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突発疹関連脳炎脳症の全国調査
小児感染免疫 Vol.18 No.4 385 原著 突発疹関連脳炎脳症の全国調査 大 菅 橋 田 正 博 吉 須 川 賀 哲 定 雄 三 浅 宅 野 喜 造 要旨 2003年 1月から 2004年 12月の 2年間に わが国で発生した突発性発疹症(突 発疹)関連脳炎・脳症の実態を把握するためアンケート調査を実施した 回収率は 51.8%であり 脳炎・脳症患者 67症例が報告された その結果 本邦における年間発 生数は約 70例と推定された 67名の患児に性差は認めず 平 月齢は 14.5±9.5カ月 であった 神経症状は 66%の症例で発疹出現前に認められた 頭部 MRI 検査では 70%に異常所見を認め このうち 74%で後遺症を残した 予後については後遺症なく 生存した症例が 30例(48%) 後遺症を残した症例が 31例(49%) 死亡が 2例(3%) であった はじめに い その結果を解析した 対 突発性発疹症(突発疹)は乳幼児期にほとんど 象 の子どもが罹患する予後良好な熱性発疹症で わ 全国の小児科を標榜する 3,357病院を対象にア れわれ小児科医が日常診療でよく遭遇するポピュ ンケート調査を行った 調査期間は 2003年 1月か ラーな疾患である ら 2004年 12月の 2年間とし 突発疹(臨床診断 臨床経過は一般に良好で ほ とんどの症例が self-limited な臨床経過をたど に基づく)に合併した脳炎・脳症症例を調査した る しかし まれに重篤な中枢神経系合併症を起 方 こすことが知られており 1988年突発疹の起因ウ イルスがヒトヘルペスウイルス 6(HHV-6)と証 明されて以来 数多くの HHV-6関連脳炎・脳症 症例が報告されてきた 法 一次調査 はじめに一次調査(表) として 全国の 3,357病 しかし これまで突発 院に往復はがきを郵送した 設問は ① 症例の有 疹関連脳炎・脳症についての全国規模の疫学的成 無 症例があった場合は ② 年齢 ③ 性別 ④ ウ 績はない そこで今回の研究では 全国小児科医 イルス学的検索の有無とその結果 ⑤ PCR 法に の協力のもとにアンケート形式での全国調査を行 よる髄液中ウイルス DNA 検出の有無 ⑥ 予後と Nationwide survey of exanthem subitum associated encephalitis/encephalopathy in Japan Key words:ヒトヘルペスウイルス 6 脳炎脳症 全国調査 1) 刈谷豊田 合病院小児科 M asahiro Ohashi 〔〒 448-8505 刈谷市住吉町 5-15〕 2) 藤田保 衛生大学医学部小児科 Tetsushi Yoshikawa, Fumi M iyake, Ken Sugata, Sadao Suga, Yoshizo Asano 386 表 アンケート調査票(一次調査) 平成 15年 1月から平成 16年 12月までの 2年間に突発性発疹に合併した脳炎・脳症の症例がありましたか あり・なし 症例があれば以下の表の記載をお願いします 症例 性別 年齢 1 男 女 歳 カ月 2 男 女 歳 3 男 女 4 ウイルス学的検索 髄液検査 予後 離・抗体上昇・血清 PCR・未施行 PCR 施行・未施行 生(後遺症 有・無)・死 カ月 離・抗体上昇・血清 PCR・未施行 PCR 施行・未施行 生(後遺症 有・無)・死 歳 カ月 離・抗体上昇・血清 PCR・未施行 PCR 施行・未施行 生(後遺症 有・無)・死 男 女 歳 カ月 離・抗体上昇・血清 PCR・未施行 PCR 施行・未施行 生(後遺症 有・無)・死 5 男 女 歳 カ月 離・抗体上昇・血清 PCR・未施行 PCR 施行・未施行 生(後遺症 有・無)・死 6 男 女 歳 カ月 離・抗体上昇・血清 PCR・未施行 PCR 施行・未施行 生(後遺症 有・無)・死 7 男 女 歳 カ月 離・抗体上昇・血清 PCR・未施行 PCR 施行・未施行 生(後遺症 有・無)・死 した ウイルス学的検索はウイルス 離 HHV6 IgG 抗体の有意な上昇または IgM 抗体検出 PCR 法による血清中ウイルス DNA 検出につい て調査した 二次調査 一次調査で突発疹関連脳炎・脳症があった 47施 設 67症例についてさらに詳細な解析を進めるた めに二次調査を実施した その内容は以下の通り である て調査した )脳 波 検 査 脳波検査施行の有無と実施時期(発病からの病 日)について調査し 異常があれば所見について も記載を依頼した )画 像 検 査 頭部 CT と頭部 MRI について実施の有無 検 査病日 異常所見について調査した )臨 床 症 状 発熱 よる HHV-6 DNA 検出の実施とその結果につい 発疹 神経症状 呼吸状態の 4項目につ )治 療 抗ウイルス剤 ステロイド 免疫グロブリン製 いて調査した 発熱については有熱期間 発疹は 剤の 3剤について その有無と出現時期(発熱出現日を第一病日と定 を調査した 義) 神経症状は痙攣 意識障害 その他の症状の 有無と出現時期について 呼吸状態については人 工呼吸管理の有無を調べた ) HHV- 感染の診断方法 以下の 5項目の選択肢を設定した a) HHV6 IgG の有意上昇あり b) HHV-6 IgM 陽性 c) 血清 PCR 陽性 d) HHV-6ウイルス 離陽 性 e) その他(方法を記入)とした )髄 液 検 査 髄液細胞数 髄液タンパク量および PCR 法に )予 用の有無と薬品名 投与量 後 予後については 後遺症なく生存 後遺症を残 し生存 死亡の 3つの選択肢を設定した 後遺症 ありの症例については その内容も記載すること とした 結 果 突発疹関連脳炎・脳症発生率 一次調査のアンケート回収数は 1,730施設(回 収率 51.5%) であった そのうち 47施設 (2.7%) 小児感染免疫 図 HHV- 関連脳炎・脳症 例の月齢 Vol.18 No.4 387 布 から 67症例突発疹関連脳炎・脳症患者が報告され た この 47施設を対象として二次調査を行った これまでの報告から突発疹に流行性はなく 調査 期間の 2年間で脳炎脳症発生に偏りがないと仮定 し さらに アンケート回収・未回収施設間で脳 炎・脳症発生に偏りがないと仮定すると年間発生 率は約 70例と算出された 性別 年齢別患者数 性別は男児 34名 女児 33名であった 発症平 月齢は 14.5±9.5カ月で 7カ月から 16カ月に 図 発疹と神経症状出現時期 発疹出現日を 0日と定義した 多くの症例が集中していた(図 ) この年齢 布 は以前われわれが行った HHV-6についての疫 学調査結果からするとやや高年齢であった 特に 2歳以上の症例も 8例含まれており その内訳は 2 歳 6例 3歳と 4歳が各 1例であった 発疹と神経症状出現時期 神経症状としては痙攣または意識障害が認めら HHV- 感染の診断方法 ウイルス学的検査が実施された症例は 56例 (84%)で残りの 11例(16%)は臨床診断のみで 突発疹と診断された症例であった(図 ) 実施さ れた検査内容をみると (図 ) 血清学的検査は 42 れ それ以外の神経症状で発症した症例はなかっ 例(① HHV-6 IgG の有意上昇 23例 た 突発疹の発疹出現日を 0日と定義し 各神経 6IgM 陽性 26例 ① ② の両者 13例 ③ 無回答 6例)で実施され PCR 法による血清中ウイルス DNA 検出は 25例で実施 そのうち陽性は 19例 症状出現時期を脳炎・脳症の発症時期と え発疹 出現から神経症状出現までの期間を検討した(図 ) その結果 痙攣 意識障害といった神経症状 ② HHV- は 71%の症例で発疹出現前に認められ 特に発疹 だった HHV-6 離は 1例で実施されていたが ウイルス 離は陰性 PCR 法による髄液中ウイル の 2∼3日前に集中していた 発疹出現後に神経症 ス DNA 検出施行例は 32例で陽性は 16例であっ 状が認められた症例は 8例(17%)であった ま た 血清診断 血清または髄液 PCR のうち 2種類 た 発疹が出現せず経過した症例も 5例(10%) あった 以上の検査で陽性所見が得られた症例は 23例 (41%)であった 388 髄液検査 であった 二次調査の回答が得られた 51例中で 髄液検査 頭部画像診断 が実施された 43症例について解析した その結果 頭部 CT で急性期に異常所見を認めた症例は 7例(16%)で髄液の異常を認め その内訳は細胞 45例中 20例(44%)で 25例(56%)では正常だっ 増多 6例(14%) 髄液タンパク高値 1例(2%) た 異常所見の内訳は脳浮腫所見が 13例と最も多 であった 髄液検査で異常があった症例の神経症 く 次に低吸収域を認めた症例の 5例が続き 低 状出現時期は 発疹前が 3例 発疹後が 2例 発 吸収領域は前頭葉から頭頂葉にかけての病変が 3 疹出現日 1例 不明 1例であった PCR 法による 髄液中 HHV-6 DNA は 32例中 16例(50%)で 例であった(図 ) 一方 陽性だった で高信号像を示した症例が 18例あった(図 ) こ 脳波検査 頭部 MRI では 44例中 31例(70%)で異常を認めた 拡散強調画像 (DWI) れは異常所見が認められた 31例の 58%を占めて 脳波検査は 51例中 46例(90%)で施行されて いた 次いで多かった所見は T 2強調画像での異 いた 脳波異常は 35例(68%)に認められた 急 性期に実施された脳波検査で背景異常が認められ たものは 26例 発作性異常波を認めたものは 5例 図 突発性発疹症の診断 図 図 ウイルス学的検査実施 頭部 CT 検査における異常症例数と所見 例の診断方法 小児感染免疫 図 Vol.18 No.4 予 389 後 ス療法施行例が 4例 ヒドロコルチゾン投与例が 3例 図 頭部 MRI における異常症例数と所見 用薬剤不明 2例という内容であった 予後(図 ) 突発疹関連脳炎・脳症のうち予後が記載されて いた 63例について集計した 後遺症なしは 30例 常高信号所見で 9例(29%)認められた このう (48%) 後遺症を認めた症例は 31例(49%) 死 ち 1例は DWI でも高信号を呈しており DWI T 2強調画像あわせて 26例(84%)に異常を認め 亡例 2例(3%)だった 後遺症の内容は四肢麻痺 た DWI で認められた異常所見の部位は 報告の あった 16例において前頭葉 7例 前頭葉から頭頂 8例(26%) 片麻痺 7例(23%) 運動発達遅 葉 1例 前頭から側頭葉 2例 側頭葉 2例 側頭 が 9例(29%)と最多であり 以下は精神発達遅 3例 てんかん 2例 言語発達遅 神経麻痺 1例だった から後頭葉 2例 後頭葉 1例 広汎性病変 1例で あった 察 発疹前に神経症状が出現した症例では M RI での異常所見が 34例中 21例(62%)で認め られたが 発疹後に神経症状が出現した症例では 8例中 4例(50%)にとどまった 予後との関連性 に注目すると M RI で異常所見があった 31例中 23例(74%)が何らかの神経学的後遺症を残し M RI 正常症例では 13例中 4例(31%)に後遺症を 認めた 治療薬剤の選択 抗ヘルペスウイルス剤が 2例 顔面 突発疹に伴う脳炎・脳症は病原体判明以前から も報告されていたが 1986年突発疹の病原体が HHV-6と判明した後は ウイルス学的に HHV6感染が証明された脳炎・脳症が数多く報告され ている これら多くの報告が症例報告や少数例 をまとめた報告であり 突発疹関連脳炎・脳症の 臨床像全体を把握するには至っていない 本調査 ではその点を明らかにするために ハガキによる 用された症例は 28 アンケート調査という制限はあるが 初めて全国 例(アシクロビルのみ:25例 アシクロビルとガ 規模の突発疹関連脳炎・脳症の調査を行った そ ンシクロビル:2例 ガンシクロビルのみ:1例) の結果 突発疹の発症が通年性でかつ毎年の発生 あった ステロイド 用例は 29例 このうちデキ 率がほぼ サメタゾン 用例が 20例( 用量 0.5∼0.8mg/ 約 70例と推定された さらに乳幼児人口から算出 kg/day 3∼4日間) メチルプレドニゾロンパル した HHV-6関連脳炎・脳症の発病率は 7.0人/ 一であると仮定すると 年間発生率は 390 10万人と推定される しかし これはアンケート 回収施設と未回収施設間で症例の経験に偏りがな これまでの症例報告をみても HHV-6脳炎・脳 症には一次性脳炎と えられる症例や解熱し発疹 いと仮定し算出されており 症例経験施設ほど回 が出現してから発症する二次性脳炎と思われる症 収に応じる傾向があると予想すると 実際の頻度 例もあることが明らかになっている 今回の調査 は推定数よりやや低い可能性がある この発生頻 では 71%の症例が発疹出現前の有熱期に神経症 度は昨今注目を集めているインフルエンザ脳症に 状の出現を認めており 発疹出現後に神経症状を 比べると低いように見受けられるが 突発疹の場 認めた症例は 8例(17%)だった 多くの突発疹 合はほぼすべての小児が罹患し毎年コンスタント 関連脳炎・脳症例は有熱期に神経症状が出現する に患者発生が起こるため 突発疹関連脳炎・脳症 ため このような症例では特異的な臨床所見を欠 の臨床的重要性も極めて高いと えられる 今回 き HHV-6の関与を当初から疑うことは難しい ことが予想される 好発年齢 既往歴などを参 の成績は臨 床 診 断 を も と に 集 計 さ れ て お り HHV-6以 外 に 突 発 疹 様 の 臨 床 経 過 を 呈 す る HHV-7やエンテロウイルス感染による症例も含 に HHV-6感染を疑い対処することが必要であ まれている可能性がある しかし 血清診断 PCR 法により HHV-6感染と診断された症例が全体 る二次性脳炎のような症例も少なからずあること の 84%を占め 少なくともこれらについては臨床 る ろう また 解熱して発疹が出現してから発症す を念頭において日常診療を行うことも大切であ 診断だけでなくウイルス学的に証明された 臨床症状から HHV-6脳炎・脳症を予測するこ HHV-6脳炎・脳症の臨床像を反映している 今後 はウイルス学的に HHV-6感染の証明された脳 とが困難であることが明らかになったが 種々の 炎・脳症症例に限定した調査が必要であり その 績を裏づける結果となった 髄液検査所見では細 ためには突発疹関連脳炎・脳症の重要性について 胞増多を認めた症例は 14%にすぎず 脳症と え アピールし HHV-6感染の疑われる症例が発生 した場合には必ずウイルス学的検索を実施するよ られる症例が多いと思われる さらに 髄液 検査成績でも特異的な所見に乏しくこれまでの成 う全国の小児科関連施設へ予め周知しておくこと HHV-6PCR の陽性率は 50%であり 約半数では PCR 法による迅速診断も難しいものと思われる が必要であろう 現在われわれの施設やコマーシャルラボで実施さ 今回の調査により 突発疹関連脳炎・脳症の発 症年齢は 7∼16カ月に集中し 平 れている HHV-6リアルタイム PCR 法の感度は 13.8歳と一般 約 10コピー/反応であり 以前ポピュラーだった 的な突発疹発症年齢に比較しやや高年齢であっ た この理由として 先に述べたように本調査が nested double PCR 法に較べると若干感度が劣 る これが 今回の調査の髄液中ウイルス DNA 陽 臨床的に突発疹と診断された脳炎・脳症症例と 性率に影響している可能性が えられ 今後各患 なっているため 一部 HHV-7やエンテロウイル 者検体がどのような方法で検査されたのか詳細を ス関連脳炎・脳症がまぎれこんだ可能性が えら 解析する必要がある 画像診断でも突発疹関連脳 れる また HHV-6初感染年齢が高いほど中枢神 経合併症を起こしやすい可能性も えられ この 炎・脳症に特異的な所見は乏しいことが判明した 点を解明するため今後新たな調査研究を実施する ように CT では急性期の異常所見が明らかでは ない場合でも M RI 検査 特に DWI では異常所 必要がある さらに HHV-6と同じ βヘルペス ウイルス亜科に属する cytomegalovirus 同様 以 前われわれが HHV-6についての血清疫学調査 を実施した 15年前に較べ 生活様式の変化に伴い が 最近の中枢神経感染症診断で強調されている 見の検出率が高いことが明らかとなった また MRI 画像による病変 布は前頭葉病変が最多で 63%を占めていたが 以前よく報告された急性壊 HHV-6の初感染年齢が上昇している可能性も否 定できず この点についても今後詳細に検討して 死性脳炎(ANE)の所見を認めた症例数はそれほ みる必要がある についての設問がなく ANE の所見を有した症例 ど多くはなかった ただし今回の調査では ANE 小児感染免疫 でも診断は明記されていない 今後 ANE の頻度 Vol.18 No.4 391 予後を含めた調査が必要である 予後予測では 診断 GCV 投与が可能となると思われる 一般に突発疹は熱性痙攣の頻度は比較的高いも 急性期 M RI 検査が正常であった症例でも 31%に のの予後良好な self-limited な疾患と 後遺症を認めた が MRI 検 査 異 常 の 症 例 で は 74%に何らかの後遺症を認めた 今後急性期 M RI いる しかしながら今回の調査結果をみると 後 異常所見が予後予測に有用であるか否か詳細に検 を占め 後遺症の内容も 50%が四肢麻痺・片麻痺 討してみたい などの重篤な後遺症であった 本疾患は発症こそ HHV-6脳炎・脳症の治療に関してはいまだ確 立されたプロトコールはなく in-vitro で有効性 まれではあるが予後は極めて不良であり 現状で の確認されたガンシクロビル フォスカルネット い 今後は 本疾患の診断 治療ガイドライン作 が移植後の HHV-6脳炎で効果的であったこと 成に向けて なる詳細な解析を継続することが臨 が示唆されているにすぎない 床的に極めて重要と えられる これらの報告も いずれも症例報告であり double blind placebo control studyはなされていない 今回の報告で も 抗ウイルス剤の 用例の多くが HHV-6には 抗ウイルス効果のない ACV が 用されており えられて 遺症を残した例や死亡例など予後不良例が約半数 は有効な予防法もなく治療法も確立されていな 稿を終えるにあたり貴重な症例のご報告をいただ きました関係各病院の小児科主治医の先生方に深甚 なる謝意を表します また本調査にご協力いただき 特異的な抗ウイルス療法が実施されているとは言 ました全国小児科の先生方に厚く御礼申し上げま いがたい HHV-6に対する抗ウイルス効果の期 待できる GCV はわずか 3例に投与されたにすぎ す ず 有 効 性 に つ い て の 判 定 は 難 し い GCV は ACV と較べ副作用が強いため 投与に際しては ウイルス学的に HHV-6感染が証明されている ことが不可欠であろう 現実にはウイルス学的に HHV-6脳炎と診断できた時期にはすでに急性期 (有熱期)を過ぎていることが多く ウイルス血症 が発疹期以後速やかに消失することを 慮すると すでに有効な投与時期を逸しているケースがほと んどと思われる つまり GCV 治療で効果を得る ためには発症早期に診断し 発疹出現前のウイル ス血症が起きている時期(有熱期)から投与する 必要があり現状では極めて困難と思われる 現時 点では PCR 法により血清や髄液(上清成 )から ウイルス DNA を検出することが活動性 HHV-6 感染を証明する最短の方法になるが 検体採取後 数時間以内で結果を得るには限られた施設以外不 可能である われわれはこの問題点を解決するた め 新規の核酸増幅法である loop-mediated isothermal amplification 法により 患児血清から直 接ウイルス DNA を検出する方法を開発した こ の方法は極めて簡 であり 患者から検体採取後 1時間以内で結果判定が可能である 今後この方 法が全国の基幹病院に普及すれば 有熱期の迅速 本論文の 要 旨 は 第 37回 日 本 小 児 感 染 症 学 会 (2005年 11月 津市)において発表した 文 献 1) Yamanishi K, et al:Identification of human herpesvirus-6 as a causal agent for exanthema subitum. 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