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幼児期の保育における大人のかかわり
京都市子育て支援総合センターこどもみらい館 平成28年度 第3回共同機構研修会 共同機構研修会 幼児期の保育における大人のかかわり 講師 はじめに 長瀬 美子 大阪大谷大学教授 戻せないのではなく,保育者は気になる姿として 気になる(=大切にしたい)子どもの姿 育ちそびれが見えた時には子どもが少し戻って 今日の話の柱は,大人が子どもにしっかりと共 やり直し,前に進めるように援助することが求め 感することと,そこから子どもたちの健やかな発 られます。 達を援助することの二つです。中盤からは,子ど このように,子どもの姿は同じ気になる姿でも もの思いに共感し発達を援助する時の,幼児期に 発達課題に向き合っている時と育ち残してきた おける毎日の生活と楽しく手ごたえのあるあそ ものを取り戻していく時は違います。前者は,そ びの重要性についてお話します。 の時期,大切な課題に向き合い頑張っている姿と まずは気になる子どもの姿についてです。私た して見守り,後者は少し戻って取り戻しながら前 ちは気になる子どもの姿として発達に障害があ に進んでいる姿として捉えます。そして,これら る子どもだけではなく,様々な子どもたちの様子 を支えていく大人の存在はとても大切です。私た を気にかけながら保育をしています。その「気に ちは「気になる」の中にどんな気になり方がある なる」ということを大切にしながら保育していま のかを区分しながら考える必要があります。 すが,先生方から,子どもによっては何年も丁寧 この後,幼児期の毎日の生活やあそびの中で大 な園生活を経験しているはずなのに保育が積み 切なことを,主体の形成と就学への基礎形成の観 重なっている実感がない,などの悩みが聞かれま 点から,主体的に生活すること,そして,夢中に す。これは,子どもが発達の途中に節目を乗り越 なりあそびという活動に取り組むこと,知的好奇 えて発達している姿なのです。今までとは違う姿 心が育つこと,最後に他者との豊かな関係を築く を見せ,結果としては大人を困らせるような行動 ことなどの視点で説明していきます。 があり,その変化に保育者が戸惑い,それが「気 になる」ということになります。しかし,これは 1.幼児期に大切にしたいこと(1) マイナスな姿ではなく,まさに子どもが一つの壁 主体となれる生活をつくる を乗り越え,新しい自分に成り代わろうとして戸 自分のことが自分でできるという力を主体と 惑いや不安を持ちながら挑戦している姿です。発 して生活すると捉える考えもありますが,私は, 達が後退したのではなく,少し後ろに下がってエ 主体として子どもが自分で考えて自分で判断し ネルギーを溜め,新しい自分になろうとしている 行動することを大事に思っています。それは,そ 姿です。これには,子どもがその壁を乗り越えて の場の状況や相手の様子などから,自分がどうす いけるような保育者の援助が求められます。 ればいいのかを考えて行動できることです。毎日 一方で,子どもの気になる姿は前向きに挑戦す の保育の中で,保育者からの指示どおり行動する る時にだけ見られるものではなく,何らかの育ち のではなく,子ども自身が手がかりを基に,生活 そびれが現れた時にも見られます。「そびれる」 の見通しを持って過ごすことが非常に重要です。 という表現を使っていますが,これは子どもが何 これは一日の流れが分かる,どこに座るのか分か かの理由でその時獲得できなかったが,そこにも るなど,大人が声をかけなくても,自分で考えて う一度戻り,遅れてでも獲得し着実に取り戻して 行動できるということです。子どもは毎日の生活 前進しようとしているのです。以前のことを取り でこのような経験を積み重ね,自ら行動してみよ うとする力をつけます。これは子どもが小学校な の姿を通して子どもたちに自分たちが解決者だ どの新しい世界で,自分一人や新しい友だち,先 と気付かせます。子ども自身が自分で思いを伝え, 生と頑張っていける力をつけ,一人一人が見通し また大人は言う手助けをし,通じ合わない時は仲 を持って生活できることにつながります。 立ちをしながら,子どもたちが自分たちの大切な 次に,子どもが毎日の生活の中で,人と協力す ことについて自分たちで解決するように育てま る経験をし,自分の行動が,自分が嬉しいだけで す。もちろん,大人が解決する方が簡単ですが, なく他者の役に立つ喜びの経験はとても大切で 保育者が子どもたちと一緒に話し合いながら,よ す。毎日の当番活動はこういった経験が積み重ね い行動は褒め,手順が分からない時や好ましくな られます。当番活動は役割を果たす,協力する, い行動があった時には大人が関わります。しかし, 他者とつながり誰かの役に立つなど様々なとこ 「○○ではダメ」と伝えるだけでは解決する手順 ろに力点を置く活動です。保育者は,子どもたち は伝えられません。「こういう風にしていけば, の育てたい所に焦点をあて,何に目的を持ち,ど 皆で決めることができる」と,具体的に伝え,子 のように活動を行うのかということを考え,クラ どもたちに話し合って決める経験を繰り返しな スの子どもたちが何をするかではなく,どうやっ がら丁寧に教えていきます。自分と違う意見には て取り組むかを大切にします。 「どうしてそう思うのか」と尋ねさせ,他者認識 そして当番活動は分かりやすく達成感が得ら や尊重の仕方を教えます。このように,話し合い れるものにします。輪番制にすることで皆が行う を通して,他の人の意見を聞く機会や,自分の思 ことができ,特別な能力は必要なく誰もができる いを相手に伝える方法を学び,決定に至るプロセ 内容でどの子にも頑張る機会とやり遂げたこと スを経験しながら,子どもたちは解決者に育って が認められる機会を作ることができます。これら いきます。初めから話し合いの上手な幼児はいま の狙いを保育者が持ちながら当番活動の利点を せん。話し合い活動は問題の解決の場面であると 意識し取り組んでいきます。 同時に,相手を理解する場面になります。子ども 私は,大人の関わりは共感することと発達を援 たちは,自分とは違う考えを持った友だちと,違 助することだと初めに説明しました。保育の中に うからこそ意見を出し合って,互いに分かろうと は,何かが上手な子だけに発達の機会が与えられ して関係を深めます。このようなしっかり考えて るのではなく,どの子にも育つチャンスがある活 話し合うという機会を保障することが子どもた 動があります。そのひとつが当番活動であり,全 ちの発達を援助することにつながります。子ども ての子どもに発達の機会を保障し,子どもたちに たちが,話し合いは友だちの気持ちが分かる大切 頑張る機会と認められる機会を作ります。発達が な活動であると分かり,話し合うことで,楽しい ゆっくりな子どもには援助をし,分かりやすい内 ことが実現できると実感することが大切です。 容で取り組むようにします。また,子どもたちは 私たちは就学して困らないように子どもを育 大人よりも幅広い他者認識になり,総合的に友だ てるのではなく,困ったり戸惑ったりした時,子 ちを見るようになります。自分が頑張っているだ どもたちがそれを乗り越える力を育てることが けでなく,友だちが頑張っている姿にも出会え, 大事です。困ったことをそこで留めるのではなく, 全ての子どもたちに頑張る機会と認められる機 子どもたちは乗り越えた実感を持つと,主体にな 会があることは幼児期にはとても大切です。 ったと感じます。そのためにも就学までに話し合 また,主体となって生活していく上で欠かせな って解決した経験を重ね,保育者は困ったことを いことは話し合い活動です。主体となって生活す 解決してあげるのではなく,子どもたちと一緒に るとは,自分で判断して自分で行動できることと 解決することが大切です。 お話しました。自分たちの問題を自分たちで相談 しながら解決できる子どもたちに育てるという 観点から,保育者は,話し合いの見本を示し,そ 2.幼児期に大切にしたいこと(2) あそびを通して,達成感,知的好奇心,仲間関 係を育てる 幼児期には,あそびを通して知的好奇心を育て なるあそびを準備し,就学後の知的な発達につな げていきます。 ることが大切です。これは長い目でみた時,就学 幼稚園,保育園(所),こども園など集団的保 における大切な力の基礎になります。幼児期に小 育・教育の場では,人との関わりが楽しくたくさ 学1年生の学びを先取りしたとしても,2年生以 ん学べ,あそびを通して人との関係を育てること 降には困ってしまいます。大事なことは,これか ができます。その中でも,一緒に楽しみながら仲 ら先の長い学びの世界でたくさんのことを吸収 間になっていくことが,あそびを通した関係づく できる子どもに育てることです。 りで一番大切な点です。幼児期の保育者には,あ そもそも,子どもは考え,探究することが大好 そびを通して関係を育てるという観点を踏まえ きです。0,1歳の頃赤ちゃんが,ハイハイをし て,子どもたちにふさわしいあそびをどう選んで て見つけたおもちゃを手に取り,触ったり口に入 いくのかが求められています。私たちは,新入児 れたりします。この姿から,疑問や探究する気持 には子ども同士をつなぐ遊びに力点を置きます ちが生まれていることが分かります。知的な探究 し,持ち上がりのクラスでは,昨年度からのつな 心はこのような頃からみられ,もちろん赤ちゃん がりが広がるあそびを選びます。また,子ども同 ですので,その方法が本で調べたりするのではな 士の望ましくない関わりに対して違うあそびで く口で確かめているという訳です。また,1,2 修正する場合など,クラスで大切にしたい子ども 歳の頃の乳児は,何でも見た物の名前を聞きたが の姿に対して,まずは現状の把握を行い,どう改 り,4歳くらいの幼児になると探究や興味が名前 善したいのかを考え,それを楽しいあそびの中で のような表面的なものから,仕組み,論理,理由 実践します。 などに変化します。子どもの外側には,特別なも ここで,面白さを土台にしながら,違った関係 のでなくとも魅力的な内容がたくさんあり,子ど の築き方があるごっこあそびとルールのあるあ もの内側には,考えることや疑問を持つこと,探 そびについてお話します。この2つは,面白さの 究することへの意欲があるのです。そして子ども 違いがあることで,そこに生まれる関係の在り方 は放っておけば学びや探究心が育つ訳ではなく, に独自のものがみられます。 この2つをつなぐのが保育者の役割となります。 ルールのあるあそびは,対立を楽しむあそびで 保育者は,子どもたちがあそびの中で発見した あるのに対して,ごっこあそびは対立のないやり ことを意欲につなげ,どんなあそびの中にも子ど とりを楽しむあそびと言われています。医者と子 もたちが自分たちで考え気付くことが楽しくな ども,お店屋さんとお客,お母さんと赤ちゃんな る環境づくりをしながら,一緒にたくさん遊びま ど役は対立せず,相手の存在を理解しながら,相 す。子どもに,興味や関心,知りたい気持ちが高 互に補い,やりとり自体が楽しいと思えるあそび まった時,それを確かめる手段があり,そしてそ です。私は,ごっこあそびは,なりきった先の他 の思いを聞いてくれて共感してくれる人がいる 者とのやりとりが本当の意味での楽しさではな ことが大事です。決して大人が十分準備した中で いかと考えています。このようにそれぞれのあそ 子どもたちが上手に遊ぶという発想ではなく,子 びの面白さが違うことで,生まれてくる関係は違 どもたち自身が考え,探究し気付くことを保育の うのです。互いに相手の存在を理解しながら,や 中で保障します。そして,子どもは友だちの発見 り取りを成立させ,一緒にあそびを作っていく楽 に気付き,自分の体験と人の体験が合わさり知的 しさが一番実感できるのがごっこあそびです。ご 好奇心を広げます。保育者は幼児期のあそびには, っこあそびにおいて,内容を保育者が選ぶのでは このような観点での環境や保育内容を準備する なく子どもと一緒に生活や体験から選ぶと,クラ 力が求められています。乳児期には五感を通して ス独自のごっこあそびが作られます。子どもたち 感じるあそび,幼児期は,子どもたちが遊んだ後 が何に興味を持ち,何に憧れているかをスタート になぜだろうと考え,もう一度取り組んでみたく にして,どうなりたいと思っているかを探りなが ら,一緒にごっこあそびを作っていきます。保育 現するよりも,集団保育でしかできないことを毎 者が工夫をして子どもがその気になれる環境づ 日の生活の中に保障するようにします。まず,人 くりは必要ですが,大人が決めて遊ばせるのでは との関わりは集団生活の中でしか経験できませ なく,子どもが次にこうしたいという発想を取り ん。子どもは対等な仲間と出会い,大人になら分 入れながら,一緒にあそびを作っていくという私 かってもらえることも,言葉を使って自分の思い たちの関わりが,子どもたちのあそびを楽しくし, を伝えなければなりません。このように,家庭や そこにやり取りが生まれ,関係性を豊かにします。 地域だけでは経験できない友だちとの関係など, あそびを通して子どもたちの関係を育てること 幼児期に必要なことは何かということを精選し につながる私たちの役割は大切だと思います。 ていく力が保育者に求められます。そして,それ ルールのあるあそびは,勝敗や順位などを楽し むあそびで,ルールを守るためのトレーニングで にはどんな教材や環境,援助が必要なのかを考え る力も求められています。 はありません。子どもたちがルールを守れるよう 2つ目は共感的に関わるということです。いろ になることは大切ですが,そのことばかりに目が いろな支援の必要な子どもがいる中で,それぞれ いき,私たちが子どもたちの楽しい気持ちに共感 の子どもの発信に対して十分に応えきれないこ できないと,あそびとしては楽しめません。大人 とがあると思います。共感するとはどういうこと の大事な関わりは,守っているかを見るのではな でしょうか。私は,共感してそこに留まることで く,守って遊ぶことが楽しいと子どもたちが気付 なく,子どもがもう一度前に歩き出すところまで き,実行できるように育てることなのです。ルー 援助することが共感であり,子どもを囲い込むこ ルがある遊びは,制約や条件があるからこそ,子 とではなく,受け止めて前を向かすことだと考え どもたちにはどうすればよいかを考え,相談し, ます。具体的な共感の方法は乳児や幼児,また年 それを実行する力がつきます。ごっこあそびの中 齢によって様々ですが,その先をどう見据え,子 でやり取りを通して楽しいことを一緒に作って どもに前を向かすためにどう関わるのかを考え いく関係とは質の違う,ルールを守りながら勝つ ます。気持ちが落ち着いたらいいのではなく,そ という難しい課題に向け,相談,協力し,作戦を の先にある挑戦する課題,友だち関係,苦手なこ 立てて実行していくといった人との関係を経験 とを保育者に受け止めてもらい,共感してもらう するのです。 からこそエネルギーが溜まって前向きになりま 保育者はそれぞれのあそびの面白さを知り,そ す。私たち大人はこの先,子どもをどういう姿に こから生まれる子どもたちの関係のどこに特質 つなげていくかの見通しをもつことが大切です。 があるのかを知って保育することが大切です。 子どもを受け止めても,話を聞くだけになってい ると,そこに留めることになり,結果として子ど 3.求められる大人のかかわり もが一歩前に進んでいけないなら,共感し発達を あそびの面白さや楽しさの中に,どのような知 援助することにはならないと思います。受け止め 的な要素,人間関係につながる要素,自信につな てもらった後,私との関係に閉じてしまうのでは がる要素があるのかについて,大人が認識を持っ なく,外の世界の苦手なことや他者へと向かって て保育することが大切です。それにはまず1つ目 いけることが共感の役割であり,子どもが前向き は見通しをもって計画的に保育することが挙げ な気持ちで次に向かうよう見守ります。その中で られます。限られた園生活の中で,その時々の年 やりたくないという子どもの言葉には様々な気 齢での経験が,就学の為ではなく,就学のしっか 持ちがあり,まずは子どもの言葉の内側に潜んで りとした土台となることを保育者が意識を持っ いる思いや発達要求を受け止めます。それは簡単 て取り組む中で,幼児期に必要な経験はどんなこ なことではなく,私たちと子どもは別の人間であ となのかを見通し,計画を立てる必要があります。 り,本当にその子の願っていることをすべて分か その中でも,家庭で経験できることを園生活で再 るのは難しいことです。しかし,大人は,言葉の ままでなく求めていることを受け止め,内側にあ している事は他児も見ており,影響を与えている, ることが何かを見つけて分かろうとする姿勢で ということをいつも意識し,大人は注意の仕方や 子どもと向き合います。そして受容しながら子ど 関わり方をコントロールすることが大切です。 もが次に向かっていくよう大人が共感すること 最後に,私たちは保育で大切にしていることに で,子どもに「できた」実感を作ります。改めて, ついて保護者と共有し,一緒に育ちを考えていく 自分自身の共感がもう一度子どもの気持ちを建 ことが重要です。就学というタイミングで,保護 て直しそして前に向かせるものになっていたの 者は目に見えることばかりに関心が向きがちで か,それとも,受け止めていたが,自分自身がそ すが,見えにくいものを伝える力が私たちに求め の先を見据えずにそこに止めていたのではない られています。私たちは大切なことについて確信 かを問い直してください。大人は受け止めて子ど を持ち,それを保護者と共有し,一緒に安心して もが前を向くのに向き合うところまで付き合っ 子育てしていけるようにします。このことが,就 ていくことが共感するということです。 学への土台となり,そして後々の学びにつながる 3つ目の大人の役割は,どうやってうまく遊ば せるかではなく,私たちはあそびという楽しい世 界に導く存在であり,一緒にあそびを作る存在で あるということです。 ことを伝え,長い人格形成の中の大事な側面であ ることを保護者と共有する努力をします。 子どもにとって3,4,5歳という3年間は, いろいろな事に挑戦しながら,その中で考え,悩 大人が楽しんでいる姿,一生懸命取り組んでい みには大人が手助けをしながら,そして友だちの る姿に,子どもは楽しい世界があると感じます。 力も借りながら乗り越えていく,そして,その中 こうして子どもに一緒に遊ぶと楽しいという実 で仲間関係ができ,達成感や自信を持つという大 感を育て,そこで子どもは,困ったことがあると 切な時期であるのです。 話し合って解決したり考えたりします。ここで必 要なのは,大人が子どもと一緒に子どもの中で解 おわりに 決するという姿勢です。乳児保育では言葉になら 先程,幼児期には主体的に生活することが大切で ない思いを読み取ったり感じ取って言葉にし,そ あり,そのためには自分で考え,行動するための れをどう返していくかが大切ですが,幼児保育で 見通しを持った生活ができることだとお話しま は一緒に考えるという姿勢を持つことが大切で, した。乳児では,子どもにとって分かりやすい生 これは幼児が自分たちで解決したり,考えたり, 活にするための環境が大事です。そして,それを 協力する力につながります。 踏まえて,幼児は,そこに子ども自身がどうすれ そして,私たちの存在はとても影響力がありま ばいいかを考えられるようにします。少し考えれ す。褒めるという場面を例に取ると,そこには褒 ば取り組めるような難しさがあることが,主体に められている子どもだけでなく,間接的に,その なっていくプロセスには大切です。子どもたちが 場にいる他児の友だちへの見方や行動の評価と こうしたいと考え,ルール化し,みんなで守って なります。一人の子どもに行うことが,それ以外 生活していこうとすることが大事です。ここで, の周りの子どもへ働きかけられていると捉える ルールについても触れておきますが,保育者がル 必要があります。しかし,これを褒めるではなく, ールをどう考えるか,またこれと同じく,自己コ 叱るということに置き換えた場合,もちろん望ま ントロールをどう考えるかも大切な点です。保育 しくない行動に注意をするのは当たり前ですが, 者がルールについて「子どもたちを縛る面倒なも 良心をもって子どもを叱り伝えても,意図せず, の」と捉えると,「嫌だけど守るもの」と考え, 集団の中では,他児からみると,いつも叱られて 保育をすると思います。しかし,みんなが少しで いると見えるなど,その子への固定的な見方を作 も快適に生活するためであり,そのために守って ってしまうことになり,本来伝えたいことと違っ いるという考えで保育に取り組むと,子どもたち て周りの子どもに届いてしまうのです。私たちの にはルールを守ることへの喜びと誇りが生まれ ます。このようなことを子どもが感じ取れるかど うかは保育者がルールをどう感じているかとい うことによります。また,自己コントロールは我 慢ではなく,必要なことに気持ちを向けるように コントロールすることだと私は思います。子ども が,今は何をする時かを考え,気持ちと行動をそ こに向けられるように育てることが,自己コント ロールする力を育てることです。 3,4,5歳の保育において,保育者が一つ一 つのことをどう捉えるか,そして,日々大切にし ている保育の中に含まれているその意味や価値 をよく考えてください。各園(所)に戻られ,職 員間で話し合い,今後の子どもの育ちにつなげて いただきたいと思います。 共同機構研修会第3回 平成28年6月23日 於:京都市子育て支援総合センターこどもみらい館