...

台湾知財ニュース(16年10月号)

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

台湾知財ニュース(16年10月号)
台湾知財ニュース(16年10月号)
・台湾特許取得数、ここ10年間
・バーバリー・チェック
デマに過ぎない
5割の大幅増
コピーしても問題無し?
知財局は緊急説明
・実用新案に方式審査導入 審査所要時間が10ヶ月短縮
改正法施行以来2ヶ月間 処理済案件8000件に
・本や雑誌のコピーはどこまで認めるか
知財局が基準策定へ
教育界から反発強まる
・商標の類似、商標権者の同意を得て併行記録も可能
❏台湾特許取得数、ここ 10 年間
5 割の大幅増
経済部知的財産局がついこの間発表した特許分析データによると、ここ十年間の台湾
における特許出願件数を全体的に見て、プラス成長の傾向が強く、1994 年の 4 万 2,412
件から 2003 年の 6 万 5,742 件とおよそ 5 割増だったことが明らかになった。近年は特
に発明にかかる特許出願の著しい成長ぶりが目立っていて、実用新案は発明特許ほどの
成長ぶりではないが、出願件数が年々低下している意匠のほうよりはまだましだ。2003
年の台湾本国人による出願状況をみてみると、実用新案出願が断然多く、その次は特許、
意匠。逆に外国人による出願の件数は特許、意匠、実用新案の順となっている。
台湾法人による出願案件を年間別に集計した結果を見れば、1999 年から 2003 年まで
の増え幅が大きいのに対し、2000 年と 2002 年の特許出願件数が比較的少なく、そして
2001 年と 2003 年は上昇の傾向を示している。最近五年間の企業及び研究機関の出願件
数もプラス成長のケースが多く見られ、全体的に言えば、トップ 10 はすべて半導体・
電子・デジタル産業が獲得しているものの、オプト-エレクトロニクス分野に関する特許
出願件数も多くなっている。
一方、登録件数のほうをみてみると、ここ十年間の特許登録件数も出願件数に正比例
して 1994 年の 1 万 9,032 件から 2003 年の 5 万 3,034 件と二倍以上に成長している。本
国人による実用新案登録出願の登録件数が最も多いが、ここ数年その数を追い越す勢い
を示している特許登録件数に比べると、成長率は緩やかな傾向になっている。外国人の
登録状況は相変わらず特許が主力。
知的財産局ニュースリリース 2004.10.19 ほか
(解説)
ここ 10 年間、特許出願件数がプラス成長となったのは台湾だけでなく、アメリカ、
欧州、日本においても上向きの傾向が強い。1994 年から 2003 年までのデータをもとに
みると、特許出願件数の成長率は、欧州が 101.6%でトップを切り、アメリカが 77.61%
で欧州に次いで第二位、そして台湾が 55%で第三位獲得。日本での特許出願受付件数は
一番多いが、伸びが鈍い。
2003 年の台湾人によるアメリカ特許商標局への新規出願は 13786 件で、昨年に比べ
て 10.39%増え、外国人による出願では第三位。日本特許庁への出願件数は 3375 件で、
2002 年を 11.5%上回って、外国人出願では第五名。欧州特許局への出願件数はわずか
483 件で、前の年と比べて 13.38%の成長があったものの、件数が少ないため、ランクイ
ンしていない。最近三年間、アメリカへの出願は最も多く、平均で 1 年当たり 1 万件余
り、外国人出願では第三位にランクされる。日本特許庁への出願は 1 年当たり約 3 千件、
外国人出願では第 5 から第 6 位の間を推移。欧州特許局への出願はこれと言ったほど目
立つものではないが、確実に増えつつある。
一方、2003 年の外国人による台湾への特許出願は件数の多い順から日本、アメリカ、
ドイツ、韓国、オランダ、スイス、イギリス、フランス、イタリア、中国となっている。
特許出願状況から、技術の研究開発力はやはり日本、アメリカ、欧州連合等先進国が強
いという結論を出すことができる。
さらに各国の特許登録件数をみてみると、1994 年から 2003 年にかけての十年間、台
湾は 178.66%の成長率を記録し、各国の間でも一段と際立っている。アメリカは 64.65%
で第二位、欧州は 42.84%で第三位、そして日本はマイナス 5.66%となっている。日本は
1996 年から減少の傾向に転じ、2001 年から 2003 年 12 月までの時点で 3 年連続してア
メリカに追い越されている。
2003 年の台湾人のアメリカへの特許出願が登録された件数は 6676 件で、前の年に比
べて 0.8%の減少となったが、それでも外国人特許出願の登録件数ランキングでは第三
位の座を保っている。日本特許庁が特許登録を認めてくれたのは 1979 件で、前の年よ
り 18.75%の増加。欧州特許局への出願が登録された件数はそもそも出願が少ないため、
僅か 65 件にとどまった。それでも前の年に比べて 30%の成長率とまだまだ努力の余地
がある。
❏バーバリー・チェック
デマに過ぎない
コピーしても問題無し?
知財局は緊急説明
英国王室御用達ブランドのバーバリー(BURBERRY)、ダックス(DAKS)はいずれも特
有の格子柄で欧米の数々の著名人から愛用され、世界中にその名を馳せ、今やチェック
のバッグやマフラーが町中に溢れかえるぐらいのお馴染みの定番グランドとなっている。
その有名なバーバリー・チェックは台湾においても商標登録されている。ところが、最
近インターネット上で、バーバリー・チェックの縞模様には商標権が存在せず、コピー
して警察に捕まっても罪に問われることはないうんぬんという噂が流されている。これ
に対して、知的財産局はきのう、緊急声明を発表した形で、バーバリー社の登録商標は
わが国商標法によって保護されていて、如何なる権利侵害行為も民事上の損害賠償責任、
さらには刑事責任が追及される、と説明した。
黒、赤、ベージュで構成されているバーバリー・チェックは 2000 年に商標として登録
済みであり、そのほかにも文字やロゴで構成されたバーバリー社所有の他の商標が多数
登録されていて、ダックスのハウスチェックもすでに商標登録されている。要するに、
二社の格子柄は商標法第 7 章と第 9 章による保護を受けており、コピーは問題無しとい
うのは事実無根のデマに過ぎない。他人の知的財産権を尊重すべく、業者や代理店はく
れぐれも法に触れないように注意が必要であると、知財局商標権チームの責任者である
王美花女史は述べている。
知的財産局ニュースリリース 2004.10.29 ほか
(解説)
1993 年以前の商標法では、バーバリー、ダックスが商品に使う格子柄は、単なる装飾
用の模様であって顕著性に欠けるとみられていたので、商標として登録が認められなか
ったが、1993 年 12 月の法改正で、第 5 条第 2 項に「出願人が使用し、かつ取引上出願
人の営業上の商品を識別する標章になったものは、特別に顕著性があるとみなす」が定
められたのをきっかけに、登録を受けようとする商標が実際に使用され、しかも取引に
おいて出願人の商品を識別する標章として認知されるようになったことさえ証明されれ
ば、商標登録が可能である。バーバリー、ダックスの格子柄は長年広く商品に使われて
いたことにより、商標として必要な識別力を持つようになったと認定されたため、登録
された。
この間、ネットオークションで出品者が偽ブランド品を真正品として販売し、多くの
落札者からお金を騙し取ったニュースが世間を騒がせたことが、消費者のブランド品に
対する盲目的な追求と、偽ブランド品が市場に氾濫している問題を反映している。
ブランド品を商品自体の基本的な性能がいいから純粋に愛用する人もいるし、見栄を
張ってつい買ってしまう人もいる。お金のある人はもちろん、お金のない人は周囲から
馬鹿にされないようにブランド品を身につけて自分を良く見せようとする。だから、経
済的に余裕のない人間のこういった欲望を満足させるために偽ブランド品がこの世に誕
生するわけである。台湾では偽ブランド品を「超 A」、「A」、「B」、「C」と幾つかの
ランクに分けている。デザインも素材も真正品にそっくりの模倣品のことを「超 A 貨」
という。当然、その値段もやや高め。偽ブランド品が市場に出回ることで、本物のブラ
ンド品メーカーは多大な損失を受けているが、ブランド品そのものの価値にはさほど大
きな影響は生じないだろう。例えば、日本独自のバーバリーブルーレーベルは本拠地の
イギリスのブラックレーベルより値段が低いうえ、トレンディーなデザインと色使いの
良さが顧客を集める大きな要因になって、ここ数年、台湾では若者を中心にブームを巻
き起こした。そのせいか、より安価で手に入れる模倣品が町中に溢れている。消費者が
値段や素材などから模倣品であることを知った上で購入するはずだから、混同誤認なん
てことはまずなかろう。しかし、周知商標の知名度にただ乗りするだけで、悪質業者の
不法利得は膨らむ。すると、登録商標の所有者の権利はどうなるか。商標法上の保護の
欠如により公平取引法に救済を仰ぐほうが得策である。
著名商標に対する保護を考えるには、直接或いは間接に混同誤認を引き起こす虞があ
るときだけに限るべきではない。混同誤認の虞がない場合をも保護の対象範囲にカバー
すべきである。但し、この場合の商標に対する保護は、第三者による違法な使用があっ
たことが先決である。
ブランド品の商標を保護することと、それらの模倣品がはたして商標権侵害を構成す
るかどうかを認定することについて、法律による更なる保護が必要だと思われる。
❏実用新案に方式審査導入
改正法施行以来 2 ヶ月間
審査所要時間が 10 ヶ月短縮
処理済案件 8000 件に
知的財産局によると、今年 9 月 22 日の時点で特許、実用新案、意匠の未済件数は 8
万 4,700 件にのぼり、2002 年末の 11 万 406 件に比べて 2 万 5,706 件の大幅な減少とな
っている。23%の減少幅が実現されたのは、今年 7 月1日に改正専利法(特許法)の施
行に伴い、実用新案出願に形式審査(日本での方式審査)が導入されたことにより審査
所要時間の短縮が図れたというのが大きな要因と考えられる。くわえて、改正法施行後
において未だに査定がなされていない実用新案にかかる未済案件については、すべて方
式審査によって処理されることになっていることから、法改正によってそれまでの旧制
から新制へ移行するときの過程を円滑に進め、出願人に与える影響を最小限に抑えるた
めに、実用新案の未済案件処理が優先された。その結果、2003 年 1 月から今年 6 月まで
初審、再審査の処理済実用新案出願件数はおよそ 4 万 3,300 件に達した。
知的財産権が重要視されるようになるにつれて、特許出願件数が逐年増加している。
知財局によれば、2003 年の一年間の初審及び再審査、並びに異議申立、無効審判請求等
関連事件が 8 万 1,446 件に達し、前年比で 7.94%のプラス成長となり、そして今年に入
ってからもその増加傾向が続いているという。
改正法施行後、実用新案に方式審査が導入されたため、方式的要件に合致し、かつ公
序良俗に反しないものであれば、実用新案権が与えられる。今まで平均して 16 ヶ月を
要する審査時間は一気に 6 ヶ月に縮み、こうした審査時間の大幅な短縮が、案件処理の
迅速化につながった。したがって、施行して 2 ヶ月以来の実用新案出願処理済案件数は
驚異的な 8,000 件にのぼった。審査能率の向上により、台湾における特許、実用新案、
意匠の登録出願から権利取得までの平均所要時間は他の国でするよりも短くて済むから、
ライフサイクルの短いハイテク産業の特許商品化をスピードアップさせるメリット等が
ある。
自由時報 2004.10.11
❏本のコピーはどこまで認めるか
知財局が基準策定へ
教育界から反発強まる
教育機関における教材のコピーなどによる著作物利用の是非をめぐる争いが多発して
いることを受けて、経済部知的財産局(以下、知財局)は「各級学校における授業目的
の書籍のコピーの合理的利用範囲」について協議するための草案を公表した。草案では、
教科書、刊行物、詩作、音楽、撮影等著作物に関するコピー規制を明確に定めている。
例えば、教科書一冊につき一学期内に総ページ数の 5%、詩作は 250 字、物語・文章は
2,500 字、歌詞・楽譜は 10%、同一新聞紙からの記事報道は 15 件を超えてはならない。
同基準は教育機関における教育目的による著作物の複製に大きな衝撃を与えることにな
る。
草案はなお、各級学校が同じ学期内にできる同一の著作物或いは刊行物のコピーは 3
冊に限られる。また同じ学期内に、一つのカリキュラムのためのコピーは 9 回を超えて
はならない。教科書のコピーは学校内でしなければならず、しかも教科書が関連する分
野のカリキュラムを受ける学生一人に一部のみ所持することを認める。学校の教師や学
生がコピーに関する規制に反して告訴されたときは、著作権法により 1 万∼100 万の過
料が科され、犯罪の情状が重大な場合は 500 万元の過料処分が下されることもある。
教育機関における教育目的のコピー範囲を厳しく制限しようとしている知財局に対し
て、教育界からの反発が強まっている。教育関係者によると、これらの規制は硬直しす
ぎて、実際に執行することが難しく、学校、教師、学生は知らないうちに法に引っかか
るのを恐れている。だいたい誰が執行にあたるのか、検察・調査機関がいつでもキャン
パスに入って捜索を行えるのか自体は問題である。各教育機関の意見を広く集めて、教
育の専門分野の相違性を考慮してより教育現場に即応した基準を定め、教育機関の自主
性を尊重し、フレキシブルに物事を考える空間を与えるべきである。
知的財産局ニュースリリース 2004.10.18 ほか
(解説)
今年 9 月の著作権法改正の際、立法院は特別に、権利者と利用者が図書館でのコピー、
授業のためのコピー、教育機関によるディスタンス・ラーニング(遠隔授業)目的の利
用について協議を行い、合理的利用範囲を定める旨の附帯決議をした。これを受けて、
知的財産局は教育目的の書籍のコピーに関する基準の策定に取り掛かっているわけだが、
肝心の合理的利用範囲に関する協議案の内容が教育界で波紋を呼んでいる。
出版業者に対する保護を強化するうえで欠かせない一環だとか、国際社会の期待に応
えるとか、行政当局がきれい事を述べ立てるかもしれないが、外圧に妥協した形の法改
正だったら国民は納得が行くのだろうか。著作物は学生たちによってどのように利用さ
れているのか、授業のために必要な外国教科書をなぜ購入するのでなくコピーして利用
するのか等、その実態を的確に把握することもなく、ただひたすらに外国出版業者の利
益にばかり気を配って、国民が教育を受ける権利を蔑ろにしたと教育界から批判する声
が強まっている。幾つかの大学の教務長は口を揃えてこういう。「知的財産権は尊重さ
れなければならないが、分野によって資料をコピーしたり授業や勉強などに使う状況も
違ってくる。よく他人の文章を引用して授業でディスカッションをする人文社会分野の
教育関係者に大きな影響が及ぶだろう。明確化した基準を定めるのは良いことだが、硬
直化にならないように考えていただきたい。」
欧米等先進諸国の教育予算に比べたら、台湾の教育への予算水準や教育政策が余りに
も貧弱で、経済的に不自由のない高収入層にとって外国教科書を買うことぐらいは何と
も思わないかもしれないが、貧富の格差が広がる現在の社会では、高価な外国教科書を
買う余裕などのない低収入層、中収入層にはなおさら重荷がかかってくる。台湾におけ
る少子化問題が先進諸国よりも深刻になっている背景には、家計の大きな負担になる子
育て・教育費が今の収入ではとても賄えない、が最も大きな要因の一つと挙げられてい
る。特定の業者の利益確保の視点に立って著作権保護の問題を法律の範疇にとどめて対
応する政府当局の姿勢から、国民は未来に希望を持てるわけがない。
教育目的の著作物の使用に制限を加えることは、著作権者の権利確保だけの問題では
なく、より長い目で教育界での著作物利用を考えるべきではないか。
❏商標の類似
商標権者の同意を得て併行登録も可能
これまで他人の登録商標に類似する標章をもって、類似の指定商品について使用する
ものは商標登録ができないとされていた。しかし、去年 11 月 28 日の商標法改正で、先
行登録商標の権利者の同意さえ得られれば、類似商標でも登録が可能になったことで、
他人の登録商標と同一又はそれに類似する商標が同時に併存することはできないという
従来の観念が翻された。
改正商標法により、「商標であって、他人の同一若しくは類似の商品若しくは役務に
ついての登録商標又は先に出願された商標と同一で又はこれに類似し、消費者に混同誤
認を生じさせるおそれがあるときは、商標登録されない。但し当該登録商標若しくは先
に出願された商標の所有者の同意を得て出願するときは、両者の商標及び使用指定商品
若しくは役務が同一である場合を除き、この限りでない」となっているため、類似商標
が併行して登録されることができるようになっただけでなく、同一商標にも登録を認め
る道が開かれた。ただ、商標及び指定商品(指定役務)が全く同じものであってはなら
ないというのが前提である。
同意書を取得することによって商標登録が認められるものは、一.商標が同一で、指
定商品が類似である、二、商標も指定商品も類似である、三.商標が類似で、商品が同
一である、という三つの場合。
工商時報 2004.10.20
(解説)
権利者の同意書さえあれば併行登録ができるという便宜措置は商標登録出願人にとっ
て大きな朗報となっている。外国において、このような規定がグループ企業間に適用さ
れることが多い。同意書を取得しての併行登録は、上記三つの場合においてのみとされ
ているが、対外的には、同一の企業体を代表してビジネス活動を行うわけだから、同意
書が作成された時点で、登録商標と出願されようとする商標について、消費者は混同誤
認を引き起こすおそれがないと認定される。
もし、商標権を有する企業と、これから商標登録を出願しようとする企業との間に何
の関係もない場合、商標権者はまず同意書を出すことがどういう意味を持つことになる
かを認識しておかねばならない。つまり、広義にいえば、併行登録によって登録商標と
それに類似する商標は同時に存在することになり、同一の出所であるというイメージを
消費者に与えるかもしれない。この場合は、商標権の移転により、二以上の商標権者が
同一の商標を、類似の商品若しくは役務について使用し、又は類似の商標を、同一若し
くは類似の商品若しくは役務についてについて使用し、消費者に混同誤認を生じさせる
おそれがあるときは、各々の商標権者が区別に資するための適当な表示を付け加えなけ
ればならない(商標法第 36 条)という状況とは異なる。
Fly UP