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Introduction to Business Japanese

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Introduction to Business Japanese
Introduction to Business Japanese
佐藤恵美・福富七重
要 旨
Introduction to Business Japanese は、将来、日本語を使って仕事をしたいという
中級レベルの日本語学習者のためのコースである。本コースでは、日本企業への理
解を深め、ビジネスで必要な日本語、マナーや習慣を身に付け、円滑にコミュニケー
ションができる能力を養成することを目標としている。
教室活動は、敬語、ビジネス場面を想定した会話練習を中心としている。また、
DVD の視聴、日本社会についての知識の習得やゲストスピーカーとの質疑応答を
通じて、日本社会との接点を作るように考えている。
学習者の日本語レベルは中級であり、日本語だけで仕事を行うのは難しい。それ
を補えるコミュニケーション力の養成、更に、敬語、会話が自然に使えるようにな
る練習を増やすことが課題である。また、実際のビジネス場面に触れる機会を持つ
こと、日本で働いている外国人から話を聞くことなども今後の有効な方法として考
えられる。
キーワード:中級レベル、ビジネス会話、敬語、コミュニケーション、日本企業
1.コース概要
1.1 目標
Introduction to Business Japanese は、将来、日本語を使って仕事をしたいという学習者
のためのコースである。日本企業への理解を深め、ビジネスで必要とされる日本語、つま
りビジネス場面での基本的な言葉や会話を習得すること、そして日本のビジネスにおける
マナーや習慣を身に付けること、それらを通じて、会社の人と円滑にコミュニケーション
ができる能力の養成を目標としている。
また、ビジネスで重要とされる敬語に関しては、基礎を強化するだけではなく、場面に
応じて適切に使えるようになることを目指している。
1.2 対象とする学習者と学習者数
このコースは秋学期、春学期ともに開講している。対象とする学習者は NIJ500(中級)
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の学生である。これは、日本語でビジネスを行うためには中級レベルの日本語が必要だと
考えたこと、そしてこのコースは敬語を導入する段階ではなく、復習から始めて強化する
コースであることから、敬語が既習である学習者を想定しているためである。
また、NIJ500 より上位の NIJ600 と NIJ700 のコースの学習者向けには、Business Japanese
というコースがあることも理由の一つである。
一クラスの学習者の数はこれまで 8 人∼18 人であった。2014 年春学期の学習者数は 18
人で、その内訳は、アメリカ 8 人、中国 3 人、オランダ 2 人、台湾 1 人、ベトナム 1 人、カ
ンボジア 1 人、オーストラリア 1 人、フランス 1 人であった。
1.3 成績評価
成績評価は、クラス参加 15%、課題(宿題、小テストなど)40%、試験 45%(中間試
験 15%、期末試験 30%)とし、総合的に判断した。
2.使用教材
『にほんごで働く! ビジネス日本語 30 時間』(宮崎道子・郷司幸子著、2009、スリーエー
ネットワーク)を主教材とし、理解を深めるため『映像で学ぶ ビジネス日本語 DVD
教材』及びそのテキスト『ビジネス日本語 テキスト 1 内定者編』
『ビジネス日本語 テキスト 2 新入社員編』
(日本映像教育社 教育事業部、2004、凡人社)を使用した。
3.教室活動
3.1 敬語
日本のビジネス社会では、敬語が適切に使えなくては一人前の社会人として認められな
い。そのため、一般的な日本語の授業で扱う時よりも時間をかけて詳細に説明し、多くの
敬語を学習させている。
敬語の授業は、①敬語の基礎知識、②尊敬語、③謙譲語、④丁寧語、⑤「お / ご」の使
い方に分け、5 回にわたり指導をしている。
①「敬語の基礎知識」の授業では、どの程度敬語の知識があるかを確認することから始
める。例えば「
(パーティで初めて会った人に)どちらから、いらっしゃいましたか」と
いう敬語を含む文を提示し、どの言葉が敬語か、どんな敬語か、どうして敬語を使ってい
るのか等を質問する。その後、
質問事項について解説し、初級で習った敬語の復習をする。
敬語を習ったことはあるというものの、知識としては不十分で、この時点では尊敬語と
謙譲語の区別ができない学習者が多く、中にはどれが敬語かさえわからない学習者もいる。
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②「尊敬語」の授業は次のように行う。まず、尊敬語を使う状況について説明する。そ
の後、尊敬語の形を紹介し、作り方や使い方について指導する。
次に、学習者に形を作る練習をさせる。教師との一斉による口頭練習から始め、ペアで
お互いに問題を出し合う練習へと続ける。その後プリントなどを使って運用練習を行う。
以下③謙譲語、④丁寧語、⑤「お / ご」の使い方、も同様に授業を進める。
どの敬語に関しても授業で学習するだけではなく、定着をはかるため宿題と小テストを
課している。
敬語の指導をする際に心がけていることは、次のことである。形を確実に定着させるた
めに、言葉、文、会話などいろいろな形で繰り返し練習させること、そして、単に形を暗
記させるのではなく、なぜこの場面で敬語が必要かという理屈も理解させることである。
こうすることによって、学習者自身で、状況からどの敬語を使えばいいのかという判断が
行え、それに合った敬語が使えるようになると考えているからである。
3.2 会話
実際のビジネスの場面で行われる会話は、学習者の日常生活で取り交わされる会話とは
大きく異なる。本コースでは、ビジネス場面での会話の理解・運用といった習得を目指し
ているため、多くの時間をビジネス会話の練習に充てた。
ビジネス会話で扱ったものは①自己紹介 ②挨拶、おじぎ ③電話をかける・受ける ④注意を受ける(アドバイス)
⑤許可をもらう ⑥アポイントをとる ⑦訪問する、で
あり、これらの課題を遂行するために必要となる会話を練習した。実際のビジネス場面で
はこれ以外の様々な場面が起こりうるが、授業時間数との兼ね合いで、できる範囲でまず
必要と思われるものを選別した。
会話練習では毎回、次のような流れで練習を行った。
1 モデル会話の内容理解 → 2 モデル会話の練習(ペア) → 3 会話を覚える
→ 4 会話のチェック(2 ペア合同)
→ 5 会話の発表(全体)
モデル会話の練習は毎回ペアで行い、授業内及び授業後に各自でスムーズに言えるよう
に練習をする。授業時間の制約のため、会話を覚えることは宿題となる。翌週に 2 ペア合
同のグループになり、お互いに会話のチェックをしあう。
学習者は他のペアと合同で確認を行うことで刺激を受け、自分の会話についても客観的
に振り返ることができる。教師も学習者数が多い場合にも対応することが可能である。
また、毎回モデル会話を覚えてスムーズに言えるように練習することで、ビジネス会話
の語彙や表現が定着しやすく、更に会話で使用される敬語表現も身に付けられる。
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3.3 DVD の視聴
授業では普段接する機会があまりないビジネスの世界を理解させるために、DVD の視
聴を取り入れた。内容は「電話対応の基本」及び「ビジネスマナーの基本」である。
「電
話対応の基本」では電話の受け取り方やかけ方を、「ビジネスマナーの基本」では会社で
の挨拶・おじぎの仕方、名刺の受け渡しの仕方等を学び、教室内でも学習者同士で実践練
習を行った。
この活動は DVD で実際の様々な場面を見ることによって、ビジネス場面がより具体的
にイメージされ、学習者からも好評であった。
3.4 日本の会社について
学習者は、日本のビジネスについて関心はあっても、学ぶ機会がなかなかないようであ
る。そこで、日本で働くために会社の仕組みについても知っておく必要があると考え、日
本の会社についての基本的なことを指導した。学生には、事前に資料を配布し、予習をさ
せておいた。授業は学生からの質問と、実例を挙げながらの説明で行った。
内容は、①会社で働く人の雇用形態 ②入社から退職までの流れ ③会社組織 ④雇用
に関する経営方針の変化 ⑤賃金制度 ⑥給与明細の見方、であり、学習者が将来働くた
めに必要だと思うことを取り上げた。
日本の会社についても学ぶことで、日本について理解を深めるだけでなく、学習者自身
で自国と比較するようになり、自身の国についても再認識するきっかけとなった。
3.5 ゲストスピーカー
少しでも生きた日本のビジネス世界に触れさせるため、日本人のビジネスマンをゲスト
スピーカーとして教室に招いた。そして、会社について語ってもらい、その後、質疑応答
を行った。学習者は日常接する機会があまりない日本人ビジネスマンに様々な疑問を投げ
かけた。
2014 年春学期には出版社の人に来てもらった。学習者にとっては貴重な機会となり、
非常に好評であった。また学習者だけでなく、日本人ゲストスピーカーにとっても大変有
意義であったとの感想を受け、双方の交流という意味でも意義があると言えよう。
4.今後の課題
今後の課題についてこれから述べる。まずいわゆる Business Japanese のクラスと大きく
異なる点は、履修する学習者の日本語のレベルである。Introduction to Business Japanese
において対象とする学習者は日本語中級レベルである。学習者が日本企業で日本語だけで
日本人同様に仕事を行うのは難しいと思われる。しかしながら、日本語を使って働きたい
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という強い意志がある学習者が日本のビジネス場面を理解し、また日本的なコミュニケー
ション方法を知り、円滑な人間関係を築くことは、非常に重要なことである。学習者の日
本語力を補えるコミュニケーション力をつけるためには何が必要かを今後も考えて指導す
る必要がある。
敬語、語彙、会話についてもっとクラスで練習したいと、更に意欲を持つようになった
という学習者の声も聞こえた。ビジネスでは欠かせない敬語については、敬語を知識とし
て教えるだけではなく、実際に使えるレベルにしなくてはならない。そのため敬語を単に
語彙としての知識ではなく、会話の中で自然に使えるような練習を今後更に増やしていき
たい。また、ビジネスで使う言葉については、将来学習者が仕事をする上でどのような語
彙が必要かを働く人からの情報をもとに選択することも必要である。
そして、学習者と接点が少ないビジネスの世界の実体験を与えるという意味では、ゲス
トスピーカーや会社見学などは学習の大きな動機づけとなる。このような活動は今後も継
続していきたい。
参考文献
佐藤恵美(2009)
「Business Japanese」
『南山大学国際教育センター紀要』Vol. 10 pp. 111―112
日本映像教育社 教育事業部(2004)
『ビジネス日本語 テキスト 1 内定者編』凡人社
日本映像教育社 教育事業部(2004)
『ビジネス日本語 テキスト 2 新入社員編』凡人社
宮崎道子・郷司幸子(2009)
『にほんごで働く! ビジネス日本語 30 時間』スリーエーネットワー
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国際教育センター紀要 第 15 号
Introduction to Business Japanese
Emi SATO, Nanae FUKUTOMI
Abstract
Introduction to Business Japanese is designed for students of intermediate Japanese
with hopes or plans to do business using Japanese in the future. The aim of this course
is to deepen understanding of Japanese companies and develop useful business and
conversational Japanese skills, in addition to business manners and customs.
Class is focused on practicing Japanese honorific speech and conversation in common
business situations. Further, through DVDs and a discussion session with a guest
business speaker, students can interact more lively with Japanese companies.
At an intermediate level, it is difficult to do business only in Japanese. Therefore, it
is essential to provide students with more opportunities to improve overall Japanese
communication skills and practice honorific speech. By hosting a foreigner working at a
Japanese company as a guest speaker, this class allows students to get to know and
experience the real Japanese business world.
KeyWords: intermediate Japanese level, business Japanese, honorific, communication,
Japanese company
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