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窓ガラスの熱破壊等に関する研究
消防科学研究所報 17号(昭和55年) 窓ガラスの熱破壊等に関する研究(第一報) 辻 英機ホ F 築 博 $ ア加熱方法 l はじめに 力 ラスに与える加熱温度は, JISA1340に定 a める加熱標準曲線とした。(同 1) 最~ì!Íの中高層建物には,数多くの窓ガラスが使 用されているが,これらの建築物において火災が 力mラスに与え主 発生した場合.火災熱によって窓ガラスが破坊さ 力日熱曲漁 れ尾外に窓ガラスの破片が落下し消防隊員右よぴ 住民に損傷をおよぼすことが予想される。 また.最近は 一般住宅等の非耐火建物から発生 した火災によって耐火建物へ延焼する場合がしば しばみられる これは.耐火遺物といえども窓ガ J ラスが火災や組射熱によって破壊きれ室内に延焼 するものである。 。 。 このようなことから,窓カラスが熱によってど 30 60 のように破壊されるのか.あるいは窓ガラスが破 喝 m t L 図 1 加熱標準幽線 壊されなくても窓ガラスをとおして.総射熱によ って案内の可燃物にどのような影響を与えるかを イ 供試カ'ラスの種類 透明フロート板ガラス(縦 2m. 横 1.5m) 調査し 今後の消防活動上の資料を得ょうとするも 5, 8, 1 2 m m 各 2枚 のである。 線入板ガラス 今年度は.旭硝子研究所の加熱試験炉および板 破壊実験を実施したので.その概要を報告する。 ガラスに鉄枠をつけ.加熱試験炉にとりつけ た。なお,ガラスの加熱面と非加熱面に,図 2 ( 1 ) 実 験 1 加熱炉によるガラスの磁場E 実験 のように.それぞれ 3個の熱電対を付けている。 ( 2 ) 実 験 2 (模媛火災によるガラスの破壊実験) ( 7 ) 火災条件 松原1 150 旭硝子研究所 ( 2 ) 実験 2 設定方法 ウ 2. 実 験 項 目 お よ び 場 所 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町 (縦 2m,横1.5m) 6, 8, 10mm各 1枚 橋区の明治製菓工場町、 の 建物を使用して熱による 耐火造建物内の 一室(床面積 34m')に木材 680 様綴火災によるガラスの破犠実験 板橋区加賀 二丁目 3番 1号 単位面積当リ 20kg) を直方体に頼みI::( t, kg ( 明治製菓工場跡地 アルコールを助燃材として燃焼した。(図 3参 3 . 照) 実 験 方 法 ( イ ) 供試ガラスの種類 ( 1 ) 実験 1 (加熱炉によるガラスの破寝実験) 透明フロート板ガラス(縦 2m,横 1.5m) 5, 8. 1 2 m m l ¥各 l枚 事第・ 研 究 所 4 (47) (縦1.8m. 横 0.9m) 普通板ガラス 3m m厚 l枚 の位置における温度(これが加熱温度である)温 度を図 5-図 8で示す。 1 1 ( ウ ) 設定方法 mを除<)を図 3の ガ ラ ス (3m o1部 分 に 鉄 90 , ) 主主定方法 (3""" a u AMU 114 。 -h pe 枠をはめて取リつけた。なおガラス面上の熱電 柏町附側 対 の 位 置 は 図 2と閉じ筒所である。 3m mの普通板ガラスは o2部分に設定した。 i図 4の と お り で この場合の熱電対の設定箇所l t ン ー あ る 。 な お , 実 験 2では火災室の圧力を羽J I定し 7 。 ニ 一 一一 ! 到 。 。 言主主万 i 本 RT .I A ‘1 8 . L 月 日 面一号~ J A .l B, 000N 圭 貴 図 4 般定方法 11111 flIll111Ila- hv J九 。 " ? 向 。 ヂJ , c ' 5 0 0 τ 1 i . t : i I ' l 魚B で i < T .i " 一 < < r;主)LA .B . T I立熱電対 . P I "i丘力宮 2 .p ,~実!,t 2 の Z晶宮のサt.l. r~ 3'-さの皐 f宜,~ T s .訓.."あ~. 図 2 般定方法 火災宝(平匝図) E 7000 図3 火 災 室 5 4 . 実験結果 ( 1 ) 加熱温度 1 0 1 5 20 図 5 加算島温度 25 10 { 脅 ) ( 5mm) ( 2 ) 然によるガラス破壊性状 ISに 基 ず 〈 加 熱 曲 線 に そ っ て 加 実 験 1では. J ア実験l 熱されるように自動的に調節されているのである 線入ガラスは,その厚さに関係なし加熱開 が.実際の加熱温度も J ISに定める加熱温度にほぼ 始 後 , 約4 0秒前後にひび(以下クラックという。) 。、 等し L 実 験 2では が発生し.その発生起点は四つの隅近くであっ 4回 木 材 を 燃 焼 さ せ た が . 扉 の 開 た 。 聞の相異により,それぞれの加熱温度は異なる。 その後.散発的にクラックが生じるが,ある l .T 2 .T 3 そこで,図 2および図 4における T 時点で.一拳に全平面にわたリクラゾクが発生 (4 8) する。 クラックの発 生 に と も な っ て ガ ラ ス の 小 片 が 少量飛び散るが.ガラス自体が倒機することは ι - ない。表 lに 最 初 に ク ラ ッ ク の 発 生 し た 時 間 乞 5 0 0 図 9にクラソクの状況を示す。 ι 5001 T, 百 決 1 i 供 。 事 。 300 300 200 5 1 0 図 I S 20 2s 1 5 20 2 . 5 30 (ft ) 8 加 鼎 温 度 (3mm) 3S {分} 30 図 6 加 熱 温 度 (8m m ) ι - I E 千S杉 s分 図 9 線入板ガラスのクラック(板厚 6,8 m m ) 透明フロート板ガラスは.加熱開始後.約 1 分前後にクラソクを生じ,その発生点は線入カ' ラスと同様四つの隅付近であった o そ し て , 最 初 の ク ラ !?発生時とほぼ同時に. 4つの隅の 部分のガラスヵ、脱落する。その後,散発的にク ラッ 7が生じるが.ある時点でカ'ラスはー拳に 倒 壊 す る 。 図 lに透明フロートカラスの 7ラ Y 7の状況を示す。 イ実験2 1 0 J S 2 .0 模擬火災実験では.最初にクラソクの生じた 2s 30 (t ) 0秒から 1 4分までとぱらつきが大きし、。 時間は 5 図 7 加算島温度(1 2 m m ) (表 2参 照 ) こ れ は . 加 熱 炉 の よ う な 一 定 の 温 (4 9) 度上昇をガラスに与えることができないので当 したカずって .7ラゾクはゆっくりと j 互に i 合って 然、であろう。また.ガラス面の温度上昇も加熱 発生し.面上に一挙にクラックが発生することは 炉のそれに比べ緩慢であるため歪のたまる速さ なL υ 実験 2における最中刀の 7ラック発生時間を も遅い。 表 3に.クラソクの状況を同 11,図 12に示す υ 表 1 クラック発生時間 種別l・板!半 (mm) 発生時間(秒) 冷 -wν.・ 3 分 分 ~ 終了時 Eヨ 同 省 桝 ~t ~l-苦P 分 図1 0 透明フロート板ガラスのクラック状況(板厚 8mm} 22 分 1 0タ え 1 1分 37均P ~脱落書Pタ Eヨ 列 引 所 図1 1 透明フロート板ガラスのクラック状況(板厚 1 2 m m } 表 2 クラック発生時間 であるので.ガラスが最尚何度になると割れるか とL、う議論は無益で与ある。つまり破綾応力を生ぜ しめるのは温度分布であるといわれており,一般 0 ' C位にな には面上の最高温度と最低温度の差が 7 ると破壊するとし寸説がある。そこで¥ この実験 ( 3 ) ガラスの破壊温度 ガラスが破壊するのは熱膨張による応力が原因 においても破壊時の最高温度と最低温度の差を調 べたところ表 3および表 4のようになった。 (5 0) 表 3 破 壊 時 の 面 上 温 度 差 ( 実 験 1) )mm 一 (一) 厚一代 同 一 T hq 一ム U ロ一 種一 ム T= 最高温度一最低溢度 表 4 破 壊 時 の 面 上 温 度 差 ( 実 験 2) ・ 丘 [h l i , 2.‘ ヲ ロ ト . 時 入 ["'V ー - p ムT ( ' C ) p, - - P. fO. 5 ム T= 最高j 品度敵低地度 ( 4 ) 〆 / , , ' ー ー ー ー 一 一 一 ー 火災室の圧力 。 実 験 2に布いて,ガラス面附;5:の空気圧を i 則定 I 暗 闇1 [ , うl 6で ぷ す 。 主 お 図 中 の した 。 そ の 結 果 を 図 13-図 1 P I, P 2, P 3L i [羽2および図 4に お け る 圧 力 計 i lリ 点 mAgは 大 気 J である。図の横軸は l気圧であリ O .3m . : f l 二O .3mm水 柱 の 圧 力 を 加 え た 圧 力 で あ る 。 , -0 L U i ! ) ] ι m叩 図1 5 火 災 室 の 圧 力 ( 板 庫1 2 m m ) 5・ aフ ロ ー ト' " λ 、 一一ー- p 一ー - F 【a n ¥ z ・ ・ " 3 _ Ud3ス 1勾3 P . ー 司 ~ 町で.. ・ 一 - " よ司』句 ,、‘ 5 、 ,一、 " ( 0 ) {崎間 I 、 ,-ーー' 、、ノ " I O ! IM I i l 吟l ‘ 、 、ノ,ー 、 ,' ー 、 ノ , i I 一ー ー P, , 2 J首 一一 一 円 図1 3 火災室の圧力(板"-5mm} 図1 6 火災室の圧力(板厚 '5 3mm) 透明フロートガラスの加熱炉内外への落下量 ( B :n J ‘ l ・')1 量分布を表 5-表 6で示 す。 非 加 熱j W Jへ の 飛 散 状 況 を み る と . そ の ほ と ん とが.カ'ラ ス の 固 定 位 置 か ら 1m以内に/喜下し ており 一ーー・ 5 "・. . 1 t 1m から 2m の 聞 に は 微 小 片 が わ ず か に飛散している程度であうた 。 なわ¥飛散した 実a ガラスの形状は床面での 二次破峻も加わり.微 ー ー ー 一 - P, ..._ -- 粒 状 の Lの か ら 数 十 七 ノ チ の 短 形 状 . 鋭 利 な 刃 ? , -一一-" 物状と諸々であった。なお.カ'ラス厚の相異に よる形状の相異ーはなかった ω イ実験2 図1 4 火 災 室 の 圧 力 ( 板 厚 8mm) j J日 熱 炉 に よ る 実 験 と 同 じ く . 飛 散 範 囲 は ガ ラ ス薗から 1m以 内 か ほ と ん と で あ リ . 形 状 等 も ( 5 ) ガラスの飛散 ア実験 l ほぼ同僚である。 (5 1) 表 5 ~喜下重量分布(実験 1 ) 2 m m 透明 1 種類・板厚 透明 5 透明 8 透明 5 透明 8 透明 1 2 k g 加熱側 3 9 . 9 (44. .3% ) 1 2 . 8( 3 3 . 9 ) 3 5 . 1( 5 8 .1 ) 1 6 . 4( 4 3 . 3 ) 3 8 . 2( 6 5 . 5 ) 非落下 非加熱側 5 0 . 2( 5 5 . 7 ) 25.0 ( 6 6 . 1 ) 2 5 . 3( 41 .9 ) 2 5 . 3( 41 .9 ) 2 0 . 8( 3 4 . 5 ) / 1 (注)窓枠残留部分は非加熱側に算入している。 表 6 落下重量分布(実験 2) 性状を比較すると,加熱炉によるものの方が著じ るしく早〈クラックが生じており. またガラス平 面上のクラックも多い。これは,加熱炉の方が急 激な温度上昇を与えるためであろう。 ( 2 ) ガラスの破犠温度について 5 . 考 前述したように.ガラスの破壊は加熱側ガラス 察 面上の温度差が 7 0位になると発生するというのが ( 1 ) 終によるガラスの破壊性状について 定説であるが,加熱炉の場合は多少のばらつきが ガラスに撃力を加えた場合は.折撃点がクラッ 0 ' C前後に分布している。模擬火災実 あるものの 7 クの発生点となり,そこから放射上に 7ラックが 験では資料数が少いので 7 0 ' Cからはずれているが はしる。ガラスに熱を与えた場合は,辺がクラッ 0 ' Cを中心として分布すると考 資料数をふやせば 7 クの発生点となり.そこから放射状にクラックが えられる。 延びても、〈。枠によ q拘束きれていないガラスに ( 3 ) 火災宣の圧力について 熱を均等に与えると.は,!辺の中点がクラソクの 火災が発生すると.室内には空気の対流が発生 発生点となり.拘束されていると.隅の近くの辺 するため下の冷たい空気は吸い上げられ負圧とな から発生する。 っ上部では正圧となる。この実験でも,この現象 ガラスを所定の九ききに切ると.その切口には が現われているが.上部の正圧は故高でも 0.5cmAg 無数の微細なクラックが生じている。このクラッ すなわち.大気圧に 0. 5g重/cm'の圧力を加えたに クがガラスの強度を弱めている原因である。 すぎなし、。負庄の減少程度はさらに小さい。これ ガラスの破壊強度は.線入板ガラスの場合.面 は開口部が密閉されていないためであろう。 中央部て・約 5 0 0 k g / m ', 周辺部て・ 2 0 0 k g / c m'て・あり. 火災室内の圧力がガラスの破壊に影響をおよぼ 透明フロート板ガラスの場合は,面中央て 約 5 0 0 k g ω すかという問題が有るが,ガラスは破犠強度は披 /cm'周辺部でら 3 5 0 k g /cm'とされている。線入ガラスは も~~ 理想的なクリアカットができないため切口にクラ ックが多〈発生し,破寝強度が低下する。打撃の 6 . おわりに 場合は.短時間に集中荷重がかかるが.熱破犠の 場合は,緩慢な膨張により面に一様に応力が発生 今回の実験は.火災熱によるガラスの破填の様 し,強度の~~ ,、周辺部から破墳が起るのであろう。 相を定性的に把握することを;昔、図した。 特に,枠に拘束されている場合は.隅近くでは応 力に加え隅と L、う特殊性に基づくカが作用してい ¥ 、所て. ' 2 0 0 k g重/cm'なので.この実験からは. 圧力の影響はないものと考えられる。 今後は,開口部を通過する輯射熱による室内可 燃物への影響を調べていく予定である。 ると考えられる。そして.歪みが蓄積されるごと 最後に,今固め実験において終始貴重な御意見 にクラックが生じて一時的に歪みを解消するが. および御指導を賜わった東京大学管原助教授なら ついには力学的平衡を保つことが不可能になり倒 びに資料,施設などの便宜をいただいた板硝子協 製する。 会等の各位に対し深〈感謝の意を表します。 加熱炉による破壊性状と.模擬火災による破壊 (5 2)