあたっては、各地
域のガス事業者に対して問合せなどをして、価格設定などを行う必要がある。
表3− 23
天然ガス原価と採算分岐点の関係(パイプライン敷設費用は含まず)
採算分岐点
天然ガス原価 販売数量
(円/Nm3) (kNm3/年)
車両台数
(台/日)
50.0
296
49
55.0
385
64
60.0
550
92
63.0
740
123
65.0
960
160
80
70
63円/Nm3
原価 [円/Nm3]
60
50
40
30
20
10
123台/日
0
0
95
195
295
採算分岐台数 [台/日]
395
図3− 22 天然ガス原価と採算分岐台数
b) L-CNG スタンドの場合
条件:補助金9,000万円が補填されるものとする。
販売価格は78円/Nm3とする。
電力費は販売量に比例する。
268
495
表3− 24
LNG 原価と採算分岐点の関係
採算分岐点
輸送距離100km
輸送距離100km
輸送距離100km
LNG原価
販売数量
車両台数
販売数量
車両台数
販売数量
車両台数
(円/Nm3) (kNm3/年) (台/日) (kNm3/年) (台/日) (kNm3/年) (台/日)
40.0
355
59
376
63
400
67
45.0
432
72
466
78
503
84
50.0
556
93
610
102
675
113
55.0
770
128
880
147
1,030
172
60.0
1,280
213
1,600
267
2,170
362
70.0
60.0
原価[円/Nm3]
50.0
40∼50円/Nm3
40.0
輸送距離
30.0
100km
20.0
150km
10.0
113台/日
200km
0.0
0
100
200
59台/日
図3− 23
300
採算分岐台数(台/日)
400
500
600
LNG 原価と採算分岐台数
5)採算性の検討
検討対象 SA、IC 別に採算性を検討した。それぞれ、導管方式は中圧導管から SA、IC まで
の分岐配管敷設コストを、L-CNG 方式は最寄の LNG 基地からの輸送コストを考慮して、採算
性の取れる販売数量、車両台数の試算を行った。LNG 基地は、ローリーへの供給が可能な設備
を持つという基準で選び、実際に CNG 自動車用燃料の供給を行うかについては検証していな
い。なお、堀之内 PA,IC については、設置可能場所を 2 ヶ所想定して試算を行った。
LNG 陸送方式が導管方式比べ、必要車両台数が 1/3 程度となっているが、これは、天然ガス
原価が利用台数に比べ高めに設定されている一方、LNG 原価が低めに設定されているためであ
り、L-CNG 方式が従来の CNG スタンド方式と比べ、経済的に優れているということを必ずし
も示すものではない。
269
表3− 25
採算性の検討(導管方式)
導管方式
富士川 SA
中圧導管との距離 [m]
420
10
800
10,300
24,500
3,900
75,800
100,000
100,000
100,000
120,000
2,284
3,881
1,564
11,903
66,284
78,758
60,047
161,918
[Nm3/年]
880,000
1,060,000
790,000
2,260,000
[台/年]
44,000
53,000
39,500
113,000
147
177
132
378
スタンド建設コスト[千円]
[千円/年]
ランニングコスト 4) [千円/年]
必要販売数量 5)
必要車両台数
6)
所沢 IC1)
50
パイプライン建設コスト 2)[千円]
減価償却費 3)
堀之内 PA,IC
[台/日]
1) 所沢 IC は圧縮機 2 台、人件費 2 名で試算
2) パイプライン建設コストは諸条件から WG で試算
3) 減価償却費は補助金 9,000 万円を考慮し耐用年数をガソリンスタンドと同じ 8 年として試算
4) ランニングコストは、原料費、人件費、メンテナンス費、電力費
5) 天然ガス原価 63 円/Nm3、販売価格 78 円/Nm3 として試算
6) 1 台あたり充填量を 20Nm3 として試算(既存スタンドの実績値より)
表3− 26 採算性の検討(LNG 陸送方式)
LNG 方式
那須高原 SA
スタンド建設コスト [千円]
国見 SA
所沢 IC
140,000
140,000
140,000
5,625
5,625
5,625
20,845∼30,486
18,879∼25,554
18,879∼25,554
[円/回]
99,200
77,400
77,400
[千円/年]
5,248∼6,656
3,456∼4,032
3,456∼4,032
LNG 基地との距離[km]
180(仙台)
50(仙台)
70(根岸)
410,000∼680,000
360,000∼560,000
360,000∼560,000
[台/年]
20,500∼34,000
18,000∼28,000
18,000∼28,000
[台/日]
68∼113
60∼93
60∼93
[千円/年]
減価償却費 1)
ランニングコスト 2) [千円/年]
LNG 輸送コスト
必要販売数量 3)
必要車両台数
4)
[Nm3/年]
1) 減価償却費は補助金 9,000 万円を考慮し耐用年数をガソリンスタンドと同じ 8 年として試算
2) ランニングコストは、輸送費、原料費、人件費、メンテナンス費、電力費
3) LNG 原価 40∼50 円/Nm3、販売価格 78 円/Nm3 として試算
4) 1 台あたり充填量を 20Nm3 として試算
270
6)需要予測
高速道路、一般道路の現在の利用台数と車種構成から、将来天然ガス自動車保有台数が 100
万台を達成したときの需要を概算で検討した。
① 車種別台数
CNG 自動車の現在の車種構成に変化がないと仮定し、保有台数 100 万台に達したときの
車種別台数を試算した。
表3− 27
CNG 車の車種別構成比(現在と目標達成時点)
2002 年
2010 年(目標)
構成比
(台)
(台)
(%)
軽自動車
3,376
203,852
20.4
乗用車
1,043
62,979
6.3
小型バン
2,819
170,219
17.0
トラック
6,697
404,384
40.4
塵芥車
1,433
86,529
8.7
バス
770
46,495
4.6
フォークリフト等
423
25,542
2.6
16,561
1,000,000
合計
(社)日本ガス協会資料をもとに試算
次に現在の自動車保有台数および車種別構成が変化しないとして、上記目標達成時点での
CNG 自動車保有率を計算した。なお、車種区分が異なるため、上記表中の「軽自動車」
「乗
用車」
「小型バン」は「乗用車」に、
「塵芥車」
「フォークリフト等」は「特殊用途車」に区分
した。
表3− 28
CNG 自動車の車種別構成比(現在と目標達成時点)
自動車保有台数 CNG 車(目標) CNG 車率
2001 年(台)
(台)
CNG 車
CNG 車率
2002 年(台) (%)
(%)
17,726,154
404,384
2.3
6,697
0.04
234,244
46,495
19.8
770
0.33
53,487,293
437,051
0.8
7,238
0.01
特殊用途車
1,429,840
112,071
7.8
1,856
0.13
大型特殊車
324,533
−
トラック 1)
バス
乗用車 2)
−
「国土交通白書」平成 15 年および(社)日本ガス協会資料をもとに試算
271
② SA、IC 別需要予測
各 SA、IC および付近の幹線道路の、現在の利用台数から、CNG 自動車 100 万台の目標
を達成した時点での需要を予測した。なお検討対象個所に設定した、SA、IC のうち、富士
川 SA、堀之内 PA/IC、那須高原 SA、国見 SA は、長距離走行時に必ず燃料補給を行う個所
に設定しているため、高速道路走行の CNG 自動車は必ず充填をするとの仮定を置いた。ま
た CNG 自動車で長距離利用をするのは業務用貨物がほとんどであることが予想されること
から、需要予測の対象は上記車種種別でのトラックのみとした。
(i)富士川 SA
表3− 29
項目
単位
富士∼清水走行台数
台/日
トラック混入率
トラック台数
うちCNG車
%
需要予測(富士川 SA)
備考
63,811
34.6
台/日
台/日
高速道路統計月報(平成15年9月分)
22,079
504 トラック台数×CNG車率(2.3%)
(ii)所沢 IC
表3− 30
項目
需要予測(所沢 IC)
単位
備考
IC利用交通
所沢IC利用台数
台/日
IC利用トラック台数
台/日
うちCNG車
台/日
41,650 高速道路統計月報(平成15年9月分)
7,622 トラック混入率(18.3%)
174 CNG車率(2.3%)
高速道路通過交通
練馬∼所沢
台/日
95,375
所沢∼川越
台/日
95,209
高速道路通過交通平均
台/日
53,642
通過トラック台数
台/日
17,438 トラック混入率(18.3%)
うちCNG車
台/日
スタンド利用
台/日
高速道路統計月報(平成15年9月分)
398 CNG車率(2.3%)
99 上りの50%を見込む
一般道利用
国道254号
台/日
49,729 平成11年道路交通センサス
国道利用トラック台数
台/日
22,428 トラック混入率(45.1%)
うちCNG車
台/日
スタンド利用
台/日
スタンド利用CNG車
台/日
338 CNG車率(2.3%)、IC利用は除く
34 通過交通の10%を見込む
307
272
(iii)堀之内 PA/IC
表3− 31 需要予測(堀之内 PA/IC)
項目
単位
備考
IC利用交通
堀之内IC利用台数
台/日
913 高速道路統計月報(平成15年9月分)
IC利用トラック台数
台/日
167 トラック混入率(18.3%)
うちCNG車
台/日
4 CNG車率(2.3%)
高速道路通過交通
小出∼堀之内
台/日
11,893
堀之内∼越後川口
台/日
12,542
平均走行台数
台/日
12,218
通過トラック台数
台/日
うちCNG車
台/日
スタンド利用CNG車
台/日
高速道路統計月報(平成15年9月分)
2,236 トラック混入率18.3%(高速道路統
51 計月報より)
55
(iv)那須高原 SA
表3− 32 需要予測(那須高原 SA)
項目
那須∼白河走行台数
トラック混入率
トラック台数
うちCNG車
単位
台/日
備考
27,531
%
台/日
台/日
25
高速道路統計月報(平成15年9月分)
6,910
158 トラック台数×CNG車率(2.3%)
(v)国見 SA
表3− 33 需要予測(国見 SA)
項目
国見∼白石走行台数
トラック混入率
トラック台数
うちCNG車
単位
台/日
備考
30,513
%
台/日
台/日
25
高速道路統計月報(平成15年9月分)
7,659
175 トラック台数×CNG車率(2.3%)
273
3.SA、IC への CNG スタンド整備における課題
以上 CNG 自動車普及促進のため、CNG スタンドの SA、IC への整備の検討を行った。その際
にはさまざまな仮定を置いた上で検討を行ったが、これを実現にあたっては以下のような課題が
存在する。
(1)CNG 自動車普及に関する課題
1)制度的課題(各種補助制度の継続)
CNG 自動車購入にあたっては、国(経済産業省または国土交通省)から通常車両価格との
差額の 1/2 以内が補助される。この他、地方自治体からの補助や、トラック協会会員の運輸
事業者に対してはトラック協会の補助制度があり、これらにより CNG 自動車導入が促進さ
れている。CNG 自動車は、いまだ普及過程にあり、製造費用も通常車両と比べ高額となるた
め、この制度は今後とも継続していくことが必要である。
表3− 34 主な補助事業
補助事業名
補助対象
内容
クリーンエネルギー自 一般法人、地方公共団体、特定業務 通常車両の価格差の 1/2 以下
動車普及事業(経済産業 を行う団体が所有する自家用車お
省)
よび営業用トラック(個人保有車お
よび営業用バス、営業用タクシーは
対象外)
通常車両の価格差の 1/2 以下
地域新エネルギー導入 地方公共団体
促進事業(経済産業省)
通常車両の価格差の 1/2 以下
大型ディーゼル代替低 地方公共団体
公害車の重点推進事業
費補助(環境省)
車両価格の 1/4 を補助
先駆的低公害車実用評 運輸・運送事業者
価事業(国土交通省)
低公害車導入促進助成 会員(営業用トラックのみ)
車種別の指定額を補助(リース料
金(全日本トラック協
についてはリース料の 1/2 補助)
会)
(社)日本ガス協会をもとに WG で作成
2)技術的課題
現在 CNG 自動車の導入が短距離、フリート走行(特定の地点間の走行)に限定されるの
274
は、CNG 自動車の航続距離の短さが原因である。CNG 自動車普及のためには、長距離走行
が可能な車種の開発が求められている。そのためには、燃料タンクの高圧化・軽量化、燃費
の向上を実現することが必要であり、現在、国・メーカーを中心にして航続距離の向上と大
型化をめざした開発が進められている。
3)燃料供給インフラ整備に関する課題
① 現行制度下における CNG スタンド建設の課題
CNG スタンドの設置にあたっては、経済産業省の「クリーンエネルギー自動車等導入促進
事業」によって、事業用については 1 ヶ所 9,000 万円の補助がなされており、ほとんどの事
業者は、この補助金の範囲内でスタンド建設を行っている。
現在、大都市の一部を除きほとんどのスタンドは採算が取れない状況となっている。した
がってイニシャルコストの削減は、事業者がスタンドを建設する上で欠かせない条件となっ
ている。CNG スタンドの普及のためには、CNG 自動車がある程度普及し、事業者が運営利
益によって建設費を償却できる状況になるまでは、継続していく必要がある。
② 高速道路施設への CNG スタンド設置に向けた課題
(i)IC 併設型 CNG スタンド設置に係る課題
本ワーキングで検討した IC 併設型 CNG スタンドの 2 つのタイプ(IC 敷地内、IC 近傍)
はいずれも、CNG スタンドの利用者は、料金計算をする上で高速外に出なかったものとして
扱われるという前提に立ったものであった。これは、現行では実現されていないことである
が、CNG スタンド普及という観点からは非常に有効であると考え、仮定として置いたもので
ある。
これら 2 つのタイプのうち、IC 敷地内設置型は、CNG スタンドへの誘導路に対する整備
費用等の整備費用負担の問題と、CNG スタンドに対する占用許可がなされるかという問題が
存在する。また IC 近傍型は、課金システムの変更に関する技術的な問題およびシステム変更
に係る費用負担の問題がある。主要な高速道路管理者である道路四公団に対しては、今後道
路施設を活用した関連事業を含む事業採算性が求められる可能性が高いため、本ワーキング
で設定したような IC 併設型 CNG スタンドの前提が実現することは困難であることが予想さ
れる。しかし、CNG 自動車普及による環境負荷低減効果や石油依存低減効果なども考慮に入
れ、国が主導となって IC 併設型の CNG スタンド設置の促進方策を検討することが必要であ
る。
(ii)L-CNG タイプのスタンド設置に係る課題
2004 年(平成 16 年)3 月現在、本ワーキングで想定した昇圧機を必要としない L-CNG ス
タンドは、エコ・ステーション小松(小松市)や、西尾エコ・ステーション(西尾市)など
数ヶ所である。L-CNG タイプは、設置場所近傍に天然ガス中圧導管の配置を必要としないた
め、都市ガス供給エリア外の SA や幹線道沿道にも設置することが可能となり、CNG スタン
ド整備の促進に有効であると考えられる。
275
しかし、現在 L-CNG スタンド建設に対する明確な技術上の指針は存在せず、そのため高
圧ガス保安法等の解釈の相違より、都道府県によって L-CNG スタンドの設置に関する条件
が異なっているのが現状である1。L-CNG スタンドの設置を容易にすることで、従来 CNG
スタンドの空白地帯であった個所にもスタンド建設が促進されることが可能となる。したが
って、既存 L-CNG スタンドの運用状況等も検証しつつ、安全性に十分考慮をした上で、
L-CNG スタンドの安全技術指針を策定することが求められている。
以下に CNG スタンドと L-CNG スタンドに関する代表的な法規制の比較を掲載する。
なお、
CNG スタンドは、一般高圧ガス保安法規則第 7 条 2 項に従い、L-CNG スタンドは、一般高
圧ガス保安法規則第 7 条 1 項に従うものとする。
表3− 35 CNG スタンドと L-CNG スタンドに関する代表的な法規制
規制内容
立地規制
給油取扱所との併設
関連法規
スタンド種別
CNGスタンド
消防法
可
保安物件に対する設備距離
敷地境界に対し6m以上
高保法一般則1) または障壁
火気取り扱い施設に対する隔離距離
高保法一般則
L-CNGスタンド
不可
第1種(学校・病院等)17m
第2種(民家等)11.3m
4m以上または流動防止施設 8m以上または流動防止施設
の設置
の設置
他の高圧ガス設備に対する距離
高保法一般則 5m以上、酸素製造10m以上 5m以上、酸素製造10m以上
建築基準法
用途地域 別の立地の可否
住居専用地域(低層および中高層)
×
×
住居地域
○
×
商業地域(含近隣商業地域)
○
×
準工業地域
○
○
工業地域
○
○
工業専用地域
○
○
市街化調整区域
○
○
無指定
○
○
資格者用件
高保法一般則 特丙3)以上の保安管理者1名 特丙以上の保安管理者1名
2)
製造されたガスをスタンド以外の
目的に使用する場合は確認が必要
法定検査
高保法一般則 高保法一般則似定める法定検査(1/Y)を行う
1) 高保法一般則:高圧ガス保安法省令の「一般高圧ガス保安規則」
2) 用途地域は1992年の都市計画法の改正により12地域となったが、便宜上表中の表現とする。
3) 特丙:高圧ガス製造保安責任者丙種化学特別試験科目
東京ガス(株)資料および「圧縮天然ガススタンド安全技術指針」
(
(社)日本ガス協会)をもとに作成
通常、従来型の CNG スタンドは一般高圧ガス保安規則第 7 条第 2 項に従い、L-CNG スタンドは同
第 7 条第 1 項に従うと解釈されるが、都道府県によってはそれよりも厳しい基準の適用を義務付ける
場合もある。
1
276
4.SA への天然ガスおよび新エネルギー導入可能性の検討
以上まで、CNG 自動車普及促進のため、SA、IC への CNG スタンド設置の検討を行った。そ
こで検討されたスタンド整備形態のうち、L-CNG スタンドは、都市ガス供給エリア外に CNG ス
タンドを整備するために貯蔵される LNG を有効活用することが求められる。そこで、L-CNG ス
タンド設置に伴って貯蔵される LNG を、SA 施設の燃料としての利用や発電としての利用を行う
ことを想定し、その実現性について検討した。
また同時に、SA への太陽光、風力、バイオマスなどの新エネルギー導入の可能性について、需
要量と供給可能量の視点から検討した。
(1)SA のエネルギー需要
ここでは具体的な SA を対象とするのではなく、仮想的に設定するモデル SA に対して検討
を行った。モデル SA の需要量は、上郷 SA での実績データを参考に次の通り設定した。SA 主
要 施 設 の 合 計 エ ネ ル ギ ー 使 用 量 は 、 22,608GJ/ 年 ( 1kWh=0.0036GJ 、 LPG 発 熱 量
1Nm3=93.6MJ)となる。
また、LPG を天然ガスで代替するためには約 2.3 倍の数量が必要となる(LPG 発熱量=
93.6MJ/Nm3:天然ガス発熱量=41.4MJ/Nm3)
。このことから、LPG を天然ガスに変更した場
合の天然ガス使用量は、約 180,000Nm3/年となる。
表3− 36 モデル SA のエネルギー需要量
SA 内施設
規模
レストラン
2 店舗(上下各 1)
駐車場
電力使用量
LPG 使用量
[kWh/年]
[Nm3/年]
3,000,000
80,000
大型 300 台、小型 300 台(上下計)
290,000
−
ガソリンスタンド
2 店舗(上下各 1、24H 営業)
220,000
−
その他(トイレ等)
−
690,000
−
4,200,000
80,000
15,120
7,488
合計
エネルギー換算[GJ/年]
出典:
(財)道路サービス機構資料
(2)LNG 導入に伴う SA の天然ガス導入
モデル SA に L-CNG スタンドを導入する際に必要となる LNG 設備を有効利用し、天然ガス
を中心とした SA 内施設および周辺地域へのエネルギー供給を行うことを想定する。L-CNG ス
タンドは、BOG(Boil Off Gas)の発生があり、一定の需要が必要であることからも他の天然
ガス利用設備の導入は重要となる。
277
CNG スタンド
LNG
気化器
ガス供給
熱供給
電力供給
マイクロガスタービン
図3− 24 LNG による SA 施設へのエネルギー供給のイメージ
既存設備に天然ガスを燃料とする 100kW のマイクロガスタービンを導入するケースについ
て検討した。
表3− 37 マイクロガスタービンの仕様*
項目
仕様
定格出力
[kW]
100
発電効率(LHV)
[%]
30
使用燃料
天然ガス
排ガス温度
[℃]
270
*)市販されているマイクロガスタービンの仕様を元に仮に設定
このマイクロガスタービンの発生エネルギーは、使用する天然ガスの熱量を 9,890kcal/Nm3
(41.1MJ/Nm3)、排熱回収によって総合効率が 70%(低位発熱量(LHV)換算)、設備使用時
間を 15hr/日、稼動率 90%と条件設定した場合2、次の通りとなる。
発電量:100kW×15hr×365日×90%=492,750kWh/年=1,774GJ/年
燃料投入量: 1,774GJ/年÷30%=5,913GJ/年
→ 5,913GJ/年÷41.4MJ/Nm3=142,826Nm3/年=391Nm3/日
熱回収量:5,913GJ/年×(70%−30%)=2,365GJ/年
利用エネルギー量:発電量+熱回収量=1,774GJ/年+2,365GJ/年=4,139GJ/年
(1kWh=0.0036GJ)
総合効率の換算および熱量は低位発熱量(LHV)を用いた。また発電効率 30%は補機動力の電力消
費を含んだものと仮定する。
2
278
表3− 38 マイクロガスタービンによるエネルギー供給量
エネルギー種類
定格出力
年間発電量
熱回収量
利用エネルギー量
[kW]
[kWh/年]
[GJ/年]
[GJ/年]
100
マイクロガスタービン
492,750
2,365
4,139
したがって、このケーススタディの条件下では、モデル SA 全体の電力需要 4,200,000kWh/
年(15,120GJ/年)に対して 11.7%、熱量も含めたエネルギー全体 22,608GJ/年に対しては 18.3%
のエネルギーがマイクロガスタービンによって供給されると試算される。
なお、本ケーススタディでは、マイクロガスタービンの排熱がレストランの給湯などに有効
利用され、総合効率で 70%を実現するという仮定のもとにエネルギー供給率を試算したが、実
際の導入にあたっては、エネルギー利用内訳を詳細に調査することが必要となる。
また、ここでは需要量と供給可能量の視点からのみ記述したが、実際にはエネルギー効率面、
環境面および経済面からの検討が必要である。
(3)SA への新エネルギー導入可能性検討
1)導入が考えられるエネルギー
SA、PA 等への導入が考えられるエネルギーついて次の表にまとめた。
表3− 39 SA、IC へ導入可能なエネルギー①
太陽電池
一般的な設備規模
100
[kW]
(産業用)
設置コスト
[千円/kW]
発電単価
[円/kWh]
風力
小水力
バイオマス
100∼3,000
10∼10,000
1,000∼4,000
1,500
250∼390
73
14∼23
760 ( 一 般 水
力)
−
14(一般水力) −
出典:WG メンバー検討資料および NEDO 資料より
表3− 40 SA、IC へ導入可能なエネルギー②
一般的な設備規模
[kW]
設置コスト
[千円/kW]
発電単価
[円/kWh]
NAS 電池
燃料電池(PAFC)
天然ガスコジェネ
100∼2,000
100∼200
10∼5,000
200∼300
700
200∼400
−
22
10∼30
出典:WG メンバー検討資料および NEDO 資料より
279
2)新エネルギーの導入によるエネルギー供給量
既存の SA へ新エネルギーの導入を導入する場合、ほとんどの場合設置スペース等の問題か
ら大型の設備導入を伴う、風力発電、バイオマス発電等は困難であると考えられる。したがっ
て、太陽光発電、燃料電池に絞って検討を行う。導入する設備の規模は次の表のとおりとする。
表3− 41 モデル SA への新エネルギー導入試算
エネルギー種類
定格出力
年間発電量
熱回収量
利用エネルギー量
[kW]
[kWh/年]
[GJ/年]
[GJ/年]
太陽光発電
100
110,500
−
398
燃料電池*
200
1,576,800
2,838
8,515
合計
300
1,687,300
2,838
8,913
*) 設備利用率 90%、発電効率 40%、総合効率 60%と仮定
表3− 42 モデル SA のエネルギー需要量(再掲)
SA 内施設
規模
レストラン
2 店舗(上下各 1)
駐車場
電力使用量
LPG 使用量
[kWh/年]
[Nm3/年]
3,000,000
80,000
大型 300 台、小型 300 台(上下計)
290,000
−
ガソリンスタンド
2 店舗(上下各 1、24H 営業)
220,000
−
その他(トイレ等)
−
690,000
−
4,200,000
80,000
15,120
7,488
合計
エネルギー換算[GJ/年]
したがって、モデル SA のエネルギー総需要量 22,608GJ/年に対する新エネルギーによる供
給量の比率は
8,913GJ/年÷22,608GJ/年×100=39.4%
と試算される。
これは、駐車場やガソリンスタンドなど、レストランを除く施設のエネルギー需要量に相当
する。ただし、実際のエネルギー需要には季節変動などがあり、またマイクロガスタービンと
同様、本ケーススタディでは燃料電池の排熱をすべてエネルギーとして利用していると仮定し
ているため、一概に新エネルギー導入により SA のエネルギー量の約 4 割が供給できると結論
付けることはできない。
また、ここでも実際にはエネルギー効率面、環境面および経済面などの検討が必要である。
280
太陽光
LNG
燃料電池
図3− 25 新エネルギー導入のイメージ
(4)大規模交流施設を併設した場合の新エネルギー導入可能性検討
上記検討は、既存 SA の形態をベースに検討を行ったが、近年 SA に宿泊施設や娯楽施設な
どを併設し、SA を地域交流拠点として整備するような動きも見られる(ハイウェイオアシスや
高速道路を活用した新事業など)。そこで低環境負荷型の地域交流拠点を SA に併設することを
考え、大規模な新エネルギー導入が可能な付帯施設を想定し、その施設のエネルギー需要を含
めた形での新エネルギー導入の検討を行った。
ここでは、宿泊研修施設併設の農業体験型公園を想定した。公園内にある程度の敷地を確保
することによって、風力発電やバイオマス発電等の規模の大きい設備の導入も可能となると考
えられ、すべての新エネルギーを対象とした。また、新設する公園は、大規模なエネルギーを
消費するアミューズメントパークではなく、家族向けの農業体験型公園とした。基本データは、
既存の公園を参考として次のとおり仮定した。
表3− 43 想定する農業体験型公園の概要*
施設
面積
宿泊研修施設
1,800m2
公園
敷地全体:9,300m2
事務所:2,800m2(レストラン含む)
体験農園:3,300m2
動物の飼育施設:800m2
広場:370m2
等
*) 計画中の農業体験型公園の規模を参考に設定
281
小水力
太陽光
風力発電
宿泊施設
公園
第 2 駐車場
燃料電池
バイオマス発電
図3− 26 農業体験型公園を併設した場合の新エネルギー導入イメージ
SA を含めた総エネルギー使用量を算出すると次の通りとなる。ここで、公園内において宿泊
施設および事務所以外でのエネルギー消費は非常に少ないと見なし、計算からは除外すること
とした。宿泊施設、事務所のエネルギー消費原単位は「ビルのエネルギー管理と省エネ法」
(省
エネルギーセンター)のデータを使用した。
表3− 44 新設設備への新エネルギー導入試算
エネルギー種類
定格出力
年間発電量
熱回収量
発生エネルギー量
[kW]
[kWh/年]
[GJ/年]
[GJ/年]
太陽光+燃料電池
300
1,687,300
2,838
8,913
風力発電*
600
1,400,000
−
5,040
小水力発電**
100
613,200
−
2,208
200
480,000
3,456
5,184
1,200
4,180,500
6,294
21,345
バイオマス発電
(木質ガス化)***
合計
*600kW×1基
**設備利用率を70%と仮定
***発電効率20%、熱利用効率40%、8hr/日で年間300日稼動と仮定
表3− 45 農業体験型公園設置後の SA のエネルギー使用量
SA 内施設
既設 SA 部分
面積
エネルギー原単位
エネルギー消費量
[m2]
[MJ/m2/年]
[GJ/年]
−
−
22,608
宿泊施設
1,800
3,278
5,900
事務所
2,800
2,222
6,222
−
−
34,730
合計
出典:
(財)道路サービス機構資料および「ビルのエネルギー管理と省エネ法」
(省エネルギーセンター)
282
試算の結果、新設施設を含む SA のエネルギー総需要量に対する新エネルギーによる供給量
の比率は、
21,345GJ/年÷34,730GJ/年×100=61.5%
となった。ただし前項までと同様、この結果についても燃料電池、バイオマス発電より発生
する熱の有効利用が前提となっており、十分な熱需要があることが条件となる。
(5)SA の天然ガス導入の意義と新エネルギー導入検討に関する今後の課題
L-CNG タイプのスタンド整備に伴い、LNG を有効活用するためにマイクロガスタービンを
利用したコージェネレーションによる電力、熱エネルギーによる、SA 施設のエネルギー供給を、
ある条件のもとで試算した結果、SA のエネルギー需要に対し 18.3%の供給率となった。また試
算は行わなかったが、LNG を気化する際に発生する冷熱エネルギーの利用も可能である。
また、新エネルギー導入の可能性については、設置場所の関係から標準タイプの SA に導入
が容易な太陽光発電と燃料電池の導入を仮定し、モデル SA 施設に対するエネルギー供給を試
算した。その結果、一定の条件下ではあるが供給率 39.4%と試算され、新エネルギーによりあ
る程度のエネルギー供給の可能性が示された。また、農業体験型公園など低環境負荷型の大規
模交流施設を併設した場合は、風力発電やバイオマス発電など、用地確保が必要となるエネル
ギーの導入が可能となるため、公園のエネルギー需要もあわせて 61.5%の供給率であると試算
された。
ただし、新エネルギー導入の可能性検討を行うためには、季節によるエネルギー需要量の変
動や、施設におけるエネルギー利用目的なども考慮した上で、需要と供給のバランスを検討す
る必要がある。また、風力発電など発電量が安定しない新エネルギーについては、蓄電装置に
ついての検討も必要である。さらにバイオマスの収集可能性や風力発電に適した風況の検討、
小水力が可能である河川の存在など、地理的条件の検討に加え、新エネルギー供給施設建設の
運営費、減価償却費などを考慮に入れた経済性の検討も行わなければならない。今回のケース
スタディにおいては、新エネルギー導入による環境負荷についての検討は行わなかったが、こ
れについてもエネルギー効率など詳細に検討した上で試算する必要がある。
283
第4章 広域的・低環境負荷型の循環物流に資する道路空間の利活用の検討
1.高速道路利用型広域静脈物流のイメージと本年度調査のねらい
(1)昨年度調査
本事業は、地球環境問題に対応して、地球温暖化ガスや大気汚染物質の排出の少ない物流が
求められていること、循環型社会づくりの一環として広域的なリサイクルの必要性が高まって
いること、廃棄物の積み替え・保管に関する適切な用地確保が難しいことなどから、高速道路
を活用した循環型物流システムの構築と、それを支える IC 地区における施設整備を中心に、事
業のあり方を検討した。
(2)高速道路を活用した広域的な静脈物流の意義とイメージ
今日、資源・エネルギー問題の深刻化に伴って、循環型社会の形成の必要性がますます高ま
っている。しかしながら、廃棄物が排出される地域内では必要な設備が不足しているなどの理
由から、十分なリサイクルが難しいものも多くみられる。また、企業の環境分野における新規
事業への展開が活発化し、大規模に廃棄物を収集することを前提としたリサイクル事業も増え
ている。これまで、廃棄物はなるべく排出場所の近傍で処理されることが基本であったが、以
上のような背景のもと、廃棄物はリサイクルのために長距離を運ばれるようになってきた。今
後は高速道路を活用する静脈物流が拡大することが予想される。
こうしたことから、排出場所からリサイクルの場所まで、廃棄物を経済的・物理的に効率よ
く、環境負荷をかけずに輸送することがますます重要となっている。この点で、高速道路と一
体となった地区に廃棄物の収集拠点を設置し、小さく集めて大きく運ぶことによって、大気汚
染物質や地球温暖化ガスの排出その他さまざまな環境負荷の低減につながる、広域的な静脈物
流を構築することができる。
高速道路を活用した広域的な静脈物流の意義を整理すると、次のとおりである。
・ 物流システムの合理化
・ 市街地を通過せずにリサイクル拠点や最終処分地まで直接に搬入
・ 大型トラックの活用による経済性の確保と環境対応の 2 つの側面への対応
284
(点線内 は基本 ビジネ スモデ ルの横 展開と して想 定)
排出
企業
一般道路
循環型物流施設地区
専用出入り口
一般道路
ストックヤード
循環型物流
施設地区
高速道路
地域開放型サービスエリア
廃棄物積卸・中継ステ
ーション
インターチェンジ
(既存出入り口)
専用ロングランプウェイ
リサイクル施設
保管施設
最終処分施
循環型物流施設地区
自治体
設
積出し港湾施設
焼却施設
排出
企業
図3− 27 IC 地区における静脈物流施設のイメージ
リサイクル工場
廃棄物の収集エリア
や処分場
配送
大型トラックに
IC
よる広域輸送
直接搬入
IC
集荷
リサイクル工場
積換・保管
積換・保管
貨物駅
港湾
鉄道・船舶による
広域輸送
図3− 28 高速道路を活用した広域的静脈物流の基本モデル
285
や処分場
参考:貨物鉄道も、貨物駅において廃棄物取り扱いの許可を得て、廃棄物輸送を推進してい
る。貨物駅を廃棄物の集荷拠点(積み換え・保管)とし、中長距離を列車で運び、リサイ
クル拠点や処分地に近い貨物駅で再び積み換え・保管を行い、配送する方式。
・ 廃棄物学会では、こうした鉄道利用型の静脈物流に関する研究を進めた経緯がある。
・ 高速道路利用の場合も、IC 地区など道路と一体となった地区に鉄道貨物駅と同じ積換え・
保管機能をもたせ、長距離を運ぶことが考えられる。また、トラックだけでなく、鉄道と
の組み合わせも考えられる。
(3)本年度調査のねらい
本年度は、高速道路の活用に関する静脈物流の実態や自治体・運送事業者の見解を把握する。
また、IC 地区における静脈物流施設の整備とそれによる高速道路活用型広域輸送による効果を
試算し、その意義や必要性を確認する。その上で、事例調査なども含めて、道路空間を活用し
た静脈物流事業のあり方を示す。最後に以上の結果をふまえ、事業の具体化のために必要な制
度改革などについて提言する。
(4)検討対象とする廃棄物や施設等について
1)対象廃棄物
本調査では、次の廃棄物を対象として、高速道路による広域的な静脈物流のあり方と、IC 地
区を活用した施設整備のあり方について調査・検討を行う。
案 1:一般廃棄物の焼却灰
案 2:容器包装リサイクル法の廃プラスチック
<理由>
・ 焼却灰や容器包装リサイクル法対象の廃プラスチックは、はセメント工場や製鉄所でのリ
サイクル利用などのために、かなり広域輸送がなされている。
・ こうした動きは、自治体による廃棄物処理の広域化、容器包装リサイクル法への対応自治
体の拡大などによって、今後拡大する。
・ 産業廃棄物は範囲が広く、実態把握が難しい。
・ リサイクル法対象品目のうち、廃家電は物流システムがほぼ固まっている。
2)検討対象とする「静脈物流」施設の種類・内容
積み換え・保管のための施設を中心に考える。
<理由>
・ 中間処理施設については、用地面積の不足、許可の取得や事業化の困難性などが想定され、
実現性が薄い。
286
3)設置場所となる「道路(一体型)区域」のイメージ
次に掲げる場所を想定する。
案 1:高速道路の IC 用地
案 2:高速道路の IC と直接アクセスできる道路管理者所有地
案 3:道路一体整備事業などが可能な対象地(公有地、民地など)
4)施設の整備・運営に関するビジネスモデル
タイプ 1:道路管理者が事業者に土地を貸与し、事業者(物流事業者、収集運搬事業者など)
が施設を整備し、運営する。(占用許可)
タイプ 2:道路管理者が所有地に施設を整備し、事業者に運営を委託する。(公設民営)
タイプ 3:公的事業として位置づけられた廃棄物関連事業を民間に任せる。
(目的会社が施設
整備と事業運営を行う PFI 的事業)
(5)本調査の進め方
1)アンケート調査
静脈物流のための高速道路活用の実態、可能性及び課題について、自治体と民間の運送事業
者を対象に、次のような項目についてアンケートを実施した。
・ 廃棄物(焼却廃、廃プラスチックなど)の輸送先と輸送手段
・ 廃棄物の輸送に関する問題点・課題
・ 高速道路 IC 地区における用地活用としての静脈物流への期待
・ 高速道路 IC 近傍の工業団地やロジスティクス用地の静脈物流施設としての可能性
2)ヒアリング調査
静脈物流のための高速道路を活用したり、IC 地区を廃棄物の物流やリサイクルに活用してい
る事例について、自治体、運送事業者、及び高速道路管理者に対するヒアリングを実施した。
287
2.高速道路活用型広域的・低環境負荷循環物流の環境効果
ここでは、高速道路の IC に一体となった静脈物流施設(積換え保管施設)が整備された場合を
想定し、二次輸送に高速道路を活用して輸送する場合と、一般道路を活用して輸送する場合の環
境負荷の違いを試算した。
(1)モデルのイメージ
指定保管
場所 A
一般道路を活用したトラック輸送
(4 トン車で輸送)
リサイク
ル工場
指定保管
場所 B
集積
拠点
IC
IC
(製鐵所
など)
集荷
高速道路を活用したトラック輸送
指定保管
(25 トン車による二次輸送)
場所 C
4 トン車で輸送
図3− 29 高速道路活用型循環物流モデルのイメージ
(2)具体的な想定
ここでは、埼玉県の複数の自治体が分別収集し、指定引取場所に保管している容器包装リサ
イクル法による廃プラスチックを 2 通りで運ぶ場合を想定する。
ケース A:各指定引取場所から最寄の IC 直結型積換え保管施設(自治体の共同利用施設)
に 4 トン車で集め、圧縮などによってかさ密度を高め、25 トン車で仕向け地の
リサイクル工場(ここでは製鐵所の高炉吹き込みを想定)に運ぶ。
ケース B:各指定引取場所から 4 トン車で個別に製鐵所の高炉吹き込みを想定に運ぶ。
想定事例としては、次の 2 つを想定。
想定 1:埼玉県北部の 5 市町 5 箇所の指定引取場所から川崎市の製鉄所に運ぶ。高速を使
うケース A では、鶴ヶ島 IC で積換え、首都高速東扇島北ランプでおり、工場に
運び込む。
想定 2:埼玉県中部の 6 市町 7 箇所の指定引取場所から千葉県君津の製鉄所に運ぶ。高速
を使うケース A では、岩槻 IC で積換え、木更津南 IC でおり、工場に運ぶ。
288
それぞれの場合における廃プラスチックの年間発生量と、それを運搬するための距離は次の
とおりである。
表3− 46 埼玉県北部の自治体から川崎に運ぶ場合の走行距離
ケースA
保管施設名称
住所
株式会社ウィズウェイスト
ジャパン清久リサイクルセン 久喜市清久町6−4
坂戸市東清掃センター
坂戸市大字赤尾2292番地
伊奈町クリーンセンター
北足立郡伊奈町小針内宿2005番
川島町環境センター
比企郡川島町大字曲師370
川角リサイクルプラザ
入間郡毛呂山町大字川角1959−
ケースB
発地側
高速道路
一般道路
53.6
27.4
31.9
42.1
30.0
47.6
10.5
6.9
29.5
12.9
54.1
24.8
25.6
42.1
22.6
49.9
14.6
12.0
34.5
10.4
46.0
11.8
8.2
27.5
18.3
126.6
96.2
86.4
113.4
77.9
126.6
96.2
86.4
113.4
77.9
126.6
96.2
86.4
113.4
77.9
126.6
96.2
86.4
113.4
77.9
126.6
96.2
86.4
113.4
77.9
利用IC
(発地側)
本庄児玉
東松山
鶴ヶ島
花園
川越
本庄児玉
東松山
鶴ヶ島
花園
川越
本庄児玉
東松山
鶴ヶ島
花園
川越
本庄児玉
東松山
鶴ヶ島
花園
川越
本庄児玉
東松山
鶴ヶ島
花園
川越
利用IC
(着地側)
仕向地側
一般道路 一般道路のみの距離
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
東扇島北
5.2
81.1
5.2
76.3
5.2
74.6
5.2
71.8
5.2
81.0
表3− 47 埼玉県中央部の自治体から君津に運ぶ場合の走行距離
ケースB
ケースA
保管施設名
朝日環境センター
住所
川口市朝日4町目21番33号
株式会社ウィズウェイスジャ 久喜市清久町6-4
パン清久リサイクルセンター
和光市リサイクル保管所
和光市大字新倉2595番地3
さいたま市東部リサイクル
センター
さいたま市見沼区膝子626-1
有限会社太盛リサイクル
センター
さいたま市浦和区大原5-12-1
富士見環境センター
富士見市大字勝瀬480
蕨戸田衛生センターリサイク 戸田市美女木978番地
ルプラザ
発地側
高速道路
一般道路
18.6
11.2
33.3
21.7
26.9
4.7
25.4
16.9
38.9
2.2
10.3
19.1
8.1
10.1
23.9
17.7
30.7
33
20
12.3
33.8
119.4
116.4
137.9
119.4
116.4
137.9
119.4
116.4
137.9
119.4
116.4
137.9
119.4
116.4
137.9
119.4
116.4
137.9
119.4
116.4
137.9
利用IC
(発地側)
岩槻
浦和
久喜
岩槻
浦和
久喜
岩槻
浦和
久喜
岩槻
浦和
久喜
岩槻
浦和
久喜
岩槻
浦和
久喜
岩槻
浦和
久喜
利用IC
(着地側)
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
木更津南
仕向地側
一般道路 一般道路のみの距離
7.1㎞
108.8㎞
7.1㎞
143.3㎞
7.1㎞
112.8㎞
7.1㎞
122.6㎞
7.1㎞
130.5㎞
7.1㎞
135.1㎞
7.1㎞
116.8㎞
トラックの燃費については、廃棄物収集運搬業者からのヒアリングをもとに設定した。
289
(3)試算結果
1)埼玉県北部の自治体から川崎に運ぶ場合
ケース A の場合の二酸化炭素発生量は、年間 65 トン。ケース B の場合は 124 トンで、IC 直
結型物流施設で大型車に積換え、高速道を活用して運ぶことによって、年間約 60 トンの二酸化
炭素が排出抑制される。
表3− 48 二酸化炭素発生量の比較(埼玉∼川崎)
前提条件1:25t車の積載量は14tとし、これは比重1.0の廃プラを14t積載できる容量とする。
前提条件2:25t車に積載できる減容後の廃プラ量を基準として、4t車の台数を算出し、小数点以下の台数は繰上げる。
前提条件3:廃プラの比重は減容前0.2∼0.25、減容後0.6∼0.7(ワーキング資料より)を基準とする。
前提条件4:25t車の減容後廃プラ実質積載量を基準とするため、減容後の比重を入力する。
前提条件5:4t車の比重も目安として入力し、25t車の減容後廃プラ実質積載量を基準に必要台数と実質比重を算出する。
入力条件
比重
基準値
実質値
25t車
配収先4t車 輸送先4t車
0.6
0.25
0.6
0.6
0.23
0.53
燃費
一般道
高速道
㎞/㍑
㎞/㍑
25t車
4t車
−
4
2
6
25t車 配収先4t車 輸送先4t車
1
9
4
8.4 t
算出台数
1ユニット量
埼玉−川崎
ICの選択
ケースA距離
3 ←(1.本庄児玉、2.東松山、3.鶴ヶ島、4.花園、5.川越)
㎞
㎞
㎞
㎞
ICへの距離 距離差
IC間距離
輸送先距離
株式会社ウィズウェイストジャパン清久リサイクルセンター
31.9
4.5
86.4
5.2
坂戸市東清掃センター
6.9
0
86.4
5.2
伊奈町クリーンセンター
25.6
3
86.4
5.2
川島町環境センター
12
1.6
86.4
5.2
川角リサイクルプラザ
8.2
0
86.4
5.2
輸送総距離 ㎞
株式会社ウィズウェイストジャパン清久リサイクルセンター
81.1
坂戸市東清掃センター
76.3
伊奈町クリーンセンター
74.6
川島町環境センター
71.8
川角リサイクルプラザ
81
㎏
㎏/㍑
㍑
㍑
㍑
1ユニット燃料消費及び二酸化炭素排出量
CO2発生量 原単位
総燃料消費量 25t車燃料 4t車燃料
ケースA
株式会社ウィズウェイストジャパン清久リサイクルセンター
310.87
2.644
117.58
45.80
71.78
坂戸市東清掃センター
162.14
2.644
61.33
45.80
15.53
伊奈町クリーンセンター
273.39
2.644
103.40
45.80
57.60
川島町環境センター
192.48
2.644
72.80
45.80
27.00
川角リサイクルプラザ
169.88
2.644
64.25
45.80
18.45
㎏
㎏/㍑
㍑
CO2発生量 原単位
燃料消費
ケースB
株式会社ウィズウェイストジャパン清久リサイクルセンター
482.46
2.64
182.48
坂戸市東清掃センター
453.91
2.64
171.68
伊奈町クリーンセンター
443.80
2.64
167.85
川島町環境センター
427.14
2.64
161.55
川角リサイクルプラザ
481.87
2.64
182.25
ケースB距離
㎏
年間発生量
CO2発生量 ユニット数
ケースA発生量 株式会社ウィズウェイストジャパン清久リサイクルセンター 36,682.46
118
坂戸市東清掃センター
972.86
6
伊奈町クリーンセンター
10,115.42
37
川島町環境センター
2,694.76
14
川角リサイクルプラザ
14,779.30
87
年間合計
65,244.80
CO2発生量 ユニット数
ケースB発生量株式会社ウィズウェイストジャパン清久リサイクルセンター 56930.7402
118
坂戸市東清掃センター
2723.4522
6
伊奈町クリーンセンター
16420.4298
37
川島町環境センター
5979.9348
14
川角リサイクルプラザ
41922.603
87
年間合計
123,977.16
年間削減量 ケースAとケースBとの比較
58,732.36 ㎏
290
2)埼玉県中央部の自治体から君津に運ぶ場合
ケース A の場合の二酸化炭素発生量は、年間 271 トン。ケース B の場合は 701 トンで、IC
直結型物流施設で大型車に積換え、高速道を活用して運ぶことによって、年間約 430 トンの二
酸化炭素が排出抑制される。
表3− 49 二酸化炭素発生量の比較(埼玉∼千葉)
前提条件1:25t車の積載量は14tとし、これは比重1.0の廃プラを14t積載できる容量とする。
前提条件2:25t車に積載できる減容後の廃プラ量を基準として、4t車の台数を算出し、小数点以下の台数は繰上げる。
前提条件3:廃プラの比重は減容前0.2∼0.25、減容後0.6∼0.7(ワーキング資料より)を基準とする。
前提条件4:25t車の減容後廃プラ実質積載量を基準とするため、減容後の比重を入力する。
前提条件5:4t車の比重も目安として入力し、25t車の減容後廃プラ実質積載量を基準に必要台数と実質比重を算出する
入力条件
比重
基準値
実質値
25t車
配収先4t車 輸送先4t車
0.6
0.25
0.6
0.6
0.23
0.53
25t車
算出台数
1ユニット量
埼玉−千葉
配収先4t車
1
8.4
9
燃費
一般道
高速道
㎞/㍑
㎞/㍑
25t車
4t車
−
4
2
6
輸送先4t車
4
ICの選択
1 ←(1.岩槻、2.浦和、3.久喜)
㎞
㎞
㎞
㎞
ICへの距離 距離差 IC間距離
輸送先距離
ケースA距離 朝日環境センター
18.6
7.4
119.4
7.1
21.7
0
119.4
7.1
株式会社ウィズウェイ
和光市リサイクル保
25.4
8.5
119.4
7.1
2.2
0
119.4
7.1
さいたま市東部リサイ
8.1
0
119.4
7.1
有限会社太盛リサイ
17.7
0
119.4
7.1
富士見環境センター
蕨戸田衛生センター
20
7.7
119.4
7.1
輸送総距離 ㎞
ケースB距離 朝日環境センター
108.8
株式会社ウィズウェイ
143.3
和光市リサイクル保
112.8
122.6
さいたま市東部リサイ
130.5
有限会社太盛リサイ
135.1
富士見環境センター
蕨戸田衛生センター
116.8
㎏ ㎏/㍑
㍑
㍑
㍑
CO2発生量 原単位 総燃料消費量 25t車燃料 4t車燃料
1ユニット燃料消費及び二酸化炭素排
ケースA
朝日環境センター
277.88
2.644
105.10
63.25
41.85
296.33
2.644
112.08
63.25
48.83
株式会社ウィズウェイ
和光市リサイクル保
318.34
2.644
120.40
63.25
57.15
180.32
2.644
68.20
63.25
4.95
さいたま市東部リサイ
215.42
2.644
81.48
63.25
18.23
有限会社太盛リサイ
272.53
2.644
103.08
63.25
39.83
富士見環境センター
蕨戸田衛生センター
286.21
2.644
108.25
63.25
45.00
ケースB
㎏ ㎏/㍑
㍑
CO2発生量 原単位 従前燃料消費
朝日環境センター
647.25
2.644
244.80
852.49
2.644
322.43
株式会社ウィズウェイ
和光市リサイクル保
671.05
2.644
253.80
729.35
2.644
275.85
さいたま市東部リサイ
776.34
2.644
293.63
有限会社太盛リサイ
803.71
2.644
303.98
富士見環境センター
蕨戸田衛生センター
694.84
2.644
262.80
年間発生量
CO2発生量 ユニット数
ケースA発生量朝日環境センター
121,157.60
436
34,966.50
118
株式会社ウィズウェイ
和光市リサイクル保
14,006.85
44
3,245.77
18
さいたま市東部リサイ
9,478.48
44
有限会社太盛リサイ
49,600.51
182
富士見環境センター
蕨戸田衛生センター
39,211.18
137
年間合計
271,666.90
CO2発生量 ユニット数
ケースB発生量朝日環境センター
282,201.52
436
118
株式会社ウィズウェイ 100,594.02
和光市リサイクル保
29,526.08
44
さいたま市東部リサイ
13,128.25
18
34,159.16
44
有限会社太盛リサイ
146,275.20
182
富士見環境センター
95,193.52
137
蕨戸田衛生センター
年間合計
701,077.75
291
参考: 関東甲信越における高速道路 IC のある自治体とそこにおける廃棄物の発生・排出量
(焼却灰と廃プラスチックに関する静脈物流の発生量)をみると、次の表のとおりで
ある。また、この他にも、IC 立地自治体の近隣自治体においても相当量の焼却灰や廃
プラスチックが排出されている。こうしたことから、高速道路活用型の静脈物流のケ
ースとしては、上述のシミュレーションの事例だけでなく、さまざま可能性があると
考えられる。
表3− 50 高速道路 IC の存在する自治体の廃棄物発生量(関東甲信越)
ごみ処理施設 粗大ごみ処理施設
道路名 IC名
東名高速 東京
東名川崎
横浜青葉
横浜町田
厚木
秦野中井
大井松田
御殿場
裾野
沼津
富士
清水
静岡
焼津
吉田
菊川
掛川
袋井
磐田
浜松
浜松西
三ケ日
中央道 高井戸
調布
稲城
国立府中
八王子
相模湖東
相模湖
上野原
大月
都留
河口湖
勝沼
一宮御坂
甲府南
甲府昭和
韮崎
須玉
長坂
小淵沢
諏訪南
諏訪
伊北
伊那
駒ケ岳
松川
飯田
園原
関越道 練馬
所沢
川越
鶴ヶ島
東松山
花園
本庄児玉
高崎
前橋
渋川伊香保
赤城
昭和
沼田
月夜野
水上
自治体名
世田谷区
川崎市
横浜市
横浜市
厚木市
秦野市
大井町
御殿場市
裾野市
沼津市
富士市
静岡市
静岡市
焼津市
吉田町
菊川町
掛川市
袋井市
磐田市
浜松市
浜松市
三ケ日町
杉並区
調布市
府中市
国立市
八王子市
相模湖町
藤野町
上野原町
大月市
都留市
河口湖町
勝沼町
一宮町
中道町
昭和町
韮崎市
須玉町
長坂町
小淵沢町
富士見町
原村
箕輪町
南箕輪村
駒ケ根市
松川町
飯田市
阿智村
練馬区
所沢市
川越市
鶴ヶ島市
東松山市
花園町
本庄市
高崎市
高崎市
渋川市
昭和村
昭和村
沼田市
月夜野町
水上町
県
東京都
神奈川県
神奈川県
神奈川県
神奈川県
神奈川県
神奈川県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
静岡県
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
神奈川県
神奈川県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
山梨県
長野県
長野県
長野県
長野県
長野県
長野県
長野県
長野県
東京都
埼玉県
埼玉県
埼玉県
埼玉県
埼玉県
埼玉県
群馬県
群馬県
群馬県
群馬県
群馬県
群馬県
群馬県
群馬県
市役所住所
単位:t/日
東京都世田谷区世田谷4―21―27
1500
神奈川県川崎市川崎区宮本町1
2550
神奈川県横浜市中区港町1−1
7740
神奈川県横浜市中区港町1−1
7740
神奈川県厚木市中町3−17−17
327
神奈川県秦野市桜町1−3−2
神奈川県足柄上郡大井町金子1995
20.5
静岡県御殿場市萩原483
静岡県裾野市佐野1059
62
静岡県沼津市御幸町16−1
300
静岡県富士市永田町1−100
300
静岡県静岡市追手町5−1
1000
静岡県静岡市追手町5−1
1000
静岡県焼津市本町2−16−32
40
静岡県榛原郡吉田町住吉87
静岡県小笠郡菊川町堀之内61
静岡県掛川市長谷701−1
80
静岡県袋井市新屋1−1−1
96
静岡県磐田市国府台3−1
180
静岡県浜松市元城町103−2
810
静岡県浜松市元城町103−2
810
静岡県引佐郡三ケ日町三ケ日500−1
20
東京都杉並区阿佐谷南1―15―1
900
東京都調布市小島町2―35―1
510
東京都府中市宮西町2―24
東京都国立市富士見台2−47−1
東京都八王子市元本郷町3−24―1
700
神奈川県津久井郡相模湖町与瀬896
神奈川県津久井郡藤野町小渕2000
山梨県北都留郡上野原町上野原3758
40
山梨県大月市大月2―6―20
山梨県都留市上谷1−1−1
山梨県南都留郡河口湖町船津890
40
山梨県東山梨郡勝沼町勝沼756―1
山梨県東八代郡一宮町末木807−6
山梨県東八代郡中道町下向山1523
山梨県中巨摩郡昭和町押越542―2
山梨県韮崎市水神1−3−1
50
山梨県北巨摩郡須玉町若神子2155
山梨県北巨摩郡長坂町長坂上条2575―1山梨県北巨摩郡小淵沢町835
長野県諏訪郡富士見町落合10777
長野県諏訪郡原村6549−1
長野県上伊那郡箕輪町大字中箕輪10298長野県上伊那郡南箕輪村4825−1
長野県駒ケ根市赤須町20−1
50
長野県下伊那郡松川町元大島3823
長野県飯田市大久保町2534
120
長野県下伊那郡阿智村大字駒場483
東京都練馬区豊玉北6―12―1
900
埼玉県所沢市並木1−1−1
278
埼玉県川越市元町1−3−1
440
埼玉県鶴ヶ島市大字三ツ木16−1
180
埼玉県東松山市松葉町1−1−58
120
埼玉県大里郡花園町大字小前田2345
埼玉県本庄市本庄3−5−3
228
群馬県高崎市高松町1―1
群馬県高崎市高松町1―1
群馬県渋川市石原80
155
群馬県利根郡昭和村大字糸井388
群馬県利根郡昭和村大字糸井388
群馬県沼田市西倉内町780
120
群馬県利根郡月夜野町大字後閑318
群馬県利根郡水上町大字湯原64
-
292
単位:t/5h
100
628
628
50
15
50
200
200
50
45
320
320
113.5
50
30
180
30
5
30
10
40
50
50
68
40
-
廃プラスチック指定
引き取り場所
単位:t(年間)
1771
1771
1717
345
96
6000
1203
794
657
705
5673
5673
236
7000
4350
38
3
15
131
1803
46
4195
890
-
表3− 51 高速道路 IC の存在する自治体の廃棄物発生量(関東甲信越):続き
ごみ処理施設 粗大ごみ処理施設
道路名
東北道
常磐道
東関道
IC名
浦和
岩槻
久喜
加須
羽生
館林
佐野藤岡
栃木
鹿沼
宇都宮
矢板
西那須野塩原
那須
三郷
流山
柏
谷和原
谷田部
桜土浦
土浦北
千代田石岡
岩間
水戸
那珂
日立南太田
日立中央
日立北
高萩
北茨城
千葉北
四街道
佐倉
富里
成田
新空港
大栄
佐原香取
潮来
自治体名 県
さいたま市埼玉県
岩槻市
埼玉県
久喜市
埼玉県
加須市
埼玉県
羽生市
埼玉県
館林市
群馬県
佐野市
栃木県
栃木市
栃木県
鹿沼市
栃木県
宇都宮市 栃木県
矢板市
栃木県
栃木県
西那須野町
那須町
栃木県
三郷市
埼玉県
流山市
千葉県
柏市
千葉県
谷和原村 茨城県
つくば市 茨城県
つくば市 茨城県
土浦市
茨城県
千代田町 茨城県
岩間町
茨城県
水戸市
茨城県
那珂町
茨城県
日立市
茨城県
日立市
茨城県
日立市
茨城県
高萩市
茨城県
北茨城市 茨城県
稲毛区
千葉県
四街道市 千葉県
佐倉市
千葉県
富里市
千葉県
成田市
千葉県
成田市
千葉県
大栄町
千葉県
佐原市
千葉県
潮来町
茨城県
市役所住所
埼玉県さいたま市浦和区常盤6−4−4
埼玉県岩槻市本町6−1−1
埼玉県久喜市大字下早見85−3
埼玉県加須市大字下三俣290
埼玉県羽生市東6−15
群馬県館林市城町1―1
栃木県佐野市高砂町3061
栃木県栃木市入舟町7―26
栃木県鹿沼市今宮町1688―1
栃木県宇都宮市旭1−1−5
栃木県矢板市本町5―4
栃木県那須郡西那須野町あたご町2−3
栃木県那須郡那須町大字寺子丙3―13
埼玉県三郷市花和田648−1
千葉県流山市平和台1―1―1
千葉県柏市柏5―10―1
茨城県敷波郡谷和原村大字加藤237
茨城県つくば市大字谷田部4741
茨城県つくば市大字谷田部4741
茨城県土浦市下高津1−20−35
茨城県新治郡千代田町大字上土田461
茨城県西茨城郡岩間町大字下郷5140
茨城県水戸市中央1−4−1
茨城県那珂郡那珂町大字福田1819−5
茨城県日立市助川町1−1−1
茨城県日立市助川町1−1−1
茨城県日立市助川町1−1−1
茨城県高萩市本町1−100
茨城県北茨城市磯原町磯原1630
千葉県千葉市稲毛区穴川4−12−1
千葉県四街道市鹿渡無番地
千葉県佐倉市海隣寺町97
千葉県印旛郡富里市七栄652―1
千葉県成田市花崎町760
千葉県成田市花崎町760
千葉県香取郡大栄町松子366
千葉県佐原市佐原ロ2127
茨城県行方郡潮来市大字辻626
293
単位:t/日
1440
130
80
100
120
160
177
1030
110
80
140
300
375
375
330
120
390
300
300
300
65
60
1875
110
50
144
144
135
46
単位:t/5h
250
30
26
30
30
30
10
50
50
50
70
50
90
90
90
125
15
54
54
35
15
廃プラスチック指定
引き取り場所
単位:t(年間)
514
700
3193
24
26
400
2946
214
752
-
3.自治体・民間事業者アンケート結果
(1)自治体向けアンケート調査結果概要
自治体向けアンケートは、首都圏・関東甲信越の高速道路 IC を有する自治体 92 団体を対象
として実施した。回答は 31 団体であった。
その結果をまとめると、次のとおりである。
〇自治体は、一般廃棄物の処理・リサイクルをするために、広域輸送をしていることが多い。
その代表例として、プラスチック製容器包装、廃乾電池、廃蛍光管、煤塵、焼却灰などがあ
る。その他、不燃残渣や下水処理施設の脱水汚泥、ガラス瓶などもあげられている。
〇高速道路に係わる広域運搬・処理をしている廃棄物としては、水上町(群馬県)で、関越自
動車道谷川岳 PA 内において RDF を利用したボイラー施設から排出ばいじん(冬期間におけ
る路面の融雪施設、排出事業者は日本道路公団湯沢管理事務所)を広域輸送している例があ
った。また、高速道路の SA で処理している例として、御殿場市(静岡県)において、焼却
灰・ばいじんを日本道路公団の足柄 SA 内で業者が直接運搬、処理をしているという事例が
あった。
〇廃棄物の運搬先としては、廃乾電池などは北海道、プラスチック製容器包装については千葉
県君津市や神奈川県川崎市のリサイクル業者(製鉄会社と考えられる)があげられている。
遠方では、ペットボトルを山口県の宇部市や徳山市のリサイクル業者に運んでいる例もあっ
た。
〇運搬にかかわる問題点・課題としては、遠距離になるほど運搬費がかかり、処分料金にはね
かえっていくというコスト面が挙げられている。環境面については、車両運行に伴って発生
する排ガスによる環境への影響や、車両事故等による廃棄物の散乱による環境への影響へど
のように対応するかという点があげられている。環境面については、水上町の廃乾電池・廃
蛍光管の場合、IC に近いストックヤードにて廃棄物を積込み後、水上 IC から関越道、上信
越道を利用し、佐久 IC から一般道にて処理場へ搬入(佐久 IC から約 20 分)しており、輸
送に関しては渋滞がない限り問題ないという事例があった。
〇今後の広域輸送に対する取り組みとしては、特に無いという自治体がほとんどであったが、
水上町からは、近隣市町村との合併が確実となる中で、合併区域に 3 ヶ所の IC が存在するこ
とになる為、今後、合併協議の中で高速道路利用や立地が検討項目となるのではという回答
があった。
〇IC 地区に静脈物流のための施設を整備することについては、メリットがあるとする意見と、
メリットは特に無いという意見が拮抗している。メリットがあるとする回答は、静脈物流シ
ステム構築面で、収集廃棄物の積換・保管場所として合理的であるという意見や、広域輸送
が増えることから、高速道路と一体型の物流が可能な点で合理的であるという意見が多い。
ただし、物流システム面では合理的であると思われるが、IC 周辺の環境問題や、他市町村の
廃棄物が入ってくることに関する地域住民の理解取得などの問題もあげられている。
〇高速道路を活用した広域的な循環型物流の必要性については、必要性があるという回答と、
294
現状では特に必要ないという回答が拮抗している。必要性があるという理由を集約すると、
今後リサイクルの対象物となる廃棄物が拡大し遠方に運ぶものが増えてくることから、高速
道路を使うことが現実的にも効率的手段である、ということである。その他、目的地(処理
施設)までの時間が短縮されて輸送効率が上がる、一般道を走らないので、市民の安全性の
問題が解消される、及び直近の IC を利用することで収集運搬料等の低コスト化が図られる、
などの意見が出された。
〇ストック機能や積替え機能の他に利用したいと思う補助的機能としては、積替作業の効率化
の必要性や運搬量の多さなどを考慮して、圧縮梱包の施設や選別施設の併設があげられてい
る。
〇IC 地区を静脈物流施設に活用することによる問題や課題になりそうな事柄、気がかりな点と
しては、住民の廃棄物や廃棄物処理施設・積み替え保管施設に対する偏見が強いことが多く
あげられている。また、排ガス、騒音など環境問題、交通事故等のおそれもあげられている。
なお、廃棄物処理法の原点である排出事業者責任があいまいになる恐れがあるために、廃棄
物の積替え保管施設の設置は認めていないという自治体(浜松市)もあった。
(2)事業者向けアンケート調査結果
事業者向けアンケートは、大手の収集運搬事業者・処理業者と一般の運送業者(廃棄物運送
も手がけている可能性のある大手)77 社を対象として実施したが、回答は 10 社であった。
その概要は次のとおりである。
〇廃棄物の積み替え保管施設、中間処理施設、最終処分施設を建設する際に最も重視した条件
については、高速道路との近接性をあげた企業はなかった。ただし、高速道路空間(IC 周辺)
を活用できると仮定した場合は、積み替え保管施設の立地場所としてそこには興味があると
する意見が目立っている。
〇廃棄物の広域運送・処理については、回答企業のほとんどが実施している。運んでいるのは、
廃プラスチック、焼却灰が中心で、その他、汚泥、木屑、廃油などがあげられている。どち
らかというと大阪―兵庫、山口県―福岡県などの比較的近隣が多いが、中には関東から秋田
県まで焼却灰を輸送しているという事例もある。
〇広域輸送の際に高速道路を利用しているかどうかという点については、常に利用していると
いう回答と、原則として利用しないという回答が拮抗している。その理由としては、どちら
も輸送コストを節約することがあげられている。
〇高速道路を利用するためには、廃棄物収集運搬車に限った高速料金の夜間割引制度の創設を
希望する声が強い。また、CO2 の削減量に応じた高速利用料金の低減制度もあげた事業者も
ある。
295
4.自治体・民間事業者ヒアリング結果
(1)自治体
1)川崎市
① 大気汚染に対する川崎市の姿勢と静脈物流に関する川崎市の考え方
・ 川崎市は大気汚染に苦しんだ歴史があり、自動車による大気汚染についても、全国でワー
スト 3 にはいる池上新町交差点があり、非常に敏感である。自動車による大気汚染につい
ては、3 年前に国土交通省と和解したところである。
・ そこで、廃棄物の運搬についても、トラック輸送から JR 貨物や船舶にシフトしたいとい
う「静脈物流のモーダルシフト」の考えを持っている。
・ 鉄道については、神奈川臨海鉄道があり、引込み線が工場まで入っている。
・ 船舶輸送については、川崎港の公共埠頭はリサイクルポートに指定されている。
・ また、川崎市は首都高速湾岸線、横羽線があり、高速道路を活用する輸送も、環境負荷軽
減の視点から効果的で重要と考えている。(東名高速は、住宅地を通るのでこれを活用し
た廃棄物輸送は適さない。)
② 川崎市に集中している廃棄物リサイクル事業の状況
・ 川崎市臨海部はエコタウンに指定されており、ゼロエミッション団地がある。また、都市
再生の緊急整備地域としても指定されている。
・ 臨海部のエコタウン計画における事業は民間主導で進められている。代表的なものとして、
JFE(旧日本鋼管)
、昭和電工など、大規模な廃棄物リサイクルを事業化しているところが
ある。また、リサイクルを行うベンチャー的な企業も多く立地している。
・ これらのリサイクル工場には、さまざまな産業廃棄物や、容器包装リサイクル法の対象と
なる廃プラスチックやペットも大量に入ってきている。
・ 今後についても、川崎臨海部に進出したがっている廃棄物処理業者が多いこと、既存工場
が低未利用地の整備を進めたり、有効活用に向け業種転換を図ったりしていることなどか
ら、リサイクル事業の立地が進むことが予想される。
③ 川崎市に集まる廃棄物の輸送ルートの状況と課題
・ 首都高の東扇島ランプ、大師ランプ、浅田ランプ、浮島ランプがあり、これを活用するこ
とによって廃棄物が運ばれる場合もある。例えば、JFE では、10 トン車を使って、首都
高速大師ランプなどでおり、産業道路を経由して廃プラなどを運び込んでいる。
・ リサイクル工場がある臨海部の埋立地は、そこ(工場地帯)を横串に通る道路がない。そ
のため、高速道路を利用して運び込まれる場合でも、必ず産業道路を利用することになり、
交通問題を生じている。
・ 鉄道についても、引込み線の活用ができるところもあるが、基本的には、川崎貨物ターミ
ナルに到着した廃棄物を臨海部のリサイクル工場にトラックで横もち(フィーダー輸送)
することになる。このフィーダー輸送のところでいったん国道(産業道路)を通ることと
なる。
296
・ 船舶輸送についても、リサイクルポートに指定されているが、各拠点との広域ネットワー
クの構築などの課題も残されており、取扱量の拡大にはつながっていない。
④ 高速道路 IC 一体となった物流施設の整備について
・ JFE がある扇島は首都高速湾岸線が通っており、ここにリサイクル拠点を整備することも
考えられる。その場合に、扇島にランプウェーをつくるということはありえる。実際に、
そういう提案はある。
・ 扇島にランプができたとしても、そこから臨海部にある複数のリサイクル拠点に運ぶため
には、道路がない。橋やトンネルが必要である。
⑤ 川崎市から発生する廃棄物について
・ 川崎市からは年間約 500 万トンの産業廃棄物が発生している。川崎市内にはこの発生量を
上回る処理施設能力があるが、実際には多くの産業廃棄物が域外に運び出されている。し
たがって、川崎市は廃棄物の発生側としての立場も色濃く有している。
・ そこで、積み換え保管施設をつくって、臨海部から排出される廃棄物を集め、高速道路を
活用して運ぶということも、環境負荷を低減するために重要なことと考えられる。
・ そのため、首都高速道路ランプウェーと一体となったステーションをつくることによって、
静脈物流に関するコストを合理化することができるとよいとは考える。
・ しかしながら、そこに収集運搬業者が立地するかどうかは不明。製鉄会社、ゼネコンそれ
ぞれ参加の収集運搬業者や処理業者を有しており、こうした既存事業者とのかかわりが難
しい。
⑥ 動脈物流とのかかわりについて
・ 静脈物流のみを考えるのではなく、動脈物流との関連で静脈物流も考える必要がある。
・ JR の川崎貨物ターミナルを例にとると、JFE などはここを利用して廃棄物を運び込んで
いる。しかし、貨物ターミナル全体の取扱量からみると、静脈物流はわずか 1%でしかな
い。
・ こうしたことから、静脈物流のためのインフラ整備も、動脈物流での利用が前提とならね
ばならない。
⑦ その他
・ 川崎臨海部はエコタウン計画対象地であるが、、対象はリサイクル施設に限られており、
静脈物流に係わる積み換え保管施設や圧縮・破砕などを行うような中間処理(前処理)施
設に対する補助金はない。
297
2)水上町(群馬県)
① 高速道路を利用した静脈物流への期待
・ 平成 8 年、JR 貨物が汐留構内で自治体の廃棄物を貨車で運び込み、そこで RDF 化すると
いう話があった。大いに期待していたが、そのまま立ち消えになったようで残念である。
今回のテーマである高速道路を活用した廃棄物リサイクルもいろいろ考えられるので、期
待したい。
② 水上町の廃棄物リサイクルの状況
・ 水上町は、人口 6 千人の町である。廃棄物のリサイクル、処理は、水上町、月夜野町、新
治村の 3 町村で共同して行っている。なお、現在、合併協議会が設立され、合併に向けた
準備が進んでおり、今後は広域的な廃棄物行政の展開が想定される。
・ 現在、水上町では、家庭系、事業系の一般廃棄物は全てリサイクルしている。すなわち、
廃乾電池、廃蛍光管は、町内にあるストックヤードに蓄積し、リサイクル業者にリサイク
ルと処分を委託している。
・ 容器包装リサイクル法の対象であるトレーは、潰してインゴット化し、リサイクルルート
に回している。
・ ペットボトルは奥利根アメニティセンターにおいて容器包装リサイクル法に添って処理
されている。
・ 缶・ビンは、分別の上、容器包装リサイクル法に添って処理されている。
・ 燃やすことのできる一般廃棄物(生ごみ、プラスチック類を含む)は、奥利根アメニティ
パークにて RDF 化し、そこで RDF 発電を行っている。焼却灰は廃溶融をしており、スラ
グは水上町が道路の路盤材などとして利用している。
③ 高速道路利用の実態
・ 廃乾電池(平成 14 年度の収集量 3.2 トン)、廃蛍光管(同 2.8 トン)については、町が
資源ごみとして一週間に 1 回分別収集し、それを町のストックヤードに保管し、年に 1∼2
回、収集運搬業者に引き渡している。
業者は高速道路を活用して水上 IC から佐久 IC 経由、
小諸まで運搬している。
・ ストックヤード(保管場所)は町有地にある倉庫で、水上 IC から 1km 未満のところに位
置している。1 年間でドラム缶(250kg)で廃乾電池 15 本、廃蛍光管 30 本程度がたまる。
なお、月夜野町、新治村も、それぞれ収集し、それぞれの町村で保管している。
298
保管場所
水上
佐久
最終処分地
図3− 30 水上町の廃棄物の保管場所と最終処分地
④ 合併にともなう今後の動きとストックヤードについて
・ 合併すると、1 自治体内に 3 つの IC があることとなる。合併協議会では、これらの廃乾
電池などの集積場所を IC に直結する道路に集約しようという話が出ている。現在、3 町村
の案として、新市の構想の中に盛り込んでもらうように働きかけているところ。
・ 新市の構想では、自然環境を新市の価値として売り出そうとしている。
・ 廃棄物は、これまで地域内でのリサイクルを進める方向できているが、むしろ広域的にリ
サイクル・処理をすることも想定している。いずれにせよ、ストックヤードは新たに作ら
なければならなくなる。
⑤ IC の活用可能性
・ 以上のようなストックヤードの場所としては、上述のように IC に直結した場所が考えら
れるが、水上 IC はもともと広くないスペースのところに、ループ内に既に降雪用の機材
のための倉庫があり、候補にはなりにくい。上り下りの間をつかうこともできるが、大型
トラックが入るとなると狭い。
・ 月夜野の IC は広く、中も空いている。河川敷も広いので、ここはスペース的に見て可能
性がある。
299
・ 一般論としては、IC は地域の顔になるものであり、環境を売りにする地域としては、そこ
にストックヤードをつくるのは難しい面もある。ただ、環境に配慮したものをつくること
によって環境地域としてのイメージをアップすることができる可能性もある。
⑥ 谷川岳 PA における RDF 利用事業
・ 平成 9 年から始まった日本道路公団(高崎道路管理区)の事業として、関越自動車道の花
園 IC から月夜野 IC までの SAPA から排出される廃棄物(生ごみ、紙ごみ、プラスチック
類など)を赤城 IC 内で RDF(Refuse Derived Fuel:ごみ固形燃料)にし、それを水上
町の谷川岳 PA において融雪施設のボイラーに利用している。
・ RDF 製造設備は赤城 IC のループの中に立地している点で、ループ内を活用した廃棄物関
連施設整備の先駆的な事例といえる。
・ 製造された RDF の利用期間は 11 月から 4 月までの 6 ヶ月間にわたる。11 月までは、赤
城の製造施設と谷川岳 PA で貯蔵する。(両者の割合は 7:3)
・ 年間に製造される RDF は 450 トン。ボイラーは流動床式のものであり、ばいじんが年間
60 トンでる。これは水上町と道路公団が委託した収集運搬業者が、高速道路をそのまま使
って、佐久 IC 経由小諸まで運搬している。なお、最大保管量は、赤城、谷川岳合わせて
最大 900 トンという取り決めとなっている。
・ 事業的には基本的にはうまくいっているが、雪が少ない年は 450 トンを使い切れないこと
がある。
・ 当初は、他地域のごみが町に入ってくるということで、町の行政も住民も違和感があった。
水上町が RDF について経験とノウハウを有していたこと、および水上町から出した条件
を認めてもらい、合意した。
・ 本事業の仕組みとしての問題点と工夫は、次の点にある。
○RDF は事業系一般廃棄物であり、本来は各 SAPA がある市町村が自区内で処理するべき
ものである。そこで、本事業の実施については、市町村の越境移動に関する覚書が必要
となる。
○本来は、水上町と、廃棄物を排出する SAPA がある全ての市町村と覚書を交わすことが
必要であるが、この事業の場合は、全て道路区域内で完結するということで、覚書なし
で広域移動を認めた。少なくとも、RDF 製造施設がある赤城村とは覚書を交わすことが
必要であった。
○しかし、谷川岳 SA で燃やすことによって灰がでる。これを小諸までもっていっている
ため、水上町が他市町村の事務を引き受けた形となって、割を食っている状況がある。
⑦ SAPA におけるエネルギー生成と利用について
・ 高速道路は山間部を通過する部分が多く、沿線の自治体は林業の間伐材がでることがある。
水上町は、林業がないので間伐材、未利用残材は出ないが、5 つあるダムに流木がたまる
ので、これをチップ化している(チップとして年間 1,000 ㎥)。これは、SAPA でボイラー
などに利用することが考えられる。
(ただし、1,000 ㎥の木材チップは、乾燥汚泥と合わせ
てスキー場に散布している。これによって、牧草の生育促進や、保雪効果がある。現状で
300
は、チップが不足している状況にある。)
・ 未利用の間伐材をチップ化したものは廃棄物であるが、水上町では、特例として、ダムに
浮いている流木をチップ化したものはチップとみなさない、という条例改正を検討中であ
る。これによって広域移動が可能となり、周辺自治体から出てくるものも利用が容易とな
る。
・ 一般論としては、道路公団が SAPA の廃棄物を利用してもっと積極的に RDF を製造し、
それを SAPA で使うようにすることを期待したい。大規模につくられた RDF は、谷川岳
PA で燃料として利用し、集客施設、交流施設、温水プールなどのスポーツ施設などに利
用したり、RDF 発電を行ったりすることが考えられる。水上町としては、集客、交流など
経済発展に結びつくならば、廃棄物が集まってきても認めることはできるだろう。
・ 但し、RDF の製造と利用が道路区域内で行われる、RDF も道路区域内で全量使われる、
ということが前提となる。
301
(2)民間事業者(廃棄物収集運搬業者)
1)A 社
① 取材事業者(A 社)の概要と活動状況等
◇本社:
兵庫県
◇事業内容
近畿圏を中心に総合的なリサイクル、収集運搬事業、処理事業を行っている。大阪湾で
の廃プラスチックのリサイクル事業、三重県における木質系建設廃材のリサイクル(発
電)などに係っている。
◇保有施設
・ 積換え保管施設
4 箇所(最大施設の保管能力 1,045 ㎥)
・ 中間処理施設
4 箇所(最大施設の処理能力 3,846 ㎥/日)
・ 最終処分施設
2 箇所(最大施設の処分量
1,302,404 ㎥)
◇施設整備に当たっての条件
・ 積換え保管施設
廃棄物排出源に近い
・ 中間処理施設
同上
・ 最終処分施設
幹線道路に近い
◇高速道路空間(IC周辺)を利用した施設として興味があるもの
・ 積換え保管施設
・ 中間処理施設
・ 廃家電の引取場所・集積場所
・ 容器包装リサイクル法の指定保管場所
・ 建設関連廃棄物の中間処理施設
◇廃棄物の広域輸送状況と高速道路の利用状況
・ 都道府県を越えた広域輸送を行っている。
・ そのために、常に高速道路を利用している。
例① 大阪府内から兵庫県の自社最終処分場への運搬
阪和道・岸和田和泉ICから中国道・吉川IC
廃プラスチック類(産廃)を年間約24,000㎡
例②和歌山県内から兵庫県の自社最終処分場への運搬
阪和道・泉南ICから中国道・吉川IC
廃プラスチック類(産廃)を年間約9,000㎡
◇保有物流関連施設と高速道路の関係
・ 積換え保管施設
阪神高速道路 六甲アイランド IC から約 1 ㎞
302
・ 中間処理施設
阪神高速道路 鳴尾浜 IC から約 1 ㎞
・ 最終処分施設
中国高速道路 吉川 IC から約 5 ㎞
◇高速道路・IC地区の活用に関する展望や課題:興味をもつもの
・二酸化炭素の削減量に応じた高速料金の低減制度
・ICの間をつなぐ共同利用の廃棄物コンテナ輸送シャトル便
・廃棄物収集運搬車に限った高速料金の夜間割引制度
② 取材事業者の活動状況
◇高速道路を活用する理由
・ 高速道路の IC から概ね 2km 以内のところに事業所を立地させている。
・ 廃棄物の運搬に高速道路を利用するのは、排出先事業者(家電工場、建設現場など)の稼
働時間(朝 9 時から午後 5 時まで)に、リサイクル先や処分場との間をトラックが何回往
復できるか、ということが運送コスト削減の鍵となっているため。
・ 高速道路による輸送距離は、最大 100∼120km 程度。場合によっては、もっと長距離を運
搬することもある。
◇高速道路・有料道路利用を想定した施設の事例
∼六甲アイランドにおける積換え保管施設)∼
活動内容
A 社では、次のような形で、
「小さく集めて大きく運ぶ」という静脈物流を実現している。
・ 主として神戸市内の収集業者あるいは廃棄物の排出事業者が、4 トントラックなどで
A 社の六甲アイランドの積換え保管施設
(高速道路 IC からおよそ 1km)に運び込み、
ヤードに降ろす。運搬物は様々であるが、中心となるのは産業廃棄物としての廃プラ
スチックおよび混合建設廃棄物。(1 次輸送)
・ A 社は、この積換え施設内で有価物の選別・抜き取りを行う。
(これは、神戸市から認めてもらっている。)
・ 残りについては、輸送効率を高めるため、廃棄物によっては圧縮をかけ、密度を高め
る。これによって、廃プラの場合は、比重を 0.2 ないし 0.25 から 0.6 ないし 0.7 に高
めている。
・ (こうしたことは、積換え・保管に必要な手続きとして神戸市が認めている。すなわ
ち、積保の許可でこうしたことができる。ただし、自治体の中には、破砕・圧縮は性
状の変化を伴うことから「中間処理」として位置付けるところも多い。)
・ これを 10 トンコンテナ車ないし特性の 25 トン車に積み、北六甲有料道路などを利用
して、自社の最終処分施設に運搬する。(2 次輸送)
意義
・ このような積換え保管施設の整備・運用によって、排出事業所に近いところで集め、
大型車で広域に運ぶということができ、普通のトラックによる 1 次輸送と超大型車に
303
よる 2 次輸送の合理的な組み合わせが可能となっている。
・ 2 次輸送に輸送効率の高い高速道路・有料道路を活用し、中距離を短時間で輸送し、
トラックの稼働率を上げることができる。
・ 積換え保管施設において、有価物の抜き取りと破砕・圧縮を行うことによって、2 次
輸送にかかる廃棄物が減量化される。(運び込まれた廃棄物を 3 分の 1 にすることが
できる。)
・ 圧縮などの前処理について、積換え保管施設に対する許可の中で行うことができた。
自治体廃棄物処理法の運用は自治体によって異なるが、この点で神戸市の理解を得る
ことができた。
※同様の圧縮設備を有する積換え保管施設は西宮市でも計画したが、そこでは、
圧縮・梱包は認められなかった。これに対して、神戸市は、圧縮・梱包を、
運送効率を高めるための手法として位置付け、収集運搬および積換え保管の
許可で可能としてくれている。
兵庫県三木市
など
六甲アイランド
積換え
4 トントラックなど
による1 次輸送
保管施設
25 トン車による2 次輸送
IC
自社
IC
高速道路
有料道路
リサイクル施設
最終処分施設
有価物の抜き取り
圧縮などによる減量化
とかさ密度の向上
排出事業者
図3− 31 高速道路を活用した廃物輸送の例(A 社)
◇他の廃棄物関連静脈施設への応用可能性
容器包装リサイクル法の指定保管施設として
・ 容器包装リサイクル法に係る廃プラスチックなどの指定保管場所としての活用も考
えることができる。広域再生利用認定制度によって、広域的な輸送が容易であり、今
後、高速道路を活用した輸送が伸びる可能性もある。
・ 但し、プラスチックや PET は比重が軽いため、大型車で運ぶことが効果的である。
25 トン車で運ぶ量までロットがまとまらねばならないが、そのためには、貯蔵・保
管という機能、スペースが必要となる。特に廃棄物の場合は、排出が一定しないため、
バッファが必要。(定常的に流れる場合は 2,000 ㎡ですむものが、排出が安定しない
304
廃棄物の場合は、その 1.5 から 2 倍のスペースが必要となる。
・ また、輸送効率を高めるためには、選別行為などを含む前処理的なことができるとよ
い。
・ 事業スキームが問題。これから参加する自治体が集まって保管場所を設置することは
合理的であるが、自治体による入札行為によって廃棄物のリサイクル事業者と運搬事
業者が決まるので、工夫を要する。
その他
・ 広域再生利用認定制度が適用される廃棄物は可能性がある。
・ 例えば、PC のリサイクルなど。A 社でもパソコンのリサイクルをしているが、認定
の対象は原則的にメーカーであり、そことのタイアップが前提となる。
課題
・ 高速道路の IC 一体型の用地を確保できるとしても、住民の理解を得ることが難しく、
自治体の許可もなかなかおりないのではないか。
・ 特に、輸送効率の点から、何らかの形で中間処理を行うことが効果的であるが、こう
した行為は中間処理とみなされることが多く、ますます同意を得ることが困難となる。
収集運搬の行為(この中に積換え保管を含むこともある)の中で許可を得なければな
らない。
・ 許可を得るためには、何をどのようにして、どこに運ぶか、という「実輸送」を具体
的に想定した計画が必要であり、許可を得ようとしている間に事業機会を逃すという
ことになりがちである。
305
2)株式会社
ぐんま東庄
株式会社ぐんま東庄は、埼玉県北部から群馬県を主たる業務エリアとして活動している廃
棄物収集運搬業者および廃棄物処理業者である。本調査においては、前橋市の市一般廃棄物
処理事業協同組合の専務理事を兼ねている同社の江積専務取締役から、同社および同事業協
同組合の両方の立場から取材した
① 高速道路 IC 直結型静脈物流システムの機能、要件
・ 高速道路 IC 直結型静脈物流システムについては、周辺エリアから収集した廃棄物の保管・
積換え施設、輸送の効率化のために収集廃棄物を中間処理や破砕などによって減量化(減
容化)化する施設、リサイクル施設などが考えられる。どのような施設をどのくらいの規
模で整備するのが効果的かという点については、取り扱う廃棄物の種類によって異なる。
例えば建設廃材を扱おうとするならば、非常に量が多くなるため、中間処理による資源化
を含めた減量化(減容化)が不可欠となる。
・ 建設廃材以外の廃棄物の場合でも、運搬コストを抑えるため、圧縮、破砕などの減容化設
備が必要である。それは、発地の IC 直結型施設において運搬コストを下げる仕組みが求
められるためである。
・ IC 直結型集積場所から直接最終処分場(リサイクル施設を含む)まで、高速道路を活用し
て直接搬入することが必要である。
・ 扱う品目によっては、IC 直結型施設で中間処理をすることも検討すべき。また、最終処分
場(リサイクル施設)が直結している施設でリサイクルまで行えるようになっているとよ
い。
② 高速道路 IC 直結型静脈物流システムのメリット
・ 最終処分施設(リサイクル施設を含む)は全国的に密にないため、高速道路で運ぶことは
意義がある。
・ ぐんま東庄では埼玉、群馬を拠点として廃棄物の収運業をおこなっているが、東北などの
遠隔地に運んでいるものもある。
・ 高速道路を活用して廃棄物を運ぶことのメリットは、時間短縮効果が大きいことが第一で
ある。もう一つのメリットとして、どの IC からどの IC までを利用したかなど運搬径路が
明確になり、不法投棄の抑制につながることもあげられる。ただし、減容化率、距離、高
速道路料金との組み合わせが問題となる。時間短縮効果をどのように活用するかについて
も場合場合によって異なる。高速道路利用 1 時間当たりの高速道路料金がどうかという視
点も必要。トン・キロと料金と時間軸の組み合わせの問題である。
・ (一般道を使うと 20 ㎞の移動に 30 分。高速道路を活用すると時間短縮はできるが、IC
に行くまでに時間がかかる。したがって、運搬距離としては、IC の 1 区間、2 区間程度で
はあまり意味がない。また、関越自動車道の高崎―練馬間は約 100km、1 時間。この場合、
1 時間当たりの高速料金がどれだけかかるかという視点が重要。
)
306
・ また、高速道路を活用して 1 日に何往復できるか、一般道を中距離を運んで 1 日に 1 往復
できるか、あるいは片道しかいけないところをどう合理的に運送するか、という視点も必
要。例えば、高速道路を利用して 150∼200km を運ぶとすると 1 回往復が限度。その場合、
仕向け地で一泊したとしても、帰路も荷物を確保する(双方向型物流)ほうがよい。
③ 対象となる廃棄物と施設の機能・規模
・ 高速道路一体型の静脈物流施設の取り扱い対象としては、医療廃棄物、汚泥、廃プラなど
の産業廃棄物や一般廃棄物など、ほとんど全てのものが対象となりえる。ただし、具体的
には、単価と発生量との兼ね合いで検討することが必要である。また、一般廃棄物の場合
は、広域輸送を行うために特例による措置が必要となる。
・ 上述のように、減容化のための施設が不可欠であるほか、中間処理やリサイクルの機能を
もつことが効果的である。
・ 面積としては、対象廃棄物によって異なるが、1,500∼2,000 坪が最低条件(東庄の自社事
業に相当する規模とするとこのくらい)。溶融、破砕などを行うためには 3,000 坪程度が
望まれる。この面積があれば、日量 150∼200 トン程度を扱うことができる。
・ 面積規模に限りがあるので、各種の廃棄物の中から面白いもの(事業性の高いもの)から
対象とするのがよいのではないか。例えば、有害物、感染性廃棄物など(これらは単価が
高いがエリアからの発生量があるかどうかにもよる)。
④ 鉄道などとの競合
・ 距離が長くなると鉄道との競合が出てくる。廃棄物の種類によって異なるが、500km 前後
がトラックと鉄道との分岐点。鉄道料金は薄利多売で、以外とコストが安く、300km で鉄
道の方が有利となる場合もある。
・ ただ、鉄道利用の難点として、引込み線などがないためにリサイクル施設に直接乗り入れ
られる場合が限られており、横もち輸送が必要となることがあげられる。
⑤ 法制度とのかかわり
・ 自治体が扱う一般廃棄物は、積換え保管施設でペレット化などの中間処理、減容化ができ
る。また、リサイクル製品化までも可能である。
・ 施設自体の設置については、焼却施設や有害物質を扱うのでなければ、工業専用区域であ
るならば住民同意がいらない。但し、IC 地区が工専に指定されている場合においても、法
的な拘束でないとはいえ、住民感情の点から周辺住民の理解を求められる。
⑥ 事業スキームについて
(用地、建物を公共が保有し、民間がオペレートを受託するという BTO の形を想定してい
ること、日本環境衛生センターの研修会などに参加している企業に条件を与えて、そこに委
託するなどの考えに対して)
・ こうした事業のやり方は収集運搬業者の立場からは、信用面や資金力のネックが解決され、
また、業者が持っているネットワークを生かすことができるので、効果的である。
307
・ 事業の共同化はできるが、荷物の詰め合わせについては、可能であるが、行き先が同じで
なければならないなどの問題があり、難しい。1 台のトラックで同じものを大量に運ぶこ
とが重要である。
・ オペレートする業者を選定する方法が難しい。民間に近いところが事業者選定のための基
準を作成し、民間の自助努力でオペレートをするということが必要でないか。収集運搬業
者の組合の自主運用などがいいのではないか。
・ 各収集運搬業者が IC 直結型静脈物流施設に運び込めるようにして、排出事業者と収集運
搬事業者の既存の契約関係を変えずに施設を運用できることが具体化の鍵となると考え
られる。
・ ここを活用する業者を募って、別法人(組合などの組織体制)をつくり、そこが運営する
という方針がよいのではないか。また、県の産業廃棄物協会や各地にある組合組織を活用
する、ということも重要である。
・ その際、中間処理を行っている業者を取り込むことが効果的といえる。
⑦ 事業の具体化のポイント
・ 基本的には、IC 直結型静脈物流施設に運び込むことは、これまでのやりかたよりもコスト
が高くなり勝ちと考えられる。そこで、ここを活用することのメリットがどこにあるか、
という点に関する検討が必要である。
・ さまざまな種類がある廃棄物ひとつずつについて、IC があるエリア毎にその地域的な特徴
があることから、発生量、スペース、輸送コスト、時間短縮効果などを具体的に検討する
ことが必要である。
⑧ 考えられる場所
・ 関越自動車道、上信越自動車道、北関東自動車道がある群馬県内の IC が適地。沖縄を除
くと、日本本土の中心が群馬県の渋川市でもある。
・ 藤岡ジャンクションやハイウェイオアシスがあるのも利点となる。
⑨ その他、高速道路を活用するアイデア
・ 高速道路の SAPA や IC を拠点にすることによって、いろいろなネットワークを築くこと
ができる。
・ 例えば、都市や地域で発生する廃棄物と SAPA で発生する廃棄物をリサイクル利用するこ
とによって、SAPA の熱源にすることができる。発電をすることも考えられる。モデル地
区的なことをしたらどうか。
308
(3)道路管理者
日本道路公団では、関越自動車道の SAPA から排出される廃棄物の赤城 IC における RDF 化
と、その谷川岳 PA における融雪ボイラーの燃料としての利用について取材した。
1)事業の概要
・ 日本道路公団は、5 年前から、関越自動車道の埼玉県北部から群馬県にかけての SA、PA
から排出される廃棄物を収集し、赤城 IC のループ内に設置された施設で RDF(固形燃料)
化を行い、それを谷川岳 PA の融雪施設の補助燃料として利用している。
・ したがって、事業は赤城 IC と谷川岳 PA の両方で行われている。それぞれにおける事業の
概要は次のとおりである。
◇赤城 IC 地区
事業の名称:
リサイクルセンター赤城
所在地:
関越自動車道 赤城 IC 内
延床面積:
リサイクル棟 868 ㎡、保管庫(展示室を含む) 128 ㎡
処理能力:
4.5 トン/日
◇谷川岳 PA 地区
事業の名称:
リサイクルセンター谷川岳
所在地:
関越自動車道 谷川岳 PA(上下線の間).
延床面積:
リサイクル棟 460 ㎡
処理能力:
RDF4.7 トン/日
資料出所:日本道路公団パンフレットより転載
図3− 32 日本道路公団の赤城および谷川岳リサイクルセンター
309
・ 廃棄物の収集範囲は、関越自動車道の寄居 PA から下牧 PA 間での間の休憩施設、および
上信越自動車道の横川 PA の 3SA、4PA である。
・ 収集している廃棄物は、休憩施設の利用者がごみ箱に捨てたものであり、テナントとして
入っているレストランなどから排出される廃棄物は、各テナントが直接に廃棄物収集運搬
業者に頼んで処分している。
・ したがって、収集している廃棄物の種類も、プラスチック類や紙類が中心であり、ビンカ
ンもある。一方、食品関連廃棄物は少ない。
・ 平成 14 年度は、年間 813 トンを収集した。これを赤城の施設で分別し、可燃ごみ 515 ト
ンを RDF 化している。
・ 谷川岳 PA での利用は、利用期間が 12 月∼3 月の約 100 日と定められている。14 年度の
利用実績は 160 トンである。
・ RDF 製造量と利用量は、製造量がやや多く、あまっている状況。その理由は、RDF のカ
ロリーが当初想定したよりも高く、燃焼量を調整しているためである。
2)事業の評価
・ 融雪施設の熱源は、もともとは灯油であった。RDF を事業化した後も、灯油の占める割合
は多く、灯油の数%、灯油換算で 400 万円∼500 万円分を RDF で代替した程度である。
・ 事業全体のコストについて、従来は、休憩施設から排出される廃棄物は自前の焼却施設で
処分するか、逆有償で引き取ってもらっていた。また、引き取ってもらうためには、各休
憩施設であらかじめ仕分をすることが必要である。こうしたコストを勘案すると、道路公
団として自ら RDF 化を行い、灯油の補助燃料として利用することは、特にコストが高い
というわけではなく、従来の方法と比べてトントンの状況である。
・ 但し、現在は道路公団本社の実験という位置付けであり、本事業の評価はこれからである。
3)事業の経緯
・ もともと、関越自動車道沿いの SAPA の休憩施設から排出される廃棄物は、赤城 IC の施
設で焼却していた。しかし、ダイオキシン問題や施設の老朽化に対応するため、RDF 化を
試験的に導入することとなった。
・ もともと焼却施設があったことから、RDF 施設に建て替えるにあたっては建築基準法など
のしばりがある程度で、廃棄物処理の許可手続きなどの制約要因は特になかった。
・ 赤城 IC のある赤城村では、焼却施設から RDF 施設に変わったので、当初は歓迎するふう
であった。ただし、廃棄物が域外から持ち込まれることに対しては、焼却施設が設置され
たときから抵抗があり、村と協議してきた経緯がある。そのため、RDF 化施設についても、
行政に対する対応が必要であった。
・ RDF の燃焼を行う谷川岳 PA がある水上町とは調整を行った。
4)事業実施上の課題と発展性
・ RDF を燃やすことに対しては、地元との調整が必要である。本事業の場合は、水上町との
調整によって、谷川岳 PA で RDF を使えるのは、期間的には年間 100 日、量はこれだけ、
310
という説明がなされている。したがって、本事業に限っては、これ以上 RDF を進めるこ
とはできない。
・ 本事業をもとにした発展系はいろいろ考えられるが、RDF の収集エリアを広げると、運搬
コストがかかり、難しくなると考えられる。
・ 本事業は、上述のようにコスト的には従来の焼却処理と比べてコストが特に高いというこ
とはないが、今後は公団が民営化されることもあって、厳しい費用便益の分析が重要とな
る。これに対する RDF 化の評価はまだである。
・ したがって、現状ではこうした事業を他の高速道路休憩施設に拡大する動きはない。
311
5.実現に向けた課題
(1)技術的課題
1)広域輸送による廃棄物処理の安全性
・ 広域輸送における廃棄物の輸送手段には、車両輸送、鉄道輸送、船舶輸送等が考えられる。
・ 車両における広域輸送システムにおいては、ⅰ)交通事故、ⅱ)交通渋滞、ⅲ)排気ガス、
ⅳ)騒音、ⅴ)振動、ⅵ)悪臭の発生、ⅶ)エネルギー効率、ⅷ)荷傷み等の問題があり、
環境保全や安全性の面から課題が多い。
・ 広域輸送システムの導入によって廃棄物処理・処分におけるシステム全体の安全性の確保
が最重要課題である。特に建設予定地周辺の地域住民の同意が得られないことである。
・ 中間処理施設の立地選定に際しては最終処分場と同様に地形・地質・地下水・廃棄物の輸
送ルート調査等を詳細に行う。
・ 施設においては環境面での安全性・維持管理を強化し、地域のイメージダウンを払拭する
施設整備計画ならびに維持管理計画を立案することが重要である。
2)広域輸送における制約
・ 運搬車両の大きさ、輸送距離、委託方法等において、制約がある。
・ 制約条件となる事項として、次の点があげられる。具体化に当たっては、これらの点を考
慮し、制約条件の柔軟性を考えた輸送システムの目標を立てる必要がある。
対象となる範囲が広いことから、他市町村・都道府県の区域を通過するための長距離
輸送化の合意が必要
輸送対象物の種類が多いことからの受け入れ地点でのチェックシステムが必要
積み出し基地又は積み替え基地の連続性が必要
発生地点の分布が不均一
3)廃棄物の発生管理
・ 廃棄物の広域輸送システムを用いて広域処理を実現するためには、廃棄物の発生について
把握し、発生した廃棄物に対して輸送及び処分の為の資源を適切に割り当てることが必要
である。
・ 廃棄物の発生管理システムは、次のサブシステムから構成されると考えられる。
発生する廃棄物に関する情報システム(データベース)
廃棄物の発生場所に関する情報
廃棄物の種類・性状に関する情報
廃棄物の量に関する情報
廃棄物に関するその他の情報
使用できる輸送手段に関する情報システム(データベース)
廃棄物の発生場所と処分場所を結ぶ輸送手段に関する情報
312
輸送手段の能力に関する情報
輸送手段の稼動状況に関する情報
輸送コストに関する情報
廃棄物に関するその他の情報
使用できる処分施設等に関する情報システム(データベース)
処分施設の所在地に関する情報
施設の能力に関する情報
施設の稼動状況に関する情報
処分コストに関する情報
処分施設に関するその他の情報
発生する廃棄物に対して輸送手段および処分施設を割り当てるシステム
広域処理に関する基本計画
広域処理の現状把握
広域処理のシミュレーションおよび将来予測
資源割り当ての実施
廃棄物排出者と処分者の間のコミュニケーションシステム
排出者と処分者における廃棄物処理情報の共有
廃棄物の処分のための発生源における性状管理
・ 廃棄物処理施設や輸送手段といったハードウェアが揃っていても、廃棄物の発生管理がで
きていなければ広域輸送は実現しない。また、発生管理システムは、これらサブシステム
が協調的に機能しなければ、廃棄物の広域処理の実現は困難である。
・ 上記サブシステムのうち一部については構築されている、あるいは構築されつつあるが、
トータルシステムとしては、現在のところ広域処理のために機能する廃棄物発生管理シス
テムはない。今後の開発が必要である。
(2)制度的な課題∼行政の対応∼
1)広域輸送のための法体系の整備など
・ 廃棄物の新輸送形態の実現に向けた行政の対応としては、次に掲げる点があげられる。
広域的な輸送を前提とした法体系の整備
廃棄物を排出する側と処分する側の受益の公平化
処理処分体系の統一化
・ 現在の法律(廃棄物処理法)では、廃棄物の広域的な処理を禁止していないが、原則とし
て一般廃棄物については、自己の市町村の計画区域内で処理することが他の市町村に負担
をかけないという点から求められる場合が多い。
・ 産業廃棄物についても、首都圏などの廃棄物が、他の都道府県の処分場で処理される、ま
たは処理が計画される場合など、不適正処理の不安から世論の批判を浴びかねない風潮と
なってきている。
313
・ このように、他の地域の廃棄物を受け入れるということについては、法の規則以上に、そ
の地域の住民感情や、安全性の確保などの点で課題が多い。
・ この課題を克服するには、廃棄物を排出する側と処分する側の受益の公平化を図る何らか
のルールづくりと、適正処理を保証する厳格な処理基準づくりを行う必要がある。
2)施設整備を推進する視点からみた問題
・ 施設整備が予定される IC 周辺住民等の理解が得られるよう積極的なPR、啓発活動も必
要ではないか。
・ トラック輸送の場合は、廃棄物関連事業の実施や施設整備に関する許可者である自治体の
解釈の違いによって、積替え保管施設の設置ができるところとできないところがある。ト
ラックターミナルについて、積替え保管施設としてとらえるところと、コンテナの載せか
え施設として位置づけるところがあり、前者の場合は許可の取得に時間的なコストを要す
る。こうしたことから、広域輸送の対象となる自治体間で共通基準をつくることなどが考
えられる。
・ 積載効率を高めるための破砕・圧縮設備などについても、自治体の判断によって中間処理
施設とみなされる場合と、そうでない場合とが混在しており、統一的な基準をつくること
が課題となるのではないか。
(3)経済性・事業性を確保する視点からみた課題
1)輸送コスト・効率性に関する問題
・ 容器包装リサイクル法における廃プラスチックを自治体で収集する量には限りがあり、な
かなかロットがまとまらないため、採算ベースに乗せるのが難しい。
・ 輸送(積載)効率を高める視点から積換え・保管施設で破砕・圧縮を行うことは一部で行
われているが、例外的であり、実際にはスペースの制約などから困難。
・ 鉄道とトラックのコストから見た輸送分岐点は一般的に 500km といわれているが、もっ
と短い距離でも鉄道の利用を想定し得る場合があるため、高速道路輸送の時間短縮のメリ
ットを発揮する場合をケースごとに見極めることが必要である。
・ 帰り荷の確保など、片荷を解消するための工夫が求められる。また、動脈物流品目と静脈
物流品目の混載を進めることによってコストを軽減することも重要な課題である。こうし
た視点から、コンテナの開発や柔軟な運用の方策などに関する検討も重要となるのではな
いか。
2)流通経路の確立の視点からみた問題
・ 物流コストを低下させるためには、物流関連施設・設備・機材に対する投資が必要であり、
安定的な取引関係を構築することが効果的である。この点で、容器包装リサイクル法によ
る廃プラスチックについては、リサイクル事業者の選定(併せて輸送事業者も決定される)
については容器包装リサイクル法の指定法人の単年度入札に任されていることなどから、
流通経路が不安定であり、設備投資などが難しい。複数年契約で固定化されると、高速道
路直結型の物流施設を整備するメリットが大きく出てくると考えられる。
314
・ 自治体の指定保管場所が狭隘な場合もあり、再編や新設によって共同利用型の規模の大き
な保管場所を整備することが検討課題として考えられるのではないか。
・ 積載効率を高めるために、集積地や積替え・保管場所において破砕・圧縮などを行うこと
が重要であり、一部では行われている。こうした施設整備を容易にすることが必要でない
か。
・ 片荷を解消し、コンテナの効果的な活用を図るために、一部で行われているようなコンテ
ナの洗浄が必要であり、そのための設備導入を図ることが必要でないか。
参考文献 「廃棄物学会自主研究グループ 廃棄物の広域輸送に関する研究 平成 10 年 3 月など
315
第5章 新しい充電システムや蓄電装置を導入した AE バスの導入に関す
る検討
1.14 年度の成果と 15 年度のねらい
本調査は、道路空間利用型省資源・新エネルギー事業として、バス停や一般街路の停車帯など
の道路空間に非接触給電システムを設置し、電気自動車を利用したコミュニティバス・巡回バス
へ給電を行うことを想定したものである。研究の題材としては、早稲田大学の本庄リサーチパー
クを舞台に実証実験が進められつつある AE バス(Advanced Electric)バスシステムをとりあげ
た。これは、再生可能エネルギーや蓄電システムの導入によって、環境に対する負荷が少なく、
エネルギーの効率的な使用が可能な公共交通システムの確立を目指したものである。
平成 14 年度は、道路空間に非接触給電システムを設置し、電気自動車を利用したコミュニティ
バス・無料巡回バスなどへ給電を行うことを想定し、給電事業を行うにあたっての技術的・経済
的な可能性、低公害車を用いた公共交通運用に関する支援制度の枠組み、及び道路空間を利用し
た給電ビジネスの発展性について基本的なイメージを描いた。しかし、こうした AE(Advanced
ElectrIC)バスシステムは開発途上であり、その導入可能性や前提条件、運用形態などの検討が
今後の課題として残された。
今年度は、この AE バスシステムの技術面や運用面の検討を行うとともに、道路空間への導入
の可能性や地域の状況に応じた導入の姿などに焦点を当てた調査を行った。具体的には、研究会
メンバーによる AE バスシステムとその要素技術に関する発表を中心に、技術面の情報を整理し
た。さらに AE バスシステムなどの自治体に対するアンケート調査やヒアリング調査によって、
地域におけるバスシステムの課題や新しい動き、AE バスに対する評価などを把握した。最後に、
これらをふまえ、電気自動車を用いた公共交通運行に関するより具体的な検討を実施し、導入モ
デルを提示した。
給電用コイル
メンテナンス用マンホール
図3− 33 AE バス(左:給電中の AE バス、右:道路側給電装置)
316
2.クリーンエネルギー自動車の概況と電気自動車の位置づけ
(1)普及状況
実用化されているクリーンエネルギー自動車には、電気自動車のほか、ハイブリッド自
動車、天然ガス自動車、メタノール自動車などがある。この中で、AE バスが属する電気自
動車は、以前は中心的な存在であったが、最近ではハイブリッド自動車や天然ガス自動車
が大きく伸びている。2001 年度の電気自動車の普及台数は 4 千 7 百台であり、天然ガス自
動車の 40%、ハイブリッド自動車の 6%となっている。
また、2001 年度における電気自動車の出荷台数は 180 台余りであり、乗用車と軽貨物車
が半数ずつとなっている。バスはない。
表3− 52 クリーンエネルギー車の普及台数
(単位:台)
電気自動車
ハイブリッド自動車
天然ガス自動車
メタノール自動車
1995年度 1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2001年度
2,500
2,600
2,500
2,400
2,600
3,800
4,700
176
200
3,700
22,500
37,400
50,400
74,600
759
1,211
2,093
3,640
5,252
7,811
12,012
311
314
300
279
222
157
135
80000
電気自動車
ハイブリッド自動車
天然ガス自動車
メタノール自動車
台数
60000
40000
20000
0
1995年度
1996年度
1997年度
1998年度
1999年度
2000年度
2001年度
年度
資料:運輸低公害車普及機構調べ
図3− 34 クリーンエネルギー車の普及台数の推移
表3− 53 クリーンエネルギー車の出荷台数(2001 年度実績)
(単位:台)
乗用車
軽自動車
56
36
25,073
0
255
49
0
0
25,354
85
普通・小型車
電気自動車
バイブリッド自動車
天然ガス自動車
メタノール自動車
小計
貨物車
軽自動車
0
91
2
0
2,836
820
0
0
2,838
911
普通・小型車
バス
0
14
98
0
112
合計
183
25,089
4,028
0
29,322
2000年度実績
150
12,950
2,447
0
15,547
資料:日本自動車工業会
317
(2)低公害車の普及状況
電気自動車の特徴としては、排出ガスがないことが最も大きなメリットである。また、
騒音が非常に少ないことも優れた特徴となっている。一方、性能的には速度や登坂力に係
る出力はそこそこであるが、航続力については劣っている。圧縮天然ガス(CNG)車と比
べると、排出ガスのないことや騒音のないことで優れるが、出力や航続力では燃料搭載技
術や電池技術の開発状況に依存するものであり、特にどちらが有利であるかはいえない。
燃料・エネルギー供給インフラについては、充電施設は全国あわせても 50 箇所に満たな
い状況であり、きわめて脆弱である。ただし、天然ガスの充填スタンドも同様に限られて
おり、いずれも本格的な整備が求められる。
表3− 54 クリーンエネルギー自動車の特性比較
(☆が最も優れ、◎が次に位置し、▲が最も劣る)
排出ガス
地球環境
都市環境
CO 2
CO/HC 黒煙/PM
NO X
ガソリン自動車
ディーゼル自動車
LPG自動車
ー
ク 天然ガス
リ 自動車
○
○
○
○
○
○
▲∼△
○
▲
◎
△
◎
○
○
○
○
△
△∼○
CNG
○
○
○
◎
△
▲
LNG
○
○
○
◎
△
△
△
○
○
○
△
△
○∼◎
○∼◎
○∼◎
◎∼☆
△∼○
○∼☆
☆
☆
☆
☆
△∼○
▲
☆
☆
☆
☆
△∼○
△∼○
☆
☆
☆
☆
△∼○
△∼○
○
☆
☆
☆
△
▲
ー
ン メタノール自動車
エ
ハイブリッド自動車(ディーゼル、ガソリン)
ネ
ル 電気自動車
ギ
燃料電池電気 水素搭載型
メタノール改質装置搭載型
車 自動車
水素自動車
車両性能
継続的
出力
距離
資料:自動車年鑑 2004 年版より作成
表3− 55 クリーンエネルギー自動車の特性比較
電気
天然ガス メタノール
急速充電 普通充電
北海道
5
宮城
1
1
栃木
1
茨城
1
群馬
5
埼玉
16
1
千葉
13
東京
1
2
25
1
神奈川
4
12
2
新潟
8
富山
1
石川
2
山梨
1
1
長野
1
岐阜
2
静岡
5
愛知
5
5
18
2
都道府県
電気
天然ガス メタノール
急速充電 普通充電
三重
2
滋賀
2
2
京都
1
5
5
大阪
2
2
25
兵庫
12
10
1
和歌山
1
鳥取
2
岡山
1
広島
4
福岡
1
6
佐賀
1
長崎
1
熊本
1
大分
1
鹿児島
2
1
沖縄
1
計
15
31
178
10
都道府県
資料:運輸低公害車普及機構調べ
318
3.AE バスの概要と本庄拠点プロジェクト
ここでは、研究の題材としてとりあげた早稲田大学が中心となって推進している AE バス
システムについて紹介する。
(1)対象とする地域
・ 埼玉県本庄市内
・ 早大本庄キャンパス(リサーチパーク構想)
・ JR 新幹線本庄早稲田駅(2004 年開設)
・ JR 在来線本庄駅
・ 関越自動車道(本庄 IC,高速バスストップ)
JR 本庄駅
JR
高崎線
関越自動車道
本庄児玉 IC.
JR 新幹線
本庄早稲田駅
早大本庄
キャンパス
図3− 35 対象地域
319
(2)自動車システム
・ 地域循環型の先進電動バス
・ 超小型 2 人乗り電動コミュニティビークル
・ 公共交通とパーソナルモビリティの調和ある両立
・ 道路情報システムによる運行管理と利便性の確保
(3)エネルギーの利用システム
・ 太陽光発電,風力発電,バイオマス,夜間電力を複合的に組み合わせたエネルギーシステ
ムを構築する。
・ 先進的な非接触型給電システムを採用する。
(4)開発する先端的技術
・ 電気自動車に関わるパワーシステム技術
・ 環境・エネルギー技術
・ 多様なエネルギーの複合的利用技術− 給電と蓄電の関連技術
・ 道路交通情報システム技術
・ 運行管理システム技術
・ 上記技術を評価する技術手法
(5)社会的効果
・ 周辺地域との協力による鉄道、高速道路、一般道、キャンパスを含めた新たな道路交通シ
ステムの提案
・ 特徴ある地域振興の取り組みとモデル地区としてのアピール
・ 地域における交通,環境,エネルギーに関わる総合的な啓発効果
・ 他地域へのシステムの展開の可能性
320
4.自治体アンケート調査結果
本調査では、上記の AE バスシステムのような環境負荷低減型バスシステムの導入の可能性や
課題について把握するため、自治体に対するアンケート調査を実施した。その実施概要と結果は
次に示すとおりである。
表3− 56 自治体アンケート調査の実施概要
概要
○発送先
関東甲信越の高速道路 IC 及び高速バス停留所が立地する自治体 133 箇所
○実施時期
平成 15 年 11 月下旬から 12 月上旬
○実施方法
郵便によるアンケート票の発送
ファックスによる返送
○回収状況
66 自治体(回収率 49.6%)
321
問1
環境面を中心とした公共交通の課題について
1−1 貴自治体の管内では、公共交通としてバスはどのように利用されていますか。該当する選
択肢の番号を 2 つまで選んで○をつけてください。また、該当する選択肢が無い場合は、
その内容を具体的にお書きください。
1.通勤、通学、買い物などの日常生活のための主要な交通手段となっている
2.地域の観光地をめぐる主要な交通手段となっている。
3.路線バス以外に、行政施設、文化施設、医療・健康・福祉関連施設などへのアクセスに
使われている
4.地域をきめ細かく結ぶ重要なコミューター交通として使われている
5.その他(具体的に:
)
問1-1 MA (N=63)
※パーセンテージの母数はN
84.1
1
11.1
2
53
7
55.6
3
35
7.9 5
4
5 4.8 3
0
10
20
30
40
50
60
回答企業数
図3− 36 公共交通バスの用途
多くの自治体でバスは通勤、通学、買い物など、日常生活の重要な移動手段として使われて
いる。また、行政施設、文化施設、医療・健康・福祉関連施設などへのアクセスに使われてい
る。
観光地を巡る主要な交通手段となっている、という回答をした自治体も 7 つある。
地域をきめ細かく結ぶコミューター交通として重要という回答の自治体も 5 つを数えた。
322
1−2 貴自治体におけるバスの運営主体はどのようなものでしょうか。該当する選択肢の番号す
べてに○をつけてください。
1.自治体が運営している
2.地域のバス会社が運営している
3.その他(具体的に:
)
問1-2 MA (N=63)
※パーセンテージの母数はN
36.5
1
23
84.1
2
3
12.7
0
53
8
10
20
30
40
50
60
回答企業数
図3− 37 地域におけるバス交通の運営主体
自治体のバス運営主体は主にその地域のバス会社が行っているが、自治体自身がバス運営を
主体している地域も少なくない。
323
1−3 貴自治体管内において、バス交通が環境面で問題となっていることがありますか。該当す
る選択肢すべてに〇をつけてください。また、環境面における問題点がある場合、それは
どのようなことですか。その内容を具体的にお書きください。
1.バスが排出する汚染物質による地域への環境負荷がある
2.バスによる大気汚染は少ないが、地球温暖化ガスの排出による問題がある
3.交通渋滞を引き起こし、大気汚染などにつながっている
4.環境面での問題は特に生じていない
5.その他
問1-3 MA (N=62)
※パーセンテージの母数はN
12.9
1
16.1
2
3
8
10
1
1.6
64.5
4
40
5 4.8 3
0
10
20
30
40
50
回答企業数
図3− 38 バス交通による環境面の問題
324
表3− 57 バス交通による環境面の問題と対応:自由回答
回答者
回答
川崎市交通局
・ 排出ガスに含まれる PM や黒煙による環境負荷を低減するため、本市では積
極的に低公害型バスの導入や PM 減少装置の整備を行っている。また、マイ
カーから公共交通への転換を促進するため、PTPS の導入に伴う TDM 事業
を実施している。
横浜市
・ 低公害バスの導入や PDF 等の装着を率先して進めてきたが、排出ガスに対
する苦情等は若干ある。
長野県富士見町
・ 今現在、バスの利用者が少なく、大型のバスでも、日常 1∼3 人くらいしか
利用していない状況である。その為、住民からは空気を運んでいて、排気ガ
スをまきちらかしているなどの意見もある。今現在、新しい交通システムを
検討中である。
海老名市
・ 本市では、ISO14001 を取得しており、その観点からみた場合、バス運行に
よる環境影響(間接、有益)は大きいと考えます。
長野県岡谷市
・ 低公害車両の導入コストが高額すぎる。
静岡市
・ バスに限らず、近年のモータリゼーションの進行により、大気汚染や地球温
暖化ガスへの影響は避けられない。しかし、本市では、「人・まち・環境に
やさしい」をテーマとした公共交通の利用促進の一環として、CNG バス導
入を進めている。
掛川市
・ 車両の老朽化、排ガス規制に見合わなくなる。
本庄市
・ 全国的な課題。
バスの排出する汚染物質や地球温暖化ガスが環境面での問題となっている自治体も一部で見
受けられるが、多くの自治体ではバス交通の環境への影響は特に生じていないと感じている。
問題が生じているとしている自治体については排気ガス排出量の削減や、低公害バスの導入
など、改善策を検討している。
バスの排出ガスによる環境への影響があるとする自治体の中には、横浜市や川崎市のように、
排出ガスに対する対策をしても苦情が出ているというところある。
バス利用が低迷しているところで排ガス問題を指摘されている自治体では、富士見市のよう
に新しい交通システムを考えている自治体もある。
325
1−4 貴自治体管内では、自治体や民間事業者によって、公共交通のバスとして低公害型のバス
が導入されていますか。該当する選択肢の番号に○をつけてください。
また、導入していたり、導入の予定がある場合は、低公害車の種類(圧縮天然ガス自動車、
など)をお書きください。
1.既に導入している
2.導入の予定がある
3.当面、導入の予定はない
問1-4 SA (N=62)
※パーセンテージの母数はN
24.2
1
15
2 0
0.0
75.8
3
0
10
20
47
30
40
50
回答企業数
図3− 39 低公害バスの導入状況
これから先、低公害バスを導入する予定のある自治体はないようである。
これは現在既に低公害バスを導入している自治体以外では、低公害バスが導入されないとい
うことを示していると考えられ、2 極化しているということがうかがえる。
導入をしたいと考えていた自治体も低公害バスのインフラ整備状況車両コストの問題などか
ら、導入を見送っている段階であると思われる。環境面への影響を考慮すると、これらの問題
を解決し、低公害バスがより身近のものになるようにしていく必要があると考えられる。
326
問 2 電気駆動バスについて
2−1 電気で駆動するバス(※)については環境負荷の少なさでは最も優れていると考えられま
すが、これについてはどの程度ご存知ですか。該当する選択肢の番号に○をつけてくださ
い。
※
電気駆動バスの概要や、他のクリーンエネルギー自動車との違いについては、添付資料を
ご覧ください。なお、ここでは、特に架線や大容量の電池を必要としない非接触充電型のタイ
プを想定しています。
1.よく知っている
2.あることは知っている
3.知らなかった
問2-1 SA (N=64)
※パーセンテージの母数はN
1
0
0.0
65.6
2
34.4
3
0
10
42
22
20
30
40
50
回答企業数
図3− 40 電気駆動バスの認知状況
電気駆動バスについて詳しく知っている自治体はなかった。そればかりか、電気駆動バスに
ついて知らない自治体も少なくなかった。
こうしたことから、AE バスの普及展開を図ろうとする場合は、まずはバスの排気ガスによる
環境汚染、地球温暖化の改善に役立つ電気駆動バスを自治体に詳しく知ってもらう必要がある。
そうした上でコスト、インフラなどの問題を解決していくことが求められる。
2−2 電気駆動バスのメリット、デメリットについてはどのように評価されますか。該当する選
択肢に○をつけた上、具体的にお書きください。
主として、現在既に導入自治体が広がりつつある圧縮天然ガスを用いた低公害バスとの比
較のもとにご回答ください。
327
1.環境面では低公害バスの中でも優れている
2.充電施設などのインフラが必要で管理に問題がある
3.車両の価格が高いのではないか
4.制度的な点からインフラ整備が困難
5.架線がないなど、管理面や景観などの面で優れている
6.小型の低公害バスとして、メリットを発揮できる用途がある
7.その他
問2-2 MA (N=64)
※パーセンテージの母数はN
1
36
56.3
2
40
62.5
3
37
57.8
6
9.4
4
5 3.1 2
14.1
6
9
0 0.0
7
0
10
20
30
40
50
回答企業数
図3− 41 電気駆動バスに対する評価
表3− 58 電気駆動バスのメリット・デメリット:自由回答(1)
回答者
メリットと考えること
デメリットと考えること
昭和村
・ 公共バスの PR、利用促進につ ・ 他の自治体にまたがった路線のため、単
ながるのではないか
独での整備が困難。利用者の減る中、適
切な効果が上げられるか不透明。
高崎市
・ 現状では、電気自動車が最も環 ・ 車両や充電施設等の設備投資及び維持
境面ですぐれていると考えら
管理の面で不安がある。
れ、問題となっている排気ガス、
騒音、振動等の改善に非常に有
効であると考える。
箕輪町役場
長野県諏訪市
・ 車両の価格。
・ 環境、地域のイメージアップ、 ・ 車両価格、保守点検の複雑化、スタンド
乗客の増加
南箕輪村
の整備費用
・ 環境にやさしい
・ 新規投資がむずかしい。
月夜野町役場
・ 充電施設(発電システム、貯蔵システム、
給電システム)の設置経費が高いです。
328
表3− 59 電気駆動バスのメリット・デメリット:自由回答(2)
回答者
メリットと考えること
デメリットと考えること
厚木市
・ 環境負荷の軽減には、非常に優 ・ インフラ整備と管理面で問題があると
れていると考えられる。
横浜市
潮来市
考えられる。
・ 排出ガスが出ないことと低騒音 ・ 車両の価格やバッテリーの耐久性、制動
であることの他、省エネルギー
時の回生ブレーキとエアブレーキの協
である点。
調、充電施設のコストやスペース。
・ 環境面で優れており、大気汚染、 ・ 高価になることが予想される。
騒音等の問題解決に結びつく。
埼玉県岡部町
・ 音が静かで、環境面にも優れて ・ インフラ整備が必要となると、小規模で
いる。
行う場合は割高になるのでは?
榛原町役場
・ 環境保全
・ 高価
栃木県矢板市
・ 地球温暖化対策、低公害
・ インフラ整備と購入コストの負担。
世田谷区
・ 上記の課題がクリアーできれ
ば、優れていると思われる。
茨城県東海村
・ 燃料電池車がベストと思うが、 ・ 環境面から考えたとき、従来の電源を用
それよりも小さい投資額で済む
いたのでは意味がない事から、自然エネ
電気駆動バスは、汎用性に優れ
ルギーの利用となり、インフラ整備がか
る、と考えます。電気が自然エ
なり困難である。観光地であるなら、そ
ネルギー利用という限定付きで
の利用頻度からメリットは大きいが、そ
はあるが・・・。
の他の地域としては、投資効果に見合う
メリットは伴わないと考える。
柏市
・ 車両導入、インフラ整備における経費面
での課題が多い。
長野県富士見町
・ 低公害で大変すばらしいと思 ・ 大型車においては、田舎の道では通行で
う。
きないところもあるが、インフラ整備が
困難。
海老名市
・ 環境負荷が低い。
・ インフラ整備等が必要である。
茨城県那珂郡那 ・ 5 架線がないなど、管理、景観 ・ 2 インフラが必要で管理に問題
珂町
・6
小型バスとしてメリットを ・ 3 車両価格の高さ
・4
発揮
制度的な側面からのインフラ整備の
困難
館林市役所
・1
低公害バスとして優れてい ・ 2 インフラが必要で管理に問題
・ 3 車両価格の高さ
る
辰野町
・ 環境の負荷が少ない。
栃木県鹿沼市
・1
・ 導入経費が高いと思われる。
低公害バスとして優れてい ・ 2 インフラが必要で管理に問題
・ 3 車両価格の高さ
る
329
表3− 60 電気駆動バスのメリット・デメリット:自由回答(3)
回答者
メリットと考えること
デメリットと考えること
群馬県利根郡水 ・ ⑤景観。自然が売りの町なので
・ ②インフラ整備の予算・管理が難点
上町
杉並区
・ 環境面での低公害の度合いは、 ・ 2、3 の状況により、市場にまで出回っ
CNG よりも優れているのでは
ていないのでは
ないか
東京都調布市
御殿場市
・ 排気ガス等環境への悪影響が全 ・ 充電施設(ステーション)が天然ガス車
くない。低公害というより無公
以上に必要。近隣にないと難しいのでは
害に近い。
ないか。
・ 高価格、メンテナンスの困難性、1 充電
・ 無公害
当たりの走行距離。
赤城村
・ 環境面(低公害)
・ 価格、インフラ
西那須野町
・ 「6」小型という点を生かして、 ・ 「3」車両価格を含めた、全体の経費が
国・県道・町幹線道路以外の一
高いのではと考える。
般町道でも走行できると考えま
す。
さいたま市
・ まずイメージがクリーンである ・ ご提案の AE バスに着いては、供給方式
こと。ご提案の AE バスにおい
の関係からインフラのコストが掛かり
てはタービンにより発電する電
ます。CNG の方が普及している分現状
気バスと異なり”燃焼”に関す
では有利ではないでしょうか。
るものが全く無い点が評価でき
ます。ただし,環境面からの損益
分岐点はもう少し明確に。
上河内町
・ 自然環境保護区域など、高いコ ・ コストが高い
ストをかけても行政評価で有効
と判断されるような特定のエリ
ア内での活用
静岡市
・ 公共交通の利用促進を図る中 ・ インフラ整備及び車両の購入などに関
で、環境負荷の極めて低い電気
して,関係機関との調整やそれらの管理
駆動バスは、市民に対しても理
運営主体の協議を密にしなければ事業
解を得やすそうで , 公共交通の
化は困難におもわれる
利用促進につながると思われ
る.
330
表3− 61 電気駆動バスのメリット・デメリット:自由回答(4)
回答者
メリットと考えること
デメリットと考えること
静岡県浜松市
・ 環境面。車内の騒音・振動が低 ・ 量産されないことから車両価格が高い
くなるなど乗車環境の向上が予
と思われる。乗車定員が少なく路線全て
想される
でインフラ整備が必要など、採算性に問
題がある。路線が限定されるため,バス
のメリットである柔軟性が無くなる。
鶴ヶ島市
・ 環境問題
・ 維持管理経費など
静岡県袋井市
・ 環境への負荷は低減できると思 ・ 導入には多額の費用がかかると思う
う。
長野県駒ヶ根市
・ 分からない
・ 分からない
焼津市
・ 環境にやさしい
・ 充電施設の設置、管理。車両価格が高い
高荻市
・ システム全体がクリーンエネル ・ 車速や稼働時間から通常の路線バスと
ギーを利用しており、環境負荷
して利用することは難しい
が少ない。さらに非接触給電シ
ステムにより、これまでの燃料
補給に関する煩わしさが解消さ
れる。
三芳町
・ 排出ガスが出ないことにより、 ・ インフラ面の未整備と、充電時間の長さ
環境にやさしい交通機関である
や充電一回あたりの走行距離の短さな
どの技術面の問題
一宮町
・ 低公害バスとして、環境面から ・ 充電施設の設置など、検討する必要が
するとメリットがある
北茨城市
多々ある。
・ 他の低公害車に比べて、環境対 ・ 生活交通路線バス車輌としては実用的
策が進んでいる
なハード面が確保できない
佐野市
・ バスの利用者が少ないため、コスト面を
考えると導入が難しい
藤野町
・ 低公害の車両として大変すばら ・ 地形、需要、コストを考えると難あり
しい
練馬区
・ 地球に優しい
・ 経費がかかりすぎる
栃木市
・ 環境負荷が小さく、景観の面か ・ バス本体の経費はもとより、非接触充電
らも優れた交通機関であると思
施設などの整備及びメンテナンスの面
われる
で多額の経費を要すると思われる
331
表3− 62 電気駆動バスのメリット・デメリット:自由回答(5)
回答者
メリットと考えること
デメリットと考えること
つくば市
・ 本市は代表交通手段による自動 ・ 本市の市域は、南北に約 30km、東西に
車の分担率が 63 %と極めて高
約 15km で市域が広いことからインフ
く、バス分担率は 0.7%しかな
ラ整備においての財政的な問題が残る
い。この状況をできるだけバス
分担率を上げることが課題であ
り、その場合、電気駆動バスの
環境面でのメリットは大きいと
考える
宇都宮市
・ 環境面での効果は大きいと考え ・ 充電施設などの管理経費が不明である
られる
本庄市
ため費用対効果が不明確である
・ 排気ガスが出ない為大気汚染が ・ 充電施設などがない。価格が高い
なくなる
国立市
・ 知らなかったので、現時点では比較はで
きない
どの自治体も、電気駆動バスを使うメリットは、環境面で今までのバスよりも大幅に優れて
いる点を上げている。電気駆動である排気ガスがなくせるメリットを高く評価している。
逆にデメリットについても、各自治体とも同様のことをあげている。すなわち、いずれの自
治体も車両コストやインフラ整備の点で問題があるとしている。燃料がガソリンではないため、
新たに充電施設を設置する必要性があること、メンテナンスのコストがかかることなどをあげ
ている。
こうしたことから、車両コストとインフラの問題点が解決できれば、電気駆動バスを導入し
ようとする自治体が増えるのではないかと考えられる。
332
2−3 メリットがあるとすると、貴自治体の場合は、具体的にはどのような用途に適していると
考えられますか。該当する選択肢の番号に○をつけ、さらに具体的な利用イメージがあれ
ば記述してください。
1.住宅地、ニュータウン、産業団地などを巡回するコミューター交通
2.都市の商業中心地などへの導入(パーク&ライドなどとの組み合わせ)
3.観光地への導入(パーク&ライドとの組み合わせ、高速道路のハイウェイオアシスとの
組み合わせ、など)
4.自治体の福祉・健康・文化・生涯学習などの施設を巡回するバス
5.その他
問2-3 MA (N=53)
※パーセンテージの母数はN
26.4
1
13.2
2
14
7
5.7 3
3
60.4
4
30.2
5
0
32
16
10
20
30
40
回答企業数
図3− 42 自治体が考える電気駆動バスの用途
333
表3− 63 自治体が考える電気駆動バスの用途:自由回答
回答者
回答
高崎市
・ 本市で運行している市内循環バスへの導入
栃木県矢板市
・ 温泉バス、学校等各種事業
群馬県利根郡水上町
・ 既存の観光用巡回バスの代わりに使用する
杉並区
・ コミュニティバスへの導入
御殿場市
・ 社会的弱者が多く利用する施設への送迎
さいたま市
・ 仮に当システムで検討した場合,当面広域的な路線バスへの適用は困難
と考えられるため,都心部の循環型コミューターとしての活用が望まし
いと考えます。インフラの整備と航続距離を良く検討する必要がありそ
うです。
静岡市
・ 環境負荷の極めて低い電気駆動バスを、高齢化の進展する住宅地や福祉
施設を巡回させ、「人・まち・環境にやさしい」
、まちづくり
高萩市
・ 当市は公共施設や福祉施設、医療機関などが点在しており、そうした施
設を巡回するバスが望まれる。
三芳町
・ 町内各地から施設への送迎バスとしての利用
栃木市
・ 観光及び商業を中心とする中心市街地を循環し、かつ話題性を兼ね備え
た新しい公共交通機関
八王子市
・ 中心市街地での環境に配慮した買い物を主としたバス
本庄市
・ 市内循環バス
先の設問への回答にみるように、現在の公共交通としてのバス利用のされ方をみてみると、
通勤・通学・買い物などの日常生活のための主要な交通手段となっているか、路線バス以外に、
行政施設、医療・健康・福祉関連施設などへのアクセスに用いられている場合も多い。
そうした中で、電気駆動バスの具体的な用途としてあげられているのは、自治体の様々な施
設を巡回することや、住宅地・ニュータウン・産業団地などを巡回するコミューター交通など
である。
中心商業地を巡るという回答は 7 件、また観光地を巡るという回答は 3 件であった。
334
問 3 電気駆動バスの導入可能性について
3−1 先の 1−1 で掲げた公共交通のためのバスについて、現在運行されているバスを電気駆動バ
スに置き換えていくという可能性はありますか。
1.メリットが大きいので、今後の有力候補として考えられる
2.メリットは認めるが、実用性から他の低公害車(圧縮天然ガス自動車など)を選ぶ可能
性が高い
3.メリットよりもコストなどの点から問題が大きいと考える
4.環境問題は少ないので、置き換えていくニーズが無い
5.その他
問3-1 MA (N=63)
※パーセンテージの母数はN
1
1.6
1
28.6
2
18
54.0
3
28.6
4
6.3
5
0
34
18
4
10
20
30
40
回答企業数
図3− 43 電気駆動バスの導入可能性
今後の有力候補として考えられると回答している自治体として横浜市があった。
しかし、一般的には、メリットよりもコストが高いと判断しているところが多い。また、メ
リットを認めている場合でも、実用性からは圧縮天然ガス自動車などを考えているところが多
い。
先の設問と併せてみると、電気駆動バスの導入において一番問題となっているのがコスト面
のようである。コスト面というのは車両の価格だけでなく、インフラ整備の予算や管理費など
も含まれている。どこの自治体も電気駆動バスが環境面において低公害であるということは少
しではあるが認知している。しかし、実際導入するということになると各自治体の予算の関係
上、導入コスト面が問題になるため実行できないのが現状といえよう。
なお、自治体付近の環境問題が少ないので特に電気駆動バスの導入を考える必要はないとい
った意見も比較的目立っている。
335
3−2 新たにバスを導入するニーズはありますか。その際、電気駆動バスを選択する可能性はど
の程度ありますか.
1.新たに路線バス、送迎バスなどを導入することは考えられない
2.新たなバス導入のニーズがあり、電気駆動バスの採用も検討対象としたい
3.新たなバス導入のニーズはない
4.その他
問3-2 SA (N=62)
※パーセンテージの母数はN
14.5
1
11.3
2
9
7
45.2
3
29.0
4
0
28
18
10
20
30
回答企業数
図3− 44 新たなバス導入に関するニーズ
新たなバス導入のニーズがあって且つ電気駆動バスの採用も検討している自治体は、回答 62
自治体のうち 7 ヶ所であった。それは、横浜市、さいたま市、静岡市、諏訪市、岡谷市、鶴ヶ
島市、及び杉並区である。
336
3−3 電気駆動バスに置き換える可能性があるとすると、それはどのような用途のバスについて
ですか。
表3− 64 電気駆動バスに置き換える可能性のあるバス交通:自由回答
回答者
回答
高崎市
コミュニティバス
長野県諏訪市
コミュニティバス
佐倉市
現在市が事業本体で運行しているコミュニティバス
三ヶ日町(静岡県)
町内循環バス(福祉無料バス)
横浜市
市中心部を運行する路線バス
榛原町役場
役場所有のマイクロバス
栃木県矢板市
市営路線バス
世田谷区
住宅地内等の循環バス等
茨城県東海村
コミュニティ巡回バス
海老名市
コミュニティバス等
茨城県那珂郡那珂町
まずは大都市の路線バスに導入が必要では
群馬県利根郡水上町
主に観光用巡回バス
杉並区
コミュニティバス
東京都調布市
公共施設間(近距離に限る)輸送用 - 自治体運営・財政状況が好転しな
い限り困難と考えます。
さいたま市
都心部の循環型コミューター
長野県岡谷市
コミュニティバス
静岡市
高齢化が進行する地区と中心市街地を結ぶ循環のバスルート
静岡県浜松市
動物園などの遊戯施設内のコミューター
長野県駒ヶ根市
なし
高萩市
バスの導入に関しては山間地住民の交通手段確保の為の民間委託代替バ
スがあるが、山間地運行であるなどから電気駆動バスに置き換えるのは難
しい
北茨城市
現在の性能等から、通勤、通学に利用するような生活交通路線以外の用途
藤野町
今のところ可能性はない
八王子市
中心市街地をきめ細かく回るコミュニティバス
本庄市
なし
現在の公共バスの利用のされ方(問 1−1)をみると、だいたい通勤、通学、買い物などの日
常生活のための主要な交通手段となっているか、路線バス以外に行政施設や福祉関連施設など
へのアクセスに使われている。
それに対して電気駆動バスの用途をみてみると、だいたいがコミュニティバスへの利用と答
えている。今後、電気駆動バスに限らずバスを導入する場合は、用途として地域をより細かく
337
結ぶコミューター交通が重要と考えている自治体が多いことがうかがえる。
また、都心部の巡回バス、観光地の巡回バスなどの回答も得られた。
その他、特殊な用途として、動物園内などの遊戯施設内での利用などもあった。
3−4 電気駆動バスの導入可能性が無い場合の理由や阻害要因をお書きください。
表3− 65 電気駆動バス導入に対する阻害要因:自由回答(1)
回答者
回答
昭和村
・ 本村における公共バスは民間会社との委託契約によって運行されている
ため、単独での導入は困難であると考えられる
高崎市
・ インフラ整備とそれにかかる費用が問題
所沢市
・ 電気駆動バスの認識が薄い
箕輪町役場
・ 車両の価格
佐倉市
・ 車両の価格価格と充電施設の整備費用
三ヶ日町(静岡県) ・ 3-3 で記述のバスは民間バス事業者へ委託運行している。この事業者が導
入しなければ可能性はないものです。
横浜市
・ 阻害要因としては、2-2 において「デメリットと考えること」にあげた項
目
埼玉県岡部町
・ 採算性の観点からそもそも巡回バスを走らせること自体が難しい
榛原町役場
・ 現在の自主運行バスは一日あたりの本数も少なく、大気汚染の公害を引き
起こしていることは考えにくく、また、バス事業自体赤字で存続自体を検
討している状態である。
栃木県矢板市
・ コスト面が問題である
世田谷区
・ 狭い道路ー車両の大きさ、幹線道路の慢性的な渋滞、バス事業者の考え方
栃木県那須町
・ 当町におけるバスは走行中が長いため、1 回の充電で走行できる距離が問
題になると考えられます。
富士川町役場
・ 乗り合い事業者はコスト割れの状況でバス運行しており、経費的に無理だ
と考えられる
富士河口湖町
・ コストの問題
茨城県東海村
・ コスト:インフラ整備、利用率
柏市
・ インフラ整備での物理的課題、導入にあたっての経費的課題
茨城県那珂郡那珂 ・ 採算性とコスト負担が一番の要因。経営上新車購入はせずに中古車を改造
町
しているとのこと。
館林市役所
・ 充電施設や車両価格、県の補助要網に位置づけがない
辰野町
・ 費用対効果が低い、整備コストが高いと思われる
338
表3− 66 電気駆動バス導入に対する阻害要因:自由回答(2)
回答者
回答
群馬県利根郡水上 ・ 予算がない
町
御殿場市
・ 現在のコスト及び経費を考慮するとバス会社に委託を検討せざるを得な
い
松川町
・ コスト面。環境面への影響はさほど大きくないため
赤城村
・ コスト、インフラ等
さいたま市
・ インフラ整備費用(充電設備,車両製作)。運行に関するコスト(電気代,消
耗部品など)
上河内町
・ 財政難
静岡市
・ インフラ整備や車両の購入などに関して,関係機関との調整が困難で計画
が進まない場合が考えられる
静岡県浜松市
・ 乗車定員が少ない。インフラ整備費が高すぎる。走行できる道路が制限さ
れるので路線を容易に変えられるというバスのメリットがなくなる。
静岡県袋井市
・ 現在運行しているバスは、市が補助し路線維持しており、新たに経費をか
けて導入することは無理である。
長野県駒ヶ根市
・ 現状における低床バス導入への対応から実施する
焼津市
・ 市が運行するコミュニティバスは車両を購入したばかりである。路線バス
は民間事業者が運行しており、電気駆動バスの導入も事業主の方針による
高萩市
・ 住民のニーズは広い範囲を運行する路線バスが主である。その場合のイン
フラ整備や山間地を走るにあたっての電気駆動というシステムに対する
不安
三芳町
・ 現在、町としてバスの保有をしていないため、新たに購入する予定はない
北茨城市
・ 電気駆動バスの実用性(車輌、他のハード面)の点から導入は困難と考え
られるため
花園町
・ コストが高い
佐野市
・ バス利用者が少なく、一日の運行回数も少ないことから、コスト面を考え
ると、電気駆動バスの導入可能性は少ないと思われる
藤野町
・ 車両購入∼維持運行までをこれ以上行政で行うことは難しい
栃木市
・ バス利用者が年々減少する中で、環境面でのメリットはあると思うが、施
設整備や運行面での経費は負担になると思われる
八王子市
・ コスト面が不明
宇都宮市
・ 現在のところ低公害車導入の検討はしていない
本庄市
・ コストが高い
国立市
・ 平成 15 年 3 月にコミバス運行が始まったばかりで特に考えてはいない
339
電気駆動バスの導入がない主な理由は、やはり車両の価格やインフラ整備・管理によるコス
ト高によるものがほとんどである。環境面のメリットはほとんどどの自治体も認知しているが、
それ以上に高いコストをかけてまで導入できないという問題が大きいようである。
またその他の理由としては、車両を購入したばかりである、町としてバスの保有をしていな
い、バスは民間会社との委託契約によって運行されているため単独での導入は困難である、な
どがあげられている。
3−5 貴自治体では、パイロット事業的、実証実験的に電気駆動バスを導入するような可能性は
ありますか。課題や条件などを含めてお書きください。
表3− 67 電気駆動バスの実証実験的導入の可能性:自由回答(1)
回答者
回答
昭和村
・ 予定なし
高崎市
・ 実験をするにあたって、費用的、手続き的に負担とならないものであるな
らば検討したい
所沢市
・ 現在可能性は少ない
長野県諏訪市
・ コスト及び保持設備上の問題が許せば検討できる。
三ヶ日町(静岡町) ・ ありません
厚木市
・ 本市の公共交通機関の 1 つである路線バスは通勤、通学をはじめとした移
動手段として重要な役割を担っております。現在本市では、路線バスを質
の高い運行とするための在り方についてその課題整理と解決方策の検討
を行っております。現時点においては導入可能性の有無は明記できません
横浜市
・ 車両の増設費やインフラの整備について国庫補助が得られることができ
れば導入の可能性あり
潮来市
・ 費用対効果の観点から慎重に検討する必要があり、財政難の現状から早急
に結論を出しにくい。
埼玉県岡部町
・ なし
榛原町役場
・ 現在はない
栃木県矢板市
・ 可能性はない
世田谷区
・ 3-4 項目より困難ではないか?
富士川町役場
・ ありません
富士河口湖町
・ 現時点では予測できない
茨城県東海村
・ 現在のところはない
柏市
・ 現在のところ可能性はない
340
表3− 68 電気駆動バスの実証実験的導入の可能性:自由回答(2)
回答者
回答
長野県富士見町
・ 今町では新しい交通システムを検討しております。それによると今までの
大型バスではなく 10 人乗りなどの乗合タクシーのイメージで考えてい
る。今後そのシステムが実用化すれば車両についても今後 10 人乗りの電
気駆動車などを検討しても良いとは思います。
海老名市
・ 課題・・・コスト面(バスの購入、インフラ整備)など
茨城県那珂郡那珂 ・ なし
町
辰野町
・ ありません
栃木県鹿沼市
・ なし
群馬県利根郡水上 ・ 環境を考慮し、考えなければならない問題だが、先立つお金がない
町
杉並区
・ 16 年度中にコミュニティバスを新路線として運行する予定があり、興味
はあるが情報がほしい。バス車両は 2m×7m の小型マイクロバス
東京都調布市
・ 現在のところありません
御殿場市
・ ない
さいたま市
・ 導入,実証運行に対する補助。特に充電設備、車両費
上河内町
・ 今のところありません
静岡市
・ 現在のところそのような計画は無い
静岡県浜松市
・ 電気バスの導入に付いては可能性があるが,今回の非接触給電システムの
バスは考えられない
静岡県袋井市
・ なし
長野県駒ヶ根市
・ なし
焼津市
・ 実証実験において、充電施設などを含めてムダがないことが条件である
が、新規に走らせるルートが現段階ではないので難しい。
高萩市
・ 上記理由により可能性は低い
北茨城市
・ 現時点ではない
佐野市
・ 今のところなし
藤野町
・ 特になし
練馬区
・ ナシ
栃木市
・ 特になし
八王子市
・ ある程度、普及し実績を作ってからでないと取り組みにくい
宇都宮市
・ なし
本庄市
・ なし
341
パイロット事業的、実証実験的に電気駆動バスを導入するような可能性はあるかという問に
対して、ほとんどがないという答えであった。それは、それまでの設問に対する解答からわか
るように、新たにバスを導入するニーズがないといった意見が多いことからきており、現段階
で予算的に電気駆動バスの導入について厳しいという状況の中では、あえて実証実験などしな
いといった自治体が多いようである。また問 2−1 よりわかるとおり、電気駆動バスへの認知度
が低いといったことも影響しているように思える。
こうしたなかで、横浜市、高崎市、諏訪市は、実証実験的な取組に興味を有している。また、
杉並区は、16 年度中にコミュニティバスの新路線の設置を予定しており、参考情報を得たいと
している。浜松市は、電気バスを導入する予定はあるが、AE バスではないとしている。
これら、実験的に導入する可能性はあるといった中で多かったのが、実験的に導入する際の
費用がどのくらいかかるのかといった意見である。今までの設問の回答からもうかがえるとお
り、コスト面が最大の難関であるということができる。
これから電気駆動バスに多く切り換えてもらうおうとするならば、普通の低公害バスと電気
駆動バスがどう違うのか、メリットは何なのかをしっかり各自治体に周知させることがまず必
要であり、さらにその上で、今のコストをより低くできるようにしていくことが、求められよう。
342
5.自治体ヒアリング結果
アンケートの結果から、コミュニティバスなどの導入実績や今後の新規導入・拡充計画を有す
る自治体で、また AE バスについて興味を持ってもらった以下の自治体を対象に、往訪取材を行
った。
(1)アンケートにおいて AE バスの導入や実証実験に前向きの回答を得た自治体(ヒアリング
対象)
1)高崎市
問題となっている排気ガス、騒音、振動の改善に非常に有効としており、市が運行している
市内循環バスに導入したいとしている。また、新たなバス導入のニーズがあり、その際に AE
バスも検討対象としたいとも回答している。
予算、手続きが問題なければ、実証実験にも参加可能性がある。
2)横浜市
低公害バスの導入や排ガス浄化装置の装着を率先して進めているが、それでも苦情がある。
AE バスにつていは、排ガスがでない、省エネルギーなどと評価しており、今後の有力候補であ
るとしている。特に、都心部を運行する路線バスに導入する可能性もある、との回答が得られ
た。
実証実験にも補助があることを条件に参加可能性がある。
3)杉並区
低公害性に対して CNG バスよりも優れていると評価し、コミュニティバスへの導入可能性
があるとしている。
実証実験については必ずしも前向きではないが、情報は欲しいとの希望を有する。
4)諏訪市
AE バスについて、環境対応のほか、地域のイメージアップ、乗客数の増加などのメリットが
あるとしている。その上で、新たなバス導入のニーズがあり、コミュニティバスとして、AE
バスの採用も検討したいとしている。実証実験にも検討可能としている。
5)富士見町
現在のバスについて、利用者が少ないにもかかわらず排気ガス問題を引き起こしているとい
う批判があり、新しい交通システム(10 人乗りの乗合タクシーのイメージ)を検討中としてい
る。AE バスについては低公害ですばらしいと評価しており、それに適用できるのではないかと
の期待を有していて、実証実験にも前向きな姿勢がみられる。
343
(2)ヒアリング結果
以上に掲げた自治体に対するヒアリング結果は、次のとおりである。
1)高崎市
高崎市は、平成 9 年より、コミュニティバスとして高崎市内を走る「ぐるりん」を運行して
いる。
① 高崎市におけるバス交通の概況とバス交通政策
(i)一般のバス事業の概況
・ 民間バス会社の乗車人員数は昭和 60 年の 1/5 になっているなど、一般のバス利用は減少
している。
《受領資料データより》
・ バス路線は昭和 45 年の 125 系統から平成 9 年には 38 系統に激減
・ 乗車人数は平成 4 年の 19,219 人が平成 8 年に 11,436 人に減少
・ 理由は自家用車利用率が高く、渋滞によりバスの定時性が保てないため。
○全国平均 1.65 人/台に対し群馬県平均で 1.21 人/台
・ 乗客数減少による路線廃止、本数減少が更に乗客数減少を招く悪循環もある。
・ カード導入、運賃値下げを行っても衰退傾向は変わらない。
○マイカーから公共交通への転換促進の対策
・ マイカーのほうが環境負荷は大きい。
・ 公共車両優先システム(PTPS)は以前県警から話はあったが実施していない。
・ 車両運行管理システム(MOCS)は実施していない。
・ バス優先レーンは町中に一部あるが道幅が 2 車線と狭く機能してない。
○バス路線、導入車両の状況
・ 他市町へは、バス路線は吉井町と藤岡新町の 2 路線で乗り入れ実施中。
・ カード利用、ノンステップバス導入は行っている。
・ CNG のような大きなハードでは市町村をまたがっての運用は難しい。
(ii)コミュニティバスの概要
(a)事業概要
・ コミュニティバスとして高崎市内のみ「ぐるりん」(200 円バス)を運用。
・ 平成 9 年 6 月から運行開始
・ 当面は、高崎市内のみの事業で、既存路線廃止でもなければ他市とのバス事業は出てこな
い。H17 年 3 月を予定している 5 市町村合併(高崎市、吉井町、群馬町、新町、倉内村)
との兼ね合い。
(b)導入車両と路線
・ 「ぐるりん」を 14 台保有。
・ バス製造会社 3 社から 35、41、43 人乗りを購入。
・ ノンステップ 6 台、ワンステップ 3 台、残りはツーステップリフト付き。
344
・ ノンステップとワンステップは車椅子 1 台、リフト付きは 2 台乗車可。
・ 4 社に運行委託し 7 路線を走っている
図3− 45 車両の外観
表3− 69 車両の仕様
H 社製
I 社製
M 社製
全長
6,990mm
6,990mm
6,990mm
全幅
2,080mm
2,300mm
2,300mm
全高
2,825mm
3,050mm
2,990mm
35 人
43 人
41 人
−座席 16
−座席 19
−座席 18
−立席 18
−立席 23
−立席 22
−乗務員 1
−乗務員 1
−乗務員 1
定員
(c)事業方式と採算性
・ コミュニティバスは、運行費用の 1/4 が運賃収入、残りは市から運行会社に補助している。
・ 「ぐるりん」は民間バス会社への委託運行。バス会社には新しいものをいち早く導入する
ところもあり、会社によって温度差がある。補助金でなく市が全額負担ならば会社は何も
言わない。
(iii)バスロケーションシステムについて
・ 平成 16 年度には「ぐるりん」にバスロケーションシステムを導入する予定。
(バスロケは平成 15 年 5 月 14 日から試験運用中)
・ IC ネットで携帯も含めて見られる
・ 停留所に表示器設置は未設置(維持費、壊されるのを防止する、管理費などの問題がある)
(iv)課題∼騒音、振動等の環境面の課題
・ 住宅地の狭い路地を通るので騒音苦情がある。
・ 以前狭い路地に開設した路線を騒音により撤退した例がある。
345
② 低公害バス・電気バスの導入について
(i)導入しない理由
・ 低公害型バスは燃費の悪さから燃料供給が問題となる。
・ 「ぐるりん」も走行距離が長く、給油がダイヤ的に厳しい。
−年間走行距離 10 万 km、全国平均は 6∼7 万 km
−22∼24km/周を 1 時間半で走り、ターミナルで 20∼30 分停止
−バス停は 500m に 1 カ所が目安
(ii)電気バスの導入を検討するにあたって必要な情報
・ 価格(電気バスはインフラ整備と価格面で現状では難しいが、こなれてきて運行的に問題
が無くなれば将来的には導入できる。)
・ 走行実例
・ 一充電距離(一充電で丸一日走行がベストだが、ターミナルでの充電があれば 1 周でも可)
(iii)電気バスとその他の低公害バス(CNG)との汎用性比較
・ 現時点では CNG に汎用性があるが天然ガスの枯渇を考えると過渡的なものと位置づけて
いる。
・ 将来的には多エネルギーが使える電気バスが望ましいと考える。
(iv)夜間充電について
・ 夜間充電は委託先 4 社の車庫で行うことになる。
・ 夜間充電はメンテナンスが不要と思われる。
(v)非接触充電システムについて
・ 必要と考える。
・ ターミナルでの充電で乗務員負担が減る。
・ バスベイはほとんど無い。
・ コストは、システム全体の費用の 10%以内であることが条件である。
③ 今後の予定
(i)新たなバス導入のニーズ
・ 平成 9 年購入のものから買い換え時期に入り、平成 15 年度から新規に購入開始。
・ 買い換え基準は 10 年以上又は 50 万 km 以上走った車となっている
・ 県の補助金の関係で最低 5 年は使う必要がある。
・ 「ぐるりん」は年間 10 万 km 走るので 5 年で 50 万 km に達するため
・ 補助等の条件によっては、実験的に 1 台電気バスを入れることも検討することが良いかも
しれない。
(ii)導入車両の要件
・ 最低でも 35 名でポンチョの 20 名は厳しい。
・ 理由は通勤時間帯の乗客数とイベント時の対応ができない。
・ 速度は、3 分/km、即ち 20∼25km/h がダイヤ編成速度だが、郊外では法定速度内の 50
∼60km/h で走る性能が必要。
・ コミュニティバスでの低床化は必要。現状はステップがまだ多い。
346
・ 電気バスとした場合の車両価格は、CNG 改造がバス車両価格+1 千万円だが。これが限度。
(iii)実証実験について
・ できるのであれば早期にしたい。
2)横浜市
横浜市では、低公害型のバスの導入に積極的である。また、都心部の路線に一部 100 円均一
のバスを運行しているが、電気バスについても知見を有している。
① 横浜市におけるバス交通の概況とバス交通政策
(i)一般のバス事業の概況
・ バス事業の 70%が赤字で補助金を受けての黒字経営で、実際は累積赤字分が残ったままで
あり、バス事業のあり方委員会が設置されている。
・ バス利用が若干減っている理由は、①企業・学校の週休 2 日制の浸透、②少子高齢化によ
る就労層の減少である。
(ii)マイカーから公共交通への転換促進の対策
・ マイカーが多く、その方が環境負荷は大きい。
・ (マイカーの平日/休日の乗り入れ比較は不明)
・ 公共車両優先システム(PTPS)は一部の路線で採用している。
・ バスロケーションを一部の利用の多いバス停で表示。
・ 携帯での表示はみなとみらいバスのみで実施。
・ ベビーカーを開いたまま乗ることを可能にしている。
・ 割引のある 1 日乗車券を環境保全局との共同事業として冬季に更に割り引く。
(iii)バス路線、導入車両の状況
・ ワンコインバス「みなとみらい 100 円バス(4 ルート)」を土・日・祝日等に運行。
・ うち 2 ルートについては CNG バスを使用。
・ 地元企業の一部経費の負担により低運賃に押さえている。
・ パーク&バスライドを試験実施。
平成 14 年から 2 年間の実験として、10 月と 11 月の休日に 100 円バスに対して実施
100 円バスの沿線にある公共駐車場を利用
347
図3− 46 みなとみらい 100 円バス バス路線概要
② 低公害バスの導入状況
(i)概況
・ 横浜市の低公害型バスの定義から言えば 100%導入済み
(HEV、CNG、DPF、酸化触媒装着車、11 年規制以降のバス)
(PM 排出量が昨年 10 月施行の県条例の基準以下のバス)
(ii)低公害型バスの台数(HEV/CNG)
・ HEV:36 台(うち、DPF 付:7 台、酸化触媒付:10 台)
・ CNG:65 台
・ DPF 装着車:624 台
・ H11 規制車:206 台
・ 酸化触媒装着車:110 台
(iii)課題∼騒音、振動等の環境面の課題
・ DPF 装着車に対しても苦情はある。
・ 酸化触媒バス 110 台の黒煙に対しては苦情がある。
(黒煙は 40%低下するので県条例で認
348
められている。)
・ 住宅地を通るので車そのものに対する騒音苦情がある。
・ 新路線開設説明会で低騒音への要求が出る。
③ 低公害バス・電気バスの導入について
(i)導入予定
・ 代替需要は年 80 台程度である。
・ 買い替え時期は 12 年耐用、NOX・PM 法規制を受けるが、不況なのでメンテをしてでき
る限り伸ばしている。
・ 新規路線の場合は 30 人台のエアロミディ並みの乗車数が欲しい。
(ii)電気バスの導入を検討するにあたって必要な情報
・ 昨年 3 月に東電から Design Line 社のタービン HEV バスを借りて試行したり、三菱自工
の電気バスを見学している。
(iii)電気バスとその他の低公害バス(CNG)との汎用性比較
・ CNG 改造代 1 千万円は公的補助(1/2 は環境省、1/2 は市の一般会計補助)で実施してい
る。電気バスがこれと同程度の改造費ならば魅力的。
・ CNG 充填所は 2 カ所(港北:30 台、滝頭:35 台)
◇充填時間は 10 分/台程度で 2 カ所で現有車両が手一杯
◇設置費用は 2 億円/所で 2/3 が経産省補助
・ この設置を考えると電気バスのほうが汎用性あると考えられる。
(iv)夜間充電について
・ 車庫は 12 箇所で 80 台/営業所。ここで夜間充電は可能。
(v)非接触充電システムについて
・ 有効と考えるが、問題はコスト。
・ 携帯電話程度やヨーロッパ規制値以下であっても公の場にはおきたくない。
・ バスベイの実施率は 50%以下なので一般道路では難しい。
・ 道路の掘り返し規制は条例通り実施。
・ 営業所充電がベター。
(vi)バッテリーの耐久性について
・ 車両と同程度の 12 年を希望する。
・ リチウムイオン(Li-ion)の 6 年は経営的には厳しい。
④ 今後の予定
(i)新たなバス導入のニーズ
・ みなとみらい線の開通に伴い、バス路線を変更。
◇電車に平行するバス路線の廃止
・ 道路新設・改良等により走行条件が整うことを前提に、小型バスを用いた路線新設を検討。
交通空白地域においてもバス路線の通っていないところに設置を予定。
349
(ii)導入車両の要件
・ 路線距離は最長 18km(ベイブリッジ 109 系統)、最短 1.3km(75 系統)
。
・ 120∼130km が 1 日の平均走行距離。
・ 通常は 1 日 1 回の給油だが夏場の燃費の悪い時は 2 回。
・ 一充電当たりの走行距離は 120∼130km が望ましい。
・ 低床バスの導入が義務づけられている。現在のところ 50%(ワンステップを含む)。ここ
数年はノンステップを中心に交通バリアフリー法により導入している。
(iii)実証実験について
・ 国庫補助を前提とした実証実験には、環境保全局と連携の話がつけば乗ることができる。
(iv)その他関連情報
・ LRT の研究をやっている市民団体もある。
・ シーバスによる海上交通は港湾局が所掌している。
3)杉並区
杉並区では、早くから住宅地を通るコミュニティバスの運行を行っており、成功事例として
知られている。
① コミュニティバス(すぎ丸)の概要
・ 杉並区は南北の幹線道路が環八と環七しかなく、たての交通が厳しい。この南北をつなぐ
ものとして、平成 9 年からコミュニティバスを検討し、平成 12 年 11 月から阿佐ヶ谷−浜
田山間 3.7km の路線を開設した。
・ 事業方式は、杉並区がバスを購入し、区が京王バスに運行委託する形で運行している。
・ 料金は 100 円均一、1 時間 4 本(15 分間隔)となっている。
・ バスは、2m×7m の日野製、30 人乗り 5 台で運行。
・ 5 台のうち 1 台は CNG バスへの改造車。4 台はディーゼルのまま。路線バスの CNG 導入
は全国で初。CNG 車は日野リエッセを改造したものである。
・ CNG の充填所は京王バス永福町営業所に設置してある。
② 運営状況
・ 1 日の運行距離は、3.7km×2 往復×4 台・106 便で、1 台 1 日あたり 150km の走行距離
となる。
・ 利用客は、1 日 1,800 名。利用者は増加しつつある。住宅地、通学規制のところを 200m
間隔できめ細かく結んでいること、
及び 15 分間隔という定時性が確保できていることが、
利用者に評価されている。
・ 現在までに既に延 200 万人が利用。中心は高齢者と主婦。運行開始以来、区民 1 人が 4 回
乗車したこととなる。
・ しかし、14 年度までは赤字であったが、平成 15 年度には「区民の足」として定着し、黒
字に転換している。
・ なお、杉並区には民間の路線バスが 58 系統あるが、これの利用者は漸減傾向となってい
350
る。
③ 今後の展開、及び将来に向けた考え方
・ 平成 16 年度 10 月末から、2 路線目として浜田山―下高井戸間約 3.5km の路線を開設予定。
(路線が国道を走るため、計画には国も絡むことになる。
)
・ この路線には 2 台導入するが、2 台とも CNG 自動車を導入する方針。杉並区は既に
清掃車、
公用車に CNG 自動車を NEDO の補助を活用して導入しており、
実績はある。
・ (2m×7m で 30 人乗り程度を考えている。20 人乗りでは厳しい。
)
・ さらに 3 路線目として平成 18 年から 20 年の間に、もう一路線を追加する予定となっ
ている。
・ 杉並区は環境先進都市をうたっており、将来的には、一層環境によい電気バスの導入
ができれば、これ以上のものはないと考えている。
・ コミュニティバスの路線は区内のみを想定している。
・ 今後、道路拡幅などは難しいため、公共交通を充実させるためには、コミュニティバ
スを拡充するということでしかできない。
・ コミュニティバスが赤字になることはやむを得ないことである。自治体がバスを運行
するのは黒字にするためではなく、住民サービスなど別の意味がある。
・ 但し、事業手法としては、民間事業者に任せる、地域の商店街が費用を負担する、な
どの手法もありえる。
④ コミュニティバスの課題と評価
・ CNG 車に改造するために 800 万円かかった。NEDO、国土交通省などから改造費を補助
してもらっているが、それでも半額に留まる。
・ バス停で電動車椅子を載せるためには警察の許可がいるが、幅員が狭いためにバス停留所
はスペースが狭く、33 箇所の停留所のうち 6 箇所しか認められていない。
・ すれ違いなどのために電柱を 17 本抜いた。
・ 本事業の年間経費は 1,500 万円以上となっているが、高齢者が外出することを助けること
によって、寝たきり老人が減るという効果がある。高齢者が一人寝たきりになると 1,000
万円かかることを考えると、コミュニティバスは安いということもできる。(コミュニテ
ィバスは動く公共施設としての位置づけ)
・ なお、区民からの評価としては、当初は騒音や振動に対する苦情も少しあった。
(CNG 改造車は音がうるさい。排ガスに対する苦情よりもこれらの方が多い。)
・ バリアフリー法があり、低床式のバスは不可欠である。
⑤ 電気バスの導入、非接触式給電について
・ 上述のように電気バスの環境面のメリットは認められるが、冒険はできず、実績、実例重
視となる。安全面、購入面を含めて総合的な判断が求められる。電気自動車が市場にどん
どんでていればリーズナブルな選択として考えられるが、現状では厳しい。例えば、次の
点があげられる。
351
◇購入コストがどうか。通常のものよりも 800 万円高であれば許容できる可能性がある。
◇インフラ整備が必要。充電施設の整備が気にかかる。
◇現在既に電気自動車が普及していれば問題は無いが、電気バスの汎用性を CNG 車と
比較するとどうか。
◇但し、CNG 車は一般車からの改造であるので、汎用性には疑問。
◇ランニングコストなどの実績データがないと導入困難。
・ 多摩地区では 20 人乗り程度のバスも導入されているが、杉並区の場合は、バスは 30 人乗
れることが必要である。
・ 平成 19 年度頃に想定される 3 路線目には電気バスを導入することも考えられる。
・ 非接触式給電設備を道路下に埋めることについては、杉並区は電線地中化を勧めているこ
ともあり、特に問題ないと理解。ただし、全て地中というのは違和感がある。なお、道路
掘り返し規制はある。
・ 道路占用になるので、他の部署との連携・調整が必要。
(なお、公共交通の場合は占用料は発生しない。)
・ 要件としては、次の路線が 3.7km×2(往復)×106 便/4(台)≒200km が 1 日の平均
走行距離となるので、一充電当たりの走行距離は上記が望ましい。(途中の充電所があれ
ば別)
⑥ 補助事業・実証実験について
・ すぎ丸 5 台のうち 1 台を電気バスにするという実証実験はあるかもしれない。ただし、次
の点で難しい。
◇ランニングコストに関する実績がないと、補助事業としても実証実験を行うことは困
難。
◇補助事業は自治体の負担が大きい。100%補助といわれていても、補助対象以外の経費
が多く、財政的に問題を生じる例が多い。
4)諏訪市
諏訪市では、既存路線バスの経営問題や、厳しい地形に対応しつつ公共交通サービスを確保
する視点から、市内にコミュニティバスを複数路線走らせている。また、夏季に地元のボラン
ティア団体が諏訪湖一周路線を走る「環境バス」を運行していた実績を引き継いで岡谷市、下
諏訪町と共同してコミュニティバスも運行している。
① コミュニティバスの位置付け
・ 諏訪市は、諏訪湖の水質悪化を受けて、水質の浄化などをはじめととする環境への対応が
大きな課題となっている。コミュニティバスもこうしたことと関連付けられている。
・ 合併もひかえ、広域行政の中で広域的な交通体系としてバスを位置付けている。
・ 中心市街地の活性化。駅前を中心とした中心市街地が国道で分断されてしまっており、交
通量も多い。そのため、中心市街地の活性化のためにパーク&ライドやパーク&バスライ
ドなどを検討。その一環としてコミュニティバス(かりんちゃんバス)を導入した。
352
・ 公共交通としてバス路線を整備することを長期総合計画の中で位置付けている。
・ なお、かりんちゃんバスの他に、諏訪湖を一周して諏訪市、下諏訪町、岡谷市を通るスワ
ンバスがある。これは、過去に夏の環境事業として地域のボランティアが行っていた諏訪
湖一周バスの流れを汲んだもので、岡谷市、下諏訪町と共同で運行している。
② コミュニティバス(かりんちゃんバス、スワンバス)の概要
・ 現在 4 路線を運行。バスはかりんちゃんバス 5 台。(なお、スワンバス 2 台で運行)
・ バスの調達は、新車で 1,000 万円するバスを中古(500 万円)で、諏訪バスと JR バスか
ら調達している。
・ バスは、定員 30 人。いくぶん低床ではあるが、車椅子への対応はできていない。車種は、
かりんちゃんバスが三菱ローザ、スワンバスが三菱エアロミディである。
・ 各路線とも、1 日 5∼8 便。料金は 150 円均一としている。
・ 路線距離は、1 路線で 29km 程度。トータルで年間 225,000km(1 年間 5 台)で、1 台当
たり 4.5 万 km となっている。
・ バスの車両基地は茅野市内にある。
・ 運行主体は諏訪バスと JR バスであり、市が諏訪バスと JR バスに補助金を交付して運行
している。運行委託ではない。赤字部分を補助金で補填するという覚書を交わしている。
それは、責任の所在をバス会社に限定しておくことが大きな理由。
・ 実績は、1 便当たりの乗客数(始点から終点までの間にどこかで乗った人数)は、平均 14
人∼15 人である。但し、朝夕は立っている乗客もいる。
・ 市からの補助は年間 3,900 万円。内訳は、赤字分 2,500 万円、既存バス路線の料金統一化
による収入不足部分に対する補填 600 万円、バスの新調(2 台分)、及び路線新設に係る
費用となっている。なお、来年度以降の補助金の額は 3,500 万円の予定である。
・ 参考:コミュニティバスの事業形態としては、一般的に 4 条許可の業者(路線バス事業者)
に頼む場合と、貸切りバス業者に委託する場合とが考えられる。
③ コミュニティバスの課題
・ 利用者の利用時間帯との対応
・ 便数が少ないこと
・ 朝夕には渋滞がある。バス優先路線をとることは、道路幅員の関係でできない。
・ バスがディーゼルエンジンバスで、環境対応型となっていない。(諏訪バスは上高地線も
運行しているが、ここではディーゼルハイブリッドバスを投入している。しかし、コスト
が高く、諏訪市内では導入していない。)
・ 路線新設の要望はあるが、道路幅員が狭く、難しい状況。すれ違いができないところもあ
り、より小型の 20 人乗りバスのほうが良い場合もある。
・ コミュニティバスは、料金が 150 円と安く、既存の路線バスの乗客を取ってしまう場合が
ある。(スワンバスは 1 路線の距離が 26km であるが、150 円均一)
・ 高齢者が利用するためには、本格的な低床バスが望まれる。しかし、よい低床式バスがな
い。現状では、本格的な低床バスは、車両の床に段差がある、車椅子のスロープで座席数
353
が減るなどの問題がある。椅子などが跳ね上げ式になっているものがあればよい。
④ 環境対応型バスの導入に当たってのネック補助事業の必要性
・ ディーゼルハイブリッドも圧縮天然ガス(CNG)車もコストが高く(ディーゼルハイブリ
ッドバスの価格は普通のディーゼルバスの 2 倍、CNG バスは 800 万円高)、導入は難しい。
・ また、初期コストだけでなく、総合的な視点が必要。すなわち、バスの価格が高いだけな
らば、はじめの段階では補助金を活用して導入することはできるかもしれないが、ランニ
ング部分でのリスク、管理コスト、更新時期、車両点検コスト、耐久性などが問題。CNG
バスの導入を見送っているのはこうした理由。
・ 電気バスについても、情報がない。必要な情報としては、インフラ(充電)のコストが特
に問題でないか。
・ 手続きが簡便な国の補助で、且つ補助率が高い支援策が必要。
⑤ CNG バスと電気バスの比較ポイント、及び電気バスへの期待と懸念
・ CNG バスもまだ諏訪にない状況で、よくわからない。比較ポイントとしては、コストの
問題が第一。
・ CNG スタンドも諏訪には一つもない状況。充電設備に補助金がつくならば、電気バスの
ほうが導入しやすいかもしれない。
・ 但し、電気自動車の方が環境対応型としてインパクトは強いだろう。また、そのために乗
ってみる、という人も出てくるだろう。例えば、諏訪湖一周バスに電気自動車を導入する
とよい。合併が実現した場合には、シンボル的に導入するなどが考えられる。
・ 昔の路面電車風のバスもあってよいのではないか。市民からもこうした意見が出されてい
る。
・ 電気バスへの懸念としては、諏訪市は路盤が弱く、土木工事は高くつく。東海地震の対策
区域でもあり、充電施設を道路下に埋めることには理解を得るのが難しい可能性もある。
・ その他、ステーションが 1 箇所で足りるのかどうか、充電時間がどれだけかかるのか、充
電のためのマニュアルなどが課題。電気=高いというイメージも払拭し難い。
354
図3− 47 車両の外観
⑥ 今後の展開予定
・ 富士見町ではディマンドバスの導入を進めているが、諏訪市でもディマンドバスを導入す
るアイデアもある。これは、中心市街地に向かう放射線について、地区の状況によってデ
ィマンドバス、コミュニティバス、路線バスを併用するもの。
・ 中心市街地を一つのエリアとして、ここには循環バスを走らせる。各方面からいろいろな
バスで来て、中心市街地は循環バスで回る。パーク&バスライドの仕組みを併用する。
・ こうしたシステムにすることで、コストの節約と乗客の増加が見込まれる。
・ ディマンドバス(福祉予約バス)の運行の主体としては NPO も考えられる。
コミュニティバス
通常型の路線バス
中心市街地
ここは循環バスで回る
パーク&バスライド
通常型の路線バス
ディマンドバス
図3− 48 諏訪市において想定される今後のバス交通システムの概念
355
・ もう一つのイメージとして、観光用に環境対応型のコミュニティバスを走らせることがあ
るのではないか。諏訪市は民間や公による美術館が多く、下諏訪町や岡谷市も美術館、博
物館をもっている。そこに導入することによって、イメージアップが期待される。
・ 諏訪湖一周バスに導入することによって、イメージアップが期待される。
・ 電気バスを導入すれば、よりイメージアップにつながることが期待される。
・ なお、パーク&ライド、パーク&バスライドは、国土交通省の交通社会実験事業として応
募することも検討したが、市には既にいろいろな事業が導入されているために、当面は見
送った。但し、中心市街地の活性化計画などがまとまれば、社会実験に応募したい。
5)富士見町(長野県)
富士見町では、既存の路線バスの利用者が低迷し、経営も不振であることなどを背景として、
平成 16 年度から、新たな地域交通システムとしてディマンドバスを導入する予定である。
① 既存バス交通の問題点とディマンドバスの導入背景、経緯
・ 富士見町では、今現在町内を走る 5 つのバス路線が走っており、町としても 2,000 万円/
年の補助金を諏訪バスに支出しているが、その全てが赤字状態であり、町内の路線バスを
継続していくことが苦しい状況である。また、路線バスの 1 日の平均利用者が 3 名程度で
ほとんど空車に近い状況である。更に、各地では道路運送法の改正(平成 14 年 2 月)に
伴い不採算路線からの撤退会社などが出てきている。今後富士見町においても補助金の増
額やバス会社が不採算路線の規模縮小、撤退などと今後のことを考えると、新たな交通手
段の検討を行わなければならない。また、近隣の市町村においては、独自に運営して、バ
ス等を走らせたりしているケースが見受けられる。富士見町についても新たな交通サービ
スの検討が必要になってきている。
・ その中で、福島県小高町が先駆けとして福島大学の奥山教授の指導で NTT がシステム開
発を行ったデマンド交通システムがあり、その交通システムを富士見町としても導入した。
(富士見町のデマンド交通システム運行開始は全国で 10 番目の導入自治体)
・ 国土交通省と富士見町の共同事業として、この 3 月に富士見町デマンド交通システム「富
士見町すずらん号」として導入し、実証実験を実施。その後実際の本格事業に移る。
② デマンド交通システム「富士見町すずらん号」の概要
・ 福島県小高町と同様のシステムを導入する。
・ 本格運行の事業主体は富士見町商工会で、町が商工会の経営赤字分を補填する。
・ 富士見町すずらん号の車種は 10 人乗り(定員 9 名)のワンボックスカー。諏訪バス㈱と
富士見町高原タクシー(有)の 2 社が 2 台ずつで 4 台を借上げる。
・ 運行エリアは、富士見町 3 地区(3 路線)。300 円均一料金。(1 乗車ごと)1 路線は平均
7.5km。往復 15km。各路線とも 1 日 13 便の予定。
・ 富士見町すずらん号の仕組みは、商工会に予約センターを設置し、利用者が 30 分前まで
に電話で何時の便で何処まで行きたいという予約をすると、自宅まで迎えに来て目的地へ
356
運んでいただける。予約センターのコンピューターには「GIS」
(地理情報)を、車の誘導
には「GPS」を導入。(登録者が電話をすると、予約センターから運転手に場所を指示す
る。)なお、登録者は現在人口 1 万 5 千人のところ、6 千人強が登録をしている。登録が無
くても、また住民以外(町外の住民や観光客)利用可能。その場合は、指定されているバ
ス停か地区の公民館(区役所)などに迎えに来る。
・ 隣接の白州町の住民も一部登録している。ただし、ディマンドバスの運行エリアは富士見
町内のみに限られる。白州町の登録者は、富士見町内の停留所まで来て、そこでディマン
ドバスに乗る。
・ すずらん号の制度としては、道路運送法「21 条の 2」の乗合タクシー事業の許可を得て実
施。
諏訪
バス
赤字分を補助
富士
商工会に補助
契約
見町
商工会
契約
事業主体
赤字分を補助
高原タ
クシー
図3− 49 富士見町におけるディマンド交通システムの運用
③ すずらん号のメリット
・ 今までは、バスの時間に合わせてバス停まで人が動いていたが、すずらん号の導入によっ
て、人に合わせて目的地、乗車場所まで車が迎えに来る。ということになる。
・ その結果、利用者が増えることが想定される。(富士見町が実施した住民を全戸対象とし
たアンケートでは、今後利用したいとの回答も含め 7∼8 割に達した。中には 500 円支払
っても利用したいと言う回答が 1 割近くあった。)
・ 電話 1 本で自宅前まで迎えに来て、目的地まで送迎してくれるので、まちなかへ数多く足
を運んでいただける。また、それに伴い商店街も潤う。公共交通機関・タクシー利用者が
年々低迷している中で事業者の就業対策にもつながる。町の補助金の削減にもつながる。
(三方一両得の成立)でそれぞれにメリットがある。
④ 導入車両に関する要件や課題について
・ 運行エリアは標高 700m から 1,200mに達し、馬力の大きな四輪駆動車が必要。
・ ディマンドバスの売り物は利用者の戸口まで車が入るということであるが、そのために、
10 人乗り程度でないと入れない。
357
・ 車は車椅子に対応はしていない。低床でもない。但し、車椅子対応の車は、ふれあい福祉
バスがあり、これで対応している。
(1 回 450 円)
⑤ 低公害車や電気バスの導入について
・ 上述のように馬力の大きな四輪駆動車が必要であるため、低公害車では難しい。
・ 電気バスについては、寒冷地であるため、バッテリーに不安がある。
⑥ 福島県小高町の実績
・ はじめは利用者がいなかったが、次第に口コミなどで利用が広まり、年間利用者が 3 万人
に達し、町の補助金もゼロとなった。
・ 商店街の活性化にも効果がある。
・ 利用目的は、自宅から出発するときは、5 割が病院。帰りは商店街から自宅へが 5 割。こ
のように典型的には、病院に出かけ、商店街に回って買い物をし、そこから自宅へ帰る、
というパターンがみられる。
358
6.AE バスシステムの導入モデル案
以上に紹介した調査をふまえると、AE バスシステムは、道路空間における省資源・新エネルギ
ー導入事業として次のような適用のしかたが考えられる。
なお、ここでは、バスだけに留まらず、小型の電気自動車の活用も、省資源・新エネルギー導
入の視点からとりあげた。
(1)都市中心市街地の循環バスモデル
表3− 70 低公害車の導入事例からみた電気自動車(EV)の適用イメージ
分類
利活用事例
適用車種イメージ
中 心 市 街 地 に <都心部の低公害循環バスモデル>
<適用車仕様>
お け る 集 中 導 ・ 平成 15 年 8 月から東京駅八重洲口∼東 ・燃料電池自動車
入
京テレポート駅間と門前仲町∼東京テレ (トヨタ自動車、日野自動車製)
ポート駅間で燃料電池バス 1 台による営
業運行を開始。
(燃料電池自動車の実用化
のための技術データ収集と普及啓発を目
的とした東京都のモデル事業)
・ 平成 15 年 8 月から、東京駅丸の内新丸 ・タービン EV バス
ビル前からパレスホテルなどを巡る一周 (ニュージーランド製)
30 分のルート、及び東京駅八重洲口近辺
から中央通りを巡る運行ルートで、日本
初の電気バス(タービン EV バス)を運
行。(東京電力、バス会社)
<適用車仕様> EV 軽自動車
<業務用自動車共有モデル>
・ 大阪市における都心部での業務用電気貨 ・価格:290 万円
物自動車の共同利用システム。小口物流 ・一充填当り走行距離:110km
事業者を対象に、荷物の運搬に共同電気 ・標準充電時間:7 時間
自動車を使用。運搬後近くの指定駐車場 ・充電電力:14.4kWh
への返却後、人の移動には地下鉄、バス
等の公共交通機関を使用。都市部におけ
る、渋滞・駐車・自動車排ガス問題に代
表される都市交通問題の解決を目指すモ
デル。
359
(2)住宅地のコミュニティバス/送迎バス(ディマンドバス)モデル
表3− 71 低公害車の導入事例からみた電気自動車(EV)の適用イメージ
分類
利活用事例
適用車種イメージ
<適用車仕様> EV 軽自動車
住 宅 地 に <セカンドカー共有モデル>
お け る 導 ・ 郊外住宅地でのセカンドカーニーズに対応 ・価格:290 万円
入
して住宅地周辺数箇所に電気自動車ステー ・一充填当り走行距離:110km
ションを設けて共同利用するモデル。電気自 ・標準充電時間:7 時間
動車 50 台、車両ステーション 8 箇所を整備 ・充電電力:14.4kWh
(東京都多摩ニュータウンなど)。
<通勤/業務自動車共有モデル>
<適用車仕様> EV 軽自動車
・ 環境共生生活都市圏を目指す神奈川県央湘 ・価格:290 万円
南地域では、朝夕の通勤時に鉄道駅まで自動 ・一充填当り走行距離:110km
車を利用する市民と、日中の業務に自動車を ・標準充電時間:7 時間
使用する企業が小型電気自動車を共同利用 ・充電電力:14.4kWh
するシステムを導入している(市民モニター <適用車仕様> CNG 軽自動車
12 名、事業所 6 社、市役所が参加)
。
・価格:200 万円
・一充填当り走行距離:180km
・充填量:8Nm3
<送迎バス活用モデル>
<現在ある適用車仕様>
・ 市内の私立幼稚園、保育所の園児送迎用に天 CNG 小型バス
然ガス自動車を導入するモデル。大気汚染の ・ 価格:934.7 万円/台
緩和と地域の環境教育に役立てることを目 ・ 一 充 填 当 り 走 行 距 離 : 200 ∼
250km
的に実施。
・ 充填量:58.8Nm3
コ ミ ュ ニ <コミュニティバスとしての利活用モデル>
テ ィ バ ス ・ コミュニティバスとしての導入。特に、住宅
<現在ある適用車仕様>
CNG 小型路線バス
としての
密集地など大中型バスの走行が困難な狭い 価格:700∼800 万円(改造費のみ)
導入
街路を運行するため、エンジンの低公害性・ 一充填当り走行距離:160km
静粛性に優れた CNG バスが利用される(埼 ガス充填量:46Nm3
玉県上尾市、桶川市、東京都杉並区など多数
事例有り)
高齢者・福 <福祉車両としての導入モデル>
<現在ある適用車仕様>
祉 用 交 通 ・ 大阪市では市の環境基本計画に基づき、福祉 CNG 小型バス
手段とし
施設等が送迎用に使用する車両に新規に天 ・ マイクロバスサイズの福祉自動
ての導入
然ガス自動車を導入する場合の助成制度を
車の改造費:270 万円
実施。天然ガス自動車への改造経費の全額を ・ 一充填当り走行距離:130km
・ ガス充填量:26.6Nm3
大阪市が助成する制度。
360
(3)観光地・環境バスモデル
表3− 72 低公害車の導入事例からみた電気自動車(EV)の適用イメージ
分類
利活用事例
適用車種イメージ
観 光 地 に お け <観光地移動体としての利活用モデル>
る導入
神戸市の事業は現在休止中
・ 神戸市におけるエコカーレンタル事業。
低公害車を実際に体験することにより身
近に感じてもらうこと、観光地周遊の利
便性向上、電気自動車利用効率向上を目
的としたモデル。
・ 京都市におけるパブリックカーシステム
事業。環境問題のみならず、交通渋滞、
騒音、駐車場不足といった交通問題の解
決を目的に、市内 6 ヶ所に設置された車
両ステーション間の移動手段として電気
自動車を利用する。
<観光拠点送迎バス活用モデル>
・ 栃木県奥日光市を貫く日光市道 1002 号
<現在ある適用車仕様>
CNG 中型路線バス
線はマイカーの乗り入れが著しく増え、 ・価格:約 2,600 万円
周辺環境の自然破壊が深刻な状況となっ ・一充填当り走行距離:200km
ていた。そのため、平成 5 年 4 月に一般 ・充填量:90Nm3
車両乗り入れを禁止し、その代替交通手
段として低公害バスの導入を実施。平成
12 年度の年間利用者数は 10 万人に達す
る。低公害バスが自然環境保全のシンボ
ルとなっている。
・ 富士急行では「より環境にやさしいバス」
として CNG バスを導入し、富士山の麓
から五合目までの区間の運行を実施。現
在では、富士登山路線を中心に 18 台の
CNG バスを運行。
361
Fly UP