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ライフサイエンス業界向けの 資産管理

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ライフサイエンス業界向けの 資産管理
IBM 資産管理ソリューション
白書
ライフサイエンス業界向けの
資産管理
2007 年 7 月
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
2
目次
エグゼクティブ サマリー
規制の厳しいライフ サイエンス業界では、ダイナミックな規
2
エグゼクティブ サマリー
3
ビジネスにおける資産管理の価値
企業は資本資産のパフォーマンスを最適化するよう迫られ
4
コンプライアンス関連のコストとリスクの低減
ており、運営リスクを最低限に抑えることをめざしています。
5
FDA 21 CFR Part 11 の準拠
資産管理ソリューションは、ビジネスの業績に直結する資産
6
ソフトウェア検査サポート
(製造機器、精密機械、倉庫機械、コンピュータ機器など) を幹
7
プロセス分析技術のサポート
部がよりよく管理できるようにして、このような重要な懸念事
8
9
12
14
資産パフォーマンスと資産使用の最適化
8
保全のベスト プラクティスの採用
8
労務効率の改善
9
資産履歴の管理
製品の質の最大化
9
計器較正のサポート
10
是正アクションおよび予防アクションのサポート
IT の複雑さの低減
制およびビジネス環境と、激化する世界的な競争により、
項に直接対応します。
企業全体で統一された資産管理プラットフォームは、コン
プライアンスのコストとリスクを低減し、資産の使用とパフ
ォーマンスを最大化して製品の品質を高め、全体的な IT
の複雑さを軽減する上で役立ちます。ライフ サイエンスの
実装で必要とされる主な特徴には、米国食品医薬品局 (FDA:
Food and Drug Administration) の連邦規則集 (CFR: Code
13
IT 資産の管理
of Federal Regulations) 21 巻第 11 部 (FDA 21 CFR Part
13
企業パフォーマンスの改善
11) によって義務付けられている電子署名のサポート、およ
ライフ サイエンス企業向けの完全な資産管理ソリ
ューション
び予防保全と計器較正活動のサポート、ソフトウェア検査コン
プライアンスのサポートが含まれます。また、資産管理プロ
15
ライフ サイエンス業界向けの 特徴
セスを既存のビジネス システムに統合できる能力と、相
16
他のアプリケーションとの統合
互運用性および管理能力の進化し続ける IT 要件に対
16
詳細な Maximo のアーキテクチャ
応するための標準ベースの適応可能なアーキテクチャも
17
証明済みのソリューション
不可欠です。
18
要約
19
詳細な情報
19
IBM の Tivoli ソフトウェア
本書では、ライフ サイエンス組織で資産管理を実装するた
めの重要で戦略的な配慮事項について概説します。また、
ライフ サイエンス業界向けの IBM Maximo® 資産管理ソ
リューションについて説明します。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
3
ビジネスにおける資 産 管 理 の価 値
ライフ サイエンス企業は、高まる規制圧力、価格コントロー
ルの増加、品質への期待の高まり、合併による世界的な競
合環境の変化といった長期的な収益性を脅かす厳しい課題
に直面しています。医薬品特許の排他性、激化する一般薬と
の競合、研究開発費用の高騰といった重圧を考慮すると、資
本資産の使用と業績の改善および運営リスクの軽減を通し
て持続可能な競争力を提供することは、かつてないほど重要
になっています。
資産管理ソリューションは、ビジネスの業績に重要な全資産
の可視性を企業全体で、ほぼリアルタイムで達成する能力を
上級経営陣に与えることにより、このような目標を支援しま
す。資産は、スタンドアロン型の計器や製造機器からこれを収
納する施設、車両、倉庫機械のほか、サーバーやデスクトップ、
ラップトップ、携帯デバイスなどの IT 資産にいたるまで多種多
様です。資産管理はサービス レベルをさらに高めるため、サ
ービス プロバイダーの管理も促します。
重要な資産をより念入りに管理することにより、ライフ サイエンス企
業は以下を実行できるようになります。
• より効率が高く時宜を得た保全を通して重要な収入源であ
る資産の稼働時間を向上させる
• ビジネス プロセスの効率を高めて、資産の購入、配備、管
理、トラッキング、保全、処分の費用を低減する
• 適時、予防保全と機器の較正活動を開始し、結果を文書
化することにより、資産関連のコンプライアンスのリスクを
緩和する
• エ ン タ ー プ ラ イ ズ リ ソ ー ス プ ラ ン ニ ン グ ( ERP:
Enterprise Resource Planning) システムなど、現在の
IT 投資の価値を利用しつつ、ビジネス・プロセスを統合し
て IT の複雑さを緩和する
• 全体的な製造の生産性と効率を拡大することにより、製品
の質を改善してマーケティングの時間を短縮する
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
4
重要なビジネス プロセス内、または当該プロセス間で、より
効率の高い情報フローをサポートすることにより、資産管理
ソリューションは、収益性に直結する注目分野にライフ サイ
エンス企業がよりよく取り組めるようにします。この中には以
下が含まれます。
• コンプライアンス関連のコストとリスクの低減
• 資産パフォーマンスの最適化
• 製品の質の最大化
• IT の複雑さの低減
コンプライアンス関連のコストとリスクの低減
非準拠のコストとリスクの低減は、今日のライフ サイエンス企業
の品質とパフォーマンス、収益性を改善するための焦点となりま
す。多くの企業は、より戦略的でリスクに基づいたコンプライア
ンス管理アプローチを採用してこのような低減を達成しようとし
ています。コンプライアンス関連の活動を自動化して「コンプ
ライアンスを構築」することが目標です。
ライフ サイエンス作業環境の資産は、いくつかの重要な点で
コンプライアンスのリスクに直接関連しています。たとえば、保
守や清掃が不適切な資産は、非準拠のリスクを高めたり、生産バッチ
で品質の問題につながったりします。資産管理ソリューションは、
資産が仕様、規制、ビジネスのニーズに従って維持されてい
ることを確認して、このようなリスクの緩和に貢献します。ま
た、IT システムに関連した規制のよりよいコンプライアンスを
支援します。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
5
資産の管理方法もコンプライアンスに影響を与えることがあ
ります。どのような規制環境でも、アプリケーションの標準化
がなければ、コンプライアンスのコストに大きく影響します。
コンプライアンス活動の記録に関連したデータ収集の複雑
さが増し、ソフトウェア検査コストが増加するためです。この
ため、会社の重要な資産すべてをライフ サイクル全体で管
理できる単一のアプリケーションを展開すると、コンプライア
ンスのコスト削減に役立ちます。たとえば、ライフ サイエンス
とヘルスケア業界では、製造・品質プロセスの管理にリスク ベ
ースの方針を採用する企業が増えています (これは米国 FDA
の報告書「Pharmaceutical CGMPs for the 21st Century —
A Risk-Based Approach (21 世紀の医薬品 CGMP (Current
Good Manufacturing Practice) — リスク ベースのアプロー
1
チ)」 にも記載されています)。規制の役割に対する FDA の新
しいリスク ベースのアプローチは、変更管理や監査などの分
野で資産ライフ サイクル管理に影響し、資産変更管理データ
の単一の信頼できるソースの価値を強調します。
FDA 21 CFR Part 11 の 準 拠
ライフ サイエンス企業にとって、資産管理ソフトウェアがソフトウェア
と電子レコードに関する該当規制に準拠していることは必須です。特
に、ライフ サイエンス企業の間で「ペーパーレス」志向に沿
って紙面での記録の量を削減する動きが強まる中、電子レ
コードおよび電子署名の要件を規定した FDA 21 CFR
Part 11 の重 要 性 が増 しています。
FDA 21 CFR Part 11 は 、 文 書 セ キ ュ リ テ ィ 規 制 の 準
拠 に必 要 な特 定 の監 査 コントロールに関 するガイド
ラ イ ン も 規 定 し て い ま す (資 産 管 理 ソ フ ト ウ ェ ア は こ
れ に 対 応 し な く て は な り ま せ ん )。 この中には、ユーザー
ログインに関するコントロールと警告、セッションが途切れた
場合の再ログインの必要性、重要な文書の完全な変更履歴
のトラッキングが含まれます。同時に、電子確認システムも、あ
らゆる関係者のために監査プロセスの簡素化を補佐する必要が
あります。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
6
ソフトウェア監査サポート
情報システムに直接影響するもうひとつのコンプライアンスの問題が、コン
ピュータ システムとソフトウェアの検査です。このプロセスでは、特定のシス
テムが用途に適しており、設計どおりに作動し、システムに入力され保存され
ているデータを許可のないアクセスや変更から十分に保護するために必要な
機能が内蔵されていることを確認します。主な目標は、製品の品質の高い基準
をサポートすることです。「FDA ソフトウェア検査一般原則:業界および
FDA スタッフ向け最終ガイダンス」ではソフトウェアの検査を以下のように定義し
ています。
ソフトウェア固有のアクションがユーザーのニーズと用語に
適しており、ソフトウェアを通して実装される特定の要件が一
貫して満たされていることを検査および客観的な証拠の提供
により確認すること。2
このため、検査には、ソフトウェアまたはハードウェアが顧客ユーザー要件
仕様 (URS: User Requirements Specification) に従って動作し、21 CFR
Part 11 な ど の 該 当 規 制 を 満 た す か 、 「 GAMP (Good Automated
Manuracturing Practice) ガイド:医薬品メーカーにおける自動化システム
3
のバリデーション (GAMP4)」 の推奨事項に沿っていることを確認する一連の
テストの実施が含まれています。製品の安全性、効率、純度などに関するデータ
を処理または保存する IT シ ス テ ム お よ び こ の よ う な シ ス テ ム に 相 互 作
用 す る あ ら ゆ る シ ス テ ム を 検 査 す る 必 要 が あ りま す 。この 中 に は 、そ
れ自 体 が医 療 機 器 であるソフトウェアのほか、医 薬 品 の生 産 や医
薬 品 の生 産 で使 用 される資 産 を支 援 ・管 理 するソフトウェアが含 ま
れます。
資産管理アプリケーションに保存できる重要なデータには、保全、修理、点
検、較正などのデータがあります。組織が関連のあるレコードをトラッキング
して保護できるよう、アプリケーションは強固なレベルのセキュリティと構成能
力を提供する必要があります。さらに、品質保証テスト、文書化、実装と使用
に関する方針と手順の作成を通して、検査プロセス自体を支援できれば理
想的です。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
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プロセス分析技術のサポート
プロセス分析技術 (PAT: Process Analytical Technology) は、原料および
仕掛材料の重要な品質およびパフォーマンスの属性をリアルタイムで測定す
ることにより製造プロセスを設計、分析、コントロールするようライフ サイエン
ス企業に奨励した米国 FDA のイニシアチブです4。このイニシアチブの目標
は、最終製品の品質の最適化を支援することです。
PAT の枠組みの採用は、FDA 規 制 の 継 続 的 な コ ン プ ラ イ ア ン ス を
確 実 にするだけでなく、実 利 的 なビジネスの利 点 をメーカーに提 供
し 、 メ ー カ ー は よ り よ く プ ロ セ ス を 把 握 で き る よ う に な り ま す 。 分析技術
を使用して重要なパラメータの可変性を低減し、潜在的な逸脱が発生する前にこ
れを識別して対応することにより、プロセスの問題と失敗を最低限に抑えること
ができます。
PAT は特に「品質にとって重要」なパラメータを識別するためにプロセス
データの分析を奨励しています。このアプローチは、従来の「計画して実行」
するビジネス プロセスを「感じて反応」する能力で拡大するという多くの製造
環境での傾向に沿ったものです。これにより、生産・流通プロセス全体で「感
知」されたシステムの使用が増えます。
この状況で、資産管理ソリューションが従来タイプの技術に加えて先進的な
デバイスとシステムを管理できると重要な相乗効果となります。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
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資 産 パフォーマンスと資 産 使 用 の最 適 化
資産のパフォーマンスと使用が最適化されていなければ、運営
の効率が下がり、マーケティングまでの時間が延び、紛失バッ
チが増え、スループットが減る可能性があります。資産のパフォ
ーマンス低減は、保全、修理、点検、較正、その他、製品の質と
従業員の安全性に直接影響するプロセスの不十分さを反映して
いる場合もあります。資産のパフォーマンスを改善すると、ライフ
サイエンス企業は生産ラインの停止やその他のタイプの生産のダ
資産管理ソリューションは、保全のベスト プラク
ウンタイムを減らし、欠陥や無駄、オーバーフィルなどに関連したコ
ティスを可能にし、労務の効率を高め、資産履歴
ストを下げ、原料歩留まりを最適化して流通の効率を改善すること
機能を統合することができます。
ができます。
資産管理ソリューションは、保全や在庫、モニタリングを含む
広範なプロセス全体で資産のパフォーマンスを改善できま
す。
保全のベスト プラクティスの採用
資産管理ソリューションを利用すると、ライフ サイエンス企
業は保全のベスト プラクティスを採用し、資産の運営維持
費を最低限に抑える一方で資産のパフォーマンスと生産の
信頼性を最大限に引き出すことができます。包括的な資産
管理ソリューションが保全のベスト プラクティスをサポート
する方法には以下のようなものがあります。
• 計画されたダウンタイム中に予防保全活動をスケジュール
し、資産の使用を最大化して総資産利益率を改善する
• 高価値資産の履歴およびパフォーマンス データを維持する
• 重要なレベル、読み取り値、イベント ベースの状況を監視
する
• コンプライアンス文書を自動的に生成する
作業効率の改善
洗練された資産管理システムは、作業指示書をより効率よく
実行するために必要な情報をすべて提供し、検索時間を減
らして実際の作業時間を増やせるよう支援します。たとえ
ば、統合された電子カタログや間接的な購買機能は、保全
技術者が必要な修理部品を識別したり、必要に応じて利用
できるよう確認したりする際に役立ちます。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
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理想的には資産管理ソリューションは、作業指示書や保全のベスト プラクテ
ィス、部品在庫などに関する資産情報へのモバイル アクセスも支援すべき
です。これにより、保全技術者だけでなく、出荷や倉庫担当スタッフの生産性
も上がります。また、リアルタイムのデータ アクセスは資産の監視、スケジュー
ル、運営分析、計画機能を拡張します。
資産履歴の管理
資産管理システムの主要な構成要素は、資産ライフ サイクルの管理で重要
な資産履歴データを購買、再展開、資産廃棄の各プロセスにリンクすること
です。このような機能を統合すると、ライセンスのコンプライアンスを拡張し
て、リースや保証、サービス契約の管理を簡素化できます。資産履歴の管理
能力改善も、資産の提供、構成、トラッキング、ライフ サイクル活動について
決定する上でよりよいサポートを提供します。
製品の質の最大化
あらゆるライフ サイエンス企業は、生命、健康、幸福がリスクにさらされている場合、
可能な限り最高の質の製品を提供しようとしています。FDA のガイドラインおよび
21 CFR Parts 820 と 210-211 の よ う な 規 則 に 従 い 、 多 く の 組 織
が品 質 検 査 プロセスや、製 品 の質 の継 続 的 な改 善 を支 援 す
る他 の枠 組 み
(米 国
FDA
の品 質 システム査 察 テクニック
( QSIT: Quality System Inspection Technique)
ました。
など)
を採 用 してき
5
機器較正のサポート
精密機器およびデバイスの較正は、液体の容量など測定の正確さと精度に
自信を持つ上で欠かせません。ビジネスの目標や規制要件、メーカーの仕
様に沿った較正が行われなければ、機器でエラーが生じる可能性が高くなる
ため、その機器に関するプロセスは信頼できるとはみなされません。このた
め、製品の質に支障をきたし、コンプライアンスのリスクが高くなる可能性があり
ます。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
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規制環境で操業している企業はすべて、精密機器を較正し
なくてはなりません。21 CFR Parts 210 お よ び 211 で
は 以 下 の よ う に 規 定 しています。
機器の較正は…適切な間隔で、確立された書面
によるプログラム (特定の指示、スケジュール、
正確さ/精度の限度、正確性や精度の限度に満た
ない場合の是正アクションの提供を含む) に従っ
て行います。計器は…確立された仕様を満たして
いなければ、使用しないものとします。
資産管理ソリューションは、より効果的な
協力活動を可能にします。
資産管理ソリューションは、あらゆる較正済み資産の文書化、
検査、該当する基準や許容度、トレーサビリティ データを統合
する機能を取り入れることにより較正活動の管理を直接支援
できます。特に、較正コストをトラッキングし、較正データと他
の ビ ジ ネ ス シ ス テ ム ( ラ ボ 情 報 管 理 シ ス テ ム (LIMS:
Laboratory Information Management Systems) や製造
実行システム (MES: Manufacturing Execution Systems)
など) の統合を支援して、交換機器のトラッキングを可能に
する上で役立ちます。より効果的な較正活動を行うと、従業員の
安全性と製品の質、コンプライアンス活動が改善するとともに、機
器のダウンタイムを短縮できます。
資産管理ソリューションが資産データへのモバイル アクセ
スをサポートする場合は、モバイル較正機能を追加すると企
業は較正プロセスをエンド ツー エンドで自動化できるよう
になります。ハンドヘルド コンピュータを使用すれば、技術者
は較正中にリアルタイムであらゆる関連較正仕様、許容度、関
連データにアクセスできます。モバイル較正でも、データ入力の
遅延や事務書類のエラーを排除し、コンプライアンスの文書化を
簡素化して、最適な資産の信頼性をサポートします。
是正アクションおよび予防アクションのサポート
QSIT 内 の主 要 な構 成 要 素 は、是 正 アクションおよび予
防アクション (CAPA: Corrective Action and Preventive
Action) です。CAPA 活動の目的は、情報を収集、分析し
て、製品と品質の問題を識別、調査し、適切かつ効果的な
是正・予防アクションを行って問題に取り組み、再発を防ぐこ
とです。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
11
CAPA は医療機器の報告、修正、削除の調査と、会社の市販後活動に関
連した医療機器のトラッキング プログラムを開始する論理的な起点となりま
す。CAPA システムの実装により、医療製品業界全体で是正アクションの要
件が目に見えて減りました。規制では、医療機器メーカーと輸入業者は、あらゆ
る修正や削除について FDA のほか、適宜、他の規制当局にもすみやかに通知
するよう義務付けています。
資産管理ソリューションは、図 1 に示されているように広範な資産関連の
CAPA プロセスを重要な資産タイプ (測定・テスト機器および計器、その他
の生産、設備、輸送、IT 資産など) すべてで直接支援できます。サービスの
苦情や問題の調査、製造欠陥または非準拠、その他、資産に関する CAPA
関連のデータの捕捉を自動化できます。
図 1:資産管理が CAPA プロセスをサポートする方法
この図は是正・予防アクションの管理プロセスと、CAPA プロセスおよびエンタープライズ資産管理システムの
相互作用を示します。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
12
たとえば、完全な機能を備えた資産管理ソリューションがあれば、ライフ サイ
エンス企業は以下を実行できるようになります。
• 資産に対する CAPA 関連データの入力、トラッキング、管理 (問題レポー
ト、監査結果、失敗の分析を含む)
• 是正アクション データを資産問題管理に統合
• 根本原因と分析調査を支援する構成管理データを提供
• CAPA に関するインシデント通知の自動化
• 継続的な資産パフォーマンス データを使用して効果的な分析を支援
IT の複雑さの低減
ライフ サイエンス企業は従来、統合されていない部門レベルのアプリケーシ
ョンを使用して異なるカテゴリーの資産を別個に管理してきました。意思決定
をサポートするために、このように多様な資産データの「アイランド」を統合、
分析することは現実的ではなく、多くの場合、コスト効果も高くありませんでし
た。
その結果、ライフ サイエンス企業の幹部は、重要な資産をコントロールできず、
資産のステータスやパフォーマンスの可視性も、資産の寿命に関する情報もあ
りませんでした。このため、情報に基づかない決定が行われ、投資利益率や
総資産利益率、運用機器の効率などのメトリクスに悪影響が出ていました。
資産に対して幹部レベルの観点を取り入れられなかったことも、規制コンプラ
イアンス コストの増加につながりました。資産関連のコンプライアンス データ
の取得プロセスで複数のシステムにアクセスする必要がある場合は、本質的
に時間が長くかかり、労働集約的でエラーも発生しやすくなります。
ライフ サイエンス企業は、あらゆるタイプの重要な資産の運営と保全をそれ
ぞれのライフ サイクル全体で効率よく管理できる統一資産管理ソリューショ
ンで複数のシステムを合理化できれば、多大な価値につながります。これに
より、検査プロセスを合理化しつつ、最適なレベルのサービスと投資利益率
を提供することができます。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
13
IT 資産の管理
IT 部 門 にとって、あらゆる IT 関 連 の 資 産 と プ ロ セ ス を 最 適 化
して管 理 できる能 力 は、コスト効 果 の高 いサービスの提 供 と
ビ ジ ネ ス 目 標 と の 整 合 に 欠 か せ ま せ ん 。 ベスト プラクティスにサポ
ートされた全体論的な IT サービス管理 (ITSM: IT Service Management) ソ
リューションがなければ、コストを最低限に抑えると同時に総資産利益率を最大
化し、サービス レベル契約 (SLA: Service Level Agreement) を遵守するこ
とは難しくなります。これは特に、規制の厳しいライフ サイエンス環境に当て
はまり、ITSM と資産管理を統合すると、IT 資産と活動の検査プロセスへの
包含が促進されます。
共通のソリューションを使用して IT 資 産 をその他 すべての企 業 資 産 と
と も に 管 理 で き れ ば 、 IT イ ン フ ラ ス ト ラ ク チ ャ ー を 簡 素 化 し 、 複 数 の
本 質 的 に 異 な る 資 産 管 理 と ITSM システムの統合を支援するという多
大な利点を得られ、大きなコスト節約につながります。ライフ サイエンス業界
では買収合併が容赦なく続いているため、統一された資産管理ソリューションを
拡張して新しく取得した資産を管理する能力は価値が増しています。
企業の業績改善
資産管理は、生産高の増加とコンプライアンス活動の簡素化に焦点を当ててい
るライフ サイエンス企業内で企業の業績改善を促進します。あらゆるタイプの
資産で主要なビジネス プロセスを企業全体で統合できれば、コストの削減と全
体的な生産性の増進に役立ち、利益率が向上します。また、統一された資産管
理ソリューションは、資産関連 SLA で指定された明確な予測に対して資産
のパフォーマンスを測定できるため、幹部によるコントロールが強化されま
す。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
14
ライフ サイエンス企業向けの完全な資産管理ソリューショ
ン
IBM Maximo Asset Management は IBM Tivoli® ソフトウ
ェア ポートフォリオの一部で、ライフ サイエンス企業がコンプ
ライアンス活動を簡素化し、製品の質を改善して保全の生産
性を増進し、IT および運営コストを削減できる資産管理ソリュ
ーションの包括的なセットです。
Maximo Asset Management は 企 業 全 体 で 資 産 ク ラ ス
を管 理 できるよう調 整 します。テスト・監 視 機 器 や精
Maximo Asset Management を 利 用 す る
密 機 器 の ほ か 、 PC か ら ハ ン ド ヘ ル ド 、 ネ ッ ト ワ ー ク
と、ライフ サイエンス企業は複数の資産シ
機 器 、 携 帯 電 話 ま で 含 む IT 資 産 、 車 両 ( 航 空 機
ステムを統合できます。
を 含 む ) 、 工 場 や オ フ ィ ス な ど の 施 設 と い っ た 資 産 クラ
スがあります。 同様に、Maximo ソフトウェアは、計画から
購買、展開、トラッキング、保全、廃棄にいたるまでライフ サ
イクルを通して重要な資産のパフォーマンスを最適化するた
めの完全な機能を提供します。この広範な能力により、世界
的なライフ サイエンス企業は複数の資産システムをひとつの
ソリューション プラットフォームに統合できます。
Maximo Asset Management を 使 用 す る と 、 あ ら ゆ る 作
業 標 準 、作 業 履 歴 、安 全 性 計 画 、CAPA レポートにペー
パーレス システムでリアルタイムでアクセスできます。内蔵さ
れているワークフロー機能により、組織は資産に関連したビジネ
ス プロセス (サービス苦情、是正/予防アクション、製造非準拠レ
ポートなど) を自動化して、事務書類と手動プロセスを排除する
ことができます。オプションの Maximo Mobile 機能は関連デ
ータをパフォーマンス ポイントまで移動し、事務書類とデータ
入力に要する時間を減らす一方でサービスの質を向上させま
す。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
15
ライフ サイエンス業界向けの機能
IBM Maximo for Life Sciences は Maximo Asset Management を拡張
したもので、ライフ サイエンス企業の特定のニーズに直接対応する内蔵
の資産管理機能を使用して価値創造の時間を短縮し、コンプライアンスの
コストを削減します。.以下のような機能があります。
• 電子署名:Maximo e-Signature および e-Audit 機能は、監査トレイルや文
書セキュリティ管理など 21 CFR Part 11 の要件すべてに完全に対応してい
ます。
• 較正サポート:Maximo Instrumet Calibration は較正活動、較正履歴の文
書化、較正データの検査、標準/許容度、およびあらゆる較正済み資産のトレ
ーサビリティ/リバース トレーサビリティの参照といったプロセスを提供し、較
正活動の管理を大幅に簡素化します。内蔵されている Maximo 作業管理機
能により、各資産の較正間隔の定義と実行が容易になります。この中には、
作業指示書の自動生成が含まれます。
• ソフトウェア検査コンプライアンスのサポート:Maximo ソフトウェアは高レベ
ルのセキュリティ、安定性、構成能力を提供するため、企業は適正製造基準
(GMP: Good Manufacturing Practices) に関するレコードの識別、トラッキン
グ 、 保 護 を 行 う こ と が で き ま す 。 IBM Maximo Compliance Assistance
Documentation は品質保証テスト ケース、ビジネス プロセスのテンプレー
ト、そして、ライフ サイエンス企業のお客様が Maximo ソフトウェアの実装と
使用に関連した準拠性の高い文書方針と手順を作成するために構築できる
付属文書で構成されています。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
16
他 のアプリケーションとの統 合
IBM と Maximo ソフトウェア開発チームは、Maximo ソフト
ウェアが業界のニーズを確実に満たせるようライフ サイエンス
企業のお客様と密接に協力しています。ラ イ フ サ イ エ ン ス
環 境 に一 般 的 な既 存 システム間 の資 産 関 連 データの
流 れ を サ ポ ー ト す る た め 、 Maximo Asset Management
に は 広 範 な 財 務 /ERP
シ ス テ ム 、 MES、LIMS、監督
管理データ取得 (SCADA: Supervisory Control And Data
Acquisition) システムのほか、最も人気の高い文書管理シ
Maximo Asset Management は、標準ベ
ステムとの統合機能が備えられています。
ースのサービス重視アーキテクチャ上に
構築されており、ビジネスの機敏性と IT
詳 細 な Maximo の ア ー キ テ ク チ ャ
の柔軟性を実現できます。
Java™ や XML、Web サービス、ライトウェイト ディレクトリ
アクセス プロトコル (LDAP: Lightweight Directory Access
Protocol) などのオープン スタンダードに基づくコンポーネント
ベースの先進的なアーキテクチャは、ビジネスの機敏性および
IT とビジネス目標との整合には不可欠です。標準ベースの適
応可能な基盤は、IT がパフォーマンスを改善する一方で相
互運用性と管理性を簡素化し、コストを削減する上でも役立
ちます。標準ベースのソリューションは、ベンダー ロックイン
のリスクも緩和し、より広範な製品とベンダーの選択を支援し
ます。
標準ベースでサービス重視、インターネットですぐに使えるアー
キテクチャ上に構築された Maximo Asset Management の
ソリューションは、比 類 ない柔 軟 性 と再 構 成 能 力 、選
択 の自 由 を備 え、長 期 的 で強 力 な価 値 を提 供 しま
す。Maximo ソフトウェアは、Java 2 Platform Enterprise
Edition (J2EE
TM
) か ら 構 築 さ れ て い ま す 。 J2EE の
仕 様 と 基 本 的 な J2EE フ レ ー ム ワ ー ク を 利 用 し た
Maximo ソフトウェアのコンポーネント ベースのアプリケーシ
ョン デザインでは、アプリケーション内での再使用のほか、外
部アプリケーションとの統合も可能です。オープン スタンダー
ドに基づく J2EE 準拠アプリケーション サーバー プラッ
ト フ ォ ー ム で Maximo Asset Management を 展 開 す る
と、お客 様 は今 日 の投 資 を保 護 して将 来 への成 長 オ
プションを提 供 するソリューションを得 られます。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
17
Web サービスへのサポートは、プラットフォーム レベルのサ
ービス定義および提供を通して Maximo ソフトウェア内で提
供されます。このフレームワークは、エンタープライズ レベル
の ア プ リ ケ ー シ ョ ン サ ー ビ ス を 提 供 し 、 Maximo Asset
Management と 他 の エ ン タ ー プ ラ イ ズ シ ス テ ム ま た は
ポータルのようなソリューション間 のビジネス プロセス
調 整 を 行 い ま す 。 Web サービスは、最適なサービス重視
アーキテクチャ (SOA) のサポートと将来のリリースに備え
世界中の 175 社以上のライフ サイエンス
た上方互換性に関して、特定の構成に基づいて動的に生成
企 業 が現 在 、Maximo ソフトウェアを使 用
されます。
しています。この中 にはトップ 13 社 も含
まれます。
証明済みのソリューション
Maximo Asset Management は証明済みの革新的なソリュ
ーションで、ライフ サイエンス業界では最も人気の高い資産
管理ソフトウェアです。世界中の 175 社以上のライフ サ
イエンス企業が現在、Maximo ソフトウェアを使用していま
す。この中にはトップ 13 社も含まれます。
ライフ サイエンス企業は最終的には人命に関わる事業に
従事しているため、品質を重視して運営を行います。
Maximo ソフトウェアは、ライフ サイエンス企業のニーズにこ
たえるため、品質に焦点を当てて開発されました。この品質重
視の姿勢は、Maximo 製品の開発にライフ サイエンス企業が
長期間にわたり直接関与してきたという事実に反映されていま
す。
• ライフ サイエンス企業は、製品が主要なビジネス プロセスを
適切に自動化し、効率を改善してコンプライアンスのリスクを
緩和できるよう Maximo for Life Sciences Industry ソリュー
ションの設計と内容の開発に参加してきました。
• アクティブなライフ サイエンス業界ユーザー グループは、情
報と経験、保全のベスト プラクティスを共有する目標を掲げ、
顧客と確固たる関係を築き、顧客維持率の改善に貢献してい
ます。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
18
要約
資産管理ソリューションは、ライフ サイエンス企業が資本資産パフォーマン
スの改善と運営リスクの緩和により持続可能な競争力を得られるよう支援し
ます。
重要なビジネス プロセス内および当該プロセス間でのより効率の高い情報フローを支
援する一方で経営陣の意思決定を改善することにより、資産管理ソリューションはライ
フ サイエンス企業がより効果的にコンプライアンス関連のコストとリスクを削減し、資
産のパフォーマンスを最適化して製品の質を最大化し、IT の複雑さを低減する上で役
立ちます。
Maximo Asset Management はライフ サイエンス企 業 向 けの完 全 な資
産 管 理 ソリューションです。インターネットですぐに利用できる標準ベースのア
ーキテクチャ上に構築された Maximo ソフトウェアは、サイズを変更して、既存
の投資にスムーズに統合しつつあらゆるエンタープライズ資産クラスを管理でき
ます。内蔵ワークフロー能力により、Maximo ソフトウェアは CAPA、書面記録の
削減、モバイル アプリケーションなどに対応し、広範なビジネス プロセスを自動
化できます。
ライフ サイエンス業界向けの具体的な Maximo Asset Management 機 能 に
は以 下 のようなものがあります。
• 21 CFR Part 11 準 拠 の電 子 署 名 、監 査 トレイル、書 類 セキュリティ
コントロール
• モバイル較 正 データ収 集 など、較 正 活 動 の強 健 なサポート
• ソフトウェア検 査 活 動 の包 括 的 なサポート
あらゆる資産関連情報の統一されたエンタープライズ全体のリポジトリとし
て、Maximo Asset Management は、企業の観点から資産のパフォーマン
スを確認して管理する能力を上級経営陣に提供します。重要な資産をより注意
深く管理することにより、ライフ サイエンス企業は重要な収入源である資産の稼働時間
を向上させ、資産の取得、維持、さらには処分の費用も削減し、最終的に株主の価値を
増幅させることができます。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
19
詳 細 な情 報
IBM Maximo Asset Management の詳 細 については、IBM
担当者または IBM ビジネス パートナーに問い合わせるか、ibm.com/tivoli を
ご覧ください。
IBM の Tivoli ソフトウェア
Tivoli ソフトウェアは、より効 率 的 で効 果 的 なサービスをビジネスにお届 け
す る ス ケ ー ラ ブ ル で モ ジ ュ ラ ー な ア プ ロ ー チ で あ る IBM Service
Management を サ ポ ー ト す る 包 括 的 な 製 品 と 機 能 の セ ッ ト を 提 供 し ま
す 。 あらゆる規模のビジネスのニーズを満たす Tivoli ソフトウェアを利用する
と、プロセスやワークフロー、タスクの統合と自動化によりビジネスの目標を支
援する優れたサービスを提供できるようになります。セキュリティ機能が豊富な
オープン スタンダード ベースの Tivoli サービス管 理 プラットフォームは、
エンド ツー エンドの可 視 性 とコントロールを提 供 するプロアクティブな
運 営 管 理 ソリューションによって補 完 されます。また、世界一流の IBM サ
ービス、IBM サポート、および IBM ビジネス パートナーのアクティブなネットワ
ークにより支援されます。Tivoli のお客様とパートナーは、世界中で別個に運
営されている IBM Tivoli ユーザー グループに参加するとお互いのベスト プ
ラクティスを利用することもできます。詳しくは、www.tivoli-ug.org をご覧くださ
い。
ライフ サイエンス業界向けの資産管理
20
© Copyright IBM Corporation 2007
IBM Corporation Software
Group
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Somers, NY 10589
U.S.A.
米国製
5-07
版権所有
IBM、IBM ロゴ、Maximo、およびTivoli
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その他の国における商標です。
Java およびすべての Java ベースの商標は、Sun Microsystems, Inc. の米国および他の国々における商
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その他の会社、製品およびサービス名は、その他の会社の商標またはサービスマークであることがあります。
本書における IBM 製品およびサービスへの言及は、IBM が事業を行うすべての国で IBM がこれを利用
可能な状態にする意図を示していません。
本書のいかなる部分も、IBM Corporation からの書面による許可なしにいかなる形式でも複製または送信で
きません。
製品データは最初の出版日の時点で正確性についてレビューが行われています。製品データは予告なく変更
される可能性があります。IBM の将来の方向および意図に関する言明は、通知なく変更あるいは取り下げら
れることがあり、目標および目的を表すものにすぎません。
本書に記載されている情報は「現状のまま」で提供されており、明示、黙示を問わず一切の保証はありません。
IBM は市販性、特定目的への適合性、または非違反に関して明示的に一切の保証を拒否します。IBM
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お客様は法的な要件への遵守を確認する責任を負っています。また、ビジネスに影響を与える可能性がある
関連法規要件の識別と解釈、および当該法規を遵守するために必要なアクションについて適格な法律顧問の
助言を得る責任はお客様のみが負っています。IBM は法的な助言を行ったり、お客様があらゆる法律や規制
に遵守していることを自社のサービスまたは製品が確認するという表明あるいは保証は行いません。
1
www.fda.gov/Cder/gmp/gmp2004/CGMP%20report%20final04.pdf から入手できます
2
www.fda.gov/cdrh/comp/guidance/938.html
3
www.ispe.org
4
詳細については www.fda.gov/Cder/OPS/PAT.htm をご覧ください
5
詳細については www.fda.gov/ora/Inspect_ref/igs/qsit/qsitguide.htm をご覧ください
から入手できます
から入手できます
TIW10399-USEN-00
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